(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】光無線通信用の受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20230525BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20230525BHJP
H04L 7/04 20060101ALI20230525BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20230525BHJP
【FI】
H04B10/112
H04B10/077 190
H04L7/04 200
G02B7/00 B
(21)【出願番号】P 2020183746
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢田 拓磨
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-322759(JP,A)
【文献】特開平10-233738(JP,A)
【文献】特開2008-268619(JP,A)
【文献】特開平05-191361(JP,A)
【文献】特開2001-060976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/112
H04B 10/077
H04L 7/04
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した光を、その受信した光の振幅を反映させた受信信号に変換する受信部と、
前記受信信号と、予め定められた基準符号との相関演算を行う相関器と、
前記相関器によって得られた相関信号に基づいて受信レベルを求め、前記受信レベルに応じて、前記受信部の受信光軸の方向を調整する光軸調整装置と、
を備えることを特徴とする光無線通信用の受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受信装置において、
前記基準符号は、PN符号であり、
前記光軸調整装置は、
前記受信レベルが所定の閾値を超えるように、前記受信光軸の方向を調整することを特徴とする受信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の受信装置において、
前記相関器は、
縦続に接続された複数の遅延器であって、初段の前記遅延器に前記受信信号が入力される複数の遅延器と、
各前記遅延器に対応して設けられた乗算器であって、自らに対応する前記遅延器から出力される前記受信信号に、前記基準符号を構成する複数の符号要素のうち、自らに対応する符号要素を乗じて出力する乗算器と、
各前記乗算器の出力値を加算合計する加算合計器と、を備え、
各前記遅延器は、
Kを2以上の整数として、前記基準符号の符号時間間隔のK分の1の時間だけ前記受信信号を遅延させることを特徴とする受信装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の受信装置において、
前記光軸調整装置は、
前記受信装置の姿勢を調整する姿勢調整機構を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の受信装置において、
受信用のレンズを備え、
前記受信部は、
前記レンズの後方に配置され、先端が前記レンズ側に向けられた光ファイバと、
前記光ファイバによって導かれた光を前記受信信号に変換する変換器と、を備え、
前記光軸調整装置は、
前記光ファイバの先端部を移動させる移動機構を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の受信装置において、
前記移動機構は、
前記光ファイバの先端部を、前記レンズの光軸に沿った方向および前記レンズの光軸に交わる方向に移動させることを特徴とする受信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の受信装置において、
前記移動機構は、
前記光ファイバの先端がレンズに向けられた状態で、前記レンズの後方に前記光ファイバの先端部を配置する配置動作と、
極大探索動作であって、
前記光ファイバの先端部を前記レンズの光軸に沿った方向に移動させ、前記受信レベルが極大となる第1極大位置を探索する動作と、
前記第1極大位置を通り、前記レンズの光軸に交わる平面内で前記光ファイバの先端部を移動させ、前記受信レベルが極大となる第2極大位置を探索する動作と、を含む極大探索動作と、を実行し、
前記第2極大位置に基づく位置に前記光ファイバの先端部を配置することを特徴とする受信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の受信装置において、
前記移動機構は、
前記極大探索動作を複数回に亘って実行し、
前記極大探索動作を複数回に亘って実行することで探索された前記第2極大位置に基づく位置に前記光ファイバの先端部を配置することを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光無線通信用の受信装置に関し、特に、受信光軸の方向を調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信側の装置と受信側の装置との間で光ファイバ等の通信線を用いずに通信を行う光無線通信が広く行われている。光無線通信は、例えば、非常時において河川の両岸間において行われる。河川の両岸に光無線装置が設置され、一方の光無線装置から他方の光無線装置に情報を含む光が送信される。光無線通信は、2つの建造物の間で行われることもある。光無線通信では通信線が用いられないため、設置コストが低減される。
【0003】
以下の特許文献1および2には、光無線装置が記載されている。特許文献1には、複数の電気光変換部を設けることで、複数の相手方との間で通信を行うことが記載されている。また、複数の光出射部から同じ相手方へ光ビームを送出することで光強度が高まり、より遠くへの通信が可能になることが記載されている。特許文献2には、送受信する光の方向(光軸の方向)を調整する技術が記載されている。
【0004】
特許文献3には、光データ伝送において、マッチトフィルタ法による符号化および再生が用いられる技術が記載されている。送信信号はPN符号系列を用いて時間拡散され、受信側では復号化によって時間軸上の一点に信号がまとめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-286705号公報
【文献】特開2015-122737号公報
【文献】特開2008-268619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、光無線通信では、一対の光無線装置のそれぞれについて、おおよその送信方向が調整された後に受信方向が調整される。光無線装置には、受光部の姿勢を調整する調整機構によって受信方向を調整するものがある。この場合、受信方向の調整は、ユーザが受光強度を確認しながら調整機構を操作することで行われる。このような受信方向の調整に際しては、太陽光等、不要な光が受信されてしまい調整が困難となる場合がある。また、光無線通信では、赤外線等、可視光でない光が用いられることがある。この場合、ユーザの目視によって受信方向を調整することには困難が伴う。
【0007】
本発明の目的は、光無線通信用の受信装置の受信方向を確実に調整することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、受信した光を、その受信した光の振幅を反映させた受信信号に変換する受信部と、前記受信信号と、予め定められた基準符号との相関演算を行う相関器と、前記相関器によって得られた相関信号に基づいて受信レベルを求め、前記受信レベルに応じて、前記受信部の受信光軸の方向を調整する光軸調整装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、前記基準符号は、PN符号であり、前記光軸調整装置は、前記受信レベルが所定の閾値を超えるように、前記受信光軸の方向を調整する。
【0010】
望ましくは、前記相関器は、縦続に接続された複数の遅延器であって、初段の前記遅延器に前記受信信号が入力される複数の遅延器と、各前記遅延器に対応して設けられた乗算器であって、自らに対応する前記遅延器から出力される前記受信信号に、前記基準符号を構成する複数の符号要素のうち、自らに対応する符号要素を乗じて出力する乗算器と、各前記乗算器の出力値を加算合計する加算合計器と、を備え、各前記遅延器は、Kを2以上の整数として、前記基準符号の符号時間間隔のK分の1の時間だけ前記受信信号を遅延させる。
【0011】
望ましくは、前記光軸調整装置は、前記受信装置の姿勢を調整する姿勢調整機構を備える。
【0012】
望ましくは、受信用のレンズを備え、前記受信部は、前記レンズの後方に配置され、先端が前記レンズ側に向けられた光ファイバと、前記光ファイバによって導かれた光を前記受信信号に変換する変換器と、を備え、前記光軸調整装置は、前記光ファイバの先端部を移動させる移動機構を備える。
【0013】
望ましくは、前記移動機構は、前記光ファイバの先端部を、前記レンズの光軸に沿った方向および前記レンズの光軸に交わる方向に移動させる。
【0014】
望ましくは、前記移動機構は、前記光ファイバの先端がレンズに向けられた状態で、前記レンズの後方に前記光ファイバの先端部を配置する配置動作と、極大探索動作であって、前記光ファイバの先端部を前記レンズの光軸に沿った方向に移動させ、前記受信レベルが極大となる第1極大位置を探索する動作と、前記第1極大位置を通り、前記レンズの光軸に交わる平面内で前記光ファイバの先端部を移動させ、前記受信レベルが極大となる第2極大位置を探索する動作と、を含む極大探索動作と、を実行し、前記第2極大位置に基づく位置に前記光ファイバの先端部を配置する。
【0015】
望ましくは、前記移動機構は、前記極大探索動作を複数回に亘って実行し、前記極大探索動作を複数回に亘って実行することで探索された前記第2極大位置に基づく位置に前記光ファイバの先端部を配置する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光無線通信用の受信装置の受信方向を確実に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】応用実施形態に係る受信装置の構成を示す図である。
【
図6】受信用レンズの焦点と、焦点よりも後方の光路を示す図である。
【
図7】各プロセスにおける光ファイバの先端部の動作の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示されている同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
図1には、本発明の実施形態に係る光無線通信システム100の構成が示されている。光無線通信システム100は、光無線通信を行う第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2を備えている。第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2のうち一方は、送信対象のデータを含む送信信号によって変調された光102を他方に送信する。光102は、単色光に変調が施されたものであってよく、赤外線等、可視光線よりも波長が長い電磁波であってもよい。また、光102は可視光であってもよい。以下の説明では、第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2は、光無線装置10と称される場合がある。
【0019】
光無線装置10は、通信対象のデータを伝送する通信モードの他、送信側の光無線装置10の光軸(送信光軸)の方向と、受信側の光無線装置10の光軸(受信光軸)の方向を調整する光軸調整モードで動作する。通信モードでは、送信信号は通信対象のデータを示すデジタル信号である。光軸調整モードでは、送信信号は任意のデジタル信号であってよい。例えば、値が総て1のデジタル信号であってもよい。以下では、光軸調整モードにおける光無線装置10の動作およびこの動作に用いられる各構成について説明する。
【0020】
図2には、第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2のそれぞれが備える光送受信ユニット12の構成が示されている。光送受信ユニット12は、送信装置14および受信装置22を備えている。送信装置14は、PN信号生成器16、送信部18、送信用レンズ20を備えている。PN信号生成器16は、パルス時間波形によってPN符号(Psudo Noise)を示すPN信号を送信部18に出力する。PN符号は、予め定められた基準符号であり、第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2において共通のものが記憶されている。
【0021】
PN信号は、PN符号を構成する符号要素「1」または「0」に対応してレベルがハイまたはローとなる。例えば、符号要素「1」に対してPN信号のハイレベルが対応付けられ、符号要素「0」に対してPN信号のローレベルが対応付けられてよい。
図3には、PN信号の例が示されている。PN符号は、n個の符号要素a1~anによって構成されている。
図3に示されているPN符号(a1,a2,a3・・・・・an)は、(1,0,0,1,0,1・・・・・1,0,0,1,0,1,0)である。PN信号では、PN符号(a1,a2,a3・・・・・an)に対応する時間軸上の区間を1PN符号周期TPNとして、1PN符号周期TPNが時間軸上で繰り返される。
【0022】
図2に戻って説明する。送信部18には送信信号が入力される。送信信号は、送信対象のデータを含む電気信号である。送信部18は、送信信号にPN信号を乗ずることによって時間拡散信号を生成し、時間拡散信号を、その振幅を反映させた光に変換すると共に、その光を送信用レンズ20を通して送信する。
【0023】
受信装置22は、受信用レンズ24、受信部26、コントローラ28および電動雲台36を備えている。受信部26は、受信用レンズ24を介して光を受信する。受信部26は、受信した光を、その受信した光の振幅を反映させた電気信号である受信信号に変換し、受信信号を出力する。コントローラ28は、相関器30、レベル決定部32および制御部34を備えている。コントローラ28は、プログラムを実行することで、相関器30、レベル決定部32および制御部34を構成するプロセッサによって構成されてよい。相関器30は受信信号と、PN符号との相関演算を実行して相関信号を生成し、相関信号をレベル決定部32に出力する。レベル決定部32は相関信号に基づいて受信信号の大きさを示す受信レベルを求め、受信レベルを制御部34に出力する。
【0024】
制御部34は、受信レベルに基づいて電動雲台36を制御する。電動雲台36は、制御部34の制御に従って、光無線装置10を収容する筐体、あるいは、光送受信ユニット12を収容する筐体の姿勢を変化させる姿勢調整機構を含んでよい。電動雲台36は、制御部34の制御によって光送受信ユニット12の姿勢を調整する。すなわち、制御部34は、予め定められた第1閾値を受信レベルが超えるように、電動雲台36に光送受信ユニット12の姿勢(受信光軸の仰角および方位)を調整させて、受信光軸の方向を調整する。
【0025】
後述するように、受信部26は、光を受信するときの受信光軸の方向を微調整する微調整機構を備えてもよい。この場合、制御部34は、予め定められた第2閾値を受信レベルが超えるように、受信部26が備える微調整機構を制御する。
【0026】
このように、受信装置22は、相関器30によって得られた相関信号に基づいて受信レベルを求め、受信部26の受信光軸の方向を受信レベルに応じて調整する光軸調整装置として、レベル決定部32、制御部34および電動雲台36を備えている。また、後述する応用実施形態では、光軸調整装置は、さらに微調整機構を含む。
【0027】
図4には、相関器30の構成が示されている。相関器30は、nを1以上の整数として、2n個の遅延器Dα1,Dβ1,Dα2,Dβ2,Dα3,Dβ3・・・・・・Dαn,Dβnと、2n個の乗算器Mα1,Mβ1,Mα2,Mβ2,Mα3,Mβ3・・・・・・Mαn,Mβnを備えている。すなわち、遅延器DαjおよびDβjに対して、乗算器MαjおよびMβjがそれぞれ対応して設けられている。ただし、jは1~nのうちのいずれかの整数である。
【0028】
各遅延器は、自らに入力されら信号をT/2だけ遅延させて出力する。ここでTは、符号時間間隔であり、PN信号のパルス時間間隔に相当する。遅延器Dβn,Dαn,Dβn-1,Dαn-1,・・・・・・Dβ2,Dα2,Dβ1,Dα1は、この順序で縦続接続されており、先段の遅延器は入力された信号をT/2だけ遅延させて、次段の遅延器に出力する。初段の遅延器Dβnには受信部26から出力された受信信号が入力され、2n-1個の後続の各遅延器が順次、受信信号をT/2だけ遅延させる。
【0029】
乗算器Mαjは、遅延器Dαjから出力された受信信号に符号要素ajを乗じた値を出力する。乗算器Mβjは、遅延器Dβjから出力された受信信号に符号要素ajを乗じた値を出力する。相関器30は、各遅延器および各乗算器に加えて加算合計器Sを備えている。加算合計器Sは、乗算器Mα1,Mβ1,Mα2,Mβ2,Mα3,Mβ3・・・・・・Mαn,Mβnのそれぞれから出力された値を加算合計して得られる相関信号を出力する。
【0030】
相関信号は、1PN符号周期PNT=nTが経過するごとに極大値となる。
図2のレベル決定部32は、例えば、所定時間だけ過去に遡って得られた複数の極大値の平均値(移動平均値)を受信レベルとして求める。レベル決定部32は、所定時間だけ過去に遡って得られた複数の極大値の中央値、最大値、最小値、偏差値等の統計値を受信レベルとして求めてもよい。
【0031】
本実施形態に係る相関器30では、縦続接続された複数の遅延器のそれぞれが受信信号をT/2だけ遅延させ、各遅延器から出力された受信信号に符号要素が乗ぜられ、各乗算結果が加算合計されることで相関信号が求められる。各遅延器での遅延時間を符号時間間隔Tの半分T/2とすることで、相関信号が確実に極大値を有するものとなる。すなわち、各遅延器における遅延時間を符号時間間隔Tとした場合には、相関信号の極大値の大きさが不十分となってしまうか、相関信号に極大値が現れないことがある。これは、各遅延器に受信信号が入力されるタイミングが、受信信号に乗ぜられた符号要素が変化するタイミング(符号変化タイミング)と一致してしまうことがあるためである。本実施形態に係る相関器30によれば、受信信号が遅延器に入力されるタイミングと、受信信号の符号変化タイミングとが、総ての遅延器で一致してしまうことが回避される。そのため、相関信号が確実に極大値を有するものとなる。
【0032】
また、相関信号は、送信側の光無線装置10でPN符号によって時間拡散された信号が、PN信号の1PN符号周期ごとに積算されたものとなる。そのため、受信装置22で受信される光にノイズ光が含まれていたとしても、十分な信号対雑音比を有する相関信号が生成され、受信光軸の方向の調整が容易となる。
【0033】
上記では、各遅延器が、符号時間間隔Tの半分T/2だけ受信信号を遅延させる相関器30が示された。各遅延器は、符号時間間隔TのK分の1だけ受信信号を遅延させるものであってよい。ただし、Kは2以上の整数である。相関器30には、縦続接続されたK・n個の遅延器が設けられ、各遅延器に対応して乗算器が設けられる。各乗算器には、自らに対応する遅延器から出力される受信信号に、PN符号を構成する複数の符号要素のうち、自らに対応する符号要素を乗じて出力する。相関器30には、各乗算器の出力値を加算合計する加算合計器が設けられる。K個の乗算器を含むように上段から区切られたグループに共通の符号要素が対応付けられる。すなわち、最上段のグループには符号要素anが対応付けられ、このグループに属するK個の乗算器のそれぞれは符号要素anを受信信号に乗ずる。最上段から2番目のグループには符号要素an-1が対応付けられ、このグループに属するK個の乗算器のそれぞれは符号要素an-1を受信信号に乗ずる。・・・・・・最終段のグループには符号要素a1が対応付けられ、このグループに属するK個の乗算器のそれぞれは符号要素a1を受信信号に乗ずる。
【0034】
次に、本発明の応用実施形態について説明する。
図5には、応用実施形態に係る受信装置22の構成が、受信部26の詳細な構成と共に示されている。受信部26は、光ファイバ40、変換器42および移動機構38(微調整機構)を備えている。受信装置22は、受信用レンズ24から入射した光を光ファイバ40に導き、受信された光を電気信号である受信信号に変換する機能と共に、受信光軸の方向を調整する機能を有している。以下の説明では、受信用レンズ24から外部に向かう方向(
図5の左方向)が受信装置22の前方向とされる。また、
図5における上下方向が受信装置22の上下方向とされる。
【0035】
受信用レンズ24の後方には、受信用レンズ24側に先端を向けて光ファイバ40が配置されている。光ファイバ40は、その先端から後方に向かって延びており、受信部26の後部に配置された変換器42に至っている。変換器42は、光ファイバ40によって伝送された光を取得し、その光の振幅を反映させた受信信号にその光を変換して出力する。光ファイバ40は可撓性を有しており、変換器42に接続された後端、および後端付近が固定された状態で、先端部が移動自在となっている。ここで、先端部とは、光ファイバ40の先端の他、移動機構38によって保持され、移動機構38によって移動する先端付近の部分をいう。
【0036】
相関器30は、変換器42から出力された受信信号と、PN符号との相関演算を実行して相関信号を生成し、相関信号をレベル決定部32に出力する。上記のように、レベル決定部32は、相関信号に基づいて受信レベルを求め、受信レベルを制御部34に出力する。制御部34は、受信レベルに基づいて移動機構38を制御する。
【0037】
移動機構38は、制御部34による制御に従って、光ファイバ40の先端部を移動させる。すなわち、移動機構38は、光ファイバ40の先端が受信用レンズ24側に向けられた状態で、光ファイバ40の先端部を前後方向、および前後方向に垂直な平面内で移動させる。
【0038】
図6には、一点鎖線52で示される方向から受信用レンズ24に光が入射した場合の焦点54と、焦点54よりも後方の光路が示されている。受信用レンズ24の前面の全域に、一点鎖線52で示される方向から、2本の一点鎖線52に挟まれる領域内に光が入射した場合、焦点54の後方では斜線が施された焦点後方領域56に光が分布する。
【0039】
受信用レンズ24に異なる方向に光が入射した場合、異なる位置に焦点54が形成される。あらゆる方向から光が入射したときに形成される各焦点は、受信用レンズ24の後方の焦点面上にある。ある入射光に対して形成される焦点54から、光ファイバ40の先端の位置がズレている場合、光ファイバ40には十分な光が入射しない。そこで、本実施形態に係る受信装置22では、光ファイバ40の先端部の位置を焦点54の位置に近付け、あるいは一致させて受信光軸の方向の微調整が行われる。この微調整では、焦点54の後方で光路が広がり、焦点54の後方でピントがズレることが利用される。
【0040】
すなわち、受信光軸の方向の調整では、最初に光ファイバ40の先端を受信用レンズ24側に向けて、光ファイバ40の先端部が焦点後方領域56に配置される。その後、光ファイバ40に入射する光の強度が極大となるように、光ファイバ40の先端が焦点54に近付けられ、または一致させられる。最初に光ファイバ40の先端を焦点後方領域56に配置することで、光ファイバ40の先端に確実に光が入射し、光ファイバ40の先端をおおよその位置に配置することが容易になる。
【0041】
光ファイバ40の先端を受信用レンズ24側に向けて、受信用レンズ24の先端部を焦点後方領域56に配置する初期設定動作は、例えば、電動雲台36によって光送受信ユニット12の姿勢を調整することで行われてよい。制御部34は、レベル決定部32から出力される受信レベルが第1閾値を超えるように、電動雲台36に光送受信ユニット12の姿勢を調整させる。
【0042】
初期設定動作が実行された後、受信装置22では、次のような微調整動作が行われる。すなわち、移動機構38によって光ファイバ40の先端部を移動させながら、受信レベルが極大となるような光ファイバ40の先端部の位置を探索し、移動機構38によって光ファイバ40の先端部をそのような極大位置に配置する。
【0043】
微調整動作について
図5を参照して具体的に説明する。制御部34は、移動機構38を制御して次のプロセス(i)および(ii)を含む極大探索動作を実行する。
【0044】
(i)制御部34は、移動機構38を制御して、光ファイバ40の先端部を受信用レンズ24の光軸50に平行な方向に移動させ、受信レベルが極大となる第1極大位置を探索し、第1極大位置に光ファイバ40の先端部を配置する。
(ii)制御部34は、移動機構38を制御して、第1極大位置を通り、受信用レンズ24の光軸50に対して垂直に交わる探索平面内で光ファイバ40の先端部を移動させ、受信レベルが極大となる第2極大位置を探索し、第2極大位置に光ファイバ40の先端部を配置する。
【0045】
プロセス(ii)において探索平面内で光ファイバ40の先端部を移動させる方式には、十字スキャン方式がある。十字スキャン方式では、光ファイバ40の先端部を横方向に移動させる横方向スキャンが実行され、その横方向スキャンにおいて受信レベルが極大となる位置が求められる。そして、横方向スキャンにおいて受信レベルが極大となった位置において、縦方向に光ファイバ40の先端部を移動させる縦方向スキャンが実行され、その縦方向スキャンにおいて受信レベルが極大となる位置が第2極大位置として求められる。なお、十字スキャンでは、横方向以外の第1の方向に対するスキャンが実行され、その後に第1の方向に対して垂直な第2の方向についてのスキャンが実行されてもよい。
【0046】
微調整動作では、光ファイバ40の先端部が第2極大位置にあるときの受信レベルが、所定の第2閾値を超えるようになるまで、プロセス(i)および(ii)が繰り返される。プロセス(i)および(ii)を一通り実行したのみで第2極大位置に対する受信レベルが、第2閾値を超えたときは、プロセス(i)および(ii)を複数回繰り返す必要はない。光ファイバ40の先端部が第2極大位置にあるときの受信レベルが第2閾値を超えた後、その第2極大位置に光ファイバ40の先端部が設置されることで、光ファイバ40の先端部が受信用レンズ24の焦点54に近付けられ、または合わせられる。これによって、第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2のうちの一方の送信光軸と、他方の受信光軸とが合わせられる。
【0047】
このように、本実施形態に係る移動機構38は、制御部34による制御に従って、次のような配置動作および極大探索動作を実行する。配置動作は、光ファイバ40の先端が受信用レンズ24に向けられた状態で、受信用レンズ24の後方の焦点後方領域56に光ファイバ40の先端部を配置する動作である。この動作は、制御部34が電動雲台36を制御することで行われてよい。
【0048】
極大探索動作は、プロセス(i)および(ii)に対応する動作であり、光ファイバ40の先端部を受信用レンズ24の光軸50に沿った方向に移動させ、光ファイバ40に入射する光の強度が極大となる第1極大位置を探索する動作を含む。また、極大探索動作は、第1極大位置を通り、受信用レンズ24の光軸50に交わる平面内で光ファイバ40の先端部を移動させ、光ファイバ40に入射する光の強度が極大となる第2極大位置を探索する動作を含む。光ファイバ40の先端部は第2極大位置に基づく位置に配置されてよい。移動機構38は、制御部34の制御に従って、極大探索動作を複数回に亘って実行し、極大探索動作を複数回に亘って実行することで探索された第2極大位置に基づく位置に光ファイバ40の先端部を配置してもよい。
【0049】
本実施形態によれば、最初に光ファイバ40の先端が焦点後方領域56に配置される。これによって、光ファイバ40の先端に確実に光が入射し、光ファイバ40の先端をおおよその位置に配置することが容易になる。また、本実施形態によれば、光ファイバ40の先端が焦点後方領域56に配置された後に極大探索動作が実行される。そのため、第1光無線装置10-1の送信光軸と第2光無線装置10-2の受信光軸とが先に合わせられた後に、第2光無線装置10-2の送信光軸と第1光無線装置10-1の受信光軸とが合わせられたとしても、先に合わせられた第1光無線装置10-1の送信光軸と第2光無線装置10-2の受信光軸とに与える影響は小さい。
【0050】
図7には、プロセス(i)および(ii)における光ファイバ40の先端部の動作の例が模式的に示されている。矢印60は、第1回目のプロセス(i)によって光ファイバ40の先端部が初期の位置Aから位置Bに移動したことを示している。矢印62は、第1回目のプロセス(ii)によって光ファイバ40の先端部が位置Bから位置Cに移動したことを示している。矢印64は、第2回目のプロセス(i)によって光ファイバ40の先端部が位置Cから位置Dに移動したことを示している。矢印66は、第2回目のプロセス(ii)によって光ファイバ40の先端部が位置Dから位置Eに移動したことを示している。矢印68は、第3回目のプロセス(i)および(ii)によって光ファイバ40の先端部が位置Eから位置F、すなわち焦点54の位置に移動したことを示している。
【0051】
光ファイバ40の先端部を受信用レンズ24の光軸50の方向に沿って移動させた場合、受信レベルは、焦点後方領域56と焦点後方領域56外の領域との境界で極大値となる。そのため、プロセス(i)によって探索される第1極大位置は境界付近に位置し、プロセス(i)および(ii)が繰り返されることで、第1極大位置および第2極大位置は受信用レンズ24の焦点54に収束する。したがって、プロセス(i)および(ii)が繰り返されることで、第1光無線装置10-1および第2光無線装置10-2のうちの一方の送信光軸と、他方の受信光軸とが合わせられる。
【符号の説明】
【0052】
10 光無線装置、10-1 第1光無線装置、10-2 第2光無線装置、12 光送受信ユニット、14 送信装置、16 PN信号生成器、18 送信部、20 送信用レンズ、22 受信装置、24 受信用レンズ、26 受信部、28 コントローラ、30 相関器、32 レベル決定部、34 制御部、36 電動雲台、38 移動機構、40 光ファイバ、42 変換器、50 レンズの光軸、52 レンズに入射する光の光路を示す一点鎖線、54 焦点、56 焦点後方領域、60,62,64,66,68 光ファイバの先端部の位置の移動を示す矢印、100 光無線通信システム、102 光。