(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】骨カッター及び軟組織保護装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/14 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
A61B17/14
(21)【出願番号】P 2021502993
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2019069819
(87)【国際公開番号】W WO2020020898
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-08-24
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500454769
【氏名又は名称】ウニフェルジテイト・ヘント
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Gent
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ステイン・ヘレホッツ
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-215202(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020581(WO,A1)
【文献】特表2017-536909(JP,A)
【文献】特表2016-511074(JP,A)
【文献】国際公開第2017/139674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/14
A61B 17/58
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の骨を切断するための骨切断システムであって、前記骨の切断に適応された手術用骨切断ツール(200、220、230)を含み、前記手術用骨切断ツール(200、220、230)は、前記手術用骨切断ツールを切断ロボットまたは機械に固定するための第1の先端部(252)と、それと反対側の前記手術用骨切断ツールの端部における第2の先端部(254)とを有し、前記手術用骨切断システムはさらに保護システム(100)を含み、前記保護システム(100)は、前記手術用骨切断ツールまたは前記手術用骨切断ツールのフレームに取り付け可能な保護要素(101、111、121、131、141、151、161)を含み、
前記保護要素は介在部分を含み、前記介在部分は、前記保護要素が前記手術用骨切断ツールまたは前記手術用骨切断ツールの前記フレームに取り付けられたときに、前記介在部分が前記手術用骨切断ツール(200,220,230)が前記骨の周囲の軟組織に切り込むのを防ぐために、前記手術用骨切断ツールを用いて切断する間、前記骨の周囲の前記軟組織と前記手術用骨切断ツールとの間に介在するように、前記手術用骨切断ツールの前記第2の先端部の少なくとも一部を覆い、
前記手術用骨切断ツールを用いて切断する間に、前記保護要素は前記手術用骨切断ツール(200、220、230)に一致するように追従し、前記手術用骨切断システムは前記骨に対する前記保護要素の接触力を抽出するための少なくとも1つのセンサ(500、511)を含む、前記骨切断システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサは、前記骨に対する前記保護要素の接触力を検知するために前記保護要素上に設けられたかまたは前記保護要素の中に組み込まれたセンサ(500)を含む、請求項1に記載の骨切断システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサは、前記手術用骨切断ツールと前記骨との間の相互作用を検知するために前記手術用骨切断ツールまたは前記手術用骨切断ツールの前記フレーム上に設けられたセンサ(511)を含む、
請求項1又は2に記載の骨切断システム。
【請求項4】
前記システムは、前記手術用骨切断ツールと前記骨との間の相互作用の前記検知に基づいて、前記骨に対する前記保護要素の接触力を得るように適応された、請求項3に記載の骨切断システム。
【請求項5】
前記介在部分は、前記手術用骨切断ツールの前記第2の先端部の少なくとも一部を覆うための湾曲部分である、
請求項1から4のいずれかに記載の骨切断システム。
【請求項6】
前記保護システムはさらに、前記保護要素(111、121、131、141、151、161、171)を保持するためのアーム(311、321、331)を含み、前記アーム(311、321、331)は前記切断ロボットまたは機械の前記手術用骨切断ツールまたは前記手術用骨切断ツールの前記フレーム(222、232)に取り付け可能であり、前記アームは、前記手術用骨切断ツールを用いて切断する間に前記手術用骨切断ツール(200、220、230)に沿って追従するように位置している、
請求項1から5のいずれかに記載の骨切断システム。
【請求項7】
前記介在部分は、前記骨から軟組織を分離するための軟組織セパレータを含む、
請求項1から6のいずれかに記載の骨切断システム。
【請求項8】
前記軟組織セパレータは、鋭いエッジ、丸い端部、鋭い円形状、機械的に動く切断デバイス、機械的に振動するエッジ、電気焼灼ナイフ、または圧力流体ジェットのポートうちのいずれかである、請求項7に記載の骨切断システム。
【請求項9】
前記保護システムは、残骸を取り除くための冷却システム(323、326、334)及び/または吸引器システム(322、325)を含む、
請求項1から8のいずれかに記載の骨切断システム。
【請求項10】
前記保護要素(131、151、161)は、前記手術用骨切断ツールの前記第2の先端部の少なくとも一部を受け取って支持するための支持部分を含む、
請求項1から9のいずれかに記載の骨切断システム。
【請求項11】
前記介在部分は、前記手術用骨切断ツールの前記第2の先端部上で曲がって前記手術用骨切断ツールの側面の少なくとも一部を覆う湾曲部分(121、131、141、151、161、171)である、請求項1から10のいずれかに記載の骨切断システム。
【請求項12】
前記部分は、前記手術用骨切断ツール(230)の前記第2の先端部を支持するための軸受(154、164)を含む、請求項
10又は11に記載の骨切断システム。
【請求項13】
前記保護要素の少なくとも一部は、幅wbpが前記手術用骨切断ツールの幅よりも大きい、
請求項1から12のいずれかに記載の骨切断システム。
【請求項14】
前記骨及び前記手術用骨切断ツールを空間内で配置するためのロボット及びナビゲーションシステムをさらに含む、
請求項1から13のいずれかに記載の骨切断システム。
【請求項15】
前記骨切断システムは、前記ナビゲーションシステム、骨形状及び前記センサからの情報に基づいて前記切断を自動で行うための制御装置を含む、請求項
14に記載の骨切断システム。
【請求項16】
前記骨切断システムは、前記切断を手動で行うように適応され、さらに、機械的ガイドシステムであって、前記骨に、または前記システムを所定の方向に沿ってガイドするための外部支持体に接続された前記機械的ガイドシステムを含む、
請求項1から15のうちのいずれかの請求項に記載の骨切断システム。
【請求項17】
前記手術用骨切断ツールは細長い、
請求項1から16のうちのいずれかの請求項に記載の骨切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術用器具の分野に関する。より具体的には、軟組織の保護を得るための骨カッター用の器具及びこのような器具を含む骨カッターに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、多くの外科的介入において骨切断を行う必要がある。たとえば、骨または骨の一部をインプラントと置換することは比較的通常行われる介入である。膝及び膝関節置換だけで、毎年100万を超える介入が関連していると推定される。しかし満足度は一定ではない。介入の約90%は10~15年間続くが、他では多くの問題が生じている。たとえば無菌性の緩み、不安定性、感染、ポリエチレン摩耗、関節線維症、及びアラインメント不良である。これらの問題の多くは、質の高い切断と正確な切断面を得ること、及び維持する全ての構造体に対する損傷を最小限にすることで侵襲性を減らすことによって、軽減することができる。
【0003】
骨の一部を置換する場合、この種の介入に関連する主な問題点は、一方で、置換すべき領域の特定であり、他方で、実際の介入及び領域の除去を計画どおりに行うことに関する。特定の場合として、関節の軟骨が損傷を受けている場合、関節内の骨の損傷部分(除去する必要がある)を正確に特定しなければならない。放射線イメージングなどのスキャニングを行えば、手術計画(術前または術中)の間に、切断してインプラントと置換する必要がある領域の特定に役立つ可能性がある。また、介入の間、切断して除去する箇所は、除去する必要がある領域より多くても少なくてもいけないため、切断の精度が重要である。
【0004】
詳細には、骨の領域として一般的に、腱、靱帯、及び軟組織が挙げられ、これらは骨に非常に近い。腱及び靱帯は骨の特定の領域で骨に固定されているが、骨上を延びて骨に部分的に付着している可能性がある。これらの靱帯及び筋肉は、たとえ切断箇所が骨に対する靱帯及び腱の固定点から離れていても、切断中に損傷を受ける場合がある。特に、骨が異形で介入中のアクセス性が制限される領域(たとえば、後顆間区)において危険性が高い。軟組織が損傷すると、さらに問題が生じて回復が延び、場合によっては元の動きが完全に回復する可能性がなくなるため、その人の生活の質が全面的に低下する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態の目的は、骨カッターにおける靱帯に対する保護、及びこのような保護を含む骨切断用システムであって、外科的介入中に骨の周囲の軟組織の損傷を効果的に減らすシステムを提供することである。
【0006】
本発明は、対象者の骨を切断するための骨切断システムであって、骨切断システムは、細長い手術用骨切断ツールを含み、細長い手術用骨切断ツールは、骨切断ツールを切断ロボットまたは機械に固定するための第1の先端部と、それと反対側の第2の先端部とを有し、骨切断システムはさらに保護システムを含み、保護システムは、細長い骨切断ツールに取り付け可能な保護要素を含み、保護要素は介在部分を含み、介在部分は、保護要素が細長い骨切断ツールまたはそのフレームに取り付けられたときに、細長い切断ツールの少なくとも第2の先端部を覆って、細長い切断ツールを用いて切断する間に介在部分が軟組織と骨切断ツールとの間に介在するようにして、骨切断ツールが軟組織に切り込むのを防ぎ、また骨切断ツールを用いて切断する間に、保護要素は骨切断ツールに一致するように追従する、骨切断システムに関する。骨切断システムは、骨に対する保護要素の接触力を抽出するための少なくとも1つのセンサを含む。
【0007】
少なくとも1つのセンサを骨切断システムの任意の部分に含めてもよい。たとえば、しかしこれに限定されないが、細長い骨切断ツールの一部、保護システムの一部、または骨切断ツール及び/または保護システムが取り付けられ得るフレームまたはロボットの一部などである。
【0008】
少なくとも1つのセンサは、骨に対する保護要素の接触力を直接または間接的に検知するためのセンサであってもよい。
【0009】
検知は、たとえば力センサまたはそこから力を得ることができる任意の好適なセンサ(たとえば、圧力センサなど)によって行ってもよい。
【0010】
少なくとも1つのセンサは、骨に対する保護要素の接触力を含む結合力を検知するためのセンサまたはセンサの組み合わせであってもよく、たとえば、細長い切断ツールの切断力及び骨のエッジに対する保護要素の力(たとえば、保護要素の介在部分の力)を複合測定するためのセンサである。
【0011】
介在部分は、保護要素を細長い骨切断ツールまたはそのフレームに取り付けたときに、細長い切断ツールの第2の先端部に位置させてもよい。
【0012】
第1の先端部は切断ロボットまたは機械によって直接駆動してもよい。第2の先端部は直接駆動されなくてもよいが、第1の先端部を駆動させることによって動く。
【0013】
保護要素が、切断すべき骨と軟組織との間に位置することは利点である。これによって、骨切断ツールが軟組織に損傷を与えないことが確実になる。また、骨切断ツールとは独立して取り付けた別個の保護要素を用いることが難しい場合に骨と靱帯との間の保護を行えることも、本発明の実施形態の利点である。介在要素は、細長い切断ツールの先端部の少なくとも一部を覆うための湾曲部分であってもよい。湾曲部分は、細長い切断ツールの頂部と細長い切断ツールの側面の一部の両方を覆ってもよい。
【0014】
保護システムはさらに、保護要素を保持するためのアームを含んでいてもよい。アームは、骨切断ツールまたは骨切断ツールフレームに取り付け可能である。またアームは、骨切断ツールに一致するように追従するように位置している。
【0015】
アームは典型的に厚さが骨切断ツール以下であってもよい。なぜならば、アームは、骨内に形成された溝穴内で骨切断ツールに追従するからである。骨切断ツールとともに動く間にセパレータを確実に保持できること、また、たとえ靱帯が骨表面に付着しているかまたは貼り付いていても、セパレータによって効果的な靱帯分離が得られ得ることが、本発明の実施形態の利点である。
【0016】
介在部分は、骨から軟組織を分離するための軟組織セパレータを含んでいてもよい。
【0017】
骨から靱帯を分離することが、たとえば骨の表面から靱帯を引き離すこと、軟組織セパレータの本体によって靱帯を分離することによって可能であることが、本発明の実施形態の利点である。
【0018】
軟組織セパレータは、鋭いエッジ、丸い端部、鋭い円形、機械的に動く切断デバイス、機械的に振動するエッジ、電気焼灼ナイフ、または圧力流体ジェットのいずれかであってもよい。
【0019】
保護システムは、残骸を取り除くための冷却システム及び/または吸引器システムを含んでいてもよい。
【0020】
生体組織に対する熱損傷を減らす水冷を使用できること、及び/または骨の切り屑及び残骸により骨切断ツールを詰まらせる可能性を下げるために吸引器を使用できることが、本発明の実施形態の利点である。これらのシステムのいずれかまたは両方が、たとえば、サイドアームまたは切断ツール自体に含まれていてもよい。
【0021】
保護要素は、骨切断ツールの第2の典型的に非駆動の先端部を支持するための軸受を含んでいてもよい。
【0022】
第2の先端部においてミリングツールを支持する結果、切断ツールが骨の一方の端部から反対の端部へ戻ることなく動くことによって骨を完全に切断する単一動作によって、長くて細いミリングカッターを用いて小さい骨切断を行えることが本発明の実施形態の利点である。
【0023】
特定の形状及び動作パラメータを伴う回転ミリング切断ツールを用いることで、残存する骨に対する熱負荷を、従来技術(たとえば、振動鋸)と比べて著しく減らせることが本発明の実施形態の利点である。高い精度及び良好な平坦度の切り口が本発明によって可能になるとともに、セメントレスインプラントに対する良好な骨内部成長を実現する最適な境界条件が得られる。
【0024】
特定の形状及び動作パラメータを伴う回転ミリング切断ツールを用いることで、切断力及び振動が従来技術と比べて著しく低くなり、骨安定化に対する要求が下がり、骨運動に起因する誤差が小さくなることが本発明の実施形態の利点である。
【0025】
保護要素は、使用中に幅が骨切断ツールより大きくてもよい。保護要素は、骨の外側の位置において骨切断ツールに一致するように追従してもよい。
【0026】
保護要素をサイドアーム上に取り付けたとき、このようなサイドアームを骨内の細長い孔の内部の骨切断ツールのわきに位置させる一方で、保護要素またはその介在部分を骨内に形成された細長い孔の外側に位置させてもよい。セパレータを支持するアームは、厚さを切断ツールよりも薄くすることができ、またツールの切断側と反対側に位置させることができる結果、アームは、切断ツールによって形成された溝穴において切断ツールとともに動けることが本発明の実施形態の利点である。そうすることで、保護装置をフレームに接続するアームに対する付加的な経路によって軟組織接触が増え、したがって損傷を与える危険性が減る。靱帯を滑らかに均一にずらすことによって良好な靱帯保護が得られることが、本発明の実施形態の利点である。
【0027】
いくつかの実施形態では、保護システムは、骨に対する保護要素の接触力を検知するためのセンサと、骨に対する骨切断ツールの力を検知するための付加的なセンサとの両方を含んでいる。
【0028】
セパレータと骨表面との間の接触をモニタリングできることが、本発明の実施形態の利点である。この結果、たとえ骨形状が未知であっても、保護装置と骨の外側との間の所定の接触を確実にする自動または手動制御が可能になってもよい。後者は、たとえナビゲーションを用いないときでも得ることができる。
【0029】
また本発明は、前述したような骨切断ツール及び保護システムを含む骨切断システムに関する。
【0030】
組織を骨切断ツールの切断部分から離れるように局所的にずらすことによって、切断すべき骨の周囲の組織に対する損傷が最小となる靱帯保護が組込まれた骨切断システムが提供されることは利点である。
【0031】
骨切断ツールは細長い骨切断ツールであってもよく、保護要素は細長い骨切断ツールの第2の典型的に非駆動の先端部上で曲がって、側部の一部を覆っている。
【0032】
完全な骨切断とともに靱帯保護が確実に行われることが、本発明の実施形態の利点である。
【0033】
保護要素は、アームによって骨切断ツールのフレームに取り付けられた湾曲部分を含んでもよい。湾曲部分はフック形状であってもよい。
【0034】
セパレータは単純なセットアップで骨表面に容易に追従できることが、本発明の実施形態の利点である。
【0035】
湾曲部分は細長い骨切断ツールの第2の典型的に非駆動の先端部上で曲がって、湾曲部分が細長い骨切断ツールの側面の少なくとも一部を覆っていてもよい。細長い骨切断ツールはミリングカッターであってもよい。
【0036】
完全な骨切断とともに靱帯保護が確実に行われることが、本発明の実施形態の利点である。
【0037】
たとえば、保護要素と骨との間または切断ツールと骨との間の検知された接触力に基づいて切断プロセスをガイドするために、骨切断システムはセンサフィードバックを含んでもよい。
【0038】
セパレータと骨表面との間の接触をモニタできること、切断動作をセンサの測定値に従って適応させてもよいこと、たとえば接触損失が検出されたら切断動作を停止してもよいこと、またはセパレータと骨またはカッターとの間の接触を保持するように切断ツール経路を調整できることが、本発明の実施形態の利点である。
【0039】
骨切断システムにはさらに、適応性の切断制御が含まれていてもよい。このような適応性の切断制御には、取得したセンサフィードバックの関数として切断を適応させることが含まれてもよい。
【0040】
切断及び送り速度を骨の硬度に従って適応させてもよく、熱損傷を制御できることが、本発明の実施形態の利点である。
【0041】
骨切断システムはさらに、切断ツール経路を能動的または受動的に制御するために骨及びロボットを配置するためのナビゲーションシステムを含んでもよい。
【0042】
骨切断システムは、ナビゲーションシステム、骨形状及び任意的な力センサからの情報に基づいて切断を自動で行うための制御装置を含んでもよい。任意的に、外科医との対話情報を考慮してもよい。
【0043】
骨切断システムは、切断を手動で行うように適応されてもよく、さらに、骨に接続されたかまたはシステムを所定の方向にガイドするための外部フレームに接続された機械的ガイドシステムを含んでいてもよい。骨、ロボットシステム、または外部フレームに接続された機械的ガイドシステムによって、切断ツールの移動を切断面内の平行移動及び回転に制限してもよい。また本発明は、前述したような骨切断ツール及び保護システムを含む部品のキットに関する。
【0044】
また本発明は、手術用骨切断ツール用の保護システムに関する。システムは保護要素を含み、保護要素は、骨切断ツールまたは骨切断ツールに連結されたフレームに取り付け可能であるかまたは取り付けられており、その構成は、骨切断ツールを用いて切断する間に、保護要素は骨切断ツールに一致するように追従し、保護要素は介在部分を含み、介在部分は、軟組織に囲まれた骨を切断する間に骨切断ツールまたはフレームに取り付けられていると、軟組織と骨切断ツールとの間に介在して、骨切断ツールが軟組織に切り込むのを防ぐものである。
【0045】
一態様では、本発明はまた、外科手術の対象者の骨を切断するための骨切断システムであって、骨の切断に適応された細長い手術用骨切断ツールを含み、細長い手術用骨切断ツールは、細長い手術用骨切断ツールを切断ロボットまたは機械に固定するための第1の先端部と、それと反対側の細長い手術用骨切断ツールの端部における第2の先端部とを有する骨切断システムに関する。骨切断システムはさらに、保護システムを含み、保護システムは、細長い骨切断ツールまたは細長い骨切断ツールのフレームに取り付け可能な保護要素を含み、保護要素は介在部分を含み、介在部分は、保護要素が細長い骨切断ツールまたは細長い骨切断ツールのフレームに取り付けられたときに、細長い骨切断ツールの第2の先端部の少なくとも一部を覆って、細長い切断ツールを用いて切断する間に骨の周囲の軟組織と骨切断ツールとの間に介在部分が介在するようにして、骨切断ツールが骨の周囲の軟組織に切り込むのを防ぐ。保護要素はさらに、細長い骨切断ツールの第2の先端部の少なくとも一部を受け取って支持するための支持部分を含む。このような支持は典型的に、支持部分と細長い骨切断ツールの第2の先端部との間の接触、たとえば直接接触、を通して得てもよい。このような支持部分は、長さが最小で3cm、好ましくは長さが少なくとも4cmで、直径が2~5mm、好ましくは直径が3~4mmの細長い骨切断ツールに対して用いてもよいため優位である。
【0046】
添付の独立及び従属請求項において、本発明の特定の好ましい態様について述べる。従属請求項からの特徴を、必要に応じて独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせてもよく、単に請求項で明白に述べたとおりでなくてもよい。
【0047】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明する実施形態(複数可)から明らかとなり、これらを参照して明瞭になる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の実施形態による保護を含む骨切断ツールの実施形態を例示する図である。
【
図2】本発明の実施形態による保護システムを伴う骨切断ツールの実施形態を例示する図である。
【
図3】本発明の実施形態により骨壁を除去する間の保護システムを伴う骨切断ツールの異なる斜視図を例示する図である。
【
図4】本発明の実施形態により骨壁を除去する間の保護システムを伴う骨切断ツールの異なる斜視図を例示する図であり、より良好に見えるように骨の上部を図面から取り除いた断面図を示す。
【
図5】溝穴切削を行う間の
図3及び
図4の骨切断ツールを例示する図であり、保護要素を取り除いた図である。
【
図6】本発明の実施形態による保護システムを伴う骨切断ツールを例示する図である。
【
図7】本発明の実施形態による保護システムを含む骨切断ツールの異なる実施形態を、異なる重なり度合いで例示する図である。
【
図8】本発明の実施形態による保護システムを含む骨切断ツールの異なる実施形態を、異なる重なり度合いで例示する図である。
【
図9】本発明の実施形態による保護システムを含む骨切断ツールの異なる実施形態を、異なる重なり度合いで例示する図である。
【
図10】単一ステップ切断を行っている、本発明の実施形態による保護システムを含む骨切断ツール、及び切断部品の詳細を例示する図である。
【
図11】
図10に示す骨切断ツールの異なる斜視図を例示する図である。
【
図12】本発明の実施形態による保護システムを含む骨切断ツール、及び使用している骨切断ツールを例示する図である。
【
図13】本発明の実施形態による保護システムを含む骨切断ツールを例示する図である。
【
図14】骨壁を除去する間の
図2の実施形態を例示する図である。
【
図15】本発明の実施形態による自動切断を行うための手段を含む保護システムを含む骨切断ツールを例示する図である。
【
図16】本発明の実施形態による手動切断を行うための手段を含む保護システムを含む代替的な骨切断ツールを例示する図である。
【
図17】本発明の実施形態による手動切断を行うための手段を含む保護システムを含む代替的な骨切断ツールを例示する図である。
【
図18】本発明の実施形態による複数の異なる保護要素例示する図である。
【
図19】本発明の実施形態による骨切断ツールを例示する図である。
【
図20】骨エッジの決定を行う本発明による骨切断システムの実施形態を例示する図である。
【
図21】本発明の実施形態による骨切断システムが用いるミリング速度の最適化アルゴリズムで用いる多くのパラメータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
いくつかの図面では、骨切断システムのセンサ要素を明白には示していないが、本発明の実施形態による骨切断システムの他の標準的または随意的な要素、特徴、及び利点に重点を置いている。しかしながら、当業者であれば分かるように、他の図面に示すようにまたは例示的な実施形態の以下の詳細な説明で説明するように、センサは組み込まれてもよい。
【0050】
図面は単に概略的であり非限定的である。図面では、説明を目的として、一部の要素のサイズが誇張されて一定の比率では描かれていない場合がある。
【0051】
請求項におけるどの引用符号も、範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0052】
異なる図面では、同じ引用符号は同じまたは類似の要素を指す。
【0053】
本発明を特定の実施形態に対して特定の図面を参照して説明するが、本発明はそれらには限定されず請求項のみによって限定される。寸法及び相対寸法は本発明の実際の実施化には対応しない。
【0054】
さらに、説明及び請求項における用語「第1」「第2」などは同様の要素を区別するために用いており、必ずしも順序を順位付けまたは任意の他の方法において時間的、空間的のいずれかで記述するためのものではない。当然のことながら、そのように用いる用語は適切な状況の下では交換可能であり、本明細書で説明する本発明の実施形態は、本明細書で説明または例示した以外の順序での動作が可能である。
【0055】
また、説明及び請求項における用語「の上」「の下」などは便宜的に用いており、必ずしも相対位置を説明するためではない。当然のことながら、そのように用いる用語は適切な状況の下では交換可能であり、本明細書で説明する本発明の実施形態は、本明細書で説明または例示した以外の向きで動作することができる。
【0056】
なお、請求項で用いる用語「含む」は、その後に列記される手段に限定されると解釈してはならない。他の要素またはステップを除外するものではない。したがって、記載した特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの存在を言及通りに特定していると解釈すべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップまたはコンポーネント、またはそれらのグループの存在または付加を排除するものではない。したがって、表現「手段A及びBを含むデバイス」の範囲は、コンポーネントA及びBのみからなるデバイスに限定してはならない。意味するところは、本発明に関しては、デバイスの唯一の関連性のあるコンポーネントはA及びBであるということである。
【0057】
本明細書の全体を通して「一実施形態」または「実施形態」に言及した場合、その意味は、実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造体、または特性は、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれるということである。したがって、本明細書の全体を通していろいろな場所で語句「一実施形態において」または「実施形態において」が現れた場合、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではないが、全くないわけでない。さらに、1つ以上の実施形態において、特定の特徴、構造体、または特性を任意の好適な方法で組み合わせてもよいことは、当業者であれば本開示から明らかである。
【0058】
同様に、当然のことながら、本発明の典型的な実施形態の説明において、本発明の種々の特徴を単一の実施形態、図、またはその説明においてひとまとめにすることがあるが、その目的は、本開示を効率化し本発明の種々の態様のうちの1つ以上を理解することを助けるためである。しかし、この開示方法は、請求に係る発明に必要な特徴が各請求項で明確に列挙したものよりも多いという考えを反映していると解釈してはならない。むしろ、以下の請求項で反映しているように、本発明の態様は、先に開示した単一の実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、詳細な説明に続く請求項は、本明細書によってこの詳細な説明に明確に組み込まれており、各請求項は本発明の別個の実施形態として自立している。
【0059】
さらに、本明細書で説明するいくつかの実施形態には、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴が含まれているが他は含まれていない一方で、種々の実施形態の特徴を組み合わせたものは本発明の範囲内であることが意図され、種々の実施形態を構成する。これは当業者であれば分かることである。たとえば、以下の請求項では、請求に係る実施形態のいずれかを任意の組み合わせで用いることができる。
【0060】
本明細書で示した説明では、多くの具体的な詳細について述べている。しかし当然のことながら、本発明の実施形態をこれらの具体的な詳細を伴うことなく実施してもよい。他の場合では、良く知られた方法、構造体、及び技術については詳細には示していない。これはこの説明の理解が不明瞭にならないようにするためである。
【0061】
本発明の実施形態で骨切断ツールに言及するとき、たとえばミリングなどの任意の好適な方法で骨に切り込むかまたは鋸を入れることを可能にするツールに言及する場合がある。
【0062】
本発明の実施形態で骨内の溝穴または細長い孔に言及する場合、骨内に形成された(平坦なことが多い)切り口に言及する。これは切断面と言うこともできる。
【0063】
本発明の実施形態で鋸の切断部分に言及する場合、移動時に骨を切断することができる鋸の部分に言及する。細長い骨切断ツールでは、これは典型的に細長い切断ツールの側面の一部である。本発明の実施形態で骨切断ツールの幅に言及する場合、典型的には、切断時に骨内に形成される溝穴の幅を決めるそのサイズに言及する。ミリングドリルの例の場合、これはドリルの直径に対応し、鋸の例の場合、これは典型的に鋸刃の厚さに対応する。本発明の実施形態で保護要素の幅に言及する場合、典型的には、切断時に骨内に形成される溝穴の幅によって決定される方向でのサイズに言及する。
【0064】
本発明によって、骨に付着しているかまたはその隣に位置する靱帯の効果的な保護が提供される。本発明の実施形態による保護システムによって、骨手術の間に骨切断ツールによって靱帯が損傷を受けるのを防ぐ。好適な骨手術としては関節形成(たとえば、膝関節置換)が挙げられるが、本発明はそれに限定されず、肘手術、股関節置換などに適用することができる。
【0065】
骨の一部を切断するとき、骨切断ツールの導入が深すぎて、靱帯がある骨の側面から突き出る可能性が十分にある。靱帯に損傷を与えると、手術中及び後の回復中に重大な面倒な問題が生じる可能性がある。詳細には、靱帯は骨幹に沿って骨に固定されているが、骨に付着しているかまたは部分的に付着している場合がある。このため靱帯は、骨を切断する間の損傷に非常に弱い。
【0066】
本発明の実施形態で靱帯、腱、または軟組織に言及する場合、典型的には、これらの3つの組織のいずれかまたは全てについて述べる可能性がある。靱帯及び腱は典型的に同じ構造であるが、靱帯は骨と骨とをつなげており、腱接は筋肉と骨とをつなげている。軟組織とは両方の集合体であるが、他の構造も膝関節包として含んでいる。膝関節包も介入中に保護する必要がある。
【0067】
全般的に、本発明のデバイスである手術用骨切断ツール用の保護システムについて説明する。システムは、骨切断ツールまたは骨切断ツールに連結されたフレームに取り付け可能であるかまたは取り付けられている保護要素を含んでいる。その結果、保護要素の構成としては、骨切断ツールを用いて切断する間に保護要素は骨切断ツールに一致するように追従し、保護要素は介在部分を含み、介在部分は、軟組織に囲まれた骨を切断する間に骨切断ツールまたはフレームに取り付けられていると、軟組織と骨切断ツールとの間に介在し、骨切断ツールが軟組織に切り込むのを防ぐ。骨切断ツールが細長い手術用骨切断ツールであるとき、典型的には、骨切断ツールは、骨切断ツールを切断ロボットまたは機械に固定するための第1の先端部と、それと反対側の細長い手術用骨切断ツールの端部にある第2の先端部とを有している。そして、保護要素は介在部分を含み、介在部分は、保護要素が細長い骨切断ツールまたは細長い骨切断ツールのフレームに取り付けられたときに、細長い骨切断ツールの第2の先端部の少なくとも一部を覆って、細長い切断ツールを用いて切断する間に骨の周囲の軟組織と骨切断ツールとの間に介在部分が介在するようにして、骨切断ツールが軟組織に切り込むのを防ぎ、細長い切断ツールを用いて切断する間に、保護要素は骨切断ツールに一致するように追従する。
【0068】
本発明のデバイスによって、切断中に軟組織が確実に保護される。保護は保護要素によって与えられる。保護装置は骨切断ツールの少なくとも一部(細長い骨切断ツールの場合、典型的には、ツールのアクチュエータに取り付けられた端部と反対側のツールの先端部)に重なってこれを覆う。ツールがツールのアクチュエータに(すなわち、切断ロボットまたは機械に)取り付けられている先端部を典型的に、第1の先端部と言う。保護要素が用いられている先端部を典型的に、第2の先端部と言う。典型的に、このような先端部は直接駆動はされないが、第1の先端部における駆動が原因で動く。切断ツールが細長い切断ツールである実施形態では、第2の先端部は典型的に、細長い切断ツールの頂部である。また保護要素(セパレータであり得る)は、骨切断ツールに一致するように(すなわち、同じ方向に同時に)動いて、骨切断ツールにその切断経路上で、骨の中を通って追従する。その結果、保護要素を軟組織と骨との間で摺動させるかまたは割り込ませることができるため、保護要素は軟組織と切断ツールとの間に介在するかまたは挿入される。したがって、靱帯のような軟組織は骨切断ツールの切断部分から離れている。このようにして、切断が行われているときに骨切断ツールは靱帯に到達しない。なお「切断経路」とは、本体を通る溝穴または切り口になる経路である。切断経路は経路に沿って形成されて、切断ツールの平均的な動きに追従し、「従属的な動き」とも言われる。切断ツールの平均的な動作は典型的に、ツールの「切断動作」または「主な動き」に追従しない。これらは、本体からの材料除去となるツールの動作である。全般的に、従属的な動きと切断動作とは、異なる方向に行われる。
【0069】
第1の態様では、本発明は、保護システムを含む骨切断システムに関する。保護システムは、骨切断ツールまたは鋸の一部を覆うことができる保護要素を含み、その切断経路に追従して骨切断ツールと同時に動かすことができる。
図1に、保護システム100を例示する単純な実施形態を示す。保護要素101として働くプレートは、エッジ102及び取付部分103を有し、これらは骨切断ツール200に連結されている。骨切断ツール200はこの場合、その切断部分201とともに横向きの動きによって切断するミルである。いくつかの実施形態では、保護要素101は骨切断ツール200の一体部分である。また保護要素は、骨から軟組織を分離するための軟組織セパレータとして機能してもよい。これについては後述する。説明を目的として、第1の先端部252と第2の先端部254を
図1に示す。
【0070】
保護要素として働くプレートをドリル200の中心回転軸に取り付けて、ドリルとともに回転することがないようにしてもよい。ドリルの直径が原因で、固定された中心回転軸を存在させることができない場合は、取付部分103に軸受を入れてドリルと比べて回転が減るようにしてもよい。他の実施形態では、ドリル及びプレートが両方とも回転してもよい。プレートの回転を用いて、骨から靱帯を、靱帯を切断することなく分離してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、保護要素101は骨より柔らかくてもよく(その結果、プレートは骨を切断することも損傷することもない)、しかし軟組織より硬くてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、保護要素は細長い骨切断ツールの第2の先端部上で曲がって、細長い骨切断ツールの側面の一部を覆っている。後者を、たとえば
図4、
図9、
図13、
図18、及び
図19に、より具体的に例示する。
【0073】
図2に保護システムの別の実施形態を示す。ここでは、湾曲部分111がセパレータとして機能する。アーム301が湾曲部分111を保持している。
図14にこのような実施形態を適用した例を示す。ここでは、丸鋸が骨400の壁401を切り進む。この場合、最初に骨の一部が、セパレータを取り付けることなく、鋸と骨壁401との間の安全な距離を維持しながら、取り除かれる。切断シャフト411の結果、このステップにおいて上部の骨の一部がすでに取り除かれている。そして壁401を切り進める(これについては、以下のセクション「2ステップ切断及び1ステップ切断」でさらに説明する)。鋸歯の直径が小さすぎて最初から保護要素を加えることはできないときには、2ステップ切断を用いてもよい。湾曲部分111は丸鋸210の刃先の一部を覆う。これを用いて、骨400(たとえば、近位脛骨、遠位大腿骨、大腿骨頭、または上腕骨頭)の骨壁401を除去することができる。アーム及び湾曲部分は移動可能であり、鋸の切断経路に追従する。湾曲部分の先端部または先端112(セパレータのエッジとして機能する)は、骨のエッジとわずかに重なって、軟組織と骨との間に介在するため、骨壁401を除去するときに鋸が軟組織に触れない。本発明は湾曲部分の先端に限定されず、セパレータの任意の好適なエッジを用いることができる。
【0074】
セパレータが切断経路に追従するという事実には、靱帯を切断領域から単に局所的に引き離して伸ばすという効果があり、これは比較的小さい。したがって、靱帯は保護されるだけでなく、切除処置中に受ける歪みが小さい。
【0075】
セパレータは種々の分離技術に基づいてもよい。たとえば、丸い端部を用いること、鋭い尖った形状を用いること、鋭い円形を用いること、電気焼灼ナイフを用いること、圧力流体ジェットを用いること、機械的に動く切断デバイスを用いること、または機械的に振動するエッジを用いることなどである。
【0076】
カッターのフレームに取り付け可能なアーム
図3に、保護システムを伴う切断システムの好ましい実施形態を示す。ここでは、湾曲部分121が、ミリングカッター220のヘッドエンドを覆うためのセパレータとして機能する。ミリングカッター220は、この場合は骨切断ツールである。またアーム311が湾曲部分121を保持している。アーム311は、ミリングカッター220と同じ向き及び方向に、またそれと同時に動く。たとえば、
図3に示すように、アーム311は、カッターのアクチュエータのフレーム222に取り外し可能または取り外し不能に取り付けてもよい。本発明はこれに限定されず、たとえば、アーム及びカッターの両方を、ロボットなどによって同じ経路に従って同時に動かしてもよい。
【0077】
図4に、
図3の湾曲部分及びミリングカッターの異なる斜視図(
図3の溝穴403に沿った断面図)を示す。ここでは、湾曲部分121が骨400の外部表面402にわずかに重なっていることが明瞭に分かる。湾曲部分121の先端122は骨と接触して配置され、セパレータのエッジとして機能する。骨切断ツール220は、切断経路に追従して、骨壁401を除去する。湾曲部分121は、骨切断ツール220とともに動きながら、靱帯と骨との間に割り込んで、骨の領域を切断する前に領域から靱帯を分離して持ち上げる。言い換えれば、湾曲部分122のエッジは骨400の外部表面402上を進み、そこに存在する任意の靱帯が骨から分離されて湾曲部分121上を滑る。したがって、ミリングカッター220のヘッドエンド221(湾曲部分121によって完全に包まれている)は湾曲部分121によって任意の靱帯から分離されているため、骨切断ツール220が靱帯に損傷を与えることはない。
【0078】
アーム及び切断溝穴
図3及び
図5に、アームを伴うセパレータを用いた溝穴切削の可能性を示す。アームは、骨切断ツールが形成した骨内の溝穴に合う。これについては、以下の「2ステップ切断及び1ステップ切断」セクションでさらに説明する。アーム311の厚さは、骨内の切除用溝穴のギャップ403と同じとすることもできるし、好ましくはギャップ403よりも薄い。このようにして、アーム及び湾曲部分121(
図3では骨の残っている上部404によって部分的に隠れている)は、骨切断ツールが、その外部表面に靱帯を伴う骨(または骨壁)から材料を除去している間に、骨切断ツールの切断経路に追従することができる。湾曲部分121の先端122によって靱帯が骨から引き離され、靱帯が骨切断ツールから保護される。これはまた
図4を参照して説明される。
【0079】
保護システム内のセンサ
保護システムは、骨に対する力を検知するためのセンサを含んでいてもよい。センサを、骨に対する保護要素の力を検知するために、もしくは骨に対する骨切断ツールの力を検知するために、または両方の組み合わせのために設けてもよい。骨に対する保護要素の力を検知するためにセンサを設ける場合、骨に対する介在部分の力または保護要素のアームの力を検知するためにセンサを設けてもよい。力の検知には、力センサによる力の直接検知、または骨に対する力を引き出し得るセンサ(たとえば、圧力センサなど)の力の間接的検知を挙げてもよい。センサは、骨に対する保護要素の接触力を引き出すことができる結合力を検知するためのセンサまたはセンサの組み合わせであってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、セパレータ及び/またはアームは、セパレータに印加された力を検知するためのセンサを含んでいてもよい。
図3及び
図15にその例を示す。センサ500が骨切断ツールのアーム311とフレーム222との間に含まれている。他の実施形態では、センサは、アームに沿ってもしくは保護装置/湾曲部分内に(アームに対する力を検知するため)または湾曲部分121上などにも含まれている。いくつかの実施形態では、別のセンサ(センサ511)も、湾曲部分骨接触力を抽出するために用いることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、セパレータに対する引っ張り力を検知することができ、これには、たとえば、湾曲部分121(またはより詳細には、その先端122)が骨表面402上に印加する力が含まれていてもよい。本発明は引っ張り力に限定されず、他の力及びトルクも測定することができる。ユーザはセンサからフィードバックを受け取ってもよい。これを用いて、たとえば骨形状に関するデータ(たとえば、CTスキャンから得られる)と組み合わせて、骨のエッジを見つけることができる。それに加えてまたはその代わりに、検知した力を用いて切断パラメータを調整してもよい。これについては後述する。センサを用いて、エッジの検知及び骨の切断の自動化を可能にする自動化ロボットシステムを促進してもよい。
【0081】
水冷及び残骸除去
本発明のいくつかの実施形態では、アーム及び/またはセパレータは残骸を除去するための手段を含んでいる。たとえば、
図6及び
図11に示すように、アーム321は、切りくず除去通路322(たとえば吸引器)及び/または流体用の導管323(たとえば、水を導入して残骸を取り除くため)を含んでいてもよい。
図11に、切りくず除去通路322(
図6)の取入口325、及び水または他の流体用の導管323(
図6)の出口326を示す。冷却及び/または洗浄のためにこのような流体を用いてもよい。骨切断ツールの温度ならびに骨及びその細胞の熱応力を下げるために、水を冷媒として用いてもよく、したがって導管232及び出口326が冷却システムを構成してもよい。いくつかの実施形態では、流体を導入してたとえば残骸を除去するための導管をミルの中央部分に位置させてもよく、したがって、骨切断ツールの切断部分を通して設けてもよい。
【0082】
着脱可能なセパレータ
本発明のいくつかの実施形態による保護要素(たとえばセパレータ)は着脱可能であってもよい。たとえば、
図5に示すように、湾曲部分121はそのアーム311から着脱可能であってもよく、その結果、ミリングカッター220のヘッドエンド221が曝露される。ヘッドエンド221は通常は保護要素があるためにアクセスできない。代替的な実施形態では、
図6及び
図11に示すように、湾曲部分131はそのアーム321に取り付けられているが、アーム321はフレーム232から着脱可能である。たとえば、アーム321は、アーム321をカッター230のアクチュエータのフレーム232またはシャーシに着脱可能に固定するブリッジピース324を含んでいてもよい。この結果、種々の切断及び穿孔可能性が可能になり、湾曲部分を使用するのは骨の外壁を除去する必要があるときのみである。
【0083】
広いセパレータ
図12に示す本発明のいくつかの実施形態では、湾曲部分151の選択を、その幅w
bpが、骨の中に骨切断ツールによって残された切除用溝穴の幅403(切除用溝穴の幅403は典型的には、溝穴が形成される細長い骨切断ツールの幅にほぼ対応する)に合わないように行ってもよい。溝穴切削の間、湾曲部分は骨の外側に留まっていなければならず、一方で骨切断ツール230及びアーム321は骨の内側である。湾曲部分151(溝穴よりも幅が広い)によって、軟組織と切断ツールとの間のシールディングが確実に改善される。たとえば、アームから広くなる湾曲部分151の部分によって突出部153を形成してもよい。この突出部153を、湾曲部分151の先端152と組み合わせて、切断用ガイドとして用いることができる。これによって、靱帯410の保護が改善されて、靱帯410に対するより滑らかでより均一な歪み及び骨切断ツールの切断部分からのより大きな分離が得られる。
【0084】
材料
本発明の実施形態では、湾曲部分及び/またはアームは生体適合性であってもよい。それらは金属製であってもよく(たとえば、鋼鉄製湾曲部分またはアーム)及び/または殺菌、消毒、及び/または抗菌特性を伴う材料が含まれていてもよい。
【0085】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の実施形態によるセパレータ及び骨切断ツールを含む骨切断システムに関する。
【0086】
骨切断ツールは、
図2の切断システム110に示すようなラジアルソーであってもよい。他の骨切断ツール、たとえば、振動または往復する鋸または他の切断技術であって機械的に動く刃先を用いて骨除去を行うものなどを用いてもよい。セパレータは切断経路に対して鋸の刃先の一部を覆うため、鋸が骨のその部分に到達する前に、セパレータが靱帯に接触した状態で入って靱帯を骨から引き離すことが確実になる。
【0087】
好ましい実施形態では、ミリングカッターを用いる。ミリングカッター220は、切断部分223及びシャフト224(
図4に示す)を含む。シャフトは、カッター220をそれ自体の軸の回りに回転させるためにフレーム222(
図3に示す)内のアクチュエータに連結されている。切断部分はドリル、ミルボールなどであってもよい。本発明の特定の実施形態では、ミリングカッターはエンドミルである。
図1及び
図3、
図4、
図6~
図13及び
図15~
図17に、本発明の実施形態による骨切断システムの典型的な実施形態を示し、セパレータとして機能する湾曲部分がヘッドエンドに重なって覆っているミリングカッターが含まれている。
【0088】
骨切断ツールに対するセパレータの形状
本発明のいくつかの実施形態では、セパレータは骨切断ツールの切断部分に重なっている。たとえば、セパレータは、くさびまたは湾曲部分などを形成してもよく、骨切断ツールの切断部分(具体的には、骨と接触する骨切断ツールの部分)上に延びている。湾曲部分は、
図7に示すように、骨と骨切断ツール200とが接触する領域から所定の距離Aだけ延びていてもよい。いくつかの実施形態では、距離Aは少なくとも1mmである。
【0089】
好ましい実施形態では、セパレータは骨切断ツールの切断部分の一部を包んでいる。たとえば、切断方向Dに対して、ミリングカッターの切断部分の一部を覆っていてもよい。切断方向Dは切断経路を取る方向であり、切断方向は、切断する外面と平行であることが好ましい。いくつかの実施形態では、湾曲部分141の先端及び当該先端を骨切断ツール200のエンドヘッドと結ぶ線によって、カッターの軸との角度Cが形成される。他方では、切断方向Dとカッター軸との間の切断角Eを規定することができる。好ましい実施形態では、切断角Eは保護角Cよりも大きい;C<E。これによって、適切に包むことが確実になる。たとえ切断方向が外部の骨表面の接線方向からわずかにずれたとしても、この構成によって靱帯に対する保護が依然として得られる。
【0090】
図7では、角度Cが鈍角の場合には、セパレータと骨切断ツールとの間に距離B(カッター軸の垂線と向かい合う)が存在することを示す。これは、それほど好ましくはない。なぜならば、角度Eが鈍角であることも必要であり、ミリングカッター(特に、エンドミル)は、カッター軸に垂直な切断方向Dでの切断に対して最適化されているからである。いくつかの実施形態では、
図8の完全な重なり線Lに示すように、角度Cは直角であり、したがって距離Bはゼロとなる。この結果、軸に垂直な方向Dが可能になる。好ましい実施形態では、角度Cは負であり、距離Sは、湾曲部分がカッター軸に対して切断部分201を覆う距離である。したがって、たとえ切断角Eが鈍角(不規則な表面に起因して介入中に生じ得る)の場合であっても、C<Eである限り、湾曲部分は依然として骨切断ツールのエンドヘッドを覆っており、靱帯分離が可能であり、骨切断ツールから靱帯が保護される。
【0091】
Eは固定角度ではなく、不規則な表面に起因して介入中の切断方向の違いを考慮して変わり得ることに注意されたい。C<Eを確実にすることによって、たとえば小さい保護角Cを与えることによって、湾曲部分とミリングカッターとの間の十分な重なりが確実になる。なぜならば、たとえ方向Dが比較的大きく変化しても、切断角Eを保護角Cよりも大きく保つことが容易にできるからである。
【0092】
この理論は、
図2にあるように丸鋸にも適用することができる。その場合は、刃先の回転運動によって記述される円に接する線であって、湾曲部分の先端を含む線が、任意の線に対して角度Cを形成する。同じ任意の線に対する切断方向は、適切に包むことを確実にするために、前述と同様にCよりも大きい角度Eを形成しなければならない。
【0093】
好ましい実施形態では、切断方向Dは骨壁の外部表面と平行かまたはほとんど平行である。それに応じて、骨切断ツールを向け直さなければならない。たとえば、ミリングカッターの軸をこの方向に対して垂直に保たなければならない。たとえ、実際には切断方向がこの方向からずれたとしても、セパレータの特定の形状(たとえば角度B、距離A、または重なり距離S)によって、靱帯の良好な保護及び分離が確実になる。
【0094】
切断システム内のセンサ
骨切断システムは、骨に対する力(たとえば、骨に対する保護要素の接触力または骨に対する細長い骨カッターの接触力または両方の組み合わせ)を検知するためのセンサを含んでいてもよい。
【0095】
骨に対する保護要素の力を検知するためにセンサを設ける場合、骨に対する介在部分の力または保護要素のアームの力を検知するためにセンサを設けてもよい。力の検知には、力センサによる力の直接検知、または骨に対する力を引き出し得るセンサ(たとえば、圧力センサなど)の力の間接的検知を挙げてもよい。センサは、骨に対する保護要素の接触力を含む結合力を検知するためのセンサまたはセンサの組み合わせであってもよい。たとえば、骨に対する細長い切断ツールの力と骨のエッジに対する保護要素(たとえば、保護要素の介在部分)の力とを複合測定するためのセンサである。
【0096】
センサは、保護システム自体内に、細長い切断ツール内に、切断ツール及び保護システムをロボットに接続するフレーム内に、またはロボット自体内に配置してもよい。センサは、骨に対する保護要素の接触力を含む結合力を検知するためのセンサまたはセンサの組み合わせであってもよい。たとえば、切断力と骨のエッジに対する保護要素(たとえば、保護要素の介在部分)の力とを複合測定するためのセンサである。
【0097】
第1の態様の実施形態を参照して説明したように、骨の表面上にセパレータ(たとえば湾曲部分121、131)によって印加された力を検知するために、センサ500(検知ユニット、センサモジュールなど)を加えてもよい。これを、骨表面のマッピング(たとえば、CTスキャン)と組み合わせて用いて、切断が起きている位置を正確に特定すること、及び力が小さくなったか否かについて信号を送ることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、本発明の切断システムにおいてセンサフィードバックを用いることができる。
図5に、センサ500を含む切断システムを示す。センサ500は、骨表面に対する湾曲部分131の接触力をフレームを通して検知する。代替的な実施形態では、スピンドルに対する力を検知するために別個のロードセル511も含まれている。センサ511は、たとえば、切断力と骨のエッジに対する湾曲部分の力との複合測定を行う6軸力トルクトランスデューサとすることができる。次に、切断プロセスに由来する力を、計算によって湾曲部分力から分離することができる。いくつかの実施形態では、結合力を測定するために6軸ロードセルのみを用いてもよい。いくつかの実施形態では、アルゴリズムを用いて、湾曲部分-骨の接触力と切断力とを区別することができる。いくつかの実施形態では、力センサを用いて湾曲部分力のみを検知してもよい。いくつかの実施形態では、6軸ロードセル及び力センサの両方を用いてもよい。ミリングカッターの切断及び送り速度を制御して、骨または骨領域の異なる硬度及び密度に対して介入を調整することができる。たとえば、熱負荷を低減して骨の熱損傷を低減または回避しながら高速切断が得られるように、速度を適応させてもよい。たとえば、接触損失が検出されたら、骨切断ツールを停止してもよい。
【0099】
骨の熱損傷を低減することによって、より速い回復が可能になり、多孔質表面とともにセメントレスインプラントを用いることができ、多孔質を通した骨成長が促進され、骨に対する固定が改善される。
【0100】
また低い温度の増加が、骨切断ツールそれ自体に関係するパラメータ(たとえば、切断部分のサイズ、刃の種類、ねじれ角、歯(フルートとも言う)の数など)を慎重に選択することによって改善され得る。
【0101】
いくつかの実施形態、典型的に切断が単一ステップで行われる(しかし本発明はそれに限定されない)実施形態によれば、切断ツールは、最小の切断長さが45mm以上、たとえば50mm以上であり、切断ツール直径が2mm~及び8mm、たとえば3mm~及び5mmであるため、優位である。
【0102】
骨に対する細長い切断ツールの力を直接または間接的に測定するためのセンサを、細長い骨切断ツールと固定環境との間の任意の場所に配置してもよい。好ましくは、センサを切断ツールの近くに配置する。センサを、たとえば、骨切断ツールのモータとロボットのエンドエフェクターとの間に配置してもよい。エンドエフェクターは、すなわち、ツールが取り付けられている(たとえば、
図6の部品511として示すものなど)ロボットの最後の部分である。センサを、ロボットアーム内に(たとえば、ロボットのベースとエンドエフェクターの中間のどこかに)組み込んでもよい。たとえば、骨切断システムの保護システムの一部内に、モータまたは任意の他の場所内に組み込むなど、他の場所も可能である。
【0103】
図5及び6に、本発明の実施形態によるセンサ実施態様の好ましい実施形態を示す。
図5及び6では、保護要素が、切断力を測定するセンサ511の後のエンドエフェクターアセンブリに取り付けられている。これは、保護要素(131、321)に及ぼされる力がセンサ511の測定値に加えられることを意味する。もし保護要素がセンサ511の前のエンドエフェクター510に接続されていたら、保護要素に及ぼされる力がセンサ511によって測定されることはない。
【0104】
第1の場合(センサ511の後の接続)では、切断力が、センサ511の測定値における保護要素に対する骨の接触力に加えられる。数学的に、これら2つの力を511の測定値から別個に抽出して、切断力と、骨と保護要素との間の接触力とを得ることができる。第2の場合では、保護要素はセンサ511の前に接続されており、保護要素先端部(骨と接触する)とエンドエフェクターとの間の追加のセンサが加えられていることが好ましい。保護要素がセンサ511の後に接続されている第1の場合に、付加的なセンサを設けてもよい。保護要素先端部と切断モータアセンブリ231への(または511まで直接の)接続部との間のこのような付加的なセンサは有用である。なぜならば、接触力を求める精度及び信頼性を高めることができるからである。
【0105】
付加的なセンサは、保護要素先端部(保護要素が骨と接触する)と、フレーム(321)がエンドエフェクターアセンブリに取り付けられている場所との間のどこに組み込んでもよい。
図3及び
図5では、センサ500はフレーム321のベースに配置されている。代替的に、検知要素を、フレーム321内にまたは保護要素の湾曲部分もしくは先端部131内にさえ、さらに組み込んでもよい。
【0106】
好ましい実施形態では、センサは、少なくとも、骨接触に対する保護先端部の法線方向の力を測定する。法線からずれる方向を選ぶことはできるが、あまり最適ではない。1つを超える方向で力を測定し、可能性としてトルク測定を含むことは、さらに多くの詳細な接触情報を得るオプションである。
【0107】
接触力測定に対する代替案として、骨のエッジの場所の検出を他の検知システムによって行うことができる。保護要素に、要素と骨との間の接触を決定するかまたは骨とデバイスとの間の場所/距離を測定する代替的な検知システムを備え付けてもよい。たとえば、圧力センサまたは距離センサを用いることができる。
【0108】
切断力を測定するために用いるセンサ511を用いて、少なくとも1つの方向、好ましくは主要な切断速度方向の方向での骨に対する力を測定してもよい。しかしセンサを、3つの直交方向すべてにおける力とこれらの3つの直交方向の周りのトルクとを測定するように拡張して、6自由度すべてにおける力及びトルクを測定するセンサ(6DOFまたはユニバーサル力センサとも言われる)を有することができる。2つ以上の方向において力及びトルクを測定すれば、切断力測定の精度を上げることができ、非主要の移動方向における切断力を決定することもできる。
【0109】
前述したように、センサは、力センサまたは任意の他のセンサであって骨に対する力が得られるものとしてもよい。
【0110】
光学的な骨及びロボット位置合わせ
ロボット制御された骨切断を可能にするために、好ましくはロボットに対して骨の位置が分かる必要がある。3次元追跡システム(たとえば光学カメラを伴う追跡システム)であって、ビーコン(たとえば光学マーカーセット)の位置を追跡できるものを用いる。ビーコン602(たとえば、光学マーカーセット)を、たとえば骨に堅固に取り付けて、別のビーコン601を、たとえば切断ロボットに堅固に取り付ける(
図15に示す)。それらを取り付けた後で、骨上に固定されたビーコン602に対する骨の位置を骨位置合わせによって規定する。このプロセスでは、骨の表面上の一連の点を、骨上で光学ポインタを移動させることによって測定する。後に、骨の形状(CTスキャンから得られる)を測定点に合わせる。この計算によって、ビーコン602に対する骨の位置が得られる。この情報を、3D追跡システムによるビーコンの位置の測定値と組み合わせることによって、カメラに対する骨の場所が分かる。
【0111】
ロボット上のビーコン601に対するロボットの正確な位置を知るために、ロボットは既知の点の周りに複数の回転を行う。ロボットに取り付けられたビーコンの動きを追跡することによって、ロボット上のビーコンに対するロボットの正確な場所を計算することができる。いま、カメラ基準系に対するロボットの位置も分かっている。カメラ基準系においてロボット及び骨の位置が分かっているので、骨とロボットとの間の位置が決定され、ロボット制御された切断を開始することができる。
【0112】
切断ツール(ロボットに取り付けられている)のすべての動きが、骨に対して決定される。骨の動きにロボットを追従させて、骨に対する切断ツールの正しい位置を確実にすることができる。
【0113】
骨エッジ/輪郭の場所を決定する
本発明の実施形態では、骨切断システムは、骨と保護システムとの間の接触を検知するためのセンサを含んでいてもよい。この情報を用いて、骨のエッジを検知し、従来技術のシステムと比べてより接近して骨輪郭に追従してもよい。このような情報を、たとえば、骨形状に関するデータ(たとえば、CTスキャンまたは形状モデルから得られる)と組み合わせて用いてもよい。
【0114】
図20に、骨のエッジを検知する本発明による骨切断システムの実施形態を示す。保護要素の介在部分(たとえば軟組織保護フック131)は、骨のエッジに沿ってプロービング動作を行う。保護要素131と骨との間の接触が、保護システムのセンサ(たとえば、保護装置支持マウンティング内に組み込まれたロードセル)によって検知される。骨が検知された位置を用いて、実際の骨の場所と、カッター保護装置アセンブリの取得された経路とを更新する。この技術によって、小さいセグメンテーション及び位置合わせ誤差を補正することができる。実験テストの結果、実際の物理的な骨輪郭の場所を3倍正確に予測できることが分かった。実際の物理的輪郭の場所に対する誤差は、1つの典型的なテストでは、能動的な骨輪郭追従を用いずに1,51mm(SD=0,31)であった。能動的な骨輪郭追従を用いると、実際の骨輪郭の予測に対する誤差は0,44mm(SD=0,29)まで減少した。
【0115】
保護要素131のプロービング動作の例について以下で説明し
図20に示す。典型的なプロービング動作は、以下のステップを含む繰り返し動作である。
1. 保護フック131が骨表面に向けて移動する。
2. フックと骨との間の接触を力センサが検知したら、この点の位置を測定して移動を停止する。
3. フックは反対方向に(骨表面から離れるように)、距離がたとえば1~3mmになるまで移動する。
4. 骨からの距離を(上記で規定したとおり)同じに保ちながら、フックは骨に沿って移動する。この移動を行うために、骨の形状(CTベース、または形状モデルに基づいて)を用いる。このステップの間に骨は切断される。
5. フックが骨の周囲に沿ってさらに所定の距離だけ移動したら(たとえば、1~20mm)、骨の周囲に沿って移動することを停止して、保護フックは再び骨の表面に向けて移動する。
6. ステップ1に戻る。
【0116】
切除が完了するまでこのプロセスを繰り返す。ステップ2の測定点を用いて、実際の骨位置の予測を最適化する。始めに、骨位置合わせプロセスに基づいて骨の場所を単独で規定するが、位置合わせプロセス中の誤差は必然的であるので、これは完璧に正確というわけではない。骨の形状も完璧ではない。形状がCTスキャンに基づく場合、精度はスキャン解像度及びセグメンテーションプロセスによって制限され、形状が形状モデルに基づく場合、精度はモデル及び入力点の数量によって制限される。骨の仮想の形状/輪郭の場所を調整するアルゴリズムは、保護フックの位置における局所的な誤差を最小限にするようにデザインされている。骨の場所の局所的な精度は最も重要である。なぜならば、保護要素の後の経路はこの情報に基づいて決定されるからである。保護要素の後の移動の間、要素は、軟組織の侵入及び骨との衝突を回避しながら、骨の周囲に沿ってできるだけ近くを移動しなければならない。
【0117】
骨エッジ場所情報を用いること
能動的なロボットシステムでは、ロボットは切断動作を完全に自動的に行う。このようなシステムでは、接触測定値についての情報を用いて、骨の場所の推定を最適化してロボットの計画を調整し、保護要素が骨と衝突することなく、骨のエッジにできる限り接近して追従することを確実にする。
【0118】
半能動的なロボットシステムでは、外科医はロボットとともに能動的に作業して切断動作を行う。第1の可能な変形では、外科医はロボットを手動で動かすことができるが、ロボットは移動を安全な可動域に制限して、切断ツールが正確な平面内に留まること及び切断ツールが軟組織に侵入しないことを確実にする。この場合、骨接触についての情報を再び用いて、(局所的な)骨の場所の推定を最適化し、それに応じて安全な可動域を調整することができる。さらに、骨との接触が生じたときに、触覚(振動、拘束力)、視覚、または聴覚フィードバックを外科医に与えて、ツールを正確な方向にガイドする際に外科医をサポートすることができる。
【0119】
別の半能動的な変形では、ロボットアームを用いずに、機械的支持体またはメカニズムによってツールを手動で移動させて、ツールが正確な切断面内に留まることを保証する。保護デバイスが骨のエッジに正確に追従することを確実にするために、1つ以上の方向に能動的に移動することを保護デバイス(カッターとともに移動する)に課す。このように、外科医が切断面に沿ってツールを動かして骨のエッジに近似的に追従する一方で、保護要素がカッターの長手方向に移動して骨のエッジに沿ってプロービング動作を行う。このようにして、外科医の移動の誤差を補正することによって、保護要素は骨のエッジに接近して追従することができる。システムは外科医にフィードバックを与えて、たとえばデバイスをその可動域の中心に保つことができる。
【0120】
手動で操作する変形では、この測定値を加えることによって、手動ツールをスマートデバイスに変身させることができる。保護要素と骨との間の接触のフィードバックを触覚(振動)、視覚、または聴覚信号によって外科医に与えて、ツールを正確な方向にガイドする際に外科医をサポートすることができる。さらに、フィードバックを外科手術ナビゲーションシステム内に、可能性として拡張現実とともに組み込んで、外科医にグラフィカル/視覚フィードバックを与えることができる。
【0121】
骨に対する細長い切断ツールの切断力を決定するためのセンサフィードバック
切断速度を計算するために、適応して更新可能な予測モデルを用いる。これについては
図21を用いてさらに説明する。モデルは、カッターの最大の許容可能な切断力及び偏りに従って、最大の許容可能な切断速度を計算する。最大の許容可能な力は、切断デバイス自体によって、及び骨を不安定にすることなく骨に及ぼすことが許される最大力によって規定される。モデルは、CT画像データに基づく骨の密度マップまたは骨の構造(すなわち海綿骨または皮質骨)に基づく単純化モデルを用いてもよい。両構造は密度及び強度が異なっており、その結果、切断力が異なることになる。骨構造についての情報を局所的な切断速度と組み合わせて、結果として得られる切断力を計算する。フック先端部の所与の線速度(v
hook_tip)及び角速度(ω
hook_tip)に基づいて、分散ミリング速度(v
mill_distributed)を計算する。切断速度と切断力との間の経験的な関係と組み合わせて、分散切断力(F
mill_distributed)を決定する。分散切断力から、カッターが切断モータアセンブリに及ぼす全ミリング力(F
mill_total)及び全ミリングトルク(T
mill_tot)と、ミル偏りを計算する。最適化アルゴリズムを用いて、最大のミリング力、トルク、及びミル偏りに対応して、最大の線及び角度フック先端部速度を計算する。
【0122】
力センサ(たとえば、
図6に示すセンサ511)によって測定した切断力を用いて、予測に対するずれを補正し、予測モデルを更新することができる。計算はすべてリアルタイムで行う。この結果、最大の許容可能な力及びミル偏りを超えない範囲で最速の切断時間を得ることができる。ミリング力及びミルの偏りを制限するために、実際の切断長さ及びミル負荷をリアルタイムで計算してもよい。時点に応じて、ミルの一部または全長を用いて骨を切断してもよい。
【0123】
骨切断ツールを支持するセパレータ
本発明のいくつかの実施形態では、ミリングカッターの第2の典型的に非駆動の先端部は湾曲部分と接触している。ミリングカッターのヘッド及び湾曲部分は、細長い切断ツールの第2の先端部を受け取るための支持部分を含んでいてもよい。支持部分及び細長い切断ツールの第2の先端部は、たとえば、互いに合う嵌合部分であってもよい。たとえば、湾曲部分は、第1の態様の実施形態で説明したように、軸受を含んでいてもよい。このような支持部分によって、シャフト224を湾曲させる危険性が減るため、カッター220の剛性を高められ得る。したがって、より高い圧力及び切断速度を達成することができる。その代わりにまたはそれに加えて、より薄いミリングカッター220を用いることができ、その結果、切断プロセスの侵襲性が減る。
【0124】
2ステップ切断及び1ステップ切断
本発明のいくつかの実施形態では、骨切断ツールの切断部分がツールの長さのほとんどに沿って延びていて、実質的にツールの全長に沿って切断が起きてもよい。ミリングカッター230の切断部分233がカッターの長さのほとんどに沿って延びている様子を
図6に示す。典型的に、切断部分が設けられているミルの全長を切断用に用いることができる。ミルの非切断長さはミリングプロセスにおいて干渉することはなく、プロセスとは無関係である。典型的に、非切断長さは、切開領域とより大きなモータ接続部との間にある程度の距離を導入するために設けられる。これは、溝穴切削に対して、たとえば、溝穴切削及び骨のスライシングを単一ステップで行うために、用いることができる。
【0125】
2ステップ切断と単一ステップ切断(
図6のカッター230を使用できる)との違いについて、以下で説明する。
【0126】
図4に、開いた骨の断面図を示し、
図14に、上部を部分的に除去した骨を示す。たとえば、靱帯と接触していない骨の部分を容易に除去することができる。その後に、骨の一部(たとえば、靱帯がほとんどないかまたはまったくない部分)を、たとえば目視検査またはマッピングによって切り取ることができる。
図14には骨の上部が除去された場合を示しているが、任意的に、靱帯がより少ない骨のゾーンに溝穴403を設けることができる。これは、保護要素を伴わないミルを用いて(たとえばアームを取り外して)切断することによって、またはアーム311は用いるが湾曲部分は用いないで切断することによって、行うことができ、
図5に示すように、ミリングカッター220の頂部(またはヘッドエンド221)が曝露されて、切断用に用いることができる。アームを取り外さない場合の利点は、アームによって依然として、冷却及び/または吸引とともに、刃をガイドしてその傾きを小さくするための骨上の支持が与えられるということである。靱帯と最も接触している骨壁の部分を、切断することなく残すことができ、骨壁401によって囲まれた中空領域405が残る。これは溝穴切削を行った場合もそうである。
【0127】
第1のステップの終わりでは、
図4に示すように、骨壁401は未接触のまま残り、外部表面402が含まれる。第2のステップには、骨壁401を除去するもっと細心の注意を要する動作が含まれる。壁を除去するために、本発明の実施形態によるセパレータを用いることができ、その結果、外部表面402に存在する靱帯が保護される。したがって、材料の粗くて速いが部分的な除去によって骨壁401が残り、それに続いて、セパレータを用いた(たとえば、ミリングカッター220及びセパレータ121を用いた)壁の慎重な除去が行われる(
図3及び4に示す)。この結果、骨を安全な方法で完全に切断することが2ステップで可能となる。
【0128】
第1のステップは、異なる骨切断ツールを用いて行うこともでき、または本発明の実施形態の場合と同じ骨切断ツールを用いるがセパレータは取り外して行うこともできる。セパレータを取り外すと、骨の内側から骨材料を除去するための骨切断ツールを用いることができ、その結果、粗い予備的な切断を行うための骨切断ツールを用いることができ、多くの靱帯を含む骨表面402から安全な距離まで達し得る。いくつかの実施形態では、アームは湾曲部分がないままであってもよい。それでもアームを用いて、溝穴を通してガイドすることができるか、または処置中に吸引または冷却(たとえば冷却水)を行うことができる。これを
図5に示す。他の実施形態では、アーム及び湾曲部分を両方とも取り外すことができる。穿孔及び穴開けも可能であり得る。なぜならば、骨切断ツールの最上部(たとえばヘッドエンド)を、たとえばミリングボールを用いて曝露することができるからである。そして、穿孔によって残った側壁を、たとえば丸鋸を用いて除去することができる(
図14に示す)。
【0129】
また本発明によって、骨の完全な切断を2ステップではなく単一ステップで行うこともできる。切断制御を切断面の規則性及び/または速度を上げるために使用できるため、優位である。
【0130】
ミリングカッター230の切断部分233がその長さのほとんどに及んでいるため、優位である。この実施形態を
図6及び
図10に示し、
図10の拡大部分Zに処置を示す。湾曲部分131は骨の外側に留まり、それが移動する間、その先端は表面上に載っていて靱帯などの任意の材料を持ち上げる。切断部分233の長さは、切断する骨の平均幅に近いかまたはそれよりも長い。切断は、多くの靱帯が予想されるわけではない領域で始まってもよく、湾曲部分は靱帯及び不規則さの密度が高い骨の側面の方を向く。なお、切断長さが長いミルの場合、切断を単一ステップで行うことができるが、2ステッププロセスも使用できる。その場合、最初は保護要素を用いずに内側を切断し、第2のステップで残りのエッジを保護要素を用いて切断することができる。切断長さが短いミルを用いる場合は、このような2ステッププロセスは常に必要である。
【0131】
切断部分233を送り出す際の歪みがあるために、単一ステップで骨全体を切断する場合は、この実施形態では、ミリングカッター230を湾曲部分131によって(たとえば、湾曲部分内の軸受によって)支持することが好ましい。この結果、回転安定性も改善され、薄いカッターを用いることもできる。軸受154を
図12に示す。軸受は、ローラー軸受、滑り軸受、流体軸受などで形成することができる。異なる軸受タイプを組み合わせることもできる。金属製またはプラスチック製コンタクト材料を用いてもよい。潤滑を用いてもよい。たとえば、限定することなく、内部供給された水潤滑などである。
【0132】
図13に、内部導管(たとえば、水路332、333)を含むアーム331の典型的な実施形態を示す。この実施形態では、保護要素161は、流体軸受164を伴う湾曲部分であり(拡大部分Z2に詳細に示す)、アーム及び湾曲部分は、軸受システムに、たとえば、軸受164及び/または軸受ブッシュ165に流体(たとえば水)を送るための内部通路334を含む。これらによって、良好で安定した軸受が得られ、高い回転速度及び/またはより長い回転時間が可能となる。なぜならば、ミリングカッター230の移動に起因する温度上昇が、鋸及び軸受システムの両方において減少するからである。
【0133】
本発明は、自動切断するための手段を含むことができる。
図15に、自動切断を可能にするための、ロボットアーム234及びナビゲーションシステムを伴うセットアップを示す。これは、適切なハードウェア及びソフトウェア(たとえば、マッピングソフトウェア及び患者スキャンからのデータなど)とともに用いることができる。ポジショニングまたはガイディングシステム601、602が、骨400内及びロボットアーム234上に、それらの相対位置を制御するために存在していてもよい。
【0134】
本発明は代替的に、骨切断システムの手動操作のための手段を含むことができる。
図16及び
図17に、関節式伸長メカニズムの支持を制御するために、骨上に取り付けた追跡システム602及び切断面上に取り付けた追跡システム602を伴う手動操作の変形を示す。カッター230は手動で起動され(たとえば、ドリルの場合と同様にボタンまたは引き金を押すことによって)、また手動で移動される。たとえば、関節式伸長部分235をフレーム232に取り付けてもよく、ドリルの移動を平面に制限してもよい(したがって切断経路は平面に制限される)。
図16に示すように、関節式伸長部分235を骨400に、または代替的にアームなどの外部の物体(たとえば、
図17に示すようなロボットアーム234)に固定してもよい(たとえば、取り付ける、結び付ける、クランプする、ネジで締めるなど)。
【0135】
図6の実施形態としてのミリングカッター230を
図15、
図16、及び
図17に示すが、任意の他の切断手段を、自動切断用の手段と(たとえば、ロボットアーム及びナビゲーションシステムと)組み合わせて、または手動操作用の手段と組み合わせて用いることができる。代替的に、半自動化動作を行ってもよく、それによってオペレータとシステムとの間に協同的な相互作用が存在する。
【0136】
保護要素の概要
図18に種々の保護要素を示す。一番上の図面の保護要素101は、
図1を参照して説明したプレートである。下側の2つの行に示すのは、4つの異なる実施形態の正面図及び側面図である。左から始まる第1の実施形態は、
図12に示すようなミルの直径よりも広い湾曲部分151を含む保護システムを示す。第2の実施形態は、柔らかくて丸みを帯びた先端を伴う湾曲部分171を含む保護システムを示す。この先端は、骨の表面にかき傷をつけず、緩い軟質材料を表面から引き離すだけである。この特定の実施形態では、支持軸受は設けられていない。第3の実施形態は、骨表面から軟組織を分離するための鋭い先端部を伴う湾曲部分121を含む保護システムを示す。これは、たとえば
図4に示す実施形態を参照して説明している。第4の実施形態は、半湾曲部分181を含む保護システムを示す。半湾曲部分181は、切断ミルを完全には包んでいない。それでも保護は、好適な切断方向及び向きを与えることによって得られるため、ミルは切除用溝穴から突き出てはいない。他の特徴物を加えることもでき、または保護要素に組み込むこともできる。たとえば、骨から軟組織を分離するために電気焼灼ナイフをエッジ内に組み込むこともできるし、または骨から軟組織を除去するために高圧力ウォータージェットを用いることもできる。また分離機能を改善するためにセパレータに機械的な動きを課すこともできる。
【0137】
本開示は主にミリングカッターを扱っているが、他の長手方向の切断ツールを用いることができる。たとえば
図19に示すような往復鋸である。ミラーカッター及び往復鋸240は両方とも通常、アクチュエータ222に接続された近位端242と、近位端と反対側の遠位端とを伴う長手方向の部材を含む。切断部分243は、遠位端またはヘッドエンド241から近位端242に向かって延びている。切断部分243は通常、ミリングカッターの場合と同様の螺旋溝ではなくて、鋸歯を含む少なくとも1つの側面に切断領域を含んでいる。また、ミリングカッターでは、ヘッドエンドは切断部品を含んでいてもよいが、往復鋸の場合には、ヘッドエンド241は平坦だが、衝突によって軟組織に損傷を与える場合がある。本発明の実施形態では、少なくともヘッドエンド241は、保護要素の湾曲部分171によって覆われているかまたは包まれているため、軟組織には触れないが、一方で少なくとも側面の切断領域は切断を行う。この場合、湾曲部分171は軸受を含んでいないが、図示するように、システムはガイドまたはサポートタブ172を、湾曲部分上にまたは鋸歯を支持するアーム311内に含んでいてもよい。
【0138】
なお湾曲部分171は、ヘッドエンド241だけでなく、切断部分243の一部分を覆っていてもよい。これはミリングカッターの場合もそうである。
【0139】
要約すれば、骨切断ツールとして、切断しながら骨の領域から靱帯を分離することが、骨切断ツールがその領域に到達する前に、靱帯と骨表面との間に割り込んで骨切断ツールとともに移動するセパレータを用いることによって可能となるものが提供される。センサ、たとえば、骨に対する力を直接または間接的に測定するためのセンサを用いて、骨のエッジの場所を決定してもよい。センサ、たとえば、細長い骨切断ツールに対する力を直接または間接的に測定するためのセンサを用いて、骨に対するカッターの切断力を決定してもよい。決定した切断力を用いて、最大の切断速度を得るように切断速度を調整してもよく、一方で、細長い切断に対する最大の許容可能な切断力を超えることなく、細長い切断ツールに対する応力を回避もしくは制限するかまたは細長い切断ツールを中断し、骨に対する力を制限し、細長い切断ツールの湾曲を回避または制限して平坦な切り口を得てもよい。
【0140】
例として、本発明の実施形態はこれらに限定されず、骨切断の実験の例についてさらに説明する。実験では、骨切断ツールは、切断長さが長くてやや直径が小さいミルに基づいており、そして、骨切断ツールをさらに、本発明の実施形態による保護要素と組み合わせた。こうすることで、切断長さが小さいことを考慮して種々のステップを適用する必要があるという事実に起因して生じる切断プロセスが遅いという問題を打開する。またパラメータを適切に選択することで、熱的挙動が良好になる。これは、医学的理由を考慮すると重要である。本発明の実施形態による骨切断ツールを用いることによって、残存する骨の表面に対する熱壊死も減少した。これによって、セメントレスインプラントの自然の内部成長が改善され、インプラントが緩む危険性も減る。
【0141】
第2の先端部が支持されている(すなわち、軸受を通して支持されている)長いミルを使用できることが、本発明の実施形態の利点である。このようなシステムによって、軟組織を切断する危険性が減る。切断長さが長い、たとえば少なくとも45mm(しかしもっと長い可能性もある、たとえば、人工膝関節置換術の場合)であると、単一の切断動作で切断することができ、その結果、介入が速くなる。ミルの直径が小さい、たとえば2mm~及び5mmの間、たとえば約4mmであると、すべての材料をミリング除去する代わりに溝穴切削することが可能になり、その結果、侵襲性の低い技術が得られる。後者は、他の構造に損傷を与える危険性が減り、使用する必要がある力が小さくなる。
【0142】
最小のミル直径を利用できるのは、切断ツールの切断部分に対する十分な支持を設けることによってのみであり、その結果、ツールの湾曲及び破壊が回避される。これは、駆動する先端部の直径を大きくすること、及び/または第2の先端部に軸受支えを設けること(たとえば、前述したように、保護システムまたは保護要素内に組み込まれる)によって支持される。既存のシステムと比べて切断部分での直径を小さくできることが、本発明の実施形態の利点である。
【0143】
前述の実施形態を用いて、溝穴切削を単一ステップで最小の侵襲的方法で行うことが得られる。
【0144】
実験では、このミリングカッターを用いて良好な結果を出すためには、良好なミル形状及び動作上の切断パラメータを選択することが不可欠であるということが明らかであった。良好に選択すれば、有害な熱壊死の影響を従来技術と比べて4分の1に減らすことができる。このことは、インプラントの緩みを回避してセメントレスインプラントによる内部成長を可能にするのに非常に有用である。これらの最適なミリングパラメータの結果、切り口の平坦さ及び精度が従来技術と比べて非常に改善される。
【0145】
さらにこれによって、従来技術と比べて切断力が小さくなるため、切断動作中の骨の動きの結果生じる誤差が抑えられる。
【0146】
さらなる態様では、本発明はまた、外科手術用の対象者の骨を切断するための骨切断システムに関する。この態様による骨切断システムには、骨を切断することに適応された細長い手術用骨切断ツールが含まれる。細長い手術用骨切断ツールは、細長い手術用骨切断ツールを切断ロボットまたは機械に固定するための第1の先端部と、それと反対側の細長い手術用骨切断ツールの端部における第2の先端部とを有する。骨切断システムはさらに保護システムを含み、保護システムは、細長い骨切断ツールまたは細長い骨切断ツールのフレームに取り付け可能な保護要素を含む。
【0147】
保護要素は介在部分を含み、介在部分は、保護要素が細長い骨切断ツールまたは細長い骨切断ツールの支持部に取り付けられたときに、細長い骨切断ツールの第2の先端部の少なくとも一部を覆って、細長い切断ツールを用いて切断する間に介在部分が骨の周囲の軟組織と骨切断ツールとの間に介在するようにして、骨切断ツールが骨の周囲の軟組織に切り込むのを防ぐ。
【0148】
本発明の実施形態によれば、保護要素はさらに、細長い骨切断ツールの第2の先端部の少なくとも一部を受け取って支持するための支持部分を含む。このようは支持は典型的に、支持部分と細長い骨切断ツールの第2の先端部との間の接触(たとえば、直接接触)を通して得られ得る。
【0149】
実施形態はこれらに限定されないが、本態様の実施形態は、長くて薄い細長い骨切断ツール(たとえば、単一の切断動作で切断を行うことができる細長い骨切断ツール)とともに用いることができるため、特に優位である。切断長さが長い、たとえば少なくとも45mm(しかしもっと長い可能性もある、たとえば、人工膝関節置換術の場合)であると、結果として、単一の切断動作で切断することができ、その結果、介入が速くなる。優位なことに、このように切断長さが長いことを、ミルの直径が小さいこと、たとえば2mm~及び5mmの間、たとえば約4mmと組み合わせると、すべての材料をミリング除去する代わりに溝穴切削することが可能になり、その結果、侵襲性の低い技術が得られる。後者は、他の構造に損傷を与える危険性が減り、使用する必要がある力が小さくなる。このような長い長さまたは最小のミル直径を利用できるのは、切断ツールの切断部分に対する十分な支持を設けることによってのみであり、その結果、ツールの湾曲及び破壊が回避される。支持部分は第2の先端部における軸受支えであってもよい。前述の実施形態を用いて、溝穴切削を単一ステップで最小の侵襲的方法で行うことが得られる。なお、本態様の実施形態の他の特徴は第1の態様で説明した通りであり得るが、それにより、骨に対する保護要素の接触力を抽出するための少なくとも1つのセンサは任意的である。本発明の実施形態の例を図面の
図1~
図19に例示しており、それにより、保護要素の接触力を抽出するための少なくとも1つのセンサは、図示されていれば、任意的であることを理解されたい。