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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】目地部形成用プレート部材の取付け構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020061495
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021161633
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】310005294
【氏名又は名称】北陸鋼産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】浜田 元
(72)【発明者】
【氏名】目黒 緑
(72)【発明者】
【氏名】横山 豊也
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-20246(JP,A)
【文献】特開2015-151774(JP,A)
【文献】特開2012-180723(JP,A)
【文献】特開平6-299793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山岳トンネル工法において、トンネルの内壁面を覆うトンネル覆工コンクリートを構築する際に設置されるトンネル覆工用型枠に、当該トンネル覆工用型枠の軸方向の中間部分に引き抜き可能に取り付けられて、構築されるトンネル覆工コンクリートに誘発目地を形成するための目地部形成用プレート部材の取付け構造であって、
前記トンネル覆工用型枠は、トンネルの掘進方向に移動可能な架台部と、該架台部に支持されてトンネルの内壁面との間に覆工空間を形成する型枠本体部とを備えており、
該型枠本体部は、トンネルの掘進方向に2分割された一対の分割型枠本体部によって構成されており、該一対の分割型枠本体部の隣接する端部の間には、スリット状の隙間が全周に亘って連続して形成されており、該スリット状の隙間には、複数の前記目地部形成用プレート部材が各々挿入され、挿入された前記目地部形成用プレート部材は、外周辺部側の目地部形成部を前記覆工空間に突出させた状態で、内周辺部側の内側突出把持部を前記分割型枠本体部に固定して、周方向に連設配置されて取り付けられており、
前記スリット状の隙間を挟んだ両側に位置する、一対の前記本体部の各々の端縁部の外周面から立設して、一対の面木部材が、対向面の間にガイド溝を保持した状態で、前記端縁部に沿って固定されており、
各々の前記目地部形成用プレート部材は、前記スリット状の隙間及び両側の前記面木部材によるガイド溝に挿入されて、前記目地部形成部の外周辺部が前記面木部材の先端よりも外側に配置された状態で、引抜き可能に前記型枠本体部に取り付けられており、
両側の前記面木部材の少なくとも一方が、可撓性を備える可撓性面木部材となっており、該可撓性面木部材には、周方向に連続する貫通挿通孔が形成され、該貫通挿通孔に引張線状部材が連続して挿通されており、該引張線状部材の両側の端部は、前記可撓性面木部材の端部から前記トンネル覆工用型枠の内側に延設して、引張調整部材と接続しており、
前記可撓性面木部材は、前記引張調整部材により前記引張線状部材に引張力が負荷されることによって、前記ガイド溝に挿入された前記目地部形成用プレート部材に密着するように変形する目地部形成用プレート部材の取付け構造。
【請求項2】
前記面木部材は、前記分割型枠本体部の外周面に対して垂直又は略垂直な前記対向面を備える、直角三角形状又は直角台形状の断面形状を有している請求項1記載の目地部形成用プレート部材の取付け構造。
【請求項3】
前記可撓性面木部材は、ゴム製材料を用いて形成されている請求項1又は2記載の目地部形成用プレート部材の取付け構造。
【請求項4】
前記引張線状部材は、ワイヤー部材からなる請求項1~3のいずれか1項記載の目地部形成用プレート部材の取付け構造。
【請求項5】
前記引張調整部材は、ターンバックルからなる請求項1~4のいずれか1項記載の目地部形成用プレート部材の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地部形成用プレート部材の取付け構造に関し、特に、トンネル覆工用型枠の軸方向の中間部分に引き抜き可能に取り付けられて、構築されるトンネル覆工コンクリートに誘発目地を形成するための目地部形成用プレート部材の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば山岳トンネル工法等のトンネル工法において、掘削したトンネルの内周面の地山を覆って構築されるトンネル覆工コンクリートを形成するための方法として、セントルと呼ばれるトンネル覆工用型枠を用いる工法が一般的に採用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。トンネル覆工用型枠50は、例えば図10に示すように、馬蹄形等のアーチ形状部分52を含む形状のトンネル53の内周面に沿って、トンネル53の側壁部55から上部に亘って設置されるものであり、設置されたトンネル覆工用型枠50と、トンネル53の内周面の吹き付けコンクリート54によって覆われる地山との間の覆工空間61に、好ましくは無筋コンクリートを打設して硬化させることにより、トンネル底部のインバート部51のコンクリートと連続させるようにして、トンネル覆工コンクリートが形成されることになる。
【0003】
また、トンネル覆工用型枠50としては、例えばバラセントルと呼ばれる組立式のトンネル覆工用型枠の他、スライドセントルと呼ばれる移動式のトンネル覆工用型枠が知られており、トンネル53の掘削作業の進行に伴って、例えば10.5m程度の所定の施工スパン毎にトンネル覆工用型枠50を据え付け直しながら、トンネル53の掘進方向の後方から前方に向かって、トンネル覆工用型枠50を用いてトンネル53の側部及び上部の覆工コンクリートを順次打設して形成して行くことになる。
【0004】
そして、トンネル覆工用型枠50を用いてトンネルの側部及び上部の覆工コンクリートを打設するには、例えば図11(a)~(d)に示すように、設置したトンネル覆工用型枠50に設けられた検査窓56からコンクリートを打設可能な高さ領域として、例えばトンネル53の側壁部55からアーチ形状部分52の肩部までの領域に対しては、検査窓56を介してコンクリート57を供給すると共に、バイブレータ58を検査窓56から挿入し、供給されたコンクリート57を締固めながらコンクリート57を打設する(図11(a)~(c)参照)。しかる後に、検査窓56からコンクリート57を供給しながらバイブレータ58によって締固めることが困難な高さ領域として、トンネル53の冠部(クラウン部)59(図104参照)の領域に対しては、トンネル覆工用型枠50の天端部に設けた吹き上げ投入口60から、コンクリート57を吹き上げ方式で圧入して打ち込み、冠部59のコンクリート57を形成するパターンが採用されている(図11(d)参照)。
【0005】
より具体的には、所定位置にトンネル覆工用型枠50を設置した後に、例えば側壁部55の下部より、下段の検査窓56を介してコンクリート57を流し込みながらバイブレータ58を用いて締固める工程(図11(a)参照)と、さらに側壁部55の上部のアーチ形状部分52に向かって、中段の検査窓56を介してコンクリート57を流し込みながらバイブレータ58を用いて締固める工程(図11(b)参照)と、さらにアーチ形状部分52の冠部59の手前まで、上段の検査窓56及び必要に応じて吹き上げ投入口60を介してコンクリート57を流し込みながら、バイブレータ58を用いて締固める工程(図11(c)参照)と、冠部59における既設の覆工コンクリート62側の部分から吹き上げ投入口60を介してコンクリート57を吹き上げ方式で圧入し、妻型枠63までコンクリートを充填する工程(図11(d)参照)とによって、覆工コンクリートが打設されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-280094号公報
【文献】特開2003-262096号公報
【文献】特開2015-67949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、近年のトンネル工法では、掘削技術の改良によって、コンクリートの打設から養生及びトンネル覆工用型枠の脱型までの、覆工コンクリートを形成するための工程の進捗が、トンネルの切羽面を掘削する工程の進捗に追随できなくなっている。このため、覆工コンクリートを形成する工程の進捗を早める技術として、複数のコンクリートポンプを用いたり(例えば、特許文献3参照)、一般的に使用される10.5m程度の施工延長を有するトンネル覆工用型枠に代えて、好ましくは18m~22m程度の施工延長を有するロングスパンのトンネル覆工用型枠を使用して、1サイクルで行うトンネル覆工コンクリートの施工スパンを延ばすことにより、工期を短縮することが検討されている。
【0008】
また、好ましくは18m~22m程度の施工延長を有するロングスパンのトンネル覆工用型枠を使用して、1サイクルで行うトンネル覆工コンクリートの施工スパンを延ばした場合、施工スパンの中間部分に、乾燥収縮や温度収縮に伴うひび割れが発生し易くなることから、特に施工スパンが長いトンネル覆工コンクリートを形成する場合には、これの中間部分に、乾燥収縮や温度収縮に伴うひび割れを誘発させる誘発目地を設けることが望ましい。このようなことから、本願出願人は、トンネル覆工コンクリートの中間部分に誘発目地を設ける方法として、例えば特願2018-147241(特開2020-20246号公報)において、トンネル覆工用型枠の型枠面から覆工空間に突出させて、複数の目地部形成用プレート部材を、周方向に連設配置して引抜き可能に取り付けておき、覆工空間に打設されたコンクリートが硬化したら、目地部形成用プレート部材を覆工空間から引き抜くことによって、誘発目地を形成する方法を開示している。
【0009】
ここで、特開2020-20246号公報に記載の誘発目地の形成方法では、トンネルの内壁面との間に覆工空間を形成するトンネル覆工用型枠の型枠本体部を、トンネルの掘進方向に2分割した一対の分割型枠本体部によって構成し、これらの一対の分割型枠本体部の隣接する端部の間に形成されたスリット状の隙間に、目地部形成部を覆工空間に突出させるようにして、複数の目地部形成用プレート部材を挿入すると共に、目地部形成部を覆工空間に突出させた状態で、一方の分割型枠本体部の端部に固定することによって、各々の目地部形成用プレート部材が、周方向に連設配置されて取り付けられるようになっている。
【0010】
さらに、本願出願人は、例えば特願2019-13691において、スリット状の隙間を挟んだ両側に位置する両側の分割型枠本体部の端縁部の外周面から立設して、直角三角形状または直角台形状の断面形状を有する面取り部材を、覆工空間に突出する状態で周方向に全周に亘って連続して取り付けておくことにより、覆工空間に打設されたコンクリートが硬化した後に、目地部形成用プレート部材を覆工空間から引き抜く際に、誘発目地の角部が欠けることになるのを、効果的に回避できるようにすると共に、目地部形成用プレート部材の目地部形成部のトンネル覆工コンクリートとの付着面積を減少させて、目地部形成用プレート部材を型枠本体部の内側に引き抜く操作を、よりスムーズに行なえるようにすることを開示している。
【0011】
しかしながら、2分割した一対の分割型枠本体部の端部の間のスリット状の隙間や、一対の面取り部材の間に形成されるガイド溝の幅は、目地部形成用プレート部材を挿入し易くするために、目地部形成用プレート部材の厚さよりも広くなっており、また特に、例えば分割型枠本体部の組立時に編荷重が生じて分割型枠本体部が歪んでいると、これらのスリット状の隙間やガイド溝の幅が大きくなって、挿入された目地部形成用プレート部材との間に相当の大きさの間隙が生じることで、覆工空間に打設されたコンクリート中の例えばペースト分やモルタル分が、ノロとして分割型枠本体部の内側に流出して、美観を損なうことになると共に作業環境を悪化させることになり、また清掃作業に多くの手間を要することになる。
【0012】
本発明は、例えば分割型枠本体部の組立時に分割型枠本体部が歪んだことで、スリット状の隙間やガイド溝と、挿入された目地部形成用プレート部材との間に生じる間隙を閉塞して、覆工空間に打設されたコンクリート中の例えばペースト分やモルタル分が、ノロとして分割型枠本体部の内側に流出するのを効果的に回避することのできる目地部形成用プレート部材の取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、山岳トンネル工法において、トンネルの内壁面を覆うトンネル覆工コンクリートを構築する際に設置されるトンネル覆工用型枠に、当該トンネル覆工用型枠の軸方向の中間部分に引き抜き可能に取り付けられて、構築されるトンネル覆工コンクリートに誘発目地を形成するための目地部形成用プレート部材の取付け構造であって、前記トンネル覆工用型枠は、トンネルの掘進方向に移動可能な架台部と、該架台部に支持されてトンネルの内壁面との間に覆工空間を形成する型枠本体部とを備えており、該型枠本体部は、トンネルの掘進方向に2分割された一対の分割型枠本体部によって構成されており、該一対の分割型枠本体部の隣接する端部の間には、スリット状の隙間が全周に亘って連続して形成されており、該スリット状の隙間には、複数の前記目地部形成用プレート部材が各々挿入され、挿入された前記目地部形成用プレート部材は、外周辺部側の目地部形成部を前記覆工空間に突出させた状態で、内周辺部側の内側突出把持部を前記分割型枠本体部に固定して、周方向に連設配置されて取り付けられており、前記スリット状の隙間を挟んだ両側に位置する、一対の前記本体部の各々の端縁部の外周面から立設して、一対の面木部材が、対向面の間にガイド溝を保持した状態で、前記端縁部に沿って固定されており、各々の前記目地部形成用プレート部材は、前記スリット状の隙間及び両側の前記面木部材によるガイド溝に挿入されて、前記目地部形成部の外周辺部が前記面木部材の先端よりも外側に配置された状態で、引抜き可能に前記型枠本体部に取り付けられており、両側の前記面木部材の少なくとも一方が、可撓性を備える可撓性面木部材となっており、該可撓性面木部材には、周方向に連続する貫通挿通孔が形成され、該貫通挿入孔に引張線状部材が連続して挿通されており、該引張線状部材の両側の端部は、前記可撓性面木部材の端部から前記トンネル覆工用型枠の内側に延設して、引張調整部材と接続しており、前記可撓性面木部材は、前記引張調整部材により前記引張線状部材に引張力が負荷されることによって、前記ガイド溝に挿入された前記目地部形成用プレート部材に密着するように変形する目地部形成用プレート部材の取付け構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0014】
そして、本発明の目地部形成用プレート部材の取付け構造は、前記面木部材が、前記分割型枠本体部の外周面に対して垂直又は略垂直な前記対向面を備える、直角三角形状又は直角台形状の断面形状を有していることが好ましい。
【0015】
また、本発明の目地部形成用プレート部材の取付け構造は、前記可撓性製面木材が、ゴム製材料を用いて形成されていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の目地部形成用プレート部材の取付け構造は、前記引張線状部材が、ワイヤー部材からなっていることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明の目地部形成用プレート部材の取付け構造は、前記引張調整部材が、ターンバックルからなっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の目地部形成用プレート部材の取付け構造によれば、例えば分割型枠本体部の組立時に分割型枠本体部が歪んだことで、スリット状の隙間やガイド溝と、挿入された目地部形成用プレート部材との間に生じる間隙を閉塞して、覆工空間に打設されたコンクリート中の例えばペースト分やモルタル分が、ノロとして分割型枠本体部の内側に流出するのを効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】トンネル覆工型枠において、複数の目地部形成用プレート部材を、目地部形成部を覆工空間に突出させて分割型枠本体部の周方向に連設配置した状態の略示横断面である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材の取付け構造を形成する、目地部形成ユニットが取り付けられたトンネル覆工型枠を説明する略示縦断面図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材の取付け構造を形成する、目地部形成ユニットが取り付けられたトンネル覆工型枠を説明する略示平面図である。
図4】本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材の取付け構造を説明する、図2のA’部における、図1のA-Aに沿った拡大断面図である。
図5】本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材の取付け構造を説明する、図4の要部略示拡大断面図である。
図6】引張調整部材によってり引張線状部材に引張力を負荷する構成を説明する略示縦断面図である。
図7】目地部形成用プレート部材の正面図である。
図8】目地部形成用プレート部材の側面図(図7の矢視B方向の図)である。
図9図8のC-Cに沿った断面図である。
図10】従来のトンネル覆工コンクリートの打設方法において、トンネル覆工用型枠をトンネルの内周面に沿って設置した状態を説明する略示横断面図である。
図11】(a)~(d)は、従来のトンネル覆工コンクリートの打設方法の作業手順を説明する、一部を断面図として示す略示側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材の取付け構造10(図4図5参照)は、例えば山岳トンネル工法等のトンネル工法において、図1図3に示すように、掘削したトンネルTの内周面を覆って構築されるトンネル覆工コンクリート4(図2図3参照)を、セントルと呼ばれるトンネル覆工用型枠として、一般的に用いられている10.5m程度の施工延長を有するトンネル覆工用型枠に代えて、好ましくは18m~22m程度の施工延長を有するロングスパンのトンネル覆工用型枠1を用いて形成する際に、トンネル覆工コンクリート4の施工スパンの中間部分に、乾燥収縮や温度収縮に伴うひび割れを誘発する誘発目地を、形成するための構造として採用されたものである。
【0021】
すなわち、近年のトンネル工法では、掘削技術の改良によって、コンクリートの打設から養生及びトンネル覆工用型枠1の脱型までの、覆工コンクリート4を形成するための工程の進捗が、トンネルTの切羽面を掘削する工程の進捗に追随できなくなって、効率良く施工されていないことが多くなっていることから、本実施形態では、一般に用いられる10.5m程度の延長を有するトンネル覆工用型枠に代えて、好ましくは10.5m以上の施工延長を有するロングスパンのトンネル覆工用型枠1として、例えば18~22m程度の延長を有するロングスパンのトンネル覆工用型枠1を用いることで、一サイクルで行なわれる覆工コンクリート4の施工スパンを増大させると共に、2台のコンクリートポンプ30を用いて2系統の圧送配管31からコンクリートを同時に打設することで、コンクリートを打設する際の作業時間を短縮させて、覆工コンクリート4を形成するための工程の進捗を早めることができるようになっている。
【0022】
また、本実施形態では、ロングスパンのトンネル覆工用型枠1を用いることで、覆工コンクリート4の一サイクルの施工スパンの延長を増大させると、隣接する施工スパンの境目部分だけでは、コンクリートの乾燥収縮や温度収縮によるひび割れを十分に吸収できなくなって、施工スパンの中間部分でひび割れが生じ易くなる。このため、施工スパンの中間部分に、乾燥収縮や温度収縮によるひび割れを誘発させる誘発目地を形成するための目地部形成用プレート部材15が、スリット状の隙間δに挿入されて(図4参照)、目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、周方向に連設配置されると共に、トンネル覆工用型枠1の型枠本体部3を構成する一対の分割型枠本体部3A,3Bの好ましくは何れか一方の端部に、固定されて取り付けられている。本実施形態の目地部形成用プレート部材の取付け構造10は、例えば分割型枠本体部3A,3Bの組立時に分割型枠本体部3A,3Bが歪んだことで、スリット状の隙間δと挿入された目地部形成用プレート部材15との間の間隙から、覆工空間Sに打設されたコンクリート中の例えばペースト分やモルタル分が、ノロとして分割型枠本体部3A,3Bの内側に流出するのを効果的に防止できるようにする機能を備えている。
【0023】
そして、本実施形態の目地部形成用プレート部材の取付け構造10は、山岳トンネル工法において、トンネルTの内壁面を覆うトンネル覆工コンクリート4を構築する際に設置されるトンネル覆工用型枠1に、当該トンネル覆工用型枠1の軸方向Xの中間部分に引き抜き可能に取り付けられて、構築されるトンネル覆工コンクリート4に誘発目地を形成するための目地部形成用プレート部材15を、取り付けるための構造として用いられる。トンネル覆工用型枠1は、図1図3に示すように、トンネル覆工用型枠1の軸方向Xでもあるトンネルの掘進方向Xに移動可能な架台部2と、この架台部2に支持されてトンネルTの内壁面との間に覆工空間Sを形成する型枠本体部3とを備えている。型枠本体部3は、トンネルの掘進方向Xに2分割された一対の分割型枠本体部3A,3Bによって構成されており、これらの一対の分割型枠本体部3A,3Bの隣接する端部の間には、スリット状の隙間δ(図4図5参照)が全周に亘って連続して形成されている。このスリット状の隙間δには、複数の目地部形成用プレート部材15が各々挿入され、挿入された目地部形成用プレート部材15は、外周辺部側の目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、内周辺部側の内側突出把持部15Bを好ましくはスリット状の隙間δを挟んだ一方の分割型枠本体部3Aに固定して、周方向に連設配置されて取り付けられている。図4及び図5に示すように、スリット状の隙間δを挟んだ両側に位置する、一対の分割型枠本体部3A,3Bの各々の端縁部の外周面から立設して、一対の面木部材20h,21hが、対向面20i,21iの間にガイド溝28を保持した状態で、端縁部に沿って固定されている。各々の目地部形成用プレート部材15は、スリット状の隙間δ及び両側の面木部材20h,21hによるガイド溝28に挿入されて、目地部形成部15Aの外周辺部が面木部材20h,21hの先端よりも外側に配置された状態で、引抜き可能に分割型枠本体部3A,3Bに取り付けられている。図5に示すように、両側の面木部材20h,21hの少なくとも一方(本実施形態では面木部材20h)が、可撓性を備える可撓性面木部材12となっており、この可撓性面木部材12には、周方向に連続する貫通挿通孔12aに引張線状部材13が連続して挿通されている。図6に示すように、この引張線状部材13の両側の端部は、可撓性面木部材12の端部からトンネル覆工用型枠1の内側に延設して、引張調整部材14と接続している。可撓性面木部材12は、引張調整部材14により引張線状部材13に引張力が負荷されることによって、ガイド溝28に挿入された目地部形成用プレート部材15の表面に密着するように変形する。
【0024】
また、本実施形態では、好ましくは分割型枠本体部3A,3Bの各々の端部に、目地部形成用プレート部材15と共に目地部形成ユニット40を構成する、プレート取付台座20や対向台座21が一体として取り付けられており、これらのプレート取付台座20や対向台座21の端部を、各々の分割型枠本体部3A,3Bの端部として、これらの間にスリット状の隙間δ(図4図5参照)が、全周に亘って連続して形成されている。
【0025】
本実施形態では、中間部分に複数の目地部形成用プレート部材15が取り付けられるトンネル覆工用型枠1は、トンネルTの延長方向(掘進方向)Xに移動可能なスライドセントルとなっており、例えば18~22m程度の延長を有するロングスパンのセントルとなっている。トンネル覆工用型枠1は、ロングスパンのセントルとなっていること以外は、例えば特開2015-67949号公報に記載されたトンネル覆工用型枠と、略同様の構成を備えている。
【0026】
すなわち、トンネル覆工用型枠1は、図1図3に示すように、トンネルTの掘進方向Xに連結一体化された(図1参照)、複数の門型台車2Aによる架台部2と、これらの一体化された門型台車2Aによる架台部2によって支持されると共に、例えば吹付けコンクリートによる一次覆工5によって覆われたトンネルTの内周面に沿って配置されて、覆工空間Sの内側の型枠面を形成する型枠本体部3とを含んで構成されている。架台部2を構成する門型台車2Aは、基台部2aと、基台部2aを支持する支持脚部2bとを備えている。支持脚部2bの下端部には、トンネルTの床面に敷設されたレール6に沿って走行可能な走行部7が設けられており、これによってトンネル覆工用型枠1は、トンネルTの掘進方向Xに移動できるようになっている。
【0027】
型枠本体部3は、一次覆工5によって覆われたトンネルTの内周面に沿った形状を備えるように組み付けられており、トンネルTの内周面との間に所定の間隔をおいて配置されることにより、コンクリートの打設空間である、所定の厚さの覆工空間Sを形成する。また、型枠本体部3は、図1に示すように、トンネルTのアーチ形状部分52の上部の覆工空間Sを形成する上部型枠3aと、アーチ形状部分52の下部及び両側の側壁部55の上部の覆工空間Sを形成する一対の側部型枠3bと、インバート部のコンクリートと接続する側壁部55の下部の覆工空間Sを形成する一対の下端部型枠3cとを含んで構成されている。上部型枠3aは、架台部2を構成する門型台車2Aの基台部2aに設けられた複数の昇降ジャッキ8によって、上下方向に昇降可能に支持されている。一対の側部型枠3bは、上部型枠3aの両側の下端部に回転連結部3dを介して各々回転可能に接続されており、一対の下端部型枠3cは、各々の側部型枠3bの下端部に下部回転連結部3eを介して回転可能に接続されている。側部型枠3b及び下端部型枠3cは、一端部が門型台車2Aに連結された伸縮ジャッキ9a,9bの他端部と連結しており、これらの伸縮ジャッキ9a,9bを伸縮することで、側部型枠3bや下端部型枠3cを、上部型枠3aや側部型枠3bに対して、回動できるようになっている。
【0028】
これらによって、トンネル覆工用型枠1は、昇降ジャッキ8や伸縮ジャッキ9a,9bを伸縮させることで、型枠本体部3を展開したり内側にまとめたりすることが可能になって、トンネルTの内周面に沿うように型枠本体部3を組み付けたり、型枠本体部3を脱型した後にトンネルTの内部で掘進方向Xに移動させたりできるようになっている。
【0029】
また、本実施形態では、型枠本体部3の上部型枠3aや側部型枠3bには、複数の圧入接続口11a,11bが、トンネルTの掘進方向Xに間隔をおいて各々2箇所に形成されている(図2参照)。型枠本体部3の上部型枠3aの天端部分には、複数の天頂部圧入接続口27が、トンネルTの掘進方向Xに間隔をおいて2箇所に形成されている。これらの圧入接続口11a,11b,27は、後述するように、圧送配管31を介して圧送される覆工用のコンクリートを、覆工空間Sに流し込んだり圧入したりするため等の目的で用いられる。
【0030】
そして、本実施形態では、トンネル覆工用型枠1の型枠本体部3は、上述のように、トンネルTの掘進方向X(図2図3の左右方向)に2分割された一対の分割型枠本体部3A,3Bによって構成されている。一対の分割型枠本体部3A,3Bは、これらの隣接する端面の間に、一定幅の間隔部分d(図2図3参照)が、全周に亘って形成されるように、架台部2によって各々個別に支持された状態で据え付けられており、これらの一対の分割型枠本体部3A,3Bの間隔部分dに、目地部形成ユニット40が、全周に亘って取り付けられている。目地部形成ユニット40が、一対の分割型枠本体部3A,3Bの間隔部分dに全周に亘って取り付けられることによって、一対の分割型枠本体部3A,3Bの端部の間には、一定幅のスリット状の隙間δ(図4図5参照)が、全周に亘って形成されるようになっている。また形成されたスリット状の隙間δには、目地部形成ユニット40を構成するプレート取付台座20に支持させて、各々の施工スパンL(=18m)の中間部に誘発目地を形成するための複数の目地部形成用プレート部材15が、目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させて、引き抜き可能に挿入配置された状態で、全周に亘って連設して配設されるようになっている(図1参照)。
【0031】
目地部形成ユニット40は、上述の一対の分割型枠本体部3A,3Bによる型枠本体部3における、一定幅の間隔部分d(図2図3参照)を挟んだ一方の分割型枠本体部3Aの端部に、全周に亘って固定されることによって、他方の分割型枠本体部3Bの端部との間にスリット状の隙間δを、全周に亘って形成するプレート取付台座20(図4参照)と、プレート取付台座20に着脱可能に取り付けられて、スリット状の隙間δを介して目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、引き抜き可能に挿入配置されると共に(図4参照)、全周に亘って連設して配置される(図1参照)、複数の目地部形成用プレート部材15とを含んで構成されている。プレート取付台座20の端部は、他方の分割型枠本体部3Bの端部との間にスリット状の隙間δを形成する、一方の分割型枠本体部3Aの端部となっている。目地部形成用プレート部材15の内周辺部側の部分である内側突出把持部15Bにおける、少なくとも2箇所(本実施の形態では2箇所)には、プレート側ピン挿通孔16aが形成されている(図7参照)。プレート取付台座20の取付面部20aには、目地部形成用プレート部材15の外周辺部側の部分である目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、プレート側ピン挿通孔16aと合致する位置に、台座側ピン挿通孔23aが形成されている(図4参照)。合致させたプレート側ピン挿通孔16aと台座側ピン挿通孔23aにピン部材26を挿通させることによって、目地部形成用プレート部材15が、プレート取付台座20に支持された状態で固定されて、取り付けられている。
【0032】
また、本実施形態では、図4に示すように、好ましくはスリット状の隙間δを挟んだ両側に位置する、他方の分割型枠本体部3Bの端縁部、及び一方の分割型枠本体部3Bの端縁部であるプレート取付台座20の端縁部の外周面から立設して、好ましくは直角三角形状または直角台形状の断面形状を有する面木部材21h,20hが、覆工空間Sに突出した状態で、好ましくは各々の分割型枠本体部3A,3Bの周方向に全周に亘って連続して取り付けられている。
【0033】
さらに、本実施形態では、一対の分割型枠本体部3A,3Bの間隔部分dを挟んだ他方の分割型枠本体部3Bの端部には、好ましくはプレート取付台座20と対になって配置される対向台座21が、目地部形成ユニット40の構成部材として全周に亘って一体として取り付けられている。この対向台座21の端部を、他方の分割型枠本体部3Bの端部として、プレート取付台座20の端部との間に、スリット状の隙間δが、全周に亘って形成されるようになっている。他方の分割型枠本体部3Bの端縁部である対向台座21の端縁部の外周面から立設して、上述の面木部材21hが、周方向に全周に亘って連続して取り付けられている。
【0034】
本実施形態では、目地部形成ユニット40を構成するプレート取付台座20は、覆工空間Sの周方向に全周に亘って連設配置される複数の目地部形成用プレート部材15(図1参照)の各々と対応させて形成された、好ましくは目地部形成用プレート部材15と同数の複数の単位取付台座を、覆工空間Sの周方向に連設配置して、一方の分割型枠本体部3Aの端部に各々固定することによって、これらの周方向に連設する複数の単位取付台座が一体となった部材として取り付けられている。
【0035】
他方の分割型枠本体部3Bの端部に取り付けられる対向台座21もまた、これと対になって配置されるプレート取付台座20と同様に、覆工空間Sの周方向に全周に亘って連設配置される複数の目地部形成用プレート部材15(図1参照)の各々と対応させて形成された、好ましくはプレート部材15と同数の複数の単位対向台座を、覆工空間Sの周方向に連設配置して、他方の分割型枠本体部3Bの端部に各々固定することによって、これらの周方向に連設する単位対向台座が一体となった部材として取り付けられている。
【0036】
プレート取付台座20や対向台座21と共に目地部形成ユニット40を構成する目地部形成用プレート部材15は、図7図9に示すように、好ましくアルミニウム製又はスチール製の、例えば6~10mm程度の厚さ(本実施形態では、7mm程度の厚さ)の金属ブレートを用いて形成される。また目地部形成用プレート部材15は、例えば縦幅が300~600mm程度、横幅が400~700mm程度の大きさの、外周側辺部と、外周側辺部と対向して配置される内周側辺部と、左右両側の側部辺部とを有する、4辺形状の平面形状を備えている。外周側辺部は、分割型枠本体部3A,3Bやプレート取付台座20や対向台座21の外周部分による型枠面の、周方向の湾曲形状に沿った湾曲形状を有している。目地部形成用プレート部材15は、外周側辺部側の部分が、型枠面から覆工空間Sに突出して配置される目地部形成部15A(図7の斜線部分)となっており、内周側辺部側の部分が、型枠本体部3の内側に突出して配置される内側突出把持部15Bとなっている。
【0037】
目地部形成部15Aは、図4に示すように、プレート取付台座20の端縁部と対向台座21の端縁部との間の部分に周方向に延設して設けられたスリット状の隙間δを介して、覆工空間Sに向けて目地部形成用プレート部材15が挿入された際に、プレート取付台座20や対向台座21の外周部分による型枠面から、例えば200mm程度の突出高さで外側に突出するように配置される。また目地部形成部15Aには、先端に向けて厚さを例えば7mm程度から2mm程度に減少させた、テーパー加工が施されており、また好ましくは、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aの両面は、摩擦低減材として、例えば高吸水性を備えるアクリル樹脂を含んだ摩擦低減材等の、吸水して膨潤する材料として公知の、高吸水性樹脂を含む摩擦低減材によって被覆されている。これらによって、覆工空間Sに打設されたコンクリートが硬化した後に、目地部形成用プレート部材15を型枠本体部3の内側に引き抜く操作を、よりスムーズに行なうことが可能になる。
【0038】
内側突出把持部15Bは、覆工空間Sに打設したコンクリートが硬化するまでの間、目地部形成用プレート部材15をプレート取付台座20に固定しておくための仮固定部として機能すると共に、コンクリートが硬化した後にプレート部材15を型枠本体部3の内側に引き抜く際の、持手部として機能する部分である。内側突出把持部15Bにおけるプレート取付台座20と対向する面とは反対側の面(図7の手前側の面)には、図7及び図8に示すように、横幅方向の中央線cを挟んだ両側に対称に配置されて、円形ボス16が一体として突設されており、これらの円形ボス16の中央部には、当該円形ボス16及び目地部形成用プレート部材15を貫通して、プレート側ピン挿通孔16aがそれぞれ形成されている。プレート側ピン挿通孔16aは、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、プレート取付台座20の取付面部20aに形成された台座側ピン挿通孔23aと、合致する位置に配置されて形成されている(図4参照)。これによって、上述のように、合致させたプレート側ピン挿通孔16aと台座側ピン挿通孔23aにピン部材26(図4参照)を挿通させることによって、目地部形成用プレート部材15が、プレート取付台座20に支持された状態で取り付けられることになる。
【0039】
また、本実施形態では、内側突出把持部15Bにおける内周側辺部と近接する内周側端部には、覆工空間Sに打設したコンクリートが硬化した後に目地部形成用プレート部材15を型枠本体部3の内側に引き抜く際の持手部として機能する、横長矩形形状の把手用の開口部19が、横幅方向の中央線cを挟んだ両側に対称に配置されて、一対開口形成されている。
【0040】
さらに、本実施形態では、内側突出把持部15Bにおける内周側辺部と近接する内周側端部には、プレート取付台座20と対向する面の横幅方向の中央部分から垂直に張り出して、張出し締着片18が一体として接合されている。張出し締着片18には、図9に示すように、張出し先端側の辺部から基端部側にU字形状に切り欠くようにして、切欠き孔18aが形成されている。この切欠き孔18aには、上述のように、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、プレート取付台座20の取付面部20aに回転支持ブラケット25aを介して回動可能に支持されて取り付けられた固定ボルト25bを、ナット部材25cを用いて、着脱可能に締着できるようになっている(図4参照)。
【0041】
本実施形態では、プレート取付台座20の外周面部21bによる型枠面から覆工空間Sに目地部形成部15Aを突出させて、型枠本体部3の周方向に連設配置された複数の目地部形成用プレート部材15は、図1に示すように、好ましくは隣接する各一対のプレート部材15の側部辺部の間の境界部分である各々の分割接続部15aに、隙間が生じないように配設されている。また、これらの連設配置された複数の目地部形成用プレート部材15のうちの一部は、両側の側部辺部の間の間隔が、覆工空間Sの外周側から内周側に向けて広くなった、内側に末広がりの正面形状を備えるハの字状プレート部材15’となっている。
【0042】
周方向に連設配置された複数の目地部形成用プレート部材15のうちの一部が、両側の側部辺部の間の間隔が覆工空間Sの内周側に向けて末広がりのハの字状プレート部材15’となっていることにより、当該ハの字状プレート部材15’を先行して引き抜くようにすることで、型枠本体部3の周方向に連設配置されたプレート部材15は、隣接するプレート部材15の側部辺部同士が分割接続部15aで競り合うことにより引き抜き難くなるのを回避して、各々のプレート部材15を、スムーズに引き抜けるようにすることが可能になる。
【0043】
本実施形態では、型枠本体部3を構成する2分割された一対の分割型枠本体部3A,3Bの端面の間の間隔部分dに、プレート取付台座20と、対向台座21と、複数の目地部形成用プレート部材15とからなる目地部形成ユニット41を設置するには、プレート取付台座20と、これと対になって配置される対向台座21とを、分割型枠本体部3A,3Bの全周に亘って取り付ける。すなわち、プレート取付台座20は、上述のように、複数の単位取付台座を、例えば隣接する単位取付台座同士を適宜接合して、周方向に一体として接続すると共に、一方の分割型枠本体部3Aの端部に設けられた端面接合プレート3fに一体として接合することによって、一方の分割型枠本体部3Aの端部の端面となる端面接合プレート3fに、容易に取り付けることができる。また、対向台座21は、上述のように、複数の単位対向台座を、例えば隣接する単位対向台座同士を適宜接合して、周方向に一体として接続すると共に、他方の分割型枠本体部3Bの端部に設けられた端面接合プレート3gに一体として接合することによって、他方の分割型枠本体部3Bの端部の端面となる端面接合プレート3gに、容易に取り付けることができる。
【0044】
これらによって、プレート取付台座20の端部を一方の分割型枠本体部3Aの端部とし、対向台座21の端部を他方の分割型枠本体部3Bの端部として、これらの端部の間に、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aの基端部分の厚さt(図5参照)よりも大きな間隔幅を有するスリット状の隙間δを、全周に亘って連続して形成することが可能になる。
【0045】
またこれによって、図4及び図5に示すように、スリット状の隙間δを挟んだ両側に位置する、プレート取付台座20の外周面部20bの端縁部や対向台座21の外周面部21bの端縁部による、一対の分割型枠本体部3A,3Bの各々の端縁部には、これらの外周面から立設して、一対の面木部材20h,21hが、対向面20i,21iの間にガイド溝28を保持した状態で、取り付けられることになる。
【0046】
ここで、本実施形態では、一対の面木部材20h,21hのうち、例えば対向台座21に取り付けられた他方の面木部材21hは、好ましくは保形剛性を有する金属製の金物部材として、例えば鋼製の金物部材となっており、好ましくは対向台座21による分割型枠本体部3Bの外周面に対して、垂直な対向面21iを備える、直角三角形状又は直角台形状の断面形状を有している。他方の面木部材21hは、例えば溶接等による接合手段によって、対向台座21の外周面部21bの端縁部による分割型枠本体部3Bの端縁部に、一体として強固に接合固定されている。
【0047】
例えばプレート取付台座20に取り付けられた一方の面木部材20hは、上述にように、可撓性を備える可撓性面木部材12となっており、可撓性面木部材12は、好ましくはゴム製材料を用いて形成されている。可撓性面木部材12は、好ましくはプレート取付台座20による分割型枠本体部3Aの外周面に対して、垂直な対向面20iを備える、直角三角形状又は直角台形状の断面形状を有している。可撓性面木部材12は、例えば接着剤等による接合手段によって、対向台座21の外周面部21bの端縁部による分割型枠本体部3Aの端縁部に、仮固定された状態で接合されている。可撓性面木部材12には、上述のように、分割型枠本体部3Aによる型枠面の周方向に連続して貫通する貫通挿通孔12a(図5参照)が、好ましくは直角三角形状又は直角台形状の断面形状の重心位置よりも、やや底面部12b側に配置された状態で形成されている。
【0048】
可撓性面木部材12の周方向に連続して形成された貫通挿通孔12aには、好ましくはワイヤー部材からなる引張線状部材13が、周方向に連続して挿通されている。貫通挿通孔12aに連続して挿通された引張線状部材13は、図6に示すように、可撓性面木部材12の両側の下端部から、好ましくは型枠本体部3の両側の下端部に取り付けられた滑車部材13aを介して、トンネル覆工用型枠1の内側に引き出されるようにして延設し、好ましくはターンバックルからなる引張調整部材14を各々介在させた状態で、両側の端部を、例えばトンネル覆工用型枠1の門型台車2Aの支持脚部2bに各々連結することで、引張調整部材14によって引張力を調整可能な状態で張設されることになる。
【0049】
一方、可撓性面木部材12は、例えば分割型枠本体部3Aの端縁部との密着面となる底面部12bを、スリット状の隙間δ側に、やや食み出させた状態で仮固定されている(図5参照)。これによって、後述するようにして、複数の目地部形成用プレート部材15が取り付けられた後に、引張線状部材13を介した張力の調整によって、引張線状部材13に相当の大きさの所定の引張力が負荷されると、可撓性面木部材12には、分割型枠本体部3Aを径方向内側に締め付ける方向Yの応力(図5参照)が生じることで、底面部12bと垂直な対向面20iが、スリット状の隙間δを閉塞させる側である、目地部形成用プレート部材15側Zに傾くように、可撓性面木部材12を変形させることが可能になる。これによって可撓性面木部材12の対向面20iを、ガイド溝28に挿入された目地部形成用プレート部材15の表面に密着させて、スリット状の隙間δを閉塞した状態で、可撓性面木部材12を強固に固定することが可能になる。
【0050】
一対の分割型枠本体部3A,3Bの端面の間の間隔部分dに、好ましくはプレート取付台座20と対向台座21とを取り付けることによって、これらの端部の間に、スリット状の隙間δを全周に亘って形成したら、図1及び図4に示すように、各々の目地部形成部15Aをスリット状の隙間δに挿入して、複数の目地部形成用プレート部材15を、周方向に連設配置して各々取り付ける。挿入された目地部形成部15Aは、スリット状の隙間δ及び両側の面木部材20h,21hによるガイド溝28を通過することで、外周辺部を面木部材20h,21hの先端よりも外側に配置した状態で、覆工空間Sに引き抜き可能に突出して配置される。また目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた各々の目地部形成用プレート部材15は、内側突出把持部15Bをプレート取付台座20に各々支持させることにより、型枠本体部3に取り付けられる。
【0051】
複数の目地部形成用プレート部材15を、スリット状の隙間δに挿入する操作は、好ましくは目地部形成用プレート部材15の数に対応させて設けられた複数の単位取付台座によるプレート取付台座20の、取付面部20aの表面に突設したガイド凸条24a(図4参照)に、目地部形成用プレート部材15における、取付面部20aと対向する面を押し付けるようにすることで、目地部形成用プレート部材15の挿入方向を安定させた状態で、スムーズに行うことが可能になる。
【0052】
また、複数の目地部形成用プレート部材15を、スリット状の隙間δに各々挿入して、目地部形成用プレート部材15に形成された一対のプレート側ピン挿通孔16aが、プレート取付台座20の取付面部20aに形成された台座側ピン挿通孔23aに各々合致したら、上述のように、これらの合致したピン挿通孔16a,23aにピン部材26を挿通することによって、各々の目地部形成用プレート部材15を、スリット状の隙間δを介して目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、プレート取付台座20に支持させて取り付けることが可能になる。
【0053】
本実施形態では、さらに、合致したピン挿通孔16a,23aにピン部材26を挿通することに加えて、上述にように、各々の目地部形成用プレート部材15におけるプレート取付台座20と対向する面の内周側端部から張り出して設けられた、張出し締着片18の切欠き孔18aに、プレート取付台座20の取付面部20aの裏面側に回動可能に支持されて取り付けられた固定ボルト25bを、ナット部材25cを用いて締着するようになっている。これによって、各々の目地部形成用プレート部材15を、さらに安定した状態でプレート取付台座20に取り付けることが可能になる。
【0054】
上述のようにして、一対の分割型枠本体部3A,3Bの間の間隔部分dに、目地部形成ユニット40のプレート取付台座20及び対向台座21を取り付けると共に、スリット状の隙間δに複数の目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aを各々挿入することで、目地部形成用プレート部材15を周方向に連設配置して取り付けたら、一次覆工5によって覆われたトンネルTの内周面と、トンネル覆工用型枠1の型枠本体部3の外周部分による型枠面との間に形成された、コンクリートの打設空間である覆工空間Sに、コンクリートを打設して、トンネル覆工コンクリート4を構築する作業が行なわれる。本実施形態では、トンネル覆工コンクリート4を構築する作業は、図2及び図3に示すように、2台のコンクリートポンプ30からそれぞれ延設された圧送配管31を経て圧送されるコンクリートを、覆工空間Sに同時に供給しながら打設することによって行うことができる。
【0055】
本実施形態では、2台のコンクリートポンプ30は、トンネルT内に搬入されたトンネル覆工用型枠1を挟んでトンネルTの掘進方向Xの前方と後方に、それぞれ配置されており、各々のコンクリートポンプ30のホッパー部には、各々のコンクリートミキサー車32からコンクリートがそれぞれ投入される。ここで、前後2台のコンクリートポンプ30からは圧送配管31がそれぞれ延びており、各々のコンクリートミキサー車32から各々のコンクリートポンプ30のホッパー部へ投入されたコンクリートは、2系統の各々の圧送配管31から覆工空間Sに同時に圧送されて供給される。このように、2系統のコンクリートポンプ30と圧送配管31とを用いることによって、トンネル覆工コンクリート4を形成するための工程の進捗を効果的に早めることができる。
【0056】
2台のコンクリートポンプ30からそれぞれ延びる2系統の圧送配管31は、トンネル覆工用型枠1の内側に向かって延びる主配管31aと、主配管31aからロータリバルブ29を介してトンネルTの幅方向両側に枝分かれした左右の分岐管31bとを含んで構成されている。ここで、各々の分岐管31bは、長さの異なる直管や湾曲管等からなる複数のピース管を含んで構成されており、選択した複数のピース管を組み付けて、圧入接続口11a、11bに各々接続されるように配置される。またこれらのピース管を組み替えることによって、当該分岐管31bを、型枠本体部3の2分割された分割型枠本体部3A,3Bの、好ましくは各々の掘進方向Xの後端部に形成された、下段の圧入接続口11aから上段の圧入接続口11bに切り替えて接続したり、上段の圧入接続口11bから天頂部圧入接続口27に切り替えて接続したりして、コンクリートを打設することができるようになっている。
【0057】
本実施形態では、上述のトンネル覆工コンクリート4を構築する作業によって覆工空間Sに打設されたコンクリートが硬化して、トンネル覆工コンクリート4が形成されたら、複数の目地部形成用プレート部材15の各々を、覆工空間Sから型枠本体部3の内側に引き抜いて、誘発目地を形成する作業が行なわれることになる。
【0058】
そして、上述の構成を備える本実施形態の目地部形成用プレート部材の取付け構造10によれば、例えば型枠本体部3の組立時に分割型枠本体部3A,3Bが歪んだことで、スリット状の隙間δやガイド溝28と、挿入された目地部形成用プレート部材15との間に生じる間隙を閉塞して、覆工空間Sに打設されたコンクリート中の例えばペースト分やモルタル分が、ノロとして分割型枠本体部3A,3Bの内側に流出するのを効果的に回避することが可能になる。
【0059】
すなわち、本実施形態によれば、一対の分割型枠本体部3A,3Bの各々の端縁部の外周面から立設して配置された、一対の両側の面木部材20h,21hのうちの少なくとも一方として、例えば分割型枠本体部3Aに取り付けられた面木部材20hが、可撓性を備える可撓性面木部材12となっており、この可撓性面木部材12には、周方向に連続する貫通挿通孔12aに引張線状部材13が連続して挿通されており、この引張線状部材13の両側の端部は、可撓性面木部材12の端部からトンネル覆工用型枠1の内側に延設して、引張調整部材14を介在させた状態で、例えばトンネル覆工用型枠1の門型台車2Aの支持脚部2bに各々連結されており、これらによって引張線状部材13は、引張調整部材14によって引張力を調整可能な状態で張設されている。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、例えば目地部形成用プレート部材を取り付けたら、覆工空間Sにコンクリートが打設されるのに先立って、引張調整部材14による張力の調整によって引張線状部材13に所定の引張力を負荷させることで、対向面20iが目地部形成用プレート部材15側に傾くように、可撓性面木部材12を変形させることが可能になるので、可撓性面木部材12の対向面20iを、ガイド溝28に挿入された目地部形成用プレート部材15の表面に強固に密着させて、スリット状の隙間δを閉塞した状態で、可撓性面木部材12を固定することが可能になる。これによって、挿入された目地部形成用プレート部材15との間に生じる間隙を閉塞して、覆工空間Sに打設されたコンクリート中の例えばペースト分やモルタル分が、ノロとして分割型枠本体部3A,3Bの内側に流出するのを効果的に回避することが可能になる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、可撓性面木材は、ゴム製材料を用いて形成されている必要は必ずしも無く、その他の種々の可撓変形可能な部材を用いて形成することができる。引張線状部材は、ワイヤー部材からなるものである必要は必ずしも無く、ピアノ線等の、その他の種々の引張材料からなる引張線状部材であっても良い。引張調整部材は、ターンバックルからなるからなるものである必要は必ずしも無く、ジャッキ等を用いた、その他の種々の引張調整部材であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 トンネル覆工用型枠
2 架台部
3 型枠本体部
3A、3B 分割型枠本体部
4 トンネル覆工コンクリート(覆工コンクリート)
10 目地部形成用プレート部材の取付け構造
12 可撓性面木部材
12a 貫通挿通孔
13 引張線状部材
14 引張調整部材
15 目地部形成用プレート部材
15A 目地部形成部
15B 内側突出把持部
20 プレート取付台座
20b 外周面部
20h 面木部材
20i 対向面
21 対向台座
21b 外周面部
21h 面木部材
21i 対向面
δ スリット状の隙間
S 覆工空間
T トンネル
X トンネルの掘進方向(トンネル覆工用型枠の軸方向)
図1
図2
図3
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図11