(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】リングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/165 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
H01H85/165
(21)【出願番号】P 2021564884
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 KR2020004764
(87)【国際公開番号】W WO2020231012
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0056494
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513302558
【氏名又は名称】コリア・エレクトリック・ターミナル・コーポレイション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KOREA ELECTRIC TERMINAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】38, Gaetbeol-ro, Yeonsu-gu, Incheon 21999 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】パク ソ-ジュン
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0081064(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0130691(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合し合って円筒状をなす第1のハウジングボディと第2のハウジングボディとを有するハウジング部;
前記ハウジング部の内部に配置されるヒューズエレメント;
前記ハウジング部の両端に突出し、前記ヒューズエレメントと連結される一対の連結端子;及び、
前記ハウジング部の両端周りに挟まれるとともに、多数位置で熱融着によって固定される一対のリング;
を含み、
前記ハウジング部の両端周りの多数位置と、
前記一対のリングそれぞれの内周の間には、前記熱融着のための熱融着
溝を形成し、
前記ハウジング部の両端周りの多数位置には、
両側に延在する複数のガイドリブが形成されるものの、
前記複数のガイドリブは、
前記一対のリングそれぞれの内周とスリップ接触して、前記一対のリングが前記ハウジング部の両端周りに挟まれるように案内する、
リングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズ。
【請求項2】
前記複数のガイドリブは、
前記熱融着
溝の位置に形成されるものの、
前記複数のガイドリブの外側面は、
前記ハウジング部の外周線上と第1鋭角をなす第1傾斜面が形成され、
前記第1傾斜面と前記一対のリングそれぞれの内周の間に、前記熱融着
溝それぞれが形成される、
請求項1記載のリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズ。
【請求項3】
前記一対のリングそれぞれの内周には、
外側に沿って漸次広がるように形成される第2傾斜面が形成され、
前記熱融着
溝は、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間に形成される、
請求項2記載のリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズ。
【請求項4】
前記第2傾斜面は、
前記ハウジング部の外周線上を基準に第2鋭角を形成するものの、
前記第2鋭角は、前記第1鋭角よりも緩い傾斜角を形成する、
請求項3記載のリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズ。
【請求項5】
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面には、
設定された水準の粗さがさらに形成される、
請求項3記載のリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にヒューズは、バッテリーなどの電気供給源から電装部品へ電源を供給することにおいて、電装部品に過負荷がかかったとき、速やかに電装部品への電源供給を遮断するようにすることである。
【0003】
このようなヒューズのうち、高電圧が使用される電装部品で使用されるものがある。
【0004】
高電圧で使用されるヒューズは、過負荷によってヒューズの溶断部が溶融して、切れる際に発生したアークを介して電源が電装部品に伝わりながら、電装部品に2次的に衝撃を与えることができる。
【0005】
また、アークが発生してハウジングに伝達されると、これによって、ハウジングに火災が発生して電装部品まで消失する場合もある。
【0006】
かかる問題点を解決するために、高電圧で使用されるヒューズには、溶断部が切れる際に発生するアークを遮断できるようにする必要がある。このために、溶断部の収容される空間内に砂のような消弧砂を満たして、溶断部を囲むようにする。
【0007】
しかしながら、溶断部の収容される空間内に消弧砂を満たす作業は、非常に煩わしい問題点がある。
【0008】
これは、消弧砂を前記ヒューズの内部空間内に隙間なく満たすために、ハウジングとヒューズエレメントとの結合が完了した状態で行うことが良いが、ヒューズエレメントがハウジングの中央に位置した状態で消弧砂を投入しなければならないため、消弧砂がヒューズエレメントに塞がってハウジングの内部に満たしきれず、ハウジングの内部に空いた空間が発生して消弧性能の落ちる問題点があった。
【0009】
また、ハウジングの一部が完全に結合していない状態で、ヒューズエレメントを安着し、消弧砂を注入した後に結合を完了しなければならなかったため、前記ハウジングの結合状態が堅固でない場合が発生し得る。
【0010】
この点、従来には上部及び下部ハウジングを圧入した後に、圧入された上部及び下部ハウジングの両端に結合リングをそれぞれ圧入する。このため、上部及び下部ハウジングは、結合リングによって両端が固定し得る。
【0011】
しかし、従来には結合リングがハウジングの両端に圧入だけで固定されるため、ハウジングの内部で一定の熱が発生する場合、前記ハウジングと結合リングは、熱変形され、結局、前記結合リングは、ハウジングの両端から離脱する問題点がある。
【0012】
本発明に係る先行文献としては韓国公開特許公開番号第10-2016-0081064号(公開日:2016年7月8日)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ハウジングの熱変形により、ハウジングの両端に結合されるリング等がハウジングから離脱することを防止できるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するために本発明は、リングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを提供する。
【0015】
前記リングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズは、結合し合って円筒状をなす第1のハウジングボディと第2のハウジングボディとを有するハウジング部と;前記ハウジング部の内部に配置されるヒューズエレメントと;前記ハウジング部の両端に突出し、前記ヒューズエレメントと連結される一対の連結端子;及び、前記ハウジング部の両端周りに挟まれるとともに、多数位置で熱融着によって固定する一対のリング;を含む。
【0016】
ここで、前記ハウジング部の両端周りの多数位置と、
前記一対のリングそれぞれの内周の間には、前記熱融着のための熱融着溝等を形成するのが好ましい。
【0017】
また、前記ハウジング部の両端周りの多数位置には、両側に延在する複数のガイドリブが形成されるものの、
前記複数のガイドリブは、前記一対のリングそれぞれの内周とスリップ接触して、前記一対のリングが前記ハウジング部の両端周りに挟まれるように案内するのが好ましい。
【0018】
また、前記複数のガイドリブは、前記熱融着溝等の位置に形成されるものの、
前記複数のガイドリブの外側面は、前記ハウジング部の外周線上と第1鋭角をなす第1傾斜面が形成され、
前記第1傾斜面と前記一対のリングそれぞれの内周の間に、前記熱融着溝等それぞれが形成されるのが好ましい。
【0019】
また、前記一対のリングそれぞれの内周には、外側に沿って漸次広がるように形成される第2傾斜面が形成され、
前記熱融着溝等は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間に形成されるのが好ましい。
【0020】
また、前記第2傾斜面は、前記ハウジング部の外周線上を基準に第2鋭角を形成するものの、
前記第2鋭角は、前記第1鋭角よりも緩い傾斜角を形成するのが好ましい。
【0021】
また、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面には、設定された水準の粗さがさらに形成されてもよい。
【発明の効果】
【0022】
上記の解決手段によって本発明は、ハウジングの熱変形により、ハウジングの両端に結合されるリング等がハウジングから離脱することを防止できる効果を有する。
【0023】
また本発明は、熱融着部の体積を考慮して、第2傾斜面と前記第1傾斜面との間に熱融着溝である逃避溝を形成して、熱融着部があふれることを防止できる効果を有する。
【0024】
また、ハウジング部の両端外周の多数位置に、両側に延在するガイドリブ等をさらに形成して、該当リングがハウジング部の両端外周に安定的に挟まれて安着できるように誘導することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを示す斜視図である。
【
図2】本発明によるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを示す他の斜視図である。
【
図3】本発明によるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを示すさらに他の斜視図である。
【
図7】本発明によるリングをハウジング部の両端に圧入及び熱融着して固定する過程を示す図面。
【
図8】本発明によるリングをハウジング部の両端に圧入及び熱融着して固定する過程を示す図面。
【0026】
発明を実施するための最善の形態
以下、図面を参照して本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳説する。
【0027】
本発明は、相違する様々な形態に具現され得、ここに説明する実施形態に限定されない。
【0028】
本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省いており、全明細書における同一又は類似の構成要素に対しては同じ参照符号を付することとする。
【0029】
以下では、基材の「上部(又は下部)」又は基材の「上(又は下)」に任意の構成が具備又は配置されるということは、任意の構成が前記基材の上面(又は下面)に接して具備又は配置されることを意味する。
【0030】
また、前記基材と基材上に(又は下に)具備又は配置された任意の構成の間に他の構成を含まないと限定するものではない。
【0031】
以下、添付の図面を参照して、本発明によるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを説明する。
【0032】
図1は、本発明によるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを示す斜視図であり、
図2は、本発明によるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを示す他の斜視図である。
図3は、本発明によるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズを示すさらに他の斜視図である。
【0033】
図1~
図3を参照すると、本発明によるリングの離脱防止構造を有する高電圧ヒューズは、ハウジング部100と、ヒューズエレメント(未図示)と、一対の連結端子200と、一対のリング300とで構成される。
【0034】
本発明によるハウジング部100は、結合し合う第1,2のハウジングボディ110,120を有する。前記第1,2のハウジングボディ110,120は、結合し合って円筒状に形成される。
【0035】
ここで、前記第1のハウジングボディ110の一側部には投入孔110aが形成される。前記投入孔110aは、消弧砂をハウジング部100の内部に投入するための孔である。
【0036】
図面には示されていないが、前記ハウジング部100の内部には本発明によるヒューズエレメントが収容される。
【0037】
前記一対の連結端子200は、前記ハウジング部100の両側部に配置及び固定される。前記一対の連結端子200は、ヒューズエレメントの両端にそれぞれ連結される。
【0038】
前記一対の連結端子200は、他の対象体と連結されることに使用される。
【0039】
本発明による一対のリング300は、一定の厚さ及び幅を有する金属で形成される。
【0040】
ここで、前記ハウジング部100の両端外周には段差部101がそれぞれ形成される。
【0041】
前記ハウジング部100の両端に形成される段差部101には、前記一対のリング300がそれぞれ強制圧入され得る。
【0042】
【0043】
図4~
図6を参照すると、本発明による一対のリング300それぞれは、互いに同じ形状に形成される。
【0044】
前記リング300は、前記段差部101の直径よりも一定の直径が小さく形成される内径を有し、設定された厚さ及び幅を有する。
【0045】
前記リング300の厚さは、前記段差部101の深さと実質的に同様に形成され得る。
【0046】
本発明によるリング300は、段差部101に圧入されるリングボディ310と、前記リングボディ310の一端に形成される第2傾斜面320と、前記リングボディ310の他端に形成される切開面330とを有する。
【0047】
前記第2傾斜面320は、段差部101の外面を基準に第2鋭角(a2)をなす。
【0048】
一方、本発明によるハウジング部100の両端の外側周りに形成される各々の段差部101周りの多数位置には、ハウジング部100の両側に沿って突出する複数のガイドリブ130が突出して形成される。
【0049】
前記複数のガイドリブ130の外側面は、段差部101の外面を基準に、第1鋭角(a1)を形成する第1傾斜面131が形成される。
【0050】
また、前記複数のガイドリブ130の内側面は、前記ハウジング部100の側面部と直交するように形成される。
【0051】
前記複数のガイドリブ130の突出した長さは、互いに同一であってもよい。
【0052】
また、前記複数のガイドリブ130の幅は、その位置によって互いに異なって形成され得る。
【0053】
前記複数のガイドリブ130は、前記一対のリング300それぞれの内周とスリップ接触して、前記一対のリング300が前記ハウジング部100の両端周りに挟まれるように案内する。
【0054】
前記複数のガイドリブ130は、熱融着溝400の位置に形成される。
【0055】
各々のリング300がハウジング部100の両端に形成された各段差部101に強制圧入されると、ガイドリブ130の第1傾斜面131と該当リング300の第2傾斜面320との間には熱融着溝400が形成される。
【0056】
このため、リングと段差部101間の多数位置には複数の熱融着溝400が形成される。
【0057】
前記複数の熱融着溝400には熱融着部(W)が形成される。
【0058】
ここで、前記熱融着部(W)が熱融着溝400に形成されることによって、熱融着部(W)が形成される体積が一定以上に増加して、あふれる問題を解決することができる。
【0059】
また、上述した前記第2鋭角(a2)が前記第1鋭角(a1)よりも緩い傾斜角で形成されることによって、熱融着時、熱融着部(W)が形成される体積を一定以上に増加させることもできる。
【0060】
また、本発明による段差部101それぞれの内側角には、一対のリング300の他端に形成された切開面330と密着し得る密着面102が形成され得る。
【0061】
前記切開面330は、リング300が段差部101に圧入される場合、段差部101の端部外周にかからないで、自然に圧入されるように案内することができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
次は、本発明によるハウジング部にリングを圧入した後に、熱融着によって固定する方法を説明する。
【0063】
図7及び
図8は、本発明によるリングをハウジング部の両端に圧入及び熱融着して固定する過程を示す図面である。
【0064】
図7及び
図8を参照すると、本発明によるリング300は、ハウジング部100の両端に形成された段差部101に圧入され得る。
【0065】
このとき、リング300の他端内周に形成された切開面330は、段差部の外周から突出するように形成されたガイドリブ130の外側面に形成された第1傾斜面131にスリップ接触することによって、段差部101への圧入が案内され得る。
【0066】
このように圧入されるリング300の他端は、段差部101の内側角に形成された密着面102に密着する。
【0067】
よって、リング300は、段差部101の外周に圧入される状態で挟まれ得る。
【0068】
これと同時に、リング300の一端内周に形成された第2傾斜面320は、ガイドリブ130の第1傾斜面131と「V」状の溝をなす。前記熱融着溝400で形成される。
【0069】
よって、段差部101の一端外周とリング300の一端外周との間には、多数位置の熱融着溝400が形成される。
【0070】
また、前記ガイドリブ130は、段差部101におけるハウジング部100の両側に沿って一定の長さに伸びる形状に形成されることによって、ガイドリブ130の上端は、リング300の一端よりもさらに突出した形状に形成される。
【0071】
上記のように、本発明によるハウジング部100の両端に形成された各々の段差部101とリング300との間には複数の熱融着溝400が形成され、前記熱融着溝400における母材の融着によって熱融着部(W)が形成される。
【0072】
本発明では、熱融着溝の体積だけ、熱融着時、熱融着母材の逃避空間を提供することで、熱融着部の体積が一定量増加して、ハウジング部の外部にあふれることを防止することができる。
【0073】
加えて本発明は、ハウジング部の両端外周の多数位置に、両側に延在するガイドリブ等をさらに形成して、該当リングがハウジング部の両端外周に安定的に挟まれて安着できるように誘導することができる。
【0074】
一方、図面には示されていないが、本発明による前記切開面と前記第2傾斜面は、曲面で形成されてもよい。
【0075】
すなわち、リングの他端に、内周に形成される切開面が曲面で形成されることによって、段差部の一端外周と接触する場合に発生する干渉を容易に防止することもできる。
【0076】
かかる場合、段差部の内側角に形成される密着面は、前記曲面で形成される切開面と密着した形状に形成された方が良い。
【0077】
また、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面には、設定された水準の粗さがさらに形成されてもよい。
【0078】
前記構成によって、第1,2傾斜面の間の領域は、熱融着部が形成される熱融着溝で形成される。
【0079】
このため、熱融着時、母材と直接接触する第1,2傾斜面に粗さを形成して、母材との接触面積を増加させることで、熱融着による固定力を一定以上に増加させることもできる。
【0080】
以上、本発明に関する具体的な実施形態について説明したが、本発明の範囲から外れない限度内では、様々な実施変形が可能であることは自明である。
【0081】
よって、本発明の範囲には、説明した実施形態に限ってはならず、後述する請求範囲のみならず、この請求範囲と均等なものによって決定しなければならない。
【0082】
すなわち、前述した実施形態は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならないし、本発明の範囲は、詳細な説明よりは、後述する請求範囲によって示され、その請求範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から想到する種々の変更又は変形形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。