(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ポリマーフィルムを含むディスプレイデバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 50/854 20230101AFI20230525BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20230525BHJP
H10K 50/852 20230101ALI20230525BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20230525BHJP
【FI】
H10K50/854
G02B5/02 B
H10K50/852
H10K59/12
(21)【出願番号】P 2019560396
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(86)【国際出願番号】 US2018030896
(87)【国際公開番号】W WO2018204648
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-28
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,エンカイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジャオフイ
(72)【発明者】
【氏名】エバーアーツ,アルバート アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ル,ヨンシャン
(72)【発明者】
【氏名】コルブ,ウィリアム ブレイク
(72)【発明者】
【氏名】ブリュッセウィッツ,キース アール.
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-546014(JP,A)
【文献】特表2014-500519(JP,A)
【文献】特表2015-534100(JP,A)
【文献】国際公開第2013/105556(WO,A1)
【文献】特開2013-235836(JP,A)
【文献】特開2013-219032(JP,A)
【文献】特開2014-123568(JP,A)
【文献】特許第4378891(JP,B2)
【文献】特許第4186688(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/004811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/854
G02B 5/02
H10K 50/852
H10K 59/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイデバイスであって、
1つ以上の接着フィルムを含む多層構造を有する有機発光ダイオードパネルと、
前記有機発光ダイオードパネルの前記多層構造内に組み込まれ、
微細構造化されていない2つの主表面を有するポリマーフィルムと、を備え、
前記ポリマーフィルムは、
前記微細構造化されていない2つの主表面を有する第1のポリマー層を含み、
前記第1のポリマー層は、
屈折率n
1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域と、
前記第1のポリマー領域内に相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域と、を含み、
前記チャネルは、屈折率n
2を有する第2の材料を含み、
前記第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料を含み、
前記第2の材料は、
第2のポリマー材料及
び/又は空気を含み、
前記ポリマーフィルムは、
少なくとも90%の、Haze-
Gard Plusヘイズメーター(BYK-Gardner(Columbia、MD)から市販されている)により測定される透明度と、
少なくとも80%の、前記Haze-
Gard Plusヘイズメーターにより測定される可視光透過率と、
16.9%~84.6%の、前記Haze-
Gard Plusヘイズメーターにより測定されるバルクヘイズと、を有する、ディスプレイデバイス。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムは、前記ポリマーフィルム全体にわたって12%以下の正規化されたマイクロヘイズ不均一性を有する、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項3】
前記ポリマーフィルムは、少なくとも1ミクロン及び最大50ミクロンまでの厚さを有する、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項4】
n
1とn
2との間の差は、少なくとも0.01単位である、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項5】
前記第1の弾性ポリマー材料は、前記ポリマーフィルムの総体積を基準として、35体積%~90体積%の量で存在する、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項6】
前記第1の弾性ポリマー材料は、多官能性モノマー、及びオリゴマー、の硬化物である、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項7】
前記第2の材料は、前記ポリマーフィルムの総体積を基準として、10体積%~65体積%の量で存在するポリマー材料である、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項8】
前記第2のポリマー材料は、アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機ポリマーを含む、請求項7に記載のディスプレイデバイス。
【請求項9】
前記第1の材料及び/又は第2の材料は、粒子を含む、請求項8に記載のディスプレイデバイス。
【請求項10】
前記粒子は、ZrO
2、SiO
2、TiO
2、SnO
2、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される無機ナノ粒子を含む、請求項9に記載のディスプレイデバイス。
【請求項11】
前記第2の材料は、空気を含む、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項12】
相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む前記第2の領域の体積分率が、少なくとも10%である、請求項11に記載のディスプレイデバイス。
【請求項13】
相互連結された細孔及びチャネルの前記ネットワークは、2ミクロン以下の平均断面を有する、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項14】
前記ポリマーフィルムは、前記第1のポリマー層の一方又は両方の主表面上に配置された第2のポリマー層を更に含み、前記第2のポリマー層は、屈折率n
3を有する第3のポリマー材料を含み、前記第1のポリマー材料及び第3のポリマー材料は、同一又は異なる、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項15】
前記第2のポリマー材料及び/又は第3のポリマー材料は、接着剤である、請求項14に記載のディスプレイデバイス。
【請求項16】
前記接着剤は、光学的に透明な接着剤である、請求項15に記載のディスプレイデバイス。
【請求項17】
前記第1及び第2の材料は、多孔質構造を形成し、前記第2のポリマー層は、キャッピング層であり、前記キャッピング層は、前記多孔質構造の一部に侵入していないか、又は部分的にのみ侵入している、請求項16に記載のディスプレイデバイス。
【請求項18】
前記キャッピング層は、前記第1のポリマー材料と同一である第3のポリマー材料を含む、請求項17に記載のディスプレイデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有機発光ダイオード(OLED)(Organic light emitting diodes)は、現在、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、及びデジタルカメラなどの小型画面デバイスで使用されている。現在のOLED市場は、アクティブマトリックス有機発光ダイオード(AMOLED)(active-matrix organic light-emitting diode)手持形機器で占められており、この手持形機器は、トップエミッション型アーキテクチャを有し、現在、強力マイクロキャビティを採用することを除いて、いずれの光抽出法も使用していない。この強力キャビティ設計は、高い光効率を有することができるが、液晶ディスプレイ(LCD)と比較して、角色均一性(angular color uniformity)がはるかに悪くなる。
【0002】
典型的には、OLED画面の色は、視野角が垂直入射から離れるにつれて大きくシフトするが、LCDディスプレイでは、少ししかシフトしない。これは、2つの表示技術間における視覚的に明白な差異である。角色均一性を改善する方法は、強力キャビティ設計を有するAMOLEDディスプレイにとって課題のままである。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、ポリマーフィルム、及びそのようなポリマーフィルムを含むディスプレイデバイスを提供する。
【0004】
一実施形態では、ディスプレイデバイスは、1つ以上の接着フィルムを含む多層構造を有する有機発光ダイオードパネルと、有機発光ダイオードパネルの多層構造内に組み込まれたポリマーフィルムと、を含む。そのようなポリマーフィルムは、局所的均一性が制御された、非常に穏やかな光学拡散体の光学機能を有する。
【0005】
ポリマーフィルムは、2つの主表面を有する第1のポリマー層を含む。第1のポリマー層は、屈折率n1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域と、第1のポリマー領域内に相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域と、を含み、チャネルは、屈折率n2を有する第2の材料を含み、n1は、n2と異なる。第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料及び任意の粒子を含む。第2の材料は、第2のポリマー材料及び任意の粒子、並びに/又は空気を含む。ポリマーフィルムは、少なくとも90%の透明度と、少なくとも80%の可視光透過率と、25%~80%のバルクヘイズと、を有する。特定の実施形態では、ポリマーフィルムは、ポリマーフィルム全体にわたって12%以下の正規化されたマイクロヘイズ不均一性を有する。
【0006】
用語「ヘイズ」は、広角光散乱を指し、ディスプレイから放射される光は、全方向に拡散され、コントラストの損失を引き起こす。より具体的には、用語「バルクヘイズ」は、数ミリメートル(mm)の広いサンプリングビームで測定された広角光散乱を指し、これにより、ポリマーフィルムの前記数ミリメートルのアパーチャからの平均結果を得る。また、より具体的には、用語「マイクロヘイズ」は、数十ミクロン(すなわち、100ミクロン未満、例えば、10~40ミクロン)のより小さい照射面積で測定される広角光散乱を指し、これにより、平均マイクロヘイズ測定値は、多くの測定値(各々の面積は数十ミクロン、数ミリメートルのポリマーフィルムにわたって拡がる)からの平均結果を表す。
【0007】
用語「正規化されたマイクロヘイズ不均一性」は、少なくとも1mm、及び典型的には数ミリメートルにわたって測定されるときの、マイクロヘイズの標準偏差とマイクロヘイズの平均値との比を指す。マイクロヘイズの標準偏差は、マイクロヘイズノイズの尺度である。したがって、正規化されたマイクロヘイズ不均一性は、視覚的なマイクロヘイズノイズとマイクロヘイズ信号との比の基準値である。
【0008】
用語「透明度」は、狭角散乱を指し、光は、高濃度で小さい角度範囲で拡散される。特定の透明度を有する効果は、基本的に、試験片を通して非常に小さな細部をいかに良好に見ることができるかで説明される。
【0009】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」としては、これらに限定されるものではないが、有機ホモポリマー、コポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー及びコポリマーなど)、ターポリマーなど、並びにこれらのブレンド及び修飾体が挙げられる。更に、特に具体的に限定されない限り、用語「ポリマー」は、材料の全ての可能な幾何学的配置を包含するものとする。これらの配置としては、これらに限定されるものではないが、アイソタクチック対称、シンジオタクチック対称、及びアタクチック対称が挙げられる。
【0010】
本明細書において、用語「含む(comprises)」及びその変化形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、記載されたある1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを意味し、いかなる他の工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も排除されないことを意味するものと理解される。「からなる(consisting of)」により、この語句「からなる」に続くいかなるものも包み、これらに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」により、この語句の後に列挙されるいかなる要素も含み、これらの列挙された要素に関して本開示で特定した作用若しくは機能に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意に含まれ、列挙された要素の作用若しくは機能に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよい、又は、しなくてもよいことを意味する。
【0011】
「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0012】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」等の用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、例示のために具体例が使用され得る一般的な部類を含むことを意図するものである。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に用いられる。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」及び「~のうちの少なくとも1つを含む(comprises at least one of)」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「又は」は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。
【0014】
用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0015】
更に本明細書において、全ての数は用語「約」によって修飾されるものとみなされ、特定の実施形態において、好ましくは、用語「正確に」によって修飾されるものとみなされる。測定された量に関して本明細書で用いる場合、用語「約」は、当業者によって、測定を行い、測定の目的及び用いた測定機器の精度に見合う程度の注意を払って予想され得る、測定された量のばらつきを指す。本明細書において、「最大」数字(例えば、最大50)は、その数(例えば、50)を含む。
【0016】
また、本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「室温」は、20℃~25℃又は22℃~25℃の温度を指す。
【0018】
用語「の範囲(in the range)」又は「の範囲内(within a range)」(及び類似の記載)は、その記載された範囲の端点を含む。
【0019】
本明細書に開示の代替要素又は実施形態の群分けは、限定されるものと解釈するべきではない。各群のメンバーは、個々に、又は、その群の他のメンバー若しくはその群の中に見出される他の要素との任意の組合せで、言及及び特許請求することができる。便宜上及び/又は特許性の理由から、群の1つ以上のメンバーが群に含まれ得るか、又は、群から削除され得ることが見込まれる。任意のこのような包含又は削除が生じた場合、本明細書は、本明細書において改変された群を含むものとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で用いられた全てのマーカッシュ群の記載内容を実現する。
【0020】
本明細書を通しての「一実施形態(one embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「特定の実施形態(certain embodiments)」、又は「いくつかの実施形態(some embodiments)」などの言及は、実施形態に関して記載された特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所にこのような語句が記載されている場合、必ずしも、本発明の同一の実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせてもよい。
【0021】
本開示の上記の概要は、本発明の各開示された実施形態又は全ての実施の記載を意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通し、数箇所において、例の列挙を通して指針が提供されており、これらの例は、様々な組み合わせで用いることができる。いずれの場合にも、記載された列挙は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本開示の追加のポリマー層を有するポリマーフィルムの断面図である(層は縮尺通りではない)。
【
図3】多層構造を有する有機発光ダイオードパネルの断面図である(層は縮尺通りではない)。
【
図4】例示的なアクティブマトリックス有機発光ダイオードパネル(AMOLEDパネル)の断面図である。
【
図5】本開示の例示的な実施形態による円偏光子の断面図である。
【
図6】本開示の例示的な実施形態による静電容量式タッチパネルの断面図である。
【
図7】ポリマー光学フィルムのマイクロヘイズを決定するために使用される微小散乱測定システム(microscatterometry system)の図である。
【
図8】3つの異なる視野角に対する本開示の例示的なフィルムの光学スペクトルである。
【
図9】ワイドビューカラー(WVC)(Wide View Color)補正ポリマーフィルムを用いる場合及び用いない場合の、視野角に対する軸外角(off-angle)色シフト(CIE(国際照明委員会)色座標の対応するシフトによって表されるような)の例示的なプロットである。
【
図10】ZrO
2バックフィルを備えるWVC材料Bを有するOLEDデバイスの角色シフトのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、ポリマーフィルム、及びこれらのポリマーフィルムを含むディスプレイデバイスを提供する。ポリマーフィルムは、非常に穏やかな光学拡散体の光学機能を有する。
【0024】
ポリマーフィルムは、2つの主表面を有する第1のポリマー層を含む。屈折率n1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域と、第1のポリマー領域内に相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域と、であり、チャネルは、屈折率n2を有する第2の材料を含み、n1は、n2と異なる。第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料及び任意の粒子を含む。第2の材料は、第2のポリマー材料及び任意の粒子、並びに/又は空気を含む。
【0025】
ポリマーフィルムは、少なくとも90%の透明度と、少なくとも80%の可視光透過率と、25%~80%のバルクヘイズと、を有する。特定の実施形態では、ポリマーフィルムは、ポリマーフィルム全体にわたって12%以下の正規化されたマイクロヘイズ不均一性を有する。
【0026】
第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料及び任意の粒子を含む。第1の材料は、相互連結された細孔(すなわち、ボイド)及びチャネルのネットワークを有する多孔質構造を形成する。すなわち、細孔及びチャネルは、第1のポリマー領域によって画定される。
【0027】
典型的には、複数の相互連結された細孔及びチャネルは、中空トンネル又はトンネル様通路を介して互いに接続された細孔を含む。特定の実施形態では、ネットワーク内には、複数の相互連結された細孔及びチャネルが存在し得る。特定の実施形態では、少量の閉じた又は接続されていない細孔(すなわち、ボイド)が存在し得る。
【0028】
典型的には、細孔及びチャネルは、2ミクロン以下の平均断面(例えば、球形細孔の直径)を有する。別の言い方をすれば、相互連結された細孔及びチャネルのネットワークは、2ミクロン未満のサイズの散乱粒子と同様の角度平均散乱特性を有する。角度平均散乱特性という用語は、以下の意味を有する:不規則形状の散乱中心は、衝突光角に非常に依存する散乱断面及び散乱角などの散乱特性を有する。角度平均散乱特性は、衝突光角を考慮しており、全ての衝突光角の平均化された特性を呈する。
【0029】
特定の実施形態では、複数の相互連結された細孔及びチャネルの体積分率は、少なくとも10%である。
【0030】
第1のポリマー材料は、典型的には、多官能性モノマー及び/又はオリゴマーの硬化物である。特定の実施形態では、第1のポリマー材料は、アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機ポリマーを含む。特定の実施形態では、第1のポリマー材料は、多官能性(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー((メタ)アクリレートは、メタクリレート及びアクリレートを含む)、の硬化物を含む。
【0031】
ポリマー材料は、細孔及びチャネルが崩壊しないように、多孔質構造を支持するために十分に弾性である。これに関連して、「弾性」材料は、軟質又は硬質の弾性材料であってもよいが、材料の流れにより多孔質構造中をゆっくりと充填する粘性又は粘弾性材料ではない。
【0032】
第1のポリマー材料を形成できる多官能性モノマーの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer Company(Exton,PA)から商品名SR351で市販されている)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomerから商品名SR454で市販されている)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomerから商品名SR444で市販されている)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomerから商品名SR399で市販されている)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名SR494でSartomerから)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(商品名SR368でSartomerから)1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(商品名SR238でSartomerから)、及び(メタ)アクリレート官能性オリゴマーが挙げられる。そのようなオリゴマーの例としては、高引張強度及び高伸長の樹脂、例えば、Sartomer Companyから市販されているCN9893、CN902、CN9001、CN961、及びCN964、並びにCytec Industries(Woodland Park,NJ)から市販されているEBECRYL 4833及びEb8804が挙げられる。好適な材料としてはまた、「ハード」オリゴマーアクリレート及び「ソフト」オリゴマーアクリレートの組み合わせも挙げられる。「ハード」アクリレートの例としては、EBECRYL 4866などのポリウレタンアクリレート、EBECRYL 838などのポリエステルアクリレート、並びにEBECRYL 600、EBECRYL 3200、及びEBECRYL 1608(Cytecから市販されている)、及びCN2920、CN2261、及びCN9013(Sartomer Companyから市販されている)などのエポキシアクリレートが挙げられる。「ソフト」アクリレートの例としては、Cytecから市販されているEBECRYL 8411、並びにSartomer Companyから市販されているCN959、CN9782、及びCN973が挙げられる。好適な材料は、例えば、米国特許第9,541,701(B2)号(Thompsonら)に開示されている。
【0033】
特定の実施形態では、第1の材料はまた、モルホロジーの制御を助ける粒子を含む。特定の実施形態では、粒子は、ナノ粒子、所望により表面改質ナノ粒子である。そのような粒子の例としては、SiO2(例えば、Nissan Chemical AmericaからのA174処理されたNALCO 2329Kシリカ粒子、表面改質MP4540Mシリカ粒子)、ZrO2、TiO2、SnO2、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい粒子は、SiO2である。そのような粒子の例は、例えば、米国特許出願公開第2012/0038990(A1)号(Haoら)に開示されている。第1の材料中の粒子の量は、第1の材料の総重量を基準として、最大60重量%であり得る。
【0034】
第1のポリマー材料によって画定された多孔質構造の調製は、例えば、米国特許出願公開第2012/0038990(A1)号(Haoら)及び米国特許第8,808,811(B2)号(Kolbら)に開示されている。あるプロセスでは、まず、溶剤に溶解した重合性材料を含む溶液が調製され、重合性材料は、例えば、1種以上のモノマー、所望によりカップリング剤、架橋剤、及び反応開始剤などの添加剤、並びに所望によりナノ粒子などの複数の粒子を含んでもよい。次に、重合性材料は、例えば、熱又は光を適用して重合され、溶剤中に不溶性ポリマーマトリックスを形成する。場合によっては、重合工程後、溶剤は、より低い濃度であるが、重合性材料の一部を依然として含んでもよい。次に、溶液を乾燥又は蒸発させることによって溶剤を除去し、ポリマー結合剤中に分散された相互連結されたチャネルのネットワークを含む第1のポリマーマトリックスを得る。所望により、第1のポリマーマトリックスは、第1のポリマーマトリックス中に分散された複数の粒子を含む。使用される場合、粒子は、第1のポリマーマトリックス内に結合され、結合は、物理的又は化学的であり得る。
【0035】
特定の実施形態では、第1の材料は、ポリマーフィルムの総体積を基準として、少なくとも35体積%の量で、第1のポリマー層中に存在する。特定の実施形態では、第1の材料は、ポリマーフィルムの総体積を基準として、最大90体積%の量で、第1のポリマー層中に存在する。
【0036】
本開示のポリマーフィルムは、第2の材料で完全に又は更には部分的に充填された「ホスト」として第1の材料内の細孔及びチャネルのネットワークを利用して作製できる。第2の材料は、第1の材料の屈折率と屈折率が一致しない。典型的には、第1の材料と第2の材料との屈折率の差は、少なくとも0.01単位である。細孔及びチャネルをポリマー材料で完全に充填すると、元の「空気ボイド」は、第1のポリマー「ホスト」相中の「ゲスト」ポリマー相によって置き換えられる。本開示の得られたポリマーフィルムの光学特性は、第1の(n1)ポリマー材料と第2の(n2)ポリマー材料との間の屈折率の差、及びそれらの2つの混合材料の固有のモルホロジーによって決定することができる。
【0037】
特定の実施形態では、細孔及びチャネルのネットワークは、空気で充填される。特定の実施形態では、細孔及びチャネルのネットワークは、第2のポリマー材料及び所望により粒子で充填される。特定の実施形態では、細孔及びチャネルのネットワークは、空気と第2のポリマー材料(所望により粒子と混合される)との混合物で充填される。空気、第2のポリマー材料(所望により粒子と混合される)、又はこれらの混合物は、本明細書では、第2の材料と呼ばれ、第2の材料で充填された複数の相互連結された細孔及びチャネルは、本明細書では、第2の相互連結領域と呼ばれる。
【0038】
したがって、本明細書では、第1の材料は、屈折率n1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域を画定する。屈折率n2を有する第2の材料を含む第2の相互連結領域は、第1の材料内に相互侵入ネットワークを形成する。
【0039】
第2の材料がポリマー材料を含む場合、第2のポリマー材料は、アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機ポリマーを含む。粒子はまた、屈折率を制御するために、第2のポリマー材料と混合してもよい。特定の実施形態では、粒子は、ナノ粒子、所望により表面改質ナノ粒子である。そのような粒子の例としては、TiO2、ZrO2、SnO2、並びにHX-305M5などのいくつかの混合金属酸化物、Nissan Chemical America(Houston、TX)によって製造されたSnO2/ZrO2/SbO2の混合物が挙げられる。そのような粒子の例は、例えば、米国特許第8,343,622号(Liuら)に開示されている。第2の材料中の粒子の量は、第2の材料の総体積を基準として、最大80体積%であり得る。
【0040】
第2の材料がポリマー材料を含む場合、そのようなポリマー材料は、典型的には、ポリマーフィルムの総体積を基準として、少なくとも10体積%の量で、ポリマーフィルム中に存在する。第2の材料がポリマー材料を含む場合、そのようなポリマー材料は、典型的には、ポリマーフィルムの総体積を基準として、最大65体積%の量で、ポリマーフィルム中に存在する。
【0041】
(第1のポリマー領域の)第1の材料は、屈折率n1を有する。(第2の相互連結領域の)第2の材料は、屈折率n2を有する。これらの領域の材料は、n1がn2と異なるように選択される。特定の実施形態では、n1は、n2と少なくとも0.01単位異なる。特定の実施形態では、n1は、n2と少なくとも0.02単位、又は少なくとも0.03単位、又は少なくとも0.04単位、又は少なくとも0.05単位、又は少なくとも0.1単位異なる。特定の実施形態では、n1は、n2と最大0.5単位異なり、特定の実施形態では、n1は、n2の0.5単位以内であり、n1は、n2の0.4単位以内であり、n1は、n2の0.3単位以内であり、n1は、n2の0.2単位以内であり、又はn1は、n2の0.1単位以内である。本文脈中、「以内」は、0.5単位(又は0.4単位、又は0.3単位、又は0.2単位、又は0.1単位)以内で、より高い又はより低いことを意味する。
【0042】
特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本開示のポリマーフィルムの唯一のポリマー層である。特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本開示のポリマーフィルムの2つ以上のポリマー層のうちの1つである。特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本開示のポリマーフィルムの2つのポリマー層のうちの1つである。
【0043】
図1に示すように、特定の実施形態では、ポリマーフィルム1は、2つの主表面3及び4を有するポリマー層2であって、このポリマー層2が、屈折率n
1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域5と、第1のポリマー領域5内に相互連結された細孔及びチャネル6のネットワークを含む第2の領域と、を含み、相互連結された細孔及びチャネル6のネットワークは、屈折率n
2を有する第2の材料で充填されている、ポリマー層2を含む。相互連結された細孔及びチャネル6内の第2の材料は、空気、ポリマー材料、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
特定の実施形態では、本開示のポリマーフィルムは、第1のポリマー層の一方又は両方の主表面(単数又は複数)上に配置された第2のポリマー層を含み、第2のポリマー層が、屈折率n3を有する第3のポリマー材料を含み、第1のポリマー材料及び第3のポリマー材料が、同一又は異なる。
【0045】
図2に示すように、特定の実施形態では、本開示のポリマーフィルム7は、第1のポリマー層2の1つの主表面3上に配置された第2のポリマー層8を含み、第1のポリマー層2は、第1のポリマー領域5を含む。第2のポリマー層8は、第3のポリマー材料を含む。(領域5の)第1のポリマー材料及び(層8の)第3のポリマー材料は、同一でも異なっていてもよい。あるいは、第3のポリマー材料(又は層8)は、相互連結された細孔及びチャネル6のネットワーク内の第2のポリマー材料と同一であってもよい。
【0046】
第2の材料が空気を含む場合、第1及び第2の材料の混合ネットワークは、多孔質構造を形成する。第2のポリマー層8(
図2)は、キャッピング層を形成し、キャッピング層の第3のポリマー材料は、多孔質構造の一部に侵入していないか、又は部分的にのみ侵入している。特定の実施形態では、第3のポリマー材料は、アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機ポリマーを含む。
【0047】
特定の実施形態では、n1がn3と異なるように、第1及び第3のポリマー材料は異なる。特定の実施形態では、n1は、n3から少なくとも0.05単位だけ異なる。特定の実施形態では、n1は、n3から最大0.5単位だけ異なり、特定の実施形態では、n1は、n3から0.5単位以内であり、n1は、n3から0.4単位以内であり、n1は、n3から0.3単位以内であり、n1は、n3から0.3単位以内であり、又はn1は、n2から0.1単位以内である。本文脈中、「以内」は、0.5単位(又は0.4単位、又は0.3単位、又は0.2単位、又は0.1単位)以内で、より高い又はより低いことを意味する。
【0048】
特定の実施形態では、第2のポリマー材料又は第3のポリマー材料のうちの少なくとも1つは、接着剤材料である。特定の実施形態では、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料のそれぞれは、接着剤材料である。
【0049】
特定の実施形態では、ポリマーフィルムの第1の(場合によっては、唯一の)ポリマー材料は、少なくとも500ナノメートルマイクロメートル(ミクロン又はμm)の厚さを有する。特定の実施形態では、ポリマーフィルムの第1の(場合によっては、唯一の)ポリマー層は、最大25ミクロン、又は最大15ミクロン、又は最大5ミクロン、又は最大1ミクロンの厚さを有する。
【0050】
特定の実施形態では、第2のポリマー材料は、第1の材料内の細孔及びチャネルを部分的に充填するか、又は第1の材料内の細孔及びチャネルを完全に充填することができ、所望により、充填された混合層(層2、
図2)の上部に過剰な第2のポリマー層を有することができる。この過剰な第2のポリマー層(例えば、層8、
図2)に最大厚さは存在しないが、特定の実施形態では、最大1ミリメートル(mm)の厚さであり得る。
【0051】
特定の実施形態では、ポリマーフィルム全体は、少なくとも1ミクロンの厚さを有する。特定の実施形態では、ポリマーフィルム全体は、最大15ミクロン、最大25ミクロン、最大50ミクロン、又は更には100ミクロン超の厚さを有する。
【0052】
本開示のポリマーフィルムは、次の特性:少なくとも80%(好ましくは少なくとも85%、又はより好ましくは少なくとも90%)の透明度と、少なくとも85%(好ましくは少なくとも90%)の可視光透過率と、15%~80%(好ましくは20%~80%、より好ましくは30%~70%、及び更により好ましくは30%~50%)のバルクヘイズと、を有する。特定の実施形態では、本開示のポリマーフィルムは、ポリマーフィルム全体にわたって12%以下(好ましくは10%未満、又はより好ましくは8%未満)の正規化されたマイクロヘイズ不均一性を有する。
【0053】
したがって、このようなフィルムは、ディスプレイデバイス、特に有機発光ダイオード表示パネルを含むデバイスに使用することができる。それらは、局所的均一性が制御された、非常に穏やかな光学拡散体として機能することができる。透明度、透過率、及びバルクヘイズは、Haze Gard Plus(BYK Gardner(Columbia、MD)製)を使用して測定できる。Haze Gard Plusは、実施例の項に記載されるように、ポリマーフィルムの18ミリメートル(mm)アパーチャのサンプリングビームから得た測定値を報告する。
【0054】
画素化ディスプレイの視覚的に知覚される品質は、表示画素の長さスケールのオーダーで、空間分布について制御されたヘイズの特定の均一性を必要とする。表示画素の長さスケールのオーダーを超えるヘイズの不均一性は、画素ぼけ又はいわゆるスパークル(sparkle)などの光学的欠陥をもたらし得る。この品質は、マイクロヘイズ均一性測定(実施例の項にて記載される、光学特性試験方法:マイクロヘイズ均一性)によって測定可能であり、これは、サンプリングビームを数十ミクロンの試料に照射することによる測定値を提供する。この測定では、測定されたマイクロヘイズレベルの標準偏差を測定しながら、1ピクセル以下の寸法を有する光プローブでポリマーフィルム表面を走査する。このマイクロヘイズ測定技術は、人間の視覚的な知覚のピークに対応する空間周波数、すなわち、典型的な表示距離では、1ミリメートル当たり1~5ライン対の範囲の空間周波数についての試料分析を可能にする。マイクロヘイズ測定により、表示画素寸法のサイズスケールにおけるサイズスケールのばらつきの検査が可能になる。対照的に、従来のヘイズ測定システムは、各測定で光学フィルムの広い面積を分析し、画素化ディスプレイの臨界長さスケールで視覚的に知覚される差異を区別することができない。
【0055】
本開示のポリマーフィルムは、OLEDディスプレイの視野角による色変化についての既知の問題を著しく改善することができる。この問題は、一般に、軸外角色シフト、又は角度色不均一性とラベル付けされ、問題に対する本明細書に記載される解決策は、ワイドビューカラー(WVC)補正と呼ばれる。したがって、本開示のポリマーフィルムは、本明細書では、ワイドビューカラー(WVC)補正フィルム又はWVC補正ポリマーフィルムと呼ばれる。
【0056】
WVC補正ポリマーフィルムは、角色均一性を著しく改善するだけでなく、円偏光子と適合性があり、輝度及び視野角を維持し、一般に知られている画素ぼけ又は局所的散乱異常(「スパークル」として知られている)などの目に見える欠陥を顕著に生じさせない。このポリマーフィルムの画素ぼけは、顕微鏡でわずかにのみ視認可能であり、ごくわずかな光が隣接画素にぼやけるため、表示画素の視覚的外観が本質的に維持される。
【0057】
重要なことに、ポリマーフィルムは、光拡散を制御し、粒子とポリマーマトリックスとの間の屈折率の差、粒径及び粒子の充填量、ポリマーフィルムの厚さ、並びにポリマーフィルムの第1のポリマー層とディスプレイとの間の距離を制御することによって、OLEDディスプレイの角色均一性を著しく改善する。ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離が大きいほど、望ましくない画素ぼけがより増大する。画素サイズが小さくなるほど、ポリマーフィルムの第1のポリマー層及びディスプレイ平面がより近くなるべきである。また、この距離が増加すると、コントラスト比は望ましくないほど低くなる。これらの2つの要因のため、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、最小化されるのが望ましい。一実施例では、50ミクロンの典型的な画素間隔を有する市販の手持形デバイスの場合、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面距離との間の距離は、好ましくは150ミクロン未満であるべきである。更なる例では、500ミクロンの典型的な画素間隔を有する大きなディスプレイモニタの場合、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、好ましくは1500ミクロン未満であるべきである。一般に、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、ディスプレイの画素間隔寸法の3倍未満であることが望ましい。第1のポリマー層とディスプレイ平面との距離が小さくなるほど、更により好ましい。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、ディスプレイの画素間隔寸法の2倍未満であることが望ましい。他の実施形態では、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、ディスプレイの画素間隔寸法未満であることが望ましい。ポリマーフィルムは、輝度、円偏光子適合性、及び視野角を含む主な性能特性に著しく影響しない。また、重要なことに、画素ぼけを著しく低減することができる。
【0058】
ポリマー材料
本開示のポリマーフィルムのポリマー材料には、多種多様なポリマーを使用してもよい。ポリマー材料中で使用するための例示的なポリマーとしては、シリコーン、アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、及びポリオレフィンが挙げられる。
【0059】
特定の実施形態では、ポリマー材料は、単相ポリマー、又は多相モルホロジーを有するポリマーから選択することができる。多相モルホロジーは、例えば、非晶質ドメイン及び結晶性ドメインの両方を有する半結晶ポリマーなどのポリマーマトリックスの選択に固有であり得るか、又はポリマーブレンドから生じ得る。あるいは、多相モルホロジーは、ポリマーマトリックスの乾燥中又は硬化中に発生し得る。多相モルホロジーを有する有用なポリマーマトリックスとしては、相のそれぞれが同一の屈折率を有するもの、又は屈折率が不整合であるが、分散相のドメインサイズがポリマーマトリックス中に分散された粒子の粒径を超えないものが挙げられる。
【0060】
特定の実施形態では、ポリマー材料は、接着剤材料である。特定の実施形態では、少なくとも1つの接着剤材料は、光学的に透明な接着剤(OCA)(optically clear adhesive)を含む。特定の実施形態では、光学的に透明な接着剤は、アクリレート、ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリイソブチレン(PIB)など)、シリコーン、又はこれらの組み合わせから選択される。例示的なOCAとしては、帯電防止の光学的に透明な感圧接着剤に関する国際公開第2008/128073号(3M Innovative Property Co.)、引っ張り剥離式OCAに関する国際公開第2009/089137号(Shermanら)、インジウムスズ酸化物適合性OCAに関する米国特許出願公開第2009/0087629号(Everaertsら)、光学的透過性接着剤を有する帯電防止の光学構造に関する米国特許出願公開第2010/0028564号(Chengら)、腐食感受性層と適合性のある接着剤に関する米国特許出願公開第2010/0040842号(Everaertsら)、光学的に透明な引っ張り剥離式接着テープに関する米国特許出願公開第2011/0126968号(Dolezalら)、及び引っ張り剥離式接着テープに関する米国特許第8,557,378号(Yamanakaら)に記載されるようなものが挙げられる。好適なOCAとしては、例えば3M Company,St.Paul,MN.から入手可能な、例えば3M OCA 8146などのアクリル系の光学的に透明な感圧接着剤が挙げられる。
【0061】
特定の実施形態では、二重層製品構造(例えば、
図2参照)は、特定の光拡散特性を有する1つの層(
図2の層2)と、光学的に透明な接着剤である第2の層(
図2の層8)と、を含み得る。二重層製品構造を形成することによる利点のいくつかは、剥離強度、堅牢性、コーティング一体性などの改善された接着特性を提供することであろう。二重層製品がOLEDディスプレイデバイス中に組み込まれる場合、光学拡散層(
図2の2層システムの層2)は、OLED発光ディスプレイ平面(例えば、
図3のアクティブマトリックス有機発光ダイオードパネル10)に面し、構造が許す限り、その平面に近接して配置することが好ましい。コントラスト比及び画素ぼけの最小化などを含む最良性能のために、光学拡散層は、OLED封入層(単数又は複数)(例えば、
図3の第1の接着フィルム12上に配置されたバリアフィルム14の組み合わせ)と直接接触することが好ましいだろう。直接接触していない場合、拡散層と発光平面との間の距離が増加するにつれて、性能は低下し得る。
【0062】
ディスプレイデバイス
特定の実施形態では、本開示のディスプレイデバイスは、1つ以上の接着フィルムを含む多層構造を有する有機発光ダイオードパネルと、有機発光ダイオードパネルの多層構造内に組み込まれた本明細書に記載されるポリマーフィルムと、を含む。本文脈中、特定の実施形態では、「多層構造内に組み込まれた」は、特にポリマーフィルムが接着剤マトリックスを含む場合に、本開示のポリマーフィルムが、多層構造の1つ以上の接着フィルム(例えば、光学的に透明な接着フィルム)に置き換わることを意味する。この関連で、特定の実施形態では、「多層構造内に組み込まれた」は、特にポリマーフィルム自体が接着剤マトリックスを含まない場合に、本開示のポリマーフィルムが、多層構造の1つ以上の接着フィルム(例えば、光学的に透明な接着フィルム)内に組み込まれることを意味する。
【0063】
特定の実施形態では、ディスプレイデバイスは、1つ以上の接着フィルムを含む多層構造を有する有機発光ダイオードパネルと、有機発光ダイオードパネルの多層構造内に組み込まれたポリマーフィルムと、を含む。このような実施形態では、ポリマーフィルムは、2つの主表面を有する第1のポリマー層を備え、この第1のポリマー層は、屈折率n1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域と、第1のポリマー領域内に相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域と、を含み、チャネルは、屈折率n2を有する第2の材料を含み、n1は、n2と異なる。
【0064】
このような実施形態では、n1は、n2と異なる。いくつかの実施形態では、n1は、n2と少なくとも0.01単位異なる。いくつかの実施形態では、n1は、n2から少なくとも0.02単位、又は少なくとも0.03単位、又は少なくとも0.04単位、又は少なくとも0.05単位、又は少なくとも0.1単位だけ異なる。いくつかの実施形態では、n1は、n2と最大0.5単位異なる。いくつかの実施形態では、n1は、n2から0.5単位以内であり、n1は、n2から0.4単位以内であり、n1は、n2から0.3単位以内であり、n1は、n2から0.2単位以内であり、又はn1は、n2から0.1単位以内である。これに関連して、「以内」は、0.5単位(又は0.4単位、又は0.3単位、又は0.2単位、又は0.1単位)以内で、より高い又はより低いことを意味する。
【0065】
重要なことに、特定の実施形態では、本開示のポリマーフィルムを含むディスプレイデバイスは、ポリマーフィルムの代わりに非拡散性の光学的に透明な接着剤を含むディスプレイデバイスの軸外色シフトと比較して、軸外色シフト(0~45°)が少なくとも5%優れている(又は少なくとも10%優れている、又は少なくとも20%優れている、又は少なくとも30%優れている)。特定の実施形態では、本開示のポリマーフィルムを含むディスプレイデバイスは、ポリマーフィルムの代わりに非拡散性の光学的に透明な接着剤を含むディスプレイデバイスの軸外色シフトと比較して、軸外色シフト(0~60°)が少なくとも5%優れている(又は少なくとも10%優れている、又は少なくとも20%優れている、又は少なくとも30%優れている)。これに関連して、「非拡散性の」光学的に透明な接着剤は、光散乱粒子又はドメインを含まない接着剤を指す。このような接着剤は、典型的には、0.5%未満のバルクヘイズを有する。
【0066】
本開示のディスプレイデバイスは、可撓性又は剛性であってもよい。本開示のポリマーフィルムを組み込むことができるOLEDディスプレイの例は、米国特許出願公開第2016/0001521号(Tanakaら)、同第2014/0299844号(Youら)、及び同第2016/0155967号(Leeら)に記載されている。
【0067】
例示的なデバイスは、
図3に示すように、アクティブマトリックス有機発光ダイオード(AMOLED)パネル10と、アクティブマトリックス有機発光ダイオードパネル10上に配置された第1の接着フィルム12と、第1の接着フィルム12上に配置されたバリアフィルム14と、バリアフィルム14上に配置された第2の接着フィルム16と、第2の接着フィルム16上に配置された円偏光子18と、円偏光子18上に配置された第3の接着フィルム20と、第3の接着フィルム20上に配置されたタッチパネル22と、タッチパネル22上に配置された第4の接着フィルム24と、第4の接着フィルム24上に配置されたカバーウィンドウ26と、を含む、多層構造を有する有機発光ダイオードパネルを含む。特定の実施形態では、第1の接着フィルム12は、ポリイソブチレンなどの良好なバリア特性を有する接着剤を含む。特定の実施形態では、バリアフィルム14は、従来の無機/有機多層バリアフィルムである。
【0068】
図3のディスプレイデバイスは、様々な多層構造の例示にすぎない。特定の実施形態では、例えば、バリアフィルム14は、AMOLEDパネル10中に組み込まれる。特定の実施形態では、第1の接着フィルム12とバリアフィルム14との組み合わせは、水分及び酸素に対するバリアを形成する。特定の実施形態では、タッチパネル22は、AMOLEDパネル10中に組み込まれる。
【0069】
特定の多層構造では、本開示のポリマーフィルムは、少なくとも1つの接着剤マトリックスを含む。このような実施形態では、このようなポリマーフィルムは、第1の接着フィルム12であり得る(
図3)。特定の多層構造では、本開示のポリマーフィルムは、接着剤マトリックスを含まない。このような実施形態では、このようなポリマーフィルムは、第1の接着フィルム12内に組み込まれ得る(
図3)。
【0070】
特定の実施形態では、第2、第3、及び/又は第4の接着フィルム(
図3の16、20、24)は、本開示のポリマーフィルムを含む(又はこれによって置き換えられる)。特定の実施形態では、第3及び/又は第4の接着フィルム(
図3の20、24)は、本開示のポリマーフィルムを含む(又はこれによって置き換えられる)。
【0071】
ポリマーフィルムを含まない
図3に示される多層構造の接着フィルムは、上記のような光学的に透明な接着剤を含む。特定の実施形態では、第1の接着フィルム12は、典型的には、水分及び酸素に対するバリア特性を若干有することになる。
【0072】
特定の実施形態では、アクティブマトリックス有機発光ダイオードパネル(
図3の10)は、有機エレクトロルミネセント層を含む。例えば、例示的なアクティブマトリックス有機発光ダイオードパネル(AMOLEDパネル)が、
図4に示され、駆動デバイスアレイ(例えば、薄膜トランジスタ(TFT)(thin-film transistor)アレイ)が配置された駆動基材101と、有機エレクトロルミネセント層102と、カソード電極層103と、封入層104と、を含む。カラーフィルタ層(図示せず)を、有機エレクトロルミネセント層102と封入層104との間に更に配置してもよい。光を封入層104に向けて(すなわち、発光面106に向けて)反射するための反射層105を、駆動基材101の下に設けることができる。AMOLEDパネルが、駆動信号を使用して有機エレクトロルミネセント層102が光を発生する自己発光型表示パネルであるため、別個の光源(例えば、バックライト)は、必要でない場合がある。
【0073】
特定の実施形態では、バリアフィルム(
図3の14)は、酸素及び水分バリアを形成する有機/無機材料を交互の層でコーティングしたCOP(環状オレフィンポリマー)又はPET(ポリエチレンテレフタレート)などの光学基材を含む。無機材料の例としては、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、及び窒化ケイ素が挙げられる。一実施例としては、硬化トリシクロデカンジメタノールジアクリレートとシリカとの交互層が挙げられる。有機層は、典型的には、高度に架橋されたアクリル材料である。
【0074】
例示的な円偏光子(
図3の18)は、
図5に示され、これは、例示的な実施形態による円偏光子200の断面図である。
図3を参照すると、円偏光子200は、直線偏光子202と、上部支持板203と、直線偏光子202を支持する下部支持板201と、1/4波長(λ/4)位相板204と、を含み得る。直線偏光子202は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムであり得る。上部支持板203及び下部支持板201は、例えば、トリ-アセチル-セルロース(TAC)フィルムであり得る。λ/4位相板204は、OCA層を使用して下部支持板201に接着され得る。例示的な実施形態は、これらの種類に限定されない。直線偏光子202は、外部光L1を直線偏光する。λ/4位相板204は、直線偏光を円偏光し、円偏光を直線偏光する。
【0075】
特定の実施形態では、タッチパネル(
図3の22)は、光を伝達するように構成されたベース基材と、タッチ入力を受け取るように構成されたタッチ電極層と、を含む。例えば、
図6は、例示的な実施形態による静電容量式タッチパネルであるタッチパネル300の断面図である。タッチパネル300は、ユーザ入力を受け取る操作ユニットである。抵抗膜式タッチパネル又は静電容量式タッチパネルは、モバイルデバイスに使用される。
図6を参照すると、タッチパネル300は、光透過ベース基材であるベース基材301と、光透過タッチ電極層であるタッチ電極層305と、を含み得る。タッチ電極層305は、第1の電極層302と、第2の電極層304と、第1の電極層302と第2の電極層304との間に配置された誘電体層303と、を含み得る。
【0076】
第1の電極層302は、真空蒸着、スパッタリング、又はめっきなどを使用して、パターニングされた薄膜として、インジウムスズ酸化物(ITO)、銅金属メッシュ、又は銀ナノワイヤなどの導電性金属をベース基材301上に形成することによって形成してもよい。誘電体層303は、第1の電極層302上に形成してもよく、第2の電極層304は、真空蒸着、スパッタリング、又はめっきなどを使用して、パターニングされた薄膜として、導電性金属を誘電体層303上に形成することによって形成してもよい。例えば、第1の電極層302は、複数の水平電極を含んでもよく、第2の電極層304は、複数の垂直電極を含んでもよい。タッチセルは、水平電極と垂直電極との間の交差部分に形成される。水平電極は、例えば、駆動電極であってもよく、垂直電極は、例えば、受信電極であってもよい。タッチオブジェクト、例えば、ユーザの手又はタッチペン(例えば、スタイラス)がタッチパネル300に接近又は接触すると、タッチセルの静電容量に変化が生じる。タッチイベントが発生すると、静電容量の変化を検出することによって、タッチセルの位置を検出することができる。また、タッチパネル300は、第1の電極層302及び第2の電極層304が、ベース基材301の上面上及び下面上にそれぞれ形成されるように形成してもよい。また、タッチパネル300は、上に電極層が形成された2つの基材が互いに結合されるように形成してもよい。タッチパネル300は、柔軟な光透過フィルムとして製造してもよい。
【0077】
特定の実施形態では、カバーウィンドウ(
図3の26)は、湾曲部及び/又は平坦部を含む。カバーウィンドウは、ガラス又は光学的に透明なプラスチックから選択される材料で作製してもよい。カバーウィンドウは、それを通してOLEDパネル上に表示される画像を見えるようにすることができ、外部衝撃からOLEDパネルを保護することができる。したがって、カバーウィンドウは、1つ以上の透明材料で作製される。カバーウィンドウは、硬質材料、例えば、ガラス、又はポリカーボネート若しくはポリメチルメタクリレートなどのプラスチックから形成してもよい。カバーウィンドウは、可撓性材料、例えば、ポリカーボネート又はポリメチルメタクリレートなどのプラスチックから形成してもよい。
【0078】
例示的な実施形態
実施形態1は、1つ以上の接着フィルムを含む多層構造を有する有機発光ダイオードパネルと、有機発光ダイオードパネルの多層構造内に組み込まれたポリマーフィルムと、を含む、ディスプレイデバイスである。ポリマーフィルムは、2つの主表面を有する第1のポリマー層を含む。第1のポリマー層は、屈折率n1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域と、第1のポリマー領域内に相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域と、を含み、第2の領域が、屈折率n2を有する第2の材料を含み、n1が、n2と異なる。第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料及び任意の粒子を含む。第2の材料は、第2のポリマー材料及び任意の粒子、並びに/又は空気を含む。ポリマーフィルムは、少なくとも90%の透明度と、少なくとも80%の可視光透過率と、25%~80%のバルクヘイズと、を有する。
【0079】
実施形態2は、ポリマーフィルムが、ポリマーフィルム全体にわたって12%以下の正規化されたマイクロヘイズ不均一性を有する、実施形態1に記載のディスプレイデバイスである。
【0080】
実施形態3は、ポリマーフィルムが、少なくとも1ミクロンの厚さを有する、実施形態1又は2に記載のディスプレイデバイスである。
【0081】
実施形態4は、ポリマーフィルムが、最大50ミクロンの厚さを有する、実施形態1~3のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0082】
実施形態5は、n1とn2との間の差が、少なくとも0.01単位である、実施形態1~4のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0083】
実施形態6は、第1の弾性ポリマー材料が、ポリマーフィルムの総体積を基準として、少なくとも35体積%の量で存在する、実施形態1~5のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0084】
実施形態7は、第1の弾性ポリマー材料が、ポリマーフィルムの総体積を基準として、最大90体積%の量で存在する、実施形態1~6のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0085】
実施形態8は、第1の弾性ポリマー材料が、多官能性モノマー、オリゴマー、及び任意の表面改質ナノ粒子、の硬化物である、実施形態1~7のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0086】
実施形態9は、第2の材料が、ポリマー材料である、実施形態1~8のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0087】
実施形態10は、第2のポリマー材料が、ポリマーフィルムの総体積を基準として、少なくとも10体積%の量で存在する、実施形態9に記載のディスプレイデバイスである。
【0088】
実施形態11は、第2のポリマー材料が、ポリマーフィルムの総体積を基準として、最大65体積%の量で存在する、実施形態9又は10に記載のディスプレイデバイスである。
【0089】
実施形態12は、第2のポリマー材料が、アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機ポリマーを含む、実施形態9~11のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0090】
実施形態13は、第2の材料が、粒子を含む、実施形態9~12のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0091】
実施形態14は、第1の材料が、粒子を含む、実施形態1~13のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0092】
実施形態15は、粒子が、無機ナノ粒子を含む、実施形態13又は14に記載のディスプレイデバイスである。
【0093】
実施形態16は、無機粒子が、ZrO2、SiO2、TiO2、SnO2、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態15に記載のディスプレイデバイスである。
【0094】
実施形態17は、第2の材料が、空気を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のディスプレイデバイスである。
【0095】
実施形態18は、相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域の体積分率が、少なくとも10%である、実施形態1~17のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0096】
実施形態19は、相互連結された細孔及びチャネルのネットワークが、2ミクロン未満のサイズの散乱粒子と同様の角度平均散乱特性を有する、実施形態1~18のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0097】
実施形態20は、ポリマーフィルムが、第1のポリマー層の一方又は両方の主表面(単数又は複数)上に配置された第2のポリマー層を更に含み、この第2のポリマー層が、屈折率n3を有する第3のポリマー材料を含み、第1のポリマー材料及び第3のポリマー材料が、同一又は異なる、実施形態1~19のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0098】
実施形態21は、第2のポリマー材料及び/又は第3のポリマー材料が、接着剤である、実施形態20に記載のディスプレイデバイスである。
【0099】
実施形態22は、接着剤が、光学的に透明な接着剤である、実施形態21に記載のディスプレイデバイスである。
【0100】
実施形態23は、第1及び第2の材料が、多孔質構造を形成し、第2のポリマー層が、キャッピング層であり、このキャッピング層が、多孔質構造の一部に侵入していないか、又は部分的にのみ侵入している、実施形態19~22のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスである。
【0101】
実施形態24は、キャッピング層が、第1の非接着剤ポリマー材料と同一である第3のポリマー材料を含む、実施形態23に記載のディスプレイデバイスである。
【実施例】
【0102】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に例示目的のものであり、添付の特許請求の範囲の限定を意図するものではない。
【0103】
【0104】
試験方法
光学特性試験方法:バルクヘイズ、透過率、透明度、及び屈折率
透過率、バルクヘイズ、及び透明度値を含む基本的な光学特性を、Haze-Guard Plusヘイズメーター(BYK-Gardner(Columbia、MD)から市販されている)を使用して測定した。これらのフィルムの屈折率を、Metricon Model 2010 Prism Coupler(Metricon Corp.(Pennington、NJ)から入手可能)を使用して測定した。この装置は、ディスプレイ表面の大きな面積にわたって平均化するために、大きめの面積のビーム(18ミリメートル(mm)直径)で光学フィルムをサンプリングする。
【0105】
光学特性試験方法:マイクロヘイズ均一性
ヘイズは、小さい水平スケール上で、プローブビームを試料の表面上に集束させることによって測定することができ、それにより、集束されたスポットは、例えば、10マイクロメートル以下のオーダーである。試料の小面積を調べるこのアプローチは、本明細書では、マイクロヘイズと呼ばれる。マイクロヘイズ測定技術は、人間の視覚的な知覚のピークに対応する空間周波数についての、ディスプレイ画素の長さスケール上での試料分析を可能にする。標準的なヘイズ測定システムは、光学フィルムの広い面積を分析し、画素化ディスプレイの臨界長さスケールでは差異を示さない。
【0106】
ポリマー光学フィルムのマイクロヘイズを決定するために使用される微小散乱測定システムを
図7に示す。
図7を参照すると、微小散乱測定システム1100には、レーザー光源1101(Model 85-GCB-020、532nm 20mW DPSSレーザーとして、Melles Griot(Carlsbad、CA)から入手)と、(光ビームをチョップするための)光チョッパ1111(Newport Corporation(Irvine、CA)から「New Focus 3501Optical Chopper」の商標名で入手)と、光ビームスプリッタ1113(Newport Corporationから「UV FUSED SILICA METALLIC NEUTRAL DENSITY FILTER FQR-ND01」の商標名で入手)と、第2の光検出器1112(Newport Corporationから「New Focus Large-area photoreceiver」Model 2031の商標名で入手)と、(光ビームをフィルタリング及び拡張する)ビーム拡張空間フィルタ1114(Newport Corporationから「COMPACT FIVE-AXIS SPATIAL FILTER MODEL 910A」の商標名で入手、Newport Corporationから「PAC040」の商標名で入手されたコリメーティングレンズアクロマティックダブレット(直径1インチ、焦点距離50.8mm)と共に使用)と、集光レンズ1103(「PAC058アクロマティックダブレット」(直径1インチ、焦点距離150mm、Newport Corporation製)の商標名で入手)と、試料ホルダ1105(バネ式マウント(Newport Corporationから「M-PPF50」の商標名で入手))と、試験される試料1130と、可変開口1107(Newport Corporationから「Compact Adjustable Width Slit M-SV-0.5」の商標名で入手)と、地面に平行な平面内でユーセントリックポイント1108の周りを少なくとも-90°~90°、及び直交平面内で同一のユーセントリックポイント1108の周りを-45°~45°で回転可能(1106)な第1の光検出器1109(Newport Corporationから「New Focus Large-area photo receiver」Model 2031の商標名で入手)と、が含まれた。
【0107】
微小散乱測定システムの他の部品には、線形並進ステージ(Newport Corporationから「MFA-1C」の商標名で入手)と、検出器ステージ(Newport Corporationから「Rotation stage RV350PE」の商標名で入手)と、ゴニオメトリックステージ(Newport Corporationから「Goniometric stage BGM 160 PE」の商標名で入手)と、ステージドライバ(試料及び検出器ステージ用(Newport Corporationから「Universal Motion Controller ESP300」の商標名で入手))と、検出電子機器(National Instruments(Austin、TX)から「Analog-to-Digital Converter NI 9215,cDAQ 9172 chassis」の商標名で入手)と、が含まれた。
【0108】
光源1101に通電すると、光ビーム1102が通過し、集光レンズ1103によって、ユーセントリックポイント1108で集束された10マイクロメートルのスポット直径を有するスポットに集束された。集束された光は、焦点1104の後で発散した。発散光は、アパーチャ1107を通過し、第1の光検出器1109に接触した。試料ホルダ1105は、入射光ビーム1102と直交する平面内で移動した。光ビームスプリッタ1113を使用して、光ビーム1102を第2の光検出器1112に分割した。光ビームスプリッタ1113は、集光素子1103に向かって光ビーム1102の約90%を透過し、第2の検出器1112に向かって光ビーム1102の約10%を反射した。第2の検出器1112を使用して、光源1101から来る光ビーム1102の強度の変化を監視した。第1の検出器1109からの信号は、光ビーム1102の強度の変化を説明するために、第2の検出器1112からの信号によって除算された。
【0109】
動作中、試料ホルダ1105の一部がユーセントリックポイント1108に留まり、ユーセントリックポイント1108の周りを回転するように、試料ホルダ1105を移動させた。
【0110】
動作中、第1の光検出器1109は、ユーセントリックポイント1108の周りを回転し(1106)、アパーチャ1107を通過して第1の光検出器1109に到達する散乱光によって生成されたデータを収集した。
【0111】
532ナノメートル(nm)のプローブ波長を使用して、エアリーディスクの直径(スポット直径=2.44×波長×焦点距離/ビーム直径)を使用する154mm焦点距離レンズを使用することにより約10マイクロメートルの焦点合わせしたスポット直径を得た。
【0112】
試料を、焦点を合わせたスポットに対して物理的に走査して、フィルム表面全体にわたって測定を行い、マイクロヘイズ均一性に関する統計を収集した。インライン方向に対する第1の光検出器の各角度位置について、試料を通して透過された光を、試料を横切る位置の関数として測定した。各横方向位置での測定は、1秒を要した。このようにして、試料上の関心のある各横方向位置についての散乱光の角度スペクトルを得た。各角度測定位置における第1の光検出器に対する角度は、測定平面内で0.2°であり、測定平面に垂直に対して0.85°であった。これらの角散乱光強度から、直接ビーム(焦点合わせしたスポットから元の入射ビームの収束角度と同一の角度で発散するビーム)に比例する光強度及び散乱ビームに比例する光強度を計算する。直接ビーム測定には、0°~5.8°(試料を定位置に配置せずにビームを測定することによって決定される、光軸と直接ビームの縁部との間の角度)の光が含まれた。散乱ビーム測定には、5.8°~15.8°(直接ビームから直接ビームに隣接する最初の10°で散乱する光を表す)の間で投影される光が含まれた。これらの2つの値から、マイクロヘイズ割合を計算した。これは、散乱ビーム強度と散乱かつ透過した直接ビームの合計との比として定義される。このように正規化することにより、マイクロヘイズ計算から吸収及び前面反射の影響を打ち消す。
【0113】
測定中、ビームを約2.04kHzで物理的にチョップし、検出された信号及びソースレーザー強度の両方をロックイン増幅器で測定した。このチョップ周波数は、光検出器のノイズが少なくかつフラットな周波数応答範囲内であった。4倍を超える大きさのロックイン検出有効強度測定は、低ヘイズ試料の測定を行う際に有用であり、直接ビーム及び散乱ビームの強度に大きな差がある。マイクロヘイズ均一性は、マイクロヘイズ割合の標準偏差を平均マイクロヘイズ割合測定値自体で除算したものとして定義される。このように、マイクロヘイズ均一性基準値は、機能的には、ノイズ対信号比である。
【0114】
OLED色シフト試験方法
携帯電話で一般に使用される強力キャビティOLEDデバイスの角色は、視野角が増加するにつれてブルーシフトする。この効果は、一般に、軸外角色シフト又は角色不均一性と呼ばれる。Samsung S5携帯電話の3つの選択された視野角における光学スペクトルは、
図8に示されている。このスペクトルは、3つのスペクトルピークを示す。全体スペクトルは、視野角が増加するにつれて、より短い波長へシフトする明確な傾向を示すが、多くの他のスペクトルパラメータもまた変化する。3つの別個のピークのスペクトル重みは変化し、各スペクトルピークの相対シフトは互いに異なる。
【0115】
軸外角色シフトの性能指数として、CIE(国際照明委員会)色座標における対応するシフトから色シフトを表すことが一般的である。CIE色座標(u,v)は、異なる角度での測定値であり、色シフトの基準値は、式Aで表されるdelta_u’v’によって表すことができる。
delta_u’v’={[u’(θ)-u’(0)]^2+[v’(θ)-v’(0)]^2}^0.5; (A)
【0116】
OLED色シフトの試料測定方法は、Samsung S5 OLED携帯電話を利用し、比較において拡散接着剤試料のそれぞれについての試験床として同一のSamsung S5を使用した。中程度に拡散するポリマーフィルムの1つの使用目的は、OLED層内に、好ましくはOLED画素の真上又はTFE層の上方に組み込むことである(薄膜封入)。しかしながら、この試験では、OLEDデバイスアセンブリの近位にあるが外側に配置されたポリマーフィルム試料を用いて、色シフト及び輝度を測定することに相当すると考えられる。より具体的には、試料をタッチパネルディスプレイのすぐ上に配置した。
【0117】
OLEDデバイスアセンブリ上に試料をのせた後、空白の白色画像をOLED画面上に表示した。次に、OLEDパネルアセンブリを回転ステージ上にのせて、測定分光光度計に対して角度調整できるようにした。この試験システムでは、PR650分光光度計(PhotoResearch Inc.(Syracuse、NY))を使用して、5度の増分回転角度毎に試験アセンブリの色及び明るさ強度を測定した。
【0118】
この評価の各試料について、ワイドビューカラー(WVC)補正ポリマーフィルムを含むOLEDデバイスの角色シフト(delta_u’v’)をプロットし、WVC補正ポリマーフィルムを含まない同一のOLED(対照)と比較した。例示的なプロットを
図6に示す。WVC補正ポリマーフィルムは、OLEDデバイスの角色シフトを実質的に低減するのに役立つ。0~45度の最大色シフトを、delta_u’v’=0.012(対照)からdelta_u’v’=0.07(ポリマーフィルムを有する)に低減した(40%低減を表す)。
【0119】
実施例の成分材料の調製
表面改質ZrO2ナノ粒子
ZrO2ゾル(33.6重量%)の200グラムの試料を1クォートのガラスジャーに入れた。1-メトキシ-2-プロパノール(200グラム(g))、SILQUEST A-174(11.67g)、及びメチルトリメトキシシラン(6.39g)を、撹拌しながらジャーに入れた。ジャーを85℃まで4.0時間(h)加熱した。
【0120】
脱イオン水(500g)及び濃縮NH3/水(13.0g、29% NH3で)を4リットルビーカーに入れた。上記分散体を約5分間かけてビーカーに添加して、白色沈殿物を得た。固体を真空濾過により回収し、追加の脱イオン水(2×125g)で洗浄した。湿った固体を1-メトキシ-2-プロパノール(529g)中に分散させた。得られた分散体を回転蒸発によって223gまで濃縮した。1-メトキシ-2-プロパノール(123g)を添加し、分散体を152.94gに濃縮した。1-メトキシ-2-プロパノール(96g)を添加し、分散体を178.76gに濃縮した。49.57固形分重量%を含有する、結果として生じる半透明ゾルを得た。これらは以後、表面改質ZrO2ナノ粒子と呼ばれる。
【0121】
表面改質シリカナノ粒子
凝縮器及び温度計を装備した500mLのフラスコ内で、200gのMP4540Mコロイド溶液及び200gの1-メトキシ-2-プロパノールを、急速撹拌下で一緒に混合した。次いで、0.6gのSILQUEST A-174を添加した。混合物を80℃まで16時間加熱した。次いで、追加の1-メトキシ-2-プロパノールの150g試料を添加した。得られた溶液を室温まで冷却させた。水及び1-メトキシプロパノール溶剤の大部分を、60℃の水浴下でロータリーエバポレーターを使用して除去し、1-メトキシ-2-プロパノール中に47.16重量%のA-174改質440nmシリカ分散体を得た。得られた表面改質シリカナノ粒子は以後、A-174改質MP4540Mと呼ばれる。
【0122】
剥離ライナー上で移送可能なポリマーフィルムの調製
UA-ポリマー(ポリウレタンアクリレート溶液)合成は、機械的撹拌機、凝縮器、熱電対、及び窒素導入口を備えた樹脂製反応容器内で実施した。81.30gのヒドロキシル基を末端に有するポリエステルPH-56(ヒドロキシル価57mg KOH/g)、14.50gのDMPA、及び180.0gのMEKを入れた。溶液を75℃まで加熱した後、撹拌しながら0.48gのDBTDA及び99.16gのHDIを添加した。NCO含有量が、標準ジブチルアミンバック滴定法により決定された理論NCO値に達するまで、温度を80±2℃まで更に加熱した。理論NCO値が得られたならば、次に、40.0gのMEKと40.0gのビスフェノールA-グリシジルメタクリレートとの混合物を添加して、ポリウレタンの鎖延長をし、NCO基がFT-IRで全く観察されなくなるまで反応させた。反応中、70gの追加のMEKを反応器に添加して、系を希釈した。最後に、46%固形分を有する明澄及び透明なポリウレタン溶液を得た。測定したGPCデータを表6に示す(Mn=数平均分子量、Mw=重量平均分子量、Mp=最大ピークでのモル質量、Mz=z-平均分子量、Pd=多分散性)。
【表2】
【0123】
16オンス褐色ジャー中に、236.8gのUA-ポリマー(MEK中46固形分重量%)、37.62gのCN104、1.72gのTPO、及び312gのMEKを入れた。最終混合物をローラ上に数時間置いて、25固形分重量%のコーティング溶液を形成した。
【0124】
次いで、コーティング溶液を、20.3cm(8インチ)スロット型ダイを使用して、5フィート/分のラインスピード及び10cc/分の流量で、2ミルのRF52Nライナーの剥離側上に塗布した。コーティングを200°Fで乾燥させた後、2ミルのRF02Nライナーをコーティング上に積層した。最後に、コーティングを、RF02Nライナーを通してFusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg、MD))を使用して硬化させた。Model I600は、Hバルブを用いて構成され、100%の電力で動作した。
【0125】
ストックコーティング溶液
以下の実施例のそれぞれについて、上記で調製した40gのA-174改質MP4540M、3.528gのSR 238、14.112gのSR444、196gのイソプロピルアルコール、98.4gの1-メトキシ-2-プロパノール、0.022gのIrgacure 819、0.46gのIrgacure 184を撹拌しながら混合して、10%固体の均質な溶液を形成することによってストックコーティング溶液を調製した。
【0126】
実施例の調製
実施例1:空気充填多孔質フィルム
ストックコーティング溶液を上記のように調製し、次いで、比1:2の1-メトキシ-2-プロパノール/IPAを使用して更に5重量%に希釈した。5重量%溶液を、3.3cm3/分の速度で、10.2cm(4インチ)幅のスロット型コーティングダイにシリンジポンプした。スロットコーティングダイは、5フィート/分で移動する基材上に、10.2cm幅のコーティングを均一に分布させた。入力基材は、RF52N上の可撓性の薄い剥離可能コーティングであり、ここで、RF02Nは、まず、コーティングダイの前に剥離された。対照サンプルについては、2ミルの三菱PETフィルム(3SAB)を使用した。
【0127】
次に、コーティングされた基材を、UV放射の通過を可能にする石英窓を含むUV-LED硬化チャンバに通過させて重合した。UV-LEDバンクは、160個のUV-LEDの矩形アレイ、20個のクロスウェブによる8個のダウンウェブ(およそ10.2cm×20.4cm領域を被覆する)を含んでいた。LED(Cree,Inc.(Durham NC)から入手可能)は、公称波長385nmで動作し、45V、3Aで実行された。UV-LEDアレイは、TENMA 72-6910(42V/10A)電源(Tenma(Springboro OH)から入手可能)で電源供給され、ファン冷却された。UV-LEDを、硬化チャンバの石英窓の上方に、基材から約2.5cmの距離で配置した。UV-LED硬化チャンバに、46.7リットル/分(1時間当たり100立方フィート)の流量で窒素流を供給し、その結果、硬化チャンバ内の酸素濃度を約150ppmとした。
【0128】
UV-LEDによって重合させた後、コーティングされた基材を200°Fの乾燥オーブンに5フィート/分のウェブ速度で2分間搬送することによって、硬化したコーティング中の溶剤を除去した。次に、Hバルブ(Fusion UV Systems、Gaithersburg MDから入手可能)を備えて構成されたFusion System Model I300Pを使用し、100%のパワーで動作させて、乾燥したコーティングを後硬化させた。UV Fusionチャンバに窒素流を供給し、その結果、チャンバ内の酸素濃度を約50ppmとした。
【0129】
コーティングは、空気充填多孔質構造をもたらし、これは以降、実施例1として参照される。
【0130】
対照コーティングもまた、UV-LED入力なしで(0A)調製され、これは空気ボイドを有さない固体コーティングをもたらし、固体コーティングのRIは、Metricon prism couplerを使用して1.493と測定される(多孔質コーティングの主鎖の屈折率を表す)。
【0131】
実施例2:空気充填多孔質フィルム
多孔質コーティングは、実施例1と同様に調製されるが、10フィート/分の移動ウェブ及び1AのUV-LEDパワーで6.6cc/分でコーティングした。一般に、より低いUV-LED曝露によるコーティングの結果は、実施例1よりも多孔性が低い多孔質コーティングをもたらす。コーティングは、空気充填多孔質構造をもたらし、これは以降、実施例2と呼ばれる。
【0132】
実施例3:ZrO2ベースの高RIバックフィルを有するナノ多孔質コーティング(ハンドスプレッド)
ZrO2ベースの高屈折率(RI)バックフィル溶液-Iの調製:
ガラスジャー中に、15gのA174/メチル改質ZrO2ナノ粒子(45.97重量%)、0.345gのHR-6100(Miwon Chemicalから市販されている)、1.378gのM1192(Miwon Chemicalから市販されている)、0.09gのTPO(BASFから市販されている)、69.5gのイソプロピルアルコールを一緒に混合し、均質な高屈折率(RI)コーティング溶液を形成した。屈折率測定のために、高RIバックフィル溶液を、No.7丸ワイヤーバーを使用して、ハンドスプレッドによってPETフィルム上にコーティングし、溶剤を乾燥させた後、N2下にて100%のパワーで、30フィート/分のベルト速度で1パス動作するfusion UV systemを使用して、コーティングを硬化させた。RIは、Metricon prism couplerを用いて、632.8nmで1.71と測定された。
【0133】
実施例3では、この高屈折率(RI)コーティング溶液を使用して、実施例2のナノ多孔質コーティングを充填した。要約すると、高RIコーティング溶液を、No.7丸ワイヤーバーを使用して、ハンドスプレッドによってナノ多孔質コーティング上にコーティングし、次いで、窒素下にて100%のパワーで、30フィート/分のベルト速度で1パス動作するfusion UVを使用して、コーティングを硬化させた。得られた高RI充填ナノ多孔質フィルムは以降、実施例3と呼ばれる。実施例3では、高RIバックフィルの屈折率(1.71)と多孔質コーティングの主鎖の屈折率(1.493)との差は、0.217である。
【0134】
実施例4:ZrO2ベースの高RIバックフィルを有するナノ多孔質コーティング(10重量%)
実施例4では、10重量%のストックコーティング溶液をコーティングした。前述のように、10%重量溶液を、RF52N又は3SAB上に担持された可撓性の薄いコーティング上にコーティングした。流量は、6.6cm3/分であり、スロットコーティングダイは、10フィート/分で移動する基材上に、10.2cm幅のコーティングを均一に分布させた。次に、コーティングされた基材を、UV放射の通過を可能にする石英窓を含むUV-LED硬化チャンバに通過させて重合した。LED(Cree,Inc.(Durham NC)から入手可能)は、公称波長385nmで動作し、45V、1.5Aで実行された。UV-LEDによって重合させた後、溶剤を乾燥させ、コーティングを上記の実施例1と同様に後硬化させて、82.5%の透過率、93%のヘイズ、及び85.9%の透明度を有する高拡散光学物品を得た。
【0135】
次いで、この多孔質コーティングを、実施例3のハンドスプレッドが適用された以前の高RI溶液とはわずかに異なるZrO2ベースの高RIバックフィル溶液でオーバーコーティングした。この実施例では、高RIコーティング溶液を、米国特許第8,343,622(B2)号(Liuら)の実施例3の手順及び材料に従って調製した。この場合に作製されたこの高RIバックフィルのRIは、632.8nmで測定したときに1.69であった。
【0136】
多孔質構造を高屈折率バックフィル溶液で充填するために、15重量%のZrO2ベースバックフィル溶液(上記)を、4インチ幅のスロット型コーティングダイにシリンジポンプし、8.2cm3/分の流速の流量で多孔質コーティング上の均質な10.2cm幅のコーティングに分配した。この充填コーティングの場合、多孔質基材は、10フィート/分で移動する。190°Fで2つの5ヤード長オーブンをセットアップ後、コーティング溶液を乾燥させた。次に、Hバルブ(Fusion UV Systems、Gaithersburg MDから入手可能)を備えて構成されたFusion System Model I300Pを使用し、100%のパワーで動作させて、乾燥したコーティングを後硬化させた。UV Fusionチャンバに窒素流を供給し、その結果、チャンバ内の酸素濃度を約50ppmとした。
【0137】
実施例5:ZrO2ベースの高RIバックフィルを有するナノ多孔質コーティング(5重量%)
実施例5では、比1:2の1-メトキシ-2-プロパノール/IPAを使用して、ストックコーティング溶液を5重量%に希釈した。前述のように、5%重量溶液を、RF52N又は3SAB上に担持された可撓性の薄いコーティング上にコーティングした。実施例4のように、流量は、6.6cc/分であり、スロットコーティングダイは、10フィート/分で移動する基材上に、10.2cm幅のコーティングを均一に分布させた。次に、コーティングされた基材を、UV放射の通過を可能にする石英窓を含むUV-LED硬化チャンバに通過させて重合した。LED(Cree,Inc.(Durham NC)から入手可能)は、公称波長385nmで動作し、45V、1.5Aで実行された。UV-LEDによって重合させた後、溶剤を乾燥させ、コーティングを上記の実施例1と同様に後硬化させて、88.2%の透過率、73.5%のヘイズ、及び90.2%の透明度を有する高拡散光学物品を得た。
【0138】
次いで、この多孔質コーティングを、実施例3のハンドスプレッドが適用された以前の高RI溶液とはわずかに異なるZrO2ベースの高RIバックフィル溶液でオーバーコーティングした。この実施例では、高RIコーティング溶液を、米国特許第8,343,622(B2)号(Liuら)の実施例3の手順及び材料に従って調製した。この場合に作製されたこの高RIバックフィルのRIは、632.8nmで測定したときに1.69である。
【0139】
実施例4の場合、多孔質構造を高屈折率バックフィル溶液で充填するために、15重量%のZrO2ベースバックフィル溶液(上記)を、4インチ幅のスロット型コーティングダイにシリンジポンプし、8.2cm3/分の流速の流量で多孔質コーティング上の均質な10.2m幅のコーティングに分配した。この充填コーティングの場合、多孔質基材は、10フィート/分で移動する。190°Fで2つの5ヤード長オーブンをセットアップ後、コーティング溶液を乾燥させた。次に、Hバルブ(Fusion UV Systems、Gaithersburg MDから入手可能)を備えて構成されたFusion System Model I300Pを使用し、100%のパワーで動作させて、乾燥したコーティングを後硬化させた。UV Fusionチャンバに窒素流を供給し、その結果、チャンバ内の酸素濃度を約50ppmとした。
【0140】
実施例からの測定結果
OLED試験
携帯電話で一般に使用される強力キャビティOLEDデバイスの角色は、視野角が増加するにつれてブルーシフトする。この効果は、一般に、軸外角色シフト又は角色不均一性と呼ばれる。Samsung S5携帯電話の3つの選択された視野角における光学スペクトルは、
図8に示されている。このスペクトルは、3つのスペクトルピークを示す。全体スペクトルは、視野角が増加するにつれて、より短い波長へシフトする明確な傾向を示すが、多くの他のスペクトルパラメータもまた変化する。3つの別個のピークのスペクトル重みは変化し、各スペクトルピークの相対シフトは互いに異なる。
【0141】
軸外角色シフトの性能指数として、CIE(国際照明委員会)色座標における対応するシフトから色シフトを表すことが一般的である。CIE色座標(u,v)は、異なる角度での測定値であり、色シフトの基準値は、式Aで表されるdelta_u’v’によって表すことができる。
delta_u’v’={[u’(θ)-u’(0)]^2+[v’(θ)-v’(0)]^2}^0.5; (A)
【0142】
OLED色シフトの試料測定方法は、Samsung S5 OLED携帯電話を利用し、比較において拡散接着剤試料のそれぞれについての試験床として同一のSamsung S5を使用した。中程度に拡散するポリマーフィルムの1つの使用目的は、OLED層内に、好ましくはOLED画素の真上又はTFE層の上方に組み込むことである(薄膜封入)。しかしながら、この試験では、OLEDデバイスアセンブリの近位にあるが外側に配置されたポリマーフィルム試料を用いて、色シフト及び輝度を測定することに相当すると考えられる。より具体的には、試料をタッチパネルディスプレイのすぐ上に配置した。
【0143】
OLEDデバイスアセンブリ上に試料をのせた後、空白の白色画像をOLED画面上に表示した。次に、OLEDパネルアセンブリを回転ステージ上にのせて、測定分光光度計に対して角度調整できるようにした。この試験システムでは、PR650分光光度計(PhotoResearch Inc.(Syracuse、NY))を使用して、5度の増分回転角度毎に試験アセンブリの色及び明るさ強度を測定した。
【0144】
この評価の各試料について、ワイドビューカラー(WVC)補正ポリマーフィルムを含むOLEDデバイスの角色シフト(delta_u’v’)をプロットし、WVC補正ポリマーフィルムを含まない同一のOLED(対照)と比較した。実施例1及び2の空気充填ナノ多孔質構造を対照と比較する例示的なプロットを
図9に示す。WVC補正ポリマーフィルムは、OLEDデバイスの角色シフトを実質的に低減するのに役立つ。0~60度の最大色シフトを、delta_u’v’=0.015(対照)からdelta_u’v’=0.010(ポリマーフィルムを有する)に低減した(33%低減を表す)。
【0145】
図9に示すように、WVC補正ポリマーフィルム(実施例2:空気充填ナノ多孔質構造)もまた、OLEDデバイスの色輸送(color ship)を著しく低減する。
【0146】
本発明者らは、固体バックフィルを有するフィルムも調査した。固体バックフィルは材料の屈折率差を低減するため、プロセスが調整され、得られた空気-固体フィルム性能は、下の図に示されるように変更される。
【0147】
実施例2で作製された多孔質コーティング(prous coaitng)を、ZrO2バックフィルで更にコーティングした。結果を下の
図10に示す(実施例3の高屈折率充填ナノ多孔質構造と対照フィルムとの比較。色均一性は、大きな視野角で最も顕著に改善されている。
【0148】
【0149】
図示されたWVC技術の1つの主な利点は、コア又は機能性材料の厚さを非常に薄く保つ可能性を有することである。空気充填又は高RI充填のいずれかの場合のナノ多孔質層は、500nm~10ミクロンの範囲の厚さを有する。この薄層を通って拡散する横光は非常に小さいので、OLED画素の視覚的ぼけは、WVC材料がOLED画素に非常に近接して組み込まれる限り最小限である。
【表4】
【0150】
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。当業者には、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることは意図していないこと、並びにそのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例示としてのみ提示されることを理解されたい。