(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理システムおよび基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230525BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
H01L21/304 651B
(21)【出願番号】P 2019137730
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-78173(JP,A)
【文献】特開2017-147408(JP,A)
【文献】特開2019-46985(JP,A)
【文献】特開2003-249536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平姿勢で保持するチャック部と、前記チャック部に対して昇降可能に設けられて前記基板を支持する3つ以上の第1リフトピンおよび3つ以上の第2リフトピンと、前記第1リフトピンに連結される第1作用部材と、前記基板の周方向において前記第1作用部材と異なる位置に設けられ、前記第2リフトピンに連結される第2作用部材と、を含む基板保持部と、
前記基板の中央部を通り鉛直方向に沿う回転軸のまわりで、前記基板保持部を回転させる回転機構と、
前記基板保持部よりも鉛直下方において昇降可能に設けられる押し上げ部材と、
前記押し上げ部材を前記基板保持部に対して昇降させる昇降機構と
を備え、
前記押し上げ部材は、前記基板保持部が前記押し上げ部材に対して第1相対回転位置で停止した第1状態で、鉛直方向において前記第1作用部材と対向し、前記基板保持部が前記押し上げ部材に対して第2相対回転位置で停止した第2状態で、鉛直方向において前記第2作用部材と対向し、
前記昇降機構は、前記第1状態で前記押し上げ部材を上昇させて前記第1作用部材を押し上げることにより、前記第1リフトピンを上昇させ、前記第2状態で前記押し上げ部材を上昇させて前記第2作用部材を押し上げることにより、前記第2リフトピンを上昇させる、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部に保持された前記基板に対して洗浄処理を行う洗浄処理部を備え、
前記昇降機構は、
前記第1状態で前記押し上げ部材を上昇させて3つ以上の前記第1リフトピンを上昇させ、未処理の前記基板を外部の搬送装置から3つ以上の前記第1リフトピンで受け取り、
前記第1状態で前記押し上げ部材を下降させて未処理の前記基板を前記チャック部に保持させ、
前記洗浄処理部によって処理された処理済みの前記基板を、前記第2状態で前記押し上げ部材を上昇させ3つ以上の前記第2リフトピンを上昇させ、前記基板を前記チャック部から3つ以上の前記第2リフトピンで受け取る、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記第1作用部材は、前記第1リフトピンの各々の下端部であり、
前記第2作用部材は、前記第2リフトピンの各々の下端部であり、
前記押し上げ部材は、前記第1リフトピンまたは前記第2リフトピンと同数設けられ、かつ、互いに連結されており、
前記押し上げ部材は、前記第1状態で前記第1リフトピンの前記下端部にそれぞれ対向し、
前記押し上げ部材は、前記第2状態で前記第2リフトピンの前記下端部にそれぞれ対向し、
前記昇降機構は、前記第1状態および前記第2状態の各々において、前記押し上げ部材を一体に昇降させる、基板処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記押し上げ部材は、前記第1リフトピンを押し上げた状態で、前記基板保持部と一体に回転可能であり、
前記押し上げ部材は、前記第2リフトピンを押し上げた状態でも、前記基板保持部と一体に回転可能である、基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記押し上げ部材が前記第1リフトピンを押し上げた状態、および、前記押し上げ部材が前記第2リフトピンを押し上げた状態の少なくともいずれか一方において前記回転機構が前記基板保持部および前記押し上げ部材を一体に回転させて、前記第1リフトピンが前記搬送装置から未処理の前記基板を受け取るときの前記基板保持部の回転位置、および、前記第2リフトピンが処理済みの前記基板を前記搬送装置に受け渡すときの前記基板保持部の回転位置を互いに近づける、基板処理装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部は、第1回転位置で停止した状態で前記押し上げ部材に対して前記第1相対回転位置で停止する前記第1状態となり、
前記基板保持部は、第2回転位置で停止した状態で前記押し上げ部材に対して前記第2相対回転位置で停止する前記第2状態となり、
前記昇降機構は、
前記第1状態で前記押し上げ部材の上昇により前記第1リフトピンを上昇させて、未処理の前記基板を前記第1リフトピンで受け取り、
前記第1状態で前記押し上げ部材の下降により前記第1リフトピンを下降させて、未処理の前記基板を前記チャック部に保持させ、
前記第2状態で前記押し上げ部材の上昇により前記第2リフトピンを上昇させて、処理済みの前記基板を前記チャック部から前記第2リフトピンで受け取り、
前記回転機構は、前記第2リフトピンが処理済みの前記基板を持ち上げた状態で、前記基板保持部を前記第1回転位置に回転させる、基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記回転機構は、前記第2リフトピンによって持ち上げられた処理済みの前記基板が前記搬送装置によって搬出されたときに、前記基板保持部を前記第2回転位置に回転させ、
前記昇降機構は、前記基板保持部が前記第2回転位置で停止した前記第2状態で、前記押し上げ部材を下降させて前記第2リフトピンを下降させる、基板処理装置。
【請求項8】
請求項4または請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部は、第1回転位置で停止した状態で前記押し上げ部材に対して前記第1相対回転位置で停止する前記第1状態となり、
前記基板保持部は、第2回転位置で停止した状態で前記押し上げ部材に対して前記第2相対回転位置で停止する前記第2状態となり、
前記回転機構は、
前記昇降機構が前記第1状態で前記第1リフトピンを上昇させた状態で、前記基板保持部を前記第2回転位置に回転させて、前記第2状態で未処理の前記基板を前記第1リフトピンで受け取り、
前記第1リフトピンが未処理の前記基板を持ち上げた状態で、前記基板保持部を前記第1回転位置に回転させ、
前記昇降機構は、
前記第1状態で前記押し上げ部材の下降により前記第1リフトピンを下降させて、未処理の前記基板を前記チャック部に保持させ、
前記第2状態で前記押し上げ部材の上昇により前記第2リフトピンを上昇させて、処理済みの前記基板を前記チャック部から前記第2リフトピンで受け取る、基板処理装置。
【請求項9】
請求項4から請求項8のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記押し上げ部材に連結された可動部材と、
固定部材と、
前記回転軸についての周方向に沿って前記可動部材を前記固定部材に対してスライド可能に固定するガイドと
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項10】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記昇降機構は、
前記第1状態で前記押し上げ部材を上昇させて前記第1リフトピンを押し上げ、未処理のダミー基板を外部の搬送装置から前記第1リフトピンで受け取り、前記押し上げ部材を下降させて未処理の前記ダミー基板を前記チャック部に保持させ、
前記洗浄処理部によって処理された処理済みの前記ダミー基板を、前記第1状態で前記押し上げ部材を上昇させて前記チャック部から前記第1リフトピンで受け取る、基板処理装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部の回転位置を測定する回転センサをさらに備える、基板処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一つに記載の基板処理装置と、前記基板を搬入する搬入部と、前記基板を前記搬入部から受け取り、前記基板処理装置に受け渡す基板受渡し部とを含む、基板処理システム。
【請求項13】
基板を水平姿勢で保持するチャック部と、前記チャック部に対して昇降可能に設けられて前記基板を支持する3つ以上の第1リフトピンおよび3つ以上の第2リフトピンと、前記第1リフトピンに連結される第1作用部材と、前記基板の周方向において前記第1作用部材と異なる位置に設けられ、前記第2リフトピンに連結される第2作用部材と、を含む基板保持部を、前記基板の中央部を通り鉛直方向に沿う回転軸について、前記押し上げ部材に対して第1相対回転位置で停止させる第1工程と、
前記第1工程の後に、前記基板保持部よりも鉛直下方に設けられ、前記基板保持部が前記第1相対回転位置で停止した第1状態で前記第1作用部材と鉛直方向において対向する押し上げ部材を、前記基板保持部に対して上昇させて前記第1作用部材を押し上げることにより、前記第1リフトピンを上昇させる第2工程と、
前記押し上げ部材に対して第2相対回転位置で前記基板保持部を停止させる第3工程と、
前記第3工程の後に、前記基板保持部が前記第2相対回転位置で停止した第2状態で前記第2作用部材と鉛直方向において対向する前記押し上げ部材を、前記基板保持部に対して上昇させて前記第2作用部材を押し上げることにより、前記第2リフトピンを上昇させる第4工程と
を備える、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理装置、基板処理システムおよび基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウエハを処理する処理システムが記載されている。この処理システムは、複数の処理装置と、共通搬送室と、中間搬送室と、導入側搬送室とを含む。未処理のウエハは導入側搬送室から中間搬送室を経由して共通搬送室に搬送される。当該ウエハは共通搬送室から各処理装置へと搬送されて、各処理装置において処理を受ける。処理装置において処理された処理済みのウエハは、共通搬送室から中間搬送室を経由して導入側搬送室に搬送される。
【0003】
中間搬送室には、ウエハを支持する支持機構が設けられる。この支持機構は、複数の第1リフトピンと、複数の第2リフトピンと、第1昇降ベースと、第2昇降ベースと、第1昇降アクチュエータと、第2昇降アクチュエータとを含む。
【0004】
第1昇降ベースおよび第2昇降ベースは平面視において(つまり、鉛直方向に沿って見て)、互いに重ならない形状を有している。第1昇降ベースの上面には、第1リフトピンが立設される。第1リフトピンは平面視において、ウエハの中心についての周方向に沿って略等間隔で配置される。同様に、第2昇降ベースの上面には、第2リフトピンが立設される。第2リフトピンは平面視において、当該周方向に沿って略等間隔で配置される。
【0005】
第1昇降アクチュエータは第1昇降ベースを上位置と下位置との間で昇降させることにより、第1リフトピンを昇降させる。第2昇降アクチュエータは第2昇降ベースを上位置と下位置との間で昇降させることにより、第2リフトピンを昇降させる。
【0006】
特許文献1では、未処理の基板が導入側搬送室から中間搬送室に搬送される際には、第1昇降アクチュエータが第1リフトピンを上昇させて当該基板を第1リフトピンで支持する。その後、この未処理の基板は共通搬送室へと搬送される。一方で、処理済みの基板が共通搬送室から中間搬送室に搬送される際には、第2昇降アクチュエータが第2リフトピンを上昇させて当該基板を第2リフトピンで支持する。その後、この処理済みの基板は導入側搬送室へ搬送される。これにより、未処理の基板が薄膜等の物質またはパーティクルにより汚染することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、2つの昇降アクチュエータが設けられているので、支持機構の規模が大きくなり、その製造コストが高くなる。また、特許文献1では、中間搬送室に支持機構が設けられているものの、処理装置における支持機構は考慮されていない。
【0009】
そこで、本願は、低コストで第1リフトピンおよび第2リフトピンを互いに独立して昇降可能な基板処理装置、基板処理システムおよび基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板処理装置の第1の態様は、基板を水平姿勢で保持するチャック部と、前記チャック部に対して昇降可能に設けられて前記基板を支持する3つ以上の第1リフトピンおよび3つ以上の第2リフトピンと、前記第1リフトピンに連結される第1作用部材と、前記基板の周方向において前記第1作用部材と異なる位置に設けられ、前記第2リフトピンに連結される第2作用部材と、を含む基板保持部と、前記基板の中央部を通り鉛直方向に沿う回転軸のまわりで、前記基板保持部を回転させる回転機構と、前記基板保持部よりも鉛直下方において昇降可能に設けられる押し上げ部材と、前記押し上げ部材を前記基板保持部に対して昇降させる昇降機構とを備え、前記押し上げ部材は、前記基板保持部が前記押し上げ部材に対して第1相対回転位置で停止した第1状態で、鉛直方向において前記第1作用部材と対向し、前記基板保持部が前記押し上げ部材に対して第2相対回転位置で停止した第2状態で、鉛直方向において前記第2作用部材と対向し、前記昇降機構は、前記第1状態で前記押し上げ部材を上昇させて前記第1作用部材を押し上げることにより、前記第1リフトピンを上昇させ、前記第2状態で前記押し上げ部材を上昇させて前記第2作用部材を押し上げることにより、前記第2リフトピンを上昇させる。
【0011】
基板処理装置の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記基板保持部に保持された前記基板に対して洗浄処理を行う洗浄処理部を備え、前記昇降機構は、前記第1状態で前記押し上げ部材を上昇させて3つ以上の前記第1リフトピンを上昇させ、未処理の前記基板を外部の搬送装置から3つ以上の前記第1リフトピンで受け取り、前記第1状態で前記押し上げ部材を下降させて未処理の前記基板を前記チャック部に保持させ、前記洗浄処理部によって処理された処理済みの前記基板を、前記第2状態で前記押し上げ部材を上昇させ3つ以上の前記第2リフトピンを上昇させ、前記基板を前記チャック部から3つ以上の前記第2リフトピンで受け取る。
【0012】
基板処理装置の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記第1作用部材は、前記第1リフトピンの各々の下端部であり、前記第2作用部材は、前記第2リフトピンの各々の下端部であり、前記押し上げ部材は、前記第1リフトピンまたは前記第2リフトピンと同数設けられ、かつ、互いに連結されており、前記押し上げ部材は、前記第1状態で前記第1リフトピンの前記下端部にそれぞれ対向し、前記押し上げ部材は、前記第2状態で前記第2リフトピンの前記下端部にそれぞれ対向し、前記昇降機構は、前記第1状態および前記第2状態の各々において、前記押し上げ部材を一体に昇降させる。
【0013】
基板処理装置の第4の態様は、第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記押し上げ部材は、前記第1リフトピンを押し上げた状態で、前記基板保持部と一体に回転可能であり、前記押し上げ部材は、前記第2リフトピンを押し上げた状態でも、前記基板保持部と一体に回転可能である。
【0014】
基板処理装置の第5の態様は、第4の態様にかかる基板処理装置であって、前記押し上げ部材が前記第1リフトピンを押し上げた状態、および、前記押し上げ部材が前記第2リフトピンを押し上げた状態の少なくともいずれか一方において前記回転機構が前記基板保持部および前記押し上げ部材を一体に回転させて、前記第1リフトピンが前記搬送装置から未処理の前記基板を受け取るときの前記基板保持部の回転位置、および、前記第2リフトピンが処理済みの前記基板を前記搬送装置に受け渡すときの前記基板保持部の回転位置を互いに近づける。
【0015】
基板処理装置の第6の態様は、第4または第5の態様にかかる基板処理装置であって、前記基板保持部は、第1回転位置で停止した状態で前記押し上げ部材に対して前記第1相対回転位置で停止する前記第1状態となり、前記基板保持部は、第2回転位置で停止した状態で前記押し上げ部材に対して前記第2相対回転位置で停止する前記第2状態となり、前記昇降機構は、前記第1状態で前記押し上げ部材の上昇により前記第1リフトピンを上昇させて、未処理の前記基板を前記第1リフトピンで受け取り、前記第1状態で前記押し上げ部材の下降により前記第1リフトピンを下降させて、未処理の前記基板を前記チャック部に保持させ、前記第2状態で前記押し上げ部材の上昇により前記第2リフトピンを上昇させて、処理済みの前記基板を前記チャック部から前記第2リフトピンで受け取り、前記回転機構は、前記第2リフトピンが処理済みの前記基板を持ち上げた状態で、前記基板保持部を前記第1回転位置に回転させる。
【0016】
基板処理装置の第7の態様は、第6の態様にかかる基板処理装置であって、前記回転機構は、前記第2リフトピンによって持ち上げられた処理済みの前記基板が前記搬送装置によって搬出されたときに、前記基板保持部を前記第2回転位置に回転させ、前記昇降機構は、前記基板保持部が前記第2回転位置で停止した前記第2状態で、前記押し上げ部材を下降させて前記第2リフトピンを下降させる。
【0017】
基板処理装置の第8の態様は、第4または第5の態様にかかる基板処理装置であって、前記基板保持部は、第1回転位置で停止した状態で前記押し上げ部材に対して前記第1相対回転位置で停止する前記第1状態となり、前記基板保持部は、第2回転位置で停止した状態で前記押し上げ部材に対して前記第2相対回転位置で停止する前記第1状態となり、前記回転機構は、前記昇降機構が前記第1状態で前記第1リフトピンを上昇させた状態で、前記基板保持部を前記第2回転位置に回転させて、前記第2状態で未処理の前記基板を前記第1リフトピンで受け取り、前記第1リフトピンが未処理の前記基板を持ち上げた状態で、前記基板保持部を前記第1回転位置に回転させ、前記昇降機構は、前記第1状態で前記押し上げ部材の下降により前記第1リフトピンを下降させて、未処理の前記基板を前記チャック部に保持させ、前記第2状態で前記押し上げ部材の上昇により前記第2リフトピンを上昇させて、処理済みの前記基板を前記チャック部から前記第2リフトピンで受け取る。
【0018】
基板処理装置の第9の態様は、第4から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記押し上げ部材に連結された可動部材と、固定部材と、前記回転軸についての周方向に沿って前記可動部材を前記固定部材に対してスライド可能に固定するガイドとをさらに備える。
【0019】
基板処理装置の第10の態様は、第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記昇降機構は、前記第1状態で前記押し上げ部材を上昇させて前記第1リフトピンを押し上げ、未処理のダミー基板を外部の搬送装置から前記第1リフトピンで受け取り、前記押し上げ部材を下降させて未処理の前記ダミー基板を前記チャック部に保持させ、前記洗浄処理部によって処理された処理済みの前記ダミー基板を、前記第1状態で前記押し上げ部材を上昇させて前記チャック部から前記第1リフトピンで受け取る。
【0020】
基板処理装置の第11の態様は、第1から第10のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記基板保持部の回転位置を測定する回転センサをさらに備える。
【0021】
基板処理システムの態様は、第1から第11のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置と、前記基板を搬入する搬入部と、前記基板を前記搬入部から受け取り、前記基板処理装置に受け渡す基板受渡し部とを含む。
【0022】
基板処理方法の態様は、基板を水平姿勢で保持するチャック部と、前記チャック部に対して昇降可能に設けられて前記基板を支持する3つ以上の第1リフトピンおよび3つ以上の第2リフトピンと、前記第1リフトピンに連結される第1作用部材と、前記基板の周方向において前記第1作用部材と異なる位置に設けられ、前記第2リフトピンに連結される第2作用部材と、を含む基板保持部を、前記基板の中央部を通り鉛直方向に沿う回転軸について、前記押し上げ部材に対して第1相対回転位置で停止させる第1工程と、前記第1工程の後に、前記基板保持部よりも鉛直下方に設けられ、前記基板保持部が前記第1回転位置で停止した第1状態で前記第1作用部材と鉛直方向において対向する押し上げ部材を、前記基板保持部に対して上昇させて前記第1作用部材を押し上げることにより、前記第1リフトピンを上昇させる第2工程と、前記押し上げ部材に対して第2相対回転位置で前記基板保持部を停止させる第3工程と、前記第3工程の後に、前記基板保持部が前記第2相対回転位置で停止した第2状態で前記第2作用部材と鉛直方向において対向する前記押し上げ部材を、前記基板保持部に対して上昇させて前記第2作用部材を押し上げることにより、前記第2リフトピンを上昇させる第4工程とを備える。
【発明の効果】
【0023】
基板処理装置の第1の態様、基板処理システムの態様および基板処理方法の態様によれば、共通の押し上げ部材で第1リフトピンおよび第2リフトピンを独立して昇降させることができる。よって、第1リフトピン用の押し上げ部材と、第2リフトピン用の押し上げ部材を設ける場合に比して、基板処理装置の構成を簡易にすることができる。
【0024】
基板処理装置の第2の態様によれば、第1リフトピンが未処理の基板を受け取り、第2リフトピンが処理済みの基板を持ち上げる。よって、例えば未処理の基板が汚染していても、第2リフトピンに当該汚染が転写することを回避できる。ひいては、第2リフトピンから処理済みの基板に汚染が転写することも回避できる。
【0025】
基板処理装置の第3の態様によれば、押し上げ部材は第1状態で第1リフトピンの下端部にそれぞれ対向するので、それぞれ第1リフトピンを押し上げることができる。同様に、押し上げ部材は第2状態で第2リフトピンの下端部にそれぞれ対向するので、それぞれ第2リフトピンを押し上げることができる。しかも、押し上げ部材が互いに連結されて一体に昇降するので、簡易な構成で、第1リフトピンおよび第2リフトピンを独立して昇降させることができる。
【0026】
基板処理装置の第4の態様によれば、昇降機構が押し上げ部材により第1リフトピンを上昇させて第1リフトピンが基板を持ち上げた状態で、回転機構が基板保持部および押し上げ部材を一体で回転させることができる。これによれば、第1リフトピンが基板を持ち上げた状態で、基板を回転させることができる。つまり、基板の向きを調整することができる。同様に、昇降機構が押し上げ部材により第2リフトピンを上昇させて第2リフトピンが基板を持ち上げた状態で、回転機構が基板保持部および押し上げ部材を一体で回転させることができる。これによれば、第2リフトピンが基板を持ち上げた状態で、基板の向きを調整することもできる。よって、基板の搬出入時における基板の向きを調整することができる。
【0027】
基板処理装置の第5の態様によれば、基板処理装置への搬出時の基板の向きを、基板処理装置からの搬入時の基板の向きに近づけることができる。
【0028】
基板処理装置の第6および第8の態様によれば、外部の搬送装置から未処理の基板を第1リフトピンで受け取り、外部の搬送装置が処理済みの基板を第2リフトピンから取り出す場合に、同じ回転位置で基板の搬出入を行うことができる。よって、搬送装置における基板の向きを、処理の前後で維持できる。
【0029】
基板処理装置の第7の態様によれば、押し上げ部材の回転位置を初期位置に戻すことができる。
【0030】
基板処理装置の第9の態様によれば、簡易な構成で、押し上げ部材を回転可能に固定できる。
【0031】
基板処理装置の第10の態様によれば、ダミー基板を長期間に亘って保管しつつ、ダミー基板に対して繰り返し処理を行う場合、洗浄処理によってもダミー基板の汚染が残留し得る。しかるに、ダミー基板に対しては第2リフトピンを用いていない。つまり、ダミー基板が汚染されたとしても、通常の処理済みの基板用に用いる第2リフトピンの汚染を抑制できる。ひいては、通常の基板の汚染を抑制できる。
【0032】
基板処理装置の第11の態様によれば、基板の回転位置を高い精度で調整できる。
【0033】
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】基板処理システムの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図3】基板保持部の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図4】チャックピンの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図5】チャックピンの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図6】対向板部の下面の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図7】対向板部の下面の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図8】ピン昇降機構の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図9】ピン昇降機構の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図10】リフトピンの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図11】リフトピンの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図12】基板処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13】ピン昇降機構の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図14】ピン昇降機構の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図15】ピン昇降機構の構成の他の一例を概略的に示す平面図である。
【
図16】ピン昇降機構の構成の他の一例を概略的に示す断面図である。
【
図17】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
【
図18】ピン昇降機構の構成の他の一例を概略的に示す断面図である。
【
図19】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
【
図20】基板処理装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【
図21】基板処理装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【
図22】基板処理装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【
図23】基板処理装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【
図24】リフト部の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図25】リフト部の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0036】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0037】
第1の実施の形態.
<基板処理システムの概略構成>
図1は、基板洗浄装置として機能する基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図1で示されるように、基板処理システム100は、例えば、基板の一例としての半導体基板(ウエハ)9の表面に付着した有機系のゴミを除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。有機系のゴミとしては、例えば、基板9の表面に不純物を注入するイオン注入処理等の後において基板9の表面に残っている不要になったレジスト、あるいは基板9の表面のうちの外周部の近傍に付着しているレジスト等に由来する有機系のゴミ等、が含まれる。
【0038】
基板処理システム100は、収容器としての複数のキャリアCを保持する収容器保持機構としてのロードポートLPと、基板9を処理する複数(この実施の形態では、12台)の処理ユニット110とを含む。具体的には、例えば、平面的に配置されている4台の処理ユニット110でそれぞれ構成されている3組の処理ユニット110が、鉛直方向に積層するように配置されている。
【0039】
基板処理システム100は、さらに、例えば、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御部6とを含む。インデクサロボットIRは、例えば、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板9を搬送することができる。センターロボットCRは、例えば、インデクサロボットIRと各処理ユニット110との間で基板9を搬送することができる。制御部6は、例えば、基板処理システム100に備えられた各部の動作およびバルブの開閉等を制御することができる。
【0040】
ここでは、
図1で示されるように、ロードポートLPと各処理ユニット110とは、水平方向に間隔を空けて配置されている。ロードポートLPにおいて、複数枚の基板9を収容する複数のキャリアCは、平面視したときに水平な配列方向Dに沿って配列されている。ロードポートLPは、基板9を搬入する搬入部として機能する。ここで、インデクサロボットIRは、例えば、キャリアCからセンターロボットCRに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができるとともに、センターロボットCRからキャリアCに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができる。同様に、センターロボットCRは、例えば、インデクサロボットIRから各処理ユニット110に複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができるとともに、各処理ユニット110からインデクサロボットIRに複数枚の基板9を一枚ずつ搬送することができる。また、例えば、センターロボットCRは、必要に応じて複数の処理ユニット110の間において基板9を搬送することができる。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、基板9を搬入部(ロードポートLP)から受け取り、処理ユニット110に受け渡す基板受渡し部として機能する。
【0041】
図1の例では、インデクサロボットIRは、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、インデクサロボットIRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板9を水平な姿勢で支持することができる。インデクサロボットIRはハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、インデクサロボットIRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。インデクサロボットIRは、受渡位置(
図1でインデクサロボットIRが描かれている位置)を通る経路において配列方向Dに沿って移動する。受渡位置は、平面視したときにインデクサロボットIRとセンターロボットCRとが配列方向Dに直交する方向において対向する位置である。インデクサロボットIRは、任意のキャリアCおよびセンターロボットCRにそれぞれハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、インデクサロボットIRはハンドHを移動させることにより、キャリアCに基板9を搬入する搬入動作と、キャリアCから基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、インデクサロボットIRはセンターロボットCRと協働して、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRの一方から他方に基板9を移動させる受渡動作を受渡位置で行うことができる。
【0042】
図1の例では、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと同様に、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、センターロボットCRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板9を水平な姿勢で支持することができる。センターロボットCRは各ハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、センターロボットCRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。センターロボットCRは、平面視したときに、複数台の処理ユニット110に取り囲まれている。センターロボットCRは、任意の処理ユニット110およびインデクサロボットIRの何れかにハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、各処理ユニット110に基板9を搬入する搬入動作と、各処理ユニット110から基板9を搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、センターロボットCRはインデクサロボットIRと協働して、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRの一方から他方に基板9を移動させる受渡動作を行うことができる。
【0043】
<基板処理装置>
図2は、上記処理ユニット110の一つに相当する基板処理装置1の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置1は、基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板9は例えば半導体基板であって、略円板形状を有する。基板9は、デバイス形成面である第1主面91と、デバイス非形成面である第2主面92とを有する。第1主面91には、製造途上のデバイスのパターンが形成される。基板処理装置1は、例えば、デバイスのパターンが形成されていない第2主面92を上方に向けて基板9を保持し、第2主面92に対して処理液による処理を行う。
【0044】
基板処理装置1は、基板保持部2と、基板回転機構3と、洗浄処理部の一例である処理液供給部4とを含む。基板保持部2および基板回転機構3は、箱状のチャンバ(図示省略)内に収容される。当該チャンバは、およそ密閉された内部空間を形成する。
【0045】
基板保持部2は基板9を保持する。
図3は、基板保持部2の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2および
図3に示すように、基板保持部2は、リフト部22と、チャック部23とを含んでいる。チャック部23は基板9を水平姿勢で保持する状態と、基板9の保持を解除する状態とを切り替える。ここでいう水平姿勢とは、基板9の厚み方向が鉛直方向に沿う状態をいう。
【0046】
リフト部22は、3つ以上(
図3の例では3つ)の第1リフトピン221aと、3つ以上(
図3の例では3つ)の第2リフトピン221bとを含む。第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bは、チャック部23によって保持された基板9の第1主面91と鉛直方向において対向する位置に設けられる。例えば、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bは基板9の周縁に沿って並んで設けられる。また、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bはチャック部23に対して互いに独立に昇降可能に設けられる。第1リフトピン221aが上昇することにより、第1リフトピン221aが基板9を支持することができ、第2リフトピン221bが上昇することにより、第2リフトピン221bが基板9を支持することができる。基板保持部2の詳細な一例については後に詳述する。
【0047】
基板回転機構3は回転軸J1のまわりで基板保持部2を回転させる。回転軸J1は、基板保持部2によって保持された基板9の中央部を通り、鉛直方向に沿って延在する軸である。
図2の例では、基板回転機構3は、シャフト部31と、モータ32とを含んでいる。シャフト部31は、回転軸J1を中心とする略円筒状の形状を有しており、その上端が基板保持部2の下面(具体的には、後述の対向板部21の下面212)の中央部に固定される。モータ32はシャフト部31を回転させることにより、基板保持部2を回転軸J1のまわりで回転させる。これにより、基板保持部2によって保持された基板9も回転軸J1のまわりで回転する。
【0048】
基板回転機構3は、回転軸J1を中心とする周方向において基板保持部2を所定の角度位置(以下、「回転位置」という。)にて停止させることが可能である。例えばモータ32がシャフト部31を所定の回転位置で停止させることにより、基板保持部2を所定の回転位置で停止させることができる。
【0049】
処理液供給部4は、基板保持部2によって保持された基板9の第2主面92に処理液を供給する。
図2の例では、処理液供給部4は、液ノズル41と、処理液供給源42とを含んでいる。液ノズル41はチャンバ内においてノズルアーム411により支持される。ノズルアーム411は図示省略のノズル移動機構に接続される。ノズル移動機構は液ノズル41を、基板9の第2主面92の中央部に対向する吐出位置と、鉛直方向に垂直な方向において基板9から離れた待機位置との間で移動させる。液ノズル41は弁を介して処理液供給源42に接続される。処理液供給源42から液ノズル41に処理液が供給されることにより、液ノズル41から第2主面92の中央部に向けて当該処理液が吐出される。
図2の処理液供給源42は、薬液、有機溶剤または純水(脱イオン水(DIW))等の処理液を順次切り替えて液ノズル41に供給可能である。薬液として、オゾン含有フッ酸溶液、希フッ酸(DHF)、バッファードフッ酸(BHF)またはSC1(NH
4OHおよびH
2O
2を含む液)等が例示される。有機溶剤として、イソプロピルアルコール(IPA)が例示される。
【0050】
図2の例では、基板処理装置1には、不活性ガス供給部5が設けられている。不活性ガス供給部5は基板9の第1主面91へと不活性ガスを供給する。
図2の例では、不活性ガス供給部5は、ガスノズル51と、不活性ガス供給源52とを含む。
図2の例では、基板保持部2およびシャフト部31には、鉛直方向に延びる中空部が回転軸J1上に設けられており、ガスノズル51が当該中空部内に配置される。ガスノズル51は鉛直方向に延びており、ガスノズル51の上端面は基板9の第1主面91の中央部に直接的に対向する。
【0051】
ガスノズル51は弁を介して不活性ガス供給源52に接続される。不活性ガス供給源52からガスノズル51に不活性ガスが供給されることにより、ガスノズル51から第1主面91と基板保持部2(具体的には、後述の対向板部21)との間の空間に向けて、不活性ガスが噴出される。不活性ガスは、典型的には窒素ガスである。不活性ガスが、アルゴンガス、ヘリウムガスまたは低湿度の清浄空気等であってもよい。
【0052】
次に、基板保持部2の構成の詳細な一例について説明する。
図2および
図3の例では、基板保持部2は対向板部21を含んでいる。対向板部21は、回転軸J1を中心とする略円板状の形状を有する。基板保持部2は対向板部21よりも上方において基板9を保持しており、対向板部21の上方を向く面は、基板9の下方を向く第1主面91に対向する対向面211である。対向面211は回転軸J1に垂直な方向に広がる。対向面211の外周縁は基板9よりも外側に位置している。言い換えれば、対向面211の外径は基板9の径よりも大きい。
【0053】
図2および
図3の例では、チャック部23は、複数のチャックピン231と、チャック駆動機構25とを含んでいる。複数のチャックピン231は基板9の周縁部94に沿って並んで配列される。
図3の例では、複数のチャックピン231は、基板9よりも僅かに大きな径を有する基準円C1に沿って略等間隔で配列されている。
図3の例では、6つのチャックピン231が周方向に60度間隔で配列されている。
【0054】
図3に例示するように、対向板部21の対向面211において、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bの各々も周方向に略等間隔で配列される。第1リフトピン221aは第1リフトピン群を構成し、第2リフトピン221bは第2リフトピン群を構成する。なお、以下では、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bを区別しないときには、これらをリフトピン221と総称する。
【0055】
図3の例では、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bは、チャックピン231と同様に、基準円C1に沿って並んで配列される。より具体的には、6つのリフトピン221および6つのチャックピン231が基準円C1において30度間隔で交互に配列されている。また、
図3の例では、3つの第1リフトピン221aは周方向に120度間隔で配列され、3つの第2リフトピン221bも周方向に120度間隔で配列されている。つまり、リフトピン221のみに着目すると、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bが周方向に60度間隔で交互に配列されている。
【0056】
対向面211には、複数の穴部213および複数の穴部215が設けられる。鉛直方向に垂直な穴部213および穴部215の断面形状は、略円形である。複数のリフトピン221は複数の穴部215にそれぞれ挿入され、複数のチャックピン231は複数の穴部213にそれぞれ挿入される。リフトピン221の穴部215における断面形状も略円形であり、チャックピン231の穴部213における断面形状も略円形である。
図3の例では、リフトピン221の直径はチャックピン231の直径よりも小さい。各穴部215の直径はリフトピン221に合わせた値をとり、各穴部213の直径はチャックピン231に合わせた値をとる。
【0057】
図2に示すように、穴部213にはベアリング214が設けられており、穴部213の回動軸J2を中心として、チャックピン231がベアリング214によって回動可能に支持される。以下の説明では、回動軸J2を「チャック回動軸J2」という。基板保持部2の一例では、穴部213に設けられる図示省略の係止部材により、チャックピン231が回動可能な範囲が、所定の角度範囲(後述の保持位置と開放位置とを含む角度範囲)に制限されている。
【0058】
図4は、回転軸J1についての周方向に沿って見たチャックピン231の構成の一例を概略的に示す図であり、
図5は、チャックピン231の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図4および
図5では、角度位置が保持位置となるチャックピン231を示している。
【0059】
図4および
図5の例では、各チャックピン231は、支持体2311と、突出部230とを含んでいる。支持体2311は穴部213の内部においてベアリング214に連結される。支持体2311の上面には、上方に突出する突出部230が設けられている。
図5の例では、2つの突出部230が設けられる。2つの突出部230はチャック回動軸J2から、回転軸J1についての周方向にずれた位置に配置される。また、2つの突出部230は回転軸J1についての周方向において互いに離れている。このように、2つの突出部230の間に隙間が設けられることにより、後述する基板9の処理の際に、第2主面92に供給された処理液が当該隙間を介して第2主面92から排出される。周方向に沿って見た場合に、2つの突出部230はほぼ同じ外形を有する。
【0060】
各突出部230はチャック当接面232を有する。チャック当接面232は、突出部230の回転軸J1側(
図4の右側)を向く側面である。既述のように、突出部230はチャック回動軸J2から周方向にずれた位置に配置されており、チャックピン231の回動により、チャック当接面232は水平方向に移動可能である。
図4の例では、チャック当接面232は、上側当接面233と、湾曲当接面234と、下側当接面235とを有する。保持位置で停止したチャックピン231において、上側当接面233は、回転軸J1側かつ下方を向く平面であり、上方に向かうにしたがって回転軸J1に近づく。すなわち、上側当接面233は回転軸J1側に向かって上方に傾斜する。例えば、回転軸J1を含むとともに径方向に沿う面F2(
図5中に一点鎖線で示す。)に対して、上側当接面233は直交する。上側当接面233の上端は突出部230の上端面に連続する。
図4は、一方の突出部230に対してのみ面F2を示しているが、他方の突出部230についても同様の面が設定可能である。
【0061】
下側当接面235は、回転軸J1側かつ上方を向く平面であり、上側当接面233よりも下方に配置される。下側当接面235は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。例えば、上記面F2に対して、下側当接面235は直交する。面F2上において、下側当接面235の対向面211(水平面)に対する傾斜角θ4(
図4参照)は、上側当接面233と対向面211(水平面)とがなす角度とほぼ同じである。
【0062】
湾曲当接面234は、回転軸J1側を向く曲面であり、上側当接面233と下側当接面235との間に配置される。湾曲当接面234は上側当接面233と下側当接面235とに直接的に連続する。例えば、上記面F2に対して、湾曲当接面234は直交する。面F2上における湾曲当接面234の形状は、基板9の端面93の形状にほぼ一致する。チャック当接面232では、鉛直方向における湾曲当接面234の中央が、回転軸J1から最も離れた位置となる。
図4の例では、保持位置で停止したチャックピン231では、湾曲当接面234の中央と回転軸J1との間の距離は、基板9の半径にほぼ一致する。したがって、
図4の例では、複数のチャックピン231がそれぞれの保持位置で停止した状態において、複数のチャックピン231における湾曲当接面234が基板9の端面93に当接する。実際には、基板9の端面93の上側近傍および下側近傍(後述の上側接続部および下側接続部)もチャック当接面232に当接し、基板9の周縁部94が回転軸J1に向けて押されるとともに、上方および下方にも押される。これにより、チャック部23は基板9を強固に保持することが可能である。
【0063】
ここで、基板9の周縁部94は、端面93と第2主面92とを接続する上側接続部、端面93と第1主面91とを接続する下側接続部、並びに、当該端面93を含むベベル部である。基板9の直径が300mmである場合、基板9の周縁部94は、例えば端面93から回転軸J1側に向かって2mmの幅の環状領域を含む。
【0064】
既述のように各チャック当接面232は、チャック回動軸J2からずれた位置に配置されており、
図5中に二点鎖線で示すように、開放位置で停止したチャックピン231の各突出部230では、チャック当接面232と回転軸J1との間の距離が、保持位置で停止した状態での当該距離よりも大きくなる。すなわち、開放位置で停止したチャックピン231では、湾曲当接面234の中央と回転軸J1との間の距離が、基板9の半径よりも大きくなる。したがって、複数のチャックピン231がそれぞれの開放位置で停止した状態では、複数のチャックピン231における湾曲当接面234が基板9の端面93から離れ、基板9の保持が解除される。
【0065】
チャック駆動機構25は、チャックピン231をチャック回動軸J2のまわりで回動させることにより、突出部230を保持位置と開放位置との間で移動させる。チャック駆動機構25が全てのチャックピン231の突出部30をそれぞれの保持位置に移動させることにより、複数のチャックピン231が基板9を保持する。チャック駆動機構25が全てのチャックピン231の突出部30をそれぞれの開放位置に移動させることにより、複数のチャックピン231による基板9の保持が解除される。
【0066】
ここでは一例として、チャック駆動機構25は磁力を利用してチャックピン231を駆動する。
図6は、対向板部21の下面212の一例を概略的に示す図である。
図2および
図6に示すように、チャック駆動機構25は、複数の回動磁石251と、複数の閉塞磁石252とを含む。回動磁石251および閉塞磁石252は例えば永久磁石である。実際には、回動磁石251および閉塞磁石252は専用の保持部材内に収容されるが、
図2および
図6では、保持部材の図示を省略している。後述の開放磁石253においても同様である。
【0067】
複数のチャックピン231(より具体的には支持体2311)の下端部は、対向板部21の下面212よりも下方に突出しており、回動磁石251は複数のチャックピン231の下端部にそれぞれ取り付けられる。回動磁石251の磁極の向き(磁化方向)は、例えば、回転軸J1およびチャック回動軸J2に垂直である。
【0068】
対向板部21の下面212において、閉塞磁石252は複数の回動磁石251の近傍にそれぞれ固定される。後述の開放磁石253が回動磁石251の近傍に位置しない状態では、回動磁石251と閉塞磁石252との間の磁気的吸引力により、例えば回動磁石251のN極が回転軸J1とは反対側に位置し、S極が回転軸J1側に位置する。これにより、回動磁石251が取り付けられたチャックピン231では、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図5に示す保持位置となる。
図6では、各磁石のN極側の部位にハッチングを付している(後述の
図7において同様)。本実施の形態では、磁石間の磁気的吸引力が利用されるが、もちろん、磁気的反発力が利用されてもよい。
【0069】
図2を参照して、チャック駆動機構25は、開放磁石253と、磁石昇降機構254とをさらに含む。開放磁石253は例えば永久磁石である。開放磁石253は対向板部21よりも下方において、対向板部21とは独立して設けられている。開放磁石253は、例えば、回転軸J1を中心とする略円環状の形状を有する。
【0070】
開放磁石253の磁極の向き(磁化方向)は、回転軸J1を中心とする径方向に沿う。例えば、開放磁石253のN極が回転軸J1側に配置され、S極が回転軸J1とは反対側に配置される。
【0071】
対向板部21を鉛直方向に沿って見た場合に、開放磁石253は複数の回動磁石251の回転軸J1側近傍に配置される。
図2の状態では、開放磁石253は、対向板部21の下面212から十分に離れた位置(以下、「離間位置」という。)で停止している。離間位置で停止した開放磁石253は、回動磁石251に対して磁気的な影響をほとんど与えない。
【0072】
磁石昇降機構254は対向板部21の下方に設けられる。磁石昇降機構254は例えばエアシリンダを有し、エアシリンダのピストンロッドの先端に開放磁石253が取り付けられる。磁石昇降機構254がピストンロッドを上昇させることにより、
図2中に二点鎖線で示すように、開放磁石253が対向板部21の下面212に近接した位置(以下、「近接位置」という。)まで上昇する。これにより、
図2に示すように、開放磁石253が複数の回動磁石251の回転軸J1側近傍に移動する。
【0073】
図7は、対向板部21の下面212の一例を概略的に示す図であり、開放磁石253が近接位置で停止した状態を示している。
図7の状態では、回動磁石251と開放磁石253との間の磁気的吸引力が、回動磁石251と閉塞磁石252との間の磁気的吸引力よりも大きくなる。これにより、回動磁石251がチャック回動軸J2のまわりで回転して、回動磁石251のN極が回転軸J1側に位置し、S極が回転軸J1とは反対側に位置する。これにより、回動磁石251が取り付けられたチャックピン231では、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図5に示す開放位置となる。
【0074】
磁石昇降機構254がピストンロッドを下降させると、開放磁石253が回動磁石251から下方に離れ、チャックピン231における角度位置が保持位置に戻される。なお、磁石昇降機構254は、モータ等を用いて開放磁石253を昇降させる機構(例えばボールねじ機構)であってもよい。
【0075】
後述する処理液による基板9の処理では、制御部6の制御により、チャック駆動機構25が、開放磁石253を近接位置で停止させた状態と、開放磁石253を離間位置で停止させた状態とを切り替える。これにより、複数のチャックピン231により基板9を保持する状態と、複数のチャックピン231による基板9の保持を解除する状態とが切り替えられる。
【0076】
次に、リフト部22の一例について詳述する。各リフトピン221は、対向板部21の穴部215において昇降可能に設けられる。各穴部215は鉛直方向において対向板部21を貫通する。対向板部21には、リフトピン221の落下を回避するためのストッパ(図示省略)が設けられる。例えば、対向板部21の下面212における穴部215の径はリフトピン221の下端面の径よりも小さく設定されてもよい。これにより、リフトピン221の下端面の周縁部が対向板部21の穴部215の底面部に当接する。よって、リフトピン221の落下を回避することができる。以下では、各リフトピン221がストッパに当接する位置を下位置と呼ぶ。
【0077】
対向板部21の各穴部215内には、リフトピン221を下方に押圧する付勢部材(例えば、ばね)が設けられてもよい。これにより、リフトピン221を下方に押圧して下位置で停止させることができる。
【0078】
図2を参照して、リフト部22はピン昇降機構24をさらに含む。ピン昇降機構24は基板保持部2の対向板部21よりも下方に設けられ、リフトピン221を昇降させる。ピン昇降機構24は、押し上げ部材241と、部材昇降機構242とを含んでいる。押し上げ部材241は、基板保持部2の対向板部21よりも下方において、基板保持部2に対して昇降可能に設けられる。部材昇降機構242は押し上げ部材241を昇降させる。部材昇降機構242は例えばエアシリンダを含み、エアシリンダのピストンロッドの先端が押し上げ部材241に連結される。なお、部材昇降機構242は、モータ等を用いて押し上げ部材241を昇降させる機構であってもよい。
【0079】
図8は、ピン昇降機構24の構成の一例を概略的に示す平面図である。押し上げ部材241は平面視において基準円C1上に配列されている。言い換えれば、押し上げ部材241は、リフトピン221が並ぶ仮想的な基準円C1上に設けられる。
図8の例では、第1リフトピン221aまたは第2リフトピン221bと同数の3つの押し上げ部材241が設けられている。3つの押し上げ部材241は第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bと同様に、周方向に120度間隔で配列されている。
図2の例では、各押し上げ部材241は、鉛直方向に沿って延在する棒状の形状(例えば円柱形状)を有している。
【0080】
3つの押し上げ部材241は、基板保持部2が第1回転位置で停止した第1状態において、それぞれ3つの第1リフトピン221aと鉛直方向において対向する。なお、基板保持部2の回転位置とは、例えば基板処理装置1の床面に対する絶対的な回転位置である。ここで、基板保持部2の押し上げ部材241に対する相対的な回転位置(以下、相対回転位置と呼ぶ)も導入する。基板保持部2が第1相対回転位置で停止した第1状態において、押し上げ部材241が第1リフトピン221aと鉛直方向において対向する。第1の実施の形態では、押し上げ部材241は回転軸J1のまわりで回転しないので、相対回転位置は回転位置(絶対回転位置)と等しい。
【0081】
図8では、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bも模式的に示されている。
図8の例では、平面視において、3つの第1リフトピン221aはそれぞれ3つの押し上げ部材241と重なっている。つまり、
図8においては、基板保持部2が第1回転位置(第1相対回転位置)で停止した第1状態での第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bの位置が示されている。
【0082】
また、3つの押し上げ部材241は、基板保持部2が第2回転位置で停止した第2状態において、それぞれ3つの第2リフトピン221bと鉛直方向において対向する。押し上げ部材241に対する相対回転位置で説明すると、基板保持部2が第2相対回転位置で停止した第2状態において、押し上げ部材241が第2リフトピン221bと鉛直方向において対向する。上述のように、第1の実施の形態では相対回転位置は回転位置と等しいので、以下では、主として回転位置を用いて説明する。ここでは、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bは周方向に60度間隔で交互に配列されているので、第2回転位置は、第1回転位置から60・n(nは自然数)度回転させて得られる角度位置である。
【0083】
図9は、ピン昇降機構24の構成の一例を概略的に示す平面図である。ただし、
図9では、基板保持部2が第2回転位置で停止した第2状態での第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bが模式的に示されている。
図9の例では、平面視において、3つの第2リフトピン221bはそれぞれ3つの押し上げ部材241と重なっている。
【0084】
部材昇降機構242は押し上げ部材241を昇降させる。図示の例では、3つの押し上げ部材241は連結部材243によって互いに連結されている。連結部材243は、例えば、回転軸J1を中心とした略円環状の板状形状を有している。連結部材243の上面には、3つの押し上げ部材241の下端が連結される。言い換えれば、各押し上げ部材241は連結部材243の上面から上方に延在する。部材昇降機構242は3つの押し上げ部材241および連結部材243を一体で昇降させる。なお、押し上げ部材241は必ずしも相互に連結されている必要はなく、3つの押し上げ部材241のそれぞれに部材昇降機構242が設けられてもよい。
【0085】
押し上げ部材241の上端部は、鉛直方向に垂直な断面において、対向板部21の穴部215よりも小さい面積を有しており、穴部215に下方から遊挿可能である。
【0086】
部材昇降機構242は、基板保持部2が第1回転位置で停止した第1状態(
図8参照)において、3つの押し上げ部材241を上昇させる。これにより、3つの押し上げ部材241の上端がそれぞれ3つの第1リフトピン221aの下面に当接する。部材昇降機構242が3つの押し上げ部材241をさらに上昇させることにより、3つの押し上げ部材241がそれぞれ3つの第1リフトピン221aを上方に押し上げる。これにより、3つの第1リフトピン221aが上昇する。このとき、押し上げ部材241の上端部は対向板部21の穴部215に遊挿される。部材昇降機構242は所定位置まで押し上げ部材241を上昇させることにより、第1リフトピン221aが所定の上位置まで上昇する。この上位置において、第1リフトピン221aの先端はチャックピン231の上端よりも上方に位置する。
【0087】
また、部材昇降機構242はこの状態から3つの押し上げ部材241を下降させる。これにより、3つの押し上げ部材241によって支持された3つの第1リフトピン221aは上位置から下降する。部材昇降機構242は、押し上げ部材241の上端が対向板部21の下面212よりも下方に位置するまで押し上げ部材241を下降させる。これにより、3つの第1リフトピン221aが下位置で停止する。
【0088】
また、部材昇降機構242は、基板保持部2が第2回転位置で停止した第2状態(
図9参照)において、3つの押し上げ部材241を上昇させる。これにより、3つの押し上げ部材241の上端がそれぞれ3つの第2リフトピン221bの下面に当接する。部材昇降機構242が3つの押し上げ部材241をさらに上昇させることにより、3つの押し上げ部材241がそれぞれ3つの第2リフトピン221bを押し上げる。これにより、3つの第2リフトピン221bが上昇する。このとき、押し上げ部材241の上端部は対向板部21の穴部215に遊挿される。部材昇降機構242は所定の位置まで押し上げ部材241を上昇させることにより、第2リフトピン221bを所定の上位置まで上昇させる。この上位置において、第2リフトピン221bの先端はチャックピン231の上端よりも上方に位置する。第2リフトピン221bについての上位置は例えば第1リフトピン221aについての上位置と略等しい。
【0089】
また、部材昇降機構242はこの状態から3つの押し上げ部材241を下降させる。これにより、3つの押し上げ部材241によって支持された3つの第2リフトピン221bは下降する。部材昇降機構242は、押し上げ部材241の上端が対向板部21の下面212よりも下方に位置するまで押し上げ部材241を下降させる。これにより、3つの第2リフトピン221bが下位置で停止する。
【0090】
なお、第1リフトピン221aを上昇させる際に、押し上げ部材241が押圧する部材を第1作用部材と呼ぶと、上述の例では、この第1作用部材は第1リフトピン221aの下端部に相当する。また、第2リフトピン221bを上昇させる際に、押し上げ部材241が押圧する部材を第2作用部材と呼ぶと、上述の例では、この第2作用部材は第2リフトピン221bの下端部に相当する。
【0091】
図10は、回転軸J1についての周方向に沿って見たリフトピン221の構成の一例を概略的に示す図であり、
図11は、リフトピン221の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図10および
図11の例では、各リフトピン221は、支持体2211と、突出部220とを含む。支持体2211の鉛直方向に垂直な断面形状は例えば略円形である。支持体2211の上面には、上方に突出する突出部220が設けられる。例えば、突出部220は、回転軸J1を含むとともに径方向に沿う面F1(
図11中に一点鎖線で示す。)に関して対称形状を有する。突出部220は、リフト支持面222と、リフト案内面224と、リフト補助案内面226とを有する。
【0092】
リフト支持面222は、およそ上方を向く面であり、回転軸J1側(
図10および
図11の右側)に向かうにしたがって対向面211に近づく。すなわち、リフト支持面222は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。また、リフト支持面222は、面F1から周方向(
図11のおよそ上下方向)の両側に向かって下方に傾斜する2つの面2221を有する。2つの面2221は面F1上において鈍角で互いに交差する。すなわち、リフト支持面222は、2つの面2221が交差する角部223を有する。角部223は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。後述するように、複数のリフトピン221が基板9を支持する際には、典型的には、各リフトピン221の角部223が基板9の周縁部94の下面側部分とほぼ点接触する。また、リフト支持面222の対向面211(水平面)に対する傾斜角θ1は、チャックピン231の下側当接面235の傾斜角θ4(
図4参照)よりも小さい。すなわち、下側当接面235の勾配はリフト支持面222よりも大きい。
【0093】
リフト案内面224は、およそ回転軸J1側を向く面であり、リフト支持面222に対して回転軸J1とは反対側に連続する。リフト案内面224も回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。リフト案内面224は、面F1から周方向の両側に向かって広がる2つの面2241を有する。2つの面2241は面F1上において鈍角で互いに交差する。すなわち、リフト案内面224は、2つの面2241が交差する角部225を有する。角部225は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。面F1上において、リフト案内面224の対向面211(水平面)に対する傾斜角θ2(
図10中に二点鎖線で示すリフトピン221参照)は、リフト支持面222の当該傾斜角θ1よりも大きい。換言すると、リフト案内面224の勾配はリフト支持面222よりも大きい。面F1上において、リフト案内面224の下端と回転軸J1との間の距離は基板9の半径よりも僅かに大きい。
【0094】
リフト補助案内面226は、回転軸J1側かつ上方を向く面であり、リフト案内面224に対して回転軸J1とは反対側に連続する。リフト補助案内面226も回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。リフト補助案内面226は、面F1から周方向の両側に向かって広がる2つの面2261を有する。2つの面2261は面F1上において鈍角で互いに交差する。すなわち、リフト補助案内面226は、2つの面2261が交差する角部227を有する。角部227は回転軸J1側に向かって下方に傾斜する。面F1上において、リフト補助案内面226の対向面211(水平面)に対する傾斜角θ3(
図10中に二点鎖線で示すリフトピン221参照)は、リフト案内面224の当該傾斜角θ2よりも小さく、リフト支持面222の当該傾斜角θ1よりも大きい。換言すると、リフト補助案内面226はリフト案内面224よりも勾配が小さく、リフト支持面222よりも勾配が大きい。
【0095】
リフトピン221が下位置で停止した状態において、リフトピン221の支持体2211の上面が、対向面211と同じ高さ、または、対向面211よりも僅かに上方に位置する。したがって、後述する処理液による処理の際に、リフトピン221の支持体2211の上面の上に処理液はほとんど溜まらない。また、リフト支持面222におけるリフト案内面224の近傍には、2つの排液溝228が形成される。2つの排液溝228はリフト支持面222の角部223に対して周方向の両側に配置される。各排液溝228は角部223の近傍から面2221の縁まで周方向に連続する。排液溝228の底面は角部223から離れるにしたがって下方に傾斜する。処理液による処理の際に、基板9とリフト支持面222との間に入り込んだ処理液が排液溝228により適切に排出される。
【0096】
リフトピン221は既述のように、押し上げ部材241によって押し上げられて、上位置まで上昇する(
図10中の二点鎖線)。また、リフトピン221は押し上げ部材241の下降に伴って下降して、下位置まで下降する(
図10中の実線)。
【0097】
制御部6は基板処理装置1の各部の動作を制御することができる。具体的には、制御部6は、基板回転機構3のモータ32、処理液供給部4の弁、不活性ガス供給部5の弁、ノズル移動機構、ピン昇降機構24の部材昇降機構242およびチャック駆動機構25の磁石昇降機構254を制御することができる。
【0098】
制御部6は電子回路であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部6が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部6が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部6が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
【0099】
図2の例では、基板処理装置1には、回転センサ7が設けられている。回転センサ7は例えばエンコーダであって、基板保持部2の回転位置を測定する。回転センサ7は、測定した回転位置を示す測定信号を制御部6に出力する。制御部6は回転センサ7からの測定信号に基づいて、基板回転機構3を制御する。これにより、基板回転機構3は高い精度で基板保持部2の回転位置を制御することができる。また、基板回転機構3は高い精度で基板保持部2の回転速度を制御することもできる。
【0100】
図12は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。チャック駆動機構25は、初期的には、複数のチャックピン231の角度位置が開放位置となるように、チャックピン231を駆動している。上述の例に即して説明すれば、磁石昇降機構254は初期的には開放磁石253を近接位置で停止させる。また、ピン昇降機構24は、初期的には、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bを下位置で停止させている。
【0101】
まず、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置で停止させる(ステップS1)。この状態では、3つの押し上げ部材241はそれぞれ3つの第1リフトピン221aと鉛直方向において対向する(
図8参照)。次に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を上昇させる(ステップS2)。これにより、押し上げ部材241が第1リフトピン221aを押し上げて、第1リフトピン221aを上位置まで上昇させる(
図10中の二点鎖線も参照)。
【0102】
次に、センターロボット(搬送装置)CRは未処理の基板9を3つの第1リフトピン221aの上に載置する(ステップS3)。具体的には、センターロボットCRは、第1主面91が下方を向き第2主面92が上方を向いた状態で、基板9をハンドHの上に載置している。センターロボットCRはこのハンドHを基板保持部2の上方に移動させた上で、ハンドHを下降させる。この下降中に、基板9がハンドHから3つの第1リフトピン221aの上に受け渡される。これにより、基板9は3つの第1リフトピン221aによって水平姿勢で支持される。具体的には、基板9の周縁部94が3つの第1リフトピン221aのリフト支持面222により下方から支持される。典型的には、3つの第1リフトピン221aは基板9の周縁部94とのみ接触する。好ましくは、各リフト支持面222の角部223が周縁部94とほぼ点接触する。
【0103】
ハンドHから第1リフトピン221aに基板9を受け渡す際に、仮に、ハンドH上の基板9の中心が回転軸J1からずれている場合でも、基板9の端面93が第1リフトピン221aのリフト案内面224と当接することにより、基板9の中心が回転軸J1に近づけられる。すなわち、基板9の偏心が調整される。このとき、端面93は、例えば、リフト案内面224の角部225と接触する。ここでは、回転軸J1に対して、基板9の中心が回転軸J1に垂直ないずれの方向にずれている場合でも、周方向に等間隔で配列された3つの第1リフトピン221aにより、基板9の中心を回転軸J1に精度よく近づけることが可能である。センターロボットCRは基板9を第1リフトピン221aに受け渡した後に、ハンドHを基板処理装置1から退避させる。
【0104】
次に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を下降させて第1リフトピン221aを下位置まで下降させる(ステップS4)。これにより、第1リフトピン221aによって支持された基板9も下降する。チャック部23は、下降した基板9を保持する。具体的には、磁石昇降機構254が開放磁石253を近接位置から離間位置まで下降させることにより、複数のチャックピン231が開放位置から保持位置に移動(回動)する。各チャックピン231における開放位置から保持位置への移動では、まず、複数のリフト支持面222により支持された基板9の周縁部94が、
図4に示すチャックピン231の下側当接面235に当接し、続いて、回転軸J1側へと向かう下側当接面235に案内されて基板9が上方に僅かに移動する。そして、基板9の端面93が、リフト支持面222よりも上方に位置する湾曲当接面234に当接する。これにより、基板9を複数のリフト支持面222の全てから上方に離間させた状態で、複数のチャックピン231により基板9が水平に保持される。典型的には、複数のチャックピン231は基板9の周縁部94とのみ接触する。
【0105】
次に、基板処理装置1は基板9に対する処理を行う(ステップS5)。例えば
図2に示す不活性ガス供給部5により、基板9の第1主面91と対向板部21の対向面211との間の空間への不活性ガスの供給が開始される。また、基板回転機構3により、液処理回転速度(回転数)での基板9の回転が開始される。基板9は水平姿勢で基板保持部2とともに回転する。液処理回転速度は例えば300~1500rpmである。
【0106】
続いて、処理液供給部4による基板9の第2主面92への処理液の供給が開始される。第2主面92では、基板9の回転による遠心力により処理液が基板9の周縁部94に向かって広がり、第2主面92の全体に処理液が供給される。基板9に処理液を供給している間も、第1主面91側への不活性ガスの供給は継続される。処理液供給部4では、例えば、所定の薬液が第2主面92に供給され、その後、純水が供給される(洗浄処理)。なお、この処理において、処理液に加えて、ブラシ等を用いた処理が行われてもよい。また、処理液供給部4では、薬液および純水が異なる液ノズルから吐出されてもよい。
【0107】
処理液の供給が停止されると、基板回転機構3が基板9の回転速度を液処理回転速度よりも高くすることにより、基板9の乾燥処理(スピンドライ)が行われる。この基板9の乾燥により、基板9に対する処理が実質的に終了する。
【0108】
次に、基板回転機構3は基板保持部2を第2回転位置で停止させる(ステップS6)。この状態では、3つの押し上げ部材241はそれぞれ3つの第2リフトピン221bと鉛直方向において対向する(
図9参照)。
【0109】
次に、チャック部23が基板9の保持を解除しつつ、部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させる(ステップS7)。具体的には、まず磁石昇降機構254が開放磁石253を開放位置から近接位置まで上昇させる。これにより、チャックピン231が保持位置から開放位置に移動(回動)し、基板9の保持が解除される。各チャックピン231における保持位置から開放位置への移動では、
図4に示すチャック当接面232が回転軸J1とは反対側へと向かうことにより、下側当接面235に基板9の周縁部94が当接した状態で、基板9が下方に僅かに移動する。そして、この状態で、部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させることにより、押し上げ部材241が第2リフトピン221bを押し上げて第2リフトピン221bを上位置まで上昇させる。これにより、第2リフトピン221bは基板9をチャック部23から受け取り、基板9の周縁部94を支持して持ち上げる。このとき、基板9の周縁部94は3つの第2リフトピン221bのリフト支持面222により下方から支持される。典型的には、3つの第2リフトピン221bは基板9の周縁部94とのみ接触する。好ましくは、各リフト支持面222の角部223が周縁部94とほぼ点接触する。
【0110】
次に、センターロボットCRは処理済みの基板9を第2リフトピン221bから取り出す(ステップS8)。具体的には、センターロボットCRが、基板9の第1主面91と対向板部21との間にハンドHを進入させ、その後、ハンドHを上昇させることにより、基板9を第2リフトピン221bから持ち上げる。センターロボットCRは、基板9が載置されたハンドHを基板処理装置1から退避させる。これにより、基板9が基板処理装置1の外部へと搬出される。
【0111】
次に、部材昇降機構242が押し上げ部材241を下降させて、第2リフトピン221bを下位置まで下降させる(ステップS9)。以上により、基板処理装置1における基板9の処理が完了する。
【0112】
以上のように、基板処理装置1によれば、未処理の基板9を第2リフトピン221bではなく第1リフトピン221aで受け取る(ステップS3)。つまり、第1リフトピン221aは未処理の基板9の搬入時に用いられるのに対して、第2リフトピン221bは未処理の基板9の搬入時には用いられない。よって、未処理の基板9が汚染されていたとしても、その汚染は第1リフトピン221aには転写され得るものの、第2リフトピン221bには転写されない。したがって、第2リフトピン221bは第1リフトピン221aよりも清浄である。
【0113】
また、この基板処理装置1によれば、洗浄処理が行われた処理済みの清浄な基板9を第1リフトピン221aではなく第2リフトピン221bで支持する(ステップS7)。つまり、汚染度の低い第2リフトピン221bは処理済みの清浄な基板9の搬出時に用いられるのに対して、汚染度の高い第1リフトピン221aは処理済みの清浄な基板9の搬出時には用いられない。よって、第1リフトピン221aから処理済みの基板9への汚染の転写を回避できる。第2リフトピン221bは第1リフトピン221aよりも清浄であるので、第2リフトピン221bによる処理済みの基板9への汚染も抑制することができる。
【0114】
しかも、基板処理装置1によれば、共通の押し上げ部材241によって、第1リフトピン221aの昇降および第2リフトピン221bの昇降を互いに独立して行う(ステップS2およびステップS7)。つまり、押し上げ部材241は第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bの両方に共通に用いられる。よって、特許文献1のように、第1リフトピン221aに専用の昇降アクチュエータと、第2リフトピン221bに専用の昇降アクチュエータの両方が設けられた構造に比して、基板処理装置1の構造を簡易にできる。ひいては、基板処理装置1の製造コストを低減することができる。
【0115】
さらに、基板処理装置1によれば、押し上げ部材241が第1リフトピン221aと対向する状態と、押し上げ部材241が第2リフトピン221bと対向する状態とを、基板回転機構3による基板保持部2の回転によって切り替えている(ステップS1およびステップS6)。つまり、基板9の処理に必要な基板回転機構3を利用して、押し上げ部材241の基板保持部2に対する位置合わせを行っている。したがって、押し上げ部材241および連結部材243を回転軸J1のまわりで一体に回転させる回転機構を新たに設ける場合に比して、基板処理装置1の構成をより簡易にでき、また、製造コストを低減することができる。
【0116】
なお、上述の例では、基板9の下方を向く第1主面91がデバイス形成面であるので、リフトピン221は基板9の周縁部94を支持している。つまり、リフトピン221が第1主面91上に形成されたパターンに接触しないように、基板9の周縁部94を支持している。しかしながら、基板9は、デバイス非形成面である第2主面92が下方を向く状態で、基板保持部2に保持されてもよい。この場合、リフトピン221はより回転軸J1に近い位置に設けられてもよい。言い換えれば、リフトピン221はチャックピン231よりも回転軸J1に近い位置に設けられてもよい。このとき、リフトピン221はより回転軸J1に近い位置で基板9の第2主面92を支持する。この場合、リフトピン221は先細形状を有して、基板9の第2主面とほぼ点接触してもよい。
【0117】
また、上述の例では、3つの第1リフトピン221aは周方向に互いに略等間隔に配列され、3つの第2リフトピン221bは周方向に互いに略等間隔に配列され、3つの押し上げ部材241は周方向に互いに略等間隔に配列された。しかしながら、基板保持部2が第1回転位置で停止した第1状態で、3つの押し上げ部材241がそれぞれ3つの第1リフトピン221aと対向し、かつ、基板保持部2が第2回転位置で停止した第2状態で、3つの押し上げ部材241がそれぞれ3つの第2リフトピン221bと対向する限りにおいて、第1リフトピン221a、第2リフトピン221bおよび押し上げ部材241の配列は上記に限らない。
【0118】
第2の実施の形態.
基板9の周縁にノッチが形成される場合がある。ノッチとは、基板9の周縁に形成された凹部であり、平面視において基板9の中心側に凹む。例えばノッチは平面視において略V字状に形成される。このノッチは、基板9の向きを示すことができる。
図1のキャリアC内において、基板9は、そのノッチの周方向の位置が互いに等しくなるように揃えられる。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、ハンドHに対する基板9のノッチの周方向の位置を維持しつつ基板9を搬送するので、基板処理装置1への基板9の搬入時において、ノッチの周方向の位置は予め決められている。
【0119】
第1の実施の形態では、基板9の搬入時には、基板保持部2は第1回転位置で停止しており、基板9の搬出時には、基板保持部2は第2回転位置で停止している。よって、基板9の搬出時おけるノッチの周方向の位置は、基板9の搬入時におけるノッチの周方向の位置と相違する。以下、具体的に説明する。
【0120】
図13および
図14は、ピン昇降機構24の構成の一例を示す図である。
図13では、搬入時における基板9およびリフトピン221が二点鎖線で示されており、
図14では、搬出時における基板9およびリフトピン221が二点鎖線で示されている。
図13および
図14に示すように、基板9の周縁には、ノッチ95が形成されている。
【0121】
基板9の搬入時において、基板回転機構3は既述のように基板保持部2を第1回転位置で停止させる。この状態では、押し上げ部材241は第1リフトピン221aと鉛直方向において対向する。そして、この状態において、センターロボットCRは基板9を第1リフトピン221aの上に載置する。
図13の例では、基板9の搬入時において、ノッチ95は回転軸J1に対して右上に位置している。
【0122】
基板処理装置1は、既述のように、第1リフトピン221aを下降させて基板9をチャック部23で保持し、基板9に対して処理を行う。そして、処理済みの基板9の搬出のために、基板回転機構3が基板保持部2を、第1回転位置とは異なる第2回転位置で停止させる(
図14参照)。そして、押し上げ部材241が第2リフトピン221bを上昇させて、第2リフトピン221bが基板9を持ち上げる。
【0123】
よって、基板9の搬出時におけるノッチ95の周方向位置は、基板9の搬入時におけるノッチ95の周方向位置と相違する(
図13および
図14参照)。具体的には、ノッチ95の周方向位置の差(角度)は第1回転位置と第2回転位置との間の角度(ここでは60度)とほぼ一致する。このように、基板処理装置1の搬出入時におけるノッチ95の周方向位置が互いに相違することは好ましくない場合がある。
【0124】
そこで、第2の実施の形態では、基板9の搬出時におけるノッチ95の周方向位置を、基板9の搬入時におけるノッチ95の周方向位置に近づけ、好ましくは一致させることを企図する。
【0125】
第2の実施の形態にかかる基板処理装置1は、ピン昇降機構24の構成を除いて第1の実施の形態と同様の構成を有している。
図15は、第2の実施の形態にかかるピン昇降機構24の構成の一例を概略的に示す平面図であり、
図16は、第2の実施の形態にかかるピン昇降機構24の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【0126】
このピン昇降機構24の押し上げ部材241は、回転軸J1のまわりで回動(周回)可能に設けられている。押し上げ部材241の回動の角度範囲は、第1回転位置と第2回転位置との間の角度以上に設定される。上述の例では、第1回転位置と第2回転位置との角度は60度であるので、押し上げ部材241は60度以上の角度範囲で回動可能に設けられる。
【0127】
図15および
図16の例では、ピン昇降機構24は、押し上げ部材241と、固定部材244と、可動部材245と、ガイド246とをさらに含んでいる。
図15の例では、可動部材245は、回転軸J1を中心とした略円環状の形状を有している。可動部材245は、回転軸J1についての径方向に沿う断面において、例えば一辺が水平面に沿う矩形状の形状を有している(
図16参照)。可動部材245の上面には、押し上げ部材241の下端が連結されている。言い換えれば、押し上げ部材241は可動部材245の上面から上方に延在する。
図15の例では、3つの押し上げ部材241が可動部材245によって相互に連結される。
【0128】
固定部材244は基板処理装置1のチャンバ内に固定されている。固定部材244は、例えば、回転軸J1を中心とした略円環状の形状を有しており、可動部材245と鉛直方向において間隔を空けて対向する。固定部材244は径方向に沿う断面において、例えば、一辺が水平面に沿う矩形状の形状を有している(
図16参照)。固定部材244はチャンバに対して固定される。
【0129】
ガイド246は、可動部材245を固定部材244に対して周方向にスライド可能に連結する。図示の例では、ガイド246は可動部材245と固定部材244との間に設けられている。ガイド246は、レール2461と、可動プレート2462とを含んでいる。レール2461は、回転軸J1を中心とした略円弧状の形状を有しており、
図16の例では、固定部材244の上面に設けられている。可動プレート2462は、レール2461に対して回転軸J1についての周方向にスライド可能に連結されている。例えば、レール2461の両側面には、周方向に延在する凹部(不図示)が形成され、可動プレート2462はレール2461の上面を覆いつつ、当該凹部に篏合する。レール2461の側面と可動プレート2462の側部との間には不図示の転動体(例えば球)が設けられており、当該転動体の回転を伴って、可動プレート2462がレール2461に対して周方向にスライドする。可動プレート2462の上面は、可動部材245の下面に固定される。
【0130】
図15の例では、複数(図示の例では3つ)のガイド246が周方向において間隔を空けて並んで設けられている。3つのガイド246は周方向に略等間隔に配列されている。各ガイド246の周方向の移動可能範囲が第1回転位置と第2回転位置との間の角度以上となるように、レール2461の長さが設定される。
【0131】
部材昇降機構242は、押し上げ部材241、固定部材244、可動部材245およびガイド246を一体で昇降させる。例えば、部材昇降機構242がエアシリンダを含む場合、そのエアシリンダのピストンロッドの先端が固定部材244に連結される。これによれば、部材昇降機構242がピストンロッドを上昇させることにより、押し上げ部材241、固定部材244、可動部材245およびガイド246を一体に上昇させることができる。
【0132】
図15の例では、基板保持部2が第2回転位置で停止した状態におけるリフトピン221が模式的に示されており、基板9も示されている。
図15では、押し上げ部材241が第2リフトピン221bと対向している。つまり、基板保持部2は押し上げ部材241に対して第2相対回転位置で停止している。
図15に例示するように、この状態では、基板9のノッチ95は回転軸J1に対してほぼ右側に位置しており、搬入時における基板9のノッチ95の位置とは相違する。
【0133】
この状態において、部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させることにより、押し上げ部材241が第2リフトピン221bを押し上げて、第2リフトピン221bが基板9を持ち上げる。
【0134】
図17は、基板処理装置1の概略構成の一例を示す側面図である。
図17の例では、基板保持部2は第2回転位置(第2相対回転位置)で停止している。そして、押し上げ部材241は第2リフトピン221bを押し上げており、第2リフトピン221bが基板9を持ち上げて支持している。
【0135】
この状態において、押し上げ部材241の上端部は対向板部21の穴部215に挿入される。しかも、押し上げ部材241は回転軸J1のまわりで回動(周回)可能である。よって、基板保持部2および押し上げ部材241は所定の角度範囲で一体に回動することができる。つまり、基板回転機構3が基板保持部2を回転させると、対向板部21は押し上げ部材241の上端部を回転方向に押して、押し上げ部材241を回転軸J1のまわりで回転させる。言い換えれば、基板保持部2は第2相対回転位置を維持したまま、回転軸J1のまわりを回転できる。
【0136】
要するに、基板保持部2は、上位置で停止する押し上げ部材241と周方向において対向する部材(図示の例では対向板部21)を含んでおり、基板保持部2の回転に伴って当該部材が押し上げ部材241を回転方向に押圧する。これにより、押し上げ部材241が基板保持部2と一体に回転する。
【0137】
基板回転機構3は、第2リフトピン221bが押し上げ部材241によって押し上げられて基板9を持ち上げた状態(
図15および
図17)で、基板保持部2を第1回転位置に回転させる。具体的な一例として、基板回転機構3は、
図15において反時計回りに基板保持部2を60度回転させる。この回転に伴って、対向板部21は押し上げ部材241の上端部を回転方向(反時計回り)に押して、押し上げ部材241および可動部材245を回転軸J1のまわりで一体に回転させる。これにより、押し上げ部材241および可動部材245は回転方向に一体で回転する。また、基板9は第2リフトピン221bに支持されているので、基板保持部2の回転により、基板9も60度回転する。
【0138】
図18は、第2リフトピン221bが基板9を支持した状態で基板保持部2を第2回転位置から回転させて第1回転位置で停止させたときのピン昇降機構24の構成の一例を概略的に示す図であり、
図19は、基板処理装置1の概略構成の一例を示す図である。
図18および
図19の例では、
図15および
図17に比して、第2リフトピン221bおよび押し上げ部材241が反時計回りに60度だけ回転(周回)しており、基板9も反時計回りに60度だけ回転する。これにより、基板9のノッチ95の周方向位置を、基板9の搬入時におけるノッチ95の周方向位置にほぼ一致させることができる(
図13も参照)。
【0139】
次に、第2の実施の形態にかかる基板処理装置1の動作の一例について説明する。
図20は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。チャック駆動機構25は、初期的には、複数のチャックピン231の角度位置が開放位置となるように、チャックピン231を駆動している。上述の例では、磁石昇降機構254は初期的に開放磁石253を近接位置に停止させる。また、ピン昇降機構24は、初期的には、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bを下位置で停止させている。
【0140】
まず、ステップS1と同様に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置で停止させる(ステップS11)。このとき、押し上げ部材241は第1リフトピン221aと鉛直方向において対向する。つまり、基板保持部2は押し上げ部材241に対して第1相対回転位置で停止する。次に、ステップS2と同様に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を上昇させ、第1リフトピン221aを上位置まで上昇させる(ステップS12)。次に、ステップS3と同様に、センターロボットCRは未処理の基板9を第1リフトピン221aの上に載置する(ステップS13)。この基板9の周縁には例えばノッチ95が形成されている。第1リフトピン221aの上に載置された基板9のノッチ95の周方向位置(初期位置)は予め決められている。
【0141】
次に、ステップS4と同様に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を下降させて第1リフトピン221aを下降させ、チャック部23が基板9を保持する(ステップS14)。次に、ステップS5と同様に、基板処理装置1は基板9に対する処理を行う(ステップS15)。次に、ステップS6と同様に、基板回転機構3は基板保持部2を第2回転位置で停止させる(ステップS16)。このとき、押し上げ部材241は第2リフトピン221bと鉛直方向において対向する。つまり、基板保持部2は押し上げ部材241に対して第2相対回転位置で停止する。次に、ステップS7と同様に、チャック部23が基板9の保持を解除しつつ、部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させて、基板9を第2リフトピン221bで持ち上げる(ステップS17)。
【0142】
次に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置まで回転させて第1回転位置で停止させる(ステップS18)。この回転により、対向板部21は3つの押し上げ部材241を回転方向に向かって押すので、3つの押し上げ部材241および可動部材245は基板保持部2と一体に回転軸J1のまわりを回転する。つまり、基板保持部2は第2相対回転位置を維持しつつ、第1回転位置まで回転する。また、処理済みの基板9は第2リフトピン221bによって支持された状態で回転する。よって、基板9のノッチ95の周方向位置を初期位置にほぼ戻すことができる。
【0143】
次に、ステップS8と同様に、センターロボットCRは処理済みの基板9を第2リフトピン221bから受け取る(ステップS19)。次に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置から第2回転位置へと逆方向に回転させる。つまり、基板保持部2は第2相対回転位置を維持しつつ、第2回転位置まで回転する。これにより、基板保持部2、押し上げ部材241および可動部材245は一体で回転し、押し上げ部材241の周方向位置を元の位置(初期位置)に戻すことができる。次に、ステップS9と同様に、部材昇降機構242が押し上げ部材241を下降させて、第2リフトピン221bを下位置まで下降させる(ステップS21)。
【0144】
以上のように、この基板処理装置1によっても、未処理の基板9を第1リフトピン221aで支持し(ステップS11からステップS14)、処理済みの基板9を第2リフトピン221bで支持する(ステップS16からステップS19)。よって、処理済みの基板9への汚染を抑制することができる。
【0145】
また、この基板処理装置1によっても、押し上げ部材241によって、第1リフトピン221aの昇降および第2リフトピン221bの昇降を行う(ステップS12およびステップS17)。よって、特許文献1のように、第1リフトピン221aに専用の押し上げ部材と、第2リフトピン221bに専用の押し上げ部材の両方が設けられた構造に比して、基板処理装置1の構造を簡易にできる。ひいては、基板処理装置1の製造コストを低減することができる。
【0146】
しかも、この基板処理装置1によれば、押し上げ部材241は、第2リフトピン221bを押し上げた状態で、基板保持部2と一体で回転することができる。よって、第2リフトピン221bが処理済みの基板9を持ち上げた状態で、基板保持部2を第1回転位置から第2回転位置に回転させることができる。したがって、基板9のノッチ95の周方向位置を初期位置にほぼ戻すことができる(ステップS18)。これにより、センターロボットCRは、基板保持部2が同じ第1回転位置で停止した状態で、基板9の搬出入を行うことができる。よって、センターロボットCRは、基板処理装置1に搬入したときの向きで、処理済みの基板9を取り出すことができる。つまり、センターロボットCRのハンドHにおける基板9の向きを基板処理装置1の前後で維持できる。
【0147】
上述の例では、基板回転機構3は、押し上げ部材241が第2リフトピン221bを押し上げて第2リフトピン221bが基板9を支持する状態で、押し上げ部材241および第2リフトピン221bを一体で回転させた。しかしながら、必ずしもこれに限らない。基板回転機構3は、押し上げ部材241が第1リフトピン221aを押し上げて第1リフトピン221aが基板9を支持した状態で、基板保持部2および押し上げ部材241を一体で回転させることによっても、基板9のノッチ95の周方向位置を調整することができる。以下、具体的な動作の一例について説明する。
【0148】
図21は、基板処理装置1の動作の他の一例を示すフローチャートである。チャック駆動機構25は、初期的には、複数のチャックピン231の角度位置が開放位置となるように、チャックピン231を駆動している。上述の例では、磁石昇降機構254は初期的に開放磁石253を近接位置に停止させる。また、ピン昇降機構24は、初期的には、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bを下位置で停止させている。
【0149】
まず、ステップS1と同様に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置で停止させる(ステップS41)。このとき、押し上げ部材241は第1リフトピン221aと鉛直方向において対向する。つまり、基板保持部2は押し上げ部材241に対して第1相対回転位置で停止する。次に、ステップS2と同様に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を上昇させ、第1リフトピン221aを上位置まで上昇させる(ステップS42)。
【0150】
次に、基板回転機構3は基板保持部2を第2回転位置まで回転させて第2回転位置で停止させる(ステップS43)。この回転により、対向板部21は3つの押し上げ部材241を回転方向に向かって押すので、3つの押し上げ部材241および可動部材245は基板保持部2と一体に回転軸J1のまわりを回転する。つまり、基板保持部2は第1相対回転位置を維持しつつ、第2回転位置まで回転する。
【0151】
次に、ステップS3と同様に、センターロボットCRは未処理の基板9を第1リフトピン221aの上に載置する(ステップS44)。この基板9の周縁には例えばノッチ95が形成されている。第1リフトピン221aの上に載置された基板9のノッチ95の周方向位置(初期位置)は予め決められている。
【0152】
このように、未処理の基板9は基板保持部2が第2回転位置で停止した状態で、基板処理装置1に搬入される。
【0153】
次に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置まで逆方向に回転させて第1回転位置で停止させる(ステップS45)。この回転により、対向板部21は3つの押し上げ部材241を逆方向に向かって押すので、3つの押し上げ部材241および可動部材245は基板保持部2と一体に回転軸J1のまわりを逆方向に回転する。つまり、基板保持部2は第1相対回転位置を維持しつつ、第1回転位置まで回転する。これにより、押し上げ部材241の周方向位置を元の位置(初期位置)にほぼ戻すことができる。
【0154】
次に、ステップS4と同様に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を下降させて第1リフトピン221aを下降させ、チャック部23が基板9を保持する(ステップS46)。次に、ステップS5と同様に、基板処理装置1は基板9に対する処理を行う(ステップS47)。
【0155】
次に、ステップS6と同様に、基板回転機構3は基板保持部2を第2回転位置で停止させる(ステップS48)。このとき、押し上げ部材241は第2リフトピン221bと鉛直方向において対向する。つまり、基板保持部2は押し上げ部材241に対して第2相対回転位置で停止する。このステップS48における基板9のノッチ95の周方向位置は、基板9の搬入時のノッチ95の周方向位置とほぼ一致する。なぜなら、基板9は基板保持部2が第2回転位置で停止した状態で搬入されるからである(ステップS43およびステップS44)。
【0156】
次に、ステップS7と同様に、チャック部23が基板9の保持を解除しつつ、部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させて、基板9を第2リフトピン221bで持ち上げる(ステップS49)。次に、ステップS8と同様に、センターロボットCRは処理済みの基板9を第2リフトピン221bから受け取る(ステップS50)。次に、ステップS9と同様に、部材昇降機構242が押し上げ部材241を下降させて、第2リフトピン221bを下位置まで下降させる(ステップS51)。
【0157】
以上のように、この動作によれば、センターロボットCRは、基板保持部2が同じ第2回転位置で停止した状態で、基板9の搬出入を行うことができる(ステップS43、ステップS44、ステップS48からステップS50)。よって、センターロボットCRは、基板処理装置1に搬入したときの向きで、処理済みの基板9を取り出すことができる。つまり、センターロボットCRのハンドHにおける基板9の向きを基板処理装置1の前後で維持できる。
【0158】
図22は、基板処理装置1の動作の他の一例を示すフローチャートである。チャック駆動機構25は、初期的には、複数のチャックピン231の角度位置が開放位置となるように、チャックピン231を駆動している。上述の例では、磁石昇降機構254は初期的に開放磁石253を近接位置に停止させる。また、ピン昇降機構24は、初期的には、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bを下位置で停止させている。
【0159】
まず、ステップS1と同様に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置で停止させる(ステップS61)。このとき、押し上げ部材241は第1リフトピン221aと鉛直方向において対向する。つまり、基板保持部2は押し上げ部材241に対して第1相対回転位置で停止する。次に、ステップS2と同様に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を上昇させ、第1リフトピン221aを上位置まで上昇させる(ステップS62)。
【0160】
次に、基板回転機構3は基板保持部2を第2回転位置まで回転させて第2回転位置で停止させる(ステップS63)。この回転により、対向板部21は3つの押し上げ部材241を回転方向に向かって押すので、3つの押し上げ部材241および可動部材245は基板保持部2と一体に回転軸J1のまわりを回転する。つまり、基板保持部2は第1相対回転位置を維持しつつ、第2回転位置まで回転する。
【0161】
次に、ステップS3と同様に、センターロボットCRは未処理の基板9を第1リフトピン221aの上に載置する(ステップS64)。この基板9の周縁には例えばノッチ95が形成されている。第1リフトピン221aの上に載置された基板9のノッチ95の周方向位置(初期位置)は予め決められている。
【0162】
このように、未処理の基板9は基板保持部2が第2回転位置で停止した状態で、基板処理装置1に搬入される。
【0163】
次に、ステップS4と同様に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を下降させて第1リフトピン221aを下降させ、チャック部23が基板9を保持する(ステップS65)。基板保持部2は第2回転位置で停止した状態で押し上げ部材241が第1リフトピン221aを下降させるので、以後、押し上げ部材241は、基板保持部2が第1回転位置で停止した状態で第2リフトピン221bと鉛直方向において対向し、基板保持部2が第2回転位置で停止した状態で第1リフトピン221aと鉛直方向において対向することとなる。つまり、基板保持部2は第1回転位置で停止することにより、押し上げ部材241に対して第2相対回転位置で停止し、第2回転位置で停止することにより、押し上げ部材241に対して第1相対回転位置で停止する。
【0164】
次に、ステップS5と同様に、基板処理装置1は基板9に対する処理を行う(ステップS66)。
【0165】
次に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置で停止させる(ステップS67)。これにより、押し上げ部材241は第2リフトピン221bと鉛直方向において対向する。次に、ステップS7と同様に、チャック部23が基板9の保持を解除しつつ、部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させて、基板9を第2リフトピン221bで持ち上げる(ステップS68)。
【0166】
次に、基板回転機構3は基板保持部2を第2回転位置まで回転させて第2回転位置で停止させる(ステップS69)。この回転により、対向板部21は3つの押し上げ部材241を回転方向に向かって押すので、3つの押し上げ部材241および可動部材245は基板保持部2と一体に回転軸J1のまわりを回転する。つまり、基板保持部2は第2相対位置を維持しつつ、第2回転位置まで回転する。
【0167】
このステップS69における基板9のノッチ95の周方向位置は、基板9の搬入時のノッチ95の周方向位置とほぼ一致する。なぜなら、基板9は基板保持部2が第2回転位置で停止した状態で搬入されるからである(ステップS63およびステップS64)。
【0168】
次に、ステップS8と同様に、センターロボットCRは処理済みの基板9を第2リフトピン221bから受け取る(ステップS70)。次に、ステップS9と同様に、部材昇降機構242が押し上げ部材241を下降させて、第2リフトピン221bを下位置まで下降させる(ステップS71)。
【0169】
以上のように、この動作によっても、センターロボットCRは、基板保持部2が同じ第2回転位置で停止した状態で、基板9の搬出入を行うことができる(ステップS63、ステップS64、ステップS68からステップS70)。よって、センターロボットCRは、基板処理装置1に搬入したときの向きで、処理済みの基板9を取り出すことができる。つまり、センターロボットCRのハンドHにおける基板9の向きを基板処理装置1の前後で維持できる。
【0170】
要するに、基板回転機構3は、押し上げ部材241が第1リフトピン221aを押し上げた状態、および、押し上げ部材241が第2リフトピン221bが押し上げた状態の少なくともいずれか一方において基板保持部2および押し上げ部材241を一体に回転させることにより、第1リフトピン221aがセンターロボットCRから未処理の基板9を受け取るときの基板保持部2の回転位置、および、第2リフトピン221bが処理済みの基板9をセンターロボットCRに受け渡すときの基板保持部2の回転位置を互いに近づければよい。より具体的には、基板回転機構3はこれらの回転位置の差を、第1回転位置と第2回転位置との間の角度(上述の例では60度)よりも小さくすればよく、より好ましくは、これらの回転位置を互いに一致させるとよい。
【0171】
なお、上述の例では、互いに離れて設けられる3つのガイド246が設けられているものの、必ずしもこれに限らない。例えば、レール2461は、回転軸J1を中心とした略円環状の形状を有していてもよい。この場合、可動部材245は固定部材244に対して何周でも回転可能である。この場合、基板保持部2は回転軸J1のまわりを一方向のみ回転可能であってもよい。なぜなら、一方向の回転によって、基板保持部2および押し上げ部材241を第1回転位置から第2回転位置へと一体に回転させることができ、また、基板保持部2および押し上げ部材241を第2回転位置から第1回転位置へと一体に回転させることができるからである。
【0172】
第3の実施の形態.
第3の実施の形態にかかる基板処理装置1の構成は、第1または第2の実施の形態にかかる基板処理装置1と同様である。第3の実施の形態では、ダミー基板の処理について述べる。ダミー基板とは、例えばテスト用の基板であり、基板処理装置1が正しく動作するのかを確認するための基板である。ダミー基板は基板9と略同一の形状を有しているものの、必ずしもデバイス用のパターンが形成される必要はない。
【0173】
基板処理装置1は例えば所定時間ごとに(例えば毎日)、ダミー基板を処理する。このダミー基板は繰り返し使用されるので、処理終了後は所定の保管位置で保管される。この長期の保管により、ダミー基板には汚染が蓄積され得る。このようなダミー基板は洗浄処理によっても洗浄しきれない場合があり、処理済みのダミー基板の汚染度は、処理済みの基板9と比べて高くなり得る。
【0174】
あるいは、ダミー基板とは、検査用の基板9であってもよい。基板9の第1主面91には、パターンが形成されているところ、そのパターンが正しく形成されているかどうかを確認する場合がある。この場合、基板9の第1主面91に対して処理を行うべく、基板9の第1主面91が上方を向くようにして、基板9が基板保持部2に受け渡される場合がある。この場合、リフトピン221は基板9の第2主面92(例えばその周縁部)を支持する。基板9の第2主面92はデバイス非形成面であるので、第1主面91よりも汚染度が高い場合がある。
【0175】
そこで、基板処理装置1は、このようなダミー基板の搬入時および搬出時の両方においては、第1リフトピン221aを用いる。言い換えれば、ダミー基板に対しては、第2リフトピン221bを用いない。
【0176】
図23は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。チャック駆動機構25は、初期的には、複数のチャックピン231の角度位置が開放位置となるように、チャックピン231を駆動している。上述の例では、磁石昇降機構254は初期的に開放磁石253を近接位置に停止させる。また、ピン昇降機構24は、初期的には、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bを下位置で停止させている。
【0177】
まず、ステップS1と同様に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置(第1相対回転位置)で停止させる(ステップS31)。次に、ステップS2と同様に、部材昇降機構242は、押し上げ部材241を上昇させる(ステップS32)。これにより、押し上げ部材241が第1リフトピン221aを押し上げて、第1リフトピン221aを上位置まで上昇させる。
【0178】
次に、ステップS3と同様に、センターロボットCRは未処理のダミー基板を第1リフトピン221aの上に載置する(ステップS33)。次に、ステップS4と同様に、部材昇降機構242は押し上げ部材241を下降させて第1リフトピン221aを下降させる(ステップS34)。これにより、第1リフトピン221aによって支持されたダミー基板も下降する。そして、チャック部23は、下降したダミー基板を保持する。次に、ステップS5と同様に、基板処理装置1はダミー基板に対する処理を行う(ステップS35)。
【0179】
次に、基板回転機構3は基板保持部2を第1回転位置(第1相対回転位置)で停止させる(ステップS36)。この状態では、3つの押し上げ部材241はそれぞれ3つの第1リフトピン221aと鉛直方向において対向する。次に、チャック部23が基板9の保持を解除しつつ、部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させる(ステップS37)。これにより、押し上げ部材241が第1リフトピン221aを上昇させ、第1リフトピン221aがダミー基板をチャック部23から受け取り、ダミー基板を持ち上げる。
【0180】
次に、ステップS8と同様に、センターロボットCRは処理済みのダミー基板を第1リフトピン221aから取り出す(ステップS38)。次に、部材昇降機構242が押し上げ部材241を下降させて、第1リフトピン221aを下位置まで下降させる(ステップ39)。以上により、基板処理装置1におけるダミー基板の処理が完了する。
【0181】
以上のように、基板処理装置1は、ダミー基板の搬入時および搬出時の両方において、第1リフトピン221aが用いられる。言い換えれば、ダミー基板に対しては、第2リフトピン221bが用いられない。よって、ダミー基板の汚染が第2リフトピン221bに転写することを回避できる。したがって、基板処理装置1が基板9を処理する際に、ダミー基板の汚染がリフトピン221を介して処理済みの清浄な基板9へ転写することを回避できる。
【0182】
変形例.
変形例にかかる基板処理装置1は、リフト部22の構成を除いて、第1から第3の実施の形態と同様の構成を有している。
【0183】
図24は、変形例にかかるリフト部22の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図24の例では、3つの第1リフトピン221aはチャックピン231よりも回転軸J1に近い位置で、回転軸J1を中心とした基準円の上に設けられている。また、
図24の例では、3つの第2リフトピン221bは第1リフトピン221aよりも回転軸J1に近い位置で、回転軸J1を中心とした基準円の上に設けられている。
【0184】
図24の例では、3つの第1リフトピン221aは連結部材222aによって互いに連結されている。連結部材222aは、回転軸J1を中心とした略円環状の形状を有している。また、連結部材222aは、回転軸J1側に突出する突出部を含んでいる。以下では、この突出部を第1作用部材223aと呼ぶ。
【0185】
3つの第2リフトピン221bは連結部材222bによって互いに連結されている。連結部材222bは、回転軸J1を中心とした略円環状の形状を有している。具体的には、
図24の例では、連結部材222bは第1作用部材223aと異なる周方向の領域において、回転軸J1を中心とした円弧状の形状を有し、第1作用部材223aの近傍では、第1作用部材223aを避けるように回転軸J1側に凹んでいる。連結部材222bは、回転軸J1についての周方向において第1作用部材223aと並ぶ第2作用部材223bを含んでいる。
図24の例では、連結部材222bのうち回転軸J1を中心とした円弧部分の一部が第2作用部材223bに相当する。
【0186】
基板保持部2の対向板部21の内部には、連結部材222aおよび連結部材222bを収納する環状空間が形成されており、当該環状空間は、第1作用部材223aおよび第2作用部材223bの各々と対向する位置において、対向板部21の下面212で開口している。つまり、対向板部21の下面212には、第1作用部材223aの下面に連通する穴部(開口)が形成されており、また、第2作用部材223bの下面に連通する穴部(開口)が形成されている。
【0187】
図24の例では、押し上げ部材241が破線で示されている。
図24の例では、第1から第3の実施の形態の具体例とは異なって、1つの押し上げ部材241が設けられている。基板保持部2が第1相対回転位置で停止した第1状態において、押し上げ部材241は第1作用部材223aと鉛直方向において対向する。部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させることにより、押し上げ部材241の上端は第1作用部材223aの下面に当接する。部材昇降機構242が押し上げ部材241をさらに上昇させることにより、押し上げ部材241は第1作用部材223aを押し上げる。これにより、第1作用部材223aに連結された3つの第1リフトピン221aが上昇する。また、部材昇降機構242はこの状態から押し上げ部材241を下降させることにより、3つの第1リフトピン221aを一体に下降させることができる。
【0188】
図25は、基板保持部2が第2相対回転位置で停止した第2状態での、リフト部22の構成の一例を概略的に示す図である。
図25に示すように、基板保持部2が第2相対回転位置で停止した第2状態において、押し上げ部材241は第2作用部材223bと鉛直方向において対向する。部材昇降機構242が押し上げ部材241を上昇させることにより、押し上げ部材241の上端は第2作用部材223bの下面に当接する。部材昇降機構242が押し上げ部材241をさらに上昇させることにより、押し上げ部材241は第2作用部材223bを押し上げる。これにより、第2作用部材223bに連結された第2リフトピン221bが上昇する。また、部材昇降機構242はこの状態から押し上げ部材241を下降させることにより、3つの第2リフトピン221bを一体に下降させることができる。
【0189】
変形例にかかる基板処理装置1によっても、押し上げ部材241が第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bを互いに独立に昇降させることができる。
【0190】
なお、
図24および
図25の例では、第1リフトピン221a、第2リフトピン221bおよびチャックピン231の径方向の位置が相違しているものの、これらが同一の基準円上に設けられてもよい。この状態でも、所定の第1連結部材により、第1リフトピン221aを相互に連結し、また、第1連結部材と平面視において重ならない形状を有する第2連結部材により、第2リフトピン221bを相互に連結するとよい。そして、回転軸J1の周方向に並ぶ第1作用部材および第2作用部材を、それぞれ第1連結部材および第2連結部材に設ければよい。押し上げ部材241は、平面視において、第1作用部材および第2作用部材が並ぶ、回転軸J1を中心とした基準円の上に設けられる。これにより、基板保持部2を回転させることで、押し上げ部材241を第1作用部材および第2作用部材の各々と鉛直方向で対向させることができる。
【0191】
以上、実施の形態が説明されたが、この基板処理装置1はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。本実施の形態は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0192】
上記基板処理装置1では様々な変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、3つの第1リフトピン221aおよび3つの第2リフトピン221bが設けられるが、基板9を下方から支持するという観点では、第1リフトピン221aおよび第2リフトピン221bの個数は4以上であってもよい。また、既述のように、複数のリフトピン221のリフト案内面224により、センターロボットCRとの基板9の受け渡しの際に、基板9の中心が回転軸J1に近づけられる。この場合に、回転軸J1に垂直な様々な方向に関して、基板9の中心を精度よく回転軸J1に近づけるという観点では、リフト部22は、周方向に等間隔に配置される4以上の第1リフトピン221aおよび4以上の第2リフトピン221bを含むことが好ましい。
【0193】
また上述の例では、6つのチャックピン231が設けられているが、基板9の周縁部94を保持するという観点では、チャックピン231の個数は3以上であればよい。また、チャック駆動機構25は、磁石によりチャックピン231を駆動しているものの、例えばモータによりチャックピン231を駆動してもよい。また、上述の例では、複数のチャックピン231を一体に駆動しているものの、これらの少なくとも一つを他の少なくとも一つと独立して駆動してもよい。これによれば、基板9の処理中に、基板9を保持するチャックピン231を順次に切り替えることができ、チャックピン231の保持位置における処理不良を抑制できる。
【0194】
図10および
図11に示すリフト支持面222およびリフト案内面224の形状、並びに、
図4および
図5に示すチャック当接面232の形状は一例に過ぎず、適宜変更されてよい。
【0195】
また、チャック部23は必ずしもチャックピン231を含んでいる必要はない。チャック部23は基板9の下面を吸着して基板9を保持してもよい。例えば、チャック部23は、対向板部21の対向面211に形成された複数の吸着孔と、当該複数の吸着孔から気体を吸引する吸引機構とを含んでいてもよい。これにより、基板9を対向板部21の対向面211に吸着することができる。あるいは、チャック部23は、対向板部21の対向面211側に複数の電極と、複数の電極に静電気を発生させるための電源とを含んでいてもよい。これにより、基板9を静電チャックすることができる。
【符号の説明】
【0196】
1 基板処理装置
2 基板保持部
3 回転機構(基板回転機構)
4 洗浄処理部(処理液供給部)
7 回転センサ
23 チャック部
221a 第1リフトピン
221b 第2リフトピン
231a 第1作用部材
231b 第1作用部材
241 押し上げ部材
242 昇降機構(部材昇降機構)
244 固定部材
245 可動部材
246 ガイド
CR 搬送装置(センターロボット)