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特許7284991光源装置及びそれを利用した光源モジュールと流体処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】光源装置及びそれを利用した光源モジュールと流体処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20230525BHJP
   H01J 61/54 20060101ALI20230525BHJP
   H01J 61/52 20060101ALI20230525BHJP
   H01J 61/42 20060101ALI20230525BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20230525BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20230525BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H01J65/00 B
H01J61/54 N
H01J61/52 N
H01J61/42 Z
A61L2/10
C02F1/32
A61L9/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019098612
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020080297
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2018212244
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515206001
【氏名又は名称】株式会社紫光技研
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】篠田 傳
(72)【発明者】
【氏名】平川 仁
(72)【発明者】
【氏名】粟本 健司
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 武文
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157519(JP,A)
【文献】特開平10-040871(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094483(WO,A1)
【文献】特開2016-072087(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125708(WO,A1)
【文献】特開2017-091916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/00
H01J 61/54
H01J 61/52
H01J 61/42
A61L 2/10
C02F 1/32
A61L 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電ガスを封入したガラス細管から成るガス放電発光管と、上面に複数本の該ガス放電発光管が平行に配列されて支持されると共に、下面に各ガス放電発光管を共通に横切る電極間隙を挟んで互いに離間して両方向に広がる電極対を備えた電極基板とからなる発光管アレイ型光源装置において、前記電極基板は、各ガス放電発光管を部分的に露出させる貫通孔を有することを特徴とする発光管アレイ型の光源装置。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記電極間隙と平行に設けられた複数のスリットであることを特徴とする請求項1記載の発光管アレイ型の光源装置。
【請求項3】
前記電極対は、スリット方向の幅がスリットの長さより長く、隣接スリット間において各スリットの両端縁部で電気的に連続している電極パターンを有することを特徴とする請求項2記載の発光管アレイ型の光源装置。
【請求項4】
前記電極パターンは、前記隣接スリット間における幅がスリットの幅よりも広いことを特徴とする請求項3記載の発光管アレイ型の光源装置。
【請求項5】
前記電極基板の電極対間の電極間隙に、当該電極間隙よりも幅の狭いスリットを設けたことを特徴とする請求項2-4のいずれか1項に記載の発光管アレイ型の光源装置。
【請求項6】
平行に配列された前記複数本のガス放電発光管の隣接発光管の間に間隙が設けられ、当該間隙部と前記電極基板のスリットとの交差部に通気路が構成されることを特徴とする請求項2-5の何れか1項に記載に発光管アレイ型の光源装置。
【請求項7】
内部に放電ガスを封入したガラス細管からなる複数本のガス放電発光管を備えたガス放電発光管アレイと、前記ガス放電発光管アレイを上面に支持すると共に、下面に各ガス放電発光管を共通に横切る間隙を挟んで互いに離間して両方向に広がる電極対を備えた電極基板とを備えてなり、前記電極基板には前記ガス放電発光管を部分的に露出する貫通孔が設けられ、かつ前記電極対の近接端部に対向する電極基板の上面にそれぞれ下面の電極対に接続されたトリガ電極対を設けたことを特徴とする発光管アレイ型の光源装置。
【請求項8】
前記電極対の両端部に対向する前記電極基板の上面部に下面の電極対のそれぞれに接続された補助電極対を設けたことを特徴とする請求項1又は7記載の発光管アレイ型の光源装置。
【請求項9】
放電間隙を構成する間隙を挟んで両側に広がる1対の電極と、当該対となる電極の前記間隙間を橋絡する方向で平行に配置された複数のガス放電発光管とからなる光源装置において、前記対となる各電極は、前記ガス放電発光管の底面を部分的に露出させる欠落部を有すると共に、それぞれ前記欠落部の周囲で電気的に連続したパターンを有することを特徴とする紫外線発光用の光源装置。
【請求項10】
前記ガス放電発光管の底部内面にガス放電光で励起されて紫外域の光を放射する紫外発光蛍光体層が設けられ、紫外域の光を発光することを特徴とする請求項1-9の何れか1項に記載の光源装置。
【請求項11】
内部に放電ガスを封入したガラス細管から成る複数本のガス放電発光管と、前記ガス放電発光管を共通に横切る間隙を挟んで互いに離間する電極対を備えると共に、前記ガス放電発光管の底部を部分的に露出する貫通孔を設けた電極基板とから成る発光管アレイ型光源装置と、前記電極対間に交番駆動電圧を印加する駆動回路、及び前記発光管アレイ型光源装置を前記貫通孔を通して冷却するファンとを一つの筐体内に収容して成ることを特徴とする光源モジュール。
【請求項12】
放電間隙を構成する間隙を挟んで両側に広がる1対の電極を備えた絶縁支持体と、当該対となる電極の前記間隙間を橋絡する方向で平行に配置された複数のガス放電発光管とからなる光源装置において、
前記絶縁支持体は、各ガス放電発光管の下面を部分的に露出するスリットを有することを特徴とする紫外線発光用の光源装置。
【請求項13】
前記絶縁支持体のスリットが、前記電極対間の電極間隙部において各ガス放電発光管の下面を露出する構成を有することを特徴とする請求項12記載の紫外線発光用の光源装置。
【請求項14】
処理すべき流体の流通路となる紫外線透過性のパイプと、該パイプの周囲に巻き付けて実装されたフレキシブルな発光管アレイ型光源装置とから成り、
前記フレキシブルな発光管アレイ型光源装置は、前記パイプの長手方向に延びるガラス細管から成る複数のガス放電発光管と、内面側に該複数のガス放電発光管を前記パイプの外周に沿って所定の間隔で平行に配列したフレキシブルな電極基板とから成り、
前記電極基板は、各ガス放電発光管を共通に横切る方向の放電間隙を構成する間隙を挟んで両側に広がる電極対を備えると共に、各ガス放電発光管を前記パイプの外方に向けて部分的に露出する貫通孔を有し、
前記パイプの中を流通する流体に対し、当該パイプを取り巻く複数のガス放電発光管から紫外線照射を行うようにしたことを特徴とする発光管アレイ型光源装置を用いた流体処理装置。
【請求項15】
前記フレキシブルな発光管アレイ型光源装置は、各ガス放電発光管が前記電極基板の内側において前記パイプの外周面との間に通気路となるスペースを空けて巻き付け実装されていることを特徴とする請求項14に記載の発光管アレイ型光源装置を用いた流体処理装置。
【請求項16】
処理すべき流体の通路となるボックスと、該ボックスの流通路を横切る発光面を持って配置された発光管アレイ型の光源装置とから成り、
前記光源装置は、内部に放電ガスを封入したガラス細管から成る複数のガス放電発光管と、上面に前記複数のガス放電発光管を所定の間隔で平行に配列した電極基板とから成り、
前記電極基板は、各ガス放電発光管を共通に横切る方向の放電間隙を構成する電極間隙を挟んで両側に広がる電極対を備えると共に、各ガス放電発光管を横切る方向の複数の平行な貫通スリットを有し、
前記貫通スリットと各ガス放電発光管の隣接間隙との交差部に定まる流通路を通して流れる流体に対し、前記複数のガス放電発光管からの紫外線照射を行うようにしたことを特徴とする発光管アレイ型光源装置を用いた流体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管アレイ型光源装置及びそれを利用した光源モジュールに関し、特にガラス細管からなる複数本のガス放電発光管を平行に配列して構成した深紫外発光用の光源デバイスに関するものである。また本発明は、当該深紫外発光用光源デバイスを応用した殺菌又は消臭用の新しい流体処理装置を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス細管を主体とし内部に放電ガスを封入した複数本のガス放電発光管と、該複数本の発光管を平行に配列して支持する電極基板とからなるガス放電を利用した発光管アレイ型の光源装置が下記の特許文献1、2及び3等で提案されている。
【0003】
図1の(a)は、単位発光素子となるガス放電発光管の横断面図である。扁平楕円断面のガラス細管10が、内部に紫外線を発光するネオン(Ne)とキセノン(Xe)との混合ガスやHeとXe、或いはArとXeなどの希ガスを含んだ放電ガスを封入されてガス放電発光管11を構成している。発光管11の底部内面には放電による紫外線で励起されて紫外線を発光する紫外蛍光体層12が設けられている。発光管11の底部外面に対向して電極基板20が設けられている。
【0004】
電極基板20は、ガラスエポキシ等の絶縁支持体21をベースとしてその下面に電極対22X、22Yを備え、上面に発光管11が粘着層/接着層23を介して支持されている。電極対22X、22Yは、発光管11の長手方向の略中央部に放電間隙を構成する電極間隙24を挟んで両サイドに広がり、各発光管11の長手方向を共通にカバーするパターンを有する(図1(b))。
【0005】
図1の(b)は、複数のガス放電発光管11を含んだ発光管アレイ型光源装置の構成を模式的に示す斜視図である。電極基板20を構成する絶縁支持体21の上には複数本の発光管11が平行に配列されている。電極対22X、22Yは、複数本の発光管11を共通に横切る電極間隙24を挟んで各発光管11の底面に共通に対向するパターンを有している。
【0006】
図1の(c)は、発光管アレイ型光源装置の駆動原理を説明するための回路構成図である。電極対22Xと22Yに対し、インバータ電源25からピーク電圧1000~2000Vで周波数30~40KHzの交番電圧が印加される。交番駆動電圧として印加される正弦波の上昇過程において電極対22X、22Y間の電極間隙24に対応した発光管11内の放電間隙で初期放電が発生し、引き続く正弦波電圧の上昇に伴って発光管の長手方向に放電が拡張する。この駆動原理と具体的な駆動回路は特許文献1及び3に詳細に述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2016/125708号再公表特許公報
【文献】特開2017-27912号公開特許公報
【文献】WO2017/094483号再公表特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなガス放電を利用した発光管アレイ型の光源装置は、他の電子デバイスと同様、点灯動作に伴って供給電力の一部が熱となり、装置自体がヒートアップすることを避けられない。現状ではガス放電と紫外蛍光体を通しての紫外線変換効率は数%程度なので発光輝度や発光パワーを上げるため供給電力を増大すると、それに比例して装置の発熱量が増大する。装置の過度の加熱は発光効率の低下につながり輝度の均一性を維持できなくなる。
【0009】
従って、本発明は、発光管アレイ型光源装置の発熱問題の解決を主目的とするものである。また、本発明は、装置の過度の加熱を抑制すると共に、発光面全体の輝度が均一で安定した動作を長期間維持できる発光管アレイ型光源装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡単に述べると、本発明は、発光管アレイの背面側に広がる電極対にスリットのような部分的な欠落部を設けても、放電効果に問題はないとの知見に基づいて、発光管の底面を部分的に露出させる貫通孔を電極基板に設けることを骨子とするものである。
【0011】
具体的に述べると、本発明による発光管アレイ型光源装置は、放電ガスを封入したガラス細管からなる複数のガス放電発光管と、上面に当該複数のガス放電発光管を複数本平行に配列して支持すると共に、各ガス放電発光管の長手方向を共通に横切る電極間隙を挟んで互いに離間する方向に広がる電極対を備えた電極基板とからなり、前記電極基板が各ガス放電発光管を部分的に露出させる貫通孔を有することを特徴とするものである。
【0012】
電極基板に設ける貫通孔は、放電間隙を構成する電極対間の間隙と平行なスリット形状が好ましい。しかし、放電を妨げない貫通孔であれば円形や四角形などの小さな空隙を複数個分散配置することも可能である。貫通孔、つまり通気孔としてのスリットは電極対間を含めて発光管の長手方向を横切る形で複数設けることができる。
【0013】
但し、電極基板のスリット部分においては、電極と発光管面との間の無用な気中放電を防ぐ観点から、電極パターンのエッジがスリットのエッジに隠れて、発光管のガラス管面に向き合わないよう電極パターンをアレンジすることが重要である。
【0014】
また、本発明においては、複数本のガス放電発光管からなる発光管アレイを支持する電極基板の上面に各発光管の長手方向の両端部と対向して、それぞれ下面の電極対に接続された補助電極対を設けることができる。更に、電極基板の放電間隙を構成する電極対の近接端部に対向した上面に初期放電を容易にするトリガ電極対を付設してもよい。これら補助電極対及びトリガ電極対の付設により、発光面の全体に亘って均一な輝度特性を得て、動作の確実性と信頼性を一層向上することができる。
【0015】
なお、本発明の発光管アレイ型光源装置は、面光源形の紫外光源として用いることができるが、この場合、『面光源』は発光面がフラットであるもののみならずフラットな発光面を円筒状等の任意に湾曲させた曲面を含むものであり、また『紫外光源』とは、紫外蛍光体の発するUV-B、UV-C帯域の紫外光やガス放電自体の発する真空紫外光など深紫外全域の発光源を意味するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、発光管アレイ型光源装置の各ガス放電発光管に対して電極基板の貫通孔を通して十分な放熱効果が得られる。この結果、深紫外域の光源装置として、ヒートアップによる輝度の低下を防いで安定した動作性能を長期間維持することが可能となり、水銀レスを特徴とする発光管アレイ型紫外光源装置の医療分野や、殺菌・滅菌・消臭分野、産業分野への利用を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)、 (b)及び(c) はそれぞれ、単位発光素子としてのガス放電発光管の断面図と、発光管アレイ型光源装置の概略斜視図、及び発光管アレイ型光源装置の駆動回路の概略図である。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ、本発明による実施形態1の電極基板の構成を示す平面図と要部断面図である。
図3】(a)及び(b)はそれぞれ、本発明による実施形態1の発光管アレイ型光源装置の概略平面図と要部断面図である。
図4】(a)及び(b)はそれぞれ、図3に示す発光管アレイ型光源装置を組み込んだ光源モジュールを模式的に示す斜視図と構成説明図である。
図5】本発明による実施形態2の発光管アレイ型光源装置を示す断面図である。
図6】(a)、(b)は、本発明による実施形態3としてのフレキシブルな発光管アレイ型光源装置の構成を示す概略平面図と横断面図である。
図7】(a)、(b)は、本発明による発光管アレイ型光源装置を使用した応用例1としての流水殺菌装置の構成を示す横断面図と縦断面図である。
図8】本発明による発光管アレイ型光源装置を使用した応用例2としての空気消臭装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示す実施形態を用いてこの発明を詳述する。この実施形態によって、この発明が限定されるものではない。
[実施形態1]
【0019】
図2の(a)及び(b)はそれぞれ、本発明による実施形態1の電極基板の構成を示す平面図と、そのB-B矢視断面図である。電極基板30は、絶縁支持体31とその下面に形成された電極対32X、32Yからなる。電極基板30には、本発明の特徴として絶縁支持体31と電極対32X、32Yを貫通する複数のスリット(貫通孔)33が平行に設けられている。
【0020】
絶縁支持体31は、厚さ1mm以下、好ましくは600~800μm程度のガラスエポキシ基板からなる。電極対32X、32Yは、ガラスエポキシ基板の下面に鍍金や蒸着等で形成された銅やアルミの金属導体層をパターニングして形成されている。なお、電極対32X、32Yの表面には図示しない絶縁膜がコートされる。
【0021】
本発明の特徴として設けられる電極基板30のスリット33は、電極対32X、32Yの、図1の電極間隙24に対応する電極間隙34と平行に複数本設けられ、このスリット33により電極32X、32Yのパターンは複数に分断された形となる。
【0022】
しかしながら、スリット33の長手方向の長さaよりも電極対32X、32Yの長辺の長さbを長く形成してあり、スリット33で分断された電極対はそれぞれスリット33の両端縁部で電気的に連続してラダーパターンとなっている。
【0023】
勿論、電極対32X、32Yの電極構造は通気孔のパターンに依存し、スリット33の長手方向に沿ってスリットを部分的に短絡するようなブリッジ部を設け、そのブリッジ部にも電極導体を残して駆動電流が全面に流れ易くするパターンにしてもよい。
【0024】
スリットを通気孔とした場合の一例として、発光面積8cm×6cm(48cm2)の発光管アレイ型面光源装置を構成する場合、対となる電極対32X、32Yの各配設面に対して複数本のスリット33が等ピッチで設けられる。スリット33の幅cは、5mm乃至はそれ以下であり、2~3mm程度が好ましい。
【0025】
隣接スリット間の幅dは約3mmで、スリット幅cよりも広い(c<d)。隣接スリット間における電極幅eもスリット幅cより広く、かつ、隣接スリット間の幅dより狭く形成されている(c<e<d)。
【0026】
電極間隙34の幅fは5mm以下好ましくは3mm低度であるが、この電極間隙34に対応する部分にも間隙幅fよりも狭い幅gを持つ電極間隙間スリット35が設けられている(f>g)。従って、電極対32X、32Yのスリットパターンは基板支持体31のスリットパターンに対して少し幅が広く、電極対32X、32Yは各スリット33、35から隠れた状態にある。
【0027】
図3の(a)及び(b)はそれぞれ、本発明の電極基板30の上に複数本、この場合、例えば22本のガス放電発光管11を平行に配置したガス放電発光管アレイを有する発光管アレイ型光源装置50の構成を示す平面図と、そのB-B矢視断面図である。但し、この断面図においては発光管11の本数を平面図より少なく示している。
【0028】
単位発光素子としてのガス放電発光管11の基本的構成は、図1の(a)に示したガス放電発光管11と同等である。即ち、各ガス放電発光管11は、紫外線の透過が可能な300μm以下好ましくは100μm程度の肉厚を有する横断面が扁平楕円形または円形の硼珪酸ガラスの細管で構成されている。因みに、10cm×6.2cmの電極基板30の上に、長さ(有効放電長)8cmで長径側外径2mm、短径側外径1mmの発光管11を隣接発光管の間に0.7mmの間隙hを空けた2.7mmの配列ピッチで22本配列することにより、発光面サイズ8cm×6cmの面光源が作られる。
【0029】
複数本の発光管11は、図1の電極基板20に対応する電極基板30の上に粘着/接着層37で支持されている。発光管11を粘着/接着層37で貼付けた場合には、電極基板30から各発光管11の個別の離脱が可能となり、修理・交換に好都合である。なお、発光管11の貼付けに際しては、電極基板30の通気孔としての各スリット33、35が粘着剤37等で塞がらないようにすることが重要である。
【0030】
上記のように組み立てられた図3の光源装置においては、各発光管11の底面が電極基板30のスリット33、35(図2(b))を介して下方に露出した構成となる。また、隣接する発光管11の間にも間隙hがあるので、スリット33,35を横切る部分では、発光管11の側面に下方に開放した通気孔が形成された状態となる。つまり、電極基板30のスリット33,35は、各発光管11に対して部分的な放熱路として作用することになる。
【0031】
図4の(a)及び(b)はそれぞれ、発光管アレイ型光源装置50をフレーム筐体51に実装した光源モジュールの模式的斜視図と、当該モジュールを側面から見た構成説明図である。フレーム筐体51の上面枠部に光源装置50の電極基板がねじ止めされ、フレーム筐体51の下部に駆動回路基板52が固定されている。また、上面枠部の下に光源装置50の電極基板の下面に対向するよう冷却ファン53が取り付けられている。光源装置50の発光面上には、必要に応じて図示しない紫外線透過機能を有する保護膜をコーティングしてもよい。
【0032】
駆動回路基板52には上記特許文献3にも開示されたようなインバータ電源25を構成するスイッチングトランジスタ素子、コンデンサ、昇圧トランス等の回路部品が搭載されている。駆動回路は、例えば12VのDC入力電圧をピーク・ツウ・ピーク2000V、周波数30~40kHz程度の正弦波交番電圧に変換して上記光源装置50の電極対間に供給するようになっている。
【0033】
また、駆動回路基板52には、光源デバイス50に対する交番駆動電圧の印加を断続的に制御するバースト制御回路や、そのデューティ比を制御する回路も実装されている。
【0034】
光源装置50の点灯動作に合わせて冷却ファン53が回転駆動される。冷却ファンが正回転する場合、冷却気流が光源装置50の電極基板30(図2)に設けたスリット33、35を通して発光管11で発生した熱を上方に放出する。
【0035】
反対に冷却ファン53を逆回転させると、冷却気流が光源装置50の前面からスリット33、35を介して吸い込まれ、発光管11の熱は下方に排出される。モジュール全体の配置やフレーム筐体の構造にも依存するが、ファン53を逆回転させる吸い込み方式の方が放熱効果に優れている。
【0036】
上記のような光源モジュールにおいて、電極対32X、32Y間に交番駆動電圧を印加した場合、発光管11の長手方向における電界分布は電極対32X、32Yがスリット33で分断されている分だけ、不規則になる。しかしながら、電極対32X、32Yのスリット幅が5mm以下であれば、発光管内のスリット対応部にも誘電体であるガラス細管10の管壁を介して十分な電界が誘導されるので、管内全域にわたる放電には殆ど影響はない。
【0037】
[実施形態2]
図5は、本発明の実施形態2に関る電極基板60を備えた発光管アレイ型光源装置の要部横断面図である。電極基板60のベースとなる絶縁支持体61の下面に電極対32X、32Yが設けられ、これらを通して電極基板60にスリット33、35が設けられている点は、上記の実施形態1と同じである。
【0038】
この実施形態2において注目される特徴は、電極基板60の上面における発光管11の両端部に対応する位置に、補助電極対62X、62Yが配置されているところにある。また、放電間隙を構成する電極対32X、32Yの近接端部に対応した位置にもトリガ電極対63X、63Yが配置されている。
【0039】
これらの補助電極対62X、62Y及びトリガ電極対63X、63Yは、発光管11を貼付ける200μm程度の厚さの絶縁性の接着/粘着層64で覆われているので、発光管11のガラス細管10との間に直接の接触はない。勿論、この接着/粘着層64は、スリット33,35を塞がないように設けられる。
【0040】
発光管11の両端部に対応する補助電極対62X、62Yは、それぞれ絶縁支持体61の下面で、対応する電極対32X、32Yに図示しないスルーホール導体を介して接続されている。また、トリガ電極対63X、63Yもそれぞれ絶縁支持体61の下面で対応する電極対32X、32Yに図示しないスルーホール導体を介して接続されている。
【0041】
補助電極対62X、62Yは、発光管11の端部での輝度の低下を補うよう端部電界を増強するように作用する。トリガ電極対63X、63Yは、点灯時における電極間間隙スリット35での初期放電の発生をより確実なものとする。補助電極対62X、62Yとトリガ電極対63X、63Yは、要求される発光面の大きさや発光強度に応じて両方又は一方を適宜付設することができる。
【0042】
なお、これらの補助電極対62X、62Yとトリガ電極対63X、63Yの付設は、電極基板30或いは60に通気用スリット33,35の有る無しに関わらずその機能を発揮する。しかし、スリット33、35を設けて放熱効果を高めた電極基板30或いは60においては、一層放電・発光動作の信頼性を向上することができる。
【0043】
[実施形態3]
図6(a)及び(b)は、本発明による実施形態3としてのフレキシブルな発光管アレイ型光源装置の電極基板の構成を示す平面図と、発光管を搭載した電極基板の概略断面図である。断面図(b)における電極基板のスリット状の通気用貫通孔の数と幅などは図示簡略化のため平面図(a)に正確には対応していない。
【0044】
実施形態3の光源装置70は、フレキシブル構成を特徴としている。電極基板71は、耐熱性の樹脂フィルム、例えばカプトンの商品名で知られるポリイミド系のフィルム基体72と、その表面に銅箔等を積層して形成した電極導体層73とを持つ。電極導体層73は、放電ギャップを構成する電極隙間74を挟んで電極対73X、73Yに分離されている。また、電極対73X、73Yのそれぞれの電極面には、フィルム基体72と共に貫通する電極隙間74と、隙間74と平行でフィルム基体72と共に貫通する複数のスリット状の通気用貫通孔75とが形成され、放電ギャップ対応部の電極間隙74も通気用貫通孔の構成を持つ。但し、放電ギャップ対応部においては電極対73Xと73Yとが完全に分離されているので、全体の強度の点からフィルム基体72の対応部には貫通スリットを設けなくてもよい。
【0045】
電極基板71の電極導体層73の上には放電ギャップを構成する電極間隙74を横切る方向で複数本のガス放電発光管11が所定のスペースを空けて平行に配列されている。図6(b)の断面図に示すように、ガス放電発光管11は電極導体層73の上に絶縁層としてのシリコーン樹脂系の粘着層又は接着層76で支持されている。フィルム基体72の厚みは50μm程度であり、電極導体層73として厚み200μm程度の銅箔を用いることで電極基板71の厚みは300μm以下のものとなる。また電極基板71は、電極導体層73としての金属箔または金属薄板を両側からポリイミド系の樹脂フィルムでサンドウィッチ状に挟んだ3層フィルムの形で構成し、所定の配置で通気用貫通孔を打ち抜き加工して作ることができる。或いは、両面を絶縁コートした銅の薄板で電極対73X、73Yのパターンを形成し、電極対73X、73Yを跨ぐ形でガス放電発光管11を配列するようにしてもよい。他の構成として、フィルム基体72の表面に金属導体膜を形成した積層基体を準備した後、所定の通気用貫通孔のパターンをレーザー加工したり、カッティング加工して電極基板71を作ることもできる。
この場合、貫通孔の形成加工によって電極エッジ部が露出するので安全のため全体又は貫通孔部に樹脂コーティングを施すことが望ましい。
【0046】
従って管径1mmのガス放電発光管11を電極導体層73の上に形成した150μm程度の厚みの接着層76に埋め込む形で配列した場合、全体の厚みが1.5mm程度のフレキシブルな発光管アレイ型光源装置70を構成することができる。即ち、このフィルム型面光源70は、ガス放電発光管11の配列方向にフレキシブルなので円筒状の光源や湾曲または屈曲した発光面を構成することが可能となる。
【0047】
[応用例1]
図7(a)、(b)は、上記実施形態3のフレキシブルな発光管アレイ型光源装置70を利用した流水殺菌装置80の要部構成を概略的に示す横断面図と縦断面図である。装置の主体となる紫外線透過性の流水パイプ81には所定間隔で絶縁樹脂性の1対のスペーサリング82が取り付けられている。この1対のスペーサリング82に、その間を跨いでフレキシブルな発光管アレイ型光源装置70を構成する電極基板71の両端が図示しない両面接着テープなどで巻き付けられて実装されている。スペーサリング82の外径は、流水パイプ81を挟んで対向する2つの発光管11の直径と流水パイプ81の外径の和よりも大きくなっており、結果として円筒状に巻き付けられ実装された光源装置70の各発光管11と流水パイプ81との間には空気の流通スペース83が存在する形となっている。
【0048】
流水パイプ81は、紫外線透過性の石英管またはフッ素系樹脂のPFA管から成る。この流水パイプ81の両側には図示しないガスケットで流入管と流出管が接続される。また、図7(a)、(b)に示す構成全体を図示しない駆動及び制御回路ユニットと共に筐体に収納し、更に光源装置70を巻き付けた流水パイプ81を挟んで冷却用のファンと排気口とを対向配置する事で、流水殺菌装置80が出来上がる。大径の流水パイプを用いて流量の大きな殺菌装置を構成する場合、十分な殺菌効果を得るためには光源装置70をパイプの長手方向に複数個巻き付けて実装する。即ち光源装置70を2連装或いは3連装の形で複数巻き付けて実装することにより紫外線の照射領域を長くして殺菌効果を高めることができる。
【0049】
かかる構成において、光源装置70の複数本のガス放電発光管11を点灯駆動することにより殺菌パイプ81の中の流水に対してパイプ全周から紫外線を照射して殺菌処理を行うことができる。この時、図示しない冷却ファンを作動させて流水パイプ81の側方から空気を吹き付けると、冷却空気は光源装置70の電極基板71に設けた通気用貫通孔75及び隣接発光管11の間の隙間から発光管11と流水パイプ81の間の流通スペース83を通して対向する排気口に流れ、発光管11を効果的に冷却することが可能となる。つまり本発明によるフレキシブルな発光管アレイ型光源装置では、流水パイプ81に巻き付けた光源装置70の背面が塞がれておらず、通気用貫通孔75を通して冷却用気流が各発光管11に直接触れる構成であるので、発光管の過度の発熱を防止することができる。この場合、冷却ファンを吸い込み駆動すると流水管の壁面が汚染されやすいので、巻き付けた光源装置70に対して冷気を吹きつける送風駆動の方が好ましい。
【0050】
[応用例2]
図8は、実施形態1の発光管アレイ型光源装置を用いた空気消臭装置の概略構成を示す模式図である。真空紫外線や深紫外域の紫外線が気体の消臭機能や化合物の分解機能を有することはよく知られている。図8に示した応用例2においては、消臭ボックス90の中に貫通スリットを有する電極基板を用いた3枚の紫外発光面光源91が傾斜角度を交互に変えて流路を斜めに横切る形で配置されている。紫外発光面光源91は、太線と破線で代表的に示されているが、図3に示した実施形態1の発光管アレイ型光源装置50と同様の構成を持つ。即ち紫外線を放射する複数本のガス放電発光管がスリット付きの電極基板上に隣接管との間に隙間を空けて配列されており、この隣接発光管間の隙間と電極基板の複数のスリットにより複数の通気路がそれらの交差部に形成された構造となっている。
【0051】
消臭ボックス90の流入口92から送り込まれた処理すべき空気などの気体は、消臭ボックス90内に配置された各紫外発光面光源91の上記通気路を通って、流出口93から送り出される。この間、各紫外面発光光源91を点灯駆動することにより、導入された空気は消臭ボックス90内において紫外線の照射空間を通過し、効果的に消臭されることになる。消臭ボックス90の側壁面を鏡面とすることで、側壁面からの反射する紫外線も照射光として利用でき、消臭効果をより高めることができる。
【0052】
[その他の変形実施形態]
実施形態1,2においては、電極基板に設けた通気孔の形状は発光管アレイを横切る方向のスリットとした。しかしながら、本発明の通気孔は、電極パターンの欠落部が放電動作に影響を及ぼさない限り、発光管の底面を部分的に冷気に曝す形状であればよいので、円形、楕円形などの通気孔を分散配置した構成とすることができる。
【0053】
電極基板の下面に形成された電極対の表面には通常のプリント基板と同様の絶縁コートが施される。或いは、電極対の導体層を挟むように別の絶縁基板を設けてサンドウィッチ状で三層構造の電極基板とすることも可能である。
その他、リジッドな絶縁支持体の上面に電極対を配置した電極基板を作成し、粘着/接着を兼ねた絶縁層を介してその上に発光管を配置するようにしてもよい。いずれにしても、電極基板には発光管の底面を部分的に露出する放熱用の貫通孔が複数設けられ、電極対は貫通孔の周囲で電気的に連続したパターンを有したものとなる。
【0054】
また、貫通スリットを形成した電極パターンを有する薄い銅板自体で電極対を兼ねた電極基板を構成してもよい。この場合、放電間隙となる隙間を挟んで配置した電極銅板の両面に当該隙間を橋絡する方向で複数の発光管を所定のスペースを空けて配列することで格子状の通気路を備えた両面発光型の面光源を構成することができる。電極基板の両面に発光管を配列した通気路付きの両面発光型紫外光源は、上記応用例2の消臭装置に好適なものとなる。
【0055】
本発明は、深紫外発光用の面光源として好適であるが、紫外蛍光体層12(図1(a))を緑や青の可視蛍光体層に代えた発光管を作成し、発光面を紫外発光管と可視発光管との複合発光管アレイとして構成し、発光波長域を任意に設定することも可能である。電極対を発光管アレイの発光波長エリア毎に分けて選択駆動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10:ガラス細管
11:ガス放電発光管
12:紫外蛍光体層
20:電極基板
21:絶縁支持体
22X、22Y:電極対
23:粘着/接着層
24:電極間隙
25:インバータ電源
30:電極基板
31:絶縁支持体
32X、32Y:電極対
33:スリット
34:電極間隙
35:電極間間隙スリット
37:粘着/接着層
50:発光管アレイ型光源装置
51:フレーム筐体
52:駆動回路基板
53:冷却ファン
60:電極基板
61:絶縁支持体
62X、62Y:補助電極対
63X、63Y:トリガ電極対
64:粘着/接着層
70:フレキシブルな発光管アレイ型光源装置
71:電極基板
72:フィルム基体
73:電極導体層
73X,73Y:電極対
74:電極間隙
75:通気用貫通孔
76:接着層
80:流水殺菌装置
81:流水パイプ
82:スペーサリング
83:流通スペース
90:消臭ボックス
91:紫外発光面光源
92:流入口
93:流出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8