IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キッダ テクノロジーズ,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-測定量を監視するための装置 図1
  • 特許-測定量を監視するための装置 図2
  • 特許-測定量を監視するための装置 図3
  • 特許-測定量を監視するための装置 図4
  • 特許-測定量を監視するための装置 図5
  • 特許-測定量を監視するための装置 図6
  • 特許-測定量を監視するための装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】測定量を監視するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/3206 20210101AFI20230525BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20230525BHJP
   G01L 1/24 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
G01K11/3206
G01B11/16 G
G01L1/24 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020555524
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 GB2019050930
(87)【国際公開番号】W WO2019197800
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】1805874.3
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510079477
【氏名又は名称】キッダ テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ドイル,クリスピン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ケヴィン
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-083598(JP,A)
【文献】特開2009-198257(JP,A)
【文献】特開2009-229134(JP,A)
【文献】米国特許第05757487(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/3206
G01B 11/16
G01L 1/24
G01D 5/353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路に沿って測定量を監視するための装置であって、前記装置は、
光導波路と、
前記光導波路を通して所与の波長及び持続時間の狭帯域パルス光を選択的に放射するように構成され、さらに前記光の前記波長を変調するように構成された光源と、
前記導波路に沿って提供される第1及び第2のセットのセンサであって、前記第1及び第2のセットの各センサは、測定量に対応するそれぞれのセンサ波長で前記導波路に沿って伝搬する光の一部分を反射するように構成される、前記第1及び第2のセットのセンサと、
前記第1のセットのセンサは、それらのセンサ波長に従って1つまたは複数のグループに構成され、各グループは複数のセンサを含み、前記第1のセット内の各グループの各隣接センサは、前記パルス持続時間中に前記導波路に沿って前記光が移動する距離の半分未満の前記距離だけ前記導波路に沿って離れており、それぞれのグループ内の各センサの前記センサ波長は、そのグループ内の前記各センサが経験する前記測定量が等しい場合には、実質的に等しく、
前記第2のセットの各隣接センサは、前記パルス持続時間中に前記導波路に沿って前記光が移動する距離の半分を超える前記距離だけ前記導波路に沿って離れており、前記第1のセットの複数のセンサは、前記第2のセットの各隣接センサの間に提供され、前記第1のセットのセンサの各グループは、前記第2のセットよりも高い空間密度のセンサを有しており、
前記第1及び第2のセットは、前記第1及び第2のセットの前記各センサが経験する前記測定量が等しい場合に、前記第1のセットの各センサのセンサ波長が、前記第2のセットの各センサの前記センサ波長とは異なるように構成され、
前記第1及び第2のセットのセンサによって反射される前記光を監視するように構成される検出器と、
以下のステップ(i)~(iv)を実行させることによって、測定量異常を特定するように構成された制御システムとを含み、以下のステップは、
(i)前記光源を使用して前記光導波路に沿って光を透過することと、
(ii)前記第1のセットのセンサによって反射された前記光を監視して、前記第1のセットの前記各センサが経験する測定量を表す測定スペクトルを取得することと、
(iii)前記測定スペクトル内の異常信号を検出することであって、前記異常信号は固有波長を有し、前記第1のセットのセンサの異常センサから発生し、前記異常センサは前記測定量異常を経験する、前記異常信号を検出することと、
(iv)前記異常センサを含む前記グループを少なくとも特定することと、
を備え、
前記制御システムは、以下のステップ(v)~(vii)を実行させることによって、前記光導波路に沿った複数の位置において、さらに測定量を監視するように構成され、以下のステップは、
(v)前記光導波路に沿って狭帯域光のパルス列を放射し、前記パルス列は、異なるそれぞれのピーク波長での複数のパルスを含む、前記放射することと、
(vi)前記導波路に沿った前記第2のセットのセンサによって反射された前記光を監視することと、
(vii)前記第2のセットで反射された前記監視光に基づいて、前記第2のセットの各センサの測定量を推定することとを含む、前記装置。
【請求項2】
ステップ(iv)は、前記異常信号の前記固有波長で光のパルスを透過することによって前記異常センサの位置を特定することと、前記反射信号の前記飛行時間を監視することとを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のセットは、前記第1のセットの2つのセンサが前記第2のセットの各センサに隣接して提供されるように配置される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のセットのセンサは、複数のグループに構成され、前記複数のグループは前記導波路に沿って互いに空間的に離れている、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記第2のセットのセンサは、前記第2のセットの各センサが経験する前記測定量が等しい場合に、前記第2のセットの前記各センサの前記センサ波長が実質的に等しくなるように構成される、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記第1のセットの前記センサは、各グループの前記センサから反射された前記光の少なくとも一部分が、前記測定スペクトルの連続するピーク幅を有する各グループのグループ応答を形成するように波長が実質的に重なるように構成され、前記異常信号は前記グループ応答のいずれとも波長が重ならない、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
各セットの前記センサは、そのセットの固有波長帯域内にあるそれぞれのセンサ波長を有し、前記第1及び第2のセットの前記固有波長帯域が重ならない、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
ステップ(i)で透過される前記光は、前記第1のセットの前記固有波長帯域内の1つまたは複数の波長を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ステップ(v)で透過される前記光は、前記第2のセットの前記固有波長帯域内のピーク波長を有する、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記光源は、ステップ(i)で使用するための広帯域モードと、ステップ(v)で使用するための狭帯域モードとの間で切り替え可能である、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記光源はレーザを含む、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記光源は、0.1nm未満の帯域幅を有するステップ(v)において狭帯域パルス光を放射するように構成される、請求項1~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記光源は、0.1pm未満の帯域幅を有するステップ(v)において単色パルス光を放射するように構成される、請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記光源は、連続波モードとパルスモードとの間で選択的に切り替え可能である、請求項1~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記光源は、前記放射光の前記パルス持続時間を制御するように構成されたシャッタまたはスイッチ機構をさらに備える、請求項1~14のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路(waveguide)に沿って測定量を監視し、導波路に沿って測定量異常を特定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの業界では、測定量を監視し、これらの測定量異常、例えば、正常な動作範囲を上回るか、または下回る温度などを設備に伴う様々な位置で特定することが望まれる。その一例が航空宇宙産業である。現代の航空機は、エアコンの作動、飛行面の氷結の防止、高度での飛行時に電子機器が冷えすぎるのを防止するなどの機能にエンジンの「抽気」を利用することがよくある。この抽気は、コンプレッサの初期段階の直後にジェットエンジンまたはターボプロップエンジンから排出されるため、高圧及び高温(最大300℃)になり、航空機内を断熱ダクトで運ばれる。これらのダクトの1つで漏れが発生すると、高温の抽気が漏れ、航空機のシステム及び漏れに近い構造物にまで、急速に損傷を与える可能性がある。したがって、損傷が発生する前に、故障したダクトを通過する空気の流れを遮断できるように、漏れがいつどこで発生するかを知ることが重要である。
【0003】
漏れまたは「ホットスポット検出」(HSD)の現在の好適な方法は、各ダクトに沿って1つまたは2つの連続する電気センサを実行することを含む。これらのセンサは金属管を含み、金属管は外部導体及び固体塩の中央に懸架されたワイヤを形成し、これらは内部導体を形成する。正常な動作では、2つの導体は相互から電気的に絶縁されているが、温度が特定の値に達すると、塩が溶解し、それらの間で短絡が発生する。これが検出され、2つの導体間の電気的特性(例えば、抵抗及び静電容量)の測定を使用して、いわゆるホットスポットの位置が特定される。次に、ホットスポットの位置をユーザに警告するアラームが発生する。この技術は機能的であるが、このシステムには次のような不利な特徴がある。すなわち、
1)様々なアラーム温度に対応するためにセンサの様々な部分で様々な組成が使用され得るが、アラームが発生する温度は、塩の組成によって決まり、調整することはできない。
2)塩で満たされた導体は、短い長さでのみ製造することができ、剪断力の下で破損する傾向にある。これは、通常、導体が比較的短い長さで製造されるため、ダクト全体を覆うために多数のセクションを接続する必要があることを意味する。例えば、航空機の1つの抽気ダクトを覆うには、200個のコネクタが必要になる場合がある。これらのセンサの設置には時間がかかる。さらに、各コネクタは、さらなる潜在的な障害ポイントをもたらす。
3)必要な金属部品やコネクタの数が多いため、センサチェーンは重くなる。
4)電気測定の性質上、漏れを常に正確に特定できるとは限らない。
【0004】
光ファイバを使用して圧力、温度、ひずみなどの測定量を監視することが知られている。これらの技法は、一般に、マルチセグメント化された塩で満たされたケーブルに関連する上記の問題の影響を受けることはない。ブリルアン散乱またはラマン散乱のいずれかの後方散乱光検出に基づく現在の分布温度センサ(DTS)は、航空機の使用には適していない。その理由は、これらが強力なレーザを必要し、当該レーザは高エネルギかつ高価で精巧な光電子処理ユニットにより発火の危険性をもたらす可能性があるためである。
【0005】
ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)は優れた温度センサになるが、HSDにそれらを使用することは簡単ではない。その理由は、これらがポイントセンサであり、適用においては数十メートルのダクトを連続して覆う必要があるためである。時分割多重化(TDM)及び波長分割多重化(WDM)は、FBGを使用して測定量を監視するために一般的に使用される2つの技法である。
【0006】
TDMシステムは、抽気ダクトに沿った漏れの検出に必要な空間密度を提供することができない。従来のTDMシステムでは、反射パルスを飛行時間に従って個別に分解するために、通常、センサを導波路に沿って少なくとも1mは離す必要がある。通常、漏れは非常に局所的であり、最初は5cmにわたるのみであるため、システムでは全体で95%の確率で漏れる。
【0007】
WDMでは、抽気ダクトを覆うために必要な多数のセンサを実際に提供することはできない。WDMでは、各FBGセンサは、異なる離散波長帯域内の異なるそれぞれのブラッグ波長で光を反射するように構成されている。現在のWDMシステムは、ファイバあたり約130のFBGセンサに制限されている。FBGセンサがそれぞれ5cm間隔で離れている場合、つまり、1メートルあたり20個のFBGがある場合、システムは130/20=6.5mに制限される。これは、抽気ダクトの長さが50m以上に及ぶ可能性があるため、短すぎる。したがって、WDMシステムを動作させるには多数のファイバが必要であり、システムのコスト及び複雑性が増大する。
【0008】
光周波数領域リフレクトメトリは、1本のファイバ上で数百の低反射率グレーティングに対処するための技法である。しかしながら、高価で精巧な機器(通常は10万米ドルを超える)が必要であるため、航空機などの用途には適していない。
【0009】
上記の欠点の影響を受けない、光導波路に沿って測定量異常を特定するための改善された方法及び装置を提供することが望ましい。特に、広範囲の細長い領域に沿って測定量異常を高い空間精度で特定することができる、簡素性、軽量性、頑強性、柔軟性を備え、費用対効果の高い装置を提供することが望ましい。
【0010】
さらに、導波路に沿った多数の個別の位置で測定量をサンプリングすることができることが望ましい。特に、特定の既存のシステムは、測定量異常が発生した場合に、導波路に沿って測定量異常を特定する機能をユーザに提供する。しかしながら、光学センサの配置では、そのような異常が存在しない場合、識別可能な位置で測定量自体を監視することができない。
【0011】
本発明は、これらの課題を解決するために説明される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、光導波路に沿って測定量を監視するための装置を提供し、装置は、
光導波路と、
光導波路を通して所与の波長及び持続時間の狭帯域パルス光を選択的に放射するように構成され、さらに光の波長を変調するように構成された光源と、
導波路に沿って提供される第1及び第2のセットのセンサであって、第1及び第2のセットの各センサは、測定量に対応するそれぞれのセンサ波長で導波路に沿って伝搬する光の一部分を反射するように構成される、第1及び第2のセットのセンサと、
第1のセットのセンサは、それらのセンサ波長に従って1つまたは複数のグループに構成され、各グループは複数のセンサを含み、それぞれのグループ内の各センサのセンサ波長は、そのグループ内の各センサが経験する測定量が等しい場合には、実質的に等しく、
第2のセットの各隣接センサは、パルス持続時間中に導波路に沿って光が移動する距離の半分を超える距離だけ導波路に沿って離れており、第1のセットの複数のセンサは、第2のセットの各隣接センサの間に提供され、
第1及び第2のセットは、第1及び第2のセットの各センサが経験する測定量が等しい場合に、第1のセットの各センサのセンサ波長が、第2のセットの各センサのセンサ波長とは異なるように構成され、
第1及び第2のセットのセンサによって反射される光を監視するように構成される検出器と、
以下のステップを実行させることによって、測定量異常を特定するように構成された制御システムとを含み、制御システムは、
(i)光源を使用して光導波路に沿って光を透過することと、
(ii)第1のセットのセンサによって反射された光を監視して、第1のセットの各センサが経験する測定量を表す測定スペクトルを取得することと、
(iii)測定スペクトル内の異常信号を検出することであって、異常信号は固有波長を有し、第1のセットのセンサの異常センサから発生し、異常センサは測定量異常を経験する、異常信号を検出することと、
(iv)異常センサを含むグループを少なくとも特定することであって、制御システムは、以下のステップを実行させることによって、光導波路に沿った複数の位置において、さらに測定量を監視するように構成され、以下のステップは、
(v)光導波路に沿って狭帯域光のパルス列を放射し、パルス列は、異なるそれぞれのピーク波長での複数のパルスを含む、放射することと、
(vi)導波路に沿った第2のセットのセンサによって反射された光を監視することと、
(vii)第2のセットによって反射された監視光に基づいて、第2のセットの各センサの測定量を推定することとを含む。
【0013】
標準のWDMシステムとは異なり、測定量が各センサで同じ場合、各センサが異なるセンサ波長で光を反射する必要はない。これは、装置が導波路に沿って提供可能なセンサの数に制限されないことを意味する。さらに、TDMシステムとは異なり、異常信号は、各センサから反射された光を個別に分解して分析するのではなく、測定スペクトル(第1のセットの各センサからの集約応答を使用して取得される)で検出される。これは、第1のセットの各センサを導波路に沿って最小距離だけ離す必要がないことを意味する。さらに有利なことに、塩で満たされた導体の代わりに光導波路に沿って分散されたセンサを使用することにより、装置を軽量かつ柔軟にすることができる。これは、燃料効率を改善するために航空機の重量を減らす傾向にある航空宇宙産業で特に望ましい。
【0014】
第2のセットのセンサは、第2のセットのセンサから反射された各パルスが個別に分解可能であるように有利に配置されている。さらに、第2のセットのセンサは、第1のセットのものである隣接センサとは異なるセンサ波長を有するように構成される。これにより、第2のセットのセンサから反射されたパルスが第1のセットのセンサからの反射と干渉するのを防ぐ。これにより、第2のセットのセンサの位置に対応する導波路に沿った複数の別個の位置で測定量をサンプリングすることが可能になる。したがって、導波路が設置されているシステムに関して、貴重な運用データを取得することができる。さらに、同じ長さの導波路を使用して、第1のセットの高密度センサから測定量異常を検出することと、第2のセットのセンサに対応する複数の別個の位置で測定量を検出することとの両方を行うことができる。
【0015】
いくつかのシナリオでは、測定量異常の位置を概算するために、どのグループが異常センサを含むかを単純に決定するだけで十分な場合がある。グループが1つしか提供されていない場合は、異常信号が検出されるとすぐに、異常センサを含むグループを特定することができる。複数のグループが提供される場合、異常センサを含むグループは、測定スペクトルを分析するプロセスによって検出され得る。次に、グループの配置に関して事前に保存された情報を使用して、測定量異常の位置を概算することができる。より正確な位置が必要な場合、ステップ(iv)は、異常信号の固有波長で光のパルスを透過させることによって異常センサの位置を特定することと、反射信号の飛行時間を監視することとを含み得る。したがって、異常信号は、測定スペクトルで検出することができ、光のパルスは、異常信号の固有波長で透過される。通常、測定量異常を経験しているセンサのみが、この固有波長で放射された光の一部分を反射するだろう。したがって、反射信号の飛行時間は、異常なセンサ、したがって測定量異常の位置を特定するために計算され得る。異常信号の検出には、固有波長を特定するプロセスが含まれる。
【0016】
異常信号は通常、測定量異常が発生した場合にのみ測定スペクトルに表示される別個のピークである。異常信号は、通常、複数のセンサの異常センサからの反射に相当するガウス分布または同様の分布(正弦分布など)の近似を示す。固有波長は、異常信号が占める波長範囲内で発生し、ピーク波長またはその近似値に相当する場合がある。
【0017】
ステップ(v)のパルス列内の各パルスは、異なるピーク波長を有し得る。したがって、パルス列は複数のパルスからなり得、各連続パルスは、以前のパルスよりも高いまたは低い波長を有する(波長の変化は、通常、連続パルス間で共通の方向に進行する)。代替的には、放射光の波長がパルス列の次のパルスのために調整される前に、複数のパルスが1つまたは複数の波長で放射され得る。
【0018】
第1及び第2のセットは、好適には、第1のセットの2つのセンサが第2のセットの各センサに隣接して提供されるように配置される。したがって、第1及び第2のセットは、第1のセットのセンサが第2のセットの各センサの両端に提供されるように散在し得る。これにより、高密度の測定量を取得することができる。
【0019】
第2のセットのセンサは、好適には、第2のセットの各センサが経験する測定量が等しい場合に、第2のセットの各センサのセンサ波長が実質的に等しくなるように構成される。これにより、導波路の製造方法と、第2のセットのセンサを使用して測定量を監視する後続のプロセスとの両方が簡素化される。特に、第2のセットの各センサに対処するために必要なパルスは、これらのセンサが共通の測定値で異なるセンサ波長を持つ場合よりも少なくなる。
【0020】
第1のセットのグループは、通常、導波路に沿って互いに空間的に離れている。したがって、第1のセットの異なるグループは、空間的な意味で重ならない可能性がある。したがって、有利なことに、検出された異常は、異常センサを含むグループを識別するだけで(つまり、異常センサ自体の位置を特定する必要なく)導波路が設置される導管の特定の領域が原因であることをより容易に特定することができる。通常、各グループ内の複数のセンサは、第2のセットの各隣接センサの間に提供される。
【0021】
最も一般的には、第1のセットのセンサの各グループは、第2のセットよりも高い空間密度のセンサを有する。第2のセットのセンサとは異なり、第1のセットの隣接センサを導波路に沿って最小距離だけ離す必要はない。したがって、導波路に沿った特定の位置で測定量異常を検出する機会を高めるために、第1のセットの各隣接センサ間の間隔を第2のセットの間隔よりも小さくすることが望ましい。対照的に、第1のセットの各センサ間に大きな隙間が残っている場合、センサのない導波路の領域で発生する測定量異常は検出されない可能性がある。このため、第1のセット内の各グループの各隣接センサは、好適には、パルス持続時間中に導波路に沿って光が移動する距離の半分未満の距離だけ導波路に沿って離れている。
【0022】
第1のセットのセンサは、通常、各グループのセンサから反射された光の少なくとも一部分が、測定スペクトルの連続ピーク幅を有する各グループのグループ応答を形成するように、波長が実質的に重なるように構成される。異常信号は通常、グループ応答のいずれとも波長が重ならない。これにより、異常センサの検出が容易になる。
【0023】
それぞれのグループの各センサのセンサ波長は、そのグループの各センサが経験する測定量が等しい場合、実質的に等しくなる。しかしながら、製造プロセスの結果として、センサの波長間にわずかな偏差が生じる場合がある。したがって、「実質的に」という言葉は、0.1nmの波長範囲内のセンサ波長を含むと解釈され得る。好適には、測定量が等しい場合、これらの波長は等しい。センサの波長は、センサの反射率が最も高い特定の波長に対応し得る。センサのセンサ波長は、通常、測定値の変化に応じて変化する。異常信号は、次に、グループ内のセンサの1つでの測定量が、グループ内の残りのセンサの測定量とは大幅に異なる場合にのみ発生する可能性がある。したがって、有利には、測定量異常を経験している異常センサのみの位置を分離して検出することができる。
【0024】
通常、第1のセットのセンサは、各グループのセンサから反射された光の少なくとも一部分が、測定スペクトルの連続ピーク幅を有する各グループのグループ応答を形成するよう、波長が実質的に重なるように構成され、異常信号はグループ応答のいずれとも波長が重ならない。測定量の僅かな変化は、通常、所与のグループの異なるセンサ間で発生する可能性があり、これらのわずかな変化は、正常な動作条件の一部であるローカル環境における変化に相当する。しかしながら、測定量異常は、測定量が以前の測定時よりも大幅に高いまたは低い場合、またはグループの残りのセンサによって監視されている測定量と大幅に異なる場合にのみ検出及び特定されることが望ましい。各グループのセンサを配置してそれぞれのグループ応答を形成することにより、測定スペクトルのピーク分析を使用して異常信号を識別することができる。
【0025】
好適には、各セットのセンサが、そのセットの固有波長帯域内にあるそれぞれのセンサ波長を有し、第1及び第2のセットの固有波長帯域が重ならない。例えば、第2のセットの各センサは、正常な温度または高温の変動にわたって、第1のセットのセンサのセンサ波長のいずれよりも高いまたは低いままであるそれぞれのセンサ波長を導波路に沿って有し得る。これにより、ステップ(i)~(iv)が実行された後、光源を新しい波長に調整して、第1のセットのセンサからの不要な反射を引き起こす危険を伴うことなく、第2のセットのセンサからの反射を引き起こすことができるため、信号取得技法が簡素化される。例えば、ステップ(i)で透過される光は、第1のセットの固有波長帯域内の1つまたは複数の波長を有し得る。さらに、ステップ(v)で透過される光は、第2のセットの固有波長帯域内のピーク波長を有し得る。
【0026】
ステップ(i)は、広帯域源または狭帯域源のいずれかを使用して実行することができる。ステップ(i)での広帯域源の使用は、狭帯域源の光を段階的に増減する「スペクトル掃引」を実行する必要がないため、潜在的により効率的である。代わりに、光は、第1のセットの各センサからの反射を引き起こすと予想される波長スペクトルにわたって透過され得る。対照的に、第1のセットのセンサからの反射を発生させることなく、ステップ(v)で第2のセットのセンサに個別に対処するには、狭帯域源が必要である。同様に、異常センサが反射信号の飛行時間に従って配置されている場合、ステップ(iv)で狭帯域源が使用されるだろう。したがって、光源は、ステップ(i)で使用するための広帯域モードと、ステップ(v)及び場合によってはステップ(iv)で使用するための狭帯域モードとの間で切り替え可能であり得る。しかしながら、取得可能な信号対雑音比が改善され、より単純な(かつより安価な)検出器が使用され得るため、狭帯域源を、全体を通して使用することが好ましい。
【0027】
狭帯域光源の帯域幅は0.1nm未満である。しかしながら、好適には、狭帯域光源は単色光源である。これらの帯域幅は0.01~0.1pmである。さらに好適には、光源はレーザを含み、放射光の線幅は、好適には75GHz未満、より好適には50MHz未満である。光源は、好適には、連続波モードとパルスモードとの間で選択的に切り替えることができる。連続波モードはステップ(i)で使用することができ、パルスモードはステップ(v)で使用することができ、場合によってはステップ(iv)でも使用することができる。さらに、光源は、放射光のパルス持続時間を制御するように構成されたシャッタまたはスイッチ機構を備え得る。したがって、光源は連続波モードで動作することができ、外部シャッタまたは変調器を使用してパルスを生成することができる。
【0028】
第1及び第2のセットの各センサは、通常、センサでの測定量の変化に応じてセンサ波長が摂動されるように構成される。例えば、第1及び第2のセットの各センサは、好適には、ファイバ・ブラッグ・グレーティングを含み、この場合、各センサのセンサ波長はそのブラッグ波長である。
【0029】
装置は、第2のセットのセンサによって導波路に沿って反射された光の強度を監視するように構成された受信機をさらに含み得る。狭帯域または好適には単色光源が使用される場合、放射光の波長は既に知られている可能性があるため、反射光の波長を監視する必要はない。特に、透過光の特定の波長がセンサからのピーク反射を引き起こす場合、この波長はそのセンサのセンサ波長であると考えることができる。したがって、そのセンサでの測定量はそれに応じて推測することができ、このときに反射光の波長を測定する必要はない。したがって、受信機は、反射光の強度に基づいて測定量を監視するように構成することができる。
【0030】
分析中の測定量は、通常、温度であるが、応力またはひずみの場合もある。さらに、第2のセットの各隣接センサ間の間隔は、通常、0.5から2.0メートルの間である。
【0031】
本発明の第2の態様は、第1の態様に従う装置を使用して、導波路に沿って測定量を監視するための方法であって、方法は、
ステップ(iii)中に異常信号が検出された場合は、ステップ(i)~(iii)を実行してステップ(iv)に進むことと、
ステップ(iii)中に異常信号が検出されなかった場合は、ステップ(v)~(vii)を実行することとを含む、方法を提供する。
【0032】
例えば、初期化手順を実行する場合、最も注意することは、光導波路に沿って測定量異常を特定することであり得る。そのような測定量異常が検出された場合、適切な措置を講じることができるように測定量異常を特定することが望ましいであろう。ステップ(i)~(iv)は、例えば、測定量異常が追跡されるように、異常信号が検出されるたびに繰り返され得る。そのような測定量異常が見つからない場合でも、ステップ(v)~(vii)を実行することにより、第2のセットの各センサから貴重な測定量データを取得することができる。任意には、ステップ(i)~(iii)は、1、10、100または1000ミリ秒ごとなど、定期的に繰り返すことができる。
【0033】
ステップ(iii)は、好適には、異常信号が所定の測定量範囲内の測定量に相当するかどうかを決定することと、測定量が所定の測定量範囲内にある場合にのみステップ(iv)に進むこととを含む。所定の測定範囲は、通常、正常な動作範囲外にある測定量の所定の値に相当する。したがって、所定の測定量範囲は、所定の測定値を上回る、及び/または下回る測定量の全ての値を含む場合があり、したがって、半無限の範囲であり得る。代替的には、所定の測定量範囲は有限であり得る。例えば、ステップ(iii)は、異常信号が所定の波長範囲内(例えば、波長閾値を上回るか、または下回る)で発生するかどうかを決定し、異常信号が当該所定の波長範囲内で発生する場合にのみステップ(iv)に進むことを含み得る。任意には、ステップ(iii)が、異常信号の強度が強度閾値を超えるかどうかを決定することと、強度が強度閾値を超える場合にのみステップ(iv)に進むこととを含み得る。これは、検出された異常信号がノイズの結果ではないことを確認するのに役立つ場合がある。データ内のノイズを考慮することは、説明した異常検出技法のそれぞれで有益である。
【0034】
ステップ(iii)は、スペクトル分析技法を使用して異常信号を検出することを含み得る。好適には、ステップ(iii)のスペクトル分析技法は、測定スペクトルと目標スペクトルとの間の差に対応する測定スペクトル内の異常信号を検出することができるよう、測定スペクトルを目標スペクトルと比較することを含む。目標スペクトルは、例えば、較正プロセス中に得られた以前の測定スペクトルに相当し得る。
【0035】
代替的には、ステップ(iii)は、例えば、測定スペクトル内の特定の幅の識別可能なピーク、異常信号に相当する当該ピークを検出することによって、及び/または特定の波長範囲内から発生した測定スペクトル内の反射信号を検出することによって、目標スペクトルを参照することなく実行され得る。より一般的には、スペクトル分析技法は、光学信号強度または測定値のいずれかの所定の閾値を参照することなく、測定スペクトルの形状を分析することを含み得る。これには、ピークの識別が含まれる場合がある。スペクトル分析技法は、測定スペクトルと予想スペクトルとの間の差を表す偏位パラメータを評価し、次に偏位パラメータを閾値と比較することを含み得る。そのような偏位パラメータは、例えば、新しいピークの識別、またはピークの平均位置もしくは中心位置の移動に基づくことができる。さらに、スペクトル分析技法は、異なる時間に取得された測定スペクトルの変化を監視することをさらに含み得る。ゆえに、時系列のスペクトルを測定及び分析して、発生中の異常を検出することができる。
【0036】
好適には、ステップ(i)が、第1のセットのセンサのセンサ波長のそれぞれを含む波長範囲にわたって光を透過させることを含む。これは、広帯域光または狭帯域光のいずれかを使用して実現することができる(狭帯域光の波長が、各センサ波長を含むスペクトル範囲を網羅するように調整されている場合)。例えば、ステップ(i)は、第1のセットのセンサの各センサ波長で狭帯域光を連続して透過することを含む。このシーケンスは、異なる波長の連続パルスを含み得る。代替的には、狭帯域光の波長は、各センサ波長を含む波長の範囲にわたって連続的に調整され得る。
【0037】
好適には、ステップ(iv)は、固有波長で狭帯域光のパルスを透過することを含む。反射パルスはその後、異常センサのみから受信することができる。
【0038】
測定スペクトルを取得するために、連続波モードでレーザの形態で光源を操作し、さらに、ステップ(v)及び(iv)(該当する場合)について同レーザをパルスモードで操作することは有益である。これはまた、異常検出及び測定量サンプリングを繰り返す必要がある用途の実現要素であり、この方法は、有利には、ステップ(i)~(iii)(任意には、ステップ(iv)も)とステップ(v)~(vii)との間で迅速に交互に繰り返し切り替えることをさらに含むものであった。これは通常、外部シャッタまたは変調器の操作によって可能になるだろう。
【0039】
ステップ(vi)は、好適には、導波路に沿って反射された光の強度を監視することを含む。次に、前述の通り、監視された強度に基づいて、ステップ(v)で測定量を推定することができる。
【0040】
本発明の第3の態様は、ターゲット装置と第1の態様による装置とを含むセンサシステムを提供し、導波路は、ターゲット装置に沿った異なる位置で測定量を監視するように配置される。例えば、ターゲット装置は、流体を運ぶように構成された導管であり得る。原則として、パイプラインを含めた様々な異なる導管を使用することができる。通常、導波路が、導管からの流体の漏れを特定するように構成され、漏れは測定量異常に相当する。例えば、導管は、導波路の周囲温度及び/またはローカル環境の温度とは実質的に異なる温度で流体(液体または気体など)を運ぶように構成され得る。特に有利な配置では、導管は航空機の抽気ダクトである。代替的には、ターゲット装置は、電気ケーブルなどの電気装置であり得る。この場合、導波路は、電気装置に沿った位置にホットスポットの形態で測定量異常を特定するように構成することができる。このホットスポットは、ケーブルの絶縁破壊または別のタイプの障害の結果であり得る。
【0041】
本発明の第4の態様は、光導波路と、所与の持続時間で導波路に沿って光のパルスを透過するように構成された光源とを含むキットを提供し、光導波路は、
導波路に沿って提供される第1及び第2のセットのセンサであって、第1及び第2のセットの各センサは、測定量に対応するそれぞれのセンサ波長で導波路に沿って伝搬する光の一部分を反射するように構成される、第1及び第2のセットのセンサを含み、
第1のセットのセンサは、それらのセンサ波長に従って1つまたは複数のグループに構成され、各グループは複数のセンサを含み、それぞれのグループ内の各センサのセンサ波長は、そのグループ内の各センサが経験する測定量が等しい場合には、実質的に等しく、
第2のセット内の各隣接センサは、パルス持続時間中に導波路に沿って光が移動する距離の半分を超える距離だけ導波路に沿って離れており、各グループの隣接センサは、パルス持続時間中に導波路に沿って光が移動する距離の半分未満の距離だけ離れており、第1のセットの複数のセンサは、第2のセットの各隣接センサの間に提供され、
第1及び第2のセットは、第1及び第2のセットの各センサが経験する測定量が等しい場合に、第1のセットの各センサのセンサ波長が第2のセットの各センサのセンサ波長とは異なるように構成される。
【0042】
上記のキットは、第1の態様の装置の一部として使用するために特別に適合されている。例えば、センサは、ステップ(i)~(vii)によって説明されるような通信プロトコルに従って対処するように配置される。したがって、第4の態様は、これまでの態様を参照して説明したものと同様の利点を提供する。第4の態様の特定の利点は、導波路が、標準的なTDMシステムにおいて所与の長さの導波路に沿って達成することができるよりも、第1のセットにおいてより高い濃度のセンサを提供することである。さらに、第1及び第2のセットから選択されたセンサは、前述の技法に従って個別に対処され得る。
【0043】
通常、少なくとも1ナノ秒のパルス持続時間が適用されるが、より短いパルス持続時間も想定される。同様に、第2のセットの各センサ間の間隔は通常、少なくとも0.1メートルであるが、特にパルス持続時間が1ナノ秒未満の場合は、より短い間隔も可能である。
【0044】
態様の1つに関連して説明した各機能は、他の態様に関連して使用することもできる。
【0045】
次に、本発明の実施形態を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の一実施形態による、装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態による、方法の第1ステージを示すフロー図である。
図3】本発明の一実施形態による、方法の第2ステージを示すフロー図である。
図4】本発明の一実施形態による、共通グループ内のセンサからのスペクトル応答の例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態によって取得されたグループ応答の第1の例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による、完全な測定スペクトルの第2の例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態による、測定量異常を示す完全な測定スペクトルの第1の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、本発明の一実施形態による装置1を示す。装置1は、光源10及び検出器20を含み、これらはインタロゲータ30内に収容されている。インタロゲータ30は、メモリ(揮発性及び不揮発性の両方)及びプロセッサを含むコンピューティングシステムの形態の制御システムを含む。インタロゲータ30は、光源10及び検出器20を制御して、後に説明する方法を実行するように構成される。
【0048】
光ファイバケーブルの形態の光導波路2が提供される。導波路2は複数のセンサ3を含み、これらは、その長さに沿って分布している(明確にするために、図1では第1のセンサのみに番号が付与されている)。光源10は調整可能なレーザを含み、これは、導波路2に光学的に接続され、光のパルスを導波路2に沿って第1の方向11に放射するためのものである。光源10及び検出器20は、検出器20が第1の方向11と反対の第2の方向12でセンサ3によって反射された光を受信するように構成されるよう、導波路2の近位端に結合される。光源10からの導波路2の遠位端には、反射を抑制する手段(図示せず)が設けられ、端部反射が導波路2を伝番して検出されるのを防ぐ。
【0049】
各センサ3は、そのセンサの波長範囲(広義にはFWHMに対応)内で導波路2に沿って進む光の一部分を反射するように構成されており、ピーク反射は、センサ3が体験した測定量(この場合は温度)に従ってそれぞれのセンサ波長で発生する。通常、入射光のごく一部分が各センサ3で反射され、これは、例えば、最大で1%である。したがって、各FBGセンサ3は反射率が十分に低いので、光源10に最も近いセンサは、遠くにあるセンサを強く遮断することはない。遮断には2つの効果がある。遠方のセンサに到達する光量が減少し、信号対雑音比が低下し、遠方のセンサから見たスペクトルが歪み、見かけ上の波長シフトが生じる。これにより、推定される測定量の読み取りの精度が低下する。例えば、センサが0.18nmのFWHMで光を反射する場合、最大誤差が1℃を超える前に、1%の反射率で26個のセンサを提供することができる。代替的には、この誤差に達する前に、反射率0.5%で50個のセンサ、または反射率2%で12個のセンサを提供することができる。最大誤差は、より近い(n-1)個のセンサのセンサ波長が完全に一致する場合に、n番目のセンサで発生する。
【0050】
各センサ3は、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)3を含む。FBGはグレーティングを含み、これは、強いUVレーザ光の空間的に変化するパターンを使用して、導波路2のコアに書き込まれ、屈折率に周期的な変調を生む。これらの周期的変調は、所与の測定量に基づいて所定のブラッグ波長で導波路2に沿って伝播する光を反射する。したがって、このブラッグ波長は、前述のセンサ波長を形成する可能性がある。FBGは、異なる周期性を有するグレーティングを製造することにより、同様の環境条件下で異なるセンサ波長を有するように形成することができる。
【0051】
光源10は、0.04pmの帯域幅を有する単色光を放射するように構成される。光源10には、放射された各パルスの持続時間を制御するために使用されるシャッタ(または他の何らかのスイッチ機構)が設けられている。このシャッタは通常、100MHzで動作するソリッドステートデバイスであり、10nsのパルスを提供し、これは、約1メートルの長さに相当する。適切なシャッタの例は、組み込みのSOA(半導体光増幅器)である。代替的には、EAM(電気吸収変調器)またはLiNbO3マッハツェンダ変調器などの外部変調器を使用することができる。これらを使用して、過度のチャープがなく、均一な強度が有用な長期間にわたる短いパルスを生成することができる。変調器は、代替的には、干渉変調器、機械的シャッタ、電気光学変調器または音響光学変調器を含んでよい。
【0052】
調整可能レーザは安定した出力を有し、光導波路2を通じて所与の波長とパルス持続時間の単色パルス光を選択的に放射するように構成することができる。これらのレーザはさらに、異なるパルスが異なる波長で放射可能になるように、当該放射光の波長を変調するように構成され得る。放射パルスは、正確な信号検出を容易にするために、明確に定義された立ち上がり及び/または立ち下がりエッジを有するだろう。適切なレーザ10の例には、外部空洞レーザ、リング共振器、調整可能な分散型ブラッグ反射器レーザ及びファブリ・ペロー空洞で調整されたファイバレーザが含まれる。
【0053】
検出器20は、反射光の強度を監視するように構成され、受信した光の波長は、それぞれの放射パルスに対して光源10が調整された波長であるとしてインタロゲータ30によって予測される。しかしながら、代替的には、波長は検出器20によって直接監視されてもよい。したがって、適切な検出器の例には、分光計、干渉計及び強度検出器が含まれる。パルス中に十分なデータポイントが確実にサンプリングされるようサンプリングレートを十分に高くする必要があるため、高速で高感度な検出が使用される。光源10の柔軟なタイミング制御を使用して、異なる放射パルス間の波長(及び場合によっては、パルス持続時間)を変調し、戻りパルスの検出を送信パルスの放射に合わせて調整する。
【0054】
センサ3は、第1のセット4及び第2のセット5に分割される。第1のセット4は3つのセンサグループ、つまり、第1のグループ6、第2のグループ7、第3のグループ8を含む(しかしながら、任意の数のグループを提供することができる)。各グループのセンサは同じように製造されているため、そのグループの各センサの温度が等しい場合、それぞれのグループの各センサのセンサ波長はほぼ等しくなる(つまり、0.1nm以内に等しい)。各グループのセンサのセンサ波長は、他のグループセンサのセンサ波長とは大幅に異なる(通常、少なくとも5nm)。等しい環境条件下で、第1のグループ6の各センサ3は第1センサ波長λ1を有し、第2のグループ7の各センサ3は第2センサ波長λ2を有し、第3のグループ8の各センサ3は第3のセンサ波長λ3を有する。したがって、第1のセット4内のセンサ3のセンサ波長は、λiとしてラベル付けされ、ここで、iは、センサ3が属するそれぞれのグループの番号である。
【0055】
明確にするために、各グループ内には3つのセンサ3のみが示されている。一般的に、m個のグループが提供され、各グループはn個のセンサを含む。nとmの正確な値は、光源の波長範囲、異常が検出される測定範囲、センサ反射スペクトルのFWHM及び必要な測定量の数など、用途の詳細に応じる。例えば、nは少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも2000であり得、mは任意の自然数であり得るが、通常では少なくとも2で最大10である。
【0056】
装置1は、さらにターゲット装置を含むセンサシステムの一部を形成する。導波路2は、第1のセット4のセンサ3がターゲット装置上の位置で測定量異常の有無を検出することができるように、ターゲット装置に沿って延伸するように構成される。監視される特定の測定量は、用途によって異なる。装置1は、例えば、導管からの漏れている流体の有無を検出するために(漏れている流体が周囲環境よりも高温または低温である)、様々な異なる用途で使用される可能性がある。例えば、導管は、高温の液体または気体を運ぶパイプラインであり得る。したがって、装置1は、石油及びガス産業ならびに化学処理産業内で特定の適用性を有し得る。代替的には、ターゲット装置は、電気ケーブル配線を含んでよく、導波路は、このケーブル配線に沿った複数の異なる位置にホットスポットを配置するように構成される。別の実施形態では、導波路は、高電圧変圧器内部の絶縁破壊によって引き起こされるホットスポットを検出するように構成される。さらなる実施形態は、トンネル、橋、船及びパイプラインにおけるホットスポットまたは応力点の検出を含む。装置は一般的に軽量で柔軟性があるため、簡単な設置プロセスにより、様々な既存の設備に簡単に据え付けることができる。
【0057】
本実施形態では、ターゲット装置は、航空機の抽気ダクトの形態をとった導管である。これらは航空機の周辺のエンジンからの熱気を運び、最大50mの長さになり得る。導管に沿って漏れが発生した場合、幅25mm程度になり得る熱気流が放出される。したがって、装置は、ホットスポットの形態で異常の有無を監視するように構成される。漏れを確実に検出するために、抽気ダクトの長さに沿って高濃度のセンサ3を設けることが望ましい。したがって、第1のセット4のセンサ3は、導波路2に沿って25mm間隔で分離される。これは、前述の通り、従来のWDM/TDM方式を使用して達成することはできない。各グループからの全てのセンサは、各グループが導管の異なる領域にわたって延伸するように、空間的に共にグループ化される。例えば、第1のグループからのセンサのみが、航空機の特定の翼にわたって延伸する導管の領域に沿って設けられてもよい。これは、第1のグループに起因するものとして識別可能な異常が、航空機のそれぞれの翼のホットスポットに起因するものとして起因することを可能にする。したがって、第1のセット4のセンサ3は、(測定量異常検出が最も必要とされる限り)ターゲット装置の要求に従って構成される。
【0058】
第2のセット5は複数のセンサ3を備え、これらのセンサは、同じ環境条件下で同じセンサ波長λ4を有するように同一に製造されている。このセンサ波長λ4は、第1のセット4のいずれのセンサ波長とも異なり、通常、第1のセット4からのいずれかのセンサ波長よりも高いか、または低い。第2のセット5は、(第1のセット4の機能である)測定量異常の位置を特定するためではなく、導波路2に沿った複数の別個の位置で測定量をサンプリングするために設けられる。第2のセット5のセンサ3は、通常、第1のセット4を使用した異常量検出を必要とする「ハイリスクエリア」の外側に配置される。第2のセット5のセンサ3は、第1のセット4よりも導波路2に沿ってよりまばらに配置される。さらに、第1のセット4のセンサ3は、第2のセット5のセンサ3の間に交互に配置される。特に、第1のセット4の複数のセンサ3は、第2のセット5の各隣接センサの間に提供される。ゆえに、測定量異常は、第2のセット5を使用して測定量をサンプリングするために使用される導波路2と同じ長さに沿って検出され得る。本実施形態では、第1のセットからのセンサ3の各グループは、第2のセット5の2つの隣接センサ3の間に提供される。
【0059】
第2のセット5の各隣接センサ3は、パルス持続時間中に導波路に沿って光が移動した距離の半分を超える距離だけ導波路2に沿って離れている。これは、連続する各センサ3から反射されたパルスが検出器によって個別に分解可能であることを満たしながら達成することができる最小の間隔である。これは、第2のセット5の各センサ3がTDM技法を使用して対処可能であることを保証する。半分の係数は、放射パルスと反射パルスとの間の光の方向の変化を考慮に入れている。10nsパルスの場合、最小間隔は約1.0メートルである。最も一般的には、第2のセット5の各隣接センサ3間の間隔は、少なくとも0.1メートルであるが、より短い間隔が使用され得る。同様に、パルス持続時間は通常、少なくとも1ナノ秒であるが、例えば、光導波路が純粋かつドープされた石英ガラスで形成される場合、より短いパルス持続時間を使用することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のセット4、5の隣接センサ間に不規則な間隔を有することが望ましい場合がある。例えば、第1のセット4の各グループは、ターゲット装置の過熱しやすい部分に対応する位置に配置されてよい。同じグループからのセンサ3は、これらの部分でクラスタ化することができる。さらに、これらの部分のいくつかは他よりも長い場合があるため、これらの部分を覆う対応グループは、それに応じてより多くのセンサ3を含む場合がある。同様に、例えば、導波路がターゲット装置と密接に接触していない場合に、測定量の読み取りを取得することが望ましくない導波路2の部分が存在する場合がある。第2のセット5のセンサ3は、これらのセクションに沿って提供されない場合がある。
【0061】
第1及び第2のセット4、5からの各センサ3は、同じ長さ(通常、1~10mmの間)を有する。局所的な測定量の変化が反射の変化に変換されるよう他のタイプのセンサも使用することもできる。例えば、強度変調センサ、干渉センサ(ファブリ・ペロー空洞など)または薄膜フィルタを使用してよい。
【0062】
第1のセット4のセンサは、測定量異常を検出する可能性を高めるために、高いピーク反射率を有するように構成され得る。第2のセット5内では、各センサ3は、異なるピーク反射率を有し得る。例えば、ピーク反射率は、光源10からの距離に従って増加し得る。これにより、光源10により近いセンサ3が、(前述の通り)遮断によってさらに離れたセンサ3からのセンサ波長を測定する試みを妨害しないことが保証される。
【0063】
第2のセット5の各センサ3は、光源からの既知の距離に設けられ、個別に分解可能な反射信号を返す。したがって、第2のセット5からの1つまたは複数のセンサ3を使用して、インタロゲータ30を較正することができる。特に、光パルスの放射を引き起こすために生成される電気信号と反射パルスのその後の測定量との間の経過時間を測定して、導波路2における光の速度、及び該当する場合には任意の機械的または電気的遅延を計算することができる。
【0064】
次に、装置10を使用して本発明を実施する方法の実施形態を説明する。この方法の第1ステージには、測定量異常を特定するプロセスが含まれる。これについて、図2のフロー図を参照して説明する。最初に、シャッタが閉じられた状態で、光源10は、所定の測定量範囲(一般的に、センサ3の全作動範囲)にわたって予測される第1のグループ6内の最も低いセンサ波長に対応する第1の波長に調整される。通常、センサ波長は、100℃の温度変化ごとに最大1nmの摂動を受ける。したがって、センサ3の全作動範囲は、通常1~2nmである。
【0065】
ステップ101において、単色光は、シャッタの動作により、導波路2に沿って光源10から透過される。放出された光の波長がセンサ3のそれぞれの波長範囲内にある場合(センサ波長を中心とするセンサのFWHMに近接する)、そのセンサ3は放射光の一部分をインタロゲータ30に向かって反射し返す。放射光の波長がセンサ波長と等しい場合、最大の反射(つまり、反射光の強度が最大になる場所)が発生する。この実施形態では、各センサ3のFWHMは約0.3nmであるが、より一般的には、FWHMは、選択されたFBGのサイズに応じて、0.1から2nmの間で変動し得る。いくつかの実施形態では、0.1から0.2nmの間のFWHMで光を反射するセンサ3を使用することが望ましい場合がある。測定量の変化により発生するセンサ波長の小さな摂動は、変調されたピーク周波数として検出することができる。
【0066】
ステップ102で、反射光の強度が検出器20によって監視される。反射光の波長は、インタロゲータ30によって、反射光が検出される前に光源10が調整された波長から決定される。
【0067】
ステップ103では、シャッタが閉じた状態で、光源10によって生成された光の波長が、例えば100pmだけ増加され、次に、シャッタが操作されて、新しい波長で導波路2に沿って光を透過する。代替的には、波長が増加している間は、シャッタは開いたままで、所望の波長に到達するまで反射光は無視されてもよい。次に、任意には、シャッタを操作して、新しい波長で光パルスを透過してよい。センサ3のFWHMよりも大幅に狭い帯域幅の光源を使用し、FWHMよりも大幅に小さい間隔(例えば、FWHMの5分の1の間隔)で放射光の波長を増加させることにより、第1のグループ6の各センサ3の反射スペクトルから十分な量のサンプルが作成されるため、そのグループのセンサ波長を適切に測定することができる。ステップ101から103は、第1のグループ6に関連する所定の範囲内の最高波長に到達するまで繰り返される。これらのステップはその後、残りのグループ7、8の各々に対して繰り返される。放射光の波長は、このプロセスの間だけ、第1のセット4に対応する固有波長帯域内に留まる。この波長帯域は通常、1528から1568nmの範囲内である(電気通信業界で言及される「C帯域」に対応)。次に、各波長で反射された光の強度が集約され、第1のセット4のみのセンサ3に対応する測定スペクトルが取得される。任意には、ステップ103の一部として、測定スペクトルに曲線を適合させることができる。
【0068】
ステップ101~103は、インタロゲータ30から取得された波長情報を用いて、パルス発光または連続発光のいずれかを使用して実行することができる。代替的には、広帯域光源を使用して、波長範囲全体にわたって連続光またはパルス光を放射し、反射光の強度及び波長を、分光計を使用して監視することができる。
【0069】
信号送信及び取得ステップ(101~103)は、第1のセット4の固有波長帯域にわたって、迅速かつ1ミリ秒以下の短い時間で完了することができる。したがって、これらのステップを数回繰り返して、単一のスキャンを使用して達成できるよりも改善された信号対雑音比を有する平均測定スペクトルを構築することが有利である。
【0070】
第1のグループ6のセンサ3からの反射の形態をとる信号を含むスペクトルの第1の例が図4で示されている。各信号の波長は重なっている。各センサ3は、グレーティングの周期性が同じになるように製造されているが、図4に示す通り、(例えば)温度やひずみの変化、及び製造上のわずかなばらつきにより、異なるセンサ3間におけるそれぞれのセンサ波長はわずかに異なる。しかしながら、集約すると、センサ波長は、図5に示すグループ応答を形成し、測定スペクトルには、ほぼλ1の波長を中心とした連続ピークがある。
【0071】
図4では、各センサ3からの反射パルスの強度は、検出器20の飽和値の約25%である。これらの信号が図5のスペクトルに集約されると、検出器20が飽和状態になり、フラットトップ応答が表示される。この広い反射機能内の任意の所与のセンサ3の波長を決定することはできないが、導波路2に沿った最高温度及び最低温度の範囲は、機能の低波長エッジ及び高波長エッジを見ることで推定することができる。いくつかの実施形態では、検出器の飽和点は、光源の出力電力の100%をわずかに超えるところで発生し、これにより、強度測定量を改善することができる。クリーンな信号が取得可能な場合、任意の反射率のセンサ3を使用することができる。
【0072】
図6は、第1のセット4のグループ6、7、8のそれぞれからのグループ応答を示す測定スペクトルをさらに示している。ステップ104では、この測定スペクトルが分析される。本実施形態では、測定スペクトルは、目標スペクトルと比較され、あらゆる差はインタロゲータ30によって識別される。目標スペクトルは、測定量異常が発生しない「正常な動作条件」の下でセンサ3が提供すると予想される、メモリに保存されたスペクトル応答であってよい。目標スペクトルは、例えば、測定量異常が発生していない、以前の測定スペクトルに相当する可能性があり、較正プロセスによって生成されてよい。次に、異常を特定するために、測定スペクトルが目標スペクトルから差し引かれてよい(結果として「差スペクトル」になる)。
【0073】
代替的には、ピーク分析の方法は、グループ応答が、グループ応答と重ならない任意の他の別個のピークと共に識別される、測定スペクトルで実行されてよい。したがって、グループ応答は、測定スペクトル(任意の他のピークをさらに含む)と比較される目標スペクトルを形成する場合がある。したがって、場合によっては、異常は、光信号強度または測定値の所定の閾値を伴わないスペクトル分析によって特定されてよい。この手法では、スペクトルで表される測定量の「正常範囲」を外れる異常の偏位を表すよう偏位パラメータを定義して、この偏位パラメータを閾値と比較する。
【0074】
偏位パラメータを定義するかどうかに関わらず、スペクトル分析では、反射スペクトルの下向き傾斜部分で上向きの変曲点を探すなど、個別に分解可能なピークの検出を行うことができる。したがって、異常値を事前に知る必要はなく、異常のない配置からの保存された信号との比較は行われない。これは、初期または定期的な較正要件を簡素化し、測定量自体ではなく、物理システムの変更によって引き起こされるシステムデータのあらゆる長期ドリフトを許容するため、実際には特に有利である。
【0075】
上記の技法のいずれかと組み合わせて使用することができるさらなる別の手法とは、時間の経過に伴うスペクトルの変化を探すことで異常を特定することである。これは、記載の通り(ステップ101~103)、関連する波長のスキャンを実行し、取得したスペクトルデータを以前のスキャンのスペクトルデータと比較し(以前のスキャンデータを差し引くなど)、次に、スペクトルデータの変化特性を探すことで達成され得る。異常は、「差スペクトル」の形状(比較の結果)、強度もしくは波長の閾値を超える差スペクトルの特性、またはスキャン数に応じた差スペクトルの特性の変化率に基づいて分類することができる。差スペクトルは、任意の数の以前のスペクトルの移動平均または適切な時間加重平均から計算することができる。
【0076】
図7は、グループ応答のいずれにも重ならない固有波長λHを有するピークを示す測定スペクトルの一例を示している。この例では、第2のグループ7内の各センサ3は、「ホットスポット」の形態で温度異常を経験しているものを除いて、同様の温度である。したがって、この異常センサのセンサ波長は、(より長い波長に向かって)λHに摂動される。異常信号のFWHMは0.3nmである。グループ応答は図面では誇張されているが、測定されたスペクトルでより広い特性を示し、異常信号よりも広い波長範囲にわたっている。図7では、各グループ応答の幅は約1nmである。第2のグループ7のグループ応答及び異常信号は0.5nm離れており、これは50℃の温度差に対応する。
【0077】
次に、目標スペクトルと測定スペクトルの差を、上記の技法のいずれかを使用して調査する。ステップ105で、目標スペクトルと測定スペクトルの差に対応する生成信号の強度が「ノイズレベル」に相当する強度閾値(例えば、5%検出器飽和)を超える場合、この信号は、測定量異常が発生している異常センサから発生する異常信号に起因する。いくつかの実施形態では、異常信号は、所定の波長範囲内、例えば、波長閾値の上または下のピークについてのみ識別され、波長閾値は、温度異常が有すはずである最小温度偏差に相当する。例えば、波長の変化が少なくとも0.4nmの場合にのみ温度異常を検出するという要件を設定してよく、これは、グループ応答または事前に保存されたスペクトルに対する40℃の温度変化に相当する。他の場合では、異常は、対象の波長または強度の絶対的値に依存するのではなく、応答の偏差または変化に基づいて識別される。
【0078】
さらなる例では、ステップ105は、目標スペクトルを全く参照することなく実行してよい。例えば、測定量異常に相当する所定の波長または波長範囲で発生する測定スペクトルのピークを探すことにより、(測定量異常が存在する場合にのみ、この波長で反射が発生することに基づいて)異常信号を検出することができる。任意には、インタロゲータ30は、測定されたスペクトルにおいて閾値幅及び/または高さを有する信号のみを検出することができる。閾値強度、特性の幅、及び場合によっては特性の最大強度の保存値を除いて、比較は必要ない。
【0079】
さらに代替的には、インタロゲータ30は、異常信号の存在を検出するために、測定スペクトルの最小値(グループ応答と異常信号との間に発生する最小値)を検出するように構成され得る。代替的には、強度閾値を使用して、異常信号の有無を検出することができる。例えば、インタロゲータ30は、最小値の次に最大値を探すのではなく、正の方向の次に負の方向で閾値強度を超える信号を探すことができる。次に、これら2つの交差の中間点を計算して、異常信号のピーク波長を決定することができる。
【0080】
再び図7を参照すると、グループ応答のいずれとも重ならないλHを中心とするピークを識別することができる。この信号は、第2のセット7のグループ応答に最も近いため、第2のセット内のセンサから発信されていると見なすことができる。各グループには、インタロゲータ30のファームウェアにプログラムされた独自の強度及び波長の閾値を割り当てることができる。閾値は、インタロゲータ30上のソフトウェアを使用して制御可能であり得る。この場合、λHを中心とするピークは、第2のグループ7の強度閾値を超え、したがって、異常信号として識別される。異常信号は、導管の漏れの近位に位置し、その結果、ホットスポットを経験する第2のグループ7の異常センサから発生する反射パルスに相当する。したがって、測定量異常の位置は、第2のグループ7のセンサを含む導波路の部分内のどこかに近接し得る。次に、セットの配置に関する事前に保存された情報を使用して、漏れを含む導管の部分にこの位置を関連付けることができる。いくつかの用途では、これにより、方法がステップ109に直接進むための十分な情報が提供されてよく、このステップでは、アラームを発生させて他の予防措置を開始するかどうかに関する決定が行われる。例えば、前述の抽気の用途では、各ダクトは、それぞれが1つまたは複数のバルブによって分離された、いくつかの「分離ゾーン」を含み得る。第1のセット4からのセンサの各グループは、それぞれの分離ゾーン内に配置され得る。代替的には、分離ゾーンごとに複数のグループが存在する場合があるが、グループごとでは最大で1つの分離ゾーンが存在する。したがって、異常が発生したグループの検出は、その分離ゾーンに対応するバルブ(複数可)を閉じる決定を行うのに十分である。次に、この方法は、測定量異常のより正確な位置を見つけることができるように、ステップ106~108に進むことができる。この情報は、整備員がアクセスパネルを不必要に取り外す必要なく、より迅速に漏れを見つけるのに役立つ場合がある。本実施形態では、方法は、代わりに、測定量異常のより正確な位置を見つけることができるように、ステップ105からステップ106~108に直接進む。
【0081】
次に、異常センサのセンサ波長が、異常信号のピーク波長として識別される。対応する測定値は±5℃(またはそれ以下)の精度で計算され、このデータはその後メモリに保存される。いくつかの実施形態では、次に、異常センサの測定値が所定の測定量閾値を超える場合にのみ、方法はステップ106に進む。異常信号が検出されない場合、または測定値が所定の測定量閾値を超えない場合、方法は第2ステージ200(図3)に進み、この時点で、第2のセット5を使用して導波路に沿った位置で測定量が測定される。これは後述する。代替的には、ステップ101~105はこの時点で繰り返すことができる。
【0082】
ステップ106で、光源10によって生成された光の波長は、異常信号の固有波長に調整され、その後、光のパルスが導波路2に沿って透過される。いくつかの例では、例えば、調整が個別ステップで行われ、ピーク値が2つの調整点の間にあるため、光源10によって生成される光の波長をセンサ波長に対して正確に調整することができない場合がある。したがって、固有波長は、光源10が光を透過することができる、異常センサのセンサ波長に最も近い波長であり得る。好適には、固有波長は、反射パルスが可能な最大強度の少なくとも50%で返されるため、異常信号のFWHM内で発生する。この範囲外では反射は弱くなるが、やはり測定可能である。
【0083】
異常検出が、パルスモードでも動作可能なCW(連続波)レーザによって取得されたスペクトル分析によって実行されることは、実際には大きな利点である。このようなレーザは、CWモードの場合、信号強度、持続時間及び検出器速度の要件に対する緩和、ならびに検出器の出力のデジタルサンプリングのサンプルレート及びタイミングの点で利点を提供する。このような場合、異常の特定は、レーザを異常値に調整し、同じレーザをパルスモードに切り替えることによって実行され、この場合、タイミングの考慮のみが重要であり、返された信号の正確な振幅の測定は重要ではない。このパルスモードはまた、第2のセット7を使用して測定量を監視する第2ステージ200にあり得る。したがって、単一の光源10のみが使用され、スペクトル測定のためにCWモード(または実際にパルスモード)で動作することができ、同じ光源は、位置測定のためにパルスモードで動作する。これらの代替モードを使用すると、各機能を最適化することができる。スキャンモードと特定モード(任意のタイプの適切なレーザを使用)を迅速に交互に切り替えることで、あらゆる異常の発生を追跡することができ、タイミングモードが波長領域において異常を追跡できなくなるリスクを軽減することができる。この切り替えは、効果的に無期限に繰り返すことができる。切り替えは、好適には、異常が、例えば、スキャン/パルスサイクル間で0.5×(FBG FWHM)でピークの所定の割合を超えて移動しないのに十分な速さで実行される。
【0084】
ステップ107で、反射パルスの飛行時間がインタロゲータ30によって監視される。異常センサの位置(異常信号はここから発生する)は、ステップ108で、d=ct/2nを使用して飛行時間から計算され、ここで、dはインタロゲータ30からの距離、cは真空中の光速であり、tはパルスが光源10によって放射されてから反射パルスが検出器20によって検出されるまでの経過時間(つまり、「飛行時間」)であり、nは導波路2の実効屈折率である。この式に従って計算された距離は、次に、結果的に測定量異常の位置でもある異常センサの位置を決定するために、導波路2の配置に関する事前に保存されたデータと比較される。例えば、導波路2が車両に設置されている場合、計算された距離は、測定量異常が検出された車両内の特定の位置に相当し得る(通常、±0.5mの精度)。任意には、センサ3の分布に関する事前に保存された情報をさらに使用して、異常センサの位置をより正確に決定することができる。
【0085】
次に、方法はステップ109に進み、ここでインタロゲータ30は、例えば、アラームをトリガする出力信号を発行するかどうかを決定する。例えば、測定値は、導波路2に沿ったその位置に固有の閾値と比較され得る。抽気の用途の場合、正常な動作温度範囲は-55~125℃であり、測定異常時に経験する可能性のある温度は300℃にもなる可能性がある。実際には、閾値は予想される最大動作温度よりも20℃高くなる場合がある。インタロゲータ30がアラームを発するべきであると判断した場合、出力信号が生成され、インタロゲータ30に電気的に接続されたユーザインターフェース(図示せず)でアラームがトリガされる。アラームは、ユーザに測定量異常の位置を通知し、任意には、測定値自体(例えば、ホットスポットの温度)を通知し、ユーザはこれに応じて行動することができる。このデータは、インタロゲータ30のメモリに保存される。任意には、アラームをトリガする出力信号は、ステップ106で異常信号が検出された直後に生成され得る。他の実施形態では、制御システム(インタロゲータの一部を形成し得るか、または個別のコンピューティングシステムに相当する)は、出力信号に応答して自動的にアクションを実行することができ、例えば、異常センサの位置に相当するターゲット装置のセクションに消火器を作動させることができる。代替的には、制御システムは、出力信号に応じてターゲット装置の動作を変更することができる。
【0086】
次に、この方法はステップ110に進み、ここでステップ101に戻り、測定量異常を検出するプロセスが繰り返される。したがって、測定量異常の有無は、そのような異常が検出されなくなるまで追跡することができる。この時点で、方法はステップ105から第2ステージ200に進む(図3)。代替的には、方法は、ステップ109から第2ステージ200に直接進むことができる。
【0087】
インタロゲータ30は、例えば、ファイバの破損またはコネクタの故障に起因する障害の有無を判断するように構成され得る。これは、例えば、ステップ104で測定スペクトルを監視して、以前に保存されたスペクトルと比較して、上昇した広帯域後方反射レベルの有無、または反射信号の著しい損失を検出することによって達成され得る。以前に保存されたスペクトルは、例えば、以前の操作スキャンから最近取得された測定スペクトルである可能性がある。代替的には、保存されたスペクトルではなく、予想される反射レベルに関する事前に保存された情報を使用して、障害を検出することができる。障害が検出された場合、光源10は、センサ波長外の波長に調整されてよく、光の1つまたは複数のパルスが放射され得る。以前のように反射信号の飛行時間を計算することにより、障害の位置を特定することができる。この位置は報告されてメモリに保存され、後にメンテナンス中に修理される。インタロゲータ30での高速信号処理により、装置は、スキャンの結果及びシステムの状態を10から100Hzの速度で報告することができる。
【0088】
次に、図3のフロー図を参照して、第2ステージ200について説明する。この方法は、ステップ201で始まり、ここで調整可能なレーザ10内で生成される単色光の波長が、センサの第2のセット5に関連する固有波長帯域内の波長に設定される。この固有波長帯域は、装置10の正常な動作範囲にわたって第2のセット5のセンサからの反射が予想される波長の範囲に相当する。第1のセットのセンサ3のいずれからの反射もこれらの波長では予測されない。第2のセット5の固有波長帯域は、第1のセット4の固有波長帯域とは重ならない。しかしながら、第2のセット5の固有波長帯域はまた、前述のC帯域の内側にあり得る。
【0089】
ステップ202では、検出器20は、第2のセット5内から最も近い(つまり、第1の)センサから反射された光に相当するパルスが光源10によって放射された後、一定の時間ウィンドウの間だけ光を監視するようにインタロゲータ30によって設定される。検出器20のゲインレベル(つまり、信号増幅)もまた、TDMの標準であるように、このセンサに関連するレベルに最初に設定される。ステップ203で、第1のパルス列が導波路2に放射される。パルス列は、第2のセット5の個別波長帯域内にある異なる波長の複数の個別パルスを含む。第1のパルスは、通常、第2のセット5に起因する固有波長帯域の最小波長に等しい波長を有する。第1のパルス列内の単色光の後続の各パルスの波長は、固有波長帯域に広がるように100pmずつ増加し、50パルスで固有帯域内の最大波長に達する。代替の実施形態では、第2のセット5の固有波長帯域は、(各パルス間のより大きな波長間隔で)20個のパルスのみに広がることができる。
【0090】
各パルス間の波長間隔は、センサの波長を計算するために必要なスペクトル分解能によって決定されるため、処理技法及びセンサ3のFWHMによって異なる。各放射パルス間の最小時間間隔は、インタロゲータ30と第2のセット5の最後のセンサ3(導波路2に沿って測定)との間の距離によって決定される。特に、第2のセット5の最も遠いセンサ3からの反射は、次のパルスからの最初の反射の前にインタロゲータ30に戻ることが望ましい。例えば、インタロゲータ30から100メートル離れた最も遠いセンサを有する標準的な光ファイバの場合、反射パルスの最大往復移動時間は約1マイクロ秒である。したがって、連続する各パルス放射の間に、少なくとも1マイクロ秒の遅延を使用する必要がある。
【0091】
第1のセンサから反射された光の強度は、パルス放射中または放射後のいずれかで、ステップ204で(ステップ202の検出器設定に従って)監視される。次に、ステップ202から204が、第2のセット5内の残りのセンサのそれぞれについて繰り返され、信号の読み取りが各センサについて別々に行われる。代替の実施形態では、ステップ202を回避することができ、次に、反射光を迅速に連続してサンプリングし、反射パルスの次数または強度に従って各反射が返されるセンサを識別することによって、ステップ204を実施することができる。
【0092】
次に、方法はステップ205に進み、その時点で、所与のセンサ3に関連する各「タイムスロット」について検出器20によって取得されたデータに対するスペクトルがプロットされる。次に、取得されたスペクトルに対してステップ206でピーク検出の方法が実行され、反射光の強度から各センサ3のセンサ波長を推測する。次に、第2のセット5の各センサ3での測定量(通常は温度)が、それぞれのセンサ波長に基づいて、ステップ207でインタロゲータ30によって計算される。次に、この出力は、外部デバイス(図示せず)を介してユーザに伝達される。
【0093】
さらなる実施形態では、前述の実施形態のいずれかで説明した光源及び導波路を含むキットを提供することができ、ここで各グループの隣接センサは、パルス持続時間中に導波路に沿って光が移動する距離の半分未満の距離だけ離れている。このようなキットは、前述のホットスポット検出技法での使用に適しており、対応する利点を共有するだろう。
【0094】
したがって、高濃度のセンサを使用して測定量異常を検出することと、他の別個の位置で測定量自体を監視することの両方に第1及び第2のセットのセンサを使用することは、従来技術に比べて大きな利点を提供する。したがって、この装置は、ターゲット装置から貴重な動作データを抽出するための手段として使用することができる。装置は、柔軟で、軽量で、安価に設置することができる。さらに、光センサの使用により、前述の通り、装置は様々な異なる用途に対して適合する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7