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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20230525BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20230525BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20230525BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
A61F13/15 143
A61F13/533
A61F13/536
A61F13/53 300
A61F13/533 100
A61F13/536 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019095846
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020188933
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 良輔
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166940(JP,A)
【文献】特開2005-102900(JP,A)
【文献】特開2016-10448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、裏面シートと、吸収性コアを有し該表面シート及び該裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、前後着用者の前後方向に対応する縦方向及び前記縦方向に直交する横方向を有し、かつ、前記縦方向に沿って、前方領域と、中央領域と、後方領域と、に区分された吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記吸収体に香料が配置された香料配置領域を有し、
前記吸収体は厚み方向に圧縮された圧搾領域を有し、
前記圧搾領域は、
前記前方領域内に位置する前記吸収体の前端部に形成され、前記吸収性コアの前記前端縁まで延びる前方圧搾領域と、前記後方領域内に位置する前記吸収体の後端部に形成され、前記吸収性コアの前記後端縁まで延びる後方圧搾領域と、の少なくとも一方からなり、
前記香料配置領域と前記圧搾領域とは、前記厚み方向から見た平面視において、少なくとも一部が重なって配置され
前記圧搾領域は、前記縦方向に延び互いに離間して配置された線状の複数の圧搾溝を含み、
前記隣り合う圧搾溝間の前記横方向に沿った間隔は、0.5mm以上3.0mm以下である
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体の前記圧搾領域の周囲に位置する圧搾周囲領域では、前記圧搾領域の前記厚み方向における深さに対する、前記厚み方向に20g/cmの圧力を付加した場合の厚みの減少量の割合が50%以下となる
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記圧搾領域は、前記吸収体の前記横方向中央部に配置される
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品は、前記表面シート及び前記吸収体が前記厚み方向に一体に圧縮され前記縦方向に延びる防漏溝をさらに備え、
前記防漏溝は、前端部及び後端部において、前記圧搾領域と前記縦方向に離間している
請求項1乃至のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、肌対向面において前記表面シートと接着剤により接着されており、
前記吸収体に配置された前記香料配置領域と前記表面シートとの間には、前記接着剤が存在しない間隙が存在する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香料が配置された吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、肌面シートと吸収体の間に位置する香料配置領域を有する吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-10448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように香料が配置されていた場合でも、厚み方向に圧力が付加される吸収性物品の着用中には香料が放出されにくく、香料によって排泄物由来の匂いを十分にマスキングできないことがある。
【0005】
本発明の課題は、着用中における排泄物の匂いによる不快感を軽減できる吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、液透過性の表面シートと、裏面シートと、吸収性コアを有し該表面シート及び該裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及び前記縦方向に直交する横方向を有する。
前記吸収性物品は、前記吸収体に香料が配置された香料配置領域を有する。
前記吸収体は、前記吸収性コアの前端縁又は後端縁の少なくとも一方まで延び、厚み方向に圧縮された圧搾領域を有する。
前記香料配置領域と前記圧搾領域とは、前記厚み方向から見た平面視において、少なくとも一部が重なって配置される。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の吸収性物品によれば、着用中における排泄物の匂いによる不快感を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品を示す平面図である。
図2図1のII-II線で切断した吸収性物品の断面図である。
図3図1で示した吸収性物品の吸収体の前端部近傍を示す拡大平面図である。
図4】(A)は、図3で示した吸収体の圧搾領域及び圧搾周囲領域を模式的に示す図であって、厚み方向に荷重を付加していない状態を示す拡大断面図である。(B)は、上記吸収体の圧搾領域及び圧搾周囲領域を模式的に示す図であって、厚み方向に20g/cmの圧力を付加した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
[ナプキンの全体構成]
図1に示す吸収性物品1は、本体Mと、一対のウイング部Wと、防漏溝9と、を備える。吸収性物品1は、生理用ナプキンとして構成され、以下、ナプキン1と称する。
ナプキン1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、ナプキン1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。なお、本明細書では、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上又は肌側、着衣に近い側を下又は非肌側という事がある。
また、ナプキン1は、縦方向Xに沿って、着用者の排泄部(膣口)と対向する領域を含む中央領域Cと、その前後に位置する前方領域F及び後方領域Rとを備えている。本実施形態のように、ウイングWを備えるナプキンにおいては、ウイングWの前後付け根で挟まれた領域を中央領域Cとする。また、ウイングWを備えない吸収性物品においては、吸収性物品の全長を3等分して、前方から、前方領域F、中央領域C及び後方領域Rとする。
【0011】
本体Mは、縦方向Xに沿って延び、着用時に着用者の着衣の内面に固定される。本体Mは、後述する吸収体10を有しており、着用者の経血等の液状の排泄物を吸収する機能を有する。
ウイング部Wは、本体Mから横方向Yの外方に大きく突出するように構成される。
なお、ナプキン1は、ウイング部Wを有さなくてもよい。
【0012】
防漏溝9は、本体Mの後述する表面シート12側に形成された線状溝である。防漏溝9の構成については、後述する。
【0013】
図2に示すように、ナプキン1は、吸収体10と、表面シート12と、裏面シート13と、一対のサイドシート14と、を備える。本体Mにおいて、ナプキン1は、表面シート12、吸収体10及び裏面シート13が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、接着剤やヒートシール等による接合、及び防漏溝9による圧搾加工等によって、適宜接合されて一体化される。
【0014】
表面シート12は、液透過性のシート材として構成され、吸収体10の厚み方向Z上方に配置される。
表面シート12は、例えば、上方に突出する複数の凸部12aを有する。凸部12aは、内部にも繊維が分布する中実な構成でもよいし、内部に繊維がほとんど存在しない中空な構成でもよい。凸部12aにより、着用時に着用者の肌と表面シート12との接触面積を低減させることができ、通気性を高め、不快感を軽減させることができる。
【0015】
裏面シート13は、吸収体10の厚み方向Z下方に配置される。裏面シート13は、例えば周縁部において、表面シート12及びサイドシート14と接着剤、熱シール等によって接合される。裏面シート13は、接着剤等によって吸収体10に接合されていてもよい。
裏面シート13は、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。当該シート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等を用いることができる。
【0016】
本体M及びウイング部Wの裏面シート13の外面には、図示しないずれ止め材が配置される。ずれ止め材は、ナプキン1を着衣に対して固定させるとともに、後述する外装材16に対してナプキン1を剥離可能に固定する。ずれ止め材は、例えば、裏面シート13に所定のパターンで粘着剤を塗工することにより形成される。ずれ止め材に用いられる粘着剤として、好ましくは、ゴム系、オレフィン系、エチレン酢酸ビニル(EVA)系等のホットメルト粘着剤が用いられる。
【0017】
一対のサイドシート14は、表面シート12の横方向Y周縁に配置され、表面シート12を挟んで横方向Yに相互に対向する。サイドシート14の材料としては、表面シート12よりも親水性が小さいシート材料が好ましく、具体的には、表面シート12よりも親水性の低い不織布、フィルム材料、及び不織布とフィルム材料のラミネート構造のシートが挙げられる。
【0018】
図1に示すように、吸収体10は、前端部10a及び後端部10bを有し、前端部10aから後端部10bに向かって縦方向Xに延びる。前端部10aは前方領域F内に位置し、後端部10bは後方領域R内に位置している。
図2に示すように、吸収体10は、表面シート12と裏面シート13との間に配置される。吸収体10は、液状の排泄物を表面シート12側の肌対向面10cから吸収し、内部で拡散させて当該排泄物を保持する。吸収体10は、肌対向面10cにおいて表面シート12とホットメルト接着剤等の接着剤Sにより接着されている。接着剤Sは、図2に示す例において、肌対向面10cの一部に塗布されている。
吸収体10は、吸収性コア6と、コアラップシート7と、を有する。
【0019】
吸収性コア6は、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維で構成された繊維集合体と、繊維集合体に保持された吸水性ポリマーと、を有している。これにより、吸収性コア6の液保持力を高めることができる。
図1に示すように、吸収性コア6の前端縁6aは、吸収性コア6の縦方向Xの前端部において一方の横方向Y側端縁から他方の横方向Y側端縁に向かって延びる縁をいう。同様に、吸収性コア6の後端縁6bは、吸収性コア6の縦方向Xの後端部において一方の横方向Y側端縁から他方の横方向Y側端縁に向かって延びる縁をいう。これらの縁は、例えば横方向Y中央部において、縦方向X外方に膨出するように湾曲している。
【0020】
コアラップシート7は、吸収性コア6を被覆し、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。コアラップシート7の表面シート12側の面は、吸収体10の肌対向面10cを構成し、裏面シート13側の面は、吸収体10の非肌対向面10dを構成する。コアラップシート7は、上述の接着剤Sによって表面シート12に接着されている。
コアラップシート7の前端縁及び後端縁は、吸収性コア6の前端縁6a及び後端縁6bと厚み方向Zから見た平面視においてほぼ一致しているが、これに限られず、例えば前方又は後方にずれていてもよい。
【0021】
[圧搾領域の概略構成]
図1に示すように、吸収体10は、前端部10a及び後端部10bにそれぞれ形成された前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4を有する。前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4は、本実施形態の圧搾領域を構成し、一括して「圧搾領域2,4」とも称する。
前方圧搾領域2は、吸収体10の前端部10aに形成され吸収性コア6の前端縁6aまで延びる。つまり、前方圧搾領域2は、一端が吸収性コア6の前端縁6aに位置し、他端が前方領域F内に存在している。一方、後方圧搾領域4は、吸収体10の後端部10bに形成され吸収性コア6の後端縁6bまで延びる。つまり、後方圧搾領域4は、一端が吸収性コア6の後端縁6bに位置し、他端が後方領域R内に存在している。ナプキン1では、吸収性コア6とコアラップシート7とが平面視同形であるので、前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4は、それぞれコアラップシート7の前後端縁まで延びている。しかし、コアラップシート7の前後端縁が吸収性コア6の前後端縁6a,6bよりも、それぞれナプキン1の前後端部方向に延びている場合には、前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4は、各々、吸収性コア6の前端縁6a,後端縁6bまで延びていればよく、コアラップシート7の前後端縁まで延びている必要はない。
【0022】
前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4は、それぞれ、縦方向Xに延び互いに離間して配置された複数の圧搾溝3によって構成される。
図2に示すように、圧搾溝3は、吸収性コア6がコアラップシート7で被覆された状態の吸収体10を厚み方向Zに圧縮加工することによって形成される。つまり、圧搾溝3は、吸収体10の吸収性コア6及びコアラップシート7のみが一体に陥凹しており、表面シート12は圧縮されていない。図2に示す例では、圧搾溝3は、肌対向面10cからZ軸方向下方に向かって圧縮されているとともに、非肌対向面10dからもZ軸方向上方に向かっても圧縮されている。
なお、図2では前方圧搾領域2の断面を示しているが、後方圧搾領域4の断面についても同様に構成される。
【0023】
このように、圧搾領域2,4では、表面シート12及び吸収体10、並びに裏面シート13及び吸収体10の間に、吸収体10が厚み方向Zに圧縮されたことに起因する凹状の圧搾溝3が形成される。これにより、ナプキン1では、圧搾溝3を介して吸収体10から発せられた蒸気が放出されるとともに、以下で述べる香料も放出される。
【0024】
[香料配置領域の構成]
図1及び2に示すように、ナプキン1は、吸収体10に香料が配置された香料配置領域Kを有する。香料配置領域Kは、例えば、吸収体10の前端部10aから後端部10bまで縦方向Xに沿って延びるとともに、横方向Yの中央部に配置される。香料配置領域Kは、図1に示す例では、縦方向Xに延びる線状に形成される。
「香料配置領域Kが縦方向Xに沿って延びる」とは、香料が縦方向Xに沿って連続して配置されている態様に限定されず、香料が縦方向Xに沿って間欠的に配置されている態様も含む。
吸収体10の横方向Yの中央部は、吸収体10を横方向Yに5等分した際の横方向Y中央の3つの領域とする。
【0025】
香料は、例えばコアラップシート7に塗布されている。これにより、香料が圧搾領域2,4を通って外部に放出されやすくなる。香料は、図2に示すように、コアラップシート7の肌対向面10cに塗布されていてもよいし、非肌対向面10dに塗布されていてもよい。
【0026】
図2に示すように、吸収体10に配置された香料配置領域Kと表面シート12との間には、接着剤Sが存在しない間隙Gが存在する。これにより、香料が表面シート12と吸収体10との間の間隙Gを介して拡散しやすくなり、後述するように吸収体10に形成された圧搾領域2,4に到達し、外部へ放出されやすくなる。
【0027】
[香料配置領域と圧搾領域との位置関係]
図1に示すように、香料配置領域Kと圧搾領域2,4とは、厚み方向Zから見た平面視において、少なくとも一部が重なって配置される。図1に示す例では、香料配置領域Kの前端部が前方圧搾領域2と平面視において重なり、香料配置領域Kの後端部が後方圧搾領域4と平面視において重なる。
香料配置領域Kは、圧搾領域2,4各々において、少なくとも1本の圧搾溝3の一部と重なっていればよい。つまり、香料配置領域Kは、縦方向Xにおいて、圧搾溝3の少なくとも一部と重なって延びていればよく、横方向Yにおいて、少なくとも1本の圧搾溝の溝幅の少なくとも一部と重なっていればよい。
【0028】
ここで、吸収体10は、着用中に、保持している液状の排泄物が着用者の体温等によって温められることにより蒸発して蒸気を発する。ナプキン1では、この蒸気が表面シート12及び裏面シート13によって完全に閉塞されることなく、凹状の圧搾領域2,4を通って前方又は後方に拡散する。さらに、圧搾領域2,4は、比較的坪量の大きい吸収性コア6の前端縁6a又は後端縁6bの少なくとも一方まで延びている。これにより、蒸気の通路が前端縁6a又は後端縁6bの少なくとも一方において外方に開放され、圧搾領域2,4を拡散してきた蒸気が外方に放出されやすくなる。したがって、通気性が向上して当該排泄物による蒸れが軽減される。
さらに、香料配置領域Kに配置された香料が、吸収体10に保持された排泄物由来の蒸気とともに、圧搾領域2,4を通って前端縁6a又は後端縁6bの少なくとも一方からナプキン1の外部へと放出される。したがって、排泄された排泄物由来の匂いが香料によって十分マスキングされて外部へ放出され、排泄物由来の匂いが認識されにくくなり、着用中の不快感を軽減できる。
【0029】
さらに、圧搾領域2,4は、吸収体10が厚み方向Zに圧縮されて構成されるため、厚み方向Zからの外力によって潰れにくい。これにより、座圧などによって厚み方向Zからの外力を受けやすい着用時においても、圧搾領域2,4による通気性が確保され易い。以下、この効果をより発揮しやすい構成について詳細に説明する。
【0030】
[荷重付加時における圧搾周囲領域の厚みの減少量]
図3に示すように、吸収体10において、圧搾領域2,4の圧搾溝3の周囲に位置する圧搾周囲領域Eを定義する。「圧搾溝3の周囲」は、複数の圧搾溝3が相互に間隔aをあけて配置されている場合、各圧搾溝3の周囲を間隔aに等しい幅a(例えば約1mm)で取り囲むことにより区画された領域とする。
なお、図3では、前方圧搾領域2の圧搾周囲領域Eについて例示しているが、後方圧搾領域4の圧搾周囲領域Eも同様に定義される。
圧搾周囲領域Eは、圧搾溝3の周囲に配置された、厚み方向Zからの圧力に対して潰れにくい領域となる。具体的には、圧搾周囲領域Eでは、圧搾領域2,4の厚み方向Zにおける深さbに対する、厚み方向Zに20g/cmの圧力を付加した場合の厚みの減少量(c0-c1)の割合((c0-c1)/b)が50%以下となる。
【0031】
図4(A)に模式的に示すように、圧搾領域2,4の深さbは、荷重を付加していない状態における、圧搾周囲領域Eの表面から圧搾領域2,4の底部までのZ軸方向に沿った深さである。圧搾領域2,4が肌対向面10c及び非肌対向面10dの双方から形成されている場合の深さbは、圧搾周囲領域Eの肌対向面10cから圧搾領域2,4の肌対向面10c側の底部までのZ軸方向に沿った深さb1と、圧搾周囲領域Eの非肌対向面10dから圧搾領域2,4の非肌側面側の底部までのZ軸方向に沿った深さb2との和の値(b=b1+b2)となる。
【0032】
圧搾周囲領域Eの厚みの減少量は、荷重を付加していない状態における圧搾周囲領域Eの厚みc0(図4(A)参照)と、厚み方向Zに20g/cmの圧力を付加した状態における圧搾周囲領域Eの厚みc1(図4(B)参照)との差分の値(c0-c1)である。
厚み方向Zにおける20g/cmの圧力は、座位において吸収体10に付加される圧力(座圧)に相当するものである。このため、「深さbに対する圧搾周囲領域Eの厚みの減少量の割合((c0-c1)/b)」は、座圧下において、圧搾周囲領域Eが圧縮されることで圧搾溝3が潰れる度合いを示す。
【0033】
ナプキン1では、圧搾加工によって圧搾周囲領域Eの剛性が高まり、座圧相当下においても圧搾周囲領域Eが厚み方向Zに圧縮されにくい。このため、座圧相当下において圧搾周囲領域Eにおける深さbに対する厚みの減少量(c0-c1)の割合((c0-c1)/b)が50%以下となるように圧搾領域2,4を設けることができる。これにより、圧搾領域2,4が座位でも潰れにくく、凹状構造を維持することができる。したがって、着用時において特に蒸れやすい座位下でも通気性を確保できるとともに、排泄物由来の匂いが香料配置領域Kの香料にマスキングされて外部へと放出され、香料由来の香りを感じさせることができる。
【0034】
[圧搾領域の圧搾溝の構成]
図1に示すように、圧搾領域2,4は、互いに離間して配置された複数の圧搾溝3を含む。圧搾溝3は、縦方向Xに延びる線状の溝である。
圧搾溝3における「線状」は、溝の形状が平面視において直線状の態様に限られず、曲線状の態様を含む。「縦方向Xに延びる」とは、縦方向Xに完全に平行な態様に限られず、前方から後方に向かって延びていればよい。また、圧搾溝3における各線は、連続線でも破線でも良い。例えば、圧搾溝3は、不連続な多数の凹部(例えば、点エンボス)が列をなして形成されていてもよい。
【0035】
圧搾溝3が複数存在することで、香料及び蒸気の通路が複数設けられることになる。したがって、香料によって匂いがマスキングされた蒸気がこれらの圧搾溝3から外方へ放出しやすくなり、不快感の軽減効果を高めることができる。
【0036】
各圧搾領域2,4における圧搾溝3のそれぞれの本数は、図示の例に限定されず、好ましくは2本以上、より好ましくは5本以上、そして好ましくは25本以下、より好ましくは20本以下である。これにより、圧搾溝3による通気性向上効果を効果的に発揮できるとともに、前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4の横方向Yにおける長さe(図3参照)を後述する適切な範囲に設計しやすくなる。
また、圧搾溝3は、それぞれ、吸収体10を横方向Yに2等分する中心線を挟んで複数対配置されていてもよい。つまり、圧搾溝3は、左右対称に配置されていてもよい。これにより、圧搾溝3からの香料及び蒸気の放出効果が左右対称に発揮されやすくなる。
【0037】
[圧搾領域の配置]
前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4は、吸収体10の横方向Y中央部に配置され、吸収体10の横方向Yの側端縁よりも横方向Y内側に配置される。
排泄物は、吸収体10の横方向Y中央部に多く保持される。圧搾領域2,4を横方向Y中央部に配置することで、排泄物由来の蒸気が圧搾領域2,4に拡散しやすくなり、当該蒸気と香料がより効果的に外部へと放出される。
【0038】
さらに、圧搾領域2,4は、防漏溝9との関係で、以下のような配置とすることができる。以下、防漏溝9の構成及び配置について説明する。
【0039】
[防漏溝の構成及び配置]
図1に示す防漏溝9は、表面シート12及び吸収体10が厚み方向Zに一体に圧縮され、縦方向Xに延びる溝である。これにより、防漏溝9は、表面シート12及び吸収体10が裏面シート13側に向かって一体的に凹陥した構成を有する。
防漏溝9において「縦方向Xに延びる」とは、縦方向Xに平行な態様に限定されず、前方から後方に向かって延びる態様を広く含むものとする。すなわち、防漏溝9は湾曲していてもよいし、蛇行していてもよい。また、「縦方向Xに溝が延びる」態様は、防漏溝9が途中で途切れることなく連続している状態に限られず、溝の存在しない途切れ部がある態様も含むものとし、防漏溝9全体として実質的に縦方向Xに連続していれば良い。
【0040】
防漏溝9は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。防漏溝9においては、表面シート12及び吸収体10が熱融着等により一体化している。
つまり、防漏溝9は、周囲の領域と比較して圧密化されている。これにより、防漏溝9は、毛細管現象によって圧密化された繊維間に液状の排泄物を引き込み、延在方向である縦方向Xに当該液を拡散させることで、横方向Yの液の漏れを防止する作用を有する。
【0041】
具体的に、防漏溝9は、縦方向Xに延びる線状の防漏縦溝9cと、防漏縦溝9cの前方に位置する前端部9aと、防漏縦溝9cの後方に位置する後端部9bと、を有する。
防漏縦溝9cは、左右に1又は複数対(図1の例では2対)形成される。
前端部9aは、防漏溝9において最も前方に位置する部分であり、図1に示す例では、防漏縦溝9cのうちの少なくとも1対が前方において連結する部分である。
後端部9bは、防漏溝9において最も後方に位置する部分であり、図1に示す例では、防漏縦溝9cのうちの少なくとも1対が後方において連結する部分である。
なお、「連結」の態様としては、左右の防漏溝9が途切れることなく連結している状態に限られず、溝の存在しない途切れ部を挟んで連結する態様を含むものとし、防漏溝9が実質的に連続していれば良い。
【0042】
防漏溝9は、前端部9a及び後端部9bにおいて、圧搾領域2,4と縦方向Xに離間している。つまり、防漏溝9は、厚み方向Zから見た平面視において、圧搾領域2,4と重なっていない。
例えば、防漏溝9の前端部9aは、前方圧搾領域2において最も後方に位置する部分と離間している。同様に、防漏溝9の後端部9bは、後方圧搾領域4において最も前方に位置する部分と離間している。
【0043】
防漏溝9が圧搾領域2,4と離間して配置されることで、防漏溝9に保持されている液が、圧搾領域2,4を伝って吸収性コア6の前端縁6a又は後端縁6bから吸収体10の外部に漏れることを防止することができる。したがって、香料及び蒸気の通路としての作用を有する圧搾領域2,4を有しつつも、防漏溝9の液漏れ防止機能を十分発揮できるナプキン1を提供できる。
【0044】
防漏溝9と圧搾領域2,4との縦方向Xに最も接近する部分の寸法は、好ましくは2mm以上、より好ましくは5mm以上、そして好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下である。これにより、前端縁6a及び後端縁6bからの液漏れをより確実に防止できる。
【0045】
[本実施形態の追加説明]
以下、本実施形態の説明を補足する。
【0046】
(圧搾領域の詳細な構成)
図3を参照し、前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4の横方向Yにおける長さeは、圧搾領域2,4を吸収体10の横方向Y中央部に配置する観点から、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上、そして好ましくは55mm以下、より好ましくは50mm以下である。なお、前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4の横方向Yにおける長さeは、各圧搾領域2,4の最も横方向Y外方に位置する一対の圧搾溝3の外側縁間の距離とする。
【0047】
図4を参照し、圧搾溝3の深さbは、着用時に厚み方向Zからの外力が付加された場合にも溝が完全に潰れず通気溝としての構成を維持しやすくする観点から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、そして好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。
【0048】
図4を参照し、圧搾溝3の溝幅dは、蒸気及び香料を放出しやすくする観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上、そして好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。圧搾溝3の溝幅dは、圧搾溝3の延在方向と直交する方向(例えば横方向Y)における圧搾溝3の寸法であり、圧搾溝3の開口を構成する、隣り合う圧搾周囲領域E間の間隔として測定できる。
【0049】
図3及び4を参照し、隣り合う圧搾溝3の横方向Yに沿った間隔aは、適切な凹状構造を形成し蒸気及び香料を放出しやすくする観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上、そして好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。
【0050】
前方圧搾領域2の圧搾溝3の縦方向Xの長さは、香料を前方に放出させて着用者に香料由来の香りを感じさせやすくする観点から、後方圧搾領域4の圧搾溝3の縦方向Xの長さよりも長くてもよい。
前方圧搾領域2の複数の圧搾溝3の縦方向Xの長さは、同一でもよいし、異なっていてもよい。例えば、前方圧搾領域2において、圧搾溝3は、前端部が吸収性コア6の前端縁6aに沿って配置され、横方向Y中央寄りの圧搾溝3の前端部が横方向Y側部寄りの圧搾溝3の前端部よりも前方に突出していてもよい。前方圧搾領域2において、圧搾溝3の後端部の位置は、横方向Yに沿って揃っていてもよいし、揃っていなくてもよい。具体的に、前方圧搾領域2において最も長い圧搾溝3の縦方向Xの長さは、香料によって排泄物由来の匂いを十分にマスキングし着用者に香料由来の香りを感じさせやすくする観点から、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上、そして好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下である。
【0051】
同様に、後方圧搾領域4の複数の圧搾溝3の縦方向Xの長さは、同一でもよいし、異なっていてもよい。例えば、後方圧搾領域4において、圧搾溝3は、後端部が吸収性コア6の後端縁6bに沿って配置され、横方向Y中央寄りの圧搾溝3の後端部が横方向Y側部寄りの圧搾溝3の後端部よりも後方に突出していてもよい。後方圧搾領域4において、圧搾溝3の前端部の位置は、横方向Yに沿って揃っていてもよいし、揃っていなくてもよい。具体的に、後方圧搾領域4において最も長い圧搾溝3の縦方向Xの長さは、香料によって排泄物由来の匂いを十分にマスキングする観点から、好ましくは2mm以上、より好ましくは5mm以上、そして好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である。
【0052】
(圧搾領域のその他の構成)
前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4は、防漏溝9から離間している態様に限定されず、防漏溝9と連通している部分を有していてもよい。例えば、前方圧搾領域2は、防漏溝9の前端部9aと連通しており、後方圧搾領域4は、防漏溝9の後端部9bと連通していてもよい。
前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4は、それぞれ複数の圧搾溝3で構成される態様に限定されず、それぞれ1つの圧搾溝3で構成されていてもよい。この場合の圧搾周囲領域Eは、圧搾溝3の周囲を上述の幅a(例えば約1mm)で取り囲むことにより区画された領域とする。
また、本発明において、圧搾領域2,4は、前方圧搾領域2と後方圧搾領域4の少なくとも一方を有していればよく、特に前方圧搾領域2を有することで、香料の香りが着用者に感じられやすくなる。
【0053】
(香料配置領域の形成方法)
香料配置領域Kは、好ましくは、香料を含む懸濁液を塗布することにより形成される。塗布方法は、例えば、スプレーによる噴霧法、刷毛塗り法、浸漬法であり、この他、バーコーター、グラビアコーター及び各種ロールコーター等を用いた塗布法でもよい。あるいは、香料配置領域Kは、香料成分をシクロデキストリン等の化合物に包接した紛体や、香料を担持させた多孔性粒体、又は香料を封止したマイクロカプセル等を塗布することにより形成されてもよい。
【0054】
(香料の詳細な説明)
香料配置領域Kに配置される香料としては、大気圧下で香気成分を大気中に揮散し得るものであればよく、常温常圧の環境下でその香気を知覚し得る通常の香料を特に制限なく用いることができ、吸収性物品において従来用いられてきたものを用いることができる。香料としては例えば、沸点が約250℃以下の高揮発性香料成分、又は沸点が約250~約300℃の中揮発性香料成分が好ましく用いられる。
【0055】
香料配置領域Kに配置される香料として用いられる上記高揮発性香料成分としては、例えばアニソール、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、ギ酸ベンジル、酢酸イソボルニル、シトロネラール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、パラシメン、デカナール、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジメチルフェニルカルビノール、ユーカリプトール、1-カルボン、ゲラニアール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ゲラニルニトリル、酢酸ネリル、酢酸ノニル、リナロール、エチルリナロール、酢酸リナリル、フェニルエチルアルコール、α-ピネン、β-ピネン、γ-ピネン、α-ヨノン、β-ヨノン、γ-ヨノン、α-テルピネオール、β-テルピネオール、酢酸テルピニル、テンタローム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
上記香料として用いられる上記中揮発性香料成分としては、例えばアミルシンナムアルデヒド、ジヒドロジャスモン酸メチル、サリチル酸イソアミル、β-カリオフィレン、セドレン、セドリルメチルエーテル、桂皮アルコール、クマリン、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、イソオイゲノール、γ-メチルヨノン、ヘリオトロピン、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、フェニルヘキサノール、ペンタライド等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
吸収体10が有する香料としては、上述の高揮発性及び中揮発性香料成分以外に、あるいはこれら香料成分に加えてさらに、バラ香調、ラベンダー香調、ジャスミン香調、イランイラン香調を有する香料を含有した香料組成物を用いることもできる。このような香料組成物としては、例えば、ネロール、ラバンジュロール、ジャスマール、シクロピデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。香料には、上述した香料素材単体、及び天然精油や調合ベースのように、「複数の香料によって構成される香料素材が組み合わされたもの(香料組成物)で、溶剤によって希釈・調整されたもの」が含まれる。例えば、香料として、バラ、ラベンダー、ジャスミン、イランイラン様香気を有する香料を含有する香料組成物を用いることができる。
【0058】
(香料の含有量)
コアラップシート7に塗布される香料の含有量は、香料によって排泄物由来の匂いを十分マスキングさせるとともに、香料を吸収体10内に適切に保持させる観点から、坪量として、好ましくは0.15g/m以上、より好ましくは0.20g/m以上、そして好ましくは1.0g/m以下、より好ましくは0.50g/m以下である。
【0059】
(香料配置領域の詳細な構成)
香料配置領域Kが上述のように線状に構成される場合の横方向Yにおける幅は、後述するように圧搾領域2,4と確実に重なるようにする観点から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、そして好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下である。
なお、香料配置領域Kは、横方向Yにより幅広の帯状でもよいし、吸収体10全体にわたっていてもよい。また、香料配置領域Kは、少なくとも前方圧搾領域2及び後方圧搾領域4に平面視において重なっていればよく、縦方向Xに分断されていてもよい。
【0060】
(コアラップシートに含まれる消臭剤)
コアラップシート7は、消臭剤を含んでいてもよい。消臭剤は、コアラップシート7全面に配置されていてもよいし、コアラップシート7の一部に配置されていてもよい。消臭剤を用いることで、排泄物由来の匂いが緩和されて香料の香りがより認識されやすくなり、不快感を抑制できる。
コアラップシート7が有する消臭剤としては、それ自体が臭気に直接作用して、即ち臭気を吸着、中和、分解等して、消臭効果を発現し得る物質であり、当該技術分野においても消臭用途に汎用されているものを用いることができるが、臭気に対する広い消臭スペクトルを有する点から、多孔性の消臭粒体が好ましい。多孔性の消臭粒体としては、無機消臭粒体や、有機消臭粒体などがある。消臭粒体の形状は、特に制限されず、例えば、球状、俵状、不定形状等が挙げられる。なお、無機消臭粒体とは無機化合物を主体とする消臭粒体、即ち消臭粒体の骨格となる化合物が無機化合物である消臭粒体のことである。有機消臭粒体とは有機化合物を主体とする消臭粒体、即ち消臭粒体の骨格となる化合物が有機化合物である消臭粒体のことである。
【0061】
好ましい無機消臭粒体としては、カンクリナイト様鉱物、ゼオライト、モンモリロナイト、活性炭等が挙げられる。これらの中でも極性を有している多孔性消臭粒体が水溶性の臭い原因物質の消臭に適しているので好ましく、更には、カンクリナイト様鉱物とゼオライトが広い消臭スペクトルを有する点から好ましい。なお、活性炭は非極性に属するので、有機性の臭い成分の消臭に有効であり、例えば、椰子殻炭、木炭、暦青炭、泥炭、亜炭等が挙げられる。ただし、有機性の香料成分が吸着されて臭いが変質することを防止する観点から、活性炭は含まれないことが好ましい。
【0062】
好ましい有機消臭粒体としては、架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる粒子が挙げられる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0064】
以上の実施形態では、吸収性物品として生理用ナプキンの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、尿取りパットやおりものシート、使い捨ておむつ等であってもよい。
【実施例
【0065】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
図1~4に示す圧搾領域を有する吸収体(実施例)と、圧搾領域に替えて低坪量の溝を有する吸収体(比較例)とを作製し、以下の(1)~(5)の各値を算出した。
(1)荷重を付加していない状態(0g/cmの圧力付加時)の厚み方向における圧搾周囲領域の厚みc0
(2)20g/cmの圧力を付加した状態における圧搾周囲領域の厚みc1
(3)圧搾周囲領域の厚みの減少量(c0-c1)
(4)荷重を付加していない状態における圧搾領域又は低坪量の溝のZ軸方向における深さb
(5)深さbに対する厚みの減少量(c0-c1)の割合((c0-c1)/b)
なお、圧搾周囲領域は、溝の周囲を約1mmの幅で取り囲む領域とした。
結果を、表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
圧搾周囲領域の厚みc0,c1は、以下のように測定した。
測定対象物である吸収体を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、厚み計PEACOCKDIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いて厚みを測定した。20g/cmの圧力を付加する場合には、厚み計の先端部と測定対象物における測定部分との間に、平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、20g/cmとなるような荷重を付加した。
【0069】
表1に示すように、比較例の圧搾周囲領域では、深さbに対する厚みの減少量(c0-c1)の割合((c0-c1)/b)が約123%であった。これは、座圧相当の圧力によって溝が完全に潰れて、圧搾周囲領域Eが、荷重付加前の溝の底部の位置よりもさらに厚み方向Z下方まで圧縮されたことを示す。
【0070】
一方で、実施例の圧搾周囲領域では、深さbに対する厚みの減少量(c0-c1)の割合((c0-c1)/b)が約40%であり、圧搾溝の凹状構造が維持されていた。これは、圧搾溝が圧搾加工により形成されるため、圧搾溝に隣接する圧搾周囲領域についても当該圧搾加工の影響で圧縮され、厚み方向の外力に対する剛性が高まったためであると考えられる。
この結果から、ナプキン1では、圧搾領域2,4が、座位においても蒸気及び香料の通路としての凹状構造を維持できることが確認された。
【符号の説明】
【0071】
1…ナプキン(吸収性物品)
2,4…圧搾領域
10…吸収体
12…表面シート
13…裏面シート
K…香料配置領域
図1
図2
図3
図4