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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】防音構造体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20230525BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20230525BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
G10K11/16 150
F02B77/13 C
G10K11/16 130
H02K5/24 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018144343
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020957
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年7月18日~20日東京ビッグサイトにおいて開催された第5回労働安全衛生展で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】堀 誠斗
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-174849(JP,A)
【文献】特開2017-151325(JP,A)
【文献】特開平06-288351(JP,A)
【文献】実開昭51-131751(JP,U)
【文献】特開2003-050585(JP,A)
【文献】特開2010-032880(JP,A)
【文献】特表2006-519710(JP,A)
【文献】特開2014-043765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62- 1/99
F02B 61/00-79/00
G10K 11/00-13/00
H02K 5/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の防音パネルが連設されて、内側に騒音源を収容するための収容空間を区画する側壁部を備えた防音構造体であって、
前記防音パネルは、合成樹脂製の樹脂板材と、該樹脂板材の前記収容空間側の主面に設けられた多孔質性板材を備え、
前記多孔質性板材の内部及び前記収容空間側の表面の少なくともいずれかには、前記収容空間側から前記樹脂板材側への空気の流通を抑制する遮蔽部が設けられており、
複数枚の前記防音パネルは、前記遮蔽部が設けられた前記防音パネルと、前記遮蔽部が設けられていない前記防音パネルとからなり、
前記遮蔽部は、前記多孔質性板材の上下方向の一部であって、上部以外の部分に設けられている防音構造体。
【請求項2】
前記遮蔽部は金属製薄板である請求項1に記載の防音構造体。
【請求項3】
前記遮蔽部は、前記多孔質性板材の下部で該多孔質性板材の主面と平行に延びるように設けられている請求項1又は2に記載の防音構造体。
【請求項4】
前記樹脂板材には複数のセルが設けられているとともに、前記セルの内部と前記収容空間とを連通させる連通孔が設けられている請求項1~のいずれか一項に記載の防音構造体。
【請求項5】
前記多孔質性板材は板状の吸音本体と、該吸音本体の外側を被覆する被覆体を備えており、
前記吸音本体はグラスウールであり、前記被覆体はガラス繊維製シートである請求項1~のいずれか一項に記載の防音構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音源の周囲に設けることで、騒音源から発せられる不快な騒音が外部に漏れることを抑制するための防音構造体が知られている。特許文献1には、エンジン駆動により発電する小型発電機の周囲を囲むように設置される防音構造体に係る発明が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載される防音構造体は、外側に配置されるポリプロピレンシートと、内側に配置されるウレタンマットからなる積層構造をなす4枚のパネルが連設して形成されている。小型発電機から発せられた騒音は、パネルの内面にぶつかって減衰されながら上昇し、防音構造体の上方に開口する排気口から放出されることによって低減されるとされている。また、内層のウレタンマットに吸音されてさらに減衰することで低減されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-90457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジン駆動により発電する小型発電機等では、駆動時にマフラーから高温の熱を帯びた空気が発せられる。特に駆動時にエンジンに負荷が掛かるような場合にはより高温の熱を帯びた空気が発せられる。また、エンジンが長時間駆動されるような場合には長時間に亘って高温の熱を帯びた空気が発せられる。特許文献1に記載の防音構造体のパネルは、外側のポリプロピレンシートと内側のウレタンマットの積層構造であるため、マフラーから発せられた高温の熱を帯びた空気は内側に配置された多孔質性のウレタンマットを通り抜けて外側のポリプロピレンシートに伝えられやすくなる。そのため、外側のポリプロピレンシートが熱の影響を受けて変形する場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、熱の影響を受けにくい防音構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の防音構造体は、複数枚の防音パネルが連設されて、内側に騒音源を収容するための収容空間を区画する側壁部を備えた防音構造体であって、前記防音パネルは、合成樹脂製の樹脂板材と、該樹脂板材の前記収容空間側の主面に設けられた多孔質性板材を備え、前記多孔質性板材の内部及び前記収容空間側の表面の少なくともいずれかには、前記収容空間側から前記樹脂板材側への空気の流通を抑制する遮蔽部が設けられている。
【0008】
上記の構成によれば、防音構造体は、複数枚の防音パネルが連設された側壁部により、発電機等の騒音源を収容する収容空間を区画する。防音パネルは合成樹脂製の樹脂板材と多孔質性板材を備えており、収容空間側に設けられた多孔質性板材の内部及び収容空間側の表面の少なくともいずれかには、収容空間側から樹脂板材側への空気の流通を抑制する遮蔽部が設けられている。そのため、収容空間内に収容された騒音源から高温の熱を帯びた空気が発せられたとしても、遮蔽部によって、熱を帯びた高温の空気が樹脂板材側に流通することが抑制される。樹脂板材が高温の空気による熱の影響を受けることが抑制される。
【0009】
上記の防音構造体において、前記遮蔽部は金属製薄板であることが好ましい。
上記の防音構造体において、前記遮蔽部は、前記多孔質性板材の下部で該多孔質性板材の主面と平行に延びるように設けられていることが好ましい。
【0010】
上記の防音構造体において、前記樹脂板材には複数のセルが設けられているとともに、前記セルの内部と前記収容空間とを連通させる連通孔が設けられていることが好ましい。
上記の防音構造体において、前記多孔質性板材は板状の吸音本体と、該吸音本体の外側を被覆する被覆体を備えており、前記吸音本体はグラスウールであり、前記被覆体はガラス繊維製シートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱の影響を受けにくい防音構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】防音構造体の斜視図。
図2】(a)は防音パネルの樹脂板材の斜視図、(b)は(a)におけるβ‐β線断面図、(c)は(a)におけるγ‐γ線断面図。
図3】(a)は樹脂板材のコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図、(d)は樹脂板材の連通孔の加工態様を示す断面図。
図4】防音パネルの斜視図。
図5】防音パネルの側断面図。
図6】防音パネルの変更例の側断面図。
図7】(a)、(b)は防音パネルの多孔質性板材の変更例について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態の防音構造体1について説明する。
図1に示すように、本実施形態の防音構造体1は、四角筒形状をなす側壁部2を備えている。側壁部2で区画された内部の空間は、例えば、小型発電機や粉砕機等の騒音源を収容可能な収容空間Cとなる。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の側壁部2は、4枚の防音パネル10が互いに連結されて形成されている。各防音パネル10は、合成樹脂製の樹脂板材20を外層とし、多孔質性板材30を内層とする積層構造をなしている。多孔質性板材30は、樹脂板材20の収容空間C側の主面20aに脱着可能に貼着されている。また、樹脂板材20の一方の側端縁20cには、隣り合う樹脂板材20同士を連結するための連結部材40が取り付けられている。図4に示すように、本実施形態の防音パネル10は、樹脂板材20、多孔質性板材30、及び連結部材40を一つの単位として構成されている。本実施形態の防音構造体1は、このような防音パネル10を4枚連結することによって、四角筒形状をなす側壁部2が形成されるものである。なお、防音パネル10の構成としては、これに限定されず、樹脂板材20及び多孔質性板材30を一つの単位とし、防音パネル10同士が連結部材40を介して連結されるものであってもよい。
【0015】
図2に示すように、樹脂板材20は、内部に複数のセルSが並設された合成樹脂製の中空構造体である中空板材3により形成されている。中空板材3は、従来公知の熱可塑性樹脂材料で形成されている。その材料は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、アクリルニトリル‐ブタジエン‐スチレン等が挙げられる。本実施形態の中空板材3はポリプロピレン製とされている。
【0016】
図2(a)に示すように、中空板材3は、内部に複数のセルSが並設されたコア層4と、コア層4の厚み方向両面(図2(a)において上下両面)に接合されたシート状のスキン層5、6とで構成されている。図2(b)及び(c)に示すように、コア層4は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。コア層4は、上方壁部4aと、下方壁部4bと、上方壁部4a及び下方壁部4bの間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側方壁部4cとで構成されている。
【0017】
図2(b)及び(c)に示すように、コア層4の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。図2(b)に示すように、第1セルS1においては、側方壁部4cの上部に2層構造の上方壁部4aが設けられている。この2層構造の上方壁部4aの各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側方壁部4cの下部に1層構造の下方壁部4bが設けられている。一方、図2(c)に示すように、第2セルS2においては、側方壁部4cの上部に1層構造の上方壁部4aが設けられている。また、第2セルS2においては、側方壁部4cの下部に2層構造の下方壁部4bが設けられている。この2層構造の下方壁部4bの各層は互いに接合されている。また、図2(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側方壁部4cによって区画されている。
【0018】
図2(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う2つの第1セルS1が六角形の1辺を共有している。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う2つの第2セルS2が六角形の1辺を共有している。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層4は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0019】
図2(a)~(c)に示すように、上記のように構成されたコア層4の上面には熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層5が接合されている。また、コア層4の下面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層6が接合されている。この実施形態では、コア層4における側方壁部4cの上部が、コア層4の上方壁部4a及びスキン層5で閉塞されている。すなわち、上方壁部4a及びスキン層5が、セルSを上側から区画する上部閉塞壁3aを構成している。同様に、コア層4における側方壁部4cの下部が、コア層4の下方壁部4b及びスキン層6で閉塞されている。すなわち、下方壁部4b及びスキン層6が、セルSを下側から区画する下部閉塞壁3bを構成している。
【0020】
図2(b)及び(c)に示すように、中空板材3の上部閉塞壁3aには、セルSの内外を連通させる連通孔7が設けられている。具体的には、図2(b)に示すように、第1セルS1において連通孔7は、上面側のスキン層5及び2層構造の上方壁部4aを貫通している。また、図2(c)に示すように、第2セルS2において連通孔7は、上面側のスキン層5及び1層構造の上方壁部4aを貫通している。
【0021】
図2(a)に示すように、連通孔7は、1つのセルSに対して1箇所ずつ設けられている。この実施形態では、連通孔7は、中空板材3を上面視した場合に、各セルSの六角形状の中央に位置している。図2(b)及び(c)に示すように、各連通孔7の開口の直径は、セルSを上面視した場合の六角形の一辺の長さ以下に設定されている。具体的には、各連通孔7の開口の直径は、X方向に隣り合うセルSの中心同士の間隔P1の数分の1(例えば、0.5~3.0mm程度)に設定されている。
【0022】
次に、中空板材3の製造方法について図3に従って説明する。
図3(a)に示すように、第1シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成される。第1シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、第1シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体に亘って形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0023】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0024】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、第1シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0025】
図3(a)及び(b)に示すように、上述のように構成された第1シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層4が形成される。具体的には、第1シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、図3(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層4が形成される。なお、この実施形態では、第1シート材100を折り畳むために圧縮する方向が、セルSが並設される方向(X方向)である。
【0026】
上記のように第1シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層4の上方壁部4aが形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層4の下方壁部4bが形成される。なお、図2(c)に示すように、上方壁部4aにおける第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下方壁部4bにおける第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0027】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側方壁部4cを構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側方壁部4cを構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側方壁部4cとなる。また、第1セルS1では、一対の重ね合わせ部131によってその上部が区画され、第2セルS2では、一対の重ね合わせ部131によってその下部が区画されている。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、第1シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0028】
このようにして得られたコア層4の上面及び下面には、それぞれ熱可塑性樹脂製の第2シート材が熱溶着により接合される。コア層4の上面に接合された第2シート材はスキン層5となり、コア層4の上方壁部4aと共にセルSを上側から閉塞する上部閉塞壁3aを構成する。コア層4の下面に接合された第2シート材は、スキン層6となり、コア層4の下方壁部4bと共にセルSを下側から閉塞する下部閉塞壁3bを構成する。
【0029】
なお、第2シート材(スキン層5、6)をコア層4に熱溶着する際には、第1セルS1における2層構造の上方壁部4a(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。同様に、第2セルS2における2層構造の下方壁部4b(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。
【0030】
上記各工程により、X方向に第1セルS1又は第2セルS2がそれぞれ列を成すように多数並設され、Y方向に第1セルS1及び第2セルS2が交互に多数並設された中空板材3が得られる。
【0031】
その後、中空板材3のスキン層5及びコア層4の上方壁部4a(上部閉塞壁3a)に多数の連通孔7を形成する。連通孔7は、ドリル、針、パンチ等の貫通冶具Tを、中空板材3のスキン層5及びコア層4の上方壁部4aに貫通させることにより形成される。図3(d)に示すように、貫通冶具Tは、隣り合うセルSの中心同士の各間隔と略同一の間隔で複数配列された構成となっている。複数の貫通冶具Tの下方側に中空板材3を配置して固定し、貫通冶具Tを下降移動させる。このようにして、中空板材3のスキン層5及びコア層4の上方壁部4aには、各セルSの略中央部分に各1箇所ずつの連通孔7が形成される。以上の工程を経て、複数の連通孔7が形成された中空板材3が製造される。なお、本実施形態の中空板材3の板厚は約20mmである。
【0032】
図1に示すように、樹脂板材20は、板厚約20mmの中空板材3を、約1000mm×750mmの長方形板状に切断して形成されている。樹脂板材20は、中空板材3を構成する第1セルS1及び第2セルS2の列が延びる方向に直交する方向(図2及び図3においてY方向)が上下方向となるように配置されている。
【0033】
樹脂板材20の収容空間C側の表面には、図示しない透湿防水シートが、その全面に亘って貼り付けられている。すなわち、樹脂板材20におけるスキン層5の表面(連通孔7が形成されている主面20a)には、透湿防水シートが貼り付けられている。透湿防水シートは、例えば、面ファスナー、両面テープ、接着剤などで樹脂板材20に貼り付けられている。そのため、樹脂板材20の連通孔7を介して、中空板材3のセルS内に水が浸入することが抑制される。その結果、防音パネルのセルS内に水が浸入することに起因して防音パネルの吸音特性が変化することが抑制される。
【0034】
図4に示すように、樹脂板材20の上端面及び下端面には、それぞれ帯板状の封止部材21が取り付けられている。封止部材21の幅方向の寸法は、樹脂板材20の厚み寸法、すなわち中空板材3の厚み寸法と同じになっている。また、封止部材21の長さ方向の寸法は、樹脂板材20の幅方向の寸法と同じになっている。そのため、この封止部材21によって、樹脂板材20の上端面及び下端面において中空板材3の内部空間(セルS)が露出しないようになっており、樹脂板材20の内部空間に塵、埃、水等が入ることが抑制される。
【0035】
図4に示すように、樹脂板材20における多孔質性板材30が貼着されていない側の主面20bには、側端縁20c寄りの上下2箇所にそれぞれ雄型面ファスナー22が取り付けられている。雄型面ファスナー22は、防音パネル10の幅方向に延びる帯状になっていて、その長手方向の一端が樹脂板材20の主面20bに固定されている。
【0036】
また、樹脂板材20の主面20bには、樹脂板材20の他方の側端縁20d寄りの上下2箇所にそれぞれ雌型面ファスナー23が取り付けられている。雌型面ファスナー23の上下方向の位置は、雄型面ファスナー22の上下方向の位置と同じになっている。
【0037】
図1及び図4に示すように、多孔質性板材30は、樹脂板材20の収容空間C側の主面20aに脱着可能に貼着されている。多孔質性板材30の樹脂板材20側の主面30bには、多孔質性板材30の側端縁寄りの2箇所に、上下方向に延びるように雄型面ファスナー25が取り付けられており、樹脂板材20の収容空間C側の主面20aに取り付けられた雌型面ファスナー24に対して脱着可能に貼着されている。なお、雌型面ファスナー24及び雄型面ファスナー25の取付け位置は特に限定されない。防音パネル10における4隅でもよく、左右方向に延びる上下2箇所でもよい。
【0038】
多孔質性板材30の高さ方向の寸法は樹脂板材20の高さ方向の寸法とほぼ同じであって、幅方向の寸法は樹脂板材20の幅方向の寸法より少し短くなっている。具体的には、図4に示すように、樹脂板材20の幅方向の寸法より多孔質性板材30の厚み方向の寸法分短くなっている。連結部材40が取り付けられた側の多孔質性板材30の側端縁30cの位置は、樹脂板材20の側端縁20cとほぼ同じ位置に設けられている。また、連結部材40が取り付けられていない側の多孔質性板材30の側端縁30dの位置は、樹脂板材20の側端縁20dより多孔質性板材30の厚み方向の寸法分内方の位置に設けられている。
【0039】
図5に示すように、多孔質性板材30は、内部に多数の空間を有する多孔質性の材料で形成された吸音本体31と、吸音本体31の外周面全体を被覆する被覆体32で構成されている。吸音本体31の材質としては、多孔質性であって吸音性があり、難燃性であるものであれば特に限定されない。例えば、ガラス繊維(グラスウール)、鉱物繊維(ロックウール)、金属繊維等の各種多孔質性繊維系吸音材や、ポリウレタンフォーム等の発泡性吸音材や、各種布類等が挙げられる。また、被覆体32の材質としては、多孔質性であって難燃性であるものであれば特に限定されない。本実施形態の吸音本体31はグラスウールにより形成されており、被覆体32はガラス繊維のシートにより形成されている。
【0040】
図1及び図4に示すように、多孔質性板材30の内部には、収容空間C側から樹脂板材20側への空気の流通を抑制する遮蔽部33が設けられている。本実施形態の防音構造体1では、4枚の防音パネル10のうちの1枚の防音パネル10の多孔質性板材30のみに遮蔽部33が設けられている。
【0041】
遮蔽部33は、収容空間Cに設置された騒音源から発せられた熱によって温められた空気が、多孔質性板材30内部を通って樹脂板材20側に流通することを抑制する構成である。そのため、遮蔽部33の材質としては、耐熱性に優れ、空気の流通を抑制することができるものであれば特に限定されない。例えば、金属、木材、耐熱性樹脂、ケイ酸カルシウム板等が挙げられる。金属材料としては、銅、アルミニウム、ステンレス、鉄、鋼等が挙げられる。遮蔽部33が熱伝導性に優れた金属製であると、遮蔽部33から放熱されやすく樹脂板材20への熱の影響が抑制される。耐熱性樹脂材料としては、200℃以上の融点を有する従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0042】
遮蔽部33は、防音パネル10の重量が重くなりにくく、効率的に空気の流通を抑制する観点から薄板状であることが好ましい。耐熱性樹脂製の場合には、吸音本体31を構成する多孔質性の材料中の空間内に耐熱性樹脂が充填されており、耐熱性樹脂が充填された部分が薄板状に広がって形成されていてもよい。また、防音パネルの表面に耐熱性樹脂をコーティング、塗布してもよい。本実施形態の遮蔽部33は、熱伝導性に優れるとともに錆が発生しにくく、かつ軽量であるアルミニウム製の薄板で形成されている。
【0043】
図4及び図5に示すように、遮蔽部33は、多孔質性板材30の厚み方向の中間位置であって、多孔質性板材30の主面30a、30bと平行に延びるように多孔質性板材30の下端部から設けられている。遮蔽部33は、多孔質性板材30の厚み方向の中間位置であれば、収容空間Cに近い側の位置であっても、樹脂板材20に近い側の位置であってもよい。多孔質性板材30の内部へ薄板状の遮蔽部33を入れる際の加工性の観点から言えば、遮蔽部33は、多孔質性板材30の主面30aから厚み方向の約1/3の位置、約1/2の位置、約2/3の位置となるように設けられていることが好ましい。また、樹脂板材20に対する熱の影響を好適に抑制する観点から言えば、遮蔽部33は、樹脂板材20の主面20aから3mm以上離間した位置に設けられていることが好ましく、5mm以上離間した位置に設けられていることがより好ましく、8mm以上離間した位置に設けられていることがさらに好ましい。
【0044】
また、遮蔽部33は、高さ方向の寸法が多孔質性板材30の高さ方向の寸法の約1/4~3/4程度であり、幅方向の寸法が多孔質性板材30の幅方向の寸法より少し短い矩形状に形成されていることが好ましい。その結果、遮蔽部33は、防音パネル10の下端部からその上下方向の高さの約1/4~3/4程度の範囲に設けられていることになる。さらに、遮蔽部33の厚みは、約0.01~5.0mm程度であることが好ましく、約0.01~1.0mm程度であることがより好ましい。
【0045】
多孔質性板材30の内部に遮蔽部33を入れる方法は特に限定されない。例えば、遮蔽部33が薄板状である場合、多孔質性板材30の厚み方向中間部分に切り込みを入れて挟み込めばよい。或いは、多孔質性板材30を2枚の板材で構成して、その間に遮蔽部33を挟み込んでもよい。
【0046】
図1及び図4に示すように、樹脂板材20の一方の側端縁20cには、隣り合う樹脂板材20同士を連結するための連結部材40が取り付けられている。連結部材40は高さ方向の寸法は樹脂板材20の高さ方向の寸法とほぼ同じであって、樹脂板材20の一方の側端縁20cの全長に亘って取り付けられている。連結部材40は、断面コ字状の2つの支持部である第1支持部41及び第2支持部42が、軟質部43を介して0~180゜の所定角度の範囲で回動可能に連結された形状をしている。樹脂板材20の側端縁20cには、連結部材40の第1支持部41が取り付けられている。
【0047】
第1支持部41及び第2支持部42は、従来公知の熱可塑性樹脂材料で形成されており、軟質部43は、従来公知の熱可塑性エラストマーで形成されている。第1支持部41及び第2支持部42を形成する熱可塑性樹脂材料は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、アクリルニトリル‐ブタジエン‐スチレン等が挙げられる。また、軟質部43を形成する熱可塑性エラストマーも特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。連結部材40は、押出し成形によって第1支持部41、第2支持部42、及び軟質部43が一体成形されている。
【0048】
こうした防音パネル10を4枚連結して防音構造体1を組み立てる方法について説明する。
まず、1枚の防音パネル10を準備して、騒音源の近傍で防音パネル10を垂直に立てた状態で支持する。防音パネル10の樹脂板材20の側端縁20cには、あらかじめ連結部材40の第1支持部41が取り付けられている。2枚目の防音パネル10を準備して、2枚目の防音パネル10の樹脂板材20の側端縁20dを、先の樹脂板材20に取り付けられた連結部材40の第2支持部42内に挿入して支持する。第1支持部41と第2支持部42を軟質部43を中心として回動させて、1枚目の防音パネル10と2枚目の防音パネル10との角度が直角をなすようにする。この状態で、1枚目の防音パネル10に取り付けられた雄型面ファスナー22を、2枚目の防音パネル10に設けられた雌型面ファスナー23に貼り付けることにより、2枚の防音パネル10を連結された状態で固定する。
【0049】
同様にして、3枚目の防音パネル10、4枚目の防音パネル10を連結すると、騒音源を取り囲み、四角筒形状の側壁部2を有する防音構造体1が組み立てられる。
次に、本実施形態の防音構造体1の作用について説明する。
【0050】
防音構造体1は、4枚の防音パネル10が連結されて、その内部が騒音源の収容空間Cとして区画される。騒音源から発生した音は、4枚の防音パネル10に伝達される。
防音構造体1の防音パネル10は、それぞれ吸音材として機能する樹脂板材20及び多孔質性板材30を有している。樹脂板材20は、中空板材3の複数のセルSの内外を連通する連通孔7が形成されているため、連通孔7の内部の空気が激しく振動することによって、その振動が熱エネルギーとして消費されて吸音する。一方、多孔質性板材30は多孔質性の材料で形成されており、多孔質性材料の隙間を伝搬する空気の摩擦や粘性抵抗等によって、空気の振動が熱エネルギーに変換されて吸音する。このように、樹脂板材20と多孔質性板材30は異なる原理によって吸音するため、広い周波数領域での吸音効果が得られる。このように、本実施形態の防音パネル10では、広い吸音域での吸音効果が得られる。
【0051】
また、4枚の防音パネル10のうちの1枚には、多孔質性板材30の内部にアルミニウム薄板である遮蔽部33が設けられている。騒音源がエンジン駆動により発電する小型発電機等である場合、駆動時にマフラーから熱が発せられて温められた高温の空気が防音パネル10に向かって吹き付けられる。1枚の防音パネル10の多孔質性板材30の内部に設けられた遮蔽部33は、アルミニウム薄板であって、多孔質性板材30の下端部からその上下方向の高さの約1/4~3/4程度の範囲に設けられている。そのため、高温の空気が吹き付けられる部分に、遮蔽部33が設けられた防音パネル10が位置するように防音構造体1を設置すると、多孔質性板材30を通り抜けた高温の空気は遮蔽部33でその流通が抑制される。また、遮蔽部33は熱伝導性の高い金属製(アルミニウム製)であることから、高温の空気に含まれる熱エネルギーが効率的に拡散される。遮蔽部33は、多孔質性板材30の厚み方向中間位置であって、多孔質性板材30の主面30a、30bと平行に延びるように設けられているため、高温の空気に含まれる熱エネルギーを吸収して遮蔽部33が熱くなったとしても、合成樹脂製の樹脂板材20に接触することが回避される。合成樹脂製の樹脂板材20が熱による影響を受けにくい。
【0052】
上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)上記実施形態の防音構造体1は、1枚の防音パネル10の多孔質性板材30の内部にアルミニウム薄板からなる遮蔽部33が設けられている。そのため、発電機等の高温の熱を発する騒音源に対する防音構造体1として適用する場合に、騒音源から発せられる熱により温められた空気の流通を遮蔽部33で抑制することができる。ポリプロピレン製の樹脂板材20が熱の影響を受けて溶けたり変形したりすることを抑制することができる。
【0053】
(2)遮蔽部33は、アルミニウム薄板で形成されており、多孔質性板材30の厚み方向中間位置であって、多孔質性板材30の主面30a、30bと平行に延びるように設けられている。そして、樹脂板材20の主面20aと遮蔽部33との間には、約8~15mm程度の距離が形成されている。そのため、高温の空気に含まれる熱エネルギーを吸収して遮蔽部33が熱くなったとしても、その熱が合成樹脂製の樹脂板材20に伝わることが抑制される。合成樹脂製の樹脂板材20が熱による影響を受けにくい。
【0054】
(3)遮蔽部33は、多孔質性板材30の厚み方向中間位置に設けられている。そのため、騒音源と遮蔽部33との間には多孔質性板材30が介在しており、遮蔽部33が設けられていたとしても、多孔質性板材30の吸音性能が低下することが抑制される。
【0055】
(4)多孔質性板材30は、難燃性のグラスウールで形成された吸音本体31と、ガラス繊維のシートで形成されて吸音本体31の外周面全体を被覆する被覆体32を備えている。そのため、高温の空気に含まれる熱エネルギーを吸収して遮蔽部33が熱くなったとしても、多孔質性板材30が熱による影響を受けにくい。
【0056】
(5)遮蔽部33は、4枚の防音パネル10のうちの1枚の防音パネル10の多孔質性板材30のみに設けられており、多孔質性板材30の下端部からその上下方向の高さの約1/4~3/4程度の範囲に設けられている。そのため、アルミニウム薄板からなる遮蔽部33が設けられていても、防音構造体1としての吸音性能が低下することが抑制される。吸音性能に優れた防音構造体1が得られる。
【0057】
(6)遮蔽部33は、アルミニウム薄板で形成されており、1枚の防音パネル10の多孔質性板材30のみの下端部からその上下方向の高さの約1/4~3/4程度の範囲に設けられている。そのため、遮蔽部33による重量増加を抑制することができる。設置作業がしやすく、扱いやすい防音構造体1が得られる。
【0058】
(7)上記実施形態の防音パネル10には、多孔質性板材30が脱着可能に貼着されている。そのため、防音構造体1の使用後に、多孔質性板材30を剥がして付着した汚れを拭き取りやすい。また、多孔質性板材30が汚れたり傷んだりした場合に、多孔質性板材30を取り換えることが容易である。防音パネル10の寿命を長くすることができる。
【0059】
(8)上記実施形態の防音構造体1は、1枚の防音パネル10を一つの単位とし、4枚の防音パネル10を連結して構成されている。防音パネル10の樹脂板材20の側端縁20cには連結部材40の第1支持部41が取り付けられている。別の防音パネル10の樹脂板材20の側端縁20dを先の防音パネル10の連結部材40の第2支持部42に挿入すれば、2枚の防音パネル10を連結することができる。そのため、騒音源が設置された現場で、防音パネル10を順次連結しながら、騒音源の収容空間Cを区画する防音構造体1を形成することができる。立体状に形成された防音構造体を騒音源の上方から被せるように設置する必要がなく、設置作業に携わる作業者が1人しかいない場合や、作業者が非力である場合等であっても、設置作業を容易に行うことができる。また、防音パネル10単位で運搬することができるため、防音構造体1の形で運搬する場合に比べてその負担が軽くなり、運搬作業の負担が軽減される。
【0060】
(9)上記実施形態の防音構造体1は、1枚の防音パネル10を一つの単位として、同じ防音パネル10を4枚連結して形成されている。そのため、側壁部2を形成する部材を複数種類準備する必要がなく、防音パネル10の製造コストの低減、ひいては防音構造体1の製造コストの低減に寄与することができる。
【0061】
(10)上記実施形態では、防音パネル10の樹脂板材20の収容空間C側の主面20aに透湿防水シートが貼り付けられている。そのため、樹脂板材20(中空板材3)の連通孔7を介して、樹脂板材20のセルS内に水が浸入することが抑制される。樹脂板材20のセルS内に水が浸入することに起因して樹脂板材20の吸音特性が変化することが抑制される。
【0062】
(11)上記実施形態では、樹脂板材20としてハニカム構造をなす中空板材3を採用しており、樹脂板材20の曲げ剛性として相応に高い剛性が得られる。そのため、例えば、防音パネル10を防音構造体1として使用中に、自重によって樹脂板材20が曲がってしまうことが抑制される。
【0063】
また、屋外で使用する場合には屋内に比べて熱の影響を受け易く、中空構造体が変形し易くなるが、樹脂板材20の高い剛性により、熱変形が抑制される。そのため、取扱いがし易く、作業性のよい防音パネル10が得られる。
【0064】
上記実施形態は、次のように変更することができる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・本実施形態の遮蔽部33は、アルミニウム薄板で形成されており、多孔質性板材30の吸音本体31の厚み方向中間位置であって、多孔質性板材30の主面と平行に延びるように設けられている。そして、樹脂板材20の主面20aと遮蔽部33との間には、約8~15mm程度の距離が形成されるように設けられている。遮蔽部33の位置はこれに限定されない。図6に示すように、吸音本体31における樹脂板材20側の主面に接合されるような態様で設けられていてもよい。この場合、遮蔽部33は、吸音本体31の樹脂板材20側の表面であって、吸音本体31と被覆体32の間に設けられていることになる。この場合であっても、遮蔽部33と樹脂板材20との間に被覆体32が介在しているため、遮蔽部33が騒音源から発せられた熱によって温められた空気の熱エネルギーを吸収したとしても、樹脂板材20が熱の影響を受けることが抑制される。
【0065】
また、多孔質性板材30における収容空間C側の主面30aに設けられていてもよい。この場合、樹脂板材20の主面20aとの距離がさらに大きくなり、遮蔽部33が熱エネルギーを吸収したとしても、樹脂板材20が熱の影響を受けることがより好適に抑制される。
【0066】
・本実施形態の遮蔽部33は、多孔質性板材30の下端部からその上下方向の高さの約1/4~3/4程度の範囲で、多孔質性板材30の幅方向全体に設けられているが、これに限定されない。例えば、多孔質性板材30の全体に設けられていてもよい。また、図7(a)に示すように、多孔質性板材30の下部に部分的に設けられていてもよい。さらに、その形状も矩形薄板状でなくてもよく、図7(b)に示すように円形薄板状であってもよい。
【0067】
・本実施形態の遮蔽部33は、4枚の防音パネル10のうちの1枚のみの防音パネル10の多孔質性板材30に設けられているが、2枚或いは3枚の防音パネル10の多孔質性板材30に設けられていてもよく、すべての防音パネル10の多孔質性板材30に設けられていてもよい。また、その設ける位置や形状を、各防音パネル10によって異ならせてもよい。
【0068】
・遮蔽部33は、1枚の防音パネル10の多孔質性板材30の内部に複数設けられていてもよい。例えば、複数枚の薄板状の遮蔽部33が、多孔質性板材30の厚み方向の同じ位置で多孔質性板材30の主面30a、30bと平行に延びるように設けられていてもよい、また、複数枚の薄板状の遮蔽部33が、多孔質性板材30の厚み方向の複数の位置で多孔質性板材30の主面30a、30bと平行に延びるように設けられていてもよい、
・本実施形態の防音構造体1は、長方形板状の防音パネル10を4枚連結して構成されているが、連結する枚数はこれに限定されない。3枚であってもよく5枚以上であってもよい。連結部材40に軟質部43が形成されていることから、連結部材40の第1支持部41と第2支持部42は軟質部43を介して所定角度に回動可能である。そのため、適宜の枚数の防音パネル10を、適宜の角度をなすように連結することができる。四角形筒状の側壁部2を有する防音構造体1だけでなく、四角形筒状以外の多角形筒状の側壁部を有する防音構造体を容易に形成することができる。こうした防音構造体であっても、1枚の防音パネル10の多孔質性板材30の内部及び収容空間C側の表面の少なくともいずれかに遮蔽部33を設ければよい。
【0069】
・防音構造体1の側壁部2によって騒音源の周囲を完全に囲繞する場合に限らず、例えば、3枚の防音パネル10を互いに直交するように連結して収容空間Cを区画することもできる。この場合、収容空間Cは、側壁部2によって完全に囲繞されていないため、例えば、グラインダー作業等の作業スペースとして使用することができる。
【0070】
・防音パネル10の形状は長方形板状に限定されない。例えば、長方形板状の第1防音パネル(第1樹脂板材及び第1多孔質性板材)の上方に等脚台形板状の第2防音パネル(第2樹脂板材及び第2多孔質性板材)が連設された形状のものを複数枚幅方向に連設してもよい。こうすると、上方窄まり状の防音構造体を形成することができる。こうした防音構造体であっても、1枚の第1防音パネルの第1多孔質性板材の内部及び収容空間C側の表面の少なくともいずれかに遮蔽部33を設ければよい。
【0071】
・防音パネル10を構成する樹脂板材20は、約1000mm×750mmの長方形板状としたが、大きさはこれに限定されない。これより大きくてもよく、小さくてもよい。例えば、樹脂板材20を約2000mm×1000mmの長方形板状としてもよい。この場合、4枚の防音パネル10を連結することによって、粉砕機のような大型の機械の周囲に設置する防音構造体として適用することができる。
【0072】
・防音パネル10に貼着された多孔質性板材30の高さ方向の寸法は、防音パネル10の高さ方向の寸法とほぼ同じであり、多孔質性板材30は、防音パネル10の高さ方向全長に亘って貼着されているが、これに限定されない。多孔質性板材30の高さ方向の寸法を防音パネル10の高さ方向の寸法より小さくしてもよい。つまり、多孔質性板材30の上端縁が、防音パネル10の上端縁より下方であり、多孔質性板材30の下端縁が、防音パネル10の下端縁より上方であってもよい。こうすると、多孔質性板材30の上下端縁が汚れたり変形したりしにくく、多孔質性板材30の寿命を長くすることができる。
【0073】
・防音構造体1は、防音パネル10以外に、他の構成を備えていてもよい。例えば、側壁部2の四角筒形状の上側の開口を覆う蓋部材や、下側の開口を覆う底面部材を備えていてもよい。また、底面部材として、小型発電機等の騒音源を設置するための設置スペースとしての開口部が中央部分に形成されたものを備えていてもよい。こうすると、設置された騒音源と防音パネル10との間に一定に距離が保持されるようにすることができる。なお、騒音源と防音パネル10との間に一定に距離が保持されるような底面部材として、棒状の部材を騒音源と防音パネル10との間に設けてもよい。この蓋部材や底面部材は、上記中空板材3からなる防音パネルで構成されていることが好ましい。
【0074】
・防音パネル10に、小型発電機等のケーブルを収容空間Cの外部に引き出すための切欠、開口等を形成してもよい。また、換気用の開口を形成してもよい。これらの切欠、開口等は、防音パネル10の下端縁或いは下端縁隅部に設けることが好ましい。
【0075】
・防音パネル10の下端縁にアジャスター等の脚部を取り付けてもよい。アジャスター等の脚部は、各防音パネル10の両側端縁近傍に取り付けることが好ましい。脚部を取り付けることにより、防音パネル10の下方には開口部が形成され、小型発電機等のケーブルを引き出すための空間、換気用の開口とすることができる。
【0076】
・防音パネル10の下端縁に、防振ゴムを取り付けてもよい。防振ゴムは、下端縁全体に取り付けてもよく、部分的に取り付けてもよい。防振ゴムを取り付けることにより、発電機等の駆動時の振動の影響を抑制することができる。
【0077】
・防音パネル10に、発電機等と紐等で連結できるようなリングやフック等を取り付けてもよい。発電機等の駆動時の振動や風により、防音構造体1が位置ずれしたり、倒れたりすることを抑制することができる。
【0078】
・防音パネル10の持ち運びを容易にするために、持ち手を設けてもよい。持ち手は、例えば、防音パネル10の収容空間C側とは反対側の主面20bに設けることが好ましい。
【0079】
・樹脂板材20(中空板材3)の寸法やセルSの容積等は、防音構造体1に求められる大きさや吸音性能等に合わせて適宜変更すればよい。例えば、樹脂板材20の厚みとしては、15~50mm、好ましくは20~30mmである。そして、セルSの容積としては、0.6~3.0立方センチメートル、特に1.0~2.5立方センチメートル程度が好ましい。樹脂板材20の厚み、セルSの容積を適宜変更することで、吸音周波数のピークを変更することができる。
【0080】
・中空板材3は、一枚の第1シート材100を折り畳み成形してコア層4を形成するのに限らず、複数枚のシート材を用いてコア層を形成してもよい。例えば、帯状のシート材を所定間隔毎に屈曲させ、これら複数のシート材を併設することでコア層を形成してもよい。この変更例の場合、各シート材において屈曲させた部分がセルの側壁部を構成する。
【0081】
・スキン層5、6を熱溶着でコア層4に接合するのに限らず、例えば、接着剤等でスキン層5、6をコア層4に貼り付けて接合してもよい。また、コア層4とスキン層5、6との間に、例えば熱可塑性樹脂製の接着層を介在させ、この接着層の接着力により、スキン層5、6をコア層4に接合してもよい。
【0082】
・中空板材3(樹脂板材20)におけるスキン層6側の外面に、他のシート材を接合してもよい。この外面側のシート材は、合成樹脂製のものに限らず、例えば、金属シート(金属箔)、鋼板、紙、布などであってもよい。また、スキン層6そのものを、金属シート(金属箔)、紙、布などで構成してもよい。
【0083】
・中空板材3(樹脂板材20)におけるセルSの形状は、六角柱形状に限らない。例えばセルSの形状は、四角柱形状であってもよいし円柱形状であってもよい。また、異なる形状のセルSが混在されていてもよい。さらに、中空板材3において、隣り合うセルSが接している場合に限らず、隣り合う2つのセルSの間に間隔が生じていてもよい。なお、セルSとセルSとの間に間隔が生じている場合、セルSの内外を連通させる連通孔7だけでなく、セルSとセルSとの間の空間の内外を連通させる連通孔を設けてもよい。
【0084】
・中空板材3において、連通孔7は、一つのセルSに対して複数設けられていてもよい。また、連通孔7は、全てのセルSに対応して設けられていなくてもよく、一部のセルSに対応して設けられていてもよい。
【0085】
・樹脂板材20と多孔質性板材30との間に、透湿防水シート以外の他のシート材が介在していてもよい。ただし、介在するシート材として、防音パネル10によって吸音される周波数を透過する材料や厚みであることが好ましい。
【0086】
・防音パネル10に対する多孔質性板材30の取り付け態様は、面ファスナー24、25に限らない。例えば、リベット(鋲)で、防音パネル10に多孔質性板材30が取り付けられていてもよい。リベット(鋲)による多孔質性板材30の取り付けの際には、リベット(鋲)の頭部より少し大きい円形のゴム板の上からリベット(鋲)を取り付けることが好ましい。こうすることで、多孔質性板材30の表面を保護しつつ確実に多孔質性板材30を取り付けることができる。この変更例の場合、多孔質性板材30は、防音パネル10から取り外し不可あるいは取り外しが難しくなるが、多孔質性板材30がグラスウールのような経時劣化しにくい材料で形成されていれば、問題は生じにくい。
【0087】
・防音パネル10を構成する中空板材3を、難燃性の合成樹脂材料で形成してもよい。こうすることで、難燃性の防音構造体1を得ることができる。
・防音パネル10は、第1セルS1及び第2セルS2の列が延びる方向に直交する方向(図1及び図2においてY方向)が上下方向となるように配置されていなくてもよい。例えば、防音パネル10は、第1セルS1及び第2セルS2の列が延びる方向に直交する方向が幅方向となるように配置されていてもよい。
【0088】
・防音パネル10の上端面及び下端面に取付けられた封止部材21を省略してもよい。防音構造体1に使用が想定される場所が雨等に晒されない場所で、防音構造体1に水がかからないと想定されるのであれば、封止部材21を省略しても弊害はない。また、封止部材21に代えて、防音パネル10の上端面及び下端面を熱封止してもよい。
【0089】
・連結部材40は、防音パネル10の長手方向全長に亘る長さでなくてもよい。防音パネル10の長手方向の長さ寸法より短くてもよく、また、長手方向の長さ寸法より短いものが複数取り付けられていてもよい。
【0090】
・連結部材40は、軟質部43に替えて、第1支持部41及び第2支持部42とは別部材としてのヒンジ部材が取り付けられていてもよい。ヒンジ部材としては、例えば、従来公知の金属製や布製のヒンジ部材が挙げられる。こうしたヒンジ部材が、連結部材40の長手方向の複数箇所に取り付けられていてもよい。
【0091】
・連結部材40に軟質部43が形成されておらず、連結部材40全体が硬質の合成樹脂で形成されており、第1支持部41と第2支持部42が直角をなすように一体に連結されていてもよい。この場合、第1支持部41と第2支持部42を連結する部分が薄肉となる薄肉ヒンジ部とされていてもよい。
【0092】
・連結部材40を省略してもよい。この場合、防音パネル10は樹脂板材20及び多孔質性板材30を一つの単位とし、防音パネル10同士をリベットやボルト等で連結すればよい。
【符号の説明】
【0093】
C…収容空間、S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル、1…防音構造体、2…側壁部、3…中空板材、4…コア層、5、6…スキン層、7…連通孔、10…防音パネル、20…樹脂板材、20a、20b…主面、30…多孔質性板材、31…吸音本体、32…被覆体、33…遮蔽部、40…連結部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7