(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20230525BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230525BHJP
C08L 29/02 20060101ALI20230525BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20230525BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20230525BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CES
C08J5/18 CEX
C08L29/02
C08K5/01
C08K5/09
C08K3/08
(21)【出願番号】P 2021181405
(22)【出願日】2021-11-05
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202110666705.7
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 志傑
(72)【発明者】
【氏名】林 文星
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-293948(JP,A)
【文献】特開2005-068324(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039458(WO,A1)
【文献】特開2002-284885(JP,A)
【文献】特開2002-284811(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124233(WO,A1)
【文献】特開2018-131543(JP,A)
【文献】特開2020-007550(JP,A)
【文献】特開2020-143182(JP,A)
【文献】特開2021-028356(JP,A)
【文献】特開平11-320557(JP,A)
【文献】特開2008-308657(JP,A)
【文献】特開2000-128998(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118648(WO,A1)
【文献】特開2006-097033(JP,A)
【文献】特開2003-097772(JP,A)
【文献】特開2000-159907(JP,A)
【文献】特開2020-090646(JP,A)
【文献】特開2005-239902(JP,A)
【文献】特開2002-080606(JP,A)
【文献】特開2000-265024(JP,A)
【文献】特開2002-146142(JP,A)
【文献】特開2006-328195(JP,A)
【文献】特開2001-302799(JP,A)
【文献】特開2000-128996(JP,A)
【文献】特開2011-111473(JP,A)
【文献】特開2000-063528(JP,A)
【文献】特開2001-096529(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021422(WO,A1)
【文献】特開2000-265025(JP,A)
【文献】国際公開第2004/009313(WO,A1)
【文献】特開2015-143345(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110844(WO,A1)
【文献】特開平09-095583(JP,A)
【文献】特開2008-201432(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104513444(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08J 3/00 - 3/28
C08J 99/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を含みペレット形態であるエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物であって、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物は表面を有し、前記表面は、0.0008~10μm
3/μm
2の間の山部の実体体積(Vmp)を有する、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の表面は0.005~50μm
3/μm
2の間のコア部の実体体積(Vmc)を有する、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の表面は0.005~7μmの間の最大山高さ(Sp)を有する、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂のエチレン含有量は20~48mole%の間である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂の鹸化度は99.5mole%よりも大きい、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項6】
前記表面の線の最大高さ(Rz)は0.01~13μmの間である、請求項1から5のいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項7】
前記表面の線の最大高さ(Rz)は0.01~9.9μmの間である、請求項6に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項8】
含水率は1重量百分比未満である、請求項1から5のいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項9】
5~550ppmの間のホウ素含有量を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項10】
5~550ppmの間のアルカリ金属含有量を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【請求項11】
ケイ皮酸、共役ポリエン、滑剤及びアルカリ土類金属で組成されたグループの1つ又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(ethylene-vinyl alcohol,EVOH)樹脂組成物に関するものである。エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物は高い表面均一性を有しており、特に表面粗さは、0.0008~10μm3/μm2の間の山部の実体体積(Vmp)である。本発明はさらに、EVOH樹脂組成物により形成されたフィルム及びEVOH樹脂組成物を含む多層構造体を開示する。
【背景技術】
【0002】
EVOH樹脂は多層体において広範に使用され、傷みやすい商品の保存に用いられている。例えば、EVOH樹脂や多層体は、一般的に、食品包装産業、医療機器及び付属品産業、製薬産業、電子産業並びに農業用化学品産業において使用されている。EVOH樹脂は、一般的に、別個の層として多層体中に加えられ、酸素バリア層として用いられている。
【0003】
現在公知であるEVOH樹脂により形成されたEVOHペレットは、表面粗さが大きく、ペレット間の摩擦が高いため、EVOHを加工する際のトルクが極めて高くなってしまう。従来においては、潤滑剤を添加することでEVOHの加工性を調整していたが、さらなる改善が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工時のトルク出力を低減し得るとともに、高い表面均一性を実現し得るEVOH樹脂組成物に対する継続的需要に鑑みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高い表面均一性を有する、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂組成物に関するものであり、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物はエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を含み、例えば、上述のEVOH樹脂組成物の表面粗さは、0.0008~10μm3/μm2の間の山部の実体体積(Vmp)である。また、上述のEVOH樹脂組成物の表面粗さはさらに、0.005~50μm3/μm2の間のコア部の実体体積(Vmc)及び/又は0.005~7μmの間の最大山高さ(Sp)である。EVOH樹脂組成物は、ペレット、フィルム、繊維などの形態を呈し得る。EVOH樹脂組成物は、フィルム又は多層構造体の調製に用いることができる。発明者は、EVOH樹脂組成物の表面粗さをコントロールすることにより、EVOH加工時のトルク出力を低減し得ること、またEVOH樹脂組成物により形成されたフィルム及びEVOH樹脂組成物を含む多層構造体が良好な外観を有することを発見した。
【0006】
さらに/又は、上述のEVOH樹脂組成物は、表面の粗さ曲線の最大高さ(Rz)が約0.01~13μmである。又は、上述のEVOH樹脂組成物は、表面のRzが0.01~9.9μmの間である。
【0007】
非限定的な例において、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物の含水率は1重量百分比未満である。
【0008】
本発明の他の態様において提供するEVOH樹脂組成物(またはそのペレット)は、5~550ppmのホウ素含有量を有し得る。EVOH樹脂組成物は、約5~550ppmの間のアルカリ金属含有量を有し得る。さらに/又は、EVOH樹脂組成物はさらにケイ皮酸、共役ポリエン、滑剤及びアルカリ土類金属で組成されたグループの1つ又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0009】
さらに/又は、EVOH樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂は、99.5mole%又はより高い鹸化度を有することができる。EVOH樹脂組成物中のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂は、約20~約48mole%のエチレン含有量を有することができる。例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は、約25~約45mole%でよい。EVOH樹脂組成物は、異なるエチレン含有量を有する2種類以上のEVOHにより形成することができる。
【0010】
少なくとも1つの実施例による多層構造体は、(a)上述のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂により形成された少なくとも1つの層、(b)少なくとも1つのポリマー層、及び(c)少なくとも1つの粘着層を含む。ポリマー層は、例えば、低密度ポリエチレン層、ポリエチレングラフト化マレイン酸無水物(polyethylene grafted maleic anhydride)層、ポリプロピレン層及びナイロン層で組成されたグループから選択されたものでよい。粘着層は、結合層(tie layer)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂組成物に関するものである。EVOH樹脂組成物は低い表面粗さを有しており、特に表面粗さは、0.0008~10μm3/μm2の間の山部の実体体積(Vmp)である。また、上述のEVOH樹脂組成物の表面粗さはさらに、0.005~50μm3/μm2の間のコア部の実体体積(Vmc)及び/又は0.005~7μmの間の最大山高さ(Sp)である。EVOH樹脂組成物の表面粗さのコントロールは、EVOH製造工程の造粒後における洗浄段階のコントロールにより達成することができ、EVOH樹脂組成物及びそのフィルムに良好な効果を持たせることができる。EVOH樹脂組成物は、フィルム又は多層構造体の調製に用いることができる。発明者は、EVOHペレットの表面粗さパラメータVmpを特定の範囲にコントロールすることによって、EVOH加工時のトルク出力を低減し得ること、またそれにより形成されたフィルム及び多層構造体のゲル発生状態を改善し得ることを発見した。
【0012】
上述の山部の実体体積(Vmp)の定義は、ISO 25178:2012を参照すると、突出山部の大きさを体積パラメータで定量化するものであり、体積パラメータを使用する場合は、コア部と突出山部を分離する負荷面積率、及びコア部と突出谷部を分離する負荷面積率を指定する必要があり、通常ではそれぞれ10%、80%が指定される。表面粗さVmpは、好適には0.0008~10μm3/μm2の間であり、上述のVmpは、例えば、0.0008~10μm3/μm2の間、0.0008~9μm3/μm2の間、0.0008~8μm3/μm2の間、0.0008~7μm3/μm2の間、0.0008~6μm3/μm2の間、0.0008~5μm3/μm2の間、0.0008~4μm3/μm2の間、0.0008~3μm3/μm2の間、0.0008~2μm3/μm2の間、0.0008~1μm3/μm2の間、0.0008~0.1μm3/μm2の間、0.0008~0.01μm3/μm2の間、0.0008~0.001μm3/μm2の間、0.001~10μm3/μm2の間、0.001~9μm3/μm2の間、0.001~8μm3/μm2の間、0.001~7μm3/μm2の間、0.001~6μm3/μm2の間、0.001~5μm3/μm2の間、0.001~4μm3/μm2の間、0.001~3μm3/μm2の間、0.001~2μm3/μm2の間、0.001~1μm3/μm2の間、0.001~0.1μm3/μm2の間、0.001~0.01μm3/μm2の間、0.1~10μm3/μm2の間、0.1~9μm3/μm2の間、0.1~8μm3/μm2の間、0.1~7μm3/μm2の間、0.1~6μm3/μm2の間、0.1~5μm3/μm2の間、0.1~4μm3/μm2の間、0.1~3μm3/μm2の間、0.1~2μm3/μm2の間、0.1~1μm3/μm2の間、0.8~10μm3/μm2の間、0.8~9μm3/μm2の間、0.8~8μm3/μm2の間、0.8~7μm3/μm2の間、0.8~6μm3/μm2の間、0.8~5μm3/μm2の間、0.8~4μm3/μm2の間、0.8~3μm3/μm2の間、0.8~2μm3/μm2の間、0.8~1μm3/μm2の間、2~10μm3/μm2の間、2~9μm3/μm2の間、2~8μm3/μm2の間、2~7μm3/μm2の間、2~6μm3/μm2の間、2~5μm3/μm2の間、2~4μm3/μm2の間、4~10μm3/μm2の間、4~9μm3/μm2の間、4~8μm3/μm2の間、4~7μm3/μm2の間、4~6μm3/μm2の間、6~10μm3/μm2の間、6~9μm3/μm2の間、6~8μm3/μm2の間、8~10μm3/μm2の間又は9~10μm3/μm2の間でよい。
【0013】
上述のコア部の実体体積(Vmc)の定義は、ISO 25178:2012を参照すると、コア部の大きさを体積パラメータで定量化するものであり、体積パラメータを使用する場合は、コア部と突出山部を分離する負荷面積率、及びコア部と突出谷部を分離する負荷面積率を指定する必要があり、通常ではそれぞれ10%、80%が指定される。表面粗さVmcは、好適には0.005~50μm3/μm2の間であり、上述のVmcは、例えば、0.005~50μm3/μm2の間、0.005~45μm3/μm2の間、0.005~40μm3/μm2の間、0.005~35μm3/μm2の間、0.005~30μm3/μm2の間、0.005~25μm3/μm2の間、0.005~20μm3/μm2の間、0.005~15μm3/μm2の間、0.005~10μm3/μm2の間、0.005~5μm3/μm2の間、0.005~1μm3/μm2の間、0.005~0.1μm3/μm2の間、0.005~0.01μm3/μm2の間、0.01~50μm3/μm2の間、0.01~45μm3/μm2の間、0.01~40μm3/μm2の間、0.01~35μm3/μm2の間、0.01~30μm3/μm2の間、0.01~25μm3/μm2の間、0.01~20μm3/μm2の間、0.01~15μm3/μm2の間、0.01~10μm3/μm2の間、0.01~5μm3/μm2の間、0.01~1μm3/μm2の間、0.01~0.1μm3/μm2の間、1~50μm3/μm2の間、1~45μm3/μm2の間、1~40μm3/μm2の間、1~35μm3/μm2の間、1~30μm3/μm2の間、1~25μm3/μm2の間、1~20μm3/μm2の間、1~15μm3/μm2の間、1~10μm3/μm2の間、1~5μm3/μm2の間、5~50μm3/μm2の間、5~45μm3/μm2の間、5~40μm3/μm2の間、5~35μm3/μm2の間、5~30μm3/μm2の間、5~25μm3/μm2の間、5~20μm3/μm2の間、5~15μm3/μm2の間、5~10μm3/μm2の間、10~50μm3/μm2の間、10~45μm3/μm2の間、10~40μm3/μm2の間、10~35μm3/μm2の間、10~30μm3/μm2の間、10~25μm3/μm2の間、10~20μm3/μm2の間、10~15μm3/μm2の間、10~10μm3/μm2の間、20~50μm3/μm2の間、20~45μm3/μm2の間、20~40μm3/μm2の間、20~35μm3/μm2の間、20~30μm3/μm2の間、20~25μm3/μm2の間、30~50μm3/μm2の間、30~45μm3/μm2の間、30~40μm3/μm2の間、35~50μm3/μm2の間、35~45μm3/μm2の間、35~40μm3/μm2の間、40~50μm3/μm2の間又は40~45μm3/μm2の間でよい。
【0014】
上述の最大山高さ(Sp)は、表面の最大山高さであり、その定義は、ISO 25178:2012を参照すると、定義領域中で最も高い点の高さである。表面粗さSpは、好適には0.005~7μmの間であり、上述のSqは、例えば、0.005~7μmの間、0.005~6μmの間、0.005~5μmの間、0.005~4μmの間、0.005~3μmの間、0.005~2μmの間、0.005~1μmの間、0.005~0.1μmの間、0.005~0.01μmの間、0.01~7μmの間、0.01~6μmの間、0.01~5μmの間、0.01~4μmの間、0.01~3μmの間、0.01~2μmの間、0.01~1μmの間、0.01~0.1μmの間、0.1~7μmの間、0.1~6μmの間、0.1~5μmの間、0.1~4μmの間、0.1~3μmの間、0.1~2μmの間、0.1~1μmの間、1~7μmの間、1~6μmの間、1~5μmの間、1~4μmの間、1~3μmの間、1~2μmの間、2~7μmの間、2~6μmの間、2~5μmの間、2~4μmの間、2~3μmの間、4~7μmの間、4~6μmの間又は4~5μmの間でよい。
【0015】
1つの態様では、本発明はEVOH樹脂組成物を提供する。EVOH樹脂組成物は、ペレット、フィルム、繊維などの形態を呈し得る。本明細書に記載のEVOHペレットとは、EVOH樹脂組成物の造粒を経て形成された1つ以上のペレットの形態及び/又は形状を指す。本発明の全文では、造粒を経て形成された1つ以上のEVOHペレット形態のEVOH樹脂組成物を記述しているが、EVOH樹脂組成物はビーズ、立方体、チップ、削りくずなどの形態に加工されてもよい。幾つかの実施例において、EVOH樹脂組成物はペレット形態であり、ペレット形態は、柱形状、円粒形状又は偏平形状でよい。円粒形状は球形状、楕円球形状又は碁石形状でよく、柱形状は円柱形状、楕円柱形状、角柱形状でよい。
【0016】
EVOHペレットが球形状、楕円球形状又は碁石形状である場合、ペレットの最大外径を長辺とし、長辺に垂直な断面のうち、面積が最大である断面中の最大直径を短辺とする。長辺の範囲は、0.5~6.0mm、2.2~5.0mm、2.4~5.0mm、2.6~5.0mm、2.8~5.0mm、3.0~5.0mm、3.2~5.0mm、3.4~5.0mm、3.6~5.0mm、3.8~5.0mm、4.0~5.0mm、2.0~4.5mm、2.0~4.4mm、2.0~4.2mm、2.0~4.0mm、2.0~3.8mm、2.0~3.6mm、2.0~3.4mm、2.0~3.2mm、2.0~3.0mmの間でよく、短辺の範囲は、0.5~6.0mm、1.8~4.6mm、2.4~4.6mm、2.6~4.6mm、2.8~4.6mm、3.0~4.6mm、3.2~4.6mm、3.4~4.6mm、3.6~4.6mm、3.8~4.6mm、4.0~4.6mm、1.6~4.5mm、1.6~4.4mm、1.6~4.2mm、1.6~4.0mm、1.6~3.8mm、1.6~3.6mm、1.6~3.4mm、1.6~3.2mm、1.6~3.0mmの間でよい。
【0017】
EVOHペレットが円柱形状又は楕円柱形状である場合に、その高さの範囲は、1.5~5.0mm、1.7~5.0mm、2.2~5.0mm、2.4~5.0mm、2.6~5.0mm、2.8~5.0mm、3.0~5.0mm、3.2~5.0mm、3.4~5.0mm、3.6~5.0mm、3.8~5.0mm、4.0~5.0mm、1.7~4.5mm、1.7~4.4mm、1.7~4.2mm、1.7~4.0mm、1.7~3.8mm、1.7~3.6mm、1.7~3.4mm、1.7~3.2mm、1.7~3.0mmの間でよく、その断面積の長軸範囲は、1.5~5.0mm、1.7~5.0mm、2.2~5.0mm、2.4~5.0mm、2.6~5.0mm、2.8~5.0mm、3.0~5.0mm、3.2~5.0mm、3.4~5.0mm、3.6~5.0mm、3.8~5.0mm、4.0~5.0mm、1.7~4.5mm、1.7~4.4mm、1.7~4.2mm、1.7~4.0mm、1.7~3.8mm、1.7~3.6mm、1.7~3.4mm、1.7~3.2mm、1.7~3.0mmの間でよい。
【0018】
上述のEVOH樹脂組成物の表面粗さの特徴は、表面の線の最大高さ(Rz)によっても表すことができる(その定義はJIS B 0601 (2001版)を参照し、基準長さの輪郭線において、最高ピークの高さと最低ボトムの深さの合計である)。
【0019】
1つの実施例中、EVOH樹脂組成物の表面のRzは、0.01~13μmの間でよく、例えば、0.01~13μmの間、0.01~12μmの間、0.01~11μmの間、0.01~10μmの間、0.01~9μmの間、0.01~8μmの間、0.01~7μmの間、0.01~6μmの間、0.01~5μmの間、0.01~4μmの間、0.01~3μmの間、0.01~2μmの間、0.01~1μmの間、0.01~0.1μmの間、0.02~13μmの間、0.02~12μmの間、0.02~11μmの間、0.02~10μmの間、0.02~9μmの間、0.02~8μmの間、0.02~7μmの間、0.02~6μmの間、0.02~5μmの間、0.02~4μmの間、0.02~3μmの間、0.02~2μmの間、0.02~1μmの間、0.02~0.1μmの間、0.1~13μmの間、0.1~12μmの間、0.1~11μmの間、0.1~10μmの間、0.1~9μmの間、0.1~8μmの間、0.1~7μmの間、0.1~6μmの間、0.1~5μmの間、0.1~4μmの間、0.1~3μmの間、0.1~2μmの間、0.1~1μmの間、1~13μmの間、1~12μmの間、1~11μmの間、1~10μmの間、1~9μmの間、1~8μmの間、1~7μmの間、1~6μmの間、1~5μmの間、1~4μmの間、1~3μmの間、1~2μmの間、5~13μmの間、5~12μmの間、5~11μmの間、5~10μmの間、5~9μmの間、5~8μmの間、5~7μmの間、7~13μmの間、7~12μmの間、7~11μmの間、7~10μmの間、7~9μmの間、7~8μmの間、8~13μmの間、8~12μmの間、8~11μmの間、8~10μmの間、8~9μmの間、10~13μmの間又は10~12μmの間でよい。好ましい実施例において、表面のRzは約0.01~約9.9μmの間である。
【0020】
EVOHペレットは、EVOHにより形成され、EVOHはエチレン含有量を有している。例えば、EVOHのエチレン含有量は、約20~約48mole%、約20~約45mole%、約25~約45mole%、約28~約42mole%又は約30~約40mole%でよい。EVOH樹脂組成物は、異なるエチレン含有量を有する2種類以上のEVOHにより形成することができる。例えば、そのうちの1種類のEVOHのエチレン含有量は、約20~約35mole%の範囲内でよく、例えば約24~約35mole%、約28~約35mole%、約20~約32mole%、約24~約32mole%、約28~約32mole%、約20~約30mole%又は約24~約30mole%である。さらに/又は、そのうちの1種類のEVOHのエチレン含有量は、約36~約48mole%の範囲内でよく、例えば約40~約48mole%、約44~約48mole%、約36~約45mole%又は約40~約45mole%である。しかし、幾つかの好ましい実施例において、EVOH樹脂組成物は、エチレン含有量が約20~約48mole%の単一のEVOHにより形成される。
【0021】
さらに/又は、EVOH樹脂組成物の鹸化度は90mole%以上でよく、好適には95mole%以上、好適には97mole%以上、好適には99.5mole%以上である。
【0022】
EVOH樹脂組成物は、ある状況下において、ホウ素化合物及び/又はホウ酸及び/又はケイ皮酸及び/又はアルカリ金属及び/又は共役ポリエン及び/又は滑剤及び/又はアルカリ土類金属、それらの塩及び/又はそれらの混合物を含み得る。上述の物質は、EVOH樹脂組成物により良好な性質を付与し得る。
【0023】
本発明の他の態様において提供するEVOH樹脂組成物(またはそのペレット)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びホウ素化合物を含むことができ、そのうち、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物のホウ素含有量は約5~550ppmの間である。幾つかの状況において、EVOH樹脂組成物のホウ素含有量は、EVOH樹脂組成物の総重量に基づき、約5~550ppmの間、約5~500ppmの間、約5~450ppmの間、約5~400ppmの間、約5~350ppmの間、約5~300ppmの間、約5~250ppmの間、約5~200ppmの間、約5~150ppmの間、約5~100ppmの間、約5~50ppmの間、約10~550ppmの間、約10~500ppmの間、約10~450ppmの間、約10~400ppmの間、約10~350ppmの間、約10~300ppmの間、約10~250ppmの間、約10~200ppmの間、約10~150ppmの間、約10~100ppmの間、約10~50ppmの間、約50~550ppmの間、約50~500ppmの間、約50~450ppmの間、約50~400ppmの間、約50~350ppmの間、約50~300ppmの間、約50~250ppmの間、約50~200ppmの間、約50~150ppmの間、約50~100ppmの間、約100~550ppmの間、約100~500ppmの間、約100~450ppmの間、約100~400ppmの間、100~350ppmの間、約100~300ppmの間、約100~250ppmの間、約100~200ppmの間、約100~150ppmの間、約200~550ppmの間、約200~500ppmの間、約200~450ppmの間、約200~400ppmの間、約200~350ppmの間、約200~300ppmの間、約200~250ppmの間、約300~550ppmの間、約300~500ppmの間、約300~450ppmの間、約300~400ppmの間、約300~350ppmの間、約400~550ppmの間、約400~500ppmの間、約400~450ppm又は約500~550ppmの間でよい。如何なる特定の理論にも限定されないが、発明者は、EVOH樹脂組成物中にホウ素化合物を添加し、EVOHのホウ素含有量を5~550ppmとすることで、スクリュー押出機の押出プロセスにおけるEVOH樹脂組成物の粘着が低減又はなくなり、且つフィルム厚みの均一性及び可塑性がより改善されると確信している。ある状況下において、こうしたEVOH樹脂組成物は、押出プロセス中、スクリュー押出機の内側表面に粘着していたEVOH樹脂を除去又は少なくとも一部を除去し、スクリュー押出機を洗浄することができ、これにより材料に自浄機能を持たせて、フィルム厚みの均一性をさらに改善することができる。
【0024】
ある状況下において、ホウ素化合物はホウ酸又はその金属塩を含み得る。金属塩の例として、ホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛など)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウムなど)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウムなど)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウムなど)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀など)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅など)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウムなど)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛など)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケルなど)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウムなど)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウムなど)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガンなど)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウムなど)、それらの塩又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限らない。例えばホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、ザイベリ石/スーアン石(suanite)及びザイベリ石(szaibelyite)などのホウ酸塩鉱物などを含み得る。そのうち、ホウ砂、ホウ酸及びホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム及び八ホウ酸ナトリウムなど)を使用するのが好ましい。
【0025】
ある状況下において、EVOH樹脂組成物はアルカリ金属をさらに含み得る。本発明のEVOH樹脂組成物に上述のアルカリ金属を含有させるのに用いられるアルカリ金属源として、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩などのアルカリ金属化合物を挙げることができる。それらは水溶性であるのが好ましい。分散性の観点から考慮すると、アルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属塩は、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、塩化物塩などの無機塩、アルカリ金属の酢酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩、ヘプタン酸塩、カプリン酸塩などの炭素数2~11のモノカルボン酸塩、アルカリ金属のシュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩などの炭素数2~11のジカルボン酸塩、EVOHとの重合末端であるカルボキシル基のカルボン酸塩などを挙げることができる。それらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
発明中で使用するアルカリ金属には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムを挙げることができる。それらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。好適にはナトリウム及びカリウムであり、さらに好適にはナトリウムである。
【0027】
EVOH樹脂組成物は、約5~550ppmの間のアルカリ金属含有量を有し得るが、上述のアルカリ金属含有量は、例えば、約5~550ppmの間、約5~500ppmの間、約5~450ppmの間、約5~400ppmの間、約5~350ppmの間、約5~300ppmの間、約5~250ppmの間、約5~200ppmの間、約5~150ppmの間、約5~100ppmの間、約5~50ppmの間、約10~550ppmの間、約10~500ppmの間、約10~450ppmの間、約10~400ppmの間、約10~350ppmの間、約10~300ppmの間、約10~250ppmの間、約10~200ppmの間、約10~150ppmの間、約10~100ppmの間、約10~50ppmの間、約50~550ppmの間、約50~500ppmの間、約50~450ppmの間、約50~400ppmの間、約50~350ppmの間、約50~300ppmの間、約50~250ppmの間、約50~200ppmの間、約50~150ppmの間、約50~100ppmの間、約100~550ppmの間、約100~500ppmの間、約100~450ppmの間、約100~400ppmの間、100~350ppmの間、約100~300ppmの間、約100~250ppmの間、約100~200ppmの間、約100~150ppmの間、約200~550ppmの間、約200~500ppmの間、約200~450ppmの間、約200~400ppmの間、約200~350ppmの間、約200~300ppmの間、約200~250ppmの間、約300~550ppmの間、約300~500ppmの間、約300~450ppmの間、約300~400ppmの間、約300~350ppmの間、約400~550ppmの間、約400~500ppmの間、約400~450ppm又は約500~550ppmの間でよい。
【0028】
さらに/又は、EVOH樹脂組成物はさらにケイ皮酸、共役ポリエン、潤滑剤及びアルカリ土類金属で組成されたグループの1つ若しくはそれらの組み合わせ、又はそれらの塩及び/又はそれらの混合物を含み得る。上述の物質は、一般的にEVOH樹脂組成物中でよく存在する物質であり、より良好な性質を持たせる。EVOH樹脂組成物中の単位重量あたりの共役ポリエン構造を有する化合物の含有量が1~30000ppmである場合、加熱着色がより抑制され、熱安定性をより優れたものにし得る。上述のアルカリ金属を有する化合物又はアルカリ土類金属を有する化合物については、EVOH樹脂組成物中の単位重量あたりのアルカリ金属を有する化合物又はアルカリ土類金属を有する化合物の含有量が金属換算で1~1000ppmである場合、ロングラン成形性をより優れたものにし得る。
【0029】
共役ポリエンは、例えば、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-tert-ブチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、1-メトキシ-1,3-ブタジエン、2-メトキシ-1,3-ブタジエン、1-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-ニトロ-1,3-ブタジエン、クロロプレン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、1-ブロモ-1,3-ブタジエン、トロポン(tropone)、オシメン(ocimene)、ferrandrene、ミルセン(myrcene)、ファルネセン(farnesene)、ソルビン酸、ソルベート、ソルビン酸塩などのソルビン酸類、アビエチン酸(abietic acid)などの2つの共役炭素-炭素二重結合構造により構成された共役ジエン、2,4,6-オクタトリエン-1-カルボン酸、エレオステアリン酸(eleostearic acid)、桐油、コレカルシフェロールなどの3つの共役炭素-炭素二重結合構造により構成された共役トリエンであるが、これらに限らず、共役ポリエンは、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。好適には、共役ポリエンは、ソルビン酸、ソルベート、ソルビン酸塩などのソルビン酸類である。
【0030】
本発明中で使用する滑剤としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸、これらの高級脂肪酸のアルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などの高級脂肪酸の金属塩、上述の高級脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステルなどの高級脂肪酸のエステル、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどの飽和高級脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどのビス高級脂肪酸アミドといった高級脂肪酸のアミドなど、高級脂肪酸類を挙げることができ、それらは単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
上述のEVOH樹脂組成物は、それにより形成されるEVOHフィルムをより効率的に調製するのに役立つ。EVOHフィルムを調製する相応しい方法及び設備には、当業者が容易に理解できる方法及び設備を含むことができる。発明者は、EVOH樹脂組成物の表面粗さをコントロールすることで、EVOH樹脂組成物が押出機内のトルクを低減させ得るだけでなく、EVOH樹脂組成物により形成されたフィルム又は多層構造体のゲル発生を低減させることもでき、EVOH樹脂組成物により形成されたフィルム又は多層構造体の外観を改善し得ると確信している。
【0032】
本発明のEVOH樹脂組成物は一般的に特定の範囲の含水率を有する。例えば、揮発分をEVOH樹脂組成物の含水率の評価基準として使用すると、上述EVOH樹脂組成物の含水率は、1重量百分比(wt%)未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.01~1wt%の間、0.08~1wt%の間、又は0.05~1wt%の間でよい。意外なことに、EVOH樹脂組成物の含水率を一定の範囲内にコントロールする必要があることが分かった。含水率が高すぎると、EVOH樹脂組成物により形成されたフィルム又は多層構造体に気泡が生じたり、フィルム厚みが不均一となったり、フローマークが増加したりするから、その後の加工の問題になる。揮発分については、ISO 14663-2 AnnexA方法を使用して最終製品のEVOHペレットを分析する。
【0033】
また別の態様では、本発明は多層構造体を提供し、それは少なくとも1つの本発明のEVOH樹脂組成物により形成された層、少なくとも1つのポリマー層、及び少なくとも1つの粘着剤層(adhesive layer)を有する。ポリマー層は、低密度ポリエチレン層、ポリエチレングラフト無水マレイン酸層、ポリプロピレン層、ナイロン層及びそれらの組み合わせから選択し得る。粘着剤層は、例えばARKEMA社のARKEMA OREVAC 18729などの結合層(tie layer)でよい。
【実施例】
【0034】
以下で提供する本発明の各態様の非限定的実施例は、主に本発明の各態様及びそれにより達成される効果を明らかにするためのものである。
[実施例1]
【0035】
以下では、EVOH樹脂組成物により形成されるEVOHペレットの非限定的な調製方法を提供する。以下に開示する方法と同様の方法に基づき、非限定的実施例EVOH樹脂組成物を9種類(実施例EVOH1~6)、及び比較例EVOH樹脂組成物を4種類(比較例EVOH1~4)調製した。但し、実施例EVOH1~6及び比較例EVOH1~4を調製する具体的な方法は、通常、1つ以上の面で以下に開示する方法と異なっている。
実施例EVOH1ペレット
【0036】
冷却コイルを備えた重合器に酢酸ビニル500kg、メタノール100kg、過酸化アセチル0.0585kg、クエン酸0.015kgを加えて、重合器内を窒素ガスでしばらくの間置換した後、エチレンで置換し、且つエチレン圧力が45kg/cm2になるまで圧入した。エチレン加圧下で、攪拌しながら67℃まで昇温し、重合を開始した。重合開始から6時間後、重合率が60%に達した時点で、重合防止剤として共役ポリエンのソルビン酸を0.0525kg添加した。これにより、エチレン構造単位の含有量が44mole%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を得た。次に、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する反応液を蒸留塔に供給し、塔下部からメタノール蒸気を導入することで未反応酢酸ビニルを除去し、エチレン-酢酸ビニル共重合のメタノール溶液を得た。
【0037】
実施例EVOH1については、エチレンモノマーを酢酸ビニルモノマーと重合させて形成された成分(ethylene-vinyl acetate copolymer、以下では「EVAC」重合体と呼ぶ)により鹸化を行ってEVOHを形成した。
【0038】
次いで、EVOHをメタノールと水の比率が60:40のアルコール溶液中に溶解した。EVOH/メタノール/水の溶液を60℃下で1時間放置して、EVOH/メタノール/水の溶液中にEVOHが溶解するのを促進した。EVOH/メタノール/水溶液の固体含有量は41wt%である。
【0039】
その後、水中ペレット製造(underwater pelletization)により、上述のメタノール、水及びEVOHの溶液の造粒を行った。具体的には、ポンプを使用して、上述のメタノール、水及びEVOHの溶液を流速120L/minで供給管に送り、次に直径2.8mmの吸込管へ送り、回転ナイフを用いて1500rpmでカットして、EVOHのペレットを得た。同時に、5℃の循環凝縮水を用いてEVOHペレットを冷却した。次に、EVOHペレットを遠心分離して、EVOH粒子を分離し、分離後の円粒形状EVOH粒子を水で洗浄し、再び遠心分離して一度脱水してから、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬した後、乾燥を行い、且つステアリン酸カルシウムを添加して、EVOHペレットの最終生成物を得た。円粒形状EVOHペレットの最終生成物は、長辺が2.4mm、短辺が1.5mmのペレットである。
【0040】
遠心分離及び洗浄工程では、1回目の脱水機の回転数は3000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は10とし、輸送用遠心式ポンプ(pump)の種類は半開放型とし、輸送ポンプ(pump)の回転数は2000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は20とし、水洗浄時の水流速度は1m/minとした。2回目の脱水機の回転数は4000rpmとし、含水率が0.1%になるまで乾燥させた。
実施例EVOH2ペレット
【0041】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、実施例EVOH2に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、実施例EVOH2のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺が3.0mm、短辺が2.4mmである。1回目の脱水機の回転数は2000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は20とし、輸送用遠心式ポンプの種類は開放型とし、輸送ポンプの回転数は4000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は10とし、水洗浄時の水流速度は1.5m/minとした。2回目の脱水機の回転数は3000rpmとし、含水率が0.01%になるまで乾燥させた。
実施例EVOH3ペレット
【0042】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、実施例EVOH3に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、実施例EVOH3のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺が5.0mm、短辺が5.0mmである。1回目の脱水機の回転数は1500rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は5とし、輸送用遠心式ポンプの種類は開放型とし、輸送ポンプの回転数は3000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は25とし、水洗浄時の水流速度は2.5m/minとした。2回目の脱水機の回転数は1000rpmとし、含水率が0.3%になるまで乾燥させた。
実施例EVOH4ペレット
【0043】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、実施例EVOH4に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、実施例EVOH4のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺が0.5mm、短辺が0.5mmである。1回目の脱水機の回転数は4000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は15とし、輸送用遠心式ポンプの種類は半開放型とし、輸送ポンプの回転数は1000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は15とし、水洗浄時の水流速度は5m/minとした。2回目の脱水機の回転数は2000rpmとし、含水率が0.5%になるまで乾燥させた。
実施例EVOH5ペレット
【0044】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、実施例EVOH5に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、実施例EVOH5のEVOHペレットのエチレン含有量は28mole%とし、且つ実施例EVOH5のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺、短辺ともに2.5mmである。1回目の脱水機の回転数は1000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は5とし、輸送用遠心式ポンプの種類は開放型とし、輸送ポンプの回転数は3000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は20とし、水洗浄時の水流速度は3.5m/minとした。2回目の脱水機の回転数は3000rpmとし、含水率が0.04%になるまで乾燥させた。
実施例EVOH6ペレット
【0045】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、実施例EVOH6に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、実施例EVOH6のEVOHペレットのエチレン含有量は28mole%とし、且つ実施例EVOH6のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺、短辺ともに5mmである。1回目の脱水機の回転数は3000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は5とし、輸送用遠心式ポンプの種類は半開放型とし、輸送ポンプの回転数は4000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は15とし、水洗浄時の水流速度は2.5m/minとした。2回目の脱水機の回転数は3000rpmとし、含水率が0.05%になるまで乾燥させた。
比較例EVOH1ペレット
【0046】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、比較例EVOH1に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、比較例EVOH1のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺、短辺ともに6mmである。1回目の脱水機の回転数は2000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は1とし、輸送用遠心式ポンプの種類は半開放型とし、輸送ポンプの回転数は4000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は5とし、水洗浄時の水流速度は20m/minとした。2回目の脱水機の回転数は8000rpmとし、含水率が0.07%になるまで乾燥させた。
比較例EVOH2ペレット
【0047】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、比較例EVOH2に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、比較例EVOH2のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺、短辺ともに1mmである。1回目の脱水機の回転数は5000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は10とし、輸送用遠心式ポンプの種類は密閉型とし、輸送ポンプの回転数は7000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は0.5とし、水洗浄時の水流速度は5m/minとした。2回目の脱水機の回転数は3000rpmとし、含水率が0.8%になるまで乾燥させた。
比較例EVOH3ペレット
【0048】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、比較例EVOH3に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、比較例EVOH3のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺、短辺ともに4.5mmである。1回目の脱水機の回転数は2000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は50とし、輸送用遠心式ポンプの種類は開放型とし、輸送ポンプの回転数は1000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は100とし、水洗浄時の水流速度は0.5m/minとした。2回目の脱水機の回転数は1000rpmとし、含水率が0.5%になるまで乾燥させた。
比較例EVOH4ペレット
【0049】
実施例EVOH1ペレットと同様の工程を用いて、比較例EVOH4に用いられるEVOHペレットを調製した。但し、比較例EVOH4のEVOHペレットの調製時、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬し、その湿粒子の粒度は長辺、短辺ともに5.1mmである。1回目の脱水機の回転数は3000rpmとし、輸送時の水/湿粒子の重量比は3とし、輸送用遠心式ポンプの種類は半開放型とし、輸送ポンプの回転数は3000rpmとし、水洗浄時の水/湿粒子の重量比は8とし、水洗浄時の水流速度は10m/minとした。2回目の脱水機の回転数は3000rpmとし、含水率が0.4%になるまで乾燥させた。
[実施例2]
【0050】
下記の方法に基づき、実施例EVOHペレット1~6を用いてそれぞれフィルムを形成した。実施例EVOHペレット1~6及び比較例EVOHペレット1~4を単層Tダイキャストフィルム押出機(光学制御システムMEV4)へ送り、フィルムを調製した。実施例EVOHペレット1~6及び比較例EVOHペレット1~4により形成された各フィルムの厚さは20μmであった。押出機の温度は220℃に設定し、金型(即ちTダイ)の温度は230℃に設定した。スクリューの回転数は7rpm(rotations/minutes)とした。
[実施例3]
【0051】
実施例EVOHペレット1~6及び比較例EVOHペレット1~4の評価を行い、これらのEVOHペレット及びそれらにより形成されたフィルムの性質を判断した。上述の通り、実施例1に記載の方法と類似の方法に基づき、実施例EVOHペレット1~6を調製した。但し、EVOHペレット1~6の調製方法は、調製するEVOHペレットについて、異なったVmp、Vmc、Sp、Rz、ホウ素含有量又はアルカリ金属含有量を有するという面で異なっている。比較例EVOHペレット1~4についても、実施例1に記載したのと類似の方法に基づいて調製した。
【0052】
単軸スクリュー押出機の平均トルク及び押出機の電流をさらに評価した。実施例2に記載したのと同様の方法に従って、実施例EVOH1~6及び比較例EVOH1~4それぞれによりフィルムを形成し、フィルムに対する評価を行って、フィルム上のゲル(Gel)の大きさと数量を判断した。
【0053】
下記表1は、実施例EVOHペレット1~6及び比較例EVOHペレット1~4における幾つかの属性の概要であり、即ち、Vmp、Vmc、Sp、Rz、ホウ素含有量、アルカリ金属含有量、押出機の平均トルク及び押出機の電流、並びに実施例EVOH1~6と比較例EVOH1~4により形成されたフィルムのEVOHフィルム上におけるゲル発生状態である。
【0054】
【0055】
【0056】
各実施例及び比較例のホウ素含有量は、下記方法により測定した。最初に、濃硝酸とマイクロ波を用いて0.1gのEVOHペレット試料を分解し、EVOHペレットに試料溶液を形成させた。次に試料溶液を純水で希釈して濃度を0.75mg/mlに調整した。誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP emission spectrochemical analysis device、ICP-OES。分析計:iCAP7000(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、Thermo))を用いて、試料溶液中のホウ素含有量を測定した。上述のホウ素含有量とは、使用したホウ素化合物から誘導されるホウ素含有量と対応する測定値のことを指す。
【0057】
また、各実施例及び比較例のEVOHペレット中のアルカリ金属含有量も測定した。上述のEVOHペレット2gを白金皿に採取し、硫酸を数mL添加してガスバーナーで加熱した。ペレットが炭化して硫酸白煙がなくなるのを確認した後、数滴硫酸を添加して再び加熱した。この操作を有機物がなくなるまで繰り返し、完全に灰化させた。灰化が終わった容器を放冷し、塩酸を1mL添加して溶解させた。この塩酸溶液を超純水で洗浄し、50mLに定容した。この試料溶液中のアルカリ金属含有量を誘導結合プラズマ発光分析計(ICP-AES)(AgilentTechnology社製、720-ES型)によって測定した。最終的に、溶液中のアルカリ金属濃度から、上述のEVOH組成物ペレット中のアルカリ金属含有量として換算した。
【0058】
実施例EVOH1~6及び比較例EVOH1~4のペレットの表面粗さを評価するために、EVOHペレットをプレート上に平置きして、ペレットの表面粗さを測定して、測定時に傾斜度が0.5より大きい部分のデータは排除して、走査平面が相対的に水平な状態であるよう確保する必要がある(傾斜度=表面最大高さSz/解析範囲の辺の長さ129μm)。レーザ顕微鏡は、Olympus製のLEXT OLS5000-SAFであり、画像は24±3℃の空気温度及び63±3%の相対的温度下で生成した。濾波器は濾波なしに設定した。光源は405nm-波長の光源とした。対物レンズは拡大率100xとした(MPLAPON-100xLEXT)。光学ズームは1.0xに設定した。画像面積は129μm x 129μmに設定した(Rzを測定するとき、画像面積の中心線を測定する)。解像度は1024画素 x 1024画素に設定した。100個のペレットの数値を測定し、その平均値をとった。その中、Vmp、Vmc、SpはISO 25178:2012方法を用いて測定し、RzはJIS B 0601(2001)方法を用いて測定する。
【0059】
実施例EVOH1~6及び比較例EVOH1~4の加工時における押出機のトルク計算及び電流計算については、単軸スクリュー押出機を用いてEVOHペレットの押し出しを行った時に(型式はME25/5800V4、ブランドはOCS)、押出機のトルク値及び電流値を測定した。押し出し条件は以下の通りとした。スクリュー温度は、Zone1 195℃、Zone2 215℃、Zone3 220℃、Zone4 230℃、Zone5 230℃とした。スクリュー回転数は7rpmとした。計算時間は10~60分間とし、1分毎に1点を記録して、平均値を計算した。
【0060】
結果、実施例EVOH1~6は低いトルク出力(15~41Torque)及び電流(26.2~65オングストローム)を有していることが示され、実施例EVOH1~6は優れた加工トルク出力を表すことが示された。
【0061】
また、実施例EVOH1~6及び比較例EVOH1~4により形成されたフィルムのゲル(Gel)の計算については、EVOHを加工して単層フィルムに調製した後、フィルム品質検査システムFSA-100を用いて単層フィルムのGel数を分析し、評価基準により評価を行った。100μm未満のゲル数が450未満である場合、「O」により最良であることを示した。100μm未満のゲル数が450~1000である場合、「Δ」によりまずまずであることを示した。100μm未満のゲル数が1000超える場合、「X」により不良であることを示した。100~200μmのゲル数が50未満である場合、「O」により最良であることを示した。100~200μmのゲル数が50~100である場合、「Δ」によりまずまずであることを示した。100~200μmのゲル数が100超える場合、「X」により不良であることを示した。200μm超えるのゲル数が10未満である場合、「O」により最良であることを示した。200μm超えるのゲル数が10~20である場合、「Δ」によりまずまずであることを示した。200μm超えるのゲル数が20超える場合、「X」により不良であることを示した。
【0062】
実施例EVOH1~6により形成されたフィルムにおける100μm未満のゲル数はいずれも450より小さく、100~200μmのゲル数はいずれも100より小さく、200μm超えるのゲル数はいずれも10より小さく、優れた特性を表していた。
【0063】
発明者は、EVOHペレットの表面粗さが高すぎる場合には、単軸スクリューでの加工においてペレットに摩擦が発生した際、局部過熱が生じて架橋結合を招きやすくなり、加工時に大きなゲルが発生しやすくなることを発見した。EVOHペレットの表面粗さが低すぎる場合には、加工時に摩擦熱不足でEVOHが溶融できなくなり、押し出し後に微小なゲルが発生してしまう。従って、EVOHペレットの表面粗さを一定範囲にコントロールして、ゲル発生を回避する必要がある。
【0064】
表1中の実施例と比較例の比較から、発明者は、EVOHペレットの加工時に洗浄工程の製法の変数をコントロールすること、即ち、EVOH粒子をホウ酸/酢酸ナトリウム溶液中に浸漬する変数をコントロールすることで、本発明が期待する表面粗さを得ることができ、以下の特性を有することを発見した。
●ペレットが大きすぎるか、又は小さすぎると、水中輸送時に相互衝突して摩擦が生じてしまう。
●脱水機の回転数が高すぎること、水/湿粒子の重量比が低すぎること、輸送用遠心式ポンプに密閉型を使用すること、輸送ポンプの回転数が高すぎること、水流速度が速すぎることなどは、いずれも洗浄工程において湿粒子の相互衝突・摩擦を招いてしまう。
【0065】
比較例1は、粒子ペレットが大きく、輸送時の水/湿粒子の重量比が過度に低く、2回目の脱水機の回転数が高すぎたために、湿粒子に高い摩擦が生じ、粗さが上昇してしまった。比較例2は、粒子ペレットが過度に小さく、1回目の脱水機の回転数が過度に高く、密閉式延伸ポンプを使用しており、輸送ポンプの回転数が過度に高く、水洗浄時の水/湿粒子の重量比が低すぎたために、湿粒子に高い摩擦が生じ、粗さが上昇してしまった。比較例3は、輸送時の水/湿粒子の重量比が過度に高く、輸送ポンプの回転数が過度に低く、水洗浄時の水/湿粒子の重量比が過度に高く、水流速度が低すぎたために、粒子の摩擦度が足りず、粗さが不足してしまった。
【0066】
本発明を測定した結果、EVOHの表面粗さを特定の範囲内にコントロールするだけで、単軸スクリュー押出機内のトルク・電流、及びEVOHフィルムのゲル発生を低減することができていた。表1に示す通り、比較例EVOH1、2及び4は、本明細書に記載の所望範囲を上回るVmp、Vmc及びSpを有しており、測定結果では、いずれも高い押出機トルク出力及び押出機電流を有しており、それらにより形成されたフィルムにはゲルが過度に発生していた。比較例EVOH3は、本明細書に記載の所望範囲よりも低いVmp、Vmc及びSpを有しており、測定結果では良好なトルク出力及び電流を有していたものの、比較例EVOH3により形成されたフィルムにはゲルが過度に発生し、望ましくない性質を有していた。
【0067】
要約すると、本発明のEVOH樹脂組成物は低い表面粗さを有しており、特に表面粗さは、0.0008~10μm3/μm2の間のVmpである。また、本発明のEVOH樹脂組成物の表面粗さはさらに、0.005~50μm3/μm2の間のVmc及び/又は0.005~7μmの間のSpである。EVOH樹脂組成物の表面粗さのコントロールは、EVOH製造工程の洗浄段階における変数をコントロールすることにより達成し得る。EVOH樹脂組成物は、フィルム又は多層構造体の調製に用い得る。発明者は、EVOHペレットの表面粗さをコントロールすることによって、EVOHを加工する際のトルク出力を低減し得るだけでなく、EVOHにより形成されたフィルムに生じる余分なゲル数を減少させ得ることを発見した。
【0068】
本明細書において提供する全ての範囲は、割り当て範囲内における各特定の範囲及び割り当て範囲の間の二次範囲の組み合わせを含むという意味である。また、別段の説明がない限り、本明細書が提供する全ての範囲は、いずれも範囲のエンドポイントを含む。従って、範囲1~5は、具体的には1、2、3、4及び5、並びに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などの二次範囲を含む。
【0069】
本明細書において参照される全ての刊行物及び特許出願はいずれも参照により本明細書に組み込まれ、且つありとあらゆる目的から、各刊行物又は特許出願はいずれも各々参照により本明細書に組み込まれることを明確且つ個々に示している。本明細書と参照により本明細書に組み込まれるあらゆる刊行物又は特許出願との間に不一致が存在する場合には、本明細書に準ずる。
【0070】
本明細書で使用する「含む」、「有する」及び「包含する」という用語は、開放的、非限定的な意味を有する。「1」及び「当該」という用語は、複数及び単数を含むと理解されるべきである。「1つ以上」という用語は、「少なくとも1つ」を指し、従って単一の特性又は混合物/組み合わせた特性を含むことができる。
【0071】
操作の実施例中又は他の指示する場所を除き、成分及び/又は反応条件の量を示す全ての数字は、全ての場合においていずれも「約」という用語を用いて修飾することができ、示した数字の±5%以内であるという意味である。本明細書で使用する「基本的に含まない」又は「実質的に含まない」という用語は、特定の特性が約2%未満であることを意味する。本明細書中に明確に記載されている全ての要素又は特性は、特許請求の範囲から否定的に除外することができる。