IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マトリックスド、リアリティー、テクノロジー、カンパニー、リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図1
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図2
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図3
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図4a
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図4b
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図5
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図6a
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図6b
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図6c
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図7
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図8
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図9
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図10
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図11
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図12
  • 特許-拡張現実装置、およびそのための光学系 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】拡張現実装置、およびそのための光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230526BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/30
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2020565011
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2019074876
(87)【国際公開番号】W WO2019154432
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】201810146738.7
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810146751.2
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810146912.8
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810146905.8
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147326.5
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147336.9
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147325.0
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810146915.1
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147330.1
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147332.0
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147328.4
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520302774
【氏名又は名称】マトリックスド、リアリティー、テクノロジー、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MATRIXED REALITY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100187160
【弁理士】
【氏名又は名称】副田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、ビン
(72)【発明者】
【氏名】リャン、シャオビン
(72)【発明者】
【氏名】シュ、チー
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-059217(JP,A)
【文献】特開2002-122806(JP,A)
【文献】特開2002-148559(JP,A)
【文献】特開2017-120311(JP,A)
【文献】特表2012-508392(JP,A)
【文献】特開2010-243751(JP,A)
【文献】特開2007-156096(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0044040(KR,A)
【文献】特開平11-308640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AR装置用の光学系であって、
画像投射源と、
前記画像投射源に隣接するビームスプリット側と前記画像投射源の反対側を向く透過側とを有する偏光ビームスプリッタであって、前記偏光ビームスプリッタは、前記画像投射源から放射された光が、前記ビームスプリット側に非垂直方向に入射し得るとともに前記ビームスプリット側により少なくとも部分的に反射し得るように配置され、前記偏光ビームスプリッタは、光が前記ビームスプリット側に入射すると、第1方向に偏光した偏光成分が前記偏光ビームスプリッタを通過して前記透過側を透過するように、かつ、前記第1方向に対して垂直な第2方向に偏光した偏光成分が前記ビームスプリット側から反射するように構成されている、前記偏光ビームスプリッタと、
を備え、
前記光学系は、偏光子をさらに備え、前記偏光子は、前記第2方向に偏光した偏光を透過させるとともに、前記第1方向に偏光した偏光を吸収するように構成されており、
前記画像投射源は、光を照射するために制御される画像源と、前記照射された光を合焦させるレンズとを含み、前記偏光子は、前記画像源と前記レンズとの間に位置し、
前記画像投射源は、前記画像源と前記レンズとの間に位置する整合部を含み、前記整合部は、空気ではない屈折率が1より大きな光透過性の媒体により形成され、前記偏光子は、前記画像源と前記整合部との間、あるいは前記整合部と前記レンズとの間に位置しており、
前記画像源、前記偏光子、および前記レンズは一体に接着されており、
前記画像投射源は、前記画像源から放射された光の光路に配置されて前記画像源から放射された光線をコリメートすること、成形すること、および/または結合することを行うビーム成形素子を含み、前記ビーム成形素子は前記レンズから形成されており、前記整合部は、液体および/または液晶媒体により形成され、前記画像投射源は、液体および/または液晶媒体を前記画像源と前記ビーム成形素子との間に封止するシール構造を含み、
前記ビーム成形素子を形成する前記レンズの媒質の屈折率と前記整合部の媒質の屈折率との差が、前記ビーム成形素子を形成する前記レンズの媒質の屈折率と空気の屈折率との差より小さく、
前記シール構造は、前記画像源との間にシールがもたらされるように前記画像源に接着されたシールフレームを備え、前記シールフレームと前記ビーム成形要素をなす前記レンズとの間のシールは、それらの間のインレー係合によりもたらされる、光学系。
【請求項2】
前記第2方向に偏光した偏光が前記画像投射源から放射されるように、前記偏光子は前記画像投射源に一体化されている、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記光学系は、
前記ビームスプリット側に隣接する波長板であって、前記画像投射源から放射された前記光は、前記ビームスプリット側により少なくとも部分的に反射して前記波長板に向かうことができる、前記波長板と、
反射光の光路において前記波長板の下流に配置されたセミリフレクタと、を更に備え、
前記波長板は1/4波長板である、
請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記波長板は、前記セミリフレクタの近位側表面に付着された位相差フィルムである、請求項3に記載の光学系。
【請求項5】
前記偏光子は、反射光の光路を損なわないように配置されている、請求項3または4に記載の光学系。
【請求項6】
記偏光子は、前記画像源および前記レンズのうちの一方に接着されている、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項7】
前記偏光子は偏光フィルムである、請求項6に記載の光学系。
【請求項8】
前記偏光子は、前記レンズの表面に付着された偏光フィルムである、請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記整合部、前記偏光子、および前記レンズは一体に接着されているか、またはこれに代えて、前記偏光子は、前記画像源、前記整合部、および前記レンズのうちの1つに接着されている、請求項8に記載の光学系。
【請求項10】
前記偏光子は偏光フィルムである、請求項8または9に記載の光学系。
【請求項11】
前記光学系は、追加の波長板および追加の偏光子であって、当該順序で前記セミリフレクタの遠位側に配置された追加の波長板および追加の偏光子を更に備え、前記追加の波長板は、それに円偏光が入射すると、直線偏光を出射し得るように構成されるとともに、前記追加の偏光子は、前記出射した直線偏光を吸収するように構成され、前記追加の波長板は、1/4波長板である、請求項3から10のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項12】
前記追加の波長板は、それに円偏光が入射すると、前記第1方向に偏光した偏光成分が出射し得るように構成され、前記追加の偏光子は、前記第1方向に偏光した前記偏光成分を吸収するように構成される、請求項11に記載の光学系。
【請求項13】
前記追加の波長板は、それに円偏光が入射すると、前記第2方向に偏光した偏光成分が出射し得るように構成され、前記追加の偏光子は、前記第2方向に偏光した前記偏光成分を吸収するように構成されている、請求項11に記載の光学系。
【請求項14】
前記セミリフレクタは、透明基板と、前記基板の表面に付着されたセミ反射フィルムと、を備えている、請求項11から13のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項15】
前記追加の波長板と前記追加の偏光子とは、一体に接着されている、請求項11から14のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項16】
前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記追加の波長板および前記追加の偏光子の横手方向における輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従している、請求項15に記載の光学系。
【請求項17】
前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記追加の波長板および前記追加の偏光子の、前記横手方向に対して実質的に垂直な長手方向における輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従している、請求項15または16に記載の光学系。
【請求項18】
前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記追加の波長板および前記追加の偏光子の輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従している、請求項15に記載の光学系。
【請求項19】
前記光学系は、前記追加の偏光子の遠位側に配置された透明保護シートをも備え、前記透明保護シートは、減光シート、フォトクロミックシート、またはエレクトロクロミックシートである、請求項11から18のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項20】
前記追加の波長板および/または前記追加の偏光子は、それぞれ、前記セミリフレクタに一体化された追加の位相差フィルムおよび/または追加の偏光フィルムであり、前記追加の位相差フィルムは、1/4位相差フィルムである、請求項14から19のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項21】
前記基板の前記表面は近位側表面であり、前記追加の位相差フィルムは、前記基板の遠位側表面に付着されているか、および/または、前記追加の偏光フィルムは、前記追加の位相差フィルムの遠位側表面に付着されている、請求項20に記載の光学系。
【請求項22】
前記基板の前記表面は遠位側表面であり、前記追加の位相差フィルムは、前記セミ反射フィルムの遠位側表面に付着されているか、および/または、前記追加の偏光フィルムは、前記追加の位相差フィルムの遠位側表面に付着されている、請求項20に記載の光学系。
【請求項23】
前記画像源は、有機発光ダイオードとして構成されている、請求項1から22のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項24】
AR装置用の光学系であって、
画像投射源と、
前記画像投射源に隣接するビームスプリット側と前記画像投射源の反対側を向く透過側とを有する偏光ビームスプリッタと、
前記ビームスプリット側に隣接する第1波長板であって、前記偏光スプリッタは、前記画像投射源から放射された光が前記ビームスプリット側に非垂直方向に入射し得るとともに少なくとも部分的に反射して前記第1波長板に向かい得るように配置されている、前記第1波長板と、
反射光の光路において前記第1波長板の下流に配置されたセミリフレクタであって、前記偏光ビームスプリッタは、前記画像投射源からの光が前記ビームスプリット側に入射すると、第1方向に偏光した偏光成分が前記偏光ビームスプリッタを通過してその前記透過側を透過するように、かつ前記第1方向に対して垂直な第2方向に偏光した偏光成分が前記ビームスプリット側から反射して前記第1波長板に向かうように構成されている、前記セミリフレクタと、
を備え、
前記光学系は、第2波長板および第1偏光子であって、当該順序で前記セミリフレクタの遠位側に配置された第2波長板および第1偏光子をも備え、前記第2波長板は、それに円偏光が入射すると、直線偏光が出射し得るように構成されるとともに、前記第1偏光子は、前記出射した直線偏光を吸収するように構成され、前記第1および/または第2波長板は、1/4波長板であり、
前記画像投射源は、光を照射するために制御される画像源と、前記照射された光を合焦させるレンズとを含み、第2偏光子が、前記画像源と前記レンズとの間に位置しており、
前記画像投射源は、前記画像源と前記レンズとの間に位置する整合部を含み、前記整合部は、空気ではない屈折率が1より大きな光透過性の媒体により形成され、前記第2偏光子は、前記画像源と前記整合部との間、あるいは前記整合部と前記レンズとの間に位置しており、
前記画像源、前記偏光子、および前記レンズは一体に接着されており、
前記画像投射源は、前記画像源から放射された光の光路に配置されて前記画像源から放射された光線をコリメートすること、成形すること、および/または結合することを行うビーム成形素子を含み、前記ビーム成形素子は前記レンズから形成されており、前記整合部は、液体および/または液晶媒体により形成され、前記画像投射源は、液体および/または液晶媒体を前記画像源と前記ビーム成形素子との間に封止するシール構造を含み、
前記ビーム成形素子を形成する前記レンズの媒質の屈折率と前記整合部の媒質の屈折率との差が、前記ビーム成形素子を形成する前記レンズの媒質の屈折率と空気の屈折率との差より小さく、
前記シール構造は、前記画像源との間にシールがもたらされるように前記画像源に接着されたシールフレームを備え、前記シールフレームと前記ビーム成形要素をなす前記レンズとの間のシールは、それらの間のインレー係合によりもたらされ、
前記セミリフレクタは、透明基板と、前記基板の表面に付着されたセミ反射フィルムと、を備え
前記第2波長板は第2位相差フィルムであり、前記第1偏光子は偏光フィルムであり、前記第2位相差フィルムおよび前記偏光フィルムは、前記セミリフレクタ上で一体化されている、光学系。
【請求項25】
前記第1波長板は、前記セミリフレクタの近位側表面に付着された第1位相差フィルムである、請求項24に記載の光学系。
【請求項26】
前記第2波長板は、それに円偏光が入射すると、そこから前記第1方向に偏光した偏光成分が出射し得るように構成され、前記第1偏光子は、前記第1方向に偏光した前記偏光成分を吸収するように構成されている、請求項24または25に記載の光学系。
【請求項27】
前記第2波長板と前記第1偏光子とは、互いに接着されている、請求項24から26のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項28】
前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記第2波長板および前記第1偏光子の横手方向における輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従している、請求項24から27のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項29】
前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記第2波長板および前記第1偏光子の、前記横手方向に対して全体として垂直な長手方向における輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従している、請求項24から28のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項30】
前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記第2波長板および前記第1偏光子の輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従している、請求項24から27のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項31】
前記光学系は、前記偏光子の遠位側に配置された透明保護シートをも備え、前記透明保護シートは、減光シート、フォトクロミックシート、またはエレクトロクロミックシートである、請求項24から30のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項32】
前記第2波長板は、それに円偏光が入射すると、そこから前記第2方向に偏光した偏光が出射するように構成され、前記第1偏光子は、前記第2方向に偏光した前記偏光を吸収するように構成されている、請求項24から31のうちのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項33】
前記基板の前記表面は近位側表面であり、前記第2位相差フィルムは、前記基板の遠位側表面に付着されているか、および/または、前記偏光フィルムは、前記第2位相差フィルムの遠位側表面に付着されている、請求項32に記載の光学系。
【請求項34】
前記基板の前記表面は遠位側表面であり、前記第2位相差フィルムは、前記セミリフレクタの遠位側表面に付着されているか、および/または前記偏光フィルムは、前記第2位相差フィルムの遠位側表面に付着されている、請求項32に記載の光学系。
【請求項35】
ブラケットと、請求項1から34のうちのいずれか一項に記載の光学系であって、前記ブラケットに一体化された光学系と、を備えた、拡張現実装置、具体的には頭部装着型拡張現実装置。
【請求項36】
前記ブラケットは眼鏡フレームである、請求項35に記載の拡張現実装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2019年2月12に出願された継続中のPCT国際出願番号PCT/CN2019/074876の一部継続出願であり、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810146738.7、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810146751.2、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810146912.8、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810146905.8、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810147326.5、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810147336.9、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810147325.0、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810146915.1、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810147330.1、および2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810147332.0、2018年2月12日に出願された中国特許出願番号201810147328.4に基づいて優先権を主張する。上記PCT出願および前述の全ての中国特許出願の全内容を参照してここに組み入れたものとする。
【技術分野】
【0002】
本願は、拡張現実装置、具体的には頭部装着型拡張現実装置に関する。また、本願は、拡張現実装置のための光学系に関する。
【背景技術】
【0003】
拡張現実(AR)技術は、混合表示技術と呼ぶことができる。その原理は、コンピュータにより制御可能な画像投射源を使用して、ユーザに表示される画像をユーザの目に提示し、提示された画像を、ユーザの目に直接見える現実の周囲環境画像に重ね合わせることにより、コンピュータを介して提示された画像で拡張された実際のシーン情報がユーザに提供される、というものである。この種のテクノロジーは、設計者が工業製品の設計と開発をしやすくなるという点でますます重要になっている。頭部装着型拡張現実(AR)装置は、一般的にAR眼鏡またはヘルメットの形状を有する。
【0004】
従来の頭部装着型拡張現実装置の設計によれば、AR眼鏡またはヘルメットを装着したユーザに、画像投射源から放射された光が直接見えることがある。この原因は、装置の構成部品での光反射や、ユーザが装置を正しく装着していない(例えばユーザがAR眼鏡またはヘルメットを斜めに装着している)ことである。このことにより、人の目について必要な画質だけでなく、最終的な結像のコントラストまでもが損なわれ得るとともに、拡張現実装置を装着しているユーザの不快感にもつながり得る(なぜならば、彼/彼女の目が、画像投射源から直接放射された光の一部で眩んでしまうからである)。
【0005】
更に、従来の頭部装着型拡張現実装置の設計において、画像投射源から放射された光の一部が、最終的に拡張現実装置のセミリフレクタ側から出射することがある。拡張現実装置のユーザとの対話を望んで彼/彼女の向かい側に立っている別の人に、光の出射部分が直接見えると、ユーザの目の表現を通じた判断が損なわれる場合がある。これは、二人の対話に不利となるであろう。更に、追加のレンズ(近視レンズ等)が拡張現実装置の外側に配置されている場合、光の出射部分がレンズで反射して最終的な画質が損なわれることがある。
【発明の概要】
【0006】
上述の問題に関して、本願は、ユーザの目に装置の画像投射源が直接見えることを防止するとともに、対話に影響を与え、かつ装置のユーザのプライバシーを改善するように、画像投射源から放射された光が装置を出射しないようなAR装置用の光学系を提供することを目的とする。
【0007】
本願の一態様によれば、AR装置用の光学系が提供され、当該光学系は、
画像投射源と、
前記画像投射源に隣接するビームスプリット側と前記画像投射源の反対側を向く透過側とを有する偏光ビームスプリッタであって、前記偏光ビームスプリッタは、前記画像源から放射された光が、前記ビームスプリット側に非垂直方向に入射し得るとともにこれにより少なくとも部分的に反射し得るように配置され、前記偏光ビームスプリッタは、光が前記ビームスプリット側に入射すると、第1方向に偏光した偏光成分が前記偏光ビームスプリッタを通過して前記透過側を透過するように、かつ、前記第1方向に対して垂直な第2方向に偏光した偏光成分が前記ビームスプリット側から反射するように構成される、前記偏光ビームスプリッタと、を備え、
前記光学系は、前記画像投射源と前記偏光ビームスプリッタのビームスプリット側との間に配置された偏光子をも備え、前記偏光子は、前記第2方向に偏光した偏光を透過させるとともに、前記第1方向に偏光した偏光を吸収するように構成される。
【0008】
偏光子を設けることにより、画像投射源から放射された光が、偏光ビームスプリッタにより反射されることなく人の目に見える可能性が低減または排除され得る。これにより、ユーザの装着快適さレベルが改善され得る。
【0009】
任意選択的に、前記第2方向に偏光した偏光が前記画像投射源から放射されるように、前記偏光子は前記画像投射源に一体化される。このようにして、光学系の体積を小さくすることができ、拡張現実装置をよりコンパクトにすることができる。
【0010】
任意選択的に、前記光学系は、前記ビームスプリット側に隣接する波長板と、セミリフレクタと、をも備え、前記画像投射源から放射された前記光は、前記ビームスプリット側により少なくとも部分的に反射して前記波長板に向かうことができ、前記セミリフレクタは、反射光の光路において前記波長板の下流に配置され、前記波長板は、好適には1/4波長板である。このようにして、光学系の光利用効率が高められ、拡張現実装置の消費電力を削減することができる。
【0011】
任意選択的に、前記波長板は、前記セミリフレクタの近位側表面に付着された位相差フィルムである。このようにして、光学系の体積を小さくすることができ、拡張現実装置をよりコンパクトにすることができる。更に、反射界面の個数を削減することができ、光学系全体に対する迷光を減少させ得るとともに、光学系のコントラストが改善され得る。
【0012】
任意選択的に、前記偏光子は、反射光の光路を損なわないように配置される。したがって、人の目における最終的な画質は損なわれないであろう。
【0013】
任意選択的に、前記画像投射源は、光を放射するように制御される画像源と、放射された光を集束するレンズと、を備え、前記偏光子は、前記画像源と前記レンズとの間に配置される。
【0014】
任意選択的に、前記画像源、前記偏光子、および前記レンズは一体に接着されるか、またはこれに代えて、前記偏光子は、前記画像源および前記レンズのうちの一方に接着される。一体に接着することにより、光学素子間の反射界面が確実に削減され得るため、光エネルギーのロスをなくすことができる。したがって、迷光の作用を緩和または抑制することで画質が向上し得る。
【0015】
任意選択的に、前記偏光子は偏光フィルムである。
【0016】
任意選択的に、前記画像投射源は、光を放射するように制御される画像源と、放射された光を集束するレンズと、を備え、前記レンズは、前記画像源と前記偏光子との間に配置される。
【0017】
任意選択的に、前記偏光子は、前記レンズの表面に付着された偏光フィルムである。
【0018】
任意選択的に、前記画像投射源は、前記画像源と前記レンズとの間に配置された整合部をも備え、前記偏光子は、前記画像源と前記整合部との間、または前記整合部と前記レンズとの間に配置される。
【0019】
任意選択的に、前記画像源、前記整合部、前記偏光子、および前記レンズは一体に接着されるか、またはこれに代えて、前記偏光子は、前記画像源、前記整合部、および前記レンズのうちの1つに接着される。
【0020】
任意選択的に、前記偏光子は偏光フィルムである。
【0021】
任意選択的に、前記画像源は、前記画像源と前記レンズとの間に配置された整合部をも備える。
【0022】
任意選択的に、前記光学系は、追加の波長板および追加の偏光子であって、当該順序で前記セミリフレクタの遠位側に配置された追加の波長板および追加の偏光子をも備え、前記追加の波長板は、それに円偏光が入射すると、そこから直線偏光が出射し得るように構成されるとともに、前記追加の偏光子は、前記出射した直線偏光を吸収するように構成され、前記追加の波長板は、好適には1/4波長板である。このようにして、画像源からの光が拡張現実装置のセミリフレクタが配置された側から出射する可能性が排除または軽減され得る。ユーザのプライバシーおよび対話が改善され得る。その一方で、セミリフレクタを介して遠位側に放射された光であって、保護シートで部分的に反射して最終的に人の目に入射する光により引き起こされる迷光または「ゴースト」の悪影響を排除または軽減することができる。
【0023】
任意選択的に、前記追加の波長板と前記追加の偏光子とは、一体に接着される。
【0024】
任意選択的に、前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記追加の波長板および前記追加の偏光子の横手方向における輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従する。
【0025】
任意選択的に、前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記追加の波長板および前記追加の偏光子の、前記横手方向に対して実質的に垂直な長手方向における輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従する。
【0026】
任意選択的に、前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記追加の波長板および前記追加の偏光子の輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従する。
【0027】
任意選択的に、前記光学系は、前記追加の偏光子の遠位側に配置された透明保護シートをも備え、前記透明保護シートは、好適には、減光シート、フォトクロミックシート、またはエレクトロクロミックシートである。この場合、追加の波長板と追加の偏光子とを設けることにより、セミリフレクタから出射して透明保護シートで反射し、最終的に人の目に入射する光により引き起こされる迷光または「ゴースト」の悪影響を排除または軽減することができる。
【0028】
任意選択的に、前記追加の波長板は、それに円偏光が入射すると、そこから前記第1方向に偏光した偏光成分が出射し得るように構成され、前記追加の偏光子は、前記第1方向に偏光した前記偏光成分を吸収するように構成される。
【0029】
任意選択的に、前記追加の波長板は、それに円偏光が入射すると、前記第2方向に偏光した偏光成分が出ることができるように構成され、前記追加の偏光子は、前記第2方向に偏光した前記偏光成分を吸収するように構成される。
【0030】
任意選択的に、前記セミリフレクタは、透明基板と、前記基板の表面に付着されたセミ反射フィルムと、を備える。
【0031】
任意選択的に、前記追加の波長板および/または前記追加の偏光子は、それぞれ、前記セミリフレクタに一体化された追加の位相差フィルムおよび/または追加の偏光フィルムであり、前記追加の位相差フィルムは、好適には1/4位相差フィルムである。このようにして、光学系の体積を小さくすることができ、拡張現実装置をよりコンパクトにすることができる。更に、反射界面の個数を削減することができるため、光学系の迷光をなくすとともに光学系のコントラストを改善できる。
【0032】
任意選択的に、前記基板の前記表面は近位側表面であり、前記追加の位相差フィルムは、前記基板の遠位側表面に付着されるか、および/または、前記追加の偏光フィルムは、前記追加の位相差フィルムの遠位側表面に付着される。
【0033】
任意選択的に、前記基板の前記表面は遠位側表面であり、前記追加の位相差フィルムは、前記セミ反射フィルムの遠位側表面に付着されるか、および/または、前記追加の偏光フィルムは、前記追加の位相差フィルムの遠位側表面に付着される。
【0034】
本願の別の態様によれば、AR装置用の光学系が提供され、当該光学系は、
画像投射源と、
前記画像投射源に隣接するビームスプリット側と前記画像投射源の反対側を向く透過側とを有する偏光ビームスプリッタと、
前記ビームスプリット側に隣接する第1波長板であって、前記偏光スプリッタは、前記画像投射源から放射された光が前記ビームスプリット側に非垂直方向に入射し得るとともに少なくとも部分的に反射して前記第1波長板に向かい得るように配置されている、前記第1波長板と、
反射光の光路において前記第1波長板の下流に配置されたセミリフレクタであって、前記偏光ビームスプリッタは、前記画像投射源からの光が前記ビームスプリット側に入射すると、第1方向に偏光した偏光成分が前記偏光ビームスプリッタを通過してその前記透過側を透過するように、かつ前記第1方向に対して垂直な第2方向に偏光した偏光成分が前記ビームスプリット側から反射して前記第1波長板に向かうように構成される、前記セミリフレクタと、
を備え、
前記光学系は、第2波長板および偏光子であって、当該順序で前記セミリフレクタの遠位側に配置された第2波長板および偏光子をも備え、前記第2波長板は、そこに円偏光が入射すると、そこから直線偏光が出射し得るように構成されるとともに、前記偏光子は、前記出射した直線偏光を吸収するように構成され、前記第1および/または第2波長板は、好適には1/4波長板である。
このようにして、画像光が拡張現実装置のセミリフレクタ側から出射する可能性が排除または軽減され得る。ユーザのプライバシーおよび対話が改善され得る。その一方で、セミリフレクタを介して遠位側に放射された光であって、保護シートで部分的に反射して最終的に人の目に入射する光により引き起こされる迷光または「ゴースト」の影響を排除または軽減することができる。
【0035】
任意選択的に、前記第2波長板と前記偏光子とは、互いに接着される。
【0036】
任意選択的に、前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、
前記第2波長板および前記偏光子の横手方向における輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従する。
【0037】
任意選択的に、前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記第2波長板および前記偏光子の、前記横手方向に対して全体として垂直な長手方向における輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従する。
【0038】
任意選択的に、前記セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、前記第2波長板および前記偏光子の輪郭は、前記セミリフレクタの湾曲形状に実質的に追従する。
【0039】
任意選択的に、前記光学系は、前記偏光子の遠位側に配置された透明保護シートをも備え、前記透明保護シートは、好適には、減光シート、フォトクロミックシート、またはエレクトロクロミックシートである。この場合、追加の波長板と追加の偏光子とを設けることにより、セミリフレクタから出射して透明保護シートで反射し、最終的に人の目に入射する光により引き起こされる迷光または「ゴースト」の悪影響を排除または軽減することができる。
【0040】
任意選択的に、前記第1波長板は、前記セミリフレクタの近位側表面に付着された第1位相差フィルムである。
【0041】
任意選択的に、前記第2波長板は、それに円偏光が入射すると、前記第1方向に偏光した偏光成分が出射し得るように構成され、前記偏光子は、前記第1方向に偏光した前記偏光成分を吸収するように構成される。
【0042】
任意選択的に、前記第2波長板は、それに円偏光が入射すると、前記第2方向に偏光した偏光が出射するように構成され、前記偏光子は、前記第2方向に偏光した前記偏光を吸収するように構成される。
【0043】
任意選択的に、前記セミリフレクタは、透明基板と、前記基板の表面に付着されたセミ反射フィルムと、を備える。
【0044】
任意選択的に、前記第2波長板および/または前記偏光子は、前記セミリフレクタに一体化された第2位相差フィルムおよび/または偏光フィルムである。
【0045】
任意選択的に、前記基板の前記表面は近位側表面であり、前記第2位相差フィルムは、前記基板の遠位側表面に付着されるか、および/または、前記偏光フィルムは、前記第2位相差フィルムの遠位側表面に付着される。
【0046】
任意選択的に、前記基板の前記表面は遠位側表面であり、前記第2位相差フィルムは、前記セミリフレクタの遠位側表面に付着される、および/または前記偏光フィルムは、前記第2位相差フィルムの遠位側表面に付着される。
【0047】
本願の別の態様によれば、ブラケットと、前記ブラケットに一体化された上述の光学系と、を備える、拡張現実装置、具体的には頭部装着型拡張現実装置が提供される。
【0048】
任意選択的に、前記ブラケットは眼鏡フレームである。
【0049】
上述の本発明の技術手段によれば、画像投射源から放射された光が、偏光ビームスプリッタで反射されずにユーザの目に見える可能性が低減または排除され得るため、使用中の装置の快適さレベルが向上する。更に、光が拡張現実装置のセミリフレクタ側から出射する可能性が低減または排除されるため、ユーザのプライバシーが向上するとともに対話しやすくなる。
【0050】
本願の上述および他の態様は、添付図面と併せた以下の詳細な説明により十分に理解することができる。図面は、明確性を期して異なる縮尺で与えられている場合があるが、このことは本願の理解に影響を与えないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】従来のAR装置用の光学系を概略的に示す図。
図2】改良されたAR装置用の光学系を概略的に示す図。
図3】本願の一実施形態によるAR装置用の光学系を概略的に示す図。
図4a】本願の一実施形態による画像投射源を概略的に示す図。
図4b図4aの画像投射源が使用された光学系を概略的に示す図。
図5】本願の別の一実施形態によるAR装置用の光学系を概略的に示す図。
図6a】本願の一実施形態によるセミリフレクタを概略的に示す断面図。
図6b】本願の別の実施形態によるセミリフレクタを概略的に示す断面図。
図6c図6aまたは図6bのセミリフレクタが使用されたAR装置用の光学系を概略的に示す図。
図7】本願の一実施形態によるAR装置用の画像投射源を概略的に示す図。
図8】本願の別の一実施形態によるAR装置用の画像投射源を概略的に示す図。
図9】本願の一実施形態によるスプリッタを概略的に示す拡大図。
図10】本願の別の一実施形態によるスプリッタを概略的に示す拡大図。
図11】本願の一実施形態によるセミリフレクタを概略的に示す断面図。
図12】本願の別の一実施形態によるセミリフレクタを概略的に示す断面図。
図13】本願の別の一実施形態によるセミリフレクタを概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本願の図面において、同一の構成または類似の機能を有する特徴部は、同一の参照符号で示される。更に、例示のみを目的として、図面で示される光学系の光路は、光が伝搬する経路のみを示すことに留意されたい。但し、これは本願に係る光学系の光路に図示しない光路が存在しないことを意味するものではない。
【0053】
図1は、従来のAR装置用の光学系の光路図を概略的に示す。従来のAR装置の光学系は、一般的に、コンピュータ(図示せず)により制御可能な画像投射源10と、スプリッタ20と、セミリフレクタ30と、を備えている。コンピュータによる制御の下で、画像投射源10は、光L10を放射して所望の画像を呈示する。画像源から放射された光L10に沿って、スプリッタ20が画像投射源10の下流に配置されている。画像源から放射された光L10の一部はスプリッタ20により反射するが、画像源から放射された光の別の一部はスプリッタ20を透過する。画像源から放射された光L10のうちの反射光の光路に沿って、セミリフレクタがスプリッタ20の下流に配置されている。画像源から放射された光L10の反射光は、部分的にセミリフレクタ30を透過して外方に向かうとともに、部分的に同一のセミリフレクタで反射する。光の反射部分は、再びスプリッタ20を部分的に通過して人の目に見える。同時に、周囲光L30が、セミリフレクタ30を通過し、そしてスプリッタ20を部分的に通過し得るため、人の目40に見える。したがって、画像源から放射された光L10の一部により呈示される画像と、周囲光L30の一部により呈示される周囲環境画像とが人の目40において重ね合わされ、これにより、ユーザは現実のシーンに対する拡張現実効果を体験できる。上述の従来の光学系においては、画像源から放射されてスプリッタ20を透過した光L10の一部が戻ることで結像を損なわないことを確保するように、画像源から放射された光L10のこの一部を妨げなく出射させることが必要である。
【0054】
画像源から放射された光L10のエネルギー利用効率を高めるように、図2に示す光学系がAR装置のために提案されている。明確性を期して、図1に示す光学系と異なるAR装置の光学系の特徴のみを以下に説明する。他の構成要素については、既に説明した内容を参照されたい。図2に示すように、AR装置の光学系は、スプリッタ20に代えて偏光ビームスプリッタ21を備えている。例えば、偏光ビームスプリッタは、偏光ビームスプリットフィルムを(非偏光)スプリッタ基板に付着させることにより作製することができる。偏光ビームスプリッタ21は、その偏光ビームスプリットフィルムが画像投射源10に隣接するように配置されている。スプリッタ基板は、図1に示すスプリッタ20と同じ機能を果たし得る。偏光ビームスプリットフィルムは、第1方向に偏光した偏光を通過させ得るとともに、第1方向に対して垂直な第2方向に偏光した偏光を反射させ得るように使用される。説明を明確にするように、第1方向に偏光した偏光、および第2方向に偏光した偏光を、以下において、例えばP偏光およびS偏光とそれぞれ呼ぶ。また、1/4波長板50が、光路において偏光ビームスプリッタ21とセミリフレクタ30との間に配置されている。
【0055】
本明細書の文脈において、スプリッタのビームスプリット側とは、スプリッタの構成部により規定される表面または界面であって、光が当該表面または界面に入射可能である側、および/または部分的に反射可能でありかつ部分的に透過可能である側を指す。スプリッタの透過側とは、スプリッタの構成部により規定される表面または界面であって、光が当該表面または界面に入射可能である側、および/またはスプリッタから外部に透過可能である側を指す。図2に示す実施形態において、スプリッタ21の偏光ビームスプリットフィルムがそのビームスプリット側を規定し、スプリッタ基板がスプリッタの透過側を規定する。図1に示すスプリッタ20においては、スプリッタ20の画像投射源10に隣接する表面がビームスプリット側であり、スプリッタ20の画像投射源10の反対側を向く表面が透過側である。
【0056】
更に、本明細書の文脈において、スプリッタ(またはそのスプリッタ基板)は、立方体または平面であり得ることを理解されたい。例えば、2つの直角二等辺三角形プリズムでからなる立体ビームスプリッタでは、プリズムの斜面がスプリッタのビームスプリット側を構成する。また例えば、平面スプリッタでは、スプリッタの平面基板の平らな表面がスプリッタのビームスプリット側を構成する。
【0057】
説明を明確にするように、以下において、P方向に偏光した偏光を第1方向に偏光した偏光と想定し、S方向に偏光した偏光を第2方向に偏光した偏光と想定するものとする。しかしながら、当業者には、P偏光およびS偏光が、それらの偏光方向が互いに垂直であることが確保されるという前提で、光が伝搬する経路を中心として回転可能であることが理解されるであろう。したがって、第1方向に偏光した光は、P方向に対して角度をなして偏光した偏光であり得るとともに、第2方向に偏光した光は、S方向に対して角度をなして偏光した偏光であり得る。
【0058】
本明細書の文脈において、「フィルム」または「プレート」という用語は、「フィルム」または「プレート」形状にある別の薄層構造体に取付可能な薄層構造体、または、単一の薄層構造体を指す。
【0059】
本明細書の文脈において、スプリッタアセンブリ22のビームスプリット側が位置する平面は、ビームスプリット側が実質的に位置する平面である。画像投射源は、光を放射可能な平面状または湾曲状の画像源を備える。本発明の文脈において、平面状の画像源とは、それが実質的に平面状の放射側を有することを意味する。同様に、湾曲状の画像源とは、それが実質的に湾曲状の放射側を有することを意味する。画像源は、有機発光ダイオード(OLED)、シリコンオン液晶(LCOS)、液晶ダイオード(LCD)等の光学装置から作製され得る。レンズ・サブアセンブリは、より鮮明な画像を得るように画像源から放射された光を集束するために使用される単数または複数のレンズを備え得る。スプリッタのビームスプリット側が位置する平面は、画像投射源の画像源の法線に対して角度βをなす。角度βは、11°と79°との間、好適には20°と70°との間、より好適には30°と60°との間、より好適には40°と55°との間、最も好適には40°と50°との間の値を有する。スプリッタのビームスプリット側が位置する平面は、セミリフレクタの光軸に対して角度αをなす。角度αは、β-10°とβ+10°との間であってかつ0<α<90°である。このようにして、光エネルギーの最大利用効率を達成することができる。本願の文脈において、値の範囲に関する「(~と~との)間」という用語は、範囲の両端の値も同様に考慮すべきであることを意味する。例えば、「値Aが、値Bと値Cとの間である」とは、値Aが、値B、値C、または値Aより大きいが値Cより小さい値、であり得ることを意味する。
【0060】
セミリフレクタ30は、透明基板と、透明基板の表面に付着されたセミ反射フィルムと、を備えている。セミ反射フィルムは、それに入射した光を部分的に反射し、かつ部分的にそれを透過させるように使用される。更に、当業者には、「セミリフレクタ」または「セミ反射フィルム」という用語は、これに入射した光のエネルギーの半分が反射され、当該光のエネルギーの半分がこれを透過するという意味ではないことが理解されるべきである。そうではなく、反射光エネルギーと投射光エネルギーとの比率は、例えば「セミリフレクタ」または「セミ反射フィルム」自体の特性に依存し得る。
【0061】
好適な実施形態において、セミリフレクタ自体の基板は、屈折補正のための光学レンズ、例えば屈折異常を補正するために使用される光学レンズである。
【0062】
更に、本願の文脈において、1つの光学素子(例えばセミリフレクタ)の遠位側または表面とは、人の目に入射する光の直線光路に沿って、同一光学素子の人の目の反対側を向く側または表面を指す。同様に、1つの光学素子の表面の近位側とは、人の目に入射する光の直線光路に沿って、同一光学素子の人の目に隣接する側または表面を指す。
【0063】
更に、図2に示すように、画像投射源10から放射された光L10が偏光ビームスプリッタ21を通過するとき、画像源から放射された光L10のP偏光成分L10pがスプリッタを透過し、画像源から放射された光L10のS偏光成分L10sが反射してセミリフレクタ30または1/4波長板50に向かう。1/4波長板50を通過するとき、S偏光成分L10sは、円偏光(または楕円偏光)に変換される。次いで、円偏光(または楕円偏光)は、セミリフレクタ30により部分的に反射するとともに、それを部分的に透過する。再び1/4波長板50を通過するとき、反射した円偏光(または反射した楕円偏光)は、P偏光成分L10pに変換される。続いて、このP偏光成分L10pは、偏光スプリッタ21を通過して人の目40に見える。一方、周囲光L30も、セミリフレクタ30および1/4波長板50を順次通過し、そして部分的にスプリッタ21を通過して人の目40に見える。更に、不要な光L20が偏光ビームスプリッタ21に入射すると、この光L20は、スプリッタを透過するP偏光成分L20p、およびスプリッタで反射するS偏光成分L20sに変換される。S偏光成分L20sのみが人の目40に見える。
【0064】
図1に示す光学系において、画像源から放射された光L10の光エネルギーは、スプリッタ20に入射するときに半分失われる。次いで、セミリフレクタ30に入射するとき、光の光エネルギーは半分失われる。そして、再びスプリッタ20に戻ってそれに入射するとき、光の光エネルギーは半分失われる。すなわち、画像源から放射された光L10の光エネルギーの8分の1しか、人の目40における結像に使用されない。これに対して、図2に示す光学系においては、画像源から放射された光L10の光エネルギーは、スプリッタ21に入射するとき半分失われ、セミリフレクタ30への入射後に光の光エネルギーは半分失われるが、再びスプリッタ20に戻ってそれに入射するときには失われない。すなわち、画像源から放射された光L10の光エネルギーの4分の1が、人の目40における結像に使用される。これにより、結像の明るさおよびコントラストが大幅に向上するとともに、装置の消費電力が削減される。
【0065】
画像投射源10から放射されてスプリッタ20または21を直接透過する光L10または光成分L10sが、頭部装着型AR装置を所定の位置に装着していないユーザに見えることにより装着の快適さや結像のコントラストが損なわれ得るということが、図1および2から理解される。更に、光学素子の性能は理想的でないため、スプリッタ20または21で反射して人の目に向かう光または光成分が部分的に必ず存在する。これにより、最終的な画質が損なわれ得る。更に、画像投射源10から放射された光L10の一部が反射してセミリフレクタ30を通って外部に向かうことにより、ユーザのそばにいる人に画像投射源10が見えてしまい、AR装置のプライバシー性が貧弱なものとなることが、図1および2から理解される。更にまた、ユーザがAR装置の他に近視用レンズ等の他のレンズを装着している場合、外部に放射する光の一部がこの他のレンズで反射し、人の目における画像の品質が更に損なわれることがある。
【0066】
図3は、本願の実施形態による光学系1000を概略的に示す。光学系1000は、一般的に、コンピュータ(図示せず)により制御可能な画像投射源10と、偏光ビームスプリッタ21と、セミリフレクタ30と、を備え、1/4波長板50が、光路において偏光ビームスプリッタ21とセミリフレクタ30との間に配置されている。画像投射源10、偏光ビームスプリッタ21、セミリフレクタ30、および1/4波長板50の設定については、上述の内容を参照されたい。また、光学系1000において、画像源投射10から放射された光L10の光路から見て、偏光子60が偏光ビームスプリッタ21のビームスプリット側の上流に配置されている。偏光子60は、第2方向に偏光した光を透過させ得るとともに、第1方向に偏光した光を吸収し得る光学素子である。すなわち、図3に示す実施形態において、画像投射源10からの光L10は、偏光子60を通過するときに、S偏光成分L10sに変換される。このS偏光成分L10sは、偏光ビームスプリッタ21に入射し、そのビームスプリット側で反射して4/1波長板50に向かう。したがって、他の偏光成分は、偏光ビームスプリッタ21の透過側から出射することができない。このようにして、人の目40に偏光ビームスプリッタ21を介して画像投射源10が直接見える可能性を排除または低減することができる。当業者には、偏光子60が、偏光ビームスプリッタ21と4/1波長板50との間の光路を損なわないように配置されるべきであることが理解されるであろう。
【0067】
本願の実施形態によれば、上述のように、偏光子60は、画像投射源10と偏光ビームスプリッタ21との間に配置されている。これに代えて、画像投射源10から放射される光がS偏光となるように、偏光子を画像投射源10に一体化してもよい。
【0068】
図4aは、本願の実施形態による画像投射源10’を概略的に示す。画像投射源10’は、画像源11と、整合部13と、レンズ12と、を備えている。画像源11は、コンピュータの制御下で、人の目に投影される画像を表示するように使用される。例えば、画像源は、平面的な画像源であって、OLED、LCOS、LCD等の表示装置を備え得るがこれらに限定されない。レンズ12は、画像の鮮明度を向上させるように光を集束させる単一のレンズ、または複数のレンズからなるレンズ・サブアセンブリであり得る。整合部13は、画像源11とレンズ12との間に配置され、透過材料から構成されている。透過材料の屈折率は空気よりも高いため、迷光を抑制または低減できるとともに「ゴースト」の影響を低減できる。図4aに示す実施形態において、整合部13の材料は液体である。したがって、封止フレームが、レンズ12と画像源11との間を囲むように設けられ、その中に整合部13が封入されている。これに代えて、整合部13は個体であって、接着剤によりレンズ12および画像源11に直接接着されていてもよい。
【0069】
更に図4aに示すように、画像源11から放射される光の光路において、画像投射源10’は、レンズ12の下流に配置された偏光子14をも備えている。偏光子60と同様に、偏光子14は、第2方向に偏光した光を透過させるとともに、第1方向に偏光した光を吸収する。したがって、偏光子14の作用により、画像投射源10から放射された光は第2方向に偏光した光となる。当業者には、偏光子14がレンズ12の表面を覆うように付着された偏光フィルムであり得ることが理解されるべきである。
【0070】
当業者には、代替実施形態において、偏光子14は、画像源11と整合部13との間、または整合部13とレンズ12との間に設けられ得ることが理解されるべきである。また、当業者には、整合部13は、画像投射源10’から省かれ得ることが理解されるべきである。この場合、偏光子14は、画像源11とレンズ12との間、またはレンズ12の下流に設けられ得る。
【0071】
図4bは、図4aの画像投射源10’が採用される光学系1010を示す。光学系1000と比較すると、光学系1010は、画像源10および偏光子60に代えて画像投射源10’を備えている。光学系1010によれば、画像投射源10’から放射された光は、S偏光成分L10sであるため、このS偏光成分L10sが偏光ビームスプリッタ21に入射し、そしてそのビームスプリット側で反射して1/4波長板50に向かう。このようにして、他の偏光線分は、偏光ビームスプリッタ21の透過側を透過することができない。したがって、人の目40に偏光ビームスプリッタ21を介して画像投射源10が直接見える可能性を排除または低減することができる。
【0072】
図5は、本願の別の実施形態によるAR装置用の光学系2000を概略的に示す。光学系2000は、一般的に、コンピュータ(図示せず)により制御可能な画像投射源10と、偏光ビームスプリッタ21と、セミリフレクタ30と、を備え、1/4波長板50が偏光ビームスプリッタ21とセミリフレクタ30との間の光路において配置されている。画像投射源10、偏光ビームスプリッタ21、セミリフレクタ30、および1/4波長板50の設定については、上述の内容を参照されたい。また、画像投射源10から放射され、偏光ビームスプリッタのビームスプリット側で反射した光L10の光路において、第2の1/4波長板70および偏光子80が、光学系2000のセミリフレクタ30の遠位側に当該順序で配置されている。偏光子80は、第21/4波長板70の遠位側に配置されている。1/4波長板70は、円偏光を偏光方向が第1または第2方向である直線偏光に偏光するように構成され、偏光子80は、直線偏光を吸収するように構成される。例えば、偏光子80は、S偏光を吸収するとともに、P偏光を透過させるように構成されている。例えば、1/4波長板70は、円偏光をS偏光に変換するように構成され、偏光子80は、S偏光を吸収するとともにP偏光を透過させるように構成される。また例えば、1/4波長板70は、円偏光をP偏光に変換するように構成され得るとともに、偏光子80はP偏光を吸収してS偏光を透過させるように構成される。1/4波長板70の異常軸または通常軸は、偏光子80を通過する直線偏光の偏光方向に対する角度を含むように構成され、この角度は30°と60°との間である。好適な実施形態において、波長板の異常軸または通常軸は、偏光子80を通過する直線偏光の偏光方向に対して45°となるように構成される。
【0073】
図5に示すように、画像投射源10から放射された光が偏光ビームスプリッタ21を通過するとき、画像源から放射された光L10のP偏光成分L10pはこれを透過し、画像源から放射された光L10のS偏光成分L10sは反射してセミリフレクタ30または1/4波長板50に向かう。S偏光成分L10sは、1/4波長板50により円偏光(または楕円偏光)に変換される。続いて、この円偏光(または楕円偏光)は、部分的にセミリフレクタ30で反射されるとともに、部分的にそれを透過する。透過した円偏光は、1/4波長板70によりS偏光(またはP偏光)に偏光され得る。そしてこの光は偏光子80に入射して吸収される。この偏光子80は、S偏光(またはP偏光)を吸収するとともにP偏光(またはS偏光)を透過させるように構成されている。したがって、画像源から放射された光L10は、実質的にAR装置から出射することはできない。楕円偏光の場合、ほとんどの光が吸収され、AR装置から出射することが防止されるであろう。したがって、AR装置のプライバシー性および対話性を大幅に改善することができる。
【0074】
任意の実施形態において、反射界面の個数を削減するように、1/4波長板70と偏光子80とを互いに接着してもよい。したがって、光のエネルギー利用が改善され得る。
【0075】
セミリフレクタ30が湾曲したセミリフレクタである場合、波長板70および偏光子80の横手方向における輪郭は、セミリフレクタの湾曲した形状に実質的に追従するであろう。本明細書の文脈において、横手方向とは、一般的に、ユーザの体の左右方向を指す。したがって、迷光および「ゴースト」の悪影響を低減して画質を向上させることができる。任意選択的に、追加の波長板および追加の偏光子の、横手方向に対して実質的に垂直である長手方向における輪郭は、セミリフレクタの湾曲した形状に実質的に追従する。好適な実施形態において、セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタであり、追加の波長板および追加の偏光子の輪郭は、セミリフレクタの湾曲した形状に実質的に追従することで、迷光および「ゴースト」の悪影響を最適に減少させるという結果が達成される。
【0076】
任意採択的な実施形態において、光学系は、追加の偏光子の遠位側に配置された透明な保護シートをも備える。セミリフレクタ30と透明保護シートとの間に波長板70および偏光子80が配置されることにより、透明保護シートに入射するがセミリフレクタ30の遠位側表面で反射する周囲光が引き起こす「ゴースト」の悪影響が軽減され得る。光学素子の性能を原因として偏光子80から光が漏れたとしても、透明保護シートで反射した光が引き起こす「ゴースト」の悪影響が軽減され得る。透明保護シートは、減光シート、フォトクロミックシートまたはエレクトロクロミックシートであり得る。
【0077】
図6aは、本願の実施形態によるセミリフレクタ30’を示す断面図である。セミリフレクタ30’は、透明基板31と、透明基板31の近位側表面に付着されたセミ反射フィルム32と、を備えている。更に、セミリフレクタ30’は、1/4位相差フィルム70’および偏光フィルム80’であって、当該順序で基板31の遠位側表面に対して付着された1/4位相差フィルム70’および偏光フィルム80’をも備えている。1/4位相差フィルム70’および偏光フィルム80’は、それぞれ1/4波長板70および偏光子80と同様に構成され得る。このようにして、セミリフレクタ30’自体が1/4位相差フィルム70’および偏光フィルム80’に一体化されているため、光学系の体積が更に小さくなる。その一方で、反射界面の個数を削減することができるので、光学系全体の迷光が減少するとともに光学系のコントラストが向上する。
【0078】
任意選択的に、図6bは、本願の別の実施形態によるセミリフレクタ30”を示す断面図である。セミリフレクタ30”は、透明基板31と、透明基板31の遠位側表面に付着されたセミ反射フィルム32と、を備えている。更に、セミリフレクタ30”は、1/4位相差フィルム70”および偏光フィルム80”であって、当該順序でセミ反射フィルム32に付着された1/4位相差フィルム70”および偏光フィルム80”をも備えている。1/4位相差フィルム70”および偏光フィルム80”は、それぞれ1/4波長板70および偏光子80と同様に構成され得る。
【0079】
図6Cは、図6aまたは図6bのセミリフレクタが採用された光学系3000を示す図である。光学系3000は、図3の光学系1000と同様に構成されるが、光学系1000のセミリフレクタに代えてセミリフレクタ30’または30”が使用されている。したがって、光学系3000の光学素子については、セミリフレクタ30’または30”を除き図3の説明を参照されたい。光学系3000において、画像投射源10から放射された光L10は、偏光子60を通過してS偏光成分L10sに変換される。S偏光成分L10sが偏光ビームスプリッタ21に入射すると、S偏光成分L10sはスプリッタのビームスプリット側で反射して1/4波長板50に向かい、これによって円偏光に変換される。円偏光がセミリフレクタ30’または30”に入射すると、セミ反射フィルム32を通過する、またはセミ反射フィルム32で直接反射しない円偏光の光成分が、直線偏光に変換され、そして図5の原理に従って吸収される。したがって、画像投射源10から放射された光L10がAR装置から出射することが防止され得る。このようにして、AR装置のプライバシー性およびユーザの対話性が改善され得る。
【0080】
代替実施形態において、セミリフレクタ30’の基板31を、1/4波長板70と同様に形成してもよい。したがって、1/4位相差フィルム70’を省くことができる。
【0081】
更に、当業者には、本願のセミリフレクタが、部分的に円筒形または部分的に球形であるように湾曲したものであり得ること、あるいはこれに代えて、部分的に回転対称(非球形)または他の態様で好適にまたは自由に湾曲したものであり得ることが理解されるべきである。また例えば、装置を装着して実際のシーンを見るユーザの快適さを損なわないように、本発明のセミリフレクタの全ジオプターは、±150度、好適には±100度である。
【0082】
好適な実施形態において、セミリフレクタ400は、光のエネルギー利用効率を高めるように、その近位側表面に付着された反射防止フィルムを備え得る。
【0083】
当業者には、1/4波長板またはフィルムについて説明したが、本願における板またはフィルムは、本願において他のいずれの波長板またはフィルム、または互いに垂直な2つの偏光した光の間に追加の光路差を生成できる光学素子に、これら他の波長板、または位相差フィルム、または光学素子が本願の上述の技術的解決策のように機能を達成または実質的に達成できる場合に限り代えてもよいことが、本願の説明の読了後に理解されるべきである。
【0084】
画像投射源は、主に、画像源とビーム成形素子とを備えている。
【0085】
本願によれば、画像投射源の画像源は、任意の適切な形態の画像源とすることができる。或る実施形態において、画像源はレーザー源、またはLEDディスプレイ等のLED源であり得る。或る実施形態において、画像源は、平面ディスプレイ等の平面画像源、またはこれに代えて湾曲ディスプレイ等の湾曲画像源であり得る。或る実施形態において、画像源は、一体型光源、または単一光源であり得る。画像源の例には、OLED(有機発光ダイオード)、LCD(液晶オンシリコン)、LCD(液晶ディスプレイ)、MEMS(マイクロ電気機械システム)、DME(デジタルミラーデバイス)が含まれるがこれらに限定されない。
【0086】
画像投射源のビーム成形素子は、画像源の光源から放射された光の光路に配置されて、画像源から放射された光ビームをコリメートする、成形する、および/または結合する。
【0087】
本願によれば、ビーム成形素子は、レンズとして構成され得る。本願によるビーム成形素子のレンズは、1つのレンズまたは複数のレンズからなるレンズ・サブアセンブリであり得る。レンズ、またはレンズ・サブアセンブリの各レンズは、凸レンズ、凹レンズ、または凸レンズと凹レンズの組み合わせとすることができる。レンズ表面は、球面、非球面または自由曲面を有し得る。
【0088】
本願の原理によれば、ビーム成形素子は、例えば接着剤を介して面と面とを直接接着することにより画像源と一体とすることができ、あるいはこれに代えて、中間整合部を介して画像源と一体とすることができる。換言すれば、本願によるAR装置の画像投射源の画像源およびビーム成形素子は、互いに直接的に一体とされるか、または一部品として中間整合部を介して間接的に一体とされる。中間整合部は、空気ではない、屈折率が1より大きい整合媒体により形成される。このようにして、画像源から放射されて虚像情報を運ぶ光ビームVLは、ビーム成形素子に直接的に、または屈折率が1より大きい整合媒体を介して入射する。その後、光ビームはビーム成形素子を介して画像投射源から照射される。
【0089】
好適には、中間整合部を形成するための整合媒体の屈折率は、1~2.7であり得る。中間整合部を形成するための整合媒体は、液体媒体、液晶媒体、半固体媒体、または個体媒体であり得る。中間整合部は、上述の媒体のうちの少なくとも1つにより形成され得る。液体媒体は、水やエチルアルコール等の透明媒体であり得る。個体媒体は、ガラスや樹脂等の透明な固体媒体であり得る。
【0090】
図7は、本願によるAR装置の画像投射源の例を示す。本例において、画像源12Aとベーム成形素子14Aとは、中間整合部16Aにより間接的に一体とされている。本例において、ビーム成形素子14Aはレンズとして提供され、中間整合部16A液体および/または液晶媒体により形成されている。したがって、画像投射源10は、画像源12Aとビーム成形素子14Aとの間に液体または液体媒体がシールされ得るシール構造を備えている。シール構造は、当技術分野で知られている任意の適切なシール構造であり得ることを理解されたい。
【0091】
実現可能な実施形態において、シール構造は、シールフレーム18Aを備えている。シールフレーム18Aは、画像源12Aに接着されてそれらの間のシールを達成している。シールフレーム18とビーム成形素子14Aのレンズとの間のシールは、それらの間のインレー係合により達成され得る。任意選択的に、中間整合部16Aを形成するために使用される媒体の形態に応じて、シールフレーム18Aは、ビーム成形素子14Aのレンズに接着され得る。
【0092】
このような構成によれば、画像源12Aから放射されて虚像を担持する光ビームは、最初に中間整合部16Aに入射し、次いでレンズの形状にあるビーム成形素子14Aに入射することができる。整合媒体の屈折率は空気のものより大きいため、ビーム成形素子14Aのレンズが形成される媒体と整合媒体との間の屈折率の差は、ビーム成形素子14Aのレンズが形成される媒体と中間整合部16Aとビーム成形素子14Aとの界面にある空気との屈折率の差より小さい。したがって、より多くの光ビームを屈折させることができ、これにより光透過率を向上させ得るとともに、画像投射源の光学効率を増加させ得る。この結果、界面で反射する光ビームが少なくなり、迷光やゴースト画像の発生が抑制または低減され得る。
【0093】
Rがエアリー円盤の半径であり、λが光の波長であり、nが画像スペースの屈折率であり、θが入射開口角である式R=(0.61*λ)/(n*sinθ)より、整合媒体の屈折率が大きくなるほど、生成されるエアリー円盤が小さくなるため結像の解像度を向上させ得ることがわかる。更に、結像側で屈折率が大きくなるため、比較的小さい開口角で大きな開口数が得られるとともに、周辺光ビームの屈曲角を小さくできるため、設計の難易度が下がることとなる。更にまた、画像源がビーム成形素子と一体化されているため、光学構造がよりコンパクトになり、設置や調整がより簡単になり、よりシステム化される。
【0094】
図8は、本願によるAR装置の画像投射源の別の例を示す。本例において、画像源12Aとビーム成形素子14Aとは、面嵌めの態様において一体化されている。画像源12Aとビーム成形素子14Aは、互いに嵌合することができる相補的な接触面を有している。一例として、ビーム成形素子14Aを形成するレンズが、画像源12Aに接着される。これに代えて、画像源12Aとビーム成形素子14Aとを、当業者に知られている他の好適な方法により互いにしっかりと嵌合させてもよい。
【0095】
このような構成によれば、画像源12Aから放射された光源光ビームは、ビーム成形素子14Aを形成するレンズに直接入射する。このような構成は、図7について説明した全ての利点を提供することができる。また、このような構成において、画像源はレンズに直接取り付けられるため、光学構造をよりコンパクトに、小さく、軽量にすることができるとともに、快適に装着することができる。よりコンパクトな構成により、設置や調整が簡単となる。
【0096】
本願による画像投射源の好適な例を、図7および8を参照して説明した。当業者には、これらが本願による画像投射源の例の全てではないことが理解されるべきである。本願によれば、画像源がビーム成形素子と一体化されているような実施形態も実現可能である。当業者には、本願によれば、画像投射源はどのように構成されていてもどのような種類の機能を有していても、光路モジュールと組み合わせて使用できることが理解されるべきである。本願による画像投射源と組み合わせて使用される光路モジュールは、任意の個数の光学素子、任意の機能を有する光学素子、実現可能に配置された光学素子の任意の組み合わせを備え得る。
【0097】
本願の任意の実施形態によれば、画像投射源は、単一部品として互いに一体化された画像源とビーム成形素子とを備える。画像投射源から放射された光ビームは、ビーム成形素子により成形されて画像源から出射する。任意選択的に、ビーム成形素子は、画像源に直接的に一体化される。例えば、ビーム成形素子は、画像源に面嵌めの態様において接着される。任意選択的に、ビーム成形素子は、画像源に中間整合部を介して間接的に一体化され得る。任意選択的に、中間整合部は、液体媒体、液晶媒体、半固体媒体および固体媒体からなる群から選択される少なくとも1つから形成される。
【0098】
任意選択的に、中間整合部は、水、エチルアルコール、ガラス、および樹脂からなる群から選択されるいずれか1つにより形成される。
【0099】
任意選択的に、中間整合部は、液体媒体および/または液晶媒体により形成され、画像投射源は、中間整合部を形成する媒体が画像源とビーム成形素子との間で封止されるシール構造をも備える。
【0100】
任意選択的に、中間整合部の媒体は、1~2.7の屈折率を有する。
【0101】
任意選択的に、ビーム成形素子は、正レンズとして構成される、または負レンズとして構成される、または正レンズと負レンズとの組合せとして構成される。
【0102】
図9は、本願の実施形態によるスプリッタ22の拡大図である。スプリッタは、スプリッタ基板22aと、偏光フィルム22bと、偏光ビームスプリットフィルム22cとを当該順序で備える三層構造である。スプリッタ基板22aは、当技術分野で周知の光スプリッタ、例えば非偏光ビームスプリッタとすることができる。偏光フィルム22bは、第1方向に偏光した偏光を透過させるが、第1方向に対して垂直な第2方向に偏光した偏光を吸収するフィルムである。偏光ビームスプリットフィルム22cは、第1方向に偏光した偏光を透過させるとともに、第2方向に偏光した偏光を反射するフィルムである。
【0103】
図2のスプリッタ21に代えてスプリッタ22を使用した代替実施形態において、画像投射源から放射された光L10がスプリッタ22の偏光ビームスプリットフィルム22c(ビームスプリット側)に入射すると、画像源から放射された光L10のP偏光成分L10pは偏光ビームスプリットフィルム22cを透過し、更に偏光フィルム22bを透過してスプリッタ22の透過側から出射する。画像源から放射された光L10のS偏光成分L10sは、反射して1/4波長板に向かう。1/4波長板を通過する際に、S偏光成分L10sは、円偏光に変換される。セミリフレクタ30に到達すると、円偏光は部分的にそれを透過し、部分的にそれで反射される。反射した円偏光は、再度1/4波長板を通過して、P偏光成分L10pに変換される。続いて、P偏光成分L10pは、スプリッタ22の偏光ビームスプリットフィルム22c(ビームスプリット側)に入射し、当該フィルムおよび偏光フィルム22bを通過して人の目40に見える。その一方で、周囲光L30が、セミリフレクタ30および1/4波長板を当該順序で通過し、そして部分的にスプリッタ・アセンブリ22を通過して人の目40に見える。更に、不要光L20がスプリッタ22のスプリッタ基板22a(透過側)に入射すると、不要光のS偏光成分は偏光フィルム22bに吸収され、不要光のP偏光成分は偏光フィルム22bを通過し、次いで偏光ビームスプリットフィルム22cを通過する。したがって、上述の光学系のスプリッタに代えてスプリッタ22を使用した場合、理想的には、不要光L20の光成分が透過して人の目40に向かうことがあり得ないため、ユーザの観察に不要な光の影響が完全に排除されるか弱められ、光学系全体の画質が向上する。
【0104】
代替実施形態において、スプリッタ基板22aと偏光フィルム22bの位置は交換可能である。更なる代替実施形態においては、スプリッタ基板22aを省いてもよい。
【0105】
実際の製品では、スプリッタ基板またはフィルムそれ自体が厚さを有するため、スプリッタ・アセンブリ22への入射時に、画像源から放射される光L10の全てが偏光フィルム22bおよび偏光ビームスプリットフィルム22cにより変調され得るわけではない。すなわち、画像源から放射された光L10の成分のうちのごく一部が、スプリッタ・アセンブリ22の透過側を透過する可能性がある。透過側の空気との界面を原因として、画像源から放射された光L10の成分のごく一部は、反射して偏光フィルム22bおよび偏光ビームスプリットフィルム22cに向かう。最終的に、画像源から放射された光L10の成分のこのごく一部は、光学系全体の結像に、人の目40に見える画質を損なう「ゴーストの干渉」を引き起こす可能性がある。
【0106】
図10は、本願の別の実施形態によるスプリッタ23を示す拡大図である。スプリッタ23は、スプリッタ基板23aと、1/4位相差フィルム23bと、偏光フィルム23と、偏光ビームスプリットフィルム23dとを当該順序で備える四層構造である。例えば、これらは単一部品として順次一体に接着されている。偏光ビームスプリットフィルム23dは、スプリッタ23のビームスプリット側を規定し、スプリッタ基板23aはスプリッタ23の透過側を規定している。スプリッタ23において、ビームスプリット側と透過側とは1/4位相差フィルム23bおよび偏光フィルム23cにより分離されている。
【0107】
更に、図10に示すように、画像投射源100から放射された光L10がスプリッタ23の偏光ビームスプリットフィルム23d(ビーム偏光側)に入射すると、画像源から放射された光L10のP偏光成分L10pは、1/4位相差フィルム23bにより円偏光に変換される。円偏光がスプリッタ基板23a内を空気との界面側(透過側)に伝搬すると、円偏光の一部が界面で反射してスプリッタ基板23aの内部において1/4位相差フィルム23bに向かう。これは、空気と基板の媒体パラメータが界面において互いに明らかに異なるためである。1/4位相差フィルム23bを再度通過するとき、反射した円偏光は、その偏光方向が90°変化するためS偏光成分に変換されるであろう。続いて、S偏光成分は、隣接する偏光フィルム23cに吸収される。したがって、「ゴーストの干渉」を低減または解消することができる。図10に示す実施形態において、スプリッタ23の透過側からビームスプリット側に向かって、スプリッタ基板23a、1/4位相差フィルム23b、偏光フィルム23c、および偏光ビームスプリットフィルム23dが当該順序で配置されている。代替実施形態において、スプリッタ23の透過側からビームスプリット側に向かって、1/4位相差フィルム、スプリッタ基板、偏光フィルム、および偏光ビームスプリットフィルムが当該順序で配置され得る。代替実施形態において、スプリッタ23の透過側からビームスプリット側に向かって、1/4位相差フィルム、偏光フィルム、スプリッタ基板、および偏光ビームスプリットフィルムが当該順序で配置され得る。代替実施形態において、スプリッタ23の透過側からビームスプリット側に向かって、1/4位相差フィルム、偏光フィルム、偏光ビームスプリットフィルム、およびスプリッタ基板が当該順序で配置され得る。代替実施形態において、スプリッタ基板を省いてもよい。
【0108】
本願の任意採択的な実施形態によれば、
画像投射源と、
画像投射源に隣接するビームスプリット側と画像投射源の反対側を向く透過側とを有するスプリッタと、
ビームスプリット側に隣接する波長板と、
セミリフレクタと、
を備え、
スプリッタは、画像投射源から放射された光がビームスプリット側に非垂直方向に入射し得るとともに、少なくとも部分的に反射して波長板に向かい得るように配置され、
セミリフレクタは、反射光路において波長板の下流に配置される拡張現実(AR)装置のための光学系であって、
スプリッタは、画像投射源から放射された光がビームスプリット側に入射すると、第1方向に偏光した偏光成分がスプリッタを通過して透過側を透過するように、かつ第1方向に対して垂直な第2方向に偏光した偏光成分がビームスプリット側で反射して波長板に向かうように構成され、
スプリッタは、光が透過側に入射すると、光の第1方向に偏光した偏光成分がスプリッタを通過してビームスプリット側から透過し得るように、かつ光の第2方向に偏光した偏光成分がスプリッタに吸収され得るようにも構成される光学系が提供される。波長板は、好適には1/4波長板である。したがって、画像源から放射されて人の目に入射する光のエネルギーを増加させることがでる。また人の目に入射する不要光を、周囲光を除いて遮断または低減することができる。これにより、画質および鮮明度を向上させ得るとともに、AR装置の消費電力が削減され得る。
【0109】
任意選択的に、スプリッタは、偏光ビームスプリットフィルムと偏光フィルムとを備える。偏光ビームスプリットフィルムは、第1方向に偏光した光を透過させるとともに、第2方向に偏光した光を反射するように構成される。偏光フィルムは、第1方向に偏光した光を透過させるとともに、第2方向に偏光した光を吸収するように構成される。画像投射源から放射された光の方向から見て、偏光ビームスプリットフィルムは、偏光フィルムの上流側に配置されてビームスプリット側を規定する。このようにして、第2方向に偏光した偏光成分は、偏光ビームスプリットフィルムで必ず反射し、次いで波長板または1/4波長板およびセミリフレクタで処理され、そして人の目に入射して結像することが保証される。
【0110】
任意選択的に、透過側は、光のエネルギー利用効率を高めるように偏光フィルムにより規定される。
【0111】
任意選択的に、スプリッタの全体強度を向上させるように、スプリッタは、偏光ビームスプリットフィルムと偏光フィルムとの間に配置されたスプリット基板をも備える。
【0112】
任意選択的に、スプリッタの全体強度を向上させるように、スプリッタはスプリッタ基板をも備える。偏光フィルムは、スプリッタ基板と偏光ビームスプリットフィルムとの間に配置される。透過側は、スプリッタ基板により規定される。
【0113】
任意選択的に、スプリッタの全体強度を向上させるように、スプリッタはスプリッタ基板をも備える。偏光ビームスプリットフィルムは、スプリッタ基板と偏光フィルムとの間に配置される。透過側は、偏光フィルムにより規定される。
【0114】
任意選択的に、「ゴーストの干渉」の影響を排除し、かつ光のエネルギー利用効率を高めるように、スプリッタは位相差フィルムをも備える。偏光フィルムは、位相差フィルムと偏光ビームスプリットフィルムとの間に配置される。
【0115】
任意選択的に、「ゴーストの干渉」の影響を排除し、かつ光のエネルギー利用効率を高めるように、ビームスプリット側は、偏光ビームスプリットフィルムにより規定され、透過側は位相差フィルムにより規定される。
【0116】
任意選択的に、「ゴーストの干渉」の影響を排除し、かつスプリッタ構造の全体強度を向上させるように、スプリッタはスプリッタ基板をも備える。位相差フィルムおよび偏光フィルムは、スプリッタ基板と偏光ビームスプリットフィルムとの間に配置される。透過フィルムはスプリッタ基板により規定される。
【0117】
任意選択的に、「ゴーストの干渉」の影響を排除し、かつスプリッタ構造の全体強度を向上させるように、スプリッタはスプリッタ基板をも備える。スプリッタ基板および偏光フィルムは、位相差フィルムと偏光ビームスプリットフィルムとの間に配置される。透過側は、位相差フィルムにより規定される。
【0118】
任意選択的に、「ゴーストの干渉」の影響を排除し、かつスプリッタ構造の全体強度を向上させるように、スプリッタはスプリッタ基板をも備える。偏光ビームスプリットフィルムは、偏光フィルムとスプリッタ基板との間にある。
【0119】
任意選択的に、画像投射源は、光を放射するための平面状の画像源を備える。スプリッタのビームスプリット側が位置する平面は、画像源の法線に対して第1角度をなし、この第1角度は、11°と79°との間、好適には20°と70°との間、より好適には30°と60°との間、より好適には40°と55°との間、最も好適には40°と50°との間の値を有するか、および/または、スプリッタのビームスプリット側が位置する平面は、セミリフレクタの光軸に対して第2角度をなし、0<第2角度<90°であり、かつ第2角度は、第1角度-10°と第1角度+10°との間である。
【0120】
任意選択的に、系全体の体積を小さくするように、波長板は、セミリフレクタと一体化される。更に、一体化することにより反射界面の個数を削減することができるため、光学系全体で発生する迷光が減少したり、「ゴーストの干渉」の影響を弱めたりすることができ、光学系のコントラストが向上する。
【0121】
図11は、本願の実施形態によるセミリフレクタ300Aを概略的に示す断面図である。セミリフレクタ300Aは、本願による光学系において代替的に使用可能であり、透明基板301と、透明基板301の遠位側表面に付着されたセミ反射フィルム302と、を備えている。
【0122】
従来のセミリフレクタの場合、セミ反射フィルムは、通常、基板の近位側表面に付着されている。したがって、図示の光学系の場合、画像源から放射されて人の目40に入射する光またはその成分は、主として1回の反射作用を受けるであろう。しかしながら、図11に示すセミリフレクタ300Aの場合、画像源から放射されて人の目40に入射する光またはその成分は、少なくとも2回の屈折作用および1回の反射作用を受けることができる。したがって、本発明の技術手段によれば、光学系全体をより柔軟に設計することができる。例えば、設計者は、基板301の厚さや材料特性を変更し、基板301の近位側表面の形態を再形成することにより光の屈折を再設計することで、光学系全体の光学性能を変更することができる。更に、基板301内での光の伝搬は反射および屈折に関連するため、最終屈折での光は視野拡大という効果をもたらすので、人の目における最終結像結果が容易となる。
【0123】
図12は、本願の別の実施形態によるセミリフレクタ310を概略的に示す。セミリフレクタ300と同様に、セミリフレクタ310は、透明基板301と、透明基板301の遠位側表面に付着されたセミ反射フィルム302と、を備えている。更に、セミリフレクタ310は、透明基板301の近位側表面に付着された反射防止フィルム303をも備えている。反射防止フィルムは、基板に入射した光のエネルギーを増加させ、屈折および反射を介して変調される光のエネルギー利用効率を高めるために使用される。
【0124】
図13は、本願の別の実施形態によるセミリフレクタ400を概略的に示す。セミリフレクタ400は、1/4波長板401と、1/4波長板401の遠位側表面に付着されたセミ反射フィルム402と、を備えている。すなわち、本実施形態において、1/4波長板401は、セミリフレクタ400の基板である。例えば、1/4波長板401は、光学プラスチック材料、光学ガラス、光学結晶等の特定の複屈折材料から作製され得る。
【0125】
本願の一態様によれば、拡張現実(AR)装置のための光学系が提供され、当該光学系は、
画像投射源と、
スプリッタであって、画像投射源に隣接するビームスプリット側と画像投射源の反対側を向く透過側とを有するスプリッタと、
セミリフレクタであって、前記セミリフレクタは、ビームスプリット側に隣接して配置されるとともに、画像投射源から放射された光がビームスプリット側で反射する光路においてビームスプリット側の下流に配置され、前記スプリッタは、画像投射源から放射された光がビームスプリット側により部分的に反射して前記セミリフレクタに向かい得るように配置される、前記セミリフレクタと、
を備え、
前記セミリフレクタは、基板と、基板の遠位側表面上のセミ反射フィルムと、を備えている。
【0126】
セミ反射フィルムは、セミリフレクタの基板の遠位側表面の側にあるため、画像源から放射された光は、人の目に入射して結像する前に、セミリフレクタで2回の屈折作用および1回の反射作用を受ける。このようにして、光学系全体の設計自由度が高められる。光学系全体の設計自由度を高めるように調整可能なパラメータの個数が増加され得る。一方で、視野を拡大できるため、人の目における最終結像結果が容易となる。
【0127】
任意選択的に、波長板が、スプリッタとセミリフレクタとの間に配置される。波長板は、好適には1/4波長板である。波長板または1/4波長板は、結像の明るさおよびコントラストを改善して装置の消費電力を削減するために使用される。
【0128】
任意選択的に、セミリフレクタの基板は波長板であり、好適には、波長板は1/4波長板である。波長または1/4波長板をセミリフレクタに一体化することにより、セミリフレクタの体積が小さくなるため、光学系全体の機械的構造部をより柔軟に設計することができる。更に、一体化することにより反射界面の個数を減らすことができるため、光学系全体で発生する迷光が減少したり、「ゴースト」の影響を弱めたりすることができ、光学系のコントラストが向上する。
【0129】
任意選択的に、反射防止フィルムが、基板の近位側表面に付着される。反射防止フィルムは、基板に入射する光のエネルギーを増加させ、屈折および反射によって光を変調する際のエネルギー利用効率を高めるために使用される。
【0130】
任意選択的に、スプリッタは、画像投射源から放射された光がビームスプリット側に入射すると、第1方向に偏光した偏光成分がスプリッタを通過して透過側を透過するように、かつ第1方向に対して垂直な第2方向に偏光した偏光成分がビームスプリット側により反射して波長板に向かうように構成される。スプリッタは、光が透過側に入射すると、光の第1方向に偏光した偏光成分がスプリッタを通過してビームスプリット側から透過し得るように、かつ光の第2方向に偏光した偏光成分がスプリッタに吸収され得るようにも構成される。このようにして、周囲光を除く不要光が人の目に入射することが妨げられ、画質および鮮明度が改善され得る。AR装置の消費電力が削減され得る。
【0131】
任意選択的に、スプリッタは、偏光ビームスプリットフィルムと偏光フィルムとを備える。偏光ビームスプリットフィルムは、第1方向に偏光した光を透過させるとともに、第2方向に偏光した光を反射するように構成される。偏光フィルムは、第1方向に偏光した光を透過させるとともに、第2方向に偏光した光を吸収するように構成される。画像投射源から放射された光の方向から見て、偏光ビームスプリットフィルムは、偏光フィルムの上流側に配置されてビームスプリット側を規定する。このようにして、第2方向に偏光した偏光成分は、偏光ビームスプリットフィルムで必ず反射し、次いで波長板または1/4波長板およびセミリフレクタで処理されて最終的に人の目に入射して結像することが保証される。任意選択的に、波長板の異常軸および通常軸は、それぞれ第1および第2方向に対する角度を含むように構成され、この角度は、1°と89°との間、好適には30°と60°との間、より好適には45°である。
【0132】
任意選択的に、画像投射源は、光を放射するための平面状の画像源を備える。スプリッタのビームスプリット側が位置する平面は、画像源の法線に対して第1角度をなし、この第1角度は、11°と79°との間、好適には20°と70°との間、より好適には30°と60°との間、より好適には40°と55°との間、最も好適には40°と50°との間の値を有するか、および/または、スプリッタのビームスプリット側が位置する平面は、セミリフレクタの光軸に対して第2角度をなし、0<第2角度<90°であり、かつ第2角度は、第1角度-10°と第1角度+10°との間である。このようにして、スプリッタの利用効率を最大とすることができる。
【0133】
任意選択的に、セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタである。
【0134】
任意選択的に、セミリフレクタは、±150度、好適には±100度の屈折力を有する。このようにして、装置を使用するユーザの快適さを損ねないようにすることができる。
【0135】
本願の別の態様によれば、上述の光学系用のセミリフレクタが提供される。セミリフレクタは、基板と、基板の遠位側表面に配置されたセミ反射フィルムと、を備える。このようにして、光学系全体をより柔軟に設計することができる。光学系全体の設計自由度を高めるように調整可能なパラメータの個数が増加され得る。一方で、視野を拡大できるため、人の目における最終結像結果が容易となる。
【0136】
任意選択的に、結像の明るさおよびコントラストを改善し、更に装置の消費電力を削減するように、セミリフレクタの基板は波長板であり、好適には、波長板は1/4波長板である。
【0137】
任意選択的に、基板に入射する光のエネルギーを増加させ、屈折および反射によって光を変調する際のエネルギー利用効率を高めるように、反射防止フィルムが基板の近位側表面に付着される。
【0138】
任意選択的に、セミリフレクタは湾曲したセミリフレクタである。
【0139】
任意選択的に、セミリフレクタは、±150度、好適には±100度の屈折力を有する。
【0140】
本願に文脈において、種々の実施形態を互いに任意に組み合わせることができる。本願の具体的ないくつかの実施形態について説明したが、これらは説明のみを目的として挙げたものであり、本願の範囲を制限するものとは決してみなされない。本願の制振および範囲から逸脱することなく、様々な置換、変更および代替が想定され得る。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13