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特許7285070ホームドアの状態診断システム、ホームドアの状態診断方法、可動装置の状態診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ホームドアの状態診断システム、ホームドアの状態診断方法、可動装置の状態診断方法
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
B61B1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018243449
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104610
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 昌兵
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059611(JP,A)
【文献】特開2000-203418(JP,A)
【文献】特開2017-215276(JP,A)
【文献】特開2017-054498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E01F 1/00,13/00-15/14
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに駆動されるベルトを用いてホームドアを開閉動作させたときに当該モータに関する電気的数値を取得数値として取得する取得部と、
前記取得数値を予め設定された2以上の閾値と比較して複数の区分に分類し、前記区分の分類に基づいて前記ベルトの保守の緩急度を判定する判定部と、
を備え、
前記閾値は、前記ホームドアを予め定められた回数開閉動作させた後に取得された前記電気的数値に応じて設定されるホームドアの状態診断システム。
【請求項2】
前記電気的数値は、前記モータに印加される電圧と前記モータに流れる電流の少なくても一つの挙動に関する数値を含む請求項1に記載のホームドアの状態診断システム。
【請求項3】
前記取得数値を外部に出力する出力部をさらに備える請求項1または2に記載のホームドアの状態診断システム。
【請求項4】
前記判定部の判定結果を外部に送信する通信部をさらに備える請求項1からのいずれかに記載のホームドアの状態診断システム。
【請求項5】
モータに駆動されるベルトによってホームドアを開閉動作させたときに、センサを用いて当該モータに関する電気的数値を取得数値として取得するステップと、
前記取得数値を予め設定された2以上の閾値と比較して複数の区分に分類し、前記区分の分類に基づいて前記ベルトの保守の緩急度を判定するステップと、
を含み、
前記閾値は、前記ホームドアを予め定められた回数開閉動作させた後に取得された前記電気的数値に応じて設定されるホームドアの状態診断方法。
【請求項6】
ベルトを用いて可動装置の可動部を移動動作させたときに当該可動装置の構成要素に流れる電流を取得数値として取得するステップと、
記取得数値を、予め設定された2以上の閾値と比較して複数の区分に分類し、前記区分の分類に基づいて前記ベルトの保守の緩急度を判定するステップと、
を含み、
前記閾値は、前記可動部を予め定められた回数移動動作させた後に取得された前記構成要素に流れる電流に応じて設定される可動装置の状態診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームドアの状態診断システム、ホームドアの状態診断方法および可動装置の状態診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラットホームドアシステムの動作異常を検出するホームドア動作異常検出システムが記載されている。特許文献1に記載のシステムは、システムを制御する制御系の動作ログを収集し、制御系の正常動作を規定した設計知識情報との比較対照に基づきシステムの動作異常を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-094299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、プラットホームで扉を開閉するホームドアについて以下の認識を得た。
ホームドアは、モータに駆動されるベルトを用いた駆動機構により開閉動作するものがある。このようなベルトを有するホームドアでは、経時変化等によるベルトの劣化により駆動機構が故障することがある。ホームドアの故障は利用者に大きな影響を与えるため、故障が発生する前にベルトの劣化状態を診断し、故障の予兆を捉え、故障を未然に防ぐことが望ましい。特許文献1に記載のシステムには、ベルトの劣化状態を精度よく診断することは難しいという問題がある。
これらから、本発明者は、特許文献1に記載の技術には、ホームドアのベルトの劣化状態を精度よく診断する観点から、改善の余地があることを認識した。
【0005】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベルトの劣化状態を精度よく診断することが可能なホームドアの状態診断技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のホームドアの状態診断システムは、モータに駆動されるベルトを用いてホームドアを開閉動作させたときに当該モータに関する電気的数値を取得数値として取得する取得部と、取得数値をもとにベルトの保守の要否を判定する判定部と、を備える。
【0007】
この態様によると、モータに関する電気的数値をもとにベルトの保守の要否を判定できる。
【0008】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベルトの劣化状態を精度よく診断することが可能なホームドアの状態診断技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るホームドアの状態診断システムの構成を概略的に示す構成図である。
図2図1の状態診断システムを概略的に示すブロック図である。
図3図1の状態診断システムのベルトの周辺を示す図である。
図4図1の状態診断システムのベルトの周辺を示す別の図である。
図5図1の状態診断システムの動作指令とモータ電流の変化の関係を示す図である。
図6図1の状態診断システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、鉄道駅などで旅客の乗降を行うプラットホームに設置されたプラットホームドア装置(以下、本明細書において「ホームドア」という)について研究し以下の知見を得た。ホームドアでは、ゴム等の非金属製のタイミングベルト、金属製のチェーン、ワイヤ等の索状部材(以下、総称して「ベルト」と呼ぶ)を用いてモータの回転を直線運動に変換し、扉を開閉動作することが考えられる。
【0012】
ホームドアが大開口化すると扉の質量が増加し、これに応じてベルトが伝達する駆動力も増加する。ベルトは使用により徐々に劣化し、駆動力が増加すると劣化は加速され、過度に劣化すると破損すると考えられる。ベルトが破損すると、ホームドアは開閉できなくなるので、鉄道運行に影響を及ぼす可能性がある。このため、破損する前にベルトの保守の必要性を把握し、事前に交換等の対応をすることが望ましい。
【0013】
本発明者の検討により、ベルトが劣化するとベルトの伸びが大きくなり、この伸びが進行するとベルトが破損することが判明している。また、ベルトの伸びが大きくなるにつれて、所定の動作指令を受けてから実際にモータに駆動負荷が加わるまでのタイムラグが長くなることも判明している。これらの関係から、ホームドアを開閉動作させたときのモータに関する電気的数値の挙動からタイムラグを特定し、その特定結果に基づいてベルトの劣化状態を把握し、保守の要否を判定することができる。以下、その具体的内容を実施形態に基づいて説明する。
【0014】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0015】
[第1実施形態]
図1図6を参照して、本発明の第1実施形態に係るホームドアの状態診断システム1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るホームドアの状態診断システム1の構成を概略的に示す構成図である。図2は、ホームドアの状態診断システム1を概略的に示すブロック図である。
【0016】
ホームドアの状態診断システム1は、ホームドアについて、保守に関する支援を行うシステムである。特に、このシステムは、モータによって駆動されるベルトを用いて開閉動作を行うホームドアの当該ベルトの状態診断を行う。図2に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0017】
図1図2に示すように、ホームドアの状態診断システム1は、ホームドア100と、総合制御部40と、管理装置50と、を備える。ホームドア100は、プラットホームPfに1または複数設けられる。ホームドア100は、モータ24によって駆動されるベルト14を用いて扉12を開閉動作させる。総合制御部40は、情報を伝送する伝送路40dを介して、1または複数のホームドア100を統括して制御する。伝送路40dは、LAN(Local Area Network)であってもよいが、本実施形態の伝送路40dは、データバスである。ホームドア100および総合制御部40は、バス接続手段40aによって伝送路40dに接続される。
【0018】
総合制御部40は、操作者の操作に応じて、ホームドア100の扉の開閉を制御する。例えば、駅務員が操作する操作部40sからの操作情報に応じて扉12の開閉指令信号を各ホームドア100に送信する。また、総合制御部40は、ホームドア100から、扉の開閉に関する情報、異常の有無に関する情報など所定の情報を取得する。例えば、1車両に4つのドアを有する10両編成の列車に対応するプラットホームには、40台のホームドア100と1台の総合制御部40とが連設される。この場合、総合制御部40は、40台のホームドア100を開閉制御するとともに、これらから所定の情報を取得する。これらの意味で、総合制御部40は総合制御盤と称されることもある。
【0019】
各ホームドア100には、それぞれを識別するためのIDコードが付与される。図1図2の例では、各ホームドア100には、A、B、CなどのアルファベットからなるIDコードが割り当てられている。総合制御部40は、情報を送信する場合、対象のホームドア100のIDコードを同時に送信する。各ホームドア100は、送信されたIDコードが自身のものである場合にのみ送信情報を受信する。各ホームドア100は、情報を送信する場合、自身のIDコードを同時に送信する。総合制御部40は、ホームドア100から送信された送信情報をIDコードとともに一体的に受信して一体的に処理する。以下の説明では、特に断りのない限り、各種情報はIDコードと一体的に送受信され、一体的に処理されるものとする。
【0020】
なお、各ホームドア100やその構成要素を区別するために、符号の末尾に「-B」、「-C」、「-D」のようにハイフォンとIDコードを付加して表記することがある。
【0021】
また、総合制御部40は、ホームドア100からモータ24に関する所定の情報を取得し、この取得結果をもとにベルト14の保守の要否を判定する処理を行う。総合制御部40については後に詳述する。
【0022】
管理装置50は、監視用コンピュータを含み、各ホームドア100の開閉状況や異常の有無に関する情報をリアルタイムに監視する。本実施形態の管理装置50は、管理センタ50cに設けられる。管理装置50は、ネットワークNWを介して総合制御部40と通信し、総合制御部40からベルト14の保守要否に関する情報(以下、「保守情報」という)を取得する。例えば、管理装置50は、保守情報を記憶し、保守情報を表示デバイスに表示することができる。管理装置50は、プリンタ、他の情報端末などの外部機器に保守情報を出力することができる。この外部機器はデスクトップ型であってもよいし、携帯型であってもよい。
【0023】
(ホームドア)
次に、ホームドア100の具体的な構成を説明する。図1に示すように、ホームドア100は、ドアエンジン10と、扉12と、ベルト14と、駆動プーリ16と、従動プーリ18と、走行レール20と、懸架部22と、コントローラ30と、を主に含む。ドアエンジン10、ベルト14、駆動プーリ16、従動プーリ18、走行レール20および懸架部22は、ホームドア100の駆動機構を構成する構成要素であり、例えばヘッダボックス60に設けられる。ホームドア100は、扉12を図1において左右方向(以下、「可動方向」という)に移動させることで所定の間口を開閉する。
【0024】
ドアエンジン10は、モータ24と、モータ24の回転に基づき駆動プーリ16を回転駆動する歯車機構(不図示)と、を有する。ドアエンジン10は、モータ24の駆動力によって扉12を開閉動作させる動力源として機能する。モータ24は、後述するエンジン駆動部28に設けられたIPM(インテリジェントパワーモジュール)によって駆動される。モータ24は、公知の様々な原理に基づくモータであってもよい。本実施形態のモータ24は、ホールICを用いたエンコーダ24eを有するブラシレスモータである。従動プーリ18は、駆動プーリ16から可動方向に離隔して設けられる。
【0025】
ベルト14は、駆動プーリ16及び従動プーリ18の外周にループ状に巻き掛けられる。ベルト14は、駆動プーリ16の回転に伴って従動プーリ18を回転させる。ベルト14は、歯付きタイミングベルトであってもよい。
【0026】
走行レール20は、扉12の上方において扉12を案内するためのレール部材であり、扉12の可動方向に延在する。懸架部22は、扉12を走行レール20に懸架するための機構であり、扉12の上部に設けられる。懸架部22は、走行レール20を転動する戸車22cを有し、戸車22cを介して走行レール20に支持される。扉12は、連結部材12jを介してベルト14に連結される。
【0027】
コントローラ30は、総合制御部40からの開閉指令信号に基づき扉12の開閉動作を制御するとともに、ホームドア100の保守情報を総合制御部40に提供する個別制御盤として機能する。コントローラ30は、エンジン駆動部28と、制御部26と、取得部34と、情報通信部30cと、情報記憶部30mと、を含む。エンジン駆動部28は、ドアエンジン10のモータ24を駆動する駆動回路として機能する。制御部26は、エンジン駆動部28を介して扉12の開閉動作を制御する。取得部34は、モータ24に関する電気的数値を取得数値Liとして取得する。情報通信部30cは、伝送路40dを介して総合制御部40と通信し、総合制御部40からの開閉指令信号を受信するとともに、所定の情報を総合制御部40に送信する。情報記憶部30mは所定の情報を記憶する。取得部34、情報通信部30cおよび情報記憶部30mは、後述する状態監視装置70を構成する。
【0028】
このように構成されたホームドア100では、モータ24が駆動プーリ16を回転駆動すると、駆動プーリ16と従動プーリ18とが回転し、ベルト14はループ状に移動する。ベルト14が移動すると、連結部材12jを介してベルト14に懸架された懸架部22が走行レール20上を可動方向に移動する。扉12は、懸架部22と共に可動方向に移動して開閉動作を行う。ホームドア100は、総合制御部40からの開扉指令信号に基づき扉12を開動作させ、閉扉指令信号に基づき扉12を閉動作させる。
【0029】
上述の構成により、扉12の速度(以下、「扉速度」という)は、モータ24の回転速度と比例する。したがって、制御部26は、エンコーダ24eの出力パルスの周波数または周期により扉速度を取得できる。制御部26は、エンコーダ24eの出力パルスをカウントすることにより扉12の位置(以下、「扉位置」という)を取得することができる。制御部26は、扉速度と扉位置とに応じて、扉12の移動を下記のように制御する。
【0030】
(開動作)
次に、扉12の開動作を説明する。開動作は、閉位置で停止している扉12を、開位置まで移動させて停止させる動作である。開動作は、扉12を所定の速度まで加速する加速動作と、扉12を所定の速度に維持する速度制御動作と、扉12を減速する減速動作と、扉12を低速度で停止位置に近づける接近動作と、扉12を停止させる停止動作と、を含む。加速動作では、扉12を加速して所定の速度に達したら速度制御動作に切替える。速度制御動作では、扉12の位置が所定の位置に達したら減速動作に切替える。減速動作では、扉12が接近用の速度に達したら接近動作に切替える。接近動作では扉12を開位置まで移動させ、停止動作で扉12を停止させる。
【0031】
(閉動作)
閉動作は、扉12を、開位置から閉位置まで移動させて停止させる動作であり、扉12の移動方向が逆である点で開動作と異なり、他の動作は開動作と同様である。よって、重複する説明を省く。
【0032】
上述の各動作において、扉位置と扉速度とが所定の関係になるようにモータ24への供給電圧(以下、「モータ電圧」という)が制御される。モータ電圧は、パルス幅変調(PWM変調)され、そのデューティ比によって制御される。モータ24の負荷が増えると、モータ電圧のデューティ比が大きくなり、モータ24に流れる駆動電流(以下、「モータ電流」という)も増加する。このように、モータ電流やモータ電圧のデューティ比などのモータ24に関する電気的数値は、モータ24の負荷に応じて変化する。
【0033】
(取得部)
次に、図3図5を参照して、取得部34の動作を説明する。上述したように、取得部34は、モータ24に関する電気的数値を取得数値Liとして取得する。先に、ベルト14の伸びとモータ24に関する電気的数値との関係を説明する。図3は、ベルト14の周辺を示す図である。図4は、ベルト14の周辺を示す別の図である。これらの図は、ベルト14の伸びが大きい状態における、モータ24と、駆動プーリ16と、ベルト14と、従動プーリ18とを示す。図3は、動作指令に応じてモータ24が回転を開始した直後を示している。この状態では、ベルト14が弛んでいて張力が小さいため、駆動プーリ16が回転しても従動プーリ18は従動回転せず、モータ24に加わる負荷は小さい。図4は、モータ24および駆動プーリ16がベルト14の弛みがなくなるまで回転した状態を示している。この状態では、ベルト14の弛みが解消され張力が大きくなるため、従動プーリ18は従動回転してモータ24に加わる負荷は大きくなる。つまり、動作指令を受けて、図3の状態から図4の状態に移行してモータ負荷が増大するまで、弛みに応じた遅延時間が生じる。
【0034】
したがって、動作指令からモータ24の負荷が増加するまでのモータ24に関する電気的数値の挙動を分析することによりベルト14の状態を把握できる。電気的数値は、モータ24の負荷を分析可能なものであればどのような数値であってもよく、例えば、モータ電圧のデューティ比やモータ電流であってもよい。本実施形態では、モータ24に関する電気的数値として、動作指令からモータ電流の立ち上がりまでの遅延時間を例示する。図5は、動作指令とモータ電流の変化の関係を示す図である。図5は、横軸に経過時間を示し、縦軸にモータ電流を示す。例えば、モータ24が停止している状態で、開動作などの動作指令を受けた場合には、モータ電流は直後には上昇せず、上述の遅延時間経過した後に立ち上がる。以下、動作指令からモータ電流が立ち上がるまでの時間を「モータ電流の遅延時間」または「遅延時間」という。
【0035】
本実施形態の取得部34は、モータ24に直列に接続されたシャント抵抗(不図示)の電圧降下に基づいて、モータ電流の遅延時間を取得数値Liとして取得する。モータ電流の遅延時間は、ベルト14の伸びが大きくなるにつれて長くなる。なお、モータ電流とは、厳密にモータ24に流れる電流のみを意味するものではなく他の構成要素に流れる電流が合わされたものであってもよい。
【0036】
取得部34が、取得数値Liを取得するタイミングを説明する。取得部34が取得数値Liを取得するタイミングは、ベルト14の劣化状態を把握可能なタイミングであれば特に限定されない。例えば、取得部34は、加速動作から速度制御動作に切り替わるとき、速度制御動作から減速動作に切り替わるとき、減速動作から接近動作に切り替わるとき、接近動作から停止動作に切り替わるときのいずれかの一つのタイミングで、取得数値Liを取得するようにしてもよい。この場合、ランダムなタイミングで取得数値Liを取得する場合と比べて、動作状態の違いによるバラツキの影響を抑制できる。本実施形態では、停止状態から加速動作に切り替わるタイミングで、取得数値Liを取得する。
【0037】
取得部34は、1開閉時のモータ24の電気的数値に基づいて取得数値Liを取得するようにしてもよいが、この場合、駆動機構のなじみや潤滑のバラツキの影響を受けて不適切な電気的数値が取得されるおそれがある。本実施形態の取得部34は、複数開閉(例えば、100開閉、200開閉)時のそれぞれの電気的数値の統計結果(例えば、平均値)に基づいて取得数値Liを取得している。駆動機構のなじみや潤滑のバラツキの影響を抑制できる。
【0038】
次に、コントローラ30の情報処理関係の動作を説明する。情報記憶部30mは、取得数値Liおよび扉速度を扉位置に対応づけした統合化情報を記憶する。この統合化情報には、取得数値Liの取得日時が含まれる。情報記憶部30mは、取得日時が含まれる統合化情報を時系列的に記憶する。
【0039】
情報通信部30cは、情報記憶部30mに記憶された統合化情報を総合制御部40に送信する。情報記憶部30mは、総合制御部40に統合化情報を送信した後に、記憶情報を消去してもよい。情報通信部30cは、ホームドア100から、扉の開閉に関する情報、異常の有無に関する情報などのステータス情報を総合制御部40に送信する。
以上が、ホームドア100の説明である。
【0040】
次に、図2を参照して、総合制御部40について説明する。総合制御部40は、操作取得部40bと、第1通信部40cと、第2通信部40eと、判定部42と、記憶部40mと、出力部44と、を含む。操作取得部40bは、操作部40sから操作者(駅務員)の操作情報を取得する。第1通信部40cはホームドア100と通信する。第2通信部40eは管理装置50と通信する。判定部42はベルト14の保守の要否を判定する。記憶部40mは所定の情報を記憶する。
【0041】
第1通信部40cは、伝送路40dを介して情報通信部30cと通信し、操作情報に基づく扉12の開閉指令信号をホームドア100に送信する。また、第1通信部40cは、ホームドア100から、扉12の開閉に関する情報、異常の有無に関する情報などのステータス情報を受信する。また、第1通信部40cは、ホームドア100から取得数値Liおよび扉速度を扉位置に対応づけた統合化情報を受信する。
【0042】
(判定部)
次に、判定部42の動作を説明する。判定部42は、受信された取得数値Liをもとにベルト14の保守の要否を判定する。特に、判定部42は、取得数値Liを予め設定された閾値Tに照らしベルト14の保守の要否を判定してもよい。例えば、判定部42は、取得数値Liが閾値Tを超えた場合に保守は必要と判定してもよい。閾値Tを用いることにより定量的な判定結果を得られる。閾値Tは、比較用の基準値にマージンを加えた値に設定されてもよい。
【0043】
判定部42は、閾値Tに基づいて取得数値Liを複数の区分に分類する。閾値Tは1つであってもよい。例えば、取得数値Liが閾値T以下の場合には保守不要と判定し、閾値Tを超える場合には保守必要と判定してもよい。
【0044】
閾値Tは2以上の閾値を含んでもよい。本実施形態の判定部42では、閾値Tは第1閾値T1と第2閾値T2とを含む。例えば、取得数値Liが第1閾値T1以下の場合には保守不要と判定し、第1閾値T1を超え第2閾値T2以下の場合には所定期間内に保守必要と判定し、第2閾値T2を超える場合には速やかに保守必要と判定してもよい。複数の閾値T1、T2を用いることにより、より適切な判定結果を得られる。
【0045】
閾値Tは、設計上で算出された値に設定されてもよいが、本実施形態では、閾値Tは、モータ24に関して過去に取得された電気的数値に応じて設定される。特に、取得部34は、ホームドア100の設置の際や保守の際に、ホームドア100自身のモータ24に関する電気的数値を取得して、その取得数値をもとに閾値Tを設定する。この場合、ホームドア100自身の電気的数値を用いるので、製造バラツキや設定時のバラツキなどの影響を抑制できる。設定された閾値Tは、記憶部40mに記憶される。
【0046】
設置や保守をした直後の開閉動作における電気的数値を用いてもよいが、この場合には駆動機構のなじみや潤滑が正常ではなく、不適切な電気的数値を取得するおそれがある。そこで、本実施形態では、閾値Tは、予め定められた回数開閉動作した後に取得されたモータ24に関する電気的数値に応じて設定される。特に、取得部34は、ホームドア100の設置や保守から予め定められた複数開閉(例えば100開閉、200開閉)後に、モータ24に関する電気的数値を取得して、その複数の取得数値の平均値をもとに閾値Tを設定する。この場合、駆動機構のなじみや潤滑による影響を抑制できる。設定された閾値Tは、記憶部40mに記憶される。
【0047】
閾値Tは、設置や保守の際に一度設定されたら次の保守まで一定であってもよい。しかし、駆動機構やベルト14の温度特性によりベルト14の伸びが季節変動することがある。このため、閾値Tは、所定の季節ごとに更新されてもよい。この場合、取得部34は、新たにモータ24に関する電気的数値を取得して、その取得数値をもとに閾値Tを更新する。更新された閾値Tは、記憶部40mに記憶される。
【0048】
閾値Tは、実測データを用いずにシミュレーションなどのCAE(Computer Aided Engineering)によって設定されてもよい。しかし、シミュレーションの基礎とした環境条件が設置現場の環境条件と異なる場合、その違いによって誤判定を生じるおそれがある。環境条件の影響を減らすために、閾値Tは、別のモータによって別のホームドアを開閉動作させたときの当該別のモータに関する電気的数値に応じて設定されてもよい。例えば、閾値Tは、既設の複数のホームドアについて実測された取得数値の平均値などの統計結果に応じて設定されてもよい。
【0049】
判定部42が、判定処理をする頻度を説明する。判定部42は、随時判定処理を実行してもよい。本実施形態の判定部42は、毎日の始業前または終業後に判定処理を実行する。この場合、随時実行する場合と比べて判定部42の処理負担が減り、処理能力の低い処理装置でも処理が可能となり、低コスト化や小型化を容易に実現できる。また、始業前または終業後に実行することによって、保守必要と判断された場合に、直ちにベルト14の交換等の保守作業を行うことができるので、通常稼働への影響を最小限に抑制できる。
【0050】
判定部42の判定結果の処理動作を説明する。判定部42は、その判定結果に基づき保守情報を生成する。本実施形態の判定部42は、所定期間内に保守必要と判定された場合および速やかに保守必要と判定された場合に、その判定結果を示す保守情報を生成する。
【0051】
次に、総合制御部40の情報処理関係の動作を説明する。第2通信部40eは、ネットワークNWを介して管理装置50と通信し、ホームドア100の開閉状況や異常の有無に関する情報を管理装置50に送信する。本実施形態の第2通信部40eは、ホームドア100の判定部42の判定結果または保守情報を管理装置50にリアルタイムに送信する。
【0052】
記憶部40mは、取得数値Li、閾値T、判定部42の判定結果および保守情報をホームドア100のIDに対応づけて記憶する。記憶部40mは、これらの情報を取得日時と合せて時系列的に記憶する。
【0053】
出力部44は判定部42の取得数値Li、判定結果および保守情報を外部に出力する。例えば、出力部44は、インターネット等のネットワークを介してこれらの情報をネットワークサーバに送信してもよいし、これらの情報を保守要員等が所持する情報端末に送信してもよい。
【0054】
(状態診断方法)
次に、このように構成されたホームドアの状態診断システム1の動作を説明する。図6は、ホームドアの状態診断システム1の動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、ホームドアの状態診断システム1においてベルト14の保守の要否を判定する判定処理S80を示す。この処理は、タイマなどにより自動的に開始されてもよいし、駅務員等の操作者の操作に基づいて開始されてもよい。この例では、判定処理S80は毎日の始業前に実行される。
【0055】
判定処理S80が開始されると、総合制御部40は、管理下のすべてのホームドアに取得数値を取得するように取得指令信号を送信する(ステップS81)。このステップで、総合制御部40は、ホームドア100のコントローラ30に取得指令信号を送信する。
【0056】
取得指令信号を受信したら、コントローラ30は、取得数値Liを取得して取得結果を情報記憶部30mに記憶する(ステップS82)。このステップで、情報記憶部30mは、取得数値Liに取得日時を統合した統合化情報を記憶する。
【0057】
取得結果を記憶したら、コントローラ30は、情報記憶部30mに記憶した取得数値Liを総合制御部40に送信する(ステップS83)。このステップで、コントローラ30は、統合化情報とIDコードとを総合制御部40に送信する。
【0058】
取得数値Liを受信したら、総合制御部40は、取得数値Liを記憶部40mに記憶する(ステップS84)。このステップで、記憶部40mは、受信した統合化情報を送信元のIDコードごとに分類して記憶する。
【0059】
取得数値Liを記憶したら、総合制御部40は、取得数値Liをもとにベルト14の保守が必要か否かを判定する(ステップS85)。このステップで、総合制御部40は、閾値Tに基づいて取得数値Liを複数の区分に分類する。実施の形態では、取得数値Liが第1閾値T1以下の場合には保守不要と判定し、第1閾値T1を超え第2閾値T2以下の場合には所定期間内に保守必要と判定し、第2閾値T2を超える場合には速やかに保守必要と判定する。
【0060】
保守が必要でない(不要)と判定された場合(ステップS85のN)、総合制御部40は、処理S80を終了する。
【0061】
所定期間内または速やかに保守必要と判定された場合(ステップS85のY)、総合制御部40は、判定結果に基づき保守情報を生成し管理装置50に送信する(ステップS86)。
【0062】
保守情報を送信したら、総合制御部40は、処理S80を終了する。この処理S80はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを変更または削除したり、ステップの順序を入れ替えてもよい。
【0063】
上記の説明では、ホームドア100を判定対象として保守の要否判定が実行される例を示したが、この要否判定は、ホームドアの状態診断システム1に含まれる各ホームドアを判定対象として順次実行されてもよい。
【0064】
次に、本実施形態の特徴を説明する。本実施形態のホームドアの状態診断システム1は、モータ24に駆動されるベルト14を用いてホームドア100を開閉動作させたときに当該モータ24に関する電気的数値を取得数値Liとして取得する取得部34と、取得数値Liをもとにベルト14の保守の要否を判定する判定部42と、を備える。
【0065】
この構成によれば、モータ24に関する電気的数値からベルト14の劣化状態を診断できる。つまり、ベルト14が破損する前にその予兆を把握できる。従来の開閉回数や運転時間などに基づいて寿命を推定する場合に比べ、ベルト14の保守の必要性を高精度に把握できる。ベルト14の破損による車両運行への影響を低減できる。
【0066】
判定部42は、取得数値Liを予め設定された閾値Tに照らしベルト14の保守の要否を判定してもよい。この場合、閾値Tと比較することにより、定量的な判定が可能になり、判定精度を向上できる。
【0067】
閾値Tは、過去にモータ24に関する電気的数値について取得した取得数値Liに応じて設定されてもよい。この場合、閾値Tがモータ24の過去のデータに基づいて設定されるので、製造バラツキや設置時のセッティングのバラツキの影響を抑制して判定精度を向上できる。
【0068】
閾値Tは、予め定められた回数開閉動作した後に取得されたモータ24に関する電気的数値に応じて設定されてもよい。この場合、ホームドア100を設置した際に、試運転後の初期値に応じて閾値Tを設定できるので、駆動機構のなじみや潤滑による影響を抑制して判定精度を向上できる。
【0069】
閾値Tは、別のモータによって別のホームドアを開閉動作させたときの当該別のモータに関する電気的数値に応じて設定されてもよい。この場合、既設のホームドアのモータの実測データに基づいて閾値Tを設定できるので、実測データに基づかずに設定する場合に比べてベルト14の劣化の検知精度を高めることができる。
【0070】
判定部42は、閾値Tに基づいて取得数値Liを複数の区分に分類してもよい。この場合、閾値Tを用いて定量的な判定結果が得られる。また、区分に分類することにより扱いやすい判定結果が得られる。
【0071】
電気的数値は、モータ24に印加される電圧とモータ24に流れる電流の少なくても一つの挙動に関する数値を含んでもよい。この場合、モータ24の電流や電圧の挙動からベルト14の劣化状態を精度よく把握できる。
【0072】
取得数値Liを外部に出力する出力部44をさらに備えてもよい。この場合、保守要員は管理センタなどの外部でベルト14の劣化状態を把握できるので、現場に出向く手間を省ける。
【0073】
[第2実施形態]
図1図2を参照して、本発明の第2実施形態に係るホームドアの状態監視装置70の構成について説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0074】
第2実施形態のホームドアの状態監視装置70は、モータ24に駆動されるベルト14によってホームドア100を開閉動作させたときにモータ24に流れる電流の挙動を取得する取得部34と、取得部34の取得結果を外部に送信する情報通信部30cと、を備える。電流の挙動は、モータ電流の遅延時間に関するものであってもよい。本実施形態によれば、モータ24に流れる電流の挙動に応じてベルト14の劣化状態を外部から把握できる。
【0075】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態は、ホームドアの状態診断方法である。この状態診断方法は、モータ24に駆動されるベルト14によってホームドア100を開閉動作させたときに、センサを用いてモータ24に関する電気的数値を取得数値Liとして取得するステップと、取得数値Liを予め定められた閾値Tに照らしベルト14の保守に関する情報を特定するステップと、を含む。
【0076】
本実施形態によれば、モータ24に関する電気的数値からベルト14の劣化状態を診断できる。つまり、ベルト14が破損する前にその予兆を把握できる。従来の開閉回数や運転時間などに基づいて寿命を推定する場合に比べ、ベルト14の保守の必要性を高精度に把握できる。ベルト14の破損による車両運行への影響を低減できる。
【0077】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態は、可動装置の状態診断方法である。本実施形態の状態診断方法は、ベルトを用いて可動装置の可動部を移動させたときに当該可動装置の構成要素に流れる電流の挙動をモニタし、当該挙動をもとにベルトの保守の要否を判定する。可動装置としては、ベルトを用いて可動部を移動させるものであれば特に限定されない。可動装置はホームドアであってもよい。可動装置の構成要素に流れる電流はモータ電流であってもよい。電流の挙動は、モータ電流の遅延時間に関するものであってもよい。本実施形態によれば、構成要素に流れる電流の挙動に基づいて可動装置の状態を診断することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0079】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0080】
実施形態の説明では、通常の開閉動作の中で、停止状態から加速動作に切り替わるタイミングで、取得数値Liを取得する例を示したが、本発明はこれに限定されない。取得数値Liは、通常の開閉動作とは別の状態診断のための動作の中で取得されてもよい。例えば、開方向の加速動作と閉方向の加速動作とを交互に実行し、これらの加速動作が切り替わるタイミングで、取得数値Liを取得してもよい。また、モータ24を一旦逆回転させてベルト14の弛みを一方に寄せてから、モータ24を正回転させてその立ち上がりのタイミングで取得数値Liを取得してもよい。
【0081】
実施形態の説明では、ホームドアが、その扉の高さが人の背丈またはそれ以上のフルハイトタイプである例を示したが、本発明はこれに限定されない。ホームドアは、その扉の高さが人の背丈より低いハーフハイトタイプであってもよい。このようなホームドアは、可動式ホーム柵と称されることがある。
【0082】
実施形態の説明では、出力部44が所定の情報をネットワークサーバや情報端末に送信する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、出力部44は、判定結果を電子メールとして外部に送信するものであってもよい。この場合、幅広い相手に判定結果を送信できる。
【0083】
実施形態の説明では、情報通信部30cは、統合化情報、扉の開閉に関する情報、異常の有無に関する情報などのステータス情報を総合制御部40に送信する例を示したが、本発明はこれに限定されない。情報通信部30cは、これらの情報の一部または全部をインターネット等のネットワークを介してネットワークサーバや保守要員等が所持する情報端末に送信してもよい。
【0084】
実施形態の説明では、取得部34が、シャント抵抗の電圧降下としてモータ電流を検知する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、取得部34は、モータ電圧のデューティ比に基づいてモータ電流を特定してもよい。また、取得部34は、モータ24の駆動回路に流れる電流およびコントローラ30や他の要素に流れる電流を含む状態の電流をモータ電流として取得するものであってもよい。
【0085】
各ホームドアに人が覚知可能な態様で情報を提示する提示部を設け、総合制御部40は、判定結果を各ホームドアの提示部に出力するようにしてもよい。例えば、提示部は判定結果に応じて異なる色の光を発するLEDを含んでもよい。この場合、プラットホームに居る駅務員等は、容易にホームドアのベルトの異常を覚知することができる。また、多数のホームドアの中から、ベルトの異常を有するホームドアを容易に特定できる。
【0086】
上述の変形例は、第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0087】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0088】
1・・状態診断システム、 10・・ドアエンジン、 12・・扉、 14・・ベルト、 16・・駆動プーリ、 18・・従動プーリ、 24・・モータ、 30・・コントローラ、 30c・・情報通信部、 30m・・情報記憶部、 34・・取得部、 40・・総合制御部、 42・・判定部、 44・・出力部、 50・・管理装置、 70・・状態監視装置、 100・・ホームドア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6