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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】発電機構及び発電方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20230526BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
H02K7/116
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020530179
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2019027037
(87)【国際公開番号】W WO2020013141
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2018130634
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青柳 智英
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/085057(WO,A1)
【文献】実開昭61-069483(JP,U)
【文献】実開昭54-121093(JP,U)
【文献】国際公開第2018/181341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項10】
前記発電機の前記シャフトの平歯車の歯数対前記第1中心軸の平歯車の前記歯数比、又は前記発電機の前記シャフトのかさ歯車の歯数対前記第1中心軸のかさ歯車の前記歯数比を、1:7.5とする請求項9に記載の発電機構による発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機構及び発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は使用されずに捨てられていた、身近な環境に存在する微弱な運動エネルギー(人力、振動、圧力、熱、太陽光等)を利用して、電力を発電出来る自己発電型の環境発電(エナジーハーベスティング:Energy Harvesting)が注目されている。
【0003】
照明等の各種電気機器や装置には、無線通信装置を用いた遠隔操作によって動作を制御可能としている物が有る。この種の無線通信装置を制御する無線スイッチには乾電池等の電源が内蔵されており、電源から供給される電力によって無線通信装置の動作を制御している。
【0004】
一方、環境発電によって電力を発電し、その電力を使って様々な装置に動作指示を無線で送る事で、電源の交換や充電等の作業が不要なスイッチ発電機構の作製が要求されている。具体的には、照明等の機器に点灯や消灯の指示を無線で送る際、電源に依らずに使用者のスイッチング動作で発電させて電力が得られる、自己発電型の発電機構が実現されている。
【0005】
例えば非特許文献1記載の発電機構は、スイッチを押す動作(スイッチング動作)の運動エネルギーで発電させ、照明に点灯や消灯の指示を無線で送っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】エネルギーハーベスティング、[online]、[平成28年2月9日]、インターネット<URL:https://www.enocean.com/jp/technology/energy-harvesting/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような発電機構の一例として、マグネットを備え、更にボイスコイルが固定されていると共に、マグネットとスイッチ部品が連結されている構成の物が挙げられる。このスイッチ部品を使用者が押す事で、固定されているボイスコイルの中をマグネットが動き、そのマグネットの動きに伴う運動エネルギーによって発電を行う。従って発電される電力量は、ボイルコイル内を動くマグネットの速さ、即ちスイッチ部品を押す速さに大きく影響される。
【0008】
詳述すると、発電電圧はマグネットの動きによりボイスコイル内の磁束が変化する速さに比例する。また電力は、(電力W)=(電圧V)/(ボイスコイルの抵抗R)で表せられる為、ボイスコイル内のマグネット(若しくはマグネット内のボイスコイル)の移動速度が遅い場合、発電電圧が低く十分な電力を発電出来なかった。
【0009】
更に、使用者によってスイッチを押す速さにはばらつきが有る為、発電可能な電力量にもばらつきが発生し、必要な電力量を発電出来ない事態も有った。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、どんなに遅い速度の力で動作させても一定の電力量を高効率で発電する事ができ、確実なスイッチング動作を行う事が可能な発電機構及び発電方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の発電機構は少なくとも、第1可動部品と、第2可動部品と、捩りコイルバネと、発電機と、ハウジングとから形成され、第1可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第1中心軸に回転可能に軸支されており、第2可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第2中心軸に回転可能に軸支されており、捩りコイルバネが、少なくとも第1巻回部と第2巻回部を有し、第1巻回部が第1中心軸に巻回されており、第1巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が第1可動部品、第1中心軸、又は第2巻回部の何れかに連結されており、第1巻回部の捩り形状及び第1巻回部の自由端がハウジングに接触する事により、発電機構の外部から力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie1が第1巻回部に付与されており、第2巻回部が、第1巻回部と逆方向に第1中心軸に巻回されており、第2巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が第1可動部品、第1中心軸、又は第1巻回部の何れかに連結されており、第2巻回部の捩り形状及び第2巻回部の自由端がハウジングに接触する事により、発電機構の外部から力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie2が第2巻回部に付与されており、初期弾性エネルギーie2の絶対値は初期弾性エネルギーie1の絶対値と等しく設定されており、第1中心軸の軸方向と発電機のシャフトの軸方向が互いに平行に構成され第1中心軸と発電機のシャフトが2つの平歯車で連結されているか、第1中心軸の軸方向と発電機のシャフトの軸方向が互いに非平行に構成され第1中心軸と発電機のシャフトが2つのかさ歯車で連結されており、発電機構の外部から第2中心軸を介して力が第2可動部品に伝達されて、第2可動部品が一定量回転され、第1可動部品の歯と第2可動部品の歯が噛み合って連動し、第1可動部品が一定量回転され、第1可動部品の一定量の回転により第1巻回部が捩られ、その捩りによる弾性エネルギーie12が第1巻回部に蓄積され、第1可動部品が一定量回転した後に、第1可動部品と第2可動部品の互いの歯の噛み合いが外れ、弾性エネルギーie12によって第1可動部品が逆方向に一定量回転されて第1中心軸が回転され、第1中心軸の回転が伝達されて発電機のシャフトが回転されて、発電機で電力が発生されて発電が行われると共に、第1中心軸の回転により第2巻回部の自由端がハウジングに接触して自由端の動きが止められ、初期弾性エネルギーie1と初期弾性エネルギーie2により第1中心軸が回転され、第1中心軸と発電機のシャフトを連結している2つの平歯車間又はかさ歯車間の歯数比が、発電機のシャフトに於けるピーク電力量の50%以上100%以下の電力量を発電可能な歯数比である事を特徴とする。
【0012】
また本発明の発電機構による発電方法は、発電機構を少なくとも、第1可動部品と、第2可動部品と、捩りコイルバネと、発電機と、ハウジングとから形成し、第1可動部品を、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車とし、第1中心軸に回転可能に軸支し、第2可動部品を、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車とし、第2中心軸に回転可能に軸支し、捩りコイルバネが、少なくとも第1巻回部と第2巻回部を有し、第1巻回部を第1中心軸に巻回し、第1巻回部の一方の端部を自由端とすると共に、他方の端部を第1可動部品、第1中心軸、又は第2巻回部の何れかに連結し、第1巻回部の捩り形状及び第1巻回部の自由端をハウジングに接触させる事により、発電機構の外部から力を伝達しない状態で初期弾性エネルギーie1を第1巻回部に付与し、第2巻回部を、第1巻回部と逆方向に第1中心軸に巻回し、第2巻回部の一方の端部を自由端とすると共に、他方の端部を第1可動部品、第1中心軸、又は第1巻回部の何れかに連結し、第2巻回部の捩り形状及び第2巻回部の自由端をハウジングに接触させる事により、発電機構の外部から力を伝達しない状態で初期弾性エネルギーie2を第2巻回部に付与し、初期弾性エネルギーie2の絶対値を初期弾性エネルギーie1の絶対値と等しく設定し、第1中心軸の軸方向と発電機のシャフトの軸方向を互いに平行にして第1中心軸と発電機のシャフトを2つの平歯車で連結するか、第1中心軸の軸方向と発電機のシャフトの軸方向を互いに非平行にして第1中心軸と発電機のシャフトを2つのかさ歯車で連結し、発電機構の外部から第2中心軸を介して力を第2可動部品に伝達して、第2可動部品を一定量回転し、第1可動部品の歯と第2可動部品の歯を噛み合わせて連動させて、第1可動部品を一定量回転し、第1可動部品の一定量の回転により第1巻回部を捩り、その捩りによる弾性エネルギーie12を第1巻回部に蓄積し、第1可動部品が一定量回転した後に、第1可動部品と第2可動部品の互いの歯の噛み合いを外し、弾性エネルギーie12によって第1可動部品を逆方向に一定量回転させて第1中心軸を回転し、第1中心軸の回転を伝達して発電機のシャフトを回転させ、発電機で電力を発生して発電を行うと共に、第1中心軸の回転により第2巻回部の自由端をハウジングに接触させて自由端の動きを止めて、初期弾性エネルギーie1と初期弾性エネルギーie2により第1中心軸を回転させ、第1中心軸と発電機のシャフトを連結している2つの平歯車間又はかさ歯車間の歯数比を、発電機のシャフトに於けるピーク電力量の50%以上100%以下の電力量を発電可能な歯数比とする事を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発電機構又は発電方法に依れば、捩りコイルバネを含む事で、第1巻回部の捩りにより弾性エネルギーie12を第1巻回部に蓄積してから、その弾性エネルギーie12を解放して、発電機で発電を行う事が出来る。従って、どんなに遅い速度の力で第2可動部品が回転されて発電機構が動作しても、一定の電力量を発電する事ができ、確実なスイッチング動作を行う事が可能となる。
【0014】
更に、歯車を発電機構の形成部品に用いる事で、第1可動部品と第2可動部品の互いの歯を噛み合わせて発電機構を動作させる事が出来る。従って、動作損失の発生を抑制又は防止する事が出来る為、どのような用途や使用状況でも一定の電力量を発電する事ができ、確実なスイッチング動作を行う事が可能となり、好ましい。
【0015】
更に発電機構を、歯車、捩りコイルバネ、発電機、ハウジングと云った簡易な部品のみで形成している。従って、耐候性や信頼性に優れ、どのような用途や使用状況でも一定の電力量を発電し、確実なスイッチング動作を行う事が可能な発電機構を形成する事が出来る。
【0016】
更に、第1中心軸と発電機のシャフトを連結している2つの平歯車間又はかさ歯車間の歯数比の設定により、ピーク電力量(mJ)の50%以上100%以下の電力量を発電可能となる。従って、第1巻回部又は第2巻回部に蓄積した弾性エネルギーie12又はie22を高効率で発電機での発電へと変換可能となり、一定以上の電力量(mJ)を発電可能な発電機構と発電方法を実現する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態及び実施例に係る発電機構の構成を示す平面図である。
図2図1の発電機構における、第1可動部品、第1中心軸、捩りコイルバネ、第2可動部品、及びハウジングを抜粋した斜視図である。
図3図1に示す捩りコイルバネの、第1巻回部と第2巻回部の各バネ定数の傾きと、各巻回部に付与される初期弾性エネルギーie1とie2の大きさを示すグラフである。実線が第1巻回部を、点線が第2巻回部である。
図4】(a) 図1の発電機構における、第1可動部品、第1中心軸、捩りコイルバネ、第2可動部品、及び第2中心軸を抜粋し、各部品の初期状態を図2に示すX1方向から示した模式図である。(b) 同図(a)にハウジングが組み込まれた状態を図示した模式図である。
図5】(a) 図4の状態から、第2可動部品及び第1可動部品が回転された状態を示す模式図である。(b) 同図(a)にハウジングが組み込まれた状態を図示した模式図である。
図6】(a) 図5の状態から、弾性エネルギーie12によって第1可動部品が逆方向に回転された状態を示す模式図である。(b) 同図(a)にハウジングが組み込まれた状態を図示した模式図である。
図7図6(a)の状態を、図2に示すX2方向から示した模式図である。
図8】(a) 図6の状態から、第2可動部品及び第1可動部品がそれぞれ逆方向に回転された状態を示す模式図である。(b) 同図(a)にハウジングが組み込まれた状態を図示した模式図である。
図9図8(a)の状態を、図2に示すX2方向から示した模式図である。
図10図1の発電機構に於ける2つの平歯車7及び8の各基準円を、図2に示すX1方向から示した説明図である。
図11】本発明の実施例に係る歯数比-電力量(mJ)のグラフである。
図12】本発明の実施形態の変更形態に係る、発電機構の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態の第一の特徴は、電源を含まずスイッチング動作により発電する発電機構において、発電機構が少なくとも、第1可動部品と、第2可動部品と、捩りコイルバネと、発電機と、ハウジングとから形成され、第1可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第1中心軸に回転可能に軸支されており、第2可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第2中心軸に回転可能に軸支されており、捩りコイルバネが、少なくとも第1巻回部と第2巻回部を有し、第1巻回部が第1中心軸に巻回されており、第1巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が第1可動部品、第1中心軸、又は第2巻回部の何れかに連結されており、第1巻回部の捩り形状及び第1巻回部の自由端がハウジングに接触する事により、発電機構の外部から力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie1が第1巻回部に付与されており、第2巻回部が、第1巻回部と逆方向に第1中心軸に巻回されており、第2巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が第1可動部品、第1中心軸、又は第1巻回部の何れかに連結されており、第2巻回部の捩り形状及び第2巻回部の自由端がハウジングに接触する事により、発電機構の外部から力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie2が第2巻回部に付与されており、初期弾性エネルギーie2の絶対値は初期弾性エネルギーie1の絶対値と等しく設定されており、第1中心軸の軸方向と発電機のシャフトの軸方向が互いに平行に構成され第1中心軸と発電機のシャフトが2つの平歯車で連結されているか、第1中心軸の軸方向と発電機のシャフトの軸方向が互いに非平行に構成され第1中心軸と発電機のシャフトが2つのかさ歯車で連結されており、発電機構の外部から第2中心軸を介して力が第2可動部品に伝達されて、第2可動部品が一定量回転され、第1可動部品の歯と第2可動部品の歯が噛み合って連動し、第1可動部品が一定量回転され、第1可動部品の一定量の回転により第1巻回部が捩られ、その捩りによる弾性エネルギーie12が第1巻回部に蓄積され、第1可動部品が一定量回転した後に、第1可動部品と第2可動部品の互いの歯の噛み合いが外れ、弾性エネルギーie12によって第1可動部品が逆方向に一定量回転されて第1中心軸が回転され、第1中心軸の回転が伝達されて発電機のシャフトが回転されて、発電機で電力が発生されて発電が行われると共に、第1中心軸の回転により第2巻回部の自由端がハウジングに接触して自由端の動きが止められ、初期弾性エネルギーie1と初期弾性エネルギーie2により第1中心軸が回転され、第1中心軸と発電機のシャフトを連結している2つの平歯車間又はかさ歯車間の歯数比が、発電機のシャフトに於けるピーク電力量の50%以上100%以下の電力量を発電可能な歯数比である事である。
【0019】
また第二の特徴は、電源を含まずスイッチング動作により発電する発電機構による発電方法において、発電機構を少なくとも、第1可動部品と、第2可動部品と、捩りコイルバネと、発電機と、ハウジングとから形成し、第1可動部品を、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車とし、第1中心軸に回転可能に軸支し、第2可動部品を、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車とし、第2中心軸に回転可能に軸支し、捩りコイルバネが、少なくとも第1巻回部と第2巻回部を有し、第1巻回部を第1中心軸に巻回し、第1巻回部の一方の端部を自由端とすると共に、他方の端部を第1可動部品、第1中心軸、又は第2巻回部の何れかに連結し、第1巻回部の捩り形状及び第1巻回部の自由端をハウジングに接触させる事により、発電機構の外部から力を伝達しない状態で初期弾性エネルギーie1を第1巻回部に付与し、第2巻回部を、第1巻回部と逆方向に第1中心軸に巻回し、第2巻回部の一方の端部を自由端とすると共に、他方の端部を第1可動部品、第1中心軸、又は第1巻回部の何れかに連結し、第2巻回部の捩り形状及び第2巻回部の自由端をハウジングに接触させる事により、発電機構の外部から力を伝達しない状態で初期弾性エネルギーie2を第2巻回部に付与し、初期弾性エネルギーie2の絶対値を初期弾性エネルギーie1の絶対値と等しく設定し、第1中心軸の軸方向と発電機のシャフトの軸方向を互いに平行にして第1中心軸と発電機のシャフトを2つの平歯車で連結するか、第1中心軸の軸方向と発電機のシャフトの軸方向を互いに非平行にして第1中心軸と発電機のシャフトを2つのかさ歯車で連結し、発電機構の外部から第2中心軸を介して力を第2可動部品に伝達して、第2可動部品を一定量回転し、第1可動部品の歯と第2可動部品の歯を噛み合わせて連動させて、第1可動部品を一定量回転し、第1可動部品の一定量の回転により第1巻回部を捩り、その捩りによる弾性エネルギーie12を第1巻回部に蓄積し、第1可動部品が一定量回転した後に、第1可動部品と第2可動部品の互いの歯の噛み合いを外し、弾性エネルギーie12によって第1可動部品を逆方向に一定量回転させて第1中心軸を回転し、第1中心軸の回転を伝達して発電機のシャフトを回転させ、発電機で電力を発生して発電を行うと共に、第1中心軸の回転により第2巻回部の自由端をハウジングに接触させて自由端の動きを止めて、初期弾性エネルギーie1と初期弾性エネルギーie2により第1中心軸を回転させ、第1中心軸と発電機のシャフトを連結している2つの平歯車間又はかさ歯車間の歯数比を、発電機のシャフトに於けるピーク電力量の50%以上100%以下の電力量を発電可能な歯数比とする事である。
【0020】
なお本発明において、第1可動部品と第2可動部品の回転量に於ける「一定量」は同一とは限らず、各回転方向に応じて「一定量」が異なる場合や、各部品の寸法の差異によって生じる回転角の差異も含むものとする。
【0021】
また、第1可動部品と第1中心軸の回転量に於ける「一定量」と、発電機のシャフトの回転量に於ける「一定量」は、それぞれ異なる回転量とする。
【0022】
以上の発電機構又は発電方法は、照明、又は車両用の報知装置等に使用する事が出来る。
【0023】
なお本発明では、バネ、第1捩りコイルバネ(第1巻回部)、又は第2捩りコイルバネ(第2巻回部)に付与若しくは蓄積されるトルク(N・mm)を「弾性エネルギー」(mJ)と表記して、説明する。よって、図3の縦軸も「トルク(N・mm)」では無く「弾性エネルギー(mJ)」と表記する。
【0024】
以下、図1図10を参照して本発明に係る実施形態の発電機構1、及びその発電機構1による発電方法を説明する。図1及び図2に示すように、発電機構1は少なくとも、第1可動部品2aと、第2可動部品3aと、捩りコイルバネ4と、発電機5と、ハウジング6とから形成されている。更にハウジング6の内部に、少なくとも第1可動部品2aと第2可動部品3aと捩りコイルバネ4と発電機5が収められている。また、第2中心軸3bの他端側(即ち、第2可動部品3aが軸支されている一端側の反対端側)は、ハウジング6に設けた孔を通って、ハウジング6の外部へと突出されている。
【0025】
第1可動部品2aは、カム形状の伝動車の外形周囲における少なくとも一部に、複数の歯が形成された歯車であり、第1中心軸2bを中心に回転可能に軸支されている。第1中心軸2bはハウジング6内部で両端が固定されている。
【0026】
また第2可動部品3aも、カム形状の伝動車の外形周囲における少なくとも一部に、複数の歯が形成された歯車であり、第2中心軸3bを中心に回転可能に軸支されている。
【0027】
第1可動部品2a及び第2可動部品3aの歯形は、本実施形態では共にインボリュート歯形である。インボリュート歯形とする事により、互いの歯車の中心距離(第1中心軸2bの中心と、第2中心軸3bの中心との間の直線間隔)が若干変化しても噛み合いが正しく保たれると共に、容易に作製でき、滑りも少ない為好ましい。なお2a又は3aの歯形を、インボリュート歯形に換えて、サイクロイド歯形に形成する事も可能である。
【0028】
捩りコイルバネ4は、少なくとも第1巻回部と第2巻回部の2つの巻回部を有するバネとする。発電機構1では、第1巻回部と第2巻回部が個別に形成された2つの捩りコイルバネ(第1捩りコイルバネ4aと第2捩りコイルバネ4b)が設けられている。
【0029】
図4に示すように、第1捩りコイルバネ4aの巻回部(第1巻回部)は第1中心軸2bに巻回されており、第1巻回部の一方の端部が自由端4a1である。一方、他方の端部は、第1可動部品2a、第1中心軸2b、又は第2巻回部の何れかに連結するものとし、本実施形態の発電機構1では第1可動部品2aに連結されている。
【0030】
更に、第1巻回部の捩り形状及び第1巻回部の自由端4a1がハウジング6の側面に接触している。この接触により、発電機構の外部から力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie1(mJ)が第1巻回部(即ち、第1捩りコイルバネ4a)に付与されている。
【0031】
一方、図7に示すように、第2捩りコイルバネ4bの巻回部(第2巻回部)は、第1巻回部とは逆方向に第1中心軸2bに巻回されており、第2巻回部の一方の端部は自由端4b1である。また他方の端部は、第1可動部品2a、第1中心軸2b、又は第1巻回部の何れかに連結するものとし、本実施形態の発電機構1では第1可動部品2aに連結されている。
【0032】
更に、第2巻回部の捩り形状及び第2巻回部の自由端4b1がハウジング6の側面に接触している。この接触により、発電機構の外部から力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie2(mJ)が第2巻回部(即ち、第2捩りコイルバネ4b)に付与されている。
【0033】
図3のグラフに示すように、ie2の絶対値はie1の絶対値と等しく設定されている。更に、各巻回部でのグラフの傾きが異なる事からも分かる通り、第1巻回部のバネ定数K1と第2巻回部のバネ定数K2との間で、K1>K2の大小関係が成り立っている。
【0034】
なお、発電機構1では第1巻回部と第2巻回部のそれぞれの他方の端部を、第1可動部品2aに連結しているが、他方の端部同士を互いに接続する事で、第1巻回部と第2巻回部を有する1つの捩りコイルバネを、捩りコイルバネ4の換わりに用いても良い。
【0035】
また図1に示す様に、第1中心軸2bの軸方向と、発電機5のシャフト5aの軸方向を、互いに平行に構成すると共に、第1中心軸2bにおける第1可動部品2aの軸支側と反対側に、平歯車7を軸支している。更に、シャフト5aの端部には平歯車8が軸支されている。従って図1図10に示す様に、第1中心軸2bと発電機5のシャフト5aが、2つの平歯車7及び8で連結されている。なお図1図10では、第1可動部品2a、第2可動部品3a、シャフト5a端部、及び平歯車7及び8の歯形の図示は省略している。図10では、2つの平歯車7及び8の各基準円が互いに接している状態を、図2に示すX1方向から示した説明図である。
【0036】
発電機5は、少なくともコイルとマグネットを含むモータであり、更にシャフト5aの回転と共にコイルとマグネットのどちらかが回転する型式のものである。
【0037】
ハウジング6は外形が四角形のバスタブ形に成形された部品であり、内部には発電機5を固定する為の複数の仕切り板6aや側面部品が設けられている。なおハウジング6は、一体成形された一つの部品でも良いし、幾つかの側面部品や底面部品等からなる組合せ品に変更しても良い。
【0038】
第1可動部品2a、第2可動部品3a、平歯車7、8及びハウジング6の材料はそれぞれ任意に選択可能であり、例えばプラスチックや、無潤滑で摺動可能な樹脂、ステンレス、鋼などを用いれば良い。
【0039】
次に、発電機構1における自己発電の動作原理に関して説明する。図示しない例えばスイッチ部品等を第2中心軸3bに取り付け、そのスイッチ部品等に発電機構の外部から人力または使用用途毎の発電対象物からの押圧力と云った力が加わってスイッチ部品等を押す事で第2中心軸3bが回転される。
【0040】
その第2中心軸3bの回転により、発電機構1の外部から第2中心軸3bを介して力が第2可動部品3aに伝達され、第2可動部品3aが一定量(図4及び図5では、反時計方向に約35°~45°)回転して可動する。従って、第2可動部品3aは発電機構1内ではスイッチ部分として機能し、スイッチング動作により可動する部品である。
【0041】
第2可動部品3aの回転が第1可動部品2aに伝達される前段階では、第1可動部品2aは図3のグラフに示すように、ie2とie1とが釣り合う位置に保持されている。次に第2可動部品3aが回転すると、第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が噛み合って連動が開始される。
【0042】
第2可動部品3aに力が伝達され続け、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯が噛み合わされている間は、第1可動部品2aは回転し続ける。よって、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れるまで、第1可動部品2aは一定量回転される(本実施形態の場合、図4及び図5で約70°~80°の時計方向の回転となる)。
【0043】
第1可動部品2aの一定量の回転に伴い、第1中心軸2bと前記第1巻回部も、第1可動部品2aと連動して一定量回転する。しかし、第1巻回部の自由端4a1はハウジング6の側面に接触している為、動きが止められている。一方、第1巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の回転に伴って回転移動していく。よって第1巻回部は捩られる事となり、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いに伴う捩りにより、弾性エネルギーie12(mJ)が第1巻回部に蓄積される。
【0044】
第1巻回部の捩りは、第2可動部品3aに力が伝達され続けて第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯が噛み合わされている間は保持される。従って、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れる直前における、第1巻回部の弾性エネルギーie12が最大量となる。本実施形態では、第1可動部品2a及び第1中心軸2bが約70°~80°回転した時点での弾性エネルギーie12が最大となる。
【0045】
第1可動部品2aが一定量回転した後に、図5に示すように第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れる。すると、第1巻回部の捩りによる変形保持が外れ、第1巻回部の変形が解放され、ハウジング6側面に接触して止められていた第1巻回部の自由端4a1を支点にして、ie12により第1可動部品2aが逆方向に一定量回転する。本実施形態では反時計方向への約70°~80°の回転となる(図5及び図6を参照)。即ち、ie12が第1可動部品2aの一定量の逆方向の回転に変換される。
【0046】
第1可動部品2aの一定量の逆方向の回転に伴い、第1中心軸2bも一定量だけ逆方向に回転すると共に平歯車7も連動して回転し、更に平歯車8を介してシャフト5aが一定量及び一定の速度で回転される。なお、平歯車7と8の歯数比により、第1可動部品2aと第1中心軸2bの回転量に於ける「一定量」と、発電機5のシャフト5aの回転量に於ける「一定量」は、それぞれ異なる。シャフト5aが一定量及び一定の速度で回転される事で、発電機5内部で電力が発生されて発電が行われる。その電力により、発電機構1の用途に応じて、別途任意に設置可能な赤外線など無線通信装置を起動する事が可能となる。
【0047】
シャフト5aの回転量及び速度は、第1可動部品2aの逆方向の回転量即ちie12の最大値と、平歯車7と8の歯数比に応じて変わる。第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯が噛み合うピッチ円の円弧長に伴って、ie12は任意の一定量で設定可能である。一方で、平歯車7と8の歯数比も任意の一定量に設定可能である。従って、発電機構1毎の仕様に応じて、シャフト5aの回転量も任意の一定量で設定する事が出来る為、発電機5による電力量も、第2可動部品3aに伝わる外部からの力の速度に関係無く一定値に設定可能となる。
【0048】
以上により、発電機構1又は発電機構1による発電方法に依れば、捩りコイルバネ4を含む事で、捩りによりie12を第1巻回部に蓄積してからie12を解放して発電機5で発電を行う事が出来る。従って、どんなに遅い速度の力で第2可動部品3aが回転されて発電機構1が動作しても、一定の電力量を発電する事ができ、確実なスイッチング動作を行う事が可能となる。
【0049】
更に、歯車を発電機構1の形成部品に用いる事で、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯を噛み合わせて発電機構1を動作させる事が出来る。従って、動作損失の発生を抑制又は防止する事が出来る為、どのような用途や使用状況でも一定の電力量を発電する事ができ、確実なスイッチング動作を行う事が可能となり、好ましい。
【0050】
更に発電機構1を、歯車(第1可動部品2aと第2可動部品3a)、捩りコイルバネ4、発電機5、ハウジング6と云った簡易な部品のみで形成している。従って、耐候性や信頼性に優れ、どのような用途や使用状況でも一定の電力量を発電し、確実なスイッチング動作を行う事が可能な発電機構1を形成する事が出来る。
【0051】
次に、第1中心軸2bの逆方向の回転に伴って、第2巻回部の自由端4b1もその回転に伴って移動し、第2巻回部の自由端4b1がハウジング6の側面に接触して自由端4b1の動きが止められる。一方、第2巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の逆方向の回転に伴って回転移動していく。よって自由端4b1の動きが止まった時から第2巻回部は捩られる事となり、その捩りによる弾性エネルギーの第2巻回部への蓄積が開始される。
【0052】
しかしながら、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯はこの時点では既に噛み合っていない為、第2巻回部の捩れは保持されずに直ちに解放される。よって、この時点での弾性エネルギーの第2巻回部への蓄積は行われない。その一方、ハウジング6側面に接触して止められていた第2巻回部の自由端4b1を支点にして、ie1とie2のみによって第1中心軸2bが回転されてie1とie2とが等しくなって釣り合う回転位置に保持される。この第1中心軸2bの回転により、第1可動部品2aは初期状態(第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が噛み合う前の状態)に復帰される。
【0053】
更に、第1巻回部のバネ定数K1と第2巻回部のバネ定数K2との間で、K1>K2の大小関係を成立させる事により、第1中心軸2bの回転で第1可動部品2aを初期状態(第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が噛み合う前の状態)に復帰させる際に、弾性エネルギーie12以上の弾性エネルギーの第2巻回部への蓄積が抑制される。従って前記各効果に加えて、過大な弾性エネルギーの蓄積による第2巻回部の破損防止や、発電機5による不要な発電を抑制する事が可能となり、発電機構のより一層確実なスイッチング動作と、耐用性と信頼性の向上を実現する事が出来る。
【0054】
更に、発電機構1を形成する部品(第1可動部品2a、第2可動部品3a、捩りコイルバネ4、発電機5)をハウジング6に収める事により、前記各効果に加えて、第1可動部品2aと第2可動部品3a間の伝達部分や各部品における防塵性や防水性を確保する事が可能となる。また、歯車部分の防錆効果も得られる。従って、発電機構1の耐候性や信頼性をより一層向上させる事ができ、より確実なスイッチング動作を実現する事が可能となる。
【0055】
次に、発電機構1の外部からの、人力または使用用途毎の発電対象物からの押圧力と云った力が逆方向に加わると、図7の状態から、図8及び図9の状態へと第2可動部品3aが逆方向に一定量回転される(図8では、約35°~45°の時計方向の回転となる)。
【0056】
第2可動部品3aが一定量逆方向に回転する際に、第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が再び噛み合って互いに連動し、第1可動部品2aが逆方向に一定量回転される(本実施形態では反時計方向に約70°~80°の回転となる。図6及び図8参照。)。第1可動部品2aの逆方向の回転量は、第2可動部品3aの逆方向の一定量の回転量に依る。
【0057】
第1可動部品2aの一定量の逆方向の回転により、第1中心軸2bと前記第2巻回部も、第1可動部品2aと連動して一定量回転する。しかし、第2巻回部の自由端4b1はハウジング6の側面に接触している為、動きが止められている。一方、第2巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の回転に伴って回転移動していく。よって第2巻回部は捩られる事となり、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いに伴う捩りにより、弾性エネルギーie22(mJ)が第2巻回部に蓄積される。
【0058】
第2巻回部の捩りは、第2可動部品3aに前記逆方向の力が伝達され続けて第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯が噛み合わされている間は保持される。従って、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れる直前における、第2巻回部の弾性エネルギーie22が最大量となる。本実施形態では、第1可動部品2a及び第1中心軸2bが約70°~80°回転した時点での弾性エネルギーie22が最大となる。
【0059】
第1可動部品2aが逆方向に一定量回転した後に、図8及び図9に示すように第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れる。すると、第2巻回部の捩りによる変形保持が外れ、第2巻回部の変形が解放され、ハウジング6側面に接触して止められていた第2巻回部の自由端4b1を支点にして、ie22により第1中心軸2bが一定量回転する。(本実施形態では時計方向への約70°~80°の回転となる。図8及び図4を参照。)。即ち、ie22が第1中心軸2bの一定量の回転に変換される。
【0060】
第1中心軸2bの一定量の回転に伴い、平歯車7も連結して一定量回転し、平歯車8を介してシャフト5aが一定量及び一定の速度で回転される。シャフト5aの回転量及び速度は、第1可動部品2aの逆方向の回転量即ちie22の最大値と、平歯車7と8の歯数比に応じて変わる。
【0061】
発電機5で発生させたい所望の電圧(逆起電力)[V]を仮にA[V]とし、そのA[V]の発生に必要なシャフト5a及び第1中心軸2bの回転速度を得る為には、弾性エネルギーie12、及び平歯車8と7の歯数比(平歯車8の歯数対平歯車7の歯数)で1:2.467以上が必要だと仮定する。しかしこのような場合でも、図3のグラフより、第2巻回部のバネ定数の傾きは第1巻回部のバネ定数の傾きよりも緩やかに設定される(即ち、K1>K2)。従って、第1巻回部と同一の捩り角度によって第2巻回部に蓄積される弾性エネルギーをie12未満とする事が出来る。以上により、発電機5による不要な発電動作が抑制される事となる。
【0062】
また、第1中心軸2bの一定量の回転により、第1巻回部の自由端4a1がハウジング6の側面に再度接触して自由端4a1の動きが止められる。一方、第1巻回部の他端側は、第1中心軸2bに連結されている為、第1中心軸2bの一定量の回転に伴って回転移動していく。よって自由端4a1の動きが止まった時から第1巻回部は捩られる事となり、その捩りによる弾性エネルギーの第1巻回部への蓄積が開始される。
【0063】
しかしながら、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯はこの時点では既に噛み合っていない為、第1巻回部の捩れは保持されずに直ちに解放される。よって、この時点での弾性エネルギーの第1巻回部への蓄積は行われない。その一方、ハウジング6側面に接触して止められていた第1巻回部の自由端4a1を支点にして、ie1とie2のみによって第1中心軸2bが回転されてie1とie2とが等しくなって釣り合う回転位置に保持される。この第1中心軸2bの回転により、第1可動部品2aは初期状態(第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が噛み合う前の状態)に復帰される。
【0064】
なお本実施形態で説明したように、第1可動部品2aと第2可動部品3aの回転量における「一定量」は同一とは限らない。本実施形態のように各部品の各回転方向に応じて「一定量」は異なる場合がある。また、各部品(2a、3a)の寸法の差異によって回転角にも差異が生じる。
【0065】
また図12を参照して、本発明の実施形態の変更形態を説明する。図12に示す発電機構1は、第1中心軸2bの軸方向と発電機5のシャフト5aの軸方向を、互いに非平行に構成すると共に、第1中心軸2bとシャフト5aが2つのかさ歯車9と10で連結されている。図12では、第1中心軸2bとシャフト5aの互いの軸方向を直交とした形態を図示している。なお、かさ歯車9及び10の歯形の図示は省略している。
【0066】
かさ歯車9、10の材料はそれぞれ任意に選択可能であり、例えばプラスチックや、無潤滑で摺動可能な樹脂、ステンレス、鋼などを用いれば良い。なお、かさ歯車9と10の歯数比により、第1可動部品2aと第1中心軸2bの回転量に於ける「一定量」と、シャフト5aの回転量に於ける「一定量」は、それぞれ異なる。またシャフト5aの回転量及び速度は、第1可動部品2aの逆方向の回転量即ちie22の最大値と、かさ歯車9と10の歯数比に応じて変わる。
【0067】
かさ歯車9、10としては、すぐばかさ歯車、普通かさ歯車、鋭角かさ歯車、鈍角かさ歯車などが使用可能である。
【0068】
平歯車7及び8と、かさ歯車9及び10の内、より好ましい実施形態は、平歯車7及び8である。その理由は、第1中心軸2bとシャフト5aを2つの平歯車7と8で連結する事により、第1中心軸2bの軸方向と発電機5のシャフト5aの軸方向を互いに平行に構成する事が可能となり、軸方向の変換部品の使用を解消する事が可能となる。従って発電機構1の公差に余裕が生まれ、発電機構1の歩留まりの改善と、発電動作の信頼性の向上が図れる為である。
【0069】
2つの平歯車7、8間、又はかさ歯車9、10間の歯数比は、発電機5のシャフト5aの回転により発生可能なピーク電力量の50%以上100%以下の電力量を発電可能とする歯数比か、又は前記ピーク電力量の100%の電力量を発電可能な歯数比とする。
【0070】
この様な2つの平歯車7、8間、又はかさ歯車9、10間の歯数比の設定により、前記ピーク電力量(mJ)の50%以上100%以下の電力量を、発電機5で発電可能となる。従って、第1巻回部又は第2巻回部に蓄積されたie12又はie22を高効率で発電機5での発電へと変換可能となり、一定以上の電力量(mJ)を発電可能な発電機構1と発電方法を実現する事が出来る。
【0071】
なおピーク電力量とは、発電機5で発電されてシャフト5aから取り出し可能な電力量に於ける最大の電力量であり、シャフト5aの回転によって発電機5で発電可能な最大の電力量を指す。
【0072】
2つの平歯車7、8間、又はかさ歯車9、10間の歯数比は、何れも平歯車8又はかさ歯車10を1.0として記載している。即ち、平歯車8又はかさ歯車10の歯数を1と見なして、平歯車7又はかさ歯車9の歯数を2.467~7.5に設定する。よって歯数比は1:2.467乃至1:7.5である。
【0073】
平歯車7及び8間の歯数比の設定範囲は、発電機5の仕様、及びその発電機5からピーク電力量の少なくとも50%以上の電力量(mJ)を得る事が可能な、最小限の平歯車7又は8の各基準円直径d7、d8とモジュールによって設定する。この様に各基準円直径d7、d8とモジュールを設定する事で、平歯車7及び8の寸法の拡大が防止され、平歯車7及び8を収めるハウジング6の外形寸法の拡大も防止可能となる。また、ハウジング6の外形寸法が一定以内に設定する必要性が有る場合、ハウジング6内部での平歯車7及び8の余計な占有空間も解消可能となる。
【0074】
第1中心軸2bと発電機5のシャフト5aを連結する歯車は、本発明のように2つが望ましい。その理由として、3つ以上の多段歯車構成にすると各歯車間のバックラッシュが積み重なり、1段目と最終段での歯車間の回転動作の伝達遅れと発電開始までの遅れを招いてしまう。また歯車の多段化に伴い、ハウジング6内部での歯車占有空間の拡大とハウジング6の大型化も招いてしまう。
【0075】
また発電機5は、少なくともコイルとマグネットを含み、電力を発生させて発電する装置であれば、モータに限定されない。なお、発電機5にモータを使用する場合、モータのイナーシャが低い場合は歯数比(平歯車8の歯数に対する平歯車7の歯数比)も低く設定し、イナーシャが大きい場合は歯数比を高く設定すれば良い。
【0076】
なお、第1可動部品2a又は第2可動部品の歯車に換えて、ワンウェイクラッチ (One-way clutch、1-Way clutch)を使用しても良い。
【0077】
以下に本発明に係る実施例を説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例
【0078】
本実施例の発電機構の構成は、図1図10に示す様な発電機構1の構成であり、第1捩りコイルバネ4aの弾性エネルギーは回転角度80.1°で116.5(mJ)であり、第2捩りコイルバネ4bの弾性エネルギーは回転角度90.1°で46.8(mJ)に設定した。発電機5には、鉄芯を備えたモータを使用した。
【0079】
第1中心軸2bと、発電機5のシャフト5aを連結している、2つの平歯車7及び8のモジュールは0.5で共通とした。また2つの平歯車7及び8間の歯数比は、前記ピーク電力量の50%以上100%以下の電力量を発電可能な歯数比とした。なお電力量は、キャパシタ430(μF)蓄電電圧をオシロスコープで測定した値である。実施例1~5に於ける平歯車8の歯数を、24(実施例1)、16(実施例2)、12(実施例3)、12(実施例4)、12(実施例5)に設定した。一方で平歯車7の歯数は、48(実施例1)、56(実施例2)、60(実施例3)、72(実施例4)、90(実施例5)に設定した。従って、各実施例に於ける平歯車8の歯数対平歯車7の歯数比は、1:2.0(実施例1)、1:3.5(実施例2)、1:5.0(実施例3)、1:6.0(実施例4)、1:7.5(実施例5)となる。
【0080】
また比較例としては、平歯車8の歯数を48に設定すると共に、平歯車7の歯数を24に設定した。従って、比較例に於ける平歯車8の歯数対平歯車7の歯数比は、1:0.5となる。
【0081】
各実施例1~5及び比較例に於ける6つの電力量(mJ)の測定結果を、表1に示す。及び表1の6つの電力量(mJ)で多項式近似を行った結果、電力量(mJ)をy、歯数比(平歯車8の歯数に対する平歯車7の歯数比)をxとすると、下記数1の近似式が得られた。
【0082】
【数1】
【0083】
6つの電力量(mJ)の測定結果及び近似式を図11に示す。図11より、6つの測定点の内4点が近似曲線上に乗る事が確認された。なお、図11のグラフに於ける横軸の「歯数比」は、平歯車8の歯数を1.0と見なした時の、平歯車7の歯数を示すものである。
【0084】
【表1】
【0085】
表1及び図11より歯数比が1:7.5以下の範囲では、平歯車8の歯数に対する平歯車7の歯数比(即ち、図11の横軸での歯数比)が1.0大きくなるに伴い、電力量の増加量も1.0(mJ)以上となる事が確認された。しかし歯数比が1:7.5を超えると、図11の横軸での歯数比が1.0大きくなっても、電力量の増加量は1.0(mJ)未満となる。以上の測定結果より、1:7.5を超えると歯数比の増加分に見合う電力量の増加が得られないと本出願人は判断した。
【0086】
従って、図11の横軸での歯数比が1.0以上増加した時に電力量の増加が1.0(mJ)未満となる、最小の歯数比での電力量をピーク電力量と定義し、前述のピーク電力量の定義に追加する。図11より本実施例では歯数比1:7.5での20.6(mJ)をピーク電力量と見なす。従って、歯数比1:7.5でピーク電力量が100%得られる事が確認された。
【0087】
図11より、歯数比が1:2.467乃至1:7.5の範囲で、ピーク電力量である20.6(mJ)の50%である10.3(mJ)以上の電力量が発電可能となる事が分かった。1:2.467未満の歯数比では前記近似式より10.3(mJ)未満となり、ピーク電力量の50%未満となる。
【0088】
更に表1及び図11より、歯数比1:2.0では電力量は9.4(mJ)であったのに対し、歯数比1.0:3.5以上での歯数比では電力量は13.8(mJ)以上となる事が確認された。従って歯数比1.0:3.5以上で、ピーク電力量20.6(mJ)の50%の電力量である10.3(mJ)を超える事が確認された。よって、1:2.467乃至1:7.5の範囲の歯数比の中でも、1:3.5、1:5.0、1:6.0、1:7.5の、何れかの歯数比で確実にピーク電力量の50%以上の電力量が得られる事が確認された。
【0089】
なお図11より7.5を超える歯車比の数値範囲では、前記近似式より20.6(mJ)よりも電力量は大きくならないと推測される。7.5を超える歯車比の数値範囲では、平歯車7の寸法拡大が顕著となり、ハウジング6の拡大も抑制出来ないと思われる。従って、ピーク電力量20.6(mJ)の50%以上100%以下の電力量の発生は、歯車比2.467乃至7.5の数値範囲を選択する方が最適である。
【0090】
本実施例の発電機構を、特に自動車の一車両分の駐車スペースに於ける駐車車両の有無判定に使用する場合、第2中心軸3bに別途接続される、タイヤとの接触板を含む発電機構の外形寸法は、およそ2000mm以内に収めなければならない。接触板は1つのタイヤ幅以上の横幅が必要となるため、接触板に割り当てる幅寸法を考慮すると、ハウジング6はなるべく小型化する必要が有る。ハウジング6の小型化と、そのハウジング6内に収納可能な発電機5、第1捩りコイルバネ4a及び第2捩りコイルバネ4bの巻回径と発生可能な弾性エネルギー、平歯車7と8の基準円直径d7とd8及びモジュールを考慮した結果、ピーク電力量の50%以上の発電を可能とする為には、前記近似式より歯数比1:2.467以上が必要となる事が確認された。ピーク電力量の50%以上である10.3(mJ)以上が発電されると、駐車車両の有無判定を発電機構から無線発信により連続で行える事を動作確認した。従って、自動車の駐車スペースへの発電機構の適用として最適である事が分かった。
なお、本実施例はかさ歯車9と10を使用した場合でも、同様に成り立つ。
【符号の説明】
【0091】
1 発電機構
2a 第1可動部品
2b 第1中心軸
3a 第2可動部品
3b 第2中心軸
4 捩りコイルバネ
4a 第1捩りコイルバネ
4a1 第1捩りコイルバネの巻回部の自由端
4b 第2捩りコイルバネ
4b1 第2捩りコイルバネの巻回部の自由端
5 発電機
5a シャフト
6 ハウジング
6a 仕切り板
7、8 平歯車
9、10 かさ歯車
d7 平歯車7の基準円直径
d8 平歯車8の基準円直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12