(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】設置支援装置及び設置支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20230525BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20230525BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/12
(21)【出願番号】P 2019057958
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大西 一徳
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 利彦
(72)【発明者】
【氏名】國松 昇平
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-102258(JP,A)
【文献】特開2001-042759(JP,A)
【文献】特開2016-133818(JP,A)
【文献】特開2009-239821(JP,A)
【文献】特開2018-128961(JP,A)
【文献】特開2012-010210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/12
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象物の3次元モデルを形成する複数の面のうち監視対象とする監視対象面の選択を受け付ける選択受付部と、
選択された前記監視対象面上の監視点から当該監視対象面に設定された推奨監視方向に伸びる基準直線を設定する基準直線設定部と、
前記監視点を一端とし前記基準直線と許容角度以下の鋭角をなす半直線の軌跡によって形成される錐状空間を、前記監視対象面を撮影するカメラの設置候補空間として算出する設置候補空間算出部と、
を備えることを特徴とする設置支援装置。
【請求項2】
前記選択受付部は、複数の前記監視対象面の選択を受け付け、
前記設置候補空間算出部は、前記複数の監視対象面の前記基準直線についてそれぞれ算出した前記錐状空間が重複する空間を前記設置候補空間として算出することを特徴とする請求項1に記載の設置支援装置。
【請求項3】
前記選択受付部は、複数の前記監視対象面の選択を受け付け、
前記設置候補空間算出部は、前記複数の監視対象面それぞれに設定された前記推奨監視方向を統合した統合推奨監視方向を算出し、前記複数の監視対象面のそれぞれから前記統合推奨監視方向に伸びる前記基準直線についてそれぞれ算出した前記錐状空間が重複する空間を前記設置候補空間として算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の設置支援装置。
【請求項4】
前記設置候補空間算出部は、前記監視対象物の周囲の構造物の位置と形状とを表す構造物情報と前記錐状空間とを用いて前記設置候補空間を算出する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の設置支援装置。
【請求項5】
前記監視対象物の周囲の構造物の位置と形状とを表す構造物情報と前記設置候補空間とを用いて前記カメラの取付候補領域を算出する取付候補領域算出部を更に備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の設置支援装置。
【請求項6】
前記推奨監視方向は、前記監視対象面の法線であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の設置支援装置。
【請求項7】
前記推奨監視方向及び前記許容角度の少なくとも一方は、前記監視対象面の材質及び監視空間内の光源の位置のうち少なくとも一方によって規定されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の設置支援装置。
【請求項8】
コンピュータに、
監視対象物の3次元モデルを形成する複数の面のうち監視対象とする監視対象面の選択を受け付ける選択受付ステップと、
選択された前記監視対象面上の監視点から当該監視対象面に設定された推奨監視方向に伸びる基準直線を設定する基準直線設定ステップと、
前記監視点を一端とし前記基準直線と許容角度以下の鋭角をなす半直線によって形成される錐状空間を、前記監視対象面を撮影するカメラの設置候補空間として算出する設置候補空間算出ステップと、
を実行させることを特徴とする設置支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置支援装置及び設置支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラを設置する際には、所望の監視目的を達成するための監視カメラの配置条件(設置位置・姿勢・画角)を事前に計画(プランニング)する。例えば、監視目的を達成するために監視空間を死角なく撮影する必要があれば、死角が生じないよう監視カメラの配置条件を決める。配置条件は一般に多岐におよぶため、人手で行うプランニングでは、多大な労力を要し、またプランニング実施者の主観や経験に依存してしまう。
【0003】
そこで本出願人は、配置条件に基づいてカメラが撮影可能な空間範囲を求めて監視空間内の死角が少なくなるほど高くなる評価値を求め、配置条件を変更しつつ最も高い評価値となる配置条件を探索することにより、プランニング実施者の経験に依存することなく死角の少ない配置条件を容易に求める技術を提案した(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明では、特定の監視対象を確実に撮影できるプランニングができないことがあった。特に、特許文献1の発明で求めた配置条件では、監視対象の特定の面(監視対象面)を適切な角度から撮影できるとは限らなかった。
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、監視対象面を適切な角度で撮影するのに適したカメラの設置候補空間を求めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態による設置支援装置は、監視対象物の3次元モデルを形成する複数の面のうち監視対象とする監視対象面の選択を受け付ける選択受付部と、選択された監視対象面上の監視点から当該監視対象面に設定された推奨監視方向に伸びる基準直線を設定する基準直線設定部と、監視点を一端とし基準直線と許容角度以下の鋭角をなす半直線の軌跡によって形成される錐状空間を、監視対象面を撮影するカメラの設置候補空間として算出する設置候補空間算出部と、を備える。
【0007】
選択受付部は、複数の監視対象面の選択を受け付けてよい。設置候補空間算出部は、複数の監視対象面の基準直線についてそれぞれ算出した錐状空間が重複する空間を設置候補空間として算出してよい。
選択受付部は、複数の監視対象面の選択を受け付けてよい。設置候補空間算出部は、複数の監視対象面それぞれに設定された推奨監視方向を統合した統合推奨監視方向を算出し、複数の監視対象面のそれぞれから統合推奨監視方向に伸びる基準直線についてそれぞれ算出した錐状空間が重複する空間を設置候補空間として算出してよい。
【0008】
設置候補空間算出部は、監視対象物の周囲の構造物の位置と形状とを表す構造物情報と錐状空間とを用いて設置候補空間を算出してよい。
設置支援装置は、監視対象物の周囲の構造物の位置と形状とを表す構造物情報と設置候補空間とを用いてカメラの取付候補領域を算出する取付候補領域算出部を更に備えてもよい。
推奨監視方向は、監視対象面の法線であってもよい。
推奨監視方向及び許容角度の少なくとも一方を、監視対象面の材質及び監視空間内の光源の位置のうち少なくとも一方によって規定してもよい。
【0009】
本発明の他の形態による設置支援プログラムは、コンピュータに、監視対象物の3次元モデルを形成する複数の面のうち監視対象とする監視対象面の選択を受け付ける選択受付ステップと、選択された監視対象面上の監視点から当該監視対象面に設定された推奨監視方向に伸びる基準直線を設定する基準直線設定ステップと、監視点を一端とし基準直線と許容角度以下の鋭角をなす半直線の軌跡によって形成される錐状空間を、監視対象面を撮影するカメラの設置候補空間として算出する設置候補空間算出ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、監視対象面を適切な角度で撮影するのに適したカメラの設置候補空間を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の設置支援装置の一例の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態による設置支援方法の一例の説明図である。
【
図4】(a)~(c)は、基準直線のその他の設定例の説明図である。
【
図5】(a)及び(b)は、許容角度のその他の設定例の説明図である。
【
図6】カメラの設置候補空間及び取付候補領域の算出方法の一例の説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による設置支援方法の一例のフローチャートである。
【
図8】第2実施形態における設置候補空間の算出方法の一例の説明図である。
【
図9】(a)~(c)は、第3実施形態における設置候補空間の算出方法の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1実施形態)
(構成)
図1を参照する。実施形態の設置支援装置10は、例えばコンピュータにより構成され、記憶部11と、制御部12とを備える。
記憶部11は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶部11は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
【0014】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等のプロセッサと、その周辺回路によって構成される。
以下に説明する制御部12の機能は、例えば、記憶部11に格納されたコンピュータプログラムである設置支援プログラム20を、制御部12が備えるプロセッサが実行することによって実現される。
【0015】
なお、入力装置13は、設置支援装置10の動作を制御するために、カメラプランニングの実施者や、監視従事者、管理者など(以下、「プランニング実施者等」と表記する)が操作するマウスやキーボードなどである。入力装置13は設置支援装置10に接続され、入力装置13から各種情報が設置支援装置10に入力される。また、出力装置14は、設置支援装置10が算出したカメラの設置候補空間や取付候補領域の視覚情報を出力するディスプレイ、プロジェクタ、プリンタなどである。
【0016】
設置支援装置10は、特定の監視対象物を撮影可能なカメラの設置候補空間と取付候補領域を算出する。設置候補空間は、監視対象物を撮影可能なカメラの視点(光学中心)の3次元の空間範囲である。また、取付候補領域は、監視対象物を撮影可能なカメラを監視対象物の周囲の構造物の表面に取り付ける場合の取付位置を表す2次元領域である。
図2を参照する。いま、屋外空間や、構造物によって形成される屋内空間等である監視空間31内に、監視対象物30が存在している場合を想定する。
監視対象物30を撮影するカメラを設置する場合、たとえ監視対象物30が撮影できたとしても、監視すべき面が見えづらいことがある。例えば、監視すべき面と視線がほとんど平行である場合は、面の内容を監視できない。
【0017】
そこで、設置支援装置10は、監視対象物30の3次元モデルを形成する複数の面のうち監視対象とする監視対象面32の選択を受け付ける。
そして、設置支援装置10は、選択された監視対象面32上の監視点37から監視対象面32に設定された推奨監視方向に伸びる基準直線33を設定する。
【0018】
設置支援装置10は、監視点37を一端とし基準直線33と許容角度θの鋭角をなす半直線の軌跡により囲まれる空間のうち基準直線33が含まれる錐状空間34を、監視対象面を撮影するカメラの設置候補空間として算出する。
設置支援装置10は、監視対象物の周囲の構造物(例えば天井35)の表面のうち、設置候補空間34と接する領域36を、カメラの取付候補領域として算出する。
これにより設置支援装置10は、監視対象面32を適切な角度で撮影するのに適したカメラの設置候補空間及び取付候補領域を算出できる。
【0019】
以下、設置支援装置10の詳細を説明する。
図1を参照する。記憶部11には、上述の設置支援プログラム20のほか、構造物情報21が格納されている。
構造物情報21は、監視空間31に存在する現実世界の構造物、地面、障害物(什器,樹木等)などの物体の位置、形状、構造などを表す3次元の幾何形状データ(すなわち3次元モデル)である。
図2の例では、構造物情報21は、監視空間31内の物体である監視対象物30や構造物である天井35の幾何形状データを含んでよい。
【0020】
構造物情報21を生成するための幾何形状データは、3次元CADやBIM(Building Information Modeling)で作成されたものでもよいし、3次元レーザースキャナー等により監視空間に存在する物体の3次元形状を取り込んだデータでもよい。構造物情報21を生成するための幾何形状データは、航空機からステレオ撮影やレーザ測距を行うことによって作成された高さ情報も含む立体形状をポリゴンデータによって表したデータであってもよい。
【0021】
また、構造物情報21は、監視空間31に存在する構造物、地面、物体の材質情報や、監視空間31内の光源の位置及び照射方向の情報を含んでもよい。また、構造物情報21は、監視空間31に存在する構造物、地面、物体について、上述の推奨監視方向や許容角度θなどの属性データを含んでもよい。
このような構造物情報21は、プランニング実施者等により入力装置13から設定登録されることにより記憶部11に記憶される。
【0022】
制御部12は、記憶部11に記憶された設置支援プログラム20を読み出して実行し、選択受付部22、基準直線設定部23、設置候補空間算出部24、及び取付候補領域算出部25として機能する。
選択受付部22は、監視対象物30の3次元モデルを形成する複数の面のうち監視対象とする監視対象面32の選択を受け付ける。プランニング実施者は、入力装置13を用いて監視対象面32を選択する。
【0023】
例えばプランニング実施者は、構造物情報21に含まれる監視対象物30の3次元モデルの所定の面(例えば所定のポリゴン)を、監視対象面32として選択してよい。
なお、構造物情報21に含まれるデータ以外の面を選択してもよい。例えば、プランニング実施者は、監視対象物として通行者を想定し、入力装置13を用いて通行者の体表面を模擬した3次元データ(例えばポリゴン)を追加して、これを監視対象面として選択してもよい。
【0024】
基準直線設定部23は、監視対象面32を監視すべき方向として、基準直線33を設定する。
例えば、監視対象物の3次元モデルを構成する面のそれぞれに推奨監視方向の属性データを付加しておき、選択された監視対象面32の推奨監視方向に伸びる基準直線を設定してもよい。また、プランニング実施者が入力装置13を用いて推奨監視方向を入力して、この推奨監視方向に伸びる基準直線を設定してもよい。なお、推奨監視方向は監視対象物の外側に向かう方向である。
図3を参照する。複数の方向から監視が可能な場合には、単一の監視対象面32に対して複数の基準直線33a~33cを設定してもよい。この場合には、基準直線33a~33cについてそれぞれ算出された錐状空間34a~34cの和が設置候補空間となる。
【0025】
また、推奨監視方向を、監視対象面32の材質及び監視空間31内の光源の位置のうち少なくとも一方によって設定してもよい。
図4の(a)を参照する。例えば推奨監視方向は、監視対象面32の材質に応じて設定してもよい。例えばカメラ40には、光源41を備えるものがある。破線42は、光源41による光線を示す。
監視対象面32の材質が光を反射しやすい場合(例えば鏡面反射率が高い場合)、監視対象面32の反射光がカメラ40の光学系に入射し監視対象面32が見えづらくなる恐れがある。したがって、このような場合には、例えば監視対象面32の法線方向nとのなす角が角度閾値φ1(>φ)よりも大きくなるように推奨監視方向を設定する。
【0026】
図4の(b)を参照する。例えば監視対象面32の近くに光源43が存在し、監視対象面32の材質が光を反射しやすい場合も同様の問題が発生する恐れがある。
この場合には、例えば入射方向44から入射する光源43の光線の正反射方向45とのなす角が角度閾値φ1よりも大きくなるように推奨監視方向を設定してよい。
【0027】
図4の(c)を参照する。例えば、監視対象面32の近くに存在する光源43の方向と監視方向が近い場合にも同様の問題が発生する恐れがある。
この場合には、例えば光源43からの光線の入射方向44とのなす角が角度閾値φ1よりも大きくなるように推奨監視方向を設定してよい。
【0028】
次に基準直線設定部23は、監視対象面32を撮影する方向が、基準直線33からどれくらいずれてよいかを定める許容角度θを設定する。
例えば、監視対象面32の構造物情報21に許容角度θ(0°≧θ>90°)の属性データが付加されていれば、この属性データに従って許容角度θを設定してよい。また、プランニング実施者が入力装置13を用いて入力すれば、この入力に従って許容角度θを設定してもよい。
【0029】
また、許容角度θを、監視対象面32の材質及び監視空間31内の光源の位置のうち少なくとも一方によって設定してもよい。
例えば、監視対象面32が液晶ディスプレイにおける液晶画面である場合、当該液晶画面の視野角を規定する材質(又は視野角自体)を属性データとして記憶しておき、当該属性データに基づいて当該視野角内にカメラ40の視線が含まれるように許容角度を設定する。これにより液晶画面の表示を適切に確認できる。
【0030】
また、監視対象面32の近くに撮影の邪魔になる光源43が存在し、監視対象面32の材質が光を反射しやすい場合には、例えば当該光源43からの光線が監視対象面32に正反射する方向に推奨監視方向を設定しないように許容角度を小さく設定する。さらに、できるだけカメラ40の視野内に光線が入らないように許容角度を小さく設定してもよい。
【0031】
また、例えば火災や侵入異常等を示す警告ランプを光源43とし、当該光源43からの光線を鏡面反射する監視対象面32越しに警告ランプを撮影して異常検知したい場合、当該光源43の反射面となる監視対象面32の材質及び光源43の位置を考慮して、光源43からの光線の正反射方向となるよう推奨監視方向を設定するとともに、許容角度が小さくなるよう設定してもよい。
【0032】
さらに、許容角度は単一の基準直線33に対して常に一定でなくともよい。
図5の(a)及び
図5の(b)を参照する。例えば、許容角度は、最大値θ1と最小値θ2との間で変化してもよい。
例えば、基準直線33をZ軸とする左手系または右手系の座標系を定め、基準直線33周りの方位角をX軸から半時計回りの角度ψで規定し、各方位角ψにおけるそれぞれの許容角度θの大きさを設定してもよい。各方位角ψにおける許容角度θは、例えば監視対象面32の材質等の属性データや、光源等の構造物情報21に基づいて設定してもよく、プランニング実施者が入力装置13を用いて設定してもよい。
【0033】
さらに、基準直線設定部23は、監視対象面32上に基準直線33の通過点となる監視点37を設定する。例えば設置候補空間算出部24は、監視対象面32の重心または中心を監視点37として設定してよい。プランニング実施者が入力装置13を用いて監視点37を設定してもよい。
【0034】
図1を参照する。基準直線33、許容角度θ、監視点37が設定されると、設置候補空間算出部24は、監視点37から推奨監視方向へ基準直線33を伸ばし、この基準直線33を円錐の回転軸とみなして錐体を算出する。例えば、設置候補空間算出部24は、許容角度θの2倍の頂角を有する円錐を算出する。そして、算出した錐体を錐状空間34とする。
【0035】
すなわち、設置候補空間算出部24は、監視点37を一端として推奨監視方向へ伸びる基準直線33と許容角度θ以下の鋭角をなす半直線の軌跡によって形成される錐状空間34を算出する。推奨監視方向は監視対象物の外側に向かう方向であり、また、錘状空間34は基準直線を含む空間となる。
なお、上述の通り、許容角度θは、単一の基準直線33に対して常に一定でなくともよく、この場合は、算出される錐体は円錐でなくともよい。
【0036】
設置候補空間算出部24は、算出した錐状空間34と、構造物情報21に含まれる構造物の位置及び形状と、に基づいて設置候補空間を算出する。
具体的には、算出した錐状空間34のうち、構造物情報21に含まれる構造物が占有する空間と重複していない部分空間を設置候補空間とする。この際、錐状空間34をスポットライト光源によって生成された空間とみなして、構造物の陰になる空間は設置候補空間から除外する。すなわち、監視点37から見て構造物の死角になる空間を設置候補空間から除外する。
【0037】
図6を参照する。錐状空間34のうち、斜線ハッチングを施した空間61は、構造物60により占有される空間であり、横線ハッチングを施した空間63は、構造物60の影になる空間である。したがって、設置候補空間算出部24は、錐状空間34のうち、空間61及び空間63を除いた空間62(砂目ハッチングを施した空間62)を設置候補空間として算出する。
【0038】
図1を参照する。取付候補領域算出部25は、構造物情報21と設置候補空間とを用いてカメラの取付候補領域を算出する。例えば、取付候補領域算出部25は、監視対象物30の周囲の構造物の表面のうち、設置候補空間と接する領域をカメラの取付候補領域として算出する。
図6を参照する。設置候補空間62は、監視対象物30の周囲の構造物35及び60の表面の領域64a及び64bと接している。取付候補領域算出部25は、これらの領域64a及び64bをカメラの取付候補領域として算出する。
【0039】
(動作)
以下、
図7を参照して、実施形態の設置支援方法の一例を説明する。
ステップS1では、カメラ設置位置を設計するのに先だって、監視空間31に存在する構造物、地面、物体などの構造物情報21を取得または生成して、設置支援装置10の記憶部11に設定登録する。
ステップS2において、プランニング実施者が入力装置13を用いて監視対象物30の監視対象面32を選択すると、選択受付部22は、監視対象面32の選択を受け付ける。
【0040】
ステップS3において基準直線設定部23は、監視対象面32を監視する方向を示す基準直線33を設定する。
ステップS4において基準直線設定部23は、監視対象面32を撮影する方向が、基準直線33からどれくらいずれてよいかを定める許容角度θを設定する。
ステップS5において設置候補空間算出部24は、監視点37を一端とし基準直線33と許容角度θをなす半直線の軌跡により囲まれる空間のうち基準直線33が含まれる錐状空間34を算出する。
【0041】
ステップS6において設置候補空間算出部24は、算出した錐状空間34から、構造物情報21に含まれる構造物が占有する空間と、構造物の陰になる空間を除いた空間を、設置候補空間として算出する。
ステップS7において取付候補領域算出部25は、監視対象物30の周囲の構造物の表面のうち、設置候補空間と接する領域をカメラの取付候補領域として算出する。
その後に処理は終了する。
【0042】
(第1実施形態の効果)
(1)選択受付部22は、監視対象物30の3次元モデルを形成する複数の面のうち監視対象とする監視対象面の選択を受け付ける。基準直線設定部23は、選択された監視対象面上の監視点から監視対象面に設定された推奨監視方向に伸びる基準直線を設定する。設置候補空間算出部24は、監視点を一端とし基準直線と許容角度以下の鋭角をなす半直線の軌跡によって形成される錐状空間(鋭角に設定された許容角度を用い、監視点を一端とし基準直線と許容角度をなす半直線の軌跡により囲まれる空間のうち基準直線が含まれる錘状空間)を、監視対象面を撮影するカメラの設置候補空間として算出する。
このように、監視対象面を監視する方向を示す基準直線に基づいて設置候補空間を算出するため、監視対象面を適切な角度で撮影するのに適したカメラの設置候補空間を求めることができる。
【0043】
(2)設置候補空間算出部24は、監視対象物の周囲の構造物の位置と形状とを表す構造物情報21と錐状空間とを用いて設置候補空間を算出してよい。これにより、監視対象物の周囲の構造物により占有される空間を、設置候補空間から除外することができる。
【0044】
(3)取付候補領域算出部25は、監視対象物の周囲の構造物の位置と形状とを表す構造物情報21と設置候補空間とを用いてカメラの取付候補領域を算出してよい。これにより、監視対象物の周囲の構造物へカメラを取り付ける取付候補領域を算出することができる。
【0045】
(4)基準直線設定部23は、推奨監視方向として監視対象面の法線を使用してよい。これにより、監視対象面を見易い方向にカメラを設置できるように設置候補空間や取付候補領域を算出できる。
(5)基準直線設定部23は、推奨監視方向及び許容角度の少なくとも一方を、監視対象面の材質及び監視空間内の光源位置のうち少なくとも一方によって規定してよい。これにより、監視対象面での光の反射により監視対象面が見づらくならないように設置候補空間や取付候補領域を算出できる。
【0046】
(第2実施形態)
第1実施形態では、選択受付部22は、単一の監視対象面32の選択を受け付けた。第2実施形態及び第3実施形態では、選択受付部22は、複数の監視対象面32の選択を受け付ける。
図8を参照する。選択受付部22が、複数の監視対象面32a及び32bの選択を受け付けた場合を想定する。ただし、選択する監視対象面の数は2個に限定されず、3個以上の監視対象面を選択してもよい。
【0047】
第2実施形態において、基準直線設定部23は、複数の監視対象面32a及び32bのそれぞれについて基準直線33a及び33bを算出し、設置候補空間算出部24は、基準直線33a及び33bのそれぞれについて錐状空間34a及び34bを算出する。推奨監視方向及び許容角度θの設定方法、基準直線及び錐状空間の算出方法は、第1実施形態と同様であってよい。基準直線33a及び33bの推奨監視方向及び許容角度θは、監視対象面毎にそれぞれ異なっていてもよい。
【0048】
設置候補空間算出部24は、錐状空間34a及び34bが重複する重複空間70に基づいてカメラの設置候補空間を求める。具体的には、重複空間70のうち、構造物情報21に含まれる構造物が占有する空間と重複していない部分空間を設置候補空間とする。この際、錐状空間34a及び34bをスポットライト光源によって生成された空間とみなして、構造物の陰になる空間は設置候補空間から除外する。すなわち、監視点37aから見て構造物の死角になる空間と、監視点37bから見て構造物の死角になる空間を設置候補空間から除外する。
【0049】
(第3実施形態)
図9の(a)~
図9の(c)を参照する。第3実施形態において、基準直線設定部23は、複数の監視対象面32a及び32bのそれぞれについて基準直線33a及び33bを算出する際に使用する推奨監視方向を共用する。
また、設置候補空間算出部24は、錐状空間34a及び34bの算出に使用する許容角度θを共用する。
【0050】
例えば
図9の(b)に示すように、基準直線設定部23は、監視対象面32a及び32bのそれぞれについて設定された推奨監視方向71a及び71bを統合した統合推奨監視方向72を算出する。個々の推奨監視方向71a及び71bの設定方法は、第1実施形態の推奨監視方向の設定方法と同様であってよい。
例えば、基準直線設定部23は、選択された全ての監視対象面32a及び32の面積に応じて推奨監視方向71a及び71bに重み付けを行って重み付け平均ベクトルを算出し、統合推奨監視方向72として設定してよい。選択された全ての監視対象面32a及び32のうち最大面積を有する監視対象面に設定された推奨監視方向を、統合推奨監視方向72として設定してもよい。
【0051】
また、例えば設置候補空間算出部24は、監視対象面32a及び32bのそれぞれについて設定された許容角度を統合した統合許容角度を算出する。監視対象面32a及び32bについて個々の許容角度を設定する方法は、第1実施形態の許容角度の設定方法と同様であってよい。
例えば、設置候補空間算出部24は、選択された全ての監視対象面32a及び32bの面積に応じて許容角度に重み付けを行って重み付け平均を算出し、統合許容角度として設定してよい。選択された全ての監視対象面32a及び32bのうち最大面積を有する監視対象面に設定された許容角度を、統合許容角度として設定してもよい。
【0052】
基準直線設定部23は、監視対象面32a及び32bの監視点37a及び37bのそれぞれから統合推奨監視方向72に伸びる基準直線33a及び33bを算出する。基準直線設定部23は、設置候補空間算出部24は、基準直線33a及び33bのそれぞれについて統合許容角度を用いて錐状空間34a及び34bを算出する。基準直線及び錐状空間の算出方法は、第1実施形態と同様であってよい。
【0053】
設置候補空間算出部24は、錐状空間34a及び34bが重複する重複空間70に基づいてカメラの設置候補空間を求める。カメラの設置候補空間の算出方法は、第2実施形態と同様である。
なお、基準直線設定部23は、監視対象面32a及び32bの監視点37a及び37bを統合した統合監視点を算出し、統合監視点から統合推奨監視方向72に伸びる単一の基準直線を算出してもよい。
【0054】
統合監視点は、監視対象面32a及び32bの面積に応じた監視点37a及び37bの重み付け平均で算出してもよく、最大面積の監視対象面32a及び32bの監視点を統合監視点としてもよい。
設置候補空間算出部24は、単一の基準直線に対して単一の錐状空間を算出し、単一の錐状空間と、構造物情報21に含まれる構造物の位置及び形状とに基づいて、設置候補空間を算出する。この算出方法は、第1実施形態と同様である。
【0055】
(第2実施形態及び第3実施形態の効果)
第2実施形態では、選択受付部22は、複数の監視対象面の選択を受け付ける。設置候補空間算出部24は、複数の監視対象面の前記基準直線についてそれぞれ算出した錐状空間が重複する空間を設置候補空間として算出する。
第3実施形態では、選択受付部22は、複数の監視対象面の選択を受け付ける。設置候補空間算出部24は、複数の監視対象面それぞれに設定された推奨監視方向を統合した統合推奨監視方向を算出し、複数の監視対象面のそれぞれから統合推奨監視方向に伸びる基準直線についてそれぞれ算出した錐状空間が重複する空間を、設置候補空間として設定する。
これにより、凹凸を有する監視対象面を適切な角度で撮影するのに適したカメラの設置候補空間を求めることができる。
【符号の説明】
【0056】
10…設置支援装置、11…記憶部、12…制御部、13…入力装置、14…出力装置、20…設置支援プログラム、21…構造物情報、22…選択受付部、23…基準直線設定部、24…設置候補空間算出部、25…取付候補領域算出部、30…監視対象物、31…監視空間、32、32a、32b…監視対象面、33、33a、33b、33c…基準直線、34…錐状空間