(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 7/08 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
G01M7/08 A
(21)【出願番号】P 2022017846
(22)【出願日】2022-02-08
(62)【分割の表示】P 2017219701の分割
【原出願日】2017-11-15
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2017036059
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391046414
【氏名又は名称】国際計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】宮下 博至
(72)【発明者】
【氏名】村内 一宏
(72)【発明者】
【氏名】羽石 清明
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202974614(CN,U)
【文献】米国特許第05929348(US,A)
【文献】特開平07-271290(JP,A)
【文献】特開2004-162884(JP,A)
【文献】特表2012-532289(JP,A)
【文献】米国特許第06609409(US,B1)
【文献】特開2015-010864(JP,A)
【文献】特開平09-049780(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0106173(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102010002667(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体が取り付けられる、所定の方向に可動なテーブルと、
前記テーブルを駆動するための動力を発生可能な駆動モジュールと、
前記動力を伝達可能な歯付ベルトと、
前記駆動モジュールを制御可能な制御部と、
前記テーブルを前記所定の方向に押し出すプッシャと、
前記テーブル及び前記プッシャを前記所定の方向に移動可能に支持するリニアガイドと、
前記テーブルとの衝突により前記供試体に与える衝撃を発生する衝撃発生部と、
を備え、
前記歯付ベルトが、
前記テーブル及び前記プッシャのそれぞれに解除可能に固定可能であり、
前記テーブル及び前記プッシャのいずれか一方に固定され、
前記歯付ベルトが前記テーブルに固定されているときは、前記駆動モジュールが前記供試体に与える衝撃を発生して、該衝撃が前記歯付ベルトにより前記テーブルに伝達され、
前記歯付ベルトが前記プッシャに固定されているときは、前記プッシャによって押し出された前記テーブルが前記衝撃発生部と衝突することにより前記供試体に与える衝撃が発生する、
試験装置。
【請求項2】
前記制御部が、自動車衝突時と同程度の衝撃を発生するように前記駆動モジュールを制御可能である、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記駆動モジュールが電動機を備えた、
請求項1又は請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記電動機は、
定格出力が7kW以上であり、
慣性モーメントが0.02kg・m
2以下であり、
前記制御部が、前記供試体に与えるべき衝撃を発生するように前記駆動モジュールを制御可能であり、
20Gを超える加速度の衝撃を、前記駆動モジュールによって発生し、前記歯付ベルトによって前記テーブルに伝達することが可能に構成された、
請求項3に記載の試験装置。
【請求項5】
前記電動機の慣性モーメントが、0.01kg・m
2以下である、
請求項3又は請求項4に記載の試験装置。
【請求項6】
一つ以上の前記駆動モジュールに、合わせて複数の前記電動機が備わり、
前記制御部が、光ファイバ通信を用いて、前記複数の電動機を同期制御可能に構成された、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項7】
前記歯付ベルトが巻掛けられた一対の歯付プーリを備え、
前記一対の歯付プーリの少なくとも一方が、前記駆動モジュールによって駆動される駆動プーリである、
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項8】
互いに平行に並べられた複数の前記歯付ベルトを備え、
前記複数の歯付ベルトによって前記テーブルに衝撃を伝達可能である、
請求項7に記載の試験装置。
【請求項9】
前記複数の歯付ベルトの有効長さが同一である、
請求項
8に記載の試験装置。
【請求項10】
前記複数の歯付ベルトをそれぞれ駆動する複数の前記駆動モジュールを備え、
前記複数の駆動モジュールのうち少なくとも二つが前記駆動プーリの軸方向に並べて配置された、
請求項
8又は請求項
9に記載の試験装置。
【請求項11】
前記複数の歯付ベルトをそれぞれ駆動する複数の前記駆動モジュールを備え、
前記複数の駆動モジュールのうち少なくとも二つが前記所定の方向に並べて配置された、
請求項
8又は請求項
9に記載の試験装置。
【請求項12】
前記駆動モジュールが、
前記電動機により駆動されるシャフトと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
前記複数の歯付ベルトのうち二つをそれぞれ駆動する、二つの前記駆動プーリ
と、
を備え、
前記二つの駆動プーリが、一本の前記シャフトに取り付けられた、
請求項
8から請求項
11のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項13】
前記駆動モジュールが、
前記電動機により駆動されるシャフトと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
を備え、
前記駆動プーリが、前記シャフトに取り付けられた、
請求項7
から請求項11のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項14】
前記駆動モジュールが、一対の前記電動機を備え、
前記シャフトの両端が、前記一対の電動機にそれぞれ連結された、
請求項
12又は請求項13に記載の試験装置。
【請求項15】
複数の前記駆動モジュールを備え、
前記一対の歯付プーリが、いずれも前記駆動プーリであり、
前記複数の駆動モジュールが、
前記一対の歯付プーリの一方を駆動する第1駆動モジュールと、
前記一対の歯付プーリの他方を駆動する第2駆動モジュールと、
を含む、
請求項7から請求項14のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項16】
前記歯付ベルトを前記テーブルに解除可能に固定するベルトクランプを備え、
前記歯付ベルトが、
長さ方向に離れた2箇所の固定位置において前記テーブルに固定され、
少なくとも1箇所の前記固定位置において、該歯付ベルトの有効長さを調整可能に固定された、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項17】
前記衝撃発生部が、
固定部と、
前記テーブルが衝突可能な位置に配置された衝撃部と、
前記固定部と前記衝撃部との間で衝撃を緩和する緩衝部と、を備えた、
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項18】
前記緩衝部が、
前記衝撃部に取り付けられた可動フレームと、
前記所定の方向において前記可動フレームを間に挟むように配置され、前記固定部に取り付けられた、一対のアームと、
前記可動フレームと各アームとの間に挟み込まれたばねと、を備えた、
請求項17に記載の試験装置。
【請求項19】
前記テーブルが、前記衝撃発生部に向かって突出した第1衝突柱を備え、
前記衝撃発生部が、前記第1衝突柱に向かって突出した第2衝突柱を備え、
前記第1衝突柱及び前記第2衝突柱の少なくとも一方が、ダンパ及びばねの少なくとも一つを備えた緩衝装置である、
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項20】
前記リニアガイドが、
前記所定の方向に延びたレールと、
転動体を介して前記レール上を走行可能なキャリッジと、
を備え、
前記キャリッジが、
前記テーブルに取り付けられた第1キャリッジと、
前記プッシャに取り付けられた第2キャリッジと、を含む、
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項21】
前記転動体が、窒化ケイ素、炭化ケイ素及びジルコニアのいずれかを含むセラミックス材料から形成された、
請求項20に記載の試験装置。
【請求項22】
前記歯付ベルトがカーボン心線を備えた、
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項23】
前記歯付ベルトがエラストマーから形成された本体部を備え、
前記エラストマーが、硬質ポリウレタン及び水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムのいずれかを含む、
請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体に所定の波形の衝撃を与えることが可能な試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車衝突時の乗員の安全を評価するために衝突試験が行われている。衝突試験には、実車を所定の速度でバリアに衝突させる実車衝突試験(破壊試験)や、供試体を取り付けたスレッド(台車)に対して実車衝突時と同程度の衝撃(加速度パルス)を与える衝突模擬試験(スレッド試験)がある。
【0003】
特許文献1には、衝突模擬試験を行う装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、水平方向に移動自在に支持されたスレッドの前端に発射装置のピストンの先端を接触させた状態で、発射装置のアキュムレータに蓄積された油圧によってピストンを打ち出すことにより、スレッドに取り付けられた供試体に作用する衝撃を非破壊的に再現するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置は、ピストンの打ち出しストロークの設定により、衝撃の程度を実車の衝突と同程度に調整することはできるが、加速度の波形を制御することはできない。そのため、精度の高い試験を行うことができなかった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、供試体に制御された波形の衝撃を与えることが可能な試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る試験装置は、供試体が取り付けられる、所定の方向に可動なテーブルと、テーブルを駆動するための動力を発生可能な駆動モジュールと、動力を伝達可能な歯付ベルトと、駆動モジュールを制御可能な制御部と、を備え、制御部が、供試体に与えるべき衝撃を発生するように駆動モジュールを制御可能であり、歯付ベルトが、駆動モジュールが発生した衝撃をテーブルに伝達する。
【0008】
上記の試験装置において、歯付ベルトが巻掛けられた一対の歯付プーリを備え、一対の歯付プーリの少なくとも一方が、駆動モジュールによって駆動される駆動プーリである構成としてもよい。
【0009】
上記の試験装置において、歯付ベルトをテーブルに解除可能に固定するベルトクランプを備え、歯付ベルトが、長さ方向に離れた2箇所の固定位置においてテーブルに固定され、少なくとも1箇所の固定位置において、歯付ベルトの有効長さを調整可能に固定された構成としてもよい。
【0010】
上記の試験装置において、駆動モジュールが、電動機を備えた構成としてもよい。
【0011】
上記の試験装置において、電動機の慣性モーメントが、0.02kg・m2以下若しくは0.01kg・m2以下である構成としてもよい。
【0012】
上記の試験装置において、一つ以上の駆動モジュールに、合わせて複数の電動機が備わり、制御部が、光ファイバ通信を用いて、複数の電動機を同期制御可能に構成された構成としてもよい。
【0013】
上記の試験装置において、駆動モジュールが、電動機により駆動されるシャフトと、シャフトを回転可能に支持する軸受と、を備え、駆動プーリが、シャフトに取り付けられた構成としてもよい。
【0014】
上記の試験装置において、駆動モジュールが、一対の電動機を備え、シャフトの両端が、一対の電動機にそれぞれ連結された構成としてもよい。
【0015】
上記の試験装置において、互いに平行に並べられた複数の歯付ベルトを備え、複数の歯付ベルトによってテーブルに衝撃を伝達可能であり、複数の歯付ベルトの有効長さが同一である構成としてもよい。
【0016】
上記の試験装置において、複数の歯付ベルトをそれぞれ駆動する複数の駆動モジュールを備え、複数の駆動モジュールのうち少なくとも二つが駆動プーリの軸方向に並べて配置された構成としてもよい。
【0017】
上記の試験装置において、複数の歯付ベルトをそれぞれ駆動する複数の駆動モジュールを備え、複数の駆動モジュールのうち少なくとも二つが所定の方向に並べて配置された構成としてもよい。
【0018】
上記の試験装置において、駆動モジュールが、複数の歯付ベルトのうち二つをそれぞれ駆動する、二つの駆動プーリを備え、二つの駆動プーリが、1本のシャフトに取り付けられた構成としてもよい。
【0019】
上記の試験装置において、複数の駆動モジュールを備え、一対の歯付プーリが、いずれも駆動プーリであり、複数の駆動モジュールが、一対の歯付プーリの一方を駆動する第1駆動モジュールと、一対の歯付プーリの他方を駆動する第2駆動モジュールと、を含む構成としてもよい。
【0020】
上記の試験装置において、テーブルを所定の方向に押し出すプッシャと、テーブル及びプッシャを所定の方向に移動可能に支持するリニアガイドと、テーブルとの衝突により供試体に与える衝撃を発生する衝撃発生部と、を備え、歯付ベルトが、テーブル及びプッシャのそれぞれに固定可能であり、テーブル及びプッシャのいずれか一方に解除可能に固定され、歯付ベルトがテーブルに固定されているときは、駆動モジュールが供試体に与える衝撃を発生して、衝撃が歯付ベルトによりテーブルに伝達され、歯付ベルトがプッシャに固定されているときは、プッシャによって押し出されたテーブルが衝撃発生部と衝突することにより供試体に与える衝撃が発生する構成としてもよい。
【0021】
上記の試験装置において、衝撃発生部が、固定部と、テーブルが衝突可能な位置に配置された衝撃部と、固定部と衝撃部との間で衝撃を緩和する緩衝部と、を備えた構成としてもよい。
【0022】
上記の試験装置において、緩衝部が、衝撃部に取り付けられた可動フレームと、所定の方向において可動フレームを間に挟むように配置され、固定部に取り付けられた、一対のアームと、可動フレームと各アームとの間に挟み込まれたばねと、を備えた構成としてもよい。
【0023】
上記の試験装置において、テーブルが、衝撃発生部に向かって突出した第1衝突柱を備え、衝撃発生部が、第1衝突柱に向かって突出した第2衝突柱を備え、第1衝突柱及び第2衝突柱の少なくとも一方が、ダンパ及びばねの少なくとも一つを備えた緩衝装置である構成としてもよい。
【0024】
上記の試験装置において、リニアガイドが、所定の方向に延びたレールと、転動体を介してレール上を走行可能なキャリッジと、を備え、キャリッジが、テーブルに取り付けられた第1キャリッジと、プッシャに取り付けられた第2キャリッジと、を含む構成としてもよい。
【0025】
上記の試験装置において、テーブルを所定の方向に移動可能に支持するリニアガイドを備え、リニアガイドが、所定の方向に延びたレールと、転動体を介してレール上を走行可能なキャリッジと、を備え、キャリッジがテーブルに固定された構成としてもよい。
【0026】
上記の試験装置において、転動体が、窒化ケイ素、炭化ケイ素及びジルコニアのいずれかを含むセラミックス材料から形成された構成としてもよい。
【0027】
上記の試験装置において、歯付ベルトがエラストマーから形成された本体部を備え、エラストマーが、硬質ポリウレタン及び水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムのいずれかを含む構成としてもよい。
【0028】
上記の試験装置において、歯付ベルトがカーボン心線を備えた構成としてもよい。
【0029】
上記の試験装置において、制御部が、自動車衝突時と同程度の衝撃をテーブルに与えるように駆動モジュールを制御可能である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の実施形態によれば、供試体に制御された波形の衝撃を与えることが可能な試験装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る衝突模擬試験装置の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る衝突模擬試験装置の平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る衝突模擬試験装置の正面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る衝突模擬試験装置の側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の試験部の内部構造を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の駆動モジュールの側面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態のベルトクランプの分解斜視図である。
【
図9】制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る衝突模擬試験装置の斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る衝突模擬試験装置の平面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る衝突模擬試験装置の正面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る衝突模擬試験装置の側面図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る衝突模擬試験装置の斜視図である。
【
図16】本発明の第4実施形態のサーボモータユニットの側面図である。
【
図17】本発明の第5実施形態のサーボモータの側断面図である。
【
図18】本発明の第6実施形態に係る衝突模擬試験装置の平面図である。
【
図19】本発明の第7実施形態に係る衝突模擬試験装置の平面図である。
【
図20】本発明の第7実施形態に係る衝突模擬試験装置の正面図である。
【
図21】本発明の第7実施形態に係る衝突模擬試験装置の側面図である。
【
図22】本発明の第7実施形態に係る衝突模擬試験装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する構成要素には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る衝突模擬試験装置1000の斜視図である。また、
図2、
図3及び
図4は、それぞれ衝突模擬試験装置1000の平面図、正面図及び側面図である。
【0034】
衝突模擬試験装置1000は、自動車等(鉄道車両、航空機、船舶を含む。)の衝突時に自動車等や乗員、自動車等の装備品等に加わる衝撃を再現する装置である。
【0035】
衝突模擬試験装置1000は、自動車の車両のフレームに見立てたテーブル1240を備えている。テーブル1240には、例えば乗員のダミーを載せたシートや電気自動車用の高電圧バッテリー等の供試体が取り付けられる。設定された加速度(例えば、衝突時に車両のフレームに加わる衝撃に相当する加速度)でテーブル1240が駆動されると、供テーブル1240に取り付けられた試体に実際の衝突時と同様の衝撃が加わる。このときに供試体が受けた損傷(あるいは、供試体に装着された加速度センサ等の計測結果から予測される損傷)によって、乗員の安全が評価される。
【0036】
本実施形態の衝突模擬試験装置1000は、テーブル1240を水平方向の1方向のみに駆動可能に構成されている。
図1に座標軸で示すように、テーブル1240の可動方向をX軸方向、X軸方向と垂直な水平方向をY軸方向、鉛直方向をZ軸方向と定義する。また、模擬する車両の進行方向を基準に、
図2における左方向(X軸正方向)を前方、右方向(X軸負方向)を後方、上方(Y軸負方向)を右方、下方(Y軸正方向)を左方と呼ぶ。また、テーブル1240が駆動されるX軸方向を「駆動方向」と呼ぶ。なお、衝突模擬試験においては、車両の進行方向とは逆向き(すなわち後方)に大きな加速度がテーブル1240に加えられる。
【0037】
衝突模擬試験装置1000は、テーブル1240を備えた試験部1200と、テーブル1240を駆動する前方駆動部1300及び後方駆動部1400と、各駆動部1300、1400が発生する回転運動をX軸方向の並進運動に変換してテーブル1240に伝達する4つのベルト機構1100(ベルト機構1100a、1100b、1100c、1100d)と、制御システム1000a(
図9)を備えている。
【0038】
試験部1200は、衝突模擬試験装置1000のX軸方向における中央部に配置され、前方駆動部1300及び後方駆動部1400は、試験部1200の前方及び後方にそれぞれ隣接して配置されている。
【0039】
図5は、試験部1200及びベルト機構1100の構造を示す斜視図である。なお、説明の便宜のため、
図5においては、試験部1200の構成要素であるテーブル1240及びベースブロック1210(後述)の図示が省略されている。
【0040】
試験部1200は、テーブル1240の他に、ベースブロック1210(
図1)と、ベースブロック1210上に取り付けられたフレーム1220と、フレーム1220上に取り付けられた一対のリニアガイドウェイ1230(以下、「リニアガイド1230」と略記する。)を備えている。一対のリニアガイド1230によって、テーブル1240がX軸方向(駆動方向)のみに移動可能に支持されている。
【0041】
図5に示すように、フレーム1220は、Y軸方向に延びる複数の連結バー1220Cによって連結された左右一対のハーフフレーム(右フレーム1220R、左フレーム1220L)を有している。右フレーム1220Rと左フレーム1220Lは同一構造(厳密には鏡像関係)を有するため、左フレーム1220Lのみについて詳細を説明する。
【0042】
左フレーム1220Lは、それぞれX軸方向に延びる取付部1221及びレール支持部1222と、取付部1221とレール支持部1222とを連結する3つのZ軸方向に延びる連結部1223(1223a、1223b、1223c)を有している。
図1に示すように、取付部1221は、その長さがベースブロック1210のX軸方向における長さに略等しく、ベースブロック1210によって全長が支持されている。また、連結部1223aによって、取付部1221とレール支持部1222の後端部同士が連結されている。
【0043】
レール支持部1222は、取付部1221よりも(すなわち、ベースブロック1210よりも)長く、その先端部が、ベースブロック1210よりも前方に突出して、前方駆動部1300の上方に配置されている。
【0044】
リニアガイド1230は、X軸方向に延びるレール1231と、転動体を介してレール1231上を走行する二つのキャリッジ1232を備えている。一対のリニアガイド1230のレール1231は、右フレーム1220R及び左フレーム1220Lのレール支持部1222の上面にそれぞれ固定されている。レール1231の長さは、レール支持部1222の長さと略等しく、レール支持部1222によってレール1231の全長が支持されている。キャリッジ1232の上面には複数の取付穴(螺子穴)が設けられていて、テーブル1240には、キャリッジ1232の取付穴に対応する複数の貫通孔が設けられている。キャリッジ1232は、テーブル1240の各貫通孔に通されたボルト(不図示)をキャリッジ1232の各取付穴に嵌めることによってテーブル1240に締め付けられている。なお、テーブル1240と4つのキャリッジ1232により台車(スレッド)が構成される。
【0045】
また、テーブル1240には、シート等の供試体(不図示)を取り付けるための螺子穴等の取付構造が形成されていて、テーブル1240に供試体を直接取り付けることができるようになっている。これにより、供試体を取り付けるための取付板等の部材が不要となるため、衝撃が加えられる可動部分の重量を軽くすることでき、高い周波数成分まで忠実度の高い衝撃を供試体に与えることが可能になっている。
【0046】
図5に示すように、各ベルト機構1100は、歯付ベルト1120と、歯付ベルト1120が巻掛けられた一対の歯付プーリ(第1プーリ1140、第2プーリ1160)と、歯付ベルト1120をテーブル1240に固定するための一対のベルトクランプ1180を備えている。
【0047】
右フレーム1220Rと左フレーム1220Lの間には、4つの歯付ベルト1120(1120a、1120b、1120c、1120d)が平行に配置されている。歯付ベルト1120a~dは、それぞれ長さ方向の2箇所において、ベルトクランプ1180によってテーブル1240に固定されている。テーブル1240に歯付ベルト1120を固定する具体的な構成については、後述する。
【0048】
図2に示すように、前方駆動部1300は、ベースブロック1310と、ベースブロック1310上に設置された4つの駆動モジュール1320(1320a、1320b、1320c、1320d)を備えている。また、後方駆動部1400は、ベースブロック1410と、ベースブロック1410上に設置された4つの駆動モジュール1420(1420a、1420b、1420c、1420d)を備えている。駆動モジュール1320a~d及び1420a~dは、設置する位置や向き、構成要素の長さや配置間隔にわずかな相違があるものの、基本的な構成は共通している。
【0049】
また、前方駆動部1300と後方駆動部1400の基本的な構成も共通している。そのため、前方駆動部1300の駆動モジュール1320の構成について詳細を説明し、後方駆動部1400(駆動モジュール1420)については、重複する説明を省略する。なお、以下の前方駆動部1300(駆動モジュール1320)に関する説明において、角括弧[]内の符号(及び名称)は、後方駆動部1400(駆動モジュール1420)における対応する構成要素を示す符号(及び名称)である。
【0050】
図6は、駆動モジュール1320[1420]の正面図である。駆動モジュール1320[1420]は、サーボモータ1320M[1420M]、第1モータ支持部1331[1431]、第2モータ支持部1332[1432]、軸継手1340[1440]及びプーリ支持部1350[1450]を備えている。また、プーリ支持部1350[1450]は、一対の軸受1361[1461]及び1362[1462]と、これらに回転可能に支持されたシャフト1370[1470]を備えている。
【0051】
サーボモータ1320M[1420M]は、慣性モーメントが0.01kg・m2以下(約0.008kg・m2)に抑えられた定格出力が37kWの超低慣性高出力型のACサーボモータである。なお、同じ出力の標準的なACサーボモータの慣性モーメントは約0.16kg・m2であり、本実施形態のサーボモータ1320M[1420M]の慣性モーメントは、その1/20にも満たない。このように慣性モーメントが非常に低いモータを使用することにより、20G(196m/s2)を超える高い加速度でテーブル1240を駆動することが可能になっている。なお、本実施形態の衝突模擬試験装置1000は最大加速度50G(490m/s2)の衝撃をテーブル1240に与えることができる。衝突試験装置に使用するためには、サーボモータの慣性モーメントを概ね0.05kg・m2以下(好ましくは0.02kg・m2以下、より好ましくは0.01kg・m2以下)にする必要がある。7kW程度の低容量のモータを使用する場合においても、この慣性モーメントの数値条件を満たすことが望ましい。また、衝突模擬試験装置には、最大トルクNmaxと慣性モーメントIとの比N/Iが少なくとも1000以上(望ましくは2500以上、より望ましくは5000以上)である低慣性のサーボモータが適している。
【0052】
サーボモータ1320M[1420M]は、シャフト1321[1421]と、シャフト1321[1421]を回転可能に支持する第1軸受1325[1425]及び第2軸受1326[1426]と、第1軸受1325[1425]を支持する第1ブラケット1323[1423](負荷側ブラケット)と、第2軸受1326[1426]を支持する第2ブラケット1324[1424](反負荷側ブラケット)と、シャフト1321[1421]が貫通する筒状のステータ1322[1422]を備えている。第1ブラケット1323[1423]及び第2ブラケット1324[1424]は、ステータ1322[1422]に固定されている。
【0053】
第1ブラケット1323[1423]は、第1モータ支持部1331[1431]を介して、ベースブロック1310[1410]に固定されている。また、第2ブラケット1324[1424]は、第2モータ支持部1332[1432]を介して、ベースブロック1310[1410]に固定されている。
【0054】
このように、本実施形態のサーボモータ1320M[1420M]は、第1軸受1325[1425]及び第2軸受1326[1426]をそれぞれ支持する第1ブラケット1323[1423]及び第2ブラケット1324[1424]が、第1モータ支持部1331[1431]及び第2モータ支持部1332[1432]によってそれぞれ支持されている。その結果、第1軸受1325[1425]及び第2軸受1326[1426]が高い剛性で保持されるため、シャフト1321[1421]に強いトルクや曲げ応力が加わっても、シャフト1321[1421]の首振り運動(歳差運動)が抑制され、高負荷状態でも高い駆動精度が維持されるようになっている。この効果は、10kW以上の高負荷時において特に顕著に現れる。
【0055】
軸継手1340[1440]は、サーボモータ1320M[1420M]のシャフト1321[1421]とプーリ支持部1350[1450]のシャフト1370[1470]とを連結する。シャフト1370[1470]は、一対の軸受1361[1461]及び1362[1462]により回転可能に支持されている。軸受1361[1461]及び1362[1462]は、転動体(ボール又はローラ)を有する転がり軸受である。転動体には一般的なステンレス鋼等の鋼材の他に、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア等のセラミックス材料を使用してもよい。窒化ケイ素等のセラミックス製の転動体を使用することにより、高速駆動時の軸受の焼き付きが抑制される。
【0056】
シャフト1370[1470]には、歯付ベルト1120を駆動する第1プーリ1140[第2プーリ1160]が取り付けられている。なお、駆動モジュール1320[1420]ごとに第1プーリ1140[第2プーリ1160]の取り付けられる位置が異なる。前方駆動部1300[後方駆動部1400]の前方に配置された駆動モジュール1320a、1320d[1420a、1420d]では、
図6に示すように第1プーリ1140[第2プーリ1160]がサーボモータ1320M[1420M]に近い軸受1361[1461]側に寄せて取り付けられ、後方に配置された駆動モジュール1320b、1320c[1420b、1420c]では、サーボモータ1320M[1420M]から遠い軸受1362[1462]側に寄せて取り付けられる。これにより、前後に並べて配置された駆動モジュール1320aと1320b、1320dと1320c[1420aと1420b、1420dと1420c]により、隣接する歯付ベルト1120を駆動可能になっている。
【0057】
図1-4に示すように、前方駆動部1300[後方駆動部1400]においては、ベースブロック1310[1410]上の四隅に、4つの駆動モジュール1320a~d[1420a~d]が、それぞれY軸方向に回転軸を向けて、設置されている。また、前方に配置された駆動モジュール1320aと1320d[1420aと1420d]、後方に配置された駆動モジュール1320bと1320c[1420bと1420c]が、それぞれ向かい合って配置されている。
【0058】
歯付ベルト1120aは、駆動モジュール1320aに取り付けられた第1プーリ1140aと、駆動モジュール1420aに取り付けられた第2プーリ1160aとに巻き掛けられる。歯付ベルト1120bは、駆動モジュール1320bに取り付けられた第1プーリ1140bと、駆動モジュール1420bに取り付けられた第2プーリ1160bとに巻き掛けられる。歯付ベルト1120cは、駆動モジュール1320cに取り付けられた第1プーリ1140cと、駆動モジュール1420cに取り付けられた第2プーリ1160cとに巻き掛けられる。歯付ベルト1120dは、駆動モジュール1320dに取り付けられた第1プーリ1140dと、駆動モジュール1420dに取り付けられた第2プーリ1160dとに巻き掛けられる。すなわち、本実施形態では、各歯付ベルト1120a~dが、それぞれ一対の駆動モジュール1320a~d及び1420a~dによって駆動されるように構成されている。
【0059】
8つの歯付きプーリ(第1プーリ1140a~d及び第2プーリ1160a~d)は、同一のものであり、外径や歯数が共通している。4本の歯付ベルト1120a~dも同一のものである。また、各歯付ベルト1120a~dが巻き掛けられる第1プーリ1140a~dと第2プーリ1160a~dの配置間隔(軸間距離L)も共通であり、各歯付ベルト1120a~dの有効長さも同じ長さに揃えられている。そのため、各駆動モジュール1320a~d及び1420a~dによって駆動した際の歯付ベルト1120a~dの応答(伸縮等)は略等しいものとなるため、歯付ベルト1120a~d毎に駆動条件を設定する必要がない。
【0060】
図7は、ベルトクランプ1180の分解図である。ベルトクランプ1180は、テーブル1240に着脱可能に取り付けられるテーブル取付部1181と、テーブル取付部1181との間で歯付ベルト1120を締め付けて固定するクランプ板1182を備えている。
【0061】
クランプ板1182の幅方向中央には、歯付ベルト1120の内周面に形成された歯形1121t(
図8)と噛み合う突出した歯部1182tが形成されている。また、テーブル取付部1181の下面には、歯付ベルト1120及びクランプ板1182の歯部1182tが嵌め込まれる溝1181gが形成されている。
【0062】
クランプ板1182には、クランプ板1182をテーブル取付部1181にボルト止めするための複数の貫通孔1182hが、歯部1182tを挟んで幅方向両側に設けられている。また、テーブル取付部1181の下面には、各貫通孔1182hと対向する位置に螺子穴(不図示)が形成されている。各貫通孔1182hに通されたボルト1183をテーブル取付部1181の下面に形成された螺子穴に嵌めることにより、クランプ板1182がテーブル取付部1181に取り付けられるようになっている。
【0063】
テーブル取付部1181の溝1181gに歯付ベルト1120を嵌め込み、クランプ板1182をテーブル取付部1181に取り付けると、歯付ベルト1120がテーブル取付部1181とクランプ板1182との間で圧迫されて、ベルトクランプ1180に固定される。このとき、歯付ベルト1120の歯とクランプ板1182の歯部1182tが噛み合っているため、歯付ベルト1120に長手さ向(X軸方向)の強い衝撃を与えても、ベルトクランプ1180から歯付ベルト1120が滑ることなく、歯付ベルト1120と一体にベルトクランプ1180が駆動される。
【0064】
テーブル取付部1181の上面には、テーブル1240に取り付けるための複数の螺子穴1181hが設けられている。また、テーブル1240には、螺子穴1181hに対応する複数の貫通孔(不図示)が設けられている。テーブル1240は、この貫通孔と螺子穴1181hへのボルトの着脱のみで、容易に交換可能になっている。例えば、供試体に合わせて専用のテーブル1240を用意し、供試体の種類に応じてテーブル1240を交換して使用することができる。また、本実施形態ではテーブル1240は平板状であるが、別の形状(例えば、舟形や箱形等)にしてもよい。また、車両の一部(例えばフレーム)をテーブル1240として使用してもよい。また、供試体をベルトクランプ1180及びキャリッジ1232に直接取り付けることもできる。
【0065】
図8は、歯付ベルト1120の構造を示した図である。歯付ベルト1120は、高強度・高弾性率の基材から形成された本体部1121と、高強度・高弾性率繊維の束である複数の心線1122を有している。複数の心線1122は、歯付ベルト1120の幅方向に略等間隔に並べられている。また、各心線1122は、歯付ベルト1120の長さ方向に弛みなく伸ばされた状態で、本体部1121に埋め込まれている。
【0066】
歯付ベルト1120の内周面(
図8における下面)には、噛み合い伝動のための歯形1121tが形成されている。歯形1121tの表面は、耐摩耗性に優れた高強度ポリアミド系繊維等から形成された歯布1123によって被覆されている。また、歯付ベルト1120の外周面には、可撓性を高めるための幅方向に延びる複数の溝1121gが長さ方向に等間隔で形成されている。
【0067】
本実施形態の歯付ベルト1120では、心線1122には、軽量で高強度・高弾性率の炭素繊維から形成されたカーボン心線が使用されている。カーボン心線を使用することにより、大きな加速度で駆動して、歯付ベルト1120に大きな張力が加わっても、歯付ベルト1120が殆ど伸縮しないため、各駆動モジュール1320、1420の駆動力がテーブル1240に正確に伝達され、テーブル1240の駆動を高精度で制御することが可能になる。また、軽量なカーボン心線を使用することにより、例えばスチールワイヤやスチールコード等の金属心線を使用した場合よりも、歯付ベルトの慣性を大幅に低減させることができる。そのため、同じ容量のモータを使用して、より高い加速度で駆動することが可能になる。また、同じ加速度で駆動する場合、より低容量のモータを使用することが可能になり、装置の小形化・軽量化や低コスト化が可能になる。
【0068】
また、本実施形態の歯付ベルト1120では、本体部1121を形成する基材には、高強度ポリウレタンや、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)等の高強度・高硬度のエラストマーが使用される。このように高強度・高硬度の基材を使用することにより、駆動時の歯形の変形量が減少するため、歯形の変形に起因する歯飛びの発生が抑制され、テーブル1240の駆動を高精度で制御することが可能になる。また、歯付ベルト1120の強度が向上するため、駆動時の歯付ベルト1120の伸縮が低減し、テーブル1240の駆動を更に高精度で制御することが可能になる。
【0069】
自動車等の衝突安全性能の評価に使用される衝突模擬試験装置は、供試体に20G(196m/s2)もの高い加速度を与えることが可能な大きな動力を発生して、これをテーブル1240及び供試体に正確に伝達する必要がある。高い加速度を正確に伝達するためには、動力伝達系に剛性の高い部材を使用する必要がある。剛性の高い動力伝達系としては、例えば、ボールねじ機構、歯車伝動機構、チェーン伝動機構、ワイヤ伝動機構などがある。
【0070】
衝突模擬試験中、スレッドの最高速度は25m/s(90km/h)に達する。ボールねじ機構によりこの速度を実現するためには、100mmを超える長さのリードが必要になるが、このような長いリードを有する精密なボールねじの製作は極めて難しい。
【0071】
また、歯車伝動機構やチェーン伝動機構を使用する場合、歯車やチェーンに大きな加速度に耐え得る強度を与える必要がある。しかし、強度を高めると、慣性が大きくなるため、より高出力のモータが必要になる。また、モータの高出力化は、モータ自体の慣性モーメントの増大を伴うため、更なる高出力化が必要となり、エネルギー効率が大きく低下し、装置が大型化してしまう。また、装置全体の慣性が過大になると、大加速度の発生・伝達が困難になる。歯車伝動機構やチェーン伝動機構による加速は、概ね3G(29m/s2)程度が限界となり、衝突模擬試験に必要な加速度[少なくとも20G(196m/s2)]で駆動することができない。また、歯車機構やチェーン機構を衝突模擬試験に必要な早い周速(~25m/s)で駆動すると、焼き付きを起こしてしまう。
【0072】
また、ワイヤ伝動機構(ワイヤとプーリを使用した巻掛け伝動機構)は、比較的に低慣性ではあるが、摩擦のみによって動力が伝達されるため、大加速度の駆動時にワイヤとプーリとの間ですべりが発生して、運動を正確に伝達することができない。
【0073】
また、自動車用タイミングベルト等の一般的な歯付ベルトでは、ガラス繊維やアラミド繊維を撚り合わせた心線が使用される。そのため、10G(98m/s2)を超える大加速度で駆動すると、心線の剛性や強度の不足によって歯付ベルトの伸縮が増大するため、運動を正確に伝達することができない。また、一般的な歯付ベルトでは、基材にはニトリルゴムやクロロプレンゴム等の硬度の低い合成ゴムが使用されているため、歯飛びが生じ易く、運動を正確に伝達することができない。
【0074】
また、駆動源としては、サーボ弁と油圧シリンダを使用するものもあるが、応答速度が不足し、200Hzを超える高い周波数で変動する衝撃波形を正確に再現することができない。また、油圧システムは、油圧装置の他に大型の油圧供給設備が必要となるため、広い設置場所を要する。更に、油圧システムには、油圧供給設備の維持・管理コストが高く、油漏れによる環境汚染の問題などがある。
【0075】
本発明者は、上述した、ボールねじ機構、歯車伝動機構、チェーン伝動機構、ワイヤ伝動機構、ベルト伝動機構等の様々な種類の伝動機構について膨大な試作実験を繰り返した結果、20G(196m/s2)に及ぶ大加速度を実現可能な唯一の構成として、超低慣性電気サーボモータと、カーボン心線と高弾性率エラストマーの基材とを複合した軽量で高強度の特殊歯付ベルトとを組み合わせた、本実施形態の駆動システムを開発することに成功した。
【0076】
図9は、衝突模擬試験装置1000の制御システム1000aの概略構成を示すブロック図である。制御システム1000aは、装置全体の動作を制御する制御部1500と、テーブル1240の加速度を計測する計測部1600と、外部との入出力を行うインタフェース部1700を備えている。
【0077】
インタフェース部1700は、例えば、ユーザとの間で入出力を行うためのユーザインタフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインタフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インタフェースの一つ以上を備えている。また、ユーザインタフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の一つ以上を含む。
【0078】
計測部1600は、テーブル1240に取り付けられた加速度センサ1620を備え、加速度センサ1620からの信号を増幅及びデジタル変換して計測データを生成し、制御部1500へ送る。
【0079】
制御部1500には、サーボアンプ1800を介して、8台のサーボモータ1320M及び1420Mが接続されている。制御部1500と各サーボアンプ1800とは光ファイバによって通信可能に接続され、制御部1500と各サーボアンプ1800との間で高速のフィードバック制御が可能になっている。これにより、より高精度(時間軸において高分解能かつ高確度)の同期制御が可能になっている。
【0080】
制御部1500は、インタフェース部1700を介して入力された加速度波形や計測部1600から入力された計測データに基づいて、各駆動モジュール1320a~d、1420a~dのサーボモータ1320M、1420Mの駆動を同期制御することにより、加速度波形に従ってテーブル1240に加速度を与えることができる。なお、本実施形態では、8つのサーボモータ1320M、1420Mの全てを同位相で駆動する(厳密には、左側の駆動モジュール1320a、1320b、1420a、1420bと右側の駆動モジュール1320c、1320d、1420c、1420dとは逆位相〔逆回転〕で駆動する)。
【0081】
加速度波形としては、正弦波、正弦半波(ハーフサイン波)、鋸歯状波(のこぎり波)、三角波、台形波等の基本波形の他、実車衝突試験において計測された加速度波形や、衝突のシミュレーション計算によって得られた加速度波形又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0082】
図10は、加速度波形の一例であり、テーブル1240上に固定したダミーウエイト(ステンレス製の直方体のブロック)を供試体として試験を行ったときの波形である。
図10において、破線は目標波形を示し、実線は実測波形を示す。この試験では、最初の第1フェーズ(P1)において供試体に実車衝突試験で測定された波形の試験加速度が印加される。続く第2フェーズ(P2)において、加速度がゼロ(一定速度)の状態が所定期間(例えば0.01秒間)保持される。続く第3フェーズ(P3)において、加速度の絶対値が所定値以下となるように、略一定の加速度で減速される。
図10に示すように、本実施形態の衝突模擬試験装置1000を使用して、目標波形に良く合致した加速度波形を供試体に与えることができることが確認された。
【0083】
また、本実施形態の衝突模擬試験装置1000は、試験中の供試体(あるいはテーブル1240)の運動が全て数値制御される点で、特許文献1(特開2012-2699号公報)に記載されているような従来のスレッド試験装置とは全く異なったものとなっている。試験中の運動が全て制御されるため、様々な加速度波形の衝撃を容易に供試体に与えることが可能になっている。
【0084】
特許文献1に記載されているような従来のスレッド試験装置では、衝撃を加えた後のスレッドの運動を制御することができないため、スレッドは自由に走行する。そのため、長い走行路が必要になる。これに対して、本実施形態の衝突模擬試験装置1000は、衝撃を加えた後にスレッドを適切な(すなわち、試験結果に実質的に影響を与えない程度に緩やかな)加速度で速やかに停止させることができるため、走行路(レール1231)を短くすることができ、装置の設置スペースを大幅に削減することができる。例えば、本実施形態のレール1231の長さは、わずか2mに過ぎない。
【0085】
また、特許文献1に記載されているような従来のスレッド試験装置では、試験後に走行したスレッドを初期位置に戻す作業を行う必要がある。この作業を自動で行うためには、スレッドを初期位置に戻す機構を更に設ける必要がる。また、スレッドの走行距離が長いため、スレッドを初期位置に戻す機構も大型なものとなり、初期位置に戻す工程にも一定の時間を要する。また、自走して初期位置に戻る機構をスレッドに組み込むと、スレッドを初期位置に戻す機構は小型化できるが、スレッドの荷重が増えるため、試験時の加速度が低下してしまうという問題が生じる。これに対して、本実施形態の衝突模擬試験装置1000は、テーブル1240に衝撃を与える機構を使用して、テーブル1240を初期位置に自動的に復帰させることができるため、テーブル1240を初期位置に戻すための専用の機構を別途設ける必要が無い。また、上述したように試験中にテーブル1240が移動する距離も短いため、わずかな時間(例えば1~2秒)でテーブル1240を初期位置に戻すことができる。
【0086】
また、特許文献1に記載されているような、アキュムレータ等に蓄積した圧力を使用して衝撃を発生する蓄圧式のスレッド試験装置では、チャージ(蓄圧)に時間を要するため、一定の試験間隔を空ける必要がある。これに対して、本実施形態の衝突模擬試験装置1000は、チャージが不要であるため、時間間隔を空けずに連続的に試験を行うことができる。そのため、より効率的に試験を行うことができる。
【0087】
また、蓄圧式のスレッド試験装置では、超高圧の油圧が使用される。そのため、油圧漏れが発生すると、噴出する高圧の作動油によって作業者がけがをする危険性がある。また、スレッドを無制御の状態で長距離走行させるため、作業者が走行するスレッドとぶつかってけがをする危険性がある。これに対して、本実施形態の衝突模擬試験装置1000は、油圧を使用せず、スレッドを無制御の状態で走行させることもないため、安全に試験を行うことが可能になっている。
【0088】
また、
図2に示すように、4本の歯付ベルト1120a~dが、交互に前後にずらして千鳥形に配置されている。この構成により、4本の歯付ベルト1120の軸間距離Lを揃えたまま、4対の駆動モジュール1320、1420によって各歯付ベルト1120を駆動することが可能になっている。
【0089】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態の衝突模擬試験装置1000は、比較的に重量が大きい供試体の試験、或いは、より高い加速度の試験に適した高出力タイプの装置であるが、次に説明する本発明の第2実施形態に係る衝突模擬試験装置2000は、より軽量の供試体の試験に適した中出力型の装置である。
【0090】
【0091】
第2実施形態の衝突模擬試験装置2000には、第1実施形態の半数の二対のサーボモータ2320M及び2420Mを使用して、2本の歯付ベルト2120a及び2120dを駆動する構成が採用されている。
【0092】
また、上述した第1実施形態の前方駆動部1300[後方駆動部1400]は、それぞれ1台のサーボモータ1320M[1420M]を有する4つの駆動モジュール1320a~d[1420a~d]を備えているが、
図12に示すように、本実施形態の前方駆動部2300(後方駆動部2400]は、2台のサーボモータ2320M[2420M]を有する単一の駆動モジュール2320[2420]を備えている。言い換えれば、本実施形態では、2台のサーボモータ2320M[2420M]を連結した構成の駆動モジュール2320[2420]が採用されている。
【0093】
具体的には、駆動モジュール2320[2420]は、3つの軸受2361、2362及び2363[2461、2462及び2463]によって回転可能に支持された単一のシャフト2370[2470]を備えていて、シャフト2370[2470]の一端に一方のサーボモータ2320M[2420M]が接続され、他端に他方のサーボモータ2320M[2420M]が連結される。すなわち、本実施形態では、駆動モジュール2320[2420]の単一のシャフト2370[2470]が2台のサーボモータ2320M[2420M]によって同期駆動される。このようなサーボモータの接続構造は、制御部2500と各サーボアンプ2800との間の高速光デジタル通信を使用した高精度同期制御によって実現されている。
【0094】
また、本実施形態の駆動モジュール2320[2420]では、単一のシャフト2370[2470]に取り付けられた二つの第1プーリ2140a及び2140d[第2プーリ2160a及び2160d]によって、2本の歯付ベルト2120a及び2120dが駆動される。従って、駆動モジュール2320[2420]において、2本の歯付ベルト2120a及び2120dの完全な同期制御が実現されている。
【0095】
また、第1実施形態(
図4)では、フレーム1220のレール支持部1222の下に駆動モジュール1320b及び1320cを配置することで、各ベルト機構1100a~dの軸間距離Lを短くする構成が採用されているが、本実施形態では、この構成は採用されていない。そのため、
図13-14に示すように、本実施形態ではフレーム2220のレール支持部2222の高さが低くなっている。そして、これに伴い、ベルトクランプ2180(
図13)の高さが薄くなっている。このベルトクランプ2180の低背化により、ベルトクランプ2180の慣性が低減するため、低出力でも高い加速性能が得られる。また、ベルトクランプ2180の低背化により、駆動時にベルトクランプ2180(及び歯付ベルト2120)に加わるY軸周りの力のモーメントが減少し、歯付ベルト2120の曲げ変形が減少するため、駆動力の伝達精度が向上する。
【0096】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態に係る衝突模擬試験装置3000の斜視図である。本実施形態の衝突模擬試験装置3000は、第2実施形態の衝突模擬試験装置2000よりも更に軽量の供試体の試験に適した低出力型の装置である。
【0097】
第3実施形態の衝突模擬試験装置3000には、第1実施形態の4分の1である二つの駆動モジュール3420a及3420dを使用して、2本の歯付ベルト3120a及び3120dをそれぞれ駆動する構成が採用されている。
【0098】
衝突模擬試験装置3000は、機構部としては、試験部3200及び後方駆動部3400のみを備え、前方駆動部は備えていない。本実施形態では、第1実施形態の前方駆動部1300(具体的には、各駆動モジュール1320a及び1320dのプーリ支持部1350)に替えて、一対のプーリ支持部3350a及び3350dが試験部3200の前端部に設けられている。
【0099】
プーリ支持部3350a及び3350dは、軸受の配置間隔やシャフト3370の長さを除き、第1実施形態のプーリ支持部1350と同一構成のものである。プーリ支持部3350aのシャフト3370に第1プーリ3140aが取り付けられ、プーリ支持部3350dのシャフト3370に第1プーリ3140dが取り付けられる。歯付ベルト3120aは、プーリ支持部3350aの第1プーリ3140aと後方駆動部3400の第2プーリ3160aに巻き掛けられる。また、歯付ベルト3120dは、プーリ支持部3350dの第1プーリ3140dと後方駆動部3400の第2プーリ3160dに巻き掛けられる。プーリ支持部3350a及び3350dのシャフト3370には、サーボモータは接続されず、第1プーリ3140a及び3140dは従動プーリとして機能する。
【0100】
ベルト伝動では、ベルトの牽引力(引張力)により動力が伝達される。また、衝撃試験では、供試体に減速方向(後方)の強い加速度を与える必要がある。駆動部を試験部3200の前方に配置して、従動プーリを試験部3200の後方に配置することも可能ではあるが、この場合、後方の従動プーリで折り返されてからテーブル3240に接続された側のベルトの牽引により供試体に衝撃を与えることになるため、ベルトの牽引長が長くなる。そのため、ベルトの伸縮による駆動精度の低下が増える。従って、本実施形態のように、駆動部を試験部3200の後方に配置した方が、試験精度の点で有利である。
【0101】
上述の第1実施形態においては、各歯付ベルト1120を一対の駆動プーリ(第1プーリ1140及び第2プーリ1160)に巻き掛けることによって、2台のサーボモータ1320M及び1420Mの動力を結合して、歯付ベルト1120に大きな動力を与える構成が採用されている。歯付ベルト1120に更に大きな動力を与えたい場合、一つの方法として、各サーボモータを高出力化することが挙げられる。しかし、単純に回転子の大型化(大径化)によってサーボモータを高出力化すると、慣性モーメントが増大して、大加速度で駆動できなくなってしまう。
【0102】
高い加速性能を維持しながらサーボモータを高出力化するためには、回転子を細長くすることが有効である。以下に、このような設計思想に基づいて本発明者が開発した低慣性高出力サーボモータ(ユニット)について説明する。上述した各実施例におけるサーボモータの替わりに、後述する第4、第5及び第6実施形態のようなサーボモータ(ユニット)を使用することもできる。
【0103】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る衝突模擬試験装置4000について説明する。衝突模擬試験装置4000は、第1実施形態のサーボモータ1320M及び1420Mに替えて、後述するサーボモータユニット4320M及び4420Mを備える点で第1実施形態の衝突模擬試験装置1000と相違する。なお、サーボモータユニット4320Mと4420Mは、同一の構成を有している。
【0104】
図16は、本発明の第4実施形態のサーボモータユニット4320Mの側面図である。サーボモータユニット4320Mは、二つのサーボモータ4320MA及び4320MBを直列に連結したものである。
【0105】
サーボモータ4320MBは、第1実施形態のサーボモータ1320M及び1420Mと同一構成のものである。サーボモータ4320MAは、シャフト4320A2の両端が外部に突出して二つの連結軸(第1軸4320A2a及び第2軸4320A2b)となった2軸サーボモータである。サーボモータ4320MAは、第2軸4320A2bを有する点と、後述するロータリーエンコーダ4327を備えていない点を除いては、サーボモータ4320MBと同一構成のものである。サーボモータ4320MAの第1軸4320A2aが、サーボモータユニット4320Mが有する単一の出力軸4322となる。
【0106】
なお、サーボモータユニット4320Mに関する以下の説明では、出力軸4322が突出する側(
図16における右側)を負荷側、その反対側を反負荷側と呼ぶ。2軸サーボモータ4320MA及びサーボモータ4320MBは、それぞれ最大で350N・mに及ぶトルクを発生し、回転部の慣性モーメントが10
-2kg・m
2以下に抑えられた、定格出力37kWの大出力超低慣性サーボモータである。
【0107】
サーボモータ4320MBは、筒状の本体4320B1(固定子)、シャフト4320B2、第1ブラケット4320B3(負荷側ブラケット)、第2ブラケット4320B4(反負荷側ブラケット)及びロータリーエンコーダ4327を備えている。また、第1ブラケット4320B3及び第2ブラケット4320B4の下面には、それぞれ一対の螺子穴4320B3t及び4320B4tが設けられている。
【0108】
シャフト4320B2の負荷側の一端部4320B2aは、第1ブラケット4320B3を貫通して、モータケースの外部に突出して、出力軸4320B2aとなっている。一方、第2ブラケット4320B4の取付座面(
図16における左側面)には、シャフト4320B2の回転変位を検出するロータリーエンコーダ4327が取り付けられている。シャフト4320B2の他端部4320B2bは第2ブラケット4320B4を貫通して、ロータリーエンコーダ4327に接続されている。
【0109】
図16に示すように、サーボモータ4320MBの出力軸4320B2aと、2軸サーボモータ4320MAの第2軸4320A2bとは、軸継手4320Cによって連結されている。また、サーボモータ4320MBの第1ブラケット4320B3と、2軸サーボモータ4320MAの第2ブラケット4320A4とは、連結フランジ4320Dによって所定の間隔を空けて連結されている。
【0110】
連結フランジ4320Dは、円筒状の胴部4320D1と、胴部4320D1の軸方向両端部からそれぞれ半径方向外側に延びる二つのフランジ部4320D2を有している。各フランジ部4320D2には、第1ブラケット4320B3及び第2ブラケット4320A4の取付座面に設けられた螺子穴に対応する位置にボルト固定用の貫通孔が設けられていて、第1ブラケット4320B3及び第2ブラケット4320A4にボルトで固定される。
【0111】
上述したように、高い加速性能を維持しながらモータを高出力化するためには、回転子を細長くすることが有効であるが、軸受によるシャフトの支持間隔を長くし過ぎると、シャフトの剛性が不足して、弓形に反るようなシャフトの変形振動が顕著になって、却ってモータの性能が低下してしまう。従って、従来のように一対の軸受により回転軸をモータケースの両端部のみで軸支する構成では、低慣性モーメントを維持しつつ大容量化するには限界があった。
【0112】
本実施形態のサーボモータユニット4320Mでは、二つのサーボモータのシャフトを軸継手で連結するという簡単な構成によって、専用の回転子を新たに設計することなく、細長い回転子が実現されている。また、二つのサーボモータの本体を連結フランジによって連結するという簡単な構成により、軸受によるシャフトの支持間隔が維持されている。そのため、回転子が長尺化しても高い剛性で支持され、安定して動作することが可能になり、これにより、従来のサーボモータでは不可能であった高い周波数で変動する大トルクの発生が可能になっている。なお、サーボモータユニット4320M単体(無負荷状態)では、30000rad/s2以上の角加速度で駆動可能である。
【0113】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る衝突模擬試験装置5000について説明する。衝突模擬試験装置5000は、第1実施形態のサーボモータ1320M及び1420Mに替えて、後述するサーボモータ5320M及び5420Mを備える点等で第1実施形態の衝突模擬試験装置1000と相違する。なお、サーボモータ5320Mと5420Mは同一構成であるため、サーボモータ5420Mについては重複する説明を省略する。
【0114】
図17は、本発明の第5実施形態のサーボモータ5320Mの縦面図である。上述した第4実施形態のサーボモータユニット4320Mでは、連結フランジ4320Dによって二つのサーボモータの本体(固定子)を連結する構成が採用されているが、本実施形態のサーボモータ5320Mでは、連結フランジ4320Dは使用されず、一体に形成された単一の本体フレームが使用される。本実施形態の本体フレームは、第4実施形態のサーボモータ4320MA及び4320MBよりも長く、サーボモータユニット4320Mと略同じ全長を有している。本実施形態の本体フレームには、長さ方向における両端部と中途に合わせて3つの軸受が等間隔に設けられている。これらの軸受によって回転軸が回転可能に支持されている。筒状の本体フレームの長さ方向両端部には、軸受を支持する一対のブラケットが設けられている。また、本体フレームの内周には、長さ方向中央部に、軸受を支持する軸受支持壁が設けられている。更に、本体フレームの内周には、各ブラケットと軸受支持壁との間にそれぞれコイルが取り付けられて、本体(固定子)が形成される。回転軸の外周には、各コイルと対向する位置にそれぞれコアが設けられて、回転子が形成される。
【0115】
本実施形態では、シャフト(回転子)及び本体(固定子)をそれぞれ専用に設計することが可能であるため、サーボモータ5320M全体の設計をより好適化させて、より高性能のモータの実現が可能になる。
【0116】
なお、軸受及びコイルの数は
図17に示された構成に限定されない。例えば、本体フレームの長さ方向中途に2つ以上の軸受及び軸受支持壁を設けてもよい。また、軸受は本体フレームの長さ方向に略等間隔に設けられることが望ましい。その場合、隣接する軸受の間には、それぞれコア及びコイルを設けてもよい。
【0117】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る衝突模擬試験装置6000について説明する。衝突模擬試験装置6000は、第1実施形態のサーボモータ1320M及び1420Mに替えて、後述するサーボモータユニット6320M及び6420Mを備える点で第1実施形態の衝突模擬試験装置1000と相違する。なお、サーボモータユニット6320M及び6420Mは、同一の構成を有している。
【0118】
図18は、本発明の第6実施形態に係る衝突模擬試験装置6000の平面図である。サーボモータユニット6320M[6420M]は、直列に連結した2台のサーボモータ6320MA及び6320MB[6420MA及び6420MB]を備えている。サーボモータ6320MA及び6420MAは、第1実施形態のサーボモータ1320M及び1420Mと同一構成のものである。
【0119】
サーボモータ6320MA[6420MA]は、シャフト6320A2[6420A2]の両端が外部に突出して二つの軸(第1軸6320A2a[6420A2a]及び第2軸6320A2b[6420A2b])となった2軸サーボモータである。サーボモータ6320MA及び6420MAは、第2軸6320A2b[6420A2b]を有する点と、ロータリーエンコーダ1327(
図3)を備えていない点を除いては、第1実施形態のサーボモータ1320M及び1420Mと同一構成のものである。サーボモータ6320MA[6420MA]の第1軸6320A2a[6420A2a]が、サーボモータユニット6320M[6420M]が有する単一の出力軸6322[6422]となる。
【0120】
2軸サーボモータであるサーボモータ6320MA[6420MA]は、第1ブラケット6323A[6423A]及び第2ブラケット6324A[6424A]が、いずれも剛性の高い第1モータ支持部6331[6431]を介して、ベースプレート6320D[6420D]に固定されている。ベースプレート6320D[6420D]はベースブロック6310[6410]に固定されている。
【0121】
また、サーボモータ6320MB[6420MB]は、第1ブラケット6323B[6423B]が第1モータ支持部6331[6431]を介して、第2ブラケット6324B[6424B]が第2モータ支持部(不図示)を介して、それぞれベースプレート6320D[6420D]に固定されている。
【0122】
すなわち、本実施形態では、サーボモータ6320MA[6420MA]の本体とサーボモータ6320MB[6420MB]の本体とが、ベースプレート6320D[6420D]を介して連結されている。本実施形態では、2軸サーボモータであるサーボモータ6320MA[6420MA]の反負荷側の第2ブラケット6324A[6424A]の支持に剛性の高い第1モータ支持部6331[6431]を使用することにより、第4実施形態の連結フランジ4320Dを使用せずに十分な剛性でサーボモータ6320MA[6420MA]の本体とサーボモータ6320MB[6420MB]の本体との連結を可能にしている。連結フランジ4320Dを無くすことにより、サーボモータユニット6320M[6420M]の組み立てが容易になる。
【0123】
また、サーボモータ6320MB[6420MB]の出力軸6320B2[6420B2]とサーボモータ6320MA[6420MA]の第2軸6320A2b[6420A2b]とは、軸継手6320C[6420C]によって連結されている。
【0124】
合計16台のサーボモータ6320MA、6320MB、6420MA、6420MBは、それぞれ個別のサーボアンプを介して制御部に接続されていて、制御部によって同期制御される。本実施形態では、16台のサーボモータ6320MA、6320MB、6420MA、6420MBが全て同じ加速度波形に従って駆動制御される。
【0125】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係る衝突模擬試験装置7000について説明する。
図19及び
図20は、それぞれ衝突模擬試験装置7000の平面図及び正面図である。また、
図21及び
図22は、衝突模擬試験装置7000の側面図である。
【0126】
上述した各実施形態の衝突模擬試験装置は、供試体に与えるべき所定の波形の衝撃(加速度パルス)を前方駆動部及び後方駆動部によって生成し、生成した衝撃波形を供試体が取り付けられたテーブルにベルト機構により伝達するように構成されている。これに対して、本実施形態の衝突模擬試験装置7000は、所定の速度で自由走行させたテーブル7240を後述する衝撃発生部7900に衝突させることで、テーブル7240に取り付けられた供試体に所定の波形の衝撃を与えるように構成されている。すなわち、本実施形態の衝突模擬試験装置7000は、旧来の衝突型の衝撃試験を行えるように構成されている。
【0127】
本実施形態の衝突模擬試験装置7000は、第2実施形態の衝突模擬試験装置2000と同様に、テーブル7240と、テーブル7240をX軸方向に走行可能に支持する一対のリニアガイド7230と、テーブル7240を駆動する前方駆動部7300及び後方駆動部7400と、前方駆動部7300及び後方駆動部7400が発生した動力を伝達する一対のベルト機構7100a、7100dを備えている。
【0128】
更に、本実施形態の衝突模擬試験装置7000は、テーブル7240に所定の波形の衝撃を与える衝撃発生部7900と、テーブル7240を衝撃発生部7900に向けて押し出すプッシャ7250を備えている。
【0129】
各リニアガイド7230は、レール7231と、レール7231上を走行可能な3つのキャリッジ7232を備えている。キャリッジ7232は、テーブル7240の下面に取り付けられた2つのキャリッジ7232aと、プッシャ7250の下面に取り付けられた1つのキャリッジ7232bを含む。すなわち、一対のリニアガイド7230によって、テーブル7240及びプッシャ7250がX軸方向に走行可能に支持されている。
【0130】
また、プッシャ7250の下面には一対のベルトクランプ7180(
図20)が取り付けられていて、プッシャ7250はベルトクランプ7180を介して一対の歯付ベルト7120に固定されている。すなわち、一対のベルト機構7100a、7100dによってプッシャ7250が駆動されるようになっている。なお、本実施形態のテーブル7240は、ベルト機構7100a、7100dには連結されておらず、ベルト機構7100a、7100dに連結されたプッシャ7250を介してテーブル7240が駆動される。
【0131】
図20に示すように、プッシャ7250は、底板7251と、この底板7251の前方端部の上面に直立する押板7252と、底板7251と押板7252を連結して剛性を高めるリブ7253を有する。底板7251の下面には、リニアガイド7230の一対のキャリッジ7232b(
図21)が取り付けられている。
【0132】
衝撃発生部7900は、ベースブロック7310上に固定された固定部7920と、固定部7920上に配置された衝撃部7940と、固定部7920と衝撃部7940との間の衝撃を緩和する緩衝部7950を備えている。
【0133】
衝撃部7940の下面にはスライドプレート(不図示)が取り付けられていて、衝撃部7940は固定部7920上を低摩擦で摺動可能となっている。
【0134】
緩衝部7950は、衝撃部7940に取り付けられた一対の可動フレーム7951と、固定部7920に取り付けられた二対のアーム7953及び一対のガイドレール7955と、4つのコイルばね7954及びコイル保持棒7956を備えている。なお、本実施形態のコイルばね7954は圧縮ばねであるが、引張りばねを使用してもよい。また、コイルばね7954に替えて、板ばねや皿ばね等の他の種類のばねを使用してもよい。
【0135】
可動フレーム7951は、衝撃部7940の左右(Y軸方向)両側面に取り付けられている。可動フレーム7951は、固定部7920の上面に載せられる底板7251aと、この底板7251aと衝撃部7940の側面とを連結する4つのリブ7951bを有する。4つのリブ7951bは、X軸方向に等間隔に配置されている。
【0136】
一対のガイドレール7955は、その長さ方向をX軸方向に向けて、衝撃部7940を一対の可動フレーム7951(具体的には底板7251a)ごとY軸方向両側から挟み込むように、固定部7920の上面に取り付けられている。衝撃部7940は、この一対のガイドレール7955により、その可動方向がX軸方向のみに限定されている。
【0137】
なお、本実施形態ではスライドプレート及びガイドレール7955により衝撃部7940が摺動案内されるように構成されているが、スライドプレート及びガイドレール7955に替えて転動体を備えたリニアガイドを使用して衝撃部7940を転がり案内する構成としてもよい。
【0138】
Z軸方向に延びる二対のアーム7953は、各可動フレーム7951をX軸方向両側から挟むように、固定部7920の四隅に取り付けられている。
【0139】
また、各アーム7953とこれに隣接する可動フレーム7951との間には、コイルばね7954が配置されている。各コイルばね7954には、所定の波形の衝撃を発生するように調整された予荷重が与えられている。また、可動フレーム7951を一対のコイルばね7954によって可動方向両側から挟み込むことにより、可動フレーム7951が変位しても、コイルばね7954によって速やかに初期位置に戻されるようになっている。また、緩衝部7950には、コイルばね7954と直列又は並列に配置されたダンパを設けても良い。
【0140】
衝撃発生部7900の衝撃部7940には、テーブル7240と対向するY軸方向中央部に、テーブル7240側(X軸負方向)に突出する突出部7942が形成されている。また、突出部7942の先端には、テーブル7240に向かって突出する衝突柱7944が取り付けられている。
【0141】
また、テーブル7240は、本体7242と、本体7242の正面中央部から突出する衝突柱7244を備えている。
【0142】
本実施形態の衝突柱7244及び衝突柱7944は鉄鋼等の硬質材料により一体に形成された剛体であるが、衝突柱7244及び/又は7944を、ダンパ及び/又はばねを備えた緩衝装置としても良い。なお、衝突柱7244及び/又は7944をダンパ及びばねの両方を備えた緩衝装置とする場合は、ダンパとばねを直列に連結しても、並列に連結してもよい。
【0143】
次に、衝突模擬試験装置7000の動作を説明する。まず、テーブル7240及びプッシャ7250が
図20に示される初期位置に配置される。このとき、テーブル7240の背面は、プッシャ7250の押板7252に接触している。次に、前方駆動部7300及び後方駆動部7400により、ベルト機構7100a、7100dを介して、プッシャ7250が衝撃発生部7900に向かって所定の速度で駆動される。テーブル7240は、プッシャ7250の押板7252に接触しているため、プッシャ7250と共に所定の速度で駆動される。このとき、プッシャ7250は、テーブル7240に大きな衝撃を与えないように、また、テーブル7240が所定の速度に到達するまでプッシャ7250から離れないように、所定の速度まで徐々に加速される。プッシャ7250は、所定の速度に到達すると、減速して停止する。
【0144】
プッシャ7250が減速すると、テーブル7240は、プッシャ7250から離れて、レール7231上を所定の速度で自由走行する。やがて、
図22に示すように、テーブル7240の衝突柱7244が衝撃部7940の衝突柱7944に衝突し、この衝突によって生じる衝撃がテーブル7240に取り付けられた供試体に与えられる。供試体に与えられる衝撃の大きさや波形は、衝突速度(所定の速度)やコイルばね7954のばね定数によって調整することができる。また、緩衝部7950にダンパを設けたり、衝突柱7244及び/又は7944にダンパ及び/又はばねを設けて緩衝装置としたりすることにより、より多様な衝撃波形を発生させることが可能になる。さらに、衝撃発生部7900に例えば特性の異なる複数のばねやダンパを設けて、これらの組み合わせや接続関係を変更することによっても、より多様な衝撃波形の発生が可能になる。
【0145】
試験後、前方駆動部7300及び後方駆動部7400を逆方向に駆動することによって、プッシャ7250が初期位置に戻される。テーブル7240は手動で初期位置に戻される。また、テーブル7240を自動で初期位置に戻す機構を設けても良い。例えば、プッシャ7250とテーブル7240とを解除可能に連結する連結機構を設けて、プッシャ7250とテーブル7240を連結させてから、プッシャ7250を初期位置に戻すことにより、テーブル7240も初期位置まで戻すことが可能になる。また、例えば、ベルト機構7100a、7100dの他にテーブル復帰用のベルト機構を設けてもよい。この場合、テーブル7240は歯付ベルトに固定させず、例えばベルトに取り付けたプッシャによってテーブル7240を初期位置まで押し戻す構成としてもよい。
【0146】
ベルトクランプ7180は、ボルトによってプッシャ7250に取り外し可能に取り付けられている。また、テーブル7240の下面には複数の螺子穴が設けられていて、ボルトによって4個のベルトクランプ7180をテーブル7240に取り外し可能に取り付けられるようになっている。プッシャ7250からベルトクランプ7180を取り外し、テーブル7240にベルトクランプ7180を取り付けて、ベルト機構7100a、7100dの歯付ベルト7120にテーブル7240を連結することにより、第2実施形態の衝突模擬試験装置2000と同様に、前方駆動部7300及び後方駆動部7400により発生させた衝撃波形を一対のベルト機構7100a、7100dによってテーブル7240に直接与える試験を行うことが可能になる。
【0147】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な実施形態等の構成を適宜組み合わせた構成も本願の実施形態に含まれる。
【0148】
上記の各実施形態においては、サーボモータのシャフトがプーリ支持部のシャフトに直結されているが、減速機を介してサーボモータとプーリ支持部のシャフトを連結してもよい。減速機を使用することにより、より重量(慣性)が大きい供試体の試験が可能になる。また、より低容量のサーボモータの使用が可能になるため、装置の小形化・軽量化や低コスト化が可能になる。
【0149】
上記の各実施形態においては、テーブル1240に与えられる加速度が制御されている(すなわち、加速度によって衝撃が表現されている)が、本発明はこの構成に限定されない。例えば、速度や加加速度(jerk)によってテーブル1240を制御してもよい。
【0150】
上記の各実施形態においては、テーブルの加速度が制御されるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、供試体(例えばテーブルに取り付けられるシートや、シートに乗せられるダミー等)の所定箇所における加速度(衝撃)を制御対象としてもよい。
【0151】
上記の各実施形態においては、直線運動案内機構としてレールと略直方体状のキャリッジから構成されるリニアガイドが使用されるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、リニアガイドに替えて又は加えて、ボールスプラインやリニアブッシュ等の転動体を使用する転がり案内機構を使用してもよい。
【0152】
上記の各実施形態においては、直線運動案内機構(リニアガイド)の転動体としてボールが使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、転動体としてローラを使用してもよい。
【0153】
上記の各実施形態においては、直線運動案内機構(リニアガイド)の転動体の材質に窒化ケイ素が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、炭化ケイ素やジルコニア等の別の種類のセラミックス材料を使用してもよく、ステンレス鋼を使用してもよい。
【0154】
上記の各実施形態においては、テーブル1240は、左右一対のリニアガイド23によって駆動方向のみに移動可能に支持されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、3つ以上のリニアガイド23によって支持される構成としてもよい。リニアガイド23の数を増やすことにより、テーブル1240の支持の剛性が向上する。供試体の重量や必要な試験精度に応じて使用するリニアガイド23の数が決定される。
【0155】
上記の各実施形態においては、2本又は4本の歯付ベルト1120が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、供試体の重量や試験加速度の大きさに応じて、1本、3本又は5本以上の歯付ベルト1120を使用してもよい。
【0156】
上記の各実施形態においては、歯付ベルト1120はエンドレスベルト(無端ベルト)であるが、本発明はこの構成に限定されない。歯付ベルト1120は、長さ方向(駆動方向)に離れた2箇所でベルトクランプ18によってテーブル1240に固定されるため、オープンエンドベルトを使用することもできる。
【0157】
上記の各実施形態においては、1本の歯付ベルト1120を固定する二つのベルトクランプ18が別体に形成されているが、これらを一体に形成してもよい。
【0158】
上記の各実施形態においては、テーブル1240とベルトクランプ18のテーブル取付部1181が別体に形成されているが、これらを一体に形成してもよい。例えば、テーブルの下面に歯付ベルトが嵌め込まれる溝やクランプ板をボルト止めするための螺子穴を設けることにより、テーブルに直接歯付ベルトを固定することができる。
【0159】
上記の各実施形態においては、駆動源にACサーボモータが使用されているが、運動制御が可能であれば他の種類のアクチュエータを使用することもできる。例えば、DCサーボモータや、ステッピングモータ、インバータモータ等を使用してもよい。また、油圧モータや空圧モータを使用することもできる。
【0160】
上記の実施形態においては、フレーム1220の取付部1221、レール支持部1222及び連結部1223が、それぞれ角柱状の構造材であるが、本発明はこの構成に限定されない。取付部1221は、その下面にベースブロック1210上に設置するための平面を有していれば、他の形状であってもよい。レール支持部1222は、その上面にレール1231を取り付けるための平面を有していれば、他の形状であってもよい。また、連結部1223は、取付部1221とレール支持部1222とを十分な強度で連結するものであれば、他の形状であってもよい。
【0161】
上述した本発明の一実施形態は、以下のように説明することもできる。
【0162】
本発明の一実施形態に係る衝突模擬試験装置は、供試体が取り付けられるテーブルと、テーブルを駆動方向に駆動する歯付ベルトと、を備え、歯付ベルトがカーボン心線を備えたものである。
【0163】
上記の衝突模擬試験装置において、歯付ベルトが巻掛けられた一対の歯付プーリと、歯付ベルトをテーブルに解除可能に固定するベルトクランプと、を備え、歯付ベルトが、長さ方向に離れた2箇所の固定位置においてテーブルに固定された構成としてもよい。
【0164】
この構成によれば、ベルトクランプがテーブルに固定されるため、ベルトクランプの荷重によって歯付ベルトが揺さ振られることによる歯飛びの発生が抑制され、テーブルの駆動制御が向上する。
【0165】
上記の衝突模擬試験装置において、歯付ベルトが、少なくとも1箇所の固定位置において、歯付ベルトの有効長さを調整可能に固定された構成としてもよい。
【0166】
この構成によれば、歯付ベルトの有効長さの調整が容易になる。
【0167】
上記の衝突模擬試験装置において、互いに平行に並べられた複数の歯付ベルトを備え、テーブルが、複数の歯付ベルトによって駆動可能である構成としてもよい。
【0168】
この構成によれば、質量の大きな供試体にも必要な衝撃を与えることが可能になる。
【0169】
上記の衝突模擬試験装置において、複数の歯付ベルトの有効長さが同一である構成としてもよい。
【0170】
この構成によれば、各歯付ベルトの応答特性が揃うため、各歯付ベルトに対して同じ条件(例えば、同じ時定数)で制御を行うことが可能になる。そのため、より簡単な制御によって複数の歯付ベルトを駆動することが可能になり、制御装置に必要な処理能力を抑えることができる。
【0171】
上記の衝突模擬試験装置において、一対の歯付プーリの少なくとも一方が駆動プーリであり、駆動プーリを駆動する駆動モジュールを備えた構成としてもよい。
【0172】
上記の衝突模擬試験装置において、駆動モジュールが、電動機を備えた構成としてもよい。
【0173】
この構成によれば、油圧が不要であるため、油圧供給設備を設置する必要が無い。そのため、広い設置スペースが不要であり、油圧供給設備のメンテナンスも負担も不要である。また、作動油によって周辺環境が汚染されことも無く、クリーンで安全な環境で試験を行うことが可能になる。
【0174】
上記の衝突模擬試験装置において、電動機が、サーボモータである構成としてもよい。
【0175】
上記の衝突模擬試験装置において、電動機の慣性モーメントが、0.02kg・m2以下である構成としてもよい。
【0176】
この構成によれば、大加速度の発生が可能になる。
【0177】
上記の衝突模擬試験装置において、電動機の慣性モーメントが、0.01kg・m2以下である構成としてもよい。
【0178】
上記の衝突模擬試験装置において、駆動モジュールが、電動機の出力を減速する減速機を備えた構成としてもよい。
【0179】
この構成によれば、慣性の大きな供試体の試験も可能になる。
【0180】
上記の衝突模擬試験装置において、記駆動モジュールが、電動機により駆動されるシャフトと、シャフトを回転可能に支持する軸受と、を備え、駆動プーリが、シャフトに取り付けられた構成としてもよい。
【0181】
上記の衝突模擬試験装置において、駆動モジュールが、一対の電動機を備え、シャフトの両端が、一対の電動機にそれぞれ連結された構成としてもよい。
【0182】
この構成によれば、より大きな動力でシャフトを駆動することができる。また、2台の電動機を使用する場合、シャフトを共用することにより、軸受を削減することが可能になり、装置をコンパクトにすることができる。
【0183】
上記の衝突模擬試験装置において、複数の歯付ベルトをそれぞれ駆動する複数の駆動モジュールを備え、複数の駆動モジュールのうち二つが駆動プーリの軸方向に並べて配置された構成としてもよい。
【0184】
この構成によれば、駆動プーリを駆動する動力伝達経路を短くすることができ、動力伝達経路の慣性モーメントを低くし、より大きな加速度での駆動が可能になる。
【0185】
上記の衝突模擬試験装置において、複数の歯付ベルトをそれぞれ駆動する複数の駆動モジュールを備え、複数の駆動モジュールのうち二つが、複数の歯付ベルトを挟んで、駆動方向に並べて配置された構成としてもよい。
【0186】
この構成によれば、駆動プーリを駆動する動力伝達経路を短くすることができ、動力伝達経路の慣性モーメントを低くし、より大きな加速度での駆動が可能になる。
【0187】
上記の衝突模擬試験装置において、駆動モジュールが、複数の歯付ベルトのうち少なくとも二つをそれぞれ駆動する、少なくとも二つの歯付プーリを備え、この少なくとも二つの歯付プーリが、シャフトに取り付けられた構成としてもよい。
【0188】
この構成によれば、少なくとも二つの歯付ベルトが一本のシャフトによって駆動されるため、この少なくとも二つの歯付ベルトの駆動を完全に同期させることが可能になり、より高精度の駆動が可能になる。
【0189】
上記の衝突模擬試験装置において、一対の歯付プーリが、いずれも駆動プーリである構成としてもよい。
【0190】
この構成によれば、歯付ベルトをより高い動力で駆動することが可能になる。
【0191】
上記の衝突模擬試験装置において、駆動モジュールが、一対の歯付プーリの一方を駆動する第1駆動モジュールと、一対の歯付プーリの他方を駆動する第2駆動モジュールと、を含む構成としてもよい。
【0192】
上記の衝突模擬試験装置において、一つ以上の駆動モジュールに、合わせて複数の電動機が備わり、複数の電動機を同期制御する制御部を備え、制御部が、光ファイバ通信を用いて各電動機を高速制御する構成としてもよい。
【0193】
この構成によれば、テーブルを十分に高い精度で駆動することが可能になる。
【0194】
上記の衝突模擬試験装置において、テーブルを駆動方向に押し出すプッシャと、テーブル及びプッシャを駆動方向に移動可能に支持するリニアガイドと、テーブルとの衝突により供試体に与える衝撃を発生する衝撃発生部と、を備え、歯付ベルトが、テーブル及びプッシャのそれぞれに固定可能であり、テーブル及びプッシャのいずれか一方に解除可能に固定され、歯付ベルトがテーブルに固定されているときは、駆動モジュールが供試体に与える衝撃を発生して、衝撃が歯付ベルトによりテーブルに伝達され、歯付ベルトがプッシャに固定されているときは、プッシャによって押し出されたテーブルが衝撃発生部と衝突することにより供試体に与える衝撃が発生する構成としてもよい。
【0195】
上記の衝突模擬試験装置において、衝撃発生部が、固定部と、テーブルが衝突可能な位置に配置された衝撃部と、固定部と衝撃部との間で衝撃を緩和する緩衝部と、を備えた構成としてもよい。
【0196】
上記の衝突模擬試験装置において、緩衝部が、衝撃部に取り付けられた可動フレームと、駆動方向において可動フレームを間に挟むように配置され、固定部に取り付けられた、一対のアームと、可動フレームと各アームとの間に挟み込まれたばねと、を備えた構成としてもよい。
【0197】
上記の衝突模擬試験装置において、テーブルが、衝撃発生部に向かって突出した第1衝突柱を備え、衝撃発生部の衝撃部が、第1衝突柱に向かって突出した第2衝突柱を備え、第1衝突柱及び第2衝突柱の少なくとも一方が、ダンパ及びばねの少なくとも一つを備えた緩衝装置である構成としてもよい。
【0198】
上記の衝突模擬試験装置において、リニアガイドが、駆動方向に延びたレールと、転動体を介してレール上を走行するキャリッジと、を備え、キャリッジが、テーブルに取り付けられた第1キャリッジと、プッシャに取り付けられた第2キャリッジと、を含む構成としてもよい。
【0199】
上記の衝突模擬試験装置において、歯付ベルトがエラストマーから形成された本体部を備え、エラストマーが、硬質ポリウレタン及び水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムのいずれかを含む構成としてもよい。
【0200】
この構成によれば、歯飛びの発生が抑制され、テーブルをより高い精度で駆動することが可能になる。
【0201】
上記の衝突模擬試験装置において、テーブルを駆動方向に案内するリニアガイドを備え、リニアガイドが、駆動方向に延びたレールと、転動体を介してレール上を走行するキャリッジと、を備えた構成としてもよい。
【0202】
この構成によれば、駆動方向以外のテーブルの不要な運動が抑制されるため、テーブルをより高い精度で駆動することが可能になる。また、低損失の転がり案内の採用により、より少ない動力でテーブルを駆動することが可能になると共に、案内手段に焼き付きが生じ難くなるため、テーブルをより大きな加速度で駆動することが可能になる。
【0203】
上記の衝突模擬試験装置において、転動体が、セラミックス材料から形成された構成としてもよい。
【0204】
上記の衝突模擬試験装置において、セラミックス材料が、窒化ケイ素、炭化ケイ素及びジルコニアのいずれかを含む構成としてもよい。
【0205】
この構成によれば、セラミックス材料から形成された転動体は、一般的な鋼製のものと比べて、軽量で、耐熱性が高く、高精度であるという特徴がある。そのため、焼き付きが生じ難く、テーブルをより大きな加速度で駆動することが可能になる。
【0206】
特許文献1に記載の装置は、ピストンによって押し出されたスレッドが惰性で長距離走行するため、装置の全長は非常に長いものとなり、広い設置スペースを必要とした。本発明の一実施形態によれば、小型で高精度の衝突模擬試験装置が実現する。
【符号の説明】
【0207】
1000 … 衝突模擬試験装置(第1実施形態)
1100 … ベルト機構
1200 … 試験部
1300 … 前方駆動部
1400 … 後方駆動部
1500 … 制御部
2000 … 衝突模擬試験装置(第2実施形態)
3000 … 衝突模擬試験装置(第3実施形態)
4000 … 衝突模擬試験装置(第4実施形態)
5000 … 衝突模擬試験装置(第5実施形態)
6000 … 衝突模擬試験装置(第6実施形態)
7000 … 衝突模擬試験装置(第7実施形態)