(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ネイルチップの製造方法、ネイルチップの生爪上への直接形成方法、およびネイルチップ
(51)【国際特許分類】
A45D 31/00 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
A45D31/00
(21)【出願番号】P 2019085728
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519157130
【氏名又は名称】小河原 愛由美
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】小河原 愛由美
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061221(JP,A)
【文献】特開2010-214088(JP,A)
【文献】特開2016-221239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00 - 29/22
A45D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネイルチップ表面部の形状に対応する凹面形状部を有する殻状のネイルチップ形成用プレートの前記凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するトップコート部形成用ジェルネイル剤を薄肉となるように塗布するトップコート部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、
次いで、前記トップコート部形成用ジェルネイル剤に光硬化性樹脂が硬化する光線を照射してトップコート部を形成し、前記トップコート部の形成前または後に、前記トップコート部形成用ジェルネイル剤にフェース面を有する装飾体を前記フェース面を密着させて配置するトップコート部形成および装飾体配置工程と、
次いで、前記凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤を前記装飾体が埋没する所要の厚肉となるように塗布するベース部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、
次いで、前記ベース部形成用ジェルネイル剤に光硬化性樹脂が硬化する光線を照射するベース部形成工程と、
次いで、前記ネイルチップ形成用プレートを剥離するネイルチップ形成用プレート剥離工程と、
を含むことを特徴とするネイルチップの製造方法。
【請求項2】
ネイルチップ表面部の形状に対応する凹面形状部を有する透明な殻状のネイルチップ形成用プレートの前記凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するトップコート部形成用ジェルネイル剤を薄肉となるように塗布するトップコート部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、
次いで、前記トップコート部形成用ジェルネイル剤に光硬化性樹脂が硬化する光線を照射してトップコート部を形成し、前記トップコート部の形成前または後に、前記トップコート部形成用ジェルネイル剤にフェース面を有する装飾体を前記フェース面を密着させて配置するトップコート部形成および装飾体配置工程と、
次いで、前記凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤を前記装飾体が埋没する所要の厚肉となるように塗布するベース部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、
次いで、ネイルチップを被着する指の生爪上に、前記ベース部形成用ジェルネイル剤が密着するように前記ネイルチップ形成用プレートを重ねる被着工程と、
次いで、前記ネイルチップ形成用プレートを通して光硬化性樹脂が硬化する光線を照射するベース部形成工程と、
次いで、前記ネイルチップ形成用プレートを前記トップコート部を界面より剥離するネイルチップ形成用プレート剥離工程と、
を含むことを特徴とするネイルチップの生爪上への直接形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルチップの製造方法、ネイルチップの生爪上への直接形成方法、およびネイルチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、以下に説明するようなネイルチップ製造方法およびネイルチップの生爪上への直接形成方法がある。
【0003】
従来方法1:ネイルチップ製造方法である。
このネイルチップ製造方法は、チップ表面部にフェース面が例えばハート形の微小チップである装飾体を盛りつけたネイルチップを製造する方法であり、ネイルチップ形成用型台を用いてネイルチップ本体を形成し、次いで、装飾体を盛りつける。詳述すると、このネイルチップ製造方法は、ネイルチップ形成用型台のネイルチップに対応する形状の被塗り面部に光硬化性樹脂を含有するジェルネイル剤を所定の厚さとなるように塗布し紫外線を照射して硬化しネイルチップ本体を形成し、ネイルチップ本体に密着剤としてジェルネイル剤を薄く塗った上に装飾体を盛りつけ紫外線を照射して装飾体を仮固着させ、さらに、ジェルネイル剤を装飾体の上面、周囲に塗りつけ紫外線を照射して装飾体を本固着させ、上記のネイルチップ形成用型台からジェルネイル剤硬化部分を剥離することで装飾体を盛りつけたネイルチップを製造する。
【0004】
従来方法2:ネイルチップ製造方法である。
このネイルチップ製造方法は、市販の五指分のPP製、PE製またはアクリル製のネイルチップ素材を多岐状に有する成形品を用い、フェース面が例えばハート形の微小チップである装飾体を盛りつけたネイルチップを製造する方法である。このネイルチップ製造方法は、従来方法1と同じネイルチップ形成用型台上に、成形品より分離したネイルチップ素材を弱接着しネイルチップ本体とし、このネイルチップ本体の上面に有色の化粧用ジェルネイル剤を薄く塗布し、装飾体を盛りつけ紫外線を照射して装飾体を仮固着させ、さらに、ジェルネイル剤を装飾体の上面、周囲に塗りつけ紫外線を照射して装飾体を本固着させ、上記のネイルチップ形成用型台からネイルチップ本体を剥離することで装飾体を盛りつけたネイルチップを製造する。
【0005】
従来方法1、2により製造した装飾体を盛りつけたネイルチップを生爪の上に取り付ける(形成する)には、ネイルチップ用両面接着シートを用いるか、またはジェルネイル剤を生爪に塗ってからネイルチップを載せて紫外線を照射して固着させる。
【0006】
従来方法3:ネイルチップの生爪上への直接形成方法である。
このネイルチップの生爪上への直接形成方法は、生爪の上に、光硬化性樹脂を含有するジェルネイル剤を塗布し硬化してネイルチップ本体を形成し、その上に例えばハート形の微小チップである装飾体を盛りつけたネイルチップを直接形成する方法である。詳述すると、このネイルチップの生爪上への直接形成方法は、生爪の先に生爪を延長するようにネイルチップ先端部に対応する形状の補助ピースを段差無く一平面となるように取り付け、生爪の上面および補助ピースの上面に、光硬化性樹脂を含有するジェルネイル剤を所定の厚さとなるように塗布し紫外線を照射して硬化してネイルチップ本体を形成し、次いで、その上に、密着剤としてジェルネイル剤を薄く塗った上に装飾体を盛りつけ紫外線を照射して装飾体を仮固着させ、次いで、ジェルネイル剤を装飾体の上面、周囲に塗りつけ紫外線を照射して装飾体を本固着させ、次いで、ネイルチップ本体と生爪との固着を破壊しないように補助ピースを取り外すことにより装飾体を盛りつけたネイルチップを完成し、もって生爪の上にネイルチップを直接形成する。
【0007】
従来方法4:ネイルチップの生爪上への直接形成方法である。
このネイルチップの生爪上への直接形成方法は、生爪の上に、装飾体としてダイヤモンドを盛りつけたネイルチップを直接形成する方法である。このネイルチップの生爪上への直接形成方法は、生爪の先に生爪を延長するようにネイルチップ先端部に対応する形状の補助ピースを段差無く一平面となるように取り付け、生爪の上面および補助ピースの上面に、光硬化性樹脂を含有するジェルネイル剤を塗布し紫外線を照射して硬化することを繰り返すことにより、ディッピングのようにして塗り重ねてダイヤモンドのパビリオンの深さ+例えば1mmの厚みとしたネイルチップ本体を形成し、次いで、ネイルチップ本体の上面の所望位置にエンドミルで穴加工して短円柱状穴を形成し、この短円柱状穴にジェルネイル剤を若干注入してからダイヤモンドのパビリオンを着座させ、ダイヤモンドのクラウンの高さに一致するまでダイヤモンドの周囲に光硬化性樹脂を含有するジェルネイル剤を塗布し、紫外線を照射して硬化させて装飾体を本固着させ、さらにダイヤモンドのテーブルも含めてダイヤモンドの周辺が滑らかとなるように極薄にジェルネイル剤を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、次いで、ネイルチップ本体と生爪との固着を破壊しないように補助ピースを獲り外すことによりダイヤモンドを盛りつけたネイルチップを完成し、もって生爪の上にダイヤモンドを盛りつけたネイルチップを直接形成する構成である。
【0008】
従来方法5:ネイルチップの生爪上への直接形成方法である。
このネイルチップの生爪上への直接形成方法は、生爪の上にダイヤモンドを盛りつけたネイルチップを直接形成する方法であり、従来方法4のエンドミルに替えて特殊ドリルを用いてネイルチップ本体に円錐状凹部を座ぐり加工して形成し、この円錐状凹部にジェルネイル剤を若干注入してからダイヤモンドのパビリオンを着座させるもので、そのほかは、上記のダイヤモンドを盛りつけたネイルチップを生爪上に直接形成する従来の方法と同一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来方法1、2のネイルチップ製造方法および従来方法3のネイルチップの生爪上への直接形成方法は、装飾体がネイルチップ本体上に盛りつけられていて、装飾体を含むネイルチップの上面が滑らかな流線面ではないので、付け爪としたときに上面を触るとゴツゴツしていて違和感があり、装飾体の周囲に汚れが集積し、取り除くことが難しい。さらに、従来方法1-3の方法は、ネイルチップ本体上にダイヤモンドのパビリオンを正確に安定して着座させることはできないので、装飾体としてダイヤモンドのような形状のものを対象とすることはできない。
【0011】
従来方法3-5のネイルチップの生爪上への直接形成方法は、生爪の先に生爪を延長するようにネイルチップ先端部に対応する形状の補助ピースを段差無く一平面となるように取り付ける必要があり、熟練と手間を要する。また、従来方法3-5のネイルチップの生爪上への直接形成方法は、ディッピングのようにして塗り重ねてダイヤモンドのパビリオンの深さ+例えば1mmの厚みとしたネイルチップ本体を形成することについても、熟練と手間を要する。さらに、ダイヤモンドのパビリオンを着座させた後に、ダイヤモンドのクラウンの高さに一致するまでダイヤモンドの周囲に光硬化性樹脂を含有するジェルネイル剤を塗布し、紫外線を照射して硬化させて装飾体を本固着させることについても、熟練と手間を要する。
【0012】
また、従来方法4のネイルチップの生爪上への直接形成方法は、ネイルチップ本体の上面よりエンドミルで穴加工して短円柱状穴を形成し、また従来方法5のネイルチップの生爪上への直接形成方法は、ネイルチップ本体の上面より特殊ドリルで座ぐり加工して円錐状凹部を形成するものであり、短円柱状穴または円錐状凹部の深さを少しでも大きくしてしまうと、生爪まで彫り込んでしまう恐れがある。
【0013】
さらに、従来方法4、5のネイルチップの生爪上への直接形成方法は、短円柱状穴または円錐状凹部の正面形状が円形であるので、ダイヤモンドのクラウンの正面形状を決定している、オーバルカット、スクエアカット、マーキーズカット、ペアーカット、ハートカット、セミナビッツ・カット、ハーフムーンカット、テーパーバケットカットなどの正面形状が非円形である各種カット形状のダイヤモンドや貴石をネイルチップ本体上に盛りつけることができない。
【0014】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、トップコート部を形成してからベース部を形成することができ、装飾体をベース部で埋めた状態にかつフェース面を正確な方向に向くように配置することができ、熟練を要さず、手間が簡単でネイルチップが得られる、ネイルチップの製造方法、ネイルチップの生爪上への直接形成方法、およびネイルチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るネイルチップの製造方法は、上記目的を達成するため、ネイルチップ表面部の形状に対応する凹面形状部を有する殻状のネイルチップ形成用プレートの前記凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するトップコート部形成用ジェルネイル剤を薄肉となるように塗布するトップコート部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、次いで、前記トップコート部形成用ジェルネイル剤に光硬化性樹脂が硬化する光線を照射してトップコート部を形成し、前記トップコート部の形成前または後に、前記トップコート部形成用ジェルネイル剤にフェース面を有する装飾体を前記フェース面を密着させて配置するトップコート部形成および装飾体配置工程と、次いで、前記凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤を前記装飾体が埋没する所要の厚肉となるように塗布するベース部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、次いで、前記ベース部形成用ジェルネイル剤に光硬化性樹脂が硬化する光線を照射するベース部形成工程と、次いで、前記ネイルチップ形成用プレートを剥離するネイルチップ形成用プレート剥離工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るネイルチップの生爪上への直接形成方法は、上記目的を達成するため、ネイルチップ表面部の形状に対応する凹面形状部を有する透明な殻状のネイルチップ形成用プレートの前記凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するトップコート部形成用ジェルネイル剤を薄肉となるように塗布するトップコート部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、次いで、前記トップコート部形成用ジェルネイル剤に光硬化性樹脂が硬化する光線を照射してトップコート部を形成し、前記トップコート部の形成前または後に、前記トップコート部形成用ジェルネイル剤にフェース面を有する装飾体を前記フェース面を密着させて配置するトップコート部形成および装飾体配置工程と、次いで、前記凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤を前記装飾体が埋没する所要の厚肉となるように塗布するベース部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、次いで、ネイルチップを被着する指の生爪上に、前記ベース部形成用ジェルネイル剤が密着するように前記ネイルチップ形成用プレートを重ねる被着工程と、次いで、前記ネイルチップ形成用プレートを通して光硬化性樹脂が硬化する光線を照射するベース部形成工程と、次いで、前記ネイルチップ形成用プレートを前記トップコート部を界面より剥離するネイルチップ形成用プレート剥離工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係るネイルチップは、上記目的を達成するため、光硬化性樹脂を含有する透明なトップコート部形成用ジェルネイル剤が硬化されてなる薄肉のトップコート部と、光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤が硬化されてなる厚肉のベース部とが一体に積層され、前記ベース部に埋め込まれた1つまたは複数の装飾体を有し、前記装飾体は、観賞面となるフェース面が前記トップコート部に接着されている、ことを特徴とする。
【0018】
本発明に係るネイルチップは、前記装飾体は、前記フェース面がベース部のトップコート部との界面に一致してベース部に埋没していて、トップコート部は、前記フェース面に対応するオーバーラップ部分も含めて滑らかな一表面を構成していることが好ましい。なお、「ネイルチップ」とは、爪に接着剤等で貼り付ける、プラスチックで作られた「付け爪」のことを指す。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、トップコート部を形成してからベース部を形成することができ、装飾体をベース部で埋めた状態にかつフェース面を正確な方向に向くように配置することができ、熟練を要さず、手間が簡単でネイルチップが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるネイルチップを生爪上に取り付けた状態を示す平面図である。
【
図4】本発明のネイルチップの実施の形態の一例にかかる要部拡大断面図である。
【
図5】本発明のネイルチップに近似するが、本発明に該当しないネイルチップの要部拡大断面図である。
【
図6】本発明のネイルチップの実施の形態の他の一例にかかる要部拡大断面図である。
【
図7】
図7(a)-(f)は、本発明の実施の形態のネイルチップの製造方法に係り、
図1-4に示すネイルチップを製造する方法を示す工程図である。
【
図8】
図8(a)-(g)は、本発明の実施の形態のネイルチップの生爪上への直接形成方法に係り、
図1-4に示すネイルチップを生爪上に直接に形成する方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明について、ネイルチップ、ネイルチップの製造方法、およびネイルチップの生爪上への直接形成方法の各実施の形態の順に図面を参照して説明する。
【0022】
[実施の形態1:ネイルチップ]
図1は、本発明の実施の形態にかかるネイルチップを生爪上に取り付けた状態を示す平面図である。
図2は、
図1におけるII-II断面図である。
図3は、
図1におけるIII-III断面図である。
【0023】
図1-3に示すように、この実施の形態のネイルチップ1は、光硬化性樹脂を含有する透明なトップコート部形成用ジェルネイル剤が硬化されてなる薄肉のトップコート部(トップコート層)2と、光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤が硬化されてなる厚肉のベース部3とが一体に積層され、ベース部3に埋め込まれた1つまたは複数の装飾体4を有し、装飾体4は、観賞面となるフェース面4aがトップコート部2に固着されかつフェース面4a以外の外面がベース部3に固着されている。
【0024】
ネイルチップ1は、生爪Fnの生え際から先端まで被覆しさらに先方へ張り出す大きさであり、接着層5を介して生爪Fn上に接着される。ネイルチップ1の先端形状は、半円形状、半円形状よりも先細になる楕円形状、先端が爪先方向に対して直角な直線状で両端隅に丸みがある形状のいずれであっても良い。ネイルチップ1は、生爪Fnより先方へ大きく張り出す大きさに形成され、専用のネイル切断機とニッパとやすりを用いて所望形状に形成できる。ネイルチップ1の幅、長さ、湾曲度合いなどは、人により、五指により様々に大きさや形状が異なる生爪Fnに対応するよう多品種が製造される。
【0025】
この実施の形態のネイルチップ1は、後述するネイルチップの製造方法により製造される。この実施の形態のネイルチップ1が生爪Fn上に接着層5を介して接着される場合とは、(1)生爪Fn上にジェルネイル剤が塗布され、ネイルチップ1が重ねられ、紫外線硬化される場合、(2)ネイルチップ用両面接着シートを生爪Fn上に貼ってネイルチップ1を重ねる場合、(3)後述するネイルチップの生爪上への直接形成方法がある。
【0026】
装飾体4となり得る一層具体的かつ好ましい対象としては、各種形状にカットされたダイヤモンド、ガーネット、サファイア等の宝石や貴石、半貴石が含まれる。
【0027】
装飾体4の平面的な観賞面となるフェース面4aが、トップコート部2とベース部3との積層面(界面)に一致していて、かつ、トップコート部2に固着している。
【0028】
トップコート部2を構成している紫外線硬化されたトップコート部形成用ジェルネイル剤は、装飾体4の平面的な観賞面となるフェース面4aが良好に見えるようにするために透明なジェルネイル剤が選択される。この透明なジェルネイル剤の硬化は、フェース面4aに光沢を与える感じになる。トップコート部2の厚さは、数μmとすることができる。これは、後述する「ネイルチップの製造方法」や「ネイルチップの生爪上への直接形成方法」の説明の中で詳述するが、チップ表面部の形状に対応する凹面形状部を有する殻状のネイルチップ形成用プレートMの凹面形状部に、光硬化性樹脂を含有するトップコート部形成用ジェルネイル剤を例えば筆を用いて2、3回塗りつけることで得られるジェルネイル剤のウエットの厚さが数μmである。なお、トップコート部2の厚さは、数μmないし数百μmとすることができる。
【0029】
ベース部3を構成している光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤は、透明なジェルネイル剤、カラージェルネイル剤、ホログラムラメを含むジェルネイル剤のいずれが選択されても良い。
【0030】
トップコート部形成用ジェルネイル剤およびベース部形成用ジェルネイル剤は、光硬化性樹脂、特に紫外線硬化性樹脂が用いられる。例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フエニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド等の単官能モノマー;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能以上のモノマー;ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。
【0031】
トップコート部形成用ジェルネイル剤およびベース部形成用ジェルネイル剤は、ソークオフジェルネイル剤(ソフトジェル)、セミハードジェル、ハードジェル、アクリルジェル等のいずれであっても良い。しかし、トップコート部形成用ジェルネイル剤はハードジェルであることが好ましく、ベース部形成用ジェルネイル剤はソークオフジェルであることが好ましい。
【0032】
図4に示すように、装飾体4が例えばラウンドカットのダイヤモンドである場合、最大径より表側が概略円錐台形のクラウン、裏側が概略円錐形のパビリオンであり、クラウンを正面から見ると、中央部がテーブルで周囲の円錐面がブリリアンカットされ、パビリオンもブリリアンカットされている形態である。このように、装飾体4がラウンドカットのダイヤモンドである場合も、クラウンの中央部のテーブルがフェース面4aであり、このテーブルがトップコート部2の内面に固着されている。しかし、ラウンドカットのダイヤモンドは、トップコート部2を装飾体周囲よりも隆起する状態でトップコート部2の内面に固着されているのではなく、クラウンの傾斜面部分はベース部3に固着されている。すなわち、ラウンドカットのダイヤモンドは、テーブルがベース部3のトップコート部2との界面に一致してベース部3に埋没していて、トップコート部2は、装飾体4に対応するオーバーラップ部分も含めて滑らかな一表面を構成している。
【0033】
他方、
図5に示すように、テーブルとベース部が同一面内になく、ダイヤモンドのクラウンの高さだけ、テーブルとベース部3のトップコート部2との界面との間に段差があり、この段差をジェルネイル剤をダイヤモンドの周囲に何回も塗布して埋めることで、トップコート部2が、装飾体4に対応するオーバーラップ部分も含めて一表面を構成している形態は、本発明、本実施形態に含まれない。
【0034】
図6に示すように、装飾体4が微細人工造形装飾物であり、フェース面4aに微細な溝が不規則に存在する場合、この微細な溝は紫外線硬化されたトップコート部形成用ジェルネイル剤で埋められ硬化されてトップコート部2の一部となっている。これは、フェース面4aに光硬化性樹脂を含有するトップコート部形成用ジェルネイル剤を筆を用いて塗りつけて、ジェルネイル剤を微細な溝に充填し、その後にフェース面4aを先に塗布形成したトップコート部形成用ジェルネイル剤に密着させ、その後に紫外線硬化させることで実現できる。したがって、溝に空気溜りが生ずることがないので、フェース面4aの溝の底までクリアに見えるようになる。なお、ベース部3をハードジェルネイル剤を硬化して構成し、ベース部3のトップコート部2と反対面にソークオフジェルネイル剤を薄肉に塗布して硬化して生爪Fn接触層部を備えても良い。
【0035】
[実施の形態2:ネイルチップの製造方法]
図7は、
図1-4に示すネイルチップ1を製造する方法を示す工程図である。
【0036】
このネイルチップの製造方法は、
図7(a)-(f)に示すように、ネイルチップ形成用プレートMを用い、順に、トップコート部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、装飾体配置工程と、トップコート部形成工程と、ベース部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、ベース部形成工程と、ネイルチップ形成用プレート剥離工程と、を含み、
図1-4に示すネイルチップ1を製造する方法である。
【0037】
このネイルチップの製造方法は、
図7(a)に示すネイルチップ形成用プレート(成形型)Mを用いる。このネイルチップ形成用プレートMは、寸法精度が高い透明体のプラスチック成形体を用いる。このネイルチップ形成用プレートMは凹面形状部M1を有する殻状である。凹面形状部M1は、
図1-4に示すネイルチップ1のトップコート部2の表面形状に対応する凹面形状を有する。凹面形状部M1は凹凸が無い表面粗さが極めて小さい滑らかな、離型剤が塗布されるのが良い。
【0038】
図7(b)に示すように、トップコート部形成用ジェルネイル剤塗布工程は、透明な殻状のネイルチップ形成用プレートMの凹面形状部M1に、透明度の高い光硬化性樹脂を含有するトップコート部形成用ジェルネイル剤2aを薄肉となるように塗布する工程である。トップコート部形成用ジェルネイル剤2aは、通常は紫外線硬化性樹脂を含有するジェルネイル剤が用いられる。この塗布工程では、平筆でジェルネイル剤を取り、平筆を凹面形状部M1に複数回なぞってジェルネイル剤を塗布し例えば数μm-数十μmの均一な薄膜を形成する。
【0039】
図7(c)に示すように、トップコート部形成および装飾体配置工程は、トップコート部形成用ジェルネイル剤2aに殻状のネイルチップ形成用プレートMを通して光硬化性樹脂が硬化する光線Rを照射し、さらに装飾体配置位置にトップコート部形成用ジェルネイル剤2aを部分的に塗布してフェース面4aが密着するようにフェース面4aを有する1つまたは複数の装飾体4を所望に配置しトップコート部2とフェース面4aとが固着する工程である。光線Rの照射は、ネイルチップ形成用プレートMの凹面形状部M1に塗布されたトップコート部形成用ジェルネイル剤2aに対して、両側から、またはいずれか一方の側から行う。この工程は、装飾体4の配置を光硬化性樹脂を硬化させる光線Rの照射より先に行っても良い。装飾体4がダイヤモンドの場合、テーブルがフェース面4aである(
図4参照)。装飾体4はピンセットで把持して配置され、フェース面4aがジェルネイル剤2aに密着される。装飾体4は1つないし複数個が配置される。前工程のジェルネイル剤の塗布膜が薄すぎると、フェース面4aのジェルネイル剤2aへの密着が良好に得られないので、前工程で凹面形状部M1にジェルネイル剤への塗布量を適切に決める。
【0040】
図7(d)に示すように、ベース部形成用ジェルネイル剤塗布工程は、ネイルチップ形成用プレートMの凹面形状部M1に、光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤3aを、トップコート部2上に積層するように、かつ、装飾体4が埋没する所要の厚肉となるように塗布する工程である。ジェルネイル剤が硬化した場合、生爪に密着するように凹面3bとして形成される。ジェルネイル剤3aの装飾体4が埋没する位置の塗膜の厚みは、装飾体4がダイヤモンドである場合には、塗布膜表面がパビリオンの頂点から例えば0.5mm以上離れるようにする。これは、ネイルチップを生爪に取り付けた状態で、ダイヤモンドのフェース面に押圧力が加わったときに、パビリオンの頂点が生爪に食い込むことを防ぐように押圧力を周囲に分散させるためである。装飾体4がダイヤモンドのパビリオンのような形状を有していなければ、塗膜の厚みをより小さくすることができる。なお、パビリオンの頂点に円形プレートを設けても良い。
【0041】
図7(e)に示すように、ベース部形成工程は、ベース部形成用ジェルネイル剤に光硬化性樹脂が硬化する光線Rを照射する工程である。したがって、ベース部形成用ジェルネイル剤を硬化してなるベース部3をトップコート部2に積層した状態に形成する工程である。なお、光線Rの照射はどちらの側から行っても良い。
【0042】
図7(f)に示すように、ネイルチップ形成用プレート剥離工程は、トップコート部2とネイルチップ形成用プレートMの凹面形状部M1とを界面より剥離する。以上により、
図1-4に示すネイルチップ1を製造することができる。
【0043】
[実施の形態3:ネイルチップの生爪上への直接形成方法]
図8は、
図1-4に示すネイルチップ1を生爪上に直接に形成する方法を示す工程図である。
【0044】
このネイルチップの生爪上への直接形成方法は、
図8(a)-(g)に示すように、ネイルチップ形成用プレートMを用い、順に、トップコート部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、装飾体配置工程と、トップコート部形成工程と、ベース部形成用ジェルネイル剤塗布工程と、被着工程と、ベース部形成工程と、ネイルチップ形成用プレート剥離工程と、を含み、
図1-4に示すネイルチップ1を生爪Fn上に直接に形成する方法である。
【0045】
このネイルチップの生爪上への直接形成方法は、
図8(a)に示すネイルチップ形成用プレート(成形型)Mを用いる。このネイルチップ形成用プレートMは、寸法精度が高い透明体のプラスチック成形体を用いる。このネイルチップ形成用プレートMは凹面形状部M1を有する殻状である。
【0046】
図8(b)に示すように、トップコート部形成用ジェルネイル剤塗布工程は、透明な殻状のネイルチップ形成用プレートMの凹面形状部M1に、透明度の高い光硬化性樹脂を含有するトップコート部形成用ジェルネイル剤2aを薄肉となるように塗布する工程である。
【0047】
図8(c)に示すように、トップコート部形成および装飾体配置工程は、トップコート部形成用ジェルネイル剤2aに殻状のネイルチップ形成用プレートMを通して光硬化性樹脂が硬化する光線Rを照射し、さらに装飾体配置位置にトップコート部形成用ジェルネイル剤2aを部分的に塗布してフェース面4aが密着するようにフェース面4aを有する1つまたは複数の装飾体4を所望に配置しトップコート部2とフェース面4aとが固着する工程である。この工程は、装飾体4の配置を光硬化性樹脂が硬化する光線Rの照射より先に行っても良い。したがって、光線の照射により、トップコート部形成用ジェルネイル剤を硬化してなるトップコート部2を形成しかつトップコート部2とフェース面4aとを固着する工程である。なお、光線Rの照射はどちらの側から行っても良い。
【0048】
図8(d)に示すように、ベース部形成用ジェルネイル剤塗布工程は、ネイルチップ形成用プレートMの凹面形状部M1に、光硬化性樹脂を含有するベース部形成用ジェルネイル剤3aを装飾体4が埋没する所要の厚肉となるように塗布する工程である。ベース部形成用ジェルネイル剤3aの表面は、生爪Fnの表面形状に一致させる。これは、平筆でジェルネイル剤3aを塗布する回数を部分的に変えることで対応できる。
【0049】
図8(e)に示すように、被着工程は、ネイルチップを被着する指の生爪Fn上に、ベース部形成用ジェルネイル剤3aが密着するようにネイルチップ形成用プレートMを重ねる工程である。
【0050】
図8(f)に示すように、ベース部形成工程は、ネイルチップ形成用プレートMを通して光硬化性樹脂が硬化する光線Rを照射する工程である。したがって、
図8(d)に示すベース部形成用ジェルネイル剤3aが、光線Rの照射により硬化し、生爪Fn上に固着したベース部3となる工程である。
【0051】
図8(g)に示すように、ネイルチップ形成用プレート剥離工程は、ネイルチップ形成用プレートMのトップコート部2を界面より剥離する工程である。
【0052】
なお、ベース部形成用ジェルネイル剤3aを硬化させてから、ネイルチップ用両面接着シートを貼着するか、またはジェルネイル剤を生爪に塗った生爪Fn上に重ねて固着し、ネイルチップ形成用プレートMを剥離しても良い。
【0053】
以上説明した実施の形態2のネイルチップの製造方法および実施の形態3のネイルチップの生爪上への直接形成方法によれば、以下のような効果が得られる。
(1)トップコート部2を形成してからベース部3を形成することができ、装飾体4をベース部3で埋めた状態にかつ装飾体4のフェース面4aをトップコート部2の内面(塗布表面)に一致させることができる。したがって、装飾体4のフェース面4aを正確な方向に向くように配置することが容易にできて、しかもベース部3の厚みをどの程度にすればよいか装飾体4の厚みに応じてベース部3を塗布する際に決定することができるから、ネイルチップの製造・生爪上への直接形成に際し熟練を要さず、手間が簡単になる。
(2)トップコート部2を均一で薄膜な形状に形成することができ、かつ表面が滑らかに得られ、装飾体4のフェース面4aを均一で薄膜のトップコート部2の内面に固着できるので、フェース面4aが傷つかずクリアに見え、トップコート部2を設けない場合に比べてフェース面4aが光沢がありきれいに見える。
(3)装飾体4が均一で薄膜のトップコート部2の内面に固着でき、トップコート部2の装飾体4の周囲がフェース面4aより引っ込んでいる、すなわち、フェース面4aが周囲より盛り上がっていないので、装飾体4を触ってもゴツゴツとした違和感がなく、生爪上の付け爪としたときに、装飾体の周囲に汚れが集積しない。
(4)装飾体4がダイヤモンドのパビリオンのようにフェース面4aと反対側部分の形状が安定して着座できない突起形状を有する場合であっても、従来のように、生爪上にネイルチップを重ね、ネイルチップにエンドミルによる穴加工や特殊ドリルによる座ぐり加工を行うという必要はないから、過誤で生爪に彫り込んでしまうという恐れがない。
【0054】
なお、もしも、トップコート部2を設けない場合には装飾体4の位置決めができないとともに、フェース面4aを正確な方向に向くように配置することができない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、トップコート部を形成してからベース部を形成することができ、装飾体をベース部で埋めた状態にかつフェース面を正確な方向に向くように配置できるという効果を奏するものであり、ネイルチップの製造方法、ネイルチップの生爪上への直接形成方法、およびネイルチップに有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 ネイルチップ
2 トップコート部
2a トップコート部形成用ジェルネイル剤
3 ベース部
3a ベース部形成用ジェルネイル剤
4 装飾体
4a フェース面
Fn 生爪
M ネイルチップ形成用プレート
M1 凹面形状部
R 光線