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特許7285537CA IX標的NIR色素及びそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】CA IX標的NIR色素及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/12 20060101AFI20230526BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230526BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230526BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230526BHJP
   C07D 311/90 20060101ALI20230526BHJP
   G01N 33/58 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C07D209/12 CSP
C12Q1/02
A61K47/54
A61K49/00
C07D311/90
G01N33/58 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018548414
(86)(22)【出願日】2017-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 US2017022824
(87)【国際公開番号】W WO2017161197
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】62/309,412
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515251827
【氏名又は名称】オン ターゲット ラボラトリーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クララットナ,スミス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ガガレ,プラビン
(72)【発明者】
【氏名】カンデュルル,アナンダ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/062044(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/114171(WO,A1)
【文献】特表2014-520076(JP,A)
【文献】国際公開第2014/143309(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/149069(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/044584(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0161725(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0129619(US,A1)
【文献】TALIBOV,Vladimir O.,Journal of Medicinal Chemistry,2016年,59,2083-2093
【文献】DUDUTIENE,Virginija,ChemMedChem,2015年,10,662-687
【文献】KAZOKAITE,Justina,FEBS Journal,2015年,282,972-983
【文献】KRALL,Nikolaus,Angew.Chem.Int.Ed.,2014年,53,4231-4235
【文献】KRALL,N.,Chemical Science,2014年,5,3640-3644
【文献】GROVES,Kevin,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2012年,22,653-657
【文献】HOU,Tai-Cheng,Chemical Science,2015年,6,4643-4649
【文献】LV,Peng-Cheng,Mol.Pharm.,2016年,13(5),1618-1625
【文献】GROVES,Kevin,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2012年,22,653-657
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式B-W-X-Y-Z又はB-X-Zを有するCA IX標的化分子共役体:

式中、
Bは、W-X-Y又はXを介してNIR色素と連結されるCA IX標的化分子に由来する一価の基である;
Wは、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びグルタミンからなる群から選択される;
Xは、4級アミン側鎖を含有するアミノ酸、6-アミノヘプタン酸(SAHA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンアミン(PEA)単位、N-アミノ-dPEG 酸;及びアリール又はアリールアルキル基を含むペプチド(ここで、前記アリール又はアリールアルキル基が6~14個の原子である。)からなる群から選択される;
Yは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、及び芳香族環上に炭素同位体を有するチロシン、フェニルアラニン-チロシン、フェニルアラニンアルギニンチロシン、並びにヒスチジン-チロシンからなる群から選択される;
ZはNIR色素に由来する一価の基である;
更に、前記CA IX標的化分子に由来する一価の基は、以下からなる群から選択される;
【化1】






上記式中、nは0、1、2、又は3であり、mは0、1、2、3、4、又は5であり、pは0、1、2、又は3である。
【請求項2】
Zが、
【化2】

からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物
(式中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48がH又はSOHであり;X=O、S、又はNである。)
【請求項3】
前記CA IX標的化分子は、
【化3】


であり(式中、nは0であり、mは5であり、pは2である。);
Xは、PEG及びPEAからなる群から選択され;
Yは、チロシン、フェニルアラニン-チロシン、フェニルアラニン-アルギニン-チロシン、及びヒスチジン-チロシンからなる群から選択され;
Zは以下のS0456を含む、請求項に記載の化合物。
【化4】
【請求項4】
以下の構造式を有する化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはその同位体:
【化5】

式中、
19は水素又はSOHを表し;
20は、水素、CH、CSO 、CSOH、又はCSO 、又はCSOH、又はC(CHを表し;
21及びR22は独立して、炭素を表し;
23は、窒素、酸素、又は硫黄、あるいは芳香族環とビニル環との間の無原子直接C-C結合を表し;
25は欠いているか、又はPhe、Trp、His、Arg、Lys、Asp、若しくはGluを表し;
26は直鎖状炭素鎖又はポリエチレングリコール連結体を表し;
27は欠いているか、又はPhe、Val、Leu、Ile、Trp、His、Arg、Lys、Asp、若しくはGluを表し;
28はVal、Leu、Phe、Tyr、His、Trp、又はMetであり;並びに
29は欠いているか、又はF若しくはNOを表し;
30は欠いているか、又はPhe、Val、Leu、Ile、Trp、His、シクロヘキシル、若しくはシクロオクチルを表す。
【請求項5】
以下からなる群から選択される化合物:
【化6】
【請求項6】
前記化合物が、500nm~900nmの間の吸収及び発光極大値を有する、請求項4又は5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、近赤外波長の励起光に供されることによって、組織細胞中でのその分配後に蛍光を発するように調製される、請求項4又は5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が、C-SPAの結合親和性と同様の炭酸脱水酵素IXに対する結合親和性を有し、且つ腫瘍細胞への標的化に対して選択的である、請求項4又は5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項4又は5のいずれか1項に記載の化合物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、2016年3月16日に出願された米国仮特許出願第62/309,412号に関連し、その優先権を主張し、その内容全体を参照により本開示に組み込む。
【0002】
技術分野
本開示は、炭酸脱水酵素9(CA IX)標的化近赤外(NIR)色素並びにそれらの治療的及び診断的使用のための方法に関する。より具体的には、本開示は、腎臓、子宮内膜、泌尿器、結腸直腸、卵巣、乳房、膵臓、及び食道の癌細胞、並びに多くの固形腫瘍及び関連疾患の低酸素領域等のCA IX(低酸素組織及び腫瘍の低酸素領域の広く受け入れられているマーカ)発現細胞の診断及び外科的除去(画像誘導手術)のための化合物及び方法を提供する。本開示は、化合物を製造及び使用するための方法及び組成物、化合物を組み込む方法、並びに化合物を組み込むキットを更に記載する。
【背景技術】
【0003】
炭酸脱水酵素(CA)は、二酸化炭素から炭酸水素塩及びプロトンへの可逆的水和を触媒する亜鉛金属酵素のファミリーである。ヒトに存在する15個のCAアイソフォーム(CA I、II、III、VA、VB、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXV)のうち12個が触媒活性を示す。3個のアイソフォームCA VIII、X、及びXIは非触媒性であり、CA関連タンパク質と呼ばれる。触媒効率の違いとは別に、12個の活性アイソフォームは、細胞、局在化、組織分布、及び生理学的プロセスにおける関与も異なる。更に、酵素の異常な発現は、一般に、疾患の宿主に関連する。これらには:緑内障(CA II、IV)、癌(CA IX、XII)、浮腫(CA II)、不妊(CA XIII)、高山病(CA II)、肥満(CA VA)、及び溶血性貧血(CA I)が含まれる。15個のCAアイソフォーム(アルファクラスCA)のうち、CA IV、IX、XII、XIVアイソフォームは細胞膜に関連する。CA IX及びXIIは両方とも固形腫瘍で発現するが、CA IXは固形腫瘍においてより優勢に発現し、正常組織においては発現が低く、従って癌の標的化薬物送達のための優れたバイオマーカとなることが示されている。
【0004】
CA9遺伝子は、ホモ二量体として存在する459アミノ酸膜貫通糖タンパク質をコードする。それは:プロテオグリカン様ドメイン(PG)(59aa)、触媒ドメイン(CA)(257aa)、シグナルペプチドドメイン(酵素成熟前に除去される)(37aa)、膜貫通ドメイン(TM)(20aa)、及びC末端細胞内ドメイン(25aa)を含む。質量分析及びX線結晶学により、成熟ホモ二量体の隣接するCys137残基間の分子間ジスルフィド架橋の存在が確認され、これは疎水性残基の領域と結合して二量体界面を安定化することが提案される。N-結合型及びO-結合型のグリコシル化部位もそれぞれAsn309及びThr78に存在する。
【0005】
CA IXの触媒ドメインは、活性部位内で高いアミノ酸保存を有するα-CAと構造的に相同である。活性部位は、タンパク質の表面から中心に及ぶより大きな円錐形の空洞(15Åの深さ)に位置する。亜鉛原子は空洞の底に位置する。CA IXでは、3つのヒスチジン残基(完全長aa配列で番号付けされたHis226、228、及び251)は、活性部位間隙の基部で亜鉛イオンを配位する;結晶構造(PDB ID:3IAI)においてアセタゾラミド(AZM)中のスルホンアミドアミン基は、亜鉛イオンの周りに四面体配位を維持する亜鉛結合水/水酸化物(Zn-OH/HO)分子を置換する。CAアイソフォーム間の変動は、活性部位及び表面アミノ酸の疎水性及び親水性ポケットに生じる。CA-IXにおいて、Leu-223、Val-253、Val-263、Leu-267、Leu-273、Leu-330、及びPro-334は疎水性領域を規定するが、Asn-194、His-196、Ser-197、Gln-199、Thr-201、及びGln-224は親水性領域を識別する。
【0006】
CA IXの触媒効率は速く、CA IIの触媒効率に匹敵する;CA IIは、1.4×10のkcatを示すが、CA IXは、3.8×10のkcatを示す。CA IXにおけるPGドメインの存在は、他のCAアイソフォームと比較して独特であり、その細胞接着能力を担い、酸性腫瘍微小環境におけるその触媒活性を維持すると考えられている。
【0007】
CA IXの最も重要な役割は、特に腫瘍微小環境における細胞外pH調節であると考えられている。増殖している癌細胞は、発癌性代謝中に大量のラクテート、二酸化炭素、及びプロトンを生成することが多く、CA機能は腫瘍細胞の生存に重要になる。これらの代謝産物は、細胞外環境に蓄積し、細胞外pHを有意に低下させる。生理学的に近い細胞内pHを維持するために、二酸化炭素の加水分解中にCA IXによって生成された炭酸水素アニオンは、アニオン輸送体を介して細胞内に輸送され、細胞内pHレベルを緩衝する。更に、反応から生成したプロトンは細胞外に残り、腫瘍環境の酸性に寄与する。従って、この調節経路の破壊により、全体的な腫瘍細胞の生存に有害な影響を及ぼすことになる。
【0008】
非疾患状態において、CA IX発現は腸管上皮;具体的には、十二指腸、空腸、及び回腸の潜在的腸細胞の側底面に限定される。CA IXの最も顕著なレベルは、これらの増殖陰窩細胞に見られ、CA IXが腸管幹細胞の増殖及び特定の代謝機能の調節に関与している可能性があることを示唆している。ノーザンブロッティング及び免疫組織化学的染色によってもまた、卵巣腔上皮、毛包細胞、膵管細胞、及び胎児精巣網におけるCA IX発現が確認された。更に、CA IXの高レベルは、腸、肺、及び骨格筋の胚組織の発生において観察され、成体組織においては減少する。これらの観察は、CA IX発現が、正常組織における低いpH及び高い細胞増殖速度の領域に主に関連することを示している。これによりCA IXが正常組織において調節要素となるかどうかは確認されていない。
【0009】
CA IXは、様々な腫瘍性組織において異所的に発現される。乳房、肺、腎臓、結腸/直腸、子宮頸部、口腔、頭/頸部、胆嚢、肝臓、脳(高悪性度)、膵臓、及び胃上皮の悪性腫瘍において発現が観察されている。正常組織と腫瘍組織とから単離されたCA IXのcDNAの間に相違はなく、両方の組織において同様の生理学的機能を示唆している。CA IX発現は、[HIF-1αのアップレギュレーション又はVon Hippel-Linadau(VHL)のダウンレギュレーションを介して]低酸素誘導性因子1(HIF-1)活性化に依存する。具体的には、CA IX発現を誘導するHIF-1媒介経路の活性化は、細胞Oレベルの低下、成長因子及び炎症応答要素の存在によるシグナル伝達経路の活性化によるものであり得、場合によってはCA IXが均一に発現される腎細胞癌(RCC)の症例において見られるように、腫瘍抑制因子(VHL)の変異によるものであり得る。より最近、CA IXは、癌細胞との分子クロストーク回路に関与する間質細胞において有意な発現レベルを有することが示されている。具体的には、CA IXは、HIF-1の酸化還元ベースの安定化を介して癌関連線維芽細胞(CAF)において発現することが示されている。CAFにおけるCA IXの発現は、隣接する癌細胞における上皮間葉転換(EMT)を駆動するのに必要な酸性細胞外環境を提供すると想定されている。これらの知見の総括では、多くの固形腫瘍における腫瘍低酸素症事象の診断マーカとしてCA IXを示す。
【0010】
CA IX発現レベルはまた、いくつかの癌タイプの予後マーカとしても役立つ。特に、高レベルのCA IXも示す脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、直腸癌、又は肺癌を患う患者は、典型的に予後不良を示す。対照的に、淡明細胞型腎細胞癌患者に関してCA IXレベルが低いことは、臨床成績が不良であることを示す。低酸素腫瘍の微小環境を維持するためのCA IXの寄与は、患者の予後と非常に相関しており、従ってバイオマーカ及び薬物標的の両方となる。
【0011】
低酸素症は、急速な増殖及び代謝の変化により細胞が酸素を奪われている転移性腫瘍において一般に見られる状態である。具体的には、低酸素腫瘍細胞が血液供給を超えて成長し、低酸素濃度(典型的には全酸素含量の≦1%)の領域及び腫瘍微小環境における細胞外pH(約pH6.5)の低下をもたらす。この低酸素ストレスは腫瘍細胞の一般的な代謝をミトコンドリアの酸化的リン酸化から主なエネルギー源であるサイトゾルの好気的解糖にシフトさせる。興味深いことに、この代謝シフトは、所与の環境において利用可能なOの量にかかわらず、腫瘍細胞に存在し続ける;Warburg効果としばしば記述される現象。これらの腫瘍細胞は解糖を迅速に使用するので、増量した乳酸が細胞から出され、細胞外pHを低下させる。結果として、調節された細胞内/細胞外pH勾配を確立するために、腫瘍細胞におけるpH恒常性因子のアップレギュレーションが存在する。
【0012】
1930年代以来、腫瘍の低酸素症と放射線療法に対する耐性との間に相関があることが十分に確立されている。更に、低酸素腫瘍は、一般的な化学療法剤に対する耐性及び転移の可能性が高いことも示されている;従って、腫瘍低酸素症は患者の予後不良に関連している。低酸素誘導因子(HIF)は、正常細胞及び腫瘍細胞の両方において低酸素誘導ストレス応答の重要な調節因子である。具体的には、増加したHIF-1は、代謝、細胞増殖、薬物耐性、pH調節、血管新生、転移、及び癌の全体的進行に関連する要素をアップレギュレートする低酸素応答要素(HRE)を発現する低酸素誘導性遺伝子を活性化することと関連している。酸性微小環境下で生存するためには、これらの腫瘍細胞は、生理学的レベル(pH7.4)又はそれに近い細胞内pHを維持できなければならない。従って、CAの活性はこの調節プロセスにおいて重要である。
【0013】
CA IX発現は、HIF要素のアップレギュレーションと直接的に相関し、腫瘍細胞の生存、増殖、移動、成長、接着、pH調節、及び細胞シグナル伝達経路において役割を果たすことが示されている。それは、正常組織におけるCA IXの最小発現及び腫瘍細胞の外部界面上のその位置により、魅力的な治療標的となる。結果として、アイソフォーム選択性小分子阻害、位置特異的標的化、RNAi技術を用いたノックダウン、より最近では抗癌治療を腫瘍に直接送達するための手段としてのCA IXの抗原性標的化の点でCA IXを標的化しようとするいくつかの方法が用いられている。
【0014】
CAIは広範に研究されており、それらの阻害メカニズムは十分に確立されている。スルホンアミド系化合物は、CAIクラスの中で最も強力で最も利用されている。これらの化合物は、脱プロトン化形態の亜鉛結合基(ZBG)としてスルホンアミドを介して亜鉛イオンに結合し、亜鉛イオンの周りに四面体配位を依然として維持しながら、亜鉛結合水/水酸化物分子を置換する。いくつかのスルホンアミドはCA IXのサブナノモル範囲の阻害定数を示すが、CAの他のアイソフォームも阻害する。これは、ヒトCA間での活性部位の保存された構造によるものである。全ての触媒性ヒトCAについて、亜鉛を配位する3つのヒスチジン、Thr199(CA II番号付け;「ゲートキーパ」と称される)及びGlu106が保存されている。T199及びE106の両方が触媒作用の役割を果たす。T199水素はOH基を介して亜鉛結合水/水酸化物に結合するが、E106水素はT199に結合する。
【0015】
ZBGを利用する低分子量CA阻害剤(CAI)は、活性部位の空洞に深く結合する傾向があり、CAアイソフォーム間で変化するアミノ酸と広範な相互作用をしないので、それらの無差別阻害プロフィールに寄与する。結果として、より良好なアイソフォーム特異的CAIのための代替アプローチが開発されており、「テールアプローチ」が最も成功しているアプローチの1つである。「テールアプローチ」では、化学部分(テールとして知られている)がZBGの有機足場(例えば、複素環式又は芳香族)上に付加される。このテールにより、阻害剤が伸び、活性部位の外側に向かってアミノ酸との広範な相互作用を可能にする。これらのテールの付加は、CAIの性質を変化させることもでき、例えば、本質的に親水性であるテールの付加により可溶性にするか、又は化合物の全電荷を操作する;カチオン性CAI等。構造に基づく薬剤設計の使用は、様々なアイソフォームの活性部位の間に存在する微妙な差異を利用する貴重な技術であることが証明されている。例えば、リード化合物としてステロイド系スルホンアミドを利用することにより、ファンデルワールス接触を介して疎水性相互作用の数を増加させることにより、CA IXのより大きな疎水性ポケットを利用することができるいくつかの同様のCAIが開発されている。
【0016】
現在及び新規のCAIを改善するためのCA IX活性部位の構造的利用の見込みにもかかわらず、野生型CA IXの発現及び結晶化は困難な課題であり、広範な構造分析を行うことが困難であった。CA IX模倣物は設計されており、それはCA IXに特異な活性部位変異を含む修飾CA II(慣用的に発現及び結晶化される酵素)である。これにより、CAIのCA IXへの結合モードを迅速に分析し、予測するための有用なテンプレートが提供される。いくつかのCAIの構造解析により、CA IXを選択的に阻害するのに有用であることが示されている位置特異的標的化及びプロドラッグ様の特性の両方を示す薬物を設計することが可能になった。
【0017】
小分子阻害剤の開発とは別に、CA IX特異的抗体及びそれらの共役体(conjugates)も設計されており、一部は現在第III相臨床試験(RECENARX)中である。M75及びG250は、酵素プロテオグリカンドメインを認識するような2つのモノクローナル抗体である。CA IXに結合すると、これらの抗体は腫瘍細胞接着及び運動性の低下を引き起こし、根絶のために腫瘍細胞を標的化するナチュラルキラー細胞を誘導する。高い結合親和性を有するモノクローナル抗体の開発は、CAI薬物設計において一般的に遭遇するオフターゲット効果の問題を排除する。
【0018】
CA IXの活性部位の細胞外位置は、腫瘍細胞における酵素の標的化の代替方法を提示する。具体的には、それらが細胞膜に対して不透過性であることを可能にする物理化学的特性を有するCAIを設計することができる;したがって、古典的CAIによって観察されるオフターゲットのサイトゾルCAを阻害する機会を減少させる。これは、阻害プロファイルのみの差異を利用するのではなく、CA IXの位置特異的標的化を組み込む薬物設計戦略を提示する。今日まで、膜透過性が制限されたいくつかの化合物が合成され、設計されている。そのような化合物は、アルブミン-アセタゾラミドのような嵩高い化学的部分を利用するか、又は蛍光標識されたスルホンアミド若しくはカチオン性スルホンアミド誘導体の形態の荷電部分を利用する。そのようなCAIの設計は、(1)単に細胞膜を横切るには大きすぎる高分子量化合物、又は(2)還元されたサイトゾル環境に浸透することができないカチオン性部分という本質的に2つの異なる原理を採用する。有利な阻害及び膜不透過性を示す両方のタイプの化合物にもかかわらず、高分子量化合物はしばしば強力なアレルギー反応を誘発し、インビボでバイオアベイラビリティを低下させるので、カチオン性スルホンアミドの使用が薬剤開発のためのより実現可能な選択肢であることが示されている。結果として、いくつかのカチオン性スルホンアミドが、リード化合物としての4級アンモニウムスルフェート(QAS)、又は蛍光標識スルホンアミド誘導体を用いて開発されている。
【0019】
より最近のクラスのCAIである糖共役されたスルホンアミドは、膜不透過性及びCA IXのアイソフォーム選択的阻害の両方を示すことが示されている。これらの特定のCAIは、単糖類又は二糖類のテールに共役したベンゼンスルホンアミド、スルホンアミド、又は環状2級スルホンアミドを利用する。これらのCAIの設計は、臨床的に使用されたトピラマート(抗てんかん治療薬)の影響によるものであった。これらの化合物が細胞内に浸透しない理由は、それらの高分子量及び容易に輸送されない糖部分の付加によるものである可能性が最も高い。更に、従来から使用されている嵩高いスルホンアミド誘導体とは異なり、糖部分の付加により、これらのCAIは水溶性を維持し、従って良好なバイオアベイラビリティを維持することができる。もう一つの有望な側面は、これらのCAIが、いくつかの場合にCA IXに対してCA IIよりも>1000倍の選択性を有する、顕著な阻害プロファイルを示すことである。また、炭水化物の付加により、切断可能なエステル結合が炭水化物テールのカルボニルに付加され得、CAIがプロドラッグの形態で「パッケージ化」されることを可能にする、これらのCAI上での操作領域を与える。これらの化合物は、CA IXのための薬物を開発するという点で非常に有望であるが、炭水化物部分の使用は、潜在的なジレンマを引き起こす。即ち、炭水化物、特に単糖の使用は、筋毒性が観察されたスタチンと同様に、グルコーストランスポータと意図的ではなく相互作用する可能性がある。しかし、この考えは試験されていない。興味深いことに、このような問題を回避する方法は、ヒト組織におけるスクローストランスポータの欠如のために特異的トランスポータとの相互作用を持たないスクロースベースの共役体の開発である。興味深いことに、CAIに開発した現在の二糖類共役体はガラクトース部分を利用し、CA IXと対比させてCA IIに強い阻害を示す。これらの化合物はサイトゾルに進入しないが、有効な薬物候補とみなされる程度には十分にきつくCA IXに結合しない可能性がある。しかし、前述の示唆されたスクロース共役体のような他の二糖類ベースの化合物の利用は、CA IXに対してより高い阻害を示す可能性があり、従って、位置特異性及び直接阻害の両方においてCA IXに対して選択的であるCAIを与える。
【0020】
CA IX標的及びNIR色素の両方を含む多くの刊行物がある。1つの研究は、スルホンアミド誘導体を合成し、インビトロ及びインビボの両方でそれらを試験することによってCA IXを標的化する(非特許文献1)。Groves et al.は、スルホンアミド誘導体を合成し、アミド連結を使用して、4つの市販の疎水性インドシアニンNIR蛍光色素のうちの1つ以上のスクシンイミジルエステルにそれらをカップリングさせた。それらは、合成したスルホンアミド誘導体のHT-29腫瘍を保持するマウスの腫瘍への局在化を示す。
【0021】
CA IX標的化剤は、CA IX発現腫瘍のインビボ検出についてBao et al.によって検証されている(非特許文献2)。CA IX抗体を用いて局在化を比較した。
【0022】
Groves及びBaoはいずれも、炭酸脱水酵素を標的化する造影剤を開示する特許文献1の発明者である。特許文献1は、連結体(Linker)L、次いで任意のQ基に、次いで最終的にはNIR発色団に連結されたスルホンアミド炭酸脱水酵素結合部分(CAB)で構成された炭酸脱水酵素標的化剤を特許請求している。特許請求されたNIR発色団は、シアニン色素ファミリーの閉鎖サブグループの属構造である。
【0023】
Claudiu Trandafir Supuranは、特許文献2の発明の名称「炭酸脱水酵素の阻害剤に共有連結した近赤外(NIR)光の吸収剤を含むアセンブリ(Assembly comprising an absorber of near infrared(NIR) light covalently linked to an inhibitor of carbonic anhydrase)」の共同発明者である。NIR光の吸収体は、100nm以上の光学吸収断面積を有する。
【0024】
Neri及び共同研究者は、インビボで固形腫瘍において発現されるCA IXを標的化するために小分子薬物共役体を使用する(非特許文献3)。それらはCAIXリガンド-連結体-色素共役体を調製し、それがヌードマウスの皮下CAIX発現SKRC52腫瘍において優先的に蓄積することを示す。Claudiu Supuranはまた、CA IXを発現する細胞の増殖を阻害する方法、CA IX特異的阻害剤をスクリーニングする方法、活性化されたCA IXに選択的に結合する組織を視覚化及びイメージングする方法、発現したCA IXを有する細胞を標的化する方法、並びに遺伝子治療剤に結合したCA IX特異的阻害剤を利用する方法を開示する特許文献3の発明者である。特許文献3はCA IXを標的化し、検出するために放射性同位体に共役されたCA IX特異的抗体を使用する。
【0025】
別の研究では、Neri及び共同研究者は、腫瘍マーカ炭酸脱水酵素IXに対する二価リガンドが、構成的にCAIX陽性腎細胞癌のSKRC52モデルにおける対応する一価カウンターパートと比較して、改善された腫瘍標的化性能をもたらすことを示す(非特許文献4)。アセトアゾラミド誘導体は、市販の色素IRDye750を利用して一価及び二価の色素共役体に連結される。
【0026】
Pomper及び共同研究者らは、Neri et al.の先の二価の研究に触発された腎細胞癌の淡明細胞亜型の放射線イメージングのための改変された二重モチーフCAIX阻害剤である[111In]XYIMSR-0の合成及びインビボ性能について報告する(非特許文献5)。Pomperは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)で分子のIRDye750部分を置換したが、より親水性の種はまた、ポジトロン断層法、単一光子放射断層撮影、及び放射性医薬品治療のための金属同位体で好都合に放射線標識を可能にする。インジウム-111は、比較的長い半減期(2.8日)の放射性核種として使用され、薬物動態の拡張モニタリングを可能にする。放射性トレーサにおけるCAIX結合親和性を測定するために、FITC標識を標準として使用する。
【0027】
別の研究では、Neri及び共同研究者らは、核医学適用のために広く使用されているガンマ線放出核種である99m Tcで標識された腫瘍関連アイソフォームCAIXに対して高い親和性を有するアセタゾラミドベースの炭酸脱水酵素リガンドの合成を記載している(非特許文献6)。
【0028】
Supuran及び共同研究者は、亜鉛結合基、可変連結体、及び炭水化物「テール」部分としてスルファメートを含む新しいクラスのCA IX阻害剤の開発を記載している(非特許文献7)。CA IX模倣体(CA IXを模倣する活性部位残基を有するCA IIの変異体)との複合体におけるこれらの化合物の2つ及びCA IIとの複合体における1つの化合物の結晶構造は、1.7Å解像度又はそれ以上で測定され、CA IIに対比してCA IXの親水性及び疎水性ポケットの間の結合の選択的メカニズムを示す。それらの構造解析は、Moeker et al.の化合物5eのCA IXとCA IIとの間に2つの異なる結合モードが存在することを示しているが、両方の場合において、この化合物は酵素の親水性ポケットと相互作用する。このポケットは一般にCA IIとCA IXとの間で保存されているので、両方の酵素間でのナノモル結合親和性を説明することができる。対照的に、Moeker et al.の化合物5dは、CA IIとCA IXとの間で差異的な阻害プロファイルを示し、疎水性ポケットとの相互作用を介してCA IX活性に結合する。CA活性部位におけるこの領域は、CA IXに対比してCA IIの残基間の変動がより大きい。その結果、この領域は、CA活性部位の「選択的ポケット」の1つと呼ばれている。
【0029】
CA IXの触媒ドメインのX線構造は、四次構造における他のCAアイソフォームとは有意に異なる形態のフォールドを示す(非特許文献8)。彼らは、125-137領域がこれらのアイソザイムの全てにおいて構造及び配列の両方で異なり、構造ベースの薬物設計において考慮されるべき「ホットスポット」を表すと結論づけている。
【0030】
癌の処置は、典型的には、手術、放射線療法、及び/又は化学療法などのいくつかの治療戦略の使用を必要とする。しばしば治療法は、他の治療法に先立つ有効性のために組み合わせなければならない。例えば、手術及び放射線療法は、大多数の場合に有効であるが、腫瘍性組織の限定された局所領域のみを標的化することができ、高度に転移性の癌症例の処置には有効でないという点で限界がある。この段階で、複数の化学療法剤の組み合わせが、原発腫瘍部位から移動した癌細胞を死滅させる試みで通常使用される。更に、高度に悪性で低酸素性の腫瘍は、しばしば放射線及び特定の化学療法に対して耐性を発現するか、又は機能しない;従って、化学療法剤の代替又は組み合わせは、これらの特定の場合に利用可能な唯一の処置方法である。低酸素症のこの特徴並びに放射線及び化学療法に対する耐性との関連は、いくつかの癌のタイプで観察されている。これは、放射線療法に必要なフリーラジカルの生成を非常に困難にする全体のO含有量の低下、アルキル化剤の細胞外pH破壊機能の低下、HIFによって誘発される薬剤耐性因子のアップレギュレーションを含むいくつかの要因に起因する可能性が最も高い。CA IXは、いくつかの癌に対する治療耐性の症例に関連しており、しばしば放射線耐性のバイオマーカとして使用されている。そのような証拠が示唆しているように、NIR色素に連結した活性部位結合部分を介してCA IXを標識することは、低酸素癌細胞の局在化を可能にし、手術中に癌組織を除去する外科医を助ける手段としてその潜在的使用を示す。
【0031】
Ferreira及び共同研究者は、4つのNIR色素:IR125、IR780、IR813、及びIR820のインビトロ細胞毒性を比較した(非特許文献9)。細胞毒性の1つの原因は、三重項状態への系間交差の後、増感剤が三重項-三重項消滅プロセスを介して分子酸素と相互作用し得、一重項酸素を生成するか、あるいは三重項状態の増感剤が電子移動プロセス又はラジカル中間体の形成に関与し得、同様に反応性酸素種の生成をもたらすためである。しかし、Ferreiraは、IR125及びIR813によって示される細胞毒性の有意な値の主な原因は、溶液中での(長期間の)不安定性、並びに細胞培養液中の色素の接種の間に生じた分解産物及び光産物と関連しているはずであることを提案している。シクロヘキセニル環の付加は、有意な分子安定化を促進し、IR820は、光の存在下及び非存在下の両方において、主要な細胞毒性作用を示さない唯一のNIR色素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【文献】米国特許出願公開第2012/0321563号明細書
【文献】国際公開第2014/136076号パンフレット
【文献】米国特許第8,628,771B2号明細書
【非特許文献】
【0033】
【文献】Kevin Groves,Bagna Bao,Jun Zhang,Emma Handy,Paul Kennedy,Garry Cuneo,Claudiu T.Supuran,Wael Yared,Jeffrey D.Peterson,Milind Rajopadhye,“Synthesis and evaluation of near-infrared fluorescent sulfonamide derivatives for imaging of hypoxia-induced carbonic anhydrase IX expression in tumors”、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters,Volume 22,Issue 1,1 January 2012,Pages 653-657,ISSN 0960-894X,http://dx.doi.org/10.1016/j.bmcl.2011.10.058
【文献】Bao B,Groves K,Zhang J,Handy E,Kennedy P,Cuneo G,et al.(2012),“In Vivo Imaging and Quantification of Carbonic Anhydrase IX Expression as an Endogenous Biomarker of Tumor Hypoxia.”PLoS ONE 7(11):e50860.doi:10.1371/journal.pone.0050860
【文献】Krall,N.,Pretto,F.,Decurtins,W.,Bernardes,G.J.L.,Supuran,C.T.and Neri,D.(2014),“A Small-Molecule Drug Conjugate for the Treatment of Carbonic Anhydrase IX Expressing Tumors.”Angew.Chem.Int.Ed.,53:4231-4235.doi:10.1002/anie.201310709
【文献】Krall,Nikolaus,Francesca Pretto,and Dario Neri.“A bivalent small molecule-drug conjugate directed against carbonic anhydrase IX can elicit complete tumour regression in mice.)”,Chem.Sci.5.9(2014):3640-3644.
【文献】Yang,X.,et al.“Imaging of carbonic anhydrase IX with an 111In-labeled dual-motif inhibitor.)”,Oncotarget 6.32(2015):33733-33742.
【文献】Nikolaus Krall,Francesca Pretto,Martin Mattarella,Cristina Muller,and Dario Neri,“A technetium 99m-labeled ligand of carbonic anhydrase IX selectively targets renal cell carcinoma in vivo)”,J Nucl Med jnumed.115.170514 published ahead of print February 18,2016(10.2967/jnumed.115.170514).
【文献】Moeker,Janina,et al.“Structural insights into carbonic anhydrase IX isoform specificity of carbohydrate-based sulfamates.”,Journal of medicinal chemistry 57.20(2014):8635-8645
【文献】Alterio,Vincenzo,et al.“Crystal structure of the catalytic domain of the tumor-associated human carbonic anhydrase IX.”,Proceedings of the National Academy of Sciences 106.38(2009):16233-16238.
【文献】Conceisao,David S.,Diana P.Ferreira,and Luis F.Vieira Ferreira.“Photochemistry and Cytotoxicity Evaluation of Heptamethinecyanine Near Infrared(NIR) Dyes.”,International journal of molecular sciences 14.9(2013):18557-18571.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本開示は、異なる連結体を介してNIR色素に連結されたCA IX標的化リガンドを提供し、化合物の臨床特性(例えば安定性、PK特性、溶解性、迅速な腫瘍蓄積、より高い蛍光、迅速な皮膚クリアランス、及びより高い腫瘍対バックグラウンド比)を改善する。本開示はまた、画像誘導手術における化合物の使用及びその合成方法を提供する。本開示は、(CA IXタンパク質の結晶構造を使用して)リガンドに疎水性基を組み込み、タンパク質の活性部位の疎水性領域において余分な結合ポケットに適合させることによって結合親和性CA IXリガンドの改善を提供する。本開示はまた、新規な高親和性リガンドを提供して、NIR共役体のインビボ親和性及びPK特性を改善する。本開示は更に、リガンドとNIR色素との間の連結体の長さを変化させて、タンパク質の中央から表面に及ぶ15Åコーン形状の空洞に適合するように最適な距離を見出し、それにより、嵩高いNIR色素の立体障害効果を排除することによって活性部位へのリガンドの結合親和性を維持する。本開示はまた、CA IXタンパク質に対する特異性を改善するために、連結体に正電荷を付加するか、又は色素分子中の負電荷の数を減らすことによって、リガンド-連結体NIR色素共役体の全電荷を変化させる。本開示はまた、CA IXを発現する腫瘍の標的化イメージングにおける使用のための化合物、並びに例えばCA IX陽性組織及び腫瘍に関連するイメージング及び外科手術における使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0035】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、以下の形態を有する:
B-W-X-Y-Z
式中、
BはCA IX標的化分子であり;
Wは伸長された疎水性残基であり;
Xは疎水性スペーサであり;
Yはアミノ酸スペーサであり;及び
ZはNIR色素である。
【0036】
いくつかの実施形態では、CA IX標的化分子は、小分子、リガンド、阻害剤、アゴニスト、又はそれらの誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物はリガンドである。他の実施形態では、CA IX標的化化合物は、CA IXに結合する小分子である。いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、伸長された疎水性部分を有する小分子である。いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、フッ素化芳香族部分を有する小分子である。
【0037】
いくつかの実施形態では、Wは、伸長された疎水性残基である。いくつかの実施形態では、Wは、疎水性アミノ酸又は部分、例えば中性の非極性(疎水性)アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニン又は芳香族基、シクロヘキシル基、チロシン、及びそれらの誘導体;塩基性(正に荷電した)アミノ酸、例えばアルギニン、ヒスチジン、及びリシン並びにそれらの誘導体;中性の極性アミノ酸、例えばグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン並びにそれらの誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Wは芳香族アミノ酸及びそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、Wは正電荷を有する。他の実施形態では、Wは負電荷を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、Xは疎水性スペーサである。いくつかの実施形態では、Xは、6個のアミノヘクタン酸(hectanoic acid)(SAHA)、8個のアミノオクトン酸(octonoic acid)(EAOA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンアミン(PEA)単位、N-アミノ-dPEG酸、6個の原子の鎖、長さが6個の原子のスペーサ、長さが6~20個の原子の鎖;アリール又はアリールアルキル基を含むペプチド(それぞれが場合により置換され、一方のアリール又はアリールアルキル基が約6~約10個又は約6~約14個の原子であり、他方のアリール又はアリールアルキル基が約10~約14個、又は約10~約15個の原子である)からなる群から選択される。別の実施形態では、スペーサは、約1~約20個の原子を含む。いくつかの実施形態では、スペーサは6個の原子の長さである。いくつかの実施形態では、スペーサはEAOAを含む。いくつかの実施形態では、スペーサは可変的に荷電される。いくつかの実施形態では、Xは、正電荷アミノ酸(例えば、Arg、Lys、Orn)又はアミノ酸を含む4級アミンを損なうペプチドである。他の実施形態では、Xは負電荷を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、Yはアミノ酸スペーサである。いくつかの実施形態では、Yは:酸性(負に荷電した)アミノ酸、例えばアスパラギン酸及びグルタミン酸並びにそれらの誘導体;塩基性(正に荷電した)アミノ酸、例えばアルギニン、ヒスチジン、及びリシン並びにそれらの誘導体;中性極性アミノ酸、例えばグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン並びにそれらの誘導体;中性の非極性(疎水性)アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニン;並びにそれらの誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Yは芳香族アミノ酸及びそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、Yは正電荷を有する。他の実施形態では、Yは負電荷を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、Zは、LS288、IR800、SP054、S0121、KODAK、S2076、S0456を含むがこれらに限定されない近赤外線色素及び/又は以下からなる群から選択される色素からなる群から選択される:
【化1】
【0041】
特定の実施形態では、Zは可変的に荷電される。いくつかの実施形態では、Zは正電荷を有する。他の実施形態では、Zは負電荷を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、以下の形態を有する:
B-W-X-Y-Z
式中、
BはCA IX標的化分子であり;
Wは伸長された疎水性残基であり;
Xは疎水性スペーサであり;
Yはアミノ酸スペーサであり;
ZはNIR色素である。
【0043】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、以下の式を有する:
B-W-X-Y-Z
式中、BはCA IX標的化分子であり;Wは伸長された疎水性残基であり、Xはスペーサであり;Yは硫黄含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサであり;ZはNIR色素である。いくつかの実施形態では、硫黄含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサはシステインである。いくつかの実施形態では、硫黄含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサはメチオニンである。いくつかの実施形態では、硫黄含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサは、チオフェノール部分を含む分子である。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、以下の形態を有する:
B-W-X-Y-Z
式中、BはCA IX標的化分子であり;Wは伸長された疎水性残基であり、Xは疎水性スペーサであり;Yは、カルコゲン含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサであり;ZはNIR色素である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の形態の化合物を提供する:
B-W-X-Y-Z
式中、BはCA IX標的化分子であり;Wは伸長された疎水性残基であり、Xはスペーサであり;Yは、チロシン、システイン、リシン、又はそれらの誘導体からなる群から選択されるアミノ酸であり;ZはNIR色素である。いくつかの実施形態では、Yはチロシン又はチロシン誘導体を含む。いくつかの実施形態では、Yはチロシンを含み、炭素同位体はチロシンの芳香族環上にある。いくつかの実施形態では、Yは、水素同位体を有する芳香族環を有するアミノ酸を含む。
【0046】
本発明はまた、以下の構造式を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはその同位体に関し:
【化2】

式中:
は水素又はSOHを表し;
は、水素、CH、CSO 、CSOH又はCSO 又はCSOH又はC(CHを表し;
は、炭素、場合により1つ以上の共有結合を表し;
は、場合により1つ以上の共有結合を有する炭素を表し;
は窒素、酸素、又は硫黄、あるいは無原子(芳香族環とビニル環との間の直接C-C結合)を表し;
は任意であり、存在する場合、芳香族置換基を表し、ビニルエーテル架橋の輝度及び安定性の増加などのスペクトル特性を向上させる。
は任意であり、存在する場合、芳香族アミノ酸、例えばPhe、Trp、His、又はそれらの誘導体、カチオン性アミノ酸、例えばArg、Lys、又はそれらの誘導体、アニオン性アミノ酸、例えばAsp、Glu、又はそれらの誘導体、芳香族/カチオン性/アニオン性酸又はそれらの誘導体の非天然アミノ酸を有する連結体を表し;
は任意であり、存在する場合、直鎖状炭素鎖、又はポリエチレングリコール連結体、カチオン性連結体、若しくはそれらの誘導体を表し;
は任意であり、存在する場合、Phe、Val、Leu、Ile、Trp、His、Arg、Lys、Asp、Glu、又はそれらの誘導体などの疎水性部分を表し;
10は疎水性連結体を表し;並びに
11は任意であり、存在する場合、F、NO、又はそれらのような分子の結合親和性、安定性、疎水性を高める芳香族置換基を表し、R12は任意であり、存在する場合、Phe、Val、Leu、Ile、Trp、His、又はそれらの誘導体あるいは環状部分、例えばシクロヘキシル、シクロオクチル、又はそれらの誘導体等の疎水性部分を表す。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、約500nm~約900nmの間の吸収及び発光極大値を有する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、約600nm~800nmの間の吸収及び発光極大値を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、組織細胞中にその分配後に蛍光を発するように製造される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、化合物を近赤外波長の励起光に供することによって蛍光を発するように作製される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、リガンド(C-SPA)の結合親和性と同様のCA IXに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、腫瘍細胞への標的化に対して高度に選択的である。特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、低酸素状態又は低酸素組織下で癌細胞を標的化する。
【0049】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、それを必要とする被験体に投与され、いくつかの実施形態では、投与される組成物は、化合物に加えて、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態は、CA IXを発現する生物学的組織の光学的イメージングの方法を提供し、この方法は:
(a)生物学的組織をCA IX標的化NIR色素化合物を含む組成物と接触させる工程;
(b)組成物中の化合物が生物学的標的内に分配される時間をとる工程;
(c)化合物が吸収可能な波長の励起光で組織を照射する工程;及び
(d)化合物によって放出された光シグナルを検出する工程
を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、高CA IX発現に関連する疾患の検出に使用される。いくつかの実施形態では、(d)で放出されたシグナルから画像を構築する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、本発明は、工程(a)が、シグナル特性が識別可能な2つ以上の蛍光化合物を組織と接触させ、場合により組織は被験体内にあるような上述の方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、照射及び/又は検出する方法工程のために内視鏡、カテーテル、トモグラフィーシステム、ハンドヘルト式光学的イメージングシステム、外科用ゴーグル、又は術中顕微鏡の使用を提供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法は、癌を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、肉腫、乳癌、脳腫瘍、神経内分泌癌、結腸癌、前立腺癌、精巣癌、又は黒色腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、CA IXを発現する細胞のイメージングに使用される。特定の実施形態では、これらの細胞は、膀胱癌細胞、膵臓癌細胞、肝臓癌細胞、肺癌細胞、腎臓癌細胞、肉腫細胞、乳癌細胞、脳腫瘍細胞、神経内分泌癌腫細胞、結腸癌細胞、前立腺癌細胞、精巣癌細胞、又は黒色腫細胞からなる群から選択される。
【0053】
本発明はまた、生物学的サンプル中の細胞タイプを標的化する方法を提供し、この方法は:(a)標的細胞タイプの少なくとも1つの細胞にこの化合物を結合可能にする時間及び条件下で、生物学的サンプルをCA IX標的化NIR色素化合物と接触させる工程;並びに(b)生物学的サンプルにおいてこの化合物の存在又は非存在を光学的に検出する工程を含み、検出工程(b)における化合物の存在は、標的細胞タイプが生物学的サンプル中に存在することを示す。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物を投与する工程、及びこの化合物を励起光源に供し、この化合物から蛍光を検出する工程を含むCA IX発現細胞の光学的検出方法を提供する。いくつかの実施形態では、励起光源は近赤外波長光である。いくつかの実施形態では、励起光波長は、約600~1000ナノメートルの範囲内である。いくつかの実施形態では、励起光波長は、約670~850ナノメートルの範囲内にある。
【0054】
特定の実施形態では、本発明は、被験体に対して画像誘導手術を実施する方法を提供し、この方法が:
a)所与の外科部位に化合物が蓄積するのに十分な条件及び時間で、CA IX標的化NIR色素化合物を含む組成物を投与する工程;
b)赤外光を用いて化合物を視覚化するために化合物を照射する工程;並びに
c)赤外光による励起時に蛍光を発する領域の外科的切除を行う工程
を含む。
【0055】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、赤外光の波長は、約600~1000ナノメートルの範囲内である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、約670~850ナノメートルの範囲内の赤外光波長を使用する。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態は、被験体における疾患を診断する方法を提供し、この方法が、
a)少なくとも1つのCA IX発現細胞へ化合物を結合可能にする時間及び条件下で、CA IX標的化NIR色素化合物のある量を、診断を必要とする被験体に投与する工程;
b)生物学的サンプル中に存在する化合物からのシグナルを測定する工程;
c)少なくとも1つのコントロールデータセットと、b)において測定されたシグナルを比較する工程であって、少なくとも1つのコントロールデータセットが、標的細胞タイプを含まない生物学的サンプルと接触した請求項1に記載の化合物からのシグナルを含む、工程;及び
d)工程c)における比較が疾患の存在を示す疾患の診断を提供する工程
を含む。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態は、CA IX標的化NIR色素化合物を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、CA IX発現細胞のイメージングに使用される。いくつかの実施形態では、CA IX発現細胞は腫瘍細胞である。特定の実施形態では、CA IX発現細胞は癌細胞である。特定の実施形態では、CA IX発現領域は腫瘍微小環境である。いくつかの実施形態では、本発明は、転移性疾患の検出に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、改善された外科的切除及び/又は改善された予後のために使用される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、非NIR共役された蛍光色素よりも清浄な外科的マージンを提供する。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、改善された腫瘍対バックグラウンド比を有する。
【0058】
他の実施形態では、検出される細胞は、皮膚下で5mmを超える。いくつかの実施形態では、検出される組織は、皮膚下で5mmを超える。他の実施形態では、検出される腫瘍は、皮膚下で5mmを超える。いくつかの実施形態では、検出される細胞は、被験体の皮膚下で6mm、7mm、8mm、9mm、又は10mmを超える。本発明のいくつかの実施形態では、可視光スペクトルの外側で検出可能な色素プローブを用いる。いくつかの実施形態では、可視光スペクトルより大きな色素プローブが使用される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、650nm~900nmの波長に感受性のある色素プローブを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、約650nm~1000nmの近赤外領域、例えば一実施形態では約800nmの最大光吸収波長を有する。
【0060】
提供される方法の更なる実施形態では、CA IX発現癌細胞は腫瘍細胞である。提供される方法のなお更なる実施形態では、CA IX発現癌は腫瘍である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも1000mmである。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は1000mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は950mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は900mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は850mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は800mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は750mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は700mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は650mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は600mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は550mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は500mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は450mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は400mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は350mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は300mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は250mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は200mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は150mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は100mm未満である。一実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも75mmである。別の実施形態では、腫瘍の体積は75mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は70mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は65mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は60mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は55mm未満である。一実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも50mmである。他の実施形態では、腫瘍は50mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は45mm未満である。他の実施形態では、腫瘍の体積は40mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は35mm未満である。さらに別の実施形態では、腫瘍の体積は30mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は25mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は20mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は15mm未満である。さらに別の実施形態では、腫瘍の体積は10mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は12mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は9mm未満である。さらに別の実施形態では、腫瘍の体積は8mm未満である。さらに別の実施形態では、腫瘍の体積は7mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は6mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は5mm未満である。
【0061】
一実施形態では、腫瘍は、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物を使用する外科的後退(surgical recession)の前に少なくとも5mmの長さを有する。一実施形態では、これらの方法は、5mm未満の腫瘍を検出する。他の実施形態では、本明細書の方法は、4mm未満の腫瘍を検出する。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、3mm未満の腫瘍を検出する。別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも6mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも7mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも8mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は少なくとも9mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも10mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも11mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも12mmの長さを有する。なおさらなる実施形態では、腫瘍は少なくとも13mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも14mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は少なくとも15mmの長さを有する。さらに別の実施形態では、腫瘍は少なくとも16mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも17mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも18mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも19mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は、少なくとも20mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも21mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも22mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも23mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも24mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも25mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも30mmの長さを有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示は、近赤外(NIR)色素に共役されたCA IX標的化化合物、並びにその治療的及び診断的使用のための方法に関する。より具体的には、本開示は、例えば腎臓、子宮内膜、泌尿器、結腸直腸、卵巣、乳房、膵臓、及び食道の、並びに多くの固形腫瘍及び関連疾患の低酸素領域等のCA IX発現細胞に関連する疾患の診断及び処置のための化合物及び方法を提供する。本開示は、化合物を製造及び使用するための方法及び組成物、化合物を組み込む方法、並びに化合物を組み込むキットを更に記載する。CA IX標的化化合物、例えば連結体(X-Y)を介してNIR色素に共役したCA IXに対する結合親和性及び特異性を改善するために伸長した疎水性残基(W)を有するリガンドは、CA IXを発現又は過剰発現する病原性細胞集団を含む、腎臓、子宮内膜、泌尿器、結腸直腸、卵巣、乳房、膵臓、及び食道、並びに多くの固形腫瘍の低酸素領域、並びに関連疾患のイメージング、診断、及び/又は処置に有用であり得ることを見出した。CA IXは、ビタミン受容体等の細胞表面受容体で観察されるエンドサイトーシスと類似のプロセスで内在化される細胞表面タンパク質である。従って、所定の長さ及び/又は所定の直径を有する連結体及び/又はその長さに沿って予め選択された官能基を含む特定の共役体を使用して、このような疾患を処置、イメージング、及び/又は診断し得ることを見出した。
【0063】
例示的な一実施形態では、連結体[X又はリガンドとNIR色素との間のスペーサ(W-X-Y)のいずれか]は、放出性又は非放出性連結体であり得る。一態様では、連結体Lは少なくとも約6個の原子の長さである。1つのバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は少なくとも約8個の原子の長さである。1つのバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は、少なくとも約10個の原子の長さである。別のバリエーションでは、連結体[X又はW-X-Y]は、約6~約14個、約6~約20個、又は約6~約18個の原子の長さである。別のバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は、約10~約20個、約14~約12個、又は約10~約16個の原子の長さである。
【0064】
代替の態様では、連結体[X又はW-X-Y]は少なくとも約10オングストローム(Å)の長さである。1つのバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は少なくとも約14Åの長さである。別のバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は、少なくとも約16Åの長さである。別のバリエーションでは、連結体[X又はW-X-Y]は、約10Å~約20Åの範囲の長さである。
【0065】
代替の態様では、連結体[X又はW-X-Y]の長さの少なくとも一部は、結合リガンドBに連結された端部で約4Å以下の直径である。1つのバリエーションでは、連結体[X又はW-X-Y]の長さの少なくとも一部は、結合リガンドBに連結された端部で約4Å以下、又は約3Å以下の直径である。約5Å以下、約4Å以下、又は約3Å以下の直径要件を含む例示的な実施形態は、連結体の所定の長さの要件を含み得、それによって連結体の円錐形の空洞状部分を規定することが理解される。例示的には、別のバリエーションでは、連結体は、長さが少なくとも約6Å、及び直径が約5Å以下、約4Å以下、又は約3Å以下である結合リガンドに接続された端部に円錐空洞部分を含む。
【0066】
別の実施形態では、連結体[W-X-Y]は、Val、Leu、Phe、Tyr、His、Trp、Met、及び同様の残基等の疎水性側鎖を有するアミノ酸を含むCA IXの1以上の残基と相互作用することができる1以上の疎水性連結体を含む。別の実施形態では、連結体[W-X-Y]は、Ser、Thr、Cys、Arg、Orn、Lys、Asp、Glu、Gln、及び類似の残基等の親水性側鎖を有するアミノ酸を含む、CA Ixタンパク質の1以上の残基と相互作用することができる1以上の親水性連結体を含む。前述の実施形態及び態様は、単独で又は互いに組み合わせて[W-X-Y若しくはX-Y、又はW-Y]の連結体Xに含まれ得ることが理解されるべきである。例えば、長さが少なくとも約6個の原子で、直径が約5Å、約4Å以下、又は約3Å以下である連結体Xが想定され、本明細書に記載されており、また1以上のCA IX残基(親水性ポケットにおいてAsn、His、Ser、Glu、Thr、Gln、あるいは疎水性ポケットにおいてLeu、Val、Val、Leu、Proを含む)と相互作用できる1以上の親水性連結体を含み、同様の残基が想定され、本明細書に記載される。
【0067】
別の実施形態では、連結体の一端は分岐しておらず、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖を含む。一実施形態では、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の直鎖は、少なくとも5個の原子の長さである。1つのバリエーションでは、直鎖は少なくとも7個の原子、又は少なくとも10個の原子の長さである。別の実施形態では、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖は置換されていない。1つのバリエーションにおいて、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖の一部は、二価フラグメントで環化される。例えば、ジペプチドPhe-Tyr又はアミノ酸Tyrを含む連結体(Y)は、2つの窒素をエチレンフラグメント又はその置換変異体で環化することによってピペラジン-1,4-ジイル構造を含み得る。
【0068】
別の実施形態では、医薬組成物は本明細書に記載され、ここで医薬組成物は、CA IXを発現する又は過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患又は疾患状態を診断し、並びに/あるいはこれらの組織及び/又は細胞をイメージングするために有効な量において、本明細書で記載される共役体を含む。実例として、医薬組成物も、1以上の担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む。
【0069】
別の実施形態では、CA IXを発現又は過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患又は疾患状態を診断し、並びに/あるいはこれらの組織及び/又は細胞をイメージングする方法が本明細書に記載される。そのような方法は、CA IXを発現又は過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患又は疾患状態を診断し、並びに/あるいはこれらの組織及び/又は細胞をイメージングするために有効な量で、本明細書に記載の共役体、及び/又は本明細書に記載の共役体を含有する医薬組成物を投与する工程を含む。
【0070】
添付の図面と関連させてなされる本開示の実施形態の以下の説明を参照することにより、本開示の上述及び他の特徴並びにそれらを達成する方法がより明らかになり、開示自体が深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】伸長された結合残基(n、m、p=0、1、2、3...)を有する非従来型CA IXリガンドの化学構造を示す。
図2】(a)アゼタゾラミド(azetazolamide)と複合体を形成しているヒトCA IXタンパク質の活性部位の立体図を示す。(b)結晶構造によって決定される場合にCA IXタンパク質に結合したCA IXリガンド。(c)新規に設計されたCA IXリガンドの一般式。
図3】リガンド1及び2から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。図3は、リガンド1及びから誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図4】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの54を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図5】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの55を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図6】リガンド3及び4から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図7】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの60を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図8】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの61を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図9】共焦点顕微鏡法を用いたCA IX陽性SKRC52細胞に対する61の結合親和性を示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスにおける61の組織生体内分布及びバックグラウンドに対する腫瘍。10nmolの61をマウスに注射し、選択された組織を収集し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図10】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。HT29(ヒト結腸癌細胞株)及びHCC827(ヒト肺癌細胞株)腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの61を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1s)でイメージングした。
図11】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの62を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図12】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの65を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図13】リガンド5及び6から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図14】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの69を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図15】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの70を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図16】リガンド7~8から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図17】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの72を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図18】リガンド17~20から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図19】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの76を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図20】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの77を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図21】リガンド21~24から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図22】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの80を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図23】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの81を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図24】リガンド25及び26から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図25】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの85を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図26】リガンド27及び28から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図27】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの86を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図28】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの87を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図29】リガンド29から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図30】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの88を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図31】リガンド30~33から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図32】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの89を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図33】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの90を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図34】リガンド34~36から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造。
図35】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの93を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図36】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの94を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図37】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの95を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図38】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの96を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図39】リガンド39~45から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図40】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの99を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図41】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの102を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図42】リガンド47から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図43】閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの104を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
図44】リガンド3~4から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
図45】フローサイトメトリー分析を用いたCA IX陽性SCRC52細胞に対する105の結合親和性を示す。
図46】共焦点顕微鏡法を用いたCA IX陽性SCRC52細胞に対する105~107の結合親和性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
対応する参照文字は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。図面は本開示の実施形態を表しているが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、本開示をよりよく例示し説明するために、ある特徴を誇張して示すことがある。
【0073】
定義
【0074】
本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、細胞株、構築物、及び試薬に限定されず、そういうものとして変更し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定するものではないことも理解されるべきである。
【0075】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他に明白に示さない限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「炭酸脱水酵素IXリガンド」「CA IXリガンド」についての言及は、1以上のそのようなリガンドについての言及であり、当業者に公知のその等価物等を含む。
【0076】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似又は等価な任意の方法、デバイス、及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法、デバイス、及び材料をここで説明する。
【0077】
本明細書中に言及される全ての刊行物及び特許は、例えば、本発明に関連して使用され得る刊行物に記載される構築物及び方法論を記載及び開示する目的で、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書中のいかなるものも、発明者が先行発明によって、あるいは他の何らかの理由で、そのような開示よりも先行する資格がないという承認として解釈されるべきではない。
【0078】
本発明のCA IX標的化NIR共役体に関して、「抗原特異的」又は「特異的に結合する」という用語は、CA IXタンパク質の1以上のエピトープに結合するが、抗原の混合集団を含むサンプル中の他の分子を実質的に認識せず、結合しないCA IX標的化化合物を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合「エピトープ」という用語は、リガンドによって認識されるCA IX上の部位を指す。エピトープは、直鎖状又は立体配座的に形成された配列又はアミノ酸の形状であり得る。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「CA IX標的化化合物」(“CA-IX targeting compound”又は“CA-IX targeted compound”)は、少なくともCA IX又はCA IXのエピトープへの特異的結合の生物学的活性を有する小分子、リガンド、ポリペプチド、及びタンパク質を含む。これらの化合物には、CA IX又は少なくとも1つのCA IXエピトープに結合する、リガンド、受容体、ペプチド、又は任意のアミノ酸配列が含まれる。
【0081】
本発明の化合物は、CA IX標的化化合物を含み、それらはCA IX自体の一部に結合してもよく、又はそれらはCA IXに関連する細胞表面タンパク質若しくは受容体に結合してもよい。
【0082】
本明細書で使用される場合、「伸長された疎水性残基」は、疎水性アミノ酸又は部分、例えば中性の非極性(疎水性)アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニン又は芳香族基、シクロヘキシル基、チロシン及びそれらの誘導体;塩基性(正に荷電した)アミノ酸、例えばアルギニン、ヒスチジン、及びリシン並びにそれらの誘導体;中性の極性アミノ酸、例えばグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン並びにそれらの誘導体を含む。
【0083】
本明細書で使用される場合、「疎水性スペーサ」は、6個のアミノヘクタン酸(hectanoic acid)(SAHA)、8個のアミノオクトン酸(octonoic acid)(EAOA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンアミン(PEA)単位、N-アミノ-dPEG酸、6個の原子の鎖、長さが6個の原子のスペーサ、長さが6~20個の原子の鎖;1つのアリール又はアリールアルキル基が約6~約10個又は約6~約14個の原子であり、他方のアリール又はアリールアルキル基が約10~約14個、又は約10~約15個の原子である、場合により置換されたアリール又はアリールアルキル基を含むペプチドを含む。
【0084】
「官能基」、「活性部分」、「活性化基」、「脱離基」、「反応部位」、「化学反応性基」、及び「化学反応性部分」という用語は、当該技術分野において使用され、本明細書では分子の定義可能な部分又は単位を区別するために言及する。これらの用語は、化学技術においていくらか同義であり、本明細書では、ある機能又は活性を果たし、他の分子と反応性である分子の部分を示すために使用される。
【0085】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び天然に存在しないアミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然にコードされるアミノ酸は、20個の共通アミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)並びにピリロジン及びセレノシステインである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、即ち、水素に結合するα炭素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)又は修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。
【0086】
アミノ酸は、一般的に知られている3文字の記号又はIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される1文字の記号のいずれかによって本明細書に言及され得る。
【0087】
本発明は、とりわけ、疾患及び/又は癌に含まれるCA IX発現細胞の早期診断及び外科的処置に関連する問題に対処し、特に、改善されたイメージング、診断、生物学的特性(非限定的な例として、より高い特異性、バックグラウンドシグナルの減少、及び腫瘍蛍光の増加が挙げられる)を有するCA IX標的化色素共役体に対処する。
【0088】
詳細な説明
手術は米国で固形腫瘍患者の50%を治癒させるが、化学療法及び放射線療法は全ての癌患者の5%未満を治す。毎年70万人を超える患者が米国で癌手術を受け、40%の外科患者が5年以内に局所領域疾患の再発を経験する。腫瘍学分野の大きな進歩にもかかわらず、早期発見、陰性マージンを伴う原発腫瘍の外科的切除を完了するための壁を克服する方法、並びに転移性癌細胞の除去及びサテライト疾患の同定が依然として必要とされている。これらの3つの目標を達成することは、疾患のクリアランスを改善するだけでなく、術後の化学療法及び放射線に関する決定を導く。標的化されていない蛍光色素は、いくつかの腫瘍において受動的に蓄積することが示されているが、得られる腫瘍対バックグラウンド比はしばしば不十分であり、悪性組織と健康な組織との境界は規定することが困難であり得る。組織をイメージングするために、リガンド標的化蛍光色素(例えば、EC17:Folate-EDA-FITC)が使用されているが、これらの色素は、深部組織に浸透しないので有効ではなく、故に組織サンプル内のより深い組織よりも組織表面の特定細胞のみを同定している。更に、フルオレセインをベースとする色素は貯蔵寿命の安定性が低いという欠点を有する。蛍光イソチオシアネート(FITC)化合物によって形成されるチオ尿素架橋は、容易に分解し、不安定な化合物を生成する。更に、EC17はフルオレセインを使用し、これは、イメージング部位を取り囲む組織中のコラーゲンからの非特異的バックグラウンドノイズが比較的高いレベルであるという欠点を有する。更に、生物学的発色団、特にヘモグロビンによる可視光の吸収は、フルオレセインを組み込んだ色素の有用性を更に制限する。従って、従来の色素は、組織内の数ミリメートルよりも深く埋め込まれ得る腫瘍を容易に検出することができない。更に、フルオレセインからの蛍光は、低pH(pH5未満)で消光される。
【0089】
色素材料が検出及び誘導手術、又は早期、転移、及び他の組織イメージングの検出に有用であるためには、これらの欠点を克服することが重要である。本発明は、CA IXに対する結合親和性及び特異性を増加させるために、CA IXの結晶構造を用いて伸長された疎水性部分を有するCA IX標的化リガンドの設計及び開発を提供する。本発明は、安定であり、赤外領域で蛍光を発し、標的化組織内に深く浸透してCA IXを発現する組織の領域の特異的で明るい同定、高い腫瘍対バックグラウンド比を得るためにCA IXを発現しない組織からの迅速なクリアランス及び速い皮膚クリアランスを生じさせる近赤外色素のCA IX標的化共役体を提供する。より具体的には、CA IX標的化共役体は、1つ以上の原子スペーサ、アミノ酸、アミノ酸誘導体、及び/又は疎水性残基からなる連結体を介して近赤外色素に連結される。更により具体的には、原子スペーサが中性、疎水性、又は荷電した原子を有する疎水性の6個の原子のスペーサであり、アミノ酸スペーサが芳香族アミノ酸若しくは芳香族アミノ酸の誘導体、又は負電荷若しくは正電荷アミノ酸、チロシン又はチロシンの誘導体であることを見出した。連結体の電荷は、より高い腫瘍対バックグラウンド比を得るために、迅速な皮膚クリアランス及び迅速な腫瘍蓄積を得るために変化させることができる。更に、NIR色素の蛍光強度は、芳香族アミノ酸又はチロシン若しくはチロシンの誘導体を有することによって維持され又は更にには向上され、NIR色素の電荷を変化させることによって、迅速な皮膚クリアランスを達成することができる。
【0090】
本開示は、NIR色素に連結されたCA IX標的化リガンド及びその合成方法を提供する。本開示はまた、腎臓、子宮内膜、泌尿器、結腸直腸、卵巣、乳房、膵臓、及び食道、並びに多くの固形腫瘍の低酸素領域及び関連疾患を含むがこれらに限定されないCA IXを発現する腫瘍の標的化イメージングに用いる化合物、並びにCA IX陽性組織及び腫瘍を含むイメージング及び手術における使用方法を提供する。
【0091】
このようにして、本開示の化合物は、それを必要とする被験体における疾患組織のインビボ同定のために使用することができる。本開示方法は、約600nm~約1000nmの近赤外範囲に少なくとも1つの励起波長を有する光を、疾患組織を含む被験体のインビボの身体の一部に照射することを含む。被験体に投与される本開示の化合物から発せられる蛍光は、少なくとも1つの励起波長に応答して、体の一部の疾患組織に特異的に結合し、その組織によって取り込まれており、被験体における疾患組織の位置及び/又は表面積を決定するために直接見られる。
【0092】
600nm~850nmの波長範囲を有する光は、約400nm~約500nmの範囲内にある可視光とは対照的に、スペクトルの近赤外範囲内にある。従って、本開示の診断方法の実施において使用される励起光は、少なくとも1つの波長の光を含み、赤外線波長で組織を照射して化合物を励起し、本開示の化合物を取り込んだ領域から得られる蛍光を明確に可視化し、周囲の組織の自家蛍光とは明確に区別される。励起光は、単色であってもよいし、多色であってもよい。このように、本開示の化合物は、蛍光プローブが約600nm未満の波長で蛍光を発するものである場合には、所望の診断画像を得るために使用されるフィルタリング機構の使用の必要性を排除するので有利である。このようにして、本開示の化合物は、健康な組織から反射され、蛍光画像の解像度の損失を引き起こす波長の励起光の結果として生成される不明瞭な診断画像を回避する。
【0093】
診断検査室、医師の診察室及び外科処置の手術室には、適切な波長の光を生成するランプなどの開示診断方法の実施に有用な光学発光スペクトルでの光の波長を生成するオーバーヘッド光を装備することができる。このような光は、単に手術室の他の光を消し(検査中の身体部分において組織から視覚的に反射する外来光を除去するため)、観察者(例えば、外科医)の眼によって直接受け取られる蛍光画像が、主に、視野内の蛍光体から発する蛍光画像であるように、体腔又は外科的に形成された開口部に近赤外波長の励起光を光らせることによって、本開示の診断方法の実施において利用できる。観察者による直接視覚化の目的を達成するには、600nm~850nmの範囲、好ましくは750nm~850nmの範囲の光源から放射される光が使用されて、結果として蛍光部分以外の身体部分から反射する光が最小限に抑えられる又は排除される。
【0094】
従って、疾患組織(及び結合又は取り込まれた標的化構築物)は、(例えば、外科的に形成された開口部によって又は内部位置への光の内視鏡送達によって)励起光に「曝される」。これらのイメージング方法の開示は、自然の体腔又は外科的に形成された開口部のような、被験体の内部部位に位置する疾患組織のインビボ検出に特に適しており、疾患組織は、本開示の化合物の取り込みによって強調された領域の生検又は外科的切除(surgical excision)の手順を促進するために、「見える形」である(即ち、ヒトの眼に曝される)。疾患組織又は炎症組織の正確な位置及び/又は表面積は、本開示の化合物の取り込みによって容易に決定されるので、本開示の化合物を用いる方法は、診断及びイメージング、並びに必要であれば手術のための炎症領域の大部分の正確な外形、サイズ等をリアルタイムで「見る」必要がある病理学者、免疫学者、技術者、及び外科医等に価値のあるガイドを提供する。
【0095】
従って、特定の実施形態では、本開示は、有効量の本開示の化合物(例えば、本明細書の実施例の化合物)を含む組成物と組織を接触させ、組成物中の化合物が組織内に分配され、葉酸受容体の部位と相互作用する時間をとることによって、癌を有する患者への投与を介してCA IXを発現する生物学的組織の光学的イメージングを伴う。そのような相互作用に十分な時間が経過した後、組織に励起光を照射して組成物中の化合物に蛍光を生じさせる。次いで、蛍光が検出され、このような蛍光が観察されるところがCA IXを含む領域である。
【0096】
同様に、本開示の化合物は、そのような化合物と生物学的サンプルを、標的細胞タイプの少なくとも1つの細胞への化合物の結合を可能にする時間及び条件下で接触させることによって、生物学的サンプル中の標的細胞タイプを同定するために使用される。次いで結合した化合物は、本開示の結合した標的化化合物から発せられる近赤外波長の蛍光の存在が、標的細胞タイプが生物学的サンプル中に存在することを示したように、光学的に検出される。従って、この方法は、評価される組織中の標的化された細胞タイプの画像を提供する。最も好ましくは、標的化細胞タイプは、高レベルのCA IXも示す脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、直腸癌、又は肺癌を含むがこれらに限定されない癌細胞である。
【0097】
本明細書中に開示される有効量の共役体化合物の投与のための最も適切な経路は、処置されるべき疾患状態、又は診断されるべき疑いのある状態の位置に依存して変化する。これには、非経口(parentally)、例えば皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内が含まれるがこれらに限定されない。他の実施形態では、共役体は、他の医学的に有用なプロセスによって患者に投与されてもよく、任意の有効用量及び適切な治療剤形(持続放出剤形を含む)を使用することができる。例示的には、本明細書に記載の方法は、生物学的療法、例えば他の治療法又は治療的戦略、例えば外科手術、放射線療法、及び/又は化学療法と組み合わせて使用されてもよい。例えば、癌性状態の処置のために、励起光によって照射されるべき身体部分(例えば、腹腔内)に直接注射することによる投与を含む局所投与は、標的化構築物(例えば、蛍光標識抗体)が、その全身投与に付随し得る合併症のリスクなしに高濃度で投与され得るという利点を提供する。しかし、経口、局所、及び非経口適用も想定することができる。
【0098】
これらの方法は、有利には、本開示の化合物を含む組成物の投与が、所与の組織部位にてこの化合物が蓄積するのに十分な条件及び時間で、処置されるべき組織の視覚化において、医師を助けるので、被験体の癌の画像誘導診断及び処置を行う改善された方法を提供する。
【0099】
推定上の疾患部位が天然の体腔又は外科的に生成された内部部位である場合、内視鏡装置を場合により使用して、励起光を部位に送達させ、体腔内の部位から発する蛍光を受け取り、疾患組織からの蛍光の直接画像の形成を助けることができる。例えば、内視鏡装置内のレンズを使用して、画像の形成の補助として、検出された蛍光を集束させることができる。本明細書で使用される場合、そのような内視鏡によって送達される蛍光は、施術者によって「直接見られる」と考えられ、標的化構築物が結合する組織又はそれを取り込む組織は、この開示診断手順において使用される光が、近赤外領域の波長のような、組織に浸透する光の波長を含まないので、内視鏡に対して「見える形」でなければならない。あるいは、励起光は、本明細書に記載のように投与された標的化構築物を含有する体腔又は外科的開口部に任意の好都合な手段によって指向されてもよく、そのようにして生成された蛍光画像は内視鏡からの補助なしに観察者の目によって直接視覚化され得る。任意のタイプの内視鏡装置を活用してもしなくても、本開示方法によって生成される蛍光画像は、CCDカメラ、TVモニタ、光子収集装置等のような画像処理装置を活用せずに見ることができるようなものである。
【0100】
本開示の診断又はイメージング方法は、外科医/施術者が、生検又は外科的切除(surgical excision)の手順を容易にするために、外科的開口部を介して疾患組織又は異常組織を同時に見る(see)/見る(view)/可視化する(visualize)ことを可能にすることが想定される。疾患組織の位置及び/又は表面積は、本明細書に記載の化合物を用いる本開示の診断手順によって容易に決定されるので、この開示方法は、例えば、手術の進行に伴って切除するために塊の正確な外形、サイズ等を知る必要がある外科医にとって貴重なガイドである。特に、本開示の化合物は、先に記載したものよりも大きな強度まで近赤外範囲における蛍光を発することに留意されたい。このように、有利には、化合物のより少ない量が診断イメージングを達成するために必要とされることが想定される。更に、本開示の化合物は、組織の深部まで浸透し、従って、本開示により、有利なことには、精度が高まり、癌の適切な処置過程が行われることを可能にする。
【0101】
いくつかの実施形態では、照射された身体部分から(即ち、疾患組織に結合する、又は疾患組織によって取り込まれる蛍光標的化構築物から)発する蛍光を生じさせるため、及び標的化構築物を近赤外スペクトルからの光源に供するために、単一タイプの蛍光部分に依拠する。
【0102】
他の実施形態では、診断画像を得るために複数の(即ち、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の)標的化構築物が使用されることが想定される。そのような更なる標的化構築物は、第1のそのような化合物とは異なる本開示の更なる化合物であり得る。あるいは、追加の標的化構築物は、本明細書に記載の色素を含み得るが、アセトアゾラミド(acetoazolamide)誘導体はCA IX以外の別の受容体のためのリガンドで置き換えられている。更に他の実施形態では、更なる標的化部分は、イメージングされるべき腫瘍又は組織上の他の受容体又は抗原に結合する他の蛍光標的化構築物(例えば、付加された蛍光体を有する抗体又はその生物学的に活性なフラグメント)であり得る。モニタリングされるべき部位に特異的であれば、組織上の腫瘍又は特異的部位を特異的に標的化する任意の更なる標的化部分を使用してもよい。追加の蛍光標的化構築物の目的は、モニタリングされる部位での蛍光の強度を増加させ、それによって身体部分の疾患又は異常な組織の検出を助けることである。例えば、所与の疾患組織は、多数のマーカを有し得、本開示の化合物に加えて、組織から発するシグナルが、対象とする組織部位を標的化し、その部位に局在化されることになる2以上の化合物又は蛍光部分によって生成されるように、その所与の部位に特異的な蛍光部分のカクテルが提供される。
【0103】
実際には、当業者は、本開示の化合物を、単独で、又は検出可能な部分を標的化するカクテルの一部として投与し、これらの化合物及び標的化部分が検査中の部位に存在し得る任意の標的化組織に結合し及び/又は取り込まれることを可能にし、次いで光源を供給する。典型的には、本開示の化合物及び任意の更なる標的化部分は、外科手術の前に、本開示の蛍光化合物並びに任意の更なる蛍光構築物が標的化組織によって取り込まれることが可能な時間及び組成で投与される。
【0104】
当業者は、逐次的に投与される蛍光標的化構築物の組み合わせを考案することができ、それぞれが標的部位に特異的に結合する。標的組織を同定するためにこのようなカクテルに使用される全ての蛍光標的化構築物は、開示方法の実施に使用される異なる標的化構築物の全てからの同時蛍光を励起するために使用される必要がある異なる光源の数を最小限にするために、本開示の化合物(例えば、本開示の化合物に近赤外波長の光に感受性の蛍光)と同じ波長帯域内又は同じ波長内で蛍光を発する蛍光体を含むことが好ましい。しかし、本開示の化合物以外の追加の標的化部分は、本開示の蛍光化合物とは異なる色(即ち、異なる波長を有する)の照射光に応答して蛍光を発してもよいと想定される。本開示の化合物及び追加の標的化化合物から生じる蛍光の色の違いは、疾患組織の位置及びサイズを決定する際に観察者を助け得る。いくつかの例では、標的組織の位置及びサイズを決定する際に、疾患組織と正常組織との間のコントラストが更に高められて観察者を更に助けるように、正常組織を標的化する標的化構築物中の蛍光体及び疾患組織を標的化する本開示の化合物を含むことが望ましい場合がある。本開示の化合物に加えて、このような追加の蛍光体及び標的化剤の使用は、正常組織から発する任意の天然の蛍光が、身体部分の正常組織を標的化する補足標的化構築物中の蛍光体から発する蛍光によって不明瞭になるという利点を提供する。正常組織と標的組織とから発する蛍光間の色の差が大きいほど、観察者は標的組織の外形及びサイズを視覚化することが容易になる。例えば、本開示の化合物からの赤外光を発する蛍光体を含む蛍光標的化構築物を、標的組織(即ち、異常組織)に、緑色光を生じる蛍光体を健康な組織に標的化することにより、観察者が標的組織を正常組織から区別する際に観察者を助ける。当業者は、明瞭な視覚的色のコントラストを示す蛍光体の組み合わせを容易に選択することができる。
【0105】
開示方法の実施において使用される光のスペクトルは、標的化構築物又は標的化構築物内に含まれる生物学的に適合性の蛍光部分の主な励起波長に対応する少なくとも1つの波長を含むように選択される。一般に、本開示方法の実施において使用される励起光は、約600nm~約850nmの近赤外波長範囲の光の少なくとも1つの励起波長を含む。
【0106】
しかしながら、本開示の実施において、異なる波長で蛍光を発する標的化リガンドの組み合わせが使用される場合、励起光のスペクトルは、使用される蛍光体のそれぞれについて少なくとも1つの励起波長を提供するのに十分に広くなければならない。例えば、光の励起スペクトルが正常及び標的組織を標的化する蛍光体の励起波長を含むという点で、異なる色の蛍光体が正常組織と疾患組織とを区別するように選択される場合、特に有益である。
【0107】
本明細書中に記載されるように、本開示の化合物は、本開示の化合物の一部であるアセトアゾラミド誘導体を介してCA IXに特異的に標的化される。更なる標的化部分が使用される実施形態では、そのような追加の標的化部分の標的化構築物は、対象の標的組織、例えば標的組織の疾患状態又は異常状態を特徴付ける細胞上又は細胞内に含まれる抗原又は他の表面特徴に結合する及び/又は特異的に取り込まれるように、選択される。他の診断アッセイの場合と同様に、標的化構築物が標的組織に選択的に結合する又は取り込まれるあるいは疾患又は異常状態に関連する抗原に結合することが望ましい;しかしながら、標的組織における抗原の濃度又は標的組織に対する標的化構築物の親和性が、視野中の健康な組織よりも十分大きく、結果として標的組織を表す蛍光画像が、視野中の健康な組織又は構造から生じる任意の蛍光から区別されるように明確に視覚化できる限り、健康な組織又は細胞構造にも結合する又は取り込まれるリガンド部分を含有する標的化構築物が、開示された方法の実施に使用できる。
【0108】
開示方法によって検出される疾患又は異常状態は、特異的結合リガンドが知られている既知の標的組織の存在を特徴とする任意のタイプであることができる。標的組織は、多くの標的化構築物が細胞膜に浸透するので、結合リガンドが知られている表面抗原又は細胞内マーカ(即ち、抗原)のいずれかを産生する細胞によって特徴付けられ得ると想定される。開示方法を使用して同定することができる代表的な疾患状態には、異なるタイプの腫瘍、細菌性、真菌性、及びウイルス性感染等のような様々な状態が含まれる。本明細書中で使用される場合、「異常な」組織には、前癌状態、壊死性、又は虚血性組織、並びに前癌状態及び癌等に関連する組織が含まれる。また、開示方法を用いた診断又は検査に適した標的組織のタイプの例としては、脳、乳房、子宮頚部、直腸、肺等、並びにそれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0109】
単に例として、いくつかの一般的な悪性疾患の抗原及びそれらが一般に見出される身体の位置は、当業者に既知であり、標的化リガンド、例えば抗体又はこれらの抗原に関して、実際には抗原が受容体であるリガンドが当該技術分野において既知である。
【0110】
本開示方法の実施において使用される標的化構築物及び補足標的化構築物は、局所、関節内、大槽内、眼内、脳室内、髄腔内、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、気管内、腔内等、並びにそれらの任意の2以上の任意の組み合わせによって当業者に既知の任意の経路によって投与することができる。
【0111】
投与のための最も適切な経路は、処置されるべき疾患状態、又は診断されるべき疑いのある状態の位置に依存して変化する。例えば、炎症状態及び種々の腫瘍のイメージングに関して、局所投与(励起光によって照射されるべき身体部分(例えば、腹腔内)に直接注射することによる投与を含む)は、標的化構築物(例えば、蛍光標識抗体)が、その全身投与に付随する合併症のリスクなしに高濃度で投与され得るという利点を提供する。
【0112】
本開示の化合物及び本開示の化合物を含む診断用カクテルに使用される任意の更なる標的化構築物は、診断のために「有効量」で投与される。有効量は、被験体における調査中の身体部分に位置する任意の標的組織の直接視覚化を助けるために必要な標的化構築物の量である。本明細書で使用される用語「被験体」は、ペット、家畜、又は動物園動物のような任意の哺乳類を含むことが想定されるが、好ましくはヒトである。診断用途に有効な量は、調査されるべき身体部分のサイズ及び位置、標的組織に対する標的化構築物の親和性、標的組織のタイプ、並びに投与経路に依存することは勿論である。標的化構築物の局所投与は、標的化構築物の局所濃度が、全身投与の安全性で達成できるよりも局所投与後に高くなる場合もあり得るが、通常は、全身投与の任意のモードよりも少ない投与量を必要とする。
【0113】
投与されるべき共役体化合物の有効量は、失血、処置される疾患状態、共役体の分子量、その投与経路及び組織分布を含む外科的条件、並びに放射線療法又は化学療法放射線療法のような治療的処置との併用の可能性を含む患者の状態に依存する。患者に投与されるべき有効量は、体表面積、患者体重、及び患者状態の医師の評価に基づく。種々の例示的な実施形態では、有効用量は、賦形剤/担体(これに限定されないが、生理食塩水を含む)の有無にかかわらず行われてもよい。個々の被験体は症状の重症度において幅広い変動を示すことがあり、各標的化構築物は、標的に対する標的化構築物の親和性、身体過程による標的化構築物のクリアランス速度、含有する蛍光体の特性を含む独特の診断特徴を有するので、熟練した施術者は因子を測り、それに応じて用量を変える。
【0114】
本開示の化合物及びこれらの化合物を含むカクテルは、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用する既知の方法にしたがって、滅菌注射用懸濁液として処方することができる。滅菌注射用製剤はまた、無毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよく、例えば1-4のブタンジオール溶液としてもよい。滅菌不揮発性油は、従来から、溶媒又は懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリド、脂肪酸(オレイン酸を含む)、天然植物油、例えばゴマ油、ヤシ油、ピーナッツ油、綿実油等、又は合成脂肪族ビヒクル、例えばオレイン酸エチル等を含む任意のブランドの不揮発性油が使用されてもよい。緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤等は、必要に応じて組み込むことができ、あるいは、製剤を含むことができる。
【0115】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を説明するためだけに提供され、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書で論じるように、開示された化合物及び方法の特定の特徴は、それらが提供する操作性又は利点に必要ではない様々な方法で変更することができる。例えば、化合物は、化合物が使用される特定の用途に応じて、種々のアミノ酸及びアミノ酸誘導体並びに標的化リガンドを組み込むことができる。当業者は、そのような改変が添付の特許請求の範囲内に包含されることを理解する。
【0116】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、以下の形態を有する:
B-W-X-Y-Z
式中、
BはCA IX標的化分子であり;
Wは伸長された疎水性残基であり;
Xは疎水性スペーサであり;
Yはアミノ酸スペーサであり;及び
ZはNIR色素である。
【0117】
いくつかの実施形態では、CA IX標的化分子は、小分子、リガンド、阻害剤、アゴニスト、又はそれらの誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物はリガンドである。他の実施形態では、CA IX標的化化合物は、CA IXに結合する小分子である。いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、伸長された疎水性部分を有する小分子である。いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、フッ素化芳香族部分を有する小分子である。
【0118】
本明細書中で使用される場合、「伸長された疎水性残基」は、いくつかの実施形態では、Wは、疎水性アミノ酸又は部分、例えば中性の非極性(疎水性)アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニン又は芳香族基、シクロヘキシル基、チロシン及びそれらの誘導体;塩基性(正に荷電した)アミノ酸、例えばアルギニン、ヒスチジン、及びリシン並びにそれらの誘導体;中性の極性アミノ酸、例えばグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン並びにそれらの誘導体からなる群から選択されることを含み;いくつかの実施形態では、Wは芳香族アミノ酸及びそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、Wは正電荷を有する。他の実施形態では、Wは負電荷を有する。
【0119】
本明細書で使用される場合、「疎水性スペーサ」は、いくつかの実施形態では、Xが疎水性スペーサであることを含む。いくつかの実施形態では、Xは、6個のアミノヘクタン酸(hectanoic acid)(SAHA)、8個のアミノオクトン酸(octonoic acid)(EAOA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンアミン(PEA)単位、6個の原子の鎖、長さが6個の原子のスペーサ、長さが6~20個の原子の鎖;アリール又はアリールアルキル基を含むペプチド(それぞれ場合により置換され、一方のアリール又はアリールアルキル基が約6~約10個又は約6~約14個の原子であり、他方のアリール又はアリールアルキル基が約10~約14個、あるいは約10~約15個の原子である)からなる群から選択される。別の実施形態では、スペーサは、約1~約20個の原子を含む。いくつかの実施形態では、スペーサは6個の原子の長さである。いくつかの実施形態では、スペーサはEAOAを含む。いくつかの実施形態では、スペーサは可変的に荷電される。いくつかの実施形態では、Xは、正電荷アミノ酸(例えば、Arg、Lys、Orn)又はアミノ酸を含む4級アミンを損なうペプチドである。他の実施形態では、Xは負電荷を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、Yは:酸性(負に荷電した)アミノ酸、例えばアスパラギン酸及びグルタミン酸並びにそれらの誘導体;塩基性(正に荷電した)アミノ酸、例えばアルギニン、ヒスチジン、及びリシン並びにそれらの誘導体;中性極性アミノ酸、例えばグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン並びにそれらの誘導体;中性の非極性(疎水性)アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニン;並びにそれらの誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Yは芳香族アミノ酸及びそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、Yは正電荷を有する。他の実施形態では、Yは負電荷を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、Zは、LS288、IR800、SP054、S0121、KODAK、S2076、S0456を含むがこれらに限定されない近赤外線色素及び/又は以下からなる群から選択される色素からなる群から選択される:
【化3】
【0122】
特定の実施形態では、Zは可変的に荷電される。いくつかの実施形態では、Zは正電荷を有する。他の実施形態では、Zは負電荷を有する。
【0123】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、以下の式を有する:
B-W-X-Y-Z
式中、BはCA IX標的化化合物であり;Wは伸長された疎水性残基であり;Xは疎水性スペーサであり;Yは硫黄含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサであり;ZはNIR色素である。いくつかの実施形態では、硫黄含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサはシステインである。いくつかの実施形態では、硫黄含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサはメチオニンである。いくつかの実施形態では、硫黄含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサは、チオフェノール部分を含む分子である。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、以下の形態を有する:
B-W-X-Y-Z
式中、BはCA IX標的化化合物であり;Wは伸長された疎水性残基であり、Xは疎水性スペーサであり;Yは、カルコゲン含有側鎖基を有するアミノ酸スペーサであり;ZはNIR色素である。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の形態の化合物を提供する:
B-W-X-Y-Z
式中、BはCA IX標的化化合物であり;Wは伸長された疎水性残基であり、Xは疎水性スペーサであり、Yは、チロシン、システイン、リシン、又はそれらの誘導体からなる群から選択されるアミノ酸であり;ZはNIR色素である。いくつかの実施形態では、Yはチロシン又はチロシン誘導体を含む。いくつかの実施形態では、Yはチロシンを含み、炭素同位体はチロシンの芳香族環上にある。いくつかの実施形態では、Yは、水素同位体を有する芳香族環を有するアミノ酸を含む。
【0126】
本発明はまた、以下の構造式を有する化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはその同位体に関し:
【化4】

式中:
は水素又はSOHを表し;
は、水素、CH、CSO 、CSOH又はCSO 又はCSOH又はC(CHを表し;
は、炭素、場合により1以上の共有結合を表し、
は、場合により1以上の共有結合を有する炭素を表し;
は窒素、酸素、又は硫黄、あるいは無原子(芳香族環とビニル環との間の直接C-C結合)を表し;
は任意であり、存在する場合、芳香族置換基を表し、ビニルエーテル架橋の輝度及び安定性の増加等のスペクトル特性を向上させ;
は任意であり、存在する場合、芳香族アミノ酸、例えばPhe、Trp、His、又はそれらの誘導体、カチオン性アミノ酸、例えばArg、Lys、又はそれらの誘導体、アニオン性アミノ酸、例えばAsp、Glu、又はそれらの誘導体、芳香族/カチオン性/アニオン性酸又はそれらの誘導体の非天然アミノ酸を有する連結体を表し;
は任意であり、存在する場合、直鎖状炭素鎖、あるいはポリエチレングリコール連結体、カチオン性連結体、又はそれらの誘導体を表し;
は任意であり、存在する場合、Phe、Val、Leu、Ile、Trp、His、Arg、Lys、Asp、Glu、又はそれらの誘導体等の疎水性部分を表し;
10は疎水性連結体を表し;並びに、
11は任意であり、存在する場合、F、NO又はそれらのような分子の結合親和性、安定性、疎水性を高める芳香族置換基を表し、
12は任意であり、存在する場合、Phe、Val、Leu、Ile、Trp、His、又はそれらの誘導体若しくは環状部分、例えばシクロヘキシル、シクロオクチル、又はそれらの誘導体等の疎水性部分を表す。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造式を有する化合物を含む:
【化5】
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、約500nm~約900nmの間の吸収及び発光極大値を有する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、約600nm~800nmの間の吸収及び発光極大値を有する。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、組織細胞中にその分配後に蛍光を発するように作製される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、化合物を近赤外波長の励起光に供することによって蛍光を発するように作製される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、リガンドの結合親和性に類似するCA IXに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、腫瘍細胞への標的化に対して高度に選択的である。特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、低酸素状態又は低酸素組織下で癌細胞を標的化する。
【0130】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、それを必要とする被験体に投与され、いくつかの実施形態では、投与される組成物は、化合物に加えて、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を含む。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態は、CA IXを発現する生物学的組織の光学的イメージングの方法を提供し、この方法は:
(a)生物学的組織をCA IX標的化NIR色素化合物を含む組成物と接触させる工程;
(b)組成物中の化合物が生物学的標的内に分配される時間をとる工程;
(c)化合物が吸収可能な波長の励起光で組織を照射する工程;及び
(d)化合物によって放出された光シグナルを検出する工程
を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、高CA IX発現に関連する疾患の検出に使用される。いくつかの実施形態では、(d)で放出されたシグナルから画像を構築する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、本発明は、工程(a)が、シグナル特性が識別可能な2以上の蛍光化合物を組織と接触させ、場合により組織は被験体内にあるような上述の方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、照射及び/又は検出する方法工程のために内視鏡、カテーテル、トモグラフィーシステム、ハンドヘルト式光学的イメージングシステム、外科用ゴーグル、又は術中顕微鏡の使用を提供する。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法は、癌を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、肉腫、乳癌、脳腫瘍、神経内分泌癌、結腸癌、前立腺癌、精巣癌、又は黒色腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、CA IXを発現する細胞のイメージングに使用される。特定の実施形態では、これらの細胞は、膀胱癌細胞、膵臓癌細胞、肝臓癌細胞、肺癌細胞、腎臓癌細胞、肉腫細胞、乳癌細胞、脳腫瘍細胞、神経内分泌癌腫細胞、結腸癌細胞、前立腺癌細胞、精巣癌細胞、又は黒色腫細胞からなる群から選択される。
【0134】
本発明はまた、生物学的サンプル中の細胞タイプを標的化する方法を提供し、この方法は:(a)標的細胞タイプの少なくとも1つの細胞にこの化合物を結合可能にする時間及び条件下で、生物学的サンプルをCA IX標的化NIR色素化合物と接触させる工程;並びに(b)生物学的サンプルにおいてこの化合物の存在又は非存在を光学的に検出する工程を含み、検出工程(b)における化合物の存在は、標的細胞タイプが生物学的サンプル中に存在することを示す。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物を投与する工程、及びこの化合物を励起光源に供し、この化合物から蛍光を検出する工程を含むCA IX発現細胞の光学的検出方法を提供する。いくつかの実施形態では、励起光源は近赤外波長光である。いくつかの実施形態では、励起光波長は、約600~1000ナノメートルの範囲内である。いくつかの実施形態では、励起光波長は、約670~850ナノメートルの範囲内にある。
【0135】
特定の実施形態では、本発明は、被験体に対して画像誘導手術を実施する方法を提供し、この方法が:
a)所与の外科部位に化合物が蓄積するのに十分な条件及び時間で、CA IX標的化NIR色素化合物を含む組成物を投与する工程;
b)赤外光を用いて化合物を視覚化するために化合物を照射する工程;並びに
c)赤外光による励起時に蛍光を発する領域の外科的切除を行う工程;
を含む。
【0136】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、赤外光の波長は、約600~1000ナノメートルの範囲内である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、約670~850ナノメートルの範囲内の赤外光波長を使用する。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態は、被験体における疾患を診断する方法を提供し、この方法が、
a)少なくとも1つのCA IX発現細胞へ化合物を結合可能にする時間及び条件下で、CA IX標的化NIR色素化合物のある量を、診断を必要とする被験体に投与する工程;
b)生物学的サンプル中に存在する化合物からのシグナルを測定する工程;
c)少なくとも1つのコントロールデータセットと、b)において測定されたシグナルを比較する工程であって、少なくとも1つのコントロールデータセットが、標的細胞タイプを含まない生物学的サンプルと接触した請求項1に記載の化合物からのシグナルを含む、工程;並びに
d)工程c)における比較が疾患の存在を示す疾患の診断を提供する工程;
を含む。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態は、CA IX標的化NIR色素化合物を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、CA IX発現細胞のイメージングに使用される。いくつかの実施形態では、CA IX発現細胞は腫瘍細胞である。特定の実施形態では、CA IX発現細胞は癌細胞である。特定の実施形態では、CA IX発現領域は腫瘍微小環境である。いくつかの実施形態では、本発明は、転移性疾患の検出に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、改善された外科的切除及び/又は改善された予後のために使用される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、非NIR共役された蛍光色素よりも清浄な外科的マージンを提供する。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、改善された腫瘍対バックグラウンド比を有する。
【0139】
他の実施形態では、検出される細胞は、皮膚下で5mmを超える。いくつかの実施形態では、検出される組織は、皮膚下で5mmを超える。他の実施形態では、検出される腫瘍は、皮膚下で5mmを超える。いくつかの実施形態では、検出される細胞は、被験体の皮膚下で6mm、7mm、8mm、9mm、又は10mmを超える。本発明のいくつかの実施形態では、可視光スペクトルの外側で検出可能な色素プローブを用いる。いくつかの実施形態では、可視光スペクトルより大きな色素プローブが使用される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、650nm~900nmの波長に感受性のある色素プローブを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、約650nm~1000nmの近赤外領域、例えば一実施形態では約800nmの最大光吸収波長を有する。
【0141】
提供される方法の更なる実施形態では、CA IX発現癌細胞は腫瘍細胞である。提供される方法のなお更なる実施形態では、CA IX発現癌は腫瘍である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも1000mmである。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は1000mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は950mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は900mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は850mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は800mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は750mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は700mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は650mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は600mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は550mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は500mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は450mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は400mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は350mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は300mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は250mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は200mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は150mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は100mm未満である。一実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも75mmである。別の実施形態では、腫瘍の体積は75mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は70mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は65mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は60mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は55mm未満である。一実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも50mmである。他の実施形態では、腫瘍は50mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は45mm未満である。他の実施形態では、腫瘍の体積は40mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は35mm未満である。さらに別の実施形態では、腫瘍の体積は30mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は25mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は20mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は15mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は10mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は12mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は9mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は8mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は7mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は6mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は5mm未満である。
【0142】
一実施形態では、腫瘍は、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物を使用する外科的後退(surgical recession)の前に少なくとも5mmの長さを有する。一実施形態では、これらの方法は、5mm未満の腫瘍を検出する。他の実施形態では、本明細書の方法は、4mm未満の腫瘍を検出する。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、3mm未満の腫瘍を検出する。別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも6mmの長さを有する。さらに別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも7mmの長さを有する。さらに別の実施形態では、腫瘍は少なくとも8mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は少なくとも9mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも10mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも11mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも12mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも13mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも14mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は少なくとも15mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも16mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも17mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも18mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも19mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は、少なくとも20mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも21mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも22mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも23mmの長さを有する。さらなる実施形態では、腫瘍は少なくとも24mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも25mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも30mmの長さを有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、本開示は、近赤外(NIR)色素に共役されたCA IX標的化化合物、並びにその治療的及び診断的使用のための方法に関する。より具体的には、本開示は、例えば腎臓、子宮内膜、泌尿器、結腸直腸、卵巣、乳房、膵臓、及び食道の、並びに多くの固形腫瘍及び関連疾患の低酸素領域等のCA IX発現細胞に関連する疾患の診断及び処置のための化合物及び方法を提供する。本開示は、化合物を作製及び使用するための方法及び組成物、化合物を組み込む方法、並びに化合物を組み込むキットを更に記載する。CA IX標的化化合物、例えば連結体(X-Y)を介してNIR色素に共役したCA IXに対する結合親和性及び特異性を改善するための伸長された疎水性残基(W)を有するリガンドは、CA IXを発現又は過剰発現する病原性細胞集団を含む、腎臓、子宮内膜、泌尿器、結腸直腸、卵巣、乳房、膵臓、及び食道、並びに多くの固形腫瘍の低酸素領域、並びに関連疾患のイメージング、診断及び/又は処置に有用であり得ることを見出した。CA IXは、ビタミン受容体等の細胞表面受容体で観察されるエンドサイトーシスと類似のプロセスで内在化される細胞表面タンパク質である。従って、所定の長さ及び/又は所定の直径を有する連結体及び/又はその長さに沿って予め選択された官能基を含む特定の共役体を使用して、このような疾患を処置、イメージング、及び/又は診断し得ることを見出した。
【0144】
例示的な一実施形態では、連結体[X又はリガンドとNIR色素との間のスペーサ(W-X-Y)のいずれか]は、放出性又は非放出性連結体であり得る。一態様では、連結体Lは少なくとも約6個の原子の長さである。1つのバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は少なくとも約8個の原子の長さである。1つのバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は、少なくとも約10個の原子の長さである。別のバリエーションでは、連結体[X又はW-X-Y]は、約6~約14個、約6~約20個、又は約6~約18個の原子の長さである。別のバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は、約10~約20個、約14~約12個、又は約10~約16個の原子の長さである。
【0145】
代替の態様では、連結体[X又はW-X-Y]は少なくとも約10オングストローム(Å)の長さである。1つのバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は少なくとも約14Åの長さである。別のバリエーションにおいて、連結体[X又はW-X-Y]は、少なくとも約16Åの長さである。別のバリエーションでは、連結体[X又はW-X-Y]は、約10Å~約20Åの範囲の長さである。
【0146】
代替の態様では、連結体[X又はW-X-Y]の長さの少なくとも一部は、結合リガンドBに連結された端部で約4Å以下の直径である。1つのバリエーションでは、連結体[X又はW-X-Y]の長さの少なくとも一部は、結合リガンドBに連結された端部で約4Å以下、又は約3Å以下の直径である。約5Å以下、約4Å以下、又は約3Å以下の直径要件を含む例示的な実施形態は、連結体の所定の長さの要件を含み得、それによって連結体の円錐形の空洞状部分を規定することが理解される。例示的には、別のバリエーションでは、連結体は、長さが少なくとも約6Å、及び直径が約5Å以下、約4Å以下、又は約3Å以下である結合リガンドに接続された端部に円錐空洞部分を含む。
【0147】
別の実施形態では、連結体[W-X-Y]は、Val、Leu、Phe、Tyr、His、Trp、Met、及び同様の残基等の疎水性側鎖を有するアミノ酸を含むCA IXの1以上の残基と相互作用することができる1以上の疎水性連結体を含む。別の実施形態では、連結体[W-X-Y]は、Ser、Thr、Cys、Arg、Orn、Lys、Asp、Glu、Gln、及び類似の残基等の親水性側鎖を有するアミノ酸を含む、CA Ixタンパク質の1以上の残基と相互作用することができる1以上の親水性連結体を含む。前述の実施形態及び態様は、単独で又は互いに組み合わせて[W-X-Y若しくはX-Y、又はW-Y]の連結体Xに含まれ得ることが理解されるべきである。例えば、長さが少なくとも約6個の原子で、直径が約5Å、約4Å以下、又は約3Å以下である連結体Xが想定され、本明細書に記載されており、また1以上のCA IX残基(親水性ポケットにおいてAsn、His、Ser、Glu、Thr、Gln、あるいは疎水性ポケットにおいてLeu、Val、Val、Leu、Proを含む)と相互作用できる1以上の親水性連結体を含み、同様の残基が想定され、本明細書に記載される。
【0148】
別の実施形態では、連結体の一端は分岐しておらず、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖を含む。一実施形態では、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の直鎖は、少なくとも5個の原子の長さである。1つのバリエーションでは、直鎖は少なくとも7個の原子、又は少なくとも10個の原子の長さである。別の実施形態では、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖は置換されていない。1つのバリエーションにおいて、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖の一部は、二価フラグメントで環化される。例えば、ジペプチドPhe-Tyr又はアミノ酸Tyrを含む連結体(Y)は、2つの窒素をエチレンフラグメント又はその置換変異体で環化することによってピペラジン-1,4-ジイル構造を含み得る。
【0149】
別の実施形態では、医薬組成物は本明細書に記載され、ここで医薬組成物は、CA IXを発現する若しくは過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患若しくは疾患状態を診断し、並びに/又はこれらの組織及び/若しくは細胞をイメージングするために有効な量において、本明細書で記載される共役体を含む。実例として、医薬組成物も、1以上の担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む。
【0150】
別の実施形態では、CA IXを発現若しくは過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患若しくは疾患状態を診断し、並びに/又はこれらの組織及び/若しくは細胞をイメージングする方法が本明細書に記載される。そのような方法は、CA IXを発現若しくは過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患若しくは疾患状態を診断し、並びに/又はこれらの組織及び/又は細胞をイメージングするために有効な量で、本明細書に記載の共役体及び/又は本明細書に記載の共役体を含有する医薬組成物を投与する工程を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、本開示は、以下の構造式の任意の1つを含むCA 1X標的化分子(B)を任意で個別に又は組み合わせて含む:
【化6】
【0152】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、約500nm~約900nmの間の吸収及び発光極大値を有する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、約600nm~800nmの間の吸収及び発光極大値を有する。
【0153】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、組織細胞中にその分配後に蛍光を発するように作製される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、化合物を近赤外波長の励起光に供することによって蛍光を発するように作製される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、AZMの結合親和性と同様であるCA IXに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、腫瘍細胞への標的化に対して高度に選択的である。
【0154】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、それを必要とする被験体に投与され、いくつかの実施形態では、投与される組成物は、化合物に加えて、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を含む。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態は、CA IXを発現する生物学的組織の光学的イメージングの方法を提供し、この方法は:
(a)生物学的組織をCA IX標的化NIR色素化合物を含む組成物と接触させる工程、
(b)組成物中の化合物が生物学的標的内に分配される時間をとる工程;
(c)化合物が吸収可能な波長の励起光で組織を照射する工程;及び
(d)化合物によって放出された光シグナルを検出する工程
を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、高CA IX発現に関連する疾患の検出に使用される。いくつかの実施形態では、(d)で放出されたシグナルから画像を構築する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、本発明は、工程(a)が、シグナル特性が識別可能な2以上の蛍光化合物を組織と接触させ、場合により組織は被験体内にあるような上述の方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、照射及び/又は検出する方法工程のために内視鏡、カテーテル、トモグラフィーシステム、ハンドヘルト式光学的イメージングシステム、外科用ゴーグル、又は術中顕微鏡の使用を提供する。
【0157】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法は、癌を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、肺癌、腎臓癌、肉腫、乳癌、脳腫瘍、神経内分泌癌、結腸癌、精巣癌、又は黒色腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、CA IXを発現する細胞のイメージングに使用される。特定の実施形態では、これらの細胞は、前立腺細胞、前立腺癌細胞、膀胱癌細胞、膵臓癌細胞、肝臓癌細胞、肺癌細胞、腎臓癌細胞、肉腫細胞、乳癌細胞、脳腫瘍細胞、神経内分泌癌腫細胞、結腸癌細胞、精巣癌細胞、又は黒色腫細胞からなる群から選択される。
【0158】
本発明はまた、生物学的サンプル中の細胞タイプを標的化する方法を提供し、この方法が:a)標的細胞タイプの少なくとも1つの細胞にこの化合物を結合可能にする時間及び条件下で、生物学的サンプルをCA IX標的化NIR色素化合物と接触させる工程;及びb)生物学的サンプルにおいてこの化合物の存在又は非存在を光学的に検出する工程を含み、検出工程c)における化合物の存在は、標的細胞タイプが生物学的サンプル中に存在することを示す。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物を投与する工程、及びこの化合物を励起光源に供し、この化合物から蛍光を検出する工程を含むCA IX発現細胞の光学的検出方法を提供する。いくつかの実施形態では、励起光源は近赤外波長光である。いくつかの実施形態では、励起光波長は、約600~1000ナノメートルの範囲内である。いくつかの実施形態では、励起光波長は、約670~850ナノメートルの範囲内にある。
【0159】
特定の実施形態では、本発明は、被験体に対して画像誘導手術を実施する方法を提供し、この方法が:
a)所与の外科部位に化合物が蓄積するのに十分な条件及び時間で、CA IX標的化NIR色素化合物を含む組成物を投与する工程;
b)赤外光を用いて化合物を視覚化するために化合物を照射する工程;及び
c)赤外光による励起時に蛍光を発する領域の外科的切除を行う工程
を含む。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態の方法では、赤外光の波長は、約600~約1000ナノメートルの範囲内である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、赤外光の波長は、約670~約850ナノメートルの範囲内である。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態は、被験体における疾患を診断する方法を提供し、この方法が、
a)少なくとも1つのCA IX発現細胞組織へ化合物を結合可能にする時間及び条件下で、CA IX標的化NIR色素化合物のある量を、診断を必要とする被験体に投与する工程;
b)生物学的サンプル中に存在する化合物からのシグナルを測定する工程;
c)少なくとも1つのコントロールデータセットと、b)において測定されたシグナルを比較する工程であって、少なくとも1つのコントロールデータセットが、標的細胞タイプを含まない生物学的サンプルと接触した請求項1に記載の化合物からのシグナルを含む、工程;及び
d)工程c)における比較が疾患の存在を示す疾患の診断を提供する工程
を含む。
【0162】
本発明のいくつかの実施形態は、CA IX標的化NIR色素化合物を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、CA IX発現細胞又は組織のイメージングに使用される。いくつかの実施形態では、CA IX発現細胞は腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、CA IX発現細胞は非前立腺癌細胞である。特定の実施形態では、CA IX発現細胞は前立腺腫瘍細胞である。特定の実施形態では、CA IX発現細胞は癌細胞である。いくつかの実施形態では、本発明は、転移性疾患の検出に使用される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、改善された外科的切除及び/又は改善された予後のために使用される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、非NIR共役された蛍光色素よりも清浄な外科的マージンを提供する。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、改善された腫瘍対バックグラウンド比を有する。
【0163】
他の実施形態では、本発明の化合物は、膀胱癌細胞、膵臓癌細胞、肝臓癌細胞、肺癌細胞、腎臓癌細胞、肉腫細胞、乳癌細胞、脳腫瘍細胞、神経内分泌癌腫細胞、結腸癌細胞、精巣癌細胞、又は黒色腫細胞からなる群から選択される非前立腺癌細胞をイメージングし、診断し、あるいは検出するために使用される。他の実施形態では、検出される細胞は、皮膚下で5mmを超える。いくつかの実施形態では、検出される組織は、皮膚下で5mmを超える。他の実施形態では、検出される腫瘍は、皮膚下で5mmを超える。いくつかの実施形態では、検出される細胞は、被験体の皮膚下で6mm、7mm、8mm、9mm、又は10mmを超える。本発明のいくつかの実施形態では、可視光スペクトルの外側で検出可能な色素プローブを用いる。いくつかの実施形態では、可視光スペクトルより大きな色素プローブが使用される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、650nm~900nmの波長に感受性のある色素プローブを含む。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物は、約650nm~1000nmの近赤外領域、例えば一実施形態では約800nmの最大光吸収波長を有する。
【0164】
提供される方法の更に別の実施形態では、非前立腺癌は、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、肺癌、腎臓癌、肉腫、乳癌、脳腫瘍、神経内分泌癌、結腸癌、精巣癌、又は黒色腫である。
【0165】
提供される方法の更なる実施形態では、CA IX発現癌細胞は腫瘍細胞である。提供される方法のなお更なる実施形態では、CA IX発現癌は腫瘍である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも1000mmである。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は1000mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は950mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は900mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は850mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は800mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は750mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は700mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は650mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は600mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は550mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は500mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は450mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は400mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は350mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は300mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は250mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は200mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は150mm未満である。いくつかの実施形態では、腫瘍の体積は100mm未満である。一実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも75mmである。別の実施形態では、腫瘍の体積は75mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は70mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は65mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は60mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は55mm未満である。一実施形態では、腫瘍の体積は少なくとも50mmである。他の実施形態では、腫瘍は50mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は45mm未満である。他の実施形態では、腫瘍の体積は40mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は35mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は30mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は25mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は20mm未満である。別の実施形態では、腫瘍の体積は15mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は10mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は12mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は9mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は8mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は7mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は6mm未満である。更に別の実施形態では、腫瘍の体積は5mm未満である。
【0166】
一実施形態では、腫瘍は、本発明のCA IX標的化NIR色素化合物を使用する外科的切除(surgical recision)の前に少なくとも5mmの長さを有する。一実施形態では、これらの方法は、5mm未満の腫瘍を検出する。他の実施形態では、本明細書の方法は、4mm未満の腫瘍を検出する。いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、3mm未満の腫瘍を検出する。別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも6mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも7mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも8mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は少なくとも9mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも10mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも11mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも12mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも13mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも14mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は少なくとも15mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも16mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも17mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも18mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも19mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は、少なくとも20mmの長さを有する。別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも21mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は、少なくとも22mmの長さを有する。更に別の実施形態では、腫瘍は少なくとも23mmの長さを有する。更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも24mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも25mmの長さを有する。なお更なる実施形態では、腫瘍は少なくとも30mmの長さを有する。
【0167】
いくつかの実施形態では、本開示は、近赤外(NIR)色素に共役された炭酸脱水酵素(CA)標的化化合物、並びにその治療的及び診断的使用のための方法に関する。より具体的には、本開示は、癌及び関連疾患等の炭酸脱水酵素抗原(CA)を発現する細胞に関連する疾患を診断及び処置するための化合物及び方法を提供する。本開示は、化合物を製造及び使用するための方法及び組成物、化合物を組み込む方法、並びに化合物を組み込むキットを更に記載する。CA IX標的化化合物、例えばAZM又は連結体(L=W-X-Y又はX)を介してNIR色素に共役するCA IX標的化リガンドは、癌及びCA IXを発現又は過剰発現する病原性細胞集団を含む関連疾患のイメージング、診断、及び/又は処置に有用であり得ることを見出した。CAは、ビタミン受容体等の細胞表面受容体で観察されるエンドサイトーシスと類似のプロセスで内在化される細胞表面タンパク質である。CAはまた、大部分の固形腫瘍の新血管系においても発現する。従って、所定の長さ及び/又は所定の直径を有する連結体及び/又はその長さに沿って予め選択された官能基を含む特定の共役体を使用して、このような疾患を処置、イメージング、及び/又は診断し得ることを見出した。
【0168】
1つの例示的な実施形態では、連結体Lは、放出性又は非放出性連結体であり得る。一態様では、連結体Lは少なくとも約6個の原子の長さである。1つのバリエーションにおいて、連結体Lは、少なくとも約10個の原子の長さである。1つのバリエーションにおいて、連結体Lは、少なくとも約14個の原子の長さである。別のバリエーションでは、連結体Lは、約6~約22個、約6~約24個、又は約6~約20個の原子の長さである。別のバリエーションでは、連結体Lは、約14~約31個、約14~約24個、又は約14~約20個の原子の長さである。
【0169】
代替の態様において、連結体L(W-X-Y又はX)は、少なくとも約10オングストローム(A)の長さである。
【0170】
1つのバリエーションでは、連結体L(W-X-Y)は少なくとも約15Aの長さである。別のバリエーションでは、連結体Lは少なくとも約20Aの長さである。別のバリエーションでは、連結体Lは約10A~約30Aの範囲の長さである。
【0171】
代替の態様では、連結体Lの長さの少なくとも一部は、結合リガンドBに連結された端部で約5A以下の直径である。1つのバリエーションでは、連結体Lの少なくとも一部は、結合リガンドBに連結された端部で約4A以下、又は約3A以下の直径である。約5A以下、約4A以下、又は約3A以下の直径要件を含む例示的な実施形態は、連結体の所定の長さの要件を含み得、それによって連結体の円筒形部分を規定することが理解される。例示的には、別のバリエーションでは、連結体は、長さが少なくとも約7A、及び直径が約5A以下、約4A以下、又は約3A以下である結合リガンドに接続された端部に円筒形部分を含む。
【0172】
別の実施形態では、連結体L(W-X-Y又はX)は、Ser、Thr、Cys、Arg、Orn、Lys、Asp、Glu、Gin、及び同様の残基等の親水性側鎖を有するアミノ酸を含む、CAの1以上の残基と相互作用できる1以上の親水性連結体を含む。別の実施形態では、連結体は、Val、Leu、Phe、Tyr、Met、及び同様の残基等の疎水性側鎖を有するアミノ酸を含む、CAの1以上の残基と相互作用することができる1以上の疎水性連結体を含む。前述の実施形態及び態様は、単独で又は互いに組み合わせた連結体Lに含まれ得ることが理解されるべきである。例えば、長さが少なくとも約6個の原子で、直径が約4Å以下、又は約3Å以下である連結体Lが想定され、本明細書に記載されており、また1以上のCA残基(Val、Leu、Phe、Tyr、Metを含む)と相互作用できる1以上の親水性連結体を含み、同様の残基が想定され、本明細書に記載される。
【0173】
別の実施形態では、連結体の一端は分岐しておらず、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖を含む。一実施形態では、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の直鎖は、少なくとも5個の原子の長さである。1つのバリエーションでは、直鎖は少なくとも7個の原子、又は少なくとも10個の原子の長さである。別の実施形態では、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖は置換されていない。1つのバリエーションにおいて、炭素、酸素、窒素、及び硫黄原子の鎖の一部は、二価フラグメントで環化される。例えば、ジペプチドPhe-Tyrを含む連結体(L)は、2つの窒素をエチレンフラグメント又はその置換変異体で環化することによってピペラジン-1,4-ジイル構造を含み得る。
【0174】
別の実施形態では、医薬組成物は本明細書に記載され、ここで医薬組成物は、CA IXを発現する若しくは過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患若しくは疾患状態を診断し、並びに/又はこれらの組織及び/若しくは細胞をイメージングするために有効な量において、本明細書で記載される共役体を含む。実例として、医薬組成物も、1以上の担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む。
【0175】
別の実施形態では、CA IXを発現又は過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患又は疾患状態を診断し、並びに/あるいはこれらの組織及び/又は細胞をイメージングする方法が本明細書に記載される。そのような方法は、CA IXを発現又は過剰発現する細胞の病原性集団に関連する疾患及び疾患状態を処置し、これらの疾患又は疾患状態を診断し、並びに/あるいはこれらの組織及び/又は細胞をイメージングするために有効な量で、本明細書に記載の共役体、及び/又は本明細書に記載の共役体を含有する医薬組成物を投与する工程を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、このようなCA IX標的化NIR色素共役体が組織内のCA IX発現腫瘍細胞に結合することが本明細書に示されている。更に、蛍光強度は、葉酸受容体陽性腫瘍のために葉酸を標的化する他の近赤外色素で以前に観察された強度よりも大きい。この増加した強度は、モニタリングされている組織からのより小さな領域の生物学的サンプル(例えば、より小さい腫瘍)の標的化及び明確な同定を可能にする。更に、本発明の化合物の強度の増加は、より少ない用量/量の色素を投与することができ、依然として有意義な結果をもたらすという追加の利点を提供する。従って、本発明の化合物は、より経済的なイメージング技術をもたらす。更に、従来のイメージング化合物と比較して、本発明の化合物の用量を少なくすると、異物の体内への投与に付随する毒性及び他の副作用が最小限に抑えられるという利点が更にある。
【0177】
更に、小さい腫瘍の同定は、転移癌細胞を有するリンパ節の正確な同定及び除去並びにサテライト疾患の同定と共に、より正確でより効果的な原発腫瘍の切除により陰性のマージンをもたらす。これらの利点のそれぞれは、処置されている患者のより良い臨床成績と正の相関がある。
【0178】
特定の実施形態では、チロシン及びチロシン誘導体に加えて、近赤外色素とシステイン又はシステイン誘導体とのCA IX標的化共役体もまた有用であり得ることが想定される。更に、CA IX標的化部分の色素への直接連結又はアミン連結体を介したAZM又はCA IX標的化リガンドへの色素の連結はまた、共役体からの蛍光の強度の損失を生じるのに対して、その間の連結部分としてのチロシン又はチロシン誘導体の存在は、本発明のチロシン系化合物がS0456を共役するために余分なアミン連結体を必要としないという事実の結果として、チロシンのフェノール部分を介した共役は増強された蛍光を生じるので、共役体化合物の蛍光を増強すると想定される。
【0179】
この化合物は、深部組織における近赤外蛍光活性化を検出するように設計されたもの等、蛍光媒介分子トモグラフィックイメージングシステムと共に使用することができる。化合物は、分子及び組織特異性をもたらし、高い蛍光コントラストをもたらし、より明るい蛍光シグナルを生じ、バックグラウンド自家蛍光を減少させ、インビボの疾患組織(例えば、癌)の早期検出及び分子標的評価の改善を可能にする。この化合物は、深部組織3次元イメージング、標的化手術、及び生物学的サンプル中の標的細胞タイプの量を定量化するための方法に使用することができる。
【0180】
特定の実施形態では、連結体は10個未満の原子である。他の実施形態では、連結体は20個未満の原子である。いくつかの実施形態では、連結体は30個未満の原子である。いくつかの実施形態では、連結体は、CA IX標的化化合物とNIR色素とを分離する原子の数によって規定される。別の実施形態では、連結体は、少なくとも6個の原子の鎖長を有する。いくつかの実施形態では、連結体は、少なくとも14個の原子の鎖長を有する。別の実施形態では、連結体は、7個~20個の原子の範囲の鎖長を有する。別の実施形態では、連結体は、14個~24個の原子の範囲の鎖長を有する。
【0181】
本発明における使用に適したCA IX標的化化合物は、例えば、排他的であることを意図しない以下の基準に基づいて選択することができる:CA IXを発現する生細胞への結合;CA IXを発現する新血管系への結合;CA IXへの結合の高い親和性;CA IX上の唯一のエピトープへの結合(組み合わせて使用される場合、相補的活性を有する抗体が同じエピトープへの結合について競合する可能性を排除する);CA IXを発現する細胞のオプソニン化;エフェクター細胞の存在下で、CA IXを発現する細胞の成長阻害、食作用及び/又は死滅の媒介;エフェクター細胞の非存在下でのCA IXの調節(阻害又は増強)、成長阻害、細胞周期停止及び/又は細胞毒性;CA IXの内在化;CA IX上の立体配座エピトープへの結合;CA IXを発現しない細胞又は組織との最小の交差反応性;CA IXの単量体形態ではなく、CA IXの二量体形態への優先的結合が挙げられる。
【0182】
本明細書で提供されるCA IX標的化化合物、CA IX抗体及びその抗原結合フラグメントは、典型的には、1個以上、場合によっては5個を超える上記基準を満たす。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化化合物は、上記基準の6個以上を満たす。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化化合物は、上記の基準の7個以上を満たす。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化化合物は、上記の基準の8個以上を満たす。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化化合物は、上記の基準の9個以上を満たす。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化化合物は、上記の基準の10個以上を満たす。いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化化合物は、上記の基準の全てを満たす。
【0183】
本明細書で提供される本発明のCA IX標的化化合物(例えば、CA IX標的化NIR色素共役体)でイメージングできる腫瘍の例には、CA IXを発現する任意の腫瘍、例えば膀胱、膵臓、肺、結腸、腎臓、黒色腫、及び肉腫が挙げられる。CA IXを発現する腫瘍には、CA IXを発現する腫瘍微小環境を有する腫瘍が含まれる。
【0184】
いくつかの実施形態では、CA IX標的化分子はCA IXに結合し、細胞上に発現されるCA IXで内在化される。従って、CA IXリガンド共役体は細胞上に発現された内在化CA IXを含む。この内在化が生じる機構は、本発明の実施にとって重要ではない。
【0185】
いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、CA IX分子の細胞外ドメイン内の立体配座エピトープに結合する。他の実施形態では、CA IX標的化化合物は、CA IX上の二量体特異的エピトープに結合する。一般に、二量体特異的エピトープに結合する化合物は、CA IX単量体よりもむしろCA IX二量体に優先的に結合する。本発明のいくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、CA IX二量体に優先的に結合する。本発明のいくつかの実施形態では、CA IX標的化合物は、単量体CA IXタンパク質に対して低い親和性を有する。
【0186】
いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物はリガンドである。いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、伸長された疎水性残基又はそれらの誘導体を有するフッ素化芳香族スルホネートである。いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、CA IX発現生細胞に結合する、伸長された疎水性残基を有するフッ素化芳香族スルホネート又は伸長された疎水性残基を有するフッ素化芳香族スルホネートの誘導体、リガンド、阻害剤、又はアゴニストである。
【0187】
本発明のCA IX標的化NIR色素は、非NIR色素又は標的化されていないNIR色素に共役したCA IX標的化化合物の腫瘍対バックグラウンドシグナル比よりも高い腫瘍対バックグラウンドシグナル比を生じる。いくつかの実施形態では、改善は10倍である。いくつかの実施形態では、腫瘍対バックグラウンドシグナル比は、少なくとも4倍の改善である。いくつかの実施形態では、腫瘍対バックグラウンド比は、少なくとも1.5倍増加する。いくつかの実施形態では、CA IX標的化NIR色素バックグラウンドシグナルは、600nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの半分である。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、600nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの半分未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、500nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの半分未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、600nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの3分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、500nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの3分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、600nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの4分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、500nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの4分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、600nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの5分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、500nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの5分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、600nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの8分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、500nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA Ix標的化化合物のバックグラウンドシグナルの8分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、600nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの10分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。本発明のいくつかの実施形態では、生細胞においてCA IX標的化NIR色素を用いる方法は、500nm未満の波長の光に反応する蛍光色素に共役したCA IX標的化化合物のバックグラウンドシグナルの10分の1未満であるバックグラウンドシグナルを生じる。
【0188】
いくつかの実施形態では、CA IX標的化化合物は、CA IXに特異的に結合する小分子リガンドである。そのような小分子リガンドは、その本来の立体配座でPSMAの酵素部位に結合し得る。また、そのような小分子リガンドは、CA IX抗体リガンドについての任意の1以上の特徴を有し得る。
【0189】
本開示はまた、CA IX発現細胞、組織、又は腫瘍の標的化イメージングに使用されるPSMA標的化化合物に共役されるアミノ酸連結基を合成するための方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、CA IX標的化化合物、連結基、及びNIR色素を含む、化合物又はその塩誘導体に関する。特定の実施形態では、連結基は、アミノ酸、異性体、誘導体、又はそれらのラセミ混合物であり得る。いくつかの態様では、色素は、LS288、IR800、SP054、S0121、KODAK、S2076、S0456、及び/又は以下からなる群から選択される色素からなる群から選択される。
【0190】
【化7】
【0191】
いくつかの態様では、本開示は、アミノ酸がチロシン、セリン、テロニン、リシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、異性体及びそれらの誘導体であり得る、NIR色素にアミノ酸連結基を共役させる方法を提供する。特定の実施形態では、アミノ酸、その異性体又はそれらの誘導体は、-OH、-NH、又は-SH官能基を含有し、わずかなモル過剰の蛍光色素の添加により、蛍光基とアミノ酸、異性体、又はそれらの誘導体との共役が生じる。他の実施形態では、アミノ酸、その異性体又はそれらの誘導体は、合成時に、化合物の明るさ及び検出を増加させる色素とのエーテル結合を生成する-OH官能基を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、アミノ酸連結基とNIR色素との共役体に関し、ここでアミノ酸、その異性体又はそれらの誘導体は、-SH、-SeH、-PoH、又は-TeH官能基を含有し、合成時に色素とのC-S、C-Se、C-Po、又はC-Te結合を生成する。いくつかの態様では、本開示は、約500nm~約900nmの間の吸収及び発光極大値を有する色素へのアミノ酸連結基の共役に関する。他の態様では、アミノ酸連結基は、約600nm~約800nmの間の吸収及び発光極大値を有する蛍光色素に共役される。
【0192】
更なる実施形態では、本開示は、アミノ酸連結基がCA IXリガンドに共役する方法を提供し、アミノ酸連結基がチロシン、セリン、トレオニン、リシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、異性体、又はそれらの誘導体であり、ジペプチド結合を介して葉酸に共役される。更なる態様において、本開示は、連結基が葉酸リガンドに共役する方法を提供し、ここで連結基が、チロシン、セリン、トレオニン、リシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、異性体、又はそれらの誘導体である。他の実施形態では、本開示は、アミノ酸連結基にプテロイルリガンドを共役させる方法に関し、ここで連結基がチロシン、セリン、トレオニン、リシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、それらの異性体又はそれらの誘導体である。特定の態様において、連結基のカルボン酸は、任意のアミノ酸のアルファ炭素に結合し、従って、標的化受容体に対する化合物の特異性を増加させる。いくつかの実施形態では、連結体の電荷は、化合物への特異性に寄与し、ここで標的化受容体に対する化合物の観察された結合親和性が少なくとも15nMである。
【0193】
他の実施形態では、本開示は、画像誘導外科手術、腫瘍イメージング、前立腺イメージング、CA IX発現組織イメージング、CA IX発現腫瘍イメージング、感染疾患、又は法医学的適用のための、伸長された疎水性残基-SAHA-Tyr-S0456(ここでSAHAとは6個のアミノヘキサン酸である)を有するフッ素化芳香族スルホネートと称される化合物の使用に関する。
【0194】
いくつかの実施形態では、本発明のCA IX標的化化合物は、CA IXの小分子リガンドである。
【0195】
以下に開示される実施形態は網羅的であることを意図するものではなく、以下の詳細な説明に開示された厳密な形態に本開示を限定するものではない。むしろ、実施形態は、当業者がその教示を利用することができるように選択され、記載される。
【実施例
【0196】
CA IC標的化NIR色素共役体及びそれらの合成
【0197】
化合物61のスキーム:
【化8】
【0198】
化合物61の実験手順
【0199】
3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成:MeOH(200mL)中のペンタフルオロベンゼンスルホンアミド(5.0g、20.23mmol、1.0当量)にDIPEA(4.2mL、24.24mmol、1.2当量)、続いてアルゴン下、3-メルカプトプロピオン酸(2、1.76mL、20.23mmol、1.0当量)を添加した。反応混合物を6時間還流し、反応の進行を薄層クロマトグラフィーでモニターした。反応の完了後、回転蒸発器を使用してMeOHを蒸発させ、得られた固体を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥下で乾燥させた。生成物をLCMSにより確認し、次の工程に、収率90%で使用した。
【0200】
3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸の合成:酢酸(34mL)中の3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸(5.75g、17.25mmol)に、過酸化水素(30%v/v、15mL)を室温でゆっくり添加した。反応混合物を60℃で4時間撹拌した。LCMSで反応の完了を確認した後、水を添加して反応をクエンチさせた。反応混合物をEtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機物をHO(1×200mL)、ブライン(1×100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮した。白色固体生成物を収率80%で単離し、さらに精製することなく次の工程に使用した。
【0201】
3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸の合成:DMSO(5mL)中の3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸(1.0g、2.74mmol、1.0当量)にDIPEA(0.96mL、5.48mmol、2.0当量)、続いてシクロオクチルアミン(0.413mL、3.01mmol、1.1当量)をアルゴン下で添加した。反応混合物を60℃で6時間撹拌した。次いで、混合物をHO(30mL)で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(1×50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗塊をDCM:EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。所望の生成物を収率60%で単離した。
【0202】
メタ置換リガンドの合成
【0203】
3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸の合成と同様の手順を以下のリガンドの合成に用いた。
【0204】
化合物3:n=0、p=0、m=3/5
【0205】
化合物7:n=2、p=0、m=0
【0206】
化合物17:m=0
【0207】
化合物18:m=0
【0208】
化合物29:n=0、p=0
【0209】
化合物30:n=1、p=0
【0210】
化合物32:n=2、p=0
【0211】
また化合物25(n=0、p=0、m=5)を、3-((2-フルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸から、3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸の合成と同様の手順を用いて調製した。
【0212】
tert-ブチル(S)-2-(4-(tert-ブトキシ)ベンジル)-16-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)-4,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデカノエートの合成:50mLの丸底フラスコに、撹拌子、3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸(60mg、0.126mmol、1当量)、tert-ブチル(S)-2-(3-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)プロパンアミド)-3-(4--tert-ブトキシ)フェニル)プロパノエート(63.2mg、0.139mmol、1.1当量)及びHATU(48.28mg、0.139mmol、1.1当量)を入れ、次いでDMSO(1.3mL)を添加して透明な溶液を得た。DIPEA(88μL、0.508mmol、4.0当量)を23℃で反応混合物に徐々に添加した。反応物を23℃で1.5時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。反応混合物を水(3mL)を滴下してクエンチし、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過して、濃縮した。粗塊をDCM-EtOAcを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物92mgを収率80%で得た。
【0213】
(3-(2-(2-(3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)
【0214】
プロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパノイル)-L-チロシンの合成:5mLの丸底フラスコに、撹拌子及び化合物tert-ブチル(S)-2-(4-(tert-ブトキシ)ベンジル)-16-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)-4,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデカノエート(52mg、0.057mmol)を入れ、トリフルオロ酢酸(TFA、1mL)を室温で反応フラスコに添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。溶媒を真空下で蒸発させ(rotavapor)、濃縮した反応混合物に撹拌冷エーテル(5mL)を滴下して白色沈殿を得、これを遠心分離し、冷エーテル(2×5mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させ、所望の生成物を定量的収率で白色固体として得た。
【0215】
連結体-リガンドカップリング
【0216】
以下に列挙されるように(3-(2-(2-(3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパノイル)-L-チロシンの合成と同様のプロトコルを用いて、種々の修飾連結体をCA-IXリガンドにカップリングした。
【0217】
化合物39:n=0、m=5、p=0
【0218】
化合物40:n=0、m=5、p=0
【0219】
化合物41:n=0、m=5、p=0
【0220】
化合物42:n=0、m=5、p=0
【0221】
化合物43:n=0、m=5、p=0
【0222】
化合物44:n=0、m=5、p=0
【0223】
4-(2-((E)-2-((E)-2-(4-((S)-2-カルボキシ-16-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)-4,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデシル)フェノキシ)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-5-スルホ-3H-インドール-1-イウム-1-イル)ブタン-1-スルホネートの合成:5mLの丸底フラスコに、撹拌子及び化合物(3-(2-(2-(3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパノイル)-L-チロシン(11mg、0.014mmol、1当量)を入れ、次いでそれをTHF:水(1:2の比、0.4mL)に溶解した。反応混合物のpHを、1MのNaCO水溶液を室温で用いて~9.5~10(湿潤pH紙を利用)に調節した。次いで、S0456(13.2mg、0.014mmol、1当量)を添加して、不透明な緑色溶液を得、60℃で4時間撹拌した。反応の進行をHRMSによってモニターし、通常4時間で反応を完了させた。反応混合物を室温まで冷却し、RP-HPLCで精製した。HPLCからの純粋なフラクションを合わせ、溶媒を蒸発させ、凍結サンプルを凍結乾燥して、所望の生成物(8mg)を緑色固体として得た。
【0224】
CA-IX色素共役体の合成:
【0225】
4-(2-((E)-2-((E)-2-(4-((S)-2-カルボキシ-16-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)-4,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデシル)フェノキシ)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-5-スルホ-3H-インドール-1-イウム-1-イル)ブタン-1-スルホネートの合成と同様の手順を、他の全てのCA-IX-色素共役体の調製に使用した。
【0226】
NH-PEG-Tyr(tBu)-連結体の合成:
【化9】
【0227】
tert-ブチル(S)-15-(4-(tert-ブトキシ)ベンジル)-3,13-ジオキソ-1-フェニル-2,7,10-トリオキサ-4,14-ジアザヘキサデカン-16-オエートの合成:50mLの丸底フラスコに、撹拌子、12(5.0g、16.05mmol、1当量)、(L)-H-Tyr(-OBu)-OBu・HCl(5.3g、16.05mmol、1.0当量)、及びHATU(6.41g、16.85mmol、1.05当量)を入れ、次いでDMSO(29mL)を添加して透明な溶液を得た。DIPEA(7.01mL、40.13mmol、2.5当量)を反応混合物に23℃で5分かけて徐々に添加した。反応物を23℃で1.5時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。反応混合物に水(100mL)を滴下してクエンチし、EtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗塊を、n-ヘキサン-EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を95%の収率で単離した。
【0228】
化合物tert-ブチル(S)-2-(3-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)プロパンアミド)-3-(4-(tert-ブトキシ)フェニル)プロパノエートの合成:50mLのrbフラスコに、撹拌子、CbzNH-PEG-Tyr-(OBu)-OBu(1.10g、1.87mmol)及びDCM(10mL)を入れた。反応混合物を溶解した後、Pd/C(10%Pdベース、10%wt/wt、110mg)をrbフラスコに少しずつ添加し、続いて無水MeOH(10ml)を添加した。反応混合物を脱気し(3回)、反応混合物にHガスを3時間撹拌しながら室温でバブリングした。セライトプラグを通して反応混合物を濾過し、MeOHで洗浄し、濾液を真空下で濃縮して所望の粗生成物(92%)を得、これをLC/MSで分析し、更に精製することなく次の工程に用いた。
【0229】
2,3,5,6-テトラフルオロ-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドの合成スキーム:
【化10】
【0230】
2,3,5,6-テトラフルオロ-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドの合成:MeOH(81mL)中のペンタフルオロベンゼンスルホンアミド(2.0g、8.098mmol、1.0当量)に、DIPEA(1.55mL、8.908mmol、1.1当量)を添加し、続いてアルゴン下、2-メルカプトエタン-1-オール(0.63mL、8.908mmol、1.1当量)を添加した。反応混合物を16時間還流し、反応の進行を薄層クロマトグラフィーでモニターした。反応の完了後、回転蒸発器を使用してMeOHを蒸発させ、得られた固体を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥下で乾燥させた。単離した固体化合物(1.59g、収率、95%)をLCMSにより確認し、次の工程に使用した。
【0231】
スルフィドのスルホンへの酸化:MeOH:HO(1:1、50mL)中のアルコール化合物(1.50g、4.913mmol、1.0当量)に、室温で徐々にオキソン(3.02g、9.826mmol、2.0当量)を添加した。反応混合物を55℃で16時間撹拌した。LCMSにより確認した反応の完了後、反応物を濾過し、EtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機物をHO(1×100mL)、ブライン(1×100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濃縮した。単離された白色固体化合物(1.65g、定量的収率)を、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0232】
3-((3-(ベンジルアミノ)-2,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成と同様の手順を用いて、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドから出発して以下のリガンドを合成した。
【0233】
化合物21:m=0
【0234】
化合物22:m=0
【0235】
3-((3-(ベンジルアミノ)-2,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成:
【化11】
【0236】
DMSO(0.3mL)中の3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸(50mg、0.15mmol、1.0当量)にDIPEA(53μL、0.3mmol、2.0当量)、続いてベンジルアミン(16μL、0.15mmol、1.0当量)をアルゴン下で添加した。反応混合物を65℃で12時間撹拌した。次いで、混合物をHO(2mL)で希釈し、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(1×10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗塊をDCM:EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。所望のアミンカップリング生成物を収率24%で単離した(15mg)。
【0237】
オルト置換リガンドの合成
【0238】
3-((3-(ベンジルアミノ)-2,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成と同様の手順を、以下のリガンドの合成に使用した。
【0239】
化合物1:n=0、p=0、m=3/5
【0240】
化合物34:n=2、p=0
【0241】
化合物36:n=2、p=0
【0242】
化合物36b:n=0、p=0
【0243】
8-アミノオクタン酸-tyr(OBu)-OBu)連結体のスキーム:
【化12】
【0244】
Fmoc-8-アミノオクタン酸-tyr(OBu)-OBuの合成:5mLの丸底フラスコに、撹拌子、8-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)オクタン酸(116mg、0.303mmol、1当量)、(L)-H-Tyr(-OBu)-OBu・HCl(100mg、0.303mmol、1.0当量)、及びHATU(138mg、0.364mmol、1.2当量)を入れ、次いでDMSO(0.6mL)を添加して透明な溶液を得た。DIPEA(133μL、0.756mmol、2.5当量)を23℃で反応混合物に徐々に添加した。反応物を23℃で1.5時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。反応混合物に水(3mL)を滴下してクエンチし、EtOAc(3×5mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(5mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過して、濃縮した。粗塊をn-ヘキサン-EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を収率96%で単離した。
【0245】
8-アミノオクタン酸_tyr(OBu)-OBuの合成:5mLの丸底フラスコに、撹拌子及びテトラヒドロフラン(THF、2mL)中のFmoc-8-アミノオクタン酸_tyr(OBu)-OBu(200mg、0.303mmol)を入れ、ピペリジン(0.2mL)を室温で反応フラスコに添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。溶媒を真空下で蒸発させ(rotavapor)、粗生成物を高真空下で乾燥させて、8-アミノオクタン酸_tyr(OBu)-OBuを白色固体として収率96%で得た。
【0246】
H-Leu-PEG-Tyr(OtBu)-OBu連結体の合成スキーム:
【化13】
【0247】
Fmoc-Leu_PEG_tyr(OBu)-OBuの合成:5mLの丸底フラスコに、撹拌子、Fmoc-Leu-OH(16mg、0.044mmol、1当量)、HN-PEG-Tyr(-OBu)-OBu(20mg、0.044mmol、1.0当量)、及びHATU(20mg、0.053mmol、1.2当量)を入れ、次いでDMSO(0.15mL)を添加して透明な溶液を得た。DIPEA(20μL、0.11mmol、2.5当量)を23℃で反応混合物に徐々に添加した。反応物を23℃で1.5時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。反応混合物に水(3mL)を滴下してクエンチし、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(5mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗塊をn-ヘキサン-EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を32mg、収率93%で単離した。
【0248】
H-Leu_PEG_tyr(OBu)-OBuの合成:5mLの丸底フラスコに、撹拌子及びテトラヒドロフラン(THF、1mL)中のFmoc-Leu_PEG_tyr(OBu)-OBu(32mg、0.041mmol)を入れ、ピペリジン(0.2mL)を室温で反応フラスコに添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。溶媒を真空下で蒸発させ(rotavapor)、粗生成物を高真空下で乾燥させて、定量的収率で白色固体としてH-Leu_PEG_tyr(OBu)-OBuを得た。
【0249】
類似のペプチド結合形成カップリング反応、続いてFmoc-脱保護プロトコルを種々の修飾連結体の調製に使用した。
【0250】
実施例:(1)伸長された結合残基を有するCA IXリガンドの合成及び前臨床評価
【0251】
図1~2)
【0252】
新規CA IXリガンドの合成
【化14】
【0253】
スキーム1は、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドの合成を示す。
【0254】
MeOH(81mL)中のペンタフルオロベンゼンスルホンアミド(2.0g、8.098mmol、1.0当量)に、DIPEA(1.55mL、8.908mmol、1.1当量)を添加し、続いてアルゴン下、2-メルカプトエタン-1-オール(0.63mL、8.908mmol、1.1当量)を添加した。反応混合物を16時間還流し、反応の進行を薄層クロマトグラフィーでモニターした。反応の完了後、回転蒸発器を使用してMeOHを蒸発させ、得られた固体を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥下で乾燥させた。単離した固体化合物(1.59g、収率、95%)をLCMSにより確認し、次の工程に使用した。
【0255】
スルフィドのスルホンへの酸化:MeOH:HO(1:1、50mL)中のアルコール化合物(1.50g、4.913mmol、1.0当量)に、室温で徐々にオキソン(3.02g、9.826mmol、2.0当量)を添加した。反応混合物を55℃で16時間撹拌した。LCMSにより確認した反応の完了後、反応物を濾過し、EtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機物をHO(1×100mL)、ブライン(1×100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮した。単離された白色固体化合物(1.65g、定量的収率)を、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0256】
3-((3-(ベンジルアミノ)-2,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成と同様の手順を用いて、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドから出発して以下のリガンドを合成した。
【0257】
化合物21:m=0;化合物22:m=0
【0258】
3-((3-(ベンジルアミノ)-2,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成:
【化15】
【0259】
スキーム2は、3-((3-(ベンジルアミノ)-2,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成を示す。
【0260】
DMSO(0.3mL)中の3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸(50mg、0.15mmol、1.0当量)にDIPEA(53μL、0.3mmol、2.0当量)、続いてベンジルアミン(16μL、0.15mmol、1.0当量)をアルゴン下で添加した。反応混合物を65℃で12時間撹拌した。次いで、混合物をHO(2mL)で希釈し、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(1×10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗塊をDCM:EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。所望のアミンカップリング生成物を収率24%で単離した(15mg)。
【0261】
オルト置換リガンドの合成
【0262】
3-((3-(ベンジルアミノ)-2,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成と同様の手順を、以下のリガンドの合成に使用した。
【0263】
化合物1:n=0、p=0、m=3/5;化合物34:n=2、p=0;化合物36:n=2、p=0;化合物36b:n=0、p=0
【0264】
実施例:(2)リガンド1及び2から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図3
【0265】
合成
【0266】
NH2-PEG2-Tyr(tBu)-連結体の合成:
【化16】
【0267】
tert-ブチル(S)-15-(4-(tert-ブトキシ)ベンジル)-3,13-ジオキソ-1-フェニル-2,7,10-トリオキサ-4,14-ジアザヘキサデカン-16-オエートの合成:50mLの丸底フラスコに、撹拌子、12(5.0g、16.05mmol、1当量)、(L)-H-Tyr(-OBu)-OBu・HCl(5.3g、16.05mmol、1.0当量)、及びHATU(6.41g、16.85mmol、1.05当量)を入れ、次いでDMSO(29mL)を添加し透明な溶液を得た。DIPEA(7.01mL、40.13mmol、2.5当量)を反応混合物に23℃で5分かけて徐々に添加した。反応物を23℃で1.5時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。水(100mL)を滴下して反応混合物をクエンチし、EtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過して、濃縮した。粗塊を、n-ヘキサン-EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を95%の収率で単離した。
【0268】
化合物tert-ブチル(S)-2-(3-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)プロパンアミド)-3-(4-(tert-ブトキシ)フェニル)プロパノエートの合成:50mLのrbフラスコに、撹拌子、CbzNH-PEG-Tyr-(OBu)-OBu(1.10g、1.87mmol)及びDCM(10mL)を入れた。反応混合物を溶解した後、Pd/C(10%Pdベース、10%wt/wt、110mg)をrbフラスコに少しずつ添加し、続いて無水MeOH(10ml)を添加した。反応混合物を脱気し(3回)、反応混合物にHガスを3時間撹拌しながら室温でバブリングした。セライトプラグを通して反応混合物を濾過し、MeOHで洗浄し、濾液を真空下で濃縮して所望の粗生成物(92%)を得、これをLC/MSで分析し、更に精製することなく次の工程に用いた。
【0269】
結論:これらのインビボ研究は、化合物54及び55がヒト腎臓癌異種移植片に蓄積及び保持されることを実証している。(図4及び5)
【0270】
実施例:(3)リガンド3及び4から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図6
【0271】
合成
【0272】
化合物61の合成スキーム:
【化17】
【0273】
化合物61の実験手順:
【0274】
3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸の合成:MeOH(200mL)中のペンタフルオロベンゼンスルホンアミド(5.0g、20.23mmol、1.0当量)にDIPEA(4.2mL、24.24mmol、1.2当量)、続いてアルゴン下、3-メルカプトプロピオン酸(2、1.76mL、20.23mmol、1.0当量)を添加した。反応混合物を6時間還流し、反応の進行を薄層クロマトグラフィーでモニターした。反応の完了後、回転蒸発器を使用してMeOHを蒸発させ、得られた固体を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥下で乾燥させた。生成物をLCMSにより確認し、次の工程に、収率90%で使用した。
【0275】
3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸の合成:酢酸(34mL)中の3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)チオ)プロパン酸(5.75g、17.25mmol)に、過酸化水素(30%v/v、15mL)を室温でゆっくり添加した。反応混合物を60℃で4時間撹拌した。LCMSで反応の完了を確認した後、水を添加して反応をクエンチさせた。反応混合物をEtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機物をH2O(1×200mL)、ブライン(1×100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮した。白色固体生成物を収率80%で単離し、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0276】
3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸の合成:DMSO(5mL)中の3-((2,3,5,6-テトラフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸(1.0g、2.74mmol、1.0当量)にDIPEA(0.96mL、5.48mmol、2.0当量)、続いてシクロオクチルアミン(0.413mL、3.01mmol、1.1当量)をアルゴン下で添加した。反応混合物を60℃で6時間撹拌した。次いで、混合物をHO(30mL)で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(1×50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗塊をDCM:EtOAcを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。所望の生成物を収率60%で単離した。
【0277】
メタ置換リガンドの合成
【0278】
3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸の合成と同様の手順を以下のリガンドの合成に用いた。
【0279】
化合物3:n=0、p=0、m=3/5
【0280】
化合物7:n=2、p=0、m=0
【0281】
化合物17:m=0
【0282】
化合物18:m=0
【0283】
化合物29:n=0、p=0
【0284】
化合物30:n=1、p=0
【0285】
化合物32:n=2、p=0
【0286】
また化合物25(n=0、p=0、m=5)を、3-((2-フルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸から、3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸の合成と同様の手順を用いて調製した。
【0287】
tert-ブチル(S)-2-(4-(tert-ブトキシ)ベンジル)-16-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)-4,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデカノエートの合成:50mLの丸底フラスコに、撹拌子、3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパン酸(60mg、0.126mmol、1当量)、tert-ブチル(S)-2-(3-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)プロパンアミド)-3-(4-tert-ブトキシ)フェニル)プロパノエート(63.2mg、0.139mmol、1.1当量)、及びHATU(48.28mg、0.139mmol、1.1当量)を入れ、次いでDMSO(1.3mL)を添加して透明な溶液を得た。DIPEA(88μL、0.508mmol、4.0当量)を23℃で反応混合物に徐々に添加した。反応物を23℃で1.5時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。反応混合物に水(3mL)を滴下してクエンチし、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(10mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過して、濃縮した。粗塊をDCM-EtOAcを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物92mgを収率80%で得た。
【0288】
(3-(2-(2-(3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)
【0289】
プロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパノイル)-L-チロシンの合成:5mLの丸底フラスコに、撹拌子及び化合物tert-ブチル(S)-2-(4-(tert-ブトキシ)ベンジル)-16-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)-4,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデカノエート(52mg、0.057mmol)を入れ、トリフルオロ酢酸(TFA、1mL)を室温で反応フラスコに添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、反応の進行をLC/MSによってモニターした。溶媒を真空下で蒸発させ(rotavapor)、濃縮した反応混合物に撹拌冷エーテル(5mL)を滴下して白色沈殿を得、これを遠心分離し、冷エーテル(2×5mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させ、所望の生成物を定量的収率で白色固体として得た。
【0290】
連結体-リガンドカップリング
【0291】
種々の修飾連結体を、以下に列挙されるように(3-(2-(2-(3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパノイル)-L-チロシンの合成と同様のプロトコルを用いてCA-IXリガンドにカップリングした。
【0292】
化合物39:n=0、m=5、p=0
【0293】
化合物40:n=0、m=5、p=0
【0294】
化合物41:n=0、m=5、p=0
【0295】
化合物42:n=0、m=5、p=0
【0296】
化合物43:n=0、m=5、p=0
【0297】
化合物44:n=0、m=5、p=0
【0298】
4-(2-((E)-2-((E)-2-(4-((S)-2-カルボキシ-16-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)-4,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデシル)フェノキシ)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-5-スルホ-3H-インドール-1-イウム-1-イル)ブタン-1-スルホネートの合成:5mLの丸底フラスコに、撹拌子及び化合物(3-(2-(2-(3-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)プロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパノイル)-L-チロシン(11mg、0.014mmol、1当量)を入れ、次いでそれをTHF:水(1:2の比、0.4mL)に溶解した。反応混合物のpHを、1MのNaCO水溶液を室温で用いて~9.5~10(湿潤pH紙を利用)に調節した。次いで、S0456(13.2mg、0.014mmol、1当量)を添加して、不透明な緑色溶液を得、60℃で4時間撹拌した。反応の進行をHRMSによってモニターし、通常4時間で反応を完了させた。反応混合物を室温まで冷却し、RP-HPLCで精製した。HPLCからの純粋なフラクションを合わせ、溶媒を蒸発させ、凍結サンプルを凍結乾燥して、所望の生成物(8mg)を緑色固体として得た。
【0299】
CA-IX色素共役体の合成:
【0300】
4-(2-((E)-2-((E)-2-(4-((S)-2-カルボキシ-16-((2-(シクロオクチルアミノ)-3,5,6-トリフルオロ-4-スルファモイルフェニル)スルホニル)-4,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデシル)フェノキシ)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-5-スルホ-3H-インドール-1-イウム-1-イル)ブタン-1-スルホネートの合成と同様の手順を、他の全てのCA-IX-色素共役体の調製に使用した。
【0301】
図7は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの60を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0302】
図8は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの61を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0303】
図9は、共焦点顕微鏡法を用いたCA IX陽性SKRC52細胞に対する61の結合親和性を示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスにおける61の組織生体内分布及びバックグラウンドに対する腫瘍。10nmolの61をマウスに注射し、選択された組織を収集し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0304】
図10は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。HT29(ヒト結腸癌細胞株)及びHCC827(ヒト肺癌細胞株)腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの61を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1s)でイメージングした。
【0305】
図11は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの62を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0306】
図12は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの65を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0307】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、化合物60、61、62、及び65が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物60、62、及び65は、非常に高い蓄積を伴って優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示した。更に、化合物は腫瘍内において24時間にわたって非常に高い蛍光を維持したままであった。更に、化合物61は、結腸癌及び肺癌のCA IX陰性腫瘍異種移植片に選択的に蓄積したが、他の健康な組織には蓄積しなかった。CA IXはNSCLC及び結腸癌細胞で自然に発現しないが、これらの腫瘍における61の取り込みは、CA IX媒介のみであり、腫瘍低酸素状態下でのCA IXの誘導を示す。CA IX発現前立腺癌細胞及び腫瘍組織に対する親和性及び特異性、腫瘍中の蛍光強度、腫瘍対バックグラウンド比、低コストの出発材料の容易な合成及び入手可能性を考慮した後、化合物60、61、及び65を優れた臨床的候補として考慮することができるが、他の化合物もまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る(図7図12)。
【0308】
実施例:(4)リガンド5及び6から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図13
【0309】
化学合成:
【0310】
化合物69及び70の両方を、実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて合成した。
【0311】
動物研究:
【0312】
図14は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの69を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0313】
図15は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの70を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0314】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、69及び70の両方が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物69は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。これらの化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0315】
実施例:(5)リガンド7~8から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図16
【0316】
化学合成:
【0317】
両方の化合物71~74を、実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて合成した。
【0318】
図17は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの72を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0319】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、72の両方が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物72は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。これらの化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0320】
実施例:(6)リガンド17~20から誘導される新規なCA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図18
【0321】
図18は、リガンド17~20から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す。
【0322】
化学合成:
【0323】
化合物75~79は、実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて合成した。
【0324】
図19は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの76を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0325】
図20は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの77を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0326】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、76及び77の両方が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、両方の化合物は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。これらの化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0327】
実施例:(7)リガンド21~24から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図21
【0328】
化学合成:
【0329】
両方の化合物80~83を、実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて合成した。
【0330】
図22は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの80を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0331】
図23は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの81を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0332】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、80及び81の両方が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物80は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。これらの化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0333】
実施例:(8)リガンド25及び26から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図24
【0334】
化学合成:
【0335】
両方の化合物84~85を、実施例1~3で説明したのと同様の方法を使用して合成した。
【0336】
図25は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの85を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0337】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、化合物85が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物85は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。しかし、化合物85は、化合物61と比較して、腫瘍蛍光強度及び腫瘍対バックグラウンド比が小さいことを示した。2つの化合物の違いは、61のリガンドが芳香族環に3つのフッ素置換を有するのに対し、85は芳香族フッ素を有さないことであり、結合にとっての芳香族ハロゲンの重要性を示唆している。化合物85も、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0338】
実施例:(9)リガンド27及び28から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図26
【0339】
図26は、リガンド27及び28から誘導されるCA IX標的化NIR剤の化学構造を示す
【0340】
化学合成:
【0341】
両方の化合物86~87を、実施例1~3で説明したのと同様の方法を使用して合成した。
【0342】
図27は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの86を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0343】
図28は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの87を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0344】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、86及び87の両方が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。しかし、化合物87は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、86と比較した場合に24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。これは、メタ置換によるコンジュゲーションがCA XIに対する親和性を失い、芳香族環のメタ位における疎水性ユニットが結合には必要であることを示す。他方、86は、60及び61より明るくないが、これは、余分な疎水性部分を有することにより、受容体に対する結合親和性及び特異性が増加することを示す。これらの化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0345】
実施例:(10)リガンド29から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図29
【0346】
化学合成:
【0347】
実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて、化合物88を合成した。
【0348】
図30は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの88を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0349】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、化合物88が、動物に投与して8時間後に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物88は、24時間の時点で優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示した。化合物88はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0350】
実施例:(11)リガンド30~33から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図31
【0351】
化学合成:
【0352】
化合物89~92は、実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて合成した。
【0353】
図32は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの89を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0354】
図33は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの90を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0355】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、89及び90の両方が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。これらの化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0356】
実施例:(12)リガンド34~36から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図34
【0357】
化学合成:
【0358】
両方の化合物93~96を、実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて合成した。
【0359】
図35は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの93を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0360】
図36は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの94を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0361】
図37は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの95を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0362】
図38は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの96を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0363】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、化合物93及び95が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物95は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。これらの化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0364】
実施例:(13)リガンド39~45から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図39
【0365】
化学合成:
【0366】
両方の化合物97~103を、実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて合成した。
【0367】
図40は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの99を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0368】
図41は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの102を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0369】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、99及び102の両方が、動物に投与した後2~24時間以内に非常に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、両化合物は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。これらの化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0370】
実施例:(14)リガンド47から誘導される新規CA IX標的化NIR剤の前臨床評価(図42
【0371】
化学合成:
【0372】
両方の化合物104を、実施例1~3で説明したのと同様の方法を用いて合成した。
【0373】
図43は、閾値を調整した後の白色光画像に対する全身蛍光画像のオーバーレイを示す。SKRC52ヒト腎腫瘍異種移植片を保持するマウスに、10nmolの104を注射し、異なる時間間隔でIVISイメージャ(ex=745nm、em=ICG、曝露時間=1秒)でイメージングした。
【0374】
結論:これらのインビボ腫瘍蓄積データは、化合物104が、動物に投与した後2~24時間以内に良好な全身イメージングデータを示したことを実証した。更に、化合物104は、優れた腫瘍対バックグラウンド比(TBR)及び腫瘍対皮膚比を示し、腫瘍内に保持された非常に高い蓄積があり、24時間にわたり非常に高い蛍光を維持した。化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0375】
実施例:(15)リガンド4から誘導される新規CA IX光学的イメージング剤の前臨床評価(図44
【0376】
図45は、フローサイトメトリー分析を用いたCA IX陽性SCRC52細胞に対する105の結合親和性を示す。
【0377】
図46は、共焦点顕微鏡法を用いたCA IX陽性SCRC52細胞に対する105~107の結合親和性を示す。
【0378】
結論:共焦点顕微鏡検査及びフローサイトメトリー分析の両方により、化合物105~107は、非常に高い親和性を有するCA IX陽性SKRC52細胞(ヒト腎癌細胞株)に結合することが実証された。化合物はまた、臨床的及び/又は実験的候補の両方として有用であり得る。
【0379】
本開示は、例示的な設計を有するものとして記載されているが、本開示は、本開示の趣旨及び範囲内で更に変更されてもよい。従って、この出願は、その一般原則を使用して、開示のあらゆる変形、使用、又は適応をカバーすることが意図されている。更に、この出願は、本開示が関連する技術分野における既知の又は慣習的な実施の範囲内にある場合には、本開示からのそのような逸脱をカバーすることが意図されている。
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