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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/06 20060101AFI20230526BHJP
   D06F 33/30 20200101ALI20230526BHJP
【FI】
D06F37/06
D06F33/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018198902
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020065623
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】西川 智貴
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-342495(JP,A)
【文献】特開2015-006283(JP,A)
【文献】特開2009-254634(JP,A)
【文献】特開2000-051589(JP,A)
【文献】特開2001-218993(JP,A)
【文献】特開2004-089339(JP,A)
【文献】特開2016-034443(JP,A)
【文献】特開2011-005216(JP,A)
【文献】特開2009-045379(JP,A)
【文献】特開2014-042740(JP,A)
【文献】特開2019-017832(JP,A)
【文献】特開昭63-192490(JP,A)
【文献】登録実用新案第3115730(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0027173(US,A1)
【文献】米国特許第07299665(US,B1)
【文献】国際公開第2013/155967(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/06
D06F 33/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体内に設けた受筒と、前記受筒内部に略水平方向に回転自在に支持され、洗濯物を収容するドラムと、前記ドラム内の内周面に設けられた、洗濯物を撹拌するためのバッフルとを備えたドラム式洗濯機において、前記バッフルは、断面略台形状に形成され、一側面部には、前記バッフルの内部空間に連通する複数の通水孔が形成されるとともに凹凸は形成されず、他方の側面部には凹凸が形成され、
前記ドラムを右回転、左回転と交互に回転させる洗い行程において、デリケート衣類を洗濯する場合には、前記一側面部が先行する向きの前記ドラムの回転の攪拌割合を前記他方の側面部が先行する向きの前記ドラムの回転より多く設定して洗い攪拌を行うドラム式洗濯機。
【請求項2】
前記バッフルは、上面部に前記バッフルの内部空間に連通する複数の通水孔が形成され、前記他方の側面部には前記バッフルの内部空間に連通する通水孔が形成されていない請求項1に記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
デリケート衣類でない衣類を洗濯する場合には、前記他方の側面部が先行する向きの前記ドラムの回転の攪拌割合を多く設定して洗い攪拌を行う、請求項1または2に記載のドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム内に収容された洗濯物を撹拌するバッフルを有するドラム式洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドラム式洗濯機は、水平方向に回転自在に支持され、洗濯物を収容するドラムと、ドラムの外側を囲む受筒を有している。受筒内に所定量の水を貯めた状態でドラムを回転させることにより、ドラム内の洗濯物をドラム内周面に備えられた略山形のバッフルによって持ち上げ、ある程度の高さから水面に向けて自然落下させる、たたき洗いを繰り返し行う。例えばバッフル頂上部にドラム内周面側に窪む凹面を形成することにより、機械力向上による洗浄性能の向上を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-22688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、ドラム式洗濯機の本来の洗浄方式であるたたき洗いに加え、凹凸面とのこすれによるこすれ洗いも行われ、機械力が高まって洗浄性能が向上するが、特にウールなどのデリケートな衣類の場合には、衣類が傷みやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、洗濯物を撹拌するためのバッフルの形状改善により、洗濯物の傷みを抑えつつ、洗浄性能の向上を図るドラム式洗濯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、本発明のドラム式洗濯機は、本体と、前記本体内に設けた受筒と、前記受筒内部に略水平方向に回転自在に支持され、洗濯物を収容するドラムと、前記ドラム内の内周面に設けられた、洗濯物を撹拌するためのバッフルとを備えたドラム式洗濯機において、前記バッフルは、断面略台形状に形成され、一側面部には、前記バッフルの内部空間に連通する複数の通水孔が形成されるとともに凹凸は形成されず、他方の側面部には凹凸が形成され、前記ドラムを右回転、左回転と交互に回転させる洗
い行程において、デリケート衣類を洗濯する場合には、前記一側面部が先行する向きの前記ドラムの回転の攪拌割合を前記他方の側面部が先行する向きの前記ドラムの回転より多く設定して洗い攪拌を行うものである。
【0007】
これにより、洗濯物の種類により洗濯物に適した洗浄方式で洗濯を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のドラム式洗濯機は、機械力向上による洗濯物の傷みを抑えつつ洗浄性能の向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の側断面図
図2】同ドラム式洗濯機のブロック回路図
図3】同ドラム式洗濯機のバッフルの左側面を表す斜視図
図4】同ドラム式洗濯機のバッフルの右側面を表す斜視図
図5】同ドラム式洗濯機のドラムおよびバッフルの正面図
図6】同ドラム式洗濯機の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、本体と、前記本体内に設けた受筒と、前記受筒内部に略水平方向に回転自在に支持され、洗濯物を収容するドラムと、前記ドラム内の内周面に設けられた、洗濯物を撹拌するためのバッフルとを備えたドラム式洗濯機において、前記バッフルは、断面略台形状に形成され、一側面部には、前記バッフルの内部空間に連通する複数の通水孔が形成されるとともに凹凸は形成されず、他方の側面部には凹凸が形成され、前記ドラムを右回転、左回転と交互に回転させる洗い行程において、デリケート衣類を洗濯する場合には、前記一側面部が先行する向きの前記ドラムの回転の攪拌割合を前記他方の側面部が先行する向きの前記ドラムの回転より多く設定して洗い攪拌を行うものである。
【0011】
これにより、洗濯物の種類に応じて、洗濯物の傷みを抑えつつ、洗浄性能の向上を実現することができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の前記バッフルにおいて、上面部に前記バッフルの内部空間に連通する複数の通水孔が形成され、前記他方の側面部には前記バッフルの内部空間に連通する通水孔が形成されていないものである。
【0013】
これにより、洗濯物の傷みを抑えつつ、洗浄性能の向上を実現することができる。
【0016】
の発明は、特に、第1または第2の発明において、デリケート衣類でない衣類を洗濯する場合には、前記他方の側面部が先行する向きの前記ドラムの回転の攪拌割合を多く設定して洗い攪拌を行うものである。
【0017】
これにより、洗濯物の種類に応じて、洗浄性能を向上させることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の縦断面図、図2は、同ドラム式洗濯機のブロック回路図、図3は、同ドラム式洗濯機のバッフルの左側面を表す斜視図、図4は、同ドラム式洗濯機のバッフルの右側面を表す斜視図、図5は、同ドラム式洗濯機のドラムおよびバッフルの正面図である。
【0020】
図1図2において、本体1は、内部にダンパ2およびサスペンション3により受筒4を水平防振支持している。受筒4は、内部に、洗濯物を収容するドラム5を略水平方向に回転自在に支持している。ドラム5は、受筒4の中心に回転自在に軸支された回転軸8に固定されており、回転軸8他端にはドラムプーリ9が固定される。受筒4の底部にモータが取り付けられ、モータ10の有するモータプーリ11とドラムプーリ9はベルト12により連結され、モータ10の動力がドラム5に伝達され、ドラム5を回転させる。
【0021】
ドラム5は、側面に多数の脱水孔6を有するとともに、内周面に洗濯物を撹拌するための横断面略台形状のバッフル7を複数個均等間隔置きに有している。本実施の形態では、バッフル7は3個形成している。
【0022】
図3図4図5に示すように、バッフル7は、正面視で右側面部に凹凸面21を形成している。また、左側面部と上面部には、それぞれバッフル7の内部空間に連通する複数個の側面通水孔22と複数個の上面通水孔23を形成している。
【0023】
本体1の前面に衣類投入口25を設け、衣類投入口25を蓋体24により開閉自在に覆い、蓋体24を開くことにより、衣類投入口25を通してドラム5内に洗濯物を出し入れする。
【0024】
受筒4の上方位置には、洗剤を収容する洗剤投入容器13と給水弁14が配設され、洗剤投入容器13と給水弁14は、給水経路15により連結されている。給水弁14は、本体1外部からの水を、給水経路15を介して洗剤投入容器13に送るものであり、洗剤投入容器13に送り込まれた水は、受筒4と洗剤と洗剤投入容器13を連結している注水ホース16を介して受筒4およびドラム5に送り込まれる。
【0025】
受筒4の下部には、排水ポンプ17が配設されており、排水ポンプ17は、排水ホース18により受筒4底面と連結され、受筒4内の水は排水経路19を介して機外へと排水される。
【0026】
本体1の前面上部には、使用者が運転コースを選択したりする操作表示部30が配設され、操作表示部30の入力設定手段31から入力し、その入力情報を基に表示手段32で表示して使用者に知らせる。
【0027】
水位検知手段35は、受筒4内の洗濯水の水位を検出する。
【0028】
布量検知手段33は、乾いた洗濯物をドラム5に入れた状態で、モータ10を一定時間回転した時のモータ10にかかる負荷トルクを入力電流として検知し、負荷トルクに基づいてドラム5内に投入された洗濯物の容量を判定する。
【0029】
布質検知手段34は、給水流量検知手段36が検知した給水流量、布量検知手段33が検知した布量、布量に応じた水位までの給水時間の情報を基に布質を検知する。
【0030】
制御手段20は、操作表示部30で運転内容が設定されると、水位検知手段35、布量検知手段33、給水流量検知手段36等からのデータを入力して、モータ10、給水弁14、排水ポンプ17などを制御し、洗い、すすぎ、脱水などの各行程を逐次実行する。
【0031】
また、制御手段20は、計時手段37を制御することによって、任意の時点からの経過時間を計測する。
【0032】
以上のように構成したドラム式洗濯機洗濯機について、その動作、作用を説明する。
【0033】
図6は、本発明の第1の実施の形態におけるドラム式洗濯機の動作を示すフローチャートである。
【0034】
蓋体24を開き、衣類投入口25からドラム5内に洗濯物を投入(ステップS1)した後、操作表示部30の入力設定手段31にて電源スイッチ(図示せず)をオンし、スタートスイッチ(図示せず)を操作して運転をスタート(ステップS2)すると、短時間だけドラム5が回転して布量検知手段33により乾いた状態の洗濯物の布量を検知(ステップS3)し、検知された布量は制御手段20入力される。
【0035】
布量が検知されると、表示手段32に布量に応じた水位と洗剤量が表示される(ステップS4)。
【0036】
そして、給水弁14が動作して給水が開始されて、洗剤投入容器13内に投入された洗
剤とともに受筒4内に水が給水され、給水流量検知手段36による給水流量検知(ステップS5)と、計時手段37による給水時間の計時が始まる。
【0037】
そして、布量、給水流量、布量に応じた水位に達するまでの給水時間情報により、布質が検知される(ステップS7)。つまり、一般的な木綿類が多いのか、ウール類等のデリケート衣類が多いのかなどが検知される。
【0038】
洗い行程では、ドラム5を正面視で右回転、左回転と交互に行って洗濯物を回転させ、洗浄を行っていくが、検出した布質が一般的な木綿類が多い場合(ステップS8のNo)は、ドラム5の左回転時の撹拌割合を多く設定(ステップS9)し、デリケート衣類が多い場合(ステップS8のYes)は、ドラム5の右回転時の撹拌割合を多く設定(ステップS10)して、洗い攪拌行程を行う(ステップS11)。
【0039】
洗濯行程において、持ち上げられた洗濯物は、ある程度の高さまで持ち上げられ、持ち上げられた洗濯物は、ある程度の高さまで来ると、ドラム5下方の水面に向かって落下する。洗濯物は、水面にたたきつけられることによりたたき洗いが行われ、洗濯物の汚れが落ちる。
【0040】
洗い行程にて、ドラム5が正面視で左回転時には、洗濯物を上方に持ち上げる際に、凹凸面21で引っ掛けて洗濯物を持ち上げ、持ち上げられた洗濯物は、落下する際に、バッフル7の凹凸面21とこすれてから落下する。
【0041】
また、ドラム5が正面視で右回転時には、側面通水孔22が設けられる左側面部で洗濯物を持ち上げて、ドラム5内の洗濯水をバッフル7内に取り込みつつ回転する。洗濯物が落下してバッフル7がドラム5上方まで回転したとき、バッフル7内に取り込んだ洗濯水を側面通水孔22からドラム5下方へと放出し、落下した洗濯物にかける。
【0042】
洗い行程において、布質判定において、一般的な木綿類が多いと判断して(ステップS8のNo)、ドラム5の左回転時の撹拌割合を多く設定(ステップS9)した場合には、バッフル7の凹凸面21と洗濯物のこすれが多く行われることになり、機械力がより向上するため、機械力を強めて汚れを落とすことができる。
【0043】
布質判定において、デリケート衣類が多いと判断して(ステップS8のYes)、ドラム5の右回転時の撹拌割合を多く設定(ステップS10)した場合には、側面通水孔22が形成された面で洗濯物を持ち上げる割合が多くなる。このため、ドラム5が、ドラム5内の洗濯水をバッフル7内に取り込みつつ回転し、バッフル7がドラム5上方まで回転した際に、バッフル7内に含んだ洗濯水を上面通水孔23よりドラム5下方へ放出し、落下した洗濯物にかける割合が多くなる。
【0044】
これにより、ドラム5内の洗濯水の循環が多くなると共に、洗濯物の水面から上方に出た部分に洗濯水がかかる量が多くなる。よって、より汚れが流し落とされやすくなり、凹凸面21側での撹拌割合が減ることで、機械力を抑えて洗浄することとなり、洗濯物の傷みを抑制して優しく洗うことができる。
【0045】
そして、洗い行程(ステップS11)が終了すると、次行程へと移行する。
【0046】
なお、バッフル7の凹凸面21と側面通水孔22を備える側面は、本実施の形態に限定されるものではなく、左右逆に設けても良いが、その場合は上述した左回転、右回転の方向が逆になる。
【0047】
以上のように、本実施の形態においては、バッフル7は、正面視で右側面部に凹凸面21、左側面部に複数個の側面通水孔22を形成するともに、上面部に複数個の上面通水孔23を形成する構成とすることにより、洗濯物の種類に応じて、洗浄性能を大きく高め、あるいは、洗濯物の傷みを抑えつつ洗浄性能を向上させることができる。
【0048】
また、洗い行程にて、布質検知手段34で検知した洗濯物の布質に応じて、ドラム5の左右回転時間の割合を設定する構成とすることにより、洗濯物の種類に応じて、洗浄性能を大きく高め、あるいは、洗濯物の傷みを抑えつつ洗浄性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯機は、バッフルの形状最適化とドラム回転を制御することにより、洗濯物の種類に応じて、洗浄性能を大きく高め、あるいは、洗濯物の傷みを抑えつつ洗浄性能を向上させることができるので、他の洗濯機などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 本体
4 受筒
5 ドラム
7 バッフル
10 モータ
14 給水弁
20 制御手段
21 凹凸面
22 側面通水孔
23 上面通水孔
33 布量検知手段
34 布質検知手段
35 水位検知手段
36 給水流量検知手段
37 計時手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6