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特許7285080冷却塔の制御装置、および冷却塔の制御方法
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  • 特許-冷却塔の制御装置、および冷却塔の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】冷却塔の制御装置、および冷却塔の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20230525BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
F28F27/00 501A
G01W1/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019006090
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020115054
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-11-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 吉徳
(72)【発明者】
【氏名】武田 俊
(72)【発明者】
【氏名】今枝 大和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓也
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250578(JP,A)
【文献】特開2015-117918(JP,A)
【文献】特開2017-138025(JP,A)
【文献】特開2016-023899(JP,A)
【文献】特開2018-031537(JP,A)
【文献】特表2015-502513(JP,A)
【文献】特開2008-151481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
G01W 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機で用いられる冷却水を冷却する冷却塔の制御装置であって、
上記冷却塔が設置されている地域付近における気温と相対湿度を示す気象データをインターネットを介して受信する気象データ受信部と、
上記気象データに応じた湿球温度を求める湿球温度算出部と、
上記冷却塔から流出する冷却水の検出温度、冷凍機の負荷熱量、および上記湿球温度に基づいて、上記冷却水の温度が目標温度になるように上記冷却塔のファンモータの動作を制御する制御部と、
を備え
上記制御部は、上記湿球温度に基づいて、上記冷却塔から流出する冷却水の目標温度を設定するとともに、上記冷却水の目標温度と、上記冷却水の検出温度とに基づいて、上記冷却塔のファンモータの動作を制御し、上記湿球温度が所定の基準温度よりも低い場合に、上記冷凍機の負荷熱量が小さいほど、上記湿球温度との差が大きくなるように上記冷却水の目標温度を設定するものであって、
上記気象データ受信部、および上記湿球温度算出部を含み、上記湿球温度を求めるとともに、上記湿球温度と上記冷却水の目標温度として設定すべき温度との差である補正加算値を求める遠隔サーバと、
上記制御部を含み、上記湿球温度と上記補正加算値とを加算して上記目標温度を求めるとともに、上記目標温度と上記冷却水の検出温度とに基づいて上記冷却塔のファンモータの動作を制御する現地制御部とを有し、
上記遠隔サーバと上記現地制御部とは、公衆通信回線を介して接続されていることを特徴とする冷却塔の制御装置。
【請求項2】
請求項1の冷却塔の制御装置であって、
上記気象データは、上記冷却塔が設置されている地域付近における気温と相対湿度の予測データであることを特徴とする冷却塔の制御装置。
【請求項3】
請求項1の冷却塔の制御装置であって、
上記制御部は、上記湿球温度が所定の基準温度よりも低い場合に、上記湿球温度が低いほど、上記湿球温度との差が大きくなるように上記冷却水の目標温度を設定することを特徴とする冷却塔の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項の冷却塔の制御装置であって、
上記制御部は、上記冷却塔のファンモータの回転数を制御することを特徴とする冷却塔の制御装置。
【請求項5】
冷凍機で用いられる冷却水を冷却する冷却塔の制御方法であって、
遠隔サーバの気象データ受信部が、上記冷却塔が設置されている地域付近における気温と相対湿度を示す気象データをインターネットを介して受信し、遠隔サーバの湿球温度算出部が、上記気象データに応じた湿球温度を求め、
上記遠隔サーバは、上記湿球温度と上記冷却水の目標温度として設定すべき温度との差である補正加算値を求め、
公衆通信回線を介して上記遠隔サーバと接続された現地制御部が、上記湿球温度と上記補正加算値とを加算して、上記冷却塔から流出する冷却水の目標温度を設定し、
上記目標温度と上記冷却塔から流出する冷却水の検出温度とに基づいて、上記冷却水の温度が目標温度になるように上記冷却塔のファンモータの動作を制御するとともに、
上記湿球温度が所定の基準温度よりも低い場合に、上記冷凍機の負荷熱量が小さいほど、上記湿球温度との差が大きくなるように上記冷却水の目標温度を設定することを特徴とする冷却塔の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機などで使用される冷却塔の動作を制御する冷却塔の制御装置、および冷却塔の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却塔のファンモータを制御する技術として、乾球温度センサと相対湿度センサにより乾球温度と相対湿度を計測して湿球温度を求め、さらに、冷却塔の冷却可能温度を求めて、冷却塔の冷却ファンモータの回転数を連続的に制御し、循環する冷却水の温度を安定させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-250578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように湿球温度を求めるために用いられる相対湿度センサは、通常、高価であるとともに、例えば5年に1回校正をする必要があるため、製造コストや運転コストが高くなりがちであるという問題点を有していた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、相対湿度センサを用いることなく、冷却塔の動作を制御して冷凍機等の運転効率向上などによる省エネルギ化を図りつつ、コストを容易に低減可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
冷凍機で用いられる冷却水を冷却する冷却塔の制御装置であって、
上記冷却塔が設置されている地域付近における気温と相対湿度を示す気象データをインターネットを介して受信する気象データ受信部と、
上記気象データに応じた湿球温度を求める湿球温度算出部と、
上記冷却塔から流出する冷却水の検出温度、および上記湿球温度に基づいて、上記冷却塔のファンモータの動作を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、インターネットを介して提供される気象データに基づいてファンモータの制御が行われることにより、コストを低減しつつ、システム全体の省エネルギ化を図ることが容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、相対湿度センサを用いることなく、冷却塔の動作を制御して冷凍機等の運転効率向上などによる省エネルギ化を図りつつ、コストを容易に低減可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】冷却塔の制御装置を含む熱源機システムの構成を示すブロック図である。
図2】最適補正加算値と湿球温度との関係を示すグラフである。
図3】熱源機システムで行われる制御動作の例を示すフローチャートである。
図4】冷却塔ファン最適制御動作の例を示すフローチャートである。
図5】冷却塔出口における冷却水の温度変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(熱源機システムの要部の構成)
熱源機システムは、図1に示すように、冷凍機101と、冷却塔103とを備えている。冷凍機101は、冷水ポンプ102によって循環される冷水を冷却して、図示しない負荷に供給するものである。具体的には、例えば吸収式冷凍機や、ターボ冷凍機、スクリュー冷凍機などが用いられる。冷却塔103は、上記冷凍機101との間で冷却水ポンプ104によって循環される冷却水を、その一部を蒸発させることで温度を低下させて冷凍機101に供給するものである。この冷却塔103には、冷却塔103から流出する(または冷凍機101に流入する)冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ105が設けられている。また、冷却水の蒸発を促進させるためのファン103a、およびファンモータ103bが設けられている。
【0012】
上記ファンモータ103bは、制御盤106(制御部、現地制御部)、制御端末装置107(制御部、現地制御部)、および遠隔サーバ108(気象データ受信部、湿球温度算出部)によって構成される制御装置によって、回転数を制御されることにより、冷却塔103による冷却水の冷却程度を変え得るようになっている。より詳しくは、制御盤106は、冷却水温度センサ105によって検出される冷却水の温度が、制御端末装置107から与えられる所定の目標温度になるように、ファンモータ103bの回転数を制御するようになっている。
【0013】
上記冷却水の目標温度は、制御端末装置107によって、外気の湿球温度と所定の最適補正加算値とが加算されることにより求められる。上記湿球温度、および最適補正加算値は、遠隔サーバ108によって求められる。より詳しくは、遠隔サーバ108は、例えばインターネットを介して提供される、冷却塔103が設定されている地域付近における気温と相対湿度を示す気象データに基づいて、所定の近似式による演算等によって湿球温度を求めるようになっている。また遠隔サーバ108は、例えばあらかじめ図2に示すように設定された、上記湿球温度、および制御端末装置107から与えられる冷凍機101の稼働状態情報により得られる冷凍機101の負荷の大きさと、これらに応じた最適補正加算値との関係に基づいて、上記最適補正加算値を求めるようになっている。より詳しくは、同図の例では、湿球温度が27℃以上の場合には、湿球温度に最適補正加算値は一定の5℃とされ、これを湿球温度に加算した温度が、冷却水の目標温度とされる。また、湿球温度が27℃よりも低い場合には、湿球温度が低いほど、また、冷凍機101の熱負荷が小さいほど、大きい値の最適補正加算値が湿球温度に加算されて、冷却水の目標温度とされる。これによって、湿球温度が低く、かつ、熱負荷が小さい時期などには、冷却塔103のファンモータ103bの消費電力を小さく抑えることができる。
【0014】
上記制御端末装置107は、例えば冷凍機101や冷却塔103と同じ構内に設けられる一方、遠隔サーバ108は、例えばインターネットへの接続や、冷凍機101等の運転状況の監視などをしやすい場所に設置され、両者は公衆回線や閉域ネットワーク等を介して接続されている。
【0015】
(熱源機システムの動作)
上記のような熱源機システムでは、例えば図3図4、および以下に示すような動作が行われる。
【0016】
(S101、S102) まず、システムが稼働する際には、冷凍機101、および冷却塔103に運転を指示する信号が出力される。
【0017】
(S103) 冷却水温度センサ105によって検出される冷却水の温度が所定の閾値以上か判定され、所定の閾値よりも低ければ、過冷却防止のためにファンモータ103bを停止状態に保ち、上記判定を繰り返す一方、所定の閾値以上であれば、(S104)に移行してファンモータ103bの最適制御が行われる。上記閾値は、例えば使用される冷凍機の機種等に応じて設定される。具体的には、例えば冷凍機の最低冷水温度が22℃の場合には上記閾値が22℃に設定され、冷却水の温度がこれよりも低ければ、ファンモータ103b(インバータ)が停止される。また、最低冷却水温度が15℃のターボ冷凍機が用いられる場合には、冷却水の温度が15℃よりも低ければ、ファンモータ103b(インバータ)が停止されるように設定、制御される。なお、上記(S103)の判定や(S104)の制御は、例えば30分に1回行われるようにしたりしてもよい。
【0018】
上記ファンモータ103bの最適制御は、例えば図4に示すように行われる。
【0019】
(S201) まず、インターネットを介して、冷却塔103が設定されている地域付近における気温と相対湿度を示す気象データが受信される。上記気象データは、実測データでもよいが、十分な精度を有する予測データを用いれば、冷却塔103等の設置場所の自由度を高くすることが容易にできる。
【0020】
(S202) 上記気象データに基づいて、湿球温度、および最適補正加算値が求められる。
【0021】
(S203) 上記湿球温度と最適補正加算値とが加算されることにより、冷却水の目標温度が求められ、制御盤106に設定される。
【0022】
(S204) 上記設定に基づいて、ファンモータ103bの制御が行われる。より詳しくは、冷却水ポンプ104によって検出される冷却水の温度が目標温度になるように、例えばファンモータ103bに与えられる駆動電力の周波数が制御される。
【0023】
上記のように、インターネットを介して提供される気象データに基づいてファンモータ103bの制御が行われる場合でも、例えば図5に実際に湿球温度センサを用いて制御した場合と冷却水出口温度を比較した例を示すように、略同様の制御を行わせることができる。また、上記のような制御が行われることにより、コストを低減しつつ、システム全体の省エネルギ化を図ることが容易にできる。すなわち、湿球温度が低下すると冷却水の温度も低下させやすく、また、冷却水の温度が低下すると、吸収式冷凍機でも、他の電動式冷凍機でも、運転効率が上昇することにより消費ガス量や電力量を低減できるうえ、ファンモータ103bの消費電力も低減できるので、省エネルギ化が容易になる。
【0024】
しかも、外部から提供される気象データを用いることによって相対湿度センサを用いる必要がないので、相対湿度センサ自体の費用や据付費用を削減することができる。
【0025】
また、遠隔サーバ108からは湿球温度と最適補正加算値が送られ、これに基づいた制御は現地の制御盤106によって行われるので、安全インターロックを介して制御することが容易にできる。
【0026】
なお、上記の例では、冷凍機101や冷却塔103を模式的に示したが、様々な1台以上の熱源機や複数セルの冷却塔が用いられたりして、熱源機や冷却塔の最適台数制御などが組み合わせて行われるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
101 冷凍機
102 冷水ポンプ
103 冷却塔
103a ファン
103b ファンモータ
104 冷却水ポンプ
105 冷却水温度センサ
106 制御盤
107 制御端末装置
108 遠隔サーバ
図1
図2
図3
図4
図5