(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】積層可能なインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20230525BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230525BHJP
C09D 11/30 20140101ALN20230525BHJP
【FI】
C09D11/101
C08F290/06
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2021529307
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2020063200
(87)【国際公開番号】W WO2020229474
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-05-24
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507258098
【氏名又は名称】アクツェンタ パネーレ ウント プロフィレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンニッヒ, ハンス-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュレンクレーメル, フェリックス
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-314552(JP,A)
【文献】特表2011-523603(JP,A)
【文献】特開2015-047748(JP,A)
【文献】特表2009-542833(JP,A)
【文献】特開2006-182971(JP,A)
【文献】特開2016-069654(JP,A)
【文献】国際公開第2019/005798(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0147873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層可能なインクであって、
前記積層可能なインクに対し、≧50重量%~≦95重量%の量の放射線硬化インク、及び
前記積層可能なインクに対し、≧5重量%~≦50重量%の量の熱的に活性化可能なマトリックス材料
を含み、
前記放射線硬化インクが、モノマー、オリゴマー、光開始剤、安定剤、阻害剤、分散剤及び/又は染料を含み、
前記放射線硬化インクが、前記積層可能なインクに対し、≧25重量%~≦60重量%の量のモノマー、≧5重量%~≦50重量%の量のオリゴマー、≧1重量%~≦10重量%の量の光開始剤、≧1重量%~≦3重量%の量の安定剤、≧1重量%~≦3重量%の量の分散剤、及び≧1重量%~≦60重量%の量の染料を含み、
前記マトリックス材料が、前記積層可能なインクに対し、≧1重量%~≦30重量%の量の少なくとも1種の熱的に活性化可能なポリマー、及び、≧1重量%~≦10重量%の量のマクロマーを含み、
前記モノマーが、イソボルニルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択される単官能モノマー
、1,3-グリセロールジメタクリレート
、1,10-デカンジオールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択される二官能モノマー
、及び/又は、トリメチロールプロパントリメタクリレートを含
み、
前記マクロマーが、ポリオキシエチレンクロロトリアジン、ポリオキシプロピレンクロロトリアジン、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、ポリスチレンブチルアクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択される、
積層可能なインク。
【請求項2】
前記オリゴマーが、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、メラミンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の積層可能なインク。
【請求項3】
前記光開始剤が、ベンゾフェノン、アルファケトン、チオフェニルモルホリンプロパノン、チオキサントン及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1または2に記載の積層可能なインク。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリメチルメタクリレート、コポリアクリレート、熱可塑性ポリウレタン、コポリアミド、コポリエステル、液状ポリブタジエン、コロホニー変性ポリイソブテン及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層可能なインク。
【請求項5】
前記ポリマーの数平均分子量が、≧700g/mol~≦20,000g/molの範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層可能なインク。
【請求項6】
前記マトリックス材料が溶媒を含み、前記溶媒が、シクロヘキサノン、ブタノン、メチルエチルケトン、キシレン、酢酸エチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ギ酸及びそれらの混合物からなる群より選択される、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の積層可能なインク。
【請求項7】
化粧層を形成するための請求項1~
6のいずれか一項に記載の積層可能なインクの使用。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の積層可能なインクの使用によって形成された化粧を有する化粧層を含む化粧パネル。
【請求項9】
請求項
8に記載の化粧パネルを製造する方法であって、少なくとも、
a.板状担体を用意するステップ、
b.請求項1~
6のいずれか一項に記載の積層可能なインクを用いて前記板状担体の少なくとも一部に化粧を印刷するステップ、
c.前記化粧を電磁放射線で硬化させるステップ、
d.前記化粧の少なくとも一部領域に摩耗層及び/又は被覆層を積層するステップ
を含み、硬化インクが前記化粧の積層中に熱的に活性化され、積層体と結合を形成する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層可能なインク、積層可能なインクの使用、積層可能なインクで形成された化粧層を含む化粧パネル、及び積層可能なインクで形成された化粧層を含む化粧パネルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧表面は、魅力的かつ個別化された外観を作る多くの用途で使用される。このために、表面は、種々の印刷プロセスを用いて化粧が施されることが多い。この場合、インクは、所望のパターンで表面に移され、次いで定着されて、化粧層を形成する。多くの領域においては、放射線硬化インクの使用が有用であることがわかった。この理由は、該インクは、印刷表面に移された直後にUV照射、電子線などの放射線によって硬化することができ、そのため、インクが流れず、特に鮮明なパターンを有する化粧層を形成することができるからである。このタイプのインクは、非吸収性サブ表面で印刷が行われるときに特に使用される。
【0003】
特に、個別化された化粧表面の製造においては、インクジェット印刷がしばしば使用される。ここで、インクは、テンプレートに基づいてコンピュータ制御ノズルによって印刷表面に移される。放射線硬化インクは、インクジェット印刷プロセス後に、公知の方法で放射線によって定着させることができる。さらに、機能表面にはますます表面化粧が施されている。例えば、化粧が施された壁、天井及び床パネルが機能表面を有する。
【0004】
化粧パネル自体は公知であり、壁パネルという用語は、天井又はドア外装材として適切なパネルも意味する。それらは、通常、固体材料、例えば、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)などの木質材料、木-プラスチック複合材料(WPC)又は無機質-プラスチック複合材料(MPC)でできた担体又は芯材からなり、担体又は芯材の少なくとも片面には化粧層及び被覆層、場合によっては更なる層、例えば、化粧層と被覆層の間に配置された摩耗層が設けられる。MDF又はHDF担体の場合には、化粧層は、通常、担体上に配置され、例えば紙層で形成され得る、印刷サブ表面上に設けられる。ここで、紙層が担体上に設けられる前に化粧層を紙層上に既に印刷すること、又は当初印刷されていない紙層を担体上に設け、次いで化粧層を紙層上にいわゆる直接印刷プロセスによって設けることは公知である。プラスチック複合材料に基づく担体の場合には、場合によっては印刷サブ表面を直接印刷プロセスで設けた後に、担体に化粧を施すことが知られている。
【0005】
こうした化粧表面は、通常、機械的摩耗、耐汚染性、耐衝撃性などに関して高度な要求を満たさなければならない。したがって、しばしば、摩耗層又は被覆層が化粧表面に通常設けられる。多くの場合においては、化粧テンプレートをまねた表面構造体がこうした摩耗層又は被覆層に導入され、そのため、化粧パネルの表面は、その形状及びパターンに関して、また触覚に関しても、原物にできるだけ近い天然材料のレプリカを得るために、施された化粧に適合した触覚的に知覚可能な構造を有するものとされる。
【0006】
摩耗層又は被覆層は、しばしば、圧力及び温度の影響下で設けられる。こうしたプロセスは、積層とも呼ばれる。
【0007】
ここで、化粧層上に設けられた追加の層は化粧層に良く付着すること、可能であれば、十分な結合強度、特に十分な物理的又は化学的結合強度の結合を形成することが重要である。
【0008】
したがって、更なる層に対する良好な結合性が放射線硬化後に達成される、放射線硬化インクを提供する必要がある。
【0009】
公知の放射線硬化インクの欠点は、硬化の結果、他の層に対してもはや良好に結合することができないことにある。したがって、公知の放射線硬化インクは、かろうじて積層することしかできない。これまで、結合は、接着剤を化粧層に塗布することによって主に行われてきた。しかし、少なくとも1つの追加の工程段階がそのために必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、改善された積層可能なインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の積層可能なインクによって、また、請求項8に記載のこのような積層可能なインクの使用、請求項9に記載の積層可能なインクの化粧層を含むパネル、及び請求項10に記載のこのようなパネルを製造する方法によっても、達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、明細書又は実施例に示され、従属請求項、明細書又は実施例に記述又は示される更なる特徴は、文脈がそれに反することを明示しない場合、個々に又は任意の組合せで本発明の主題を構成することができる。
【0012】
本発明は、積層可能なインクを提案し、該積層可能なインクは、
前記積層可能なインクに対し、好ましくは≧50重量%~≦99重量%、好ましくは≧70重量%~≦95重量%、特に好ましくは≧80重量%~≦90重量%の量の放射線硬化インク、及び
前記積層可能なインクに対し、好ましくは≧1重量%~≦50重量%、好ましくは≧5重量%~≦30重量%、特に好ましくは≧10重量%~≦20重量%の量の熱的に活性化可能なマトリックス材料
を含み、
前記マトリックス材料が、前記積層可能なインクに対し、好ましくは≧1重量%~≦30重量%、好ましくは≧5重量%~≦20重量%、特に好ましくは≧10重量%~≦15重量%の量の少なくとも1種の熱的に活性化可能なポリマーを含む。
【発明の効果】
【0013】
驚くべきことに、このような積層可能なインクを用いて、特にインクジェット印刷によって、化粧層を形成することができ、積層可能なインクは依然として放射線硬化可能であり、放射線硬化プロセス後に積層することができ、積層前に接着剤を化粧層にさらに塗布せずに、積層体と良好な結合強度が得られることを示すことができた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、放射線硬化インクとは、適切な波長の電磁放射線、例えばUV照射又は電子線によって誘導されて、少なくとも部分的に反応し、固まるインク、すなわち着色液を意味する。
【0015】
本発明では、熱的に活性化可能なポリマーは、特に放射線硬化後においても、温度にさらされた時に軟化又は液化し、さらに重合又は架橋し得るポリマーとして理解される。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、モノマー、オリゴマー、光開始剤、安定剤、分散剤及び/又は染料を含むものとすることができる。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、好ましくは≧20重量%~≦70重量%、好ましくは≧25重量%~≦60重量%、特に好ましくは≧30重量%~≦50重量%の量のモノマーを含むものとすることができる。
【0018】
本発明では、モノマーは、光開始剤によって開始され、重合反応に入り、ポリマーを形成する有機分子として理解される。モノマーは、最初に希釈剤として働き、したがって積層可能なインクを印刷可能にし、重合中に、特にインクの硬化及び架橋に役立つ。したがって、本発明におけるモノマーは、インク組成物の粘度に影響し、光開始重合反応時においても、対応するポリマーに架橋する、反応性希釈剤であり得る。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、好ましくは≧5重量%~≦50重量%、好ましくは≧8重量%~≦40重量%、特に好ましくは≧10重量%~≦20重量%の量のオリゴマーを含むものとすることができる。
【0020】
本発明では、オリゴマーは、少数の繰返し単位しか含まない低分子量ポリマーとして理解される。オリゴマーは、印刷表面への付着に役立ち、重合の場合には特に硬化及び架橋にも役立つ。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、好ましくは≧1重量%~≦10重量%、好ましくは≧3重量%~≦8重量%、特に好ましくは≧4重量%~≦6重量%の量の光開始剤を含むものとすることができる。
【0022】
本発明では、光開始剤は、電磁放射線の吸収下、特にUV光などの光の吸収下で反応に入り、重合反応を開始することができる反応性化合物を形成する化合物として理解される。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、好ましくは≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の安定剤を含むものとすることができる。
【0024】
本発明では、安定剤は、組成物の安定性を向上させる化合物として理解される。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、好ましくは≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の分散剤を含むものとすることができる。
【0026】
本発明では、分散剤は、分散を安定化する化合物として理解される。分散剤は、例えば、分散される粒子の表面に吸着し、したがって粒子の凝集を防止する。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、好ましくは≧1重量%~≦60重量%、好ましくは≧10重量%~≦50重量%、特に好ましくは≧20重量%~≦40重量%の量の染料を含むものとすることができる。
【0028】
本発明では、染料は、特徴的な色を有する化合物として理解される。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧20重量%~≦70重量%、好ましくは≧25重量%~≦60重量%、特に好ましくは≧30重量%~≦50重量%の量のモノマー、≧5重量%~≦50重量%、好ましくは≧8重量%~≦40重量%、特に好ましくは≧10重量%~≦20重量%の量のオリゴマー、≧1重量%~≦10重量%、好ましくは≧3重量%~≦8重量%、特に好ましくは≧4重量%~≦6重量%の量の光開始剤、≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の安定剤、≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の分散剤、及び≧1重量%~≦60重量%、好ましくは≧10重量%~≦50重量%、特に好ましくは≧20重量%~≦40重量%の量の染料を含むものとすることができる。
【0030】
このようにして、積層可能なインクが良好な放射線硬化性を有し、安定であり、良好な色特性を有し、積層能力が悪影響を受けないということを有利に達成することができる。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態においては、熱的に活性化可能なマトリックス材料は、積層可能なインクに対し、好ましくは≧0重量%~≦15重量%、好ましくは≧1重量%~≦10重量%、特に好ましくは≧2重量%~≦5重量%の量のマクロマーを含むものとすることができる。
【0032】
本発明では、マクロマーは、反応性末端基を有し、したがって重合可能である、高分子化合物として理解される。マクロマーは、例えば、コーティングの表面自由エネルギーを変化させ、接着を助ける。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態においては、熱的に活性化可能なマトリックス材料は、積層可能なインクに対し、好ましくは≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の溶媒を含むものとすることができる。
【0034】
本発明では、溶媒は、ポリマーを溶解させる液体として理解される。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態においては、熱的に活性化可能なマトリックス材料は、積層可能なインクに対し、≧0重量%~≦15重量%、好ましくは≧1重量%~≦10重量%、特に好ましくは≧2重量%~≦5重量%の量のマクロマー、及び、任意で、≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の溶媒を含むものとすることができる。
【0036】
その結果、積層可能なインクが放射線硬化性、安定性及び色特性に不利な影響を及ぼさずに良好な積層能力を有するということを有利に達成することができる。
【0037】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧20重量%~≦70重量%、好ましくは≧25重量%~≦60重量%、特に好ましくは≧30重量%~≦50重量%の量のモノマー、≧5重量%~≦50重量%、好ましくは≧8重量%~≦40重量%、特に好ましくは≧10重量%~≦20重量%の量のオリゴマー、≧1重量%~≦10重量%、好ましくは≧3重量%~≦8重量%、特に好ましくは≧4重量%~≦6重量%の量の光開始剤、≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の安定剤、≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の分散剤、及び≧1重量%~≦60重量%、好ましくは≧10重量%~≦50重量%、特に好ましくは≧20重量%~≦40重量%の量の染料を含み、熱的に活性化可能なマトリックス材料は、積層可能なインクに対し、≧0重量%~≦15重量%、好ましくは≧1重量%~≦10重量%、特に好ましくは≧2重量%~≦5重量%の量のマクロマー、及び、任意で、≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の溶媒を含むものとすることができる。
【0038】
その結果、積層可能なインクが特に良好な積層能力、放射線硬化性、安定性及び色特性を有するということを有利に達成することができる。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記モノマーはアクリレートモノマーとすることができる。
【0040】
その結果、積層可能なインクが特に良好に放射線硬化することができるということを有利に達成することができる。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記モノマーは、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー又はそれらの混合物からなる群より選択されるものとすることができる。
【0042】
種々のモノマーによって、積層可能なインクの硬化性を有利に調節することができる。特に、これにより、例えば、硬化インクの分子量を調節することができる。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記モノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、N-ビニルカプロラクタム、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-カルボキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、トリデシルアクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択される単官能モノマーを含むものとすることができる。
【0044】
前記単官能モノマーは、積層可能なインクが特に容易に硬化することを有利に保証することができる。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記モノマーは、1,3-グリセロールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択される二官能モノマーを含むものとすることができる。
【0046】
その結果、前記モノマーが硬化中にさらなる架橋を形成し、それによって化粧層の特に良好な安定性が得られるということを有利に達成することができる。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記モノマーは、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリルプロポキシトリアクリレート、ペンタノスリトールトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択される多官能モノマーを含むものとすることができる。
【0048】
その結果、モノマーが硬化中にさらなる架橋を形成し、それによって化粧層の特に良好な安定性が得られるということを有利に達成することもできる。
【0049】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記モノマーはトリメチロールプロパントリアクリレートであるものとすることができる。
【0050】
本発明の別の特に好ましい一実施形態においては、前記モノマーはイソボルニルアクリレートとグリシジルメタクリレートとの混合物であるものとすることができる。
【0051】
驚くべきことに、トリメチロールプロパントリアクリレート又はイソボルニルアクリレートとグリシジルメタクリレートとの混合物が前記モノマーとして特に適切であることを示すことができた。これは、積層可能なインクが特に良好に放射線硬化することができ、同時に特に良好に積層され得るということを有利に達成することができることによる。
【0052】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧20重量%~≦70重量%、好ましくは≧35重量%~≦50重量%、特に好ましくは≧40重量%~≦45重量%の量のトリメチロールプロパントリアクリレートをモノマーとして含むものとすることができる。
【0053】
本発明の別の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧20重量%~≦70重量%、好ましくは≧25重量%~≦50重量%、特に好ましくは≧30重量%~≦45重量%の量のイソボルニルアクリレートとグリシジルメタクリレートとの混合物をモノマーとして含むものとすることができる。
【0054】
驚くべきことに、これらの量のトリメチロールプロパントリアクリレート又はイソボルニルアクリレートとグリシジルメタクリレートとの混合物を用いて、特に良好な放射線硬化が有利に得られることを示すことができた。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記オリゴマーはアクリレートコオリゴマーであるものとすることができる。
【0056】
その結果、積層可能なインクが特に良好に放射線硬化することができるということを有利に達成することができる。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記オリゴマーは、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、メラミンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択されるものとすることができる。
【0058】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記オリゴマーはウレタンアクリレートであるものとすることができる。
【0059】
本発明の別の特に好ましい一実施形態においては、前記オリゴマーはメラミンアクリレートであるものとすることができる。
【0060】
驚くべきことに、ウレタンアクリレート又はメラミンアクリレートはオリゴマーとして特に適切であることを示すことができた。これは、このようにして、積層可能なインクが特に良好に放射線硬化することができ、同時に特に良好に積層され得るということを有利に達成することによる。
【0061】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧5重量%~≦50重量%、好ましくは≧8重量%~≦20重量%、特に好ましくは≧10重量%~≦15重量%の量のウレタンアクリレートをオリゴマーとして含むものとすることができる。
【0062】
本発明の別の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧5重量%~≦50重量%、好ましくは≧8重量%~≦20重量%、特に好ましくは≧10重量%~≦15重量%の量のメラミンアクリレートをオリゴマーとして含むものとすることができる。
【0063】
驚くべきことに、これらの量のウレタンアクリレート又はメラミンアクリレートを用いて、特に良好な放射線硬化が有利に得られることを示すことができた。
【0064】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記オリゴマーは分子量が≧500g/mol~≦5,000g/molの範囲であるものとすることができる。
【0065】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記光開始剤は、ベンゾフェノン、アルファケトン、チオフェニルモルホリンプロパノン、チオキサントン及びそれらの混合物からなる群より選択されるものとすることができる。
【0066】
その結果、対応する波長範囲の放射線、例えば、UV照射によって硬化を良好に開始することができるということを有利に達成することができる。
【0067】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記光開始剤はアルファケトンであるものとすることができる。
【0068】
本発明の別の特に好ましい一実施形態においては、前記光開始剤はチオフェニルモルホリンプロパノンであるものとすることができる。
【0069】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧1重量%~≦10重量%、好ましくは≧3重量%~≦8重量%、特に好ましくは≧4重量%~≦6重量%の量のアルファケトンを光開始剤として含むものとすることができる。
【0070】
本発明の別の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧1重量%~≦10重量%、好ましくは≧3重量%~≦8重量%、特に好ましくは≧4重量%~≦5重量%の量のチオフェニルモルホリンプロパノンを光開始剤として含むものとすることができる。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記分散剤は、Efka 4000、Efka 5000、Efka 6000、Dispex、ultradisperse、RAD-SPERSE及びそれらの混合物からなる群より選択されるものとすることができる。
【0072】
その結果、積層可能なインクの色が、積層能力又は放射線硬化性に悪影響を及ぼさずに均一であるということを有利に達成することができる。
【0073】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量のRAD-SPERSEを分散剤として含むものとすることができる。
【0074】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記安定剤は、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2-ジヒドロキシ-4,4-ジメトキシベンゾフェノン及びそれらの混合物からなる群より選択されるものとすることができる。
【0075】
その結果、積層可能なインクが熱的に安定であるということを有利に達成することができる。
【0076】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、放射線硬化インクは、積層可能なインクに対し、≧0重量%~≦5重量%、好ましくは≧1重量%~≦3重量%、特に好ましくは≧1.5重量%~≦2.5重量%の量の2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノンを分散剤として含むものとすることができる。
【0077】
その結果、積層可能なインクが熱的に安定であり、インクの放射線硬化性及び積層能力が損なわれないということを有利に達成することができる。
【0078】
本発明の更なる一実施形態によれば、積層可能なインクは阻害剤を含むものとすることができる。この阻害剤は、好ましくは、≧0重量%~≦2重量%、好ましくは≧0.005重量%~≦1重量%、特に好ましくは≧0.01重量%~≦0.1重量%の量で積層可能なインクに含むことができる。
【0079】
本発明の更なる一実施形態によれば、前記阻害剤は、ヒドロキノン、メトキシメチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、p-メトキシキノン、フェノチアジン、モノ-tert-ブチルヒドロキノン、1,2-ジヒドロキシベンゼン、p-tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-p-ジメチル-p-ベンゾキノン、アントラキノン、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキシトルエン及び有機ホスファイトからなる群より選択される少なくとも1種の化合物とすることができる。
【0080】
適切な阻害剤の供給は、有利には、積層可能なインクの発熱分解を抑制することができ、光開始重合の制御に役立つことができる。
【0081】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記染料は、有機及び/又は無機顔料であるものとすることができる。
【0082】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記染料は、NB1、NB2、PB1、PB1:2、PB15:1、NBr3、NBr7、NBr9、PBr1、NY2、NY3、NY6、NY10、NY11、NY12、NY13、NY14、PY1、PY2、PY3、PY4、PY5、PY6、NG1、NG2、PG1、PG2、PG4、PG13、NO2、NO4、NO5、NO6、PO17、PO20、NR1、NR2、NR11、NR23、NV1、PV1、PV1:1、PV1:3、PV3:3、NBK3、NBK6、NBK9、PBK11及びそれらの混合物からなるカラーインデックスによって指定される群から選択されるものとすることができる。
【0083】
その結果、前記染料の色は、放射線硬化性及び積層能力に特に悪影響を及ぼさずに、所望のとおりに有利に設定することができる。
【0084】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記染料は平均粒径が200nm以下、好ましくは100nm以下であるものとすることができる。
【0085】
本発明では、平均粒径は、レーザー回折法で測定された体積平均粒径D50と理解すべきである。
【0086】
このようにして、インクが均一な色を有し、インクジェットプリンタを使用して良好に印刷できるということを有利に達成することができる。特に、印刷ノズルの目詰まりをそれによって防止することができる。
【0087】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは、UV安定ポリマーであるものとすることができる。
【0088】
このようにして、熱的に活性化可能なマトリックス材料がUV照射による放射線硬化中に損なわれないということを達成することができる。
【0089】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは、ポリメチルメタクリレート、コポリアクリレート、熱可塑性ポリウレタン、コポリアミド、コポリエステル、液状ポリブタジエン、コロホニー変性ポリイソブテン及びそれらの混合物からなる群より選択されるものとすることができる。
【0090】
驚くべきことに、これらのポリマーはポリマーとして特に適切であることを示すことができた。
【0091】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは数平均分子量が≧700g/mol~≦20,000g/molの範囲であるものとすることができる。
【0092】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは数平均分子量が≧700g/mol~≦15,000g/molの範囲であるポリメチルメタクリレートを含むものとすることができる。
【0093】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは数平均分子量が≧1,500g/mol~≦20,000g/molの範囲である熱可塑性ポリウレタンを含むものとすることができる。
【0094】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは数平均分子量が≧2,000g/mol~≦18,000g/molの範囲であるコポリアミドを含むものとすることができる。
【0095】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは数平均分子量が≧3,000g/mol~≦20,000g/molの範囲であるコポリエステルを含むものとすることができる。
【0096】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは数平均分子量が≧1,000g/mol~≦3,000g/molの範囲である液状ポリブタジエンを含むものとすることができる。
【0097】
前記ポリマーによって、マトリックス材料が積層中に活性化され、積層された被覆層を有する化粧層が、良好な結合強度で安定な結合を形成するということを有利に達成することができる。特に、前記ポリマーによって、積層可能なインクの物性がそれほど損なわれず、そのため、良好な印刷能力及び良好な放射線硬化性が維持されるということを達成することができる。
【0098】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは平均粒径が500μm以下、好ましくは80μm以下、特に好ましくは1μm以下であるものとすることができる。
【0099】
その結果、前記ポリマーは積層可能なインク中に良好に分布して存在することができ、そのため、積層能力が全印刷領域にわたって一貫して良好であるということを有利に達成することができる。
【0100】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは、平均粒径150μm以下のポリメチルメタクリレートを含むものとすることができる。
【0101】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは、平均粒径170μm以下、特に2μm以下の熱可塑性ポリウレタンを含むものとすることができる。
【0102】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは、平均粒径400μm以下、特に1m以下のコポリエステル及び/又はコポリアミドを含むものとすることができる。
【0103】
驚くべきことに、前記範囲が特定のポリマーに特に適していることを示すことができた。
【0104】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは融解範囲≧170℃~≦210℃のポリメチルメタクリレートを含むものとすることができる。
【0105】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは融解範囲≧105℃~≦132℃の熱可塑性ポリウレタンを含むものとすることができる。
【0106】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは融解範囲≧118℃~≦128℃のコポリアミドを含むものとすることができる。
【0107】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは融解範囲≧110℃~≦120℃のコポリエステルを含むものとすることができる。
【0108】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーはコポリアクリレート及び/又は液状ポリブタジエンであるものとすることができる。
【0109】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは、EN ISO3219に従って測定した粘度が、300mPa s以上~500mPa s以下の範囲であるコポリアクリレートであるものとすることができる。
【0110】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは、EN ISO3219に従って測定した粘度が、200mPa s以上~450mPa s以下の範囲である液状ポリブタジエンであるものとすることができる。
【0111】
その結果、対応するポリマーがマトリックス材料の良好な熱的活性化能力を生じ、同時に、積層可能なインクの印刷能力を良好にする粘度を有するということを有利に達成することができる。
【0112】
好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは温度範囲100℃以上~130℃以下で積層し得るものとすることができる。
【0113】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記ポリマーは、タッキファイヤーとも呼ばれる粘着付与剤から選択されるものとすることができる。例えば、前記ポリマーは、好ましくは、コロホニーエステル樹脂、特にコロホニーエステル変性ポリイソブテンとすることができる。
【0114】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記マトリックス材料は、数平均分子量が≧700g/mol~≦15,000g/molの範囲であり、融解範囲が≧170℃~≦210℃である、ポリメチルメタクリレートを含むものとすることができる。
【0115】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記マトリックス材料は、数平均分子量が≧1,500g/mol~≦20,000g/molの範囲であり、融解範囲が≧105℃~≦132℃である、熱可塑性ポリウレタンを含むものとすることができる。
【0116】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記マクロマーは、ポリオキシエチレンクロロトリアジン、ポリオキシプロピレンクロロトリアジン、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、ポリスチレンブチルアクリレート及びそれらの混合物からなる群より選択されるものとすることができる。
【0117】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記マクロマーは分子量が≧150g/mol~≦400g/molの範囲であるものとすることができる。
【0118】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記マクロマーはポリエチレングリコールであるものとすることができる。
【0119】
本発明の別の好ましい一実施形態においては、前記マクロマーはポリエーテルであるものとすることができる。
【0120】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記マクロマーはポリエチレングリコールであり、前記ポリマーは熱可塑性ポリウレタンであるものとすることができる。
【0121】
本発明の別の特に好ましい一実施形態においては、前記マクロマーはポリエーテルであり、前記ポリマーはポリメチレンメタクリレートであるものとすることができる。
【0122】
本発明の別の一実施形態においては、マトリックス材料はマクロマーを含まず、前記ポリマーは液状ポリブタジエンであるものとすることができる。
【0123】
前記実施形態によって、積層可能なインクが被覆層と特に強い結合を形成することができるということを有利に達成することができる。
【0124】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記溶媒は、シクロヘキサノン、ブタノン、メチルエチルケトン、キシレン、酢酸エチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ギ酸及びそれらの混合物からなる群より選択されるものとすることができる。
【0125】
その結果、前記ポリマーが積層可能なインク中に特に良好に分散される、又は溶解すらもされるということを有利に達成することができる。このようにして、ポリマーの特に均一な分布を得ることができる。
【0126】
本発明は、化粧層を形成するための前記積層可能なインクの使用も提案する。
【0127】
本発明の一実施形態においては、化粧パネルの積層化粧層を形成するために積層可能なインクが使用される。
【0128】
本発明に係る使用によって、表面に化粧を施すことができ、保護層をその化粧上に直接設けることができるということを達成することができる。
【0129】
本発明は、前述の積層可能なインクでできた化粧を有する化粧層を含む化粧パネルも提案する。
【0130】
本発明に係る化粧パネルの使用によって、特に精密な化粧表面を実現することができ、該化粧表面を少なくとも1つの保護層で保護することができる。
【0131】
本発明は、前述の積層可能なインクでできた化粧を有する化粧層を含む化粧パネルを製造する方法も提案する。
【0132】
このために、該方法は、少なくとも以下のステップを含む。
a.板状担体を用意する、
b.前述の積層可能なインクを用いて板状担体の少なくとも一部に化粧を印刷する、
c.化粧を電磁放射線、好ましくはUV照射で硬化させる、
d.化粧の少なくとも一部領域に摩耗層及び/又は被覆層を積層する、
ここで、前記硬化インクは、化粧の積層中に熱的に活性化され、積層体と結合を形成する。
【0133】
「担体」は、完成パネルにおける芯材又は基材層として働く層であって、木質材料などの天然材料、繊維材料、又はプラスチックを含む材料を特に含有することができる層として特に理解される。例えば、前記担体は、既に、パネルに適切な安定性を付与することができるか、又はパネルの適切な安定性に寄与することができる。
【0134】
本発明では、木質材料は、固体木質材料に加えて、クロス・ラミネイディッド・ティンバー、集成木材、合板、ベニヤ板、単板積層材、パラレルストランドランバー、湾曲合板などの材料である。さらに、本発明では、木質材料は、プレスボード、押出板、配向性構造ボード(OSB)及びラミネーテッドストランドランバーなどのチップボード、並びに木質繊維断熱板(HFD)、半硬質及び硬質繊維板(MB、HFH)、特に中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)などの木質繊維材でもある。木材ポリマー材料(木材プラスチック複合材、WPC)、発泡体、硬質発泡体、ハニカム紙などの軽量芯材とその上に設けられた木材層とでできたサンドイッチボード、例えばセメントを用いた、無機硬化チップボードなどの現代の木質材料でさえも本発明では木質材料である。さらに、コルクも本発明では木質材料である。
【0135】
対応するパネル又は担体の製造に使用することができるプラスチックは、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP))、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、それらの混合物又はコポリマーなどの熱可塑性プラスチックである。プラスチックは、炭酸カルシウム(チョーク)、酸化アルミニウム、シリカゲル、石英粉、木粉、タルク、フライアッシュ、石膏などの一般的な充填剤を含むことができる。それらは、公知の様式で着色することもできる。
【0136】
「ウェブ状担体」は、その製造プロセスにおいて、例えば、ウェブ状であり、したがって、その厚さ又は幅に比べて長さがかなり長く、その長さが例えば15メートルを超え得る担体として理解され得る。
【0137】
本発明では「板状担体」は、さらに、ウェブ状担体から分離して形成され、プレートの形状で形成される担体として理解され得る。さらに、板状担体は、製造されるパネルの形状及び/又はサイズを既に限定してもよい。しかし、板状担体は、大型プレートとしても提供され得る。本発明における大型プレートは、特に、その寸法が最終化粧パネルの寸法を数倍超える担体であって、製造プロセスの過程で、例えば、鋸引き、レーザー又はウォータージェット切断によって、対応する複数の化粧パネルに分離される担体である。例えば、大型プレートはウェブ状担体に相当し得る。
【0138】
本発明では、積層とは、圧力及び/又は温度の作用による2つの層の強固な結合を意味する。
【0139】
本発明では、熱的活性化は、第2の熱硬化としても理解される。
【0140】
本発明の一実施形態においては、ステップa)とb)の間で、印刷サブ表面が板状担体上に設けられるものとすることができる。
【0141】
本発明では、印刷サブ表面は、板状担体上のインクの接着を改善することができる層として理解される。
【0142】
ここで、前記積層可能なインクの使用による板状担体上への化粧の印刷は、従来法によって実現することができる。例えば、前記化粧は、フレキソ印刷、オフセット印刷又はスクリーン印刷プロセスにおいて積層可能なインクを用いて形成されるものとすることができる。好ましくは、積層可能なインクを用いた化粧は、特にインクジェットプロセスなどのデジタル印刷技術を使用して形成されるものとすることができる。
【0143】
このようにして、特に特有の化粧を形成できるということを達成することができる。
【0144】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記化粧は、異なる色の複数の前述の積層可能なインクから形成されるものとすることができる。
【0145】
このようにして、特に、多色の化粧を形成することができる。
【0146】
本発明の一実施形態においては、前記化粧の硬化は、電磁放射線、好ましくはUV照射によって実現されるものとすることができる。
【0147】
ここで、UV照射は、特に、例えば、100~380nmなどの10~450nmの波長範囲の放射線として理解され得る。
【0148】
このようにして、積層可能なインクがマトリックスの熱反応性を損なわずに硬化されるということを有利に達成することができる。
【0149】
この場合、こうした放射線は、例えば、中圧エミッタを用いてそれ自体公知の方法で、発生させることができる。例えば、水銀ランプなどの放電灯を使用することができる。
【0150】
本発明の一実施形態においては、前記摩耗層及び/又は被覆層は、ラッカー、樹脂又はフィルムであるものとすることができる。
【0151】
本発明の一実施形態においては、前記被覆層は、例えば、少なくとも部分的に熱的に硬化される液状のラッカー含有被覆層とすることができ、前記硬化インクは熱的に活性化することができ、硬化被覆層と結合する。
【0152】
本発明の一実施形態においては、前記摩耗層及び/又は被覆層は、例えばメラミンをベースとする予め形成されたオーバーレイ層として、印刷担体上に位置し、圧力及び/又は熱の作用によって印刷担体と結合する。ここで、前記硬化インクは、熱的に活性化することができ、摩耗層及び/又は被覆層と結合するものとすることができる。
【0153】
さらに、前記摩耗層及び/又は被覆層を形成するために、例えば、アクリルラッカーなどの放射線硬化ラッカーのような放射線硬化組成物を塗布することが好ましい。ここで、前記摩耗層は、層の耐摩耗性を高めるために、窒化チタン、炭化チタン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化タンタル、酸化アルミニウム(コランダム)、酸化ジルコニウム、それらの混合物などの硬質材料を含むものとすることができる。塗布は、例えば、ゴムローラーなどのローラー又は注入装置によって行うことができる。
【0154】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記硬化インクは、積層中に100℃以上~150℃以下の温度範囲で熱的に活性化されるものとすることができる。
【0155】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、ポリメチルメタクリレートをポリマーとして含み、前記硬化インクは130℃以上~140℃以下の温度範囲で熱的に活性化されるものとすることができる。
【0156】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、熱可塑性ポリウレタンをポリマーとして含み、前記硬化インクは100℃以上~120℃以下の温度範囲で熱的に活性化されるものとすることができる。
【0157】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、コポリアミドをポリマーとして含み、前記硬化インクは125℃以上~145℃以下の温度範囲で熱的に活性化されるものとすることができる。
【0158】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、コポリエステルをポリマーとして含み、前記硬化インクは105℃以上~115℃以下の温度範囲で熱的に活性化されるものとすることができる。
【0159】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、液状ポリブタジエンをポリマーとして含み、前記硬化インクは110℃以上~130℃以下の温度範囲で熱的に活性化されるものとすることができる。
【0160】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、コロホニー変性ポリイソブテンをポリマーとして含み、前記硬化インクは100℃以上~120℃以下の温度範囲で熱的に活性化されるものとすることができる。
【0161】
前記温度範囲の結果として、前記硬化インクが特に良好に熱的に活性化されるということを達成することができる。
【0162】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、積層中に、2バール以上~70バール、好ましくは10バール以上~50バールの範囲の圧力で一緒にプレスされるものとすることができる。
【0163】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、ポリメチルメタクリレートをポリマーとして含み、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、積層中に、5バール以上~70バール、好ましくは15バール以上~60バールの範囲の圧力で一緒にプレスされるものとすることができる。
【0164】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、熱可塑性ポリウレタンをポリマーとして含み、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、積層中に、2バール以上~55バール、好ましくは8バール以上~50バールの範囲の圧力で一緒にプレスされるものとすることができる。
【0165】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、コポリアミドをポリマーとして含み、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、積層中に、2バール以上~70バール、好ましくは7バール以上~65バールの範囲の圧力で一緒にプレスされるものとすることができる。
【0166】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、コポリエステルをポリマーとして含み、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、積層中に、3バール以上~70バール、好ましくは4バール以上~63バールの範囲の圧力で一緒にプレスされるものとすることができる。
【0167】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、液状ポリブタジエンをポリマーとして含み、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、積層中に、4バール以上~70バール、好ましくは5バール以上~55バールの範囲の圧力で一緒にプレスされるものとすることができる。
【0168】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、コロホニー変性ポリイソブテンをポリマーとして含み、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、積層中に、2バール以上~70バール、好ましくは5バール以上~45バールの範囲の圧力で一緒にプレスされるものとすることができる。
【0169】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記積層可能なインクは、液状ポリブタジエン及びコロホニー変性ポリイソブテンをポリマーとして含み、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、積層中に、4バール以上~70バール、好ましくは5バール以上~55バールの範囲の圧力で一緒にプレスされるものとすることができる。
【0170】
前記圧力範囲の結果として、前記化粧層と前記摩耗層及び/又は被覆層とが、特に高い結合強度を有するということを達成することができる。
【0171】
さらに、前記被覆層及び/又は摩耗層は、最終積層体の静的(静電気的)帯電を減少させる手段を備えることができる。例えば、このために、前記被覆層及び/又は摩耗層は、塩化コリンなどの化合物を含むものとすることができる。帯電防止剤は、例えば、被覆、及び/又は摩耗層を形成するための組成物中で、濃度が≧0.1重量%~≦40.0重量%、好ましくは≧1.0重量%~≦30.0重量%となるように使用することができる。
【0172】
さらに、特に化粧とマッチングする表面構造において、細孔を導入することによって、構造化が、保護層に、又は摩耗層若しくは被覆層に形成されるものとすることができる。このために、担体プレートはある構造を既に有し、化粧を施す印刷ツールと担体プレートとの相対的整合が、光学的方法によって検出される担体プレートの構造に応じて行われるものとしてもよい。印刷ツールと担体プレートとの相対的整合のために、整合に必要な印刷ツールと担体プレートとの相対的移動が、担体プレートの変位又は印刷ツールの変位によって行われるものとしてもよい。さらに、化粧パネルの構造化を被覆層及び/又は摩耗層の適用後に行うものとしてもよい。この目的のために、好ましくは、被覆層及び/又は摩耗層として硬化性組成物が塗布され、被覆層及び/又は摩耗層の部分硬化のみが起こる程度にだけ硬化プロセスが行われるものとしてもよい。こうして部分的に硬化した層においては、所望の表面構造が、硬質金属構造ローラー、ダイなどの適切なツールによってエンボス加工される。ここで、エンボス加工プロセスは、施された化粧に応じて行われる。導入される構造と化粧の十分なマッチングを確保するために、担体プレートとエンボス加工ツールとを対応する相対的移動によって相互に整列させるものとしてもよい。部分的に硬化した被覆層及び/又は摩耗層への所望の構造の導入に続いて、現時点で構造化された被覆層及び/又は摩耗層の更なる硬化プロセスが行われる。
【0173】
さらに、バッキング層を化粧側と反対の側に設けることができる。
【実施例】
【0174】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。実施例は、本発明の可能な実施形態を示す。しかしながら、原則的には、実施形態の組合せ又は改変も本発明の範囲内で可能である。
【0175】
本発明に係る積層可能なインクの組成の例を下記表に示す。ここで、重量%とは、積層可能なインクに対する質量百分率を意味する。
【0176】
実施例1に係る積層可能なインクは、すみれ色であり、担体上にインクジェット印刷プロセスで塗布された後に、UV照射により特に良好に硬化することができた。
【0177】
得られた化粧層に摩耗保護層を110℃及び圧力10バールでプレスして積層した。このようにして、化粧層と摩耗保護層との間に、接着剤を塗布する必要なしに、安定な結合を形成した。
【0178】
【0179】
実施例2に係る積層可能なインクは、褐色であり、担体上にインクジェット印刷プロセスで塗布された後に、UV照射により特に良好に硬化することができた。得られた化粧層に摩耗保護層を110℃及び圧力2.5バールでプレスして積層した。該プロセスにおいて、化粧層と摩耗保護層との間に、接着剤を塗布する必要なしに、安定な結合を形成した。
【0180】
【0181】
実施例3に係る積層可能なインクは、緑色であり、やはり担体上にインクジェット印刷プロセスで塗布された後に、UV照射により特に良好に硬化することができた。得られた化粧層に摩耗保護層を135℃及び圧力8バールでプレスして積層した。該プロセスにおいても、化粧層と摩耗保護層との間に、接着剤を塗布する必要なしに、安定な結合を形成した。
【0182】
【0183】
実施例4に係る積層可能なインクは、黄色であり、やはり担体上にインクジェット印刷プロセスで塗布された後に、UV照射により特に良好に硬化することができた。得られた化粧層に摩耗保護層を130℃及び圧力5バールでプレスして積層した。該プロセスにおいても、化粧層と摩耗保護層との間に、接着剤を塗布する必要なしに、安定な結合を形成した。
【0184】