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特許7285634二次電池用複合セパレータおよびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】二次電池用複合セパレータおよびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/42 20210101AFI20230526BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/437 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20230526BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20230526BHJP
【FI】
H01M50/42
H01M50/403 D
H01M50/411
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/429
H01M50/434
H01M50/437
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M50/489
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018223059
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2019102453
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0161609
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】クヮク ウォン スブ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ス ジ
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ユン
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185530(JP,A)
【文献】特表2015-536030(JP,A)
【文献】特開2001-059036(JP,A)
【文献】特開2017-191778(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/42
H01M 50/403
H01M 50/411
H01M 50/414
H01M 50/417
H01M 50/429
H01M 50/434
H01M 50/437
H01M 50/443
H01M 50/451
H01M 50/489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、
前記多孔性基材上に形成され、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含む水系スラリーが熱硬化して形成されたコーティング層と、を含む二次電池用複合セパレータであって、
前記第1バインダー粒子が、前記第1バインダー粒子の全量を基準として、アクリルアミド系単量体30~50 重量% 、ビニルシアン系単量体20~40重量% 、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~20重量% 、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~20重量%を含む単量体混合物の共重合体を含む、二次電池用複合セパレータ。
【請求項2】
前記無機粒子と前記第1バインダー粒子は、平均粒径が10nm~2μmである、請求項1に記載の二次電池用複合セパレータ。
【請求項3】
前記第2バインダーは、セルロース系およびポリビニルアルコール系化合物から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物である、請求項1に記載の二次電池用複合セパレータ。
【請求項4】
前記熱硬化剤は、エポキシ基およびオキサゾリン基から選択される何れか1つまたは2つ以上の官能基を含む化合物から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物である、請求項1に記載の二次電池用複合セパレータ。
【請求項5】
多孔性基材と、
前記多孔性基材上に形成され、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含む水系スラリーが熱硬化して形成されたコーティング層と、を含む二次電池用複合セパレータであって、
前記第1バインダー粒子が、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み、
前記第1バインダー粒子は、ガラス転移温度が150~200℃ である、二次電池用複合セパレータ。
【請求項6】
多孔性基材と、
前記多孔性基材上に形成され、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含む水系スラリーが熱硬化して形成されたコーティング層と、を含む二次電池用複合セパレータであって、
前記第1バインダー粒子が、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み、
160℃での熱収縮率が3%以下であり、溶融破断温度が400℃ 以上である、二次電池用複合セパレータ。
【請求項7】
請求項1、5、6の何れか一項に記載の二次電池用複合セパレータを含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用複合セパレータおよびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の高容量、高出力の傾向に伴い、セパレータにおいても、高強度、高透過度、熱的安定性、および充放電時における二次電池の電気的安全性のためのセパレータの特性向上の要求が益々大きくなっている。リチウム二次電池の場合、電池の製造過程および使用中における安全性の向上のために、高い機械的強度が求められており、容量および出力の向上のために、高い透過度および高い熱的安定性が求められている。
【0003】
かかるリチウム二次電池の安全性の確保および改善のためには、リチウム二次電池に含まれている種々の構成のうち、セパレータの物理的、電気化学的安全性が特に重要である。例えば、セパレータの熱的安定性が低下すると、電池内の温度上昇によって発生するセパレータの損傷もしくは変形に起因する電極間短絡が発生し得るため、電池の過熱もしくは火事の危険性が増加する。また、リチウム二次電池の活用範囲がハイブリッド用自動車などに拡大しており、過充電による二次電池の安全性の確保が重要な要求事項となっている。また、過充電による電気的な圧力に耐えられるセパレータの特性が求められている。
【0004】
二次電池の熱的安定性は、セパレータのシャットダウン温度、溶融破断温度、および熱収縮率などの影響を受ける。中でも、高温での熱収縮率は、電池の熱的安定性への影響が大きい。熱収縮率が大きいと、電池の内部が高温になった時に収縮過程で電極の端部が露出し、電極間短絡が発生することとなり、これにより発熱/発火/爆発などが発生する。また、セパレータの溶融破断温度が高いとしても、熱収縮率が大きいと、セパレータが昇温される過程で電極の端部が露出することとなり、電極間短絡が発生し得る。
【0005】
上記のような電気化学素子の安全性問題を解決するために、一般に用いられているセパレータの多孔性高分子基材として、気孔の形成に有利であり、耐薬品性、機械的物性、および熱的特性に優れたポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのようなポリオレフィン系高分子フィルムが広く用いられている。ところが、ポリオレフィンは、高温で熱収縮が激しく、物理的にも劣っている。通常、ポリオレフィン系微多孔膜を成膜した後、その表面に無機物層を積層する方法によりポリオレフィンフィルムの耐熱性を高める方法が選択されている。しかしながら、ポリオレフィン系微多孔膜の成膜過程では熱固定が行われるが、この過程でフィルムが部分的に溶融され、多孔性膜の表面気孔が閉塞および損傷され、通気時間が大きく増加することになる。
【0006】
また、無機物層を含む従来のセパレータは、製造過程で有機溶媒を用いるため、有機溶媒に可溶であるバインダー組成物をベースとするコーティング法では、いくつかの問題がある。第一に、有機溶媒に可溶であるバインダーは、乾燥過程で有機溶媒の揮発によってゲルが形成される過程を経るため、溶媒が閉じ込められる(solvent-impermeable)空間が発生し、有/無機コーティング層のバラツキが生じる原因となる。かかる現象により、電池特性が低下する恐れがある。また、防幅設備が必要であり、作業過程で環境や人体に有害な副産物が生じる。そして、有機溶媒にバインダーが溶解された状態で、多孔性高分子基材の気孔が閉塞されるという問題がある。
【0007】
それを解決するために、韓国特許出願公開第10-2016-0041492号には、多孔性高分子基材上に、ポリビニリデンフルオリド分散液、無機物粒子、および有機物粒子を含む水系スラリーを用いてコーティング層を形成する方法が提案されている。これによるセパレータとして、多孔性基材との接着力を向上させ、耐熱性および強度に優れた電気化学素子用セパレータが提案されているが、電池の安全性の確保のために用いるには、セパレータの熱的、電気化学的安全性の程度が足りなくて、電池容量の向上が依然として必要であるという問題がある。
【0008】
かかる問題を解消するための、優れた熱的、電気化学的安定性を有し、気孔確保に有利な新しいセパレータの製造工程が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国特許出願公開第10-2016-0041492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一態様は、低い熱収縮率および高い溶融破断温度などの、著しく向上した熱的安定性を有する二次電池用複合セパレータを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、多孔性基材が損傷した際にもリチウムイオンの急激な移動および過負荷を防止することができる二次電池用複合セパレータを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記二次電池用複合セパレータを含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、多孔性基材と、前記多孔性基材上に形成され、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含む水系スラリーが熱硬化して形成されたコーティング層と、を含む二次電池用複合セパレータであって、前記第1バインダー粒子が、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含んでもよい。
【0014】
前記第1バインダー粒子は、第1バインダー粒子の全量を基準として、アクリルアミド系単量体30~50重量%、ビニルシアン系単量体20~40重量%、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~20重量%、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~20重量%を含んでもよい。
【0015】
前記無機粒子と第1バインダー粒子は、平均粒径が10nm~2μmであってもよい。
【0016】
前記第2バインダーは、セルロース系およびポリビニルアルコール系化合物から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0017】
前記熱硬化剤は、エポキシ基およびオキサゾリン基から選択される何れか1つまたは2つ以上の官能基を含む化合物から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0018】
前記第1バインダー粒子は、ガラス転移温度が150~200℃であってもよい。
【0019】
前記二次電池用複合セパレータは、160℃での熱収縮率が3%以下であり、溶融破断温度が400℃以上であってもよい。
【0020】
本発明の一態様によるリチウム二次電池は、上述の二次電池用複合セパレータを含んでもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、低い熱収縮率および高い溶融破断温度などの著しく向上した熱的安定性を有するため、急激な温度上昇などの異常現象による発火や破裂を防止することができる。
【0022】
また、本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、溶融破断温度の著しい上昇を誘導することで、熱的安定性をさらに向上させることができる。
【0023】
さらに、本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、多孔性基材の気孔閉塞を防止することができ、リチウムイオンの移動が円滑であって、二次電池の放電容量などの電気的特性が著しく向上することができる。
【0024】
また、本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、さらに強固で且つ緻密に粒子間の結合が誘導されたコーティング層が形成されるため、多孔性基材が損傷した際にもリチウムイオンの急激な移動および過負荷を防止することができる。
【0025】
また、本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、電気自動車などに適用される大型リチウム二次電池の熱的安定性および電気的特性などの性能を改善するために導入することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明による二次電池用複合セパレータおよびそれを含むリチウム二次電池についてより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を詳細に説明するための参照にすぎず、本発明がこれに制限されるものではなく、種々の形態で実現可能である。
【0027】
また、他に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者の1つによって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本願で説明に用いられる用語は、単に特定の実施例を効果的に述べるためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
【0028】
本発明の一態様は、二次電池用セパレータの熱的安定性および電気的特性を向上させた二次電池用複合セパレータに関する。
【0029】
通常の二次電池用セパレータは、多孔性基材上における耐熱性の向上のためのコーティング層として、非水系または水系バインダーを無機粒子と混合して用いてきた。前記非水系バインダーは、有機溶媒とフッ素系重合体であるポリビニリデンフルオリドなどを用いることにより、環境汚染があるという問題だけでなく、多孔性基材とコーティング層との接着力が著しく劣っていた。これを解決するために水系バインダーが提示されているが、水を用いるため環境にやさしく、バインダーの使用含量を低減して電池容量を高めることができるという利点があるものの、熱的安定性が非常に低かった。また、前記非水系または水系バインダーは、有機溶媒に溶解された有機物、または水に溶解されたバインダーなどが多孔性基材の気孔に浸透し、気孔閉塞によってリチウムイオンの移動が制限されるため、過熱および過負荷による発火、爆発などの問題があった。特に、熱的安定性が低いため、過熱および過負荷に対する対処が難しく、セパレータとして機能することが困難であった。
【0030】
しかし、本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、気孔閉塞による電池内部抵抗の上昇および過熱などを防止することができる。また、熱硬化剤を含むことで、第1バインダー粒子および第2バインダーとの熱硬化反応によって機械的物性が向上することができ、これにより、多孔性基材が損傷した際にもリチウムイオンの急激な移動および過負荷を防止することができる。特に、多孔性基材上に、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含んで結合されたコーティング層が形成されることで、低い熱収縮率、高いガラス転移温度、および高い溶融破断温度によって熱的安定性が著しく向上することができ、リチウム二次電池内の急激な温度上昇などの異常現象による発火や破裂を防止することができる。
【0031】
本発明を具体的に説明すると、次のとおりである。
【0032】
本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、多孔性基材と、前記多孔性基材上に形成され、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含む水系スラリーが熱硬化して形成されたコーティング層と、を含む二次電池用複合セパレータであって、前記第1バインダー粒子が、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含む水系粒子より製造される。
【0033】
したがって、本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、低い熱収縮率、高いガラス転移温度、および高い溶融破断温度の特性を有するため、熱的安定性が著しく向上し、リチウム二次電池内の急激な温度上昇などの異常現象による発火や破裂を防止することができる。
【0034】
本発明の一態様による二次電池用複合セパレータは、高温での熱収縮率が減少し、溶融破断温度が著しく向上するため、熱的安定性が向上することができる。また、多孔性基材の気孔閉塞などが防止され、リチウムイオンが円滑に移動するため、リチウム二次電池の放電容量がさらに向上することができる。
【0035】
また、本発明によるコーティング層を含む複合セパレータは、バインダーによる気孔閉塞によってリチウムイオンの移動が制限されることを防止し、圧力が加えられた時に気孔が安定して保持されることができる。
【0036】
本発明の一態様によると、前記第1バインダー粒子は、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体をバインダーとして含むことで、驚くべきことに、160℃で著しく低い熱収縮率を有するため、著しく優れた熱的安定性および寿命改善効果を奏することができる。
【0037】
本発明の一態様によると、前記第1バインダー粒子は、第1バインダー粒子の全量を基準として、アクリルアミド系単量体30~50重量%、ビニルシアン系単量体20~40重量%、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~20重量%、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~20重量%を含んでもよい。好ましくは、アクリルアミド系単量体40~50重量%、ビニルシアン系単量体30~40重量%、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~15重量%、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~15重量%を含んでもよい。前記範囲の単量体混合物の共重合体としてコーティング層に含むことで、二次電池用複合セパレータが160℃で低い熱収縮率を有するため、著しく向上した熱的安定性および寿命改善効果を奏することができるので好ましい。
【0038】
本発明の一態様によると、前記アクリルアミド系単量体の具体的な例としては、アクリルアミド、n-メチロールアクリルアミド、n-ブトキシメチルアクリルアミド、およびメタクリルアミドなどから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物が挙げられる。前記アクリルアミド系単量体が、ビニルシアン系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体と共重合体で製造される場合、二次電池の電解質に対する優れた濡れ性を有することができ、第1バインダー粒子自体が多孔性を有することができるため、第1バインダー粒子内でも電解質が十分に保持され、優れたイオン伝導度でセパレータの安定性がさらに向上することができる。
【0039】
前記ビニルシアン系単量体の具体的な例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、またはこれらの混合物が挙げられる。前記ビニルシアン系単量体が、アクリルアミド系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体と共重合体で製造される場合、多孔性基材および無機粒子との接着性および密着性が向上し、セパレータの剛性、曲げ強度などの機械的特性が向上することができる。
【0040】
前記カルボキシル基を有するアクリル系単量体の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの混合物が挙げられる。前記カルボキシル基を有するアクリル系単量体が、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体と共重合体で製造される場合、高温におけるセパレータの熱収縮率が著しく減少し、優れた熱的安定性および寿命改善効果を奏することができる。
【0041】
前記水酸化基を有するアクリル系単量体の具体的な例としては、2-ヒドロキシアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-アクリルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、および2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートなどから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物が挙げられる。前記水酸化基を有するアクリル系単量体が、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、およびカルボキシル基を有するアクリル系単量体と共重合体で製造される場合、高温でもセパレータの熱収縮率が著しく減少し、優れた熱的安定性および寿命改善効果を奏することができる。
【0042】
本発明の一態様によると、複合セパレータは、160℃での熱収縮率が3%以下、好ましくは160℃での熱収縮率が1.5%以下であって、非常に低い熱収縮率を有することができる。具体的には、前記160℃での熱収縮率が0.1~3%であってもよく、好ましくは0.1~1.5%であってもよい。前記熱収縮率を有する場合、リチウム二次電池内の急激な温度上昇などの異常現象による発火や破裂を防止することができる。
【0043】
本発明の一態様による前記無機粒子としては、アルミナ(Alumina)、ベーマイト(Boehmite)、アルミニウムヒドロキシド(Aluminum Hydroxide)、チタンオキシド(Titanium Oxide)、バリウムチタンオキシド(Barium Titanium Oxide)、マグネシウムオキシド(Magnesium Oxide)、マグネシウムヒドロキシド(Magnesium Hydroxide)、シリカ(Silica)、クレー(Clay)、およびガラス粉末(Glass powder)などから選択される何れか1つまたは2つ以上の無機粒子が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明の一態様による前記無機粒子は、前記コーティング層の全量100重量%に対して70重量%以上であり、好ましくは85重量%以上、より好ましくは95重量%以上であってもよく、具体的に、70重量%~99.5重量%、好ましくは85重量%~99.5重量%、より好ましくは95重量%~99.5重量%であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0045】
本発明の一態様によると、前記第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤は、前記コーティング層の全量100重量%に対して30重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは5重量%以上であってもよく、具体的に、0.5重量%~30重量%、好ましくは0.5重量%~15重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0046】
本発明の一態様によると、前記無機粒子と第1バインダー粒子は、平均粒径が10nm~2μmであり、好ましくは50~800nmであってもよい。前記無機粒子と第1バインダー粒子の平均粒径は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0047】
本発明の一態様によると、前記二次電池用複合セパレータの熱的安定性および電気的特性のためには異なることが好ましく、具体的な例として、前記無機粒子と第1バインダー粒子は、下記式1を満たす平均粒径比を有しもよい。
【0048】
【数1】
【0049】
前記式1中、
前記Rは第1バインダー粒子の平均粒径であり、前記Rは無機粒子の平均粒径である。
【0050】
前記無機粒子と第1バインダー粒子が前記平均粒径比で含まれる場合、二次電池用複合セパレータの熱的安定性がさらに向上することができる。また、無機粒子が、第1バインダー粒子による部分的な接着または結合により、無機粒子の間または無機粒子と多孔性基材との間に生じる気孔を確保することができるため、リチウムイオンの移動が円滑であり、放電容量を向上させることができるので好ましい。
【0051】
本発明の一態様によると、前記第2バインダーは粒子状ではなく、水系スラリーで溶解される水溶性バインダーを用いることが好ましい。好ましくは、前記第2バインダーは、セルロース系およびポリビニルアルコール系化合物などから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。具体的な例として、前記セルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、およびセルロースアセテートプロピオネートなどから選択される何れか1つまたは2つ以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。また、前記ポリビニルアルコール系化合物は、ビニルアルコールを単量体として重合されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0052】
前記第2バインダーをコーティング層に含む場合、無機粒子、第1バインダー粒子、および熱硬化剤のみを含む場合に備えて溶融破断温度を著しく向上させることができる。具体的に、無機粒子、第1バインダー粒子、および熱硬化剤のみでコーティング層を形成する場合、溶融破断温度が増大するものの、300℃以上の溶融破断温度への増加は容易ではない。しかし、第2バインダーを含む場合には、400℃以上の溶融破断温度を有することができるので、熱的安定性に非常に優れた二次電池用複合セパレータが製造可能である。
【0053】
特に、第2バインダーとして水溶性のバインダーを含んで水系スラリーとしてコーティングされる本発明は、第2バインダーが疎水性の多孔性基材の表面には殆どコーティングされないため、多孔性基材の気孔を損傷させない。また、無機粒子と第1バインダー粒子との間の橋の役割をし、結合強度を補強して耐熱性および溶融破断温度を著しく増加させると考えられる。
【0054】
本発明の一態様によると、前記第2バインダーは、前記第1バインダー粒子の100重量部に対して0.1~20重量部であり、好ましくは1~10重量部であってもよいが、これに制限されるものではない。前記範囲で含まれる場合、硬化密度が向上し、優れた強度のコーティング層が提供されることができ、コーティング層の溶融破断温度がさらに向上することができる。
【0055】
本発明の一態様によると、前記熱硬化剤は、エポキシ基およびオキサゾリン基から選択される何れか1つまたは2つ以上の官能基を含む化合物から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。好ましくは、エポキシ基化合物またはエポキシ基化合物を含む混合物であってもよい。
【0056】
前記熱硬化剤の使用により、本発明では、熱的安定性が著しく増加され、且つ溶融破断温度の向上が顕著になり、表面の均一性も別に数値化していないが、走査型電子顕微鏡などで観察した結果、非常に均一な表面を付与することができる。その理由は明らかではないが、単量体のカルボキシル基または水酸化基などの反応性基と熱的反応やその他の反応により、第1バインダー粒子と第1バインダー粒子、または第1バインダー粒子と無機粒子などと化学結合または2次結合などによって粒子間のさらに強固な結合を誘導する橋の役割をしてこのような現象が現れると考えられる。また、前記熱硬化剤は、第1バインダー粒子と第2バインダーの極性基などと反応したり、第2バインダーと無機粒子となどの様々な結合や化学的引力が作用されてなることができる。
【0057】
前記熱硬化剤として、エポキシ基を含む化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N´,N´-テトラグリシジルエチレンジアミン、およびグリセリンジグリシジルエーテルなどから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物が挙げられる。前記オキサゾリン基を含む化合物としては、2´-メチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2´-プロピレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-p-フェニレンビス(4,4´-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2´-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2´-p-フェニレンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2´-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2´-m-フェニレンビス(4,4´-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2´-m-フェニレンビス(4-フェニレンビス-2-オキサゾリン)、2,2´-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2´-o-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2´-ビス(2-オキサゾリン)、2,2´-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2´-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2´-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)などから選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0058】
本発明の一態様によると、前記第1バインダー粒子中のカルボキシル基を有するアクリル系単量体および水酸化基を有するアクリル系単量体に対する熱硬化剤の含量は、1:0.01~1:2モル比で含まれてもよいが、これに制限されるものではない。前記範囲で含まれる場合、残余硬化剤による電池性能の低下を防止することができ、コーティング層の強度が向上して、多孔性基材が損傷した際にもリチウムイオンの急激な移動および過負荷を防止することができるので好ましい。
【0059】
本発明の一態様によると、前記熱硬化剤は、エポキシ基およびオキサゾリン基から選択される何れか1つまたは2つ以上の官能基を含むエマルションまたは水溶性タイプのオリゴマー状であってもよい。通気性または耐熱性の増加に応じてその形態を選択して提供することができ、好ましくは水溶性タイプのオリゴマーであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0060】
また、本発明の一態様によると、前記オリゴマー熱硬化剤は、重量平均分子量が10,000~200,000g/molであってもよいが、これに制限されるものではない。前記重量平均分子量を有する場合、コーティング層の形成時に均一な塗布のための粘度調節が容易であり、溶融破断温度などが向上して熱的安定性が高くなることができる。
【0061】
本発明の一態様によると、前記コーティング層の厚さは、本発明の目的を達成する限り制限されないが、例えば、多孔性基材上に1~20μm、好ましくは1~15μmの厚さで形成されてもよく、これに制限されるものではない。前記厚さのコーティング層が形成される場合、熱的安定性の確保が可能であり、イオン透過性に相対的に優れるため、電池容量が向上することができるので好ましい。
【0062】
本発明の一態様によると、前記二次電池用複合セパレータは、160℃での熱収縮率が3%以下であり、溶融破断温度が400℃以上であってもよい。好ましくは160℃での熱収縮率が1.5%以下であり、溶融破断温度が405℃以上であってもよい。具体的には、前記熱収縮率が0.1~3%であり、溶融破断温度が400~600℃であってもよい。好ましくは、熱収縮率が0.1~1.5%であり、溶融破断温度が405~600℃であってもよい。本発明で製造された二次電池用複合セパレータは、上記のような物性を有することにより、高温での収縮率が著しく低いため、熱的安定性が著しく向上し、寿命改善効果も有することができる。
【0063】
本発明の一態様によると、前記多孔性基材としては、ポリオレフィン系樹脂などの本技術分野で選択される微多孔膜であれば制限されずに使用可能であり、さらに、不織布、紙、およびこれらの微多孔膜の内部気孔または表面に無機粒子を含むなど、気孔を有し、且つ電池に適用可能な多孔膜であれば特に制限されない。
【0064】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂の単独または混合物であることが好ましく、具体的な例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの共重合体から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。また、前記多孔性基材は、前記ポリオレフィン樹脂の単独であってもよく、またはポリオレフィン樹脂を主成分とし、無機粒子または有機粒子をさらに含んで製造されたものであってもよい。また、前記多孔性基材は積層形態で使用可能であり、例えば、ポリオレフィン系樹脂が多層で構成されてもよく、多層で構成された基材層も、何れか1つの層または全ての層がポリオレフィン樹脂中に無機粒子および有機粒子を含むことも排除しない。
【0065】
本発明の一態様によると、前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、好ましくは5~30μmであってもよい。前記多孔性基材は、主に延伸により作製された多孔性基材が採用可能であるが、これに制限されるものではない。
【0066】
本発明の一態様による上述の二次電池用複合セパレータは、a)多孔性基材上に、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、熱硬化剤、および水を含む水系スラリーを塗布するステップと、b)前記コーティングの後に、熱硬化してコーティング層を形成するステップと、を含み、前記第1バインダー粒子が、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含む、二次電池用複合セパレータの製造方法により提供される。
【0067】
前記製造方法により、熱的安定性が非常に向上し、電池の放電容量などの容量特性が非常に向上したリチウム二次電池用セパレータを製造することができる。これは、後述の実施例からも裏付けられる。
【0068】
本発明を具体的に説明すると、次のとおりである。
【0069】
本発明の一態様による前記多孔性基材上に、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、熱硬化剤、および水を含む水系スラリーを塗布するステップは、多孔性基材上に、熱的安定性および電気的特性に優れたコーティング層を形成するための水系スラリーを塗布するステップである。前記多孔性基材、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、熱硬化剤の種類は上述のとおりであるため、その説明を省略する。
【0070】
本発明の一態様によると、前記水系スラリーは、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含んで水に分散された形態であってもよい。具体的には、第1バインダー粒子は、エマルションまたは懸濁重合により水に分散された粒子状で提供されてもよい。前記第1バインダー粒子が分散された水に、無機粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を投入して分散させることで水系スラリーを製造することができる。
【0071】
前記第1バインダー粒子は、エマルション重合または懸濁重合により、アクリルアミド系単量体、ビニルシアン系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、および水酸化基を有するアクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含んでコーティング層として形成され、これにより、驚くべきことに、複合セパレータが160℃で著しく低い熱収縮率を有するため、著しく優れた熱的安定性および寿命改善効果を有することができる。また、前記複合セパレータは、気孔閉塞によってリチウムイオンの移動が制限されることを防止し、圧力が加えられた時に気孔を安定して保持することができるので好ましい。
【0072】
本発明の一態様によると、前記第1バインダー粒子は、第1バインダー粒子の全量を基準として、アクリルアミド系単量体30~50重量%、ビニルシアン系単量体20~40重量%、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~20重量%、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~20重量%を含んでもよい。好ましくは、アクリルアミド系単量体40~50重量%、ビニルシアン系単量体30~40重量%、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~15重量%、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~15重量%を含んでもよい。前記範囲の単量体混合物の共重合剤を含んでコーティング層を形成することで、複合セパレータが160℃で著しく低い熱収縮率を有するため、著しく優れた熱的安定性および寿命改善効果を有することができる。
【0073】
本発明の一態様によると、前記無機粒子と第1バインダー粒子は、平均粒径が10nm~2μmであり、好ましくは50~800nmであってもよい。前記無機粒子と第1バインダー粒子の平均粒径は、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、セパレータの熱的安定性および電気的特性のためには異なることが好ましい。
【0074】
本発明の一態様によると、前記複合セパレータの熱的安定性および電気的特性のためには異なることが好ましく、具体的な例として、前記無機粒子と第1バインダー粒子は、前記式1を満たす平均粒径比を有してもよい。
【0075】
【数2】
【0076】
前記式1中、
前記Rは第1バインダー粒子の平均粒径であり、前記Rは無機粒子の平均粒径である。
【0077】
前記無機粒子と第1バインダー粒子が前記平均粒径比で含まれる場合、複合セパレータの熱的安定性がさらに向上することができる。また、無機粒子が、第1バインダー粒子による部分的な接着または結合により、無機粒子の間または無機粒子と多孔性基材との間に生じる気孔を確保することができるので好ましい。
【0078】
本発明の一態様によると、前記水は、蒸留水、精製水などの水から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0079】
本発明の一態様によると、前記製造方法の水系スラリーを多孔性基材に塗布する方法としては、この分野で選択される通常の方法が採用可能であり、特に制限されいが、具体的な例として、バー(bar)コーティング法、ロッド(rod)コーティング法、ダイ(die)コーティング法、ワイヤ(wire)コーティング法、コンマ(comma)コーティング法、マイクログラビア/グラビア法、ディップ(dip)コーティング法、スプレー(spray)法、インクジェット(ink-jet)コーティング法、またはこれらを組み合わせた方式および変形した方式などが用いられることができ、これによる塗布および乾燥ステップを経て、前記多孔性基材上に1~20μm、好ましくは1~15μmの厚さでコーティング層を形成することができる。但し、コーティング層の厚さがこれに制限されるものではない。
【0080】
本発明の一態様によると、前記b)ステップにおける熱硬化温度は80~120℃であってもよい。前記熱硬化は、乾燥後に行ってもよく、または熱硬化のみにより行ってもよい。前記範囲で熱硬化を行うと、多孔性基材の物性に影響を与えることなく、且つ均一にコーティング層を硬化させてコーティング不良を防止することができるので好ましい。前記熱硬化するステップは、多孔性基材上に形成された水系スラリーの水乾燥および熱硬化剤の硬化反応を誘導し、最終的にコーティング層を形成するステップである。
【0081】
本発明の一態様によると、上述の二次電池用複合セパレータを含むリチウム二次電池を提供する。前記リチウム二次電池は、本発明の一態様による前記二次電池用複合セパレータと、正極と、負極と、非水電解液と、を含んで製造してもよい。
【0082】
前記二次電池用複合セパレータについての説明は上述のとおりであるため省略する。
【0083】
本発明の一態様によると、前記正極および負極は、正極活物質および負極活物質に、溶媒、必要に応じて、バインダー、導電材、分散材などを混合および撹拌して合剤を製造した後、それを金属材料の集電体に塗布して乾燥してからプレスすることで製造してもよい。
【0084】
前記正極活物質としては、二次電池の正極に通常用いられる活物質であれば使用可能である。例えば、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、Ga、B、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは2つ以上の金属を含むリチウム金属酸化物粒子を用いてもよい。
【0085】
前記負極活物質としては、二次電池の負極に通常用いられる活物質であれば使用可能である。リチウム二次電池の負極活物質としては、リチウムの挿入(intercalation)が可能な物質が好ましい。非限定的な一実施例として、負極活物質としては、リチウム(金属リチウム)、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、グラファイト、シリコン、Sn合金、Si合金、Sn酸化物、Si酸化物、Ti酸化物、Ni酸化物、Fe酸化物(FeO)、およびリチウム-チタン酸化物(LiTiO、LiTi12)の負極活物質群から選択される1つまたは2つ以上の物質が挙げられる。
【0086】
前記導電材としては、通常の導電性炭素材が特に制限されずに使用可能である。
【0087】
前記金属材料の集電体は、伝導性が高く、且つ前記正極活物質または負極活物質の合剤が容易に接着できる金属であって、電池の電圧範囲で反応性のないものであれば何れも使用可能である。正極集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル、またはこれらの組み合わせにより製造される箔などが挙げられ、負極集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル、または銅合金、またはこれらの組み合わせにより製造される箔などから選択されてもよい。
【0088】
前記正極と負極との間にはセパレータが介在されるが、セパレータを電池に適用する方法としては、通常の方法である巻取り(winding)の他にも、セパレータと電極の積層(lamination、stack)および折り畳み(folding)などが可能である。
【0089】
前記非水電解液は、電解質であるリチウム塩と有機溶媒を含む。リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものなどが制限されずに使用可能であり、Liで表されることができる。
【0090】
前記リチウム塩のアニオンとしては、特に制限されず、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN、および(CFCFSOの何れか1つまたは2つ以上が使用可能である。
【0091】
前記有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、スルホラン、ガンマ-ブチロラクトン、およびテトラヒドロフランなどからなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0092】
前記非水電解液は、正極、負極、および正極と負極との間に介在されたセパレータからなる電極構造体に注入することができる。
【0093】
前記リチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形、またはコイン(coin)形などから選択されてもよい。
【0094】
以上で説明したように、本発明の実施態様について詳細に述べたが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の思想および範囲を逸脱することなく、本発明の様々な変形実施が可能である。したがって、本発明の後述の実施例の変更は、本発明の技術を逸脱しない。
【0095】
[物性測定方法]
熱収縮率の測定
セパレータの160℃での熱収縮率を測定する方法は、セパレータを、一辺が10cmである正四角形状に切って試料を製作した後、実験前に、試料をカメラを用いて測定および記録した。試料が真中に位置するように、試料の上と下にそれぞれA4紙を5枚ずつ置き、紙の四つの辺をクリップで固定した。紙で包まれた試料を、160℃の熱風乾燥オーブンに1時間放置した。放置が終了すると、試料を取り出してカメラで測定し、下記数学式1の長さ方向収縮率(MD、Machine Direction)および下記数学式2の幅方向収縮率(TD、Transverse Direction)を計算した。
【0096】
[数学式1]
長さ方向収縮率(%)=(加熱前の長さ方向の長さ-加熱後の長さ方向の長さ)×100/加熱前の長さ方向の長さ
【0097】
[数学式2]
幅方向収縮率(%)=(加熱前の幅方向の長さ-加熱後の幅方向の長さ)×100/加熱前の幅方向の長さ
【0098】
TMA最大収縮率および溶融破断温度
METTLER TOLEDO社のTMA(Thermo-mechanical analysis)装置を用いて、6mm×10mmのセパレータ試験片に0.015Nの重りをかけ、5℃/minの速度で昇温した。延伸過程を経て製作された試験片は一定温度で収縮が起こり、TgおよびTmを超えると、重りの重さによって試験片が伸びることになる。
【0099】
TMA最大収縮率は、一定温度で発生する最大収縮pointにおける初期測定長さに対する収縮変形長さを%で表現した値と定義し、重りの重さによって試験片が伸び始める。この際、試験片の初期長さ(zero point)を超え始める温度を溶融破断温度と定義する。また、収縮が起こらないサンプルの場合は、勾配が最大である時を基準としてx軸と会う温度と定義する。
【0100】
引張強度の測定
セパレータの引張強度を測定する方法は、ASTM D882規格に準じて、セパレータの引張強度を長さ方向(MD、Machine Direction)と幅方向(TD、Transverse Direction)にそれぞれ測定した後、長さ方向と幅方向のうち、より低い値をセパレータの引張強度と定義する。それぞれの試料は、幅15mm、高さ120mmの直四角形状に切って製作し、延伸機を用いて500mm/minの速度で引っ張りながら、セパレータ試料が切断される時の強度(kgf)を試料の幅(15mm)で除した値を記録して比較した。
【0101】
放電容量の測定
製造されたリチウム二次電池に対して、0.2C~3.0Cの放電電流で放電容量を測定した。
【0102】
電池寿命の測定
前記組み立て過程を経て製造した各電池を、1Cの放電速度で500回充放電した後、放電容量を測定し、初期容量に対する減少程度を測定するサイクル(Cycle)評価を行った。
【0103】
電池厚さの測定
電池の充放電時に、電極板とセパレータとの間の浮き上がり現象および電池の変形有無を確認するために、500回充放電した後、Thickness Gauge(ミツトヨ社製)を用いて電池の厚さを測定した。それを充放電前の厚さと比較し、次の数学式3の電池厚さ増加率を測定した。
【0104】
[数学式3]
電池厚さ増加率(%)=(B-A)/A×100
A:充放電前の電池の厚さ(mm)
B:充放電後の電池の厚さ(mm)
【0105】
電池の釘刺し評価
電池の安全性を測定するために、製造した各電池をSOC(充電率)100%に完全に充電させた後、釘刺し(nail penetration)評価を行った。この際、釘の直径は3.0mm、釘刺し速度は何れも80mm/minと固定した。L1:変化なし、L2:僅かに発熱、L3:漏液、L4:発煙、L5:発火であり、L1~L3はPass、L4~L5はFailと判定した。
【0106】
[実施例1~16および比較例1~10:セパレータの製造]
実施例1
撹拌器、温度計、窒素投入口、循環コンデンサ付きの四口フラスコの反応器を準備し、前記反応器に、イオン水(deionized water;DDI water)100重量部に対して硫酸第一鉄(ferrous sulfate)0.002重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(disodium ethylenediaminetetraacetate)0.04重量部を投入し、窒素雰囲気下で反応器の内部温度を35℃に維持させた。
【0107】
イオン水70重量部、乳化剤としてn-ドデシルメルカプタン(n-dodecyl mercaptan)0.60重量部、単量体混合物であるアクリルアミド35重量部、アクリロニトリル21重量部、アクリル酸7重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート7重量部を混合して、単量体溶液を製造した。
【0108】
前記反応器の内部温度が35℃になると、前記単量体溶液と、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(benzoyl peroxide)0.001重量部とホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(SFS)0.020重量部を3時間滴下投入して反応を進行させた。その後、ベンゾイルパーオキサイド(benzoyl peroxide)0.0001重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(SFS)0.002重量部を追加投入して残留単量体を除去し、2時間反応させて第1バインダー粒子を製造した。前記製造された第1バインダー粒子はラテックス形態で、平均粒径は115nmであり、ガラス転移温度が181℃であった。
【0109】
水100重量部に、前記第1バインダー粒子10重量部を添加して分散させた後、平均粒径500nmサイズのベーマイト(γ-AlO(OH))(Nabaltec社製、Apyral AOH60)90重量部、ポリビニルアルコール(PVA217、KURARAY POVAL製)0.5重量部、およびエチレングリコールジグリシジルエーテル2重量部を添加して撹拌することで、均一な水系スラリーを製造した。
【0110】
多孔性基材としては、厚さ9μmのポリオレフィン微多孔膜製品(ENPASS、SKイノベーション製)を使用し、スロットコーティングダイを用いて10m/minの速度で、基材の両面に前記水系スラリーをコーティングした。
【0111】
その後、60℃の熱風が出る長さ6mの乾燥器を、5m/minの速度で通過しながら乾燥した後、ロール状に巻取った。巻取りの後、110℃で10分間熱硬化してから測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0112】
実施例2
単量体混合物として、アクリルアミド28重量部、アクリロニトリル28重量部、アクリル酸7重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート7重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0113】
実施例3
単量体混合物として、アクリルアミド21重量部、アクリロニトリル28重量部、アクリル酸10.5重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート10.5重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは12μmであった。
【0114】
実施例4
単量体混合物として、アクリルアミド39重量部、アクリロニトリル25重量部、アクリル酸3重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート3重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0115】
実施例5
単量体混合物として、アクリルアミド17重量部、アクリロニトリル17重量部、アクリル酸18重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート18重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは12μmであった。
【0116】
実施例6
単量体混合物として、アクリルアミド35重量部、アクリロニトリル21重量部、アクリル酸10.5重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート3.5重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0117】
実施例7
単量体混合物として、アクリルアミド35重量部、アクリロニトリル21重量部、アクリル酸3.5重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート10.5重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0118】
実施例8
エチレングリコールジグリシジルエーテルの代わりに、2´-メチレンビス(2-オキサゾリン)を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0119】
実施例9
ポリビニルアルコール(PVA217、KURARAY POVAL製)の代わりに、カルボキシメチルセルロース(CMC)(Daicel Chemical Industry社製、1220)を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは12μmであった。
【0120】
実施例10
エチレングリコールジグリシジルエーテル0.5重量部の代わりに、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.25重量部および2´-メチレンビス(2-オキサゾリン)0.25重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0121】
実施例11
水100重量部に前記第1バインダー粒子5重量部を添加して分散させた後、平均粒径500nmサイズのベーマイト(γ-AlO(OH))(Nabaltec社製、Apyral AOH60)95重量部、ポリビニルアルコール(PVA217、KURARAY POVAL製)0.2重量部、および2´-メチレンビス(2-オキサゾリン)1重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは12μmであった。
【0122】
実施例12
エチレングリコールジグリシジルエーテル5重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0123】
実施例13
エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0124】
実施例14
水100重量部に前記第1バインダー粒子10重量部を添加して分散させた後、平均粒径500nmサイズのベーマイト(γ-AlO(OH))(Nabaltec社製、Apyral AOH60)90重量部、ポリビニルアルコール(PVA217、KURARAY POVAL製)0.1重量部、およびエチレングリコールジグリシジルエーテル2重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0125】
実施例15
水100重量部に前記第1バインダー粒子10重量部を添加して分散させた後、平均粒径500nmサイズのベーマイト(γ-AlO(OH))(Nabaltec社製、Apyral AOH60)90重量部、ポリビニルアルコール(PVA217、KURARAY POVAL製)2.5重量部、およびエチレングリコールジグリシジルエーテル5重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0126】
実施例16
第1バインダー粒子ラテックスの平均粒径が350nmとなるように製造して使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0127】
比較例1
単量体混合物として、アクリルアミド42重量部、アクリロニトリル21重量部、およびアクリル酸7重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0128】
比較例2
単量体混合物として、アクリルアミド42重量部、アクリロニトリル21重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート7重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0129】
比較例3
単量体混合物として、アクリルアミド56重量部、アクリル酸7重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート7重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは12μmであった。
【0130】
比較例4
単量体混合物として、アクリロニトリル56重量部、アクリル酸7重量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート7重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0131】
比較例5
単量体混合物として、アクリルアミド35重量部、およびアクリロニトリル35重量部を使用した点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0132】
比較例6
ポリビニルアルコール(PVA217、KURARAY POVAL製)を使用しなかった点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0133】
比較例7
エチレングリコールジグリシジルエーテルを使用しなかった点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは11μmであった。
【0134】
比較例8
ポリビニルアルコール(PVA217、KURARAY POVAL製)およびエチレングリコールジグリシジルエーテルを使用しなかった点を除き、前記実施例1と同様の方式によりセパレータを製造した。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0135】
比較例9
ジメチルスルホキシド(Dimethylsulfoxide、DMSO)に30重量%で溶解したポリビニリデンフルオリドバインダー10重量部(固形分基準)および平均粒径500nmサイズのベーマイト(γ-AlO(OH))(Nabaltec社製、Apyral AOH60)90重量部を混合して撹拌することで、均一なスラリーを製造した。
【0136】
多孔性基材としては、厚さ9μmのポリオレフィン微多孔膜製品(ENPASS、SKイノベーション製)を使用し、スロットコーティングダイを用いて10m/minの速度で基材の両面にコーティングした。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0137】
比較例10
が-52℃であるアクリルラテックス(Acrylic latex、商品名:BM900B、固形分:20重量%)10重量部および平均粒径500nmサイズのベーマイト(γ-AlO(OH))(Nabaltec社製、Apyral AOH60)90重量部を混合して撹拌することで、均一なスラリーを製造した。
【0138】
多孔性基材としては、厚さ9μmのポリオレフィン微多孔膜製品(ENPASS、SKイノベーション製)を使用し、スロットコーティングダイを用いて10m/minの速度で基材の両面にコーティングした。巻取り後に測定した両面コーティング層の総厚さは10μmであった。
【0139】
[実施例17~32および比較例11~20:リチウム二次電池の製造]
実施例17~32および比較例11~20
(1)正極の製造
正極活物質としてLiCoOを94重量%、接着剤としてポリビニリデンフルオリド(Polyvinylidene fluoride)を2.5重量%、導電剤としてカーボンブラック(Carbon-black)を3.5重量%で、溶剤であるNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加して撹拌することで、均一な正極スラリーを製造した。スラリーを厚さ30μmのアルミニウム箔上にコーティングし、120℃の温度で乾燥した後、圧着することで、厚さ150μmの正極極板を製造した。
【0140】
(2)負極の製造
負極活物質として人造黒鉛を95重量%、接着剤としてTが-52℃であるアクリルラテックス(Acrylic latex、商品名:BM900B、固形分:20重量%)を3重量%、増粘剤としてCMC(Carboxymethyl cellulose)を2重量%の比率で、溶媒である水に添加して撹拌することで、均一な負極スラリーを製造した。スラリーを厚さ20μmの銅箔上にコーティングし、120℃の温度で乾燥した後、圧着することで、厚さ150μmの負極極板を製造した。
【0141】
(3)電池の製造
前記製造された正極、負極、および実施例17~32および比較例11~20で製造されたセパレータを用いて、積層(Stacking)方式によりパウチ形の電池を組み立てた。組み立てられた各電池に、1Mのリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)が溶解されたエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)=3:5:2(体積比)の電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0142】
前記実施例1~16および比較例1~10のセパレータの特性評価結果は表1に示し、実施例17~32および比較例11~20のリチウム二次電池の評価結果は表2に示し、実施例17~32および比較例11~20のリチウム二次電池の放電容量の測定結果は表3に示した。表3の放電容量の単位はmAh/gであり、正極活物質の質量に対する容量を示す。
【0143】
表3の放電容量の単位はmAh/gであり、正極活物質の質量に対する容量を示す。
【0144】
【表1】
【0145】
前記表1に示したように、多孔性基材の両面に、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含んでコーティング層が形成された実施例の複合セパレータは、比較例に比べて160℃での熱収縮率およびTMA最大収縮率が低く、TMA溶融破断温度が著しく増加して、複合セパレータの熱的安定性が著しく向上していることを確認することができる。
【0146】
また、第1バインダー粒子および無機粒子が上述の式1を満たす平均粒径比を有する場合、実施例1と実施例16を比較すると、熱的特性がさらに増大していることを確認し、より向上した熱的安定性を実現できることを確認した。
【0147】
また、実施例8、9と実施例1を比較すると、熱硬化剤としてエポキシ基を含む化合物を使用する場合に、より優れた耐熱性および強度を有することを確認することができ、第2バインダーとして、セルロース系化合物よりはビニルアルコール系化合物を使用する場合に、溶融破断温度の著しい増大を発現することを確認した。
【0148】
また、本発明の第1バインダー粒子が、アクリルアミド系単量体30~50重量%、ビニルシアン系単量体20~40重量%、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~20重量%、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~20重量%の範囲で製造される場合に、より向上した熱的安定性およびセパレータ強度を示すことを確認した。
【0149】
これに対し、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤の何れか1つを含まないコーティング層が形成された比較例の複合セパレータは、160℃での熱収縮率およびTMA最大収縮率が実施例に比べて高く、TMA溶融破断温度が低いことを確認した。
【0150】
また、従来に用いられていた比較例9のポリビニリデンフルオリド、および比較例10のガラス転移温度が著しく低いアクリル系重合体をコーティング層に使用した場合、160℃での熱収縮率およびTMA最大収縮率が実施例に比べて高く、TMA溶融破断温度が低いことを確認することができた。尚、低い熱的安定性により、高温で多孔性基材のシャットダウンまたはメルトダウンが発生した時に、電極間の短絡防止が困難であって電池の安定性が減少することを確認した。
【0151】
【表2】
【0152】
前記表2に示したように、多孔性基材の両面に、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含んでコーティング層が形成された実施例の複合セパレータを含むリチウム二次電池は、優れた放電容量を有し、著しく向上した熱的安定性を有するため、電池釘刺しにもかかわらず電極間の短絡が防止され、放電容量減少率、電池厚さ変化、および電池釘刺し安定性などの電池の安定性が著しく増加することを確認した。
【0153】
第1バインダー粒子および無機粒子が上述の式1を満たす平均粒径比を有する場合、実施例17と実施例32を比較すると、優れた耐熱性、放電容量減少率、電池厚さ変化、および電池釘刺し安定性などがさらに増大することを確認し、より向上した電池安定性を実現できることを確認した。
【0154】
また、実施例24、25と実施例17を比較すると、熱硬化剤としてエポキシ基を含む化合物を使用する場合、より優れた耐熱性および強度を有するため、優れた寿命改善効果および電池安定性を有することを確認することができ、第2バインダーとして、セルロース系化合物よりはビニルアルコール系化合物を用いる場合に、溶融破断温度の著しい増大を発現するため、優れた寿命改善効果および電池安定性を有することを確認した。
【0155】
また、本発明の第1バインダー粒子が、アクリルアミド系単量体30~50重量%、ビニルシアン系単量体20~40重量%、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~20重量%、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~20重量%の範囲で製造される場合、優れた熱的安定性およびセパレータ強度を示すため、より向上した電池寿命改善効果を示すことを確認した。
【0156】
これに対し、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤の何れか1つを含まないコーティング層が形成された比較例の複合セパレータを含むリチウム二次電池は、低い熱的安定性により、電池の繰り返し使用による寿命改善効果が実現されず、低い電池安定性を示すことを確認した。
【0157】
また、従来に用いられていた比較例19のポリビニリデンフルオリド、および比較例20のガラス転移温度が著しく低いアクリル系重合体をコーティング層に使用した場合、低い熱的安定性により、高温で多孔性基材のシャットダウンまたはメルトダウンが発生した時に、電極間の短絡防止が困難であって電池の安定性が減少することを確認することができた。
【0158】
【表3】
【0159】
前記表3に示したように、多孔性基材の両面に、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤を含んでコーティング層が形成された実施例の複合セパレータを含むリチウム二次電池は、放電容量が著しく向上していることを確認することができた。
【0160】
第1バインダー粒子および無機粒子が上述の式1を満たす平均粒径比を有する場合、実施例17と実施例32を比較すると、より向上した放電容量を有することを確認することができた。
【0161】
また、実施例24、25と実施例17を比較すると、熱硬化剤としてエポキシ基を含む化合物を使用する場合、より優れた耐熱性および強度を有するため、優れた放電容量向上効果を有し、第2バインダーとして、セルロース系化合物よりはビニルアルコール系化合物を使用する場合に、溶融破断温度の著しい増大を発現するため、放電容量向上効果に優れることを確認することができた。
【0162】
また、本発明の第1バインダー粒子が、アクリルアミド系単量体30~50重量%、ビニルシアン系単量体20~40重量%、カルボキシル基を有するアクリル系単量体5~20重量%、および水酸化基を有するアクリル系単量体5~20重量%の範囲で製造される場合、優れた熱的安定性およびセパレータ強度を示すため、より向上した放電容量向上効果を示すことを確認した。
【0163】
これに対し、無機粒子、第1バインダー粒子、第2バインダー、および熱硬化剤の何れか1つを含まないコーティング層が形成された比較例の複合セパレータを含むリチウム二次電池は、放電容量に劣っていることを確認することができた。
【0164】
また、従来に用いられていた比較例19のポリビニリデンフルオリド、および比較例20のガラス転移温度が著しく低いアクリル系重合体をコーティング層に使用した場合、電池の放電容量が実施例に比べて急激に低下する特性を示すことを確認することができた。
【0165】
したがって、本発明の二次電池用複合セパレータは、優れた熱的安定性および電池安定性を有するだけでなく、放電容量などの電気的特性にも優れるため、リチウム二次電池に適用した時に、著しく優れた特性を示すことができる。
【0166】
以上のように、本発明では特定事項と限定された実施例を挙げて二次電池用複合セパレータおよびそれを含むリチウム二次電池が説明されたが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明が上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0167】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形がある全てのものなどは、本発明の思想の範囲に属するといえる。