(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】身体冷却剤、及び、身体用冷却液の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20230526BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230526BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230526BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230526BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230526BHJP
A61F 7/00 20060101ALN20230526BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P3/00
A61P7/04
A61P9/00
A61P21/00
A61P25/02
A61P29/00
A61F7/00 330
(21)【出願番号】P 2018200952
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591107034
【氏名又は名称】日本液炭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】杉原 圭彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 裕之
(72)【発明者】
【氏名】江口 敬宏
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-015747(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187971(JP,U)
【文献】登録実用新案第3115222(JP,U)
【文献】特開2020-070295(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101117(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101116(WO,A1)
【文献】米国特許第04393660(US,A)
【文献】国際公開第2019/172140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61F 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO
2含有率が3重量%以上の氷を含有することを特徴とする身体冷却剤。
【請求項2】
CO
2含有率が3重量%以上の氷が、CO
2ハイドレートである請求項1に記載の身体冷却剤。
【請求項3】
CO
2含有率が3重量%以上の氷が、最大長が3mm以上の大きさで、CO
2含有率が3重量%以上の氷である請求項1又は2に記載の身体冷却剤。
【請求項4】
CO
2含有率が3重量%以上の氷が、以下の測定法R1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が5百万個/mL以上となるように、ウルトラファインバブルを水の中に発生させることができる氷であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の身体冷却剤。
(測定法R1)
25℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO
2含有率が3重量%以上である氷を300mg/mL添加し、CO
2含有率が3重量%以上である氷を含有する0~2℃の氷水とした後、その氷水の水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)を測定する。
【請求項5】
CO
2含有率が3重量%以上の氷が、圧密化CO
2ハイドレートであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の身体冷却剤。
【請求項6】
皮膚に適用するための身体用冷却液を用時調製するためのものであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の身体冷却剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の身体冷却剤を液体に接触させる工程を含む、皮膚(ただしヒトの皮膚を除く)に適用するための身体用冷却液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体冷却剤や、身体用冷却液の製造方法に関し、より詳細には、皮膚に適用するための身体用冷却液を用時調製するための身体冷却剤や、該身体用冷却液の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アイシング(icing)とは、負傷又は疾病に対する応急処置;運動時の負傷の防止;運動後の筋肉痛、疲労蓄積の軽減;止血;などを目的として、氷や水などを用いて身体を局所的に冷却することである。アイシングのこれらの用途は、アイシングが有する以下の(a)~(d)の生理的効果に基づいている。
(a)血管を急速に収縮させ、内出血や炎症を抑制する。
(b)疲労部位や損傷部位の血流量や新陳代謝を低下させることで、前述の部位から周辺組織への疲労や損傷の拡大を抑制する。
(c)痛感神経を麻痺させる。
(d)筋内細胞の活動を低下させる。
【0003】
アイシングの有効性は以前と比較してより広く認知されるようになり、アイシング用のスプレーは広く市販されている。しかし、従来の方法でアイシングを行うと、アイシング終了後も比較的長い時間、血流量が低下したままとなるため、疲労物質(乳酸)が蓄積し、運動パフォーマンスが低下するという欠点があった。そのため、従来の方法でアイシングを行う場合、アイシングした部位をアイシング終了後に温める等の方法が行われている。しかし、この方法は、どの程度暖めるべきかを見極めるのが難しく、また、温めが過度になるとアイシングの効果を大幅に低下させてしまうという欠点があった。このような状況下、これらの欠点が改善されたアイシング方法が求められていた。
【0004】
ところで、CO2含有率の高い氷の一種として、CO2ハイドレート(二酸化炭素ハイドレート)という物質が知られている。CO2ハイドレートとは、水分子の結晶体の空寸に二酸化炭素分子を閉じ込めた包接化合物をいう。結晶体を形成する水分子は「ホスト分子」、水分子の結晶体の空寸に閉じ込められている分子は「ゲスト分子」または「ゲスト物質」と呼ばれる。CO2ハイドレートは、融解するとCO2(二酸化炭素)と水に分解するため、融解時にCO2を発生させる。CO2ハイドレートは、CO2と水を、低温、かつ、高圧のCO2分圧という条件にすることにより製造することができ、例えば、ある温度であること、及び、その温度におけるCO2ハイドレートの平衡圧力よりもCO2分圧が高いことを含む条件(以下、「CO2ハイドレート生成条件」とも表示する。)において製造することができる。CO2ハイドレートのCO2含有率は、CO2ハイドレートの製法にもよるが、約3~28重量%程度とすることができ、炭酸水のCO2含有率(約0.5重量%程度)と比較して顕著に高い。
【0005】
CO2ハイドレートの用途として、CO2ハイドレートを飲料に添加、混合することが知られている。例えば特許文献1には、CO2ハイドレートを飲料に混合することにより、その飲料に炭酸を付与して、炭酸飲料を製造することが、特許文献2には、CO2ハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体を飲料に添加することによって、ぬるくなった飲料を冷却すると共に、気が抜けた飲料に炭酸ガスを補充することが開示されている。また、特許文献3には、生鮮食品、乳製品、生菓子及び生花のうちのいずれか一つの保冷対象物を、CO2ハイドレートを用いて保冷する方法であって、CO2ハイドレートと保冷対象物を密閉可能な容器内で接触させずに収容して保冷対象物を保冷する方法が開示されている。また、特許文献4には、酸素ハイドレート(O2ハイドレート)を用いて、入浴者の身体部位や、入浴者用の飲料等を冷却してのぼせ防止、快適な入浴環境を実現できる冷却装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、CO2ハイドレート等の、CO2含有率が3重量%以上の氷で身体を冷却することにより、血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却することができることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-224146号公報
【文献】特許第4969683公報
【文献】特許第4500566号公報
【文献】特開2007-319280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却することができる身体冷却剤や、かかる身体冷却剤を液体に接触させる工程を含む身体用冷却液の製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討する中で、CO2含有率が3重量%以上の氷(好ましくはCO2ハイドレート)を液体に接触させて(好ましくは液体中に含有させて)調製した低温の液体を、動物の身体の皮膚に適用すると、その皮膚の血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)CO2含有率が3重量%以上の氷を含有することを特徴とする身体冷却剤;
(2)CO2含有率が3重量%以上の氷が、CO2ハイドレートである上記(1)に記載の身体冷却剤;
(3)CO2含有率が3重量%以上の氷が、最大長が3mm以上の大きさで、CO2含有率が3重量%以上の氷である上記(1)又は(2)に記載の身体冷却剤;
(4)CO2含有率が3重量%以上の氷が、以下の測定法R1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が5百万個/mL以上となるように、ウルトラファインバブルを水の中に発生させることができる氷であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の身体冷却剤;
(測定法R1)
25℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO2含有率が3重量%以上である氷を300mg/mL添加し、CO2含有率が3重量%以上である氷を含有する0~2℃の氷水とした後、その氷水の水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)をMalvern社製 ナノサイト NS300で測定する;
(5)CO2含有率が3重量%以上の氷が、圧密化CO2ハイドレートであることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の身体冷却剤;又は、
(6)皮膚に適用するための身体用冷却液を用時調製するためのものであることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれかに記載の身体冷却剤;
に関する。
【0011】
また、本発明は、
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の身体冷却剤を液体に接触させる工程を含む、皮膚に適用するための身体用冷却液の製造方法;又は、
(8)200ppm以上の炭酸を含む液体であって、かつ、以下の測定法R1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が5百万個/mL以上である、皮膚に適用するための身体用冷却液;
(測定法R1)
25℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO2含有率が3重量%以上である氷を300mg/mL添加し、CO2含有率が3重量%以上である氷を含有する0~2℃の氷水とした後、その氷水の水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)をMalvern社製 ナノサイト NS300で測定する;
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却することができる身体冷却剤や、かかる身体冷却剤を液体に接触させる工程を含む身体用冷却液の製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】CO
2ハイドレート含有氷水における気泡の粒径分布と個数濃度(個/mL)を示す図である。グラフの横軸は気泡の粒径(nm)を表し、縦軸は気泡の個数濃度(個/mL)を表す。
【
図2】ラットの尻尾の血流量を測定した結果を示す図である。ラットの尻尾の血流量の測定は、ラットの尻尾を各サンプル氷水に浸漬している30分間、及び、浸漬終了後30分間について行った。グラフの横軸は、尻尾の各サンプル氷水への浸漬開始からの経過時間(分)を表し、グラフの縦軸は、浸漬開始前の5分間の血流量の平均値を100%としたときの、血流量の相対値(%)を表す。なお、グラフに表す血流量の相対値(%)は、5分間ごとの血流量の平均値を用いて算出した。例えば、浸漬開始から5分後の血流量の相対値は、浸漬開始直後から5分後までの血流量の平均値を用いて算出した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、
[1]CO2含有率が3重量%以上の氷(以下、「CO2高含有氷」とも表示する。)が、CO2ハイドレートである請求項1に記載の身体冷却剤(以下、「本発明の身体冷却剤」とも表示する。);や、
[2]本発明の身体冷却剤を液体に接触させる工程を含む、皮膚に適用するための身体用冷却液の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);や、
[3]200ppm以上の炭酸を含む液体であって、かつ、後述の測定法R1(又はR2)で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が5百万個/mL以上である、皮膚に適用するための身体用冷却液(以下、「本発明の身体用冷却液」とも表示する。);
[4]CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)、本発明の身体冷却剤又は身体用冷却液を、動物の全身又は局部の皮膚に適用する工程を含む、動物の身体を冷却する方法(以下、「本発明の身体冷却方法」とも表示する。);
などの実施態様を含んでいる。なお、本明細書において、「剤」は、「物質」又は「組成物」と言い換えることができる。
【0015】
1.<本発明の身体冷却剤>
(CO2含有率が3重量%以上の氷)
本発明の身体冷却剤は、CO2含有率が3重量%以上の氷(「CO2高含有氷」)を含有する限り特に制限されない。かかるCO2高含有氷は、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷であってもよいが、より高い血流低下抑制効果(好ましくは、血流維持効果)を得る観点から、CO2ハイドレートであることが好ましく、圧密化CO2ハイドレートであることがより好ましい。また、本発明におけるCO2高含有氷として、CO2ハイドレートを用いずに、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷を用いてもよいし、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷を用いずに、CO2ハイドレートを用いてもよいし、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷と、CO2ハイドレートを併用してもよい。また、CO2ハイドレートとして、圧密化CO2ハイドレートを用いずに、圧密化していないCO2ハイドレートを用いてもよいし、圧密化していないCO2ハイドレートを用いずに、圧密化CO2ハイドレートを用いてもよいし、圧密化していないCO2ハイドレートと圧密化CO2ハイドレートを併用してもよい。
【0016】
CO2ハイドレートは、水分子の結晶体の空寸に二酸化炭素分子を閉じ込めた固体の包接化合物である。CO2ハイドレートは、通常、氷状の結晶体であり、例えば標準気圧条件下で、かつ、氷が融解するような温度条件下に置くと、融解しながらCO2を放出する。前述したように、本発明に用いるCO2高含有氷は、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷よりも、CO2ハイドレートであることが好ましく、圧密化CO2ハイドレートであることがより好ましい。その理由は、本発明の身体冷却剤を液体に接触させた際に、CO2の気泡(好ましくはウルトラファインバブル)をより高濃度で得ることができ、その結果、より高い血流低下抑制効果(好ましくは、血流維持効果)が得られると考えられるからである。「ウルトラファインバブル」とは、常圧下の水などの溶媒中での直径が1000nm以下の微細気泡である。かかるウルトラファインバブルは、直径が1mm以上である通常の気泡と比較して、(1)気泡界面表面積が著しく大きいこと、(2)気泡内圧力が大きいこと、(3)気体溶解効率が高いこと、(4)気泡上昇速度が遅いこと、などの優れた特質を有する。かかるウルトラファインバブルの生成には、通常、ウルトラファインバブル発生装置が必須であるが、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート、より好ましくは圧密化CO2ハイドレート)を用いると、ウルトラファインバブル発生装置を用いずとも、CO2の微細気泡(好ましくはウルトラファインバブル)を簡便に生成することができる。
【0017】
本発明におけるCO2高含有氷としては、以下の測定法R1で測定した場合のウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)の濃度(個/mL)で、好ましくは5百万個/mL以上、より好ましくは1千万個/mL以上、さらに好ましくは2千万個/mL以上、より好ましくは2千5百万個/mL以上、さらに好ましくは3千万個/mL以上、より好ましくは3千5百万個/mL以上、さらに好ましくは5千万個/mL以上、より好ましくは7千5百万個/mL以上、さらに好ましくは1億個/mL以上、より好ましくは1億5千万個/mL以上、さらに好ましくは2億個/mL以上、より好ましくは2億5千万個/mL以上のウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)を水の中に発生させることができるCO2高含有氷を好適に挙げることができる。
(測定法R1)
25℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO2含有率が3重量%以上である氷を300mg/mL添加し、CO2含有率が3重量%以上である氷を含有する0~2℃の氷水とした後、その氷水の水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)をMalvern社製 ナノサイト NS300で測定する。
【0018】
本発明におけるCO2高含有氷が、水の中に発生させることができるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)の濃度の上限としては、特に制限されないが、前述の測定法R1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が、例えば100億個/mL以下、10億個/mL以下であることが挙げられる。
【0019】
本発明におけるCO2高含有氷が、水の中に発生させることができるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)のより具体的な濃度としては、5百万~100億個/mL、5百万~10億個/mL、1千万~100億個/mL、1千万~10億個/mL、2千万~100億個/mL、2千万~10億個/mL、2千5百万~100億個/mL、2千5百万~10億個/mL、3千万~100億個/mL、3千万~10億個/mL、3千5百万~100億個/mL、3千5百万~10億個/mL、5千万~100億個/mL、5千万~10億個/mL、7千5百万~100億個/mL、7千5百万~10億個/mL、1億~100億個/mL、1億~10億個/mL、1億5千万~100億個/mL、1億5千万~10億個/mL、2億~100億個/mL、2億~10億個/mL、2億5千万~100億個/mL、2億5千万~10億個/mL等が挙げられる。
【0020】
本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)のCO2含有率としては、3重量%以上である限り特に制限されないが、CO2の気泡(好ましくはウルトラファインバブル)をより高濃度で得て、より高い血流低下抑制効果(好ましくは、血流維持効果)を得る観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、より好ましくは13重量%以上、さらに好ましくは16重量%以上、より好ましくは18重量%以上であることが挙げられる。また、上限値としては特に制限されないが、30重量%や、28重量%や、26重量%や、24重量%が挙げられる。CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)のより具体的なCO2含有率としては、5~30重量%、7~30重量%、10~30重量%、13~30重量%、16~30重量%、18~30重量%、5~28重量%、7~28重量%、10~28重量%、13~28重量%、16~28重量%、18~28重量%、5~26重量%、7~26重量%、10~26重量%、13~26重量%、16~26重量%、18~26重量%等が挙げられる。
【0021】
本発明におけるCO2高含有氷のCO2含有率は、本発明におけるCO2高含有氷を製造する際の「CO2分圧の高低」などにより調整することができ、例えばCO2分圧を高くすると、CO2高含有氷のCO2含有率を高くすることができる。また、CO2高含有氷がCO2ハイドレートである場合は、CO2ハイドレートを製造する際の「CO2分圧の高低」、「脱水処理の程度」、「圧縮処理を行うか否か」、「圧縮処理する場合の圧縮の圧力の高低」などにより、CO2ハイドレートのCO2含有率を調整することができる。例えば、CO2ハイドレートを製造する際の「CO2分圧を高くし」、「脱水処理の程度を上げ」、「圧縮処理を行い」、「圧縮処理する場合の圧密の圧力を高くする」と、CO2ハイドレートのCO2含有率を高くすることができる。なお、CO2ハイドレート等のCO2高含有氷が融解すると、該CO2ハイドレート等のCO2高含有氷に含まれていたCO2が放出され、その分の重量が減少するので、CO2ハイドレート等のCO2高含有氷のCO2含有率は、例えば、CO2ハイドレート等のCO2高含有氷を常温で融解させた際の重量変化から、下記式(1)を用いて算出する事ができる。
(CO2含有率)=(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)/融解前のサンプル重量)………式(1)
【0022】
また、本発明の身体冷却剤が含有するCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)は、そのすべてが、3重量%以上のCO2含有率であることが好ましいが、本発明の効果(血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却する効果)が得られる範囲において、CO2含有率が3重量%未満の氷やCO2ハイドレートも含有していてもよい。本発明の身体冷却剤が含有するCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)に対する、CO2含有率が3重量%未満の氷やCO2ハイドレートの割合(重量%)としては、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下が挙げられる。
【0023】
本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の形状としては、適宜設定することができ、例えば、略球状;略楕円体状;略直方体形状等の略多面体形状;あるいは、これらの形状にさらに凹凸を備えた形状;などが挙げられる。また、本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)は、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の塊を適宜破砕して得られる様々な形状の破砕片(塊)であってもよい。
【0024】
本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の大きさとしては、特に制限されず、適宜設定することができる。本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の最大長の下限として、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは7mm以上、より好ましくは10mm以上が挙げられ、最大長の上限として150mm以下、100mm以下、80mm以下、60mm以下が挙げられ、より具体的には3mm以上150mm以下、3mm以上100mm以下、3mm以上80mm以下、3mm以上60mm以下や、5mm以上150mm以下、5mm以上100mm以下、5mm以上80mm以下、5mm以上60mm以下、10mm以上150mm以下、10mm以上100mm以下、10mm以上80mm以下、10mm以上60mm以下などが挙げられる。
【0025】
本明細書において「CO2高含有氷の最大長」とは、CO2高含有氷のその塊の表面の2点を結び、かつ、その塊の重心を通る線分のうち、最も長い線分の長さを意味する。なお、CO2高含有氷が例えば略楕円体状である場合は、前記最大長は長径(最も長い直径)を表し、略球状である場合は、前記最大長は直径を表し、略直方体形状である場合は、対角線の中で最も長い対角線の長さを表す。また、本明細書において「CO2高含有氷の最小長」とは、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)のその塊の表面の2点を結び、かつ、その塊の重心を通る線分のうち、最も短い線分の長さを意味する。かかる最大長や最小長は、市販の画像解析式粒度分布測定装置などを用いて測定することもできるし、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の塊に定規をあてて測定することもできる。
【0026】
本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の好適な態様として、アスペクト比(最大長/最小長)が好ましくは1~5の範囲内、より好ましくは1~4の範囲内、さらに好ましくは1~3の範囲内であるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)が挙げられる。
【0027】
CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の大きさは以下の方法で調整することができる。例えば、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷の最大長は、かかるCO2高含有氷を製造する際の型の最大長を調整したり、製造後のCO2高含有氷を破砕する際の破砕の程度を調整したりすることによって調整することができる。また、CO2ハイドレートの最大長は、CO2ハイドレートを圧縮成形する際に用いる型の最大長を調整したり、圧縮成形した後のCO2ハイドレートを破砕する際の破砕の程度を調整したりすることによって、調整することができる。また、最小長については、型の最小長を調整したり、製造後のCO2高含有氷を破砕する際の程度を調整したりすることによって調整することができる。
【0028】
本発明におけるCO2高含有氷の製造方法としては、CO2高含有氷を製造できる限り特に制限されない。CO2ハイドレートではないCO2高含有氷の製造方法としては、CO2ハイドレート生成条件を充たさない条件下で原料水中にCO2を吹き込みながら原料水を冷凍する方法が挙げられる。また、CO2ハイドレートの製造方法としては、CO2ハイドレート生成条件を充たす条件下で原料水中にCO2を吹き込みながら原料水を攪拌する気液攪拌方式や、CO2ハイドレート生成条件を充たす条件下でCO2中に原料水をスプレーする水スプレー方式等の常法を用いることができる。これらの方式で生成されるCO2ハイドレートは、通常、CO2ハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状であるため、CO2ハイドレートの濃度を高めるために、脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理によって含水率が比較的低くなったCO2ハイドレート(すなわち、比較的高濃度のCO2ハイドレート)は、ペレット成形機で一定の形状(例えば球状や直方体状)に圧縮成形することが好ましい。圧縮成形したCO2ハイドレートは、本発明における圧密化CO2ハイドレートの1種として好適に用いることができる。圧縮成形したCO2ハイドレートは、そのまま本発明に用いてもよいし、必要に応じてさらに破砕等したものを用いてもよい。なお、CO2ハイドレートの製造方法としては、前述のように、原料水を用いる方法が比較的広く用いられているが、水(原料水)の代わりに微細な氷(原料氷)をCO2と、低温、かつ、低圧のCO2分圧という条件下で反応させてCO2ハイドレートを製造する方法を用いることもできる。
【0029】
上記の「CO2ハイドレート生成条件」は、前述したように、その温度におけるCO2ハイドレートの平衡圧力よりCO2分圧(CO2圧力)が高い条件である。上記の「CO2ハイドレートの平衡圧力よりもCO2分圧が高い条件」は、J. Chem. Eng. Data (1991) 36, 68-71のFigure 2.や、J. Chem. Eng. Data (2008), 53, 2182-2188のFigure 7.やFigure 15.に開示されているCO2ハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がCO2圧力、横軸が温度を表す)において、かかる曲線の高圧側(CO2ハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がCO2圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内のCO2圧力と温度の組合せの条件として表される。CO2ハイドレート生成条件の具体例として、「-20~4℃の範囲内」と「二酸化炭素圧力1.8~4MPaの範囲内」の組合せの条件や、「-20~-4℃の範囲内」と「二酸化炭素圧力1.3~1.8MPaの範囲内」の組合せの条件が挙げられる。
【0030】
本発明の身体冷却剤におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の含有量としては、特に制限されないが、例えば5~100重量%の範囲内、好ましくは30~100重量%の範囲内、より好ましくは50~100重量%の範囲内、さらに好ましくは70~100重量%の範囲内を挙げることができる。
【0031】
本発明において「圧密化CO2ハイドレート」とは、CO2ハイドレート率が40~90%(好ましくは50~90%、より好ましくは60~90%、さらに好ましくは70~90%、より好ましくは80~90%)であるCO2ハイドレートを意味する。CO2ハイドレート率とは、CO2ハイドレートの塊の重量に対するCO2ハイドレートの重量の割合(%)を意味する。かかるCO2ハイドレート率は、以下の式(2)により算出することができる。
CO2ハイドレート率(%)={(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)+(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)÷44×5.75×18}×100÷融解前のサンプル重量………式(2)
式(2)を以下に説明する。(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)は、包蔵されるCO2ガス重量となる。CO2ガスをハイドレートとして包接するために必要な水量は、理論水和数5.75、CO2の分子量44、水の分子量18を用いて算出し、それ以外の水は、ハイドレートを構成しない付着水とみなしている。
【0032】
本発明における好適な圧密化CO2ハイドレートとしては、前述の測定法R1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)で5千万個/mL以上、より好ましくは7千5百万個/mL以上、さらに好ましくは1億個/mL以上、より好ましくは1億5千万個/mL以上、さらに好ましくは2億個/mL以上、より好ましくは2億5千万個/mL以上のウルトラファインバブルを水の中に発生させることができるCO2ハイドレートが挙げられる。また、本発明における好適な圧密化CO2ハイドレートのCO2含有率としては、ウルトラファインバブルをより高濃度で得て、より高い血流低下抑制効果(好ましくは、血流維持効果)を得る観点から、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは13重量%以上、より好ましくは16重量%以上、さらに好ましくは18重量%以上であることが挙げられる。また、上限値としては特に制限されないが、30重量%や、28重量%や、26重量%、24重量%が挙げられる。本発明における好適な圧密化CO2ハイドレートのより具体的なCO2含有率としては、7~30重量%、10~30重量%、13~30重量%、16~30重量%、18~30重量%、7~28重量%、10~28重量%、13~28重量%、16~28重量%、18~28重量%、7~26重量%、10~26重量%、13~26重量%、16~26重量%、18~26重量%等が挙げられる。
【0033】
本発明における圧密化CO2ハイドレートの製造方法は特に制限されないが、例えば以下の製造方法を好ましく挙げることができる。
CO2ハイドレート生成条件を充たす条件下で原料水中にCO2を吹き込みながら原料水を攪拌する気液攪拌方式や、CO2ハイドレート生成条件を充たす条件下でCO2中に原料水をスプレーする水スプレー方式等の常法を用いることができる。これらの方式で生成されるCO2ハイドレートは、通常、CO2ハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状である。かかるスラリーについて脱水処理及び圧縮処理を行うことにより、圧密化CO2ハイドレートを製造することができる。CO2ハイドレート粒子と水を含むスラリーの脱水処理及び圧縮処理は、例えば、スラリーの脱水処理を行った後、CO2ハイドレート粒子の圧縮処理を行うなど、脱水処理と圧縮処理を別々に順次行ってもよいし、あるいは、スラリー中の水が排出され得る状況下でスラリーを圧縮処理するなどして、脱水処理と圧縮処理を同時に行ってもよいが、ウルトラファインバブルをより高濃度で得て、より高い血流低下抑制効果(好ましくは、血流維持効果)を得る観点から、脱水処理と圧縮処理を同時に行うことが好ましく、中でも、CO2ハイドレート生成条件下で脱水処理と圧縮処理を同時に行うことがより好ましい。CO2ハイドレート粒子の圧縮処理や、スラリーの圧縮処理は、市販の圧密成形機等を用いて行うことができる。圧縮処理の際の圧力としては、例えば1~100Mpa、1~50Mpa、1~30Mpa、1~15Mpa、1~10Mpa、2.5~10Mpa、2.5~9Mpaなどを挙げることができる。なお、前述のスラリーについて、十分な脱水処理を行うと、CO2ハイドレート率は通常約40%となり、十分な脱水処理後に2.5MpaでCO2ハイドレート粒子の圧縮処理を行うとCO2ハイドレート率は通常約60%となり、脱水処理後に9MpaでCO2ハイドレート粒子の圧縮処理を行うとCO2ハイドレート率は通常約90%となるとされている。
【0034】
本発明の身体冷却剤におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)は、CO2と氷のみからなるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)(以下、「任意成分を含有しないCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)」とも表示する。)であってもよいが、身体冷却剤の用途に応じた任意成分をさらに含有するCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)であってもよい。また、本発明の身体冷却剤は、「任意成分を含有しないCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)」、又は、「任意成分を含有するCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)」のみからなる身体冷却剤であってもよいし、これらCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)以外に、任意成分をさらに含有していてもよい。
【0035】
本発明の身体冷却剤がCO2ハイドレート以外のCO2高含有氷を含有する場合、かかる本発明の身体冷却剤は、流通や保管の際に、氷が融解しない温度及び圧力で保持することが好ましい。かかる温度及び圧力として、例えば常圧(例えば1気圧)で0℃以下の条件が挙げられる。一方、CO2ハイドレートの製法等によっては、その保存性や安定性に優れているものもある。したがって、本発明の身体冷却剤がCO2高含有氷としてCO2ハイドレートを含有する場合、かかる本発明の身体冷却剤は、流通や保管の際に、常温(5~35℃)、常圧(例えば1気圧)で保持してもよいが、本発明の身体冷却剤をより長期間、より安定的に保つ観点から、本発明の身体冷却剤は、流通や保管等の際に、「低温条件下」、又は「高圧条件下」、又は「低温条件下かつ高圧条件下」で保持することが好ましい。保持の簡便性の観点から、これらの中でも、「低温条件下」で保持することが好ましく、常圧(例えば1気圧)で「低温条件下」で保持することがより好ましい。
【0036】
上記の「低温条件下」における上限温度としては、10℃以下、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは-5℃以下、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-15℃以下、より好ましくは-20℃、さらに好ましくは-25℃が挙げられ、上記の「低温条件下」における下限温度としては、-273℃以上、-80℃以上、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上などが挙げられる。
【0037】
上記の「高圧条件下」における下限圧力としては、1.036気圧以上、好ましくは1.135気圧以上、より好ましくは1.283気圧以上、さらに好ましくは1.480気圧以上が挙げられ、上記の「高圧条件下」における上限圧力としては、14.80気圧以下、11.84気圧以下、9.869気圧以下、7.895気圧以下、4.935気圧以下などが挙げられる。
【0038】
本発明の身体冷却剤は、容器に収容されていてもよい。容器の形状や材質は特に制限されず、例えばプラスチック製のボトル容器を挙げることができる。
【0039】
本発明の身体冷却剤としては、以下の測定法R2で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)で、好ましくは5百万個/mL以上、より好ましくは1千万個/mL以上、さらに好ましくは2千万個/mL以上、より好ましくは2千5百万個/mL以上、さらに好ましくは3千万個/mL以上、より好ましくは3千5百万個/mL以上、さらに好ましくは5千万個/mL以上、より好ましくは7千5百万個/mL以上、さらに好ましくは1億個/mL以上、より好ましくは1億5千万個/mL以上、さらに好ましくは2億個/mL以上、より好ましくは2億5千万個/mL以上のウルトラファインバブルを水の中に発生させることができる身体冷却剤を好適に挙げることができる。また、本発明の身体冷却剤が、水の中に発生させることができるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)の濃度の上限としては、特に制限されないが、以下の測定法R2で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が、例えば100億個/mL以下、10億個/mL以下であることが挙げられる。本発明の身体冷却剤が、水の中に発生させることができるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)のより具体的な濃度としては、5百万~100億個/mL、5百万~10億個/mL、1千万~100億個/mL、1千万~10億個/mL、2千万~100億個/mL、2千万~10億個/mL、2千5百万~100億個/mL、2千5百万~10億個/mL、3千万~100億個/mL、3千万~10億個/mL、3千5百万~100億個/mL、3千5百万~10億個/mL、5千万~100億個/mL、5千万~10億個/mL、7千5百万~100億個/mL、7千5百万~10億個/mL、1億~100億個/mL、1億~10億個/mL、1億5千万~100億個/mL、1億5千万~10億個/mL、2億~100億個/mL、2億~10億個/mL、2億5千万~100億個/mL、2億5千万~10億個/mL等が挙げられる。
(測定法R2)
25℃の水に、-80~0℃の身体冷却剤を、CO2含有率が3重量%以上の氷に換算して300mg/mL添加し、CO2含有率が3重量%以上である氷を含有する0~2℃の氷水とした後、その氷水の水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)をMalvern社製 ナノサイト NS300で測定する。
【0040】
(身体冷却剤の使用方法)
本発明の身体冷却剤の使用方法としては、後述の「本発明の身体用冷却液の製造方法」の項目において詳細に説明するが、本発明の身体冷却剤を液体に接触させて(好ましくは液体に含有させて)身体用冷却液を調製し、該身体用冷却液を皮膚に適用する(すなわち、皮膚に接触させる)方法が好ましく挙げられる。すなわち、本発明の身体冷却剤は、皮膚に適用するための身体用冷却液を用時調製するためのものであることが好ましい。本発明の身体冷却剤は、上記身体用冷却液として動物の皮膚に適用した場合に、その皮膚の血流を顕著に促進させることができる。当業者であれば、本願明細書を参照することにより、本発明の身体冷却剤におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の含有量や、該CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)のCO2含有率や、どの程度の濃度のウルトラファインバブルを必要とするか等に応じて、本発明の身体冷却剤の使用量を調整することができる。
【0041】
(液体)
本発明における「液体」としては、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)をその液体中に含有させたときに、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)がCO2の気泡(好ましくはウルトラファインバブル)を発生させることができ、かつ、動物の皮膚に接触させてもよい液体である限り特に制限されず、例えば、(i)「親水性溶媒」、(ii)「疎水性溶媒」、(iii)「親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒」、「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」等が挙げられる。本発明における「液体」が液体状である温度条件及び圧力条件は、溶媒の種類、液体の用途、液体の使用条件等によっても左右されるため一概に特定することはできないが、20℃、1気圧の条件下で液体状である液体が好ましく挙げられる。
【0042】
本発明に用いられる「親水性溶媒」としては、溶解度パラメーター(SP値)が20以上のものが好ましく、29.9以上がさらに好ましい。具体的には、水(47.9)、多価アルコール、低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。多価アルコールとして、エチレングリコール(29.9)、ジエチレングリコール(24.8)、トリエチレングリコール(21.9)、テトラエチレングリコール(20.3)、プロピレングリコール(25.8)等の2価アルコール、グリセリン(33.8)、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の4価以上のアルコール、ソルビトール等のヘキシトール、グルコース等のアルドース、ショ糖等の糖骨格を有する化合物、その他ペンタエリスリトール等が挙げられる。低級アルコールとしてはイソプロパノール(23.5)、ブチルアルコール(23.3)、エチルアルコール(26.9)が挙げられる。これらの親水性溶媒は2種以上を併用してもよい。なお括弧内は、溶解度パラメーターのδ値を示す。本発明における好ましい親水性溶媒としては、少なくとも水を含むことが好ましく、水であることがより好ましい。
【0043】
本発明に用いられる「疎水性溶媒」としては、好ましくは溶解度パラメーター(SP値)が、20.0未満の有機溶媒であり、具体的には、好ましくは炭化水素系溶剤もしくはシリコーン系溶剤またはそれらの混合物である。炭化水素系溶剤として、例えば、ヘキサン(14.9)、ヘプタン(14.3)、ドデカン(16.2)、シクロヘキサン(16.8)、メチルシクロヘキサン(16.1)、オクタン(16.0)、水添トリイソブチレン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン(18.8)、トルエン(18.2)、エチルベンゼン(18.0)、キシレン(18.0)等の芳香族炭化水素、クロロホルム(19.3)、1,2ジクロロエタン(19.9)、トリクロロエチレン(19.1)等のハロゲン系炭化水素等を例示することができ、シリコーン系溶剤として、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等が例示される。これらの中でヘキサン(14.9)、シクロヘキサン(16.8)が特に好ましい。これらの疎水性溶媒は、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記の「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」における「溶質」としては、かかる液体中にCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を含有させたときに、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)がCO2の気泡(好ましくはウルトラファインバブル)を発生させることができる限り特に制限されない。「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」として、具体的には、生理食塩水が挙げられる。
【0045】
(任意成分)
本発明の身体冷却剤は、CO2高含有氷を必須成分として含有しているが、本発明の効果(血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却する効果)を妨げない限り、任意成分をさらに含有していてもよい。かかる任意成分としては、薬効を有する成分、添加剤等が挙げられる。かかる薬効を有する成分としては、他の身体冷却剤、抗生剤、鎮痛剤、消炎剤等が挙げられ、上記の添加剤としては、香料、着色料、増粘剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0046】
(適用対象)
本発明の身体冷却剤や身体用冷却液の適用対象となる動物としては、特に制限されないが、哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類からなる群から選択されるいずれかの類に属する動物が好ましく挙げられ、中でも、哺乳類又は鳥類に属する動物がより好ましく挙げられ、中でも、哺乳類に属する動物がさらに好ましく挙げられ、中でも、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ポニー、ロバ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、サル、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、フェレット等がより好ましく挙げられ、中でも、ヒト、ウマがさらに好ましく挙げられ、中でも、ヒトが特に好ましく挙げられる。上記のウマとしては、競走馬であるサラブレッドが好ましく挙げられる。競走馬はレース後などに肢などを氷水で冷却することが広く行われているからである。競走馬を冷却することが広く行われているのは、競走馬は速く走ることができるように品種改良された結果、体格の割に肢が細長く、競走中や調教中に脚部を骨折したり、腱を痛めることが少なくないこと、及び、現代の競走馬のレースは非常に高速化しているため、レース後の競走馬の疲労が非常に激しいこと等の理由がある。
【0047】
本発明の身体冷却剤や身体用冷却液の適用は、適用対象の動物が身体の冷却作用を要する場合であれば特に制限されない。本発明の身体冷却剤のより具体的な用途としては、例えば、運動前、運動時、運動後の身体のアイシング用の冷却剤;打撲、ねん挫等の急性炎症を伴う身体部位のアイシング用の冷却剤;発熱時の身体冷却用の冷却剤;などが挙げられる。
【0048】
(適用箇所)
本発明の身体冷却剤や身体用冷却液の適用箇所としては、動物の全身又は局部の皮膚が挙げられる。本明細書において「全身」とは、その動物が呼吸を確保できる範囲の全身を意味し、例えば哺乳類であれば、通常、頭部以外、すなわち、頸部以下の皮膚を本発明の身体用冷却液に浸すことを意味する。また、本明細書において局部とは、身体の部分であれば特に制限されず、頭部、顔面、頸部、肩、腕、手、胸部、腹部、臀部、脚、足等が挙げられる。身体の複数の部分に対して同時に、本発明の身体冷却剤又は身体用冷却液を適用してもよい。なお、本明細書における「皮膚」としては、動物の皮膚である限り特に制限されず、また、便宜上、動物の粘膜も含まれる。かかる粘膜としては、唇、口腔内粘膜等が挙げられる。
【0049】
(適用方法)
本発明の身体冷却剤の適用方法としては、適用箇所の皮膚に本発明の身体冷却剤を直接適用してもよいが、適用箇所の皮膚に本発明の身体用冷却液を適用する方法が好ましく挙げられ、より具体的には、適用箇所の皮膚を、本発明の身体用冷却液に浸漬させる方法や、適用箇所の皮膚に、本発明の身体用冷却液を塗布する方法等が好ましく挙げられ、中でも、適用箇所の皮膚を、本発明の身体用冷却液に浸漬させる方法がより好ましく挙げられる。また、本発明の身体用冷却液を調製する際に用いるCO2高含有氷の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)は、本発明の製造方法の項目に記載する通りである。
【0050】
(使用時の温度)
本発明の身体用冷却液を皮膚に適用する際の、かかる身体用冷却液の温度としては、冷却する身体の部分の状態や冷却目的等に応じて適宜設定することができ、例えば0~10℃、0~8℃、0~6℃、0~4℃、0~3℃、0~2℃、2~10℃、2~8℃、2~6℃、2~4℃、4~10℃、4~8℃、4~6℃等が挙げられる。身体用冷却液の温度を調整する方法としては特に制限されず、例えば、身体冷却剤と接触させる液体の温度を調整する方法や、身体用冷却液の温度を冷却装置又は加温装置で調整する方法が挙げられる。かかる冷却装置や加温装置は、市販されているものを用いることができる。
【0051】
なお、本発明の身体冷却剤におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)は通常固体であり、CO2高含有氷を液体に接触させて身体用冷却液を調製する際には、CO2高含有氷の一部又は融解するときに、液体から多くの熱を奪うため、液体の温度は通常、比較的大きく低下する。したがって、本発明の身体冷却剤を液体に接触させて身体用冷却液を調製する際、身体用冷却液の所望の温度よりも高い温度の液体を用いることが好ましい。例えば、調製する身体用冷却液の所望の温度よりも、2℃以上、4℃以上又は6℃以上高い温度の液体を用いることが好ましい。また、本発明の身体用冷却液は、より高い血流低下抑制効果(好ましくは、血流維持効果)を得る観点から、皮膚に適用する際に用時調製することが好ましい。本明細書において、「用時調製する」ことには、皮膚への身体用冷却液の適用を開始する時点(皮膚への身体用冷却液の接触を開始する時点)から起算して、例えば1時間前以内、好ましくは40分前以内、より好ましくは30分前以内、さらに好ましくは20分前以内、より好ましくは10分前以内、さらに好ましくは5分前以内に、本発明の身体用冷却液を調製することが含まれる。
【0052】
(適用時間)
本発明の身体冷却剤や身体用冷却液の適用時間としては、本発明の効果(血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却する効果)が得られる限り特に制限されず、冷却する身体の部分の状態、冷却目的、身体用冷却液の温度等に応じて適宜設定することができるが、適用箇所の皮膚に本発明の身体用冷却液を例えば3~30分間、5~25分間、5~20分間、5~15分間、10~20分間、10~15分間接触させることが挙げられる。
【0053】
(適用頻度)
本発明の身体冷却剤や身体用冷却液の適用頻度としては、特に制限されず、症状の改善などに基づいて適宜判断すればよいが、例えば1日~3日に1回~3回程度が挙げられる。
【0054】
(血流低下抑制効果)
本明細書において、本発明の身体冷却剤(又はCO2高含有氷)が「血流低下抑制効果を有する」こと(又は、本発明の身体用冷却液が「血流低下抑制効果を有する」こと)には、本発明の身体冷却剤(又はCO2高含有氷)を液体に接触して得られる身体用冷却液(又は、本発明の身体用冷却液)を、24℃の室内において、動物の皮膚に適用すること(好ましくは、24℃の室内において、動物の皮膚を前述の身体用冷却液へ浸漬すること)を開始してから5分間経過した時点(好ましくは10分間経過した時点、より好ましくは15分間経過した時点)の前述の皮膚の血流量(以下、「本発明における血流量」とも表示する。)が、前述の身体用冷却液と同じ温度の氷水又は水を、24℃の室内において、前述の動物と同じ種類の動物の同じ部位の皮膚に適用すること(好ましくは、24℃の室内において、動物の皮膚を前述の氷水又は水へ浸漬すること)を開始してから5分間経過した時点(好ましくは10分間経過した時点、より好ましくは15分間経過した時点)の前述の皮膚の血流量(以下、「コントロール血流量」とも表示する。)よりも多いことが含まれ、好ましくは、本発明における血流量が、コントロール血流量に対して好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上多いことが含まれる。
【0055】
2.<本発明の身体用冷却液の製造方法>
本発明の身体用冷却液の製造方法(本発明の製造方法)としては、「CO2含有率が3重量%以上の氷(好ましくはCO2ハイドレート)」(又は、「本発明の身体冷却剤」)を液体に接触させる工程を含んでいる限り特に制限されない。CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を液体に接触させることにより、CO2の気泡(好ましくはウルトラファインバブル)を含む身体用冷却液を製造することができる。
【0056】
本明細書における「身体用冷却液」は、必ずしもすべてが液体状である場合に限られず、固体状のCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)と液体の混合物である場合も含まれる。
【0057】
本明細書において「CO2含有率が3重量%以上の氷(好ましくはCO2ハイドレート)を液体に接触させる」方法としては、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)と液体が接触するようにする限り特に制限されず、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を液体に含有させる方法が好ましく挙げられ、中でも、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を液体に添加又は投入する方法や、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)に液体を添加又は投入する方法がより好ましく挙げられ、中でも、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を液体に添加又は投入する方法がさらに好ましく挙げられる。
【0058】
本発明の製造方法におけるCO2高含有氷の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)は、CO2高含有氷がCO2ハイドレートであるか否か、圧密化CO2ハイドレートであるか否か、CO2高含有氷のCO2含有率、あるいは、どの程度の濃度のCO2の気泡(好ましくはウルトラファインバブル)を必要とするか等に応じて、当業者は適宜設定することができる。CO2高含有氷の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)の下限として、例えば、10mg/mL以上が挙げられ、CO2の気泡(好ましくはウルトラファインバブル)をより高濃度で得る観点から、好ましくは20mg/mL以上、より好ましくは50mg/mL以上、さらに好ましくは100mg/mL以上、より好ましくは150mg/mL以上、さらに好ましくは200mg/mL以上が挙げられる。また、CO2高含有氷の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)の上限としては特に制限されないが、例えば、5000mg/mL以下、3000mg/mL以下、2000mg/mL以下、1000mg/mL以下、500mg/mL以下が挙げられる。CO2高含有氷の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)の使用量のより具体的な例として、20~5000mg/mL、20~3000mg/mL、20~2000mg/mL、50~2000mg/mL、50~1000mg/mL、100~500mg/mL、150~500mg/mLが挙げられる。なお、CO2高含有氷の使用量(mg/mL)とは、液体1mLあたりに使用する(好ましくは添加する)、CO2高含有氷の重量(mg)を意味する。
【0059】
CO2高含有氷を液体に接触させる際の液体の温度としては、CO2の気泡(好ましくはウルトラファインバブル)が発生する限り特に制限されず、例えば0~50℃、0~35℃、0~25℃、0~20℃、0~15℃、0~10℃、0~7℃、0~5℃、3~50℃、3~35℃、3~25℃、3~15℃、3~10℃、3~7℃、3~5℃、6~50℃、6~35℃、6~25℃、6~20℃、6~15℃、6~10℃、6~7℃、10~50℃、10~35℃、10~25℃、10~15℃等が挙げられるが、約何℃の身体用冷却液を希望するかに応じて当業者は適宜設定することができる。本発明の身体冷却剤におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)は通常固体であり、CO2高含有氷を液体に接触させて身体用冷却液を調製する際には、CO2高含有氷の一部又は融解するときに、液体から多くの熱を奪うため、液体の温度は通常、比較的大きく低下する。したがって、本発明の身体冷却剤を液体に接触させて身体用冷却液を調製する際、身体用冷却液の所望の温度よりも高い温度の液体を用いることが好ましい。例えば、調製する身体用冷却液の所望の温度よりも、2℃以上、4℃以上又は6℃以上高い温度の液体、好ましくは2~10℃、4~10℃、6~10℃高い温度の液体を用いることが好ましい。
【0060】
3.<本発明の身体用冷却液>
本発明の身体用冷却液は皮膚に適用するための身体用冷却液である。本発明の身体用冷却液としては、200ppm以上の炭酸を含む液体であって、かつ、前述の測定法R1(又はR2)で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が5百万個/mL以上である限り特に制限されないが、本発明の製造方法によって製造される身体用冷却液であることが好ましい。
【0061】
前述したように、本明細書における「身体用冷却液」は、必ずしもすべてが液体状である場合に限られず、固体状のCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)と液体の混合物である場合も含まれる。
【0062】
本発明の身体用冷却液は200ppm以上の炭酸を含んでいる限り特に制限されないが、好ましくは500ppm(0.05重量%)以上、より好ましくは750ppm(0.075重量%)以上、さらに好ましくは900ppm(0.09重量%)以上、より好ましくは1000ppm(0.1重量%)の炭酸を含んでいることが好ましい。炭酸の上限は特に制限されないが、例えば4000ppm(0.4重量%)以下、3000ppm(0.3重量%)以下、2000ppm(0.2重量%)以下、1500ppm(0.15重量%)以下が挙げられる。本発明の身体用冷却液における炭酸濃度としてより具体的には、500~4000ppm、750~4000ppm、900~4000ppm、1000~4000ppm、500~3000ppm、750~3000ppm、900~3000ppm、1000~3000ppm、500~2000ppm、750~2000ppm、900~2000ppm、1000~2000ppm、500~1500ppm、750~1500ppm、900~1500ppm、1500~2000ppm等が挙げられる。
【0063】
本発明の身体用冷却液における炭酸濃度は、液温0~2℃かつ常圧下で測定した濃度を意味する。
【0064】
本発明の身体用冷却液におけるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)の濃度は、前述の測定法R1で測定した場合の濃度(個/mL)で、5百万個/mL以上である限り特に制限されないが、好ましくは1千万個/mL以上、より好ましくは2千万個/mL以上、さらに好ましくは2千5百万個/mL以上、より好ましくは3千万個/mL以上、さらに好ましくは3千5百万個/mL以上、より好ましくは5千万個/mL以上、さらに好ましくは7千5百万個/mL以上、より好ましくは1億個/mL以上、さらに好ましくは1億5千万個/mL以上、より好ましくは2億個/mL以上、さらに好ましくは2億5千万個/mL以上であることが挙げられる。また、本発明の身体用冷却液におけるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)の濃度の上限としては、特に制限されないが、前述の測定法R1で測定した場合のウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)の濃度が、例えば100億個/mL以下、10億個/mL以下であることが挙げられる。本発明の身体用冷却液におけるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)のより具体的な濃度としては、前述の測定法R1(又はR2)で測定した場合の濃度(個/mL)で、5百万~100億個/mL、5百万~10億個/mL、1千万~100億個/mL、1千万~10億個/mL、2千万~100億個/mL、2千万~10億個/mL、2千5百万~100億個/mL、2千5百万~10億個/mL、3千万~100億個/mL、3千万~10億個/mL、3千5百万~100億個/mL、3千5百万~10億個/mL、5千万~100億個/mL、5千万~10億個/mL、7千5百万~100億個/mL、7千5百万~10億個/mL、1億~100億個/mL、1億~10億個/mL、1億5千万~100億個/mL、1億5千万~10億個/mL、2億~100億個/mL、2億~10億個/mL、2億5千万~100億個/mL、2億5千万~10億個/mL等が挙げられる。
【0065】
本発明の身体用冷却液の温度としては、冷却する身体の部分の状態や冷却目的等に応じて適宜設定することができ、例えば0~10℃、0~8℃、0~6℃、0~4℃、0~3℃、0~2℃、2~10℃、2~8℃、2~6℃、2~4℃、4~10℃、4~8℃、4~6℃等が挙げられる。
【0066】
本発明の身体用冷却液の製造方法は、上記「2.」に記載したとおりである。
【0067】
本発明の身体用冷却液は、容器に収容されていてもよい。容器の形状や材質は特に制限されず、例えばプラスチック製のボトル容器を挙げることができる。
【0068】
4.<本発明の身体冷却方法>
本発明の身体冷却方法は、動物の身体を冷却する方法であり、好ましくは、動物の身体における血流量の低下を抑制しつつ、動物の身体を冷却する方法である。本発明の身体冷却方法としては、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)、本発明の身体冷却剤又は身体用冷却液を、動物(例えば、非ヒト動物)の全身又は局部の皮膚に適用する工程を含んでいる限り特に制限されない。
【0069】
CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)、本発明の身体冷却剤又は身体用冷却液を、動物の全身又は局部の皮膚に適用する(例えば接触させる)方法としては、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)又は本発明の血流促進剤を適用箇所の皮膚に接触させる方法、適用箇所の皮膚を、本発明の血流促進用液に浸漬させる方法、適用箇所の皮膚に、本発明の血流促進用液を塗布する方法等が好ましく挙げられ、中でも、適用箇所の皮膚を、本発明の血流促進用液に浸漬させる方法がより好ましく挙げられる。
【0070】
5.<本発明の他の態様>
本発明には、以下の態様も含まれる。
動物の身体を冷却するための(好ましくは、血流量の低下を抑制しつつ、動物の身体を冷却するための)、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)、本発明の身体冷却剤又は身体用冷却液の使用;
動物の身体を冷却するために(好ましくは、血流量の低下を抑制しつつ、動物の身体を冷却するために)、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)、本発明の身体冷却剤又は身体用冷却液を使用する方法;
身体の冷却作用を要する疾患の治療に使用するための、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)、本発明の身体冷却剤又は身体用冷却液;
本発明の身体冷却剤又は身体用冷却液の製造における、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の使用;
【0071】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0072】
試験1.[CO2ハイドレートの調製]
CO2ハイドレートの調製
4Lの水にCO2ガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でCO2ハイドレート生成反応を進行させ、CO2ハイドレート粒子が水中に懸濁している「CO2ハイドレートスラリー」を得た。かかるスラリーをシリンダー式の圧密成形機へ流し込み、2MPaの圧搾圧で3分間、圧縮を行った。その後、-20℃まで冷却して、圧密成形機から圧密化CO2ハイドレートの円筒状の塊を回収した後、かかる円筒状の塊を破砕した。最大長が3mm以上60mm以下の多面体形状の圧密化CO2ハイドレートを選択して回収し、以降の実験で用いた。なお、この圧密化CO2ハイドレートのCO2含有率は24%であり、CO2ハイドレート率は約85%であった。
【0073】
試験2.[CO2ハイドレート含有水等におけるウルトラファインバブルの濃度及び粒径]
水にCO2ハイドレートを添加して得られるCO2ハイドレート含有氷水におけるウルトラファインバブルの濃度や粒径を測定し、人工炭酸氷水や単なる氷水におけるウルトラファインバブルの濃度や粒径と比較した。
【0074】
(1)各サンプルの調製
5mLの水(約26℃)に対して、試験1で調製したCO2ハイドレート1.5g(約-80℃)を添加し、CO2ハイドレート含有氷水(0~2℃)(炭酸濃度1000ppm以上)を調製した。
【0075】
人工炭酸泉製造装置(「クリンスイ」、三菱ケミカル社製)及び炭酸ガスボンベを用いて5mLの氷水に炭酸ガスを付与し、人工炭酸氷水(0~2℃)(炭酸濃度1000ppm以上)を調製した。
【0076】
単なる氷水(0~2℃)を用意した。
【0077】
(2)ウルトラファインバブルの濃度及び粒径の測定
上記(1)で調製したCO
2ハイドレート含有氷水、人工炭酸氷水及び単なる氷水のそれぞれについて、マルバーン社製「ナノサイト NS300」を使用して気泡の濃度及び粒径を測定した。CO
2ハイドレート含有氷水における気泡の粒径分布と個数濃度(個/mL)を
図1に示す。
【0078】
図1に示されるように、水にCO
2ハイドレートを添加することにより、水中にCO
2ウルトラファインバブルが発生することが確認できた。今回のCO
2ハイドレート含有氷水(0~2℃)では、5.5億個/mLの濃度のウルトラファインバブルが発生し、その粒径の中央値は125nmであった。なお、単なる氷水中のウルトラファインバブルの濃度は0.036億個/mLであり、人工炭酸氷水中のウルトラファインバブルの濃度は0.046億個/mLであった。これらのことから、人工炭酸氷水中のウルトラファインバブルの濃度は、CO
2ハイドレート含有氷水のその濃度の100分の1以下に過ぎないことが示された。
【0079】
試験3.[CO2ハイドレートによる血流低下抑制効果の確認]
CO2ハイドレート含有氷水を動物の皮膚に適用した場合にその皮膚の血流量にどのような効果を与えるかを確認するために、以下の実験を行った。
【0080】
(1)各サンプル氷水の調製
26℃の150mLの水に対して、試験1で調製したCO2ハイドレート45g(約-80℃)を添加し、CO2ハイドレート含有氷水(0~2℃)(炭酸濃度1000ppm以上)を調製した。
【0081】
26℃の水150mLに氷45gを添加して得られた氷水に、人工炭酸泉製造装置(「クリンスイ」、三菱ケミカル社製)及び炭酸ガスボンベを用いて炭酸ガスを付与し、人工炭酸氷水(0~2℃)(炭酸濃度1000ppm以上)を調製した。
【0082】
26℃の水150mLに氷45g添加して、単なる氷水(0~2℃)を調製した。
【0083】
(2)血流量測定試験
血流量測定試験には、12時間毎の明暗周期(8時~20時まで点灯)下に24℃の恒温動物室にて1週間飼育した体重約300gのWistar系雄ラットを使用した。血流量測定については、ラットの尾の背部表面の起始部に近い部分にレーザー血流計(ALF21、アドバンス社製)のプローブ(径1cm)を外科用テープで固定して血流量(mL/分/組織100g)を測定した。
【0084】
ラットの血流量のデータが安定したところで、上記(1)で調製した各サンプル氷水中にラットの尻尾を30分間浸漬しながら、尻尾の皮膚の血流量を測定した。その後、各サンプル氷水を尻尾から外して、30分間、尻尾の皮膚の血流量を測定した。なお、血流計のプローブがサンプル氷水に接触すると測定値がずれるため、尻尾の浸漬部より少し上にプローブが位置するように、尻尾をサンプル氷水中に浸漬した。また、血流量測定試験中は、保温装置にて体温(ラット直腸温)を37.0±0.5℃に保った。血流量データはPower-Lab analog-to-digital converterを用いて採取した。血流量データは5分間毎の血流量(ml/分/組織100g)の平均値を採用し、サンプル氷水への尻尾の浸漬開始前5分間の平均値(0分値)を100%とした百分率で表した。各サンプル氷水に尻尾を浸漬している30分間の各サンプル氷水の温度は、0~2℃に保たれていることを温度計により確認した。かかる血流量測定試験の結果を
図2に示す。
【0085】
図2に示されるように、尻尾を単なる氷水(「氷水」)に浸漬させると、尻尾の皮膚の血流量は徐々に低下していき、浸漬開始から30分経過後に最低値66.0%となり、浸漬開始から60分経過後(すなわち、浸漬終了から30分経過後)まで血量流はその付近の値にとどまり、浸漬終了から30分経過後に67.1%となった。
【0086】
一方、尻尾を人工炭酸氷水に浸漬させると、尻尾の皮膚の血流量は徐々に低下していき、浸漬開始から15分後に80.0%となり、それ以降はその付近の値にとどまり、浸漬開始から45分経過後(すなわち、浸漬終了から15分経過後)に最低値75.7%となったものの、その後やや上昇して浸漬開始から60分経過後(すなわち、浸漬終了から30分経過後)に88.5%となった。
【0087】
それに対し、尻尾をCO2ハイドレート含有氷水に浸漬させると、尻尾の皮膚の血流量は全体として少し上昇し、CO2ハイドレート含有氷水を尻尾から外した後も、浸漬開始前の血流量(100%)を下回ることはなかった。血流量の最高値(107.4%)は、浸漬開始から60分経過後(すなわち、浸漬終了から30分経過後)に測定された。
【0088】
これらの結果から、CO2ハイドレートを含有する低温の液体(例えばCO2ハイドレート含有氷水)を、動物の身体の皮膚に適用すると、その皮膚の血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却することができることが証明された。そして、かかる効果は、単なる低温の水(例えば、単なる氷水)では達成し得ないことはいうまでもなく、低温の人工炭酸泉(例えば、人工炭酸氷水)でも達成し得ないことも証明された。これらのことから、CO2含有率が3重量%以上の氷(好ましくはCO2ハイドレート)を含有する低温の液体で身体をアイシングすると、従来のアイシング法で問題とされていた血流量の低下を抑制することができ、その結果、冷却による炎症抑制効果、疲労物質除去効果、運動パフォーマンス維持効果が得られると考えられる
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、血流量の低下を抑制しつつ、身体を冷却することができる身体冷却剤や、かかる身体冷却剤を液体に接触させる工程を含む身体用冷却液の製造方法等を提供することができる。