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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】内接歯車ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/14 20060101AFI20230525BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
F04C14/14
F04C2/10 341E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019134412
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021006712
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019119702
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康平
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-99162(JP,A)
【文献】特開2009-127569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/14
F04C 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングの収容孔に内歯を有するリング状の内歯歯車を回転自在に収容し、内歯歯車の内歯と内接噛み合いする外歯を有する外歯歯車を内歯歯車の内部に偏心して収容し、両歯車間には両歯車の回転により両歯間の噛み合い隙間が増加する領域に吸入域空間を形成し、両歯車の回転により両歯間の噛み合い隙間が減少する領域に吐出域空間を形成し、内歯歯車の内歯と外歯歯車の外歯とによりポンプ室を区画形成し、ポンプ室は両歯車の回転により吸入域空間で容積を増加すると共に、吐出域空間で容積を減少して設け、両歯車の一側面に摺接するポンプハウジングの摺接面には、吸入域空間に連通して液体を吸入する吸入ポートを開口すると共に、吐出域空間に連通して液体を吐出する第1吐出ポートと第2吐出ポートを両歯車の回転方向に離隔して開口し、第1吐出ポートと第2吐出ポートとの間に位置するポンプ室を離隔ポンプ室とし、離隔ポンプ室は第1吐出ポートと第2吐出ポートのいずれとも連通せず、両歯車の一側面と対向する他側面に摺接して側板をポンプハウジングに回動可能に設け、側板には吸入域空間に連通して液体を吸入する側板吸入ポートを開口すると共に、吐出域空間に連通して液体を吐出する側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートを両歯車の回転方向に離隔して開口し、側板は離隔ポンプ室を側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれとも連通しない原位置と、離隔ポンプ室を側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれかと連通する回動位置とを有したことを特徴とする内接歯車ポンプ。
【請求項2】
前記第1吐出ポートと前記第2吐出ポートのいずれかは、前記離隔ポンプ室側に向けて延びる絞り部を接続して形成し、当該絞り部の幅寸法は、接続する吐出ポートの幅寸法より小さくし、前記側板第1吐出ポートと前記側板第2吐出ポートのいずれかは、前記離隔ポンプ室側に向けて延びる側板絞り部を接続して形成し、当該側板絞り部の幅寸法は、接続する側板吐出ポートの幅寸法より小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の内接歯車ポンプ。
【請求項3】
前記側板の前記原位置において、前記第1吐出ポートと前記側板第1吐出ポートおよび前記第2吐出ポートと前記側板第2吐出ポートは前記両歯車を介して対向する位置に配置し、前記第1吐出ポートと前記側板第1吐出ポートおよび前記第2吐出ポートと前記側板第2吐出ポートはそれぞれ略同一形状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の内接歯車ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状の内歯歯車の内部に偏心して外歯歯車を収容し、両歯車を回転駆動して液体を吸入吐出する内接歯車ポンプに関し、特に、液体を吐出する複数の吐出ポートを有する内接歯車ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内接歯車ポンプは、液体を吐出する第1吐出ポートと第2吐出ポートを両歯車の回転方向に離隔して開口し、第1吐出ポートには第2吐出ポートに近づく方向に突出して延在する延在部を接続し、延在部は第1吐出ポートと第2吐出ポートを離隔する離隔部に形成している。そして、内歯歯車の内歯と外歯歯車の外歯とにより区画形成する複数のポンプ室で、離隔部に位置するポンプ室を離隔ポンプ室とし、離隔ポンプ室は延在部により第1吐出ポートと連通して密閉されることがなく、内部に圧力が閉じこもって圧力上昇することを抑制して、両歯車を回転駆動する駆動トルクが増加することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-2930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の内接歯車ポンプでは、第1吐出ポートは延在部および離隔ポンプ室を介して第2吐出ポートと連通する位相があるため、例えば、第1吐出ポートの吐出圧力が第2吐出ポートの吐出圧力より高い場合には、第1吐出ポートの吐出液体の一部が第2吐出ポートに流入してしまい、第1吐出ポートの吐出量が低減してポンプ効率が低下する問題点があった。また、第2吐出ポートの吐出圧力が第1吐出ポートの吐出圧力より高い場合には、第2吐出ポートの吐出量が低減してポンプ効率が低下する問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、両歯車を回転駆動する駆動トルクが増加することを抑制しつつ、吐出量が低減してポンプ効率が低下することを抑制し得る内接歯車ポンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
ポンプハウジングの収容孔に内歯を有するリング状の内歯歯車を回転自在に収容し、内歯歯車の内歯と内接噛み合いする外歯を有する外歯歯車を内歯歯車の内部に偏心して収容し、両歯車間には両歯車の回転により両歯間の噛み合い隙間が増加する領域に吸入域空間を形成し、両歯車の回転により両歯間の噛み合い隙間が減少する領域に吐出域空間を形成し、内歯歯車の内歯と外歯歯車の外歯とによりポンプ室を区画形成し、ポンプ室は両歯車の回転により吸入域空間で容積を増加すると共に、吐出域空間で容積を減少して設け、両歯車の一側面に摺接するポンプハウジングの摺接面には、吸入域空間に連通して液体を吸入する吸入ポートを開口すると共に、吐出域空間に連通して液体を吐出する第1吐出ポートと第2吐出ポートを両歯車の回転方向に離隔して開口し、第1吐出ポートと第2吐出ポートとの間に位置するポンプ室を離隔ポンプ室とし、離隔ポンプ室は第1吐出ポートと第2吐出ポートのいずれとも連通せず、両歯車の一側面と対向する他側面に摺接して側板をポンプハウジングに回動可能に設け、側板には吸入域空間に連通して液体を吸入する側板吸入ポートを開口すると共に、吐出域空間に連通して液体を吐出する側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートを両歯車の回転方向に離隔して開口し、側板は離隔ポンプ室を側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれとも連通しない原位置と、離隔ポンプ室を側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれかと連通する回動位置とを有したことを特徴とする内接歯車ポンプがそれである。
【0007】
この場合、前記第1吐出ポートと前記第2吐出ポートのいずれかは、前記離隔ポンプ室側に向けて延びる絞り部を接続して形成し、当該絞り部の幅寸法は、接続する吐出ポートの幅寸法より小さくし、前記側板第1吐出ポートと前記側板第2吐出ポートのいずれかは、前記離隔ポンプ室側に向けて延びる側板絞り部を接続して形成し、当該側板絞り部の幅寸法は、接続する側板吐出ポートの幅寸法より小さくしてもよい。また、前記側板の前記原位置において、前記第1吐出ポートと前記側板第1吐出ポートおよび前記第2吐出ポートと前記側板第2吐出ポートは前記両歯車を介して対向する位置に配置し、前記第1吐出ポートと前記側板第1吐出ポートおよび前記第2吐出ポートと前記側板第2吐出ポートはそれぞれ略同一形状に形成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、両歯車の一側面と対向する他側面に摺接して側板をポンプハウジングに回動可能に設け、側板には吸入域空間に連通して液体を吸入する側板吸入ポートを開口すると共に、吐出域空間に連通して液体を吐出する側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートを両歯車の回転方向に離隔して開口し、側板は離隔ポンプ室を側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれとも連通しない原位置と、離隔ポンプ室を側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれかと連通する回動位置とを有した。このため、側板の原位置では、離隔ポンプ室は側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれとも連通しないから、側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートは、吐出圧力の高いポートから吐出圧力の低いポートに吐出液体が流入することなく、ポンプ効率が低下することを抑制できる。また、側板の回動位置では、離隔ポンプ室は側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれかと連通するから、密閉されることがなく内部の圧力上昇を抑制できて、両歯車を回転駆動する駆動トルクが増加することを抑制できる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、第1吐出ポートと第2吐出ポートのいずれかは、離隔ポンプ室側に向けて延びる絞り部を接続して形成し、当該絞り部の幅寸法は、接続する吐出ポートの幅寸法より小さくし、側板第1吐出ポートと側板第2吐出ポートのいずれかは、離隔ポンプ室側に向けて延びる側板絞り部を接続して形成し、当該側板絞り部の幅寸法は、接続する側板吐出ポートの幅寸法より小さくした。このため、絞り部および側板絞り部は離隔ポンプ室に連通するタイミングを最適に設定し易くでき、離隔ポンプ室の圧力上昇をより良好に抑制できる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、側板の前記原位置において、第1吐出ポートと側板第1吐出ポートおよび第2吐出ポートと側板第2吐出ポートは両歯車を介して対向する位置に配置し、第1吐出ポートと側板第1吐出ポートおよび第2吐出ポートと側板第2吐出ポートはそれぞれ略同一形状に形成した。このため、両歯車の両側面には圧力を平衡作用できるから、両歯車がポンプハウジングに押つけられて、両歯車を回転駆動する駆動トルクが増加することをより一層抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示した内接歯車ポンプの縦断面図である。
図2図1の線A-Aに沿った断面図である。
図3図1の線B-Bに沿った断面図である。
図4図1の線C-Cに沿った断面図である。
図5図4の線D-Dに沿った断面図である。
図6図1の線E-Eに沿った拡大断面図である。
図7図3とは異なる状態を示す断面図である。
図8図4とは異なる状態を示す断面図である。
図9図8の線G-Gに沿った断面図である。
図10】他実施形態を示した図4に相当する断面図である。
図11図10の線H-Hに沿った拡大断面図である。
図12】さらに他の実施形態を示した図2に相当する断面図である。
図13】さらに他の実施形態を示した図3に相当する断面図である。
図14】さらに他の実施形態を示した図4に相当する断面図である。
図15図14の要部を示した拡大断面図である。
図16図13とは異なる状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2において、1はポンプ本体で、有底の収容孔2を形成している。3は蓋部材で、収容孔2の開口を閉じるようポンプ本体1にボルト部材4で締結している。そして、ポンプ本体1と蓋部材3とでポンプハウジング5を構成している。6はリング状の内歯歯車で、12個の内歯6Aを有し、収容孔2へ回転自在に収容している。7は外歯歯車で、内歯6Aと内接噛み合いする11個の外歯7Aを有し、内歯歯車6の内部に偏心して収容している。そして、両歯車6、7の軸方向一側面は、収容孔2の開口を閉じる蓋部材3の一側面にそれぞれ摺接可能とし、この一側面をポンプハウジング5の摺接面3Aとしている。8は両歯車6、7の一側面と対向する他側面に摺接する側板で、ポンプハウジング5の収容孔2の底面2Aに回動可能に設けている。外歯歯車7は中心に貫通孔7Bを軸方向へ貫通形成し、貫通孔7Bには円筒状の軸受ブッシュ部材9を圧入して固定している。また、貫通孔7Bには径方向へ対向する2箇所に凹部7Cを窪み形成している。
【0013】
軸受ブッシュ部材9は、ステータシャフト10へ摺接自在に外嵌し、外歯歯車7をステータシャフト10へ回転自在に軸支する。ステータシャフト10は、ポンプハウジング5の蓋部材3に固定し、先端部がポンプ本体1を貫通して延在している。11は駆動軸で、円筒状に形成し、外歯歯車7と同芯にポンプハウジング5のポンプ本体1へ回転自在に軸支し、先端部に径方向の対向する2箇所に凸部11Aを軸方向へ突出して形成し、凸部11Aを外歯歯車7の凹部7Cに挿入して外歯歯車7を回転駆動する。Sは吸入域空間、Pは吐出域空間でそれぞれ両歯車6、7間に備え、吸入域空間Sは両歯車6、7の回転により両歯6A、7A間の噛み合い隙間が増加する領域に形成している。また、吐出域空間Pは両歯車6、7の回転により両歯6A、7A間の噛み合い隙間が減少する領域に形成している。Tはポンプ室で、内歯歯車6の内歯6Aと外歯歯車7の外歯7Aとにより複数個を区画形成し、両歯車6、7の回転により吸入域空間Sで容積を増加すると共に、吐出域空間Pで容積を減少して設ける。
【0014】
12は吸入域空間Sに連通する吸入ポートで、ポンプハウジング5を構成する蓋部材3の摺接面3Aに窪み形成して開口している。13は吸入ポート12に接続する吸入流路で、蓋部材3に形成し、低圧側から吸入する液体を流通する。14は第1吐出ポート、15は第2吐出ポートで、それぞれ吐出域空間Pに連通し、ポンプハウジング5の摺接面3Aに両歯車6、7の回転方向Fに離隔して窪み形成して開口している。第1吐出ポート14は回転方向Fの後方側に位置し、第2吐出ポート15は回転方向Fの前方側に位置している。16は第1吐出ポート14に接続する第1吐出流路、17は第2吐出ポート15に接続する第2吐出流路で、それぞれ蓋部材3に形成し、負荷側に吐出する液体を流通する。なお、第1吐出ポート14は第2吐出ポート15より高圧力の負荷側に接続している。
【0015】
T1は離隔ポンプ室で、第1吐出ポート14と第2吐出ポート15との間に位置するポンプ室をいう。離隔ポンプ室T1は第1吐出ポート14と第2吐出ポート15のいずれとも連通しない。第1吐出ポート14には、内歯6Aと外歯7Aとの接触点より径方向内側に第1絞り部18Aを、内歯6Aと外歯7Aとの接触点より径方向外側に第2絞り部18Bをそれぞれ接続して形成し、第1絞り部18Aと第2絞り部18Bは第1吐出ポート14側から離隔ポンプ室T1側に向けて延び、離隔ポンプ室T1には連通しない。そして、第1絞り部18Aの幅寸法と第2絞り部18Bの幅寸法は、第1吐出ポート14の幅寸法より小さい。なお、幅寸法とは内歯歯車6の径方向と略平行な部位の寸法をいう。
【0016】
図3ないし図6に示す如く、側板8には、側板吸入ポート19および側板第1吐出ポート20ならびに側板第2吐出ポート21を貫通形成して開口している。側板吸入ポート19は吸入域空間Sに連通し、吸入ポート12と略同一形状に形成している。側板吸入ポート19はポンプ本体1に形成した側板吸入流路22に接続し、側板吸入流路22は収容孔2の底面2Aへの開口部を側板吸入ポート19と略同一形状に形成している。そして、側板吸入流路22は吸入流路17と接続し、低圧側から吸入する液体を流通している。
【0017】
側板第1吐出ポート20ならびに側板第2吐出ポート21は、両歯車6、7の回転方向Fに離隔してそれぞれ吐出域空間Pに連通している。側板第1吐出ポート20は回転方向Fの後方側に位置し、第1吐出ポート14と略同一形状に形成している。側板第2吐出ポート21は回転方向Fの前方側に位置し、第2吐出ポート15と略同一形状に形成している。
【0018】
側板第1吐出ポート20には、内歯6Aと外歯7Aとの接触点より径方向内側に側板第1絞り部23Aを、内歯6Aと外歯7Aとの接触点より径方向外側に側板第2絞り部23Bをそれぞれ接続して形成し、側板第1絞り部23Aと側板第2絞り部23Bは側板第1吐出ポート20側から離隔ポンプ室T1側に向けて延び、離隔ポンプ室T1には連通しない。そして、側板第1絞り部23Aの幅寸法と側板第2絞り部23Bの幅寸法は、側板第1吐出ポート20の幅寸法より小さい。側板第1絞り部23Aは第1絞り部18Aと略同一形状に形成し、側板第2絞り部23Bは第2絞り部18Bと略同一形状に形成している。
【0019】
24は側板第1吐出ポート20に接続する側板第1吐出流路、25は側板第2吐出ポート21に接続する側板第2吐出流路で、ポンプ本体1に形成し、収容孔2の底面2Aへの開口部をそれぞれ側板第1吐出ポート20および側板第2吐出ポート21と略同一形状に形成している。そして、側板第1吐出流路24は第1吐出流路16に接続し、側板第2吐出流路25は第2吐出流路17に接続し、それぞれ負荷側に吐出する液体を流通している。
【0020】
1Aはポンプ本体1に設けた凹部で、収容孔2の底面2Aに径方向で側板吸入ポート19と側板第1吐出ポート20との間に窪み形成している。8Aは側板8に設けた係合部で、両歯車6、7の他側面が摺接する側板8の表面とは反対側の裏面に突設して凹部1Aに収装している。26は凹部1Aに収装したばねで、側板8の係合部8Aに係合し、側板8を両歯車6、7の回転方向Fの反対方向へ付勢する。27は作用室で、凹部1Aと係合部8Aとで区画形成する。作用室27には側板第1吐出流路24を流通する吐出液体の一部を絞り流路28を介して導入し、導入した液体の圧力に基づく作用力が係合部8Aに作用し、側板8をばね26の弾性力に抗して両歯車6、7の回転方向Fへ付勢する。側板8は、ばね26の弾性力で付勢される図3ないし図6に示す原位置と、作用室27に導入する液体の圧力に基づく作用力でばね26の弾性力に抗して回動する図7ないし図9に示す回動位置とを有している。
【0021】
側板8の原位置では、離隔ポンプ室T1を側板第1吐出ポート20、側板第1絞り部23A、側板第2絞り部23B、側板第2吐出ポート21のいずれとも連通しない。そして、側板8の原位置では、側板第1吐出ポート20は第1吐出ポート14と、板側第1絞り部23Aは第1絞り部18Aと、側板第2絞り部23Bは第2絞り部18Bと、側板第2吐出ポート21は第2吐出ポート15と、側板吸入ポート19は吸入ポート12とそれぞれ両歯車6、7を介して対向する位置に配置している。側板8の回動位置では、離隔ポンプ室T1を側板第1吐出ポート20、側板第1絞り部23A、側板第2絞り部23Bと連通する。
【0022】
次に、かかる構成の作動を説明する。
駆動軸11により外歯歯車7を回転駆動すると、外歯歯車7と内接噛み合いする内歯歯車6が回転駆動され、低圧側から液体が吸入流路13、側板吸入流路22を流れ、吸入ポート12、側板吸入ポート19から吸入域空間Sに吸入されて吐出域空間Pに搬送され、高圧力の第1吐出ポート14、側板第1吐出ポート20より吐出流路16、側板吐出流路24を流れて吐出される。また、一部の液体は低圧力の第2吐出ポート15、側板第2吐出ポート21より吐出流路17、側板第2吐出流路25を流れて吐出される。
【0023】
回転駆動する両歯車6、7の回転数が、所定の回転数(約3500rpm)に達するまでは、図3ないし図6に示す如く、側板8はばね26の弾性力で原位置に位置する。この状態で、離隔ポンプ室T1は側板第1吐出ポート20、板板第1絞り部23A、側板第2絞り部23Bと連通せず、高圧力の側板第1吐出ポート20の吐出液体が離隔ポンプ室T1をへて低圧力の側板第2吐出ポート21に流入することを抑制する。
【0024】
そして、回転駆動する両歯車6、7の回転数が、所定の回転数を超えると、図7ないし図9に示す如く、側板8は作用室27に導入する液体の圧力に基づく作用力でばね26の弾性力に抗して回動位置に回動する。この状態で、離隔ポンプ室T1は側板第1吐出ポート20、側板第1絞り部23A、側板第2絞り部23Bと連通し、密閉されない。
【0025】
かかる作動において、両歯車6、7の一側面と対向する他側面に摺接して側板8をポンプハウジング5に回動可能に設け、側板8には吸入域空間Sに連通して液体を吸入する側板吸入ポート19を開口すると共に、吐出域空間Pに連通して液体を吐出する側板第1吐出ポート20と側板第2吐出ポート21を両歯車6、7の回転方向Fに離隔して開口し、側板8は離隔ポンプ室T1を側板第1吐出ポート20と側板第2吐出ポート21のいずれとも連通しない原位置と、離隔ポンプ室T1を側板第1吐出ポート20と側板第2吐出ポート21のいずれかと連通する回動位置とを有した。このため、側板8の原位置では、離隔ポンプ室T1は側板第1吐出ポート20と側板第2吐出ポート21のいずれとも連通しないから、吐出圧力の高い側板第1吐出ポート20から吐出圧力の低い側板第2吐出ポート21に吐出液体が流入することなく、ポンプ効率が低下することを抑制できる。また、側板8の回動位置では、離隔ポンプ室T1は側板第1吐出ポート20と側板第2吐出ポート21のいずれかと連通するから、密閉されることがなく内部の圧力上昇を抑制できて、両歯車6、7を回転駆動する駆動トルクが増加することを抑制できる。
【0026】
また、第1吐出ポート14は、離隔ポンプ室T1側に向けて延びる絞り部18A、18Bを接続して形成し、絞り部18A、18Bの幅寸法は、接続する吐出ポート14の幅寸法より小さくし、側板第1吐出ポート20は、離隔ポンプ室T1側に向けて延びる側板絞り部23A、23Bを接続して形成し、側板絞り部23A、23Bの幅寸法は、接続する側板吐出ポート20の幅寸法より小さくした。このため、絞り部18A、18Bおよび側板絞り部23A、23Bは離隔ポンプ室T1に連通するタイミングを最適に設定し易くでき、離隔ポンプ室T1の圧力上昇をより良好に抑制できる。
【0027】
また、側板8の原位置において、第1吐出ポート12と側板第1吐出ポート20および第2吐出ポート15と側板第2吐出ポート21は両歯車6、7を介して対向する位置に配置し、第1吐出ポート12と側板第1吐出ポート20および第2吐出ポート15と側板第2吐出ポート21はそれぞれ略同一形状に形成した。このため、両歯車6、7の両側面には圧力を平衡作用できるから、両歯車6、7がポンプハウジング5に押つけられて、両歯車6、7を回転駆動する駆動トルクが増加することをより一層抑制できる。
【0028】
図10および図11は本発明の他実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
29は平面が略三角形の窪み溝で、側板吸入ポート19と側板第1吐出ポート20との間に側板吸入ポート19側を頂点として配置し、両歯車6、7の他側面が摺接する側板8の表面に窪み形成している。窪み溝29は、側板吸入ポート19側から側板第1吐出ポート20側に向けて窪み深さを漸増し、底面29Aの窪み深さを最深にしている。そして、窪み溝29の底面29Aには、側板吸入ポート19から側板第1吐出ポート20に搬送する液体の圧力に基づく作用力をばね26の弾性力に抗して作用し、側板8を回動位置に回動する。
【0029】
作動は、両歯車6、7の回転数が、所定の回転数に達するまでは、側板8はばね26の弾性力で原位置に位置する。そして、両歯車6、7の回転数が、所定の回転数を超えると、側板8は窪み溝29の底面29Aに作用する液体の圧力に基づく作用力でばね26の弾性力に抗して回動位置に回動する。
この作動で、一実施形態と略同様に、側板8の原位置ではポンプ効率が低下することを抑制でき、また、側板8の回動位置では、離隔ポンプ室T1は密閉されることがなく内部の圧力上昇を抑制できて、両歯車6、7を回転駆動する駆動トルクが増加することを抑制できる。
【0030】
また、一実施形態と略同様に、絞り部18A、18Bおよび側板絞り部23A、23Bは離隔ポンプ室T1に連通するタイミングを最適に設定し易くでき、離隔ポンプ室T1の圧力上昇をより良好に抑制できる。また、両歯車6、7の両側面には圧力を平衡作用できるから、両歯車6、7がポンプハウジング5に押つけられて、両歯車6、7を回転駆動する駆動トルクが増加することをより一層抑制できる。
【0031】
図12ないし図16は本発明のさらに他の実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
側板8は、凹部1Aに収装したばね26により両歯車6、7の回転方向Fと同じ方向へ付勢される。凹部1Aは収容孔2の底面2Aに径方向で側板第1吐出ポート20と側板第2吐出ポート21との間に窪み形成している。作用室27には、側板第2吐出流路25を流通する吐出液体の一部を絞り流路28を介して導入し、導入した液体の圧力に基づく作用力が係合部8Aに作用し、側板8をばね26の弾性力に抗して両歯車6、7の回転方向Fの反対方向へ付勢する。
【0032】
第2吐出ポート15、側板第2吐出ポート21は第1吐出ポート14、側板第1吐出ポート20より高圧力の負荷側に接続している。第2吐出ポート15には、内歯6Aと外歯7Aとの接触点より径方向内側に第1絞り部30Aを、内歯6Aと外歯7Aとの接触点より径方向外側に第2絞り部30Bをそれぞれ接続して形成し、第1絞り部30Aと第2絞り部30Bは第2吐出ポート15側から離隔ポンプ室T1側に向けて延び、離隔ポンプ室T1には連通しない。そして、第1絞り部30Aの幅寸法と第2絞り部30Bの幅寸法は、第2吐出ポート15の幅寸法より小さい。
【0033】
側板第2吐出ポート21には、内歯6Aと外歯7Aとの接触点より径方向内側に側板第1絞り部31Aを、内歯6Aと外歯7Aとの接触点より径方向外側に側板第2絞り部31Bをそれぞれ接続して形成し、側板第1絞り部31Aと側板第2絞り部31Bは側板第2吐出ポート21側から離隔ポンプ室T1側に向けて延び、離隔ポンプ室T1には連通しない。そして、側板第1絞り部31Aの幅寸法と側板第2絞り部31Bの幅寸法は、側板第2吐出ポート21の幅寸法より小さい。側板第1絞り部31Aは第1絞り部30Aと略同一形状に形成し、側板第2絞り部31Bは第2絞り部30Bと略同一形状に形成している。
【0034】
側板8の原位置では、離隔ポンプ室T1を側板第1吐出ポート20、側板第2吐出ポート21、側板第1絞り部31A、側板第2絞り部31Bのいずれとも連通しない。側板8の回動位置では、離隔ポンプ室T1を側板第2吐出ポート21、側板第1絞り部31A、側板第2絞り部31Bと連通する。
【0035】
作動は、両歯車6、7の回転数が、所定の回転数に達するまでは、図12ないし図15に示す如く、側板8はばね26の弾性力で原位置に位置する。そして、両歯車6、7の回転数が、所定の回転数を超えると、図16に示す如く、側板8は作用室27に導入する液体の圧力に基づく作用力でばね26の弾性力に抗して回動位置に回動する。この状態で、離隔ポンプ室T1は側板第2吐出ポート21、側板第1絞り部31A、側板第2絞り部31Bと連通し、密閉されない。
【0036】
この作動で、一実施形態と略同様に、側板8の原位置ではポンプ効率が低下することを抑制でき、また、側板8の回動位置では、離隔ポンプ室T1は密閉されることがなく内部の圧力上昇を抑制できて、両歯車6、7を回転駆動する駆動トルクが増加することを抑制できる。また、第2吐出ポート15は、離隔ポンプ室T1側に向けて延びる絞り部30A、30Bを接続して形成し、絞り部30A、30Bの幅寸法は、接続する吐出ポート15の幅寸法より小さくし、側板第2吐出ポート21は、離隔ポンプ室T1側に向けて延びる側板絞り部31A、31Bを接続して形成し、側板絞り部31A、31Bの幅寸法は、接続する側板吐出ポート21の幅寸法より小さくした。このため、絞り部30A、30Bおよび側板絞り部31A、31Bは離隔ポンプ室T1に連通するタイミングを最適に設定し易くでき、離隔ポンプ室T1の圧力上昇をより良好に抑制できる。また、一実施形態と略同様に、両歯車6、7の両側面には圧力を平衡作用できるから、両歯車6、7がポンプハウジング5に押つけられて、両歯車6、7を回転駆動する駆動トルクが増加することをより一層抑制できる。
【0037】
なお、前述の各実施形態では、絞り部18A、18Bを第1吐出ポート14に接続し、側板絞り部23A、23Bを側板第1吐出ポート20に接続したり、絞り部30A、30Bを第2吐出ポート15に接続し、側板絞り部31A、31Bを側板第2吐出ポート21に接続したりしたが、用途に応じて絞り部18A、18B、30A、30B、側板絞り部23A、23B、31A、31Bを設けなくてもよい。また、吐出ポートは、第1吐出ポート14、側板第1吐出ポート20と第2吐出ポート15、側板第2吐出ポート21の二つであったが、吐出ポートは三つ以上であってもよい。また、第1吐出ポート14、側板第1吐出ポート20を高圧力として第2吐出ポート15、側板第2吐出ポート21を低圧力としたり、第1吐出ポート14、側板第1吐出ポート20を低圧力として第2吐出ポート15、側板第2吐出ポート21を高圧力としたりしたが、第1吐出ポート14、側板第1吐出ポート20の圧力と第2吐出ポート15、側板第2吐出ポート21の圧力とを略同一の圧力としてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
2:収容孔
5:ポンプハウジング
6:内歯歯車
6A:内歯
7:外歯歯車
7A:外歯
8:側板
12:吸入ポート
14:第1吐出ポート
15:第2吐出ポート
19:側板吸入ポート
20:側板第1吐出ポート
21:側板第2吐出ポート
S:吸入域空間
P:吐出域空間
T:ポンプ室
T1:離隔ポンプ室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16