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特許7285405卵黄膜および/またはカラザ由来の美容組成物、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】卵黄膜および/またはカラザ由来の美容組成物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20230526BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 35/57 20150101ALI20230526BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230526BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230526BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230526BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20230526BHJP
【FI】
A61K8/98
A61Q19/00
A61K35/57
A61P17/00
A61P43/00 105
A23L33/10
A23L33/18
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021568850
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006181
(87)【国際公開番号】W WO2021167016
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020025570
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】中村 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨根 里穂
(72)【発明者】
【氏名】原 由洋
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】草川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】金 武祚
(72)【発明者】
【氏名】山津 敦史
(72)【発明者】
【氏名】中村 唱乃
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲しゅあん▼
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04946678(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0117094(US,A1)
【文献】特開2011-190217(JP,A)
【文献】特開2010-006844(JP,A)
【文献】特開2011-006331(JP,A)
【文献】特開平01-163110(JP,A)
【文献】国際公開第1999/022709(WO,A1)
【文献】特開平02-229103(JP,A)
【文献】特開平09-040696(JP,A)
【文献】特開平05-056775(JP,A)
【文献】伊藤敞敏,日畜会報,日本,1990年,Vol. 61 (3),P. 277-282
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99、
35/57
A61Q 1/00-90/00
A61P 1/00-43/00
A23L 5/40-5/49、
31/00-33/29
PubMED
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の状態を改善するための美容組成物であって、家禽鳥類由来の卵黄膜成分および/またはカラザ成分を含み、前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分が、前記家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザの水抽出物と加水分解物との混合物を含み、
前記水抽出物が、卵黄膜および/またはカラザと溶媒との攪拌混合物の透過溶液の濾過物を含み、
前記加水分解物が、(i)卵黄膜および/またはカラザと溶媒との攪拌混合物の透過残渣、(ii)卵黄膜、および/または(iii)カラザと溶媒との混合物のタンパク質分解酵素または酸による加水分解物を含む、美容組成物。
【請求項2】
前記加水分解物がタンパク質分解酵素によるものである、請求項1に記載の美容組成物。
【請求項3】
前記加水分解物が酸によるものである、請求項1に記載の美容組成物。
【請求項4】
前記タンパク質分解酵素がパパインである、請求項2に記載の美容組成物。
【請求項5】
前記酸がクエン酸である、請求項3に記載の美容組成物。
【請求項6】
前記家禽鳥類がニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、カモ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ホロホロチョウ、オナガドリ、チャボ、ハト、コブハクチョウ、エミュー、またはキジである、請求項1~5のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項7】
前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分を、少なくとも約0.01w/w%の濃度で含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項8】
前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分を、約0.01w/w%~約0.1w/w%の濃度で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項9】
前記皮膚の状態の改善がヒアルロン酸産生の促進を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項10】
前記皮膚の状態の改善が表皮におけるヒアルロン酸産生の促進を含む、請求項9記載の美容組成物。
【請求項11】
前記皮膚の状態の改善が真皮におけるヒアルロン酸産生の促進を含む、請求項9記載の美容組成物。
【請求項12】
前記皮膚の状態の改善がコラーゲン産生の促進を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項13】
前記コラーゲンがI型またはIII型コラーゲンである、請求項12記載の美容組成物。
【請求項14】
前記皮膚の状態の改善が皮膚常在善玉菌の増殖能の亢進を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項15】
前記皮膚常在善玉菌が表皮ブドウ球菌である、請求項14記載の美容組成物。
【請求項16】
前記皮膚常在善玉菌が、皮膚常在悪玉菌競合培養下において優位に増殖する、請求項14または15に記載の美容組成物。
【請求項17】
前記皮膚常在悪玉菌が黄色ブドウ球菌である、請求項16記載の美容組成物。
【請求項18】
前記皮膚の状態の改善がメラニン生成の抑制を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項19】
前記皮膚の状態の改善が繊維芽細胞の増殖能の亢進を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項20】
前記皮膚の状態の改善が酸化ストレス耐性能の向上を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項21】
飲食品、食品添加物、化粧品、医薬部外品、または医薬品である、請求項1~20のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項22】
前記水抽出物と前記加水分解物との混合比が、水抽出物:加水分解物=約1:約1.1~約1:約9である、請求項1~21のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項23】
前記水抽出物と前記加水分解物との混合比が、水抽出物:加水分解物=約1:約1.1~約1:約4である、請求項1~22のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項24】
皮膚の状態を改善するための美容組成物を製造するための方法であって、
(a)家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを準備する工程と、
(b)前記卵黄膜および/またはカラザと溶媒とを混合し、攪拌する工程と、
(c)工程(b)によって得られた溶液をメッシュ透過させてメッシュ残渣と透過溶液とを得る工程と、
(d)前記メッシュ残渣、卵黄膜、および/またはカラザと溶媒とを混合し、タンパク質分解酵素を添加して攪拌する工程と、
(e)工程(d)によって得られた溶液を濾過して第1の濾液を得る工程と、
(f)工程(c)によって得られた前記透過溶液を濾過して第2の濾液を得る工程と、
(g)前記第1の濾液と前記第2の濾液とを混合する工程と、
を有する、方法。
【請求項25】
皮膚の状態を改善するための美容組成物を製造するための方法であって、
(a)家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを準備する工程と、
(b)前記卵黄膜および/またはカラザと溶媒とを混合し、攪拌する工程と、
(c)工程(b)によって得られた溶液をメッシュ透過させてメッシュ残渣と透過溶液とを得る工程と、
(d)前記メッシュ残渣、卵黄膜、および/またはカラザと溶媒とを混合し、酸を添加して攪拌する工程と、
(e)工程(d)によって得られた溶液を濾過して第1の濾液を得る工程と、
(f)工程(c)によって得られた前記透過溶液を濾過して第2の濾液を得る工程と、
(g)前記第1の濾液と前記第2の濾液とを混合する工程と、
を有する、方法。
【請求項26】
前記濾過する工程は、珪藻土、パーライト、セルロース、パルプ繊維、及びそれらの組み合わせから選択される濾過助剤を用いて行われる、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質分解酵素がパパインである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記酸がクエン酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記家禽鳥類がニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、カモ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ホロホロチョウ、オナガドリ、チャボ、ハト、コブハクチョウ、エミュー、またはキジである、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の濾液と前記第2の濾液との混合比が、第2の濾液:第1の濾液=約1:約1.1~約1:約9である、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の濾液と前記第2の濾液との混合比が、第2の濾液:第1の濾液=約1:約1.1~約1:約4である、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1~23のいずれか一項に記載の美容組成物を皮膚に塗布し、または経口摂取する工程を有する、非治療的な美容方法。
【請求項33】
前記美容組成物が、前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分を少なくとも約0.01w/w%の濃度で含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記美容組成物が、表皮または真皮におけるヒアルロン酸の産生を促進し、I型またはIII型コラーゲンの産生を促進し、皮膚常在善玉菌の増殖能を亢進し、メラニンの生成を抑制し、繊維芽細胞の増殖能を亢進し、及び/または酸化ストレス耐性能を向上させる、請求項32または33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚の状態を改善するための美容組成物、特に、家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザから得ることができる美容組成物、その製造方法、およびその美容組成物を用いた美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液卵工場などにおいて鶏卵などの卵黄液を製造する際、または鶏卵加工製品を製造する際には、殻付き卵を割卵して液卵を得た後、その液卵を殺菌して殺菌液卵としてから、掻き取り式スリットフィルターを用いて食品として適さない部分を取り除くことによって卵黄液を得ている。他方で、この食品として適さない部分として含まれる卵黄膜やカラザは食品産業の廃棄物として大量に廃棄されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、液卵製造過程において生じる廃棄物としての卵黄膜やカラザの新規な利用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを用いて、種々の方法によりその有効成分を抽出したところ、皮膚に対する様々な効果を確認した。それによって、家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを用いて、新規美容組成物を提供した。
【0005】
したがって、本開示の主要な観点によれば、以下の発明が提供される。
(A1)皮膚の状態を改善するための美容組成物であって、家禽鳥類由来の卵黄膜成分および/またはカラザ成分を含む、美容組成物。
(A2)前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分が前記家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザの水抽出物である、上記項目に記載の美容組成物。
(A3)前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分が前記家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザの加水分解物である、項目(A1)に載の美容組成物。
(A4)前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分が、前記家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザの水抽出物と加水分解物との混合物である、項目(A1)に記載の美容組成物。
(A5)前記加水分解物がタンパク質分解酵素および/または酸によるものである、項目(A3)または(A4)に記載の美容組成物。
(A6)前記タンパク質分解酵素がパパインである、項目(A5)に記載の美容組成物。
(A7)前記酸がクエン酸である、項目(A5)に記載の美容組成物。
(A8)前記家禽鳥類がニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、カモ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ホロホロチョウ、オナガドリ、チャボ、ハト、コブハクチョウ、エミュー、またはキジである、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A9)前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分を、少なくとも約0.01w/w%の濃度で含む、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A10)前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分を、約0.01w/w%~約0.1w/w%の濃度で含む、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A11)前記皮膚の状態の改善がヒアルロン酸産生の促進を含む、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A12)前記皮膚の状態の改善が表皮におけるヒアルロン酸産生の促進を含む、項目(A11)に記載の美容組成物。
(A13)前記皮膚の状態の改善が真皮におけるヒアルロン酸産生の促進を含む、項目(A11)に記載の美容組成物。
(A14)前記皮膚の状態の改善がコラーゲン産生の促進を含む、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A15)前記コラーゲンがI型またはIII型コラーゲンである、項目(A14)に記載の美容組成物。
(A16)前記皮膚の状態の改善が皮膚常在善玉菌の増殖能の亢進を含む、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A17)前記皮膚常在善玉菌が表皮ブドウ球菌である、項目(A16)に記載の美容組成物。
(A18)前記皮膚常在善玉菌が、皮膚常在悪玉菌競合培養下において優位に増殖する、項目(A16)または(A17)に記載の美容組成物。
(A19)前記皮膚常在悪玉菌が黄色ブドウ球菌である、項目(A18)に記載の美容組成物。
(A20)前記皮膚の状態の改善がメラニン生成の抑制を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A21)前記皮膚の状態の改善が繊維芽細胞の増殖能の亢進を含む、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A22)前記皮膚の状態の改善が酸化ストレス耐性能の向上を含む、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
(A23)飲食品、食品添加物、化粧品、医薬部外品、または医薬品である、上記項目のいずれか一項に記載の美容組成物。
【0006】
また本開示の他の主要な観点によれば、以下の発明も提供される。
(B1)皮膚の状態を改善するための美容組成物を製造するための方法であって、
家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを準備する工程と、
前記卵黄膜および/またはカラザと溶媒とを混合し、攪拌する工程と、
得られた溶液を濾過する工程と、
を有する、方法。
(B2)皮膚の状態を改善するための美容組成物を製造するための方法であって、
家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを準備する工程と、
前記卵黄膜および/またはカラザと溶媒とを混合し、タンパク質分解酵素または酸を添加して攪拌する工程と、
得られた溶液を濾過する工程と、
を有する、方法。
(B3)皮膚の状態を改善するための美容組成物を製造するための方法であって、
家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを準備する工程と、
前記卵黄膜および/またはカラザと溶媒とを混合し、攪拌する工程と、
得られた溶液をメッシュ透過させてメッシュ残渣と透過溶液とを得る工程と、
前記メッシュ残渣と溶媒とを混合し、タンパク質分解酵素または酸を添加して攪拌する工程と、
得られた溶液を濾過して第1の濾液を得る工程と、
前記透過溶液を濾過して第2の濾液を得る工程と、
前記第1の濾液と前記第2の濾液とを混合する工程と、
を有する、方法。
(B4)前記濾過する工程は、珪藻土、パーライト、セルロース、パルプ繊維、及びそれらの組み合わせから選択される濾過助剤を用いて行われる、項目(B1)~(B3)のいずれか一項に記載の方法。
(B5)前記タンパク質分解酵素がパパインである、項目(B2)または(B3)に記載の方法。
(B6)前記酸がクエン酸である、項目(B2)または(B3)に記載の方法。
(B7)前記家禽鳥類がニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、カモ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ホロホロチョウ、オナガドリ、チャボ、ハト、コブハクチョウ、エミュー、またはキジである、項目(B1)~(B6)のいずれか一項に記載の方法。
【0007】
また本開示の他の主要な観点によれば、以下の発明も提供される。
(C1)項目(A1)~(A23)のいずれか一項に記載の美容組成物を皮膚に塗布し、または経口摂取する工程を有する、非治療的な美容方法。
(C2)前記美容組成物が、前記卵黄膜成分および/またはカラザ成分を少なくとも約0.01w/w%の濃度で含む、項目(C1)に記載の方法。
(C3)前記美容組成物が、表皮または真皮におけるヒアルロン酸の産生を促進し、I型またはIII型コラーゲンの産生を促進し、皮膚常在善玉菌の増殖能を亢進し、メラニンの生成を抑制し、繊維芽細胞の増殖能を亢進し、及び/または酸化ストレス耐性能を向上させる、項目(C1)または(C2)に記載の方法。
【0008】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、次の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る卵黄膜およびカラザにおけるIGF-1ウエスタンブロットの結果である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る美容組成物によるHaCaT細胞におけるヒアルロン酸産生の解析結果を示すグラフである。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る美容組成物によるHS68細胞におけるヒアルロン酸産生の解析結果を示すグラフである。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る美容組成物によるIGF-1R遺伝子発現の解析結果を示すグラフである。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る美容組成物によるHS68細胞増殖能の解析結果を示すグラフである。
図6図6は、本開示の一実施形態において、パパイン以外のタンパク質分解酵素による加水分解物を組み合わせた場合のHS68細胞増殖能の解析結果を示すグラフである。
図7図7は、本開示の一実施形態に係る美容組成物の混合物によるHS68細胞増殖能の解析結果を示すグラフである。
図8図8は、本開示の一実施形態に係る美容組成物によるFGF-7遺伝子発現の解析結果を示すグラフである。
図9図9は、本開示の一実施形態に係る美容組成物による抗酸化ストレス試験結果を示すグラフである。
図10図10は、本開示の一実施形態に係る美容組成物によるI型コラーゲン遺伝子発現の解析結果を示すグラフである。
図11図11は、本開示の一実施形態に係る美容組成物によるIII型コラーゲン産生の解析結果を示すグラフである。
図12図12は、本開示の一実施形態に係る美容組成物によるチロシナーゼ遺伝子発現抑制の解析結果を示すグラフである。
図13図13は、本開示の一実施形態に係る美容組成物による皮膚常在菌の単独培養下での増殖能の解析結果を示すグラフである。
図14図14は、本開示の一実施形態に係る美容組成物による皮膚常在菌の競合培養下での増殖能の解析結果を示すグラフである。
図15図15は、本開示の一実施形態に係る美容組成物を配合した化粧品による顔面美容効果を確認するための試験スケジュールを示す模式図である。
図16図16は、本開示の一実施形態に係る美容組成物を配合した化粧品によるシミ及びシワの改善効果をVISIA画像によって測定した結果を示すグラフである。
図17図17は、本開示の一実施形態に係る美容組成物を配合した化粧品による角層水分量の増加効果及びメラニン量の低減効果をキュートメーターによって測定した結果を示すグラフである。
図18図18は、本開示の一実施形態に係る美容組成物を配合した化粧品を塗布した場合のVASアンケートの結果を示すグラフである。VASアンケートの質問項目として、「肌トラブルからの立ち直り」、「たるみの減り」、「滑らかさ」、および「すべすべ感」の結果を示す。
図19図19は、本開示の一実施形態に係る美容組成物を配合した化粧品を塗布した場合のVASアンケートの結果を示すグラフである。VASアンケートの質問項目として、「左/右側と比較した際の肌の満足度」、「肌の調子」、および「キメ増加」の結果を示す。
図20図20は、本開示の一実施形態に係る美容組成物を配合した化粧品による皮膚バリア保護機能を評価する際のクリームの塗布部位を示す図である。
図21図21は、本開示の一実施形態に係る美容組成物を配合した化粧品による皮膚バリア保護機能を確認するための試験スケジュールを示す模式図である。
図22図22は、本開示の一実施形態に係る美容組成物を配合した化粧品による経皮水分蒸散量の低減効果をキュートメーターによって測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本開示に係る一実施形態および実施例を、図面を参照して説明する。
上記のとおり、本開示に係る一実施形態は、皮膚の状態を改善するための美容組成物であって、家禽鳥類由来の卵黄膜成分および/またはカラザ成分を含むものである。
【0011】
家禽鳥類の卵の卵黄膜は、卵黄を包んでいる水分不透過性の半透明な膜であり、卵白と卵黄を仕切る境膜としての役割を果たしている。また卵黄膜は格子状の繊維が多数積層した外層と、網目状の繊維からなる内層と、この外層および内層の間に位置し、顆粒状のタンパク質が並ぶ連続層とからなる。
【0012】
このような卵黄膜の外面を覆い、タンパク質で構成される網目状の繊維からなる層がカラザ層であり、卵黄極部では繊維が並行に配向し、カラザと連続している。カラザは抗菌作用を持つ卵白の中心に卵黄を保持することで、微生物による汚染や外部からの衝撃から卵黄を保護している。
【0013】
本願明細書において、「卵黄膜成分および/またはカラザ成分」とは、上記のような家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを原料として、溶媒抽出処理や分解処理などの任意の処理方法によって得られる任意の成分である。
【0014】
本願明細書において、「家禽鳥類」とは、上記のような卵黄膜および/またはカラザを採取し得る卵を産卵するものであればよく、例えばニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、カモ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ホロホロチョウ、オナガドリ、チャボ、ハト、コブハクチョウ、エミュー、またはキジなどが含まれるが、これらに限られるものではない。本開示の一実施形態においては、入手が容易で、産卵種としても多産であり、卵も大きく大量飼育方法が確立しているという点でニワトリが好ましい。
【0015】
本願明細書において、「タンパク質分解酵素」とは、タンパク質やポリペプチドの加水分解酵素であるプロテアーゼ、プロテイナーゼ、及びペプチダーゼを含み、本開示の美容組成物を得るために家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザにおけるペプチド結合を加水分解することができるものであれば特に限られるものではない。例えば、本開示の一実施形態において、「タンパク質分解酵素」としては、パパイン、カスパーゼ、キモトリプシン、サブチリシン、ナットウキナーゼ、バシロライシン、ステムブロメライン、ロイシルアミノペプチダーゼ、ペプシン、カテプシンD、サモアーゼ、プロテアックス、プロテアーゼA、プロチンSD-NY10、ペプチダーゼR、ペプチダーゼP、及びトリプシンなどを用いることができる。
【0016】
本願明細書において、「酸」とは、アレニウス、ブレンステッド・ローリー、またはルイスのいずれかの定義によって酸とされるものを含み、本開示の美容組成物を得るために家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザにおけるペプチド結合を加水分解することができるものであれば特に限られるものではない。例えば、本開示の一実施形態において、「酸」としては、クエン酸、塩酸、硫酸、硝酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過臭素酸、メタ過ヨウ素酸、過マンガン酸、チオシアン酸、グルタミン酸、リン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、チオジプロピオン酸、酢酸、アコニット酸、アジピン酸、アルギン酸、安息香酸、カプリル酸、乳酸、リノレン酸、リンゴ酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、スルファミン酸、およびギ酸などを用いることができる。タンパク質を構成するペプチド結合は極めて安定な結合であるため、酸を用いて非酵素的に分解するために、低いpHで高温に加熱して分解することもでき、比較的弱酸性の酸を用いる場合には、長時間にわたって高温で処理することもできる。
【0017】
本願明細書において、「アルカリ」または「アルカリ水溶液」とは、アレニウス、ブレンステッド・ローリー、またはルイスのいずれかの定義によってアルカリとされるものを含み、本開示の美容組成物を得るために家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザにおけるペプチド結合を加水分解することができるものであれば特に限られるものではない。例えば、本開示の一実施形態において、「アルカリ」としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属または、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水溶液などを用いることができる。タンパク質を構成するペプチド結合は極めて安定な結合であるため、アルカリを用いて非酵素的に分解するために、高いpHで高温に加熱して分解することもでき、比較的弱アルカリ性のアルカリを用いる場合には、長時間にわたって高温で処理することもできる。
【0018】
本願明細書において、「皮膚の状態を改善する」または「皮膚の状態の改善」とは、加齢、日焼けに伴う紫外線、または過度の洗浄などによる皮膚(表皮および真皮)の張りや弾力性の低下、シワ、たるみ、ツヤの低下、または肌のキメの低下、コラーゲン産生やヒアルロン酸産生の低下が原因で起こる症状等を予防し、その進行を抑え、またはこのような症状から皮膚を保護することをいう。例えば、本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物は、肌のコラーゲン(I型、III型)産生の促進、表皮および真皮のヒアルロン酸産生の促進、弾力性の向上、水分保持、新陳代謝促進(ターンオーバー)、創傷治癒、抗老化、シワの改善、たるみの改善、柔軟性の向上、メラニン生成の抑制、美白、シミの改善、肌細菌叢の改善、皮膚常在善玉菌(表皮ブドウ球菌)の増殖能の亢進、皮膚常在悪玉菌(黄色ブドウ球菌)競合培養下における皮膚常在善玉菌の優位な増殖、繊維芽細胞の増殖能の亢進、酸化ストレス耐性能の向上、肌荒れの改善、にきび症状の改善、毛穴の目立ち改善、黒ずみの改善、化粧乗りの改善、目の隈の改善、およびバリア機能の改善のうちの1または複数のために用いることができる。
【0019】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0020】
本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物は、家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを原料とした、溶媒による抽出物、または化学的な分解物である。本開示の一実施形態において、分解物としては、熱分解物や加水分解物などを含むことができ、加水分解物としてはタンパク質分解酵素、酸、および/またはアルカリによる加水分解物を含むことができる。
【0021】
(1:溶媒抽出物)
本開示の一実施形態において、溶媒抽出物のための溶媒としては、卵黄膜成分および/またはカラザ成分の皮膚の状態の改善能に影響を与えずに、卵黄膜成分および/またはカラザ成分を十分抽出できるものであって、抽出に用いることができる溶媒を1種または2種以上選択して用いることができる。例えば、本開示の一実施形態において、抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される溶媒を適宜選択することができ、これらの溶媒の任意の組み合わせも使用することができる。
【0022】
溶媒抽出物を得る場合には、上記のような抽出溶媒を原料となる卵黄膜および/またはカラザに加えて攪拌させる。十分に攪拌して得られた溶液を、濾過、沈殿、濃縮、遠心分離、または乾燥などの種々の方法によって処理することによって本開示の美容組成物を得ることができる。
【0023】
美容組成物における使用のためには、人体への摂取や例えば水による抽出の場合、原料として卵黄膜および/またはカラザを準備して、必要に応じて凍結乾燥、減圧濃縮乾固、噴霧乾燥、真空乾燥、流動乾燥、ドラム式乾燥、棚式乾燥、およびマイクロウェーブによる乾燥等の本技術分野において周知の方法によって濃縮または乾燥することができる。または原料となる卵黄膜および/またはカラザを粉砕または細切して抽出効率を高めることもできる。その後、抽出溶媒として水を加えてから攪拌させる。この際の攪拌条件は原料と溶媒とが十分に攪拌され、本開示に係る卵黄膜成分および/またはカラザ成分が原料から適切に溶媒抽出されるものであればよく、例えば約25~約40℃で約6~約10時間攪拌させることができ、好ましくは室温で一晩攪拌させる。攪拌後の溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、濾液として本開示の美容組成物を得ることができる。
【0024】
(2:分解物)
本開示の一実施形態において、家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを材料として用いて本開示の美容組成物を製造する場合、卵黄膜および/またはカラザを化学的に分解して得ることもできる。この場合、分解手法としては、家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザにおけるペプチド結合を適切に切断し、より分子量の小さい可溶性の成分とすることができるものであればよく、例えば、熱分解や、タンパク質分解酵素、酸、またはアルカリなどによる加水分解などが挙げられる。本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物は家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザが有する美容成分を利用するものであるため、化粧品等の原料としてその成分の機能が発揮されるように配合できる低分子量の可溶化物であれば、その分解の手法や程度は特に限られるものではない。一般に経皮吸収は分子量約500以下で起こると考えられているため、家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを材料として用いて本開示の美容組成物を製造する場合、分子量約500以下となるように原料を分解するのが好ましく、種々の分解手法によって分子量サイズを下げることで経皮吸収効率が得られやすくなるという効果を得ることもできる。また家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを加水分解することによって得られるシステインやグリシンなどのアミノ酸は美容効果を高めると考えられているため、このようなアミノ酸を得るように分解するものであってもよい。
【0025】
(3:酵素加水分解物)
タンパク質分解酵素による加水分解の場合、原料として卵黄膜および/またはカラザを準備して、溶媒として水を加え、さらにタンパク質分解酵素を加えてから攪拌させる。この際の攪拌条件は原料、溶媒、及びタンパク質分解酵素が十分に攪拌され、タンパク質分解酵素が原料におけるペプチド結合を加水分解して本開示に係る卵黄膜成分および/またはカラザ成分が適切に得られるものであればよく、例えば約40~約60℃で約2~約4時間攪拌させることができ、好ましくは約40℃で約2時間攪拌させる。またタンパク質分解酵素の濃度としては、用いる酵素の機能を発揮し得る濃度であれば特に限られるものではなく、例えばパパインを用いる場合には約1%~約5%、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%パパインなどであってもよい。
【0026】
タンパク質分解酵素を加えて攪拌させた後、余剰酵素を失活させるため、高温で攪拌させる。この際の失活条件は添加したタンパク質分解酵素が十分に失活するようなものであればよく、例えば温浴約95℃で約10~約30分間攪拌させることができ、好ましくは約95℃で約10分間攪拌させる。失活後の溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、濾液として本開示の美容組成物を得ることができる。
【0027】
(4:酸加水分解物)
酸による加水分解の場合、原料として卵黄膜および/またはカラザを準備して、溶媒として水を加え、さらに酸を加えてから攪拌させる。この際の攪拌条件は原料、溶媒、及び酸が十分に攪拌され、酸が原料におけるペプチド結合を加水分解して本開示に係る卵黄膜成分および/またはカラザ成分が適切に得られるものであればよく、例えば約40~約80℃で約1~約4時間攪拌させることができ、好ましくは約80℃で約1時間攪拌させる。また酸の濃度としては、溶液全体として、原料におけるペプチド結合を加水分解して本開示に係る卵黄膜成分および/またはカラザ成分が適切に得られる酸性度のものとなればよく、用いる酸の種類や酸性の強弱によってその濃度を適宜変更することができ、好ましくはpHを約4以下に調整し得る濃度とすることができる。例えばクエン酸を用いる場合には、約0.1%~約1%(v/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1%クエン酸などであってもよい。
【0028】
酸を加えて攪拌させた後、反応を停止させるため、塩基で中和させる。この際の条件は添加した酸が十分に中和するようなものであればよく、例えば水酸化ナトリウムを用いる場合には約0.1%~約1%(v/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1%水酸化ナトリウムなどであってもよい。中和後の溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、濾液として本開示の美容組成物を得ることができる。
【0029】
(5:アルカリ加水分解物)
アルカリによる加水分解の場合、原料として卵黄膜および/またはカラザを準備して、溶媒として水を加え、さらにアルカリ水溶液を加えてから攪拌させる。この際の攪拌条件は原料、溶媒、及びアルカリ水溶液が十分に攪拌され、アルカリ水溶液が原料におけるペプチド結合を加水分解して本開示に係る卵黄膜成分および/またはカラザ成分が適切に得られるものであればよく、例えば室温~約100℃で約1~約4時間攪拌させることができ、好ましくは約80℃で約1時間攪拌させる。またアルカリ水溶液の濃度としては、用いるアルカリの機能を発揮し得る濃度であれば特に限られるものではなく、例えば水酸化ナトリウムを用いる場合には約0.1%~約1%(v/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1%水酸化ナトリウムなどであってもよい。
【0030】
アルカリ水溶液を加えて攪拌させた後、反応を停止させるため、酸で中和させる。この際の条件は添加したアルカリ水溶液が十分に中和するようなものであればよく、例えば塩酸を用いる場合には約0.1%~約1%(v/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1%塩酸などであってもよい。中和後の溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、濾液として本開示の美容組成物を得ることができる。
【0031】
(6:混合物)
本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物は、家禽鳥類由来の卵黄膜および/またはカラザを原料とした、溶媒抽出物と分解物(典型的には、加水分解物)との混合物とすることもできる。この場合、異なる溶媒によって抽出した溶媒抽出物や、異なる方法(例えば、異なるタンパク質分解酵素または異なる酸)によって加水分解した分解物を複数任意に組み合わせることもできる。例えば、水による抽出物とタンパク質分解酵素または酸による加水分解物との混合物の場合、原料として卵黄膜および/またはカラザの湿潤サンプルを準備して、溶媒として水を加えてから攪拌させる。この際の攪拌条件は原料と溶媒とが十分に攪拌され、その後のメッシュ透過によって、タンパク質分解酵素または酸による加水分解に供する固形分と水抽出に供する透過溶液とを適切に分けることができるものであればよく、例えば約40~約60℃で約2~約4時間攪拌させることができ、好ましくは約60℃で約2時間攪拌させる。攪拌後、メッシュ処理して固形分と透過溶液とにわける。この際に用いるメッシュ規格は、加水分解に用いる固形分と水抽出に用いる透過溶液とを、それぞれの分解または抽出方法に適した粒子サイズに分離し得るものであれば特に限られるものではなく、例えば目開き約0.6~約0.2mmの約26~約90メッシュ、例えば26、30、32、35、40、50、60、70、80、または90メッシュなどを用いることができ、好ましくは26メッシュを用いる。
【0032】
このようにメッシュ処理して得た固形分に溶媒として水を加え、さらにタンパク質分解酵素または酸を加えてから攪拌させる。この際の攪拌条件は固形分、溶媒、及びタンパク質分解酵素または酸が十分に攪拌され、タンパク質分解酵素または酸が固形分におけるペプチド結合を加水分解して本開示に係る卵黄膜成分および/またはカラザ成分が適切に得られるものであればよい。
【0033】
メッシュ処理して得た固形分溶液の加水分解として、タンパク質分解酵素を加えて攪拌した場合、約40~約60℃で約2~約4時間攪拌させることができ、好ましくは約60℃で約3時間攪拌させる。またタンパク質分解酵素の濃度としては、用いる酵素の機能を発揮し得る濃度であれば特に限られるものではなく、例えばパパインを用いる場合には約1%~約5%、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%パパインなどであってもよい。
【0034】
タンパク質分解酵素を加えて攪拌させた後、余剰酵素を失活させるため、高温で攪拌させる。この際の失活条件は添加したタンパク質分解酵素が十分に失活するようなものであればよく、例えば温浴約95℃で約10~約30分間攪拌させることができ、好ましくは約95℃で約30分間攪拌させる。失活後の溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、加水分解処理による濾液を得ることができる。他方で、上記のようにメッシュ処理して得た透過溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、水抽出による濾液を得ることができる。これらの濾液を混合することにより、本開示の美容組成物を得ることができる。
【0035】
メッシュ処理して得た固形分溶液の加水分解として、酸を加えて攪拌した場合、例えば約40~約80℃で約1~約4時間攪拌させることができ、好ましくは約80℃で約1時間攪拌させる。また酸の濃度としては、溶液全体として、原料におけるペプチド結合を加水分解して本開示に係る卵黄膜成分および/またはカラザ成分が適切に得られる酸性度のものとなればよく、用いる酸の種類や酸性の強弱によってその濃度を適宜変更することができ、好ましくはpHを約4以下に調整し得る濃度とすることができる。例えばクエン酸を用いる場合には、約0.1%~約1%(v/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1%クエン酸などであってもよい。
【0036】
酸を加えて攪拌させた後、反応を停止させるため、塩基で中和させる。この際の条件は添加した酸が十分に中和するようなものであればよく、例えば苛性ソーダを用いる場合には約0.1%~約1%(v/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1%苛性ソーダなどであってもよい。中和後の溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、加水分解処理による濾液を得ることができる。他方で、上記のようにメッシュ処理して得た透過溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、水抽出による濾液を得ることができる。これらの濾液を混合することにより、本開示の美容組成物を得ることができる。
【0037】
本開示の一実施形態において、溶媒抽出物と分解物との混合物は、上記「6:混合物」のようにして製造する以外に、例えば上記「1:溶媒抽出物」で得た溶媒抽出物と、上記「3:酵素加水分解物」、「4:酸加水分解物」、または「5:アルカリ加水分解物」で得た1またはそれ以上の加水分解物とを混合させて製造することもできる。この場合、溶媒抽出物と分解物との混合比は特に限定されるものではなく、例えば約1:約9~約9:約1の割合とすることができる。本開示の混合物は、溶媒抽出物:分解物を約1:約1.1~約1:約9、約1:約1.1~約1:約4、約1:約1.1~約1:約2、好ましくは溶媒抽出物:分解物が約1:約1.5~約1:約2であり、より好ましくは水抽出物:加水分解物を約1:約1.1~約1:約9、約1:約1.1~約1:約4、約1:約1.1~約1:約2、さらに好ましくは水抽出物:加水分解物が約1:約1.5~約1:約2である。
【0038】
本開示の一実施形態において、本開示の溶媒抽出物、または加水分解物などの分解物が奏する効果について、分解物ごとに効果の種類に違いがあり、または、同種の効果であっても、それぞれの美容組成物ごとにその発揮の程度に強弱があり得る。そのため、本開示の美容組成物として混合物を用いる場合には、混合される溶媒抽出物や分解物が備える効果や性質を併せて備えることができる。よって、本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物が所望の効果を発揮し得るように、その用途に応じて、混合される溶媒抽出物もしくは分解物の種類、またはその混合比を適宜変更することもできる。
【0039】
また本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物を混合物とする場合、材料となる家禽鳥類由来の卵黄膜成分および/またはカラザを、異なる加水分解酵素で分解して得た2またはそれ以上の加水分解物同士を混合することもできる。この場合、そのようにして得た混合物は、2またはそれ以上の加水分解物がそれぞれ備える効果または性質を併せて備えることができ、例えばパパイン加水分解物とサモアーゼ加水分解物とを組み合わせて混合物とすることで、後述の細胞増殖能などの効果をさらに向上させることができ、このことはパパイン加水分解物とサモアーゼ加水分解物とがそれぞれ備える細胞増殖能が組み合わされたことを示す。例えば、本発明の混合物は、家禽鳥類由来の卵黄膜成分および/またはカラザの、水抽出物、クエン酸加水分解物およびパパイン加水分解物を含み得る。
【0040】
(美容組成物)
本開示の一実施形態において、種々の溶液を濾過する際には、濾材(金網、濾布、濾紙等)の閉塞防止と円滑な濾過を目的として、濾過対象溶液中に入れて濾材上に紛体等の層を形成させる濾過助剤を用いることもでき、例えば、珪藻土、パーライト、セルロース、パルプ繊維、及びそれらの組み合わせを濾過助剤として用いることもできる。この場合、添加する濾過助剤の量は、本開示の美容組成物やその効果に対して望ましくない影響を与えるものでなく、また本開示の美容組成物を適切に濾過できるものであれば特に制限はなく、例えば、抽出物中の珪藻土の量として、約0.01g/mL~約0.1g/mL程度となるようにして添加される。
【0041】
本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物の形態は特に限定されるものではなく、上記のように濾過して得た液体状の組成物であってもよく、またはこの濾液を凍結乾燥、減圧濃縮乾固、噴霧乾燥、真空乾燥、流動乾燥、ドラム式乾燥、棚式乾燥、およびマイクロウェーブによる乾燥等の本技術分野において周知の方法によって濃縮または乾燥して、ペースト状、または粉末状(抽出物粉末)、細粒状、顆粒状としたものであってもよい。また本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物に対しては、殺菌処理を行ってもよく、殺菌後、さらに濃縮、乾燥、または粉末化を行ってもよい。
【0042】
本開示の美容組成物は、家禽鳥類由来の卵黄膜成分および/またはカラザ成分を含むものであればその形態は特に限られるものではなく、例えば、飲食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の機能性食品を含む。)、食品添加物、化粧品、医薬部外品、または医薬品とすることもできる。
【0043】
本開示の美容組成物は、経口用または皮膚外用として使用することができる。皮膚外用剤としては、皮膚に塗布して用いるものであれば特に限定されるものではなく、その形態としては、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、ローション剤、乳液剤、パック剤、および湿布剤等を含むことができる。
【0044】
また、本開示の美容組成物を経口剤として用いる場合、その形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、粒状剤、丸状剤、ペースト状剤、クリーム状剤、カプレット状剤、ゲル状剤、チュアブル状剤、スティック状剤等とすることができる。
【0045】
本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物を化粧品として用いる場合には、化粧品に使用することができる種々の成分を配合してもよく、またその形態や用途についても特に限られるものではない。例えば、本開示の美容組成物には、炭化水素類、エステル類、トリグリセライド類、脂肪酸、高級アルコール等の油性成分、アニオン界面活性剤類、両性界面活性剤類、カチオン界面活性剤類、非イオン界面活性剤類等の界面活性剤、多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を配合することができる。
【0046】
本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物は、上記のような皮膚の状態を改善することができる範囲の濃度、または製品としての適切な効果を発揮することができ、色や臭いなどの問題が生じないような濃度で家禽鳥類由来の卵黄膜成分および/またはカラザ成分を含むことができ、例えば本開示の美容組成物は家禽鳥類由来の卵黄膜成分および/またはカラザ成分を約0.0001w/w%~約10w/w%の濃度で含むことができ、好ましくは約0.001w/w%~約1w/w%、より好ましくは少なくとも約0.01w/w%の濃度、さらに好ましくは約0.01w/w%~約0.1w/w%の濃度、よりさらに好ましくは約0.1w/w%の濃度で含むことができる。
【0047】
本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物の塗布量または摂取量としては特に制限はないが、本開示の美容組成物の効果をより顕著に発揮させる観点から、本開示の美容組成物の1日当たりの塗布または摂取量が、約0.1mg/日以上となるように塗布または摂取することが好ましく、より好ましくは約1mg/日以上、さらに好ましくは約10mg/日以上となるように塗布または摂取することができる。本開示の美容組成物の1日当たりの塗布または摂取量の上限は、上記のような皮膚の状態を改善することができる範囲の量、または製品としての適切な効果を発揮することができる量であれば、特に制限されるものではない。
【0048】
本開示の一実施形態において、本開示の美容組成物を皮膚に塗布することによって上述のような皮膚の状態の改善効果を得ることができる。このような美容方法には治療行為や医療行為は含まれず、またその対象は特に制限されず、加齢等によって皮膚の柔軟性が低下した被験者や健常者に対しても塗布することができる。本開示の美容組成物を皮膚に塗布する工程を有する美容方法が適用される皮膚は特に制限されるものではなく、例えば、顔面、首、手、足、腕、脚、胸部、腹部、および背中などが含まれる。
【0049】
本開示の一実施形態において、本開示の美容方法の適用頻度は、上記のような皮膚の状態を改善することができる範囲の回数、または製品としての適切な効果を発揮することができる回数であれば、特に制限されるものではなく、1週間に約1~約7回、好ましくは2日に1回、より好ましくは毎日行うことが望ましく、1日あたりの適用回数にも特に制限はない。
【実施例
【0050】
以下に、実施例を用いて、本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
以下に、本開示において用いる実験手法および材料について説明する。なお、本実施形態において、以下の実験手法を用いているが、これら以外の実験手法を用いても、同様の結果を得ることができる。
【実施例1】
【0052】
鶏卵卵黄膜およびカラザの水抽出物の製造
鶏卵の卵黄膜およびカラザを原料として用いて、この原料を水抽出することによって本開示の美容組成物を得た。
まず原料として鶏卵の卵黄膜およびカラザの混合物を1000g準備した。この混合物を凍結乾燥させて粉末にした後、5倍に加水して1400mLの溶液を得た。この溶液を室温で一晩攪拌させ、その後、濾過助剤としてラヂオライト#100(昭和化学工業株式会社)50gを用いて、直径185mmの定性濾紙(アドバンテック東洋株式会社 定性濾紙No.2)で濾過し、その濾液を凍結乾燥させて32gの水抽出物を得た。この水抽出物を以下の実施例において用いた。
【実施例2】
【0053】
鶏卵卵黄膜およびカラザのタンパク質分解酵素による加水分解物の製造
鶏卵の卵黄膜およびカラザを原料として用いて、この原料をタンパク質分解酵素としてパパインを用いて加水分解することによって本開示の美容組成物を得た。
まず原料として鶏卵の卵黄膜およびカラザの混合物を1000g準備した。この混合物を5倍に加水して5000mLの溶液を得た。この溶液に原料固形分の5%に相当するパパイン粉末(天野エンザイム社製)を2.8g添加し、40℃で2時間攪拌させた。その後、95℃で10分攪拌させることによりパパインを失活させた。得られた溶液を、濾過助剤としてラヂオライト#100(昭和化学工業株式会社)50gを用いて、直径185mmの定性濾紙(アドバンテック東洋株式会社 定性濾紙No.2)で濾過し、その濾液を凍結乾燥させて112gのパパイン加水分解物を得た。このパパイン加水分解物を以下の実施例において用いた。
【実施例3】
【0054】
鶏卵卵黄膜およびカラザの水抽出物とタンパク質分解酵素による加水分解物との混合物の製造
まず原料として鶏卵の卵黄膜およびカラザの混合物を湿潤サンプルとして100g(固形分28g)準備した。
この混合物に500mLの水を加えて5倍に加水し、60℃で2時間攪拌した。得られた溶液を26メッシュで透過させ、メッシュ残渣として50mLの固形分と、450mlの透過溶液とに分けた。
50mLの固形分に、250mLの水を加えて5倍に加水した後、固形分の1%に相当するパパイン粉末(天野エンザイム社製)を0.5g添加し、60℃で3時間攪拌させた。その後、95℃で30分攪拌させることによりパパインを失活させた。得られた溶液を、濾過助剤としてラジオライト#100(昭和化学工業株式会社)50gを用いて、直径185mmの定性濾紙(アドバンテック東洋株式会社 定性濾紙No.2)で濾過し、パパイン加水分解による濾液とした。
続いて、26メッシュで透過させて得た450mlの透過溶液を、濾過助剤としてラジオライト#100(昭和化学工業株式会社)50gを用いて、直径185mmの定性濾紙(アドバンテック東洋株式会社 定性濾紙No.2)で濾過し、水抽出による濾液とした。パパイン加水分解による濾液と水抽出による濾液とを混合した溶液を凍結乾燥させ、9.5g(固形分の34%)の混合物を得た。このようにして得た混合物、または実施例1及び2で得た水抽出物とタンパク質分解酵素による加水分解物とを混合させたものを以下の実施例における混合物として用いた。
【実施例4】
【0055】
ウエスタンブロットによるIGF-1発現解析
インスリンに非常に似た構造を持つ増殖因子であり、コラーゲン量増加、弾力性の向上、及び細胞増殖能の向上を期待できるIGF-1が卵黄膜やカラザに発現しているか否かを確認するため、サンプルとして卵黄膜・カラザ、カラザ(殻付き卵を卵割し、目視にて採取)、脱脂卵黄粉末(工業製品)、及び卵白粉(工業製品)のそれぞれを用いてウエスタンブロット解析を行った。
まず各サンプルを準備した後、各サンプルにRIPA Bufferを加えて固形分を可溶化した。可溶化した各溶液を1mLチューブに移し、Laemmli’s Bufferを添加した。各チューブをヒートブロックにおいて100℃に加熱後、氷冷して還元変性処理した。
SDS電気泳動ゲルの各ウェルに20~30μgのタンパク質を含む還元・変性処理サンプル液、または分子量マーカーを添加し、SDS-PAGE用4~20%グラジェントゲルの各ウェルにサンプルを添加した。SDS-トリスグリシンバッファー中で、200V定電圧で泳動させた。泳動後、トリスグリシン転写バッファーで平衡化したPVDFメンブレンと泳動後のゲルとを重ね合わせて、セミドライ型ブロッティング装置にセットし、150mA定電流で30分間ブロッティングした。
ブロッティング後、ブロッキングバッファーにメンブレンを浸して4℃で一晩静置した。メンブレンをPBSTに浸し、5分攪拌して洗浄し、この洗浄工程を3回繰り返した。洗浄後、抗チキンIGF-1抗体をブロッキングバッファーに添加し、これにメンブレンを浸し、室温で2時間攪拌させた。その後、メンブレンをPBSTに浸し、5分攪拌して洗浄し、この洗浄工程を再度3回繰り返した。二次抗体をブロッキングバッファーに添加し、これにメンブレンを浸した。再度メンブレンをPBSTに浸し、5分攪拌して洗浄し、この洗浄工程を3回繰り返した。洗浄後、化学発光検出剤にメンブレンを浸し、特異的バンドを検出した(図1)。
その結果、卵黄膜・カラザ、及びカラザの各サンプルでは13kDaにバンドが現れIGF-1が発現していることが示された。一方、脱脂卵黄粉末、及び卵白粉の各サンプルでは当該バンドは現れなかった。
【実施例5】
【0056】
HaCaT細胞におけるヒアルロン酸産生解析
皮膚表皮を構成する角化細胞であるHaCaT細胞を用いて、本開示に係る美容組成物がヒアルロン酸産生を促進させるかどうかを検証した。ヒアルロン酸産生が促進されることにより、水分保持や弾力性保持が期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHaCaT(角化細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(10%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ1%、パパイン加水分解物0.05%および0.50%、水抽出物0.05%および0.50%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに48時間培養した。
培地上清を回収し、Hyaluronan DuoSet ELISA kit (R
and D社)を用いて培地中のヒアルロン酸を検出した。サンプルを添加していないウェルの吸光度を100%として、ヒアルロン酸産生率を割合として算出した。各サンプルのヒアルロン酸産生率を図2に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、ヒアルロン酸の産生を促進させ、0.50%の水抽出物を添加した場合には、コントロールと比べて75%以上の増加がみられた。
【実施例6】
【0057】
HS68細胞におけるヒアルロン酸産生解析
続いて、皮膚真皮を構成する繊維芽細胞であるHS68細胞を用いて、本開示に係る美容組成物がヒアルロン酸産生を促進させるかどうかを検証した。ヒアルロン酸産生が促進されることにより、水分保持や弾力性保持が期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHS68(繊維芽細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(10%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ0.1%、パパイン加水分解物0.01%および0.10%、水抽出物0.01%および0.10%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに48時間培養した。
培地上清を回収し、Hyaluronan DuoSet ELISA kit (R
and D社)を用いて培地中のヒアルロン酸を検出した。ヒアルロン酸スタンダートのELISAによる希釈列の検出データから検量線を作成し、その検量線を用いて各ウェルの培地中ヒアルロン酸濃度を算出した。各サンプルのヒアルロン酸産生率を図3に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、ヒアルロン酸の産生を促進させ、0.10%のパパイン加水分解物を添加した場合には、コントロールと比べて5倍以上の増加がみられた。
【実施例7】
【0058】
IGF-1R遺伝子発現解析
実施例4でIGF-1の発現を確認することができたため、IGF-1によって活性化されるIGF-1R遺伝子の発現解析を、HaCaT細胞を用いて行った。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHaCaT(角化細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(1%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ0.1%、パパイン加水分解物0.5%、水抽出物0.5%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに一晩培養した。
培地を取り除き、PBSで培養細胞を洗浄した。フェノールおよびグアニジン塩によってRNAを抽出し、cDNA library construction kit (タカラ社)を用いてcDNAライブラリーを作成した。PrimeScript RT-PCR kit (タカラ社) を用いて溶液を調製し、ヒトIGF-1R遺伝子に対応するプライマーおよびヒトGAPDHに対応するプライマーを添加した。リアルタイムPCRによって発現量を測定し、GAPDHとの相対比較で遺伝子量を定量した。各サンプルの遺伝子発現量を図4に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、IGF-1R遺伝子発現を亢進させることがわかった。
【実施例8】
【0059】
HS68細胞増殖能の検証
本開示に係る美容組成物が細胞増殖能を有するか否かについて、繊維芽細胞であるHS68細胞を用いて確認した。細胞増殖能が亢進されることにより、新陳代謝促進(ターンオーバー)、創傷治癒、及び抗老化が期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHS68(繊維芽細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(1%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ0.10%、パパイン加水分解物0.05%、0.10%、および0.50%、水抽出物0.05%、0.10%、および0.50%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに一晩培養した。
培地を取り除き、テトラゾリウム塩試薬を含むDMEM培地(0%FBS)で2時間培養した。比色(Abs.450nm)によって生細胞量を算出した。各サンプルの細胞増殖率を図5に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、コントロールと比較してHS68細胞増殖能を亢進させることがわかった。
【実施例9】
【0060】
他のタンパク質分解酵素による加水分解物のHS68細胞増殖能
続いて、パパイン以外のタンパク質分解酵素で原料を加水分解して得た美容組成物を用いて、細胞増殖能の亢進が発揮されるかどうかを確認した。本実施例においては、パパイン加水分解物に、種々のタンパク質分解酵素による加水分解物を添加してその効果を確認した。
まずサンプルとして、パパイン加水分解物、およびパパイン加水分解物をサモアーゼ、プロテアックス、プロテアーゼA、プロチンSD-NY10、およびプロテアーゼPで加
水分解したサンプルをそれぞれ準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHS68(繊維芽細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(1%FBS)を用いて添加濃度(いずれも0.10%)に希釈しておき、パパイン加水分解物だけ、またはパパイン加水分解物に各サンプル溶液を加えたものを培養培地に添加し、さらに一晩培養した。
培地を取り除き、テトラゾリウム塩試薬を含むDMEM培地(0%FBS)で2時間培養した。比色(Abs.450nm)によって生細胞量を算出した。各サンプルの細胞増殖率を図6に示した。
その結果、パパイン加水分解物に加えて他のタンパク質分解酵素による加水分解物を添加した場合には、コントロールと比較してHS68細胞増殖能を亢進させることがわかった。
【実施例10】
【0061】
水抽出物およびパパイン加水分解物の混合物のHS68細胞増殖能
続いて、水抽出物とパパイン加水分解物との混合物を用いて、細胞増殖能の亢進が発揮されるかどうかを確認し、またその混合物のHS68細胞増殖促進効果について、水抽出物単体およびパパイン加水分解物単体と比較した。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)、及び水抽出物とパパイン加水分解物との混合物(水抽出物:パパイン分解物=約4:7)を準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHS68(繊維芽細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(1%FBS)を用いて添加濃度(いずれも0.1%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに一晩培養した。
培地を取り除き、テトラゾリウム塩試薬を含むDMEM培地(0%FBS)で2時間培養した。比色(Abs.450nm)によって生細胞量を算出した。各サンプルの細胞増殖率を図7に示した。
その結果、水抽出物およびパパイン加水分解物の混合物は、コントロールと比較してHS68細胞増殖能を亢進させ、また水抽出物単体およびパパイン加水分解物単体と比較してもっとも強くHS68細胞増殖促進効果を発揮することがわかった。
【実施例11】
【0062】
FGF-7遺伝子発現解析
FGF-7遺伝子の発現解析を、HS68細胞を用いて行った。FGFファミリーは線維芽細胞をはじめとする種々の細胞に対して増殖や分化などの活性を示す多機能性シグナル分子である。そのため、FGF-7遺伝子発現が亢進することにより、新陳代謝促進(ターンオーバー)、創傷治癒、及び抗老化が期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHS68(繊維芽細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(1%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ0.1%、パパイン加水分解物0.1%、水抽出物0.1%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに一晩培養した。
培地を取り除き、PBSで培養細胞を洗浄した。フェノールおよびグアニジン塩によってRNAを抽出し、cDNA library construction kit (タカラ社)を用いてcDNAライブラリーを作成した。PrimeScript RT-PCR kit (タカラ社) を用いて溶液を調製し、ヒトFGF-7遺伝子に対応するプライマーおよびヒトGAPDHに対応するプライマーを添加した。リアルタイムPCRによって発現量を測定し、GAPDHとの相対比較で遺伝子量を定量した。各サンプルの遺伝子発現量を図8に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、FGF-7遺伝子発現を亢進させ、特に水抽出物ではコントロールと比べて2.5倍もの発現量の増加がみられた。
【実施例12】
【0063】
抗酸化ストレス試験
細胞からの乳酸脱水素酵素(LDH)遊離率を指標として、本開示の美容組成物が細胞内の活性酸素産生による細胞障害をどの程度低減できるのかについてHS68細胞を用いて確認した。抗酸化ストレス能を増大させることができれば、抗老化、及び抗シワが期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。また陽性対照の抗酸化物質としてアスコルビン酸(和光純薬)を、酸化ストレスとして過酸化水素水(和光純薬)を用いた。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHS68(繊維芽細胞)を前培養した。96ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(10%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ0.1%、パパイン加水分解物0.01%、0.05%、0.1%、及び0.5%、水抽出物0.01%、0.05%、0.1%、及び0.5%)に希釈し、またアスコルビン酸をDMEM培地(10%FBS)に溶解して250μM溶液を作成し、陽性対照とした。
各サンプル溶液を培養培地に添加し、そこに終濃度0.75mMとなるよう過酸化水素を添加して24時間培養した。LDH-細胞毒性テストワコー(富士フィルム和光純薬)を用いて、LDHの産生量からストレス負荷を検出した。
50μLの培養培地に50μLの発色液を加えて室温で45分間静置した。100μLの 1N HCL(発色停止液)を加えて、560nmで吸光度を測定した。過酸化水素水を加えた場合のLDH量を100%として各サンプル添加によるストレス減退を割合で算出した。各サンプルでのLDH量を図9に示した。
その結果、過酸化水素水を加えた場合のLDH量(NC+0.75mM H)と比べて、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれを加えた場合にも、LDH量は半減し、過酸化水素水を加えていない(NC)レベルにまで低下した。
【実施例13】
【0064】
I型コラーゲン遺伝子発現解析
I型コラーゲン遺伝子の発現解析を、HS68細胞を用いて行った。I型コラーゲンは皮膚の真皮に非常に多く、皮膚の強さを生み出す働きがある。そのため、I型コラーゲン遺伝子発現が亢進することにより、たるみ、しわの改善、柔軟性、及び弾力性維持が期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHS68(繊維芽細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(1%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ0.1%、パパイン加水分解物0.1%、水抽出物0.01%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに一晩培養した。
培地を取り除き、PBSで培養細胞を洗浄した。フェノールおよびグアニジン塩によってRNAを抽出し、cDNA library construction kit (タカラ社)を用いてcDNAライブラリーを作成した。PrimeScript RT-PCR kit (タカラ社) を用いて溶液を調製し、ヒトI型コラーゲン遺伝子に対応するプライマーおよびヒトGAPDHに対応するプライマーを添加した。リアルタイムPCRによって発現量を測定し、GAPDHとの相対比較で遺伝子量を定量した。各サンプルの遺伝子発現量を図10に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、ヒトI型コラーゲン遺伝子発現を亢進させ、特に水抽出物ではコントロールと比べて1.5倍以上に発現量を増加させた。
【実施例14】
【0065】
HS68細胞におけるIII型コラーゲン産生解析
続いて、HS68細胞を用いて、本開示に係る美容組成物がIII型コラーゲン産生を促進させるかどうかを検証した。I型コラーゲンの存在する組織にはIII型コラーゲンも共存する場合が多く、III型コラーゲンはI型やV型とともにコラーゲン線維を形成する。そのため、III型コラーゲン産生が促進されることにより、たるみ、しわの改善、柔軟性、及び弾力性維持が期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。
DMEM培地(10%FBS)を使用してHS68(繊維芽細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。上記準備した各サンプルをDMEM培地(10%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ0.1%、パパイン加水分解物0.05%および0.1%、水抽出物0.05%および0.1%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに48時間培養した。
培地上清を回収し、Human collagen type III ELISA kit (COL) (Abclonal社)を用いて培地中のCOLIIIを検出した。COLIIIスタンダートのELISAによる希釈列の検出データから検量線を作成し、その検量線を用いて各ウェルの培地中COLIII濃度を算出した。各サンプルのCOLIII産生率を図11に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、III型コラーゲンの産生促進がみられた。
【実施例15】
【0066】
チロシナーゼ遺伝子発現抑制試験
活性化すると肌のシミの原因となるメラニンを生成するチロシナーゼ遺伝子について、本開示の美容組成物が発現抑制できるかどうかをメラノーマ細胞B16を用いて確認した。チロシナーゼ遺伝子の発現を抑制することで、美白やシミの減少を期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。またメラニン産生促進因子としてα-メラノサイト刺激ホルモン(alpha-MSH)(シグマ社)を用いた。
低グルコースDMEM培地(10%FBS)を使用してB16-4A5(マウスメラノーマ細胞)を前培養した。24ウェルプレートに5.0×10/ウェルとなるように細胞を播種し、一晩培養した。その後、各ウェルを低グルコースDMEM培地(2%FBS)に置換し、さらに4時間培養した。各サンプルを100nM a-MSHを添加した低グルコースDMEM培地(2%FBS)を用いて添加濃度(ウマプラセンタ0.01%、パパイン加水分解物0.1%、および1%、水抽出物0.1%、および1%)に希釈しておき、各サンプル溶液を培養培地に添加し、さらに24時間培養した。
培地を取り除き、PBSで培養細胞を洗浄した。フェノールおよびグアニジン塩によってRNAを抽出し、cDNA library construction kit (タカラ社)を用いてcDNAライブラリーを作成した。PrimeScript RT-PCR kit (タカラ社) を用いて溶液を調製し、マウスチロシナーゼ遺伝子に対応するプライマーおよびマウスGAPDHに対応するプライマーを添加した。リアルタイムPCRによって発現量を測定し、GAPDHとの相対比較で遺伝子量を定量した。各サンプルの遺伝子発現量を図12に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、チロシナーゼ遺伝子発現を抑制し、特に特に1%水抽出物ではa-MSHを添加していないレベルにまで発現量を抑制した。
【実施例16】
【0067】
皮膚常在菌増殖試験
本開示に係る美容組成物が皮膚常在菌の増殖能を有するか否かについて確認した。皮膚常在善玉菌増殖能が亢進されることにより、皮膚細菌叢改善や毛穴および黒ずみの改善を期待できる。
まずサンプルとして、ウマプラセンタ(市販品)、本開示に係る美容組成物(水抽出物)、本開示に係る美容組成物(パパイン加水分解物)を準備した。また皮膚常在善玉菌としては表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)を、皮膚常在悪玉菌としては黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用いた。
24時間前培養した菌体を5mLのTryptic Soy Broth (BD社)液体培地(10倍希釈培地)に0.1%添加した。上記準備した各サンプルを終濃度の50倍で10倍希釈培地に溶解しておき、各100μLを培養菌体液に添加し、37℃で16時間攪拌培養した。
培養後、溶液濁度(Abs.600nm)を測定し、サンプル添加なしの培養菌体液を100%としてその増減を割合で算出した。各サンプルでの増殖率を図13に、また善玉菌と悪玉菌との存在比を調節し(2:1、1:1、及び1:2)、競合して培養した場合の結果を図14に示した。
その結果、本開示の美容組成物は水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれにおいても、皮膚常在善玉菌の増殖能が増大し、特にパパイン加水分解物では2倍近い増大がみられた。また競合培養実験では、水抽出物およびパパイン加水分解物のいずれを添加した場合においても、善玉菌の存在比率が増加し、皮膚常在悪玉菌競合培養下において皮膚常在善玉菌を優位に増殖させることがわかった。
【実施例17】
【0068】
本開示の美容組成物を配合した化粧品による顔面美容効果に関する検討
本開示の美容組成物を配合した化粧品による顔面美容効果を確認するため、プラセボ対照単盲検試験を行った。女性23名(36.7±8.0歳)を対象として、プラセボクリームまたは0.5%の本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した。用法・用量としては、普段のクリーム化粧品に置き換えて朝・夕の2回塗布してもらった。
【0069】
23名の被験者を半顔シワスコアが均等になるよう群分けし、顔面の右半分に本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布し、かつ左半分にプラセボクリームを塗布した被験者を12名、顔面の左半分に本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布し、かつ右半分にプラセボクリームを塗布した被験者を11名とした。試験終了までに、季節性の肌荒れのため1名が脱落した。
【0070】
図15のように試験スケジュールを設定し、8週間の試験終了後にVISIA画像測定、キュートメーター、及びVASアンケートによって美容効果を評価した。VASアンケートの質問項目としては、「たるみの減り」、「滑らかさ」、「すべすべ感」、「キメ増加」、「肌の調子」、「肌トラブルからの立ち直り」、および「左/右側と比較した際の肌の満足度」を設定した。
【0071】
図16にVISIA画像による測定結果を示す。本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した半顔では、プラセボクリームを塗布した半顔よりも試験2週間の時点ですでにシワスコア及びシミスコアともに低下していることがわかった。また試験8週間の時点では、プラセボクリームを塗布した半顔ではシワスコア及びシミスコアともに試験開始時とほぼ変わらなかったのに対して、本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した半顔では顕著な減少結果が見て取れた。
【0072】
図17にキュートメーターの結果を示す。本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した半顔では、試験2週間の時点ですでに角層水分量の上昇がみられ、試験8週間にわたって継続してプラセボクリームを塗布した半顔よりも角層水分量が多い結果となった。またメラニン量についても、本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した半顔では、試験2週間の時点ですでにメラニン量が減少しており、試験8週間にわたって継続してプラセボクリームを塗布した半顔よりもメラニン量が少ない結果となった。
【0073】
図18および図19にVASアンケートの結果を示す。「たるみの減り」、「滑らかさ」、「すべすべ感」、「キメ増加」、「肌の調子」、「肌トラブルからの立ち直り」、および「左/右側と比較した際の肌の満足度」のいずれの質問項目においても、8週目の時点で、本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した半顔では、プラセボクリームを塗布した半顔よりも向上した結果となった(図18図19)。特に図19に示すとおり、「左/右側と比較した際の肌の満足度(2w以降)」および「肌の調子」の各項目については、本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した半顔では、プラセボクリームを塗布した半顔と比較して、8週目の時点で顕著な向上結果を得ることができた(マンホイットニーUテストでp<0.05)。
【実施例18】
【0074】
本開示の美容組成物を配合した化粧品による皮膚バリア保護機能に関する検討
本開示の美容組成物を配合した化粧品による皮膚バリア保護機能を確認するため、プラセボ対照単盲検試験を行った。男性5名(33.6±7.3歳)を対象として、プラセボクリームまたは0.5%の本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した。用法・用量としては、図20に示す上腕の指定部位に朝・夕の2回塗布してもらった。
【0075】
図21のように試験スケジュールを設定し、4週間の試験終了後にテープストリッピング(TS)、及びキュートメーター(経皮水分蒸散)によって皮膚バリア保護機能を評価した。テープストリッピングによって角層を除去し、角層バリア機能を傷害させ角層バリア機能を低下させて後の改善効果を確認した。
【0076】
結果を図22に示す。本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)群、プラセボ群、無塗布群ともに、TS後ではキュートメーターによる経皮水分蒸散量は増加し、プラセボクリームを塗布した群および無塗布群では試験2週間後にTS前の状態に戻ったのに対して、本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームを塗布した群では、試験2週間後および4週間後の時点で、TS前の状態よりも経皮水分蒸散量が少ない結果となった。本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)配合クリームは角層バリア機能を向上させ、経皮水分蒸散量を低下させることがわかった。
以上のことから、本開示の美容組成物(エッグプラセンタ)は、実際のヒト皮膚に対しても、皮膚バリア機能の強化による保湿効果や、シミ及びシワの改善効果という客観的な数値データを得ることができ、また滑らかさやすべすべ感などのVASアンケートによる実感としてもその効果を得ることができることがわかった。
【0077】
その他、本開示は、様々に変形可能であることは言うまでもなく、上述した一実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
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