(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】二重特異的抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/30 20060101AFI20230526BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230526BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230526BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230526BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230526BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230526BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230526BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230526BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230526BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230526BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230526BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230526BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230526BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C07K16/30
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K31/7088
A61K35/12
A61K48/00
C12N15/63 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2022512232
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013378
(87)【国際公開番号】W WO2021200857
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020061476
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】珠玖 洋
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 泰
(72)【発明者】
【氏名】田中 健人
(72)【発明者】
【氏名】谷津 彩香
(72)【発明者】
【氏名】市川 淳也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 敏明
(72)【発明者】
【氏名】上妻 志保
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆二
(72)【発明者】
【氏名】中山 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 直也
(72)【発明者】
【氏名】中村 健介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一郎
(72)【発明者】
【氏名】古薗 信二
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525973(JP,A)
【文献】国際公開第2010/106431(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/117237(WO,A1)
【文献】特表2016-520598(JP,A)
【文献】PNAS,2009年,Vol.106, No.14, p.5784-5788
【文献】Eur. J. Immunol.,2004年,Vol.34, p.2919-2929
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号53で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号53で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は
配列番号156で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号156で表されるアミノ酸配列の161番目~271番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片。
【請求項2】
scFvである、請求項1に記載の抗体又はその結合断片。
【請求項3】
配列番号53で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、又は
配列番号156で表されるアミノ酸配列の21番目~271番目のアミノ酸配列からなるscFv、
である、請求項2記載の抗体又はその結合断片。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体又はその結合断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のポリヌクレオチド又は請求項5に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項7】
(i)請求項6に記載の宿主細胞を培養する工程、及び、(ii)工程(i)で得られた培養物から抗体又はその結合断片を精製する工程を含む、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片を製造する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法により得られた、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片。
【請求項9】
下記(i)又は(ii)記載の性質を有し、HLA-A2/NY-ESOに結合する抗体又はその結合断片:
(i)請求項3記載の抗体又はその結合断片が認識するHLA-A2/NY-ESO上の部位に結合する;
(ii)請求項3記載の抗体又はその結合断片と、ヒトLHLA-A2/NY-ESOへの結合において競合する。
【請求項10】
請求項1~3、8及び9のいずれか1項に記載の抗体又はその結合断片、請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5に記載のベクター、又は請求項6に記載の細胞を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~3、8及び9のいずれか1項に記載の抗体又はその結合断片を含む、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する分子。
【請求項12】
多重特異性抗体である、請求項11記載の分子。
【請求項13】
二重特異性抗体である、請求項11記載の分子。
【請求項14】
CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の分子。
【請求項15】
CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、
(CCH1)配列番号141で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH1、
(CCH2)配列番号142で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2若しくは配列番号142で表されるアミノ酸配列において、3番目のアミノ酸がN又はSであるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2、
(CCH3)配列番号143で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、
(CCL1)配列番号144で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、
(CCL2)配列番号145で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2若しくは配列番号145で表されるアミノ酸配列において、2番目のアミノ酸がNであるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2、並びに
(CCL3)配列番号146で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3
を含む、CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項14に記載の分子。
【請求項16】
CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、
(CH1)配列番号136で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH2)配列番号137で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH3)配列番号147で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH4)配列番号138で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH5)配列番号139で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH6)配列番号140で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH7)配列番号155で表されるアミノ酸配列の272番目~389番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH8)配列番号156で表されるアミノ酸配列の277番目~394番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、若しくは
(CH9)配列番号157で表されるアミノ酸配列の277番目~394番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、並びに、
(CL1)配列番号136で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL2)配列番号137で表されるアミノ酸配列の135番目~241番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL3)配列番号147で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL4)配列番号138で表されるアミノ酸配列の135番目~241番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL5)配列番号139で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL6)配列番号140で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL7)配列番号155で表されるアミノ酸配列の405番目~511番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL8)配列番号156で表されるアミノ酸配列の410番目~516番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、若しくは
(CL9)配列番号157で表されるアミノ酸配列の410番目~516番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
を含む、請求項15に記載の分子。
【請求項17】
CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、
(CH1CL1)配列番号136で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号136で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH2CL2)配列番号137で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号137で表されるアミノ酸配列の135番目~241番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH3CL3)配列番号147で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号147で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH4CL4)配列番号138で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号138で表されるアミノ酸配列の135番目~241番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH5CL5)配列番号139で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号139で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH6CL6)配列番号140で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号140で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH7CL7)配列番号155で表されるアミノ酸配列の272番目~389番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号155で表されるアミノ酸配列の405番目~511番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH8CL8)配列番号156で表されるアミノ酸配列の277番目~394番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号156で表されるアミノ酸配列の410番目~516番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は、
(CH9CL9)配列番号157で表されるアミノ酸配列の277番目~394番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号157で表されるアミノ酸配列の410番目~516番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を含む、請求項16に記載の分子。
【請求項18】
CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、scFvである、請求項14~17のいずれか1項に記載の分子。
【請求項19】
scFvが、
(CS1)配列番号136で表されるアミノ酸配列の2番目~243番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS2)配列番号137で表されるアミノ酸配列の2番目~241番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS3)配列番号147で表されるアミノ酸配列の2番目~243番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS4)配列番号138で表されるアミノ酸配列の2番目~241番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS5)配列番号139で表されるアミノ酸配列の2番目~243番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS6)配列番号140で表されるアミノ酸配列の2番目~243番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS7)配列番号155で表されるアミノ酸配列の272番目~511番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS8)配列番号156で表されるアミノ酸配列の277番目~516番目のアミノ酸配列からなるscFv、若しくは
(CS9)配列番号157で表されるアミノ酸配列の277番目~516番目のアミノ酸配列からなるscFv、
を含む、請求項18に記載の分子。
【請求項20】
N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合するscFv及びFc領域(i)をその順に含んでなる第1のポリペプチド;並びに、
Fc領域(ii)を含む第2ポリペプチドを含み、好適には、Fc領域(i)とFc領域(ii)において会合してなる、請求項14~19のいずれか1項に記載の分子。
【請求項21】
ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである請求項1記載のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項20記載の分子。
【請求項22】
ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである請求項2記載のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項20記載の分子。
【請求項23】
ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである請求項3記載のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項20記載の分子。
【請求項24】
CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである請求項15記載のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項20~23のいずれか1項に記載の分子。
【請求項25】
CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである請求項16記載のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項20~23のいずれか1項に記載の分子。
【請求項26】
CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである請求項17に記載のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項20~23のいずれか1項に記載の分子。
【請求項27】
CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである請求項18又は19に記載のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項20~23のいずれか1項に記載の分子。
【請求項28】
配列番号96で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列を含む、請求項20~27のいずれか1項に記載の分子。
【請求項29】
配列番号156で表されるアミノ酸配列の21番目~516番目のアミノ酸配列、及び配列番号157で表されるアミノ酸配列の21番目~516番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項20~27のいずれか1項に記載の分子。
【請求項30】
第1ポリペプチドが、配列番号96で表されるアミノ酸配列の529番目~745番目のアミノ酸配列を含む、請求項20~29のいずれか1項に記載の分子。
【請求項31】
第1ポリペプチドが、配列番号156で表されるアミノ酸配列の534番目~750番目のアミノ酸配列、又は配列番号157で表されるアミノ酸配列の534番目~750番目のアミノ酸配列を含む、請求項20~29のいずれか1項に記載の分子。
【請求項32】
第1ポリペプチドが、配列番号96で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列からなる、請求項28又は30記載の分子。
【請求項33】
第1ポリペプチドが、配列番号156で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列からなる、又は配列番号157で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列からなる、請求項29又は31記載の分子。
【請求項34】
第2ポリペプチドが、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目のアミノ酸配列を含んでなる、請求項20~33のいずれか1項に記載の分子。
【請求項35】
N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合する抗体重鎖の可変領域及び定常領域CH1並びに免疫グロブリンFc領域(i)をその順で含んでなる第1ポリペプチド、免疫グロブリンのヒンジ領域及びFc領域(ii)を含んでなる第2ポリペプチド、並びに、可変領域及び定常領域からなる抗体軽鎖を含む第3ポリペプチドを含み、好適には、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドがFc領域(i)とFc領域(ii)において会合しており、第1ポリペプチドが抗体重鎖の可変領域及び定常領域CH1において第3ポリペプチドと会合してなる、
請求項14~
17のいずれか1項に記載の分子。
【請求項36】
第3ポリペプチドが、可変領域及び定常領域からなる、該CD3に特異的に結合する抗体軽鎖を含む、請求項35記載の分子。
【請求項37】
ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである請求項1記載のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項35又は36に記載の分子。
【請求項38】
ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである請求項2記載のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項35又は36に記載の分子。
【請求項39】
ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである請求項3記載のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項35又は36に記載の分子。
【請求項40】
該CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、Fabである、請求項35~39のいずれか1項に記載の分子。
【請求項41】
該CD3に特異的に結合するFabが、Fabである請求項15記載のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項40に記載の分子。
【請求項42】
該CD3に特異的に結合するFabが、Fabである請求項16記載のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項40に記載の分子。
【請求項43】
該CD3に特異的に結合するFabが、Fabである請求項17記載のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、請求項40に記載の分子。
【請求項44】
第1ポリペプチドが、配列番号160で表されるアミノ酸配列の21番目~394番目のアミノ酸配列を含む、請求項35~43のいずれか1項に記載の分子。
【請求項45】
第1ポリペプチドが、下記(i)又は(ii)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項35~44のいずれか1項に記載の分子:
(i)配列番号160で表されるアミノ酸配列の20番目~724番目のアミノ酸配列;(ii)配列番号197で表されるアミノ酸配列の20番目~719番目のアミノ酸配列。
【請求項46】
第2ポリペプチドが、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目のアミノ酸配列を含んでなる、請求項35~45のいずれか1項に記載の分子。
【請求項47】
第3ポリペプチドが、配列番号161で表されるアミノ酸配列の21番目~127番目のアミノ酸配列を含んでなる、請求項35~46のいずれか1項に記載の分子。
【請求項48】
第3ポリペプチドが、配列番号161で表されるアミノ酸配列の21番目~233番目のアミノ酸配列を含んでなる、請求項35~47のいずれか1項に記載の分子。
【請求項49】
請求項11~48のいずれか1項に記載の分子であって、該分子に含まれる1つ又は2つ以上のポリペプチドの有するアミノ酸配列において、該配列のカルボキシル末端から1つ又は2つのアミノ酸が欠失してなる、該分子。
【請求項50】
請求項11~49のいずれか1項に記載の分
子をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項51】
請求項50に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項52】
請求項50に記載のポリヌクレオチド又は請求項51に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項53】
(i) 請求項52に記載の宿主細胞を培養する工程、及び (ii)工程(i)で得られた培養物から抗体又はその結合断片を精製する工程を含む、ヒトHLA/NY-ESO及びヒトCD3に特異的に結合する分子を製造する方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法により得られる、ヒトHLA/NY-ESO及びヒトCD3に特異的に結合する分子。
【請求項55】
請求項11~49及び54のいずれか1項に記載の分子、請求項50に記載のポリヌクレオチド、請求項51に記載のベクター、又は請求項52に記載の宿主細胞を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項56】
抗がん剤である、請求項10又は55記載の医薬組成物。
【請求項57】
がんが、腎がん、メラノーマ、有棘細胞がん、基底細胞がん、結膜がん、口腔がん、喉頭がん、咽頭がん、甲状腺がん、肺がん(非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)、小細胞肺がん)、乳がん、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、大腸がん、直腸がん、虫垂がん、肛門がん、肝がん、胆嚢がん、胆管がん、膵がん、副腎がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮がん、膣がん、脂肪肉腫、血管肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、未分化多型肉腫、粘液型線維肉腫、悪性末梢性神経鞘腫、後腹膜肉腫、滑膜肉腫、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、類上皮肉腫、B細胞リンパ腫、T・NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、精巣がん及び卵巣がんからなる群から選択される1つ又は2つ以上である、請求項56記載の医薬組成物。
【請求項58】
他の薬剤と組み合わせて使用される、請求項10及び55~57のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合するscFv及びFc領域(i)をその順に含んでなる第1のポリペプチド;並びに、Fc領域(ii)を含む第2ポリペプチドを含み、
Fc領域(i)とFc領域(ii)において会合してなり、
第1のポリペプチドが、配列番号96で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号155で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号156で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列、若しくは、配列番号157で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列、又は、該アミノ酸配列のカルボキシル末端から1つ又は2つのアミノ酸が欠失してなるアミノ酸配列を含み、
第2のポリペプチドが、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目のアミノ酸配列、又は、該アミノ酸配列のカルボキシル末端から1つ又は2つのアミノ酸が欠失してなるアミノ酸配列を含んでなる、ヒトHLA/NY-ESO及びヒトCD3に特異的に結合する多重特異性分子。
【請求項60】
N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合する抗体重鎖の可変領域及び定常領域CH1並びに免疫グロブリンFc領域(i)をその順で含んでなる第1ポリペプチド、免疫グロブリンのヒンジ領域及びFc領域(ii)を含んでなる第2ポリペプチド、並びに、可変領域及び定常領域からなる抗体軽鎖を含む第3ポリペプチドを含み、
第1ポリペプチドと第2ポリペプチドがFc領域(i)とFc領域(ii)において会合しており、第1ポリペプチドが抗体重鎖の可変領域及び定常領域CH1において第3ポリペプチドと会合してなり、
第1のポリペプチドが、配列番号160で表されるアミノ酸配列の20番目~724番目のアミノ酸配列若しくは配列番号197で表されるアミノ酸配列の20番目~719番目のアミノ酸配、又は、該アミノ酸配列のカルボキシル末端から1つ又は2つのアミノ酸が欠失してなるアミノ酸配列を含み、
第2のポリペプチドが、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目のアミノ酸配列を含み、
第3ポリペプチドが、配列番号161で表されるアミノ酸配列の21番目~127番目のアミノ酸配列、又は、配列番号161で表されるアミノ酸配列の21番目~233番目のアミノ酸配列を含んでなる、ヒトHLA/NY-ESO及びヒトCD3に特異的に結合する多重特異性分子。
【請求項61】
請求項59又は60に記載の分
子をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項62】
請求項61に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項63】
請求項61に記載のポリヌクレオチド又は請求項62に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項64】
(i) 請求項63に記載の宿主細胞を培養する工程、及び (ii)工程(i)で得られた培養物から抗体又はその結合断片を精製する工程を含む、ヒトHLA/NY-ESO及びヒトCD3に特異的に結合する多重特異性分子を製造する方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法により得られる、ヒトHLA/NY-ESO及びヒトCD3に特異的に結合する多重特異性分子。
【請求項66】
請求項59、60又は65に記載の分子、請求項61に記載のポリヌクレオチド、請求項62に記載のベクター、又は請求項63に記載の宿主細胞を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項67】
抗がん剤である、請求項66記載の医薬組成物。
【請求項68】
がんが、腎がん、メラノーマ、有棘細胞がん、基底細胞がん、結膜がん、口腔がん、喉頭がん、咽頭がん、甲状腺がん、肺がん(非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)、小細胞肺がん)、乳がん、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、大腸がん、直腸がん、虫垂がん、肛門がん、肝がん、胆嚢がん、胆管がん、膵がん、副腎がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮がん、膣がん、脂肪肉腫、血管肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、未分化多型肉腫、粘液型線維肉腫、悪性末梢性神経鞘腫、後腹膜肉腫、滑膜肉腫、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、類上皮肉腫、B細胞リンパ腫、T・NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、精巣がん及び卵巣がんからなる群から選択される1つ又は2つ以上である、請求項67記載の医薬組成物。
【請求項69】
他の薬剤と組み合わせて使用される、請求項66~68のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項70】
他の薬剤を含む、請求項66~69のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの治療に有用な抗体、二重特異的抗体等に関する。
【背景技術】
【0002】
NY-ESO-1はSerological analysis of recombinant cDNA expression libraries(SEREX)法により食道がんから同定された分子であり(非特許文献1)、LAGE-1は別名NY-ESO-2とも呼ばれ、腫瘍cDNAライブラリーのRepresentational difference analysisから同定された分子である(非特許文献2)。いずれの分子も正常組織においては精巣に発現は限局していることが知られているが、機能は明らかになっていない。NY-ESO-1、LAGE-1は、メラノーマ、肺がん、膀胱がん、卵巣がん、軟部肉腫、骨髄腫など幅広いがん種での発現が報告されていることから(非特許文献3)、がんとの関連性が示唆されている。また、悪性度との相関に関して、NY-ESO-1はメラノーマの原発巣よりも転移巣での発現が高い(非特許文献4)、NY-ESO-1、LAGE-1は尿路上皮がんにおいて初期のがんと比較して進行がんにおいて発現が高い(非特許文献5)、NY-ESO-1は染色体異常を有する高リスクの骨髄腫において、染色体正常の骨髄腫よりも発現が高い(非特許文献6)、などの報告がある。これらの情報から、NY-ESO-1やLAGE-1はがん特異性の高い分子として注目されており、がんワクチン療法の創薬標的として多くの研究開発がなされているが、現在までに承認を受けた医薬品はない。
【0003】
NY-ESO-1、LAGE-1の157番目から165番目の9-merのNY-ESOペプチド:SLLMWITQCはHLA(Histocompatibility Leukocyte Antigen)-A2と複合体(HLA/NY-ESOペプチド複合体)を形成し、細胞外に提示されることが知られている(非特許文献7)。上述したように、NY-ESO-1、LAGE-1の発現はがん特異的であることから、HLA/NY-ESOペプチド複合体はHLA-A2陽性、且つNY-ESO-1あるいはLAGE-1陽性のがん細胞上においてのみ存在するがん特異的な治療標的であることが示唆されている(非特許文献8)。そして、HLA/NY-ESOペプチド複合体に結合する分子として、TCR(特許文献1、2)や抗体(特許文献3、特許文献8)の報告がある。
【0004】
がん標的分子に対する結合分子の用途の一つとして、T細胞をがん細胞へ誘導し細胞傷害による抗腫瘍効果を示すT細胞リダイレクションをメカニズムとしたCD3二重特異的(bispecific)抗体がある(非特許文献9、10)。現在上市されているCD3 bispecific抗体医薬品として、CD19に対するBiTE(bispecfic T-cell engager)であるBlinatumomabが挙げられる。急性リンパ芽球性白血病(ALL)で承認され、他血液がんを対象とした臨床試験が進行中である。ただしbispecificの抗体フォーマットとしてはFc領域を持たないtandem scFv(taFv)であり、治療用抗体として通常用いられるIgG型の抗体に比べ、患者に投与された際の血中半減期は非常に短い(非特許文献11)。
【0005】
血中半減期がIgG型の抗体と同程度のヘテロダイマーFc領域を有する二重特異性(bispecific)抗体のとして、knobs-into-holes、CrossMAb、DuoBody(登録商標)など(特許文献4、5、6、7)様々な抗体フォーマットを用いたCD3 bispecific抗体の研究や臨床試験が進行中であり、HLA/NY-ESOペプチド複合体に対する抗体を利用したCD3 bispecific抗体が報告されている(非特許文献12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2005/113595
【文献】WO2017/109496
【文献】WO2010/106431
【文献】WO1998/050431
【文献】WO2006/106905
【文献】WO2011/028952
【文献】WO2011/131746
【文献】WO2021/003357
【非特許文献】
【0007】
【文献】Proc Natl Acad Sci U S A.;94(5):1914-8(1997).
【文献】Int J Cancer.;76(6):903-8(1998).
【文献】Immunol Cell Biol.;84(3):303-17(2006).
【文献】J Surg Res.;98(2):76-80(2001).
【文献】Cancer Res.;61(12):4671-4(2001).
【文献】Blood.;105(10):3939-44(2005).
【文献】J Exp Med.;187(2):265-70(1998).
【文献】J Immunol.;176(12):7308-16(2006).
【文献】Nature;314 (6012);628-31(1985).
【文献】Int Rev Immunol.;4(2);159-73(1989).
【文献】Drug Des Devel Ther.;10;757-765(2016).
【文献】第21回がん免疫学会抄録集;O13-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、抗腫瘍剤として用いることができる新規な抗HLA-A2/NY-ESO抗体、及び該抗体等を含むHLA-A2/NY-ESOに結合する分子を有効成分として含む抗腫瘍剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、新規な抗HLA-A2/NY-ESO抗体、及び該抗体等を含むHLA-A2/NY-ESOに結合する分子を創出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] 配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH1、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2、
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、
配列番号57で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、若しくは配列番号57で表されるアミノ酸配列において、7番目のアミノ酸がW及び/若しくは8番目のアミノ酸がKであるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2、並びに
配列番号59で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3、若しくは配列番号59で表されるアミノ酸配列において、2番目のアミノ酸がA若しくはSであるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3
を含む、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片。
【0011】
[2] (i) 配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH1、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2、
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、
配列番号57で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2、及び、
配列番号59で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3
(ii) 配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH1、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2、
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、
配列番号57で表されるアミノ酸配列において、7番目のアミノ酸がWであるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2、及び、
配列番号59で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3
(iii) 配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH1、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2、
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、
配列番号57で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2、及び、
配列番号59で表されるアミノ酸配列において、2番目のアミノ酸がAであるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3、
(iv) 配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH1、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2、
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、
配列番号57で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2、及び、
配列番号59で表されるアミノ酸配列において、2番目のアミノ酸がSであるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3、並びに、
(v) 配列番号54で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH1、
配列番号55で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2、
配列番号56で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、
配列番号57で表されるアミノ酸配列において、7番目のアミノ酸がWであり、8番目のアミノ酸がKであるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、
配列番号58で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2、及び、
配列番号59で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3、
の(i)~(v)のグループからなる群より選択される1つ又は2つ以上のグループのCDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3を含む、[1]の抗体又はその結合断片。
【0012】
[3] 配列番号27で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140のアミノ酸配列、又は38若しくは39で表されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号27若しくは配列番号52で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266のアミノ酸配列、又は配列番号40で表されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、[1]の抗体又はその結合断片。
【0013】
[4] (H1) 配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域
(H2) 配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H3) 配列番号29で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H4) 配列番号26で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H5) 配列番号27で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H6) 配列番号28で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H7) 配列番号36で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H8) 配列番号47で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H9) 配列番号48で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H10) 配列番号50で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H11) 配列番号51で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H12) 配列番号52で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H13) 配列番号53で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(H14) 配列番号30で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のからなる重鎖可変領域、若しくは、
(H15) 配列番号156で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、並びに、
(L1) 配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L2) 配列番号20で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L3) 配列番号29で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L4) 配列番号26で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L5) 配列番号27で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L6) 配列番号28で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L7) 配列番号36で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L8) 配列番号47で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L9) 配列番号48で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L10) 配列番号50で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L11) 配列番号51で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L12) 配列番号52で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L13) 配列番号53で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(L14) 配列番号30で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、若しくは、
(L15) 配列番号156で表されるアミノ酸配列の161番目~271番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
を含む、[1]の抗体又はその結合断片。
【0014】
[5] (H1L1) 配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H2L2) 配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号20で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H3L3) 配列番号29で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号29で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H4L4) 配列番号26で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H5L5) 配列番号27で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号27で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H6L6) 配列番号28で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H7L7) 配列番号36で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号36で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H8L8) 配列番号47で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号47で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H9L9) 配列番号48で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号48で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H10L10) 配列番号50で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号50で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H11L11) 配列番号51で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号51で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H12L12) 配列番号52で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号52で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H13L13) 配列番号53で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号53で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(H14L14) 配列番号30で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号30で表されるアミノ酸配列の156番目~266番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は、
(H15L14) 配列番号156で表されるアミノ酸配列の21番目~140番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号156で表されるアミノ酸配列の161番目~271番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
を含む、[4]の抗体又はその結合断片。
【0015】
[6] scFvである、[1]~[5]のいずれかの抗体又はその結合断片。
[7] (s1) 配列番号70で表されるアミノ酸配列の21~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s2) 配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号20で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むscFv、
(s3) 配列番号29で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s4) 配列番号26で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s5) 配列番号27で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s6) 配列番号28で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s7) 配列番号36で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s8) 配列番号47で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s9) 配列番号48で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s10) 配列番号50で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s11) 配列番号51で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s12) 配列番号52で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s13) 配列番号53で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(s14) 配列番号30で表されるアミノ酸配列の21番目~266番目のアミノ酸配列からなるscFv、又は
(s15) 配列番号156で表されるアミノ酸配列の21番目~271番目のアミノ酸配列からなるscFv、
である、[6]の抗体又はその結合断片。
【0016】
[8] [1]~[7]のいずれかの抗体又はその結合断片をコードするポリヌクレオチド。
[9] [8]のポリヌクレオチドを含むベクター。
[10] [8]のポリヌクレオチド又は[9]のベクターを含む宿主細胞。
[11](i)[10]の宿主細胞を培養する工程、及び、(ii)工程(i)で得られた培養物から抗体又はその結合断片を精製する工程を含む、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片を製造する方法。
[12] [11]の方法により得られた、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片。
[13] 下記(i)又は(ii)記載の性質を有し、HLA-A2/NY-ESOに結合する抗体又はその結合断片:
(i)[7]記載の抗体又はその結合断片が認識するHLA-A2/NY-ESO上の部位に結合する;
(ii)[7]記載の抗体又はその結合断片と、ヒLHLA-A2/NY-ESOへの結合において競合する。
[14] [1]~[7]、[12]及び[13]のいずれかの抗体又はその結合断片、[8]のポリヌクレオチド、[9]のベクター、又は[10]の細胞を有効成分として含む医薬組成物。
[15] [1]~[7]、[12]及び[13]のいずれかの抗体又はその結合断片を含む、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する分子。
[16] 多重特異性抗体である、[15]の分子。
[17] 二重特異性抗体である、[15]の分子。
[18] CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片を含む、[15]~[17]のいずれかの分子。
【0017】
[19] CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、
(CCH1)配列番号141で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH1、
(CCH2)配列番号142で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2若しくは配列番号142で表されるアミノ酸配列において、3番目のアミノ酸がN又はSであるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH2、
(CCH3)配列番号143で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、
(CCL1)配列番号144で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL1、
(CCL2)配列番号145で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2若しくは配列番号145で表されるアミノ酸配列において、2番目のアミノ酸がNであるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL2、並びに
(CCL3)配列番号146で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDRL3
を含む、CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[18]の分子。
【0018】
[20] CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、
(CH1) 配列番号136で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH2) 配列番号137で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH3) 配列番号147で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH4) 配列番号138で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH5) 配列番号139で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH6) 配列番号140で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH7) 配列番号155で表されるアミノ酸配列の272番目~389番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
(CH8) 配列番号156で表されるアミノ酸配列の277番目~394番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、若しくは
(CH9) 配列番号157で表されるアミノ酸配列の277番目~394番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、並びに、
(CL1) 配列番号136で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL2) 配列番号137で表されるアミノ酸配列の135番目~241番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL3) 配列番号147で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL4) 配列番号138で表されるアミノ酸配列の135番目~241番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL5) 配列番号139で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL6) 配列番号140で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL7) 配列番号155で表されるアミノ酸配列の405番目~511番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CL8) 配列番号156で表されるアミノ酸配列の410番目~516番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、若しくは
(CL9) 配列番号157で表されるアミノ酸配列の410番目~516番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
を含む、[19]の分子。
【0019】
[21] CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、
(CH1CL1) 配列番号136で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号136で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH2CL2) 配列番号137で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号137で表されるアミノ酸配列の135番目~241番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH3CL3) 配列番号147で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号147で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH4CL4) 配列番号138で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号138で表されるアミノ酸配列の135番目~241番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH5CL5) 配列番号139で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号139で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH6CL6) 配列番号140で表されるアミノ酸配列の2番目~119番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号140で表されるアミノ酸配列の135番目~243番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH7CL7) 配列番号155で表されるアミノ酸配列の272番目~389番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号155で表されるアミノ酸配列の272番目~389番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(CH8CL8) 配列番号156で表されるアミノ酸配列の277番目~394番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号156で表されるアミノ酸配列の410番目~516番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は、
(CH9CL9) 配列番号157で表されるアミノ酸配列の277番目~394番目のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号157で表されるアミノ酸配列の410番目~516番目のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、を含む、[20]の分子。
[22] CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、scFvである、[18]~[21]のいずれかの分子。
【0020】
[23] scFvが、
(CS1) 配列番号136で表されるアミノ酸配列の2番目~243番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS2) 配列番号137で表されるアミノ酸配列の2番目~241番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS3) 配列番号147で表されるアミノ酸配列の2番目~243番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS4) 配列番号138で表されるアミノ酸配列の2番目~241番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS5) 配列番号139で表されるアミノ酸配列の2番目~243番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS6) 配列番号140で表されるアミノ酸配列の2番目~243番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS7) 配列番号155で表されるアミノ酸配列の272番目~511番目のアミノ酸配列からなるscFv、
(CS8) 配列番号156で表されるアミノ酸配列の277番目~516番目のアミノ酸配列からなるscFv、若しくは
(CS9) 配列番号157で表されるアミノ酸配列の277番目~516のアミノ酸配列からなるscFv、
を含む、[22]の分子。
【0021】
[24] N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合するscFv及びFc領域(i)をその順に含んでなる第1のポリペプチド;並びに、
Fc領域(ii)を含む第2ポリペプチドを含み、好適には、Fc領域(i)とFc領域(ii)において会合してなる、[18]~[23]のいずれかの分子。
[25] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[1]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[24]の分子。
[26] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[2]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[24]の分子。
[27] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[3]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[24]の分子。
[28] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[4]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[24]の分子。
[29] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[5]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[24]の分子。
【0022】
[30] CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである[18]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[19]~[24]のいずれかの分子。
[31] CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである[19]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[19]~[24]のいずれかの分子。
[32] CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである[20]又は[21]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[19]~[24]のいずれかの分子。
[33] CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである[23]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[19]~[24]のいずれかの分子。
【0023】
[34] 配列番号85で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号87で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号88で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号89で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号90で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号91で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号92で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号93で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号94で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号95で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号96で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号86で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号149で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列及び配列番号150で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、[24]~[33]のいずれかの分子。
[35] 配列番号155で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号156で表されるアミノ酸配列の21番目~516番目のアミノ酸配列、配列番号157で表されるアミノ酸配列の21番目~516番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、[24]~[33]のいずれかの分子。
[36] 第1ポリペプチドが、配列番号85、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、86、149又は150で表されるアミノ酸配列の529番目~745番目のアミノ酸配列を含む、[24]~[34]のいずれかの分子。
[37] 第1ポリペプチドが、配列番号155で表されるアミノ酸配列の529番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号156で表されるアミノ酸配列の534番目~750番目のアミノ酸配列、又は配列番号157で表されるアミノ酸配列の534番目~750番目のアミノ酸配列を含む、[24]~[33]及び[35]のいずれかの分子。
【0024】
[38] 第1ポリペプチドが、配列番号85で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号87で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号88で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号89で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号90で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号91で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号92で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号93で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号94で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号95で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号96で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号86で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号149で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列及び配列番号150で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、[34]又は[36]の分子。
[39] 第1ポリペプチドが、配列番号155で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列、配列番号156で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、又は配列番号157で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、[35]又は[37]の分子。
[40] 第2ポリペプチドが、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目のアミノ酸配列を含んでなる、[24]~[39]のいずれかの分子。
【0025】
[41]第1ポリペプチド、第2ポリペプチド及び、第3ポリペプチドを含み、
第1ポリペプチドが、N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合するscFv及びFc領域(i)を、その順に含んでなり、
第2ポリペプチドが、Fc領域(ii)を含む免疫グロブリン重鎖からなり、
第3ポリペプチドが免疫グロブリン軽鎖からなり、
好適には、第2ポリペプチドと第3ポリペプチドが会合しており、
第1ポリペプチドと第2ペプチドが、それぞれのFc領域において会合している、
[18]~[23]のいずれかの分子。
[42] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[1]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[41]の分子。
[43] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[2]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[41]の分子。
[44] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[3]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[41]の分子。
[45] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[4]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[41]の分子。
[46] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[5]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[41]の分子。
【0026】
[47] CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである[18]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[42]~[46]のいずれかの分子。
[48] CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである[19]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[42]~[46]のいずれかの分子。
[49] CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである[20]又は[21]に記載のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[42]~[46]のいずれかの分子。
[50] CD3に特異的に結合するscFvが、scFvである[23]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[42]~[46]のいずれかの分子。
[51] 第2ポリペプチドが、配列番号99で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号20~242のアミノ酸配列を含む、[41]~[50]のいずれかの分子。
[52] 第3ポリペプチドが配列番号100で表されるアミノ酸配列を含む、[41]~[51]のいずれかの分子。
【0027】
[53] 第1ポリペプチドが、
配列番号85で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号87で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号88で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号89で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号90で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号91で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号92で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号93で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号94で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号95で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号96で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号86で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号149で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列及び配列番号150で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、[41]~[52]のいずれかの分子
【0028】
[54] 第1ポリペプチドが、配列番号85で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号87で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号88で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号89で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号90で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号91で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号92で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号93で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号94で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号95で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号96で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列及び配列番号86で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号149で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列及び配列番号150で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、[41]~[53]のいずれかの分子。
【0029】
[55] N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合する抗体重鎖の可変領域及び定常領域CH1並びに免疫グロブリンFc領域(i)をその順で含んでなる第1ポリペプチド、免疫グロブリンのヒンジ領域及びFc領域(ii)を含んでなる第2ポリペプチド、並びに、可変領域及び定常領域からなる抗体軽鎖を含む第3ポリペプチドを含み、好適には、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドがFc領域(i)とFc領域(ii)において会合し、第1ポリペプチドが抗体重鎖の可変領域及び定常領域CH1において第3ポリペプチドと会合してなる、[18]~[23]のいずれか一つに記載の分子。
[56] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[1]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[55]の分子。
[57] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[2]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[55]の分子。
[58] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[3]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[55]の分子。
[59] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[4]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[55]の分子。
[60] ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFvが、scFvである[5]のヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[55]の分子。
[61] CD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片が、Fabである、[18]~[21]のいずれかの分子。
[62] CD3に特異的に結合するFabが、Fabである[18]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[56]~[61]のいずれかの分子。
[63] CD3に特異的に結合するFabが、Fabである[19]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[56]~[61]のいずれかの分子。
[64] CD3に特異的に結合するFabが、Fabである[20]又は[21]のCD3に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、[56]~[61]のいずれかの分子。
[65] 第1ポリペプチドが、配列番号160で表されるアミノ酸配列の21番目~394番目のアミノ酸配列を含んでなる、[55]~[64]のいずれかの分子。
[66] 第1ポリペプチドが、下記(i)~(iii)のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、[55]~[65]のいずれかの分子:
(i)配列番号160で表されるアミノ酸配列の20番目~724番目のアミノ酸配列;
(ii)配列番号197で表されるアミノ酸配列の20番目~719番目のアミノ酸配;
(iii)配列番号198で表されるアミノ酸配列20番目~719番目のアミノ酸配列。
。
[67] 第2ポリペプチドが、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目のアミノ酸配列を含んでなる、[55]~[66]のいずれかの分子。
[68] 第3ポリペプチドが、配列番号161で表されるのアミノ酸配列の21番目~127番目のアミノ酸配列を含んでなる、[56]~[67]のいずれかの分子。
[69] 第3ポリペプチドが、配列番号161で表されるのアミノ酸配列の21番目~233番目のアミノ酸配列を含んでなる、[56]~[68]のいずれかの分子。
[70] [15]~[69]のいずれかの分子であって、該分子に含まれる1つ又は2つ以上のポリペプチドの有するアミノ酸配列において、該配列のカルボキシル末端から1つ又は2つのアミノ酸が欠失してなる、該分子。
[71] [15]~[70]のいずれかの分子に含まれるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
[72] [71]のポリヌクレオチドを含むベクター。
[73] [71]のポリヌクレオチド又は[72]のベクターを含む宿主細胞。
[74] (i) [73]の宿主細胞を培養する工程、及び(ii)工程(i)で得られた培養物から抗体又はその結合断片を精製する工程を含む、ヒトHLA/NY-ESO及びヒトCD3に特異的に結合する分子を製造する方法。
[75] [74]の方法により得られる、ヒトHLA/NY-ESO及びヒトCD3に特異的に結合する分子。
[76] [15]~[70]及び[75]のいずれかの分子、[71]のポリヌクレオチド、[72]のベクター、又は[73]の宿主細胞を有効成分として含む医薬組成物。
[77] 抗がん剤である、[14]又は[76]の医薬組成物。
[78] がんが、腎がん、メラノーマ、有棘細胞がん、基底細胞がん、結膜がん、口腔がん、喉頭がん、咽頭がん、甲状腺がん、肺がん(非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)、小細胞肺がん)、乳がん、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、大腸がん、直腸がん、虫垂がん、肛門がん、肝がん、胆嚢がん、胆管がん、膵がん、副腎がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮がん、膣がん、脂肪肉腫、血管肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、未分化多型肉腫、粘液型線維肉腫、悪性末梢性神経鞘腫、後腹膜肉腫、滑膜肉腫、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、類上皮肉腫、B細胞リンパ腫、T・NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、精巣がん及び卵巣がんからなる群から選択される1つ又は2つ以上である、[77]の医薬組成物。
[79] 他の薬剤と組み合わせて使用される、[76]~[78]のいずれかの医薬組成物。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2020-061476号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、HLA-A2/NY-ESOに結合する抗体、並びに、HLA-A2/NY-ESOに結合しかつCD3に結合する新規な二重特異的抗体(二重特異的分子)が得られる。また、そのような抗体(分子)を有効成分として含有する新規な医薬組成物が得られる。該抗体、あるいは、該分子等は、細胞傷害活性を有しており、がん等の治療剤又は予防剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、抗HLA/NY-ESO scFv NYA-0001、1143、1154、1163、2023、2027、2035、2044、2045、2047、2048、2060、2061、2143、NYC-0003、0004の各種点変異ペプチド添加T2細胞に対する標準化gMFIを示した表である。*/下線は、各scFvのNY-ESOペプチド添加T2細胞に対する標準化gMFIと比較して半分以下であることを表す。
【
図2A】
図2Aは、選択された相同性ペプチド情報を示した表である。NetMHCPan2.8によりHLA-A0201に対する結合性を予測し、50%阻害濃度(IC
50)として示した。
【
図2B】
図2Bは、抗HLA/NY-ESO scFv NYA-0001、1143、1154、1163、2023、2027、2035、2044、2045、2047、2048、2060、2061、2143、NYC-0003、0004の各種相同性ペプチド添加T2細胞に対する標準化gMFIを示した表である。*/下線は、各scFvのDMSO添加T2細胞に対する標準化gMFIと比較して大きい値であることを表す。
【
図3】
図3は、本実施例に示される抗体のフォーマットを示した図である。(a) scFv:抗体H鎖可変領域(VH、後述)及び抗体L鎖可変領域(VL、後述)(いずれも白)をリンカーで繋げたフォーマットである。本実施例では抗HLA-A2/NY-ESO及びCD3のscFvを評価に用いた。(b) Fab:VH(白)と抗体H鎖定常領域(CH1:市松模様)及びVL(白)と抗体L鎖定常領域(横線)からなるフォーマットである。本実施例では抗HLA-A2/NY-ESO Fab等を評価に用いた。(c) taFv:2種類のscFv(白と右上斜線)をリンカーでつなげたフォーマットである。本実施例では抗HLA-A2/NY-ESO scFvと抗CD3 scFvを含むtaFvを評価に用いた。(d) taFv-ヘテロダイマーFc型:taFvのC末端側にヘテロダイマーを形成する変異をいれたFc(左上斜線)が付加し(第1ポリペプチドともいう)、もう一つのFc(黒塗り:第2ポリペプチドともいう)とヘテロに会合したフォーマットである。本実施例では抗HLA-A2/NY-ESO scFvと抗CD3 scFvを含むtaFv-ヘテロダイマーFcを評価に用いた。(e) taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型:上記taFv-ヘテロダイマーFc型にFabを付加したフォーマットである。本実施例では抗HLA-A2/NY-ESO scFvと抗CD3 scFvを含むtaFv及びHLA-A2/NY-ESO Fabを用いたtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc等を評価に用いた。(f) taFv-ヘテロダイマーFc型及びtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型に共通である第1ポリペプチドを示す。第1ポリペプチドは、N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合するscFv及びFc領域(i)を、その順に含んでなる。(g) taFv-ヘテロダイマーFc型の第2ポリペプチドを示す。第2ポリペプチドは、ヒンジ領域及びFc領域(ii)を含んでなる。(h) taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型の第2ポリペプチドを示す。第2ポリペプチドは、ヒンジ領域及びFc領域(ii)を含む免疫グロブリン重鎖を含んでなる。(i) taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型の第3ポリペプチドを示す。第3ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖を含んでなる。
【
図4A】
図4Aは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0019、NYF-0022、NYF-0023、NYF-0027,NYF-0035、NYF-0044、NYF-0047が、内因性ヒトNY-ESO発現U266B1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4B】
図4Bは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0058が、内因性ヒトNY-ESO発現U266B1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4C】
図4Cは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0023、NYF-0045、NYF-0048、NYF-0060、NYF-0061が、内因性ヒトNY-ESO発現U266B1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4D】
図4Dは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0019、NYF-0022、NYF-0023、NYF-0027,NYF-0035、NYF-0044、NYF-0047が、内因性ヒトNY-ESO発現NCI-H1703細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4E】
図4Eは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0058が、内因性ヒトNY-ESO発現NCI-H1703細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4F】
図4Fは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0023、NYF-0045、NYF-0048、NYF-0060、NYF-0061が、内因性ヒトNY-ESO発現NCI-H1703細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4G】
図4Gは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0019、NYF-0022、NYF-0023、NYF-0027,NYF-0035、NYF-0044、NYF-0047が、内因性ヒトNY-ESO非発現AGS細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4H】
図4Hは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0058が、内因性ヒトNY-ESO非発現AGS細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4I】
図4Iは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0023、NYF-0045、NYF-0048、NYF-0060、NYF-0061が、内因性ヒトNY-ESO非発現AGS細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4J】
図4Jは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0019、NYF-0022、NYF-0023、NYF-0027,NYF-0035、NYF-0044、NYF-0047が、内因性ヒトNY-ESO非発現CFPAC-1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4K】
図4Kは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0058が、内因性ヒトNY-ESO非発現CFPAC-1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図4L】
図4Lは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0023、NYF-0045、NYF-0048、NYF-0060、NYF-0061が、内因性ヒトNY-ESO非発現CFPAC-1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図5A】
図5Aは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0019、NYF-0044、NYF-0047が、ヒトPBMC移入モデルにおいて抗腫瘍活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準誤差(NYF-0044 Day32のみn=4、その他はn=5)を示す。
【
図5B】
図5Bは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0022、NYF-0023、NYF-0027、NYF-0035、NYF-0058が、ヒトPBMC移入モデルにおいて抗腫瘍活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準誤差(n=5、Vehicle control群のみn=6)を示す。
【
図5C】
図5Cは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYF-0016、NYF-0045、NYF-0048、NYF-0060、NYF-0061が、ヒトPBMC移入モデルにおいて抗腫瘍活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準誤差(n=5)を示す。
【
図6A】
図6Aは、本実施例に示される抗体のフォーマットを示した図である。(a) Hybrid型:Fab及びscFvそれぞれのC末端側にへテロダイマーを形成する変異をいれたFc(斜線及び黒塗り)が付加し、2つのFcが会合したフォーマットである。本実施例では抗HLA-A2/NY-ESO Fabと抗CD3 scFvを含むHybrid型を評価に用いた。(b) Dual型:2種類の異なるscFvそれぞれのC末端側にへテロダイマーを形成する変異をいれたFc(左上斜線及び黒塗り)が付加し、2つのFcヘテロに会合したフォーマットである。本実施例では抗HLA-A2/NY-ESO scFvと抗CD3 scFvを含むDual型を評価に用いた。(c) scFv-Fab-ヘテロダイマーFc型:scFvとFabをリンカーで繋げたC末端側にヘテロダイマーを形成する変異をいれたFc(左上斜線)が付加し、もう1つのFc(黒塗り)と会合したフォーマットである。本実施例では抗CD3 scFv(右上斜線)と抗HLA-A2/NY-ESO Fabを含むscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型を評価に用いた。また、抗HLA-A2/NY-ESO scFv(右上斜線)と抗CD3 Fabを含むscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型も評価に用いた。
【
図6B】
図6Bは、本実施例に示される抗体のフォーマットを示した図である。(a) taFv-ヘテロダイマーFc型:
図3(d)に同じ。taFvのC末端側にヘテロダイマーを形成する変異をいれたFc(左上斜線)が付加し、もう1つのFc(黒塗り)とヘテロに会合したフォーマットである。本実施例では抗HLA-A2/NY-ESO scFvと抗CD3 scFvからなるtaFv-ヘテロダイマーFc型を評価に用いた。(b) taFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型:上記taFv-ヘテロダイマーFc型における2つのscFvの順序を入れかえたもの。本実施例では抗CD3 scFvと抗HLA-A2/NY-ESO scFvとからなるtaFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型を評価に用いた。(c) taFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型の第1ポリペプチドを示す。第1ポリペプチドは、N末端からC末端に向かって、CD3に特異的に結合するscFv、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv及びFc領域(i)をその順に含んでなる。(d) taFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型の第2ポリペプチドを示す。第2ポリペプチドは、ヒンジ領域及びFc領域(ii)を含んでなる。
【
図7A】
図7Aは、各種抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、Hybrid体(NYG-3143)、Dual体(NYG-2143)、taFv-ヘテロダイマーFc体(NYF-0011)の、内因性ヒトNY-ESO発現U266B1細胞に対するヒトPBMC共存下での細胞傷害活性を示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図7B】
図7Bは、各種抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、scFv-Fab-ヘテロダイマーFc体(NYF-0003)、taFv-ヘテロダイマーFc体(NYF-0010)、taFv(inversed)-ヘテロダイマーFc体(NYF-0004)の、内因性ヒトNY-ESO発現U266B1細胞に対するヒトPBMC共存下での細胞傷害活性を示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図8】NY-ESO中のペプチドのアミノ酸配列(配列番号1)
【
図9】MAGEC-1中のペプチドのアミノ酸配列(配列番号2)
【
図10】scFvシークエンス解析用プライマー1(配列番号3)
【
図11】scFvシークエンス解析用プライマー2(配列番号4)
【
図12】NYA-0001の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号5)
【
図13】NYA-0001の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号6)
【
図14】NYA-0001の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号7)
【
図15】NYA-0001の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号8)
【
図16】NYA-0060の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号9)
【
図17】NYA-0060の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号10)
【
図18】NYA-0060の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号11)
【
図19】NYA-0060の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号12)
【
図20】NYA-0068の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号13)
【
図21】NYA-0068の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号14)
【
図22】NYA-0068の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号15)
【
図23】NYA-0068の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号16)
【
図24】NYA-0082の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号17)
【
図25】NYA-0082の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号18)
【
図26】NYA-0082の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号19)
【
図27】NYA-0082の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号20)
【
図28】NYA-1163タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号21)
【
図29】NYA-2023タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号22)
【
図30】NYA-2027タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号23)
【
図31】NYA-1143タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号24)
【
図32】NYA-2143タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号25)
【
図33】NYA-1163タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号26)、NYA-1163はアミノ酸番号21~266
【
図34】NYA-2023タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号27)、NYA-2023はアミノ酸番号21~266
【
図35】NYA-2027タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号28)、NYA-2027はアミノ酸番号21~266
【
図36】NYA-1143タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号29)、NYA-1143はアミノ酸番号21~266
【
図37】NYA-2143タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号30)、NYA-2143はアミノ酸番号21~266
【
図38】NYA-1154タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号31)
【
図39】NYA-1154タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号32)、NYA-1154はアミノ酸番号21~266
【
図40】HLA-A*0201(GenBank:ASA47534.1)のトランケート体のアミノ酸配列(配列番号33)
【
図41】β2-マイクログロビンのアミノ酸配列(配列番号34)
【
図42】NYA-2035タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号35)
【
図43】NYA-2035タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号36)、NYA-2035はアミノ酸番号21~266
【
図44】NYA-1143-VH01のアミノ酸配列(配列番号37)
【
図45】NYA-1143-VH02のアミノ酸配列(配列番号38)
【
図46】NYA-1143-VH03のアミノ酸配列(配列番号39)
【
図47】NYA-1143-VL01のアミノ酸配列(配列番号40)
【
図48】NYA-2044タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号41)
【
図49】NYA-2045タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号42)
【
図50】NYA-2047タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号43)
【
図51】NYA-2048タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号44)
【
図52】NYA-2060タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号45)
【
図53】NYA-2061タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号46)
【
図54】NYA-2044タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号47)、NYA-2044はアミノ酸番号21~266
【
図55】NYA-2045タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号48)、NYA-2045はアミノ酸番号21~266
【
図56】NYA-0082のアミノ酸配列(配列番号49)
【
図57】NYA-2047タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号50)、NYA-2047はアミノ酸番号21~266
【
図58】NYA-2048タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号51)、NYA-2048はアミノ酸番号21~266
【
図59】NYA-2060タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号52)、NYA-2060はアミノ酸番号21~266
【
図60】NYA-2061タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号53)、NYA-2061はアミノ酸番号21~266
【
図61】NYA-0001重鎖のCDRH1~CDRH3、及び軽鎖のCDRL1~L3のアミノ酸配列(配列番号54~59)
【
図62】NYA-2023のCDRL1のアミノ酸配列(配列番号60)
【
図63】NYA-2027のCDRL3のアミノ酸配列(配列番号61)
【
図64】NYA-1154のCDRH3及びCDRL3のアミノ酸配列(配列番号62及び63)
【
図65】NYA-0035のCDRL1のアミノ酸配列(配列番号64)
【
図66】NYC-0003タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号65)
【
図67】NYC-0004タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号66)
【
図68】NYC-0003タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号67)、NYC-0003はアミノ酸番号21~263
【
図69】NYC-0004タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号68)、NYC-0004はアミノ酸番号21~263
【
図70】NYA-0001タグ付加体のヌクレオチド配列(配列番号69)
【
図71】NYA-0001タグ付加体のアミノ酸配列(配列番号70)、NYA-0001はアミノ酸番号21~266
【
図72】HC1のヌクレオチド配列(配列番号71)
【
図73】NYF-0016-HC2のヌクレオチド配列(配列番号72)
【
図74】NYF-0019-HC2のヌクレオチド配列(配列番号73)
【
図75】NYF-0022-HC2のヌクレオチド配列(配列番号74)
【
図76】NYF-0023-HC2のヌクレオチド配列(配列番号75)
【
図77】NYF-0027-HC2のヌクレオチド配列(配列番号76)
【
図78】NYF-0035-HC2のヌクレオチド配列(配列番号77)
【
図79】NYF-0044-HC2のヌクレオチド配列(配列番号78)
【
図80】NYF-0045-HC2のヌクレオチド配列(配列番号79)
【
図81】NYF-0047-HC2のヌクレオチド配列(配列番号80)
【
図82】NYF-0048-HC2のヌクレオチド配列(配列番号81)
【
図83】NYF-0060-HC2のヌクレオチド配列(配列番号82)
【
図84】NYF-0061-HC2のヌクレオチド配列(配列番号83)
【
図86】NYF-0016-HC2のアミノ酸配列(配列番号85)、NYA-1143はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図87】NYF-0019-HC2のアミノ酸配列(配列番号86)、NYA-2143はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図88】NYF-0022-HC2のアミノ酸配列(配列番号87)、NYA-1163はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図89】NYF-0023-HC2のアミノ酸配列(配列番号88)、NYA-2023はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図90】NYF-0027-HC2のアミノ酸配列(配列番号89)、NYA-2027はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図91】NYF-0035-HC2のアミノ酸配列(配列番号90)、NYA-2035はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図92】NYF-0044-HC2のアミノ酸配列(配列番号91)、NYA-2044はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図93】NYF-0045-HC2のアミノ酸配列(配列番号92)、NYA-2045はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図94】NYF-0047-HC2のアミノ酸配列(配列番号93)、NYA-2047はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図95】NYF-0048-HC2のアミノ酸配列(配列番号94)、NYA-2048はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図96】NYF-0060-HC2のアミノ酸配列(配列番号95)、NYA-2060はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図97】NYF-0061-HC2のアミノ酸配列(配列番号96)、NYA-2061はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図98】NYA-0001-Fab-HC1-k deleteのヌクレオチド配列(配列番号97)
【
図99】NYA-0001-LCのヌクレオチド配列(配列番号98)
【
図100】NYA-0001-Fab-HC1-k deleteのアミノ酸配列(配列番号99)、NYA-0001の重鎖可変領域はアミノ酸番号20~139
【
図101】NYA-0001-LCのアミノ酸配列(配列番号100)、NYA-0001の軽鎖可変領域はアミノ酸番号21~131
【
図102】NYA-1143-Fab-HC1-k deleteのヌクレオチド配列(配列番号101)
【
図103】NYA-1143-LCのヌクレオチド配列(配列番号102)
【
図104】C3E-7085-HC2-k deleteCのヌクレオチド配列(配列番号103)
【
図105】NYA-1143-Fab-HC1-k deleteのアミノ酸配列(配列番号104)、NYA-1143の重鎖可変領域はアミノ酸番号20~139
【
図106】NYA-1143-LCのアミノ酸配列(配列番号105)、NYA-1143の軽鎖可変領域はアミノ酸番号21~131
【
図107】C3E-7085-HC2-k deleteのアミノ酸配列(配列番号106)、C3E-7085はアミノ酸番号21~260
【
図108】NYA-1143-HC1-k deleteのヌクレオチド配列(配列番号107)
【
図109】NYA-1143-HC1-k deleteのアミノ酸配列(配列番号108)、NYA-1143はアミノ酸番号21~266
【
図110】C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k deleteのヌクレオチド配列(配列番号109)
【
図111】NYA-1154-LCのヌクレオチド配列(配列番号110)
【
図112】OAA-HC1-k deleteのヌクレオチド配列(配列番号111)
【
図113】C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k deleteのアミノ酸配列(配列番号112)、C3E-7085はアミノ酸番号21~260、NYA-1154の重鎖可変領域はアミノ酸番号266~285
【
図114】NYA-1154-LCのアミノ酸配列(配列番号113)、NYA-1154の軽鎖可変領域はアミノ酸番号21~131
【
図115】OAA-HC1-k deleteのアミノ酸配列(配列番号114)、
【
図116】NYF-0010-HC2-k deleteのヌクレオチド配列(配列番号115)
【
図117】NYF-0004-HC2-k deleteのヌクレオチド配列(配列番号116)
【
図118】NYF-0011-HC2-k deleteのヌクレオチド配列(配列番号117)
【
図119】NYF-0010-HC2-k deleteのアミノ酸配列(配列番号18)、NYA-1154はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図120】NYF-0004-HC2-k deleteのアミノ酸配列(配列番号119)C3E-7085はアミノ酸番号21~260、NYA-1154はアミノ酸番号272~511
【
図121】NYF-0011-HC2-k deleteのアミノ酸配列(配列番号120)、NYA-1143はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図122】点変異NY-ESOペプチド1Fのアミノ酸配列(配列番号121)
【
図123】点変異NY-ESOペプチド2Mのアミノ酸配列(配列番号122)
【
図124】点変異NY-ESOペプチド3Aのアミノ酸配列(配列番号123)
【
図125】点変異NY-ESOペプチド4Aのアミノ酸配列(配列番号124)
【
図126】点変異NY-ESOペプチド5Aのアミノ酸配列(配列番号125)
【
図127】点変異NY-ESOペプチド6Lのアミノ酸配列(配列番号126)
【
図128】点変異NY-ESOペプチド7Fのアミノ酸配列(配列番号127)
【
図129】点変異NY-ESOペプチド8Aのアミノ酸配列(配列番号128)
【
図130】点変異NY-ESOペプチド9Aのアミノ酸配列(配列番号129)
【
図131】gp100ペプチドのアミノ酸配列(配列番号130)
【
図132】相同性ペプチドDOLPP1のアミノ酸配列(配列番号131)
【
図133】相同性ペプチドIL20RBのアミノ酸配列(配列番号132)
【
図134】相同性ペプチドPRKD2のアミノ酸配列(配列番号133)
【
図135】相同性ペプチドCD163のアミノ酸配列(配列番号134)
【
図136】相同性ペプチドのP2RY8のアミノ酸配列(配列番号135)
【
図137】C3E-7034のアミノ酸配列(配列番号136)
【
図138】C3E-7036のアミノ酸配列(配列番号137)
【
図139】C3E-7085のアミノ酸配列(配列番号138)
【
図140】C3E-7088のアミノ酸配列(配列番号139)
【
図141】C3E-7093のアミノ酸配列(配列番号140)
【
図142】C3E-7085重鎖のCDRH1~CDRH3、及び軽鎖のCDRL1~CDRL3のアミノ酸配列(配列番号141~146)
【
図143】C3E-7078のアミノ酸配列(配列番号147)
【
図144】NYF-0014-HC2のヌクレオチド配列(配列番号148)
【
図145】NYF-0014-HC2のアミノ酸配列(配列番号149)、NYA-0001はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図146】NYF-0082-HC2のアミノ酸配列(配列番号150)、NYA-0082はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
【
図147】ヒトCD3εのアミノ酸配列(配列番号151)
【
図148】NYZ-0038-HC2全長のヌクレオチド配列(配列番号152)
【
図149】NYZ-0082-HC2全長のヌクレオチド配列(配列番号153)
【
図150】NYZ-0083-HC2全長のヌクレオチド配列(配列番号154)
【
図151】NYZ-0038-HC2全長のアミノ酸配列(配列番号155)、NYA-2061はアミノ酸番号21~266、C3E-7096はアミノ酸番号272~511
【
図152】NYZ-0082-HC2全長のアミノ酸配列(配列番号156)、NYA-3061はアミノ酸番号21~271、C3E-7096はアミノ酸番号277~516
【
図153】NYZ-0083-HC2全長のアミノ酸配列(配列番号157)、NYA-3061はアミノ酸番号21~271、C3E-7097はアミノ酸番号277~516
【
図154】NYZ-1010-HC2全長のヌクレオチド配列(配列番号158)
【
図155】C3E-7085-LC全長のヌクレオチド配列(配列番号159)
【
図156】NYZ-1010-HC2全長のアミノ酸配列(配列番号160)、NYA-3061はアミノ酸番号21~271、C3E-7085重鎖可変領域はアミノ酸番号277~394
【
図157】C3E-7085-LC全長のアミノ酸配列(配列番号161)
【
図158A】
図158Aは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子NYZ-0038、0082、0083、1010の各種点変異ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞に対する標準化gMFIを示した表である。*/下線は、各Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子のNY-ESOペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞に対する標準化gMFIと比較して半分以下、*太字は4分の1以下であることを表す。
【
図158B】
図158Bは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子NYZ-0038、0082、0083、1010の各種相同性ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞に対する標準化gMFIを示した表である。*/下線は、各Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子のDMSO添加CD3eノックアウトT2細胞に対する標準化gMFIと比較して大きい値であることを表す。
【
図159A】
図159Aは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0038、0082、0083が、内因性ヒトNY-ESO発現U266B1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図159B】
図159Bは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-1010が、内因性ヒトNY-ESO発現U266B1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図159C】
図159Cは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0082、1010が、内因性ヒトNY-ESO発現NCI-H1703細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図159D】
図159Dは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0038、0083が、内因性ヒトNY-ESO発現NCI-H1703細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図159E】
図159Eは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0038、0082、0083が、内因性ヒトNY-ESO非発現AGS細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図159F】
図159Fは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-1010が、内因性ヒトNY-ESO非発現AGS細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図159G】
図159Gは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0082、1010が、内因性ヒトNY-ESO非発現CFPAC-1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図159H】
図159Hは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0038、0083が、内因性ヒトNY-ESO非発現CFPAC-1細胞に対してヒトPBMC共存下で細胞傷害活性を示さないことを示す図である。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
【
図160A】
図160Aは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0038が、ヒトPBMC移入モデルにおいて抗腫瘍活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準誤差(n=5)を示す。
【
図160B】
図160Bは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0082が、ヒトPBMC移入モデルにおいて抗腫瘍活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準誤差(n=5)を示す。
【
図160C】
図160Cは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-0083が、ヒトPBMC移入モデルにおいて抗腫瘍活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準誤差(n=5)を示す。
【
図160D】
図160Dは、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子、NYZ-1010が、ヒトPBMC移入モデルにおいて抗腫瘍活性を有することを示した図である。図中のエラーバーは標準誤差(n=5)を示す。
【
図161】ペプチドリンカーのアミノ酸配列(配列番号162)
【
図162】各種Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を酸処理した場合の多量体の含有量(%)を示す図である。
【
図163】抗HLA/NY-ESOのscFv-ヘテロダイマーFcの溶液安定性評価の結果を示す図である。
【
図164】NYA-3061全長のヌクレオチド配列(配列番号163)
【
図165】NYA-3061全長のアミノ酸配列(配列番号164)
【
図166】NYC-0005全長のヌクレオチド配列(配列番号165)
【
図167】NYC-0005全長のアミノ酸配列(配列番号166)
【
図168】NYC-0006全長のヌクレオチド配列(配列番号167)
【
図169】NYC-0006全長のアミノ酸配列(配列番号168)
【
図170】NYC-0007全長のヌクレオチド配列(配列番号169)
【
図171】NYC-0007全長のアミノ酸配列(配列番号170)
【
図172】NYC-0008全長のヌクレオチド配列(配列番号171)
【
図173】NYC-0008全長のアミノ酸配列(配列番号172)
【
図174】NYC-0009全長のヌクレオチド配列(配列番号173)
【
図175】NYC-0009全長のアミノ酸配列(配列番号174)
【
図176】NYC-0010全長のヌクレオチド配列(配列番号175)
【
図177】NYC-0010全長のアミノ酸配列(配列番号176)
【
図178】HC-h全長のヌクレオチド配列(配列番号177)
【
図179】HC-h全長のアミノ酸配列(配列番号178)
【
図180】NYD-2047-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号179)
【
図181】NYD-2047-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号180)
【
図182】NYD-2061-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号181)
【
図183】NYD-2061-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号182)
【
図184】NYD-3061-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号183)
【
図185】NYD-3061-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号184)
【
図186】NYC-0011-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号185)
【
図187】NYC-0011-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号186)
【
図188】NYC-0012-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号187)
【
図189】NYC-0012-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号188)
【
図190】NYC-0013-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号189)
【
図191】NYC-0013-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号190)
【
図192】NYC-0014-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号191)
【
図193】NYC-0014-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号192)
【
図194】NYC-0015-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号193)
【
図195】NYC-0015-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号194)
【
図196】NYC-0016-HC-k全長のヌクレオチド配列(配列番号195)
【
図197】NYC-0016-HC-k全長のアミノ酸配列(配列番号196)
【
図198】NYZ-1007-HC2全長のアミノ酸配列(配列番号197)、NYA-2061はアミノ酸番号21~266、C3E-7085重鎖可変領域はアミノ酸番号272~389。
【
図199】NYZ-1017-HC2全長のアミノ酸配列(配列番号198)、NYA-2047はアミノ酸番号21~266、C3E-7085重鎖可変領域はアミノ酸番号277~389。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.定義
本発明において、「遺伝子」とは、蛋白質のアミノ酸をコードする塩基配列が含まれるヌクレオチド鎖又はその相補鎖を意味し、例えば、蛋白質のアミノ酸をコードする塩基配列が含まれるヌクレオチド鎖又はその相補鎖であるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、mRNA、cDNA、cRNA等は「遺伝子」の意味に含まれる。かかる遺伝子は一本鎖、二本鎖又は三本鎖以上のヌクレオチドであり、DNA鎖とRNA鎖の会合体、一本のヌクレオチド鎖上にリボヌクレオチド(RNA)とデオキシリボヌクレオチド(DNA)が混在するもの及びそのようなヌクレオチド鎖を含む二本鎖又は三本鎖以上のヌクレオチドも「遺伝子」の意味に含まれる。本発明において塩基配列とヌクレオチド配列は同義である。
【0033】
本発明において、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド鎖」、「核酸」及び「核酸分子」は同義であり、例えば、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、プライマー等も「ポリヌクレオチド」の意味に含まれる。かかるポリヌクレオチドは一本鎖、二本鎖又は三本以上の鎖からなるポリヌクレオチドであり、DNA鎖とRNA鎖の会合体、一本のポリヌクレオチド鎖上にリボヌクレオチド(RNA)とデオキシリボヌクレオチド(DNA)が混在するもの及びそのようなポリヌクレオチド鎖を含む二本鎖又は三本以上の鎖の会合体も「ポリヌクレオチド」の意味に含まれる。
【0034】
本発明において、「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「蛋白質」は同義である。
本発明において、「抗原」を「免疫原」の意味に用いることがある。
本発明において、「細胞」には、動物個体に由来する各種細胞、継代培養細胞、初代培養細胞、細胞株、組換え細胞及び微生物等も含まれる。
【0035】
本発明において、「抗体」は免疫グロブリンと同義である。ただし、本発明の抗HLA/NY-ESO抗体という場合の「抗体」は、定常領域と可変領域とを有する免疫グロブリンの意味で用いる。抗体は、天然のものであるか、又は、部分的若しくは完全合成により製造された免疫グロブリンであるかは特に限定されない。本発明の抗HLA/NY-ESO抗体は後述の「分子」に含まれる。
【0036】
本発明において、「NY-ESOペプチド」とは、NY-ESO-1とLAGE-1の157番目から165番目の9アミノ酸からなるペプチド(SLLMWITQC:配列番号1)を意味する。
【0037】
本発明において、「HLA-A2/NY-ESO」とは、NY-ESOペプチド及びHistocompatibility Leukocyte Antigen-A2(HLA-A2)の複合体を意味し、「HLA/NY-ESO」とも表記される。
【0038】
本発明において、「抗HLA-A2/NY-ESO抗体」とは、HLA-A2/NY-ESOに結合する抗体、言い換えればHLA-A2/NY-ESOを認識する抗体を意味する。同様に、「抗HLA-A2/NY-ESO scFv」とは、HLA/NY-ESOに結合する、言い換えればHLA-A2/NY-ESOを認識するscFvを意味する。「抗HLA-A2/NY-ESO抗体」及び「抗HLA-A2/NY-ESO scFv」は、それぞれ「抗HLA/NY-ESO抗体」及び「抗HLA/NY-ESO scFv」とも表記される。
【0039】
基本的な4鎖抗体の構造は、2つの同一な軽鎖(L鎖)、及び、2つの同一な重鎖(H鎖)から構成される。軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合する。2つの重鎖は、重鎖のアイソタイプに応じて1つ又は複数のジスルフィド結合により互いに結合している。それぞれの軽鎖、重鎖は規則的な間隔を持つ鎖内ジスルフィド結合を持つ。重鎖と軽鎖には、アミノ酸配列が非常に高い類似性を示す定常領域とアミノ酸配列の類似性が低い可変領域とが存在する。軽鎖は、定常領域(CL)が続く可変領域(VL)をアミノ末端に有する。重鎖は3つの定常領域(CH1/CH2/CH3)が続く可変領域(VH)をアミノ末端に有する。VLとVHは対となり、CLは重鎖の第一定常領域(CH1)と並んでいる。VLとVHは対となって、単一の抗原結合部位を形成する。
【0040】
本発明の抗体の定常領域としては、特に限定されるものではないが、ヒトの疾患を治療又は予防するための本発明の抗体としては、好適にはヒト抗体のものが使用される。ヒト抗体の重鎖定常領域としては、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cμ、Cδ、Cα1、Cα2、Cε等を挙げることができる。ヒト抗体の軽鎖定常領域としては、例えば、Cκ、Cλ等を挙げることができる。
【0041】
Fabは、重鎖のVHとそれに続くCH1、及び、軽鎖のVLとそれに続くCLからなる。VHとVLは、相補性決定領域(CDR)を含む。
【0042】
Fc(Fc領域ともいう)は、重鎖の定常領域のカルボキシル末端領域であって、CH2とCH3を含み、二量体である。本発明のFcは、天然の配列のFcであっても、天然の配列に変異がなされた変異型のFc(「変異型Fc」という)であってもよく、本発明の多重特異性分子及び二重特異性分子において、好適なFc領域は変異型Fcであり、より好適にはヘテロ2量体を形成し得る1組のFcである。1組のFcとしては、後述の、第1ポリペプチドに含まれるFc(i)及び第2ポリペプチドに含まれるFc(ii)の組合せをあげることができるが、1組のFcが会合(ヘテロ2量体形成)することができれば、それらに限定されるものではない。
【0043】
変異型Fcとしては、WO2013/063702に開示される、向上した安定性を有するヘテロ多量体に含まれる改変Fc領域(ヘテロ二量体Fc領域を含む)、WO1996/27011に開示される、異種多量体に含まれる、「突起」及び「空隙」を有するIgG抗体から誘導されるイムノグロブリンのCH3領域を含むFc、WO2009/089004に開示される、1以上のアミノ酸残基を荷電アミノ酸に置換することで静電的に有利であるヘテロ二量体に含まれるCH3ドメインを含むFc、WO2014/110601に開示される、立体構造変異及び/又はpI(等電点)変異を用いた異種二量体に含まれる異種二量体Fc領域、WO2010/151792に開示される、プロテインAへの結合を無くすか又は減少させる改変を含むCH3ドメインを含む、ヘテロ二量体のFc等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
可変領域は、超可変領域(HVR:hypervariable region)と称される極度の可変性を有する領域と、その領域により分離されたフレームワーク領域(FR:Framework region)と呼ばれる比較的不変の領域からなる。天然の重鎖と軽鎖の可変領域は、3つの超可変領域により接続される4つのFRを含み、各鎖の超可変領域はFRにより他の鎖の超可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。
【0045】
抗体分子の重鎖及び軽鎖にはそれぞれ3箇所の相補性決定領域(CDR:Complemetarity determining region)があることが知られている。相補性決定領域は、超可変領域とも呼ばれ、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域内にあって、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖及び軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造上において、通常、それぞれ3ヶ所に分離している。本発明においては、抗体の相補性決定領域について、重鎖の相補性決定領域を重鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRH1、CDRH2、CDRH3と表記し、軽鎖の相補性決定領域を軽鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRL1、CDRL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。
【0046】
本発明において、CDRの位置と長さは、IMGTの定義(Developmental and Comparative Immunology 27 (2003) 55-77)により決定した。
【0047】
FRは、CDR残基以外の可変領域である。可変領域は、一般にFR1、FR2、FR3、FR4の4つのFRを持つ。
【0048】
重鎖並びに軽鎖に含まれるCDRとFRは、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、FRH1-CDRH1-FRH2-CDRH2-FRH3-CDRH3-FRH4、並びに、FRL1-CDRL1-FRL2-CDRL2-FRL3-CDRL3-FRL4、の順にそれぞれ配置される。
【0049】
CDRとFRの位置は、当技術分野で周知の様々な定義、例えば、IMGT以外にも、Kabat、Chothia、AbM、contact等の定義により決定することもできる。
【0050】
本発明において、「抗体の抗原結合断片」とは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域から構成される、抗原との結合活性を有する抗体の部分断片を意味する。「抗体の抗原結合断片」としては、例えば、Fab、F(ab’)2、scFv、Fab’、Fv、single-domain antibody(sdAb)等の抗原結合断片を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。かかる抗体の抗原結合断片は、抗体蛋白質の全長分子をパパイン、ペプシン等の酵素で処理することによって得られたものに加え、組換え遺伝子を用いて適当な宿主細胞において産生された組換え蛋白質であってもよい。本発明において、「抗体の結合断片」は「抗体の抗原結合断片」と同義である。
【0051】
本発明において、抗体が結合する「部位」、すなわち抗体が認識する「部位」とは、抗体が結合又は認識する抗原上の部分ペプチド又は部分高次構造を意味する。
【0052】
本発明においては、かかる部位のことをエピトープ、抗体の結合部位とも呼ぶ。本発明において、「変異抗体」とは、元の抗体が有するアミノ酸配列においてアミノ酸が置換、欠失、付加(付加には挿入が含まれる)(以下、「変異」と総称する)してなるアミノ酸配列を有し、且つ本発明のHLA/NY-ESOに結合するポリペプチドを意味する。かかる変異抗体における変異アミノ酸の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、40又は50個である。かかる変異抗体も本発明の「抗体」に包含される。
【0053】
本発明において、「1又は数個」における「数個」とは、2~10個を指す。
本明細書中において、「分子」は、上述の抗体、抗体の抗原結合断片を含む分子であり、さらに抗体又はそれらに由来する複数の抗原結合断片より形成された多重特異的である分子を含む。
【0054】
本明細書中において、「多重特異的である分子」、「多重特異的(な)分子」及び「多重特異性分子」は同義であり、1つの分子上の複数の互いに異なるエピトープ、及び/又は、2つ以上の分子上の互いに異なるエピトープに結合することが可能な分子であれば特に限定されない。多重特異的である分子としては、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体も含まれる。このような多重特異的な分子には、異なる2種類以上の重鎖及び軽鎖を有する完全長抗体分子、すなわちIgG型多重特異性分子、及び2種類以上のVL及びVHを有する抗原結合断片からなる分子、すなわち、Fab、Fab’、Fv、scFv、sdAb等を組合せて派生する分子、すなわちtandem scFv、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ、トリアボディ等を含むが、これらに限定されない。その他抗原結合断片に免疫グロブリン骨格を有さないで抗原結合性を有する蛋白質を遺伝子的、あるいは化学的に連結させることにより生じる分子も多重特異性分子として含まれる。本発明においては、このような多重特異性分子を、抗体又はその抗原結合断片を含まない場合を除き、「多重特異的抗体」、「多重特異性抗体」等とも呼ぶことがある。
【0055】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又は該抗体の抗原結合断片、あるいは、本発明の分子が奏する活性・性質としては、例えば、生物学的活性、物理化学的性質(物性ともいう)等を挙げることができ、具体的には、細胞傷害活性、ADCC活性、抗腫瘍活性(いずれも後述)等の各種生物活性、抗原やエピトープに対する結合活性、製造や保存時における安定性、熱安定性等の物性をあげることができる。
【0056】
本発明において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、5×SSCを含む溶液中で65℃にてハイブリダイゼーションを行い、ついで2×SSC-0.1%SDSを含む水溶液中で65℃にて20分間、0.5×SSC-0.1%SDSを含む水溶液中で65℃にて20分間、並びに、0.2×SSC-0.1%SDSを含む水溶液中で65℃にて20分間、それぞれ洗浄する条件又はそれと同等の条件でハイブリダイズすることを意味する。SSCとは150mMNaCl-15mMクエン酸ナトリウムの水溶液であり、n×SSCはn倍濃度のSSCを意味する。
【0057】
本発明において「細胞傷害」とは、何らかの形で、細胞に病理的な変化をもたらすことを指し、直接的な外傷にとどまらず、DNAの切断や塩基の二量体の形成、染色体の切断、細胞分裂装置の損傷、各種酵素活性の低下などあらゆる細胞の構造や機能上の損傷を意味する。本発明において「細胞傷害活性」とは上記細胞傷害を引き起こすことを意味する。
【0058】
本発明において「抗体依存性細胞傷害活性」とは、「antibody dependent cellular cytotoxicity(ADCC)活性」を指し、NK細胞が抗体を介して腫瘍細胞等の標的細胞を傷害する作用活性を意味する。
【0059】
本発明において「T細胞リダイレクションによる細胞傷害活性」とは抗腫瘍抗原抗体と抗HLA/NY-ESO抗体とを含む多重特異的な分子を介して上記細胞傷害を引き起こすことを意味する。すなわち抗腫瘍抗原抗体が標的腫瘍細胞と結合し、抗HLA/NY-ESO抗体がT細胞に結合することにより標的腫瘍細胞とT細胞の距離を近づけ、T細胞活性化を介して細胞傷害を誘導することを意味する。該分子は、医薬組成物に含めることができる。
【0060】
2.抗原
2-1.HLA/NY-ESO抗原
本発明において、「HLA/NY-ESO」は、HLA/NY-ESO蛋白質と同じ意味で用いられる。
【0061】
HLA/NY-ESOは、HLA-A2、β2-Microglobulin、NY-ESOペプチドの三者複合体である。HLA-A2はHLAのアレルの一種であり、Caucasianで最も頻度の高いアレルとして知られる。HLAは、細胞の小胞体内でβ2-microglobulinと自己蛋白のペプチド断片の三者複合体を形成して細胞外に提示し、T細胞のTCR(T Cell Receptor)に認識を受ける。NY-ESOペプチド(SLLMWITQC:配列番号1、
図8)は、NY-ESO-1、LAGE-1の157番目から165番目の9アミノ酸からなるペプチドであり、HLA-A2に提示されることが報告されている。
【0062】
2-2.CD3抗原
本発明において、「CD3」は、CD3蛋白質と同じ意味で用いている。
CD3は、多分子T細胞レセプター複合体の一部分としてT細胞上に発現され、γ鎖、δ鎖、ε鎖、ζ鎖、η鎖の5種類のポリペプチド(分子量は順に25000-28000、21000、20000、16000、22000)の複合体である。
【0063】
CD3複合体としては、γ、δ、ε、ζ、η鎖が挙げられる。これらはサブユニットとも称される。抗CD3抗体がT細胞に結合することにより、T細胞活性化を介して細胞傷害を誘導する。多くの抗CD3抗体は、CD3εに結合する。
【0064】
ヒトCD3εをコードするcDNAのヌクレオチド配列は、NCBI/GenBankにアクセッション番号:NM_000733(NM_000733.3)で、ヒトCD3εのアミノ酸配列はNCBI/GenPeptにアクセッション番号:NP_000724(NM_000724.1)で、それぞれ登録されている。カニクイザルCD3をコードするcDNAのヌクレオチド配列は、GenBankにアクセッション番号:NM_001283615.1で登録されている。ヒトCD3εのアミノ酸配列は配列表の配列番号151(
図147)に記載されている。
【0065】
2-3.抗原の調製
本発明で用いる上述の抗原蛋白質;HLA/NY-ESO、CD3(以下、HLA/NY-ESO、CD3をまとめて、該抗原蛋白質とも記す)は、動物組織(体液を含む)、該組織由来の細胞若しくは該細胞培養物からの精製及び単離、遺伝子組換え、インビトロ翻訳、化学合成等により調製することができる。
【0066】
該抗原蛋白質のcDNAは、例えば、該抗原蛋白質のmRNAを発現している臓器のcDNAライブラリーを鋳型として、該抗原蛋白質のcDNAを特異的に増幅するプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下「PCR」という)(Saiki,R. K.,et al.,Science(1988)239,487-49)を行う、いわゆるPCR法により取得することができる。
【0067】
ヒト又はラットに発現している該抗原蛋白質をコードするヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、該抗原蛋白質と同等の生物活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドも、該抗原蛋白質のcDNAに含まれる。
【0068】
さらに、ヒト又はラットに発現している該抗原蛋白質遺伝子座から転写されるスプライシングバリアント又はこれにストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、且つ、該抗原蛋白質と同等の生物活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドも、該抗原蛋白質のcDNAに含まれる。
【0069】
ヒト又はラットの該抗原蛋白質のアミノ酸配列、又はこれらの配列からシグナル配列が除かれたアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸が、置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列からなり、該抗原蛋白質と同等の生物活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列も、該抗原蛋白質遺伝子のヌクレオチド配列に含まれる。
【0070】
ヒト又はラットの該抗原蛋白質の遺伝子座から転写されるスプライシングバリアントにコードされるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が、置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、該抗原蛋白質と同等の生物活性を有する蛋白質も、該抗原蛋白質に含まれる。
【0071】
2-4 抗原蛋白質への結合特異性
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体及びその抗原結合断片等は、HLA/NY-ESOを認識する。すなわち、HLA/NY-ESO抗原に結合する。HLA/NY-ESOは、マウス、ラット、カニクイサル等の非ヒト動物における存在は知られていない。
【0072】
本発明の多重特異的分子に含まれる抗CD3抗体及びその結合断片等は、CD3抗原を認識、すなわち、結合する。かかる抗CD3抗体等は、好適には、ヒトCD3、サルCD3等に結合し、より好適には、ヒトCD3及びカニクイザルCD3に結合する。一方、かかる好適な抗CD3抗体は、ラット及び/又はマウスのCD3には結合しない。
【0073】
本発明の多重特異的分子の抗腫瘍活性は、例えば、(i)ヒト末梢血リンパ細胞を移植した非ヒト動物、好適にはラット又はマウス、より好適には内在性のエフェクター機能が不全のラット又はマウス(例えば、免疫不全のラット又はマウス)に、ヒトがん細胞、ヒトがん組織等を移植して、あるいは(ii)ヒトCD3遺伝子をノックインした非ヒト動物、好適にはラット又はマウスに、HLA及びNY-ESOを遺伝子導入したマウスがん細胞等を移植して、評価することができる。かかる免疫不全動物やノックイン動物を使用して評価を行うことにより、各種アッセイ、免疫組織化学等を、マウス及び/又はラットの生体を利用して実施することができ、そのことは本発明の多重特異的分子を含む医薬、非臨床開発等において好ましい。
本発明において「認識」、すなわち「結合」とは、非特異的な吸着ではない結合を意味する。認識しているか否か、すなわち、結合しているか否の判定基準としては、例えば、解離定数(Dissociation Constant:以下、「KDという」)を挙げることができる。本発明の好適な抗体等のHLA/NY-ESO又はCD3に対するKD値は、1×10-5M以下、5×10-6M以下、2×10-6M以下、1×10-6M以下であり、HLA/NY-ESOに対する好適なKD値は、5×10-7M以下、2×10-7M以下、1×10-7M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、1×10-8M以下、5×10-9M以下、又は2×10-9M以下であり、より好適には1×10-9M以下である。優れた抗原結合活性を有する本発明の抗HLA/NY-ESO scFvとして、NYA-1143、NYA-2023、NYA-2143、NYA-2044、NYA-2045、NYA-2060、NYA-2061、NYA-3061を例示することができ、NYA-1143、NYA-2044、NYA-2045及びNYA-2143等のHLA/NY-ESOに対するKD値は1×10-9M以下である(実施例4等)。
【0074】
本発明における抗原と抗体の結合は、SPR法、BLI法等の生体分子間相互作用解析システム、あるいはELISA法、RIA法等により測定又は判定することができる。細胞表面上の発現している抗原と抗体との結合は、フローサートメトリー法等により測定することができる。
【0075】
SPR法(Surface Plasmon Resonance解析法)は、反応速度論的(カイネティクス)解析により結合速度定数(Ka値)と解離速度定数(Kd値)を計測することによりアフィニティーの指標となる解離定数(KD値)等を求める分析手法として用いられている。SPR解析に用いる機器としては、Biacore(商標)(GEヘルスケア社製)、ProteOn(商標)(BioRad社製)、SPR-Navi(商標)(BioNavis社製)、Spreeta(商標)(Texas Instruments社製)、SPRi-PlexII(商標)(ホリバ社製)、Autolab SPR(商標)(Metrohm社製)等を例示することができる。
【0076】
BLI法(BioLayer Interferometry)は、バイオレイヤー干渉を用いた生体分子間相互作用を計測する方法である。BLI法を用いた相互作用解析に用いる機器としては、Octetシステム(Pall ForteBio社製)等を例示することができる。
【0077】
ELISA(Enzyme-linked ImmunoSorbent Assay)法は、試料溶液中に含まれる目的の抗原あるいは抗体を、特異抗体あるいは抗原で捕捉するとともに、酵素反応を利用して検出・定量する方法である。酵素標識した抗原あるいは抗体を反応系に組込んで、酵素活性を検出する。酵素活性の検出には、反応によって吸光スペクトルが変化する基質が用いられ、吸光度測定で数値化する。
【0078】
Cell-ELISAでは、細胞表面にある測定対象を細胞ごと捕捉するとともに、酵素反応を利用して検出・定量する方法である。
【0079】
RIA法(Radio Immunoassay法)では、放射性物質を使って抗体を標識し、抗体からの放射能を測定することで、抗体の定量をすることができる。
【0080】
フローサイトメトリー法は、細胞を流体中に分散させ、その流体を細く流して、個々の細胞を光学的に分析する手法である。蛍光色素で標識された抗体が、抗原抗体反応により細胞表面抗原に結合し、細胞に結合した標識された抗体による蛍光強度を測定することにより、抗体の抗原結合性を定量する。
【0081】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体等のうち、優れた抗原結合特異性を有するものとして、抗HLA/NY-ESO scFvであるNYA-0001、NYA-1143、NYA-1163、NYA-2023、NYA-2027、NYA-2035、NYA-2044、NYA-2045、NYA-2047、NYA-2048、NYA-2060、NYA-2061、NYA-2143及びNYA-3061を例示することができる(実施例6等)。
【0082】
3.HLA/NY-ESOに特異的に結合する抗体又はその結合断片
3-1 抗HLA/NY-ESO又はその結合断片
本発明は、HLA/NY-ESOを認識し結合する抗体又はその結合断片を提供する。
【0083】
前述の通り、HLA/NY-ESOは、HLA-A2と9merのNY-ESOペプチド(SLLMWITQC:配列番号1)を含む複合体である。NY-ESOペプチドは、細胞内タンパク質でありCancer-Testis抗原であるNY-ESO-1又はLAGE-1由来のペプチドである。HLA/NY-ESOは、がん細胞表面に提示される。
【0084】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体及び該抗体の抗原結合断片(以下、本発明の抗体等とも記す)は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれであってもよい。本発明のモノクローナル抗体のアイソタイプは、特に限定されるものではなく、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等のIgG、IgM、IgA1、IgA2等のIgA、IgD、Ig等をあげることができる。モノクローナル抗体のアイソタイプ及びサブクラスは、例えば、オクテロニー法、ELISA法、RIA法等で決定することができる。本発明のモノクローナル抗体としては、非ヒト動物由来の抗体(非ヒト動物抗体)、ヒト抗体、キメラ化抗体(「キメラ抗体」ともいう)、ヒト化抗体などを挙げることができ、好ましくはヒト抗体を用いることができる。本発明の抗体の範囲には、抗体の変異体(後述の「変異抗体」)も含まれ、例えば、ヒト抗体の範囲には、ヒト変異抗体も含まれる。
【0085】
非ヒト動物抗体としては、哺乳類、鳥類等の脊椎動物に由来する抗体などを挙げることができる。哺乳類由来の抗体としては、マウス抗体、ラット抗体などのげっ歯類由来の抗体などを挙げることができる。鳥類由来の抗体としては、ニワトリ抗体等を挙げることができる。
【0086】
キメラ化抗体としては、非ヒト動物抗体由来の可変領域とヒト抗体(ヒト免疫グロブリン)定常領域とを結合してなる抗体などを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0087】
ヒト化抗体としては、非ヒト動物抗体の可変領域中のCDRをヒト抗体(ヒト免疫グロブリンの可変領域)に移植したもの、CDRに加え非ヒト動物抗体のフレームワーク領域の配列も一部ヒト抗体に移植したもの、それらのいずれかの非ヒト動物抗体由来の1つ又は2つ以上のアミノ酸をヒト型のアミノ酸で置換したものなどを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0088】
抗体は、公知の種々の方法で作製することができる。公知の方法として、ハイブリドーマを用いる方法や細胞免疫法等により作製し、遺伝子組換えの手法により作製することができる。また、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得する方法も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域をscFvとしてファージ表面に発現させて、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法を用いることができる。抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクターを作製し、適当な宿主に導入して発現させることによりヒト抗体を取得することができる(WO92/01047,WO92/20791,WO93/06213,WO93/11236,WO93/19172,WO95/01438,WO95/15388、Annu.Rev.Immunol(1994)12,433-455)。
【0089】
このようにして得られた高活性を有する抗体をリード抗体として用い、該リード抗体をコードする遺伝子を変異させて、より高活性の変異体(後述の「変異抗体」)を作製することもできる。
【0090】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の重鎖に含まれるCDRH1~CDRH3としては、好適には、配列番号54(
図61)で表されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号55(
図61)で表されるアミノ酸配列からなるCDRH2、並びに、列番号56(
図61)で表されるアミノ酸配列、若しくは、配列番号56(
図61)で表されるアミノ酸配列において6番目のアミノ酸がN(Asn)であるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3の組合せをあげることができる。より好適には、配列番号6(
図13)で表されるアミノ酸配列からなるNYA-0001重鎖可変領域、配列番号18(
図25)で表されるアミノ酸配列からなるNYA-0082重鎖可変領域、配列番号27(
図34)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2023重鎖可変領域、配列番号28(
図35)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2027重鎖可変領域、配列番号29(
図36)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-1143重鎖可変領域、配列番号26(
図33)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-1163重鎖可変領域、配列番号27(
図34)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2023重鎖可変領域、配列番号28(
図35)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2027重鎖可変領域、配列番号36(
図43)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2035重鎖可変領域、配列番号47(
図54)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2044重鎖可変領域、配列番号48(
図55)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2045重鎖可変領域、配列番号50(
図57)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2047重鎖可変領域、配列番号51(
図58)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2048重鎖可変領域、配列番号52(
図59)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2060重鎖可変領域、配列番号53(
図60)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2061重鎖可変領域、又は、配列番号30(
図37)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-2143重鎖可変領域に含まれるCDRH1~CDRH3の組合せをあげることができる。
さらに、配列番号156(
図152)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140からなるNYA-3061重鎖可変領域に含まれるCDRH1~CDRH3の組合せをあげることができる。
【0091】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の軽鎖に含まれるCDRL1~CDRL3としては、好適には、配列番号57(
図61)で表されるアミノ酸配列、若しくは、配列番号57(
図61)で表されるアミノ酸配列において7番目のアミノ酸がW(Trp)若しくは8番目のアミノ酸がK(Lys)であるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号58(
図61)で表されるアミノ酸配列からなるCDRL2、並びに、配列番号59(
図61)で表されるアミノ酸配列、若しくは、配列番号59(
図61)で表されるアミノ酸配列において2番目のアミノ酸がA(Ala)若しくはS(Ser)であるアミノ酸配列からなるCDRL3の組合せをあげることができる。
【0092】
より好適には、配列番号8(
図15)で表されるアミノ酸配列からなるNYA-0001軽鎖可変領域、配列番号20(
図27)で表されるアミノ酸配列からなるNYA-0082軽鎖可変領域、配列番号29(
図36)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-1143軽鎖可変領域、配列番号26(
図33)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-1163軽鎖可変領域、配列番号27(
図34)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2023軽鎖可変領域、配列番号28(
図35)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2027軽鎖可変領域、配列番号36(
図43)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2035軽鎖可変領域、配列番号47(
図54)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2044軽鎖可変領域、配列番号48(
図55)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2045軽鎖可変領域、配列番号50(
図57)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2047軽鎖可変領域、配列番号51(
図58)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2048軽鎖可変領域、配列番号52(
図59)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2060軽鎖可変領域、配列番号53(
図60)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2061軽鎖可変領域、又は、配列番号30(
図37)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266からなるNYA-2143軽鎖可変領域に含まれるCDRL1~CDRL3の組合せをあげることができる。
さらに、配列番号156(
図152))で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号161~271からなるNYA-3061軽鎖可変領域に含まれるCDRL1~CDRL3の組合せをあげることができる。
【0093】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の重鎖に含まれるCDRH1~CDRH3及び軽鎖に含まれるCDRL1~CDRL3としては、好適には、配列番号54(
図61)で表されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号55(
図61)で表されるアミノ酸配列からなるCDRH2、配列番号56(
図61)で表されるアミノ酸配列、若しくは、配列番号56(
図61)で表されるアミノ酸配列において6番目のアミノ酸がN(Asn)であるアミノ酸配列からなる重鎖CDRH3、配列番号57(
図61)で表されるアミノ酸配列、若しくは、配列番号57(
図61)で表されるアミノ酸配列において7番目のアミノ酸がN(Asn)及び/若しくは8番目のアミノ酸がK(Lys)であるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号58(
図61)で表されるアミノ酸配列からなるCDRL2、並びに、配列番号59(
図61)で表されるアミノ酸配列、若しくは、配列番号59で表されるアミノ酸配列において2番目のアミノ酸がA(Ala)若しくはS(Ser)であるアミノ酸配列からなるCDRL3の組合せをあげることができる。より好適には、配列番号6及び8でそれぞれ表されるアミノ酸配列からなるNYA-0001重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号29(
図36)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-1143重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号26(
図33)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-1163重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号27(
図34)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2023重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号28(
図35)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2027重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号36(
図43)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2035重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号47(
図54)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2044重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号48(
図55)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2045重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号50(
図57)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2047重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号51(
図58)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2048重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号52(
図59)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2060重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、配列番号53(
図60)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2061重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、又は、配列番号30(
図37)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び156~266からなるNYA-2143重鎖可変領域及び軽鎖可変領域に、それぞれ含まれるCDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3の組合せをあげることができる。
さらに、配列番号156(
図152)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140及び161~271からなるNYA-3061重鎖可変領域及び軽鎖可変領域に、それぞれ含まれるCDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3の組合せをあげることができる。
【0094】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域としては、上記重鎖CDR又はそれらの組合せを含むものを、好適な例としてあげることができ、より好適には、NYA-0001重鎖可変領域、NYA-0082重鎖可変領域、NYA-1143重鎖可変領域、NYA-1163重鎖可変領域、NYA-2023重鎖可変領域、NYA-2027重鎖可変領域、NYA-2035重鎖可変領域、NYA-2044重鎖可変領域、NYA-2045重鎖可変領域、NYA-2047重鎖可変領域、NYA-2048重鎖可変領域、NYA-2060重鎖可変領域、NYA-2061重鎖可変領域、NYA-2143重鎖可変領域、及び、NYA-3061重鎖可変領域を例示することができる。それぞれの重鎖可変領域のアミノ酸配列は上記のとおりである。
【0095】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の軽鎖可変領域としては、上記軽鎖CDR又はそれらの組合せを含むものを、好適な例としてあげることができ、より好適には、NYA-0001軽鎖可変領域、NYA-0082軽鎖可変領域、NYA-1143軽鎖可変領域、NYA-1163軽鎖可変領域、NYA-2023軽鎖可変領域、NYA-2027軽鎖可変領域、NYA-2035軽鎖可変領域、NYA-2044軽鎖可変領域、NYA-2045軽鎖可変領域、NYA-2047軽鎖可変領域、NYA-2048軽鎖可変領域、NYA-2060軽鎖可変領域、NYA-2061軽鎖可変領域、NYA-2143軽鎖可変領域、及び、NYA-3061軽鎖可変領域を例示することができる。それぞれの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は上記のとおりである。
【0096】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域としては、上記重鎖及び軽鎖のCDR又はそれらの組合せを含むものを、好適な例としてあげることができ、より好適には、NYA-0001重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-0082重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-1143重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-1163重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2023重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2027重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2035重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2044重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2045重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2047重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2048重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2060重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、NYA-2061重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、及び、NYA-2143重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、及び、NYA-3061重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを例示することができる。
【0097】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の重鎖としては、上記好適又はより好適な重鎖可変領域を含むものを、好適な例としてあげることができ、より好適には、NYA-0001重鎖、NYA-0082重鎖、NYA-1143重鎖、NYA-1163重鎖、NYA-2023重鎖、NYA-2027重鎖、NYA-2035重鎖、NYA-2044重鎖、NYA-2045重鎖、NYA-2047重鎖、NYA-2048重鎖、NYA-2060重鎖、NYA-2061重鎖、NYA-2143重鎖、及び、NYA-3061重鎖を例示することができる。
【0098】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の軽鎖としては、上記好適又はより好適な軽鎖可変領域を含むものを、好適な例としてあげることができ、より好適には、NYA-0001軽鎖、NYA-0082軽鎖、NYA-1143軽鎖、NYA-1163軽鎖、NYA-2023軽鎖、NYA-2027軽鎖、NYA-2035軽鎖、NYA-2044軽鎖、NYA-2045軽鎖、NYA-2047軽鎖、NYA-2048軽鎖、NYA-2060軽鎖、NYA-2061軽鎖、NYA-2143軽鎖、及び、NYA-3061軽鎖を例示することができる。
【0099】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の重鎖及び軽鎖としては、上記好適又はより好適な重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をそれぞれ含むものを、好適な例としてあげることができ、より好適には、NYA-0001、NYA-1143、NYA-1163、NYA-2023、NYA-2027、NYA-2035、NYA-2044、NYA-2045、NYA-2047、NYA-2048、NYA-2060、NYA-2061、NYA-2143、及びNYA-3061の重鎖及び軽鎖の組合せを例示することができる。
【0100】
抗体の抗原結合断片とは、該抗体の有する機能のうち少なくとも抗原結合性を保持する断片又はその修飾物を意味する。かかる抗体の機能としては、一般的には、抗原結合活性、抗原の活性を調節する活性、抗体依存性細胞傷害活性及び補体依存性細胞傷害活性等を挙げることができる。本発明の抗体等及び本発明の抗体等を含む多重特異的な分子とした場合の機能としては、例えばT細胞のリダイレクション、T細胞の活性化、T細胞を活性化することによるがん細胞の細胞傷害活性を挙げることができる。
【0101】
抗体の抗原結合断片としては、該抗体の有する活性のうち少なくとも抗原結合性を保持している該抗体の断片であれば特に限定されないが、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、重鎖及び軽鎖のFvを適当なリンカーで連結させた一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、等を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。リンカー部分を保有するscFvのように、本発明の抗体の抗原結合断片以外の部分を含む分子も、本発明の抗体の抗原結合断片の意味に包含される。
【0102】
抗体蛋白質のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端のアミノ酸が1若しくは数個又はそれ以上を欠失してなり、且つ該抗体の有する機能の少なくとも一部を保持している分子も、抗体の抗原結合断片の意味に包含される。そのような抗体の抗原結合断片の修飾体も、本発明の抗体若しくはその抗原結合断片、又はその修飾体(後述)に包含される。
【0103】
本発明の抗体又はその抗原結合断片の一つの態様は、scFvである。scFvは、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをポリペプチドのリンカーで連結することにより得られる(Pluckthun A.The Pharmacology of Monoclonal Antibodies113,Rosenburg及びMoore編,Springer Verlag,New York,269-315(1994),Nature Biotechnology(2005),23,1126-1136)。また、2つのscFvをポリペプチドリンカーで結合させて作製されるタンデムscFvも二重特異性分子として使用することができる。さらに3つ以上のscFvより成るトリアボディ等も多重特異性分子として使用することができる。
【0104】
HLA/NY-ESOに特異的なscFv(「抗HLA/NY-ESO scFv」とも呼ばれる)としては、好適には上記CDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3を含むもの、より好適には上記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むもの、より一層好適にはNYA-0001(配列番号70(
図71)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-0082(配列番号18(
図25)で表されるアミノ酸配列及び配列番号20(
図27で表されるアミノ酸配列を含む)、NYA-1143(配列番号29(
図36)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-1163(配列番号26(
図33)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2023(配列番号27(
図34)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2027(配列番号28(
図35)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2035(配列番号36(
図43)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2044(配列番号47(
図54)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2045(配列番号48(
図55)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2047(配列番号50(
図57)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2048(配列番号51(
図58)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2060(配列番号52(
図59)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、NYA-2061(配列番号53(
図60)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)、及び、NYA-2143(配列番号30(
図37)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~266)をそれぞれ例示することができる。さらに、NYA-3061(配列番号156(
図152)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~271)を例示することができる。
【0105】
抗HLA/NY-ESO scFvの好適な態様にはカルボキシル末端側にFLAG-Hisタグが融合したもの(単に「タグ付加体」とも呼ばれる)が含まれる。好適なタグ付加体としては、NYA-0001タグ付加体(配列番号70(
図71)のアミノ酸番号20~292)、NYA-1143タグ付加体(配列番号29(
図36)のアミノ酸番号20~292)、NYA-1163タグ付加体(配列番号26(
図33)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2023タグ付加体(配列番号27(
図34)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2027タグ付加体(配列番号28(
図35)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2035タグ付加体(配列番号36(
図43)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2044タグ付加体(配列番号47(
図54)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2045タグ付加体(配列番号48(
図55)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2047タグ付加体(配列番号50(
図57)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2048タグ付加体(配列番号51(
図58)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2060タグ付加体(配列番号52(
図59)のアミノ酸番号20~292)、NYA-2061タグ付加体(配列番号53(
図60)のアミノ酸番号20~292)、及び、NYA-2143タグ付加体(配列番号30(
図37)のアミノ酸番号20~292)をあげることができる。
【0106】
それらのうち、NYA-2023及びそのタグ付加体、NYA-2047及びそのタグ付加体、NYA-2048及びそのタグ付加体、NYA-2060及びそのタグ付加体、並びに、NYA-2061及びそのタグ付加体は、Fc付加型二重特異性分子において、優れた生物活性、物性等を有し、より好適である。
【0107】
また、抗HLA/NY-ESO scFv及びそのタグ付加体を宿主細胞において発現させる場合、そのアミノ末端にシグナルペプチドを付加させることができる。シグナルペプチドが付加した抗HLA/NY-ESO scFvタグ付加体のアミノ酸配列としては、配列番号70、29、26~28、36、47、48、50~53及び30(
図71、36、33~35、43、54、55、57~60及び37)をあげることができる。
【0108】
scFvは、抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージ表面に発現させて、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法(Nature Biotechnology(2005),23,(9),p.1105-1116)により取得することができる。抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクターを作製し、適当な宿主に導入して発現させることによりヒト抗体を取得することができる(WO92/01047、WO92/20791、WO93/06213、WO93/11236、WO93/19172、WO95/01438、WO95/15388、Annu.Rev.Immunol(1994)12,p.433-455、Nature Biotechnology(2005)23(9),p.1105-1116)。
【0109】
本発明の抗体は、単一の重鎖可変領域を有し、軽鎖配列を有さない抗体であってもよい。このような抗体は、単一ドメイン抗体(single domain antibody:sdAb)又はナノボディ(nanobody)と呼ばれており、抗原結合能が保持されていることが報告されている(Muyldemans S.et.al.,Protein Eng.,(1994)7(9),1129-35,Hamers-Casterman C.et.al.,Nature(1993)363(6428),446-448)。これらの抗体も、本発明における抗体の抗原結合断片の意味に包含される。
【0110】
また、本発明には、抗体の重鎖及び軽鎖の全長配列を適切なリンカーを用いて連結した一本鎖イムノグロブリン(single chain immunoglobulin)が含まれる(Lee,H-S,et.al.,Molecular Immunology(1999)36,61-71;Shirrmann,T.et.al.,mAbs(2010),2(1),1-4)。このような一本鎖イムノグロブリンは二量体化することによって、本来は四量体である抗体と類似した構造と活性を保持することが可能である。本発明の抗HLA/NY-ESO抗体は、一本鎖イムノグロブリンであってもよい。
本発明のscFvにおいて、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がジスルフィド結合していてもよい。
【0111】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体は、HLA/NY-ESOに結合すれば、複数の異なる抗体に由来する部分から構成される抗体であってもよく、例えば、複数の異なる抗体間で重鎖及び/又は軽鎖を交換したもの、重鎖及び/又は軽鎖の全長を交換したもの、可変領域のみ又は定常領域のみを交換したもの、CDRの全部又は一部のみを交換したもの等を挙げることができる。キメラ化抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、異なる本発明の抗HLA/NY-ESO抗体に由来してもよい。ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域中の重鎖CDR1乃至重鎖CDR3並びに軽鎖CDR1乃至軽鎖CDR3は、2種又はそれ以上の本発明の抗HLA/NY-ESO抗体に由来してもよい。ヒト抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域中の重鎖CDR1乃至重鎖CDR3並びに軽鎖CDR1乃至軽鎖CDR3は、2種又はそれ以上の本発明の抗HLA/NY-ESO抗体が有するCDRの組合せであってもよい。
【0112】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体には、本発明の抗HLA/NY-ESO抗体に含まれるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含み、且つ、HLA/NY-ESOに結合する抗体も含まれる。
【0113】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域に含まれるアミノ酸配列(好適には、配列番号27で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140のアミノ酸配列、配列番号38で表されるアミノ酸配列、配列番号39で表されるアミノ酸配列、又は、配列番号160、配列番号197もしくは配列番号198で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号21~140のアミノ酸配列)、及び/又、軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸配列(好適には、配列番号27で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266のアミノ酸配列、配列番号52で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266のアミノ酸配列、配列番号40で表されるアミノ酸配列、配列番号160で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号161~271のアミノ酸配列、又は、配列番号197もしくは配列番号198で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号156~266のアミノ酸配列)と、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上同一のアミノ酸配列を含み、且つHLA/NY-ESOに結合する抗体又はその抗原結合断片であってもよい。
【0114】
軽鎖可変領域の位置と長さは、IMGTの定義により決定する場合と比べ、IMGTとは異なる定義(例えば、Kabat、Chothia、AbM,contact等)を用いて決定した場合、IMGTの定義により決定した該軽鎖可変領域アミノ酸配列のカルボキシル末端に、さらに、1つ又は2つ以上のアミノ酸、例えば、アルギニンやグリシンが含まれることがある。このような軽鎖可変領域を有する抗体又はその結合断片も本発明の抗体又はその結合断片に包含される。
【0115】
本発明の抗体等としては、本発明の抗HLA/NY-ESO抗体の結合断片に変異を導入して、HLA/NY-ESO、特にヒト及び/又はカニクイザルのHLA/NY-ESOに対する結合能を最適化させたものであってもよい。変異を導入する具体的な方法として、エラープローンPCR法を用いたランダム突然変異誘発法、NNKライブラリーを用いた部位特異的アミノ酸変異導入、構造情報を利用した部位特異的変異導入、及びそれら組合せを挙げることができる。
【0116】
3-2.抗HLA/NY-ESO抗体の変異体(変異抗体)
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体の変異抗体には、好適には、蛋白質の分解若しくは酸化に対する感受性の低下、生物活性や機能の維持、改善若しくは低下や変化の抑制、抗原結合能の改善若しくは調節、又は物理化学的性質若しくは機能的性質の付与等がなされ得る。蛋白質は、その表面にある特定のアミノ酸側鎖が変化して当該蛋白質の機能や活性が変化することが知られ、そのような例には、アスパラギン側鎖の脱アミド化、アスパラギン酸側鎖の異性化等が含まれる。そのようなアミノ酸側鎖の変化を防ぐために別のアミノ酸に置き換えたものも、本発明の変異抗体の範囲に含まれる。
【0117】
本発明の変異抗体の例として、抗体の有するアミノ酸配列において保存的アミノ酸置換されてなるアミノ酸配列を有する抗体を挙げることができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸側鎖に関連のあるアミノ酸グループ内で生じる置換である。
【0118】
好適なアミノ酸グループは、以下の通りである:酸性グループ=アスパラギン酸、グルタミン酸;塩基性グループ=リジン、アルギニン、ヒスチジン;非極性グループ=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び非帯電極性ファミリー=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。他の好適なアミノ酸グループは次のとおりである:脂肪族ヒドロキシグループ=セリン及びスレオニン;アミド含有グループ=アスパラギン及びグルタミン;脂肪族グループ=アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;並びに芳香族グループ=フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン。かかる変異抗体におけるアミノ酸置換は、元の抗体が有する抗原結合活性を低下させない範囲で行うのが好ましい。
【0119】
NYA-2023等の本発明の抗体が有するアミノ酸配列において保存的アミノ酸置換及び/又はその他の変異がなされたアミノ酸配列を有し、且つ、HLA/NY-ESOに結合する変異抗体、それらの抗原結合断片、それらを含む分子等;NYA-2023等を含む本発明の抗体由来のCDRH1乃至CDRH3及びCDRL1乃至CDRL3のいずれかのアミノ酸配列において保存的アミノ酸置換及び/又はその他の変異がなされたアミノ酸配列を有し、且つ、HLA/NY-ESOに結合する該CDRを含むキメラ化抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、それらの抗原結合断片、それらを含む分子等も本発明の抗HLA/NY-ESO抗体、その抗原結合断片、その変異体(変異抗体又はその抗原結合断片)、又は本発明の分子に包含される。
【0120】
3-3.抗HLA/NY-ESO抗体の結合断片
本発明の一つの態様として、本発明の抗HLA/NY-ESO抗体の抗原結合断片(以下、単に「結合断片」という)を提供する。本発明の抗HLA/NY-ESO抗体の結合断片には、キメラ化抗体、ヒト化抗体、又は、ヒト抗体の結合断片が包含される。抗体の結合断片とは、該抗体の有する機能のうち少なくとも抗原結合性を保持する断片又はその修飾物を意味する。かかる抗体の機能としては、一般的には、抗原結合活性、抗原の活性を調節する活性(例えばアゴニスト活性)、抗原を細胞内に内在化させる活性、抗原と相互作用する物質との相互作用を阻害若しくは促進する活性等を挙げることができる。
【0121】
抗体の結合断片としては、該抗体の有する活性のうち少なくとも抗原結合性を保持している該抗体の断片であれば特に限定されない。このような抗体の結合断片として、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab軽鎖のカルボキシル末端とFab重鎖のアミノ末端とが適当なリンカーで連結された一本鎖Fab(scFab)、Fv、重鎖及び軽鎖のFvが適当なリンカーで連結された一本鎖Fv(scFv)、単一の重鎖可変領域を有し軽鎖配列を有さない単一ドメイン抗体(sdAb)、又はナノボディ(nanobody)とも呼ばれる。(Muyldemans S.et.al.,Protein Eng.,(1994)7(9),1129-35,Hamers-Casterman C.et.al.,Nature(1993)363(6428),446-448)]等を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。リンカー部分を保有するscFab、scFvのように、本発明の抗体の結合断片以外の部分を含む分子も、本発明の抗体の結合断片の意味に包含される。
【0122】
3-4.抗HLA/NY-ESO抗体又はその結合断片の修飾体、複合体
本発明は、抗体又はその結合断片の修飾体を提供する。本発明の抗体又はその結合断片の修飾体とは、本発明の抗体又はその結合断片に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖の化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合への糖鎖付加、アミノ末端領域又はカルボキシル末端領域のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによりアミノ末端にメチオニン残基が付加したもの等が含まれる。また、本発明の抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティー標識体もかかる修飾物の意味に含まれる。このような本発明の抗体又はその結合断片の修飾物は、元の本発明の抗体又はその結合断片の安定性及び血中滞留性の改善、抗原性の低減、かかる抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
【0123】
化学的修飾体に含まれる化学部分としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを例示することができる。
【0124】
生物学的な修飾物としては、酵素処理や細胞処理等により修飾が施されたもの、遺伝子組換えによりタグ等他のペプチドが付加された融合体、並びに内因性又は外来性の糖鎖修飾酵素を発現する細胞を宿主として調製されたもの等を挙げることができる。
【0125】
かかる修飾は、抗体又はその結合断片における任意の位置に、又は所望の位置において施されてもよく、1つ又は2つ以上の位置に同一又は2種以上の異なる修飾がなされてもよい。
【0126】
しかし、これらの重鎖配列の欠失、あるいは、重鎖又は軽鎖配列の修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用など)にはあまり影響を及ぼさない。
【0127】
従って、本発明には当該欠失又は修飾を受けた抗体も含まれる。例えば、重鎖カルボキシル末端において1又は2つのアミノ酸が欠失した欠失体(Journal of Chromatography A;705;129-134(1995))、重鎖カルボキシル末端のグリシン、リジンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化された当該欠失体(Analytical Biochemistry,360:75-83(2007))、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端のグルタミン又はグルタミン酸残基がピログルタミル化修飾された抗体(国際特許公開WO2013/147153号)等を挙げることができる(それらをまとめて「欠失体」と呼ぶ)。ただし、抗原結合能及びエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖及び軽鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体が2本以上の鎖(例えば重鎖)を含む場合、当該2本以上の鎖(例えば重鎖)は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であっても良いし、いずれか二種を組合せたものであっても良い。各欠失体の量比又は分子数比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては2本の重鎖の双方でカルボキシル末端の1つのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる。
【0128】
さらに、本発明の抗体又はその抗原結合断片(本発明の分子、多重特異的分子、二重特異的分子等に含まれるもの等)に、発現ベクター及び/又はシグナル配列等に由来する1乃至数個のアミノ酸がアミノ末端及び/又はカルボキシル末端に付加され(且つその一部又は全部が前記のように修飾され)ていても、所望の抗原結合活性が維持されていれば、本発明の抗体の修飾体又はその抗原結合断片の修飾体の範囲に包含され、そのような抗体又は抗原結合断片の修飾体を含む分子も本発明の分子の範囲に包含される。
【0129】
本発明において「抗体又はその結合断片」は「抗体又はその抗原結合断片の修飾体」もその意味に含むものである。また、本発明の分子、多重特異的な分子、二重特異的な分子等に含まれる「抗体又はその抗原結合断片」はかかる「抗体又はその抗原結合断片の修飾体」もその意味に含むものである。
【0130】
また、本発明の抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコース化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、国際特許公開WO99/54342号、WO00/61739号、WO02/31140号等が知られているが、これらに限定されるものではない。
【0131】
本発明には、上述の抗体と他の分子がリンカーでつながれた複合体(Immunoconjugate)も含まれる。該抗体が放射性物質や薬理作用を有する化合物(薬物)と結合している抗体-薬物複合体の例としては、ADC(Antibody-Drug Conjugate)を挙げることができる((Methods Mol Biol.(2013)1045:1-27;Nature Biotechnology(2005)23,p.1137-1146)。
【0132】
更に本発明には、これらの抗体と他の機能性ポリペプチドを繋げた複合体も含まれる。このような抗体-ペプチド複合体の例としては、該抗体がアルブミン結合ポリペプチドと複合体を挙げることができる(Protein Eng Des Sel.(2012)(2):81-8)。
【0133】
上述の抗体の修飾体、糖鎖修飾を調節された抗体、複合体は、本発明の抗体に包含され、上述の抗体の修飾体、糖鎖修飾を調節された抗体、複合体の結合断片は、本発明の抗体の結合断片に包含される。
【0134】
4.抗体の産生方法
本発明の抗体は、例えば、重鎖可変領域をコードするDNA又は軽鎖可変領域をコードするDNAを発現ベクターに挿入し、発現用の宿主細胞を該ベクターで形質転換し、宿主細胞を培養することにより、リコンビナント抗体として細胞に産生させることができる。
【0135】
抗体をコードするDNAは、重鎖可変領域をコードするDNAと重鎖定常領域をコードするDNAを連結することにより重鎖をコードするDNAが得られ、さらに軽鎖可変領域をコードするDNAと軽鎖定常領域をコードするDNAを連結することにより軽鎖をコードするDNAが得られる。
【0136】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体は、上記の重鎖をコードするDNA及び軽鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入し、宿主細胞を該ベクターで形質転換し、該宿主細胞を培養して産生させることができる。この際、上記の重鎖をコードするDNA及び軽鎖をコードするDNAを同じ発現ベクターに導入し、該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換してもよいし、重鎖をコードするDNAと軽鎖をコードするDNAを別々のベクターに挿入し、2つのベクターを用いて宿主細胞を形質転換してもよい。この際、重鎖定常領域をコードするDNA及び軽鎖定常領域をコードするDNAを予め導入したベクターに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードするDNAを導入してもよい。また、該ベクターは宿主細胞からの抗体の分泌を促進するシグナルペプチドをコードするDNAを含んでいてもよい、この場合、シグナルペプチドをコードするDNAと抗体をコードするDNAをインフレームで連結しておく。抗体が産生された後にシグナルペプチドを除去することにより、抗体を成熟タンパク質として得ることができる。
【0137】
この際、重鎖可変領域をコードするDNA、軽鎖可変領域をコードするDNA、重鎖可変領域をコードするDNA及び重鎖定常領域をコードするDNAを連結したDNA、軽鎖可変領域をコードするDNAと軽鎖定常領域をコードするDNAを連結したDNAをプロモータ、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル等のエレメントと機能的に連結してもよい。ここで機能的に連結とは、エレメントがその機能を果たすように連結することをいう。
【0138】
発現ベクターは、動物細胞、細菌、酵母等の宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、公知のプラスミド、ファージ等が挙げられる。発現ベクターの構築に用いられるベクターとしては、例えば、pcDNA(商標)(ThermoFissher SCIENTIFIC社)、Flexi(登録商標)ベクター(プロメガ社)、pUC19、pUEX2(アマシャム社製)、pGEX-4T、pKK233-2(ファルマシア社製)、pMAM-neo(クロンテック社製)等が挙げられる。宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の原核細胞も酵母、動物細胞等の真核細胞も用いることができるが、真核細胞を用いることが好ましい。例えば、動物細胞として、ヒト胎児腎細胞株であるHEK293細胞、チャイニーズ・ハムスター・卵巣(CHO)細胞等を用いればよい。発現ベクターは公知の方法で宿主細胞に導入し、宿主細胞を形質転換すればよい。例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラントランスフェクション法等が挙げられる。産生された抗体は、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用して精製することができる。例えば、アフィニティー・クロマトグラフィー、その他のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択し、組合せればよい。
【0139】
5.HLA/NY-ESOに結合する分子
本発明の分子は、本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片を含む。本発明の分子は、好適には、2以上の抗原結合部位を持つ多重特異性分子である。すなわち、1つの分子上の2つ以上の互いに異なるエピトープ又は2つ以上の分子上の互いに異なるエピトープに結合することが可能な分子であり、複数の互いに異なる抗原結合断片を包む。このような多重特異性分子には、IgG型多重特異性分子、2種類以上の可変領域を有する多重特異性分子、例えばタンデムscFv(taFv)、一本鎖ダイアボディ、ダイアボディ及びトリアボディのような抗体断片、共有結合又は非共有結合して連結されている抗体断片を含むが、これらに限定されない。多重特異的な分子はFcを含んでいてもよい。
【0140】
本発明の多重特異的な分子は、本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその抗原結合断片に加え、1つ又は2つ以上のさらなる抗体又は該抗体の抗原結合断片を含んでよい。さらなる抗体の抗原結合断片としては、例えば、Fab、F(ab)’、Fv、scFv、sdAbを挙げることができる。
【0141】
本発明の好適な多重特異性分子は、さらに、抗CD3抗体又はその抗原結合断片を含み、CD3にも特異的に結合する。
【0142】
本発明の多重特異性分子に含まれる抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、ヒトCD3に結合する抗体又はその結合断片であれば特に限定されるものではないが、好適にはカニクイザル等の非ヒト霊長類のCD3にも結合する。より好適な抗CD3抗体又はその抗原結合断片としては、配列番号141で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDRH1、配列番号142で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDRH2、配列番号143で表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDRH3、配列番号144で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDRL1、配列番号145で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDRL2、及び、配列番号146で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDRL3(以上、
図142)を含んでなる抗体又はその抗原結合断片を例示することができる。
【0143】
該CDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3を含むより好適な抗体又はその抗原結合断片としては、配列番号136(
図137)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~119のアミノ酸配列からなるC3E-7034重鎖可変領域、配列番号137(
図138)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~119のアミノ酸配列からなるC3E-7036重鎖可変領域、配列番号138(
図139)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~119のアミノ酸配列からなるC3E-7085重鎖可変領域、配列番号139(
図140)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~119のアミノ酸配列からなるC3E-7088重鎖可変領域、配列番号140(
図141)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~119のアミノ酸配列からなるC3E-7093重鎖可変領域、配列番号155(
図151)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号272~389のアミノ酸配列からなるC3E-7096重鎖可変領域、配列番号156(
図152)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277~394のアミノ酸配列からなるC3E-7096重鎖可変領域、配列番号157(
図153)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277~394のアミノ酸配列からなるC3E-7097重鎖可変領域を含んでなる抗体又はその抗原結合断片を例示することができる。
【0144】
また、該CDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3を含むより好適な抗体又はその抗原結合断片としては、配列番号136(
図137)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号135~243のアミノ酸配列からなるC3E-7034軽鎖可変領域、配列番号137(
図138)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号135~241のアミノ酸配列からなるC3E-7036軽鎖可変領域、配列番号138(
図139)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号135~241のアミノ酸配列からなるC3E-7085軽鎖可変領域、配列番号139(
図140)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号135~243のアミノ酸配列からなるC3E-7088軽鎖可変領域、配列番号140(
図141)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号135~243のアミノ酸配列からなるC3E-7093軽鎖可変領域、配列番号155(
図151)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号405~511のアミノ酸配列からなるC3E-7096軽鎖可変領、配列番号156(
図152)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号410~516のアミノ酸配列からなるC3E-7096軽鎖可変領、配列番号157(
図153)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号410~516のアミノ酸配列からなるC3E-7097軽鎖可変領を含んでなる抗体又はその抗原結合断片を例示することができる。
【0145】
また、該CDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3を含むより好適な抗体又はその抗原結合断片としては、配列番号136(
図137)で表されるアミノ酸番号2~119及び135~243からなるC3E-7034重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、配列番号137(
図138)で表されるアミノ酸番号2~119及び135~241からなるC3E-7036重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、配列番号147(
図143)で表されるアミノ酸番号2~119及び135~243からなるC3E-7078重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、配列番号138(
図139)で表されるアミノ酸番号2~119及び135~241からなるC3E-7085重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、配列番号139(
図140)で表されるアミノ酸番号2~119及び135~243からなるC3E-7088重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、配列番号140(
図141)で表されるアミノ酸番号2~119及び135~243からなるC3E-7093重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、配列番号155(
図151)で表されるアミノ酸番号272~389及び405~511からなるC3E-7096重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、配列番号156(
図152)で表されるアミノ酸番号277~394及び410~516からなるC3E-7096重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せ、配列番号157(
図153)で表されるアミノ酸番号277~394及び410~516からなるC3E-7097重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含んでなる抗体又はその抗原結合断片を例示することができる。
【0146】
さらに、該CDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3を含むより好適な抗体又はその抗原結合断片としては、配列番号136(
図137)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~243のアミノ酸配列からなるC3E-7034scFv、配列番号137(
図138)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~241のアミノ酸配列からなるC3E-7036scFv、配列番号147(
図143)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~243のアミノ酸配列からなるC3E-7078scFv、配列番号138(
図139)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~241のアミノ酸配列からなるC3E-7085scFv、配列番号139(
図140)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~243のアミノ酸配列からなるC3E-7088scFv、配列番号140(
図141)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2~243のアミノ酸配列からなるC3E-7093scFv、及び、それらのscFvのいずれか一つを含む抗体又は抗体の結合断片等を例示することができる。CD3に特異的なscFv(「抗CD3 scFv」とも呼ばれる)の好適な態様にはカルボキシル末端側にFLAG-Hisタグを付加したもの(単に「タグ付加体」とも呼ばれる)が含まれる。好適なタグ付加体としては、C3E-7034(配列番号136:
図137)、C3E-7036(配列番号137:
図138)、C3E-7085(配列番号138:
図139)、C3E-7088(配列番号139:
図140)及びC3E-7093(配列番号140:
図141)を例示することができ、より好適にはC3E-7085をあげることができる。
【0147】
本発明の多重特異性分子の好適な例として、二重特異性分子を挙げることができる。「二重特異性」とは、同一分子の2つの互いに異なるエピトープ又は2つ分子上の互いに異なるエピトープに結合することが可能であることを意味し、このような二重特異性を有する抗体又は抗原結合断片を包含する。本発明の二重特異性分子は、HLA/NY-ESOに結合し、さらにCD3に結合する。
【0148】
本発明の二重特異性分子として以下の構造(フォーマット)を有するものが挙げられる。
【0149】
Dual scFv型の二重特異性分子では、異なるエピトープに結合する2種のscFvが、二量体のFcの一方とそれぞれリンカーにて連結され又はリンカーなしで直接結合されている。あるいは、異なるエピトープに結合する2種類のscFvがそれぞれCH、CLにリンカーにて連結され、さらに二量体のFcの一方とそれぞれリンカーにて連結されている。該二重特異性分子は、2種類の異なるscFv其々の下流にヘテロダイマーを形成する変異をいれたFcがヘテロに会合したフォーマットである。Dual scFv型の二重特異性分子を、Dual型二重特異性分子、又は単にDual型と呼ぶ(
図6A(b))。
【0150】
本発明においては、例えば、抗HLA-A2/NY-ESO scFvと抗CD3scFvからなるDual型二重特異性分子を用いればよい。
【0151】
あるいは、本発明の二重特異性分子として、異なるエピトープに結合するFabとscFvが、二量体のFcの一方に第1の抗体のFab、もう一方に第2の抗体のscFvをリンカーを介して結合させた二重特異性分子であってもよい。該二重特異性分子は、Fab及びscFvのそれぞれ下流にへテロダイマーを形成する変異をいれたFcがヘテロに会合したフォーマットである。このような二重特異性分子を、Hybrid型二重特異性分子、又はHybrid型と呼ぶ(
図6A(a))。本発明においては、例えば、抗HLA-A2/NY-ESO Fabと抗CD3scFvからなるHybrid型を用いることができる。
【0152】
さらに、二量体のFcの一方に第1の抗体のFabと第2の抗体のscFvをリンカーを介して結合させた二重特異性分子であってもよい。この場合、FcにFabを結合させ、該FabにscFvを結合させてもよいし、FcにscFvを結合させ、該scFvにFabを結合させてもよい。好ましくは、Fabを結合させ、該FabにscFvを結合させる。FabとscFvの結合は、Fabの可変領域にリンカーを介してscFvを結合させればよい。該二重特異性分子は、scFvとFabをリンカーでつなげた下流にヘテロダイマーを形成する変異をいれたFcが会合したフォーマットである。このような二重特異性分子をscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子又はscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型と呼ぶ(
図6A(c))。
【0153】
本発明においては、例えば、抗CD3scFvと抗HLA-A2/NY-ESO FabからなるscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型を用いればよい。
【0154】
さらに、第1の抗体と第2の抗体の2種類のscFvをリンカーでつなげたフォーマットを有するtaFv(
図3(c))を、二量体のFcの一方にリンカーを介するか又はリンカーを介さずに直接結合させてもよい。このような二重特異性分子をtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子又はtaFv-ヘテロダイマーFc型と呼ぶ(
図3(d))。該二重特異性分子は、taFvの下流にヘテロダイマーを形成する変異をいれたFcがヘテロに会合したフォーマットである。taFvにおける第1の抗体と第2の抗体の連結順序は限定されないが、taFvにおける第1の抗体と第2の抗体の連結順序を逆にした場合、最初の二重特異性分子をtaFv-ヘテロダイマーFc型と呼ぶのに対して、taFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型(taFv(inversed)-Fc型ともいう)と呼ぶ。
【0155】
図6A(a)にHybrid型二重特異性分子、
図6A(b)にDual型二重特異性分子、
図6A(c)にscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の構造を示す。また、
図3(a)にscFv、
図3(b)にFab、
図3(c)にtaFv、
図3(d)にtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子、
図3(e)にtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の構造を示す。さらに、
図6B(a)にtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子(
図3(d)に同じ)、
図6B(b)にtaFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子、
図6B(c)にtaFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチド、
図6(d)にtaFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドの構造を示す。
本発明の二重特異性分子は、複数のポリペプチドが会合した構造を有している。
【0156】
本発明においては、例えば、taFvとしては、抗HLA-A2/NY-ESOscFvと抗CD3scFvのtaFvを用いればよい。taFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子は、好適には、(a)N末端からC末端に向かって、HLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合するscFv及び免疫グロブリンFc領域(i)をその順に含んでなる第1ポリペプチドと、免疫グロブリンのヒンジ領域及びFc領域(ii)を含んでなる第2ポリペプチドを含み、より好適には、(b)第1ポリペプチドと第2ポリペプチドがFc領域(i)とFc領域(ii)において会合してなる。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドのFc領域は、ヘテロダイマーを形成するための変異を含んでもよい。taFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の例を
図3(d)に示す。
図3(d)に示すように、第1ポリペプチドのFc領域(i)部分と黒塗で示す第2ポリぺプチドのFc領域(ii)部分が結合し、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドが会合している。
図3(f)が第1ポリペプチドを示し、
図3(g)が第2ポリペプチドを示す。例えば、
図3(d)において、白で表されたscFvが抗HLA-A2/NY-ESO scFvであり、右上斜線で表されたscFvが抗CD3 scFvである。
【0157】
本発明のより好適なtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチドは、配列番号85で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号87で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号88で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号89で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号90で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号91で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号92で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号93で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号94で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号95で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号96で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号86で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号149で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号150で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号155で表されるアミノ酸配列の20番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号156で表されるアミノ酸配列の20番目~516番目のアミノ酸配列、又は配列番号157で表されるアミノ酸配列の20番目~516番目のアミノ酸配列を含み、より一層好適なtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチドは、配列番号85、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、86、149、150又は155で表されるアミノ酸配列の529番目~745番目のアミノ酸配列、あるいは配列番号156又は157で表されるアミノ酸配列の534番目~750番目のアミノ酸配列を含み、さらにより層好適なtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチドは、配列番号85で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号87で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号88で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号89で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号90で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号91で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号92で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号93で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号94で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号95で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号96で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号86で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列)、配列番号149で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列配列番号150で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列又は配列番号155で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列からなる。あるいは、配列番号156で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列又は配列番号157で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列からなる。
【0158】
本発明の好適なtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドは、ヒト抗体由来のヒンジ領域及び変異型Fcを含んでなり、より一層好適なtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドは、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目のアミノ酸配列を含んでなる。
これらのうち、配列番号85で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0016、配列番号87で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0022、配列番号88で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0023、配列番号89で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0027、配列番号90で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0035、配列番号91で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0044、配列番号92で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0045、配列番号93で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0047、配列番号94で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0048、配列番号95で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0060、配列番号96で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0061、配列番号86で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0019、配列番号149で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0014、並びに、配列番号150で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の21番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYF-0082を、本発明の好適なtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子として例示することができる。
【0159】
さらに、配列番号155で表されるアミノ酸配列の20番目~745番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYZ-0038、配列番号156で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYZ-0082、配列番号157で表されるアミノ酸配列の20番目~750番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド及び及び配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目からなる第2ポリペプチドが会合してなるNYZ-0083を、本発明の好適なtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子として例示することができる。
【0160】
それらのうち、NYF-0023、NYF-0047、NYF-0048、NYF-0060、NYF-0061、NYZ-0038、NYZ-0082、及びNYZ-0083は、とりわけ優れた生物活性、物性等を有し、好適である。
【0161】
さらに、二量体のFcの一方に第1の抗体のtaFvをリンカーを介するか又はリンカーを介さずに直接結合させ、もう一方のFcに第1の抗体若しくは第2の抗体のFabをリンカーを介するか又はリンカーを介さずに直接結合させてもよい。該二重特異性分子は、taFv-ヘテロダイマーFc型の第2ポリペプチドのFc領域(ii)(黒塗り)側の上流にFabを付加したフォーマットである。このような二重特異性分子をtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子又はtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型と呼ぶ(
図3)。
【0162】
本発明においては、taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれるtaFvとしては、例えば、抗HLA-A2/NY-ESO scFvと抗CD3scFvのtaFvを用いればよく、Fabとしては、例えば、HLA/NY-ESO Fabを用いればよい。
【0163】
taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子は、好適には、(a)N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合するscFv及び免疫グロブリンFc領域(i)をその順で含んでなる第1ポリペプチド、Fc領域(ii)を含む免疫グロブリン重鎖からなる第2ポリペプチド、及び、免疫グロブリン軽鎖からなる第3ポリペプチドを含み、より好適には、(b)第2ポリペプチドと第3ポリペプチドが会合しており、(c)第1ポリペプチドと第2ポリペプチドがFc領域(i)とFc領域(ii)において会合してなる。taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の例を
図3(e)に示し、第1ポリペプチドを
図3(f)に示し、第2ポリペプチドを
図3(h)に示し、第3ポリペプチドを
図3(i)に示す。
図3(e)に示すように、第1ポリペプチドのFc領域(i)部分と黒塗で示すFc領域(ii)を含む免疫グロブリン重鎖からなる第2ポリペプチドが第1ポリペプチドのFc領域(i)部分と第2ポリぺプチドのFc領域(ii)部分で結合し、さらに、第2ポリペプチドに免疫グロブリン軽鎖が結合している。かかる好適なtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子は、taFv及び免疫グロブリンのFc領域を含むtaFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に、Fabが結合してなる、ということもできる。好適なtaFv-FabヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチドに含まれるアミノ酸配列としては、配列番号85で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号87で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号88で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号89で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号90で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号91で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号92で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号93で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号94で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号95で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号96で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号86で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列、配列番号149で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列及び配列番号150で表されるアミノ酸配列の21番目~511番目のアミノ酸配列を例示することができ、さらに好適なtaFv-FabヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチドは、配列番号85で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号87で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号88で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号89で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号90で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号91で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号92で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号93で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号94で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号95で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号96で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列及び配列番号86で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、配列番号149で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列、又は、配列番号150で表されるアミノ酸配列の21番目~745番目のアミノ酸配列からなる。
【0164】
本発明の好適なtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドは、ヒト抗体又はヒト化抗体重鎖の可変領域、CH1領域及びヒンジ領域、並びに変異型Fcを含んでなり、より好適なtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドは、配列番号99で表されるアミノ酸配列の20番目~242番目のアミノ酸配列を含んでなる。
【0165】
本発明の好適なtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第3ポリペプチドは、ヒト抗体又はヒト化抗体軽鎖の可変領域及び定常領域を含んでなり、より好適なtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第3ポリペプチドは、配列番号100で表されるアミノ酸配列の21番目~131番目を含んでなる。
【0166】
かかる好適なtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドのうち可変領域及びCH1領域並びに第3ポリペプチドはFabを構成し、好適なFabは抗HLA/NY-ESO抗体のFabであり、例えば、NYA-0001のFabである。
【0167】
本発明においては、scFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれるscFvとしては、例えば、抗HLA-A2/NY-ESO scFv又は抗CD3scFvを用いればよく、Fabとしては、例えば、HLA/NY-ESO Fab又は抗CD3 Fabを用いればよい。
【0168】
scFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子は、好適には、(a)N末端からC末端に向かって、ヒトHLA/NY-ESOに特異的に結合するscFv、CD3に特異的に結合する抗体重鎖の可変領域及び定常領域CH1並びに免疫グロブリンFc領域(i)をその順で含んでなる第1ポリペプチド、免疫グロブリンのヒンジ領域及びFc領域(ii)を含んでなる第2ポリペプチド、並びに、可変領域及び定常領域からなる抗体軽鎖を含む第3ポリペプチドを含み、より好適には、(b)第1ポリペプチドと第2ポリペプチドがFc領域(i)とFc領域(ii)において会合し、第1ポリペプチドが抗体重鎖の可変領域及び定常領域CH1において第3ポリペプチド(の抗体軽鎖)と会合してなる。第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドのFc領域は、野生型であっても、ヘテロダイマーを形成する変異を含んでいてもよい。scFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の例を
図6A(c)に示す。
図6A(c)の右半分が第1ポリペプチド及び第3ポリペプチドであり、左半分が第2ポリペプチドである。
図6A(c)に示すように、第1ポリペプチドのFc領域(i)部分と黒塗で示す第2ポリぺプチドのFc領域(ii)部分が会合し、第1ポリペプチドと第3ポリペプチドが会合している。例えば、
図6A(c)において、右上斜線で表されたscFvが抗HLA-A2/NY-ESO scFvであり、白及び市松模様及び横線で表されたFabが抗CD3 Fabである。
【0169】
好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチドに含まれるアミノ酸配列としては、配列番号160で表されるアミノ酸配列の21番目~394番目のアミノ酸配列を、さらに好適には20番目~724番目のアミノ酸配列を、それぞれ例示することができる。
【0170】
また、好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチドに含まれる他のアミノ酸配列としては、配列番号197で表されるアミノ酸配列の21番目~389番目のアミノ酸配列を、さらに好適には20番目~719番目のアミノ酸配列を、それぞれ例示することができる。
さらに、好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第1ポリペプチドに含まれる他のアミノ酸配列としては、配列番号198で表されるアミノ酸配列の21番目~389番目のアミノ酸配列を、さらに好適には20番目~719番目のアミノ酸配列を、それぞれ例示することができる。
【0171】
本発明の好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドは、ヒト抗体由来のヒンジ領域及び変異型Fcを含んでなり、より一層好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドは、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目のアミノ酸配列を含んでなる。
【0172】
本発明の好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第3ポリペプチドは、ヒト抗体由来の軽鎖を含んでなり、より好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第3ポリペプチドとしては、配列番号161で示されるアミノ酸配列の21番目~127番目のアミノ酸配列、より一層好適には21番目~233番目のアミノ酸配列を、それぞれ例示することができる。
【0173】
これらのうち、配列番号160で表されるアミノ酸配列の20番目~724番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目からなる第2ポリペプチド、及び、配列番号161で示されるアミノ酸配列の21番目~233番目からなる第3のポリペプチドが会合してなるNYZ-1010を、本発明の好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子として例示することができる。
【0174】
また、配列番号197で表されるアミノ酸配列の20番目~719番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目からなる第2ポリペプチド、及び、配列番号161で示されるアミノ酸配列の21番目~233番目からなる第3のポリペプチドが会合してなるNYZ-1007も、本発明の好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子として例示することができる。
【0175】
さらに、配列番号198で表されるアミノ酸配列の20番目~719番目のアミノ酸配列からなる第1ポリペプチド、配列番号84で示されるアミノ酸配列の20番目~246番目からなる第2ポリペプチド、及び、配列番号161で示されるアミノ酸配列の21番目~233番目からなる第3のポリペプチドが会合してなるNYZ-1017も、本発明の好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子として例示することができる。
【0176】
本発明の二重特異性分子に含まれる1つ、2つ又は3つ以上のペプチドは、前述の「欠失体」であってよく、すなわち、そのカルボキシル末端、とりわけ抗体重鎖に由来するカルボキシル末端において、1又は2個(又はそれ以上)のアミノ酸が変異(欠失を含む)していてよい。例えば、本発明の好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の一つであるNYZ-1010に含まれる第1ポリペプチドが有するアミノ酸配列のカルボキシル末端は、配列番号160の724番目Lys、1アミノ酸が欠失してなる723番目Gly、それらを含む混合物、のいずれであってもよい。同様に、本発明の好適なscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子に含まれる第2ポリペプチドが有するアミノ酸配列のカルボキシル末端は、配列番号84の246番目Lys、1アミノ酸が欠失してなる245番目Gly、それらを含む混合物、のいずれであってもい。
【0177】
本発明の二重特異性分子に含まれるscFv及びFabは、好ましくは、ヒト化抗体又はヒト抗体のscFv及びFabであり、Fcは、好ましくは、ヒト抗体のFcである。
【0178】
本発明の二重特異性分子に含まれる可変領域においては、抗体のアミノ末端側から重鎖可変領域、軽鎖可変領域の順で結合していてもよく、あるいは、軽鎖可変領域、重鎖可変領域の順で結合していてもよい。両可変領域の間に、リンカーを有していてもよい(任意で)。また、アミノ末端側の可変領域のアミノ末端にグリシン残基を有していてもよい(任意で)。タンデムscFv型の二重特異性分子では、カルボキシル末端側の可変領域のカルボキシル末端に、リンカー、FLAGタグ、及び/又は、Hisタグが結合していてもよい(任意で)。好適な態様の一つとして、アミノ末端から、重鎖可変領域、第1のリンカー、軽鎖可変領域、第2のリンカー、FLAGタグ、及び、Hisタグの順に結合したものを例示することができる。
【0179】
リンカーは、一本鎖ポリペプチド又は一本鎖オリゴペプチド、あるいは、PEG、ヌクレオチド、糖鎖、化合物等の合成品も含まれる。その他、二つのポリペプチドを結合するものであれば特に限定されず、公知のリンカーを使用することが可能である。
【0180】
リンカーの長さとしては、例えば、ペプチドリンカーの場合5~30アミノ酸である。二重特異性分子に複数のリンカーが含まれる場合、すべて同じ長さのペプチドリンカーを用いてもよいし、異なる長さのペプチドリンカーを用いてもよい。
【0181】
ペプチドリンカーとしては、例えば、(Gly・Gly・Gly・Gly・Ser)(配列番号161)の繰り返しが例示されるが、これらに1~数個のGly、Serとは異なるアミノ酸残基が付加していてもよい。
【0182】
上述のような、本発明の多重特異性抗体、特に二重特異性抗体が採り得る構造(フォーマット)のうち、好適なものは、taFv-ヘテロダイマーFc型、taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型及びscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型であり、より好適なものはtaFv-ヘテロダイマーFc型であり、N末端からC末端に向かって、抗HLA/NY-ESO scFv、抗CD3 scFvの順に位置している型(taFv-ヘテロダイマーFc型)は、その逆に位置している型(taFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型)に比してより一層好適である(実施例11等)。また、他のより好適なものはscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型である。
【0183】
本発明には、本発明の分子に含まれるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含み、且つ、HLA/NY-ESOに結合し、好適にはさらにCD3にも結合する分子も含まれる。
【0184】
本発明には、本発明の分子に含まれるアミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上同一のアミノ酸配列を含み、且つ、HLA/NY-ESOに結合し、好適にはさらにCD3にも結合する分子も含まれる。
【0185】
本発明の抗体、その結合断片及びそれらを含む多重特異性抗体は、優れた生物学的活性、物理化学的性質(以下「物性」という。)、安全性、体内動態等の性質を具備している。(a)生物学的活性又はその指標としては、抗原結合活性、in vitro細胞傷害活性、in vivo抗腫瘍活性等を例示することができる。例えば、HLA/NY-ESOに対する解離定数(KD値)は、100nM以下又は50nM以下、好適には20nM以下又は10nM以下、より好適には5nM以下である。また、例えば、内因性ヒトNY-ESO発現細胞株であるU266B1及び/又はNCI-H1703に対して、ヒト末梢血単核細胞をエフェクター細胞として用いて発揮される細胞傷害活性のEC50値は20nM以下、好適には10nM以下、より好適には5nM以下である(in vitro細胞傷害活性の測定及び算出としては、実施例8記載の方法を例示できるが、それに限定されない)。さらに、例えば、ヒト扁平上皮肺がん細胞株NCI-H1703の6×107細胞/mL懸濁液をNOGマウスの皮下に0.1mL移植し、4日後ヒト末梢血単核細胞の3.75×107細胞/mL懸濁液を0.2mL尾静脈内移植し、14日後から週1回、抗体を3回投与後腫瘍の体積を測定した際の、溶媒を投与した対照群に対する腫瘍増殖阻害活性は、50%以上、好適には75%以上、より好適には90%以上である(in vivo抗腫瘍活性の測定及び算出としては、実施例9記載の方法を例示できるが、それに限定されない)。(b)バイオ医薬品に含まれる不純物は、医薬品の安全性に関与するため、製造時および保存中での増加の有無を適切に規格設定し管理することが求められている。その中でもHMWS(凝集物)は、主要な不純物の一つであり、免疫原性リスクや薬効の低下等にも関与するため、特に厳重に管理すべき項目である。不純物の管理は製造時のみでなく、製造工程中や製造後の経時的な安定性(増加の有無)も含めて評価を実施する必要がある。長期安定性試験の結果に基づいて医薬品の有効期間が設定されるため、経時的に安定な抗体のほうがより長い有効期間を設定することができる。よってバイオ医薬品をめざし好適な抗体を選抜する際の指標となる、本発明における物理化学的性質としては、耐酸性(HMWS生成抑制等)、溶液安定性(HMWS生成抑制等)が挙げられる。また他の指標としては、本発明の抗体若しくはその結合断片又はそれらを含む分子の産生に適した宿主細胞、例えば、Expi293F細胞にそれらに含まれるアミノ酸配列をコードする遺伝子を導入して得られる組換え細胞の培養物における収量が多い、収率が高いことなどを例示することができる。それらの物理化学的性質特徴を有する本発明の好適な抗体、その抗原結合断片、及び、それらを含有する多重特異性抗体は:それらの溶液を酸性条件下に晒すことが可能となり、それらの製造、例えば、プロテインA、イオン交換等のクロマトグラフィー、ウイルス不活性化等の工程の実施が可能又は容易になる;それらを溶液としてもHMWSの生成が低く抑えられるので、それらの製造、製剤化、それらを含む医薬品の流通や保存等の実施が可能又は容易になる;それらを効率よく生産することが可能となる。耐酸性について、例えば、pH3.5、室温、1時間保温し、次いでサイズ排除クロマトグラフィーによりHMWSを測定して算出される生じるHMWSの含有量は5%以下、好適には2%以下、より好適には1%以下である(耐酸性評価のためのHMWS含有量の測定及び算出としては、実施例19-1記載の方法を例示できるが、それに限定されない)。溶液安定性について、例えば、25mMヒスチジン及び5%ソルビトールからなるpH6.0に濃度25mg/mlになるよう溶解させ、25℃、6日間保存し、次いでサイズ排除クロマトグラフィーによりHMWSを測定して算出されるHMWSの含有量は20%以下、好適には10%以下である(溶液安定性評価のためのHMWS含有量の測定及び算出としては、実施例19-2記載の方法を例示できるが、それに限定されない)。生産効率又は収率の測定及び算出としては、実施例20及び21記載の方法を例示できるが、それに限定されない。(c)安全性又はその指標としては、抗原認識特性、投与時の所見等を例示することができる。例えば、野生型NY-ESOペプチド上の複数のアミノ酸を認識し、野生型NY-ESOペプチドに類似するが同一ではないアミノ酸配列を有する相同性ペプチドには結合せず、オフターゲット効果に起因する副作用リスクが低い。また、ISPRI ウェブベース免疫原性スクリーニング(EpiVax,Inc)において免疫原性が低く、抗抗体に起因するサイトカイン産生等の副作用リスクが低いことが予測できる。また、例えば、本発明の二重特異性抗体に含まれるNYF-0023、NYF-0045、NYF-0047、NYF-0048、NYF-0060、NYF-0061、NYZ-0082、又は、NYZ-1010をBalb/cマウスに投与したところ、血中半減期には問題となるような所見は認められず、体重減少、その他の顕著な毒性所見も認められなかった。また、NYZ-0082、又は、NYZ-1010をカニクイザルに単回投与したところ、血中半減期には問題となるような所見は認められず、一般状態、体重、摂餌量、体温測定、及び血漿中サイトカイン量について投与に起因する変化は認められなかった。(d)動態又はその指標としては、血中半減期等を例示することができる。例えば、本発明において取得した数個の二重特異性抗体をBalb/cマウス、又は、カニクイザルに投与したところ、血中半減期には問題となるような所見は認められなかった。このような、優れた生物学的活性、物理化学的性質、安全性、体内動態等の性質を具備する本発明の抗体、その結合断片及び分子は、医薬組成物に好適に含有せしめることができる。(a)記載の抗原結合活性及び(b)記載の諸性質を有する本発明の好適な抗体又はその抗原結合断片としては、NYA-1143,NYA-1163、NYA-2023、NYA-2027、NYA-2035、NYA-2044,NYA-2045、NYA-2047、NYA-2048、NYA-2060、NYA-2031、NYA-2047、NYA-2061、NYA-2143及びNYA-3061を、より好適にはNYA-2047、NYA-2061、NYA-2143及びNYA-3061を、それぞれ例示することができるが、それらに限定されない。また、(a)~(d)記載の性質を有する本発明の好適な多重特異性抗体としては、NYF-0016、NYF-0019、NYF-0022、NYF-0023、NYF-0027、NYF-0035、NYF-0044、NYF-0045、NYF-0047、NYF-0048、NYF00058、NYF-0060、NYF-0061、NYZ-0038、NYZ-0082、NYZ-0088及びNYZ-1010を、より好適には、NYF-0061、NYZ-0038、NYZ-0082、NYZ-0088、NYZ-1007、NYZ-1010、NYZ-1017を、それぞれ例示することができるが、それらに限定されない。
【0186】
本発明において、抗体が結合する「部位」、すなわち抗体が認識する「部位」とは、抗体が結合又は認識する抗原上の部分ペプチド又は部分高次構造を意味する。本発明においては、かかる部位のことをエピトープ、抗体の結合部位とも呼ぶ。本発明の抗HLA/NY-ESO抗体が結合又は認識するHLA/NY-ESO上の部位としては、HLA/NY-ESOペプチド中の複数のアミノ酸、部分高次構造等を例示することができる。
【0187】
本発明の抗体又は結合断片と「同一の部位に結合する抗体又はその結合断片」も本発明に含まれる。ある抗体と「同一の部位に結合する抗体」とは、該抗体が認識する抗原分子上の部位に結合する他の抗体を意味する。第一抗体が結合する抗原分子上の部分ペプチド又は部分立体構造に第二抗体が結合すれば、第一抗体と第二抗体は同一の部位に結合すると判定することができる。本発明の第一抗体が上記(a)記載の抗原結合活性を有する場合、HLA/NY-ESO上の同一の部位に結合する第二抗体は、同様の活性を有する蓋然性が極めて高く、かかる第二抗体も本発明に包含される。また、HLA/NY-ESOへの結合において本発明の第一抗体と競合する抗体も、(a)記載の抗原結合活性を有していれば、本発明に包含される。そのような本発明のモノクローナル抗体が認識するHLA/NY-ESO上の部位に結合する抗体、HLA/NY-ESOへの結合において本発明のモノクローナル抗体と競合する抗体、及びそれらの結合断片は、好適には、(a)記載のin vitro細胞傷害活性及びin vivo抗腫瘍活性並びに(b)~(d)記載の性質のうち1つ又は2つ以上、より好適にはそれらの3つ以上、最適には全てを有する。
【0188】
抗体の結合部位は、免疫アッセイ法など当業者に周知の方法により決定することができる。例えば、抗原のアミノ酸配列をC末またはN末から適宜削ってなる一連のペプチドを作製し、それらに対する抗体の反応性を検討し、大まかな認識部位を決定した後に、さらに短いペプチドを合成してそれらのペプチドへの抗体の反応性を検討することにより、結合部位を決定することができる。または、例えば、抗原もしくは抗原断片ペプチド等のアミノ酸配列のうち、特定の部位や領域を削除もしくは別のアミノ酸配列に置換もしくはアミノ酸配列に変異を導入し、それらのペプチドへの抗体の反応性を検討することにより、結合部位を決定することができる。抗原断片ペプチドは、遺伝子組換、ペプチド合成等の技術を用いて調製することができる。
【0189】
抗体が抗原の部分高次構造に結合又は認識している場合、かかる抗体の結合部位は、X線構造解析を用いて、当該抗体に隣接する抗原上のアミノ酸残基を特定することにより決定することができる。例えば、抗体又はその断片および抗原又はその断片を結合させて結晶化し、構造解析を行うことにより、抗体と相互作用距離を有する抗原上のアミノ酸残基を特定することができる。相互作用距離は8Å以下であり、好適には6Å以下であり、より好適には4Å以下である。そのような抗体との相互作用距離を有するアミノ酸残基は1つまたはそれ以上で抗体の抗原結合部位(エピトープ)を構成し得る。かかるアミノ酸残基が2つ以上の場合、各アミノ酸は一次配列上で互いに隣接していなくてもよい。
【0190】
本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はその結合断片は、HLA/NY-ESOのアミノ酸配列中に存在する複数のアミノ酸を特異的に認識する。それら複数のアミノ酸を認識するか、HLA/NY-ESOへの結合において本発明の抗体又はその結合断片と競合するか、または、それら複数のアミノ酸と相互作用距離を有する抗体又はその結合断片も、本発明に包含される。さらに、そのような抗体又はその結合断片を含む多重特異性抗体も、本発明に包含される。
【0191】
6.医薬組成物
本発明は、本発明の抗HLA/NY-ESO抗体若しくはHLA/NY-ESOに結合する多重特異性分子を有効成分として含む抗がん剤を包含する。
【0192】
本発明の抗がん剤は、がん腫、肉腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、胚細胞腫、脳腫瘍、カルチノイド、神経芽腫、網膜芽細胞腫、腎芽腫から選択される一種又は複数種に対して使用することができる。具体的には、がん腫では、腎がん、メラノーマ、有棘細胞がん、基底細胞がん、結膜がん、口腔がん、喉頭がん、咽頭がん、甲状腺がん、肺がん(非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)、小細胞肺がん)、乳がん、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、大腸がん、直腸がん、虫垂がん、肛門がん、肝がん、胆嚢がん、胆管がん、膵がん、副腎がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮がん、膣がんなどが挙げられ、肉腫では、脂肪肉腫、血管肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、未分化多型肉腫、粘液型線維肉腫、悪性末梢性神経鞘腫、後腹膜肉腫、滑膜肉腫、子宮肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、類上皮肉腫などが挙げられ、リンパ腫では、B細胞リンパ腫、T・NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫などが挙げられ、白血病では、骨髄性白血病、リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群などが挙げられ、骨髄腫では、多発性骨髄腫などが挙げられ、胚細胞腫では、精巣がん、卵巣がんなどが挙げられ、脳腫瘍では、神経膠腫、髄膜腫などが挙げられる。
【0193】
本発明の抗がん剤は、治療に有効量の抗HLA/NY-ESO抗体又はHLA/NY-ESOに結合する多重特異性分子と薬学上許容可能な担体、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、保存剤、補助剤等を含めることができる。「薬学上許容可能な担体」等は、対象疾患の種類や薬剤の投与形態に応じて広い範囲から適宜選択することができる。本発明の抗がん剤の投与方法は適宜選択することができるが、例えば注射投与することができ、局所注入、腹腔内投与、選択的静脈内注入、静脈注射、皮下注射、臓器灌流液注入等を採用することができる。また、注射用の溶液は、塩溶液、グルコース溶液、又は塩水とグルコース溶液の混合物、各種の緩衝液等からなる担体を用いて製剤化することができる。また粉末状態で製剤化し、使用時に前記液体担体と混合して注射液を調製するようにしてもよい。
【0194】
他の投与方法についても、製剤の開発と共に適宜選択することができる。例えば経口投与の場合には、経口液剤や散剤、丸剤、カプセル剤及び錠剤等を適用することができる。経口液剤の場合には、懸濁剤及びシロップ剤等のような経口液体調整物として、水、シュークロース、ソルビトール、フラクト-ス等の糖類、PEG等のグリコール類、ごま油、大豆油等の油類、アルキルパラヒドロキシベンゾエート等の防腐剤、ストロベリー・フレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造することができる。散剤、丸剤、カプセル剤及び錠剤は、ラクト-ス、グルコース、シュークロース、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギニン酸ソーダ等の崩壊剤、マグネシウムステアレート、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製剤化することができる。錠剤及びカプセル剤は、投与が容易であるという点において、この発明の組成物における好ましい単位投与形態である。錠剤やカプセル剤を製造する際には、固体の製造担体が用いられる。
【0195】
治療に用いるに有効な抗HLA/NY-ESO抗体又はHLA/NY-ESOに結合する多重特異性分子の量は、治療する病状の性質、患者の年齢や状態により変更され、最終的には医師が決めればよい。例えば、1回体重1kg当たり0.0001mg~100mgである。所定の投与量は1~180日に1回投与してもよいし、1日当たり2回、3回、4回又はそれ以上の分割投与とし適当な間隔で投与してもよい。
【0196】
また、本発明の抗HLA/NY-ESO抗体又はHLA/NY-ESOに結合する多重特異性分子に含まれるアミノ酸配列を含むポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、及び、該ポリヌクレオチド又はベクターを含む細胞、並びに、該ポリヌクレオチド、該ベクター及び該細胞のいずれかを有効成分として含む医薬組成物も本発明に包含される。かかる医薬組成物は、好適には抗がん剤である。
【0197】
さらに、本発明の医薬組成物は、他の薬剤と組み合わせて使用することができる。他の薬剤としては、化学療法剤、放射線療法、バイオ医薬品等特に限定されるものではなく、本発明の医薬組成物と同時に又は異なったスケジュールで、本発明の医薬組成物を含む単一の製剤として又は2つ以上の異なった製剤若しくは療法として、投与又は適用され得る。
【実施例】
【0198】
以下、実施例において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0199】
なお、下記実施例において遺伝子操作に関する各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.著,Cold SpringHarbor Laboratory Pressより1989年発行)に記載の方法及びその他の当業者が使用する実験書に記載の方法により行うか、又は、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って行った。遺伝子合成やベクター構築のために必要なプライマー合成は、必要に応じて合成委託(株式会社FASMAC、Thermo Fisher Scientific社、およびユーロフィンジェノミクス社)した。
【0200】
(実施例1) ヒト抗体ファージライブラリー由来抗HLA/NY-ESO抗体の取得
1)-1 HLA/NY-ESO抗原タンパク質の調製
HLA-A*0201(GenBank:ASA47534.1)のトランケート体(ビオチンリガーゼ認識配列付加:配列番号33)とβ2-マイクログロビン(UniProtKB-P61769:配列番号34)を其々発現させた大腸菌(BL21(DE3)、アジレント・テクノロジー社)より調製した各インクルージョンボディーとNY-ESOペプチド: SLLMWITQC(配列表の配列番号1)を大希釈によりリフォールデング後、ゲルろ過カラム(Superdex 200 10/300、GE Healthcare社)にてHLA-A*0201/β2-マイクログロビン/NY-ESOペプチド複合体(以下HLA/NY-ESOと表記)を調製した。
【0201】
ネガティブコントロール抗原として、MAGEC-1ペプチド:ILFGISLREV(配列表の配列番号2)を用いて同様にリフォールディングしHLA-A*0201/β2-マイクログロビン/MAGEC-1ペプチド複合体(=以下HLA/MC1と表記)を調製した。更に、調製したHLA/NY-ESO及びHLA/MC1は、大腸菌のビオチンリガーゼにてビオチン化後、ゲルろ過カラム(Superdex 200 10/300、GE Healthcare社)にて分画し各ビオチン化タンパク質を調製した。
【0202】
1)-2 HLA/NY-ESOに結合能を有するscFvの単離
ヒト抗体ファージライブラリーから、HLA/NY-ESOに結合するscFvを単離した。まず、ビオチン化HLA/MC1を固相化したDynabeads Streptavidin M-280(Thermo Fisher Scientific社)にファージを添加し、結合しないファージを回収した。次に、ビオチン化HLA/NY-ESOを固相化したDynabeads Streptavidin M-280Ag添加し、結合しないファージをマグネットスタンド(DynaMag‐2、Thermo Fisher Scientific社)を用いた洗浄操作により除去した。
【0203】
その後、HLA/NY-ESOに結合したファージを大腸菌(XL-1 Blue、アジレント・テクノロジー社)に感染させ、HLA/NY-ESOに結合するファージを回収・増幅した。計3回のパニングを実施後、ポリクローナルなファージミドから、scFvのカルボキシル末端にFLAGタグ、Hisタグを付加する大腸菌用の発現ベクターに載せ換えた後、大腸菌を形質転換し、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)(Sigma-Aldrich社)存在下でscFvを発現させ、ELISAによるスクリーニングに供した。
【0204】
1)-3 ELISAによるHLA/NY-ESO結合scFvのスクリーニング
384ウェルMaxi-sorp plate(Black、Nunc社)にPBS(0.138M塩化ナトリウム、0.0027M塩化カリウムを含有する0.01Mリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)、Sigma-Aldrich社)で1μg/mLに希釈したNeutrAvidin(Life Technologies社)を50μLずつ添加し、4℃で一晩静置し固相化した。Tween-20(バイオ・ラッド社)を0.05%含むPBS(ELISAバッファ)で3回洗浄後、PBSで1μg/mLに希釈した、実施例1)-2でも用いたビオチン化HLA/NY-ESOを添加して1時間室温で振とうした。ELISAバッファで3回洗浄後、Blocker Casein(Thermo Fisher Scientific社)でブロッキングし、ELISAバッファで3回洗浄した。その後、scFvを発現させた大腸菌の培養液を添加し、室温にて2時間反応させた。ELISAバッファで3回洗浄後、ELISAバッファで5000倍に希釈したHorseradish peroxidase(HRP)標識抗FLAG抗体(Sigma-Aldrich社)を50μL添加し、室温で1時間反応させた。ELISAバッファで5回洗浄後、SuperSignal Pico ELISA Chemiluminescent substrate(Thermo Fisher Scientific社)を添加し、10分後の化学発光をプレートリーダー(Envision 2104 Multilabel Reader、Perkin Elmer社)で測定し、HLA/NY-ESOに結合するELISA陽性クローンを分離した。
【0205】
1)-4 ELISA陽性クローンNY-R119のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の決定
1)-3で取得されたELISA陽性クローンの中から、HLA/NY-ESOへの結合能が強く認識特異性が優れているscFvとしてNY-R119を選抜した。NY-R119の重鎖及び軽鎖可変領域のヌクレオチド配列の解析を、Dye Terminator法(BigDye(登録商標)Terminator v3.1、Thermo Fisher Scientific社)で実施した。配列解析に用いたプライマー配列は、以下の通りである。
Primer A:5’-CTCTTCGCTATTACGCCAGCTGGCGA-3’(配列表の配列番号3(
図10))
Primer B:5’-ATAACAATTTCACACAGGAAACAGCTATGA-3’(配列表の配列番号4(
図11))
【0206】
決定されたNY-R119の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号5(
図12)に示し、アミノ酸配列を配列番号6(
図13)に示した。
【0207】
決定されたNY-R119の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号7(
図14)に示し、アミノ酸配列を配列番号8(
図15)に示した。
【0208】
IMGTのCDR定義におけるNY-R119のCDR配列はそれぞれ、CDRH1は配列番号54(
図61)に、CDRH2は配列番号55(
図61)に、CDRH3は配列番号56(
図61)に、CDRL1は配列番号57(
図61)に、CDRL2は配列番号58(
図61)に、CDRL3は配列番号59(
図61)に示した。
【0209】
1)-5 NYA-0001の作製
1)-5-1 NYA-0001発現ベクターの構築
各種評価用サンプル調製のため、NY-R119の哺乳培養用発現ベクターを構築した。また哺乳培養細胞にて発現されたNY-R119をNYA-0001と命名した。NY-R119とNYA-0001のscFv部分、重鎖及び軽鎖の可変領域、並びにCDRH1~3及びCDRL1~3は、同一アミノ酸配列からなる。NYA-0001をコードするDNA断片をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)にてpcDNA3.3(Thermo Fisher Scientific社)を骨格とした哺乳動物細胞用発現ベクターに挿入し、NYA-0001発現ベクターを構築した。
【0210】
構築したNYA-0001発現ベクターのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-0001全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号69(
図70)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYA-0001全長のアミノ酸配列は配列番号70(
図71)に示されるアミノ酸配列であった。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-0001であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、181番目から188番目のアミノ酸配列はCDRL1であり、206番目から208番目のアミノ酸配列はCDRL2であり、245番目から256番目のアミノ酸配列はCDRL3である。
【0211】
1)-5-2 NYA-0001発現・精製
Expi293F細胞(Thermo Fisher Scientific社)はマニュアルに従い、継代、培養を行った。対数増殖期にあるExpi293F細胞培養液を2.5×106 cells/mL になるようExpi293 Expression medium(Thermo Fisher Scientific社)で希釈し、NYA-0001の生産に用いた。20mLのOpti-Pro SFM培地(Thermo Fisher Scientific社)にNYA-0001発現ベクター0.3mgと0.9mgのPolyethyleneimine(Polyscience #24765)を加えて穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にExpi293F細胞へ添加した。37℃、8%CO2インキュベーターで6日間、135rpmで振とう培養して得られた培養上清を0.2μm filter(Millipore社)でろ過し、NYA-0001の培養上清を得た。精製は、Ni Sepharose excel(GE Healthcare社)、にて溶出後濃縮し、25mM Histidine、300mM NaCL、5% Sorbitor、pH6.0で平衡化したゲルろ過カラム (Superdex 200 Increase、GE Healthcare社)にて精製した。精製タンパク質サンプルは分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、純度と濃度を決定した後、各種評価に用いた。
【0212】
(実施例2) NYA-0001変異体の作製
2)-1 NYA-0001変異体の取得
NYA-0001遺伝子を鋳型として、PCRを利用して変異を導入する方法(Error-prone-based ライブラリー)、又は、CDRの全残基の各残基毎に、20種類のアミノ酸にランダム変異させたオリゴマーを合成し、ライブラリーを構築する方法(oligo‐basedライブラリー)を用いてファージライブラリーを構築し、高結合能クローンのスクリーニングを行い、高結合能変異体としてNYA-0060、NYA-0068、NYA-0082を取得し、各ヌクレオチド配列を決定した。
【0213】
取得したNYA-0060の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号9(
図16)に示し、アミノ酸配列を配列番号10(
図17)に示した。
【0214】
取得したNYA-0060の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号11(
図18)に示し、アミノ酸配列を配列番号12(
図19)に示した。
【0215】
取得したNYA-0068の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号13(
図20)に示し、アミノ酸配列を配列番号14(
図21)に示した。
【0216】
取得したNYA-0068の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号15(
図22)に示し、アミノ酸配列を配列番号16(
図23)に示した。
【0217】
取得したNYA-0082の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号17(
図24)に示し、アミノ酸配列を配列番号18(
図25)に示した。
【0218】
取得したNYA-0082の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号19(
図26)に示し、アミノ酸配列を配列番号20(
図27)に示した。
【0219】
2)-2 NYA-0060、NYA-0068、NYA-0082より同定した変異部位及び組合せによる高結合能変異体の作製
NYA-0060、NYA-0068各々の変異部位をもつNYA-1163、NYA-2023をコードするDNA断片をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)にてpcDNA3.3(Thermo Fisher Scientific社)を骨格とした哺乳動物細胞用発現ベクターに挿入し、哺乳動物細胞用scFv発現ベクターを構築した。
【0220】
また、NYA-0060、NYA-0068、NYA-0082より同定した変異部位及びそれらの組合せとして、NYA-2027、NYA-1143、NYA-2143を設計した。1)-5で構築したNYA-0001発現ベクターへ部位特異的変異導入、若しくは目的scFvをコードするDNA断片をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)にてpcDNA3.3(Thermo Fisher Scientific社)を骨格とした哺乳動物細胞用発現ベクターに挿入することにより、各哺乳動物細胞用scFv発現ベクターを構築した。
【0221】
構築したscFv発現ベクターのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-1163全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号21(
図28)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0222】
NYA-2023全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号22(
図29)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0223】
NYA-2027全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号23(
図30)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0224】
NYA-1143全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号24(
図31)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0225】
NYA-2143全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号25(
図32)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0226】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYA-1163、NYA-2023、NYA-2027、NYA-1143及びNYA-2143全長のアミノ酸配列を確認した。
【0227】
NYA-1163全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号26(
図33)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-1163であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0228】
NYA-2023全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号27(
図34)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2023であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0229】
NYA-2027全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号28(
図35)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2027であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0230】
NYA-1143全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号29(
図36)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-1143であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0231】
NYA-2143全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号30(
図37)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2143であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0232】
なお、NYA-1163のCDR配列は全てNYA-0001のCDR配列と同一である。また、NYA-1143、NYA-2143及びNYA-2023のCDR配列は同一であり、CDRH1は配列番号54(
図61)に、CDRH2は配列番号55(
図61)に、CDRH3は配列番号56(
図61)に、CDRL1は配列番号60(
図62)に、CDRL2は配列番号58(
図61)に、CDRL3は配列番号59(
図61)に示した。更に、NYA-2027のCDR配列は、CDRH1は配列番号54(
図61)に、CDRH2は配列番号55(
図61)に、CDRH3は配列番号56(
図61)に、CDRL1は配列番号57(
図61)に、CDRL2は配列番号58(
図61)に、CDRL3は配列番号61(
図63)に示した。
【0233】
また、高結合能クローンのスクリーニングの際見られた結合変異部位を組合せたNYA-1154を設計し、NYA-0001発現ベクターへ部位特異的変異導入することによりpcDNA3.3(Thermo Fisher Scientific社)を骨格としたNYA-1154発現ベクターを構築した。構築したscFv発現ベクターのヌクレオチド配列は再解析し、配列番号31(
図38)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYA-1154全長のアミノ酸配列を確認した(配列番号32(
図39))。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-1154であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0234】
NYA-1154のCDR配列はそれぞれ、CDRH1は配列番号54(
図61)に、CDRH2は配列番号55(
図61)に、CDRH3は配列番号62(
図64)に、CDRL1は配列番号57(
図61)に、CDRL2は配列番号58(
図61)に、CDRL3は配列番号63(
図64)に示した。
【0235】
1)-5-2と同様の方法にてNYA-1163、NYA-2023、NYA-2027、NYA-1143、NYA-2143及びNYA-1154を発現させ、各目的scFvを精製した。精製タンパク質サンプルは分析用SECに供し、純度と濃度を決定した後、各種アッセイに用いた。
【0236】
2)-3 NYA-1143変異体作製
2)-3-1 NYA-2035の作製
NYA-1143の変異体としてNYA-2035を設計し、哺乳動物細胞用NYA-1143発現ベクターへ部位特異的変異導入することでNYA-2035発現ベクターを構築した。構築したscFv発現ベクターのヌクレオチド配列は再解析し、配列番号35(
図42)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYA-2035全長のアミノ酸配列を決定した(配列番号36(
図43))。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2035であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。IMGTのCDR定義におけるNYA-2035のCDR配列はそれぞれ、CDRH1は配列番号54(
図61)に、CDRH2は配列番号55(
図61)に、CDRH3は配列番号56(
図61)に、CDRL1は配列番号64(
図65)に、CDRL2は配列番号58(
図61)に、CDRL3は配列番号59(
図61)に示した。
【0237】
2)-3-2 NYA-1143CDRグラフト変異体の作製
物性向上をめざし、NYA-1143CDRグラフト変異体を設計した。NYA-1143のVH及びVLのフレームワーク領域の配列を、KABAT et al.(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service National Institutes of Health, Bethesda,MD.(1991))において既定されるヒトのサブグループ・コンセンサス配列やGermline配列のフレームワーク領域と比較した。その結果、VHについてはヒトGermline配列IGHV3_30*15とヒトγ鎖サブグループ3のコンセンサス配列が、VLについてはヒトGermline配列IGLV1-44*01が、そのフレームワーク領域において高い配列同一性を有するアクセプターとして選択された。次に、各アクセプターのフレームワーク領域のアミノ酸残基を、NYA-1143のアミノ酸残基と整列させ、異なるアミノ酸が使用されている残基を同定した。
【0238】
次に、NYA-1143の三次元モデルを用いて、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029-10033(1989))によって与えられる基準などを参考に、アクセプター上に移入すべきフレームワーク残基を選択した。以上の手法により、NYA-1143のVH部分のCDRグラフト変異アミノ酸配列としてNYA-1143-VH01、NYA-1143-VH02、NYA-1143-VH03を設計した。各当該アミノ酸配列は、配列番号37(
図44)、38(
図45)、39(
図46)である。NYA-1143のVL部分のCDRグラフト変異アミノ酸配列としてNYA-1143-VL01を設計した。各当該アミノ酸配列は、配列番号40(
図47)である。
【0239】
設計した各VH及びVL配列を組合せ、以下に示す各種scFvを設計した。NYA-1143のVH部分を、NYA-1143-VH01のアミノ酸配列へ置き換えたscFvをNYA-2044と命名した。またNYA-2044のVL部分を、NYA-1143-VL01のアミノ酸配列へ置き換えたscFvを、NYA-2045と命名した。
【0240】
NYA-1143のVH部分を、NYA-1143-VH02のアミノ酸配列へ置き換えたscFvをNYA-2047と命名した。またNYA-2047のVL部分を、NYA-1143-VL01のアミノ酸配列へ置き換えたscFvをNYA-2048と命名した。
【0241】
NYA-1143のVH部分を、NYA-1143-VH03のアミノ酸配列へ置き換えたscFvをNYA-2060と命名した。またNYA-2060のVL部分を、NYA-1143-VL01のアミノ酸配列へ置き換えたscFvを、NYA-2061と命名した。
【0242】
設計した各種NYA-1143CDRグラフト変異体はDNA断片を全合成し(ファスマック社)DNA断片をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)にて結合することによりpcDNA3.3(Thermo Fisher Scientific社)を骨格とした哺乳動物細胞用scFv発現ベクターを構築した。
【0243】
構築したscFv発現ベクターのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-2044全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号41(
図48)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0244】
NYA-2045全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号42(
図49)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0245】
NYA-2047全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号43(
図50)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0246】
NYA-2048全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号44(
図51)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0247】
NYA-2060全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号45(
図52)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0248】
NYA-2061全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号46(
図53)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0249】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYA-2044、NYA-2045、NYA-2047、NYA-2048、NYA-2060、及びNYA-2061全長のアミノ酸配列を決定した。なお、NYA-2044、NYA-2045、NYA-2047、NYA-2048、NYA-2060、及びNYA-2061のCDR配列はNYA-1143と同一である。
【0250】
NYA-2044全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号47(
図54)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2044であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0251】
NYA-2045全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号48(
図55)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2045であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0252】
NYA-2047全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号50(
図57)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2047であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0253】
NYA-2048全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号51(
図58)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2048であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0254】
NYA-2060全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号52(
図59)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2060であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0255】
NYA-2061全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号53(
図60)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-2061であり、267番目から292番目のアミノ酸配列がFlag-Hisタグである。また、46番目から53番目のアミノ酸配列がCDRH1であり、71番目から78番目のアミノ酸配列がCDRH2であり、117番目から129番目のアミノ酸配列がCDRH3である。また、アミノ酸番号181番から188番はCDRL1であり、アミノ酸番号206番から208番はCDRL2であり、アミノ酸番号245番から256番はCDRL3である。
【0256】
2)-3-3 NYA-1143変異体の発現・精製
1)-5-2と同様の方法にて2)-3-1及び2)-3-2で作製したNYA-2035、NYA-2044、NYA-2045、NYA-2047、NYA-2048、NYA-2060、及びNYA-2061を発現させ、各目的scFvを精製した。精製タンパク質サンプルは分析用SECに供し、純度と濃度を決定した後、各種アッセイに用いた。
【0257】
(実施例3) 抗HLA/NY-ESO参照抗体のscFv作製
HLA/NY-ESOへ高結合能を有する抗体3M4E5及びT1(WO2010/106431)のscFvを設計し、3M4E5のscFvをNYC-0003、T1のscFvをNYC-0004と命名した。
【0258】
NYC-0003及びNYC-0004の各DNA断片を全合成し(Thermo Fisher Scientific社)、In-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)にてpcDNA3.3(Thermo Fisher Scientific社)を骨格とした哺乳動物細胞用scFv発現ベクターを構築した。
【0259】
構築したscFv発現ベクターのヌクレオチド配列は再解析し、NYC-0003及びNYC-0004全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号65(
図66)及び配列番号66(
図67)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。また、上記ヌクレオチド配列より当該配列がコードするNYC-0003全長のアミノ酸配列は配列番号67(
図68)またNYC-0004全長のアミノ酸配列は配列番号68(
図69)に示されるアミノ酸配列である。
【0260】
1)-5-2と同様の方法にて、NYC-0003及びNYC-0004を発現させ各目的scFvを精製した。各精製タンパク質サンプルは分析用SECに供し、純度と濃度を決定した後、各種アッセイに用いた。
【0261】
(実施例4) BiacoreによるHLA/NY-ESOへの結合能評価
Biacore T200を用い、固定化した抗His抗体へ抗HLA/NY-ESO scFvをリガンドとして捕捉(キャプチャー)し、抗原をアナライトとして測定した。抗原には、1)-1にて調製したHLA/NY-ESOを使用した。抗His抗体(His Capture kit、GE Healthcare社)はSensor Chip CM5(GE Healthcare社)へ、キット説明書に従い固定化させた。HBS-EP+(GE Healthcare社)で0.5μg/mLに希釈した評価する各抗HLA/NY-ESO scFvを10μL/minで60秒間接触させて固定化した。その後、HBS-EP+で希釈した複数濃度のHLA/NY-ESOをアナライトとして各サンプルを流速30μL/minで120秒間添加し、600秒間乖離を測定するシングルサイクルカイネティクス解析によりKDを算出し、結果を表1に記載した。親抗体 NYA-0001に比べその変異体はいずれもHLA/NY-ESOへの結合が強くなっていることが示された。またNYC-0004に比べ、NYA-1143、NYA-2023、NYA-2143、NYA-2044、NYA-2045、NYA-2060及びNYA-2061は結合が強く、このうちNYA-1143、NYA-2044、NYA-2045、NYA-2143はKDが1nM以下を示した。
【0262】
【0263】
(実施例5) 抗HLA/NY-ESO scFvのNY-ESOペプチド内の認識アミノ酸解析
ヒトリンパ芽球細胞融合細胞株T2(ATCC)細胞を20%FBS含有AIM-V培地(Thermo Fisher Scientific社)で適切な濃度に調整し、NY-ESOペプチド(配列番号1)、点変異NY-ESOペプチド1F、2M、3A、4A、5A、6L、7F、8A、9A(配列番号121(
図122)、122(
図123)、123(
図124)、124(
図125)、125(
図126)、126(
図127)、127(
図128)、128(
図129)、129(
図130))、gp100ペプチド(配列番号130(
図131))(いずれもSigma Genosys社)をDMSOで5mMに溶解した溶液を、最終濃度が50μMになるように、あるいはDMSOを1/100量添加し、37℃で4時間インキュベートした。20%FBS含有AIM-V培地で2回洗浄後、5%FBS含有PBSで適当な濃度に調製し、LIVE/DEAD Fixable DeadCell Stain Kit(ThermoFisher Scientific社)を添加し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄後、細胞を2つに分け、5%FBS含有PBSで10
5細胞/wellで96-well U底マイクロプレートに播種し、遠心後上清を除去した。一方の細胞について、5%FBS含有PBSで100nMに希釈した抗HLA/NY-ESO scFvを25μL/well添加し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄後、5%FBS含有PBSで希釈したPenta-His Alexa Fluor488(QIAGEN社)を25μL/well添加し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄後、5%FBS含有PBSで希釈したAnti-mouse-IgG Alexa Fluor488(Thermo Fisher Scientific社)を25μL/well添加し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄後、マイルドホルム 10N(富士フイルム和光純薬社)で一晩固定後、5%FBS含有PBSで再懸濁した。HLA/ペプチド複合体量で標準化を行うため、もう一方の細胞について、5%FBS含有PBSで10μg/mLに希釈したHLA-A2抗体BB7.2-Alexa Fluor 488、あるいはマウスIgG2b-Alexa Fluor 488を25μL/well添加し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄後、マイルドホルム 10N(富士フイルム和光純薬社)で一晩固定後、5%FBS含有PBSで再懸濁した。これら細胞懸濁液をフローサイトメーター(CantoII、Becton Dickinson社)で検出を行った。データ解析はFlowjo(Treestar社)で行い、T2細胞の死細胞除去画分のAlexa Fluor 488の幾何学的平均蛍光強度(gMFI)を測定した。T2細胞上のHLA/ペプチド複合体量で標準化された各scFvの結合性を示す値、標準化gMFIは次式で算出した。
【0264】
標準化gMFI=(A/B)×((C/D)/(E/F))
・A/B=相対gMFI
A:抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のgMFI
B:抗体非添加のDMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のgMFI
・(C/D)/(E/F)=DMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のHLA/ペプチド複合体量補正値
C:HLA-A2抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のgMFI
D:マウスIgG2b抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のgMFI
E:HLA-A2抗体添加のDMSO添加T2細胞のgMFI
F:マウスIgG2b抗体添加のDMSO添加T2細胞のgMFI
【0265】
図1に示す通り、抗HLA/NY-ESO scFv NYA-0001、1143、2044、2045、2047、2048、2060、2061は、野生型NY-ESOペプチドと比較し、1、4、5、7番目のアミノ酸に点変異を導入したペプチド添加T2に対する結合性が半分以下に低下したことから、NY-ESOペプチドの1、4、5、7番目のアミノ酸を認識していることが示唆された。同様に、NYA-1154は1、5番目を認識し、NYA-1163は1、3、4、5、6、7番目を認識し、NYA-2023、2027、2035は1、4、5番目を認識し、NYA-2143は1、5、7番目を認識していることが示唆された。一方で、NYC-0003、0004は4、5番目を認識していることが示唆された。
【0266】
(実施例6) 抗HLA/NY-ESO scFvの抗原結合特異性評価
ヒトプロテオーム(Swiss-Prot)の中から、結合する可能性のある、NY-ESOペプチド:SLLMWITQC(配列番号1)とアミノ酸配列が類似するが同一ではないヒトペプチド(以下「相同性ペプチド」という)の検索のため、本抗体の多くが認識していると示唆される1、4、5番目が一致した9-merペプチドを検索した。検索された9-merペプチドに関して、NetMHCPan2.8でHLA-A0201に対する結合性を予測し、IC50が500nM以下と予測された、
図2Aに示す9-merペプチドを抗HLA/NY-ESO scFvの結合特異性評価のための相同性ペプチドとして選択した。T2細胞を20%FBS含有AIM-V培地(Thermo Fisher Scientific社)で適切な濃度に調製し、NY-ESOペプチド(配列番号1)、相同性ペプチドDOLPP1、IL20RB、PRKD2、CD163、P2RY8(配列番号131(
図132)、132(
図133)、133(
図134)、134(
図135)、135(
図136))、gp100ペプチド(配列番号130(
図131))(いずれもSigma Genosys社)をDMSOで5mMに溶解した溶液を、最終濃度が50μMになるように、あるいはDMSOを1/100量添加し、実施例5と同様の方法で各抗体の結合性を評価した。T2細胞上のHLA/ペプチド複合体量で標準化された各scFvの結合性を示す値、標準化gMFIは次式で算出した。
【0267】
標準化gMFI=(A/B)×((C/D)/(E/F))
・A/B=相対gMFI
A:抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のgMFI
B:抗体非添加のDMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のgMFI
・(C/D)/(E/F)=DMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のHLA/ペプチド複合体量補正値
C:HLA-A2抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のgMFI
D:マウスIgG2b抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加T2細胞のgMFI
E:HLA-A2抗体添加のDMSO添加T2細胞のgMFI
F:マウスIgG2b抗体添加のDMSO添加T2細胞のgMFI
【0268】
図2Bに示す通り、抗HLA/NY-ESO scFv NYA-0001、1143、1163、2023、2027、2035、2044、2045、2047、2048、2060、2061、2143はいずれの相同性ペプチド添加細胞にも結合せず、特異性が高いことが示唆された。一方で、NYA-1154、NYC-0003、0004は一部の相同性ペプチド添加T2細胞への結合が見られた。
【0269】
(実施例7) Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の作製
7)-1 Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子発現ベクターの作製
7)-1-1 taFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子発現ベクターの作製
taFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を評価するため、各分子の発現ベクターを設計した。抗HLA/NY-ESO抗体は、NYA-1143、NYA-2143、NYA-1163、NYA-2023、NYA-2027、NYA-2035、NYA-2044、NYA-2045、NYA-2047、NYA-2048、NYA-2060及びNYA-2061を用いた。抗CD3抗体はヒト化抗CD3scFvであるC3E-7085(WO2018/117237)を用いた。ヘテロダイマーFc配列には、エフェクター機能を低下させ、且つヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc配列(WO2014/190441)を用いた。
【0270】
エフェクター機能を低下させ、且つヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc(HC1若しくはHC2)をコードするDNA断片を合成し(ファスマック社)、In-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)にてpcDNA3.3(ThermoFisher Scientific社)を骨格とした哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_HC1」と命名した。
【0271】
NYA-1143とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へ、HC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYF-0016-HC2」と命名した。
【0272】
NYA-2143とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0016-HC2へ部位特異的変異導入することにより作製し、「p_NYF-0019-HC2」と命名した。
【0273】
NYA-1163とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0016-HC2のNYA-1143をコードする塩基配列部分をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)を用いてNYA-1163をコードするDNA断片へ置き換えることにより作製し、「p_NYF-0022-HC2」と命名した。
【0274】
NYA-2023とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0016-HC2へ部位特異的変異導入することにより作製し、「p_NYF-0023-HC2」と命名した。
【0275】
NYA-2027とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、NYA-0001とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へ、HC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターへ部位特異的変異導入を加えることにより作製し、「p_NYF-0027-HC2」と命名した。
【0276】
NYA-2035とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0016-HC2へ部位特異的変異導入することにより作製し、「p_NYF-0035-HC2」と命名した。
【0277】
NYA-2044とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0016-HC2のNYA-1143をコードする塩基配列部分をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)を用いてNYA-2044をコードするDNA断片へ置き換えることにより作製し、「p_NYF-0044-HC2」と命名した。
【0278】
NYA-2045とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0016-HC2のNYA-1143をコードする塩基配列部分をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)を用いてNYA-2045をコードするDNA断片へ置き換えることにより作製し、「p_NYF-0045-HC2」と命名した。
【0279】
NYA-2047とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0016-HC2のNYA-1143をコードする塩基配列部分をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)を用いてNYA-2047をコードするDNA断片へ置き換えることにより作製し、「p_NYF-0047-HC2」と命名した。
【0280】
NYA-2048とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0016-HC2のNYA-1143をコードする塩基配列部分をIn-Fusion HD クローニングキット(CLONTECH社)を用いてNYA-2048をコードするDNA断片へ置き換えることにより作製し、「p_NYF-0048-HC2」と命名した。
【0281】
NYA-2060とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0044-HC2へ部位特異的変異導入することにより作製し、「p_NYF-0060-HC2」と命名した。
【0282】
NYA-2061とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へHC2をコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターは、p_NYF-0045-HC2へ部位特異的変異導入することにより作製し、「p_NYF-0061-HC2」と命名した。
【0283】
p_HC1のヌクレオチド配列は再解析し、HC1全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号71(
図72)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0284】
p_NYF-0016-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0016-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号72(
図73)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0285】
p_NYF-0019-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0019-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号73(
図74)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0286】
p_NYF-0022-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0022-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号74(
図75)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0287】
p_NYF-0023-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0023-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号75(
図76)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0288】
p_NYF-0027-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0027-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号76(
図77)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0289】
p_NYF-0035-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0035-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号77(
図78)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0290】
p_NYF-0044-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0044-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号78(
図79)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0291】
p_NYF-0045-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0045-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号79(
図80)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0292】
p_NYF-0047-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0047-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号80(
図81)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0293】
p_NYF-0048-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0048-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号81(
図82)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0294】
p_NYF-0060-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0060-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号82(
図83)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0295】
p_NYF-0061-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0061-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号83(
図84)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0296】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするHC1、NYF-0016-HC2、NYF-0019-HC2、NYF-0022-HC2、NYF-0023-HC2、NYF-0027-HC2、NYF-0035-HC2、NYF-0044-HC2、NYF-0045-HC2、NYF-0047-HC2、NYF-0048-HC2、NYF-0060-HC2、NYF-0061-HC2全長のアミノ酸配列を確認した。
【0297】
HC1全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号84(
図85)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から246番目のアミノ酸配列がHCである。
【0298】
NYF-0016-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号85(
図86)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-1143―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0299】
NYF-0019-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号86(
図87)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2143―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0300】
NYF-0022-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号87(
図88)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-1163―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0301】
NYF-0023-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号88(
図89)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2023―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0302】
NYF-0027-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号89(
図90)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2027―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0303】
NYF-0035-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号90(
図91)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2035―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0304】
NYF-0044-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号91(
図92)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2044―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0305】
NYF-0045-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号92(
図93)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2045―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0306】
NYF-0047-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号93(
図94)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2047―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0307】
NYF-0048-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号94(
図95)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2048―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0308】
NYF-0060-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号95(
図96)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2060―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0309】
NYF-0061-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号96(
図97)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2061―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0310】
7)-1-2 taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子発現ベクターの作製
taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子発現用ベクターを設計した。抗HLA/NY-ESO抗体は、NYA-0001を用いた。抗CD3抗体はヒト化抗CD3scFvであるC3E-7085(WO2018/117237)を用いた。ヘテロダイマーFc配列には、エフェクター機能を低下させ、かつヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc配列(WO2014/190441)を用いた。
【0311】
NYA-0001の重鎖可変領域、及びヒトIgG由来CH1領域、及びエフェクター機能を低下させ、かつHC1-k deleteをコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYA-0001-Fab-HC1-k delete」と命名した。またNYA-0001軽鎖可変領域、ヒトIgG由来CL領域をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYA-0001-LC」と命名した。
【0312】
p_NYA-0001-Fab-HC1-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-0001-Fab-HC1-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号97(
図98)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0313】
p_NYA-0001-LCのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-0001-LC全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号98(
図99)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0314】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYA-0001-Fab-HC1-k delete及びNYA-0001-LC全長のアミノ酸配列を確認した。
【0315】
NYA-0001-Fab-HC1-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号99(
図100)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から139番目のアミノ酸配列が可変領域であり、140番目から468番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、45番目から52番目のアミノ酸配列がCDRH1(配列番号54(
図61))であり、70番目から77番目のアミノ酸配列がCDRH2(配列番号55(
図61))であり、116番目から128番目のアミノ酸配列がCDRH3(配列番号56(
図61))である。
【0316】
NYA-0001-LC全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号100(
図101)に示されるアミノ酸配列である。1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から131番目のアミノ酸配列が可変領域であり、132番目から237番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号46番から53番はCDRL1(配列番号57(
図61))であり、アミノ酸番号71番から73番はCDRL2(配列番号58(
図61))であり、アミノ酸番号110番から121番はCDRL3(配列番号59(
図61))である。
【0317】
7)-2 Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の発現
7)-2-1 taFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の発現
Expi293F細胞(Thermo Fisher Scientific社)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。対数増殖期にあるExpi293F細胞培養液を2.5×10
6 cells/mL になるようExpi293 Expression medium(Thermo Fisher Scientific社)で希釈し、各種二重特異性分子の生産に用いた。20mLのOpti-Pro SFM培地(Thermo Fisher Scientific社)にベクターp_NYF-0016-HC2、p_HC1を1:1.5の比率で混合したベクター混合物、0.3mgと0.9mgのPolyethyleneimine(Polyscience #24765)を加えて穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にExpi293F細胞へ添加した。37℃、8%CO
2インキュベーターで6日間、135rpmで振とう培養して得られた培養上清を0.2μm filter(Millopore社)でろ過し、taFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0016)の培養上清を得た。NYF-0016を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号85(
図86)及び84(
図85)に示す。
【0318】
同様の手法にて、p_NYF-0019-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0019)の培養上清を発現調製した。NYF-0019を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号86(
図87)及び84(
図85)に示す。
【0319】
p_NYF-0022-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0022)の培養上清を発現調製した。NYF-0022を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号87(
図88)及び84(
図85)に示す。
【0320】
p_NYF-0023-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0023)の培養上清を発現調製した。NYF-0023を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号88(
図89)及び84(
図85)に示す。
【0321】
p_NYF-0027-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0027)の培養上清を発現調製した。NYF-0027を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号89(
図90)及び84(
図85)に示す。
【0322】
p_NYF-0035-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0035)の培養上清を発現調製した。NYF-0035を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号90(
図91)及び84(
図85)に示す。
【0323】
p_NYF-0044-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0044)の培養上清を発現調製した。NYF-0044を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号91(
図92)及び84(
図85)に示す。
【0324】
p_NYF-0045-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0045)の培養上清を発現調製した。NYF-0045を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号92(
図93)及び84(
図85)に示す。
【0325】
p_NYF-0047-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0047)の培養上清を発現調製した。NYF-0047を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号93(
図94)及び84(
図85)に示す。
【0326】
p_NYF-0048-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0048)の培養上清を発現調製した。NYF-0048を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号94(
図95)及び84(
図85)に示す。
【0327】
p_NYF-0060-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0060)の培養上清を発現調製した。NYF-0060を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号95(
図96)及び84(
図85)に示す。
【0328】
p_NYF-0061-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0061)の培養上清を発現調製した。NYF-0061を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号96(
図97)及び84(
図85)に示す。
【0329】
7)-2-2 taFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の発現
7)-2-1と同様の手法にてp_NYF-0023-HC2、p_NYA-0001-Fab-HC1-k deleteおよびp_NYA-0001-LCを1:1:1.5の比率で混合したベクター混合物を用いてtaFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子(NYF-0058)の培養上清を発現調製した。NYF-0058を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号88(図
89)のアミノ酸番号20~745、配列番号99(
図100)のアミノ酸番号20~468および配列番号100(
図101)のアミノ酸番号21~237に示す。
【0330】
7)-3 Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の精製
7)-2で得られた培養上清から各種二重特異性分子をProteinAアフィニティクロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーの2段階工程で精製した。
【0331】
PBS pH7.4で平衡化したMabSelectSuReカラム(GE Healthcare Bioscience社:単に「GE Healthcare社」ともいう)に培養上清をアプライし、目的の二重特異性分子を吸着させた。非吸着成分をPBSで除去した後、酢酸バッファ pH3.5で吸着成分を溶出した。溶出画分はTrisバッファ pH9.5でpHを中性に調製した後、濃縮し、予め25mM Histidine、300mM NaCL、5% Sorbitor、pH5.5で平衡化したゲルろ過カラム Superdex 200 10/300(GE Healthcare Bioscience社)に供した。ゲルろ過クロマトグラフィーで得られたピーク画分より、目的のヘテロダイマーに相当する画分を回収し、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)によって、目的の抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子が形成されていることを確認した。精製タンパク質サンプルは分析用SECに供し、純度と濃度を決定した後各種評価に用いた。
【0332】
(実施例8) Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の細胞傷害活性評価
8)-1 標的細胞の調製
内因性ヒトNY-ESO発現細胞株(U266B1、及び、NCI-H1703)、及び、内因性ヒトNY-ESO非発現細胞株(AGS、及び、CFPAC-1)を10%FBS含有RPMI1640培地(富士フイルム和光純薬社)で1×106細胞/mLの濃度に調製し、各細胞懸濁液1mLあたり100μLのChromium-51 Radionuclide(PerkinElmer社)を添加し、37℃、5%CO2の条件下で2時間培養した。10%FBS含有RPMI1640培地で2回洗浄した後、10%FBS含有RPMI1640培地で1×105細胞/mLになるよう再懸濁したものを標的細胞として用いた。
【0333】
8)-2 エフェクター細胞の調製
市販の凍結ヒトPBMC(Cellular Technology Limited社)を37℃で解凍し、10%FBS含有RPMI1640培地にAnti-aggregate Wash試薬(Cellular Technology Limited社)を添加した溶液に移して2回洗浄した後に10%FBS含有RPMI1640培地で1×106細胞/mLになるよう調製し、エフェクター細胞とした。
【0334】
8)-3 細胞傷害アッセイ
8)-1で取得した各標的細胞を50μL/wellで96-well U底マイクロプレートに添加した。そこに各種濃度に調製した実施例7で調製した各種Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を50μL/wellで添加し、実施例8)-2で調製したエフェクター細胞を100μL/well添加し、室温で1000rpm×1分間遠心後、37℃、5%CO2の条件下で20-24時間培養した。上清50μLをLumaPlate(PerkinElmer社)に回収し、50℃で約2時間乾燥させた後、プレートリーダー(TopCount:PerkinElmer社)で測定した。試験はtriplicateにて実施し、細胞溶解率は次式で算出した。
細胞溶解率(%)=(A-B)/(C-B)×100
A:サンプルウェルのカウント。
B:バックグラウンド(抗体非添加ウェル)カウントの平均値(n=3)。抗体添加時にアッセイ用培地を50μL添加した。それ以外はサンプルウェルと同様の操作を行った。C:最大放出(標的細胞を界面活性剤で溶解させたウェル)カウントの平均値(n=3)。抗体添加時にアッセイ培地を50μL添加した。界面活性剤は100μL添加し、サンプルウェルと同様に50μL分をLumaPlateに移して測定を実施した。
【0335】
図4A-Fに示す通り、内因性ヒトNY-ESO発現細胞株(U266B1、及び、NCI-H1703)に対して、各種抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の細胞傷害活性が示された。解析ソフトウェア(Sigmaplot、version 12.0)のFour Parameter Logistics Curveの計算式を用いてEC
50を算出し、U266B1細胞株における結果を表2に、NCI-H1703細胞株における結果を表3に記載した。Not Applicable(NA)は、相関係数R値が算出されず、カーブフィッティングできなかったことを示す。一方、
図4G-Lに示すとおり、内因性ヒトNY-ESO非発現細胞株(AGS、及び、CFPAC-1)に対する細胞傷害活性は認められなかった。
【0336】
【0337】
【0338】
(実施例9) Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子のヒトPBMC移入モデルにおけるin vivo活性評価
ヒト扁平上皮肺がん細胞株NCI-H1703(ATCC)を50%Matrigel(CORNING社)含有PBSで6×107細胞/mLになるよう調製し、NOGマウス(雌性、6~7週齢)の皮下に0.1mL移植した(Day0)。Day4にヒトPBMCをPBSで3.75×107細胞/mLになるよう調製し、0.2mL尾静脈内移植した。約1週間後(Day6~7)より経時的に腫瘍の長径(mm)及び短径(mm)を電子デジタルノギスで計測し、以下に示す計算式により推定腫瘍体積を算出した。
Estimated Tumor Volume(mm3)=各個体の推定腫瘍体積の平均値
各個体の推定腫瘍体積=長径×短径2/2
【0339】
Day14に各群n=5~6になるよう腫瘍体積による群分けを実施し、各種抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を尾静脈内投与(1mg/kg、NYF-0058のみ同モル量で比較のため1.5mg/kg)した。投与はDay14、Day21、Day28に実施した。各種抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子投与群において抗腫瘍効果が確認された(
図5A―C)。Day31~32におけるTumor Growth Inhibition(%)を以下に示す計算式により算出し、表4に記載した。
【0340】
Tumor Growth Inhibition(%)=100-(各群のEstimated Tumor Volume/Vehicle ControlのEstimated Tumor Volume×100)
【0341】
【0342】
(実施例10) 各種Fc付加型フォーマット抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の作製
10)-1 各種Fc付加型フォーマット抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子発現ベクターの作製
10)-1-1 Hybrid型二重特異性分子発現ベクターの作製
Hybrid型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を評価するため、各分子の発現ベクターを設計した。抗HLA/NY-ESO抗体は、NYA-1143を用いた。抗CD3抗体はヒト化抗CD3scFvであるC3E-7085(PCT/JP2017/046006)を用いた。ヘテロダイマーFc配列には、エフェクター機能を低下させ、かつヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc配列(WO2014/190441)を用いた。
【0343】
NYA-1143の重鎖可変領域、及びヒトIgG由来CH1領域、及びエフェクター機能を低下させ、かつヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc領域をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYA-1143-Fab-HC1-k delete」と命名した。またNYA-1143軽鎖可変領域、ヒトIgG由来CL領域をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYA-1143-LC」と命名した。また、ヒト化抗CD3scFv(C3E-7085)のカルボキシル末端へ、エフェクター機能を低下させヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc領域をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクター「p_C3E-7085-HC2-k delete」を作製した。
【0344】
p_NYA-1143-Fab-HC1-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-1143-Fab-HC1-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号101(
図102)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0345】
p_NYA-1143-LCのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-1143-LC全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号102(
図103)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0346】
p_C3E-7085-HC2-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、C3E-7085-HC2-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号103(
図104)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0347】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYA-1143-Fab-HC1-k delete、NYA-1143-LC及びC3E-7085-HC2-k delete全長のアミノ酸配列を確認した。
【0348】
NYA-1143-Fab-HC1-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号104(
図105)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から139番目のアミノ酸配列が可変領域であり、140番目から468番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、45番目から52番目のアミノ酸配列がCDRH1(配列番号54(
図61))であり、70番目から77番目のアミノ酸配列がCDRH2(配列番号55(
図61))であり、116番目から128番目のアミノ酸配列がCDRH3(配列番号56(
図61))である。
【0349】
NYA-1143-LC全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号105(
図106)に示されるアミノ酸配列である。1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から131番目のアミノ酸配列が可変領域であり、132番目から237番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号46番から53番はCDRL1(配列番号60(
図62))であり、アミノ酸番号71番から73番はCDRL2(配列番号58(
図61))であり、アミノ酸番号110番から121番はCDRL3(配列番号59(
図61))である。
【0350】
C3E-7085-HC2-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号106(
図107)に示されるアミノ酸配列である。1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から260番目のアミノ酸配列がC3E-7085であり、261番目から262番目のアミノ酸配列がリンカー、263番目から493番目のアミノ酸配列がエフェクター機能を低下させかつヘテロ二量体を形成させる変異を導入したFcである。
【0351】
10)-1-2 Dual型二重特異性分子発現ベクターの作製
Dual型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を評価するため、以下の発現ベクターを設計した。NYA-1143のカルボキシル末端へ、エフェクター機能を低下させヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc領域をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクター「p_NYA-1143-HC1-k delete」を作製した。
【0352】
p_NYA-1143-HC1-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-1143-HC1-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号107(
図108)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYA-1143-HC1-k delete全長のアミノ酸配列を確認した。NYA-1143-HC1-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号108(
図109)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から266番目のアミノ酸配列がNYA-1143であり、267番目から268番目のアミノ酸配列がリンカー、269番目から499番目のアミノ酸配列がエフェクター機能を低下させかつヘテロ二量体を形成させる変異を導入したFcである。
【0353】
10)-1-3 scFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子発現ベクターの作製
scFv-Fab-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を評価するため、各分子の発現ベクターを設計した。抗HLA/NY-ESO抗体はNYA-1154、抗CD3抗体はC3E-7085を用いた。ヘテロダイマーFc配列には、エフェクター機能を低下させ、かつヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc配列を用いた。
【0354】
C3E-7085のカルボキシル末端へNYA-1154の重鎖可変領域、及びヒトIgG由来CH1領域、及びエフェクター機能を低下させ、かつヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc領域をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k delete」と命名した。またNYA-1154軽鎖可変領域、ヒトIgG由来CL領域をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYA-1154-LC」と命名した。またHC1-k deleteをコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_OAA-HC1-k delete」と命名した。
【0355】
p_C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号109(
図110)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0356】
p_NYA-1154-LCのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-1154-LC全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号110(
図111)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0357】
p_OAA-HC1-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、OAA-HC1-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号111(
図112)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0358】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするC3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k delete、NYA-1154-LC及びOAA-HC1-k delete全長のアミノ酸配列を確認した。
【0359】
C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号112(
図113)に示されるアミノ酸配列である。1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から260番目のアミノ酸配列がC3E-7085であり、261番目から385番目のアミノ酸配列がリンカーであり、266番目から385番目のアミノ酸配列がNYA-1154-重鎖可変領域である。また、アミノ酸番号386番から714番目のアミノ酸配列はHC2-k deleteである。
【0360】
NYA-1154-LC全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号113(
図114)に示されるアミノ酸配列である。1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から131番目のアミノ酸配列が可変領域であり、132番目から237番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号46番から53番はCDRL1(配列番号57(
図61))であり、アミノ酸番号71番から73番はCDRL2(配列番号58(
図61))であり、アミノ酸番号110番から121番はCDRL3(配列番号63(
図64))である。
【0361】
OAA-HC1-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号114(
図115)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、20番目から245番目のアミノ酸配列がOAA-HC1-k deleteである。
【0362】
10)-1-4 各種フォーマット評価用taFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子発現ベクターの作製
各種フォーマット評価用taFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を評価するため、各分子の発現ベクターを設計した。抗HLA/NY-ESO抗体は、NYA-1143及びNYA-1154を用いた。抗CD3抗体はヒト化抗CD3scFvであるC3E-7085を用いた。ヘテロダイマーFc配列には、エフェクター機能を低下させ、かつヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc配列を用いた。
【0363】
NYA-1154とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へ、HC2-k deleteをコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYF-0010-HC2-k delete」と命名した。
【0364】
C3E-7085とNYA-1154をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へ、HC2-k deleteをコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYF-0004-HC2-k delete」と命名した。
【0365】
NYA-1143とC3E-7085をGGGGSリンカーでつなげたtaFvのカルボキシル末端へ、HC2-k deleteをコードするDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYF-0011-HC2-k delete」と命名した。
【0366】
p_NYF-0010-HC2-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0010-HC2-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号115(
図116)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0367】
p_NYF-0004-HC2-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0004-HC2-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号116(
図117)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0368】
p_NYF-0011-HC2-k deleteのヌクレオチド配列は再解析し、NYF-0011-HC2-k delete全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号117(
図118)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0369】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYF-0010-HC2-k delete、NYF-0004-HC2-k delete及びNYF-0011-HC2-k delete全長のアミノ酸配列を確認した。
【0370】
NYF-0010-HC2-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号118(
図119)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-1154―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から744番目のアミノ酸配列がHC2-k deleteである。
【0371】
NYF-0004-HC2-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号119(
図120)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がC3E-7085―NYA-1154taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目のから744番目のアミノ酸配列がHC2-k deleteである。
【0372】
NYF-0011-HC2-k delete全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号120(
図121)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-1143―C3E-7085taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2-k deleteである。
【0373】
10)-2 各種フォーマットFc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の発現
10)-2-1 Hybrid型二重特異性分子の発現
7)-2-1と同様の手法にてp_NYA-1143-Fab-HC1-k delete、p_C3E-7085-HC2-k delete及びp_NYA-1143-LCを1:1:1.5の比率で混合したベクター混合物を用いてHybrid型二重特異性分子(NYG-3143)の培養上清を発現調製した。NYG-3143を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号104(
図105)、配列番号105(
図106)及び106(
図107)に示す。
【0374】
10)-2-2 Dual型二重特異性分子の発現
7)-2-1と同様の手法にてp_NYA-1143-HC1-k delete、p_C3E-7085-HC2-k deleteを2:1の比率で混合したベクター混合物を用いてDual型二重特異性分子(NYG-2143)の培養上清を発現調製した。NYG-2143を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号108(
図109)及び106(
図107)に示す。
【0375】
10)-2-3 scFv-Fab-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の発現
7)-2-1と同様の手法にてp_C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k delete、p_OAA-HC1-k delete、p_NYA-1154-LCを1:1:1.5の比率で混合したベクター混合物を用いてscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型(scFv-Fab-Fc型)二重特異性分子(NYF-0003)の培養上清を発現調製した。NYF-0003を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号112(
図113)、配列番号113(
図114)及び114(
図115)に示す。
【0376】
10)-2-4 各種フォーマット評価用taFv-ヘテロダイマーFc型二重特異性分子の発現
7)-2-1と同様の手法にて、p_NYF-0010-HC2-k delete、p_OAA-HC1-k deleteを用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型(taFv-Fc型)抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0010)の培養上清を発現調製した。NYF-0010を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号118(
図119)及び114(
図115)に示す。
【0377】
p_NYF-0004-HC2-k delete、p_OAA-HC1-k deleteを用いてtaFv(inversed)-ヘテロダイマーFc型(taFv(inversed)-Fc型)抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0004)の培養上清を発現調製した。NYF-0004を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号119(
図120)及び114(
図115)に示す。
【0378】
p_NYF-0011-HC2-k delete、p_OAA-HC1-k deleteを用いてtaFv-Fc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYF-0011)の培養上清を発現調製した。NYF-0011を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号120(
図121)及び114(
図115)に示す。
【0379】
10)-3 各種フォーマットFc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の精製
10)-2-1及び10)-2-2で得られた培養上清より、各種二重特異性分子をProteinAアフィニティクロマトグラフィーとセラミックハイドロキシアパタイトの2段階工程で精製した。
【0380】
PBS pH7.4で平衡化したMabSelectSuReカラム(GE Healthcare Bioscience社)に培養上清をアプライし、目的の二重特異性分子を吸着させた。非吸着成分をPBSで除去した後、酢酸バッファ pH3.6で吸着成分を溶出した。溶出画分はTrisバッファ pH9.5でpHを中性に調製し、25mM Histidine、150mM NaCL、5% Sorbitor、pH5.5へバッファ交換した。10mMリン酸カリウム/50mM MES/pH6.5のバッファで5倍希釈した目的画分溶液を、10mM リン酸カリウム/50mM MES/pH6.5のバッファで平衡化されたセラミックハイドロキシアパタイトカラム(Bio-Scale CHT Type―1 Hydroxyapatite Column:日本バイオラッド社)にアプライした。塩化ナトリウムによる直線的濃度勾配溶出を実施し、目的のヘテロダイマーに相当する画分を集めた。予め25mM Histidine、300mM NaCL、5% Sorbitor、pH6.0で平衡化したゲルろ過カラム Superdex 200 10/300(GE Healthcare Bioscience社)に供した。ゲルろ過クロマトグラフィーで得られたピーク画分より、目的のヘテロダイマーに相当する画分を回収し、25mM Histidine、150mM NaCL、5% Sorbitor、pH5.5へバッファ交換した。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)によって、目的の抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子が形成されていることを確認した。精製タンパク質サンプルは分析用SECに供し、純度と濃度を決定した後、各種評価に用いた。
【0381】
また10)-2-3及び10)-2-4で得られた培養上清より、各種二重特異性分子を7)-3 と同様の手法にて、ProteinAアフィニティクロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーの2段階工程で精製した。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)によって、目的の抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子が形成されていることを確認した。精製タンパク質サンプルは分析用SECに供し、純度と濃度を決定した後、各種評価に用いた。
【0382】
(実施例11) 各種フォーマットFc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子のin vitro活性評価
11)-1 Hybrid体、Dual体、taFv-Fc体抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子のin vitro活性評価
11)-1-1 標的細胞の調製
U266B1細胞株を実施例8)-1と同様の方法で調製したものを標的細胞として用いた。
【0383】
11)-1-2 エフェクター細胞の調製
市販の凍結ヒトPBMC(Cellular Technology Limited社)を実施例8)-2と同様の方法で調製したものをエフェクター細胞として用いた。
【0384】
11)-1-3 細胞傷害アッセイ
実施例11)-1-1で取得した各標的細胞を50μL/wellで96-well U底マイクロプレートに添加した。そこに各種濃度に調製した実施例10で調製した各種フォーマット抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を50μL/wellで添加し、実施例11)-1-2で調製したエフェクター細胞を100μL/well添加し、室温で1000rpm×1分間遠心後、37℃、5%CO
2の条件下で20~24時間培養した。上清50μLをLumaPlate(PerkinElmer社)に回収し、50℃で約2時間乾燥させた後、プレートリーダー(TopCount:PerkinElmer社)で測定した。試験はtriplicateにて実施し、細胞溶解率は次式で算出した。細胞溶解率(%)=(A-B)/(C-B)×100
A:サンプルウェルのカウント。
B:バックグラウンド(抗体非添加ウェル)カウントの平均値(n=3)。抗体添加時にアッセイ用培地を50μL添加した。それ以外はサンプルウェルと同様の操作を行った。C:最大放出(標的細胞を界面活性剤で溶解させたウェル)カウントの平均値(n=3)。抗体添加時にアッセイ培地を50μL添加した。界面活性剤は100μL添加し、サンプルウェルと同様に50μL分をLumaPlateに移して測定を実施した。
図7Aに示す通り、taFv-Fc体による細胞傷害活性が示された。解析ソフトウェア(Sigmaplot、version 12.0)のFour Parameter Logistics Curveの計算式を用いてEC
50を算出し、結果を表5に記載した。Not Applicable(NA)は、相関係数R値が算出されず、カーブフィッティングできなかったことを示す。Hybrid体、Dual体による細胞傷害活性は認められなかった。
【0385】
【0386】
11)-2 scFv-Fab-Fc体、taFv-Fc体、taFv(inversed)-Fc体抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子のin vitro活性評価
11)-2-1 標的細胞の調製
U266B1細胞株を実施例8)-1と同様の方法で調製したものを標的細胞として用いた。
【0387】
11)-2-2 エフェクター細胞の調製
市販の凍結ヒトPBMC(Cellular Technology Limited社)を実施例8)-2と同様の方法で調製したものをエフェクター細胞として用いた。
【0388】
11)-2-3 細胞傷害アッセイ
11)-2-1で取得した各標的細胞を50μL/wellで96-well U底マイクロプレートに添加した。そこに各種濃度に調製した実施例10で調製した各種フォーマット抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を50μL/wellで添加し、実施例11)-2-2で調製したエフェクター細胞を100μL/well添加し、室温で1000rpm×1分間遠心後、37℃、5%CO
2の条件下で20-24時間培養した。上清50μLをLumaPlate(PerkinElmer社)に回収し、50℃で約2時間乾燥させた後、プレートリーダー(TopCount:PerkinElmer社)で測定した。試験はtriplicateにて実施し、細胞溶解率は次式で算出した。細胞溶解率(%)=(A-B)/(C-B)×100
A:サンプルウェルのカウント。
B:バックグラウンド(抗体非添加ウェル)カウントの平均値(n=3)。抗体添加時にアッセイ用培地を50μL添加した。それ以外はサンプルウェルと同様の操作を行った。C:最大放出(標的細胞を界面活性剤で溶解させたウェル)カウントの平均値(n=3)。抗体添加時にアッセイ培地を50μL添加した。界面活性剤は100μL添加し、サンプルウェルと同様に50μL分をLumaPlateに移して測定を実施した。
図7Bに示す通り、taFv-Fc体による細胞傷害活性が示された。解析ソフトウェア(Sigmaplot、version 12.0)のFour Parameter Logistics Curveの計算式を用いてEC
50を算出し、結果を表6に記載した。Not Applicable(NA)は、相関係数R値が算出されず、カーブフィッティングできなかったことを示す。scFv-Fab-ヘテロダイマーFc体、taFv(inversed)-ヘテロダイマーFc体はtaFv-ヘテロダイマーFc体と比較して低活性であった。
【0389】
【0390】
(実施例12) NYF-0061へ変異導入およびフォーマット変更した各種Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の作製
12)-1 NYF-0061へ変異導入およびフォーマット変更した各種Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子発現ベクターの作製
物性向上をめざしNYF-0061の変異体を設計し、各分子を構成する以下のベクターを作製した。
【0391】
NYF-0061のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が含まれるベクターp_NYF-0061-HC2のC3E-7085配列へ変異導入し、「p_NYZ-0038-HC2」と命名した。
【0392】
NYF-0061のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が含まれるベクターp_NYF-0061-HC2のNYA-2061配列およびC3E-7085配列へ変異導入し、「p_NYZ-0082-HC2」および「p_NYZ-0083-HC2」と命名した。
【0393】
p_NYZ-0038-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYZ-0038-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号152(
図148)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0394】
p_NYZ-0082-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYZ-0082-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号153(
図149)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0395】
p_NYZ-0083-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYZ-0083-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号154(
図150)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0396】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYZ-0038-HC2、NYZ-0082-HC2、NYZ-0083-HC2全長のアミノ酸配列を確認した。
【0397】
NYZ-0038-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号155(
図151)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から511番目のアミノ酸配列がNYA-2061―C3E-7096taFvであり、512番目から513番目のアミノ酸配列がリンカー、514番目から745番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0398】
NYZ-0082-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号156(
図152)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から516番目のアミノ酸配列がNYA-3061―C3E-7096taFvであり、517番目から518番目のアミノ酸配列がリンカー、519番目から750番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0399】
NYZ-0083-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号157(
図153)に示されるアミノ酸配列である。当該配列において、1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から516番目のアミノ酸配列がNYA-3061―C3E-7097taFvであり、517番目から518番目のアミノ酸配列がリンカー、519番目から750番目のアミノ酸配列がHC2である。
【0400】
またNYF-0061をscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型へのフォーマット変更を検討するため、各分子を構成する以下のベクターを設計した。
NYA-3061のカルボキシル末端へ(i)C3E-7085の重鎖可変領域、(ii)ヒトIgG由来CH1領域、及び(iii)エフェクター機能を低下させ、かつヘテロ多量体を形成させる変異を導入したFc領域の順に付加してなるポリペプチドに含まれるアミノ酸配列をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_NYZ-1010-HC2」と命名した。またC3E-7085軽鎖可変領域のカルボキシル末端にヒトIgG由来CL領域が付加してなるポリペプチドに含まれるアミノ酸配列をコードするDNA断片が組み込まれた哺乳動物細胞用発現ベクターを作製し、「p_C3E-7085-LC」と命名した。
【0401】
p_NYZ-1010-HC2のヌクレオチド配列は再解析し、NYZ-1010-HC2全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号158(
図154)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0402】
p_C3E-7085-LCのヌクレオチド配列は再解析し、C3E-7085-LC全長のヌクレオチド配列は配列表の配列番号159(
図155)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。
【0403】
また、上記ヌクレオチド配列から、当該配列がコードするNYZ-1010-HC2、C3E-7085-LC全長のアミノ酸配列を確認した。
【0404】
NYZ-1010-HC2全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号160(
図156)に示されるアミノ酸配列である。1番目から19番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から271番目のアミノ酸配列がNYA-3061であり、272番目から276番目のアミノ酸配列がリンカーであり、277番目から394番目のアミノ酸配列がC3E-7085-重鎖可変領域である。また、395番目から724番目のアミノ酸配列が定常領域である。
【0405】
C3E-7085-LC全長のアミノ酸配列は配列表の配列番号161(
図157)に示されるアミノ酸配列である。1番目から20番目のアミノ酸配列がシグナル配列であり、21番目から127番目のアミノ酸配列が可変領域であり、128番目から233番目のアミノ酸配列が定常領域である。また、アミノ酸番号46番から53番はCDRL1(配列番号144(
図142))であり、アミノ酸番号71番から73番はCDRL2(配列番号145(
図142))であり、アミノ酸番号110番から117番はCDRL3(配列番号146(
図142))である。
【0406】
12)-2 NYF-0061へ変異導入およびフォーマット変更した各種Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の発現および精製
7)-2-1と同様の手法にてp_NYZ-0038-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYZ-0038)の培養上清を発現調製した。NYZ-0038を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号155(
図151)及び84(
図85)に示す。
【0407】
p_NYZ-0082-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYZ-0082)の培養上清を発現調製した。NYZ-0082を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号156(
図152)及び84(
図85)に示す。
【0408】
p_NYZ-0083-HC2、p_HC1を用いてtaFv-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYZ-0083)の培養上清を発現調製した。NYZ-0083を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号157(
図153)及び84(
図85)に示す。
【0409】
p_NYZ-1010-HC2、p_C3E-7085-LCおよびp_HC1を用いてscFv-Fab-ヘテロダイマーFc型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子(NYZ-1010)の培養上清を発現調製した。NYZ-1010を構成する各ベクターを発現させて得られNYZ-1010を構成する各ベクターを発現させて得られるアミノ酸の配列を配列表の配列番号160(
図156)、配列番号161(
図157)及び84(
図85)に示す。
【0410】
上記調製した各培養上清は、7)-3 と同様の手法で精製した。精製タンパク質サンプルは分析用SECに供し、純度と濃度を決定した後各種評価に用いた。
【0411】
(実施例13) BiacoreによるHLA/NY-ESOへの結合能評価
Biacore T200を用い、固定化した抗Human IgG(Fc)抗体へ各Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子をリガンドとして捕捉(キャプチャー)し、抗原をアナライトとして測定した。抗原には、1)-1にて調製したHLA/NY-ESOを使用した。抗Human IgG(Fc)抗体(Human antibody Capture kit、GE Healthcare社)はSensor Chip CM5(GE Healthcare社)へ、キット説明書に従い固定化させた。HBS-EP+(GE Healthcare社)で0.5μg/mLに希釈した評価する各Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を10μL/minで60秒間接触させて固定化した。その後、HBS-EP+で希釈した複数濃度のHLA/NY-ESOをアナライトとして各サンプルを流速30μL/minで120秒間添加し、600秒間乖離を測定するシングルサイクルカイネティクス解析によりKDを算出し、結果を表7に記載した。NYZ-0038、NYZ-0082、NYZ-0083、及びNYZ-1010はいずれもNYF-0061と同程度の結合を保持していた。
【0412】
【0413】
(実施例14) CD3eノックアウトヒトリンパ芽球細胞融合細胞株T2細胞の作製
CRISPR技術を使ってヒトリンパ芽球細胞融合細胞株T2(ATCC)細胞のゲノム配列よりCD3eをノックアウトするため、Cas9発現プラスミド(GE Healthcare社)とsgRNA発現プラスミドをElectroporation(LONZA社)にて導入した。導入後、限界希釈法による細胞クローニングを行った。導入細胞におけるゲノムDNA解析による目的の遺伝子断片欠失および全RNAでのRT-PCR解析によりCD3e遺伝子発現が認められない細胞を取得し、以降の実験に供した。
【0414】
(実施例15) Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子のNY-ESOペプチド内の認識アミノ酸解析
実施例14で作製したCD3eノックアウトT2細胞を20%FBS含有AIM-V培地(Thermo Fisher Scientific社)で適切な濃度に調製し、実施例5)と同様の手法にて、NY-ESOペプチド(配列番号1)、点変異NY-ESOペプチド1F、2M、3A、4A、5A、6L、7F、8A、9A(配列番号121(
図122)、122(
図123)、123(
図124)、124(
図125)、125(
図126)、126(
図127)、127(
図128)、128(
図129)、129(
図130))、gp100ペプチド(配列番号130(
図131))(いずれもSigma Genosys社)を添加し、LIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stain Kit(Thermo Fisher Scientific社)染色した細胞を2つに分け、5%FBS含有PBSで10
5細胞/wellで96-well U底マイクロプレートに播種し、遠心後上清を除去した。一方の細胞について、5%FBS含有PBSで100nMに希釈した実施例12で調製した各種Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を25μL/well添加し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄後、5%FBS含有PBSで希釈したPE conjugated F(ab‘)2 Fragment Anti-Human IgG(Jackson Immuno Research Laboratories社)を25μL/well添加し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄後、マイルドホルム 10N(富士フイルム和光純薬社)で一晩固定後、5%FBS含有PBSで再懸濁した。HLA/ペプチド複合体量で標準化を行うため、もう一方の細胞について、5%FBS含有PBSで10μg/mLに希釈したHLA-A2抗体BB7.2-Alexa Fluor 488(BioRAD社)、あるいはマウスIgG2b-Alexa Fluor 488(BioRAD社)を25μL/well添加し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄後、マイルドホルム 10N(富士フイルム和光純薬社)で一晩固定後、5%FBS含有PBSで再懸濁した。これら細胞懸濁液をフローサイトメーター(CantoII、Becton Dickinson社)で検出を行った。データ解析はFlowjo(Treestar社)で行い、CD3eノックアウトT2細胞の死細胞除去画分のPEあるいはAlexa Fluor 488の幾何学的平均蛍光強度(gMFI)を測定した。CD3eノックアウトT2細胞上のHLA/ペプチド複合体量で標準化された各Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の結合性を示す値、標準化gMFIは次式で算出した。
標準化gMFI=(A/B)×((C/D)/(E/F))
・A/B=相対gMFI
A:抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のPE gMFI
B:抗体非添加のDMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のPE gMFI
・(C/D)/(E/F)=DMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のHLA/ペプチド複合体量補正値
C:HLA-A2抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のAlexa488 gMFI
D:マウスIgG2b抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のAlexa488 gMFI
E:HLA-A2抗体添加のDMSO添加CD3eノックアウトT2細胞のAlexa488 gMFI
F:マウスIgG2b抗体添加のDMSO添加CD3eノックアウトT2細胞のAlexa488 gMFI
【0415】
図158Aに示す通り、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子NYZ-0038、0082、0083、1010は、野生型NY-ESOペプチドと比較し、1、4、5、7番目のアミノ酸に点変異を導入したペプチド添加CD3eノックアウトT2に対する結合性が4分の1以下に低下したことから、NY-ESOペプチドの1、4、5、7番目のアミノ酸を強く認識していることが示唆された。
【0416】
(実施例16) Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の抗原結合特異性評価
実施例6)と同様の手法にて、NY-ESOペプチド:SLLMWITQC(配列番号1)配列中、本抗体4種類が特に強く認識していると示唆される1、4、5番目のアミノ酸配列が一致した、
図2Aに示す9-merペプチドを相同性ペプチドとして選定し、結合特異性評価を実施した。CD3eノックアウトT2細胞を20%FBS含有AIM-V培地(Thermo Fisher Scientific社)で適切な濃度に調製し、NY-ESOペプチド(配列番号1)、相同性ペプチドDOLPP1、IL20RB、PRKD2、CD163、P2RY8(配列番号131(
図132)、132(
図133)、133(
図134)、134(
図135)、135(
図136))、gp100ペプチド(配列番号130(
図131))(いずれもSigma Genosys社)をDMSOで5mMに溶解した溶液を、最終濃度が50μMになるように、あるいはDMSOを1/100量添加し、実施例15と同様の方法で各抗体の結合性を評価した。CD3eノックアウトT2細胞の上のHLA/ペプチド複合体量で標準化された各Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の結合性を示す値、標準化gMFIは次式で算出した。
標準化gMFI=(A/B)×((C/D)/(E/F))
A:抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のPE gMFI
B:抗体非添加のDMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のPE gMFI
・(C/D)/(E/F)=DMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のHLA/ペプチド複合体量補正値
C:HLA-A2抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のAlexa488 gMFI
D:マウスIgG2b抗体添加のDMSOあるいは各ペプチド添加CD3eノックアウトT2細胞のAlexa488 gMFI
E:HLA-A2抗体添加のDMSO添加CD3eノックアウトT2細胞のAlexa488 gMFI
F:マウスIgG2b抗体添加のDMSO添加CD3eノックアウトT2細胞のAlexa488 gMFI
【0417】
図158Bに示す通り、Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子NYZ-0038、0082、0083、1010はいずれの相同性ペプチド添加細胞にも結合せず、特異性が極めて高いことが示唆された。
【0418】
(実施例17) Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の細胞傷害活性評価
17)-1 標的細胞の調製
実施例8)-1と同様の手法にて、内因性ヒトNY-ESO発現細胞株(U266B1、及び、NCI-H1703)、及び、内因性ヒトNY-ESO非発現細胞株(AGS、及び、CFPAC-1)の懸濁液を調製し、標的細胞として用いた。
【0419】
17)-2 エフェクター細胞の調製
実施例8)-2と同様の手法にて、市販の凍結ヒトPBMC(Cellular Technology Limited社)懸濁液を調製し、エフェクター細胞として用いた。
【0420】
17)-3 細胞傷害アッセイ
実施例17)-1で取得した各標的細胞を50μL/wellで96-well U底マイクロプレートに添加した。そこに各種濃度に調製した実施例12で調製した各種Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を50μL/wellで添加し、実施例17)-2で調製したエフェクター細胞を100μL/well添加し、室温で1000rpm×1分間遠心後、37℃、5%CO2の条件下で20-24時間培養した。上清50μLをLumaPlate(PerkinElmer社)に回収し、50℃で約2時間乾燥させた後、プレートリーダー(TopCount:PerkinElmer社)で測定した。試験はtriplicateにて実施し、細胞溶解率は次式で算出した。細胞溶解率(%)=(A-B)/(C-B)×100
A:サンプルウェルのカウント。
B:バックグラウンド(抗体非添加ウェル)カウントの平均値(n=3)。抗体添加時にアッセイ用培地を50μL添加した。それ以外はサンプルウェルと同様の操作を行った。
C:最大放出(標的細胞を界面活性剤で溶解させたウェル)カウントの平均値(n=3)。抗体添加時にアッセイ培地を50μL添加した。界面活性剤は100μL添加し、サンプルウェルと同様に50μL分をLumaPlateに移して測定を実施した。
【0421】
図159A-Dに示す通り、内因性ヒトNY-ESO発現細胞株(U266B1、及び、NCI-H1703)に対して、各種抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の細胞傷害活性が示された。解析ソフトウェア(Sigmaplot、version 12.0)のFour Parameter Logistics Curveの計算式を用いてEC
50を算出し、U266B1細胞株における結果を表8に、NCI-H1703細胞株における結果を表9に記載した。一方、
図159E-Hに示すとおり、内因性ヒトNY-ESO非発現細胞株(AGS、及び、CFPAC-1)に対する細胞傷害活性は認められなかった。
【0422】
【0423】
【0424】
(実施例18) Fc付加型抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子のヒトPBMC移入モデルにおけるin vivo活性評価
ヒト扁平上皮肺がん細胞株NCI-H1703(ATCC)を50%Matrigel(CORNING社)含有PBSで6×107細胞/mLになるよう調製し、NOGマウス(雌性、6~7週齢)の皮下に0.1mL移植した(Day0)。Day4にヒトPBMCをPBSで3.75×107~5x107細胞/mLになるよう調製し、0.2mL尾静脈内移植した。約1週間後(Day6~7)より経時的に腫瘍の長径(mm)及び短径(mm)を電子デジタルノギスで計測し、以下に示す計算式により推定腫瘍体積を算出した。
【0425】
Estimated Tumor Volume(mm3)=各個体の推定腫瘍体積の平均値
各個体の推定腫瘍体積=長径×短径2/2
【0426】
Day14に各群n=5になるよう腫瘍体積による群分けを実施し、各種抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子を尾静脈内投与(NYZ-1010は1mg/kg、NYZ-1010は同モル量で比較のため1.2mg/kg)した。投与はDay14、Day21に実施した。各種抗HLA-A2/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子投与群において抗腫瘍効果が確認された(
図160A―D)。Day28~29におけるTumor Growth Inhibition(%)を以下に示す計算式により算出し、表10に記載した。
Tumor Growth Inhibition(%)=100-(各群のEstimated Tumor Volume/Vehicle ControlのEstimated Tumor Volume×100)
【0427】
【0428】
(実施例19) 各種Fc付加型抗HLA/NY-ESO-抗CD3二重特異性分子の物理化学的性質の比較
19)-1 酸処理評価
7)-2-1 で作製したNYF-0016および各種NYA-1143CDRグラフト変異体(NYF-0044、NYF-0045、NYF-0047、NYF-0048、NYF-0060およびNYF-0061)を、Amicon(Millipore社)を用いて遠心濃縮し25mM 酢酸ナトリウム、5%ソルビトール、pH5.5へバッファー交換後、濃度を15mg/ml (NYF-0016は10mg/ml)に調製した。次に、各サンプルは、Xpress Micro Dialyzer (Scienova社)を用いて100mM酢酸ナトリウム、pH3.5もしくはコントロール用として25mM酢酸ナトリウム、5%ソルビトール、pH5.5へ透析後サンプルを回収し、1時間、室温にて静置した。続いて各サンプルのpHを、500mM Tris-HCl、pH9.0を用いてpH5.0へ戻した。各サンプルは、ACQUITY UPLC BEH200 SEC 1.7μm 4.6*150 mm(Waters社)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)にて分析した。移動相は0.2M Ki/200mM KCl/pH7.0を用い、流速0.2ml/minにて分析した(検出波長280nm)。各サンプル中に含まれる多量体の含有量(%)を各ピーク解析し、面積百分率法により算出、結果を
図162に記載した。 NYF-0016は、酸処理により多量体が96%に増加した。一方、各種NYA-1143CDRグラフト変異体は、酸処理による多量体形成量は低下へ改善した。特にNYF-0047、NYF-0048、NYF-0060およびNYF-0061は、酸処理による多量体形成量が1%以下に低減し、酸耐性が大きく改善した。
【0429】
19)-2 溶液安定性評価
7)-2-1 で作製したNYF-0061および12)-2 で作製したNYZ-0038、NYZ-0082、NYZ-0083、NYZ-1010を用いて、Amicon Ultra-4(Millipore社)にて遠心濃縮し25mMヒスチジン、5%ソルビトール、pH6.0へバッファー交換後、25mMヒスチジン、5%ソルビトール、pH6.0を添加しサンプル濃度を25mg/mlに調製し評価用サンプルとした。また各評価用サンプルの開始時のhigh molecular weights speices(HMWS)は、AdvanceBio SEC 300A 2.7μm 4.6×300mm(Agilent社)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用い面積百分率法により算出した。移動相は0.2M Ki/200mM KCl/pH7.0を用い、流速0.2ml/minにて分析した(検出波長280nm)。各サンプルの溶液安定性試験は、25℃で6日(NYF-0061は7日)保存後、上記と同条件にてサイズ排除クロマトグラフィーを実施し、各サンプルのHMWS(%)を面積百分率法にて算出、結果を表11に記載した。NYF-0061の保存時間経過によるHMWS(%)は、約10.6%まで増加した。一方、NYZ-0038、NYZ-0082、NYZ-0083およびNYZ-1010の保存時間経過によるHMWS(%)は、約2%以下の増加にとどまった。よって、NYF-0061に比べ、NYZ-0038、NYZ-0082、NYZ-0083およびNYZ-1010の溶液安定性が優れていた。
【表11】
【0430】
(実施例20) 抗HLA/NY-ESOのscFv作製
20)-1 抗HLA/NY-ESOのscFv発現ベクターの構築
HLA-A2/NY-ESO-1へ高結合能を有するとされる抗体mAb24955N、mAb24956N、mAb28075P、mAb28105P、mAb28113PおよびmAb29822P2(WO2021/003357)のscFvを設計し、mAb24955NのscFvをNYC-0005、mAb24956NのscFvをNYC-0006、mAb28075P のscFvをNYC-0007、mAb28105PのscFvをNYC-0008、mAb28113PのscFvをNYC-0009、mAb29822P2のscFvをNYC-0010と命名した。
pcDNA3.4(ThermoFisher Scientific社)を骨格とした各種NYC-0005、NYC-0006、NYC-0007、NYC-0008、NYC-0009及びNYC-0010の哺乳動物細胞用scFv発現用ベクターを設計した。さらにベクター骨格およびフォーマットを揃えて哺乳動物細胞における発現量を比較するために、NYA-2047、NYA-2061,NYA-3061の哺乳動物細胞用scFv発現用ベクターを設計した。
構築したscFv発現ベクターのヌクレオチド配列は再解析し、NYA-2047、NYA―2061、NYA-3061、NYC-0005、NYC-0006、NYC-0007、NYC-0008、NYC-0009及びNYC-0010の全長のヌクレオチド配列はそれぞれ配列表の配列番号43(
図50)、46(
図53)、163(
図164)、165(
図166)、167(
図168)、169(
図170)、171(
図172)、173(
図174)、および175(
図176)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。また、上記ヌクレオチド配列より当該配列がコードするNYA-2047全長のアミノ酸配列は配列番号50(
図57)、NYA-2061全長のアミノ酸配列は配列番号53(
図60)、NYA-3061全長のアミノ酸配列は配列番号164(
図165)、NYC-0005全長のアミノ酸配列は配列番号166(
図167)、NYC-0006全長のアミノ酸配列は配列番号168(
図169)、NYC-0007全長のアミノ酸配列は配列番号170(
図171)、NYC-0008全長のアミノ酸配列は配列番号172(
図173)、NYC-0009全長のアミノ酸配列は配列番号174(
図175)、NYC-0010全長のアミノ酸配列は配列番号176(
図177)に示されるアミノ酸配列である。
【0431】
20)-2 抗HLA/NY-ESOのscFv発現・精製
Expi293F細胞(ThermoFisher Scientific社)の培養および遺伝子導入は1)-5-2に記載の方法と同様に実施した。生産量を評価するために、遺伝子導入してから37℃、8%CO
2インキュベーターで4日間、135rpmで振とう培養し、得られた培養上清を0.2μm filter(ThermoFisher Scientific社)でろ過し、抗HLA/NY-ESO scFvの培養上清を得た。精製は、Ni Sepharose excel(Cytiva社)を用いて実施し、溶出液を分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、濃度を決定した。生産量を表12に示した。NYA-2047、NYA―2061、NYA-3061のNi Sepharose excelによる精製後溶出液における培養上清1Lあたりに換算した生産量は、NYC-0005、NYC-0006、NYC-0007、NYC-0008、NYC-0009及びNYC-0010に比べて、いずれも多かった。
【表12】
各scFvのNi Sepharose excel溶出液は濃縮し、25mM Histidine、300mM NaCl、5% Sorbitor、pH5.5で平衡化したゲルろ過カラム(Superdex 200 Increase、Cytiva)にて精製した。精製タンパク質サンプルは分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、純度と濃度を決定した後、各種評価に用いた。
【0432】
(実施例21) 抗HLA/NY-ESOのscFv-ヘテロダイマーFcの発現・精製
21)-1 抗HLA/NY-ESOのscFv-ヘテロダイマーFc発現ベクターの構築
異なるフォーマットにおける生産性を比較するため、抗HLA/NY-ESOのscFvをFc融合体へフォーマット変換した発現ベクターを構築した。ヘテロダイマーFc配列(HC-hおよびHC-kと以下記載する)には、(Nat Biotechnol.1998Jul;16(7)677-81.)に報告されたものを用いた。
HLA-A2/NY-ESO-1へ高結合能を有するとされる抗体mAb24955N、mAb24956N、mAb28075P、mAb28105P、mAb28113PおよびmAb29822P2(WO2021/003357)のscFv-ヘテロダイマーFcを設計し、mAb24955NのscFv-ヘテロダイマーFcをNYC-0011、mAb24956NのscFv-ヘテロダイマーFcをNYC-0012、mAb28075PのscFv-ヘテロダイマーFcをNYC-0013、mAb28105PのscFv-ヘテロダイマーFcをNYC-0014、mAb28113PのscFv-ヘテロダイマーFcをNYC-0015、mAb29822P2のscFv-ヘテロダイマーFcをNYC-0016と命名した。また、NYA-2047のscFv-ヘテロダイマーFcをNYD-2047、NYA-2061のscFv-ヘテロダイマーFcをNYD-2061、NYA-3061のscFv-ヘテロダイマーFcをNYD-3061と命名した。
pcDNA3.3またはpcDNA3.4(ThermoFisher Scientific社)を骨格とした各種HC-h、NYC-0011-HC-k、NYC-0012-HC-k、NYC-0013-HC-k、NYC-0014-HC-k、NYC-0015-HC-k及びNYC-0016-HC-kの哺乳動物細胞用発現ベクターを設計した。さらにベクター骨格およびフォーマットを揃えて哺乳動物細胞における発現量を比較するために、NYD-2047-HC-k、NYD-2061-HC-k、NYD-3061-HC-kの哺乳動物細胞用発現ベクターを設計した。
構築したscFv-ヘテロダイマーFc発現ベクターのヌクレオチド配列は再解析し、HC-h、NYD-2047-HC-k、NYD―2061-HC-k、NYD-3061-HC-k、NYC-0011-HC-k、NYC-0012-HC-k、NYC-0013-HC-k、NYC-0014-HC-k、NYC-0015-HC-k及びNYC-0016-HC-kの全長のヌクレオチド配列はそれぞれ配列表の配列番号177(
図178)、179(
図180)、181(
図182)、183(
図184、185(
図186)、187(
図188)、189(
図190)、191(
図192)、193(
図194)および195(
図196)に示されるヌクレオチド配列であることを確認した。また、上記ヌクレオチド配列より当該配列がコードするHC-h全長のアミノ酸配列は配列番号178(
図179)、NYD-2047-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号180(
図181)、NYD-2061-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号182(
図183)、NYD-3061-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号184(
図185)、NYC-0011-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号186(
図187)、NYC-0012-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号188(
図189)、NYC-0013-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号190(
図191)、NYC-0014-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号192(
図193)、NYC-0015-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号194(
図195)、NYC-0016-HC-k全長のアミノ酸配列は配列番号196(
図197)に示されるアミノ酸配列である。
【0433】
21)-2 抗HLA/NY-ESOのscFv-ヘテロダイマーFcの発現・精製
Expi293F細胞(ThermoFisher Scientific社)の培養および遺伝子導入は1)-5-2に記載の方法と同様に実施した。各クローンの作製に用いたプラスミドの組み合わせを以下の表13に示した。
【表13】
生産量を評価するために、遺伝子導入してから37℃、8%CO
2インキュベーターで4日間、135rpmで振とう培養し、得られた培養上清を0.2μm filter(ThermoFisher Scientific社)でろ過し、抗HLA/NY-ESO scFv-ヘテロダイマーFcの培養上清を得た。精製は、PBS pH7.4で平衡化したMabSelectSuReレジン(Cytiva社)に培養上清をアプライし、目的の抗HLA/NY-ESOのscFv-ヘテロダイマーFcを吸着させた。非吸着成分をPBSで除去した後、酢酸緩衝液で溶出し、溶出液はTris緩衝液でpHを中性に調製した後、溶出液を分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、純度と濃度を決定した。培養上清1Lあたりに換算した生産量を表14に示した。NYC-0011、NYC-0012、NYC-0013、NYC-0014、NYC-0015及びNYC-0016に比べて、NYD-2047、NYD―2061、NYD-3061のMabSelectSuReレジンによる精製後溶出液における培養上清1Lあたりに換算した生産量はいずれも多かった。
【表14】
各scFv-ヘテロダイマーFcのMabSelectSuReレジン溶出液は濃縮し、25mM Histidine、300mM NaCl、5% Sorbitor、pH5.5で平衡化したゲルろ過カラム (Superdex 200 Increase、Cytiva)にて精製した。精製タンパク質サンプルは分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供し、純度と量が確保できたNYD-2047、NYD―2061、NYD-3061、NYC-0011、NYC-0013、及びNYC-0015を溶液安定性評価用サンプルとして用いた。なおNYC-0016はSECでの予想される溶出時間に目的物が検出できなかったため、培養上清に目的物が発現しなかったと判断した。
【0434】
(実施例22) 抗HLA/NY-ESOのscFv-ヘテロダイマーFcの溶液安定性評価
実施例21にて調製したNYD-2047、NYD―2061、NYD-3061、NYC-0011、NYC-0013、及びNYC-0015を用いて、Amicon Ultra-4(Millipore社)にて遠心濃縮しPBSへbuffer交換後、PBSを添加しサンプル濃度を5mg/mlに調整し評価用サンプルとした。また各評価用サンプルの開始時のHMWS(%)は、AdvanceBio SEC 300A 2.7μm 4.6×150mm(Agilent社)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用い面積百分率法により算出した。移動相は0.2M Ki/200mM KCl/pH7.0を用い、流速0.2ml/minにて分析した(検出波長280nm)。各サンプルの加速劣化試験は、40℃で1日、7日保存後、上記と同条件にてサイズ排除クロマトグラフィーを実施し、各サンプルのHMWS(%)を面積百分率法にて算出した。各サンプルの40℃で保存した際の経時変化を示した結果を
図163に示す。
NYD-2047、NYD―2061、NYD-3061の保存時間経過によるHMWS(%)は、各8.7、8.1、4.4%へ増加した。一方、NYC-0011、NYC-0013、及びNYC-0015の保存時間経過によるHMWS(%)は、各71.8、42.4、97.3%と顕著に増加した。
以上の結果より、NYD-2047、NYD―2061およびNYD-3061は、NYC-0011、NYC-0013、及びNYC-0015に比べ、溶液安定性が優れていた。また、NYD-3061は評価サンプル中でHMWS(%)が最も低く、溶液安定性がもっとも優れていた。
【0435】
(実施例23) BiacoreによるHLA/NY-ESOへの結合能評価
NYC-0011、NYC-0013、及びNYC-0015の抗HLA/NY-ESOを構成するscFvに相当するNYC-0005,NYC-0007、NYC-0008を用いてHLA/NY-ESOへの結合能を評価した。
Biacore T200を用い、固定化した抗His抗体へ上記抗HLA/NY-ESO scFvをリガンドとして捕捉(キャプチャー)し、抗原をアナライトとして測定した。抗原には、1)-1にて調製したHLA/NY-ESOを使用した。抗His抗体(His Capture kit、Cytiva社)はSensor Chip CM5(Cytiva社)へ、キット説明書に従い固定化させた。HBS-EP+(Cytiva社)で0.5μg/mLに希釈した評価する各抗HLA/NY-ESO scFvを10μL/minで60秒間接触させて固定化した。その後、HBS-EP+で希釈した複数濃度のHLA/NY-ESOをアナライトとして各サンプルを流速30μL/minで120秒間添加し、600秒間乖離を測定するシングルサイクルカイネティクス解析によりK
Dを算出し、結果を表15に記載した。陽性対照として用いたNYA-2047のHLA/NY-ESOへの結合能が安定して確認された条件下において、NYC-0005、NYC-0007、NYC-0008は、HLA/NY-ESOへ結合することを確認した。
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0436】
本発明の二重特異的抗体は、がん等の治療剤又は予防剤として利用することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
【配列表フリーテキスト】
【0437】
配列番号1:NY-ESO中のペプチドのアミノ酸配列(
図8)
配列番号2:MAGEC-1中のペプチドのアミノ酸配列(
図9)
配列番号3:scFvシークエンス解析用プライマー1(
図10)
配列番号4:scFvシークエンス解析用プライマー2(
図11)
配列番号5:NYA-0001の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(
図12)
配列番号6:NYA-0001の重鎖可変領域のアミノ酸配列(
図13)
配列番号7:NYA-0001の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(
図14)
配列番号8:NYA-0001の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(
図15)
配列番号9:NYA-0060の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(
図16)
配列番号10:NYA-0060の重鎖可変領域のアミノ酸配列(
図17)
配列番号11:NYA-0060の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(
図18)
配列番号12:NYA-0060の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(
図19)
配列番号13:NYA-0068の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(
図20)
配列番号14:NYA-0068の重鎖可変領域のアミノ酸配列(
図21)
配列番号15:NYA-0068の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(
図22)
配列番号16:NYA-0068の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(
図23)
配列番号17:NYA-0082の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(
図24)
配列番号18:NYA-0082の重鎖可変領域のアミノ酸配列(
図25)
配列番号19:NYA-0082の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(
図26)
配列番号20:NYA-0082の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(
図27)
配列番号21:NYA-1163タグ付加体のヌクレオチド配列(
図28)
配列番号22:NYA-2023タグ付加体のヌクレオチド配列(
図29)
配列番号23:NYA-2027タグ付加体のヌクレオチド配列(
図30)
配列番号24:NYA-1143タグ付加体のヌクレオチド配列(
図31)
配列番号25:NYA-2143タグ付加体のヌクレオチド配列(
図32)
配列番号26:NYA-1163タグ付加体のアミノ酸配列(
図33)、NYA-1163はアミノ酸番号21~266
配列番号27:NYA-2023タグ付加体のアミノ酸配列(
図34)、NYA-2023はアミノ酸番号21~266
配列番号28:NYA-2027タグ付加体のアミノ酸配列(
図35)、NYA-2027はアミノ酸番号21~266
配列番号29:NYA-1143タグ付加体のアミノ酸配列(
図36)、NYA-1143はアミノ酸番号21~266
配列番号30:NYA-2143タグ付加体のアミノ酸配列(
図37)、NYA-2143はアミノ酸番号21~266
配列番号31:NYA-1154タグ付加体のヌクレオチド配列(
図38)
配列番号32:NYA-1154タグ付加体のアミノ酸配列(
図39)、NYA-1154はアミノ酸番号21~266
配列番号33:HLA-A*0201(GenBank:ASA47534.1)のトランケート体のアミノ酸配列(
図40)
配列番号34:β2-マイクログロビンのアミノ酸配列(
図41)
配列番号35:NYA-2035タグ付加体のヌクレオチド配列(
図42)
配列番号36:NYA-2035タグ付加体のアミノ酸配列(
図43)、NYA-2035はアミノ酸番号21~266
配列番号37:NYA-1143-VH01のアミノ酸配列(
図44)
配列番号38:NYA-1143-VH02のアミノ酸配列(
図45)
配列番号39:NYA-1143-VH03のアミノ酸配列(
図46)
配列番号40:NYA-1143-VL01のアミノ酸配列(
図47)
配列番号41:NYA-2044タグ付加体のヌクレオチド配列(
図48)
配列番号42:NYA-2045タグ付加体のヌクレオチド配列(
図49)
配列番号43:NYA-2047タグ付加体のヌクレオチド配列(
図50)
配列番号44:NYA-2048タグ付加体のヌクレオチド配列(
図51)
配列番号45:NYA-2060タグ付加体のヌクレオチド配列(
図52)
配列番号46:NYA-2061タグ付加体のヌクレオチド配列(
図53)
配列番号47:NYA-2044タグ付加体のアミノ酸配列(
図54)、NYA-2044はアミノ酸番号21~266
配列番号48:NYA-2045タグ付加体のアミノ酸配列(
図55)、NYA-2045はアミノ酸番号21~266
配列番号49:NYA-0082のアミノ酸配列(
図56)
配列番号50:NYA-2047タグ付加体のアミノ酸配列(
図57)、NYA-2047はアミノ酸番号21~266
配列番号51:NYA-2048タグ付加体のアミノ酸配列(
図58)、NYA-2048はアミノ酸番号21~266
配列番号52:NYA-2060タグ付加体のアミノ酸配列(
図59)、NYA-2060はアミノ酸番号21~266
配列番号53:NYA-2061タグ付加体のアミノ酸配列(
図60)、NYA-2061はアミノ酸番号21~266
配列番号54:NYA-0001重鎖CDRH1(
図61)
配列番号55:NYA-0001重鎖CDRH2(
図61)
配列番号56:NYA-0001重鎖CDRH3(
図61)
配列番号57:NYA-0001軽鎖CDRL1(
図61)
配列番号58:NYA-0001軽鎖CDRL2(
図61)
配列番号59:NYA-0001軽鎖CDRL3(
図61)
配列番号60:NYA-2023のCDRL1のアミノ酸配列(
図62)
配列番号61:NYA-2027のCDRL3のアミノ酸配列(
図63)
配列番号62:NYA-1154重鎖CDRH3(
図64)
配列番号63:NYA-1154軽鎖CDRL3(
図64)
配列番号64:NYA-0035のCDRL1のアミノ酸配列(
図65)
配列番号65:NYC-0003タグ付加体のヌクレオチド配列(
図66)
配列番号66:NYC-0004タグ付加体のヌクレオチド配列(
図67)
配列番号67:NYC-0003タグ付加体のアミノ酸配列(
図68)、NYC-0003はアミノ酸番号21~263
配列番号68:NYC-0004タグ付加体のアミノ酸配列(
図69)、NYC-0004はアミノ酸番号21~263
配列番号69:NYA-0001タグ付加体のヌクレオチド配列(
図70)
配列番号70:NYA-0001タグ付加体のアミノ酸配列(
図71)、NYA-0001はアミノ酸番号21~266
配列番号71:HC1のヌクレオチド配列(
図72)
配列番号72:NYF-0016-HC2のヌクレオチド配列(
図73)
配列番号73:NYF-0019-HC2のヌクレオチド配列(
図74)
配列番号74:NYF-0022-HC2のヌクレオチド配列(
図75)
配列番号75:NYF-0023-HC2のヌクレオチド配列(
図76)
配列番号76:NYF-0027-HC2のヌクレオチド配列(
図77)
配列番号77:NYF-0035-HC2のヌクレオチド配列(
図78)
配列番号78:NYF-0044-HC2のヌクレオチド配列(
図79)
配列番号79:NYF-0045-HC2のヌクレオチド配列(
図80)
配列番号80:NYF-0047-HC2のヌクレオチド配列(
図81)
配列番号81:NYF-0048-HC2のヌクレオチド配列(
図82)
配列番号82:NYF-0060-HC2のヌクレオチド配列(
図83)
配列番号83:NYF-0061-HC2のヌクレオチド配列(
図84)
配列番号84:HC1のアミノ酸配列(
図85)
配列番号85:NYF-0016-HC2のアミノ酸配列(
図86)、NYA-1143はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号86:NYF-0019-HC2のアミノ酸配列(
図87)、NYA-2143はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号87:NYF-0022-HC2のアミノ酸配列(
図88)、NYA-1163はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号88:NYF-0023-HC2のアミノ酸配列(
図89)、NYA-2023はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号89:NYF-0027-HC2のアミノ酸配列(
図90)、NYA-2027はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号90:NYF-0035-HC2のアミノ酸配列(
図91)、NYA-2035はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号91:NYF-0044-HC2のアミノ酸配列(
図92)、NYA-2044はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号92:NYF-0045-HC2のアミノ酸配列(
図93)、NYA-2045はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号93:NYF-0047-HC2のアミノ酸配列(
図94)、NYA-2047はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号94:NYF-0048-HC2のアミノ酸配列(
図95)、NYA-2048はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号95:NYF-0060-HC2のアミノ酸配列(
図96)、NYA-2060はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号96:NYF-0061-HC2のアミノ酸配列(
図97)、NYA-2061はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号97:NYA-0001-Fab-HC1-k deleteのヌクレオチド配列(
図98)
配列番号98:NYA-0001-LCのヌクレオチド配列(
図99)
配列番号99:NYA-0001-Fab-HC1-k deleteのアミノ酸配列(
図100)、NYA-0001の重鎖可変領域はアミノ酸番号20~139
配列番号100:NYA-0001-LCのアミノ酸配列(
図101)、NYA-0001の軽鎖可変領域はアミノ酸番号21~131
配列番号101:NYA-1143-Fab-HC1-k deleteのヌクレオチド配列(
図102)
配列番号102:NYA-1143-LCのヌクレオチド配列(
図103)
配列番号103:C3E-7085-HC2-k deleteCのヌクレオチド配列(
図104)
配列番号104:NYA-1143-Fab-HC1-k deleteのアミノ酸配列(
図105)、NYA-1143の重鎖可変領域はアミノ酸番号20~139
配列番号105:NYA-1143-LCのアミノ酸配列(
図106)、NYA-1143の軽鎖可変領域はアミノ酸番号21~131
配列番号106:C3E-7085-HC2-k deleteのアミノ酸配列(
図107)、C3E-7085はアミノ酸番号21~260
配列番号107:NYA-1143-HC1-k deleteのヌクレオチド配列(
図108)
配列番号108:NYA-1143-HC1-k deleteのアミノ酸配列(
図109)、NYA-1143はアミノ酸番号21~266
配列番号109:C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k deleteのヌクレオチド配列(
図110)
配列番号110:NYA-1154-LCのヌクレオチド配列(
図111)
配列番号111:OAA-HC1-k deleteのヌクレオチド配列(
図112) 配列番号112:C3E-7085-NYA-1154-Fab-HC2-k deleteのアミノ酸配列(
図113)、C3E-7085はアミノ酸番号21~260、NYA-1154の重鎖可変領域はアミノ酸番号266~285
配列番号113:NYA-1154-LCのアミノ酸配列(
図114)、NYA-1154の軽鎖可変領域はアミノ酸番号21~131
配列番号114:OAA-HC1-k deleteのアミノ酸配列(
図115)、
配列番号115:NYF-0010-HC2-k deleteのヌクレオチド配列(
図116)
配列番号116:NYF-0004-HC2-k deleteのヌクレオチド配列(
図117)
配列番号117:NYF-0011-HC2-k deleteのヌクレオチド配列(
図118)
配列番号118:NYF-0010-HC2-k deleteのアミノ酸配列(
図119)、NYA-1154はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号119:NYF-0004-HC2-k deleteのアミノ酸配列(
図120)C3E-7085はアミノ酸番号21~260、NYA-1154はアミノ酸番号272~511
配列番号120:NYF-0011-HC2-k deleteのアミノ酸配列(
図121)、NYA-1143はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号121:点変異NY-ESOペプチド1Fのアミノ酸配列(
図122)
配列番号122:点変異NY-ESOペプチド2Mのアミノ酸配列(
図123)
配列番号123:点変異NY-ESOペプチド3Aのアミノ酸配列(
図124)
配列番号124:点変異NY-ESOペプチド4Aのアミノ酸配列(
図125)
配列番号125:点変異NY-ESOペプチド5Aのアミノ酸配列(
図126)
配列番号126:点変異NY-ESOペプチド6Lのアミノ酸配列(
図127)
配列番号127:点変異NY-ESOペプチド7Fのアミノ酸配列(
図128)
配列番号128:点変異NY-ESOペプチド8Aのアミノ酸配列(
図129)
配列番号129:点変異NY-ESOペプチド9Aのアミノ酸配列(
図130)
配列番号130:gp100ペプチドのアミノ酸配列(
図131)
配列番号131:相同性ペプチドDOLPP1のアミノ酸配列(
図132)
配列番号132:相同性ペプチドIL20RBのアミノ酸配列(
図133)
配列番号133:相同性ペプチドPRKD2のアミノ酸配列(
図134)
配列番号134:相同性ペプチドCD163のアミノ酸配列(
図135)
配列番号135:相同性ペプチドのP2RY8のアミノ酸配列(
図136)
配列番号136:C3E-7034のアミノ酸配列(
図137)
配列番号137:C3E-7036のアミノ酸配列(
図138)
配列番号138:C3E-7085のアミノ酸配列(
図139)
配列番号139:C3E-7088のアミノ酸配列(
図140)
配列番号140:C3E-7093のアミノ酸配列(
図141)
配列番号141:C3E-7085重鎖CDRH1(
図142)
配列番号142:C3E-7085重鎖CDRH2(
図142)
配列番号143:C3E-7085重鎖CDRH3(
図142)
配列番号144:C3E-7085軽鎖CDRL1(
図142)
配列番号145:C3E-7085軽鎖CDRL2(
図142)
配列番号146:C3E-7085軽鎖CDRL3(
図142)
配列番号147:C3E-7078のアミノ酸配列(
図143)
配列番号148:NYF-0014-HC2のヌクレオチド配列(
図144)
配列番号149:NYF-0014-HC2のアミノ酸配列(
図145)、NYA-0001はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号150:NYF-0082-HC2のアミノ酸配列(
図146)、NYA-0082はアミノ酸番号21~266、C3E-7085はアミノ酸番号272~511
配列番号151:ヒトCD3εのアミノ酸配列(
図147)
配列番号152:NYZ-0038-HC2全長のヌクレオチド配列(
図148)
配列番号153:NYZ-0082-HC2全長のヌクレオチド配列(
図149)
配列番号154:NYZ-0083-HC2全長のヌクレオチド配列(
図150)
配列番号155:NYZ-0038-HC2全長のアミノ酸配列(
図151)
配列番号156:NYZ-0082-HC2全長のアミノ酸配列(
図152)
配列番号157:NYZ-0083-HC2全長のアミノ酸配列(
図153)
配列番号158:NYZ-1010-HC2全長のヌクレオチド配列(
図154)
配列番号159:C3E-7085-LC全長のヌクレオチド配列(
図155)
配列番号160:NYZ-1010-HC2全長のアミノ酸配列(
図156)
配列番号161:C3E-7085-LC全長のアミノ酸配列(
図157)
配列番号162:ペプチドリンカーのアミノ酸配列(
図161)
配列番号163:NYA-3061全長のヌクレオチド配列(
図164)
配列番号164:NYA-3061全長のアミノ酸配列(
図165)
配列番号165:NYC-0005全長のヌクレオチド配列(
図166)
配列番号166:NYC-0005全長のアミノ酸配列(
図167)
配列番号167:NYC-0006全長のヌクレオチド配列(
図168)
配列番号168:NYC-0006全長のアミノ酸配列(
図169)
配列番号169:NYC-0007全長のヌクレオチド配列(
図170)
配列番号170:NYC-0007全長のアミノ酸配列(
図171)
配列番号171:NYC-0008全長のヌクレオチド配列(
図172)
配列番号172:NYC-0008全長のアミノ酸配列(
図173)
配列番号173:NYC-0009全長のヌクレオチド配列(
図174)
配列番号174:NYC-0009全長のアミノ酸配列(
図175)
配列番号175:NYC-0010全長のヌクレオチド配列(
図176)
配列番号176:NYC-0010全長のアミノ酸配列(
図177)
配列番号177:HC-h全長のヌクレオチド配列(
図178)
配列番号178:HC-h全長のアミノ酸配列(
図179)
配列番号179:NYD-2047-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図180)
配列番号180:NYD-2047-HC-k全長のアミノ酸配列(
図181)
配列番号181:NYD-2061-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図182)
配列番号182:NYD-2061-HC-k全長のアミノ酸配列(
図183)
配列番号183:NYD-3061-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図184)
配列番号184:NYD-3061-HC-k全長のアミノ酸配列(
図185)
配列番号185:NYC-0011-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図186)
配列番号186:NYC-0011-HC-k全長のアミノ酸配列(
図187)
配列番号187:NYC-0012-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図188)
配列番号188:NYC-0012-HC-k全長のアミノ酸配列(
図189)
配列番号189:NYC-0013-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図190)
配列番号190:NYC-0013-HC-k全長のアミノ酸配列(
図191)
配列番号191:NYC-0014-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図192)
配列番号192:NYC-0014-HC-k全長のアミノ酸配列(
図193)
配列番号193:NYC-0015-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図194)
配列番号194:NYC-0015-HC-k全長のアミノ酸配列(
図195)
配列番号195:NYC-0016-HC-k全長のヌクレオチド配列(
図196)
配列番号196:NYC-0016-HC-k全長のアミノ酸配列(
図197)
配列番号197:NYZ-1007-HCの全長アミノ酸配列(
図198)
配列番号198:NYZ-1017-HCの全長アミノ酸配列(
図199)
【配列表】