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特許7285044セメントフリーの残土硬化剤並びにその調製方法及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】セメントフリーの残土硬化剤並びにその調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/12 20060101AFI20230525BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20230525BHJP
   C09K 17/40 20060101ALI20230525BHJP
   E02D 3/00 20060101ALI20230525BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20230525BHJP
【FI】
C04B18/12
C04B18/14 G
C09K17/40 Z
C09K17/40 P
E02D3/00 101
C09K103:00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023021214
(22)【出願日】2023-02-14
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】202210687321.8
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520452839
【氏名又は名称】中鉄北京工程局集団有限公司
【住所又は居所原語表記】NO.161 Yudai East 2nd Street, Mentougou District, Beijing 102308, China.
(73)【特許権者】
【識別番号】523053358
【氏名又は名称】中鉄投資集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】China Railway Investment Group Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 309,Building 1, NO.9, Xinghuo Road,Fengtai District,Beijing,China
(73)【特許権者】
【識別番号】523053369
【氏名又は名称】北京工業大学重慶研究院
【氏名又は名称原語表記】Chongqing Research Institute of Beijing University of Technology
【住所又は居所原語表記】Building 87,188 Jihuayuan South Road,Longxing Town, Yubei District,Chongqing, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】姚全徳
(72)【発明者】
【氏名】王保亮
(72)【発明者】
【氏名】李江舵
(72)【発明者】
【氏名】彭凌雲
(72)【発明者】
【氏名】張超
(72)【発明者】
【氏名】王浩
(72)【発明者】
【氏名】張涵
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112159173(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109721298(CN,A)
【文献】国際公開第2021/165988(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第114504759(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114031898(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113248792(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113003991(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102167430(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113307591(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-40/06
C09K 17/00-17/52
E02D 1/00-3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機硬化成分、有機硬化成分及び補助調節成分を含むセメントフリーの残土硬化剤であって、重量百分率で、無機硬化成分は、鉱工業副生成物60%~85%、及び酸性誘導原料8%~20%を含み、そのうち、鉱工業副生成物は赤泥、リチウムスラグ、鉄鉱石尾鉱のうちの1種又は2種の混合物であり、酸性誘導原料はテトラポリリン酸、リン酸二水素アルミニウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムのうちの1種又は多種の混合物であり、有機硬化成分は水性エポキシ樹脂5%~15%、及び硬化促進剤1%~5%を含み、
無機硬化成分の質量百分率で、補助調節成分は凝結促進剤2%~8%、増粘剤1%~10%、及び分散剤4%~12%を含む、ことを特徴とするセメントフリーの残土硬化剤。
【請求項2】
水性エポキシ樹脂は、(1~5):1の質量比で水性エポキシエマルジョンと水性エポキシ硬化剤とから調製され、そのうち、水性エポキシエマルジョンの固形分含有量は55%であり、水性エポキシ硬化剤の固形分含有量は40%である、ことを特徴とする請求項1に記載のセメントフリーの残土硬化剤。
【請求項3】
前記硬化促進剤は、トリエチレンジアミン、ポリエチレンアミン、トリエチレンテトラミンのうちの1種又は2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のセメントフリーの残土硬化剤。
【請求項4】
前記凝結促進剤はトリエタノールアミン硫酸塩、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウムのうちの1種又は2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のセメントフリーの残土硬化剤。
【請求項5】
増粘剤はトラガントガム、パパイヤシードガム、キサンテンガムのうちの1種又は2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のセメントフリーの残土硬化剤。
【請求項6】
分散剤はドデシルエトキシスルホベタイン、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、ドデシルジメチルヒドロキシプロピルホスホベタインのうちの1種又は2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のセメントフリーの残土硬化剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のセメントフリーの残土硬化剤の調製方法であって、
無機硬化成分中の鉱工業副生成物及び酸性誘導原料をボールミル内で粉砕する原材料粉砕ステップと、
ボールミリングで得られた粉体を混合器に入れ、凝結促進剤、増粘剤及び分散剤を所定の割合で加えて均一に混合撹拌し、続いて水性エポキシ樹脂を加え、均一に撹拌した後に硬化促進剤を加え、均一に撹拌し続けると、前記残土硬化剤を得る材料混合ステップと、を含む、ことを特徴とするセメントフリーの残土硬化剤の調製方法。
【請求項8】
原材料の粉砕後に得られた粉体の表面積は300m/kg~500m/kgに制御される、ことを特徴とする請求項7に記載のセメントフリーの残土硬化剤の調製方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のセメントフリーの残土硬化剤の応用であって、質量比1:7~1:12のセメントフリーの残土硬化剤と残土とをミキサーに入れ、撹拌しながら水を加え、均一に撹拌して残土スラリーを得、残土スラリーを54%~63%の質量百分率濃度で調製し、打設し、養生する、ことを特徴とするセメントフリーの残土硬化剤の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料の技術分野に関し、特に、セメントフリーの残土硬化剤並びにその調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、中国の各工事の建設施工プロセスでは、地盤基礎処理段階において掘削又は置換された残土量が膨大である。これらの残土は、利用率が低く、大部分が廃棄されて積み重ねられるため、大量の土地資源及び泥土資源の浪費を引き起こし、また、周囲環境に対して二次汚染を引き起こしやすい。
【0003】
また、建設プロセスにおいて、地盤処理、路盤補強、基礎杭、余掘りなど特殊領域の打設と埋め戻しの面に土体に対して改良、補強処理を行う必要がある。しかし現在採用されている施工方法及び処理手段はいずれも一定の限界性を有する。例えば、地盤処理の面には、常に深層混合処理が採用され、すなわち土にセメントなどの硬化剤を加えた後に撹拌し、土体強度を向上させる。しかし当該方法により撹拌が不均一になり、土体強化効果が不良になる。トレンチ埋め戻しと路盤処理の面には、常に2:8石灰土又はコンクリートなどの材料を用いて埋め戻しを行うが、当該方法は工程が複雑で且つコストが高い。基礎杭、余掘りなどの特殊領域の処理の面には、常に尾鉱などの工業廃材が利用され、又はコンクリートで直接埋め戻すが、施工面が狭く、埋め戻し施工が困難であり、且つコストも高い。
【0004】
特許文献1には、重量部で、残土950~1050部、セメント40~60部、スラグ超微粉末10~20部、フライアッシュ10~20部、リン石膏20~30部、高効率硬化剤7~15部、及び水275~525部を含むマルチソース固体廃棄物が複合した高流動埋め戻し材料であって、重量部で、高効率硬化剤は、スルホン化アセトン-ホルムアルデヒド重縮合体50~70部、水ガラス20~30部、ドデシル硫酸ナトリウム10~20部、水溶性エポキシ樹脂10~20部、スルホン化油0~10部、硫酸ナトリウム0~10部、及びポリアクリルアミド0~10部を含み、水ガラス、水溶性エポキシ樹脂及びポリアクリルアミドは有効成分の重量部で計算するマルチソース固体廃棄物が複合した高流動埋め戻し材料が開示される。当該特許は残土、無機合着材(セメント、スラグ、フライアッシュ、リン石膏)と特有の硬化剤との相互作用により、高流動埋め戻し材料を調製し、地盤及び基礎杭などの場所の施工に適用し、凝固後の土体はより高い強度、より高い耐久性を有し、且つ施工速度が速く、必要な人力が少ない。しかし当該特許においてセメント及びフライアッシュの使用総量が残土硬化剤全体の重量に占める割合は57%を超え、そのうちセメントの使用総量が残土硬化剤全体の重量に占める割合は45%を超え、コストを制御しにくい。また当該特許に開示された28日目の一軸圧縮強度が低く、且つ3日目の一軸圧縮強度及び7日目の一軸圧縮強度が開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】CN113307591A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術における残土硬化剤が大量のセメントとフライアッシュを使用することを必要とし、コストを制御しにくく、高速で高効率に硬化する要求を満たすことができず、得られた硬化土体性能がより高い要求を満たすことができないという技術的問題を解決するために、セメントフリーの残土硬化剤並びにその調製方法及び応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明は、無機硬化成分、有機硬化成分及び補助調節成分を含むセメントフリーの残土硬化剤であって、重量百分率で、無機硬化成分が鉱工業副生成物60%~85%、及び酸性誘導原料8%~20%を含み、そのうち、鉱工業副生成物は赤泥、リチウムスラグ、鉄鉱石尾鉱のうちの1種又は2種の混合物であり、酸性誘導原料はテトラポリリン酸、リン酸二水素アルミニウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムのうちの1種又は多種の混合物であり、有機硬化成分は水性エポキシ樹脂5%~15%、及び硬化促進剤1%~5%を含み、
無機硬化成分の質量百分率で、補助調節成分は凝結促進剤2%~8%、増粘剤1%~10%、及び分散剤4%~12%を含む。
【0008】
好ましくは、水性エポキシ樹脂は、(1~5):1の質量比で水性エポキシエマルジョンと水性エポキシ硬化剤とから調製され、そのうち、水性エポキシエマルジョンの固形分含有量は55%であり、水性エポキシ硬化剤の固形分含有量は40%である。
【0009】
好ましくは、前記硬化促進剤は、トリエチレンジアミン、ポリエチレンアミン、トリエチレンテトラミンのうちの1種又は2種の混合物である。
【0010】
好ましくは、前記凝結促進剤はトリエタノールアミン硫酸塩、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウムのうちの1種又は2種の混合物である。
【0011】
好ましくは、増粘剤はトラガントガム、パパイヤシードガム、キサンテンガムのうちの1種又は2種の混合物である。
【0012】
好ましくは、分散剤はドデシルエトキシスルホベタイン、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、ドデシルジメチルヒドロキシプロピルホスホベタインのうちの1種又は2種の混合物である。
【0013】
また、本発明は、
無機硬化成分中の鉱工業副生成物及び酸性誘導原料をボールミル内で粉砕する原材料粉砕ステップと、
ボールミリングで得られた粉体を混合器に入れ、凝結促進剤、増粘剤及び分散剤を所定の割合で加えて均一に混合撹拌し、続いて水性エポキシ樹脂を加え、均一に撹拌した後に硬化促進剤を加え、均一に撹拌し続けると、前記残土硬化剤を得る材料混合ステップとを含む、上記セメントフリーの残土硬化剤の調製方法をさらに提供する。
【0014】
好ましくは、原材料の粉砕後に得られた粉体の表面積は300m/kg~500m/kgに制御される。
【0015】
また、本発明は上記セメントフリーの残土硬化剤の応用をさらに提供し、質量比1:7~1:12のセメントフリーの残土硬化剤と残土とをミキサーに入れ、撹拌しながら水を加え、均一に撹拌して残土スラリーを得、残土スラリーを54%~63%の質量百分率濃度で調製し、打設し、養生する。
【発明の効果】
【0016】
従来技術に比べ、本発明の特性及び有益な効果は次のとおりである。
(1)埋め戻し残土の凝結硬化が遅く(一般的には2~3日間硬化して強度を形成する)、施工周期が長い(一般的には30日間程度である)という問題を解決するために、本発明は無機硬化成分と有機硬化成分の二重硬化効果を採用して残土の高速で高効率の硬化を実現し、1日以内に強度を形成し、施工周期を50%以上短縮する。具体的には、リン酸塩系酸性誘導原料を用いてサリック含有量の高い鉱工業副生成物に対して活性誘導を行い、リン酸塩系酸性誘導原料の作用で鉱工業副生成物におけるサリック鉱物の高速溶解を実現することができ、且つ酸性誘導原料中のリン酸系物質のオルトリン酸根と重合反応を行い、三次元網状を有する構造基体を形成する。また、残土中の活性鉱物(例えばAl)も基体ネットワークの構築に参加することができ、それにより残土の硬化を実現する。また、有機硬化成分中の水性エポキシ樹脂は残土と接着することもでき、且つ硬化促進剤の作用で残土の急速硬化を実現する。上記二種類の成分の二重硬化効果によって残土の高効率硬化をさらに実現する。
【0017】
(2)一部の狭い特殊領域の埋め戻し施工難度が大きいという問題に対し、本発明は補助調節成分の調節作用により残土スラリーの性能を改善する。従来のセメントスラリーによる硬化残土は分離の不均一が発生しやすく、上下層と全体強度の差が大きい。本発明は分散剤表面電荷の遮蔽作用によって粒子の凝集を低減させ、残土の分散性を向上させ、その高流動性を実現し、増粘剤を採用して残土スラリーの粘度及び安定性を増加し、スラリーのブリーディングによる分離を回避し、凝結促進剤と反応生成物との複塩又は錯体の生成により残土スラリーの凝結時間を短縮させ、早期強度を向上させる。
【0018】
(3)本発明の残土硬化剤の主な原料は鉱工業副生成物であり、鉱工業副生成物の占有率が80%以上に達し、且つセメント及びフライアッシュをドープする必要がなく、コストを効果的に制御することができる。使用された鉱工業副生成物はエコロジーで環境にやさしい材料であり、優れた硬化効果を奏するだけでなく、さらに鉱工業副生成物の資源化利用を実現することができる。また、それで残土を硬化し、残土資源の高効率利用を実現することができ、資源循環及び環境の持続可能な発展の面で顕著な経済的利益を有し、汚染低減と炭素低減の相乗的措置を推進し、早日に炭素中和を実現することに対して意義が大きい。
【0019】
(4)本発明の残土硬化剤を残土と混合して、埋め戻し材料を製造した後に流動度を測定し、得られた流動度が255mmと高く、打設して離型し且つ養生した後に3日間の一軸圧縮強度、7日間の一軸圧縮強度及び28日間の一軸圧縮強度を測定し、3日間の一軸圧縮強度が1.8MPa、7日間の一軸圧縮強度が2.5MPa、28日間の一軸圧縮強度が3.9MPaと高い。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実現する技術的手段、革新的な特徴、達成目的と効果を分かりやすくするために、以下、本発明についてさらに説明する。
【0021】
本明細書に記載の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すものであり、本発明の思想を説明するためのものであり、いずれも説明的且つ例示的なものであり、本発明の実施形態及び本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例に加えて、当業者は本願の特許請求の範囲及び明細書に開示された内容に基づいて、明らかな他の技術を採用することができ、これらの技術的解決手段は本明細書に記載の実施例に対して任意の明らかな置換及び修正を行う技術的解決手段を含む。
【0022】
本発明は、無機硬化成分、有機硬化成分及び補助調節成分を含むセメントフリーの残土硬化剤を提供する。そのうち、重量百分率で、無機硬化成分は、鉱工業副生成物60%~85%、及び酸性誘導原料8%~20%を含み、そのうち、鉱工業副生成物は赤泥、リチウムスラグ、鉄鉱石尾鉱のうちの1種又は2種の混合物であり、酸性誘導原料はテトラポリリン酸、リン酸二水素アルミニウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムのうちの1種又は多種の混合物である。有機硬化成分は水性エポキシ樹脂5%~15%、及び硬化促進剤1%~5%を含む。無機硬化成分の質量百分率で、補助調節成分は凝結促進剤2%~8%、増粘剤1%~10%、及び分散剤4%~12%を含む。
【0023】
水性エポキシ樹脂は、(1~5):1の質量比で水性エポキシエマルジョンと水性エポキシ硬化剤とから調製され、そのうち、水性エポキシエマルジョンの固形分含有量は55%であり、水性エポキシ硬化剤の固形分含有量は40%である。前記硬化促進剤は、トリエチレンジアミン、ポリエチレンアミン、トリエチレンテトラミンのうちの1種又は2種の混合物である。
【0024】
前記凝結促進剤はトリエタノールアミン硫酸塩、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウムのうちの1種又は2種の混合物である。増粘剤はトラガントガム、パパイヤシードガム、キサンテンガムのうちの1種又は2種の混合物である。分散剤はドデシルエトキシスルホベタイン、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、ドデシルジメチルヒドロキシプロピルホスホベタインのうちの1種又は2種の混合物である。
【0025】
上記セメントフリーの残土硬化剤の調製方法は以下の原材料粉砕ステップと、材料混合ステップと、を含む。
【0026】
原材料粉砕ステップにおいて、無機硬化成分中の鉱工業副生成物及び酸性誘導原料をボールミル内で粉砕し、得られた粉体の表面積は300m/kg~500m/kgに制御される。
【0027】
材料混合ステップにおいて、ボールミリングで得られた粉体を混合器に入れ、凝結促進剤、増粘剤及び分散剤を所定の割合で加えて均一に混合撹拌し、続いて水性エポキシ樹脂を加え、均一に撹拌した後に硬化促進剤を加え、均一に撹拌し続けると、前記残土硬化剤を得る。
【0028】
質量比が1:7~1:12のセメントフリーの残土硬化剤と残土とをミキサーに入れ、撹拌しながら水を加え、均一に撹拌して残土スラリーを得、残土スラリーを54%~63%の質量百分率濃度で調製し、打設し、養生する。
【0029】
以下、本発明の効果をより一層発揮するために、具体的な応用例に合わせて本発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
(実施例1)
無機硬化成分及び有機硬化成分をそれぞれ質量百分率で秤量し、ここで、補助調節成分は無機硬化成分の質量百分率で計算され、具体的には以下のとおりである。
無機硬化成分:リチウムスラグ60%、酸性ピロリン酸ナトリウム20%。
有機硬化成分:水性エポキシ樹脂15%(水性エポキシエマルジョンと水性エポキシ硬化剤との質量比が1:1である)、ポリエチレンアミン5%。
補助調節成分(無機硬化成分の合計質量に占めた百分率):ポリ塩化アルミニウム2%、トラガントガム1%、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド4%。
【0031】
(1)粉砕:質量配合比で、リチウムスラグ及び酸性ピロリン酸ナトリウムを正確に秤量し、総量を5kgに制御し、それらをボールミルに入れて粉砕し、比表面積が300m/kgの混合物を得た。
【0032】
(2)材料混合:ステップ(1)で得られた粉体を混合器に入れ、リチウムスラグと酸性ピロリン酸ナトリウムとの質量の和の百分率でそれぞれポリ塩化アルミニウム、トラガントガム及びオクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシドを加えて30min混合撹拌し、続いて水性エポキシ樹脂を添加し、30min撹拌した後にポリビニルアミンを添加し、15min撹拌した後、前記残土硬化剤を得た。
【0033】
残土硬化剤の使用量と残土の質量比1:7、残土スラリーの質量百分率濃度54%の配合比で、残土硬化剤、残土及び水道水を秤量し、秤量した残土硬化剤及び残土を撹拌機に加え、撹拌しながら水道水を加え、スラリーを均一に撹拌した後、一定量のスラリーを取ってスラリーの流動度を測定し、その流動性を評価する。残ったスラリーをΦ39.1mm、高さ80mmの金型に打設し、養生箱に入れて48時間養生した後に離型し、引き続き特定の材令まで養生して強度試験を行った。
【0034】
(実施例2)
無機硬化成分及び有機硬化成分をそれぞれ質量百分率で秤量し、ここで、補助調節成分は無機硬化成分の質量百分率で計算され、具体的には以下のとおりである。
無機硬化成分:リチウムスラグ70%、酸性ピロリン酸ナトリウム15%。
有機硬化成分:水性エポキシ樹脂11%(水性エポキシエマルジョンと水性エポキシ硬化剤の質量比が3:1である)、ポリエチレンアミン4%。
補助調節成分(無機硬化成分の合計質量に占めた百分率):ポリ塩化アルミニウム4%、トラガントガム4%、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド6%。
【0035】
(1)粉砕:質量配合比で、リチウムスラグ及び酸性ピロリン酸ナトリウムを正確に秤量し、総量を5kgに制御し、それをボールミルに入れて粉砕し、比表面積が380m/kgの混合物を得た。
【0036】
(2)材料混合:ステップ(1)で得られた粉体を混合器に入れ、リチウムスラグと酸性ピロリン酸ナトリウムとの質量の和の百分率でそれぞれポリ塩化アルミニウム、トラガントガム及びオクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシドを加えて30min混合撹拌し、続いて水性エポキシ樹脂を添加し、30min撹拌した後にポリビニルアミンを添加し、15min撹拌した後、前記残土硬化剤を得た。
【0037】
残土硬化剤の使用量と残土の質量比1:9、残土スラリーの質量百分率濃度57%の配合比で、残土硬化剤、残土及び水道水を秤量し、秤量した残土硬化剤及び残土を撹拌機に加え、撹拌しながら水道水を加え、スラリーを均一に撹拌した後、一定量のスラリーを取ってスラリーの流動度を測定し、その流動性を評価する。残ったスラリーをΦ39.1mm、高さ80mmの金型に打設し、養生箱に入れて48時間養生した後に離型し、引き続き特定の材令まで養生して強度試験を行った。
【0038】
(実施例3)
無機硬化成分及び有機硬化成分をそれぞれ質量百分率で秤量し、補助調節成分は無機硬化成分の質量百分率で計算され、具体的には以下のとおりである。
無機硬化成分:リチウムスラグ75%、酸性ピロリン酸ナトリウム17%。
有機硬化成分:水性エポキシ樹脂5%(水性エポキシエマルジョンと水性エポキシ硬化剤の質量比が4:1である)、ポリエチレンアミン3%。
補助調節成分(無機硬化成分の合計質量に占めた百分率):ポリ塩化アルミニウム6%、トラガントガム7%、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド9%。
【0039】
(1)粉砕:質量配合比で、リチウムスラグ及び酸性ピロリン酸ナトリウムを正確に秤量し、総量を5kgに制御し、それをボールミルに入れて粉砕し、比表面積が440m/kgの混合物を得た。
【0040】
(2)材料混合:ステップ(1)で得られた粉体を混合器に入れ、リチウムスラグ及び酸性ピロリン酸ナトリウム質量の和の百分率でそれぞれポリ塩化アルミニウム、トラガントガム及びオクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシドを加えて30min混合撹拌し、続いて水性エポキシ樹脂を添加し、30min撹拌した後にポリビニルアミンを添加し、15min撹拌した後、前記残土硬化剤を得た。
【0041】
残土硬化剤の使用量と残土の質量比1:10、残土スラリーの質量百分率濃度60%の配合比で、残土硬化剤、残土及び水道水を秤量し、秤量した残土硬化剤及び残土を撹拌機に加え、撹拌しながら水道水を加え、スラリーを均一に撹拌した後、一定量のスラリーを取ってスラリーの流動度を測定し、その流動性を評価する。残ったスラリーをΦ39.1mm、高さ80mmの金型に打設し、養生箱に入れて48時間養生した後に離型し、引き続き特定の材令まで養生して強度試験を行った。
【0042】
(実施例4)
無機硬化成分及び有機硬化成分をそれぞれ質量百分率で秤量し、補助調節成分は無機硬化成分の質量百分率で計算され、具体的には以下のとおりである。
無機硬化成分:リチウムスラグ85%、酸性ピロリン酸ナトリウム8%。
有機硬化成分:水性エポキシ樹脂6%(水性エポキシエマルジョンと水性エポキシ硬化剤の質量比が5:1である)、ポリエチレンアミン1%。
補助調節成分(無機硬化成分の合計質量に占めた百分率):ポリ塩化アルミニウム8%、トラガントガム10%、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド12%。
【0043】
(1)粉砕:質量配合比で、リチウムスラグ及び酸性ピロリン酸ナトリウムを正確に秤量し、総量を5kgに制御し、それをボールミルに入れて粉砕し、比表面積が500m/kgの混合物を得た。
【0044】
(2)材料混合:ステップ(1)で得られた粉体を混合器に入れ、リチウムスラグ及び酸性ピロリン酸ナトリウム質量の和の百分率でそれぞれポリ塩化アルミニウム、トラガントガム及びオクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシドを加えて30min混合撹拌し、続いて水性エポキシ樹脂を添加し、30min撹拌した後にポリビニルアミンを添加し、15min撹拌した後、前記残土硬化剤を得た。
【0045】
残土硬化剤の使用量と残土の質量比1:12、残土スラリーの質量百分率濃度63%の配合比で、残土硬化剤、残土及び水道水を秤量し、秤量した残土硬化剤及び残土を撹拌機に加え、撹拌しながら水道水を加え、スラリーを均一に撹拌した後、一定量のスラリーを取ってスラリーの流動度を測定し、その流動性を評価する。残ったスラリーをΦ39.1mm、高さ80mmの金型に打設し、養生箱に入れて48時間養生した後に離型し、引き続き特定の材令まで養生して強度試験を行った。
【0046】
(比較例1)
本比較例では、水性エポキシ樹脂及びポリビニルアミンを添加しなかった以外は、実施例1と同様である。
【0047】
(比較例2)
本比較例では、ポリエチレンアミンを添加しなかった以外は、実施例1と同様である。
【0048】
(比較例3)
本比較例では、ポリ塩化アルミニウムを添加しなかった以外は、実施例4と同様である。
【0049】
(比較例4)
本比較例では、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシドを添加しなかった以外は、実施例4と同様である。
【0050】
(比較例5)
本比較例では、酸性ピロリン酸ナトリウムを同量の塩基性刺激剤NaOHに置き換えた以外は、実施例1と同様である。
【0051】
(比較例6)
本比較例では、リチウムスラグの使用量を35%に調整し、セメントを10%増加し、フライアッシュを15%増加し、その他は実施例1と同様である。
【0052】
GB/T8077-2012「コンクリート混和剤の均質性試験方法」に基づいて実施例及び比較例における残土スラリーの流動度を測定した。SL237-1999「土質工学試験手順」に基づいて実施例及び比較例における硬化残土スラリーの3日間、7日間及び28日間の一軸圧縮強度を測定し、結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
比較例1は、有機硬化成分が欠落しているため、流動性がわずかに改善されたが、3日間、7日間、28日間の一軸圧縮強度がいずれも著しく低下した。
【0055】
比較例2は、硬化促進剤のポリビニルアミンが欠落しているため、有機硬化成分の硬化効果をある程度で低下させ、試料の3日間、7日間及び28日間の一軸圧縮強度も異なる程度で低下した。
【0056】
残土スラリーの流動度の点では、比較例3における凝結促進剤であるポリ塩化アルミニウムの欠落により残土スラリーの流動度に一定の改善がされた。一軸圧縮強度の点では、ポリ塩化アルミニウムが欠落しているため、残土硬化スラリーの3日間、7日間及び28日間の一軸圧縮強度が一定的に低下したが、その影響程度が有機硬化成分による残土スラリー強度に対する影響より小さい。
【0057】
残土スラリーの流動度の点では、比較例4の分散剤であるオクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシドが欠落しているため、残土スラリーの流動性が著しく低下した。一軸圧縮強度の点では、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシドが欠落しているため、残土硬化スラリーの3日間、7日間及び28日間の一軸圧縮強度が一定的に低下したが、その影響程度が有機硬化成分による残土スラリー強度に対する影響より小さい。
【0058】
比較例5は、酸性ピロリン酸ナトリウムを塩基性誘導原料に置き換え、塩基誘導剤を採用すると、硬化残土スラリーの各材令の強度がある程度で低下し、その主な原因は、酸性誘導作用より、塩基性誘導作用での各鉱物の溶解程度がある程度で低下することにより、鉱工業副生成物の反応程度の低下を引き起こし、さらに硬化残土スラリーの強度低下を引き起こすことである。
【0059】
比較例6は、一部のセメント及びフライアッシュでリチウムスラグを代替し、一部のセメント及びフライアッシュでリチウムスラグを代替すると、得られた硬化残土スラリーの強度は実施例1に相当したが、比較例6のコストは著しく上昇した。
【0060】
以上の各実施例は本発明を説明するためのものであり、特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者が本発明の説明書の内容に基づいて想到し得る他の代替手段は、いずれも本発明の特許請求の保護範囲内にあるべきである。
【要約】      (修正有)
【課題】コストを制御可能で、高速で高効率に硬化する要求を満たす残土硬化剤及びその調製方法を提供する。
【解決手段】無機硬化成分、有機硬化成分及び補助調節成分を含むセメントフリーの残土硬化剤であり、重量百分率で、無機硬化成分は、鉱工業副生成物60%~85%、及び酸性誘導原料8%~20%を含み、そのうち、鉱工業副生成物は赤泥、リチウムスラグ、鉄鉱石尾鉱のうちの1種又は2種の混合物であり、酸性誘導原料はテトラポリリン酸、リン酸二水素アルミニウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムのうちの1種又は多種の混合物であり、有機硬化成分は水性エポキシ樹脂5%~15%、及び硬化促進剤1%~5%を含み、無機硬化成分の質量百分率で、補助調節成分は凝結促進剤2%~8%、増粘剤1%~10%、及び分散剤4%~12%を含む。
【選択図】なし