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特許7285494頭髪化粧品およびその製造方法、ならびにそれを用いた髪質を改良するための方法および髪型を形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】頭髪化粧品およびその製造方法、ならびにそれを用いた髪質を改良するための方法および髪型を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/362 20060101AFI20230526BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20230526BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20230526BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230526BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
A61K8/362
A61K8/46
A61Q5/04
A61Q5/06
A61Q5/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022502810
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2021039567
(87)【国際公開番号】W WO2022092125
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/040729
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392014900
【氏名又は名称】佐々木化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502157121
【氏名又は名称】オリエンタルケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(72)【発明者】
【氏名】辻野 義雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 良宣
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-243860(JP,A)
【文献】特開平02-248410(JP,A)
【文献】国際公開第2009/051005(WO,A1)
【文献】特開2004-223122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/362
A61K 8/46
A61Q 5/04
A61Q 5/06
A61Q 5/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノチオール類と有機酸類との複合体を有効成分として含有し、該アミノチオール類が、システアミンおよびその塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、そして該有機酸類が、フマル酸、フマル酸塩、マレイン酸、およびマレイン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、頭髪化粧品。
【請求項2】
前記複合体が、1モルの前記アミノチオール類と0.8モル~1.2モルの前記有機酸塩との割合で反応した反応生成物である、請求項1に記載の頭髪化粧品。
【請求項3】
前記複合体のヨード滴定法による還元力が0.1mL以下である、請求項1または2に記載の頭髪化粧品。
【請求項4】
髪型形成剤である、請求項1から3のいずれかに記載の頭髪化粧品。
【請求項5】
頭髪化粧品の製造方法であって、アミノチオール類と有機酸類との混合物を加熱して複合体を得る工程を包含し、該アミノチオール類が、システアミンおよびその塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、そして該有機酸類が、フマル酸、フマル酸塩、マレイン酸、およびマレイン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、方法。
【請求項6】
前記加熱工程が、75℃から100℃の温度で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が、前記アミノチオール類および前記有機酸類を含む水溶液の形態を有する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
毛髪の髪質を改良するための方法であって、該毛髪に請求項1から4のいずれかに記載の頭髪化粧品を付与する工程を包含する、方法。
【請求項9】
前記頭髪化粧品を付与する工程の後に前記毛髪を加熱する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
髪型を形成するための方法であって、該髪型の形成を所望する毛髪に請求項1から4のいずれかに記載の頭髪化粧品を付与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記頭髪化粧品を付与する工程の後に前記毛髪を加熱する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪化粧品およびその製造方法、ならびにそれを用いた髪質を改良するための方法および髪型を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より髪型を整えるための様々な方法または手段が提案されている。例えば、チオグリコール酸塩、システイン、システアミン、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を主成分とする第1剤と、臭素酸ナトリウムや過酸化水素の酸化剤を主成分とする第2剤からなるパーマネントウエーブ剤(以下、パーマ剤ということがある)が例えば、毛髪へのウエーブの形成または縮毛の矯正のために使用されている。このパーマ剤は、毛髪をロッドに巻きつけてから、第1剤で毛髪を構成するケラチン繊維内のシスチン結合を切断し、この状態で第2剤を用いて所望の形状でシスチン結合を再生させることにより、パーマネントウエーブ(以下、単にパーマと称することがある)を形成する薬剤である。
【0003】
しかし、ケラチン繊維はパーマ剤やヘアカラー剤によるケミカルダメージ、ブラッシングやドライヤーなどによるフィジカルダメージ、毛髪を長時間日光に晒すことによるダメージ等を受けて次第に柔らかくなり、従来のパーマ剤によるパーマがかかりにくくなる。すなわち、同じように施術したとしても、ダメージ毛と健康毛とではパーマのかかり方が異なることがある。例えば、毛髪のダメージが思ったより大きければウエーブ形成や縮毛矯正のかかり方が弱くなり、それを見越して強くパーマをかけるとウエーブ形成や縮毛矯正のかかり方が強すぎたりすることがある。どのくらい強くパーマをかけるかの調節は、施術者の勘といった感覚的技量に頼ることが多く、毛髪に思い通りのウエーブを形成する、および/または縮毛を矯正することは必ずしも容易ではない。
【0004】
特に、ロングヘアーの場合、毛先がはねて広がりやすくなっているため、これを防止して毛先をまとめるため、毛先にだけウエーブ形成や縮毛矯正を行う処理が施されることがある。しかし、毛先は長期間にわたる日光の照射や、度重なるパーマネントウエーブ処理や染毛処理のためにダメージが蓄積していることが多く、通常のパーマ処理では十分にウエーブ形成や縮毛矯正がされないことがある。
【0005】
このような不都合を避けるため、例えば特許文献1に記載されているように、第2剤における酸化剤として、ナノバブル水のように反応が穏やかな物質を使用することにより、毛髪へのダメージを抑える技術が報告されている。しかし、ダメージの有無に関わらず、様々な毛髪に対してウエーブを良好に形成し得るパーマネントウエーブ形成剤や縮毛矯正剤として利用可能な頭髪化粧品の開発が所望されている。
【0006】
その他、髪型を整えるための簡易的な方法または手段として、液状、ジェル状、クリーム状、固形状等の種々の性状を有する整髪剤組成物が知られている。
【0007】
従来、整髪剤組成物においては、その主機能である整髪力を発揮するための整髪成分として、例えば、皮膜形成ポリマー、室温で固形状の材料(例えば、ロウ、油脂や炭化水素油など)が汎用されている。
【0008】
しかし、こうした従来の整髪成分を用いた整髪剤組成物を用いて整髪を行った際、湿気によって整髪後の髪型がくずれやすく耐湿性に劣る場合があった。このため、整髪後の髪型の耐湿性に優れ、髪型のキープ力に優れる整髪剤組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-124250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題の解決を課題とし、その目的とするところは、ダメージの有無に関わらず、様々な毛髪に対して適用可能な頭髪化粧品およびその製造方法、ならびにそれを用いた髪質を改良するための方法および髪型を整えるための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アミノチオール類と有機酸類との複合体を有効成分として含有し、該アミノチオール類が、システアミンおよびその塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、そして該有機酸類が、フマル酸、フマル酸塩、マレイン酸、およびマレイン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、頭髪化粧品である。
【0012】
1つの実施形態では、上記複合体は、1モルの上記アミノチオール類と0.8モル~1.2モルの上記有機酸塩との割合で反応した反応生成物である。
【0013】
1つの実施形態では、上記複合体のヨード滴定法による還元力は0.1mL以下である。
【0014】
1つの実施形態では、本発明の頭髪化粧品は髪型形成剤である。
【0015】
本発明はまた、頭髪化粧品の製造方法であって、アミノチオール類と有機酸類との混合物を加熱して複合体を得る工程を包含し、該アミノチオール類が、システアミンおよびその塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、そして該有機酸類が、フマル酸、フマル酸塩、マレイン酸、およびマレイン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、方法である。
【0016】
1つの実施形態では、上記加熱工程は、75℃から100℃の温度で行われる。
【0017】
1つの実施形態では、上記混合物は、上記アミノチオール類および上記有機酸類を含む水溶液の形態を有する。
【0018】
本発明はまた、毛髪の髪質を改良するための方法であって、該毛髪に上記頭髪化粧品を付与する工程を包含する、方法である。
【0019】
1つの実施形態では、上記頭髪化粧品を付与する工程の後に上記毛髪を加熱する工程を含む。
【0020】
本発明はまた、髪型を形成するための方法であって、該髪型の形成を所望する毛髪に上記頭髪化粧品を付与する工程を包含する、方法である。
【0021】
1つの実施形態では、上記頭髪化粧品を付与する工程の後に上記毛髪を加熱する工程を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来より化粧品材料として知られているアミノチオール類や有機酸類を構成成分として含有するため、使用者にとってより安全性が確保された頭髪化粧品を提供することができる。本発明の頭髪化粧品を例えば髪型形成剤として使用した場合、施術後の毛髪を柔らかくするとともに、例えば捻じれや表面の凸凹した状態を減じて持続性に優れたウエーブを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(頭髪化粧品)
本発明の頭髪化粧品は、アミノチオール類と有機酸類との複合体を有効成分として含有する。
【0024】
ここで、本明細書中に用いられる用語「頭髪化粧品」とは、ヒトの毛髪に対して形状、質感、色彩等の髪質を改善することを目的とした製品全般を指して言う。頭髪化粧品の例としては、髪型形成剤;ヘアオイル、スタイリング料、ヘアスティック、ポマード、ヘアクリーム、ヘアソリッド、ヘアスプレー、ヘアラッカー、ヘアリキッド、ヘアウォーター、ヘアワックス、ヘアフォーム、ヘアジェルなどの整髪料;トニック、ヘアローション、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、ヘアパックなどの育毛料;頭皮用トリートメントなどの頭皮料;染毛料、ヘアカラースプレー、ヘアカラースチック、カラーリンス、ヘアマニュキュアなどの毛髪着色料;シャンプー、洗髪粉のような洗髪料;リンスのようなヘアリンス;が挙げられる。ここで、本明細書中に用いられる用語「髪型形成剤」とは、いわゆる毛髪にパーマネント(またはパーマ)をあてるために使用され得る毛髪処理剤全般を指して言い、例えばウエーブやカールに加え、ストレートパーマや縮毛矯正のために使用される毛髪処理剤(例えば、パーマネントウエーブ形成剤)を包含する。
【0025】
本発明におけるアミノチオール類は、同一分子内にアミノ基(-NH)とチオール基またはスルフヒドリル基(-SH)を有する化合物のうち、より単純な構造を有するアミノチオール化合物である。アミノチオール類の例としては、システアミンおよびその塩(例えばシステアミン塩酸塩)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。このようなシステアミンは、従来ではパーマネントウエーブ用の還元剤として使用されている。
【0026】
本発明における有機酸類は、化粧品材料として使用可能なものであり、例えば、フマル酸、マレイン酸およびそれらの塩(すなわち、フマル酸塩およびマレイン酸塩)、ならびにそれらの組み合わせである。有機酸類を構成する塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。このような有機酸類は、例えば、本発明の頭髪化粧品をパーマネントウエーブ形成剤として使用した場合、形成されたウエーブの持続性が良好であり、毛髪を特に柔らかくすることができる。ウエーブの持続性や毛髪を一層柔らかくすることができるという点で、フマル酸およびフマル酸塩、ならびにそれらの組み合わせが好ましい。
【0027】
本発明の頭髪化粧品を構成する複合体は、上記アミノチオール類と有機酸類との反応生成物から構成されている。
【0028】
本発明における複合体は、いくつかの特徴を有する。
【0029】
例えば、当該複合体は常温で液体の形態を有する。このため、流動性に富み、頭髪化粧品の成分として取り扱いがし易いという利点がある。
【0030】
当該複合体はまた水溶性の性質を有する。このため、水(例えば、純水、蒸留水、イオン交換水、RO水、水道水)を用いて水溶液の形態に調製することができ、頭髪化粧品への利用をさらに向上させることができる。
【0031】
当該複合体はまた、1モルの上記アミノチオール類と、好ましくは0.8モル~1.2モル、より好ましくは0.9モル~1.1モル、さらにより好ましくは0.95モル~1.05モルの上記有機酸塩との割合で反応した反応生成物である。1つの実施形態では、当該複合体は、上記アミノチオール類と上記有機酸塩とが略等モルの割合で反応した反応生成物である。
【0032】
さらに、本発明における複合体は、所定の還元力を有していない点で、原料としてアミノチオール類と有機酸とを用いる、頭髪化粧品用の還元剤とは明確に区別される。1つの実施形態では、本発明における複合体のヨード滴定法による還元力は、好ましくは0.1mL以下、より好ましくは0.09mL以下、さらにより好ましくは0.06mL以下である。なお、この「ヨード滴定法による還元力」は、測定対象となる物質を精密に秤量して硫酸酸性にした後、デンプン試液を指示薬として用い、0.05mol/Lのヨウ素液で滴定することにより得られた、測定対象物質1g当たりの滴定量(mL)として確認することができる。
【0033】
上記複合体は、上記アミノチオール類と有機酸類との混合物を加熱することにより得ることができる。こうした混合物の加熱においては、当該混合物は、複合体の生成効率を高めることができるという観点からアミノチオール類および有機酸類を含む水溶液の形態を有することが好ましい。このような混合物は、例えば、予め調製したアミノチオール類水溶液に有機酸類を添加するか、予め調製した有機酸類の水溶液にアミノチオール類を添加するか、予め調製したアミノチオール類水溶液と予め別で調製した有機酸類の水溶液とを混合するか、あるいはアミノチオール類と有機酸類と水とを混合するか、のいずれかにより作製され得る。
【0034】
複合体を得るために使用され得る有機酸類の含有量は、アミノチオール類100質量部に対して好ましくは0.1質量部~300質量部、より好ましくは0.4質量部~200質量部である。有機酸類の含有量が0.1質量部を下回ると、髪質改善の効果が十分に発揮されないことがある。有機酸類の含有量が300質量部を上回ると、複合体を構成するアミノチオール類の含有割合が相対的に低下して不十分となり、有機酸類の溶け残りを生じることがある。アミノチオール類と有機酸類との混合は特に限定されず、当業者に公知の手段を用いて行われ得る。
【0035】
アミノチオール類と有機酸類との混合物の加熱のために付与される温度は、必ずしも限定されないが、好ましくは75℃~100℃、より好ましくは80℃~95℃である。混合物に付与される温度が75℃を下回ると、有機酸類の粒子がアミノチオール類に適切に溶解せず、均一な複合体を得ることが困難となる場合がある。上記のように混合物が水溶液の形態で加熱される場合、加熱のために付与される温度は実質的に100℃を上回ることは困難である。
【0036】
本発明の頭髪化粧品は、上記複合体を有効成分として含有することにより、好ましくは4~12、より好ましくは5~10のpHを有する。当該pHが4を下回ると、施用後直ちに毛髪の収斂を引き起こすことがある。該pHが12を上回ると、アルカリによる毛髪のダメージを引き起こすことがある。本発明の頭髪化粧品は、例えばアルカリ剤の添加によって上記範囲のpHに調整可能である。アルカリ剤の例としては、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、アルギニン、およびアンモニア、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。アルカリ剤は、例えば所定量の水(例えば、純水、蒸留水、イオン交換水、RO水、水道水)と組み合わせ使用され得る。本発明の1つの実施形態では、当該アルカリ剤は水溶液の形態で上記複合体と合わされている。
【0037】
本発明の頭髪化粧品また、従来の髪型形成剤等の頭髪化粧品に使用され得る任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤の例としては、基剤、湿潤剤、帯電防止剤、可溶化剤、防腐剤、着色剤、および着香剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の頭髪化粧品に含有され得る添加剤の含有量は特に限定されず、当業者によって任意の添加量が選択され得る。
【0038】
本発明の頭髪化粧品は、複合体を構成するアミノチオール類および有機酸類がともに化粧品材料として周知のものであることから、毛髪および頭皮に対する安全性は確保されており、使用者はより安心して使用することができる。また、上記複合体は、アミノチオール類と有機酸類との混合物を所定の温度で加熱することにより容易に製造することができるため、本発明の頭髪化粧品は工業的生産性にも優れている。
【0039】
(毛髪の髪質を改良するための方法)
本発明の頭髪化粧品は、例えばヒトの毛髪の髪質を改良するために用いられ得る。
【0040】
髪質の改良にあたっては、上記頭髪化粧品を毛髪に付与することにより行われる。
【0041】
付与の手段は特に限定されないが、例えば、頭髪化粧品を含む溶液(例えば水溶液)をスプレーするか、当該溶液に浸漬するか、当該溶液を手またはブラシを用いて塗布することにより行われる。毛髪に対する頭髪化粧品の付与量は特に限定されない。例えば、使用者の毛髪の状態、年齢、性別等によって適切な量が適宜選択され得る。
【0042】
本発明の頭髪化粧品を毛髪に付与した後、毛髪に当該化粧品を十分になじませるために所定時間そのままにすることが好ましい。このような時間もまた必ずしも限定されないが、例えば3分間~20分間である。
【0043】
さらに、上記頭髪化粧品を付与した後の毛髪は常温(例えば15℃~25℃)で放置されるか、あるいは必要に応じて加熱が行われてもよい。このような加熱は、例えばヘアドライヤーやヘアアイロンが使用され得る。加熱の温度もまた必ずしも限定されないが、例えば40℃~180℃である。
【0044】
次いで、毛髪は清浄な水で洗浄され、必要に応じて当業者に公知の手段(例えばヘアドライヤー)で乾燥が行われる。
【0045】
このようにして、本発明の頭髪化粧品を用いて髪質を改善することができる。本発明の頭髪化粧品によれば、毛髪の柔らかさ、捻じれの有無、表面状態(凸凹に伴うザラツキ)、艶やかさ等の髪質を改良することができる。
【0046】
(毛髪の髪型を形成するための方法)
本発明の頭髪化粧品は、例えばヒトの髪型を形成するための髪型形成剤として用いられ得る。
【0047】
毛髪の髪型を形成するにあたっては、上記頭髪化粧品を当該髪型の形成が所望される毛髪に付与することにより行われる。
【0048】
付与の手段は特に限定されないが、例えば、頭髪化粧品を含む溶液(例えば水溶液)をスプレーするか、当該溶液に浸漬するか、当該溶液を手またはブラシを用いて塗布することにより行われる。毛髪に対する頭髪化粧品の付与量は特に限定されない。例えば、使用者の毛髪の状態、年齢、性別等によって適切な量が適宜選択され得る。
【0049】
本発明の頭髪化粧品を毛髪に付与した後、毛髪に当該化粧品を十分になじませるために所定時間そのままにすることが好ましい。このような時間もまた必ずしも限定されないが、例えば3分間~20分間である。
【0050】
さらに、上記頭髪化粧品を付与した後の毛髪は常温(例えば15℃~25℃)で放置されるか、あるいは必要に応じて加熱が行われてもよい。このような加熱は、例えば促進器、ヘアスチーマー、ヘアドライヤー、ヘアアイロンが使用され得る。加熱の温度もまた必ずしも限定されないが、例えば40℃~180℃である。
【0051】
本発明の頭髪化粧品が1液型の髪型形成剤として使用される場合、次いで、毛髪は清浄な水で洗浄され、必要に応じて当業者に公知の手段(例えばヘアドライヤー)で乾燥が行われる。
【0052】
このようにして、本発明の頭髪化粧品を用いて毛髪の髪型を所望の形態に形成することができる。
【実施例
【0053】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0054】
(実施例1:システアミンとフマル酸とを用いる頭髪化粧品水溶液(E1)の作製)
システアミン100質量部(予め水溶液の形態に調製したものを用いた)とフマル酸150質量部とを混合し、95℃で加熱してシステアミンとフマル酸とを反応させることによりシステアミンとフマル酸との複合体を含む水溶液を得た。この複合体の水溶液を、当該複合体の濃度(システアミンとフマル酸との合計に対する濃度)が5質量%でありpHが8.2になるように水で調製することにより頭髪化粧品水溶液(E1)を得た。
【0055】
この頭髪化粧品水溶液(E1)を精密に秤量して硫酸酸性にした後、デンプン試液を指示薬として用い、0.05mol/Lのヨウ素液で滴定すること(ヨード滴定法)により、頭髪化粧品水溶液(E1)の還元力(mL)を測定した。当該還元力は検出限界である0.02mL以下であり、得られた複合体はシステアミンとフマル酸とが略等モルで反応したものであることを確認した。
【0056】
(実施例2:システアミンとマレイン酸とを用いる頭髪化粧品水溶液(E2)の作製)
フマル酸の代わりにマレイン酸150質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、システアミンとマレイン酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(E2)を得た。
【0057】
この頭髪化粧品水溶液(E2)について、実施例1と同様にして、ヨード滴定法による還元力(mL)を測定した。当該還元力は検出限界である0.02mL以下であり、得られた複合体はシステアミンとマレイン酸とが略等モルで反応したものであることを確認した。
【0058】
(比較例1:システアミンとコハク酸とを用いる頭髪化粧品水溶液(C1)の作製)
フマル酸の代わりにコハク酸153質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、システアミンとコハク酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C1)を得た。
【0059】
この頭髪化粧品水溶液(C1)について、実施例1と同様にして、ヨード滴定法による還元力(mL)を測定した。当該還元力は2.57mLであった。
【0060】
(比較例2:システアミンとレブリン酸とを用いる頭髪化粧品水溶液(C2)の作製)
フマル酸の代わりにレブリン酸150質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、システアミンとレブリン酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C2)を得た。
【0061】
(比較例3:システアミンとリンゴ酸とを用いる頭髪化粧品水溶液(C3)の作製)
フマル酸の代わりにリンゴ酸174質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、システアミンとリンゴ酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C3)を得た。
【0062】
(比較例4:システアミンとケトグルタル酸とを用いる頭髪化粧品水溶液(C4)の作製)
フマル酸の代わりにケトグルタル酸189質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、システアミンとケトグルタル酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C4)を得た。
【0063】
(比較例5:システアミンとグリオキシル酸とを用いる頭髪化粧品水溶液(C5)の作製)
フマル酸の代わりにグリオキシル酸96質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、システアミンとグリオキシル酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C5)を得た。
【0064】
(比較例6:システアミンとクエン酸とを用いる頭髪化粧品水溶液(C6)の作製)
フマル酸の代わりにクエン酸249質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、システアミンとクエン酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C6)を得た。
【0065】
(比較例7:システインとフマル酸とを用いる頭髪化粧品(C7)の作製)
システアミンの代わりにシステイン157質量部を用い、かつ複合体の濃度(システインとフマル酸との合計に対する濃度)が8質量%でありpHが8.0になるように調製したこと以外は実施例1と同様にして、システインとフマル酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C7)を得た。
【0066】
(比較例8:グリセリルモノチオグリコレートとフマル酸とを用いる頭髪化粧品(C8)の作製)
システアミンの代わりにグリセリルモノチオグリコレート(GMT)216質量部を用い、かつ複合体の濃度(GMTとフマル酸との合計に対する濃度)が5質量%でありpHが7.0になるように調製したこと以外は実施例1と同様にして、GMTとフマル酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C8)を得た。
【0067】
(比較例9:グルタチオンとフマル酸とを用いる頭髪化粧品(C9)の作製)
システアミンの代わりにグルタチオン398質量部を用い、かつ複合体の濃度(グルタチオンとフマル酸との合計に対する濃度)が8質量%でありpHが9.0になるように調製したこと以外は実施例1と同様にして、グルタチオンとフマル酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C9)を得た。
【0068】
(比較例10:スピエラとフマル酸とを用いる頭髪化粧品(C10)の作製)
システアミンの代わりにスピエラ(ブチロラクトンチオール)153質量部を用い、かつ複合体の濃度(スピエラとフマル酸との合計に対する濃度)が1質量%でありpHが6.0になるように調製したこと以外は実施例1と同様にして、スピエラとフマル酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C10)を得た。
【0069】
(比較例11:亜硫酸ナトリウムとフマル酸とを用いる頭髪化粧品(C11)の作製)
システアミンの代わりに亜硫酸ナトリウム164質量部を用い、かつ複合体の濃度(システインとフマル酸との合計に対する濃度)が8質量%でありpHが9.0になるように調製したこと以外は実施例1と同様にして、亜硫酸ナトリウムとフマル酸との複合体を含有する頭髪化粧品水溶液(C11)を得た。
【0070】
(ウエーブ形成能の評価)
ヒトの毛髪20本(平均長さ15cm)を一束とし、プラスチック製の測定用くしにジグザグ巻きにして固定し、キルビー法(プロシーディングス・オブ・ザ・サイエンティフィック・セクション第26巻12頁,1956年)に従って、10質量%のチオグリコール酸アンモニウムのパーマ液(pH9.5)に10分間浸漬し、その後40℃の流水で1分間濯いで処理した。次いで、処理した毛髪を略同量となるように3つに分け、実施例1および2で作製した頭髪化粧品水溶液(E1)および(E2)ならびに比較例1~11で作製した頭髪化粧品(C1)~(C11)にそれぞれ1分間浸漬し、その後取り出した。
【0071】
その後、これらの測定用くしに固定したままの毛髪を、以下の(1)常温処理、(2)中温処理、および(3)高温処理のいずれかを行った。
【0072】
(1)常温処理(キルビー法)
各頭髪化粧品水溶液から取り出した測定用くしに固定したままの毛髪を15℃~20℃の常温で10分間放置した後、これを6質量%の臭素酸ナトリウム水溶液からなる第2液に10分間浸漬し、取り出した後に測定用くしから毛髪を外し、常温で乾燥させた。
【0073】
乾燥後、処理した毛髪について以下の評価を行った。
【0074】
(カールの感触)
上記で処理した毛髪を当該分野の専門家が手で触り、得られた触感を、各頭髪化粧品水溶液の代わりに、一般的な2液処理のパーマ液である10質量%のチオグリコール酸アンモニウム水溶液(pH9.2;第一液)および臭素酸ナトリウム水溶液(第2液)を用いた場合(第1液を塗布後10分間放置して第2液を塗布した場合)と比較して以下の基準にしたがって評価した。
4点 カールのハリと触り心地との両方が著しく高められており、非常に良好であった。
3点 カールのハリと触り心地との両方が高められており、特にいずれか一方が著しく高められており、良好であった。
2点 カールのハリおよび触り心地のいずれか一方が高められており、幾分効果があった。
1点 カールのハリおよび触り心地のいずれについても当該チオグリコール酸アンモニウム水溶液を用いた場合と大差がなく、効果にとぼしいものであった。
0点 カールのハリおよび触り心地のいずれについても当該チオグリコール酸アンモニウム水溶液を用いた場合よりも悪化した。
【0075】
(カールの持続性)
上記で処理した毛髪を、市販のシャンプー剤を水で10倍容量に希釈した液に常温で1分間浸漬した後、38℃の温水で30秒間すすぎ、タオルで乾燥させ、さらにヘアドライヤーで乾燥させた。このようにして得られた毛髪のカールの状態を、当該分野の専門家が目視により、各頭髪化粧品水溶液の代わりに、一般的な2液処理のパーマ液である10質量%のチオグリコール酸アンモニウム水溶液(pH9.2;第1液)および臭素酸ナトリウム水溶液(第2液)を用いた場合(第1液を塗布後10分間放置して第2液を塗布した場合)と比較して、以下の基準にしたがって評価した。
4点 カールの状態が上記シャンプーによる処理を30回以上行っても変わらず、全体として非常に良好であった。
3点 カールの状態が上記シャンプーによる処理を20回以上かつ29回以下行うと変化し、全体として良好であった。
2点 カールの状態が上記シャンプーによる処理を10回以上かつ19回以下行うと変化し、全体として幾分効果があった。
1点 カールの状態が上記シャンプーによる処理を1回以上かつ9回以下行うと変化し、全体として効果に乏しいものであった。
0点 カールの状態が上記シャンプーによる処理を行う前から当該チオグリコール酸アンモニウム水溶液を用いた場合よりも悪化した。
【0076】
得られた結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
(2)中温処理(キルビー法)
各頭髪化粧品水溶液から取り出した測定用くしに固定したままの毛髪を15℃~20℃の常温で7分間放置した後、これにヘアドライヤーで約80℃の熱風を3分間あてた。その後、毛髪を6質量%の臭素酸ナトリウム水溶液からなる第2液に10分間浸漬し、取り出した後に測定用くしから毛髪を外し、常温で乾燥させた。乾燥後、処理した毛髪について上記と同様にしてカールの感触およびカールの持続性の各評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
(3)高温処理
ヒトの毛髪20本(平均長さ15cm)を10質量%のチオグリコール酸アンモニウムのパーマ液(pH9.5)に10分間浸漬し、その後40℃の流水で1分間濯いで処理した。次いで、処理した毛髪を実施例1および2で作製した頭髪化粧品水溶液(E1)および(E2)ならびに比較例1~6で作製した頭髪化粧品(C1)~(C6)にそれぞれ1分間浸漬し、その後取り出した。各頭髪化粧品水溶液から取り出した毛髪を、余分な水分を切って、18mmのヘアアイロン(約180℃)に2巻きして5分間放置してカールを形成した後、ヘアアイロンから外し常温で5分間放置した。その後、毛髪を6質量%の臭素酸ナトリウム水溶液からなる第2液に10分間浸漬し、取り出した後に常温で乾燥させた。乾燥後、処理した毛髪について上記と同様にしてカールの感触およびカールの持続性の各評価を行った。得られた結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
表1~3の結果から明らかなように、常温処理した場合では、実施例1および2で得られた頭髪化粧品水溶液(E1)および(E2)は、比較例1~6で得られた頭髪化粧品水溶液(C1)~(C6)を上回る優れたカールの感触を有していたことがわかる。さらに、高温処理した場合でも、実施例1で得られた頭髪化粧品水溶液(E1)が、他の実施例および比較例で得られた頭髪化粧品水溶液を上回る優れたカールの感触や持続性を有していたことがわかる。
【0083】
(髪質改善の評価)
実施例1および比較例7~11で作製した頭髪化粧品水溶液(E1)および(C7)~(C11)の試験液にモノエタノールアミンを添加してpHを調整した後、得られた各試験液における還元剤の含有量およびpHを表4に示す。
【0084】
次いで、各試験液に、ダメージしたヒトの毛髪0.2g(平均長さ15cm)を10分間浸漬し、その後40℃の流水で1分間濯ぎその後ヘアドライヤーで乾燥させた。乾燥後、180度のストレートアイロンでゆっくりとスルーし、又流水で1分濯ぎヘアドライヤーで乾燥させた。処理した毛髪について上記と同様にして感触の評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
表4に示すように、実施例1で得られた頭髪化粧品水溶液(E1)は、比較例7~11で得られた頭髪化粧品水溶液(C7)~(C11)と比較して、不快な臭いがなく、毛髪のダメージ部分にも柔らかく補強している点で優れていたことがわかる。
【0087】
(実施例3:頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(J1)の作製)
システアミン100質量部(予め水溶液の形態に調製したものを用いた)とフマル酸150質量部とを混合し、95℃で加熱してシステアミンとフマル酸とを反応させた。その後、これにアンモニア水を添加してpHを7.0に調整し、システアミンとフマル酸との複合体を含む水溶液を得た(この水溶液を中間処理剤の原液1という)。この複合体の水溶液にRO水を添加することにより、当該複合体の濃度(システアミンとフマル酸との合計に対する濃度)が0.5質量%である頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(J1)を得た。
【0088】
この頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(J1)について、実施例1と同様にして、ヨード滴定法による還元力(mL)を測定した。当該還元力は検出限界である0.02mL以下であり、得られた複合体はシステアミンとフマル酸とが略等モルで反応したものであることを確認した。
【0089】
(実施例4:頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(J2)の作製)
フマル酸の代わりにマレイン酸150質量部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、システアミンとマレイン酸との複合体を含む水溶液(pH7.0)を得た(この水溶液を中間処理剤の原液2という)。この複合体の水溶液にRO水を添加することにより、当該複合体の濃度(システアミンとマレイン酸との合計に対する濃度)が0.5質量%である頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(J2)を得た。
【0090】
この頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(J2)について、実施例1と同様にして、ヨード滴定法による還元力(mL)を測定した。当該還元力は検出限界である0.02mL以下であり、得られた複合体はシステアミンとマレイン酸とが略等モルで反応したものであることを確認した。
【0091】
(比較例12:頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(H1)の作製)
フマル酸の代わりに無水マレイン酸127.1質量部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、システアミンと無水マレイン酸との複合体を含む水溶液(pH7.0)を得た(この水溶液を中間処理剤の原液3という)。この複合体の水溶液にRO水を添加することにより、当該複合体の濃度(システアミンと無水マレイン酸との合計に対する濃度)が0.46質量%である頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(H1)を得た。
【0092】
この頭髪ウエーブ形成用の中間処理剤(H1)について、実施例1と同様にして、ヨード滴定法による還元力(mL)を測定した。当該還元力は検出限界である0.02mL以下であった。
【0093】
(ウエーブ処理した頭髪の作製)
50質量%のチオグリコール酸アンモニウム水溶液および80質量%のモノエタノールアミン水溶液の混合物にRO水を添加して、チオグリコール酸濃度が10質量%でありかつpHが9.0である、頭髪ウエーブ形成用第1剤(以下「第1剤」という)を作製した。臭素酸ナトリウムにRO水を添加して、臭素酸ナトリウム濃度が6質量%である、頭髪ウエーブ形成用第2剤(以下「第2剤」という)を作製した。
【0094】
このようにして得られた第1剤および第2剤、ならびに実施例3、実施例4および比較例12で得られた中間処理剤(J1)、(J2)および(H1)を用いて、ヒトの頭髪で構成される毛束に対して以下のウエーブ処理を行った。
【0095】
まず、処理前の毛束の長さ(平均値)を測定し、この毛束を第1剤に室温で10分間浸漬した。次いで、第1液から取り出した毛束を中間処理剤(J1)、(J2)または(H1)のいずれかに室温で2分間浸漬し、取り出した後に温水で洗髪した。この毛束をデジタルパーマロッドに巻き付けて80℃で10分間加温し、ロッドから外した毛束を第2剤に室温で10分間浸漬し、取り出した後に温水で洗髪し、温風で乾燥させた。このようにしてウエーブ処理した頭髪(処理後毛束)を得た。
【0096】
(ウエーブ形成能の評価)
上記のようにして得られた処理後毛束(ウエーブ処理した頭髪)の長さ(平均値)を測定し、これに対応する予め測定した処理前の毛束の長さとともに、以下の式にしたがって頭髪のウエーブ形成能(%)を算出した。
【0097】
【数1】
【0098】
結果を表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
表5に示すように実施例3および4で得られた中間処理剤(J1)および(J2)を用いてウエーブ処理した頭髪は、比較例12で得られた中間処理剤(H1)を用いたものと比較して、ウエーブ形成能が高い値を示しており、中間処理剤(J1)および(J2)は優れたウエーブ形成能を有していることがわかる。
【0101】
また、表5において実施例4と比較例12との結果から、中間処理剤の成分としてマレイン酸(実施例4)または無水マレイン酸(比較例12)を含む中間処理剤(J2)および(H1)では、それらが無水物であるか否かの相違によってウエーブ形成能に差異を生じていることがわかる。
【0102】
(ウエーブ保持能の評価)
上記のようにして得られた処理後毛束(ウエーブ処理した頭髪)を市販のシャンプー剤で10回洗髪と温風による乾燥とを繰り返し、洗髪後毛束を得た。この洗髪後毛束の長さ(平均値)を測定し、これに対応する予め測定した処理前の毛束の長さとともに、以下の式にしたがって洗髪後ウエーブ形成能(%)を算出した。
【0103】
【数2】
【0104】
また、この洗髪後ウエーブ形成能の値、および表5で得られた(洗髪前の)頭髪のウエーブ形成能の値から、以下の式にしたがって洗髪による頭髪のウエーブ保持能(%)を算出した。
【0105】
【数3】
【0106】
結果を表6に示す。
【0107】
【表6】
【0108】
表6に示すように、実施例3および4で得られた中間処理剤(J1)および(J2)を用いてウエーブ処理した頭髪は、比較例12で得られた中間処理剤(H1)を用いたものと比較して、洗髪後ウエーブ形成能が高い値を示しており、中間処理剤(J1)および(J2)は、洗髪後のウエーブ処理した頭髪に対しても優れたウエーブ形成能を提供できることがわかる。
【0109】
また、表6において実施例4と比較例12との結果から、中間処理剤の成分としてマレイン酸(実施例4)または無水マレイン酸(比較例12)を含む中間処理剤(J2)および(H1)では、それらが無水物であるか否かの相違によって洗髪ウエーブ形成能に差異を生じていることがわかる。
【0110】
以上のように、有機酸としてフマル酸またはマレイン酸を用いた実施例3および4の中間処理剤(J1)および(J2)は、無水物として無水マレイン酸を用いた比較例12の中間処理剤(H1)と比較して、洗髪前および洗髪後のいずれに対しても優れたウエーブ形成能を有しており、かつ洗髪の繰り返しによってもウエーブ形成能を良好に保持し得るものであった。そして、その効果は、良好なものから順に、中間処理剤(J1)>(J2)>(H1)の順であった。また、この優れたウエーブ形成能は中間処理剤の還元力によるものではなく、別の作用であることがわかる。
【0111】
(実施例5:システアミン塩酸塩とフマル酸とを用いるカール形成剤(KE1)の作製)
システアミンの代わりにシステアミン塩酸塩を用い、得られた複合体の濃度を12質量%となるように調製したこと以外は実施例1と同様にして、システアミン塩酸塩とフマル酸との複合体を含む水溶液を調製した。次いで、この水溶液5質量部と水95質量部とを混合することによりカール形成剤(KE1)を得た。
【0112】
このカール形成剤(KE1)について、実施例1と同様にして、ヨード滴定法による還元力(mL)を測定した。当該還元力は検出限界である0.02mL以下であり、得られた複合体はシステアミン塩酸塩とマレイン酸とが略等モルで反応したものであることを確認した。
【0113】
(比較例13:カール形成剤(KC1)の作製
所定量のシステアミン塩酸塩および所定量のフマル酸に、微量のアンモニア水を添加し、さらに水でこれらの合計が100質量%となるように希釈することによりカール形成剤(KC1)を得た。すなわち、このカール形成剤(KC1)は、システアミンとフマル酸とを実施例5のような複合体の形態で含有することなく、それぞれ0.3質量%のシステアミン塩酸塩濃度および0.3質量%のフマル酸濃度を有するものであった。
【0114】
(カール・キープ力の評価)
ブリーチ毛束(処理前のブリーチ毛束)を、実施例5で得られたカール形成剤(KE1)、比較例13で得られたカール形成剤(KC1)、およびブランクとしての水(100質量%)にそれぞれ5分間浸漬した。次いで、それぞれのブリーチ毛髪を取り出し、約40℃の水で濯ぎ、15mmのパーマロッドに巻き付けて、ドライヤーによる約80℃の温風で5分間乾燥させた。その後、各ブリーチ毛髪をパーマロッドから外し、40℃かつ湿度88%の条件で1時間放置した。
【0115】
このようにして処理したブリーチ毛束について、以下の式にしたがってカール・キープ力(%)を算出した。
【0116】
【数4】
【0117】
結果を表7に示す。
【0118】
【表7】
【0119】
表7に示すように、実施例5で得られたカール形成剤を用いて処理したブリーチ毛束は、比較例13で得られたカール形成剤やブランクを用いて処理したものと比較して、毛髪のカール・キープ力が向上しており、頭髪に対して優れたカール・キープ能を提供できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、例えば化粧品の製造分野ならびに理容業および美容業分野において有用である。