(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20230525BHJP
F25D 29/00 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
F25D23/02 306M
F25D29/00 B
(21)【出願番号】P 2019030253
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 靖基
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹也
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-340499(JP,A)
【文献】特開2000-146421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0038637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
F25D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口し
、左右方向に並ぶ複数の開口部と、前記開口部の周りを囲む枠部とを有する箱状の貯蔵庫本体と、
前記貯蔵庫本体に対して回動可能に取り付けられ、閉状態の際に前記開口部を閉じるように前記枠部に密着し、開状態の際に前記開口部を開けるように前記枠部から離れ、互いに
左右方向で隣接する複数の扉と、
複数の前記扉に1つずつ割り当てられ、通電されると、閉状態の前記扉を前方へ押し出すように作動する複数の開扉装置と、
複数の前記扉に1つずつ割り当てられ、対象物を検知する複数の対象検知部と、
前記対象検知部からの出力に基づいて、前記対象検知部に対応した前記扉が開扉されるように、前記扉に対応した前記開扉装置を通電させる制御部とを備える貯蔵庫であって、
複数の前記対象検知部は、
それぞれ、各対象検知部に対応した前記扉に
左右方向で隣接する他の前記扉、又は他の前記扉の近傍に配置され
、
前記対象検知部は、前記対象検知部に対応した前記扉が開扉する際の軌道に対して、上下方向で重ならないように配置される貯蔵庫。
【請求項2】
前方に開口し、上下方向に並ぶ複数の開口部と、前記開口部の周りを囲む枠部とを有する箱状の貯蔵庫本体と、
前記貯蔵庫本体に対して回動可能に取り付けられ、閉状態の際に前記開口部を閉じるように前記枠部に密着し、開状態の際に前記開口部を開けるように前記枠部から離れ、互いに上下方向で隣接する複数の扉と、
複数の前記扉に1つずつ割り当てられ、通電されると、閉状態の前記扉を前方へ押し出すように作動する複数の開扉装置と、
複数の前記扉に1つずつ割り当てられ、対象物を検知する複数の対象検知部と、
前記対象検知部からの出力に基づいて、前記対象検知部に対応した前記扉が開扉されるように、前記扉に対応した前記開扉装置を通電させる制御部とを備える貯蔵庫であって、
複数の前記対象検知部は、それぞれ、各対象検知部に対応した前記扉に上下方向で隣接する他の前記扉、又は他の前記扉の近傍に配置される貯蔵庫。
【請求項3】
複数の前記開扉装置は、それぞれ、閉状態の前記扉を前方へ押し出す扉押出部と、通電すると前記扉押出部が前方へ押し出されるように駆動する駆動部とを有する請求項1又は請求項2に記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソレノイド式の開扉装置(扉開放用ユニット)を備えた貯蔵庫が知られている(例えば、特許文献1)。この種の貯蔵庫は、使用者の開扉動作(開扉入力)を受け付けるセンサ(スイッチ)を備えており、そのセンサが開扉動作(開扉入力)としての検出対象物の進入を検知すると、そのセンサからの出力(検知信号)に基づいて、開扉装置のソレノイドが通電される。その結果、ソレノイドが備える押し出し棒が、貯蔵庫の扉を押し開けるように作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の貯蔵庫において、センサは、開扉させる扉又はその近くに設けられている。そのため、扉を開扉装置を利用して開扉させる場合、使用者は、通常、その扉の前方(正面)に立った状態で、センサに向かって、手をかざす等の開扉動作を行うことになる。そのため、例えば、扉と使用者との間の間隔が狭すぎる場合等において、開いた扉が、使用者に接触することも想定される。開扉装置は。開扉時に、扉が貯蔵庫本体と密着している力よりも、大きな力で扉を前方へ押し出している。そのように押し出された扉と、使用者との接触は、極力、回避させることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、開扉装置により開扉された扉が、使用者等と接触することが抑制された貯蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る貯蔵庫は、前方に開口した複数の開口部と、前記開口部の周りを囲む枠部とを有する箱状の貯蔵庫本体と、前記貯蔵庫本体に対して回動可能に取り付けられ、閉状態の際に前記開口部を閉じるように前記枠部に密着し、開状態の際に前記開口部を開けるように前記枠部から離れ、互いに隣接する複数の扉と、複数の前記扉に1つずつ割り当てられ、通電されると、閉状態の前記扉を前方へ押し出すように作動する複数の開扉装置と、複数の前記扉に1つずつ割り当てられ、対象物を検知する複数の対象検知部と、前記対象検知部からの出力に基づいて、前記対象検知部に対応した前記扉が開扉されるように、前記扉に対応した前記開扉装置を通電させる制御部とを備える貯蔵庫であって、前記対象検知部は、前記対象検知部に対応した前記扉に隣接する他の前記扉、又は他の前記扉の近傍に配置される。
【0007】
前記貯蔵庫において、前記対象検知部は、前記対象検知部に対応した前記扉が開扉する際の軌道に対して、上下方向で重ならないように配置されることが好ましい。
【0008】
前記貯蔵庫において、複数の前記開扉装置は、それぞれ、閉状態の前記扉を前方へ押し出す扉押出部と、通電すると前記扉押出部が前方へ押し出されるように駆動する駆動部とを有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開扉装置により開扉された扉が、使用者等と接触することが抑制された貯蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る冷却貯蔵庫の正面図
【
図4】作動前の開扉装置と閉状態の扉とを示す説明図
【
図5】作動後の開扉装置と開状態の扉とを示す説明図
【
図6】下段の第3扉を開けるための第3開扉装置の斜視図
【
図7】冷却貯蔵庫が備える開扉システムのブロック図
【
図8】第1扉の開扉制御の内容を示すタイミングチャート図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、
図1~
図8を参照しつつ説明する。本実施形態では、貯蔵庫として4ドア式の冷却貯蔵庫1を例示する。
図1は、本発明の実施形態1に係る冷却貯蔵庫1の正面図である。冷却貯蔵庫1は、
図1に示されるように、箱状の貯蔵庫本体2と、貯蔵庫本体2の上方に配置された機械室3と、貯蔵庫本体2に対して回動可能に取り付けられた扉4とを備えている。
図2は、扉4の開閉動作を模式的に表した説明図である。貯蔵庫本体2は、前方に開口した開口部20を有する断熱箱体であり、その内部に貯蔵物が収容される貯蔵室24を有する。貯蔵庫本体2には、中央から左右両側へ開く左右一対の扉4,4が、上下方向に2組設けられている。つまり、貯蔵庫本体2には、4つの扉4が設けられている。本明細書において、上段の一対の扉4,4のうち、冷却貯蔵庫1に向かって右側の扉4を、「第1扉4A」、及び向かって左側の扉4を、「第2扉4B」と称する場合がある。また、下段の一対の扉4,4のうち、冷却貯蔵庫1に向かって右側の扉4を、「第3扉4C」、及び向かって左側の扉4を、「第4扉4C」と称する場合がある。
【0012】
また、例えば、第1扉4Aに対して、左右方向で隣接する扉4は、第2扉4Bであり、第1扉4Aに対して、上下方向で隣接する扉4は、第3扉4Cである。
【0013】
各扉4は、ヒンジピン40を含むヒンジ部材41を介して貯蔵庫本体2に対して回動可能に取り付けられている。貯蔵庫本体2の開口部14は、上下方向に延びる仕切部材(センターピラー)18と、水平方向に延びる仕切り部材とによって4つに仕切られている。そして、4つに仕切られた各開口部の開閉を行うために、各扉4が割り当てられている。なお、4つに仕切られた各開口部を囲む枠部26は、貯蔵庫本体2の前端部と、上下方向に延びる仕切部材18と、水平方向に延びる仕切り部材等によって構成される。
【0014】
各扉4には、それぞれ取っ手5が設けられている。取っ手5は、使用者が扉4を手動で開ける際に利用される。
【0015】
なお、貯蔵庫本体2の下面には、複数の脚部21が設けられている。そのため、貯蔵庫本体2の下面と、冷却貯蔵庫1が設置される床面Fとの間には、ある程度の大きさの空間が形成される。
【0016】
機械室3は、冷却装置(冷却ユニット)、電装箱等を収容する部分である。冷却装置は、凝縮器、凝縮器ファン、圧縮機等を備えている。冷却装置は、貯蔵庫本体2内において貯蔵室の天井側に設けられた冷却器室に配設された冷却器と冷媒管によって循環接続されている。このような冷却装置が駆動すると冷却器が冷気を生成する。冷却器で生成された冷気は、冷却器室に設置された冷却ファンにより貯蔵室に送られる。なお、後述するように、機械室3には、第1扉4A及び第2扉4Bを開扉するための開扉装置6(6A,6B)が配設されている。
【0017】
開扉装置6は、使用者が取っ手5を使用せずに、扉4を開けるための電動式の装置である。開扉装置6は、4つの扉4に対して、1つずつ割り当てられている。つまり、本実施形態の冷却貯蔵庫1には、4つの開扉装置6が設置されている。本明細書において、第1扉4Aの開扉を行うものを、「第1開扉装置6A」と称し、第2扉4Bの開扉を行うものを、「第2開扉装置6B」と称し、第3扉4Cの開扉を行うものを、「第3開扉装置6C」と称し、第4扉4Dの開扉を行うものを、「第4開扉装置6D」と称する場合がある。
【0018】
第1開扉装置6Aは、第1扉4Aの上方であり、かつ冷却貯蔵庫1の中央側に設置されている。第2開扉装置6Bは、第2扉4Bの上方であり、かつ冷却貯蔵庫1の中央側に設置されている。第1開扉装置6A及び第2開扉装置6Bは、機械室3の前端側に配置されている。第1開扉装置6A及び第2開扉装置6Bは、互いに左右対称の外観形状を備えているものの、基本的な構成は互いに同じである。
【0019】
第3開扉装置6Cは、第3扉4Cの下方であり、かつ冷却貯蔵庫1の中央側に設置されている。第4開扉装置6Dは、第4扉4Dの下方であり、かつ冷却貯蔵庫1の中央側に設置されている。第3開扉装置6C及び第4開扉装置6Dは、貯蔵庫本体2の下面の前端側に、箱型の取付部22に収容された状態で配置されている。第3開扉装置6C及び第4開扉装置6Dは、互いに左右対称の外観形状を備えているものの、基本的な構成は互いに同じである。また、第3開扉装置6C等は、上述した第1開扉装置6A等に対して、上下が反転したような外観形状となっているものの、基本的な構成は、同じである。
【0020】
ここでは、第1扉4Aの開扉を行う第1開扉装置6Aを例に挙げて説明する。
図3は、開扉装置6の斜視図である。開扉装置6(第1開扉装置6A)は、
図3に示されるように、主として、ソレノイド本体61a及びプランジャ(可動鉄芯)61bを含むソレノイド61(駆動部の一例)と、てこ部材63と、回動支点軸64と、扉押出部65とを備えている。プランジャ61bの先端には、ヒンジピン66が取り付けられている。ヒンジピン66は、固定部材67によって前後方向について変位可能に固定されている。具体的には、ヒンジピン66は、固定部材67が有する貫通孔67aに挿通されている。貫通孔67aは、前後方向に延びた長孔状をなし、ヒンジピン66は貫通孔67aの内部において前後方向に変位することができる。
【0021】
てこ部材63は、上下に間隔を空けて対向配置された一対の板部63a,63bを含む断面コの字型のてこ本体62と、てこ本体62の下側の板部63bから下方に向かって延設された延設板部63cとを備えている。てこ本体62は、前方に開口したような形をなしている。てこ部材63の上側に配される板部63aを、第1板部63aと称し、下側に配される板部63bを、第2板部63bと称する。第1板部63a及び第2板部63bは、それぞれ左右方向に延びた長手状の板材からなる。てこ部材63の第1板部63a、第2板部63b及び延設板部63cは、上下方向に延びた回動支点軸64を中心として、一体的に回動可能に構成されている。第1板部63aの一方の端部63a1には、左右方向に延びた長孔状の貫通孔63a2があり、その貫通孔63a2にヒンジピン66が挿通される形で、第1板部63aの端部63a1が、ソレノイド61のプランジャ61bに接続されている。延設板部63cの下端には、扉押出部65が設けられている。扉押出部65は、扉4を開ける際に、扉4の後面に当接する部分である。
【0022】
図4は、作動前の開扉装置6と、閉状態の扉4とを示す説明図である。
図4には、貯蔵庫本体2の上面2aに開扉装置6が固定されている状態が示されている。
図4に示されるように、開扉装置6は、台座部68を介して、貯蔵庫本体2の上面2aに固定されている。なお、貯蔵庫本体2の上面2aは、機械室3の床面を構成する部分である。閉状態の扉4は、扉4の裏面に設けられたマグネットガスケット42の磁力(吸着力)により、貯蔵庫本体2に対して吸着されている。なお、扉4を開くためには、貯蔵庫本体2からマグネットガスケット42を引き剥がすために、マグネットガスケット42の磁力(吸着力)よりも大きな力を、扉4の裏面43に加える必要がある。
【0023】
作動前の開扉装置6では、てこ部材63(第1板部63a等)の長手方向が、左右方向に沿った状態となっている。そして、扉押出部65は、マグネットガスケット42が設けられていない部分の扉4の裏面43に対して、向かい合った状態となっている。
【0024】
開扉装置6は、後述するように、対象検知部7が、使用者からの開扉動作(開扉入力)を検知すると、制御部からの指令に基づいて、扉4を開けるように作動する。具体的には、制御部からの指令に基づいて、ソレノイド61が通電され、プランジャ61bがソレノイド本体61a内に引っ込むように後方へ変位するように駆動する。すると、てこ部材63が、回動支点軸64を中心として回動し、扉押出部65が前方へ変位する。これによって、扉押出部65が、扉4を裏面43側から前方へ押し出す形となり、扉4は、ヒンジ部材41を中心として回動しつつ、貯蔵庫本体2の枠部26から離される。
図5は、作動後の開扉装置6と開状態の扉4とを示す説明図である。てこ部材63は、ソレノイド61のプランジャ61bの駆動力を増幅して、扉4に伝えることができる。
【0025】
なお、
図4及び
図5に示されるように、開扉装置6には、引張りコイルばね69が設けられている。引張りコイルばね69の一端は、台座部68に固定され、その他端は、てこ部材63の第2板部63bに固定される。引張りコイルばね69は、ソレノイド61に対する通電が停止された後、プランジャ61bがソレノイド本体61aから突出して、通電前の元の位置(
図4に示される位置)へ戻されるように、てこ部材63を引っ張る機能を有する。
【0026】
図6は、下段の第3扉4Cを開けるための第3開扉装置6Cの斜視図である。第3開扉装置6Cは、第1開扉装置6Aと比べて、上下が反転したような外観形状となっているものの、基本的な構成は同じである。第3開扉装置6Cは、ソレノイド本体61Ca及びプランジャ(可動鉄芯)61Cbを含むソレノイド61Cと、てこ部材63Cと、回動支点軸64Cと、扉押出部65Cとを備えている。プランジャ61Cbの先端には、ヒンジピン66Cが取り付けられており、そのヒンジピン66Cは、固定部材67Cによって前後方向について変位可能に固定されている。ヒンジピン66Cは、固定部材67Cが有する貫通孔67Caに挿通され、ヒンジピン66Cは貫通孔67Caの内部において前後方向に変位することができる。また、てこ部材63Cは、第1開扉装置6Aと同様、上下に間隔を空けて対向配置された一対の板部63Ca,63Cbを含む断面コの字型のてこ本体62と、てこ本体62の上側の板部63Cbから上方に向かって延設された延設板部63Ccとを備えている。延設板部63cの上端には、扉押出部65Cが設けられている。
【0027】
なお、後述するように、第3扉4Cに対応した第3開扉装置6Cの近くに取り付けられる形で、第4扉4Dに対応した対象検知部7(第4対象検知部7D)が設けられている。
【0028】
冷却貯蔵庫1は、更に、対象検知部7と、開閉検知部8とを備えている。対象検知部7は、対象検知部7から所定の範囲内に、使用者等の対象物が進入したことを検知する手段である。本実施形態の対象検知部7は、赤外線モーションセンサからなり、その検知範囲(検知可能な範囲)は、センサの前方において数センチ程度(例えば、5センチ)に設定されている。このような対象検知部7は、使用者が、取っ手5を使用せずに扉4を開ける場合に、その扉4に対応した開扉装置6を作動させるために利用される。対象検知部7は、4つの扉4にそれぞれ1つずつ割り当てられている。これらのうち、第1扉4Aの開扉に対応したものを、「第1対象検知部7A」と称し、第2扉4Bの開扉に対応したものを、「第2対象検知部7B」と称し、第3扉4Cの開扉に対応したものを、「第3対象検知部7C」と称し、第4扉4Dの開扉に対応したものを、「第4対象検知部7D」と称する場合がある。
【0029】
本実施形態において、各対象検知部7は、それぞれ対応した各扉4又は各扉4の近傍ではなく、各扉4について、それぞれ隣接する他の扉4又は他の扉4の近傍に配置されている。このように、各対象検知部7を配置することで、各対象検知部7に対応した各扉4を各開扉装置6を利用して開扉する際、使用者等が、開扉する扉4の前方(正面)に立つことが抑制され、かつ開扉する扉4と使用者等が接触することが抑制される。
【0030】
第1対象検知部7Aは、
図1に示されるように、それに対応した第1扉4A又は第1扉4Aの近傍ではなく、第1扉4Aに左右方向で隣接する第2扉4Bの下端に設置されている。本実施形態の場合、第1対象検知部7Aは、第2扉4Bの下端であって、冷却貯蔵庫1の中央寄りの部分に設置されている。第1対象検知部7Aを設置する位置は、第1扉4Aの開扉時に、使用者が第1扉4の前面に立ち難くすること等を考慮して、適宜、設定される。後述する他の対象検知部7についても、同様である。第1対象検知部7Aの検知方向は、第2扉2Bの前方に設定されている。
【0031】
第2対象検知部7Bは、それに対応した第2扉4B又は第2扉4Bの近傍ではなく、第2扉4Bに左右方向で隣接する第1扉4Aの下端に設置されている。第2対象検知部7Bの検知方向は、第1扉2Aの前方に設定されている。
【0032】
なお、第1対象検知部7Aの検知方向は、第2扉2Bの前方に設定され、第2対象検知部7Bの検知方向は、第1扉2Aの前方に設定されている。このような第1対象検知部7A及び第2対象検知部7Bは、例えば、使用者が前方から手をかざす動作を検知する。
【0033】
第3対象検知部7Cは、それに対応した第3扉4C又は第3扉4Cの近傍ではなく、第3扉4Cに左右方向で隣接する第4扉4Dの下端近傍に設けられている。また、第4対象検知部7Dは、それに対応した第4扉4D又は第4扉4Dの近傍ではなく、第4扉4Dに左右方向で隣接する第3扉4Cの下端近傍に設けられている。例えば、
図6に示されるように、第4扉4Dに対応した第4対象検知部7Dは、第3開扉装置6Cの固定部材67Cに隣接する形で設けられている。
【0034】
下段の各扉4,4に対応した第3対象検知部7C及び第4対象検知部7Dの各検知方向は、貯蔵庫本体2の下方に設定されている。このような第3対象検知部7C及び第4対象検知部7Dは、例えば、貯蔵庫本体2の下面と床面Fとの間にある空間に、使用者が前方から差し入れた足(つま先)の動作を検知する。例えば、第3扉4Cを開扉する際、使用者は、第3扉4Cに左右方向で隣接する第4扉4D側に設けられた第3対象検知部7Cで検知されるように、貯蔵庫本体2の下面と床面Fとの間にある空間に足(つま先)が差し入れられる。
【0035】
開閉検知部8は、扉4が開状態であるか、又は閉状態であるかを検知する手段である。本実施形態の開閉検知部8は、磁気スイッチからなり、2本の強磁性体リードを含むリードスイッチ81と、磁石82とを含む。リードスイッチ81に磁石82が近づいて、強磁性体リードの軸方向に外部から磁場が与えられると、強磁性体リード同士が接触することにより、閉状態検知信号が、開閉検知部8から出力される。これに対し、リードスイッチ81から磁石82が離れ、磁石82の磁場がリードスイッチ81に及ばないと、強磁性体リード同士が弾性で離れ、閉状態検知信号の出力が停止する。
【0036】
なお、開閉検知部8は、4つの扉4にそれぞれ1つずつ割り当てられている。これらのうち、第1扉4Aの開閉を検知するものを、「第1開閉検知部8A」と称し、第2扉4Bの開閉を検知するものを、「第2開閉検知部8B」と称し、第3扉4Cの開閉を検知するものを、「第3開閉検知部8C」と称し、第4扉4Dの開閉を検知するものを、「第4開閉検知部8D」と称する場合がある。
【0037】
図7は、冷却貯蔵庫1が備える開扉システム10のブロック図である。開扉システム10は、冷却貯蔵庫1が備える4つの扉4の開扉を制御するシステムであり、主として、制御部100と、4つの対象検知部7と、4つの開閉検知部8と、4つの開扉装置6(ソレノイド61)と、2つのタイマ(第1タイマ101、第2タイマ102)と、電源供給部200と、変圧器201と、切替手段202とを備えている。
【0038】
制御部100は、CPU103、ROM104、RAM105及び信号入出力部106を備える。制御部100の各種機能は、CPU103が、ROM104(記憶部の一例)に格納されているプログラムを実行することで実現される。
【0039】
信号入出力部106は、4つの対象検知部7、及び4つの開閉検知部8等に対してそれぞれ接続されており、それらからの検知信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換してCPU103へ出力する。
【0040】
対象検知部7は、対象物を検知している検知状態の時に検知信号を制御部100(CPU103)に対して出力する。また、対象検知部7は、対象物を検知していない非検知状態の時に検知信号の出力を停止する。制御部100(CPU103)は、このような検知信号の出力の有無により、対象検知部7が対象物を検知している検知状態であるか、又は対象物を検知していない非検知状態であるかを判断する。なお、本明細書において、対象検知部7が検知信号を出力している状態を、「オン状態」と称し、対象検知部7が検知信号の出力を停止している状態を、「オフ状態」と称する場合がある。
【0041】
開閉検知部8は、扉4が閉状態の時に、制御部100(CPU103)に対して閉状態検知信号を出力する。また、開閉検知部8は、扉4が開状態の時に、閉状態検知信号の出力を停止する。制御部100(CPU103)は、このような閉状態検知信号の有無により、扉4が閉状態であるか、又は開状態であるかを判断する。なお、本明細書において、開閉検知部8が開閉検知信号を出力している状態を、「オン状態」と称し、開閉検知部8が開閉検知信号の出力を停止している状態を、「オフ状態」と称する場合がある。
【0042】
電源供給部200は、各開扉装置6の各ソレノイド61に対して電力を供給するための装置である。変圧器201は、電源供給部200から供給される電力(電圧)を変圧する。本実施形態の場合、電源供給部200から供給される200Vの電圧を、変圧器201が100Vへ変圧する。
【0043】
切替手段202は、4つの開扉装置6(ソレノイド61)のうち、何れか1つの開扉装置6(ソレノイド61)を通電させるための手段である。切替手段202は、第1開扉装置6Aに接続する第1スイッチ202Aと、第2開扉装置6Bに接続する第2スイッチ202Bと、第3開扉装置6Cに接続する第3スイッチ202Cと、第4開扉装置6Dに接続する第4スイッチ202Dとを備えている。切替手段202が備える第1スイッチ202A等は、例えば、リレーからなる。切替手段202は、CPU103から信号入出力部106を介して出力された駆動信号を受けると、目的とする1つの開扉装置6(ソレノイド61)を、所定時間通電させるように作動する。
【0044】
第1タイマ101及び第2タイマ102は、制御部100による制御において使用される時間を計測する手段である。なお、第1タイマ101及び第2タイマ102は、制御部100の一部として構成されてもよい。
【0045】
次いで、冷却貯蔵庫1(開扉システム10)における開扉装置6を利用した扉4の開扉制御について、
図8を参照しつつ説明する。ここでは、第1扉4Aを開扉させる場合を例に挙げて説明する。
図8は、第1扉4Aの開扉制御の内容を示すタイミングチャート図である。第1扉4Aが開扉される前の状態において、第1対象検知部7Aはオフ状態(非検知状態)であり、第1開閉検知部8Aはオン状態であり、第1開扉装置6Aが備えるソレノイド61は、オフ状態(非通電状態)となっている。また、第1タイマ101及び第2タイマ102は、それぞれオフ状態となっている。
【0046】
例えば、使用者が第2扉4Bの正面側で立った状態で、手のひらを第2扉4Bの下端に配置された第1対象検知部7Aの前方にかざすことにより、第1対象検知部7Aは、検知信号を出力してオン状態(検知状態)となる。第1対象検知部7Aがオン状態になると、制御部100(CPU103)からの指令に基づいて、第1タイマ101が起動してオン状態となり、時間の計測を開始する。本実施形態の場合、第1タイマ101は、予め所定時間tb(例えば、3.0秒)の間、時間を計測するように設定されている。
【0047】
なお、本実施形態の場合、第1対象検知部7Aのオン状態(検知状態)が、例えば、検知開始から所定時間ta(例えば、0.1秒)未満であると、第1開扉装置6Aのソレノイドが通電されないように設定されている。つまり、第1対象検知部7Aの検知状態が短すぎる場合、制御部100は、その検知状態の後、検知信号の出力が停止しても、それを第1扉4Aを開扉させるための指令とは認識しない。
【0048】
第1対象検知部7Aのオン状態(検知状態)が、例えば、検知開始から時間t1(ただし、ta≦t1)の間、続いた後、使用者が手のひらを退避させたことにより、第1対象検知部7Aからの検知信号の出力が停止すると、制御部100(CPU103)によって、その停止した時間t1が、所定時間tb以内か否かが判断される。時間t1が、所定時間tb以内の場合(t1≦tb)、制御部100(CPU103)からの指令に基づいて、第2タイマ102が起動してオン状態となり、時間の計測を開始する。第2タイマ102は、予め、所定時間tc(例えば、0.1秒)の間、時間を計測するように設定されている。検知信号の出力が停止してからオフ状態(非検知状態)が所定時間tc続くと、制御部100は、上述した検知信号の出力の停止を、第1扉4Aを開扉させるための指令と認識し、制御部100(CPU103)から、切替手段202に対して駆動信号が出力され、第1扉4Aのソレノイド61が所定時間(例えば、0.5秒)の間、通電される(オン状態となる)。ソレノイド61が通電されると、閉状態の第1扉4Aが、第1開扉装置6Aの扉押出部65によって前方へ押し出され、開状態となる。
【0049】
このように、本実施形態では、第1扉4Aに対応した第1対象検知部7Aが、第1扉4Aに隣接する第2扉4Bに設けられているため、使用者は、第1扉4Aの開扉時に、第1対象検知部7Aのある第2扉4Bの前面側に立つことが促され、しかも、開扉する第1扉4Aの前面側に立つことが抑制される。このように、本実施形態の冷却貯蔵庫1では、開扉装置6により開扉された扉4が、使用者等と接触することが抑制され。
【0050】
なお、本実施形態の各対象検知部7は、対応した各扉4が開扉する際の各軌道に対して、上下方向で重ならないように配置されている。例えば、
図2において、第1扉4が開扉する際の軌道Xが示されている。第1扉4を開扉する際に利用される第1対象検知部7Aは、第1扉4が開扉する際の軌道Xとは、上下方向で重ならないように設定されている。なお、第2対象検知部7Bは、第1扉4が開扉する際の軌道Xに対して、上下方向で重なる位置に配置されているものの、第2対象検知部7Bは、それに対応した第2扉4Bが開扉する際の軌道(不図示)とは、上下方向で重ならないように配置されている。このように、各対象検知部7が、対応した各扉4の開扉する際の各軌道に対して、上下方向で重ならないように配置されると、使用者は、開扉する扉4の前面側に立ち難くなり、開扉する扉4との接触が抑制される。
【0051】
<実施形態2>
次いで、
図9を参照しつつ、実施形態2に係る冷却貯蔵庫1Aについて説明する。
図9は、実施形態2に係る冷却貯蔵庫1Aの正面図である。本実施形態の冷却貯蔵庫1Aの各構成は、実施形態1の冷却貯蔵庫1と同じである。本実施形態の冷却貯蔵庫1Aでは、各対象検知部7が、対応する各扉4に対して、それぞれ上下方向で隣接する他の各扉4に設けられている。具体的には、第1扉4Aに対応した第1対象検知部7Aは、第1扉4Aに対して上下方向(下側)で隣接する第3扉4Cの下端近傍に設けられ、第2扉4Bに対応した第2対象検知部7Bは、第2扉4Bに対して上下方向(下側)で隣接する第4扉4Dの下端近傍に設けられている。また、第3扉4Cに対応した第3対象検知部7Cは、第3扉4Cに対して上下方向(上側)で隣接する第1扉4Aの下端に設けられ、第4扉4Dに対応した第4対象検知部7Dは、第4扉4Dに対して上下方向(上側)で隣接する第2扉4Bの下端に設けられている。このように、各対象検知部7は、対応する各扉4に対して、それぞれ上下方向で隣接する他の各扉4又はその近傍に設けられてもよい。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
(1)他の実施形態の貯蔵庫においては、ブザー等の報知手段を備えてもよい。例えば、対象検知部のオン状態(検知状態)が、検知開始から所定時間ta(例えば、0.1秒)の間、続いた場合、その所定時間taが経過したタイミングで、報知手段を利用して、使用者に、扉の開扉入力がなされたことを、音情報等により報知してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…冷却貯蔵庫、2…貯蔵庫本体、3…機械室、4…扉、5…取っ手、6…開扉装置、61…ソレノイド、7…対象検知部、8…開閉検知部、100…制御部、200…電源供給部、201…変圧器、202…切替手段