(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】折り畳み式搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 13/11 20060101AFI20230525BHJP
B65G 21/06 20060101ALI20230525BHJP
B65G 21/10 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
B65G13/11
B65G21/06
B65G21/10
(21)【出願番号】P 2019233139
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391010149
【氏名又は名称】株式会社越智工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【氏名又は名称】松島 理
(72)【発明者】
【氏名】越智 万
(72)【発明者】
【氏名】越智 戒
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-240915(JP,A)
【文献】特開2006-256799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0045339(US,A1)
【文献】中国実用新案第217755283(CN,U)
【文献】中国実用新案第207390201(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 13/11
B65G 21/06
B65G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対になるように前後方向に2列に並ぶ、長手方向に伸縮可能な複数の脚と、
前記複数の脚のうちの前後に隣り合う脚毎に及び左右に隣り合う脚毎に設けた、当該隣り合う脚を伸縮リンク機構になるように連結する単位X字状リンク部材と、
前記左右方向に隣り合う脚毎に設けた、支持軸と該支持軸に回転自在に貫通された円筒体とからなる搬送ローラーと、
前記左右方向に隣り合う脚のうちの片方の脚の上端部に設けた、前記支持軸の片方の端部を前後方向の軸線を中心に回動可能に保持する保持部とを備え、
前記支持軸が前記前後方向の軸線を中心に回動することにより、前記搬送ローラーは、前記複数の脚を開いたとき、前記支持軸の両端部が前記左右方向に隣り合う脚の上端に載る搬送位置につき、前記複数の脚を閉じたとき、前記片方の脚沿いの待避位置につくように構成した折り畳み式搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の折り畳み式搬送装置であって、
前記保持部は、前記片方の脚の上端部から左右方向における外側へ突き出るように固設した第1ブラケットと、該第1ブラケットに前後方向の軸線を中心に回動可能に装着した補助腕とからなり、
前記支持軸の片方の端部は、前記補助腕の自由端部に回動可能に装着してある折り畳み式搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の折り畳み式搬送装置であって、さらに、
前記左右方向に隣り合う脚のうちの他の片方の脚の上端部に設けた、前記支持軸の他の片方の端部に係合して当該端部の前方への移動を阻止することができるストッパーを備える折り畳み式搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の折り畳み式搬送装置であって、
前記脚は、当該脚の上端部に固着した第1の継手と、当該脚の下端部に固着した第2の継手を備え、
前記第1の継手は、前記第1ブラケットを有し、
前記第1の継手及び第2の継手は、夫々左右方向に隣り合う脚を連結する前記単位X字状リンク部材の先端部を回動可能に連結するための第3ブラケットと、前後方向に隣り合う脚を連結する前記単位X字状リンク部材の先端部を回動可能に連結するための第2ブラケットとを有する折り畳み式搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の折り畳み式搬送装置であって、
前記支持軸の前記他の片方の端部には下向きの突起部が形成してあり、
前記左右に隣り合う脚のうちの前記他の片方の脚の上端部に固着した第1の継手が有する前記第
1ブラケットを、前記突起部に係合する前記ストッパーとして用いる折り畳み式搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラー上に直接又は間接的に載せた被搬送物を、例えば手で動かして搬送する折り畳み式搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の折り畳み式の搬送装置には、所定位置に支持脚を有する左右一対の伸縮支持フレームを備えており、不使用時に伸縮支持フレームを縮めてコンパクトにすることができる伸縮式ローラーコンベアがある(特許文献1)。
【0003】
また、不使用時に複数の搬送装置をスペース効率良く収納でき、かつ構成の簡素化を図るために、平面視で略Z字状の脚を備え、この脚には、使用時には下方向への回動により起立状態の回動補助脚部にて支持される使用状態になり、不使用時には上方向への回動により水平方向に対して傾斜状の起立不使用状態になる、搬送ローラーを有する搬送体を設け、不使用時に起立状態の前記搬送体同士を互いに近接対向させることにより、複数の搬送装置を前後に重ね合わせることができるように構成したものがある(特許文献2)。
(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-240915号公報
【文献】特開2006-256799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばNBC災害等で有害物質に汚染された被災者が多数発生した場合には、通常、二次感染を防止するために被災現場近くや医療機関の入口等に、テント内にシャワーを備えた除染設備を緊急的に設営して除染をすることができるようにする。その場合、応急的に被災者を次々と除染設備内に搬送搬出するための搬送装置が必要になる。そして、この搬送装置には、その不使用時には保管場所を取らないようにコンパクトであり、それを除染設備の設置場所へ容易に運搬できるように軽量であり、その設置及び撤去が容易であることが要求される。
【0006】
しかし、上述した従来の伸縮式ローラーコンベアや搬送装置は、これらの要求に十分に応えられるものではなかった。即ち、それらの構造上、重量が大きく所要場所へ運搬するのに骨が折れるものになる。また、上述の支持脚を有する左右の伸縮支持フレームを備えた伸縮式ローラーコンベアでは、不使用時に伸縮支持フレームを前後方向に縮めることができるが、左右方向に縮めることができないため、しかも搬送ローラーが支持脚の上端より上に常時配置される構造であるため、不使用時の占有空間が大きくなり、不使用時のコンパクトさ等の観点から十分とはいえない。また上述の搬送体を回動可能に設けた搬送装置では、搬送ローラーを有する搬送体が不使用時に脚より上側で起立した状態になるので、不使用時の占有空間が大きくなり、不使用時のコンパクトさや運搬、設置、撤収のし易さ等の観点から十分とはいえない。
【0007】
本発明は、上述のような問題点に鑑み、比較的軽量であり不使用時にコンパクトに折り畳むことができ、設置、撤収を容易に短時間で行うことができる折り畳み式搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の第1の側面に係る折り畳み式搬送装置によれば、左右一対になるように前後方向に2列に並ぶ、長手方向に伸縮可能な複数の脚と、前記複数の脚のうちの前後に隣り合う脚毎に及び左右に隣り合う脚毎に設けた、当該隣り合う脚を伸縮リンク機構になるように連結する単位X字状リンク部材と、前記左右方向に隣り合う脚毎に設けた、支持軸と該支持軸に回転自在に貫通された円筒体とからなる搬送ローラーと、前記左右方向に隣り合う脚のうちの片方の脚の上端部に設けた、前記支持軸の片方の端部を前後方向の軸線を中心に回動可能に保持する保持部とを備え、前記支持軸が前記前後方向の軸線を中心に回動することにより、前記搬送ローラーは、前記複数の脚を開いたとき、前記支持軸の両端部が前記左右方向に隣り合う脚の上端に載る搬送位置につき、前記複数の脚を閉じたとき、前記片方の脚沿いの待避位置につくように構成できる。
【0009】
前記構成により、複数の脚を互いに接近させて前後方向及び左右方向に折り畳むことができ、かつ搬送ローラーを脚沿いの待避位置に配置することができるので、コンパクトに折り畳むことができる。そして折り畳んだとき略直方体状になるため起立状態にしても比較的安定性がよい。それゆえ、取り扱うのに都合がよい。また、折り畳み時、搬送ローラーを手で持ち上げて、その支持軸の一端部を中心に旋回させることで待避位置に待避させることができる。しかも搬送ローラーを支える台の部分は伸縮リンク機構を構成しているので、一組の隣り合う脚を互いに接近離反させることにより、各脚が連動して接近離反するようになっている。それゆえ、設置、撤収が容易である。更に構造が簡素であるので、軽量化を図ることができる。したがって、比較的軽量であり不使用時にコンパクトに折り畳むことができ、保管や運搬に便利であり、設置、撤収を容易に短時間で行うことができる折り畳み式搬送装置を得ることができる。
【0010】
また、本発明の第2の側面に係る折り畳み式搬送装置によれば、前記保持部は、前記片方の脚の上端部から左右方向における外側へ突き出るように固設した第1ブラケットと、該第1ブラケットに前後方向の軸線を中心に回動可能に装着した補助腕とからなり、前記支持軸の片方の端部は、前記補助腕の自由端部に回動可能に装着してあるように構成できる。
【0011】
前記構成により、搬送ローラーを搬送位置につけたとき、搬送ローラーの支持軸の両端部は左右方向に隣り合う脚の上端に確実に載るので、搬送時に被搬送物の重量により搬送ローラーに加わる上下方向の荷重を、左右方向に隣り合う脚で支えることができ、保持部は大きい下向きの荷重を支える必要がない。それゆえ保持部のコンパクト化を図ることができる。しかも第1ブラケットや補助腕等に多少の加工誤差や組立誤差があっても支障が無いので、保持部の加工や組立も容易である。また複数の脚を閉じて搬送ローラーを待避位置につけたとき、補助腕の自由端部は脚の上端より低く待避するため、実質的に脚上端より上に出るものを有していない。それゆえ、折り畳んで起立状態にした折り畳み式搬送装置の上面に、折り畳み式搬送装置を積み重ねて保管することができる。
【0012】
また、本発明の第3の側面に係る折り畳み式搬送装置によれば、さらに、前記左右方向に隣り合う脚のうちの他の片方の脚の上端部に設けた、前記支持軸の他の片方の端部に係合して当該端部の前方への移動を阻止することができるストッパーを備えるように構成できる。
【0013】
前記構成により、使用時に搬送ローラーに加わる前後方向の荷重をストッパーと保持部とで分散されるので、保持部の負担が軽減され、保持部のコンパクト化を図ることができる。
【0014】
また、本発明の第4の側面に係る折り畳み式搬送装置によれば、前記脚は、当該脚の上端部に固着した第1の継手と、当該脚の下端部に固着した第2の継手を備え、前記第1の継手は、前記第1ブラケットを有し、前記第1の継手及び第2の継手は、夫々左右方向に隣り合う脚を連結する前記単位X字状リンク部材の先端部を回動可能に連結するための第2ブラケットと、前後方向に隣り合う脚を連結する前記単位X字状リンク部材の先端部を回動可能に連結するための第3ブラケットとを有するように構成できる。
【0015】
前記構成により、脚の上端部や下端部に、第1ブラケット、第2部ラケット、第3ブラケットを形成する作業が、それらの部材片を溶接等により直接的に接合して形成する場合に比べて非常に簡単になり、製造原価の安い折り畳み式搬送装置を得ることが可能になる。
【0016】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る折り畳み式搬送装置によれば、前記支持軸の前記他の片方の端部には下向きの突起部が形成してあり、前記左右に隣り合う脚のうちの前記他の片方の脚の上端部に固着した第1の継手が有する前記第1ブラケットを、前記突起部に係合する前記ストッパーとして用いるように構成できる。
【0017】
前記構成により、脚の上端に設ける第1の継手を共通化することができ、第1ブラケット、第2ブラケット、第3ブラケットを脚の上端部に設置する作業を容易にすることができ、折り畳み式搬送装置の製造価格の一層の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る折り畳み式搬送装置の斜視図である。
【
図2A】第1の継手の斜視図であって、左右方向に隣り合う柱のうちの保持部側の脚の上端に固着する第1の継手の上面、前側面及び左側面を示している。
【
図2B】第1の継手の斜視図であって、左右方向に隣り合う柱のうちの保持部側の脚の上端に固着する第1の継手の下面、後側面及び左側面を示している。
【
図3】折り畳み式搬送装置の使用時の状態を示す正面図である。
【
図4】搬送ローラーを待避させた状態を示す正面図である。
【
図5】折り畳み式搬送装置を折り畳んだ状態を示す正面図である。
【
図6】折り畳み式搬送装置を折り畳んだ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための折り畳み式搬送装置を例示するものであって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0020】
図1乃至
図6は本発明に係る折り畳み式搬送装置の実施形態を示す。
図1において、矢印Aは折り畳み式搬送装置1の前後方向、矢印Bは折り畳み式搬送装置1の左右方向を示している。折り畳み式搬送装置1は、左右一対になるように前後方向に2列に並ぶ、長手方向に伸縮可能な複数の脚2と、複数の脚2のうちの前後に隣り合う脚毎に及び左右に隣り合う脚毎に設けた、当該隣り合う脚2を伸縮リンク機構になるように連結する単位X字状リンク部材3と、左右方向に隣り合う脚毎に設けた、支持軸4と該支持軸4に回転自在に貫通された円筒体5とからなる搬送ローラー6と、左右方向に隣り合う脚2のうちの片方の脚2の上端部に設けた、支持軸4の片方の端部4aを前後方向の軸線を中心に回動可能に保持する保持部7とを備えている。
【0021】
単位X字状リンク部材3は、同じ長さの二つの棒状部材8を各々の中点で交差させると共に互いに軸体9で回動可能に連結して構成してある。この実施形態では、二つの棒状部材8は、軽量化を図るためにアルミ合金製の角パイプからできており、重ね合わせた状態で交差している。軸体9は皿小ねじとその先端部に螺着した緩み止め機能を持つナットとからなり、二つの棒状部材8の交差部分の外側に配置した一対のカバー10及び二つの棒状部材8の中点を回動可能に貫通している。二つの棒状部材8は、例えば互いの回動抵抗を低減するために摩擦係数の小さい材料からなる座板を挟んで重ね合わせてもよい。
【0022】
脚2は、当該脚2の上端部に固着した第1の継手12と、当該脚2の下端部に固着した第2の継手13を備えている。この実施形態の場合、脚2は、柱部材2aと該柱部材2aに長手方向にスライド可能に装着したスライド部材2bとからなり、柱部材2a並びにスライド部材2bも軽量化を図るために夫々アルミ合金製の角パイプでできており、スライド部材2bは、その上端部を柱部材2aの中空部にすきまばめをしてある。
【0023】
図2Aは、
図1において左右方向に隣り合う脚2のうちの保持部7側の脚2の上端に固着する第1の継手12の上面、前側面及び左側面を示し、
図2Bは、同じく第1の継手12の下面、後側面及び左側面を示す。第1の継手12は、第1ブラケット14、第2ブラケット15、第3ブラケット16を有している。
【0024】
第1ブラケット14は、前後一対の腕部分14aからなり、第1の継手12の本体部12aから保持部7側へ突き出るように本体部12aと一体に形成してある。つまり第1ブラケット14は、
図1に示す左右に隣り合う脚2のうちの片方の脚2の上端部から左右方向における外側へ突き出るように第1の継手12に固設している。第1ブラケット14の前後一対の腕部分14aの一方には孔17、他方にはネジ穴18が前後方向の同一軸線上に形成してある。
【0025】
第2ブラケット15は、前後方向に隣り合う脚2を連結する単位X字状リンク部材3の先端部を回動可能に連結するために用いるものであり、第1の継手12の本体部12aの前側と後側に設けてある。そして
図2に示すように左右一対の腕部分15aと、この左右一対の腕部分15aの上端に設けた補強部分15bとからなり、第1の継手12の本体部12aから前方又は後方へ突き出た状態で本体部12aと一体に形成してある。第2ブラケット15の左右一対の腕部分15aの片方には左右方向の孔17が、他の片方にはネジ穴18が左右方向の同一軸線上に形成してある。
【0026】
第3ブラケット16は、左右方向に隣り合う脚2を連結する単位X字状リンク部材3の棒状部材8の先端部を回動可能に連結するためのものである。第3ブラケット16と第2ブラケット15とは、第1の継手12の本体部12aに対し、上下方向の中心軸線を中心とする回転角度を互いに90度隔てて配置している点で異なるが、両者の形状寸法や機能は同じである。そして第1ブラケット14、前後の第2ブラケット15及び第3ブラケット16は、本体部12aの上下方向の中心軸線を中心として互いに点対称になるように配置してある。
【0027】
第1の継手12の本体部12aには穴19が形成してあり、この穴19には、スライド部材2bと同じ太さの接合片20の上端部が嵌めてある。また第1の継手12は、軽量化を図るためと、比較的容易に大量生産が可能なように、機械的強度が大きい合成樹脂からできている。
【0028】
脚2の上端部への第1の継手12の固着は、第1の継手12の本体部12aに形成した穴19に接合片20の上端部を嵌めて止めネジ21で固定すると共に、その接合片20の下端部を柱部材2aの上端の中空部に嵌めて止めネジ22で柱部材2a固定することにより行い、脚2の下端部への第2の継手13の固着は、第2の継手13の本体部13aに形成した穴19にスライド部材2bの下端部を嵌めて止めネジ23でスライド部材2bに固定することにより行っている。
【0029】
左右に隣り合う脚2のうちの保持部7と反対側の脚2の上端に固着する第1の継手12や、各脚2の下端に固着する第2の継手13は、製造を容易にし、かつ製造コストの低減を図るため、保持部7側の第1の継手12と実質的に同じものであり、上述の第1の継手12と同様に脚2に固着してある。
【0030】
図3において、左右に隣り合う脚2間の単位X字状リンク部材3の二本の棒状部材8の各両端部には、その中点からの距離が等しくなるように、かつ軸体9に平行に孔が形成してある。そして棒状部材8の端部と第3ブラケット16とは、一対の腕部材16a間に棒状部材8の端部を挿入し、皿小ネジからなる軸体24を第3ブラケット16の孔17に通し、更に棒状部材8の端部の孔に通し、その軸体24の先端部のネジをネジ穴18に螺合させて固定することにより、軸体24を中心に回動可能に連結してある。前後に隣り合う脚2間の単位X字状リンク部材3も、左右に隣り合う脚2間の単位X字状リンク部材3と実質的に同じものであり、前後に隣り合う脚2間の単位X字状リンク部材3の棒状部材8の端部と第2ブラケット15も、左右に隣り合う脚2間の単位X字状リンク部材3と同様に軸体24を中心に回動可能に連結してある。
【0031】
保持部7は、折り畳み式搬送装置1の使用時に搬送ローラー6を、その支持軸4の両端部が左右方向に隣り合う脚2の上端部に載るように配置し、複数の脚2を閉じたとき、搬送ローラー6を左側の脚2に沿うように配置することができるように支持軸4を保持するために、左右一対の脚2のうちの保持部7側の脚2の上端部に固着した第1の継手12が有する第1ブラケット14と、第1ブラケット14に前後方向の軸線を中心に揺動可能に装着した補助腕25とで構成してある。搬送ローラー6の支持軸4の保持部7側の端部は、補助腕25の自由端部に回動可能に装着してある。
【0032】
この実施形態では、補助腕25の第1ブラケット14への装着は、補助腕25の保持部7側の端部を、第1ブラケット14の一対の腕部分14aの間に挿入し、皿小ネジからなる軸体26を、第1ブラケット14の片方の腕部分14aの孔17から、補助腕25の下端部に形成した孔に通し、その軸体26の先端部のネジをネジ穴18に螺合させることにより行っている。また補助腕25への支持軸4の保持部7側の端部の装着は、鍋ネジからなる前後方向に伸長した軸体27を、補助腕25に形成した孔と、支持軸4の保持部7側の端部に形成した孔に通して、軸体27の先端部のネジに緩み止め機能を持つナット28を螺着することにより行っている。
【0033】
支持軸4の保持部7と反対側の端部には下向きに突起部29が形成してある。この突起部29は、左右に隣り合う脚2のうちの保持部7と反対側の脚2の上端に固着した第1の継手12が有する第1ブラケット14の一対の腕部分14aの間に嵌めることができるように配置してある。
【0034】
以上のように構成された折り畳み式搬送装置1は、その使用時には、
図1に示すように脚2を開いて地面又は床等の上に設置し、その保管時や運搬時等の不使用時には
図5、
図6に示すように折り畳む。
【0035】
図3に実線で示す搬送ローラー6は、被搬送物を搬送するための搬送位置についており、
図4に実線で示す搬送ローラー6は、保持部7側の脚2沿いの待避位置についている。折り畳み式搬送装置1を折り畳むには、搬送位置についている各搬送ローラー6を、保持部7側の脚2沿いの待避位置に退避させた後、隣り合う脚2を手で互いに接近させて複数の脚2を
図5、
図6に示すように閉じる。脚2を閉じる際に、柱部材2aがスライド部材2bに対し上方へスライドし、それによって各脚2が長手方向に伸びる。
【0036】
図3において、搬送位置についている搬送ローラー6を、保持部7側の脚2沿いの待避位置に退避させるには、搬送ローラー6を、手で持ち上げて保持部7側へ旋回させる。
図4に二点鎖線で示す搬送ローラー6は、搬送位置から少し持ち上がった状態にあり、このとき、搬送ローラー6の支持軸4は、補助腕25に対して軸体27を中心に、
図4では時計方向に回転すると共に、補助腕25は、第1ブラケット14に対して軸体26を中心に時計方向に回転する。そして搬送ローラー6を更に持ち上げて支持軸4の保持部側の端部を中心に旋回させて保持部7側へ倒すと、搬送ローラー6及び補助腕25は退避位置につく。
【0037】
折り畳み式搬送装置1を設置するには、手で隣り合う脚2を互いに離反させて、
図1に示すように隣り合う脚2を開いた後、退避位置にある搬送ローラー6を、手で持ち上げ、保持部7と反対側へ旋回させて倒す。そうすると、支持軸4の保持部7と反対側の端部に設けた突起部29が、保持部7と反対側の脚2に固設した第1の継手12の第1ブラケット14の一対の腕部分14aの間に嵌ると共に、支持軸4の両端部が左右一対の脚2に夫々固設した第1の継手12の上面に載り、搬送ローラー6は搬送位置につく。それによって、被搬送物の搬送時に搬送ローラー6に働く被搬送物の重量による下向きの荷重や前方への荷重を隣り合う脚2や単位X字状リンク部材3とからなる台部により確実に支えることができる。
【0038】
通常、折り畳み式搬送装置1による被搬送物が人や手荷物等の場合は、その被搬送物を搬送ローラー6の相互間隔の2倍以上の長さを有する板やパレット等からなる荷台に載せ、その荷台を搬送ローラー6の上に載置し、その荷台を作業者が手で押して搬送する。被搬送物が、例えば汚染されたパイプのように長尺のものの場合は、荷台を用いず、被搬送物を直接搬送ローラー6の上に載せて搬送することができる。搬送経路が長いため一つの折り畳み式搬送装置1では十分な搬送経路の長さを得られない場合は、複数の折り畳み式搬送装置1を長手方向に並べて設置することで、必要な搬送経路の長さを得ることができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明によれば、折り畳み式搬送装置1が備える脚2の数は、
図1に示すように6本に限られず、例えば4本或いは8本以上であってもよい。
図1に示す最も前側と最も後側の左右一対の脚2には、脚2の前側と後側の何れか一方の側にのみ第2ブラケット15を設ければよい。また、搬送ローラー6の支持軸4の保持部7と反対側の端部に突起部29を設け、保持部7と反対側の第1の継手12を、第1ブラケット14を有するものとする代わりに、左右に隣り合う脚2のうちの保持部7と反対側の脚2の上端から上方へ突き出たストッパーを設け、このストッパーを、搬送ローラー6の支持軸4の保持部7と反対側の端部に係合させて、当該端部に作用する前方への荷重を、前記ストッパーで受け止めるようにする場合もあり得る。また保持部7を、当該保持部7のみで搬送ローラー6の支持軸4に作用する前後方向の荷重を支えることができるものにする場合もあり得る。また継手を用いず、第1ブラケット14、第2ブラケット15、第3ブラケットを脚2に直接的に固設する場合もあり得る。また保持部7は、補助腕25を備えず、第1ブラケット14のみで、支持軸7の保持部7側の端部を前後方向の軸線を中心に回動可能に保持し、搬送ローラー6を搬送位置につけることや、待避位置につけることなどを可能にする場合もあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の折り畳み式搬送装置は、NBC災害等で有害物質に汚染された被災者を除染設備に搬送するためだけでなく、例えば、救急活動で患者を救急車へ搬送するための使用や、或いは手荷物等の他の物品を所要位置へ搬送するための使用など、他の用途にも使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…折り畳み式搬送装置
2…脚
2a…柱部材
2b…スライド部材
3…単位X字状リンク部材
4…支持軸
5…円筒体
6…搬送ローラー
7…保持部
8…棒状部材
9…軸体
10…カバー
11…ボルト
12…第1の継手
13…第2の継手
14…第1ブラケット
14a…腕部分
15…第2ブラケット
15a…腕部分
15b…補強部分
16…第3ブラケット
17…孔
18…ネジ穴
19…穴
20…接合片
21…止めネジ
22…止めネジ
23…止めネジ
24…軸体
25…補助腕
26…軸体
27…軸体
28…ナット
29…突起部