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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】L型ケーソン構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/00 20060101AFI20230526BHJP
   E02B 3/12 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
E02D23/00 C
E02B3/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019042478
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020143546
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592242822
【氏名又は名称】三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594067368
【氏名又は名称】ワールドエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506122246
【氏名又は名称】エム・エムブリッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西 和宏
(72)【発明者】
【氏名】和木 多克
(72)【発明者】
【氏名】木原 一禎
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-313844(JP,A)
【文献】特開2005-207132(JP,A)
【文献】特開2005-299224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/00
E02B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底版に、前壁と後壁、左右の側壁とを組み合わせて、中空の函体により形成された主体部と、
前記前壁の前方に張り出した前方張出部と前記後壁の後方に張り出した後方張出部とのいずれか一方または両方の張出部と、
前記後壁の外側面と後方張出部とに掛け渡して配した扶壁と、
を備え
前記前方張出部の先端部と後方張出部の先端部とのいずれか一方または両方に仕切板を設け、
前記前方張出部の前側仕切板は、前記前方張出部の上部の領域と前記前方張出部の前方の領域とを区切り、
前記後方張出部の後側仕切板は、前記後方張出部の上部の領域と前記後方張出部の後方の領域とを区切り、
前記仕切板には、貫通部が設けられて、前記それぞれの張出部の上部の領域と張出部の先端部よりも外側の領域とを連通させてあることを特徴とするL型ケーソン構造。
【請求項2】
前記左右の側壁の外側面には、円筒型状からなり且つ所定の間隔を空けて配置される一対の目地材が、前記前壁及び前記後壁に対応する位置のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のL型ケーソン構造。
【請求項3】
前記前方張出部と後方張出部のいずれか一方または両方には、張出部を上下方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のL型ケーソン構造。
【請求項4】
前記後壁の高さは、前壁の高さよりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のL型ケーソン構造。
【請求項5】
前記前壁には消波構造が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のL型ケーソン構造。
【請求項6】
前記主体部と前方張出部、後方張出部とは、鉄筋コンクリートと鋼材とによるハイブリッド構造によることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のL型ケーソン構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃棄物の処分場を確保するための護岸のために、海底地盤等の上に設置される廃棄物埋立護岸用のL型ケーソン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を埋め立てる場所の護岸には、廃棄物が海洋に流出することがない構造が条件とされている。管理型廃棄物埋立護岸の場合には、さらに保有水が海洋に浸出しない構造が求められている。このため、例えば、安定型廃棄物埋立護岸用のケーソンには、ケーソンの両側の海域間の通水には高い内塞性は要求されず、防波堤等のような外海からの波が内海に到達することを防ぐものであればよい。なお、この内塞性は、護岸の設置場所や目的等の要求に応じたものとなる。なお、この発明に係る廃棄物埋立護岸には、防波堤や岸壁を含んでいる。
【0003】
この種の廃棄物の海面埋立場所を造成するためには、海底地盤上に護岸を構築する。この護岸は、埋立場所に複数個のケーソンが配されて構成され、ケーソンを配する際には、海底地盤上に地盤面の不陸を吸収するための捨石や砂等によってマウンド(土台)が形成され、または、遮水基盤が設けられ、ケーソンはこれらマウンドや遮水基盤の上に設置される。
【0004】
ケーソンは函体を主体として形成されており、浮遊曳航されて埋立場所まで輸送され、所定の位置に沈められて設置される。
また、護岸を形成するブロックとして、底版を壁体の前後に張り出させたフーチングが設けられ、壁体の後面側には扶壁が設けられたL型ブロックがあり、所定の位置に沈められて設置される。例えば、特許文献1には、底版に壁体が設けられ、底版が壁体の前後に張り出されたフーチングを有するL型ブロックが開示されている。また、特許文献2には、張出部(フーチング)が形成された箱型ケーソンとL型ブロックとが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-317422号公報
【文献】特開2005-207132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1と特許文献2とには、底面に前壁から前後方向に張り出させた張出部が設けられたL型ブロックの構造が示されている。さらに、特許文献1には、壁体の陸側の面、すなわち後面には補剛材として扶壁が設けられているL型ブロックの構造が開示されている。
【0007】
ケーソンやL型ブロックは、工場等で製造されて設置場所まで輸送されることになる。ケーソンを設置場所まで輸送する場合、函体の中空部により浮遊曳航を行えて、容易に輸送できる。これに対してL型ブロックでは、中空部を有していないため、台船等を利用した海上輸送等によって輸送され、設置場所までの輸送に大型作業船等を必要とする場合があり、このため、L型ブロックは中水深までの深さで用いられることが多い。
【0008】
ところで、耐久性や工費縮減にとって有利な構造として、ケーソンの各部材に鉄筋コンクリートと鋼材の合成部材を用いたハイブリッドケーソンがある。このハイブリッドケーソンでは、幅員を小さくでき、かつ、函体の長さを大きくできるので、ケーソンの設置個数を減じることができる等の利点を備えている。
【0009】
この発明は、ハイブリッドケーソンの利点を生かして、浮遊曳航でき、水深の大きい場所に設置することができるようにした、L型ケーソン構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るL型ケーソン構造は、底版に、前壁と後壁、左右の側壁とを組み合わせて、中空の函体により形成された主体部と、前記前壁の前方に張り出した前方張出部と前記後壁の後方に張り出した後方張出部とのいずれか一方または両方の張出部と、前記後壁の外側面と後方張出部とに掛け渡して配した扶壁とを備えていることを特徴としている。
【0011】
すなわち、函体による主体部に張出部であるフーチングを形成し、函体を形成する後壁に扶壁を設けたものである。なお、張出部は、前側と後側のいずれか一方または両方に設けることで構わないが、一方に設ける構造とする場合には、後側張出部に設けることが好ましい。
【0012】
また、前記前方張出部の先端部と後方張出部の先端部とのいずれか一方または両方に仕切板を設け、前方張出部の前側仕切板は前方張出部の上部の領域と前方張出部の前方の領域とを区切り、後方張出部の後側仕切板は後方張出部の上部の領域と後方張出部の後方の領域とを区切ることを特徴としている。
【0013】
仕切板は、前側張出部と後側張出部のいずれか一方または両方に仕切板を設けることで構わないが、一方に設ける構造とする場合には、後側張出部の先端部に設けることが好ましい。
【0014】
また、前記仕切板には、貫通部が設けられて、前記それぞれの張出部の上部の領域と張出部の先端部よりも外側の領域とを連通させることができる。
【0015】
また、前記前方張出部と後方張出部のいずれか一方または両方には、張出部を上下方向に貫通する貫通孔を形成することができる。
【0016】
また、前記後壁の高さは、前壁の高さよりも小さくすることができる。
【0017】
また、前記前壁には、消波構造が備えられているようにすることができる。
【0018】
また、前記主体部と前方張出部、後方張出部とは、鉄筋コンクリートと鋼材とによるハイブリッド構造によることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係るL型ケーソン構造によれば、主体部を函体としたので浮遊曳航できる。また、仕切板を設けることにより、張出部にバラスト材を載せることができ、浮遊曳航の際の吃水を調整することができ、浮遊曳航による輸送時の安定化を図れると共に、円滑な輸送を行うとができる。
【0020】
また、張出部に貫通孔を形成する構造とし、後壁の高さを前壁よりも小さくすること等とする場合には、軽量化を図れると共に、製作コストや輸送コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明に係るL型ケーソン構造の第1の実施形態を説明する図で、後方からの斜視図である。
図2図1に示す第1の実施形態に係るL型ケーソンを示す図で、(A)は右側面図であり海底地盤のマウンド上に設置された安定型廃棄物埋立護岸用に用いられる状態を示してあり、(B)は図1におけるB-B線に沿って切断した断面図である。
図3図1に示す第1の実施形態に係るL型ケーソンが遮水基盤上に設置されて、管理型廃棄物埋立護岸用に用いられる状態を示している。
図4】この発明に係るL型ケーソン構造の第2の実施形態を説明する図で、後方からの斜視図である。
図5】この発明に係るL型ケーソン構造の第2の実施形態に係るケーソンが海底地盤のマウンド上に設置されて、安定型廃棄物埋立護岸用に用いられる状態を示す図である。
図6】この発明に係るL型ケーソン構造の第3の実施形態を説明する図で、後方からの斜視図である。
図7】この発明に係るL型ケーソン構造の第4の実施形態を説明する図で、後方からの斜視図である。
【0022】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るL型ケーソン構造を具体的に説明する。なお、図1図3は第1の実施形態を、図4図5は第2の実施形態を、図6は第3の実施形態を、図7は第4の実施形態を、それぞれ示している。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るL型ケーソン1を示す後方から、すなわち陸側Lから見た斜視図である。このL型ケーソン1は、底版11aに、前壁11bと後壁11c、左側側壁11d、右側側壁11eとによる外壁が組み合わされて、中空部10を有するほぼ直方体状の函体からなる主体部11が形成されている。この主体部11の内部には、左側側壁11dから右側側壁11eの間を複数に分割する隔壁11fが、前壁11bと後壁11cに接続されて設けられていて、複数の中空部10に区切られている。この実施形態では、中空部10が4分割されている。なお、前壁11bの外側面が海側S(外海側)に臨む面とされ、後壁11cの外側面が陸側L(内海側)に臨む面とされている。
【0024】
底版11aには、図1図3に示すように、前壁11bの前方に突出した前方張出部12が設けられている。また、後壁11cの後方に突出した後方張出部13が設けられている。後方張出部13には、左右の端部と隔壁11fに対応した位置に、後壁11cから後方に向けて後方張出部13の先端部まで伸長させて、梁13aが配されている。なお、梁13aは鉄骨13bと鉄筋とにコンクリートに打ち込んだ、SRC構造等とされている。後壁11cの外側面であって、隔壁11fに対応した位置には、後壁11cと一体となったリブプレート14aが上下方向を長手方向として設けられ、このリブプレート14aと梁13aの上面とにかけて斜めにリブ14bが配された扶壁14が設けられている。さらに、後方張出部13の左右の端部に配された梁13aと後壁11cとには、擁壁15が掛け渡されて設けられている。なお、前方張出部12には梁12aが設けられている。なお、扶壁14は、鉄骨によるリブプレート14aとリブ14bとによる構造としてあるが、擁壁15のような壁体によるものとすることもできる。
【0025】
前方張出部12と後方張出部13の先端部には、これら前方張出部12と後方張出部13の上部の部分と外部の部分とを区切る仕切板として、前方張出部12には前側仕切板としてのコーミング16が、後方張出部13には後側仕切板としてのコーミング17がそれぞれ設けられている。コーミング17は、図1に示すように、梁13aのそれぞれの先端部に掛け渡された、コーミング17a、17b、17c、17dにより形成されている。なお、コーミング16も同様に、梁12aの先端部に掛け渡されて設けられている。
【0026】
また、特に、管理型廃棄物埋立護岸用のケーソンに用いられる場合には、左側側壁11dと右側側壁11eの外側面には、隣接されるL型ケーソン1との間の遮水性を確保するための円筒型等による目地材18が取り付けられている。この目地材18は適宜な間隔が設けられた一対としたものが、前壁11bと後壁11c側とのそれぞれに設けられている。すなわち、前壁11bの側から順に目地材18a、18b、18c、18dとすると、適宜な間隔で設けられた目地材18aと目地材18bとで一対となって前側の鉛直遮水工を構築し、目地材18cと18dとで一対となって後側の鉛直遮水工を構築し、これら一対の目地材18a、18bの後側の目地材18bと一対の目地材18c、18dの前側の目地材18cとが適宜な間隔で配されている。そして、隣接して設置されたL型ケーソン1同士は、この目地材18を圧潰して並設されて、隣接されるL型ケーソン1同士の側壁の間に形成される間隙に、アスファルトマスチック等の遮水材を充填して遮水性が確保される。なお、安定型廃棄物埋立護岸用のケーソンであっても、この目地材18が取り付けられたものであっても構わないが、設置される護岸の要求に応じた目地構造とするものでも構わない。
【0027】
また、前記主体部11は、鉄筋コンクリートと鋼材の合成部材を用いたハイブリッド構造とされることが好ましい。また、主体部11は、鋼製やRC構造、SRC構造等の強度部材を単独、または複合させて構成することもできる。
【0028】
図2(A)には、L型ケーソン1が、安定型廃棄物埋立護岸用に、海底地盤上に設置された状態が示されている。このL型ケーソン1は海底地盤に形成されたマウンドMに、海側Sに前壁11bを向けて、海側Sと陸側Lとを区画するようにして設置される。マウンドMは投下された捨石や砂等によって、上面が平面状に均されている。
【0029】
一方、図3には、管理型廃棄物埋立護岸用に、L型ケーソン1が海底地盤上に設置された状態が示されている。海底地盤には遮水基盤6による基礎部が設置され、その上面にはL型ケーソン1が設置される部分に、少なくとも前方張出部12と後方張出部13とが収容される深さの凹溝61が形成されている。凹溝61の底面には捨石62が上面が均されて配され、L型ケーソン1はこの凹溝61内に収容されて捨石62上に設置される。
【0030】
凹溝61内にL型ケーソン1が設置されると、図3に示すように、凹溝61の内壁面とコーミング16、コーミング17との間にアスファルトマスチック等の遮水材63が充填される。この遮水材63の充填は捨石62に対しても施工される。凹溝61とコーミング16、コーミング17との間と凹溝61に充填された遮水材63と捨石62に充填された遮水材により、L型ケーソン1の前後の領域間の遮水が確保される。
【0031】
ところで、前方張出部12と後方張出部13とのそれぞれに設けたコーミング16とコーミング17が存しない構造である場合には、遮水材63は前方張出部12と後方張出部13の上面にも施工する必要が生じ、凹溝61の内壁面とL型ケーソン1の前壁11bと後壁11cとの間に充填することを要する。このため、凹溝61の内壁面とコーミング16、コーミング17との間に充填する場合に比べて、遮水材63の充填量がはるかに大きくなってしまう。これに対して、この実施形態のように、コーミング16とコーミング17を設けることによって、遮水材63の充填量を減じて、コストを削減することができるものである。
【0032】
また、隣接しているL型ケーソン1同士は、目地材18を圧潰して設置して、一対の目地材18aと目地材18bとの間、一対の目地材18cと目地材18との間にアスファルトマスチック等の遮水材を充填する。また、目地材18bと目地材18cとの間には遮水材を充填せず、この間に滞留する海水の状態を測定できる計測領域が設けられる。すなわち、この計測領域の海水に管理型廃棄物の保有水が混入したことが測定された場合には、目地材18c、18dが破損したと推測でき、その補修を行って、保有水の漏洩を迅速に防止できる。
【0033】
なお、図3に示す、遮水基盤6にL型ケーソン1を設置した構造を、安定型廃棄物埋立護岸用に用いることもできる。
【0034】
この第1の実施形態に係るL型ケーソン1は中空部10が設けられているから、海面に浮遊させることができる。このため、このL型ケーソン1を工場等で製作した後、設置場所まで浮遊曳航により輸送することができる。また、前方張出部12と後方張出部13にバラスト材を載置させて、輸送の際の吃水を調整することができる。
【0035】
また、マウンドMまたは遮水基盤6に設置した場合には、中空部10に一次中詰めを充填し、前方張出部12と後方張出部13には二次中詰めを充填することができる。
【0036】
また、このL型ケーソン1では、中空部10は隔壁11fで区切られて設けられている。すなわち、隣接する中空部10同士は隔壁11fによって連通することがない。例えば、この隔壁11fに替えて、補強ためのリブが鋼材等で配されている構造とされている場合には、隣接する部分とは連通した状態にある。この構造で、後壁11cが損傷して穴が開いてしまった場合、この穴から浸入した廃棄物や保有水は、主体部11を構成する函体の全域に拡散されることになる。これに対して、隔壁11fで区切られている場合には、例えば、後壁11cの一部が損傷して穴が開いてしまった場合、この穴から浸入する廃棄物や保有水はこの穴に連通している中空部10に浸入するのみで、隣の中空部10に浸入することがなく、主体部11の全域には拡散しない。
【0037】
(第2の実施形態)
図4には第2の実施形態に係るL型ケーソン2が示してあり、L型ケーソン2を後方から、すなわち陸側Lから見た斜視図である。この第2の実施形態に係るL型ケーソン2は、第1の実施形態に係るL型ケーソン1の前壁11bに相当する前壁21bを上方に延伸させた形状としたものである。なお、L型ケーソン1の後壁11cに相当する後壁21cを下方に短縮させたものであっても構わない。また、L型ケーソン1と同一の部位については同一の符号を付してある。すなわち、L型ケーソン2の前壁21bが後壁21cよりも高くなった主体部21が形成されており、この後壁21cが浮体として機能する函体に支障を生じさせない高さ位置にあればよい。なお、図4では、左側側壁11dと右側側壁11eを後壁21cと等しい高さとして示してあるが、左側側壁11dと右側側壁11eは前壁21bと等しい高さとした構造でも、あるいは、前壁21bと後壁21cの中間の高さとしたものであっても構わない。また、主体部21は、鉄筋コンクリートと鋼材の合成部材を用いたハイブリッド構造とされることが好ましい。また、鋼製やRC構造、SRC構造等の強度部材を単独、または複合させた構成で合っても構わない。
【0038】
この第2実施形態に係るL型ケーソン2は、図5に示すように、前壁21bを海側Sに臨ませてマウンドMに設置される。海側Sに発生する波は、前壁21bに衝突して遮断されることで、陸側Lに影響することは殆どない。このため、前壁21bが海側Sに発生した激しい波を受けることができる高さであれば、後壁21cは前壁21bよりも低くすることができる。
しかも、後壁11cを低くすることにより、L型ケーソン2の軽量化を図ることができ、製作コストを低減することができる。また、軽量化されることによって輸送コストの低減化を図れる。
【0039】
(第3の実施形態)
図6には第3の実施形態に係るL型ケーソン3が示してあり、L型ケーソン3を後方から、すなわち陸側Lから見た斜視図である。この第3の実施形態に係るL型ケーソン3は、第2の実施形態に係るL型ケーソン2の後方張出部13に相当する後方張出部33に張出部開口33aが形成されているものであり、L型ケーソン2と同一の部位については同一の符号を付してある。すなわち、L型ケーソン3の後方張出部33に張出部開口33aを形成して、後方張出部33を上下方向に貫通させたものである。なお、L型ケーソン3の前方張出部32にも張出部開口を形成することもできる。また、擁壁35には、擁壁部開口35aが形成されている。
なお、L型ケーソン3の主体部31は、底版31aに、前壁21bと後壁21c、左側側壁11d、右側側壁11eとによる外壁が組み合わされて、ほぼ直方体上の函体によって形成されている。
【0040】
また、前方張出部32の先端部に設けられた仕切板であるコーミング36と、後方張出部33の先端部に設けられた仕切板であるコーミング37には多孔板や網状体等が用いられて、その前後を連通させる透孔38が設けられている。すなわち、コーミング36を介して前方張出部32の上方の部分と前方張出部32の前方の部分とが連通させてあり、コーミング37を介して後方張出部33の上方の部分と後方張出部33の後方の部分とが連通させてある。
【0041】
この第3の実施形態に係るL型ケーソン3によれば、張出部開口33aと擁壁部開口35aにより、L型ケーソン3の軽量化を図ることができると共に、製作コストの低減化と輸送コストの低減化を図ることができる。
【0042】
また、張出部開口33aを形成しない構造、またはこの張出部開口33aの開口面積が小さい場合等であれば、コーミング36とコーミング37に透孔38が設けられた構造であっても、前方張出部32と後方張出部33にバラスト材を支持させることができる。
【0043】
(第4の実施形態)
図7には第4の実施形態に係るL型ケーソン4が示してあり、L型ケーソン4を後方から、すなわち陸側Lから見た斜視図である。このL型ケーソン4は、図4に示す第2の実施形態に係るL型ケーソン2を改良したものであり、L型ケーソン2と同一の部位については同一の符号を付してある。このL型ケーソン4は、底版11aに、前壁41bと後壁21c、左側側壁11d、右側側壁11eとによる外壁が組み合わされた、ほぼ直方体状の函体による主体部41が形成されている。この主体部41の内部には、左側側壁11dから右側側壁11eの間を複数の室に分割する隔壁11fが、前壁41bと後壁21cに接続されて設けられている。さらに、これら隔壁11fの中間の適宜位置には左右方向に配された中壁41gが設けられて、各室が前後に分割されている。
また、前壁41bには、前壁41bを貫通させた透孔41hが形成されており、前壁41bと中壁41gとに挟まれた室により前壁41bの外側に連通している遊水室41iが設けられている。また、後壁21cと中壁41gとで挟まれた室が中空部41jとされている。なお、前壁41bの外側面が海側S(外海側)に臨む面とされ、後壁11cの外側面が陸側L(内海側)に臨む面とされている。
【0044】
この第4の実施形態に係るL型ケーソン4によれば、海側Sに高い波が生じて海面が荒れた場合、このL型ケーソン4に到達した波が透孔41hから遊水室41iに導かれて、波の勢いが緩和され、消波されて衝撃が緩和される。
【0045】
以上に説明した実施形態のうちの第3の実施形態において、後方張出部33に張出部開口33aを、擁壁35に擁壁部開口35aを、コーミング37に透孔38を形成した構造を説明したが、これら張出部開口33aと擁壁部開口35a、透孔38は他の実施形態についても設けることができる。また、これらの張出部開口33aと擁壁部開口35a、透孔38とは、任意に組み合わせて設けることもできる。
【0046】
また、以上に説明した実施形態では、主体部11、21、31、41をほぼ直方体状の函体として説明したが、直方体状に限らず、これらL型ケーソン1、2、3、4が設置される場所や状態に応じて適宜な形状とすることもできる。
【0047】
この発明に係るケーソンによれば、中空の函体による主体部を具備させることにより、浮遊曳航が可能となる。また、張出部の先端にコーミングを設けることにより、張出部にバラスト材を収容させることができて、曳航時の吃水の調整を容易に行える。
【符号の説明】
【0048】
S 海側
L 陸側
M マウンド
1 L型ケーソン
10 中空部
11 主体部
11a 底版
11b 前壁
11c 後壁
11d 左側側壁
11e 右側側壁
11f 隔壁
12 前方張出部
12a 梁
13 後方張出部
13a 梁
13b 鉄骨
14 扶壁
14a リブプレート
14b リブ
15 擁壁
16 コーミング
17 コーミング
17a、17b、17c、17d コーミング
18 目地材
2 L型ケーソン
21 主体部
21b 前壁
21c 後壁
3 L型ケーソン
32 前方張出部
33 後方張出部
33a 張出部開口
35 擁壁
35a 擁壁部開口
36 コーミング
37 コーミング
38 透孔
4 L型ケーソン
41 主体部
41b 前壁
41i 遊水室
41g 中壁
41h 透孔
41j 中空部
6 遮水基盤
61 凹溝
62 捨石
63 遮水材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7