(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ロボット用駆動ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
B25J17/00 E
(21)【出願番号】P 2018555516
(86)(22)【出願日】2017-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2017059448
(87)【国際公開番号】W WO2017182594
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】102016004787.9
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518052049
【氏名又は名称】クベー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハダディン サミ
(72)【発明者】
【氏名】ロカール ティム
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特表平03-502507(JP,A)
【文献】特表2005-517908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0289591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムのマニピュレータの2つのアーム部材(A1、A2)の間に配置されたジョイント用の駆動ユニットであって、該駆動ユニットは、
一方のアーム部材(A2)を他方のアーム部材(A1)に対して回転駆動させ、
ハウジング(1)を有し、少なくとも1つの連結要素(3)によって力及びトルクを伝達するように第1アーム部材(A1)と連結された第1駆動モジュール(M1)と、
ハウジング(6)を有し、少なくとも1つの連結要素(7)によって力とトルクを伝達するように第2アーム部材(A2)と連結された第2駆動モジュール(M2)と、を有し、
前記第2駆動モジュール(M2)は、前記第1駆動モジュール(M1)と同軸配置され、該第1駆動モジュール(M1)に対して回転可能に支持され、かつ、
前記連結要素(3、7)は前記駆動ユニットの回転軸に対して半径方向に複数の前記アーム部材(A1、A2)と協働し、
前記連結要素(3、7)は、前記ハウジング(1、6)と一体的に形成され、半径方向に周囲を囲む溝(3、7)の形態に形成され、
前記第1駆動モジュール(M1)と前記第2駆動モジュール(M2)とは、互いに部分的に係合し、
少なくとも一つのラジアル・ベアリング(11)が、前記第1駆動モジュール(M1)のハウジング(1)の半径方向外側部分(9)と前記第2駆動モジュール(M2)のハウジング(6)の半径方向内側部分(10)との間に配置され、
前記第2駆動モジュール(M2)の前記ハウジング(6)の対向面端部は前記第1駆動モジュール(M1)と対向し、
前記第1駆動モジュール(M1)の前記ハウジング(1)の対向面端部は前記第2駆動モジュール(M2)と対向し、
前記ラジアル・ベアリング(11)は、前記ハウジング(6)の対向面端部に配置された第1の固定要素(14)と、前記ハウジング(1)の対向面端部に配置された第2の固定要素(12)とによって軸方向の位置に固定され,
前記固定要素(14)は、前記第1駆動モジュール(M1)と対向する前記ハウジング(6)の前記対向面端部の反対側の面から前記内側部分(10)を貫通するネジ(15)によって、前記ハウジング(6)の前記内側部分(10)に狭持されること
を特徴とする駆動ユニット。
【請求項2】
前記第1駆動モジュール(M1)及び前記第2駆動モジュール(M2)は、回転対称な構成要素として構成され、前記溝(3、7)は同一の直径を有すること
を特徴とする、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記ハウジング(1、6)の、前記連結要素(3、7)が形成された部分とは別の部分は、半径方向かつ内側方向に後退していること
を特徴とする、請求項2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記半径方向外側部分(9)と前記半径方向内側部分(10)とは前記第2駆動モジュール(M2)の連結要素(7)の半径方向内側に配置されること
を特徴とする、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
モータ(19、39)を含む第3駆動モジュール(M3)が、前記第1駆動モジュール(M1)の前記ハウジング(1)の、前記第2駆動モジュール(M2)と同軸上反対側に連結されること
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記第3駆動モジュール(M3)及び前記第1駆動モジュール(M1)は、部分的に係合すること
を特徴とする、請求項5に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記モータ(19、13)によって駆動される駆動シャフト(22)は、前記第3駆動モジュール(M3)に回転可能に支持され、前記駆動シャフト(22)は前記第1駆動モジュール(M1)内に延在し、かつ、前記第1駆動モジュール(M1)内に配置されたギアの入力要素に連結されること
を特徴とする、請求項5又は6に記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記ギアの出力要素(28)は、前記第2駆動モジュール(M2)と一緒に回転可能なように該第2駆動モジュール(M2)に連結されていること
を特徴とする、請求項7に記載の駆動ユニット。
【請求項9】
前記ギアの前記出力要素(28)は、前記第2駆動モジュール(M2)の前記ハウジング(6)と一緒に回転可能なように該ハウジング(6)に連結された出力シャフト(30)に連結されること
を特徴とする、請求項8に記載の駆動ユニット。
【請求項10】
前記駆動シャフト(22)及び前記出力シャフト(30)は、それぞれ中空軸として形成され、互いに共通の軸に配置されること
を特徴とする、請求項9に記載の駆動ユニット。
【請求項11】
第4駆動モジュール(M4)が、前記第3駆動モジュール(M3)の、前記第1駆動モジュール(M1)と同軸上反対側正面に配置され、
前記第4駆動モジュール(M4)は、センサ・デバイスを有し、
前記駆動シャフト(22)が前記第3駆動モジュール(M3)から前記第4駆動モジュール(M4)の前記第3駆動モジュール(M3)と対向する面まで延在すること
を特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項12】
前記第2駆動モジュール(M2)は、センサ・シャフト(38)と一緒に回転可能なように該センサ・シャフト(38)に連結され、前記駆動シャフト(22)を半径方向に間隔をおいて貫通し、前記第4駆動モジュール(M4)の、前記第3駆動モジュール(M3)と反対側の面まで延在すること
を特徴とする、請求項11に記載の駆動ユニット。
【請求項13】
前記第1駆動モジュール(M1)の前記連結要素(3)は、前記第1駆動モジュール(M1)のハウジング(1)と一体的に形成され、かつ、前記第2駆動モジュール(M2)の前記連結要素(7)は、前記第2駆動モジュール(M2)のハウジング(6)と一体的に形成されていること
を特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項14】
前記マニピュレータの2つのアーム部材(A1、A2)の間に配置された少なくとも1つのジョイントの中に、請求項1~13のいずれか一項に記載の駆動ユニットを有する、複数のアーム部材(A1、A2)を含むマニピュレータを有すること
を特徴とするロボット。
【請求項15】
ロボットシステムのマニピュレータの2つのアーム部材(A1、A2)の間に配置されたジョイントに用いる駆動ユニットを製造する方法であって、該駆動ユニットは、一方の前記アーム部材(A2)を他方の前記アーム部材(A1)に対して回転駆動させることを目的とし、前記駆動ユニットは、互いに同一の軸を中心に配置された複数の駆動モジュール(M1、M2、M3、M4)を有し、
第1駆動モジュール(M1)を、第2駆動モジュール(M2)と連結するステップが、
・固定要素(12)を前記第2駆動モジュール(M2)に対向する前記第1駆動モジュール(M1)のハウジング(1)の正面端部に配置することによって、前記第1駆動モジュール(M1)の前記ハウジング(1)の一部分(9)にラジアル・ベアリング(11)を取り付けるステップと、
・前記第2駆動モジュール(M2)のハウジング(6)の一部分(10)が前記ラジアル・ベアリング(11)と重なるように、前記第1駆動モジュール(M1)を前記第2駆動モジュール(M2)に部分的に挿入するステップと、
・前記第2駆動モジュール(M2)の前記ハウジング(6)の前記一部分(10)に前記ラジアル・ベアリング(11)を取り付け又は固定するステップであって、固定要素(14)を前記第2駆動モジュール(M2)の前記ハウジング(6)の、前記第1駆動モジュール(M1)と対向する正面端部に配置して、前記第1駆動モジュール(M1)の前記ハウジング(1)と前記第2駆動モジュール(M2)の前記ハウジング(6)との間に、軸方向の所定位置で、前記ラジアル・ベアリング(11)を収納するステップと、を含み、
前記ラジアル・ベアリング(11)を収納するステップは、
前記第1駆動モジュール(M1)と対向する前記ハウジング(6)の前記正面端部の反対側の面から前記一部分(10)を貫通するネジ(15)によって、前記固定要素(14)を前記ハウジング(6)の前記一部分(10)に狭持するステップを含むこと
を特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1駆動モジュール(M1)はギアを有し、
前記方法は、さらに、前記ギアの出力要素(28)を前記第2駆動モジュール(M2)の前記ハウジング(6)と、該ギアの側及び/又は前記第2駆動モジュール(M2)の側から連結するステップを含むこと
を特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2駆動モジュール(M2)は出力シャフト(30)を有し、
前記方法は、さらに、前記出力シャフト(30)を前記第2駆動モジュール(M2)の前記ハウジング(6)、及び前記ギアの前記出力要素(28)と連結するステップを含むこと
を特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
駆動シャフト(22)を備えるモーター(19、39)を有する第3駆動モジュール(M3)を、前記第1駆動モジュール(M1)の前記ハウジング(1)の、前記第2駆動モジュール(M2)とは反対側の面に取付けるステップであって、該ステップによって前記駆動シャフト(22)を前記ギアの入力要素(25)と連結するステップをさらに含むこと
を特徴とする
、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第4駆動モジュール(M4)を、前記第3駆動モジュール(M3)の、前記第1駆動モジュール(M1)と同軸上反対側に取り付けることによって、モータ連結(51,52)を実現するステップを、さらに含むこと
を特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記駆動シャフト(22)、及び前記出力シャフト(30)がそれぞれ中空シャフトとして形成され、前記第4駆動モジュール(M4)が開口部を有し、かつ、前記第2駆動モジュール(M2)がセンサ・シャフト(38)と一緒に回転可能なように該センサ・シャフト(38)に連結されており、
前記方法は、
前記センサ・シャフト(38)が、前記第3駆動モジュール(M3)の前記駆動シャフト(22)と、前記第2駆動モジュール(M2)の前記出力シャフト(30)と、前記第4駆動モジュール(M4)の開口部と、を、それぞれ、半径方向に所定の間隔をおいて貫通させるステップを、さらに含むこと
を特徴とする、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムのマニピュレータの2つの軸部材又はアーム部材の間のジョイント用の駆動デバイス又は駆動ユニット、及び前記駆動ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムのマニピュレータ及びロボットアームに使用される駆動ユニットは、それぞれ、通常、複数の軸で構成されるロボットアームの、1つの軸部材又はアーム部材を、次のアーム部材に対して移動可能に、好ましくは回転可能に構成するように意図されている。これにより隣接する2つのアーム部材間の可動性が得られ、マニピュレータのアーム部材の数に応じて決まるロボットシステムの自由度が得られる。
【0003】
これに関連して、長手方向に延在する軸を中心とするアーム部材の回転を可能にする、産業用ロボットのための駆動ユニットが使用される。さらに別の駆動ユニットが、前記アーム部材の長手方向の軸を中心とする回転を可能にするように構成される。そのために、通常、適切な寸法の電動モータが使用され、該電動モータは、必要な場合には、対応する減速ギアと連動する。
【0004】
軽量ロボットでは、この種のロボットのマニピュレータのハウジングは、基本的に外骨格として構成されているので、駆動ユニットは、アーム部材の閉じたハウジングの中に取り付けられる。たとえば、特許文献1から、電気モータ及び該電気モータと連動するギアが共通のハウジング内に配置された駆動ユニットが知られており、出力フランジが前記ハウジング内の正面で回転可能に支持されている。前記駆動ユニットの前記ハウジングは、アーム部材の半径方向に閉じたハウジングに挿入され、前記出力フランジは隣接するアーム部材に連結され、該アーム部材は、前記駆動ユニットを含む前記アーム部材に対して回転可能に支持される。前記駆動ユニットの前記ハウジングは、通常、少なくとも部分的に該ハウジングの円周の回りで、前記アーム部材の前記ハウジングに連結されているが、前記出力フランジは、後続のアーム部材の一部要素と単に軸方向を向くように連結される。従って、トルクは、軸方向に作用する連結要素によって次のアーム部材に伝達される。
【0005】
しかしながら、軽量型のロボットシステムの外骨格タイプのハウジングの場合、それ自体が円周方向に閉じたハウジング構造のために、前記駆動ユニットだけでなく、すべての構成部品を前記アーム部材のハウジング内に軸方向に挿入する必要があり、該ハウジング内では、取り扱いが非常に限定されているため、不自由なやり方で組み立てざるを得ないという問題があった。この場合、前記組み立ては、隣のアーム部材の正面の後にある前記アーム部材の側からと、前記正面の反対側からの両方から行うことができる。しかしながら、この組み立てのために、前記ハウジング内に取り付け用開口部を設ける必要があり、該開口部は、カバーで塞ぐ必要があり、基本的には、前記ハウジングの剛性及びねじれ剛性の弱化という欠点になる。
【0006】
さらに、このような駆動ユニットの作製の前に、制限され、かつ、作業がしにくい組み立て空間に対して、前記駆動ユニットの前記ハウジング内部の複数の単体駆動部品の構成及び機能的相互作用と、前記駆動ユニットの前記アーム部材への連結との両方を考慮して、予め適合調整する必要がある。前記アーム部材は、相互に回転可能に支持される必要があり、そのため、大きな構造上の制限が結果として生じる。
【0007】
しかしながら、前述のようなマニピュレータを有する半径方向に閉じたハウジング構造は、必然的に、前述の組み立て以外に、メンテナンス及び修理も非常に困難になる。特に、前記ハウジング中での前記駆動ユニットの修理自体だけでなく、該駆動ユニットの分解に関して、及び、前記駆動ユニットで使用される、モータ用の電源線、及びさまざまなセンサ用の信号線の敷設及び取り外しのそれぞれ、及びこれらの信号線の配線が困難である。
【0008】
このようなハウジング構造への駆動ユニットの取り付け及び取り外しを可能な限り単純にするために、これらの駆動ユニットは、通常、分離不可能な完成品として事前に取り付けられる。
【0009】
しかしながら、これは、ひいては、前記駆動ユニットに使用されるモータ、ギア、センサ・システム、及び、他のメカトロニクス部品が故障した場合、前記駆動ユニット全体を取り外す必要があり、特に、事前取付けに比べて、前述と同じ空間的制約とそれに伴う労力とが重なるという、問題につながる。
【0010】
いずれにせよ、前述の従来技術から既知のような、一体的な単一の構造として構成され組立てられた駆動ユニットは、労力を増やすことのみでしか修理することができない。ギア、モータ、又はセンサ・システムの部品は、前記駆動ユニット全体を取り外した場合しか交換することができない。
【0011】
当然のことながら、このような駆動ユニットの組立及び保守のための作業は、時間を浪費し、そのためコスト集約的になることは明らかである。生産プロセスのように、ロボットが実行する作業を中断するだけでよい、迅速な修復は不可能である。
【0012】
さらに、軽量型ロボットのマニピュレータ又はロボットアームの場合、所望の自由度を得るためのアーム部材は、構成に応じて長さを変える必要があるという事実に、別の欠点が存在する。すなわち、多様な形状と寸法で形成される駆動ユニットは、個々のアーム部材間の回転連結ができるように作製する必要があり、修理用にストックしておく必要がある。これによってコストがさらに増加する。
【0013】
また、可能な限りコンパクトな構成を考慮して、単一のユニットとして形成される駆動ユニットは、通常、マニピュレータに関する構造上の条件や、要求に応じて異なるロボットシステムの性能要件に、ギアのような単一の構成要素を適合させるようには構成されないし、提供されない。
【0014】
したがって、従来技術から既知の駆動ユニットは、特に軽量タイプのロボットシステムに対しては、使用が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際特許出願第2007/099511 (A2)号公報
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願第10-2015-012-960.0号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記従来技術の問題に基づき、本願発明の目的は、ロボットシステム、特に軽量型のロボットシステム(これに限定するものではない)のマニピュレータの2つのアーム部材間のジョイント用の駆動ユニットであって、前述の従来技術で判明した欠点を解決する、特に、組み立て作業と保守作業とを簡単化し、かつ、ロボットシステムのマニピュレータに関連して存在する様々な空間的及び/又は運動学的な環境条件、さらに、所望の性能要件に対して、一定の可変性及び適応性を有する駆動ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、請求項1に記載のロボットシステムのマニピュレータの2つのアーム部材の間に配置されたジョイント用の駆動ユニット、並びに、請求項23に記載の前述の駆動ユニットの製造方法、及び取り付け方法によって解決される。
【0018】
したがって、本発明は、ロボットシステムのマニピュレータの2つのアーム部材の間に配置されたジョイント用の駆動ユニットに関し、該駆動ユニットは、一方のアーム部材を他方のアーム部材に対して回転駆動させ、前記駆動ユニットの回転軸に対して半径方向に前記複数のアーム部材と連動するために、少なくとも1つの連結要素によって力及びトルクを伝達するように第1アーム部材と連結された第1駆動モジュールと、少なくとも1つの連結要素によって力及びトルクを伝達するように第2アーム部材と連結された第2駆動モジュールとを有し、前記第2駆動モジュールは、第1駆動モジュールと同軸配置され、かつ、第1駆動モジュールに対して回転可能に支持されている。
【0019】
換言すれば、本発明によれば、前記連結要素は、前記アーム部材のハウジング、及び、前記アーム部材のハウジングに設けられた連結要素と半径方向に連動するように構成される。
【0020】
前記第1駆動モジュール及び第2駆動モジュールは、以下でさらに詳細に説明するが、これらのモジュール自体が、自己完結型の、それ故に交換可能な単一体を形成するモジュール部品として構成される。
【0021】
好ましくは、上記目的のために、前記第1駆動モジュールと前記第2駆動モジュールとは回転対称な部品として構成され、前記連結要素は同一の直径を有する。
【0022】
これによって、マニピュレータの隣接する2つのアーム部材の間のハウジング部品は、組み立て後に該マニピュレータの連続する滑らかなハウジング・カバーになるものを使用することができる。
【0023】
好ましくは、前記連結要素は、1つの共通の仮想のシェル表面に置かれた、放射状に周囲を囲む溝として構成され、同時に、前記第1駆動モジュールと前記第2駆動モジュールの別のハウジング部分は半径方向かつ内側方向に段差が設けられる。
【0024】
上述のようなリング状の溝は、前記アーム部材のハウジングの一部の内側に設けられた、好ましくは前記ハウジングと一体的に構成された、嵌め込み用ブロック又は同様な部品の嵌め込みに適している。前記嵌め込み用ブロックと前記リング状の溝との可能な結合形態に関しては、前記嵌め込み用ブロックが前記リング状の溝に接線方向に挿入されるものがあり、一例として、特許文献2を参照する。該特許文献2が開示する内容は、本明細書に参照によって組み込まれることとする。
【0025】
本発明によれば、第2駆動モジュールを、第1駆動モジュールに対して回転可能に支持するために、第1駆動モジュールと第2駆動モジュールとは部分的に互いに噛合するか又は係合するように設けられ、かつ、それぞれ少なくとも一つの回転ラジアル・ベアリング、例えば、ラジアル・ローラ・ベアリングが、前記第1駆動モジュールの前記ハウジングの半径方向外側部分と前記第2駆動モジュールの前記ハウジングの半径方向内側部分との間に配置される。好ましくは、前記回転可能な支持の安定性、及び、半径方向の力及びトルクの伝達をより良好にするために、前記半径方向外側部分と半径方向内側部分とは前記第2駆動モジュールの連結要素の半径方向内側に配置される方がよい。
【0026】
前記ラジアル・ベアリングは、前記第2駆動モジュールのハウジングの正面の、前記第1駆動モジュールと対向する端部に配置された第1の固定要素と、前記第1駆動モジュールのハウジングの正面の、前記第2駆動モジュールと対向する端部に配置された第2の固定要素とが、前記ラジアル・ベアリングのハウジングを囲むように固定することができ、これによって前記ラジアル・ベアリングの軸方向の位置が決定される。
【0027】
例えば、前記第2の固定要素は、前記第1駆動モジュールの前記ハウジングの前記端部に設けられた外側のネジに簡単にネジ込むことができるネジ溝付きリングとすることができる。前記第1の固定要素は、単に、前記第2駆動モジュールの前記ハウジングに取り外し可能に固定又はネジ止めされるフランジ又はカウンタ・リングとして形成することができる。
【0028】
モータが入る第3駆動モジュールを、前記第1駆動モジュールの前記ハウジングの、前記第2駆動モジュールと共通の軸の反対側に同軸固定することができる。該第3駆動モジュールと前記第1駆動モジュールとは、部分的に互いに噛合又は係合する。
【0029】
前記モータは、通常は内部ロータを有する電動モータであり、前記駆動ユニット内の中央で支持された駆動シャフトを駆動する又は作動させる。該駆動シャフトは、前記第1駆動モジュール内に延在し、前記第1駆動モジュール内に配置されたギアの入力要素に連結される。
【0030】
前記ギアは、ハーモニック・ギアすなわち波動ギアが好ましい。
【0031】
前記ギアの出力要素は、前記第2駆動モジュールと、回転可能に固定、すなわちトルク伝達可能なように、連結されている。前記駆動ユニットの設置時の長さを相応に短くしなければならない場合、前記ギアの前記出力要素は、前記第2駆動モジュールのハウジング部に直接連結することができる。この場合、前記第2駆動モジュールの前記ハウジング部は、直接連結した分だけ短い軸方向延長部を有することになる。設置時の長さをより長くすることが必要な場合、前記ギアの前記出力要素は、前記第2駆動モジュールの前記ハウジング内部に配置され、該第2駆動モジュールと回転可能に固定して連結された出力シャフトに連結することができる。
【0032】
さらに、第4駆動モジュールを、前記第3駆動モジュールの、前記第1駆動モジュールと共通の軸の反対側正面に同軸配置することができる。前記第4駆動モジュールは、前記駆動ユニット用のセンサ及び前記モータの制御部を含み、前記駆動シャフトは、前記第3駆動モジュールから前記第4駆動モジュールの前記第3駆動モジュールと対向する面まで延在している。
【0033】
別の実施形態によれば、前記駆動シャフト及び前記出力シャフトは、各々、中空シャフトとして形成され、互いに同軸を有するように配置され、その結果、前記第2駆動モジュールの前記ハウジングと回転可能に固定、すなわちトルク伝達可能に連結されるセンサ・シャフトが、前記駆動シャフトと前記出力シャフトの両方を半径方向に間隔をあけて貫通し、第4駆動モジュールまで延在する。前記センサ・シャフトは、前記駆動ユニットの出力トルク及び出力回転速度を検出するために、第4駆動モジュール内の出力トルク及び出力回転速度に対応するセンサ・システムとそれぞれ連動するように意図されている。
【0034】
マニピュレータ、例えば軽量ロボットの各ジョイントは、実際の構造及び意図する目的に応じて、異なる寸法及び異なる性能特性を有することができる。したがって、この点で、本発明は、第1駆動モジュールと第2駆動モジュールとの間、第1駆動モジュールと第3駆動モジュールとの間、及び第3駆動モジュールと第4駆動モジュールとの間の連結機構を、軸方向の設置長がマニピュレータの各々の既存の空間的設置要件、又は2つのアーム部材間のジョイント用の駆動ユニットに対する所望の性能要件に適合するように、多様なバリエーションのある前記駆動モジュールの、多様な構成及び/又は寸法の組み合わせができるように、構成し組立てることができる、という事実によって特徴づけられる。前記駆動ユニットの設置長全体は、例えば、単一の駆動モジュールの個々の設置長のすべての合計から得られる。所望のトルクの伝達又は所望の回転速度の提供のための性能に関する調整は、例えば、ギアの種類及びギアの構成それぞれの選択、及び、前記駆動モータの種類の選択から行うことができる。
【0035】
このような多様性を可能にするために、本発明によれば、第3駆動モジュールは、多様な構成の第4駆動モジュールと機能的に連動し、かつ連結できるように構成され、第1駆動モジュールは、多様な構成の第3駆動モジュールと機能的に連動し、かつ連結できるように構成され、特に、多様な構成の第2駆動モジュールと機能的に連動し、かつ回転可能に支持されて連結できるように構成され、また、第3駆動モジュールと第2駆動モジュールとは、多様な構成の第1駆動モジュールと機能的に連動し、かつ連結できるように構成されることができる。
【0036】
このように、本発明による駆動ユニットは、空間的仕様及び機能的な仕様の両面を考慮して、駆動モジュール単体を選択できるので、広い適合性を生みだすことができる。これにより、適合する駆動モジュールを容易に組み合わせるという本発明のモジュラ化思想によって、多様なマニピュレータを実現することができる。このようなモジュラ化思想が発明の目的であることが記載内容から自ずとわかるであろう。
【0037】
さらに、本発明による交換可能性を可能にする単一の駆動ユニットの建設的な構成は、実質的に単純化された組立ての他に、その後の簡単な修理及び保守を実現するこのような駆動ユニットの製造及び組立方法を提供することを可能にする。
【0038】
したがって、本発明はまた、ロボットシステムの2つのアーム部材の間に配置されたジョイントに用いる駆動ユニットを製造する方法に関し、該駆動ユニットは、一方の前記アーム部材を他方の前記アーム部材に対して回転駆動させることを目的とし、前記駆動ユニットは、互いに共通の軸を有するように配置された複数の駆動モジュールを有し、第1駆動モジュールは、以下のステップによって第2駆動モジュールに連結される。
・前記第1駆動モジュールのハウジングの一部分にラジアル・ベアリングを取り付け、又は固定するステップであって、固定要素を前記第2駆動モジュールに対向する前記第1駆動モジュールの前記ハウジングの正面端部に配置するステップ、
・前記第2駆動モジュールのハウジングの一部分が前記ラジアル・ベアリングと重なるように、前記第1駆動モジュールを前記第2駆動モジュールに部分的に挿入するステップ、
・前記第2駆動モジュールの前記ハウジングの前記一部分に前記ラジアル・ベアリングを取り付け、又は固定するステップであって、
固定要素を前記第2駆動モジュールの前記ハウジングの、前記第1駆動モジュールと対向する正面端部に配置し、該正面端部はしており、前記ラジアル・ベアリングを、前記第1駆動モジュールの前記ハウジングと前記第2駆動モジュールの前記ハウジングとの間に軸方向位置を決めて収納するステップ。
【0039】
前記第1駆動モジュールがギア・ユニットを構成するため、前記方法は、以下のステップを含む。
・ギアの出力要素を、該ギアの側面及び/又は前記第2駆動モジュールの側面で前記第2駆動モジュールと連結するステップ。
【0040】
したがって、前記ギアの出力要素は、例えば波動ギアのフレックスプラインであるが、前記第2駆動モジュールの前記ハウジングと直結される。前記第2駆動モジュールの外部正面からネジをネジ込むことによって前記ハウジングと前記出力要素とをトルク伝達可能に連結する。
【0041】
前記第2駆動モジュールが、その長い構造の故に出力シャフトを含む場合、前記方法は、さらに以下のステップを含む。
・前記出力シャフトを前記第2駆動ユニットの前記ハウジング、及び、前記ギアの前記出力要素に連結するステップ。
【0042】
前記出力シャフトは、前記ギアの内側から前記出力要素にネジ止めされ、前記出力要素の反対側で、前記第2駆動モジュールの前記ハウジングとネジ止めされる。こうして、前記ギアの前記出力要素と前記第2駆動モジュールの前記ハウジングとの間でトルク伝達可能な連結が実現される。
【0043】
さらに、前記方法は以下のステップを含む。
・前記第1駆動モジュールの前記ハウジングの、前記第2駆動モジュールと反対側の面に、駆動シャフトを備えたモータを有する第3駆動モジュールを取り付け又は固定するステップであって、該ステップにより前記駆動シャフトを前記ギアの入力要素に連結するステップ。
【0044】
理想的には、上記目的のため、前記第3駆動モジュールの前記ハウジングの前記正面は、前記第1駆動モジュールの前記ハウジング内に部分的に挿入されてからネジ止めされる段付きフランジ・リングを有する。このために、前記駆動シャフトは、必要な耐用期間を満足するためのトレランス・リングを使用することによって、入力要素、例えば波動ギアの波動発生部の内側リング内に圧入することができる。
【0045】
システムが、また、制御システム及びセンサ・システムを用いて実現される場合、前記方法は、次のステップを含む。
・前記第3駆動モジュールの、前記第1駆動モジュールと共通の軸の反対側に、第4駆動モジュールを該共通の軸に取り付け又は固定するステップであって、該ステップによってモータとの連結を実現するステップ。
【0046】
上記目的のために、前記モータは、電源及びモータ制御部とのプラグ接続部を有することができ、該プラグ接続部は、組み立て時に、自然と、前記第4駆動モジュールの相補的なプラグ接続部と確実に連結された状態になるように配向される。
【0047】
一実施形態において、前記駆動シャフト及び前記出力シャフトがそれぞれ中空シャフトとして形成され、前記第4駆動モジュールが開口部を有し、かつ、前記第2駆動モジュールがセンサ・シャフトと一緒に回転可能なように該センサ・シャフトに連結される場合、本願発明の方法は、最終的に駆動ユニットを完成させる。該駆動ユニットでは、前記センサ・シャフトが、前記第3駆動モジュールの前記駆動シャフトと前記第2駆動モジュールの前記出力シャフトとを貫通し、そして、前記第4駆動モジュールの開口部を半径方向に所定の距離間隔をおいて貫通する。
【0048】
前記駆動ユニットのモジュール性は、上述の適応性の他に、モータやギア等の単体の構成要素に対して異なるサプライヤを使用することができるという利点によって特徴づけられる。
【0049】
さらに、本発明は、複数のアーム部材を有するマニピュレータを含むロボッであって、該マニピュレータの複数のアーム部材の間に配置された少なくとも1つのジョイントの中に、前述の実施形態に基づく少なくとも1つの駆動ユニットを有するロボットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
添付の図面と関連付けて説明する実施形態の記載から、更に別の利点及び特徴が明らかになるであろう。
【
図1a】本発明による第1の実施形態におけるモジュール式駆動ユニットの長軸方向の断面図である。
【
図3】本発明による第1の実施形態の駆動ユニットの第1駆動モジュールを示す図である。
【
図4】本発明による第1の実施形態の前記駆動ユニットの第2駆動モジュールを示す図である。
【
図5】本発明による第2の実施形態におけるモジュール式駆動ユニットの長軸方向の断面図である。
【
図6】本発明による第2の実施形態の駆動ユニットの第2駆動モジュールを示す図である。
【
図7】本発明による第2の実施形態における駆動ユニットの第3駆動モジュール及び第4駆動モジュールを示す図である。
【
図8】本発明による第3の実施形態のモジュール式駆動ユニットの長軸方向の断面図である。
【
図9】本発明による第4の実施形態におけるモジュール式駆動ユニットの長軸方向の断面図である。
【
図10】本発明による第5の実施形態におけるモジュール式駆動ユニットの長軸方向の断面図である。
【
図11】2つの隣接するアーム部材のハウジング構造内に駆動ユニットが組み込まれた実施例の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1aは、本発明による駆動ユニットの第1の実施形態を、回転軸に沿った、すなわち駆動ユニットの長手方向の断面図で示す。
図1bは、
図1aのAーA線に沿った断面図を示す。
【0052】
図から分かるように、駆動ユニットは、実際には、回転対称に構成された部品や部位によって形成されている。
【0053】
本発明によれば、複数のモジュールが軸方向に機能的に協調動作し、相互に螺合又は係合する、モジュール式の設計及び構成が開示される。このようなモジュールは、それぞれ個別に交換可能であり、本発明による、相補的な構造や構成を持つ連結技術によって、相互連結することができる。
【0054】
図1aに示す駆動ユニットは、機能的に異なる4つの駆動モジュールで構成される。
【0055】
第1駆動モジュールM1はギアの収納が目的であり、特に
図3から分かるように、回転対称のハウジング1を有する。ハウジング1は、アルミニウム鋳造部品として、又は機械加工部品として作製することができる。
【0056】
ハウジング1は、下方に向かって、かつ第2駆動モジュールM2に向かって先細りになるテーパ形状をしている。この形状は、部分的に円錐形をした部分によって特徴付けられる。
【0057】
第1駆動モジュールM1は、
図11から分かるように、ロボットシステム、例えば軽量設計のロボットシステムのマニピュレータ及びロボットアームの第1アーム部材A1のハウジング又はハウジング半体2のそれぞれへ、前記駆動ユニットを連結することを目的としている。
【0058】
上記目的のために、第1駆動モジュールM1のハウジング1は、その最大円周上に、回転対称な該ハウジング1と一体的に形成され、半径方向に周囲を囲むリング溝3の形態の連結要素を有する。リング溝3は、第1アーム部材A1のハーフ・シェル型ハウジング半体2を、ハウジング半体2の内側に設けられた連結要素4、例えばハウジング半体2と一体的に形成された嵌め込み用ブロックによって固定するために用いることを意図している。前記嵌め込み用ブロックは、リング溝3に嵌め込まれ、前記駆動ユニットのハウジング半体2への取り付けは、
図11から分かるように、ハウジング半体2の外側からネジ5を用いてネジ止めすることによって行われる。
【0059】
これに関連して、特許文献2の明細書を参照されたい。本明細書では、前記駆動ユニットの一方の側のハウジング半体2への取り付けと、各々の前記ハウジング半体2の相手のハウジング半体2への取り付けと、に関して、特許文献2の内容を明示して参照する。
【0060】
第1アーム部材A1のハウジング半体2の嵌め込み用ブロック4は、第1駆動モジュールM1のハウジング1のリング溝3内に、これらのハウジング半体2とハウジング1とをネジ5によって回転可能に固定して嵌め込むことにより、第1アーム部材A1が前記駆動ユニットの第1駆動モジュールM1と連携して動作するように、両方のハウジング要素間で力及びトルク伝達可能な連結が形成される。
【0061】
第2駆動モジュールM2が第1駆動モジュールM1と同じ回転軸を有するように第1駆動モジュールM1に取り付けられ、第1駆動モジュールM1に対する出力として働く。
【0062】
第2駆動モジュールM2は、また、回転対称かつ円錐状に先細りになったハウジング6を有し、ハウジング6の最大直径の位置に半径方向に周囲を囲むリング溝7をさらに有する。該リング溝7は、
図11に示すように、一体的に形成された連結要素として、第2アーム部材A2のハウジング半体8と連結することを目的としている。第2駆動モジュールM2のハウジング半体8との固定は、上述の、第1駆動モジュールM1と同様な方法で実現される。
【0063】
図から分かるように、リング溝3、7の両方は、直径が同じであり、共通の仮想円筒シェル面上に配置される。第1駆動モジュールM1と第1アーム部材A1との間、及び第2駆動モジュールM2と第2アーム部材A2との間の力及びトルク伝達可能な連結は、半径方向を向いた連結要素3及び7によってそれぞれ別々に実現される。
【0064】
第2アーム部材A2は、必要な回転連結を可能にするように、第1アーム部材A1に対して回転可能に支持される。
【0065】
そのために、前記駆動ユニットの前記出力を提供する第2駆動モジュールM2が、第1駆動モジュールM1に対して回転可能に支持される。
【0066】
本発明によれば、第1駆動モジュールM1のハウジング1の半径方向外側にある部位9(第2駆動モジュールM2に面する軸方向端部の領域に配置することが好ましい)と、第2駆動モジュールM2のハウジング6の半径方向内側にある部位10(好ましくは第1駆動モジュールM1に面する軸方向端部の領域に配置することが好ましい)との間に、回転ベアリング又はラジアル・ベアリング11が配置され、ベアリング11は、ハウジング1及びハウジング6を回転連結するように保持する。そのためには、クロス・ローラ・ベアリングを使用することが好ましい。この理由は、そのような実施形態は、横方向剛性、軸方向剛性、重量及び摩擦に対して、並びに、取り付けの簡単化に対して特に有利であることが判明しているからである。しかしながら、予め牽引された二条ローラ・ベアリング又はアンギュラ・ローラ・ベアリングを使用することもできる。
【0067】
上記のために、本発明によれば、適切に構成されたラジアル・ベアリング11は、2つの固定要素によって軸上の位置に固定される。
【0068】
ネジ溝付きリング12の形をした第1の固定要素は、第2駆動モジュールM2に対向する第1駆動モジュールM1のハウジング1の正面端部に設けられたネジにネジ込まれる。これにより、ラジアル・ベアリング11は、ハウジング1の部位13とネジ溝付きリング12との間に挟持される。
【0069】
フランジ又はカウンタ・リング14の形態をした第2の固定要素が、第2駆動モジュールM2のハウジング6の、第1駆動モジュールM1に対向する正面の環状端部に固定される。例えば、
図2の分解図に示すように、ネジ15がリング溝7のハウジング部を通り、フランジ・リング14を前記ハウジング部に狭持する。フランジ・リング14は、第1駆動モジュールM1のハウジング1と半径方向に一定の距離離れている。
【0070】
フランジ・リング14は、ラジアル・ベアリング11をネジ溝付きリング12に固定する、ネジ溝付きリング12に係合する部位16を有する。これにより、両方の駆動モジュールM1及びM2の間の回転連結が形成される。この連結は、汎用的連結の一種として設計、構想されており、多様な構成や設計の第2駆動モジュールM2のハウジング6を、第1駆動モジュールM1の同じハウジング1に回転可能に配置することができる。これについては、以下で、さらに別の実施形態を用いて説明する。
【0071】
本発明によれば、第2アーム部材A2への最適かつ実現可能な力とトルクの伝達は、リング溝3の内側に直接ラジアル・ベアリング11の軸方向位置を決めることによって確実にできる。
【0072】
第2駆動モジュールM2と同軸上反対側に、第3駆動モジュールM3が設けられており、該第3駆動モジュールM2は、例えばネジ17によって第1駆動モジュールM1にネジ止めされている。
【0073】
第3駆動モジュールM3のハウジング18は、回転対称に形成され、かつ、駆動用の電動モータ19の収容を目的としている。電動モータ19の構成は、本明細書では詳細には説明しない。
【0074】
ハウジング18はフランジ部20を有する。該フランジ部20は、第1駆動モジュールM1のハウジング1によって半径方向に周囲を囲んで受支されるように設計され、第1駆動モジュールM1と第3駆動モジュールM3との間にも、又、一種の汎用的連結を形成する。
【0075】
半径方向内側に配置されたフランジ部20は、電動モータ19によって駆動される内側支持される駆動シャフト22を支持する、第1スラスト・ベアリング21を有する。
【0076】
最良の実現可能な安定性を得るために、第1スラスト・ベアリング21は、第1駆動モジュールM1のリング溝3の高さの位置に設けられる。
【0077】
駆動シャフト22は、さらに、第3駆動モジュールM3を頂部方向に覆うハウジング・カバー24の中に配置された第2スラスト・ベアリング23によって回転可能に支持されている。
【0078】
図1に示すように、駆動シャフト22は、半径方向に段差があり、中空シャフトとして形成され、一部が第1駆動モジュールM1の内部まで延在している。
【0079】
既述のように、第1駆動モジュールM1は、駆動シャフト22の回転を減速するギアを収納するように設計されている。
【0080】
図示の実施形態は、ハーモニック・ギアすなわち波動ギアであり、公知のように、高いギア比と剛性を呈し、ロボット工学の分野で使用されることが好ましい。しかし、基本的には、所望のギア比を得ることのできる他の型のギアも、又、考えることができる。
【0081】
駆動シャフト22は前記波動ギアの入力要素、いわゆる波動発生器の内部リング25と一緒に回転可能なように該内部リング25に連結される。内部リング25は、楕円形状をしており、薄肉のローラ・ベアリング26を支持する。半径方向外側に、内歯の噛み合せ部を有するいわゆる環状スプライン27を有し、該環状スプライン27は、第1駆動モジュールM1のハウジング1の内側に半径方向に当接する。いわゆるフレクスプライン28という部分が、ローラ・ベアリングと環状スプライン27との間に設けられ、このフレクスプライン28の部分は、外歯の歯合部を有し、環状スプライン27と係合し、前記波動ギアの出力要素を形成する。上記のような公知の波動ギアの機能については、本明細書ではこれ以上論じない。
【0082】
カップ状の形のフレクスプライン28は、ラジアル・ベアリング11の高さまで軸方向下方に延在する。
【0083】
図1に示す実施形態において、第2駆動モジュールM2は、前記駆動ユニットの軸方向に少し長い延長部を有する。したがって、フレクスプライン28は、前記出力を提供するために、第2駆動モジュールM2のハウジング6を貫通する出力シャフト30
と一緒に回転可能
なように、ネジ29によって該出力シャフト30に連結される。
図4に示すように、組み立てのために、ネジ29は、第1駆動モジュールM1の側からネジ込まれる。
【0084】
出力シャフト30は、ネジ29が入る相手側のフランジ31を有する。ネジ29は、次に、スリーブ状の合口リング32のネジ孔に入る。合口リング32とフランジ31とは、カップ状のフレクスプライン28のフランジ部33を囲み、全ての構成要素を、回転可能に固定、すなわち、トルク伝達可能なように、まとめてネジ止めする。
【0085】
こうして、波動ギアの出力は、第2駆動モジュールM2の出力シャフト30にフレクスプライン28から伝達される。
【0086】
中空シャフトとして形成された出力シャフト30は、フランジ31の軸方向反対側に、第2駆動モジュールM2のハウジング6の正面部に回転可能に固定するようにネジ留めされるもう一つのフランジ34を有する。
【0087】
ハウジング6の内部では、出力シャフト30が密閉用スリーブ36に囲まれている。
【0088】
このようにして、前記モータからの駆動トルクの伝達は、駆動シャフト22から、ギア比に対応して減速を行う波動ギア、フレクスプライン28、そして出力シャフト30を介して、第2駆動モジュールM2のハウジング6に伝達される。これにより、該第2駆動モジュールM2のハウジング6は第1駆動モジュールM1に対して回転する。ここで、前記トルクは、対応する嵌め込み用ブロック4と連動するリング溝7を介して、第2アーム部材A2のハウジング8に伝達され、それによって、第2アーム部材A2が第1アーム部材A1に対して回転する。該第1アーム部材A1は、第1駆動モジュールM1に回転可能に固定される。
【0089】
第4駆動モジュールM4は第3駆動モジュールM3のハウジング・カバー24の上に配置されており、制御コンポーネント及びセンサ・システムを有する。該センサ・システムは、前記モータから生じる入力回転速度と入力トルクの検出、及び、第2駆動モジュールM2から生じる出力回転速度と出力トルクの検出を目的としている。
【0090】
前述の目的のために、駆動シャフト22は、ハウジング18の外部に延在し、カバー24を通って、第4駆動モジュールM4の回路基板37の側面まで延在する。該回路基板37はカバー24に対向し、そこで対応するセンサと相互作用する。
【0091】
図4から分かるように、第2駆動モジュールM2はセンサ・シャフト38(
図10参照)を有する。該センサ・シャフト38は、フランジ34と連結されることによって、トルク伝達可能なように第2駆動モジュールM2のハウジング6と連結されている。
【0092】
図1に示すように、センサ・シャフト38は、上方に延在し、出力シャフト30、合口リング32、駆動シャフト22、及び回路基板37を貫通し、該回路基板37の側面に達するまでは半径方向に一定の長さの間隔を置いている。前記回路基板37の側面は、対応するセンサと連動するために、第3駆動モジュールM3の反対側にある。
【0093】
4つの駆動モジュールM1~M4を有する、本発明による駆動ユニットのモジュールの構成及び設計は、同じ様に設計、構想されたハウジング構造と、同じ様に設計、構想された前記ハウジング構造間の連結機構と、によって特徴付けられ、マニピュレータやロボットシステム、特に、軽量アセンブリ型のロボットシステムのアーム部材の内部に関して、又は、前記アーム部材の多様な構成及び設計に関しての空間的、機能的及び/又は性能関連の条件及びニーズに応じて、前記駆動ユニットを最適化することを可能にする。換言すると、異なる駆動モジュールM1~M4は、本発明による駆動ユニットが以下の実施形態の記載で説明する最適化ができるように、各々、置き換え可能にすることができる。
【0094】
上述の結果として、
図5~
図7は、本発明による駆動ユニットの第2の実施形態を示す。本説明において、同一の要素は同一の参照番号と対応付けられる。
【0095】
一方において、上記の図に示す実施形態は、第3駆動モジュールM3がより大きな軸方向延長部を有し、それによって、より大きく、より強力な電動モータ39を使用することができるという点で、前の実施例と区別される。他方において、第2駆動モジュールM2は、軸方向長さがより短くなっている。
【0096】
第2駆動モジュールM2がハウジング・カバー40を有し、ハウジング・カバー40は、ラジアル・ベアリング11に対してフランジ・リング14を固定する時にネジ15によってハウジング・リング41に直接連結される。ハウジング・リング41は、第2アーム部材A2との連結用のリング溝7を有する。ハウジング・リング41は、第1の実施形態に関連して既に述べたように、第1駆動モジュールM1のハウジング1に対して回転可能に支持されている。
【0097】
ハウジング・カバー40は、第1駆動モジュールM1に向かって内側に延在する円筒中空部42を有し、かつ、第2駆動モジュールM2の前記正面からネジ43によって合口リング32に回転可能に固定され連結されている。この目的は、前記波動ギアのフレクスプライン28のフランジ部33を囲むためである。円筒中空部42は、さらに、シーリング・リング44によって囲まれている。
【0098】
前記駆動ユニットの第2の実施形態は、上述のように、より強力な電気モータでありながら、同時に、組み立て長が短いという特徴を有する。
【0099】
組み立て長をさらに短くするために、
図8に示す第3の実施形態では、第2駆動モジュールM2は第2の実施形態と同様に構成され、かつ、第3駆動モジュールM3が第1の実施形態と同様に構成される。
【0100】
図9に示す第4の実施形態では、第2駆動モジュールM2は、第2の実施形態と同様に構成され、かつ、第3駆動モジュールM3は第1の実施形態と同様に構成されるが、前記波動ギアを有する第1駆動モジュールM1は、軸方向の長さがより短くなっている。
【0101】
従って、フレクスプライン45、及び、ハウジング・カバー40の円筒中空部42と一緒に回転可能なように該円筒中空部42に連結するための合口用リング46は、軸方向により短縮されている。
【0102】
本発明による駆動ユニットの第5の実施形態を
図10に示す。本実施形態の場合、前記波動ギアを有する第1駆動モジュールM1は第4の実施形態と同様に構成されるが、第3駆動モジュールM3及び第2駆動モジュールM2は第1の実施形態と同様に実現される。この
図10では、センサ・シャフト38はフランジ47を有し、該フランジ47はネジ48によって出力シャフト30のフランジ34に連結されていることが分かる。このようにして、センサ・シャフト38は、駆動モジュールM1~M4のすべてが取り付けられた後に、最後に取り付けられる。
【0103】
図2に示すように、連結ロッド49は、又、スペーサとしても働くが、第4駆動モジュールM4を第3駆動モジュールM3に、例えば、プレス・フィットによって取り付ける際に、ハウジング・カバー24内の対応する開口部50に挿入される。そのときに、又、モータを連結するためにモータ側プラグ51が回路基板側ソケット52と係合する。