(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】半導体装置製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230525BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230525BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H01L21/304 622W
H01L21/304 631
H01L21/304 622J
H01L21/02 B
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2018199008
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】山川 章
(72)【発明者】
【氏名】辻 直子
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-069736(JP,A)
【文献】特開2015-222755(JP,A)
【文献】特開2015-164160(JP,A)
【文献】特開2016-004835(JP,A)
【文献】特開2016-004799(JP,A)
【文献】特開2016-178162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/02
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子を含む積層構造を有する半導体装置を製造するための方法であって、
それぞれが貼合せ面を有する一対のウエハの各貼合せ面に接着剤層を形成する少なくとも一つの第1工程と、
前記第1工程ごとに行われる少なくとも一つの、前記接着剤層を伴う前記貼合せ面どうしを前記接着剤層を介して接合する第2工程と、
前記第2工程より後に、前記一対のウエハにおける一方のウエハに対する研削によって当該ウエハを薄化する第3工程と、
前記第3工程ごとに得られるウエハ積層体の薄化されたウエハとその直下の接着剤層とを貫通する貫通電極を形成する第4工程と、を含
み、
前記第1~第4工程が複数存在する場合、2回目以降の第1工程、及び第2工程は、前記第4工程によって貫通電極が形成された後のウエハ積層体における第3工程にて薄化された側の面と、新たなウエハの一方の面に接着剤層が形成されて接合され、2回目以降の第4工程は、直前の第3工程によって得られたウエハ積層体の薄化されたウエハとその直下の接着剤層とを貫通する貫通電極を形成する、半導体装置製造方法。
【請求項2】
前記一対のウエハにおける一方のウエハは他方のウエハよりも薄い、請求項1に記載の半導体装置製造方法。
【請求項3】
前記第1工程とこれに続く前記第2工程、第3工程、及び第4工程とを少なくとも1サイクルに含むプロセスを複数サイクル行うことによって得られるウエハ積層体の積層方向において、最後の第2工程で追加されたウエハとは反対側の端に位置するウエハ、に対する研削によって当該ウエハを薄化する第5工程を更に含む、請求項1又は2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項4】
第1ウエハ、並びに、支持基板と、第2ウエハと、当該支持基板および第2ウエハの間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する補強第2ウエハを、用意する工程と、
前記第1ウエハ上に接着剤層を形成し、且つ、前記補強第2ウエハにおける前記第2ウエハ上に接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層を伴う前記第1および第2ウエハを当該接着剤層を介して接合する工程と、
前記支持基板と前記第2ウエハとの間における前記仮接着剤層による仮接着状態を解除して前記支持基板を取り外す工程と、
前記取外し工程を経て得られるウエハ積層体の第2ウエハとその直下の接着剤層とを貫通する貫通電極を形成する工程と、を含む半導体装置製造方法。
【請求項5】
支持基板と、追加の第2ウエハと、当該支持基板および第2ウエハの間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する補強第2ウエハにおける前記第2ウエハ上に接着剤層を形成し、且つ、前記第1ウエハ上の第2ウエハ上に接着剤層を形成する、少なくとも一つの接着剤層形成工程と、
前記接着剤層形成工程ごとに行われる少なくとも一つの、前記接着剤層を伴う前記第2ウエハどうしを当該接着剤層を介して接合するウエハ追加工程と、
前記ウエハ追加工程ごとに行われる少なくとも一つの、前記支持基板と前記第2ウエハとの間における前記仮接着剤層による仮接着状態を解除して前記支持基板を取り外す工程と、
前記取外し工程ごとに得られるウエハ積層体の追加の第2ウエハとその直下の接着剤層とを貫通する貫通電極を形成する工程と、を更に含
み、
前記接着剤層形成工程、ウエハ追加工程、取り外す工程、及び貫通電極を形成する工程が複数存在する場合、2回目以降の接着剤層形成工程、及びウエハ追加工程は、前記貫通電極を形成する工程によって貫通電極が形成された後のウエハ積層体における追加の第2ウエハ上に接着剤層が形成されて接合され、2回目以降の貫通電極を形成する工程は、直前の取外し工程によって得られたウエハ積層体のウエハ積層体の追加の第2ウエハとその直下の接着剤層とを貫通する貫通電極を形成する、請求項4に記載の半導体装置製造方法。
【請求項6】
前記第1ウエハに対する研削によって当該第1ウエハを薄化する工程を更に含む、請求項4または5に記載の半導体装置製造方法。
【請求項7】
前記接着剤層が、ポリオルガノシルセスキオキサン含有熱硬化型接着剤を含む、請求項1から6のいずれか一つに記載の半導体装置製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体素子を含む積層構造を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの更なる高密度化を主な目的として、複数の半導体チップないし半導体素子がその厚さ方向に集積された立体的構造を有する半導体デバイスを製造するための技術の開発が進められている。そのような技術の一つとして、いわゆるWOW(Wafer on Wafer)プロセスが知られている。WOWプロセスでは、ウエハを他のウエハに対して接着剤層を介して接合して積層する工程と、当該積層ウエハに対するその後の各種の加工工程とを含む一連の工程が、所定の回数、行われる。ウエハ接合工程では、例えば、トランジスタ作製工程、配線形成工程、および薄化工程を経て得られる薄いウエハが、厚いベースウエハに対し、或いは、既にウエハ接合工程を経てベースウエハ上に積層された他の薄いウエハに対し、接着剤層を介して接合されて積層される。所定数のウエハの積層を経て得られるウエハ積層体の、複数の半導体チップが積層された構造を有する半導体デバイスへの個片化は、ウエハ積層体の厚さ方向における複数のウエハに対する一括的な切断によって行われる。このようなWOWプロセスに関する技術については、例えば下記の特許文献1~3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/032729号
【文献】国際公開第2012/121344号
【文献】国際公開第2015/087450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WOWプロセスにおけるウエハ接合工程では、従来、接合対象として用意される二つのウエハのうち一方のウエハの貼合せ面に、例えば接着剤組成物の塗工によって、接着剤層が形成される。そして、当該接着剤層を介して両ウエハにおける貼合せ面が貼り合わせられた後、接着剤層が硬化されて両ウエハが接合される。貼合せの過程では、一方のウエハの貼合せ面上にある塑性変形可能な接着剤層が、他方のウエハの貼合せ面に密着する。このような過程においては、硬いウエハ貼合せ面と柔らかい接着剤層との界面(ウエハ間が接合されるWOWプロセスでは相当程度に広い)にボイドが生じやすい。また、製造目的である半導体デバイスの薄型化の観点から、半導体素子間の接着剤層については厚さの低減に対する要求があるところ、従来のウエハ接合工程では、一方のウエハの貼合せ面上に形成される接着剤層が薄いほど、ウエハ貼合せ過程で当該接着剤層と他方のウエハの貼合せ面との界面に生ずるボイドの数は、増加する傾向にある。接着剤層を介したウエハ間の貼合せにおけるその貼合せ界面に多数のボイドが発生することは、ウエハ間の接着剤接合において高い接合強度を得るうえで好ましくなく、従って、製造される半導体装置の半導体素子間の接着剤接合において高い接合強度を得るうえで好ましくない。
【0005】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、接着剤層を介して接合されて多層化される半導体素子間において高い接合強度を実現するのに適した半導体装置製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面により提供される半導体装置製造方法は、複数の半導体素子を含む積層構造を有する半導体装置を製造するための方法であって、次のような少なくとも一つの第1工程と、当該第1工程ごとに行われる少なくとも一つの第2工程とを含む。第1工程では、それぞれが貼合せ面(接合予定面)を有する一対のウエハの各貼合せ面に接着剤層が形成される。各ウエハは、半導体素子が作り込まれ得る半導体ウエハである。第1工程より前に、各ウエハの貼合せ面は、形成される接着剤層との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。第1工程に付される一対のウエハの一方は、先行する第1工程およびそれに続く第2工程を少なくとも一度経て形成された所定積層数のウエハ積層体において最も端に位置するウエハであってもよい。第2工程では、接着剤層を伴うウエハ貼合せ面どうしが当該接着剤層を介して接合される。この第2工程は、一方のウエハのいわゆる回路面側(半導体素子とそれに必要な配線構造等が形成される側)と、他方のウエハの回路面側とが接合されるものであってもよいし(Face-to-Faceでの接合)、一方のウエハの回路面側と他方のウエハのいわゆる裏面側とが接合されるものであってもよい(Face-to-Backでの接合)。
【0007】
本半導体装置製造方法は、上述のように、接着剤層を伴うウエハ貼合せ面どうしが当該接着剤層を介して接合される第2工程(ウエハ接合工程)を含む。このようなウエハ接合工程でのウエハ間の貼合せ過程においては、各ウエハの貼合せ面上にある塑性変形可能な接着剤層どうしが密着して一体化する。そのため、従来の技術においては硬いウエハ貼合せ面と柔らかい接着剤層とが密着することから貼合せ界面に生じやすい上述のボイドの形成は、本方法によると抑制される。ウエハ間の貼合せ界面におけるボイドが少ないほど、当該ウエハ間での接着剤層の硬化によって至るウエハ間接合状態は強固となる傾向にあり、従って、製造される半導体装置における半導体素子間の接着剤層による接合強度は、高い傾向にある。
【0008】
以上のように、本発明の第1の側面に係る半導体装置製造方法は、製造される半導体装置において、接着剤層を介して接合されて多層化される半導体素子間の高い接合強度を実現するのに適する。また、ウエハ貼合せ過程において一方のウエハ貼合せ面上の接着剤層が薄いほど当該接着剤層と他方のウエハ貼合せ面との界面に形成されるボイドの数が増加する傾向にある従来の方法よりも、貼合せ界面でのボイドの発生が抑制される本半導体装置製造方法は、ウエハ間の接着剤層の薄層化を図るのに適する。当該接着剤層の薄層化は、製造される半導体装置の薄型化に資する。
【0009】
本発明の第1の側面に係る半導体装置製造方法では、一対のウエハにおける一方のウエハは他方のウエハより薄くてもよい。本発明の第1の側面に係る半導体装置製造方法は、一対のウエハにおける一方のウエハに対する研削によって当該ウエハを薄化する第3工程を上記第2工程より後に更に含んでもよい。また、本発明の第1の側面に係る半導体装置製造方法は、第1工程とこれに続く第2工程とを少なくとも1サイクルに含むプロセスを複数サイクル行うことによって得られるウエハ積層体の積層方向において、最後の第2工程で追加されたウエハとは反対側の端に位置するウエハ、に対する研削によって当該ウエハを薄化する第4工程を更に含んでもよい。これら構成は、製造される半導体装置の薄型化を図るのに適する。
【0010】
本発明の第2の側面により提供される半導体装置製造方法は、複数の半導体素子を含む積層構造を有する半導体装置を製造するための方法であって、用意工程と、接着剤層形成工程と、ウエハ接合工程と、取外し工程とを含む。用意工程では、第1ウエハおよび補強第2ウエハが用意される。補強第2ウエハは、支持基板と、第2ウエハと、当該支持基板および第2ウエハの間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する。第1および第2ウエハのそれぞれは、半導体素子が作り込まれ得る半導体ウエハである。補強第2ウエハにおける仮接着剤層は、第2ウエハと支持基板との間の、事後的に解除可能な仮の接着状態を、実現するためのものである。接着剤層形成工程では、第1ウエハ上に接着剤層が形成され、且つ、補強第2ウエハにおける第2ウエハ上に接着剤層が形成される。このような接着剤層形成工程より前に、第1ウエハの接合予定面、および/または、補強第2ウエハにおける第2ウエハの接合予定面は、形成される接着剤層との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。ウエハ接合工程では、接着剤層を伴う第1ウエハと接着剤層を伴う第2ウエハとがこれら接着剤層を介して接合される。このウエハ接合工程は、第1ウエハの回路面側と第2ウエハの回路面側とが接合されるものであってもよいし(Face-to-Faceでの接合)、第1ウエハの回路面側と第2ウエハの裏面側とが接合されるものであってもよい(Face-to-Backでの接合)。そして、取外し工程では、支持基板と第2ウエハとの間における仮接着剤層による仮接着状態が解除されて支持基板の取外しが行われる。
【0011】
本半導体装置製造方法は、上述のように、接着剤層を伴う第1ウエハと接着剤層を伴う第2ウエハとがこれら接着剤層を介して接合される工程(ウエハ接合工程)を含む。このようなウエハ接合工程でのウエハ間の貼合せ過程においては、各ウエハの接合予定面ないし貼合せ面上にある塑性変形可能な接着剤層どうしが密着して一体化する。そのため、従来の技術においては硬いウエハ貼合せ面と柔らかい接着剤層とが密着することから貼合せ界面に生じやすい上述のボイドの形成は、本方法によると抑制される。ウエハ間の貼合せ界面におけるボイドが少ないほど、当該ウエハ間での接着剤層の硬化によって至るウエハ間接合状態は強固となる傾向にあり、従って、製造される半導体装置における半導体素子間の接着剤層による接合強度は、高い傾向にある。このように、本半導体装置製造方法は、製造される半導体装置において、接着剤層を介して接合されて多層化される半導体素子間の高い接合強度を実現するのに適する。
【0012】
また、ウエハ貼合せ過程において一方のウエハ貼合せ面上の接着剤層が薄いほど当該接着剤層と他方のウエハ貼合せ面との界面に形成されるボイドの数が増加する傾向にある従来の方法よりも、貼合せ界面でのボイドの発生が抑制される本半導体装置製造方法は、ウエハ間の接着剤層の薄層化を図るのに適する。当該接着剤層の薄層化は、製造される半導体装置の薄型化に資する。
【0013】
加えて、本方法では、第2ウエハが支持基板を伴って補強を受ける形態で第1ウエハと接合され(ウエハ接合工程)、その後に当該第2ウエハから支持基板が取り外される(取外し工程)ところ、このような構成は、第1ウエハに対して薄い第2ウエハを接合するのに適する。第2ウエハの薄型化は、製造される半導体装置の薄型化に資する。
【0014】
以上のように、本半導体装置製造方法は、製造される半導体装置において、接着剤層を介して接合されて多層化される半導体素子間の高い接合強度を実現するのに適するとともに、当該半導体装置の薄型化を図るのに適する。
【0015】
本発明の第2の側面に係る半導体装置製造方法は、好ましくは、少なくとも一つの追加の接着剤層形成工程と、当該工程ごとに行われる少なくとも一つのウエハ追加工程と、当該工程ごとに行われる少なくとも一つの取外し工程とを更に含む。追加の接着剤層形成工程では、支持基板と、追加の第2ウエハと、当該支持基板および第2ウエハの間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する補強第2ウエハにおける第2ウエハ上に接着剤層が形成され、且つ、第1ウエハ上の別の第2ウエハ上に接着剤層が形成される。第1ウエハ上の別の第2ウエハとは、上述のウエハ接合工程において第1ウエハと接合された第2ウエハ、または、先行のウエハ追加工程において第1ウエハ上に追加的に積層された第2ウエハである。補強第2ウエハにおける仮接着剤層は、第2ウエハと支持基板との間の、事後的に解除可能な仮の接着状態を、実現するためのものである。ウエハ追加工程より前に、第1ウエハ上の第2ウエハの接合予定面、および/または、補強第2ウエハにおける第2ウエハの接合予定面は、形成される接着剤層との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。ウエハ追加工程では、接着剤層を伴う一方の第2ウエハと接着剤層を伴う他方の第2ウエハとがこれら接着剤層を介して接合される。このウエハ追加工程は、一方の第2ウエハの回路面側と他方の第2ウエハの回路面側とが接合されるものであってもよいし(Face-to-Faceでの接合)、一方の第2ウエハの回路面側と他方の第2ウエハの裏面側とが接合されるものであってもよい(Face-to-Backでの接合)。そして、取外し工程では、ウエハ追加工程を経た補強第2ウエハにおける支持基板と第2ウエハとの間における仮接着剤層による仮接着状態が解除されて支持基板の取外しが行われる。
【0016】
ウエハ追加工程では、上述のように、接着剤層を伴う第2ウエハどうしが当該接着剤層を介して接合される。このようなウエハ追加工程での第2ウエハ間の貼合せ過程においては、各第2ウエハの接合予定面ないし貼合せ面上にある塑性変形可能な接着剤層どうしが密着して一体化する。そのため、従来の技術においては硬いウエハ貼合せ面と柔らかい接着剤層とが密着することから貼合せ界面に生じやすい上述のボイドの形成は、当該ウエハ追加工程においては抑制される。第2ウエハ間の貼合せ界面におけるボイドが少ないほど、当該第2ウエハ間での接着剤層の硬化によって至る第2ウエハ間接合状態は強固となる傾向にあり、従って、製造される半導体装置において、これら第2ウエハに由来する半導体素子の間の接合強度は、高い傾向にある。また、接着剤層を介した第2ウエハ間の貼合せにおけるその貼合せ界面でのボイドの発生が抑制される当該ウエハ追加工程を含む本半導体装置製造方法は、接着剤層が薄いほど貼合せ界面のボイド発生数が増加する傾向にある上述の従来の方法よりも、ウエハ間の接着剤層の薄層化を図るのに適する。加えて、追加の第2ウエハが支持基板を伴って補強を受ける形態で第1ウエハ上の別の第2ウエハと接合され(ウエハ追加工程)、その後に、追加の第2ウエハから支持基板が取り外される(取外し工程)という上述の構成は、追加の第2ウエハとして薄いウエハの接合を行うのに適する。第2ウエハの薄型化は、上述のように、製造される半導体装置の薄型化に資する。
【0017】
本発明の第2の側面に係る半導体装置製造方法は、好ましくは、第1ウエハに対する研削によって当該第1ウエハを薄化する工程(研削工程)を更に含む。この研削工程により、第1ウエハを所定の厚さにまで薄化することが可能である。当該構成は、製造される半導体装置の薄型化を図るのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図2】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図3】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図4】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図5】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図6】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図7】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図8】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図9】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図10】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図11】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図12】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図13】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図14】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図15】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図16】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図17】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
【
図18】実施例および比較例の各ウエハ積層体から加工形成される剥離試験用の試験片を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から
図8は、本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法を表す。この製造方法は、半導体素子がその厚さ方向に集積された立体的構造を有する半導体装置を製造するための方法であり、
図1から
図8のそれぞれは、製造過程を部分断面図で表すものである。
【0020】
本半導体装置製造方法においては、まず、
図1(a)に示すように、ウエハ11およびウエハ12が用意される。
【0021】
ウエハ11は、面11a、および、これとは反対の面11bを有する。ウエハ11は、面11aの側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面11a上に既に形成されている、半導体ウエハである。ウエハ11をなすための半導体ウエハの構成材料としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素(SiC)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、およびインジウムリン(InP)が挙げられる。このようなウエハ11の厚さは、製造プロセス中の当該ウエハ11を含むウエハ積層体の強度を確保するという観点からは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上である。ウエハ11に対する後述の研削工程における研削時間の短縮化の観点からは、ウエハ11の厚さは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下である。
【0022】
ウエハ12は、面12a、および、これとは反対の面12bを有する。ウエハ12は、面12aの側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面12a上に既に形成されている、半導体ウエハである。ウエハ12をなすための半導体ウエハの構成材料としては、例えば、ウエハ11をなすための半導体ウエハの構成材料として上掲したものを採用することができる。このようなウエハ12の厚さは、製造プロセス中の当該ウエハ12を含むウエハ積層体の強度を確保するという観点からは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上である。ウエハ12に対する後述の研削工程における研削時間の短縮化の観点からは、ウエハ12の厚さは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下である。また、本実施形態では、用意されるウエハ11,12は、同じ厚さを有してもよいし、異なる厚さを有してもよい。
【0023】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図1(b)に示すように、ウエハ11の面11a(接合予定面)上に接着剤層21が形成され、且つ、ウエハ12の面12a(接合予定面)上に接着剤層21が形成される(接着剤層形成工程)。接着剤層21は、ウエハ間を接合するためのものであり、本実施形態では熱硬化型接着剤よりなる。当該熱硬化型接着剤をなすための粘着剤主成分としては、例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン、ベンゾシクロブテン(BCB)樹脂、およびノボラック系エポキシ樹脂が挙げられる。各種温度条件を実現するための温度変動を伴う半導体装置製造過程における温度環境に耐えうる良好な耐熱性や耐クラック性を確保するという観点からは、接着剤層21の形成には、ポリオルガノシルセスキオキサン含有熱硬化型接着剤を採用するのが好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサン含有熱硬化型接着剤としては、例えば国際公開第2016/204114号に記載の接着剤を採用することができる。また、接着剤層21をなすための熱硬化型接着剤の耐熱性に関し、当該接着剤の熱分解温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは260℃以上、より好ましくは300℃以上である。熱分解温度は、示差熱熱重量同時測定装置を使用して行う熱重量分析によって得られる曲線、即ち、分析対象である試料についての所定昇温範囲での熱重量の温度依存性を表す曲線における、昇温過程初期の重量減少のない或いは一定割合でわずかに漸減している部分の接線と、昇温過程初期に続く昇温過程中期の有意な重量減少が生じている部分内にある変曲点での接線との交点が示す温度とする。示差熱熱重量同時測定装置としては、例えば、セイコーインスツル株式会社製の商品名「TG-DTA6300」を使用することができる。本工程での各接着剤層21の形成においては、例えば、接着剤層21形成用の接着剤組成物をウエハの接合予定面にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させて固化させる。ウエハ11の面11a上に接着剤層21を形成するための接着剤組成物と、ウエハ12の面12a上に接着剤層21を形成するための接着剤組成物とは、同一組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。すなわち、ウエハ11の面11a上に形成される接着剤層21と、ウエハ12の面12a上に形成される接着剤層21とは、同一組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。また、各接着剤層21の形成において、加熱温度は例えば50~150℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。このような接着剤層21の形成より前に、ウエハ11の面11a側、および/または、ウエハ12の面12a側は、接着剤層21との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。
【0024】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図1(c)および
図1(d)に示すように、接着剤層21を伴うウエハ11と、接着剤層21を伴うウエハ12とが、これら接着剤層21を介して接合される(ウエハ接合工程)。ウエハ接合工程においては、まず、ウエハ11とウエハ12とを、接着剤層21を介して、加圧しつつ且つ必要に応じて加熱しつつ貼り合わせる。この貼合せ過程においては、ウエハ11の面11a上の塑性変形可能な接着剤層21と、ウエハ12の面12a上の塑性変形可能な接着剤層21とが、密着して一体化する。この貼合せにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm
2であり、温度は例えば30~200℃である。次に、ウエハ11,12間に介在する接着剤層21を加熱によって硬化させる。接着剤層21の硬化において、加熱温度は例えば30~200℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。以上のようなウエハ接合工程の後におけるウエハ11,12間の接着剤層21の厚さは、例えば0.5~20μmである。
【0025】
本実施形態においては、次に、
図2に示すようにウエハ12が薄化される。本工程では、例えば、ウエハ12の面12b側に対する研削加工によってウエハ12を所定の厚さにまで薄化する。薄化後のウエハ12の厚さは、例えば1~20μmである。ウエハ12が薄化のための工程を経ずとも十分に薄い場合には、当該薄化工程を行わなくてもよい。
【0026】
次に、
図3に示すように、以上のような工程を経て得られるウエハ積層体において異なるウエハ(ウエハ11とウエハ12)に形成されている半導体素子間の電気的接続のための貫通電極31が形成される。例えば、ウエハ12と接着剤層21とを貫通してウエハ11上の上記配線構造(図示略)に至る開口部の形成、当該開口部の内壁面への絶縁膜(図示略)の形成、絶縁膜表面へのバリア層(図示略)の形成、バリア層表面への電気めっき用シード層(図示略)の形成、および、電気めっき法による開口部内への銅など導電材料の充填を経るなどして、貫通電極31を形成することができる。貫通電極31により、ウエハ11の面11a側に形成されている配線構造(図示略)と、ウエハ12の面12a側に形成されている配線構造(図示略)とが、電気的に接続される。
【0027】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図4(a)に示すように、貫通電極形成後のウエハ積層体におけるウエハ12の面12b(接合予定面)上に接着剤層21が形成され、且つ、新たなウエハ12のウエハ12の面12a(接合予定面)上に接着剤層21が形成される(追加の接着剤層形成工程)。新たなウエハ12は、その面12a側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面12a上に既に形成されている、半導体ウエハである。新たなウエハ12の構成材料および厚さについては、
図1を参照して上述したウエハ12の構成材料および厚さと同様である。面12a,12b上への各接着剤層21の形成においては、例えば、接着剤層21形成用の接着剤組成物をウエハの接合予定面にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させて固化させる。本工程において各接着剤層21を形成するための接着剤組成物は、互いに、同一組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。各接着剤層21の形成において、加熱温度は例えば50~150℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。このような接着剤層21の形成より前に、ウエハ積層体におけるウエハ12の面12b側、および/または、新たなウエハ12の面12a側は、接着剤層21との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。
【0028】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図4(b)および
図4(c)に示すように、ウエハ積層体において接着剤層21を伴うウエハ12と、接着剤層21を伴う新たなウエハ12(追加のウエハ12)とが、これら接着剤層21を介して接合される(ウエハ追加工程)。ウエハ追加工程においては、まず、ウエハ積層体のウエハ12と新たなウエハ12ないし追加のウエハ12とを、接着剤層21を介して、加圧しつつ且つ必要に応じて加熱しつつ貼り合わせる。この貼合せ過程においては、ウエハ積層体におけるウエハ12の面12b上の塑性変形可能な接着剤層21と、追加のウエハ12の面12a上の塑性変形可能な接着剤層21とが、密着して一体化する。当該貼合せにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm
2であり、温度は例えば30~200℃である。次に、ウエハ12,12間に介在する接着剤層21を加熱によって硬化させる。接着剤層21の硬化において、加熱温度は例えば30~200℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。以上のようなウエハ追加工程後におけるウエハ12,12間の接着剤層21の厚さは、例えば0.5~20μmである。
【0029】
本実施形態においては、次に、前工程でウエハ積層体に追加されたウエハ12が
図5に示すように薄化される(薄化工程)。本工程では、例えば、当該ウエハ12の面12b側に対する研削加工によってウエハ12を所定の厚さにまで薄化する。薄化後のウエハ12の厚さは、例えば1~20μmである。ウエハ12が薄化のための工程を経ずとも十分に薄い場合には、当該薄化工程を行わなくてもよい。
【0030】
次に、
図6に示すように、以上のような工程を経て得られるウエハ積層体において異なるウエハに形成されている半導体素子間の電気的接続のための貫通電極31が形成される。例えば、追加のウエハ12とその直下の接着剤層21とを貫通して図中下位のウエハ12上の上記配線構造(図示略)に至る開口部の形成、当該開口部の内壁面への絶縁膜(図示略)の形成、絶縁膜表面へのバリア層(図示略)の形成、バリア層表面への電気めっき用シード層(図示略)の形成、および、電気めっき法による開口部内への銅など導電材料の充填を経るなどして、貫通電極31を形成することができる。貫通電極31により、例えば、図中上位の追加のウエハ12の面12a側に形成されている配線構造(図示略)と、図中下位のウエハ12の面12a側に形成されている配線構造(図示略)とが、電気的に接続される。
【0031】
本半導体装置製造方法においては、
図4(a)を参照して上述した接着剤層形成工程と、
図4(b)および
図4(c)を参照して上述したウエハ追加工程と、必要に応じて行われる
図5を参照して上述した薄化工程と、
図6を参照して上述した貫通電極形成工程とを1サイクルに含む一連の過程ないしプロセスが、製造目的の半導体装置の半導体素子積層数に応じた所定の回数、行われる。ウエハ追加工程ごとに、それより前の接着剤層形成工程が行われる。
図7には、当該一連の過程が2回行われて得られるウエハ積層体を一例として表す。
【0032】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図8に示すようにウエハ11が薄化されてもよい。本工程では、例えば、ウエハ11の面11b側に対する研削加工によってウエハ11を所定の厚さにまで薄化する。薄化後のウエハ11の厚さは、例えば5~400μmである。この後、最も後に積層されたウエハ12の面12b側にて外部接続用バンプ(図示略)を形成してもよい。或いは、薄化後のウエハ11を貫通してウエハ11の面11a側の配線構造(図示略)と電気的に接続している貫通電極(図示略)を形成し、当該貫通電極と電気的に接続している外部接続用バンプ(図示略)をウエハ11の面11b側に形成してもよい。
【0033】
以上のようにして、半導体素子がその厚さ方向に多層化された半導体装置を製造することができる。この半導体装置は、ダイシングによって個片化されてもよい。
【0034】
本半導体装置製造方法において
図1(c)および
図1(d)を参照して上述したウエハ接合工程では、接着剤層21を伴うウエハ11ないしその接合予定面と、接着剤層21を伴うウエハ12ないしその接合予定面とが、当該接着剤層21を介して接合される。また、
図4(b)および
図4(c)を参照して上述したウエハ追加工程では、ウエハ積層体において接着剤層21を伴うウエハ12ないしその接合予定面と、接着剤層21を伴う追加のウエハ12ないしその接合予定面とが、当該接着剤層21を介して接合される。これら工程でのウエハ間の貼合せ過程においては、各ウエハの接合予定面ないし貼合せ面上にある塑性変形可能な接着剤層21どうしが密着して一体化する。そのため、従来の技術においては硬いウエハ貼合せ面と柔らかい接着剤層とが密着することから貼合せ界面に生じやすい上述のボイドの形成は、本半導体装置製造方法によると抑制される。ウエハ間の貼合せ界面におけるボイドが少ないほど、当該ウエハ間での接着剤層21の硬化によって至るウエハ間接合状態は強固となる傾向にあり、従って、製造される半導体装置における半導体素子間の接着剤層21による接合強度は、高い傾向にある。このように、本半導体装置製造方法は、製造される半導体装置において、接着剤層21を介して接合されて多層化される半導体素子間の高い接合強度を実現するのに適する。
【0035】
また、ウエハ貼合せ過程において一方のウエハ貼合せ面上の接着剤層が薄いほど当該接着剤層と他方のウエハ貼合せ面との界面に形成されるボイドの数が増加する傾向にある従来の方法よりも、貼合せ界面でのボイドの発生が抑制される本半導体装置製造方法は、ウエハ間の接着剤層21の薄層化を図るのに適する。接着剤層21の薄層化は、製造される半導体装置の薄型化に資する。
【0036】
以上のように、本半導体装置製造方法は、製造される半導体装置において、接着剤層21を介して接合されて多層化される半導体素子間の高い接合強度を実現するのに適するとともに、当該半導体装置の薄型化を図るのに適する。
【0037】
図9から
図17は、本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法を表す。この製造方法は、半導体素子がその厚さ方向に集積された立体的構造を有する半導体装置を製造するための方法であり、
図9から
図17のそれぞれは、製造過程を部分断面図で表すものである。
【0038】
本半導体装置製造方法においては、まず、
図9(a)に示すように、ウエハ11および補強ウエハ12Rが用意される(用意工程)。
【0039】
ウエハ11は、面11a、および、これとは反対の面11bを有する。ウエハ11は、その面11a側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面11a上に既に形成されている、半導体ウエハである。本実施形態のウエハ11の構成材料および厚さについては、
図1を参照して上述したウエハ11の構成材料および厚さと同様である。
【0040】
補強ウエハ12Rは、ウエハ12と、支持基板Sと、これらウエハ12および支持基板Sの間の仮接着剤層13とを含む積層構造を有する。
【0041】
ウエハ12は、面12a、および、これとは反対の面12bを有する。ウエハ12は、その面12a側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面12a上に既に形成されている、半導体ウエハである。或いは、ウエハ12は、その面12b側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面12b上に既に形成されている、半導体ウエハである。本実施形態のウエハ11の構成材料については、
図1を参照して上述したウエハ11の構成材料と同様である。また、本実施形態では、ウエハ12はウエハ11よりも薄い。ウエハ12の厚さは、製造される半導体装置の薄型化や小型化の観点からは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。ウエハ12に作り込まれる半導体素子の特性を確保するという観点からは、ウエハ12の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、より好ましくは2.5μm以上である。
【0042】
補強ウエハ12Rにおける支持基板Sは、薄いウエハ12を補強するためのものである。支持基板Sとしては、例えば、シリコンウエハやガラスウエハが挙げられる。支持基板Sの厚さは、補強要素としての機能を確保するという観点からは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上である。支持基板Sの厚さは例えば800μm以下である。このような支持基板Sは、ウエハ12の面12aの側に仮接着剤層13を介して接合されている。
【0043】
仮接着剤層13は、支持基板Sとウエハ12との間の、事後的に解除可能な仮の接着状態を、実現するためのものである。このような仮接着剤層13を形成するための接着剤としては、仮の接着状態の解除手法に応じた接着剤が用いられ、例えば、紫外線照射により接着性が低下可能な接着剤や、レーザー照射により接着性が低下可能な接着剤、ウエハ破損を回避しつつ機械的な剥離作業を可能にする接着剤が用いられる。或いは、仮接着剤層13を形成するための接着剤としては、所定の温度領域では仮接着剤層13において粘着性ないし接着性を発現させる高分子材料であって当該温度領域を超える高温域に軟化点を有する高分子材料を含有して、ウエハ12を形成するための後記の研削加工に耐えうる接着力や、加熱を伴う後記のウエハ接合工程等に耐えうる耐熱性、後記の取外し工程を適切に行うための軽剥離機能を兼ね備える接着剤(熱剥離用接着剤)を、用いてもよい。仮接着剤層13形成用のそのような接着剤としては、例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、または、ワックスタイプの接着剤が挙げられ、具体的には、特開2008-13589号公報、特開2008-13590号公報、および特開2008-49443号公報に記載のものが挙げられる。以上のような仮接着剤層13の厚さは、例えば1~20μmである。
【0044】
このような構成の補強ウエハ12Rは、例えば次のような工程を経て、作製することができる。まず、
図10(a)に示すように、支持基板S上に仮接着剤層13を形成する。具体的には、仮接着剤層13形成用の接着剤組成物を支持基板S上に例えばスピンコーティングによって塗布して仮接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させ且つ当該組成物層を固化させて、仮接着剤層13を形成することができる。当該加熱の温度は例えば100~300℃であり、加熱時間は例えば30秒~30分間である。次に、
図10(b)および
図10(c)に示すように、支持基板Sとウエハ12'とを仮接着剤層13を介して接合する。ウエハ12'は、面12a、および、これとは反対の面12b'を有する。本接合工程では、例えば、支持基板Sとウエハ12'とを仮接着剤層13を介して加圧しつつ貼り合わせた後、加熱によって仮接着剤層13を一旦軟化させることによってウエハ12'と支持基板とを接合する。貼合せにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm
2であり、温度は例えば30~200℃である。そして、ウエハ12'を薄化して、
図10(d)に示すように上述のウエハ12を形成する。具体的には、支持基板Sに支持された状態にあるウエハ12'に対してその面12b'の側からグラインド装置を使用して研削加工を行うことによって、ウエハ12'を所定の厚さに至るまで薄化し、ウエハ12を形成することができる。このようにして形成されるウエハ12は、予め、面12aの側に各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面12a上に既に形成されているものであってもよいし、薄化後において、面12bの側に各種の半導体素子(図示略)が作り込まれ且つ当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が面12b上に形成されてもよい。以上のようにして、支持基板Sと、ウエハ12と、これらの間の仮接着剤層13とを含む積層構造の補強ウエハ12Rを作製することができる。
【0045】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図9(b)に示すように、ウエハ11の面11a(接合予定面)上に接着剤層21が形成され、且つ、補強ウエハ12Rにおけるウエハ12の面12b(接合予定面)上に接着剤層21が形成される(接着剤層形成工程)。接着剤層21は、ウエハ間を接合するためのものであり、本実施形態では熱硬化型接着剤よりなる。当該熱硬化型接着剤をなすための粘着剤主成分としては、例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン、ベンゾシクロブテン(BCB)樹脂、およびノボラック系エポキシ樹脂が挙げられる。各種温度条件を実現するための温度変動を伴う半導体装置製造過程における温度環境に耐えうる良好な耐熱性や耐クラック性を確保するという観点からは、接着剤層21の形成には、ポリオルガノシルセスキオキサン含有熱硬化型接着剤を採用するのが好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサン含有熱硬化型接着剤としては、例えば国際公開第2016/204114号に記載の接着剤を採用することができる。また、接着剤層21をなすための熱硬化型接着剤の耐熱性に関し、当該接着剤の熱分解温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは260℃以上、より好ましくは300℃以上である。熱分解温度は、示差熱熱重量同時測定装置を使用して行う熱重量分析によって得られる曲線、即ち、分析対象である試料についての所定昇温範囲での熱重量の温度依存性を表す曲線における、昇温過程初期の重量減少のない或いは一定割合でわずかに漸減している部分の接線と、昇温過程初期に続く昇温過程中期の有意な重量減少が生じている部分内にある変曲点での接線との交点が示す温度とする。示差熱熱重量同時測定装置としては、例えば、セイコーインスツル株式会社製の商品名「TG-DTA6300」を使用することができる。本工程での各接着剤層21の形成においては、例えば、接着剤層21形成用の接着剤組成物をウエハの接合予定面にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させて固化させる。ウエハ11の面11a上に接着剤層21を形成するための接着剤組成物と、ウエハ12の面12b上に接着剤層21を形成するための接着剤組成物とは、同一組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。すなわち、ウエハ11の面11a上に形成される接着剤層21と、ウエハ12の面12b上に形成される接着剤層21とは、同一組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。また、各接着剤層21の形成において、加熱温度は例えば50~150℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。このような接着剤層21の形成より前に、ウエハ11の面11a側、および/または、補強ウエハ12Rにおけるウエハ12の面12b側は、接着剤層21との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。
【0046】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図9(c)および
図9(d)に示すように、接着剤層21を伴うウエハ11と、補強ウエハ12Rにおいて接着剤層21を伴うウエハ12とが、これら接着剤層21を介して接合される(ウエハ接合工程)。ウエハ接合工程においては、まず、ウエハ11と補強ウエハ12Rないしウエハ12とを、接着剤層21を介して、加圧しつつ且つ必要に応じて加熱しつつ貼り合わせる。この貼合せ過程においては、ウエハ11の面11a上の塑性変形可能な接着剤層21と、ウエハ12の面12b上の塑性変形可能な接着剤層21とが、密着して一体化する。この貼合せにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm
2であり、温度は例えば30~200℃である。次に、ウエハ11,12間に介在する接着剤層21を加熱によって硬化させる。接着剤層21の硬化において、加熱温度は例えば30~200℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。以上のようなウエハ接合工程の後におけるウエハ11,12間の接着剤層21の厚さは、例えば0.5~20μmである。
【0047】
本半導体装置製造方法においては、次に、補強ウエハ12Rの支持基板Sとウエハ12との間における仮接着剤層13による仮接着状態が解除されて、
図11に示すように、ウエハ12から支持基板Sが取り外される(取外し工程)。本工程では、仮接着剤層13をなす接着剤の特性に応じた取外し手法ないし剥離手法が採用される。例えば、仮接着剤層用接着剤として、紫外線照射により接着性が低下し得る接着剤が用いられる場合、本工程では、仮接着剤層13に対して紫外線照射が行われる。仮接着剤層用接着剤として、レーザー照射により接着性が低下し得る接着剤が用いられる場合、本工程では、仮接着剤層13に対して所定のレーザーが照射される。また、本工程では、機械的な剥離作業によってウエハ12から支持基板Sを取り外してもよいし、支持基板Sと仮接着剤層13を研削してウエハ積層体から除去してもよい。或いは、仮接着剤層用接着剤として上述の熱剥離用接着剤が用いられる場合には、仮接着剤層13に対してその接着力を低下させる軽剥離化用の高温加熱を行った後、ウエハ12に対して支持基板Sを例えばスライドさせることによって、ウエハ12ないしこれを含むウエハ積層体から支持基板Sを分離して取り外すことができる。このような取外し手法において、加熱温度は例えば130~250℃であり、加熱時間は例えば30秒~15分間である。
【0048】
次に、
図12に示すように、取外し工程を経て得られるウエハ積層体において、異なるウエハ(ウエハ11とウエハ12)に形成されている半導体素子間の電気的接続のための貫通電極31が形成される。例えば、ウエハ12と接着剤層21とを貫通してウエハ11上の上記配線構造(図示略)に至る開口部の形成、当該開口部の内壁面への絶縁膜(図示略)の形成、絶縁膜表面へのバリア層(図示略)の形成、バリア層表面への電気めっき用シード層(図示略)の形成、および、電気めっき法による開口部内への銅など導電材料の充填を経るなどして、貫通電極31を形成することができる。貫通電極31により、ウエハ11の面11a側に形成されている配線構造(図示略)と、ウエハ12の面12a側または面12b側に形成されている配線構造(図示略)とが、電気的に接続される。
【0049】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図13(a)に示すように、貫通電極形成後のウエハ積層体におけるウエハ12の面12a(接合予定面)上に接着剤層21が形成され、且つ、新たな補強ウエハ12Rのウエハ12の面12b(接合予定面)上に接着剤層21が形成される(追加の接着剤層形成工程)。本工程に供される補強ウエハ12Rは、支持基板Sと、追加のウエハ12と、これらの間の仮接着剤層13とを含む積層構造を有する。この補強ウエハ12Rの構成および作製手法については、ウエハ接合工程に関して上述した補強ウエハ12Rの構成および作製手法と同様である。また、面12a,12b上への各接着剤層21の形成においては、例えば、接着剤層21形成用の接着剤組成物をウエハの接合予定面にスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成し、加熱によって当該組成物層を乾燥させて固化させる。本工程において各接着剤層21を形成するための接着剤組成物は、互いに、同一組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。各接着剤層21の形成において、加熱温度は例えば50~150℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。このような接着剤層21の形成より前に、ウエハ12の面12a側、および/または、補強ウエハ12Rにおけるウエハ12の面12b側は、接着剤層21との密着性の向上のためのシランカップリング剤処理等の表面処理が施されてもよい。
【0050】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図13(b)および
図13(c)に示すように、接着剤層21を伴うウエハ12と、新たな補強ウエハ12Rにおいて接着剤層21を伴うウエハ12(追加のウエハ12)とが、これら接着剤層21を介して接合される(ウエハ追加工程)。ウエハ追加工程においては、まず、ウエハ12と新たな補強ウエハ12Rないし追加のウエハ12とを、接着剤層21を介して、加圧しつつ且つ必要に応じて加熱しつつ貼り合わせる。この貼合せ過程においては、ウエハ12の面12a上の塑性変形可能な接着剤層21と、追加のウエハ12の面12b上の塑性変形可能な接着剤層21とが、密着して一体化する。当該貼合せにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm
2であり、温度は例えば30~200℃である。次に、ウエハ12,12間に介在する接着剤層21を加熱によって硬化させる。接着剤層21の硬化において、加熱温度は例えば30~200℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。以上のようなウエハ追加工程後におけるウエハ12,12間の接着剤層21の厚さは、例えば0.5~20μmである。
【0051】
本半導体装置製造方法においては、次に、補強ウエハ12Rの支持基板Sとウエハ12との間における仮接着剤層13による仮接着状態が解除されて、
図14に示すように、図中最上位のウエハ12ないしこれを含むウエハ積層体から支持基板Sが取り外される(取外し工程)。具体的には、
図11を参照して上述した取外し工程と同様に、仮接着剤層13をなす接着剤の特性に応じた取外し手法ないし剥離手法が実施される。
【0052】
次に、
図15に示すように、取外し工程を経て得られるウエハ積層体において、異なるウエハに形成されている半導体素子間の電気的接続のための貫通電極31が形成される。例えば、追加のウエハ12とその直下の接着剤層21とを貫通して図中下位のウエハ12上の上記配線構造(図示略)に至る開口部の形成、当該開口部の内壁面への絶縁膜(図示略)の形成、絶縁膜表面へのバリア層(図示略)の形成、バリア層表面への電気めっき用シード層(図示略)の形成、および、電気めっき法による開口部内への銅など導電材料の充填を経るなどして、貫通電極31を形成することができる。例えば、図中上位の追加のウエハ12の面12a側に配線構造(図示略)が形成され、且つ、図中下位のウエハ12の面12a側に配線構造(図示略)が形成されている場合、これら配線構造が貫通電極31によって電気的に接続される。或いは、図中上位の追加のウエハ12の面12b側に配線構造(図示略)が形成され、且つ、図中下位のウエハ12の面12b側に配線構造(図示略)が形成されている場合、これら配線構造が貫通電極31によって電気的に接続される。
【0053】
本半導体装置製造方法においては、
図13(a)を参照して上述した接着剤層形成工程と、
図13(b)および
図13(c)を参照して上述したウエハ追加工程と、
図14を参照して上述した取外し工程と、
図15を参照して上述した貫通電極形成工程とを含む一連の過程が、製造目的の半導体装置の半導体素子積層数に応じた所定の回数、行われる。ウエハ追加工程ごとに、それより前の接着剤層形成工程が行われ、且つ、取外し工程が行われる。
図16には、当該一連の過程が2回行われて得られるウエハ積層体を一例として表す。
【0054】
本半導体装置製造方法においては、次に、
図17に示すように研削工程が行われてもよい。本工程では、具体的には、ウエハ11の面11b側に対する研削加工によってウエハ11を所定の厚さにまで薄化する。薄化後のウエハ11の厚さは、例えば5~400μmである。この後、最も後に積層されたウエハ12の面12a側にて外部接続用バンプ(図示略)を形成してもよい。或いは、薄化後のウエハ11を貫通してウエハ11の面11a側の配線構造(図示略)と電気的に接続している貫通電極(図示略)を形成し、当該貫通電極と電気的に接続している外部接続用バンプ(図示略)をウエハ11の面11b側に形成してもよい。
【0055】
以上のようにして、半導体素子がその厚さ方向に多層化された半導体装置を製造することができる。この半導体装置は、ダイシングによって個片化されてもよい。
【0056】
本半導体装置製造方法のウエハ接合工程では、上述のように、接着剤層21を伴うウエハ11ないしその接合予定面と、補強ウエハ12Rにおいて接着剤層21を伴うウエハ12ないしその接合予定面とが、これら接着剤層21を介して接合される。また、本半導体装置製造方法のウエハ追加工程では、上述のように、ウエハ11,12を含む積層構造を有するウエハ積層体において接着剤層21を伴うウエハ12ないしその接合予定面と、補強ウエハ12Rにおいて接着剤層21を伴うウエハ12ないしその接合予定面とが、これら接着剤層21を介して接合される。これら工程でのウエハ間の貼合せ過程においては、各ウエハの接合予定面ないし貼合せ面上にある塑性変形可能な接着剤層21どうしが密着して一体化する。そのため、従来の技術においては硬いウエハ貼合せ面と柔らかい接着剤層とが密着することから生じやすい上述のボイドの形成は、本半導体装置製造方法では抑制される。ウエハ間の貼合せ界面におけるボイドが少ないほど、当該ウエハ間での接着剤層21の硬化によって至るウエハ間接合状態は強固となる傾向にあり、従って、製造される半導体装置における半導体素子間の接着剤層21による接合強度は、高い傾向にある。このように、本半導体装置製造方法は、製造される半導体装置において、接着剤層21を介して接合されて多層化される半導体素子間の高い接合強度を実現するのに適する。
【0057】
また、ウエハ貼合せ過程において一方のウエハ貼合せ面上の接着剤層が薄いほど当該接着剤層と他方のウエハ貼合せ面との界面に形成されるボイドの数が増加する傾向にある従来の方法よりも、貼合せ界面でのボイドの発生が抑制される本半導体装置製造方法は、ウエハ間の接着剤層21の薄層化を図るのに適する。接着剤層21の薄層化は、製造される半導体装置の薄型化に資する。
【0058】
加えて、本半導体装置製造方法では、上述のように、ウエハ接合工程におけるウエハ11に対するウエハ12の接合や、ウエハ追加工程におけるウエハ11上のウエハ12に対する追加のウエハ12の接合は、当該ウエハ12が支持基板Sを伴って補強を受ける形態で、行われる。このような構成は、薄いウエハ12の接合を行うのに好適である。ウエハ12の薄型化は、製造される半導体装置の薄型化に資する。
【0059】
以上のように、本半導体装置製造方法は、製造される半導体装置において、接着剤層21を介して接合されて多層化される半導体素子間の高い接合強度を実現するのに適するとともに、当該半導体装置の薄型化を図るのに適する。
【実施例】
【0060】
〈接着剤組成物C1の作製〉
後記のようにして得られるエポキシ基含有のポリオルガノシルセスキオキサン100質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部と、アンチモン系スルホニウム塩(商品名「SI-150L」,三新化学工業株式会社製)0.45質量部(固形分換算)と、(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウムメチルサルファイト(商品名「サンエイドSI助剤」,三新化学工業株式会社製)0.05質量部とを混合し、接着剤組成物(接着剤組成物C1)を得た。
【0061】
〈接着剤組成物C2の作製〉
後記のようにして得られるエポキシ基含有のポリオルガノシルセスキオキサン100質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート115質量部と、アンチモン系スルホニウム塩(商品名「SI-150L」,三新化学工業株式会社製)0.45質量部(固形分換算)と、(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウムメチルサルファイト(商品名「サンエイドSI助剤」,三新化学工業株式会社製)0.05質量部とを混合し、接着剤組成物(接着剤組成物C2)を得た。
【0062】
〈ポリオルガノシルセスキオキサンの合成〉
還流冷却器と、窒素ガス導入管と、撹拌装置と、温度計とを備えた300mLのフラスコ内で、窒素ガスを導入しながら、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン161.5mmol(39.79g)と、フェニルトリメトキシシラン9mmol(1.69g)と、溶媒としてのアセトン165.9gとを混合して50℃に昇温した。次に、当該混合物に、5%炭酸カリウム水溶液4.7g(炭酸カリウムは1.7mmol)を5分かけて滴下し、続いて水1700mmol(30.6g)を20分かけて滴下した。滴下操作の間、混合物に著しい温度上昇は生じなかった。この滴下操作の後、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら、50℃で4時間、重縮合反応を行った。重縮合反応後の反応溶液中の生成物を分析したところ、数平均分子量は1900であり、分子量分散度は1.5であった。そして、静置されて冷却された反応溶液について、相分離によって生じる下層液(水相)が中性になるまで水洗を繰り返した後、上層液を分取し、1mmHgおよび40℃の条件で、溶媒量が25質量%になるまで上層液から溶媒を留去し、無色透明の液状の生成物(エポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサン)を得た。
【0063】
〈ボイド数の計測〉
二つのウエハとその間の粘着剤層との積層構造を有する5枚の第1ウエハ積層体および5枚の第2ウエハ積層体を作製し、各ウエハ積層体において発生するボイドの数を計測した。
【0064】
第1ウエハ積層体の作製においては、まず、第1のウエハ(直径300mm,厚さ775μm,シリコン製)および第2のウエハ(直径300mm,厚さ775μm,ガラス製)を用意した。各ウエハは、一方の面にシランカップリング剤処理を施したものである。ウエハのシランカップリング剤処理においては、ウエハの一方の面に対するシランカップリング剤(商品名「KBE403」,信越化学工業株式会社製)のスピンコーティングによる塗布、および、その後の120℃での5分間の加熱を行った。第1ウエハ積層体の作製においては、次に、第1のウエハおよび第2ウエハの各シランカップリング剤処理面(接合予定面)において上記の接着剤組成物C1をスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した後、当該組成物層を伴うウエハについて、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行った。これにより、各接着剤組成物層を乾燥させて、第1のウエハおよび第2のウエハの各接合予定面上に厚さ1.25μmの接着剤層を形成した。次に、接着剤層(厚さ1.25μm)を伴う第1のウエハと、接着剤層(厚さ1.25μm)を伴う第2のウエハとを、これら接着剤層を介して、温度50℃および加圧力3000g/cm2の条件で貼り合わせた。このような貼り合わせを経た5枚の第1ウエハ積層体のそれぞれについてガラス製の第2のウエハ側から目視観察を行ったところ、各第1ウエハ積層体においてボイドの存在は確認されなかった。そして、これら第1ウエハ積層体について、130℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行い、これによって接着剤層を硬化させて両ウエハを接合した。第1ウエハ積層体の以上のような作製過程では、第2ウエハ積層体の後記の作製過程よりも、ボイドの発生が抑制された。
【0065】
一方、第2ウエハ積層体の作製においては、まず、第1のウエハ(直径300mm,厚さ775μm,シリコン製)および第2のウエハ(直径300mm,厚さ775μm,ガラス製)を用意した。各ウエハは、一方の面にシランカップリング剤処理を施したものである。ウエハのシランカップリング剤処理においては、ウエハの一方の面に対するシランカップリング剤(商品名「KBE403」,信越化学工業株式会社製)のスピンコーティングによる塗布、および、その後の120℃での5分間の加熱を行った。第2ウエハ積層体の作製においては、次に、第1のウエハのシランカップリング剤処理面(接合予定面)に上記の接着剤組成物C2をスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した後、この組成物層を伴う第1のウエハについて、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行った。これにより、接着剤組成物層を乾燥させ、第1のウエハの接合予定面上に厚さ2.5μmの接着剤層を形成した。次に、接着剤層(厚さ2.5μm)を伴う第1のウエハと、第2のウエハとを、当該接着剤層を介して、温度50℃および加圧力3000g/cm2の条件で貼り合わせた。このような貼り合わせを経た5枚の第2ウエハ積層体のそれぞれについてガラス製の第2のウエハ側から目視観察を行ったところ、各第1ウエハ積層体において確認されるボイドの数は5~20であった。
【0066】
〔実施例1〕
まず、2枚のシリコンウエハを用意した。各シリコンウエハは、直径が300mmであり、厚さが775μmであり、一方の面にシランカップリング剤処理を施したものである。シリコンウエハのシランカップリング剤処理においては、シリコンウエハの一方の面に対するシランカップリング剤(商品名「KBE403」,信越化学工業株式会社製)のスピンコーティングによる塗布、および、その後の120℃での5分間の加熱を行った。次に、各シリコンウエハのシランカップリング剤処理面(接合予定面)に上記の接着剤組成物C1をスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した後、この組成物層を伴うシリコンウエハについて、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行った。これにより、接着剤組成物層を乾燥させ、各シリコンウエハの片面上に厚さ1.25μmの接着剤層を形成した。次に、形成された接着剤層を伴う2枚のシリコンウエハを、当該接着剤層を介して、温度50℃および加圧力3000g/cm2の条件で貼り合わせた。次に、この貼合せによって得られたウエハ積層体について、130℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行い、これによってウエハ間の接着剤層を硬化させて両ウエハを接合した。以上のような方法により、実施例1の5枚のウエハ積層体を作製した。
【0067】
〔比較例1〕
まず、2枚のシリコンウエハを用意した。各シリコンウエハは、直径が300mmであり、厚さが775μmであり、一方の面にシランカップリング剤処理を施したものである。シリコンウエハのシランカップリング剤処理は、実施例1に関して上述したのと同様にして行った。次に、一方のシリコンウエハのシランカップリング剤処理面(接合予定面)に上記の接着剤組成物C2をスピンコーティングによって塗布して接着剤組成物層を形成した後、この組成物層を伴うシリコンウエハについて、80℃で4分間の加熱を行い、続いて100℃で2分間の加熱を行った。これにより、接着剤組成物層を乾燥させ、シリコンウエハの片面上に厚さ2.5μmの接着剤層を形成した。次に、形成された接着剤層を伴うシリコンウエハと、接着剤層を伴わないシリコンウエハとを、当該接着剤層を介して、温度50℃および加圧力3000g/cm2の条件で貼り合わせた。次に、この貼合せによって得られたウエハ積層体について、130℃で30分間の加熱を行い、続いて170℃で30分間の加熱を行い、これによってウエハ間の接着剤層を硬化させて両ウエハを接合した。以上のような方法により、比較例1の5枚のウエハ積層体を作製した。
【0068】
〈ウエハ間の接合性〉
実施例1および比較例1の各ウエハ積層体について、次のようにして、ウエハ間の接合性ないし接合の強固さを調べた。まず、ウエハ積層体から、
図18に示す模式的な形状およびサイズを有する試験片Xをダイシング加工によって作製した。試験片Xは、シリコン層101と、シリコン層102と、これらの間に介在する部分を有する接着剤層103とを含む。接着剤層103は、シリコン層102側にて露出する領域103aを有する。この試験片Xについて、引張試験機(商品名「テンシロン万能材料試験機 RTF-1310」,株式会社エー・アンド・デイ製)を使用してシリコン層間の剥離に係る剥離試験を行った。具体的には、試験片Xについて、両面粘着テープ104(商品名「KM-30D-BK」,ダイヤテックス株式会社製)を介して土台Y(その表面の一部を
図18に示す)に接合した後、領域103aに係止可能な先端形状を有する部材(図示略)によって試験片Xのシリコン層101と接着剤層103とをその図中右端側にて矢印D方向に引っ張って剥離試験を行った。この剥離試験での引張速度は1000mm/分とした。このような剥離試験において、実施例1の5枚のウエハ積層体に由来する5枚の試験片では、シリコン層間の剥離が生じなかった。これに対し、比較例1の5枚のウエハ積層体に由来する5枚の試験片のうち、3枚の試験片で剥離が生じた。この結果から、実施例1のウエハ積層体は、比較例1の積層体よりも、ウエハ間において高い接合強度を実現するのに適することが判る。
【符号の説明】
【0069】
S 支持基板
11 ウエハ(第1ウエハ)
11a,11b 面
12R 補強ウエハ(補強第2ウエハ)
12 ウエハ(第2ウエハ)
12a,12b 面
13 仮接着剤層
21 接着剤層
31 貫通電極
101,102 シリコン層
103 接着剤層
104 両面粘着テープ