(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】空気連成超音波干渉法
(51)【国際特許分類】
G01S 15/36 20060101AFI20230525BHJP
G01S 7/537 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
G01S15/36
G01S7/537
(21)【出願番号】P 2021573800
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 CN2019119709
(87)【国際公開番号】W WO2020248516
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】201910494935.2
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521543381
【氏名又は名称】蘇州博昇科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】沈 宇平
(72)【発明者】
【氏名】謝 明明
(72)【発明者】
【氏名】朱 緒祥
(72)【発明者】
【氏名】周 新宗
(72)【発明者】
【氏名】趙 軍輝
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-218086(JP,A)
【文献】特開昭64-053186(JP,A)
【文献】特開2018-021810(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103616691(CN,A)
【文献】特開2015-175700(JP,A)
【文献】特開2005-351897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52- 7/64
G01S 15/00-15/96
G01B 17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気連成超音波トランスデューサを測定ヘッドとしてワークピースの表面に面する空気連成超音波干渉法であって、超音波がワークピースの表面に往復反射を発生し、ワークピース表面の1次反射エコーが空気連成超音波トランスデューサに到達したときの位相差が測定され;超音波の周波数及び波長の変化に基づいて、距離の測定値を角周波数に対する位相の変化率に変換し、前記音波の角周波数の変化は、空気連成超音波トランスデューサ帯域幅f
Bに2πを掛けたものであり、前記音波の位相の変化は帯域幅の
最高周波数と帯域幅の
最低周波数での音波経路を波長で割った値の差に2πを掛けたものであり、
音波の角周波数に対する音波の位相の変化率、すなわち、音波の角周波数差に対する音波の位相差の比と音波経路との式の関係は、次の式により表され、
(数1)
L=λ・(ΔΦ/2π)/(Δf/f)= c・ΔΦ/Δω
[式中、ΔΦは音波の位相差、Δωは音波の角周波数差、
cは空気中の音速である。]
音波の角周波数に対する音波の位相の変化率が測定距離と直線的な関係を有する定数であり、隣り合う2つの位相周期に対応する周波数差に変換することもでき、音波経路との式の関係は、次の式により表され、
(数2)
L=c/Δf=c/(f
2
-f
1
)
音波の角周波数差及び音波の位相差を空気連成超音波トランスデューサ帯域幅f
B内の音波経路が波長の整数倍
(N
1
倍とする)である最高周波数F
2と音波経路が波長の整数倍
(N
2
倍とする)である最低周波数F
1との間の関係に置き換
え、音波経路の式は、次の式のように変換されることを特徴とする、空気連成超音波干渉法。
(数3)
L=c・(N
2-N
1)/(F
2-F
1)
【請求項2】
固定周波数で検出する時、超音波の連続励起の時間は、1次エコーの時間より長く、二次エコーの時間より短いことを特徴とする、請求項1に記載の空気連成超音波干渉法。
【請求項3】
超音波で周波数掃引検出を実行し、横軸に走査角周波数、縦軸に干渉が発生する時間領域信号の絶対値積分をとって2次元グラフを作成し、前記2次元グラフに示されている正弦波変化曲線に対し、正弦波関数回帰アルゴリズムでフィッティングし;掃引周波数スパンのサイズは、フィッティングデータの誤差の大きさに反比例し、シミュレートされた正弦波関数周期は、隣り合う2つの位相周期に対応する角周波数差2π(f
2-f
1)であり、この時音波の位相差ΔΦが2πであることを特徴とする、請求項2に記載の空気連成超音波干渉法。
【請求項4】
干渉が発生する時間領域信号の範囲は、2次エコーの時間から超音波の連続励起時間に1次エコーの時間を加えた時間範囲特徴とする、請求項3に記載の空気連成超音波干渉法。
【請求項5】
誤差分析法によれば、音波経路の相対誤差式は、次の式により表されることを特徴とする、請求項4に記載の空気連成超音波干渉法。
(数4)
δL/L=δ(F
2-F
1)/|F
2-F
1|=(|δF
2|+|δF
1|/|F
2-F
1|
【請求項6】
音波経路の絶対誤差式は、次の式により表されることを特徴とする、請求項5に記載の空気連成超音波干渉法。
(数5)
δL=L・(|δF
2|+|δF
1|/|F
2-F
1|
【請求項7】
ワークピースの表面の1次反射エコーが空気連成超音波トランスデューサに到達したときの位相差Φ=2πL/λとなり、ここで、λは波長であり;Lは超音波がトランスデューサからワークピースの表面に到達し、表面に反射してトランスデューサに戻ってくる音波経路で、測定距離の2倍に等しくなることを特徴とする、請求項6に記載の空気連成超音波干渉法。
【請求項8】
超音波周波数が変化すると、波長が変化し、位相も変化し;位相変化の差と周波数変化の差との関係は、次の式により表されることを特徴とする、請求項7に記載の空気連成超音波干渉法。
(数6)
ΔΦ=(2πL/c)Δf
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気連成超音波測距技術分野に関し、特に、空気連成超音波干渉法に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な構造を高精度にナノ加工した後、表面の自由曲面を高精度に測定する必要があった。ただし静的自由曲面の高精度測定方法及び技術が常に一つの難題である。超精密加工後の表面輪郭精度の超精密測定は困難で、測定コストが高く、表面キャラクタリゼーション理論及び測定方法に応用されるブレークスルーがなかった。
【0003】
現在、複雑な構造のナノ加工表面の自由曲面測定の方法中高精度の測定方法行業内において3次元座標測定機の技術プラットフォームを使用している。この技術プラットフォームには、リニアルーラー、精密スクリューロッド、誘導シンクロナイザー、グレーティングルーラー、磁気ルーラー、光波波長などの高精度ルーラーシステム、スライドガイド、転がりベアリングガイド、エアベアリングガイドなどのガイドレールシステム及び駆動、平衡、ターンテーブルなどの技術モジュールシステムが含まれ、さらに3次元座標測定機の他の部分から技術的に独立した3次元プローブも含む。一般的に、3次元座標測定機システムの場合、位置及び寸法の測定精度がミクロンレベルに達するとすでにハイエンド製品で、一般的に、3次元座標測定機システムの場合、位置及び寸法の測定精度がマイクロメータレベルに達するとすでにハイエンド製品で、重要なのは測定ヘッドの測定精度の技術レベルによって決める。測定ヘッドは、接触型及び非接触型に分けられる。接触型プローブタイプの測定ヘッドは、現在主流であり、プローブタイプの測定精度が一般的にミクロンレベルより優れていない。
【0004】
非接触型測定ヘッドは、主に光学、超音波と電磁に分類される光学式測定ヘッドは、現在国内外の研究のホットスポットである。光学式測定ヘッドはまた、ライン構造化光法、レーザー三角測量法、レーザー半焦点スポットイメージング法等に分かれる。現在、公開文献で見られる最高の国内実験室指標は、ハーフポットイメージング式レーザー測定ヘッドを使用することによって実現され、繰り返しの照準の不確実性の最高の効果がミクロンレベルに達し、測定感度が30mV/μmに達することができ、レーザーが被測曲面に追跡・照準する傾斜角は25°に達することができる。ただし、この方法は、材料の種類に大きく影響され、材料の色及び材料表面の吸光度が測定の感度に影響を及ぼすため、異なる材料に異なる標準サンプルが必要になる。材料の標準サンプルを入手するのが難しい場合があった。
【0005】
レーザー干渉式測定ヘッドは、主に微小な相対変化量に敏感であるが、絶対量に敏感ではなく、絶対測定精度がコンソールの3次元座標照準によって制限される。かつレーザー干渉測定ヘッドは、被測定ワークピース表面のレーザー反射特性に対する要求が非常に高く、反射率が高過ぎても低過ぎてもよくなく、一部の特殊な吸収材は、異なる波長のレーザーに交換する必要がある。このため、レーザー干渉法は、現在大規模に普及や応用されていない。
【0006】
空気超音波法の測距は、主に時差法を使用する。一般的に、周波数が高いほど、測距の精度が高くなる。ただし空気中の1MHzオーダーの高周波超音波の減衰は、非常に大きいため、一般的な距離測定には使用できなかった。また、空気超音波時差法は、外部干渉の影響を大きく受けるため、実際の応用中の時差法の測距精度が大きく損なわれる。例えば、自動車産業で広く応用される空気連成超音波測距のバックレーダーは、一般的に数十KHzオーダーの周波数を使用し、測距精度が通常1つの放射波長のオーダーにある。例えば40KHzの超音波バックレーダーの測距精度は、10mm程度である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、高い測定精度及び強力な抗干渉能力という利点を有する空気連成超音波干渉法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術的手段としては、空気連成超音波干渉法であって、空気連成超音波測定ヘッドがワークピースの表面に直面している場合、超音波トランスデューサから放射された超音波は、ワークピース表面に往復放射を発生する。空気中を伝播する超音波の波長λは、式(1)により表される。
【0009】
(数1)
λ=c/f (1)
式中、cは、空気中の音速、fが超音波周波数である。
【0010】
周波数が変化した場合、空気超音波測定ヘッドの音波経路は変化しないが、位相が変化する。ワークピースの表面の1次反射エコーが空気連成超音波トランスデューサに到達したときの位相差Φは、式(2)により表される。
【0011】
(数2)
Φ=2πL/λ (2)
式中、Lは超音波がトランスデューサからワークピースの表面に到達し、表面に反射してトランスデューサに戻ってくる音波経路であり、空気連成超音波トランスデューサからワークピースまでの距離がL/2である。式(1)を式(2)に代入すると、式(3)になる。
【0012】
(数3)
Φ=2πLf/c (3)
【0013】
超音波周波数がわずかに変化した場合、位相差もわずかに変化する。式(3)はわずかな周波数変化Δfを展開して数式(4)で表されるわずかな位相差変化ΔΦを得る。
【0014】
(数4)
ΔΦ=2πLΔf/c=LΔω/c (4)
式中、Δωは、わずかな角周波数変化である。引き続き整理した後数式(5)が得られる。
【0015】
(数5)
L=c・ΔΦ/Δω (5)
【0016】
式(5)からも分かる通り、距離の測定値を角周波数ωに対する位相の変化率に変換し、この変化率は測定距離と直線的な関係を有する定数である。式(5)内のΔΦを周期2πとすると、式(5)が式(6)に変わる。
【0017】
(数6)
L=c/Δf=c・/(f
2
-f
1
) (6)
式中、f1とf2は、隣り合う2つの位相周期に対応する周波数である。
【0018】
好ましくは、式(6)はまた別の方法で導き出すことができる。特定の周波数f1における総音波経路が波長λ1のn倍の整数であると仮定する場合、次の式(7)により表示される。
【0019】
(数7)
L=nλ1=nc/ f1 (7)
【0020】
周波数を連続的に増加すると、周波数f2を得ることができ、この周波数での総音波経路は波長λ2の整数(n+1)倍になる。
【0021】
(数8)
L=(n+1)λ2=(n+1)c/ f2 (8)
【0022】
式(7)と式(8)を組み合わせてnを消去し、Lを求解することで、式(6)を得ることもできる。
【0023】
空気連成超音波トランスデューサ帯域幅fB内の最低周波数F1を定義し、この周波数での音波経路Lは、波長の整数倍N1である。空気連成超音波トランスデューサ帯域幅fB内の最高周波数F2を定義し、この周波数での音波経路Lも波長の整数倍N2である。N1とN2は、音の時差法又は干渉法で正確に求めることが可能なことをできることを後で説明する。通常トランスデューサ帯域幅とこの2つの周波数差との差が極めて小さいことも後で説明し、すなわち、式(9)により表される。
【0024】
(数9)
F2-F1≒fB (9)
【0025】
表現の便宜上、式(9)内の周波数差を周波数帯域幅fBに置き換えてこの周波数差の物理的意味を後で説明する。周波数差と位相差を式(5)に代入すると、次の式(10)になる。
【0026】
(数10)
L=c・(N2-N1)/(F2-F1) (10)
【0027】
c、N2、N1は非常に簡単に決定できる定数であるため、誤差分析から分かるように、式(10)の総音波経路の相対誤差は、次の式(11)により表される。
【0028】
(数11)
δL/L=δ(F2-F1)/|F2-F1|=(|δF2|+|δF1|/|F2-F1| (11)
【0029】
又は空気連成超音波トランスデューサの測定ヘッドからワークピースまでの距離の測定の相対誤差は、次の式(12)により表される。
【0030】
(数12)
(δL/2)/(L/2)=(|δF2|+|δF1|/|F2-F1| (12)
【0031】
総音波経路Lの測定の絶対誤差は、次の式(13)により表される。
【0032】
(数13)
δL=L・(|δF2|+|δF1|/|F2-F1| (13)
【0033】
又は空気連成超音波トランスデューサの測定ヘッドからワークピースまでの距離の測定の絶対誤差は、次の式(14)により表される。
【0034】
(数14)
δL/2=L/2・(|δF2|+|δF1|)/|F2-F1|≒L/2・(|δF2|+|δF1|)/fB (14)
【0035】
式(12)と式(14)は、測定の相対精度と絶対精度の計算式を提供する。式(14)では、測定の絶対精度を向上させようにする場合、帯域幅fB(又ははF2-F1)を増やし、測定距離L/2を減らし、F1とF2の測定の不確定性を減らす必要があることを示している。空気連成超音波トランスデューサの場合、被測定物の表面での単一プローブの反射率がほぼ100%で、信号が非常に強いため、空気超音波測距への応用において、応用帯域幅の範囲を適切に緩和でき、例えば-20dBの帯域幅を選択できる。通常商用グレードの圧電型空気連成超音波トランスデューサの空気中での挿入損失は、-6dB帯域幅の場合約20%~50%で、-20dB帯域幅の場合100%に達することができる。よって、式(14)内の帯域幅fBは、トランスデューサの中心周波数fWで近似的に置き換えることができる。一般性を失うことなく、式(14)は、次の式のように整理できる。
【0036】
(数15)
δL/2≒L/2・(|δF2|+|δF1|)/fw (15)
【0037】
例えば非常に一般的な300KHzの空気連成超音波圧電トランスデューサを選択し、トランスデューサからワークピースまでの距離は45mm、周波数ステップは10Hz又は周波数測定誤差は10Hzである場合、式(15)から分かるように距離測定誤差は、次の式(16)により表される。
【0038】
(数16)
δL/2≒45mm・(10+10)/(300k)=3×10-3mm=3μm (16)
【0039】
この測定精度は、パルス反射法よりもはるかに高くなっている。
【0040】
戻って、式(9)の合理性を論証しましょう。上述で選択した実験パラメータから分かるように、隣り合う2つの周期の周波数差は、次の式(17)により表される。
【0041】
(数17)
(f2-f1)=c/L=340/(90×10-3)=3800Hz=3.8KHz (17)
【0042】
式(9)内のfBと(F2-F1)との差の最大比率は、次の式(18)により表される。
【0043】
(数18)
2×3.8KHz/300KHz=2.5% (18)
【0044】
よって、式(9)は近似的に成立する根拠があり、物理的意味を説明する時帯域幅fBを使用してF2-F1の周波数差を置き換えることができる。これは、さらに帯域幅が広いほど、干渉法がより正確であることを示している。
【0045】
特殊な超音波励起法を用いて上記の干渉法測定を実現する。正負の正弦波又は方形波を使用して空気連成超音波トランスデューサを固定周波数で連続的に励起し、励起時間は、1次エコーの時間より長く、2次エコーの時間より短い。1回エコーの時間及び2次エコーの時間は、短周期パルス反射法により迅速に得られる。次に、励起周波数を変更して、上記の励起方法に従って周波数掃引検出を実行する。横軸に走査角周波数、縦軸に干渉が発生する時間領域信号の絶対値積分をとって2次元グラフを作成する。2次元グラフは正弦波の変化に似た曲線であり、回帰アルゴリズムを使用して曲線を正弦波関数にフィッティングさせることができる。周波数帯域が広いほど、シミュレーション結果はより正確になる。シミュレートされた正弦波関数の周期は、請求項2内のΔΦが2πの場合のΔωと見なすことができる。干渉が発生する時間領域信号の選択範囲は、2次エコーの時間から超音波の連続励起時間に1次エコーの時間を加えた時間範囲内にある。
【発明の効果】
【0046】
第一に、超音波技術は、1つのエコー時間を超える長期連続放射及び相対帯域幅内の大きなスパンの周波数掃引に基づき、高い測定精度及び強力な抗干渉能力という利点を有するため、レーザー干渉における従来の技術では比較的達成するのは難しい技術である。
【0047】
第二に、この技術理論の相対的な測距精度は、周波数測定誤差と空気連成超音波トランスデューサの帯域幅の比率に比例する。短距離の測距精度はサブミクロンレベルに達することができ、長距離の測距精度が波長の1%よりも優れている場合がある。
【0048】
第三に、この測距技術の短距離は、自由曲面輪郭の高精度スキャンに運用され、長距離が自動車の自動運転時超音波レーダーの妨害防止測距に運用されることができる。
【0049】
以下に図面及び実施形態を参照しつつ、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】空気連成超音波測定ヘッドの測距を示す概略図である。
【
図2】空気連成超音波測定ヘッドの実物写真である。
【
図3】399.8KHz、50Vpp、120周期の連続励起でコヒーレンス・建設的干渉を生じた周波数図である。
【
図4】402KHz、50Vpp、120周期の連続励起でコヒーレンス・破壊的な干渉を生じた周波数図である。
【
図5】399.8KHz、50Vpp、3周期の連続励起を時差法測定に用いた場合の周波数図である。
【
図6】550KHzトランスデューサをワークピースの25mm上に置いた場合の干渉部の振幅、絶対値、積分平均値及び周波数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1に示すように、空気連成超音波トランスデューサを選択して、被測定物の自由曲面を垂直に位置合わせる。集束型トランスデューサを選択すると、焦点スポットサイズを縮小し、横方向の解像度が向上でき;直径が小さく高周波の空気連成超音波平面型トランスデューサを選択しても、同様の効果が得られる。
図2の実物写真に示すように、空気連成超音波トランスデューサの外径は通常10mm~50mmの範囲であり、適切な治具を加えた後、測定ヘッドとして3次元座標測定機に直接取り付けることができる。集束型トランスデューサの焦点スポットは通常1mm~5mmの範囲であり、焦点距離が5mm~50mmの範囲であり、平面トランスデューサのチップ直径が通常10mm~50mmの範囲であり、近接場領域は通常10mm~100mmの範囲である。 空気連成超音波トランスデューサは、通常、高周波帯域(1MHz以上)で平面型を使用する。
【0052】
テストプラットフォームとして空気連成超音波自動スキャンシステムを選択し、中心周波数400KHzの圧電空気連成超音波トランスデューサを選択してワークピースの表面から42mm程度離れた上方に垂直に固定し、また中心周波数550KHzの圧電空気連成超音波トランスデューサを選択してワークピースの表面から25mm程度離れた上方に垂直に固定した。
【0053】
400KHzのトランスデューサの自動送受信する音響圧電信号の時間経過に伴う変化の曲線を
図3~
図5に示す。このうちの
図5の3つの周期の励起データは、大まかな時差法として距離測定に使用でき、複数回の繰り返し測定精度は1mmよりも優れている。
図3及び
図4は連続波励起で、連続励起の時間が一次エコーの時間を超え、2次エコーの時間よりも短いため、1次エコーの時間を超える連続励起の部分が1次エコーと干渉効果を発生した。一部の周波数は、コヒーレンス・建設的干渉)であり、一部の周波数がコヒーレンス・破壊的な干渉であり、かつ2次エコーに反映された(図の四角枠でマークされている箇所)。干渉部分の振幅の絶対値積分平均をとると、周波数の近似正弦波に伴う変化の曲線が得られた。実施例として、高周波550KHzのトランスデューサをワークピースから25mm程度離れた上方に置いたときに得られた干渉部の振幅の絶対値積分平均値と周波数の変化を
図6に示す。実際の応用では、この曲線を1回バンドパスフィルター処理して、より滑らかで処理しやすい正弦波曲線にすることができる。
【0054】
図6から、肉眼で干渉位相が530KHzから570kHzに6周期程度変化すると推定できる。このデータを式(10)に代入すると、次の式(19)になる。
【0055】
【0056】
すなわち、トランスデューサとワークピース上の測定点との間の距離は、51mm/2=25.5mmであり、実験設置時配置されたおおよその位置25mmに比較的近くなる。精度をミクロンレベルに達する計算は、
図4からより正確な周波数データを抽出することにより得られる。例えば
図6の曲線をフィルタリングした後、正弦波関数で回帰フィッティングを実行し、正確にフィッティングされた正弦関数周期を得た。この周期に2πを掛けると式(5)内のΔΦが2πの場合のΔωになることで、音波経路Lは式(5)で計算できる。
【0057】
トランスデューサが周波数を40KHz~100KHzの間に下げ、ワークピースから1メートルから20メートルの範囲で動作する場合、実際の応用実験で迅速に得られる絶対誤差は、通常、波長の1%のオーダーよりも優れている。
【0058】
周波数掃引時、測距速度を向上させるため、帯域幅の両端に加えて、帯域幅内の周波数をナイキストの最小サンプリング法則に従って迅速にサンプリング・掃引して、式(10)内のN
1とN
2を決定できる。前述の連続放射によりコヒーレンス信号を得る前、
図3内の低周期パルス放射によって大まかな距離L
Cを得ることができ、次の式に基づいて帯域幅内の連続最大周波数掃引ステップF
Sを次のように得られる。
【0059】
【0060】
測距速度をさらに向上させるため、帯域幅の中央での周波数ステップ掃引も省略できる。
図4の周期は、大まかc/L
Cと推定できるため、式(11)内のN
1とN
2の初期値を得ることができる。このように、帯域幅の両端で1つの周波数周期をそれぞれ細く掃引すると、式(10)内のF
1とF
2を正確に決定できる。
【0061】
本発明によって提案される空気連成超音波の高精度測距干渉技術において、測定の相対精度は、電子機器の周波数測定誤差と空気連成超音波の具体的応用周波数帯域との比に等しい。実際の工程の応用において、周波数への測定精度が非常に高く、空気中での空気連成超音波トランスデューサの応用の周波数は比較的高いため、この技術は非常に高い測距精度を提供できる。短距離の測距精度は、サブミクロンレベルに達することができ、長距離の測距精度が波長の1%よりも優れていることができる。ここで、短距離は自由曲面輪郭の高精度スキャンに運用でき、長距離は自動車の自動運転時の超音波レーダーの妨害防止測距などに運用できる。
【0062】
上述の実施形態は、本発明の原理及び効果を例示的に説明するだけであり、本発明を限定することを意図するものではない。当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない均等の範囲内で各種の修飾や変更を加えることができる。したがって、本発明の精神及び技術的思想から逸脱することなく、当業者により行われたすべての均等な修飾や変更は、やはり本発明の特許請求の範囲にカバーされるべきである。