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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20230526BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20230526BHJP
   H01G 9/032 20060101ALI20230526BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20230526BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/028 E
H01G9/032
H01G9/145
H01G9/15
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019550392
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2018040226
(87)【国際公開番号】W WO2019088059
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2017210677
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 達治
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 佳津代
(72)【発明者】
【氏名】大塚 悠司
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-061100(JP,A)
【文献】特開2017-085092(JP,A)
【文献】特開2005-251885(JP,A)
【文献】特開2015-222769(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021333(WO,A1)
【文献】特開2017-188640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
H01G 9/028
H01G 9/032
H01G 9/145
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、誘電体層を有する陽極体と、陰極体と、前記誘電体層に接触した固体電解質と、を備え、
前記電解液は、溶媒と、溶質と、高分子成分と、を含み、
前記溶媒は、エチレングリコール化合物を含み、
前記高分子成分は、ポリアルキレングリコールを含み、
前記ポリアルキレングリコールは、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの混合物、およびオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体の少なくとも1つを含み、
前記ポリアルキレングリコールにおいて、オキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比(=m/n)は、1より大きく、5.0以下である、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記電解液中の前記ポリアルキレングリコールの濃度は、10質量%以上である、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記電解液は、鉱物油を含まない、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、誘電体層を有する陽極体と、陰極体と、前記誘電体層に接触した固体電解質と、を備え、
前記電解液は、溶媒と、溶質と、高分子成分と、を含み、
前記溶媒は、エチレングリコール化合物を含み、
前記高分子成分は、ポリアルキレングリコールを含み、
前記ポリアルキレングリコールは、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの混合物、およびオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体の少なくとも1つを含み、
前記ポリアルキレングリコールにおいて、オキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比(=m/n)は、1より大きく、
前記電解液中の前記ポリアルキレングリコールの濃度は、10質量%以上である、電解コンデンサ。
【請求項5】
前記電解液は、鉱物油を含まない、請求項4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、誘電体層を有する陽極体と、陰極体と、前記誘電体層に接触した固体電解質と、を備え、
前記電解液は、溶媒と、溶質と、高分子成分と、を含み、鉱物油を含まず、
前記溶媒は、エチレングリコール化合物を含み、
前記高分子成分は、ポリアルキレングリコールを含み、
前記ポリアルキレングリコールは、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの混合物、およびオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体の少なくとも1つを含み、
前記ポリアルキレングリコールにおいて、オキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比(=m/n)は、1より大きい、電解コンデンサ。
【請求項7】
前記溶媒に占める前記エチレングリコール化合物の割合は、10質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記エチレングリコール化合物は、エチレングリコールおよびオキシエチレンユニットの繰り返し数が2~8のポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記ポリオキシエチレンの数平均分子量は、200以上5,000以下であり、
前記ポリオキシプロピレンの数平均分子量は、200以上5,000以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
前記電解液中の前記ポリオキシエチレンの濃度は、50質量%以下であり、
前記電解液中の前記ポリオキシプロピレンの濃度は、50質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項11】
前記共重合体の数平均分子量は、200以上5,000以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項12】
前記電解液中の前記共重合体の濃度は、50質量%以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項13】
前記溶質は、酸成分および塩基成分を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項14】
前記電解液は、さらに、ホウ酸とヒドロキシ化合物との縮合物、およびリン酸とヒドロキシ化合物との縮合物からなる群より選択される少なくとも一種のエステル化合物を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質と電解液を用いる電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
小型かつ大容量でESR(等価直列抵抗)の低いコンデンサとして、固体電解質と電解液とを具備する、いわゆるハイブリッド型の電解コンデンサが有望視されている。
【0003】
特許文献1では、ハイブリッド型電解コンデンサの電解液に、溶媒として、エチレングリコールおよびγ-ブチロラクトンが使用され、添加剤としてポリエチレングリコールを添加することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/021333号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、電解コンデンサでは、耐電圧を向上させるため、陽極体の表面には酸化皮膜(化成皮膜)である誘電体層が形成されている。エチレングリコールやジエチレングリコールなどのエチレングリコール化合物は、電解液中の溶質を解離させ難く、酸化皮膜の修復機能が低下し易い。そのため、エチレングリコール化合物を含む電解液を用いた場合、漏れ電流の低減効果が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、誘電体層を有する陽極体と、陰極体と、前記誘電体層に接触した固体電解質と、を備え、前記電解液は、溶媒と、溶質と、高分子成分と、を含み、前記溶媒は、エチレングリコール化合物を含み、前記高分子成分は、ポリアルキレングリコールを含み、前記ポリアルキレングリコールは、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの混合物、およびオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体の少なくとも1つを含み、前記ポリアルキレングリコールにおいて、オキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比(=m/n)は、1より大きい、電解コンデンサに関する。
【発明の効果】
【0007】
エチレングリコールなどのエチレングリコール化合物を含む電解液を用いるハイブリッド型の電解コンデンサにおいて、漏れ電流を十分に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
図2】同実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、電解液と、を備える。コンデンサ素子は、誘電体層を有する陽極体と、陰極体と、誘電体層に接触した固体電解質と、を備える。電解液は、溶媒と、溶質と、高分子成分と、を含む。溶媒は、エチレングリコール化合物を含み、高分子成分は、ポリアルキレングリコールを含む。ポリアルキレングリコールは、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの混合物、およびオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体の少なくとも1つを含む。ポリアルキレングリコールにおいて、オキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比(=m/n)は、1より大きい。
【0010】
エチレングリコールなどのエチレングリコール化合物は、封口部材を透過し難く、電解コンデンサの電解液の蒸散を抑制する効果を有するものの、電解液に含まれる溶質を解離させ難い。電解コンデンサ内で、欠陥が生じた誘電体層が修復されるには、溶質の解離により生成するアニオンの作用により陽極体に含まれる金属が引き抜かれつつ酸化される必要がある。そのため、電解液にエチレングリコール化合物を用いると、誘電体層(誘電体皮膜)の修復性が低下し易くなる。
【0011】
本実施形態では、オキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比(=m/n)が1より大きいポリアルキレングリコール(具体的には、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの混合物、および/またはオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体)を用いる。詳細は定かではないが、モル比(m/n1より大きくすることで、ポリアルキレングリコールを陽極体の近傍の適度な位置に存在させ易くなり、誘電体層に欠陥が生じて誘電体層が修復される際に、アニオンの作用による、陽極体を構成する金属の引き抜きが、適度に制限されることで、修復された誘電体層が密に形成されるものと考えられる。一方、モル比(m/nが1以下の場合には、漏れ電流を十分に低減することが難しい。これは、モル比(m/nが1以下の場合には、オキシプロピレンユニットを有するポリアルキレングリコールが陽極体近傍に過剰に存在してしまい、アニオンが陽極体表面に対して作用し難くなり、誘電体層の修復が阻害されるためと考えられる。また、モル比(m/nが1以下の場合には、ポリアルキレングリコールが陽極体に密着すると、陽極体の表面の孔や窪み(ピット)が閉塞されて、容量が得られなくなることもある。本実施形態では、モル比(m/nを1より大きくすることで、このようなピットの閉塞も抑制できる。このようなポリアルキレングリコールは、電解コンデンサの誘電体層の修復性を向上させるため、漏れ電流を低減できる。
【0012】
なお、ポリアルキレングリコールは、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの混合物、および/またはオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体である。混合物の場合には、ポリオキシプロピレンが陽極体等の近傍に位置し易くなる。上記共重合体は、ポリアルキレングリコールを陽極体の近傍の適度な位置に存在させ易くなり、誘電体層の修復性がより高まる。また、上記共重合体は主構造が鎖状(もしくは主鎖が鎖状)であるので、分岐構造と比べて、電解液内を移動し易く、誘電体層近傍に適度に配置し易いため、誘電体層の修復性を向上できる。
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同電解コンデンサに係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図である。
【0015】
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する円筒状のケース11と、ケース11の開口部を塞ぐ封口部材12と、封口部材12を覆う座板13と、封口部材12の貫通孔から導出され、座板13を貫通するリード線14A、14Bと、リード線14A、14Bとコンデンサ素子10の電極とを接続するリードタブ15A、15Bとを備える。ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封口部材12にかしめるようにカール加工されている。
【0016】
コンデンサ素子10は、図2に示すような巻回体から作製される。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極体21と、リードタブ15Bと接続された陰極体22と、セパレータ23とを備える。巻回体は、陽極体21と陰極体22との間に固体電解質が形成されていない半製品である。
【0017】
陽極体21および陰極体22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
【0018】
陽極体21は、表面が凹凸を有するように粗面化された金属箔を具備し、凹凸を有する金属箔上に誘電体層が形成されている。誘電体層の表面の少なくとも一部に、固体電解質が付着している。固体電解質は、陰極体22の表面および/またはセパレータ23の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。固体電解質が形成されたコンデンサ素子10は、電解液(図示せず)とともにケース11に収容される。
【0019】
(電解液)
電解液は、溶媒と、溶質と、高分子成分と、を含む。電解液は、構成成分を混合することにより調製できる。
(溶媒)
溶媒は、少なくともエチレングリコール化合物(第1溶媒)を含んでいればよい。エチレングリコール化合物としては、エチレングリコール、オキシエチレンユニットの繰り返し数が2~8であるポリエチレングリコールが好ましい。第1溶媒としてのポリエチレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールなどが挙げられる。ポリエチレングリコールにおけるオキシエチレンユニットの繰り返し数は、2~6が好ましく、2~4であってもよい。エチレングリコール化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、エチレングリコールは封口部材を透過し難い観点から好ましい。また、エチレングリコールは、第1溶媒の中でも粘度が低いため、溶質を溶解しやすい。さらに、エチレングリコールは、熱伝導性が高く、リップル電流が発生したときの放熱性にも優れているため、耐熱性を向上させる効果も大きい。
【0020】
溶媒は、エチレングリコール化合物以外の第2溶媒を含んでいてもよい。第2溶媒としては、非水溶媒、例えば、有機溶媒、イオン性液体などが挙げられる。
【0021】
非水溶媒としては、例えば、エチレングリコール化合物以外のグリコール化合物、スルホン化合物、ラクトン化合物、カーボネート化合物が挙げられる。グリコール化合物としては、例えば、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが挙げられる。スルホン化合物としては、例えば、鎖状スルホン(ジメチルスルホン、ジエチルスルホンなど)、環状スルホン(スルホラン、3-メチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン、3,4-ジフェニメチルスルホランなど)が挙げられる。ラクトン化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトンが挙げられる。カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートが挙げられる。第2溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
溶媒に占めるエチレングリコール化合物の比率は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上または30質量%以上であることがさらに好ましい。エチレングリコール化合物の比率がこのような範囲である場合、誘電体層の修復性が低下し易い。本実施形態では、m/n比が1より大きいポリアルキレングリコールを用いることで、誘電体層を密に形成することができるため、エチレングリコール化合物の比率が上記の範囲であっても、誘電体層の修復性を高めて、漏れ電流を抑制できる。また、エチレングリコール化合物の比率が上記の範囲である場合、溶媒の蒸散を抑制する効果も得られ易い。溶媒に占めるエチレングリコール化合物の比率の上限は、特に制限されず、100質量%以下であればよい。誘電体層の高い修復性を確保し易い観点から、溶媒に占めるエチレングリコール化合物の比率を70質量%以下としてもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0023】
また、第2溶媒として、少なくともスルホン化合物を用いると、溶質の解離度を高め易いため、誘電体層の修復性をさらに高めることができる。スルホン化合物は、分子内にスルホニル基(-SO2-)を有する有機化合物である。スルホン化合物としては、例えば、鎖状スルホン、環状スルホンが挙げられる。鎖状スルホンとしては、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジフェニルスルホンが挙げられる。環状スルホンとしては、例えば、スルホラン、3-メチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン、3,4-ジフェニメチルスルホランが挙げられる。中でも、溶質の解離性および熱的安定性の観点から、スルホン化合物は、スルホランであることが好ましい。スルホランは、スルホン化合物の中でも粘度が低いため、溶質を溶解し易い。溶媒中においてスルホン化合物が含まれる場合、溶媒中のスルホン化合物の割合は、10質量%以上70質量%以下が好ましい。
【0024】
(溶質)
溶質としては、酸成分と塩基成分との塩などのイオン性物質が好ましい。塩は、電解液中で少なくとも一部が解離して、カチオンおよびアニオンを生成している。溶質が、酸成分および塩基成分を含むことで、イオンの解離度が上がるため、誘電体層の修復性を向上できる。なお、電解液を調製する際には、溶媒に塩を添加してもよく、酸成分および塩基成分を添加してもよく、塩と、酸成分および/または塩基成分とを添加してもよい。
【0025】
酸成分としては、有機酸が好ましい。有機酸としては、例えば、有機カルボン酸またはその無水物が挙げられる。有機酸としては、例えば、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、脂環族カルボン酸などが挙げられる。芳香族カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、安息香酸、サリチル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。脂環族カルボン酸としては、マレイン酸、アジピン酸などが挙げられる。脂環族カルボン酸としては、芳香族カルボン酸の水素化物などが挙げられる。誘電体層の修復性および熱的安定性が高い観点から、フタル酸が好ましい。酸成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
塩基成分としては、有機塩基が好ましい。有機塩基としては、アミン化合物、第4級アミジニウム化合物、第4級アンモニウム化合物などが挙げられる。アミン化合物は、第1級、第2級、および第3級アミンのいずれでもよい。アミン化合物としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンなどが挙げられる。塩基成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
アミン化合物の具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジン、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、4-ジメチルアミノピリジンが挙げられる。
【0028】
第4級アミジニウム化合物としては、環状のアミジン化合物の4級化物が好ましく、例えば、イミダゾリウム化合物およびイミダゾリニウム化合物が挙げられる。第4級イミダゾリウム化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジエチルイミダゾリウム、1,2-ジエチル-3-メチルイミダゾリウム、1,3-ジエチル-2-メチルイミダゾリウムが挙げられる。第4級イミダゾリニウム化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリニウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリニウム、1,3-ジエチルイミダゾリニウム、1,2-ジエチル-3-メチルイミダゾリニウム、1,3-ジエチル-2-メチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムが挙げられる。
【0029】
第4級アンモニウム化合物としては、例えば、ジエチルジメチルアンモニウム、モノエチルトリメチルアンモニウムなどが好ましい。
【0030】
固体電解質の劣化抑制および誘電体層の修復性向上の観点から、塩基成分に対する酸成分のモル比(=酸成分/塩基成分)は、1.1以上10.0以下であることが好ましい。
【0031】
電解液中の酸成分の濃度は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。電解液中の塩基成分の濃度は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。これらの場合、誘電体層の修復性をさらに高めることができる。
【0032】
(高分子成分)
高分子成分は、少なくともポリアルキレングリコール(第1高分子)を含んでいればよく、ポリアルキレングリコール以外の第2高分子を含んでもよい。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの混合物、および/またはオキシエチレン-オキシプロピレン共重合体が使用される。ここで、ポリアルキレングリコールにおいて、オキシエチレンユニット(-O-CH2-CH2-)のオキシプロピレンユニット(-O-CH(-CH3)-CH2-)に対するモル比(=m/n)は、1より大きい。このようなポリアルキレングリコールを用いることで、上述のように、誘電体層の修復性が向上し、漏れ電流を低減できる。
【0033】
m/n比は、1より大きければよく、ポリアルキレングリコールを陽極体近傍の適度な位置に配置させ易い観点からは、m/n比は、1.1以上が好ましく、1.2以上である
ことがさらに好ましい。m/n比が1以下である場合には、上述のように、誘電体層の修復性が不十分であるとともに、場合によっては容量が低下する。陽極体の近傍にポリアルキレングリコールが位置し易い観点からは、m/n比は、10以下であることが好ましく、5以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0034】
電解コンデンサにおいて、電解液に含まれるポリアルキレングリコールのm/n比は、例えば、電解コンデンサから取り出した電解液を用いて、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析を利用することにより算出できる。
【0035】
なお、上記共重合体において、オキシエチレンユニットおよびオキシプロピレンユニットの配列は特に限定されない。共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。また、共重合体は、オキシエチレンユニットとオキシプロピレンユニットとがランダムに配列している部分と、ポリオキシエチレンブロックおよび/またはポリオキシプロピレンブロックとを有するものであってもよい。
【0036】
ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、および上記共重合体の数平均分子量(Mn)は、それぞれ、200以上5,000以下または1,000以上3,000以下であることがさらに好ましい。このようなMnを有するものを用いると、ポリアルキレングリコールと溶媒との親和性をある程度確保しながらも、ポリアルキレングリコールを陽極体の近傍に位置させ易くなる。
なお、Mnは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーを用いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0037】
電解液中のポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、および上記共重合体の濃度は、それぞれ、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下または30質量%以下であることがさらに好ましい。濃度がこのような範囲である場合、電解液の誘電体層の修復性を更に向上することができる。アルミニウムイオンの拡散を防止する観点から、電解液中のポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、および上記共重合体の濃度は、5質量%以上であることが好ましい。
【0038】
(エステル化合物)
電解液は、さらに、ホウ酸とヒドロキシ化合物との縮合物、およびリン酸とヒドロキシ化合物との縮合物からなる群より選択される少なくとも一種のエステル化合物を含んでもよい。本実施形態では、エチレングリコール化合物と溶質としての酸成分とを用いることで、電解液中で脱水縮合により水が発生して、リフロー時に水が気化することにより電解コンデンサの内圧が上昇することがある。エステル化合物を添加すると、エステル化合物の加水分解により電解コンデンサ内の水分量を低減することができる。このため、リフロー処理時の電解コンデンサの内圧上昇を抑制することができる。これにより、内圧上昇に伴う封口部材の変形による電解コンデンサの実装不良なども抑制することができる。なお、エステル化合物は、溶質を殆ど溶かさないため、電解液中において溶媒に含めないものとする。
【0039】
ホウ酸としては、オルトホウ酸が好ましく、リン酸としては、オルトリン酸が好ましい。
【0040】
ヒドロキシ化合物は、モノオールおよびポリオールのいずれであってもよい。ヒドロキシ化合物としては、糖アルコールでもよい。耐電圧性の観点からは、ヒドロキシ化合物として、ポリオールを用いることが好ましい。耐電圧性に加え、水の低減効果が高まる観点からは、ポリオールの中では、ポリアルキレングリコールなどのジオールが好ましく、モノオールの中では、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。必要に応じて、ホウ酸またはリン酸とポリオールとの縮合物と、ホウ酸またはリン酸とモノオールとの縮合物とを併用してもよい。
【0041】
ホウ酸エステルにおいて、ホウ酸とヒドロキシ化合物とのモル比(ホウ酸:ヒドロキシ化合物)は、例えば、1:3~6:1であり、1:3~1:1が好ましい。リン酸エステルにおいて、リン酸とヒドロキシ化合物とのモル比(リン酸:ヒドロキシ化合物)は、例えば、1:3~6:1であり、1:3~1:1が好ましい。
【0042】
例えば、一般式:H(OC24qOCp2p+1(式中、pは1以上500以下の整数、qは2以上20以下の整数)で表される化合物が、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとして挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0043】

例えば、一般式:H(OC24rOH(式中、rは2以上500以下の整数)で表される化合物が、ポリアルキレングリコールとして挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0044】
電解液全体(エステル化合物を含む)に占めるエステル化合物の含有量は、好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0045】
(コンデンサ素子10)
コンデンサ素子10は、誘電体層を有する陽極体と、陰極体と、誘電体層に接触した固体電解質と、を備える。コンデンサ素子10は、通常、陽極体と陰極体との間に介在するセパレータを備えている。
【0046】
(陽極体)
陽極体としては、例えば、表面が粗面化された金属箔が挙げられる。金属箔を構成する金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属、または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
【0047】
金属箔表面の粗面化は、公知の方法により行うことができる。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、例えば、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば、直流電解法または交流電解法などにより行ってもよい。
【0048】
(誘電体層)
誘電体層は、陽極体の表面に形成される。具体的には、誘電体層は、粗面化された金属箔の表面に形成されるため、陽極体の表面の孔や窪み(ピット)の内壁面に沿って形成される。
【0049】
誘電体層の形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理は、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬することにより行ってもよい。化成処理では、必要に応じて、金属箔を化成液に浸漬した状態で、電圧を印加してもよい。
【0050】
通常は、量産性の観点から、大判の弁作用金属などで形成された金属箔に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、誘電体層が形成された陽極体が準備される。
【0051】
(陰極体)
陰極体には、例えば、金属箔が使用される。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。陰極体には、必要に応じて、粗面化および/または化成処理を行ってもよい。粗面化および化成処理は、例えば、陽極体について記載した方法などにより行なうことができる。
【0052】
(セパレータ)
セパレータとしては、特に制限されず、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、ポリアミド(例えば、脂肪族ポリアミド、アラミドなどの芳香族ポリアミド)の繊維を含む不織布などを用いてもよい。
【0053】
(固体電解質)
固体電解質は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。導電性高分子を含む固体電解質は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより、形成することができる。
【0054】
(その他)
コンデンサ素子10は、公知の方法により作製することができる。例えば、コンデンサ素子10は、誘電体層を形成した陽極体と陰極体とを、セパレータを介して重ね合わせた後、陽極体と陰極体との間に固体電解質層を形成することにより作製してもよい。誘電体層を形成した陽極体と陰極体とを、セパレータを介して巻回することにより、図2に示されるような巻回体を形成し、陽極体と陰極体との間に固体電解質層を形成することにより作製してもよい。巻回体を形成する際、リードタブ15A,15Bを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リード線14A,14Bを巻回体から植立させてもよい。
【0055】
陽極体、陰極体およびセパレータのうち、巻回体の最外層に位置するもの(図2では、陰極体22)の外側表面の端部は、巻止めテープで固定される。なお、陽極体を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極体の裁断面に誘電体層を設けるために、巻回体などの状態のコンデンサ素子に対し、さらに化成処理を行ってもよい。
【0056】
電解コンデンサは、コンデンサ素子10と調製した電解液とをケース11内に収容し、ケース11の開口部を封口部材12で封止することにより製造できる。
【0057】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
《実施例1》
本実施例では、定格電圧35V、定格静電容量270μFの巻回型の電解コンデンサ(直径10mm×長さ10mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
【0059】
(コンデンサ素子の作製)
表面を粗面化したAl箔に、アジピン酸アンモニウム溶液を用いて化成処理し、誘電体層を形成した。得られた陽極箔を所定サイズに裁断した。陽極箔と陰極箔としてのAl箔に、それぞれ、リードタブを接続し、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回し、外側表面を巻止めテープで固定することで巻回体を作製した。このとき、リードタブおよびリードタブと一体化したリード線は、巻回体より引き出した状態で、リードタブを巻き込みながら巻回した。巻回体に、さらにアジピン酸アンモニウム溶液を用いて再度化成処理した。
【0060】
所定容器に収容されたポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸と水とを含む導電性高分子分散体に巻回体を5分間浸漬し、その後、導電性高分子分散体から巻回体を引き上げた。次に、高分子分散体を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、導電性高分子を巻回体の陽極箔と陰極箔との間に付着させた。このようにして、コンデンサ素子を完成させ、直径10mm×長さ10mmの有底円筒状のケースに収容した。
【0061】
(電解液の含浸)
ケース内に電解液を注液し、減圧雰囲気(40kPa)中でコンデンサ素子に電解液を含浸させた。電解液としては、エチレングリコールとスルホランとを質量比1:1で含む溶媒に、溶質としてフタル酸およびトリエチルアミンと、オキシエチレン-オキシプロピレン共重合体とを溶解させた溶液を用いた。電解液中、フタル酸成分およびトリエチルアミン成分の濃度は、それぞれ、20質量%および5質量%であり、共重合体の濃度は20質量%とした。共重合体におけるオキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比m/nは、1.3であり、共重合体のMnは、1700であった。
【0062】
(コンデンサ素子の封止)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。具体的には、有底ケースの開口側にリード線が位置するようにコンデンサ素子を有底ケースに収納し、リード線が貫通するように形成された封口部材(ゴム成分としてブチルゴムを含む弾性材料)をコンデンサ素子の上方に配置して、コンデンサ素子を有底ケース内に封止した。そして、有底ケースの開口端近傍に絞り加工を施し、更に開口端をカール加工し、カール部分に座板を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサを完成させた。その後、電圧を印加しながら、エージング処理を行った。
【0063】
《実施例2》
共重合体の代わりに、ポリオキシエチレン(Mn:1000)およびポリオキシプロピレン(Mn:1000)の混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電解液を調製し、電解コンデンサを組み立てた。電解液中のポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンの濃度は、それぞれ、10質量%および10質量%とした。使用したポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン全体において、オキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比m/nは、1.3であった。
【0064】
《実施例3》
オキシエチレン-オキシプロピレン共重合体におけるオキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比m/nを1.05に変更した。これ以外は、実施例1と同様に電解液を調製し、電解コンデンサを組み立てた。
【0065】
《実施例4》
オキシエチレン-オキシプロピレン共重合体におけるオキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比m/nを2.0に変更した。これ以外は、実施例1と同様に電解液を調製し、電解コンデンサを組み立てた。
【0066】
《実施例5》
オキシエチレン-オキシプロピレン共重合体におけるオキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比m/nを5.0に変更した。これ以外は、実施例1と同様に電解液を調製し、電解コンデンサを組み立てた。
【0067】
《実施例6》
電解液にホウ酸とヒドロキシ化合物との縮合物を添加した以外は、実施例1と同様に電解液を調製し、電解コンデンサを組み立てた。ホウ酸とヒドロキシ化合物との縮合物としては、ホウ酸とモノオール化合物との縮合物およびホウ酸とジオール化合物との縮合物を用いた。モノオール化合物およびジオール化合物のモル比(モノオール化合物:ジオール化合物)は1:1とした。モノオール化合物にはトリエチレングリコールモノメチルエーテルを用い、ジオール化合物にはジエチレングリコールを用いた。
【0068】
《比較例1》
共重合体の代わりに、ポリエチレングリコール(Mn:1000)を用いたこと以外は、実施例1と同様に電解液を調製し、電解コンデンサを組み立てた。電解液中のポリエチレングリコールの濃度は、50質量%とした。
【0069】
《比較例2》
オキシエチレン-オキシプロピレン共重合体におけるオキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比m/nを0.67に変更したこと以外は、実施例1と同様に電解液を調製し、電解コンデンサを組み立てた。
【0070】
《比較例3》
電解液中のポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンの濃度は、それぞれ、17質量%および33質量%とし、使用したポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン全体において、オキシエチレンユニットのオキシプロピレンユニットに対するモル比m/nを、0.67とした。これら以外は、実施例2と同様に電解液を調製し、実施例1と同様に電解コンデンサを組み立てた。
【0071】
[評価]
実施例および比較例で得られた電解コンデンサを用いて、下記の手順で、漏れ電流を測定した。各例につき、ランダムに選択した10個の電解コンデンサを、155℃で3000時間の条件下で放置し、放置後に電解コンデンサの陽極体と陰極体との間に35Vの電圧を印加し、120秒後の漏れ電流(LC)を測定した。そして、各につき10個のLC平均値を求めた。結果を表1に示す。実施例1~6はそれぞれA1~A6であり、比較例1~3はそれぞれB1~B3である。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、比較例に比べて、実施例では、LC平均値を大幅に低減できている。また、エステル化合物を含む電解液を用いたA6の電解コンデンサでは、他の電解コンデンサと比較して、リフロー処理の電解コンデンサの内圧上昇が抑制できた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、固体電解質と電解液とを用いるハイブリッド型電解コンデンサに適している。
【符号の説明】
【0075】
10:コンデンサ素子、11:ケース、12:封口部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極体、22:陰極体、23:セパレータ、24:巻止めテープ
図1
図2