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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】注入器、及び、注入方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
E04G23/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019148521
(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公開番号】P2021031834
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】595124158
【氏名又は名称】原化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】原 琢磨
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127782(JP,A)
【文献】特開2013-199816(JP,A)
【文献】登録実用新案第3155053(JP,U)
【文献】特開2008-178770(JP,A)
【文献】特開2015-004205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性補修材の供給器の一部が基端側に挿入されるスリットが形成された逆止弁と、補修対象と対向して取り付けられ、当該補修対象へ流動性補修材を注入する注入口と、を具備する注入機構と、
前記注入機構において前記逆止弁と前記注入口の間から分岐しており、前記逆止弁を介して供給される流動性補修材が流入して内部の気体が圧縮される蓄圧機構と、を備え、
前記供給器から前記注入機構内に流動性補修材が供給される場合に、前記逆止弁が流動性補修材に対する抵抗として作用するように構成されており、
前記注入機構が、
基端側に前記逆止弁が挿入され、先端に前記注入口が形成された筒体と、
前記逆止弁の基端側を覆うように前記筒体と取り付けられたカバーと、をさらに具備し、
前記供給器の一部が前記カバーに当接した状態で、当該供給器の先端が、前記スリット内に配置される、又は、前記スリットの基端側よりも外側に配置されるように構成されていることを特徴とする注入器。
【請求項2】
前記供給器が前記逆止弁に挿入された状態で、前記スリットの少なくとも先端側が閉塞された状態が保たれるように構成されている請求項1記載の注入器。
【請求項3】
前記カバーが前記逆止弁よりも硬質の樹脂で形成された請求項1又は2記載の注入器。
【請求項4】
前記注入機構が、
前記蓄圧機構内と連通するとともに、前記注入口よりも開口面積が大きく形成された連通孔をさらに具備する請求項1乃至3いずれかに記載の注入器。
【請求項5】
前記蓄圧機構が、
基端が前記注入機構に設けられ、先端が開口した中空容器と、
前記中空容器内においてその基端及び先端の間をがたなく摺動可能に設けられた仕切り部材と、
前記中空容器の先端を気密に封止する蓋体と、を具備し、
前記蓋体が、前記中空容器の内部において先端から基端側へ突出した状態で取り付けられる請求項1乃至4いずれかに記載の注入器。
【請求項6】
前記中空容器が、当該中空容器内に流入した流動性補修材の量を示す目盛りが付与された請求項5記載の注入器。
【請求項7】
前記中空容器と前記蓋体との間に螺合構造が形成されており、
前記蓋体が、前記中空容器に対して進退可能に取り付けられた請求項5又は6記載の注入器。
【請求項8】
前記蓋体が、前記中空容器の先端側に嵌合させて固定された請求項5又は6記載の注入器。
【請求項9】
流動性補修材の供給器の一部が基端側に挿入されるスリットが形成された逆止弁と、補修対象と対向して取り付けられ、当該補修対象へ流動性補修材を注入する注入口と、を具備する注入機構と、前記注入機構において前記逆止弁と前記注入口の間から分岐しており、前記逆止弁を介して供給される流動性補修材が流入して内部の気体が圧縮される蓄圧機構と、を備え、前記注入機構が、基端側に前記逆止弁が挿入され、先端に前記注入口が形成された筒体と、前記逆止弁の基端側を覆うように前記筒体と取り付けられたカバーとを備え、前記供給器の一部が前記カバーに当接した状態で、当該供給器の先端が、前記スリット内に配置される、又は、前記スリットの基端側よりも外側に配置されるように構成された注入器を用いた注入方法であって、
前記供給器から前記注入機構内に流動性補修材を供給する場合に、前記逆止弁を流動性補修材に対する抵抗として作用させることを特徴とする注入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンクリート構造物や壁等に発生したクラック等の補修対象に流動性補修材を注入するための注入器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物等において内部まで進展したクラックを補修する場合、流動性補修材である液状の接着剤を所定の圧力をかけ続けながらじっくりと注入する必要がある。
【0003】
このような補修作業のために、グリスガン等の接着剤の供給器が基端側に接続され、先端側の注入口がクラック等の補修対象に対して取り付けられる概略筒状の注入機構と、前記注入機構から分岐し、流動性補修材の流入により内部の空気が圧縮されて加圧される蓄圧容器と、を備えた注入器が用いられる。
【0004】
具体的には、供給器から注入機構に供給された接着剤の一部はクラックに直接流入するのではなく、蓄圧容器内に流入して蓄えられていく。蓄圧容器内に所定量以上の接着剤が流入すると供給器は注入機構から取り外される。そして、蓄圧容器内の空気の圧力によって接着剤は、蓄圧容器から注入機構を介してクラック内へと注入される。
【0005】
ところで、本願発明者が現場における注入器の使用態様について実際に調査したところ、従来想定されているのとは異なる要望が存在していることが判明した。
【0006】
すなわち、従来は最初にグリスガンによって注入機構内に接着剤を高圧力で供給し、クラック内のゴミ等を接着剤の圧力で吹き飛ばして、クラック内に多量の接着剤が充填されてから、蓄圧容器内に接着剤が流入して、低圧注入が実現されればよいと考えられていた。
【0007】
しかしながら、クラックには壁等の構造体を貫通している場合に高圧力で接着剤を供給すると、注入器が設けられていない側の開口から接着剤が漏れ続けてしまう。また、クラックのある壁に隣接して薄い仕切り板等が存在し、クラックの裏側の開口が塞がれていたとしても、接着剤が高圧で供給されると仕切り板が変形して膨らんでしまい、接着剤が注入され続けることになる。この結果、注入器の蓄圧機構には接着剤が流入しにくくなり、蓄圧容器内で圧縮された気体の圧力によって理想的な低圧での注入が実現できないことがある。
【0008】
さらに、現場においては施工管理のために使用された接着剤の量を把握して、報告する必要がある。例えばグリスガンで使用された接着剤のカートリッジの本数から全体の使用量を把握することは可能であるが、各クラックでどれくらいの量の接着剤が使用されているかを正確に把握したいという要望がある。
【0009】
しかしながら、上述したように蓄圧容器を介さずに多量の接着剤がクラック内に注入されてしまうと、蓄圧容器に容量を示す目盛りがあったとしてもクラック内に注入された接着剤の量を正確には把握できない。
【0010】
このように従来の想定のように注入機構内に高圧で接着剤が供給されると注入圧力の管理と接着剤の使用量の把握が難しくなるという問題があることを本願発明者は初めて見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2018-127782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、蓄圧機構内へ流動性補修材が流入しやすくして、気体の圧力による低圧注入を可能とするとともに、流動性補修材の使用量が把握しやすい注入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明に係る注入器は、流動性補修材の供給器の一部が基端側に挿入されるスリットが形成された逆止弁と、補修対象と対向して取り付けられ、当該補修対象へ流動性補修材を注入する注入口と、を具備する注入機構と、前記注入機構において前記逆止弁と前記注入口の間から分岐しており、前記逆止弁を介して供給される流動性補修材が流入して内部の気体が圧縮される蓄圧機構と、を備え、前記供給器から前記注入機構内に流動性補修材が供給される場合に、前記逆止弁が流動性補修材に対する抵抗として作用するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る注入方法は、流動性補修材の供給器の一部が基端側に挿入されるスリットが形成された逆止弁と、補修対象と対向して取り付けられ、当該補修対象へ流動性補修材を注入する注入口と、を具備する注入機構と、前記注入機構において前記逆止弁と前記注入口の間から分岐しており、前記逆止弁を介して供給される流動性補修材が流入して内部の気体が圧縮される蓄圧機構と、を備えた注入器を用いた注入方法であって、前記供給器から前記注入機構内に流動性補修材を供給する場合に、前記逆止弁を流動性補修材に対する抵抗として作用させることを特徴とする。
【0015】
このようなものであれば、供給器から前記注入機構内に高供給圧で流動性補修材が供給されたとしても、前記逆止弁が抵抗となって前記注入機構内に流入した時点では圧力を低下させることができる。このため、従来のように流動性補修材の勢いによって前記蓄圧機構に流入せずに直接前記注入口から外部へ流出してしまう流動性補修材の量を減らすことができる。したがって、供給器から供給される流動性補修材の大部分について前記蓄圧機構を介して補修対象へ注入できるので、圧縮された気体の圧力による理想的な低圧注入を実現できる。また、大部分の流動性補修材は前記蓄圧機構内に流入するので、例えば前記蓄圧機構の容積に基づいて使用された流動性補修材の量についても正確に把握することが可能となる。
【0016】
前記逆止弁が供給器から供給される流動性補修材の抵抗として作用させるには、前記供給器が前記逆止弁に挿入された状態で、前記スリットの少なくとも先端側が閉塞された状態が保たれるように構成されていればよい。
【0017】
前記供給器の一部が、前記逆止弁の先端側まで貫通して挿入されてしまい、前記注入機構内に高供給圧で流動性補修材が供給されてしまうのを防げるようにするには、前記注入機構が、基端側に前記逆止弁が挿入され、先端に前記注入口が形成された筒体と、前記逆止弁の基端側を覆うように前記筒体と取り付けられたカバーと、をさらに具備し、前記供給器の一部が前記カバーに当接した状態で、当該供給器の先端が、前記スリット内に配置される、又は、前記スリットの基端側よりも外側に配置されるように構成されていればよい。このようなものであれば、前記供給器が前記逆止弁に対して取り付けられた状態でも前記スリットの少なくとも一部は閉塞された状態にできる。したがって、前記供給器から流動性補修材を供給する際に前記スリットを抵抗として作用させ、圧力を低下させた注入を実現できる。
【0018】
例えば供給器の一部が前記注入機構に対して強く押し込まれたとしても、供給器の一部が前記逆止弁の先端側まで到達させないようにして、供給直前の挿入された時点では前記逆止弁の先端側が閉塞された状態が実現されるようにするには、前記カバーが前記逆止弁よりも硬質の樹脂で形成されたものであればよい。
【0019】
前記蓄圧機構への入り口よりも前記注入口の流路抵抗を大きくして、供給器から供給される流動性補修材が前記蓄圧機構内へ流入しやすくするには、前記注入機構が、前記蓄圧機構内と連通するとともに、前記注入口よりも開口面積が大きく形成された連通孔をさらに具備するものであればよい。
【0020】
前記蓄圧機構内に流入した流動性補修材に対して注入に適した圧力を加えながら時間をかけてじっくりと注入できるようにするには、前記蓄圧機構が、基端が前記注入機構に設けられ、先端が開口した中空容器と、前記中空容器内においてその基端及び先端の間をがたなく摺動可能に設けられた仕切り部材と、前記中空容器の先端を気密に封止する蓋体と、を具備し、前記蓋体が、前記中空容器の内部において先端から基端側へ突出した状態で取り付けられるものであればよい。
【0021】
使用された流動性補修材の量をさらに正確に把握できるようにするには、前記中空容器が、当該注入容器内に流入した流動性補修材の量を示す目盛りが付与されたものであればよい。
【0022】
前記中空容器と前記蓋体との間に螺合構造が形成されており、前記蓋体が、前記中空容器に対して進退可能に取り付けられたものであれば、前記蓄圧機構内の流動性補修材の量に応じて前記蓋体の位置を変更して加圧量を調整し、適切な注入状態を実現しやすい。
【0023】
前記蓋体が、前記中空容器の先端側に嵌合させて固定されたものであれば、構造を簡素化しつつ、流動性補修材に対して常に決まった圧力で加圧することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明に係る注入器によれば、前記逆止弁によって供給器から供給される流動性補修材の圧力を低下させて前記注入機構内に流入させることができる。この結果、流動性補修材の大部分を前記蓄圧器構内に流入させることができるので、適切な低圧力での注入が可能となるとともに、補修対象に注入される流動性補修材の量を正確に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る注入器を示す模式的斜視図。
図2】第1実施形態における注入器の模式的分解図。
図3】第1実施形態における蓄圧機構内の連通孔を示す模式的斜視図。
図4】第1実施形態における逆止弁の模式的斜視図。
図5】第1実施形態における逆止弁にグリスガンのノズル部分が挿入された状態を示す模式図。
図6】第1実施形態における逆止弁が接着剤の流れに対する抵抗となっている状態を示す模式図。
図7】第1実施形態における注入器による接着剤の注入過程を示す模式図。
図8】本発明の第2実施形態に係る注入器を示す模式的分解図。
図9】本発明のその他の実施形態に係る注入器の逆止弁にグリスガンのノズル部分が挿入された状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1実施形態に注入器100について各図を参照しながら説明する。
【0027】
第1実施形態の注入器100は、土木工事等においてコンクリート構造物C等に生じた補修対象であるクラックAOに流動性補修材として接着剤Lを注入する補修作業に用いられるものである。より具体的には図1の斜視図に示すように、注入器100はコンクリート構造物CにおいてクラックAOが外表面に開口している部分に固定されて、接着剤Lの供給源であるグリスガンにセットされた接着剤のカートリッジの仲介をする。また、この注入器100を構成する部品は金属を使用せずに樹脂により形成されており、使用後は分別等を行うことなくそのまま全体を廃棄できるようにしてある。
【0028】
この注入器100は、補修対象のあるコンクリート構造物C等に対して垂直に取り付けられる部分であり、グリスガン(図示しない)からクラックAOへと接着剤Lが流通する注入機構INと、注入機構INに対して直交するように分岐させて設けてあり、グリスガンにより接着剤Lが注入されている時に接着剤Lの一部が内部へ流入して内部の気体Gが圧縮されるように構成してある蓄圧機構TNとからなるものである。
【0029】
図1の斜視図に示すように注入機構INは、この注入器100において細円筒状の部分であり、基端に接着剤Lの供給器であるグリスガンに接続される接続口CPが形成してあり、先端にクラックAOと対向して取り付けられ、当該クラックAOへ接着剤Lを注入する注入口IPが形成してある。
【0030】
より具体的には、図2の分解図に示すように注入機構INは、注入口IPが形成されており、クラックAOのあるコンクリート構造物Cに取り付けられる座金1と、先端が座金1に取り付けられ、側面に中空容器4が接続された筒体2と、筒体2の基端側に挿入されており、接続口CPを形成する逆止弁3とから構成してある。
【0031】
座金1は、中央部に注入口IPが開口する薄円板部11と、その注入口IPを囲い薄円板部11の上面に対して垂直に突出した円筒部12とからなる。薄板円板部11の下面外周部は、クラックAOの開口している周囲の壁面に固定材Fにより粘着されて固定される。この固定材Fは圧縮又は引っ張り方向には強い粘性を示すが、せん断方向には弱い粘性を示すためクラックAO内に接着剤Lを注入した後で注入器100を取り外す際には、壁の表面に沿った方向に移動させることで容易に取り外すことができる。円筒部12は中空であって、内部に筒体2と螺合するめねじが切ってある。
【0032】
筒体2は、図2(b)に示すように円筒部12よりも細い中空円筒状のものであり、基端側には逆止弁3において平円板リング状に形成された鍔部31が配置される台座部23が形成してある。そして、この筒体2の内部では逆止弁3の胴体32が収容される。さらに台座部23の上側からは逆止弁3の鍔部31をはさみ込むようにカバーCVが取り付けられる。このカバーCV及び筒体2は同種の硬質樹脂で形成されており、逆止弁3を構成する軟質樹脂とは異なる材料で形成されている。また、カバーCVは台座部23に対して熱溶着により固定されている。カバーCVと台座部23は同じ樹脂材料で形成されているので、異種間の樹脂材料で熱溶着させた場合と比較して強固に固定することができる。したがって、接着剤Lの注入時において注入機構Iの内圧が上昇してもカバーCVが逆止弁3を強く押さえているため、逆止弁3が外側へ膨張してしまうのを防ぐことができる。また、カバーCVはグリスガンにセットされる接着剤Lのカートリッジに取り付けられたノズルの一部と当接し、逆止弁3内におけるノズルの先端位置を固定し、差し込みすぎを防止する。
【0033】
また、筒体2の先端の外側周面に円筒部12と螺合するおねじ21が切ってある。さらに、筒体2は図2(b)の断面図に示すようにその側面中央部であり、逆止弁3が収容された状態でその先端近傍に蓄圧機構TN内と連通する連通孔22が形成してある。図2(b)の断面図、及び、図3の斜視図に示すように連通孔22は筒体2の側面において軸方向に延びるトラック状の孔であり、その開口面積は注入口IPにおいて最も流路面積の小さい部分よりも大きく設定してある。本実施形態では注入口IPの一部をなす筒体2の先端側の開口面積よりも連通孔22の開口面積のほうが大きく形成されている。図2(b)に示すように連通孔22は蓄圧機構TNの中空容器4の半径程度に長さに形成されており、連通孔22の上端部分は筒体2に挿入されている逆止弁32の先端部分よりも下側に位置するよう形成されている。言い換えると、筒体2に逆止弁3が挿入された状態において逆止弁3の先端側の外周部分は筒体2の内壁面と対向している。
【0034】
この筒体2の内部は基端側から先端側に進むにつれて先細るように構成してあり、筒体2内で接着剤が硬化した場合には先端側から取り出せないように構成してある。また、台座部23に対してはカバーCVが熱溶着されているので基端側からも硬化した接着剤は取り出すことはできない。仮に逆止弁3を無理に筒体2から取り外した場合には当該逆止弁3は固定されずその機能が発揮されないため筒体2からクラックAO内に対して接着剤に圧力をかけて注入することができなくなる。したがって、筒体2内において余った接着剤が硬化するほど放置されていた場合には注入器100を再利用することはできず、古い接着剤と新しい接着剤が混ざった状態でクラックAO内に注入されて低品質の補修工事が実施されることを未然に防ぐことができる。
【0035】
次に逆止弁3の詳細な構造について図4を参照しながら説明する。逆止弁3は、先端が閉鎖された筒状に形成された胴体32と、胴体32の基端から半径方向に広がるように概略円板状に形成された鍔部31とを備えている。
【0036】
胴体32は、基端から先端に進むにつれて若干外径が小さくなるようにテーパが形成された細円錐台形状を有している。胴体32の先端面内に開口するスリット33が形成してある。すなわち、このスリット33は図4(b)に示されるようにその切れ込みが胴体32の先端部側面には至らないように形成してある。胴体32の先端部はほぼ中実となるように構成してあり、スリット33は胴体32の軸方向へ延びて、胴体32の内部底面に開口するようにしてある。スリット33は、樹脂成型時から胴体32の先端面に形成してあり、刃物による追加工によって形成しなくてもよいようにしてある。
【0037】
胴体32の先端部側面には筒体2に対して挿入された状態において筒体2の内側周面と接触する被押圧部34が一対形成してある。一対の被押圧部34は、図4(b)に示されるように胴体32の先端面に対して垂直な方向から視た場合に、スリット33を幅方向に挟むように配置してある。これらの被押圧部34は、胴体32が筒体2に挿入された状態でスリット33を幅方向に挟み込む方向へ胴体32の先端部を押圧するように構成してある。また、被押圧部34は部分円筒側面として形成してある。
【0038】
さらに胴体32の先端部側面には、被押圧部34よりも半径方向へ凹ませて形成した逃げ部35が形成してある。この逃げ部35は、被押圧部34が筒体2の内側周面と接触している状態で、胴体32の先端部側面において筒体2の内側周面に対して所定距離離間するように構成してある。逃げ部35は胴体32の先端部側面においてスリット33の長さ方向と交差するように一対配置してある。すなわち、胴体32の先端面に対して垂直な方向から視た場合に一対の逃げ部35はスリット33を長さ方向に対して挟み込むように形成してある。本実施形態では逃げ部35の側面は角柱の側面をなすようにしてあり、スリット33の延伸方向との交点に角中の角が配置されるようにしてある。すなわち、スリット33の端部から逃げ部35の壁面までの間が一定距離離してあり、スリット33が形成される位置が多少ずれてもスリット33の端部が側壁面まで到達することがないようにしてある。また、逃げ部35は、スリットの長さ方向の中点を中心として被押圧部34よりも半径方向内側に配置してある。
【0039】
このように構成された逆止弁3、及び、カバーCVによる作用及び効果について説明する。図5の逆止弁3が筒体2内に挿入された状態での断面拡大図に示すように胴体32が筒体2内に挿入されると被押圧部34は筒体2の内側周面に接触し、半径方向内側へと押圧されることになる。すると胴体32の先端部は半径方向内側へと圧縮されて、スリット33が幅方向に閉じられるように変形する。この際、胴体32の先端部の一部は被押圧部34からの力に対して垂直な方向にある逃げ部35側へと膨出することなる。この状態においても逃げ部35は筒体2の内側周面には接触しない。したがって、胴体32の先端部はスリット33の長さ方向に圧縮する力を受けない。このようにスリット33の幅方向を閉じる力しか受けていないのでスリット33を密着させて強く閉じることができる。また、このような状態でスリット33を長さ方向に圧縮するような力が同時にかかることによってスリット33がひしゃげて当該スリット33の端部に微小な開口が形成されることがない。
【0040】
さらに第1実施形態では、図5(a)に示すようにグリスガンGGのノズル部分は逆止弁3に挿入された状態でカバーCVと当接することにより、ノズルの先端が逆止弁3のスリット33内に配置されるように構成されている。言い換えると、カバーCVは硬質樹脂で形成されているので、グリスガンGGを逆止弁3側へと押し込んでもノズルの先端が逆止弁の先端部分から外側に出ることがないようにしてある。このため、供給器であるグリスガンから注入機構INの筒体21内に接着剤の供給される前では図5(b)に示すようにスリット33の先端部分は閉塞された状態が保たれる。
【0041】
一方、図6に示されるようにグリスガンGGのノズル部分がスリット33に差し込まれた状態で接着剤Lの供給が開始されると、グリスガンGGの供給圧により胴体32の先端部の一部は逃げ部35側へと押し出される。すなわち、グリスガンGGから吐出される接着剤Lの流れに対して逆止弁3は抵抗として作用する。したがって、グリスガンGGから接着剤Lが高い供給圧で吐出されたとしても、逆止弁3を通過する間に圧力を低下させることができる。この結果、接着剤Lの勢いを弱くして直接注入口IPからクラックAO内へと流入しにくくし、連通孔22から蓄圧機構TN内へと流入しやすくすることができる。
【0042】
次に蓄圧機構TNについて説明する。
【0043】
蓄圧機構TNは、図1及び図2に示すように注入器100において太円筒部分に相当するものであり、基端が注入機構INに取り付けられ、先端が開口した円筒状の中空容器4と、中空容器4内においてその基端及び先端の間をがたなく摺動可能に設けられた仕切り部材5と、中空容器4の先端部を気密に封止する蓋体6とを具備するものである。すなわち、この蓄圧機構TNは中空容器4と蓋体6の2つの分割されたパーツで構成してある。また、中空容器4は、筒体2と組み合わされた状態で、1つのパーツとして一体成型してある。さらに、中空容器4は、筒体2に対して直交するように設けてあり、クラックAOから見て筒体2の基端と中空容器4の反クラック側の側面が略同じ高さにあるようにしてある。
【0044】
また、本実施形態では中空容器4の先端側外側周面と蓋体6との間には雄ねじ71と雌ねじ72からなる螺合構造7が形成してあり、蓋体6は中空容器に対して軸方向に進退可能に構成してある。このため、蓋体6を回転させることで蓋体6の中空容器4内における突出量を変更し、中空容器4内における仕切り部材5と蓋体6との間の気体の圧力を加圧又は減圧できる。
【0045】
中空容器4は概略中空円筒形状をなす透明樹脂によりその内部が透けて見えるように構成したシリンダである。図1及び図2に示すようにこの中空容器4の外側周面には基端側から先端側へと目盛が付してあり、注入機構INから当該中空容器4内に流入した接着剤Lの量が目視で分かるようにしてある。また、この中空容器4の先端側には蓋体6が取り付けられる雄ねじ71が形成してある。
【0046】
仕切り部材5は、中空容器4の内側周面と気密に篏合するものであり、当該中空容器4の内径と略同じ直径を有した概略扁平中実円筒状のピストンである。この仕切り部材5は注入開始時に中空容器4の基端に略密着した状態となるように取り付けてあり、注入機構INに接続されたグリスガンGGにより接着剤Lの注入が開始されて、中空容器4内にも接着剤Lが入ってくると中空容器4の先端側へと移動していくようにしてある。この際、中空容器4内は仕切り部材5により仕切られているので、中空容器4内の先端側には気体Gのみが存在し、中空容器4内の基端側にのみ接着剤Lがある状態になる。つまり、中空容器4内に封入されていた気体Gは仕切り部材5があるために注入機構IN側にある接着剤L内へは漏れ出ない。
【0047】
また、この仕切り部材5の厚みについては、連通孔22から接着剤Lが中空容器4内に流入して押された際に当該仕切り部材5が倒れず、その平板部分が中空容器4の半径方向断面と平行となった姿勢のままで摺動するように設定してある。
【0048】
蓋体6は、中空容器4の内部において先端から基端側へ一部を突出させた状態で取り付けられるとともに、その突出量が任意に変更できるように構成してある。また、この蓋体6により中空容器4内の先端側、すなわち中空容器4内において仕切り部材5と蓋体6との間は気密に封止されるようにしてある。
【0049】
より具体的には、図2の断面図に示すように蓋体6は、中空容器内へ挿入される中栓体61と、中栓体61と外側端に接続され、中空容器の外側周面を覆うように設けられる外筒62と、を具備する二重管構造を有するものである。
【0050】
中栓体61は、概略中空円筒状でその外径が中空容器4の内径とほぼ同じもしくは若干大きく形成してある。中栓体61の外側周面には半径方向外側に突出する複数の凸条63が形成してある。例えば凸条63は中空容器4に形成されている雄ねじ71のねじ山間の距離とほぼ同じ間隔で設けてある。ここで、樹脂成型により中空容器4の雄ねじ71を形成すると収縮により引けが生じ中空容器の内側周面において雄ねじ71の裏側に当たる部分が半径方向外側へ若干凹む部分が存在する。凸条63はこのような凹みがあっても中栓体61が中空容器4の内側周面に対して当接するので、気密性を保つことができる。
【0051】
外筒62は蓋体6が中空容器4に対して取り付けられた状態において中空容器4の先端側外側周面を覆うものであり、その内側周面には雌ねじ72が形成してある。外筒62は中栓体61とほぼ同じ軸方向長さを有しており、同心軸状に配置してある。また外筒62の外側周面には軸方向に延びるリブが複数等間隔で形成してあり、ユーザが手で掴んで滑らないように把持部が形成してある。
【0052】
螺合構造7は、中空容器4の外側周面に形成された雄ねじ71と蓋体6の外筒62の内側周面に形成された雌ねじ72とから構成してあり、ネジ山の幅がねじ溝の幅よりも小さく形成してある。言い換えると、本実施形態では雄ねじ71と雌ねじ72のネジ山は一方の側面のみが当接した状態で係合するようにしてある。このため、中空容器4内の気体が所定圧力に達していない状態では、蓋体6は回さなくても軸方向にスライド移動可能である。言い換えると、蓋体6により中空容器4内が十分に加圧され、接着剤LがクラックAO内へと導入されるのに適した圧力がかかっているかどうかについてユーザは蓋体6を軸方向に押し込んだ時の触感等でも簡単に確認できる。また、仕切り部材5の動きによっても内部の圧力状態を把握でき、その管理が容易である。
【0053】
このように構成された本実施形態の注入器100の使用方法について図1図7を参照しながら説明する。
【0054】
まず、注入器は図1に示されるように壁等のクラック開口を塞ぐように取り付けられ、その後接続口CPにグリスガンGGが接続されて接着剤Lが注入される。なお、接着剤Lの注入開始前は図1に示されるように仕切り部材5は中空容器4の基端側にある。グリスガンGGからは少なくとも蓄圧機構TN内に所定量以上の接着剤Lが流入するようにして図7(a)に示されるように仕切り部材5は中空容器の先端側へ接着剤Lにより移動する。この状態になった時点でグリスガンGGは外される。
【0055】
この結果、仕切り部材5と蓋体6の中栓体61の先端との間にある気体は圧縮されて加圧された状態となり、仕切り部材5は中空容器4の先端側へと押されることになる。このため、クラックAO内の流路抵抗があったとしても中空容器4内の接着剤LはクラックAO内へ押し流されることになる。また、注入機構IN内の接着剤Lは高圧状態となっているが、被押圧部34及び逃げ部35の作用によりスリット33は強く閉じられているので、注入機構IN内から接着剤Lが外部へと逆流せずクラックAO内へのみ流入させることができる。
【0056】
なお、第1実施形態ではグリスガンGGから供給される接着剤Lの大部分は中空容器4内に流入することになる。これは、接着剤Lは逆止弁3の抵抗により圧力が低下させた状態になっており、連通孔22の開口面積が注入口IPにおいて最も狭い部分の開口面積よりも大きくして流路抵抗を小さくしているためである。
【0057】
しばらくすると図7(b)に示されるように蓄圧機構TN内の接着剤LがクラックAO内に流入して減少する事により中空容器4内において仕切り部材5と中栓体61との間の空間が拡大し、気体が減圧して接着剤Lが押される力が小さくなってしまう。
【0058】
注入器100内に残っている少量の接着剤LをクラックAO内にさらに充填してクラックAO内のすみずみまで接着剤Lを十分に行きわたらせるためにユーザは蓋体6を中空容器4に対して回転させることで中空容器4の基端側に移動させる。この結果、図7(c)に示されるように中空容器4内における仕切り部材5と中栓体61との間の空間は圧縮されて再び内部を加圧できる。このため、中空容器内に少量の接着剤Lが残っている場合でも再びグリスガンで接着剤Lを追い足ししなくてもクラックAO内へと注入することができる。
【0059】
加えて、注入器100を壁から外す場合には蓋体6を回転させて中空容器4の先端側へ移動させて解圧することで接着剤Lへの圧力を小さくし、取り外す際に注入口から接着剤Lが飛び散らないようにすることもできる。
【0060】
次に第1実施形態の注入器100全体の効果について説明する。
【0061】
第1実施形態の注入器100では、グリスガンGGを注入機構INに接続した状態においてノズルの先端が逆止弁3のスリット33内に配置されるように構成されているので、逆止弁3自体を流路抵抗として作用させ、接着剤Lの供給圧を従来よりも低下させることができる。また、注入口INにおいて最も開口面積が狭い部分と比較して、連通孔22の開口面積のほうが大きく形成されているので、接着剤Lを蓄圧機構TN内へと導きやすい。
【0062】
このため、従来と比較して蓄圧機構TNを経由せずに直接クラックAO内に流入する接着剤Lの量を低減し、蓄圧機構TN内の圧縮された気体の圧力により低圧で時間をかけて注入を行うことができる。この結果、クラックAOに底がなく、貫通しているような場合でも接着剤Lがとめどなく注入され続けるのを防ぐことができる。この結果、蓄圧機構TNを経由しないために目盛りによる計量ができない接着剤Lの量を大幅に減らすことができ、使用量を正確に把握することが可能となる。
【0063】
また、グリスガンGGのように人の手で動作させるものであるために接着剤Lの供給圧を制御するのが難しい場合であっても、逆止弁3の抵抗によって蓄圧機構TNに流入させるのに適した圧力を実現できる。
【0064】
蓋体6が螺合構造7により中空容器4の軸方向に対して進退可能に設けられているので、中空容器4内の気体の圧縮状態を適宜変更してクラックAO内に接着剤Lを注入するのに適した圧力を保つことが工具等を用いずに簡単にできる。
【0065】
また、螺合構造7があるので中空容器4内の気体が圧縮されて抵抗力が大きくなってもそれほど大きな力を加えなくても蓋体6を中空容器4内へと押し込んでいくことができ、加圧に必要となる力を従来よりも小さくできる。
【0066】
加えて、本実施形態の逆止弁3はスリット33が強く閉じられるので、蓋体6により加圧して接着剤Lが高圧状態となっても逆止弁3から逆流して外部に漏れ出すことを防げる。
【0067】
さらに蓋体6は二重管構造を有しており、ユーザにより把持される外筒62と中栓体61の軸方向の位置をほぼ同じにすることができるので、蓄圧機構TNの軸方向長さを小さく形成することができ、全体の外形寸法を小さく構成することができる。このため、クラックが近接して複数ある場合でも注入器100を干渉させずに設けやすい。また、加圧や解圧するために蓄圧機構TNの先端側に別の工具や器具を取り付ける必要がないので、注入器100が近接して設けられている場合でも加圧や解圧の作業を行いやすい。
【0068】
次に本発明の第2実施形態に係る注入器100について図8を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0069】
第2実施形態の注入器100は、蓋体6が中空容器4に対して固定されるものであり、第1実施形態と比較して構造を簡略化したものである。言い換えると蓋体6は中空容器4に対して進退可能ではないため、蓄圧機構TN内の気体の圧縮量については常に固定された値に設定することができる。
【0070】
このようなものであれば、例えば補修対象に対して予め決められた量の接着剤Lを予め定められた圧力で注入できるとともに、製造コストを第1実施形態と比較して低減することができる。
【0071】
本発明のその他の実施形態について説明する。
【0072】
供給器から注入機構IN内に流動性補修材が供給される場合に、逆止弁3が流動性補修材に対する抵抗として作用させるための構成は、各実施形態において説明したものに限られない。例えば、逆止弁3が筒体21に挿入された状態におけるスリット33の締め付け力を大きく設定しておき、ノズル部分をスリット33内に差し込んでも人の力では先端がスリット33の外側に出ることが無いように構成してもよい。この場合には、カバーCVを省略して、筒体21に対して逆止弁3が直接熱溶着されていてもよい。
【0073】
グリスガンGGに用いられるノズルについては、注入器100と対になる専用のアタッチメントを用いてもよい。すなわち、このようなアタッチメントは、カバーCVに当接する当接面と、当接面からノズル先端までの長さ寸法が、カバーCVの外側面から逆止弁3の先端までの長さ寸法よりも短く設定されているものであればよい。また、図9に示すように、グリスガンGGのノズルが逆止弁3に対して取り付けられた状態において、ノズルの先端がスリット33内に挿入されないようにしてもよい。この場合でも接着剤Lの供給前にはスリット33は閉塞された状態が保たれるので、グリスガンGGから高圧力で接着剤の供給が行われても逆止弁3が抵抗となった筒体2内では所定の圧力よりも低い状態を実現できる。また、グリスガンGGの先端部分がスリット33内に挿入されない場合には、図9に示すように接着剤の供給時に外側へ漏れ出さないように逆止弁の基端側の内壁面がノズルの側面に対して当接し、嵌合するようにしてもよい。
【0074】
実施形態では逆止弁3は被押圧部34と逃げ部35を一対ずつ備えていたが例えばスリット33に対して片側だけに設けるようにしても構わない。また、本発明に係る逆止弁は実施形態に示される注入器だけに用いられるものではなく、その他の種々の注入器に対して適用可能である。特に内部の液体や流動性補修材が高圧となる用途に対して好適に用いることができる。また、逆止弁自体を製造する手間やコストについても従来のものと比較して低減できる。
【0075】
被押圧部34及び逃げ部35の形状は実施形態に記載されたものに限られない。すなわち、被押圧部34は、胴体32が筒体2内に挿入された状態で、胴体32の先端部側面において筒体2の内側周面と接触してスリット33の幅方向に押圧される部分でよい。また、逃げ部35は、被押圧部34が筒体2の内側周面と接触している状態で、胴体32の先端部側面において筒体2の内側周面に対して所定距離離間している部分であればよい。より具体的には、被押圧部34が円筒側面以外の形状で例えば軸方向に延びる平面を有していてもよいし、逃げ部についても角柱状の壁面を有する者に限られず、例えば軸方向に延びる平面を有するものであってもよい。
【0076】
スリット33に対する被押圧部34及び逃げ部35の配置については実施形態に限られるものではない。すなわち、被押圧部34によるスリット33の押圧方向を示すベクトルがスリット33を幅方向に横切るようなものであればよい。また、逃げ部35についてもスリット33の長さ方向が逃げ部35と交差する、あるいは斜めに横切るように構成されていればよい。
【0077】
逆止弁3を筒体2に対して固定するための構造は溶着に限られるものではなく、その他の固定部材を用いて逆止弁3と筒体2とが一体となるように固定してもよい。
【0078】
螺合構造7については中空容器4と蓋体6との間に設けられていればよく、中空容器4の内側周面に雌ねじ72が形成され、蓋体6の中栓体61の外側周面に雄ねじ71を形成するようにしてもよい。また、中栓体61による気密性をより向上させるために中栓体61の先端にパッキンを設けてもよい。
【0079】
蓋体6については、かならずしも二重管構造を有するものでなくてもよく、例えば中栓体の外側端からさらに外側に突出するようにユーザにより蓋体6を回転させるために把持される把持部を形成しても構わない。
【0080】
蓄圧機構TNは、注入機構INに対して直交して設けられたものでなく、斜めに取り付けられるものであってもよい。要するに、注入機構INから分岐して蓄圧機構TNが設けられるものであればよい。また、蓄圧機構TNを構成する中空容器4の形状は円筒管形状のみに限られるものではない。例えば、中空容器4を基端側が先端側よりも細い二段円筒形状にしてもよい。このようなものにすれば、注入機構INに対して中空容器4が突出している長さ寸法を短くして注入器100自体をコンパクトに構成することができる。しかも、蓋体6が取り付けられる際に中空容器4内に押し込む気体の体積も大きくできるので、実施形態と同等又はそれ以上に中空容器4内の気体を予圧しておくこともできる。
【0081】
実施形態では補修対象はクラックAOであったが、その他の補修対象に本発明を用いても構わない。また、流動性補修材の一例として接着剤Lを挙げたが、例えば、コーキング材等のその他のものにも本発明の流動性補修材注入器は用いることができる。また、流動性補修材の供給源はグリスガンに限られるものではなく、コーキングガンや例えばシリンジ等により人力で補修対象内に流動性補修材を注入するようにしてもよい。
【0082】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0083】
100・・・注入器(流動性補修材注入器)
IN ・・・注入機構
TN ・・・蓄圧機構
1 ・・・座金
11 ・・・薄円板部
12 ・・・円筒部
2 ・・・筒体
21 ・・・おねじ
22 ・・・連通孔
23 ・・・台座部
3 ・・・逆止弁
31 ・・・鍔部
32 ・・・胴体
33 ・・・スリット
34 ・・・被押圧部
35 ・・・逃げ部
CV ・・・カバー
4 ・・・中空容器
5 ・・・仕切り部材
6 ・・・蓋体
61 ・・・中栓体
62 ・・・外筒
63 ・・・凸条
7 ・・・螺合構造
71 ・・・雄ねじ
72 ・・・雌ねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9