(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】移送装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230526BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
B41J2/175 143
B41J2/175 119
B41J2/175 301
B41J2/175 501
B41J2/175 503
B41J2/18
B41J2/175 153
(21)【出願番号】P 2019033835
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】矢森 雄大
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030180(JP,A)
【文献】特開2015-157416(JP,A)
【文献】特開2016-013663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0012030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41J 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する袋部を有する第1収容部と、
前記第1収容部から移送された液体を収容する第2収容部と、
前記第1収容部から前記第2収容部へ液体を移送する移送部と、
前記第1収容部から前記第2収容部へ液体を移送する際、液体の移送を開始して前記袋部の前記移送部側が吸着状態になる前に移送を終了する移送動作を間欠的に繰り返し行うよう前記移送部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記各移送動作の時間を、当該移送動作の開始時における
前記袋部内の液体の量が少なくなるほど短い時間になるように、前記袋部内の液体の量に応じて設定することを特徴とす
る移送装置。
【請求項2】
液体を収容する袋部を有する第1収容部と、
前記第1収容部から移送された液体を収容する第2収容部と、
前記第1収容部から前記第2収容部へ液体を移送する移送部と、
前記第1収容部から前記第2収容部へ液体を移送する際、液体の移送を開始して前記袋部の前記移送部側が吸着状態になる前に移送を終了する移送動作を間欠的に繰り返し行うよう前記移送部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記移送動作間の停止時間を、
前記袋部内の液体の量が多いほど短い時間になるように、前記袋部内の液体の量に応じて設定することを特徴とす
る移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を移送する移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置において、顔料インクを使用することがある。顔料インクでは、放置されることにより、顔料粒子の沈降が生じることがある。特に、金属粒子等の比重の大きい顔料を含むインクでは、顔料粒子の沈降が生じやすい。
【0003】
インクの顔料粒子の沈降は、インクの増粘によるインクジェットヘッドにおける吐出不良を招くことがある。また、インクの顔料粒子の沈降は、インクジェットヘッドから吐出されるインクの濃度のバラツキを発生させるおそれがある。このような顔料粒子の沈降による不具合を防ぐために、インクの撹拌が行われている(特許文献1参照)。
【0004】
これに関し、インクカートリッジにおけるインクの顔料粒子の沈降を解消するために、インクカートリッジのインクをインクジェット印刷装置に設けられた撹拌用のタンクに移送して、このタンク内のインクを撹拌する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スパウトパックにインクを収容しているインクカートリッジが知られている。スパウトパックは、可撓性を有する袋部に口栓部が取り付けられたものである。
【0007】
スパウトパックを用いたインクカートリッジから撹拌用のタンクにインクを移送する場合、移送用のポンプがスパウトパックからインクを吸引すると、スパウトパックの袋部を構成するフィルムどうしが吸着し、袋部からインクが出ない状態になるおそれがある。
【0008】
スパウトパックの袋部が一旦、フィルムどうしが吸着してインクが出ない状態になると、インクの吸引を停止してもその状態が解除されず、インクの移送ができなくなる。このため、移送元であるインクカートリッジに多くのインクが残留するおそれがある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、液体の移送元に残留する液体を低減できる移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の移送装置は、液体を収容する袋部を有する第1収容部と、前記第1収容部から移送された液体を収容する第2収容部と、前記第1収容部から前記第2収容部へ液体を移送する移送部と、前記第1収容部から前記第2収容部へ液体を移送する際、液体の移送を開始して前記袋部の前記移送部側が吸着状態になる前に移送を終了する移送動作を間欠的に繰り返し行うよう前記移送部を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移送装置によれば、液体の移送元に残留する液体を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【
図3】インクカートリッジの部分拡大断面図である。
【
図4】インクカートリッジのインクパックの部分拡大断面図である。
【
図5】インクカートリッジからタンクへのインクの移送時の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】(a)~(c)は、インクパック内のインクの挙動の説明図である。
【
図7】
図5のフローチャートの処理によるポンプ、インク移送弁、および撹拌弁の動作のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0014】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る移送装置が設けられた印刷装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す印刷装置に装填されるインクカートリッジの外観斜視図である。
図3は、インクカートリッジの部分拡大断面図である。
図4は、インクカートリッジのインクパックの部分拡大断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、印刷部2と、インク供給部3と、制御部4とを備える。なお、インク供給部3の一部(後述のインクカートリッジ11、タンク12、および移送撹拌部15)と制御部4とにより、移送装置が構成される。
【0017】
印刷部2は、インクジェットヘッド(図示せず)を有し、インクジェットヘッドから用紙にインクを吐出して画像を印刷する。
【0018】
インク供給部3は、インク(液体に相当)を撹拌するとともに、印刷部2にインクを供給する。インク供給部3は、インクカートリッジ(第1収容部に相当)11と、タンク(第2収容部に相当)12と、大気開放管13と、エアフィルタ14と、移送撹拌部(移送部に相当)15と、インク供給管16と、インク供給弁17とを備える。
【0019】
ここで、印刷装置1で印刷に使用されるインクは顔料インクであり、放置されると顔料粒子の沈降が生じるおそれがあるものである。例えば、印刷装置1で印刷に使用されるインクは、磁性体である金属粒子を含むMICR(Magnetic Ink Character Reader)インクである。インクの顔料粒子の沈降は、インクジェットヘッドにおける吐出不良や、吐出されるインクの濃度のバラツキ等の不具合を招く。インクカートリッジ11でインクの顔料粒子が沈降している可能性があるため、印刷装置1では、インク供給部3においてインクの撹拌を行い、顔料粒子が沈降している場合にはそれが解消されるようにする。
【0020】
インクカートリッジ11は、印刷部2による印刷に用いるインクである顔料インクを収容している。インクカートリッジ11は、印刷装置1に設けられたカートリッジ取付機構(図示せず)に着脱可能に構成されている。
【0021】
図2、
図3に示すように、インクカートリッジ11は、インクパック21と、外装体22と、係合部23とを備える。
【0022】
インクパック21は、スパウトパックからなる。
図2~
図4に示すように、インクパック21は、袋部26と、口栓部27とを備える。
【0023】
袋部26は、インクを収容する部分である。袋部26は、可撓性を有する細長い袋体により形成されている。本実施の形態の袋部26は、長方形状の熱可塑性フィルムを2枚重ね、長手方向の一端に口栓部27を介在させた状態で、その周囲を熱溶着により接合して形成されている。
【0024】
口栓部27は、袋部26からインクを取り出すためのものである。口栓部27は、袋部26の長手方向の一端に取り付けられている。口栓部27は、係合部23と係合している。
【0025】
外装体22は、インクパック21を収容するものである。外装体22は、長手方向における一端が開口され、他端が閉止された、有底の中空直方体をなす箱状に形成されている。外装体22の開口部には、係合部23が嵌め込まれている。
【0026】
ここで、
図2、
図3における上下方向は鉛直方向である。インクカートリッジ11を印刷装置1に装填した状態において、
図2、
図3に示すように、外装体22の上面および下面が水平となる。
【0027】
係合部23は、インクカートリッジ11を印刷装置1に装填した際に、カートリッジ取付機構と係合される着脱機構として機能する。
【0028】
タンク12は、インクカートリッジ11から移送されたインクを撹拌するために収容する。
【0029】
大気開放管13は、タンク12を大気開放するための空気の流路を形成する。大気開放管13は、一端がタンク12に接続され、他端がエアフィルタ14を介して大気に通じている。エアフィルタ14は、大気開放管13への空気中のゴミ等の進入を防止する。
【0030】
移送撹拌部15は、インクカートリッジ11からタンク12へのインクの移送、およびタンク12内のインクの撹拌を行う。移送撹拌部15は、インク移送管31と、インク流出管32と、インク移送弁33と、撹拌弁34と、ポンプ35とを備える。
【0031】
インク移送管31は、インクカートリッジ11とタンク12とを接続する。インク移送管31のインクカートリッジ11側の端は、カートリッジ取付機構を介して、インクパック21の口栓部27に接続されている。インク移送管31は、インクカートリッジ11からタンク12へインクを移送する経路である移送経路Rtを構成する。
【0032】
インク流出管32は、タンク12とインク移送管31とを接続する。
【0033】
インク流出管32と、インク移送管31のインク流出管32が接続された地点よりタンク12側の部分とにより、撹拌経路Rsが構成される。撹拌経路Rsは、インクをタンク12から流出させてタンク12に戻す経路である。
【0034】
インク移送弁33は、インク移送管31内のインクの流路を開閉する。インク移送弁33は、インク移送管31のインク流出管32が接続された地点よりインクカートリッジ11側の部分に配置されている。
【0035】
撹拌弁34は、インク流出管32内のインクの流路を開閉する。
【0036】
インク移送弁33および撹拌弁34は、移送経路Rtおよび撹拌経路Rsのうち、開通する経路の切り替えを行う。具体的には、インク移送弁33が開放され、撹拌弁34が閉鎖されることにより、移送経路Rtが開通され、撹拌経路Rsが閉鎖された状態となる。また、インク移送弁33が閉鎖され、撹拌弁34が開放されることにより、撹拌経路Rsが開通され、移送経路Rtが閉鎖された状態となる。
【0037】
ポンプ35は、移送経路Rtを介してインクカートリッジ11のインクパック21からインクを吸引してタンク12へ移送する。また、ポンプ35は、撹拌経路Rsを介してインクをタンク12から流出させてタンク12に戻すように送液することで、タンク12内のインクを撹拌するためにも使用される。
【0038】
ポンプ35は、移送経路Rtと撹拌経路Rsとの共通部分に配置されている。具体的には、ポンプ35は、インク移送管31のインク流出管32が接続された地点よりタンク12側の部分に配置されている。
【0039】
インク供給管16は、タンク12と印刷部2とを接続する。
【0040】
インク供給弁17は、インク供給管16内のインクの流路を開閉する。インク供給弁17が開放されると、タンク12から印刷部2へインクが供給される。
【0041】
制御部4は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部4は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0042】
具体的には、制御部4は、インク供給部3から印刷部2にインクを供給しつつ、印刷部2により用紙に印刷するよう制御する。また、制御部4は、タンク12内のインクの液面高さが所定の下限高さ以下になると、インクカートリッジ11からタンク12へインクを移送するよう移送撹拌部15を制御する。この際、制御部4は、インクカートリッジ11からタンク12へのインクの移送を開始して袋部26の移送撹拌部15側が吸着状態になる前に移送を終了する移送動作を間欠的に繰り返し行うよう移送撹拌部15を制御する。また、制御部4は、各移送動作に引き続いてタンク12内のインクを撹拌する撹拌動作を行うよう移送撹拌部15を制御する。
【0043】
ここで、「袋部26の移送撹拌部15側が吸着状態」とは、口栓部27付近において袋部26を構成するフィルムどうしが吸着して袋部26からインクが出なくなった状態を意味する。なお、以下において、この状態を「袋部26が吸着状態」ともいう。
【0044】
次に、印刷装置1の動作について説明する。
【0045】
印刷を行う際、制御部4は、印刷部2のインクジェットヘッドから用紙にインクを吐出させる。これによりインクが消費され、印刷部2へのインクの供給が必要になると、制御部4は、インク供給弁17を開放する。インク供給弁17が開放されると、インク供給管16を介してタンク12から印刷部2へインクが供給される。必要な量のインクが供給されると、制御部4は、インク供給弁17を閉鎖する。
【0046】
ここで、印刷部2へのインクの供給により、タンク12内のインクが減少し、インクの液面が下降する。タンク12内のインクの液面高さが下限高さ以下になったことがセンサ(図示せず)により検出されると、制御部4は、タンク12内のインクがなくなったと判定し、インク供給弁17を閉鎖する。
【0047】
そして、制御部4は、インクカートリッジ11からタンク12へのインクの移送を実行する。このインクカートリッジ11からタンク12へのインクの移送時の動作について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0048】
図5のステップS1において、制御部4は、何回目の移送動作および撹拌動作であるかを示す変数nに「1」を設定する。
【0049】
次いで、ステップS2において、制御部4は、インク移送弁33を開放し、ポンプ35の駆動を開始させる。
【0050】
ここで、インクカートリッジ11からタンク12へのインクの移送を開始する直前の状態では、インク移送弁33および撹拌弁34はいずれも閉鎖されている。また、印刷装置1には新しいインクカートリッジ11が装着されている。
【0051】
インク移送弁33および撹拌弁34が閉鎖された状態からインク移送弁33が開放されることで、撹拌経路Rsが閉鎖され、移送経路Rtが開通された状態となる。この状態でポンプ35の駆動が開始されることで、最初の移送動作が開始され、インクカートリッジ11の口栓部27を介して袋部26からタンク12へインクが移送され始める。ここで、本実施の形態におけるポンプ35は、移送動作および撹拌動作において、一定の送液能力でインクの送液を行うものである。
【0052】
次いで、ステップS3において、制御部4は、n回目の移送動作の開始から所定の移送動作時間Ta(n)が経過したか否かを判断する。移送動作時間Ta(n)は、n回目の移送動作の時間として予め設定されたものである。移送動作時間Ta(n)は、袋部26からのインクの送液により袋部26が吸着状態になる前に移送動作が終了するように設定されている。
【0053】
ここで、ポンプ35により袋部26からインクが吸引されると、口栓部27付近のインクが急激に減少し、袋部26を構成するフィルムどうしが吸着して袋部26からインクが出ない状態、すなわち、袋部26が吸着状態になるおそれがある。一旦、袋部26が吸着状態になると、インクの吸引を停止してもその状態が解除されず、インクの移送ができなくなる。そこで、袋部26が吸着状態になることを回避するために、移送動作時間Ta(n)が設定されている。
【0054】
移送動作時間Ta(n)は、1回の移送動作で可能な限り多くのインクを移送するために、袋部26が吸着状態になる直前のタイミングで移送動作が終了するように設定されている。ここで、袋部26内のインクの量が少なくなるほど、袋部26が吸着状態になるまでに吸引可能なインク量が少なくなる。このため、移送動作時間Ta(n)は、n回目の移送動作の開始時における袋部26内のインクの量に応じて設定されている。
【0055】
移送動作時間Ta(n)は、n回目の移送動作の開始時における袋部26内のインクの量が少なくなるほど、短くなる。すなわち、nが大きいほど、移送動作時間Ta(n)は短くなる。換言すれば、nが小さいほど、すなわち、早い段階の移送動作ほど、移送動作時間Ta(n)が長く、1回の移送動作で多くのインクを移送できるようになっている。なお、n回目の移送動作の開始時における袋部26内のインクの量は、初期の袋部26内のインクの量から、前回までの移送動作によるインクの移送量を減算することで算出可能である。
【0056】
n回目の移送動作の開始から移送動作時間Ta(n)が経過していないと判断した場合(ステップS3:NO)、制御部4は、ステップS3を繰り返す。
【0057】
n回目の移送動作の開始から移送動作時間Ta(n)が経過したと判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部4は、インク移送弁33を閉鎖し、撹拌弁34を開放する。これにより、撹拌経路Rsが開通され、移送経路Rtが閉鎖された状態に切り替わる。この際、ポンプ35が引き続き駆動されていることで、撹拌経路Rsを介してインクが循環され始める。これにより、n回目の移送動作が終了するとともに、n回目の撹拌動作が開始され、タンク12内のインクが撹拌され始める。
【0058】
次いで、ステップS5において、制御部4は、n回目の撹拌動作の開始から所定の撹拌動作時間Tb(n)が経過したか否かを判断する。
【0059】
ここで、撹拌動作時間Tb(n)は、n回目の撹拌動作の時間として予め設定されたものである。n=1~(N-1)における撹拌動作時間Tb(1)~Tb(N-1)は、各移送動作間における移送動作の停止時間でもある。Nは、インクカートリッジ11からタンク12へインクを移送する際にそれぞれ間欠的に行われる移送動作および撹拌動作の回数である。Nは2以上の整数である。
【0060】
n=1~(N-1)における撹拌動作時間Tb(1)~Tb(N-1)は、それぞれ1回目~(N-1)回目の移送動作終了後に次回の移送動作を実行可能な状態にインクパック21が戻るために必要な時間として設定されている。
【0061】
ここで、
図6(a)に示すように、移送動作において、口栓部27を介してインクが送液されると、移送動作の終了時には、
図6(b)に示すように、口栓部27付近のインクが減少した状態となる。
【0062】
これに対し、移送動作終了後には、
図6(c)に示すように、袋部26の厚さが均等化するように、インクが口栓部27の反対側から口栓部27側へ流れる。これにより、時間の経過とともに口栓部27付近にインクが戻り、インクパック21が次回の移送動作を実行可能な状態になる。
【0063】
図6(b)のような口栓部27付近のインクが減少した状態から、
図6(c)のようなインクパック21が次回の移送動作を実行可能な状態には、袋部26内のインクの量が多いほど、短時間で移行する。
【0064】
したがって、n=1~(N-1)における撹拌動作時間Tb(n)は、袋部26内のインクの量に応じて設定されている。n=1~(N-1)における撹拌動作時間Tb(n)は、袋部26内のインクの量が少ないほど、すなわち、nが大きいほど、長くなる。
【0065】
最後(N回目)の撹拌動作時間Tb(N)は、タンク12内のインクを十分に撹拌できる長さに設定されている。
【0066】
図5に戻り、n回目の撹拌動作の開始から撹拌動作時間Tb(n)が経過していないと判断した場合(ステップS5:NO)、制御部4は、ステップS5を繰り返す。
【0067】
n回目の撹拌動作の開始から撹拌動作時間Tb(n)が経過したと判断した場合(ステップS5:YES)、ステップS6において、制御部4は、変数nが、最後の移送動作および撹拌動作であることを示す「N」であるか否かを判断する。
【0068】
n=Nではないと判断した場合(ステップS6:NO)、ステップS7において、制御部4は、変数nに「1」を加算する。
【0069】
次いで、ステップS8において、制御部4は、撹拌弁34を閉鎖し、インク移送弁33を開放する。これにより、撹拌経路Rsが閉鎖され、移送経路Rtが開通された状態に切り替わり、移送経路Rtに沿ってインクカートリッジ11からタンク12へインクが移送され始める。すなわち、(n-1)回目の撹拌動作が終了するとともに、n回目の移送動作が開始される。この後、制御部4は、ステップS3に戻る。
【0070】
ステップS6において、n=Nであると判断した場合(ステップS6:YES)、ステップS9において、制御部4は、ポンプ35を停止させ、撹拌弁34を閉鎖する。これにより、最後(N回目)の撹拌動作が終了し、一連の動作が終了となる。
【0071】
上述のような
図5のフローチャートの処理により、
図7に示すように、移送動作が間欠的に繰り返し行われる。移送動作時間Ta(n)は、袋部26が吸着状態になる直前のタイミングで移送動作が終了するように設定されている。そして、移送動作時間Ta(n)は、Ta(1)>Ta(2)>…>Ta(N)となっている。
【0072】
また、各移送動作間、および最後(N回目)の移送動作後には、撹拌動作が行われる。各移送動作間における移送動作の停止時間である撹拌動作時間Tb(1)~Tb(N-1)は、Tb(1)<Tb(2)<…<Tb(N-1)となっている。
【0073】
以上説明したように、印刷装置1では、制御部4は、インクカートリッジ11からタンク12へインクを移送する際、インクの移送を開始して袋部26が吸着状態になる前に移送を終了する移送動作を間欠的に繰り返し行うよう移送撹拌部15を制御する。これにより、袋部26が吸着状態になってインクの移送ができなくなることが抑えられるので、移送元であるインクパック21に残留するインクを低減できる。
【0074】
また、印刷装置1では、制御部4は、各移送動作の移送動作時間Ta(n)を、当該移送動作の開始時における袋部26内のインクの量に応じて設定している。これにより、1回の移送動作で移送するインクの量が少なすぎて移送の効率が低くなることが抑えられるので、インクの移送に要する時間を短縮できる。
【0075】
また、印刷装置1では、制御部4は、移送動作間の停止時間(撹拌動作時間Tb(1)~Tb(N-1))を、その時点における袋部26内のインクの量に応じて設定している。これにより、移送動作間の停止時間を必要以上に長くとることが抑えられるので、インクの移送に要する時間をより短縮できる。
【0076】
なお、各移送動作の移送動作時間Ta(n)を、インクの種類に応じて調整してもよい。具体的には、インクが粘度の高い種類であるほど、移送動作時間Ta(n)が長くなるように調整してもよい。インクの粘度が高いほど、ポンプ35によるインクの流量が低下するため、移送動作時間Ta(n)を長くすることで、各移送動作で移送するインクの量が低下することが抑えられる。
【0077】
また、移送動作間の停止時間(撹拌動作時間Tb(1)~Tb(N-1))を、インクの種類に応じて調整してもよい。具体的には、インクが粘度の高い種類であるほど、移送動作間の停止時間が長くなるように調整してもよい。インクの粘度が高いほど、移送動作によりインクが減少した口栓部27付近にインクが戻って次回の移送動作を実行可能な状態になるまでに必要な時間が長くなる。このため、インクが粘度の高い種類であるほど、移送動作間の停止時間を長くすることで、インクパック21が移送動作を実行可能な状態になる前に移送動作が開始されて袋部26が吸着状態になることを抑制できる。
【0078】
また、上述した実施の形態では、移送動作の開始時における袋部26内のインクの量に応じて移送動作時間Ta(n)を設定したが、移送動作の開始時における袋部26内のインクの量に関わらず、移送動作時間Ta(n)を一定としてもよい。
【0079】
この場合、最後の移送動作でも袋部26が吸着状態になる前に移送が終了するように、各移送動作の移送動作時間Ta(n)を設定すればよい。また、この場合において、インクの種類に応じて、移送動作時間Ta(n)を調整してもよいし、インクの種類に関わらず使用可能な移送動作時間Ta(n)を設定してもよい。インクの種類に関わらず使用可能な移送動作時間Ta(n)を設定する場合、インクカートリッジ11のインクが、印刷装置1で使用可能な種類のうち最も粘度が高い種類のインクである場合に、最後の移送動作でも袋部26が吸着状態になる前に移送が終了するような時間を、各移送動作における移送動作時間Ta(n)として設定すればよい。
【0080】
また、上述した実施の形態では、袋部26内のインクの量に応じて移送動作間の停止時間を設定したが、袋部26内のインクの量に関わらず、移送動作間の停止時間を一定としてもよい。また、この場合において、インクの種類に応じて、移送動作間の停止時間を調整してもよいし、インクの種類に関わらず使用可能な移送動作間の停止時間を設定してもよい。インクの種類に関わらず使用可能な移送動作間の停止時間を設定する場合、インクカートリッジ11のインクが、印刷装置1で使用可能な種類のうち最も粘度が高い種類のインクである場合に、最後の移送動作の直前の移送動作によりインクが減少した口栓部27付近にインクが戻って最後の移送動作を実行可能な状態となるような停止時間を、各移送動作間の停止時間として設定すればよい。
【0081】
また、上述した実施の形態では、移送動作間に撹拌動作を行う例を示したが、撹拌動作は行わずに間欠的な移送動作を行うものでもよい。
【0082】
また、ポンプ35として流量制御が可能なものを使用し、間欠的な移送動作ではなく、徐々にインクの流量を低下させて袋部26が吸着状態になることを回避する連続的な移送動作により、インクパック21内のすべてのインクをタンク12に移送してもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態では、顔料粒子の沈降が生じるインクを撹拌する場合について説明したが、撹拌対象のインクは、成分の沈降が生じるものに限らず、例えば、成分の分離が生じるものであってもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態では、インクカートリッジ11から移送されたインクを撹拌するために収容する構成としてタンク12を示したが、インクを撹拌するために収容する構成はこれに限らない。例えば、可撓性を有するパックであってもよい。
【0085】
また、インク以外の液体を移送する装置にも本発明は適用可能である。
【0086】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0087】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0088】
(付記1)
液体を収容する袋部を有する第1収容部と、
前記第1収容部から移送された液体を収容する第2収容部と、
前記第1収容部から前記第2収容部へ液体を移送する移送部と、
前記第1収容部から前記第2収容部へ液体を移送する際、液体の移送を開始して前記袋部の前記移送部側が吸着状態になる前に移送を終了する移送動作を間欠的に繰り返し行うよう前記移送部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする移送装置。
【0089】
(付記2)
前記制御部は、前記各移送動作の時間を、当該移送動作の開始時における前記袋部内の液体の量に応じて設定することを特徴とする付記1に記載の移送装置。
【0090】
(付記3)
前記制御部は、前記移送動作間の停止時間を、前記袋部内の液体の量に応じて設定することを特徴とする付記1または2に記載の移送装置。
【符号の説明】
【0091】
1 印刷装置
2 印刷部
3 インク供給部
4 制御部
11 インクカートリッジ
12 タンク
13 大気開放管
14 エアフィルタ
15 移送撹拌部
16 インク供給管
17 インク供給弁
21 インクパック
22 外装体
23 係合部
26 袋部
27 口栓部
31 インク移送管
32 インク流出管
33 インク移送弁
34 撹拌弁
35 ポンプ
Rs 撹拌経路
Rt 移送経路