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  • 特許-壁面のひび割れ測定機および測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】壁面のひび割れ測定機および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20230525BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
G01B11/02 H
G01N21/88 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019160880
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021039013
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-347585(JP,A)
【文献】特開平10-078319(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103982(WO,A1)
【文献】特開2005-300179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/88
G01J 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに向けて測距光を出射し反射測距光を受光して前記ターゲットまでの距離を測定する測距部と、
各画素が画像素子上で位置特定される画像撮像部と、
各画素が画像素子上で位置特定され、赤外線に感度を有する赤外画像撮像部と、
前記測距部,画像撮像部,および赤外画像撮像部を水平方向および鉛直方向に旋回させる駆動部と、
前記測距部,画像撮像部,および赤外画像撮像部の水平方向の回転角と鉛直方向の回転角を測定する測角部と、
前記測距部,測角部,画像撮像部,赤外画像撮像部,および駆動部を制御する演算制御部と、を備え、
前記演算制御部は、
前記赤外画像撮像部を旋回して、赤外画像の温度差からひび割れ部の探索を、前記赤外画像撮像部の前記温度差を段階的に狭めながら、複数回行い、
前記ひび割れ部を前記画像撮像部で撮影し、撮影画像の濃度差から前記ひび割れ部の位置を特定し、
前記ひび割れ部の位置を前記測距部および前記測角部で測定し、前記ひび割れ部の三次元絶対座標を取得する
ことを特徴とするひび割れ測定機。
【請求項2】
前記画像撮像部および前記赤外画像撮像部は、前記測距光の光軸を原点とした直交座標系を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のひび割れ測定機。
【請求項3】
前記演算制御部は、前記ひび割れ部の開始点,折れ点,終点に対してそれぞれ三次元絶対座標を取得する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のひび割れ測定機。
【請求項4】
前記演算制御部は、前記ひび割れ部の三次元絶対座標を基にひびの長さと形状を測定し、前記画像撮像部の画素数からひびの太さを測定する
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のひび割れ測定機。
【請求項5】
前記測距部と,前記測角部と,前記画像撮像部と,前記赤外画像撮像部が、一の装置に統合された
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のひび割れ測定機。
【請求項6】
(a)赤外画像撮像部を旋回して、赤外画像の温度差からひび割れ部を探索するステップと、
(b)画像撮像部で(a)のステップで探索された前記ひび割れ部を撮影し、撮影画像の濃度差から前記ひび割れ部の位置を特定するステップと、
(c)測距部および測角部で(b)のステップで特定された前記ひび割れ部の位置を測距・測角し、三次元絶対座標を取得するステップと、
を有し、
(a)のステップで、前記赤外画像の前記温度差を段階的に狭めながら、複数回探索を行う、
ことを特徴とするひび割れ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の壁面のひび割れを測定するための測定機および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、鉄橋、トンネルなどの大型なコンクリート構造物のひび割れの分布状況を調べるのに、測定点までを測距・測角する測量機(トータルステーション)が用いられている。従来、測定現場では、足場を組み作業員がひび割れ部を目視しながらマーキング,メモをするか、ひび割れ部付近に反射物を設置して視準をするかの、人為的な作業が行われていた。近年、ノンプリズム測定により、反射物無しで視準することが可能となったが、ターゲットとなるひび割れ部の視準は手作業で行われており、多大な時間を要していた。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1には、撮影画像撮像部と赤外画像撮像部を備え、赤外画像によりひび割れ部付近を特定し、撮像画像で前述のひび割れ部付近を検出し、撮影画像の濃度差によってひび割れ部の位置を特定し、寸法を測定する欠陥検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-216829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、赤外画像と撮影画像の測定位置の摺り合わせが困難であるという問題があった。この他の装置においても、複数のセンサーで取得されたデータの関係付けに高度な考察や作業時間を要し、測定後にデータ処理をする作業が必要であった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、構造物のひび割れ部の三次元測定に関する作業を一連自動化するひび割れ測定機および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様にかかるひび割れ測定機は、ターゲットに向けて測距光を出射し反射測距光を受光して前記ターゲットまでの距離を測定する測距部と、各画素が画像素子上で位置特定される画像撮像部と、各画素が画像素子上で位置特定され、赤外線に感度を有する赤外画像撮像部と、前記測距部,画像撮像部,および赤外画像撮像部を水平方向および鉛直方向に旋回させる駆動部と、前記測距部,画像撮像部,および赤外画像撮像部の水平方向の回転角と鉛直方向の回転角を測定する測角部と、前記測距部,測角部,画像撮像部,赤外画像撮像部,および駆動部を制御する演算制御部と、を備え、前記演算制御部は、前記赤外画像撮像部を旋回して、赤外画像の温度差からひび割れ部の探索を行い、前記ひび割れ部を前記画像撮像部で撮影し、撮影画像の濃度差から前記ひび割れ部の位置を特定し、前記ひび割れ部の位置を前記測距部および前記測角部で測定し、前記ひび割れ部の三次元絶対座標を取得することを特徴とする。
【0008】
上記態様において、前記画像撮像部および前記赤外画像撮像部は、前記測距光の光軸を原点とした直交座標系を有するのも好ましい。
【0009】
上記態様において、前記演算制御部は、前記赤外画像撮像部の前記温度差を段階的に狭めながら、複数回探索を行うのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記演算制御部は、前記ひび割れ部の開始点,折れ点,終点に対してそれぞれ三次元絶対座標を取得するのも好ましい。
【0011】
上記態様において、前記演算制御部は、前記ひび割れ部の三次元絶対座標を基にひびの長さと形状を測定し、前記画像撮像部の画素数からひびの太さを測定するのも好ましい。
上記態様において、前記測距部と,前記測角部と,前記画像撮像部と,前記赤外画像撮像部が、一の装置に統合されるのも好ましい。
【0012】
また、本発明の一つの態様にかかるひび割れ測定方法は、(a)赤外画像撮像部を旋回して、赤外画像の温度差からひび割れ部を探索するステップと、(b)画像撮像部で(a)のステップで探索された前記ひび割れ部を撮影し、撮影画像の濃度差から前記ひび割れ部の位置を特定するステップと、(c)測距部および測角部で(b)のステップで特定された前記ひび割れ部の位置を測距・測角し、三次元絶対座標を取得するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のひび割れ測定機および測定方法によれば、構造物のひび割れ部の三次元測定が一連自動化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る測定機の外観斜視図である。
図2】同測定機の構成ブロック図である。
図3】同測定機による測定作業のイメージ図である。
図4】同測定機による測定フロー図である。
図5】同測定機による画像処理後の画像の一例である。
図6】同測定機によるひび割れ測定のイメージ図である。
図7】同測定機によるひび割れ測定の成果物の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は実施の形態に係る測定機の外観斜視図である。ひび割れ測定機2(以下、単に測定機2とする)は、トータルステーションである。測定機2は、整準器の上に設けられた基盤部2aと、基盤部2a上を水平回転する托架部2bと、托架部2bの中央で鉛直回転する望遠鏡2cと、托架部2bの前面に設けられた表示部15と操作部16を有する。
【0017】
図2は測定機2の構成ブロック図である。測定機2は、水平角検出器11と、鉛直角検出器12と、水平回転駆動部13と、鉛直回転駆動部14と、表示部15と、操作部16と、記憶部17と、演算制御部18と、測距光出射部19と、測距光受光部20と、画像撮像部21と、赤外画像撮像部22を備える。
【0018】
水平回転駆動部13と鉛直回転駆動部14はモータであり、演算制御部18に制御される。水平回転駆動部13は托架部2bを水平方向に回転させ、鉛直回転駆動部14は望遠鏡2cを鉛直方向に回転させる。
【0019】
水平角検出器11と鉛直角検出器12は、エンコーダである。水平角検出器11は托架部2bの水平方向の回転角を測定し、鉛直角検出器12は望遠鏡2aの鉛直方向の回転角を測定する。
【0020】
表示部15は、液晶画面を有し、タッチパネル式での入力も可能である。液晶画面には測定アプリケーションに関する画像が表れ、作業者はこれに誘導されて、測定を実行する。
【0021】
操作部16は、数字キー、小数点キー、プラス/マイナスキー、実行キー、スクロールキー等を有し、表示部15に表示された操作を選択/決定/キャンセル等することができる。
【0022】
測距光出射部19は、発光素子と送光光学系を備え、ターゲットに向けて赤外レーザ等の測距光を出射する。測距光受光部20は、受光素子と上記送光光学系と光学要素を共有する受光光学系を備え、ターゲットからの反射測距光を受光する。
【0023】
画像撮像部21は、例えばCCDやCMOSセンサ等、画素(ピクセル)の集合体で構成されている。画像撮像部21では、画像素子上で測距光の光軸を原点とする直交座標によって各画素の位置が特定される。画像撮像部21は、測距光の点灯画像と消灯画像の二つを取得し、その差分からターゲット位置を検出し、望遠鏡2cの視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まる位置をターゲット位置としてターゲットを自動追尾する、追尾部を構成する要素としても用いられる。追尾部は本形態においては任意の構成であるので、記載は割愛する。
【0024】
赤外画像撮像部22は、赤外線に感度を有するCCDやCMOSセンサ等であり、撮影対象から放出される輻射熱を赤外線で撮影して、撮影対象の温度分布を画像化する。赤外画像撮像部22では、画像素子上で測距光の光軸を原点とする直交座標によって各画素の位置が特定される。
【0025】
演算制御部18は、少なくともCPUおよびメモリ(RAM,ROM等)を集積回路に実装した制御ユニットである。演算制御部18は、上記反射測距光と上記光学系内に設けられた参照光路を進んだ参照光との位相差から、ターゲットまでの測距値を算出する。また、水平角検出器11と鉛直角検出器12の測定値から、ターゲットの測角値を算出する。また、演算制御部18は、赤外画像診断部23とひび割れ画像診断部24を備える。赤外画像診断部23は、赤外画像撮像部22により取得された赤外画像をデータ処理する。ひび割れ画像診断部24は、画像撮像部21により取得された撮影画像をデータ処理する。このデータ処理については後述する。
【0026】
記憶部17は、例えば、メモリーカード、HDD等によって構成される。記憶部17には、演算制御部18が行う測定プログラムが格納されている。また、演算制御部18が取得した各種情報が記録される。
【0027】
水平角検出器11,鉛直角検出器12,水平回転駆動部13,鉛直回転駆動部14,記憶部17,および演算制御部18は托架部2bの筐体内に設けられ、測距光出射部19,測距光受光部20,画像撮像部21,および赤外画像撮像部22は望遠鏡2cの筐体内に設けられている。測距光出射部19,測距光受光部20,および演算制御部18が測距部である。水平角検出器11,鉛直角検出器12,および演算制御部18が測角部である。望遠鏡2c内の配置に関し、画像撮像部21と赤外画像撮像部22は、測距光の光軸に対する水平方向および鉛直方向の位置の偏差が予め既知とされている。
【0028】
図3は、測定機2による測定作業のイメージ図である。測定機2は、三脚を用いて既知点に設置され、整準部で設置面に対し水平となるよう調節される。作業者は、測定機2を設置した後は、測定機2の電源を入れ、ひび割れ測定モードを選択し、アプリケーションの誘導に沿った簡単な選択や入力をするだけで良い。
【0029】
図4は、測定機2による測定フロー図である。
【0030】
ひび割れ測定モードの測定アプリケーションが開始されると、まずステップS101で、演算制御部18により、測定機2の現在位置(三次元絶対座標)が取得される。現在位置は、既知点に設置されている場合は、記憶部17から座標が読み出される。既知点でない場合は、後方交会法による現在位置取得の測定アプリケーションに誘導され、その後、本ステップに戻る。
【0031】
次に、ステップS102に移行し、赤外画像診断部23が機能する。赤外画像診断部23は、赤外線によるひび割れ部の探索(追い込み)を行う。ステップS102では、まず、粗範囲検出が行われる。赤外画像診断部23は、水平回転駆動部13および鉛直回転駆動部14を協動させながら、赤外画像撮像部22を用いて、最初は温度差(画像色の差)を粗め(例えば10度単位)に設定して、検査対象全体に対して赤外線測定を行う。粗範囲検出は、広角画像で広範囲に測定してもよいし、挟角画像で一筆書きで流しながら測定してもよい。
【0032】
次に、ステップS103に移行し、赤外画像診断部23による中範囲検出が行われる。赤外画像診断部23は、粗範囲検出で温度差があった位置を対象に、水平回転駆動部13および鉛直回転駆動部14を協動させながら、赤外画像撮像部22を用いて、温度差を粗範囲検出より狭めて(例えば1度単位)赤外線測定を行う。
【0033】
次に、ステップS104に移行し、赤外画像診断部23による細範囲検出が行われる。赤外画像診断部23は、中範囲検出で温度差があった位置を対象に、水平回転駆動部13および鉛直回転駆動部14を協動させながら、赤外画像撮像部22を用いて、温度差を中範囲検出よりさらに狭めて(例えば0.1度単位)赤外線測定を行う。
【0034】
このように、測定機2は、赤外線センサーの温度差を適宜変えながら、低温部(水分量の多い場所)をひびと認識して、ひび割れ部を自動で探索する(追い込む)。粗範囲検出や中範囲検出の実行回数に制限はなく、一例として、粗範囲検出は、例えばサブメートルから1メートル単位で行われればよく、細範囲検出の段階で、検査基準が満たされるように設定される。ある程度手動でひび割れ部を特定してから開始させることで、粗範囲検出や中範囲検出の回数を減らし探索の流れをショートカットできるようにするのも良い。
【0035】
次に、ステップS105に移行し、ひび割れ画像診断部24が機能する。ひび割れ画像診断部24は、ひび割れ部の位置を特定するための画像処理を行う。ひび割れ画像診断部24は、細範囲検出で温度差があった検出位置を、画像撮像部21で撮影する。赤外画像撮像部22で検出したひび割れ部の検出位置は測距光の光軸を原点とする直交座標で特定されるので、ひび割れ画像診断部24は、赤外画像撮像部22の細範囲検出で割り出された指定角で旋回し、画像撮像部21で各ひび割れ部を含むように撮影する。ひび割れ画像診断部24は、ピクセル単位の高解像度画像から、画像の濃度差を解析して、ひび割れ部の位置を特定する。図5は、測量機2による画像処理後の画像の一例である。ステップS105で得られたひび割れ部の画像は、測定機2の表示部15に整理番号とともに表示されるのもよい。
【0036】
次に、ステップS106に移行し、ひび割れ画像診断部24によるひび割れ部の測定が行われる。ひび割れ画像診断部24は、ステップS105で得られたひび割れ部の撮影画像から、ひびの開始点と、折れ点(複数可)と、終点の座標を、例えば、コントラスト・色合いの変化を端点や折点抽出する画像処理により特定する。ひびの開始点,折れ点,終点の座標は、画像撮像部21において測距光の光軸を原点とする直交座標で位置が特定される。図6は、測定機2によるひび割れ測定のイメージ図であり、ひびの開始点,折れ点,終点を特定するイメージを示している。ひび割れ画像診断部24は、水平回転駆動部13および鉛直回転駆動部14を協動させながら、それぞれの点に対して測距光を出射し、測距・測角する。そして、ひびの開始点,折れ点,終点の三次元絶対座標を取得する。
【0037】
次に、ステップS107に移行し、ひび割れ画像診断部24によるひび割れ部の寸法測定(ひびの長さ・形状・太さの測定)が行われる。ひび割れ画像診断部24は、ひびの長さ・形状に関しては、ひびの開始点,折れ点,終点の三次元絶対座標から測定する。ひびの太さに関しては、画像撮像部21のピクセル数から測定する。図7は、測定機2によるひび割れ測定の成果物の一例である。成果物は表示部15に表示される。図7に示すように、ひび割れ部は、長さ・形状・太さに応じて属性に分けられ、表示部15において色分けして表示されるのも好ましい。表示部15に表示された成果物は、CAD(Computer Aided Design)機にデータ転送され、図面化することもできる。
【0038】
以上、本形態の測定機2によれば、ひび割れ部の三次元測定に関連する、ひび割れ部の探索、ひび割れ部の位置の特定、ひび割れ部の位置測定(三次元絶対座標の測定)、ひび割れ部の寸法測定(ひび割れの長さ・形状・太さの測定)の一連の測定作業を、全て自動化することができる。
【0039】
また、測定機2は、距離を測る光波測距儀と、角度を測るセオドライトと、画像センサーと、赤外線センサーと、画像診断機能が一つに統合された複合装置であるので、それぞれのセンサーの取得物の位置合わせのデータ処理が容易である。このため、それぞれのセンサーが別々に設置され、センサー毎に取得データを関係付けしなければならない装置と比べて、人為的な手間・作業ミスが大幅に軽減する。
【0040】
また、測量機2によれば、ひび割れ部の三次元測定は、測定現場で作業が完結する。このため、現場からデータを持ち帰って解析ソフトでデータ処理する手間を省くことができるので、工期や納期を短縮させることができる。また、現場で、作業員が成果物を見て不足があると思えば、もう一度そのひび割れ部を測定し、その場で不足を補完することもできる。このため、現場へ出戻りする面倒も防ぐことができる。
【0041】
なお、上記実施の形態において、測距光出射部(測距部)19,画像撮像部21,および赤外画像撮像部22は、測距光の光軸を原点として位置合わせされているが、画像撮像部21と赤外画像撮像部22は、望遠鏡2c内の配置に関し、測距光の光軸に対する水平方向および鉛直方向のオフセット値が予め既知とされているので、各画素上で測距光の光軸が原点以外の既知点にあれば、オフセット値を考慮することで位置合わせできる。また、測定機2に、画像撮像部21と赤外画像撮像部22の測距光の光軸とのオフセット値を検出・登録する機能を備え、経年変化を測定前に調整する事で3つの原点を合致させるのも好ましい。
【0042】
以上、本発明の好ましいひび割れ測定機および測定方法について、実施の形態および変形例を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
2 測定機
11 水平角検出器(測角部)
12 鉛直角検出器(測角部)
13 水平回転駆動部
14 鉛直回転駆動部
15 表示部
16 操作部
17 記憶部
18 演算制御部
19 測距光出射部(測距部)
20 測距光受光部(測距部)
21 画像撮像部
22 赤外画像撮像部
23 赤外画像診断部
24 ひび割れ画像診断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7