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  • 特許-異方性結合磁石およびその作製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】異方性結合磁石およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20230525BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H01F1/057 160
H01F1/057 180
H01F41/02 G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021085572
(22)【出願日】2021-05-20
(65)【公開番号】P2021190707
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】202010476262.0
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519229622
【氏名又は名称】有研稀土高技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRIREM HI-TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】North of Gushan South Road And East Of Happiness Road,Hi-tech industrial zone,Yanjiao Town,Sanhe City, Langfang City, Hebei 065200, China
(73)【特許権者】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521180382
【氏名又は名称】有研稀土(栄成)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Grirem (Rongcheng) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Songjiazhuang Village, Renhe Town, Rongcheng City, Weihai City, Shandong, 264306, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】羅 陽
(72)【発明者】
【氏名】楊 遠飛
(72)【発明者】
【氏名】王 子龍
(72)【発明者】
【氏名】于 敦波
(72)【発明者】
【氏名】張 洪濱
(72)【発明者】
【氏名】謝 佳君
(72)【発明者】
【氏名】胡 州
(72)【発明者】
【氏名】王 仲凱
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-186027(JP,A)
【文献】特開平03-235311(JP,A)
【文献】特開平04-163905(JP,A)
【文献】特開平10-055929(JP,A)
【文献】特開2009-027847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-T-B型永久磁石粉末を含み、Rは1つ以上の希土類元素から選択され、TはFeまたはFeCoおよび少量の遷移金属であり、Bはホウ素であり、
Rの含有量は28~31wt.%であり、Bの含有量は0.9~1.1wt.%であり、残りはTであり、
複数の異なる予備成形体をプレスすることによって形成され、プレス方向での密度差が2%未満であり、
前記複数の異なる予備成形体は第1の予備成形体および第2の予備成形体を含み、前記第1の予備成形体は磁気性能が低い複合磁性粉末から調製され、前記第2の予備成形体は磁気性能が高い複合磁性粉末から調製され、2種類の複合磁性粉末中のR-T-B型永磁性粉末の残留磁気Brの比はBrHigh/BrLow=1.00~1.20、BrHighは磁気性能が高い複合磁性粉末の残留磁気を示し、BrLowは磁気性能が低い複合磁性粉末の残留磁気を示す、ことを特徴とする異方性結合磁石。
【請求項2】
前記複数の異なる予備成形体は、異なる密度を有する予備成形体を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の異方性結合磁石。
【請求項3】
Rは、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Lu中の1つまたは2つ以上の元素であ、ことを特徴とする請求項1または2に記載の異方性結合磁石。
【請求項4】
前記結合磁石は、アスペクト比が0.6より大きく、の厚さが1mmより大き結合磁気リングである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の異方性結合磁石。
【請求項5】
結合磁石の原料の準備:前記原料はR-T-B型永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダー、カップリング剤および潤滑剤を含み、ここで、R-T-B型永久磁石粉末の重量含有量は100であり、バインダーの重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の1.0%~6.0%、ップリング剤の重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の0.05%~1.0%、滑剤の重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の0.05%~2.0%あるステップ1と、
混合:前記原料中のR-T-B型永久磁石粉末と前記熱硬化性樹脂バインダー、カップリング剤および潤滑剤を均一に混合して、複合磁性粉末を得るステップ2と、
室温での予備成形:異なる磁気性能を有する複数種類の乾燥複合磁性粉末を第1の金型に入れて磁場Hに配置し、プレス成形してそれぞれ複数種類の異なる予備成形体を得、プレス圧力は100~600MPaであり、前記磁場Hは0.15Tより小さく、プレス温度は室温であるステップ3と、
温間プレスおよび磁場配向成形:複数の異なる予備成形体を積み重ねて第2の金型に入れて磁場Hに配置し、温間プレス成形および配向を行ったらプレスして、その後、減磁、冷却、離型を行い、温間プレスおよび磁場配向成形された異方性結合磁石を得、ここで、前記磁場強度Hは0.6~3Tであり、プレス圧力は300~1000MPaであり、成形の温度は60~200℃であるステップ4と、
硬化:前記温間プレスおよび磁場配向成形された異方性結合磁石を一定の温度に加熱して保温し、保温温度は100~200℃、温時間は0.5~2時間であるステップ5を含み、
前記複数の異なる予備成形体は第1の予備成形体および第2の予備成形体を含み、前記第1の予備成形体は磁気性能が低い複合磁性粉末から調製され、前記第2の予備成形体は磁気性能が高い複合磁性粉末から調製され、2種類の複合磁性粉末中のR-T-B型永磁性粉末の残留磁気Brの比はBrHigh/BrLow=1.00~1.20、BrHighは磁気性能が高い複合磁性粉末の残留磁気を示し、BrLowは磁気性能が低い複合磁性粉末の残留磁気を示す、ことを特徴とする異方性結合磁石の作製方法。
【請求項6】
前記ステップ2は、
上記ステップ1で計量されたカップリング剤を対応する有機溶媒に溶解し、R-T-B型永久磁石粉末と均一に混合し、有機溶媒が揮発により除去された後、カップリング剤は永久磁石粉末の表面を均一に被覆し、計量されたバインダー、潤滑剤を対応する有機溶媒に溶解し、カップリング剤を被覆するR-T-B型永久磁石粉末と均一に混合し、有機溶媒が除去された後、前記結合磁石の作製に必要する複合磁性粉末を得るステップを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2種類の複合磁性粉末中のR-T-B型永磁性粉末の残留磁気Brの比はBrHigh/BrLow=1.00~1.08である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の予備成形体の密度は前記第2の予備成形体の密度より小さい、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ4において、前記の複数の異なる予備成形体を第2の金型に積み重ねて配置することは、第2の予備成形体を中央に配置し、第1の予備成形体を両端に配置し、中央の第2の予備成形体の長さは両端の第1の予備成形体の長さより小さい、ことを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ4において、前記の複数の異なる予備成形体を第2の金型に積み重ねて配置することは、第2の予備成形体を中央に配置し、第1の予備成形体を周辺に配置する、ことを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記の複数の異なる予備成形体を第2の金型に積み重ねて配置することは、中央から両端へ配列された予備成形体の密度および/または磁気性能は徐々に低下し、または、中央から周辺へ配列された予備成形体の密度および/または磁気性能は徐々に低下する、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ4において、予備成形体と温間プレスおよび磁場配向成形金型の間のヤング率は0.5~40%ある、ことを特徴とする請求項5から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の予備成形体および第2の予備成形体は同じ形状を有する磁気シリンダまたは磁気リングであり、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は1:1~10:1である、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
Rは、NdまたはPrNdである、ことを特徴とする請求項3に記載の異方性結合磁石。
【請求項15】
前記結合磁石は、アスペクト比が1.0~10であり、壁の厚さが1~20mmである結合磁気リングである、ことを特徴とする請求項4に記載の異方性結合磁石。
【請求項16】
前記結合磁石は、アスペクト比が2~8であり、壁の厚さが1~5mmである結合磁気リングである、ことを特徴とする請求項15に記載の異方性結合磁石。
【請求項17】
前記ステップ1において、前記バインダーの重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の2.5%~3.5%であり、前記カップリング剤の重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の0.1%~0.3%であり、前記潤滑剤の重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の0.05%~0.5%であり、
前記ステップ5において、保温温度は120~180℃である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ4において、予備成形体と温間プレスおよび磁場配向成形金型の間のヤング率は3.5%~25%である、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合磁石材料の技術分野に関し、具体的には、異方性結合磁石およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結合永久磁石は、良好な加工性および高い形状自由度および寸法精度を有し、二次加工を必要とせず、したがって、現代のハイテク製品の不可欠な重要な要素となっており、電子情報、コンピューター、モータ、自動車などの分野で広く使用されている。異方性結合磁石は磁気特性が優れており、電子製品の小型化、効率化、省エネ、軽量化を効果的に推進できるため、結合永久磁石の開発トレンドとなっている。
【0003】
結合永久磁石の成形方法には、圧縮成形、カレンダー成形、射出成形および押出成形が含まれ、圧縮成形によって形成された磁石が最も高い磁気特性を持っているので、圧縮成形は最も広く使われている。
【0004】
圧縮成形によって熱硬化性樹脂から異方性結合磁石を作製する基本的なプロセスの流れは以下の通りである。
【0005】
磁性粉末をバインダー、添加剤と混合して複合磁性粉末を得る→配向およびプレス→減磁→硬化→防食処理→性能試験を行い、添加剤は潤滑剤、カップリング剤などであり、バインダーは一般にエポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂である。配向成形プロセスには、室温成形、温間プレス成形および多段階成形の3つの形態がある。室温で成形して作製した異方性結合磁石は、磁石密度が低く配向度が低いため、磁気性能が低い。温間プレス成形の過程で、高温によりバインダーが軟化し、溶融して粘稠な流体状態になり、その低粘度が一定の潤滑作用を発揮し、配向時の磁性粉末粒子の回転抵抗を低減し、磁性粉末と金型壁間の摩擦抵抗を低減する目的を達成し、さらに磁石の配向度および密度を効果的に高め、現在、温間プレス成形技術は、異方性結合磁石の作製に広く使用されている。したがって、配向度および密度を高めることは異方性結合永久磁石を作製するための鍵となっている。
【0006】
従来技術において、CN101599333Aは、乾式プレスによって異方性多重極磁気リングを製造する方法を提供し、磁性粉末を湿式粉砕し、乾燥した磁性粉末に複数のバインダーおよび潤滑剤を加え、次に予備圧縮および予備磁化し、高速粉砕機で混合して、最後に径方向磁場で前記粉末の両面アイソスタティック成形が行われる。
【0007】
CN101814368Aは、異方性磁石の作製方法を提供し、粉末の粒子径を調整し、第1の混合物は粒子径が20μmを超え150μm以下の第1の磁性粉末、異方性結合磁石中の添加量が2.0wt%未満の熱硬化性樹脂および第1の添加剤で構成され、第2の混合物は粒子径が1μm以上20μm以下の第2の磁性粉末および第2の添加剤で構成され、磁石密度および磁気性能を向上させるために使用されるが、磁石中心部の磁場強度と端部の磁場強度の差が5%以上である。
【0008】
CN103489621Aは、圧縮異方性結合磁石の作製方法を提供し、2段階成形プロセスを採用し、つまり、室温予備成形および配向および緻密化温間プレス成形プロセスによって異方性結合磁石を作製する方法を提供し、配向および緻密化の際に、高さ方向の磁場配向と密度が不均一になる現象が存在し、中央が低く両端が高い現象が現れる。
【0009】
CN107393709Aは、冷間静水圧プレスによって高配向度の異方性結合磁石を作製する方法を提供し、熱硬化性樹脂および硬化剤をバインダーに調製し、異方性結合磁性粉末をバインダー溶液に加え、十分に攪拌した後シリコーン型に注入して真空シールし、1.5T~2Tの磁場で配向を行った後、冷間静水圧プレス成形によって磁石を作製する。
【0010】
工業生産では、高アスペクト比を有する磁気リングの場合、従来の磁性粉末を高温磁場キャビティへ充填する技術は、キャビティ中の磁性粉末の高さが高く、高さ方向での磁場配向が不均一になり、また高温で充填する時混合磁性粉末が加熱され、磁性粉末が壁に付着する現象が起こりやすく、充填の均一性を確保することが困難であり、磁石の磁気性能の均一性および寸法精度に悪影響を与える。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、高アスペクト比の磁石を作製する過程で軸方向の中央密度が低く両端または周辺密度が高く、性能が不均一になる問題を解決するために、複数の磁石を積み重ねる方法を採用し、中央の性能が高く、両端または周辺の性能が低く、プレス過程で密度差による性能差を補助して、磁石の軸方向性能の均一性を改善することである。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を採用する。
【0013】
本発明の第1側面は異方性結合磁石を提供し、R-T-B型永久磁石粉末を含み、Rは1つ以上の希土類元素から選択され、TはFeまたはFeCoおよび少量の遷移金属であり、Bはホウ素であり、
ここで、Rの含有量は28~31wt.%であり、Bの含有量は0.9~1.1wt.%であり、残りはTであり、
前記の異方性結合磁石は複数の異なる予備成形体プレスによって形成され、プレス方向の密度差が2%未満である。
【0014】
さらに、前記複数の異なる予備成形体は、異なる磁気性能および/または密度を有する予備成形体を含む。
【0015】
さらに、RはY、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Lu中の1つまたは2つ以上の元素から選択され、好ましくはNdまたはPrNdである。
【0016】
さらに、前記結合磁石は結合磁気リングであり、結合磁気リングのアスペクト比が0.6より大きく、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.2~2.5であり、壁の厚さが1mmより大きく、好ましくは1~20mm、より好ましくは1~5mmである。
【0017】
本発明の第2側面は、以下のステップを含む異方性結合磁石の作製方法を提供する。
【0018】
ステップ1、結合磁石の原料の準備:前記原料はR-T-B型永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダー、カップリング剤および潤滑剤を含み、ここで、R-T-B型永久磁石粉末の重量含有量は100であり、バインダーの重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の1.0%~6.0%、好ましくは2.5%~3.5%であり、カップリング剤の重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の0.05%~1.0%、好ましくは0.1%~0.3%であり、潤滑剤の重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の0.05%~2.0%、好ましくは0.05%~0.50%である。
【0019】
ステップ2、混合:前記原料中のR-T-B型永久磁石粉末を前記熱硬化性樹脂バインダー、カップリング剤および潤滑剤と均一に混合して、複合磁性粉末を得る。
【0020】
ステップ3、室温での予備成形:異なる磁気性能を有する複数種類の乾燥複合磁性粉末を第1の金型に入れ、磁場Hに配置しプレス成形して、それぞれ複数種類の異なる予備成形体を得、プレス圧力は100~600MPaであり、前記磁場Hは0.15Tより小さく、プレス温度は室温である。
【0021】
ステップ4、温間プレスおよび磁場配向成形:複数の異なる予備成形体を積み重ねて第2の金型に入れて磁場Hに配置し、温間プレス成形および配向を行ったらプレスして、その後、減磁、冷却、離型を行い、温間プレスおよび磁場配向成形された異方性結合磁石を得、ここで、前記磁場強度Hは0.6~3Tであり、プレス圧力は300~1000MPaであり、成形の温度は60~200℃である。
【0022】
ステップ5、硬化:前記温間プレスおよび磁場配向成形された異方性結合磁石を一定の温度に加熱して保温し、保温温度は100~200℃、好ましくは120~180℃であり、保温時間は0.5~2時間である。
【0023】
さらに、前記ステップ2は以下を含む。
【0024】
上記ステップで計量されたカップリング剤を対応する有機溶媒に溶解し、R-T-B型永久磁石粉末と均一に混合し、有機溶媒が揮発により除去された後、カップリング剤は永久磁石粉末の表面を均一に被覆し、計量されたバインダー、潤滑剤を対応する有機溶媒に溶解し、カップリング剤で被覆されたR-T-B型永久磁石粉末と均一に混合し、有機溶媒が除去された後、前記結合磁石の作製に必要する複合磁性粉末を得る。
【0025】
さらに、前記複数種類の異なる予備成形体は第1の予備成形体および第2の予備成形体を含み、前記第1の予備成形体は磁気性能が低い複合磁性粉末から調製され、前記第2の予備成形体は磁気性能が高い複合磁性粉末から調製され、2種類の複合磁性粉末中のR-T-B型永磁性粉末の残留磁気Brの比はBrHigh/BrLow=1.00~1.08である。
【0026】
さらに、前記複数種類の異なる予備成形体は第1の予備成形体および第2の予備成形体を含み、前記第1の予備成形体の密度は前記第2の予備成形体の密度より小さい。
【0027】
さらに、前記ステップ4において、前記の複数の異なる予備成形体を第2の金型に積み重ねて配置することは以下を含む:第2の予備成形体を中央に配置し、第1の予備成形体を両端に配置し、中央の第2の予備成形体の長さは両端の第1の予備成形体の長さより小さい。
【0028】
さらに、前記ステップ4において、前記の複数の異なる予備成形体を第2の金型に積み重ねて配置することは以下を含む:第2の予備成形体を中央に配置し、第1の予備成形体を周辺に配置する。
【0029】
さらに、前記の複数の異なる予備成形体を第2の金型に積み重ねて配置することは以下を含む:中央から両端へ配列された予備成形体の密度および/または磁気性能は徐々に低下し、または、中央から周辺へ配列された予備成形体の密度および/または磁気性能は徐々に低下する。
【0030】
さらに、前記ステップ4において、予備成形体と温間プレスおよび磁場配向成形金型の間のヤング率は0.5~40%、好ましくは3.5%~25%である。
【0031】
さらに、前記第1の予備成形体および第2の予備成形体は同じ形状を有する磁気シリンダまたは磁気リングであり、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は1:1~10:1である。
【0032】
要約すると、本発明によって提供される異方性結合磁石およびその作製方法は、異なる磁気性能および/または密度を有する磁石を積み重ねて、中央の磁石は高い性能を有し、両端および/または周辺の磁石は低い性能を有し、プレス過程で密度差による性能差を補助し、軸方向の磁石の性能の均一性を向上させることができる。この方法は、配向および緻密化過程で高さ方向の磁場配向および密度が不均一になる現象、および中央が低く両端が高い現象を回避する。この方法で作製した異方性結合磁石は、プレス方向の密度差が2%未満であるという特徴を有し、磁石の配向度および密度、ならびに磁石磁気性能の均一性および寸法精度を効果的に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施例の異方性結合磁石の作製方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明における目的、技術的解決策および利点のより明確な説明のために、本発明は、特定の実施形態を参照して、以下でさらに詳細に説明される。説明は単なる例示であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。また、以下の説明では、本発明の概念を不必要に混乱させないために、周知の構造および技術の説明を省略している。
【0035】
本発明の第1側面は異方性希土類結合磁石を提供する。この結合磁石はHDDR法によって作製されたR-T-B型永久磁石粉末を含み、RはYを含む1つ以上の希土類元素であり、TはFeまたはFeCoおよび少量の遷移金属であり、ここで、Rの含有量は28~31wt.%であり、Bの含有量は0.9~1.1wt.%であり、残りはTであり、前記異方性結合磁石は複数の異なる予備成形体プレスによって形成され、結合磁石のアスペクト比が0.6より大きく、壁の厚さが1mmより大きく、結合磁気リングのプレス方向の密度差が2%未満である。
【0036】
さらに、複数の異なる予備成形体は異なる磁気性能および/または密度を有する予備成形体を含む。
【0037】
さらに、本発明のR-T-B型永久磁石粉末を構成する希土類元素Rは、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択された1つまたは2つ以上であり、コスト、磁気特性の点から、好ましくはNdまたはPrNdを使用する。
【0038】
さらに、本発明のR-T-B型稀土磁石粉末を構成する元素TはFeまたはFeCoである。この粉末の平均組成のTの含有量は、この粉末を構成する他の元素を除いた残りの量である。なお、Feの代替元素としてCoを添加することでキュリー温度を上げることができるが、Coが多すぎると粉末の残留磁束密度が低下し、eの代替元素として遷移元素を添加することで残留磁束密度Brを増加させることができるが、遷移元素が多すぎると、HDDRプロセスでの水素化反応が不動態化され、磁気特性に影響を及ぼす。
【0039】
さらに、この結合磁石は多くの形状を有し得、以下、結合磁気リングを例としてさらに説明するが、この結合磁気リングに限定されない。結合磁気リングの密度はその磁気性能を決定し、アスペクト比の磁気リングの場合、磁気リングのプレスプロセスによって軸方向の密度の差があり、密度の差により磁気リングの軸方向の磁気性が不均一になり、磁気リング組立後のモータの出力安定性に影響を与え、本発明の結合磁気リングのプレス方向の密度差が2%未満であるため、磁気リングの性能均一性および組立後モータの出力安定性を十分に保証する。本発明による結合磁気リングのアスペクト比が0.6より大きく、好ましくは1.0~10、より好ましくは2~8であり、小さいアスペクト比(0.6未満)の磁気リングの場合、プレス方向の密度差が小さく、従来技術で達成することができるからである。磁気リングのアスペクト比が大きすぎると(10を超える)、磁気リングの成形および後の組立プロセスがより困難になる。
【0040】
さらに、本発明による結合磁気リングの壁の厚さが1mmより大きく、好ましくは1~20mm、より好ましくは1~5mmであり、磁気リングの壁の厚さが薄すぎると(1mm未満)、磁気リング作製プロセスが非常に困難であり、損傷しやすく、磁気リングの壁の厚さが厚すぎると(20mmを超える)、径方向のプレスが行われず、結合強度が弱すぎるため、壁の厚さが厚すぎると磁気リングの一体成形に不利であり、同時に壁の厚さが厚すぎると軽量化の傾向に適合せず、その組立プロセスおよび応用分野が制限される。
【0041】
本発明の第2側面は、上記の異方性結合磁石を作製するための異方性結合磁石の作製方法を提供する。2段階成形プロセスを採用し、つまり、室温予備成形および配向温間プレス成形によって異方性結合磁気リング(本発明の以下において、異方性結合磁石の具体的な実施例として磁気リングを使用するが、磁気リング構造に限定されない)を作製する方法を提供し、室温予備成形プロセスによって異なる性能を有する複数の予備成形磁気リングを作製し、配向温間プレス成形プロセスでは、複数の予備成形磁気リングを積み重ねてプレスし、中央の磁気リング性能が高く、両端の性能が低い。具体的には、図1に示すように、以下のプロセス過程を含む。
【0042】
ステップ1、結合磁気リングの原料を準備する:
結合磁気リングの原料は、R-T-B型永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダー、カップリング剤および潤滑剤などを含む。
【0043】
本発明のR-T-B型永久磁石粉末を構成する希土類元素Rは、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Lu中の1つまたは2つ以上であり得、コスト、磁気特性の点から、好ましくはNdまたはPrNdを使用する。R-T-B型稀土磁石粉末を構成する元素TはFeまたはFeCoであり、熱硬化性樹脂バインダーはエポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であり、カップリング剤はシランカップリング剤、チタン酸塩などである。潤滑剤はパラフィンワックス、ステアリン酸塩、シリコーンオイルなどである。
【0044】
R-T-B型永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、バインダーの重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の1.0%~6.0%、好ましくは2.5%~3.5%であり、カップリング剤の重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の0.05%~1.0%、好ましくは0.1%~0.3%であり、潤滑剤の重量含有量はR-T-B型永久磁石粉末の0.05%~2.0%、好ましくは0.05%~0.50%である。
【0045】
ステップ2、混合:前記原料中のR-T-B型永久磁石粉末を前記熱硬化性樹脂バインダー、カップリング剤および潤滑剤と均一に混合して、複合磁性粉末を得る。
具体的には、上記ステップで計量されたカップリング剤を対応する有機溶媒に溶解し、R-T-B型永久磁石粉末と均一に混合し、有機溶媒が揮発により除去された後、カップリング剤は異方性磁性粉末の表面を均一に被覆し、その後計量されたバインダー、潤滑剤を対応する溶媒に溶解し、カップリング剤で被覆されたR-T-B型永久磁石粉末と均一に混合し、有機溶媒が除去された後、結合磁石を作製するための複合磁性粉末を得ることができる。
【0046】
異なる磁気性能および/または密度を有する複数種類の複合磁性粉末を作製する。
ステップ3、室温予備成形:
複数種類の異なる乾燥複合磁性粉末をキャビティに入れ磁場Hに配置しプレス成形して複数種類の異なる予備成形体を得、前記プレス圧力は100~600MPaであり、前記磁場Hは0.15Tより小さく、前記成形の温度は室温である。
【0047】
前記予備成形体の密度は3.6~5.5g/cmであり、予備成形体の強度は密度の低下に従って低下し、密度が3.6g/cm未満の場合、予備成形体の強度が低く、輸送過程でそのまま維持することができないが、密度が5.5g/cmを超えると、後の温間プレスおよび磁場配向過程で高い配向度を得ることが困難になるからである。
【0048】
具体的には、前記予備成形体は、磁気性能が低いR-T-B型永久磁石粉末から作製した複合磁性粉末(Br:12.5~13.0kGs)、磁気性能が高いR-T-B型永久磁石粉末から作製した複合磁性粉末(Br:13.0~13.5kGs)の2種類があり、2種類の複合磁性粉末中のR-T-B型永磁性粉末のBrの比はBrHigh/BrLow=1.00~1.20、好ましくは1.00~1.08である。
【0049】
具体的には、前記予備成形体は、第1の予備成形体および第2の予備成形体の2種類を含み、前記第1の予備成形体の密度は前記第2の予備成形体の密度より小さい。
【0050】
さらに、第1の予備成形体および第2の予備成形体は同じ形状を有する磁気シリンダまたは磁気リングであり、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は1:1~10:1である。
【0051】
ステップ4、温間プレスおよび磁場配向成形:
複数の離型された異なる予備成形体を積み重ねて別の金型に入れ磁場Hに配置して温間プレス成形および配向し、高い性能を有する成形体は中央に配置され、低い性能を有する成形体は両端に配置され、または者高い性能を有する成形体は中央に配置され、低い性能を有する成形体は周辺に配置され、再びプレスを行う。具体的には、中央から両端へ配列された予備成形体の密度および/または磁気性能は徐々に低下し、または、中央から周辺へ配列された予備成形体の密度および/または磁気性能は徐々に低下する。
【0052】
前記の予備成形体は積み重ねる過程で磁力によって互いに引き付け合うように配置される。
【0053】
前記予備成形体の積み重ねる過程で、中央予備成形体の長さは上下予備成形体より小さく、具体的には、中央予備成形体の長さは両端の予備成形体の長さより短くなる。
【0054】
ここで、前記磁場強度Hは0.6~3Tであり、プレス圧力は300~1000MPaであり、成形の温度は60~200℃であり、ヤング率は0.5~40%であり、2段階法の操作過程および磁気性能向上の点から、予備成形体と温間プレスおよび磁場配向成形金型間の間隙は3.5%~25%であることが好ましい。
【0055】
その後、減磁、冷却、離型を行って異方性結合磁気リングを得、減磁方法は交流パルス減磁または逆方向パルス減磁の1つである。
【0056】
ステップ5、硬化:
硬化プロセスは以下の通りである:最終成形体を一定の温度に加熱して保温し、結合磁気リングの強度を一層高め、ここで、保温温度は一般に100~200℃、好ましくは120~180℃であり、保温時間は一般に0.5~2時間であるが、磁気リングの寸法に応じて適切に調整すればよい。
【0057】
以下、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されない。
【0058】
実施例1
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0059】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の3%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0060】
(2)混合
計量されたシランを有機溶媒であるアセトンに溶解し、上記の2バッチのNdFeB異方性永久磁石粉末とともに真空混合攪拌機に配置し、均一に混合して、アセトンが揮発した後、シランが磁性粉末の表面を均一に被覆し、次に計量されたエポキシ樹脂、およびステアリン酸亜鉛をそれぞれアセトンに溶解し、シランで被覆されたNdFeB異方性永久磁石粉末と均一に混合し、アセトンが揮発した後、異なる性能を有する2バッチの結合磁石用の複合磁性粉末を作製することができる。
【0061】
(3)室温予備成形
上記で作製された2種類の複合磁性粉末を乾燥した後キャビティに入れ磁場H=0に配置しプレス成形して異なる予備成形体を得、ここで、前記プレス圧力は350MPaであり、ここで、第1および第2の予備成形体の密度はそれぞれ4.75g/cmおよび4.95g/cmである。
【0062】
本実施例のプレスによって形成された磁気リングのアスペクト比は1.25であり、壁の厚さは3mmであり、実際の状況によれば、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は2:1である。
【0063】
ステップ4、温間プレスおよび磁場配向成形:
以上の異なる予備成形体を積み重ねて別の金型に入れ磁場H(2.5T)に配置し温間プレス成形および配向を行い、プレス圧力は700MPaであり、成形温度は150℃であり、成形体とキャビティ間のヤング率は5%であり、ここで、高い性能および密度を有する第2の予備成形体は中央に配置され、低い性能および密度を有する第1の予備成形体は両端に配置され、第1の予備成形体の高さは第2の予備成形体より高く、各成形体は磁力によって互いに引き付け合うように配置されて温間プレス配向およびプレス成形を行う。
【0064】
その後、減磁、冷却、離型を行って異方性結合磁気リングを得る。
【0065】
ステップ5、硬化:
以上で得られた最終成形体を160℃に加熱し硬化処理を行い、保温時間は1時間であり、異方性磁気リングを作製する。
【0066】
実施例2
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0067】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の3%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0068】
(2)混合
計量されたシランを有機溶媒であるアセトンに溶解し、上記の2バッチのNdFeB異方性永久磁石粉末とともに真空混合攪拌機に配置し、均一に混合して、アセトンが揮発した後、シランが磁性粉末の表面を均一に被覆し、次に計量されたエポキシ樹脂、およびステアリン酸亜鉛をそれぞれアセトンに溶解し、シランで被覆されたNdFeB異方性永久磁石粉末と均一に混合し、アセトンが揮発した後、異なる性能を有する2バッチの結合磁石用の複合磁性粉末を作製することができる。
【0069】
(3)室温予備成形
上記で作製された2種類の複合磁性粉末を乾燥した後キャビティに入れ磁場H=0に配置しプレス成形して異なる予備成形体を得、ここで、前記プレス圧力は350MPaであり、ここで、第1および第2の予備成形体の密度はそれぞれ4.00g/cmおよび4.17g/cmである。
【0070】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0071】
実施例3
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0072】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の3%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0073】
(2)混合
計量されたシランを有機溶媒であるアセトンに溶解し、上記の2バッチのNdFeB異方性永久磁石粉末とともに真空混合攪拌機に配置し、均一に混合して、アセトンが揮発した後、シランが磁性粉末の表面を均一に被覆し、次に計量されたエポキシ樹脂、およびステアリン酸亜鉛をそれぞれアセトンに溶解し、シランで被覆されたNdFeB異方性永久磁石粉末と均一に混合し、アセトンが揮発した後、異なる性能を有する2バッチの結合磁石用の複合磁性粉末を作製することができる。
【0074】
(3)室温予備成形
上記で作製された2種類の複合磁性粉末を乾燥した後キャビティに入れ磁場H=0に配置しプレス成形して異なる予備成形体を得、ここで、前記プレス圧力は350MPaであり、ここで、第1および第2の予備成形体の密度はそれぞれ5.00g/cmおよび5.21g/cmである。
【0075】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0076】
実施例4
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末は1つのバッチのみであり、Brは13.00kGsである。
【0077】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0078】
実施例5
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.5kGs、12.5kGsである。
【0079】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0080】
実施例6
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0081】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の1%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0082】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0083】
実施例7
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0084】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の6%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0085】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0086】
実施例8
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0087】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の3%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0088】
(2)混合
計量されたシランを有機溶媒であるアセトンに溶解し、上記の2バッチのNdFeB異方性永久磁石粉末とともに真空混合攪拌機に配置し、均一に混合して、アセトンが揮発した後、シランが磁性粉末の表面を均一に被覆し、次に計量されたエポキシ樹脂、およびステアリン酸亜鉛をそれぞれアセトンに溶解し、シランで被覆されたNdFeB異方性永久磁石粉末と均一に混合し、アセトンが揮発した後、異なる性能を有する2バッチの結合磁石用の複合磁性粉末を作製することができる。
【0089】
(3)室温予備成形
上記で作製された2種類の複合磁性粉末を乾燥した後キャビティに入れ磁場H=0に配置しプレス成形して異なる予備成形体を得、ここで、前記プレス圧力は350MPaであり、ここで、第1および第2の予備成形体の密度はそれぞれ4.75g/cmおよび4.95g/cmである。
【0090】
本実施例のプレスによって形成された磁気リングのアスペクト比は1.25であり、壁の厚さは3mmであり、実際の状況によれば、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は2:1である。
【0091】
ステップ4、温間プレスおよび磁場配向成形:
以上の異なる予備成形体を積み重ねて別の金型に入れ磁場H(2.5T)に配置し温間プレス成形および配向を行い、プレス圧力は700MPaであり、成形温度は150℃であり、成形体とキャビティ間のヤング率は5%であり、ここで、高い性能および密度を有する第2の予備成形体は中央に配置され、低い性能および密度を有する第1の予備成形体は両端に配置され、第1の予備成形体の高さは第2の予備成形体より高く、各成形体は磁力によって互いに引き付け合うように配置されて温間プレス配向およびプレス成形を行う。
【0092】
その後、減磁、冷却、離型を行って異方性結合磁気リングを得る。
【0093】
ステップ5、硬化:
以上で得られた最終成形体を120℃に加熱し硬化処理を行い、保温時間は1時間であり、異方性磁気リングを作製する。
【0094】
作製した磁気リングを磁化した後上端、中央、下端の表面磁性分布を測定し、磁気リングを3段に切断し、両端および中央の密度および性能のデータを取得し、密度および性能の軸方向分布の均一性を評価する。
【0095】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0096】
実施例9
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0097】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の3%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0098】
(2)混合
計量されたシランを有機溶媒であるアセトンに溶解し、上記の2バッチのNdFeB異方性永久磁石粉末とともに真空混合攪拌機に配置し、均一に混合して、アセトンが揮発した後、シランが磁性粉末の表面を均一に被覆し、次に計量されたエポキシ樹脂、およびステアリン酸亜鉛をそれぞれアセトンに溶解し、シランで被覆されたNdFeB異方性永久磁石粉末と均一に混合し、アセトンが揮発した後、異なる性能を有する2バッチの結合磁石用の複合磁性粉末を作製することができる。
【0099】
(3)室温予備成形
上記で作製された2種類の複合磁性粉末を乾燥した後キャビティに入れ磁場H=0に配置しプレス成形して異なる予備成形体を得、ここで、前記プレス圧力は350MPaであり、ここで、第1および第2の予備成形体の密度はそれぞれ4.75g/cmおよび4.95g/cmである。
【0100】
本実施例のプレスによって形成された磁気リングのアスペクト比は1.25であり、壁の厚さは3mmであり、実際の状況によれば、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は2:1である。
【0101】
ステップ4、温間プレスおよび磁場配向成形:
以上の異なる予備成形体を積み重ねて別の金型に入れ磁場H(2.5T)に配置し温間プレス成形および配向を行い、プレス圧力は700MPaであり、成形温度は150℃であり、成形体とキャビティ間のヤング率は5%であり、ここで、高い性能および密度を有する第2の予備成形体は中央に配置され、低い性能および密度を有する第1の予備成形体は両端に配置され、第1の予備成形体の高さは第2の予備成形体より高く、各成形体は磁力によって互いに引き付け合うように配置されて温間プレス配向およびプレス成形を行う。
【0102】
その後、減磁、冷却、離型を行って異方性結合磁気リングを得る。
【0103】
ステップ5、硬化:
以上で得られた最終成形体を180℃に加熱し硬化処理を行い、保温時間は1時間であり、異方性磁気リングを作製する。
【0104】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0105】
比較例1
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0106】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の3%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0107】
(2)混合
計量されたシランを有機溶媒であるアセトンに溶解し、上記の2バッチのNdFeB異方性永久磁石粉末とともに真空混合攪拌機に配置し、均一に混合して、アセトンが揮発した後、シランが磁性粉末の表面を均一に被覆し、次に計量されたエポキシ樹脂、およびステアリン酸亜鉛をそれぞれアセトンに溶解し、シランで被覆されたNdFeB異方性永久磁石粉末と均一に混合し、アセトンが揮発した後、異なる性能を有する2バッチの結合磁石用の複合磁性粉末を作製することができる。
【0108】
(3)室温予備成形
上記で作製された2種類の複合磁性粉末を乾燥した後キャビティに入れ磁場H=0に配置しプレス成形して異なる予備成形体を得、ここで、前記プレス圧力は350MPaであり、ここで、第1および第2の予備成形体の密度はそれぞれ4.75g/cmである。
【0109】
本実施例のプレスによって形成された磁気リングのアスペクト比は1.25であり、壁の厚さは3mmであり、実際の状況によれば、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は2:1である。
【0110】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0111】
比較例2
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0112】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の3%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
(2)混合
【0113】
計量されたシランを有機溶媒であるアセトンに溶解し、上記の2バッチのNdFeB異方性永久磁石粉末とともに真空混合攪拌機に配置し、均一に混合して、アセトンが揮発した後、シランが磁性粉末の表面を均一に被覆し、次に計量されたエポキシ樹脂、およびステアリン酸亜鉛をそれぞれアセトンに溶解し、シランで被覆されたNdFeB異方性永久磁石粉末と均一に混合し、アセトンが揮発した後、異なる性能を有する2バッチの結合磁石用の複合磁性粉末を作製することができる。
【0114】
(3)室温予備成形
上記で作製された2種類の複合磁性粉末を乾燥した後キャビティに入れ磁場H=0に配置しプレス成形して異なる予備成形体を得、ここで、前記プレス圧力は350MPaであり、ここで、第1および第2の予備成形体の密度はそれぞれ3.6g/cmである。
【0115】
本実施例のプレスによって形成された磁気リングのアスペクト比は1.25であり、壁の厚さは3mmであり、実際の状況によれば、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は2:1である。
【0116】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0117】
比較例3
(1)結合磁気リング原料の準備
Nd含有量29.5wt.%のNdFeB異方性永久磁石粉末、熱硬化性樹脂バインダーであるエポキシ樹脂、カップリング剤であるシランおよび潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を準備し、ここで、NdFeB異方性永久磁石粉末には高性能および低性能の2つのバッチがあり、Brはそれぞれ13.25kGs、12.75kGsである。
【0118】
NdFeB異方性永久磁石粉末の重量含有量を100とすると、エポキシ樹脂の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の3%であり、シランの重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.2%であり、ステアリン酸亜鉛の重量含有量はNdFeB異方性永久磁石粉末重量の0.25%である。
【0119】
(2)混合
計量されたシランを有機溶媒であるアセトンに溶解し、上記の2バッチのNdFeB異方性永久磁石粉末とともに真空混合攪拌機に配置し、均一に混合して、アセトンが揮発した後、シランが磁性粉末の表面を均一に被覆し、次に計量されたエポキシ樹脂、およびステアリン酸亜鉛をそれぞれアセトンに溶解し、シランで被覆されたNdFeB異方性永久磁石粉末と均一に混合し、アセトンが揮発した後、異なる性能を有する2バッチの結合磁石用の複合磁性粉末を作製することができる。
【0120】
(3)室温予備成形
上記で作製された2種類の複合磁性粉末を乾燥した後キャビティに入れ磁場H=0に配置しプレス成形して異なる予備成形体を得、ここで、前記プレス圧力は350MPaであり、ここで、第1および第2の予備成形体の密度はそれぞれ5.5g/cmである。
【0121】
本実施例のプレスによって形成された磁気リングのアスペクト比は1.25であり、壁の厚さは3mmであり、実際の状況によれば、第1の予備成形体および第2の予備成形体の数の比は2:1である。
【0122】
他のステップは、実施例1のステップと同じである。
【0123】
作製した磁気リングを磁化した後上端、中央、下端の表面磁性分布および径方向破砕力を測定し、磁気リングを3段に切断し、両端および中央の密度および性能のデータを取得し、密度および性能の軸方向分布の均一性を評価した。結果を表1に示す。
【0124】
【0125】
要約すると、本発明は異方性結合磁石およびその作製方法を提供し、異なる磁気性能および/または密度を有する磁石を積み重ねて、中央の磁石は高い性能を有し、両端および/または周辺の磁石は低い性能を有し、プレス過程で密度差による性能差を補助し、軸方向の磁石の性能均一性を向上させる。この方法は、配向および緻密化過程で高さ方向の磁場配向および密度が不均一になる現象、および中央が低く両端が高い現象を回避することができる。この方法で作製した異方性結合磁石は、プレス方向の密度差が2%未満であるという特徴を有し、磁石の配向度および密度、ならびに磁石磁気性能の均一性および寸法精度を効果的に向上させる。
【0126】
本発明の上記の特定の実施形態は、単に本発明の原理を例示または説明することを意図しており、本発明を限定するものではないことを理解されたい。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われたいかなる修正、同等の置換、改善なども、本発明の保護の範囲内に含まれるべきである。さらに、本発明の添付の特許請求の範囲は、添付の特許請求の範囲または範囲および境界の同等物の範囲および境界内にあるすべての変更および修正を網羅することを意図している。
図1