(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ロボット及びそのブレーキ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
B25J19/00 C
(21)【出願番号】P 2019055446
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】佐野 勝也
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/086718(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/035205(WO,A1)
【文献】特開昭63-007284(JP,A)
【文献】特開平11-179691(JP,A)
【文献】特開2013-163232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの位置を検出する位置検出部と、
前記ロボットアームを制動するブレーキ部と、
前記位置検出部により検出された前記位置に基づいて、前記ブレーキ部の作動とこの作動の解除とを交互に行うブレーキ制御部と、を備え
、
前記ブレーキ制御部は、前記位置と基準値とを比較し、前記ブレーキ部の作動を解除する指令があった場合において、前記位置が前記基準値以下のとき、前記ブレーキ部の作動とこの作動の解除とを交互に行い、前記基準値を超えるとき、前記ブレーキ部の作動を解除するロボット。
【請求項2】
前記位置を位置情報として記憶する記憶部を更に備え、
前記基準値は、前記指令前に前記記憶部に記憶された前記位置情報とされている
請求項
1に記載のロボット。
【請求項3】
前記ロボットアームは、水平多関節ロボットの、上下方向に移動するロボットアームである
請求項1又は請求項
2のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項4】
前記ロボットアームは、垂直多関節ロボットの、関節部を中心として上下方向へ回転移動するロボットアームである
請求項1又は請求項
2のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
位置検出部と、ブレーキ部と、ブレーキ制御部とを備えるロボットのブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記位置検出部が、ロボットアームの位置を検出する工程と、
前記ブレーキ部が、前記ロボットアームを制動する工程と、
前記ブレーキ制御部が、前記位置検出部により検出された前記位置と基準値とを比較し、前記ブレーキ部の作動を解除する指令があった場合において、前記位置が前記基準値以下のとき、前記ブレーキ部の作動とこの作動の解除とを交互に行い、前記基準値を超えるとき、前記ブレーキ部の作動を解除する工程と、
を備えたプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット及びそのブレーキ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ロボットの制御装置が開示されている。このロボットの制御装置では、サーボ制御系を非動作状態とし、ブレーキを解除してロボットアームを移動させる際に、ブレーキ制御部は、ブレーキの解除とロックとを交互に制御し、断続ブレーキを発生させる。
このように構成されるロボットの制御装置では、ロボットアームの過大な移動を抑えることができ、更にロボットアームの移動位置の微調整やロボットアームのスムーズな移動を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、水平多関節ロボットでは、上下方向の制御軸において、ロボットアームの原点設定作業等の高さ調整作業が実施されている。この高さ調整作業では、ブレーキが解除されてロボットアームを上方へ移動させる際に、断続ブレーキが発生してしまうので、ロボットアームをスムーズに移動させることが難しい。このため、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、ブレーキを解除してロボットアームを特定の方向へ移動させる際に、スムーズにロボットアームを移動させることができる、ロボット及びそのブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1実施態様に係るロボットは、ロボットアームの位置を検出する位置検出部と、ロボットアームを制動するブレーキ部と、位置検出部により検出された位置に基づいて、ブレーキ部の作動とこの作動の解除とを交互に行うブレーキ制御部と、を備え、ブレーキ制御部は、位置と基準値とを比較し、ブレーキ部の作動を解除する指令があった場合において、位置が基準値以下のとき、ブレーキ部の作動とこの作動の解除とを交互に行い、基準値を超えるとき、ブレーキ部の作動を解除する。
【0008】
本発明の第2実施態様に係るロボットでは、第1実施態様に係るロボットにおいて、位置を位置情報として記憶する記憶部を更に備え、基準値は、指令前に記憶部に記憶された位置情報とされている。
【0009】
本発明の第3実施態様に係るロボットでは、第1実施態様~第2実施態様のいずれか1つに係るロボットにおいて、ロボットアームは、水平多関節ロボットの、上下方向に移動するロボットアームである。
【0010】
本発明の第4実施態様に係るロボットでは、第1実施態様~第2実施態様のいずれか1つに係るロボットにおいて、ロボットアームは、垂直多関節ロボットの、関節部を中心として上下方向へ回転移動するロボットアームである。
【0011】
本発明の第5実施態様に係るプログラムは、位置検出部と、ブレーキ部と、ブレーキ制御部とを備えるロボットのブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、位置検出部が、ロボットアームの位置を検出する工程と、ブレーキ部が、ロボットアームを制動する工程と、ブレーキ制御部が、位置検出部により検出された位置と基準値とを比較し、ブレーキ部の作動を解除する指令があった場合において、位置が基準値以下のとき、ブレーキ部の作動とこの作動の解除とを交互に行い、基準値を超えるとき、ブレーキ部の作動を解除する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブレーキを解除してロボットアームを特定の方向へ移動させる際に、スムーズにロボットアームを移動させることができる、ロボット及びそのブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施の形態に係るロボット(水平多関節ロボット)の概略構成を説明する斜視図である。
【
図2】
図1に示されるロボットのロボットアーム及び関節部の構成を説明する要部概略構成図である。
【
図3】
図1に示されるロボットのブレーキ制御部の構成を説明するブロック図である。
【
図4】
図3に示されるブレーキ制御部におけるブレーキ制御方法並びにこのブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施の形態に係るロボット(垂直多関節ロボット)の概略構成を説明する斜視図である。
【
図6】
図5に示されるロボットのロボットアーム及び関節部の構成を説明する要部概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施の形態]
以下、
図1~
図4を用いて、本発明の第1実施の形態に係るロボット及びそのブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムについて説明する。
ここで、図中、適宜示されている矢印Xは三次元座標のX軸方向を示し、矢印YはY軸方向を示し、矢印ZはZ軸方向を示している。Y軸方向は水平面においてX軸方向に対して直交し、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に対して直交している。なお、これらの各方向は、実施の形態を説明するために便宜的に使用される方向であって、本発明における方向を限定するものではない。
【0015】
(ロボット1の全体構成)
図1に示されるように、本実施の形態に係るロボット1は、水平多関節ロボットとして構成されている。すなわち、ロボット1は、複数のロボットアーム21~24及び複数の関節部31~34を含んで構成されるロボット本体11と、ブレーキ制御部4とを備えている。
以下、各構成要素について、詳述する。
【0016】
(1)ロボットアーム21~24及び関節部31~34の構成
図1に示されるように、ロボット本体11において、ロボットアーム21は、図示省略のベース部から上方向となるZ軸方向へ立設され、ここでは円筒形状に形成されている。ロボットアーム21の上端部には回転関節として関節部31が配設されている。ここでは、関節部31、32及び34は機能だけを簡潔に説明し、その詳細な構成の説明は省略する。
【0017】
関節部31には、
図1に示される状態においてY軸方向へ延設され、ロボットアーム21と同様に円筒形状に形成されたロボットアーム22の一端部が連結されている。ロボットアーム22は、矢印Aに示す水平方向において、関節部31により回転し、移動する構成とされている。ロボットアーム22の他端部には、関節部31と同様の回転関節としての関節部32が配設されている。
【0018】
関節部32には、ロボットアーム22と同様に、Y軸方向へ延設され、円筒形状に形成されたロボットアーム23の一端部が連結されている。ロボットアーム23は、矢印Bに示す水平方向において、関節部32により回転し、移動する構成とされている。ロボットアーム23の他端部には、関節部33が配設されている。
【0019】
関節部33は、
図1及び
図2に示されるように、直動関節として構成されている。この関節部33は、矢印Cに示す垂直方向(上下方向)において、Z軸方向へ延設された円筒形状のロボットアーム24を移動させる構成とされている。
詳しく説明すると、関節部33は、
図2に示されるように、ロボットアーム24の側面に沿って垂直方向に延設されたラック331と、このラック331に噛み合うピニオン332とを備えている。そして、ピニオン332の回転中心には、回転駆動源としての電動モータ334の回転軸333が連結されている。
すなわち、関節部33では、電動モータ334を回転駆動させることにより、ラックアンドピニオン機構を介してロボットアーム24を垂直方向へ上昇又は下降させることができる。
【0020】
ロボットアーム24の下端部には、関節部31と同様の回転関節としての関節部34が配設されている。関節部34は、矢印Dに示す水平方向において、回転する構成とされている。関節部34には、図示省略のハンドピース等のツールが装着可能とされている。
【0021】
(2)ブレーキ制御部4の構成
ここでは、関節部33により上下方向へ移動が制御されるロボットアーム24のブレーキ制御システム並びにブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムについて説明する。関節部33以外の関節部31等により移動が制御されるロボットアーム22等についても、ブレーキ制御システム並びにプログラムは基本的に同様であるので、説明は省略する。
【0022】
図3に示されるように、ロボット1のブレーキ制御部4はホストコンピュータ(Host CPU)41、モータコントロールドライバ(MCD)42、サーボドライバ43のそれぞれを含んで構成されている。本実施の形態では、ブレーキ制御部4は、関節部33の動作を制御してロボットアーム24の移動を制御する制御部(コントローラ)を利用して構築されている。
一方、ロボット本体11において、関節部33の電動モータ334にはロボットアーム24の上下方向の移動を制動するブレーキ部335が配設されている。本実施の形態では、ブレーキ部335として電磁ブレーキが使用され、電動モータ334にブレーキ部335が内蔵されている。
加えて、電動モータ334には、その回転軸333の角度を検出してロボットアーム24の上下方向の位置(高さ位置)を検出する位置検出部45が配設されている。位置検出部45には例えばエンコーダが使用されている。
【0023】
さらに、ロボット本体11の図示省略の操作部にはブレーキスイッチ44が配設されている。ブレーキスイッチ44は、ロボット1の動作が停止された状態(サーボ制御系の非動作状態)において、ブレーキ部335の作動を解除する作動解除指令をブレーキ制御部4へ発令する。例えば、ロボットアーム24の原点設定作業等の高さ調整作業において、ブレーキスイッチ44が操作者により操作される。
【0024】
ブレーキ制御部4の説明に戻って、まずモータコントロールドライバ42は、パルス出力機能、汎用入出力(GPIO)機能、位置情報取得(エンコーダカウンタ)機能を少なくとも有する制御集積回路(IC:Integrated Circuits)として構成されている。モータコントロールドライバ42は、ホストコンピュータ41からロボットアーム24の移動制御情報が入力されると、サーボドライバ43を介して電動モータ334を回転させる。電動モータ334の回転により、
図2に示されるピニオン332及びラック331を介してロボットアーム24は上下方向へ移動する。
また、電動モータ334が回転すると、ロボットアーム24の上下方向の位置が位置検出部45により検出される。この検出部された位置情報はサーボドライバ43を通してモータコントロールドライバ42へ出力される。モータコントロールドライバ42では、位置情報が取得される。
さらに、ブレーキスイッチ44の操作による、ブレーキ部335の作動の解除を含む操作情報はモータコントロールドライバ42へ出力される。
【0025】
ホストコンピュータ41は、上記の通り、移動制御情報をモータコントロールドライバ42へ出力し、更にブレーキの作動又は解除を制御する作動解除情報をモータコントロールドライバ42へ出力する。
モータコントロールドライバ42は移動制御情報をサーボドライバ43へ出力し、サーボドライバ43は電動モータ334を駆動する。作動解除情報はモータコントロールドライバ42からサーボドライバ43へ出力され、サーボドライバ43はブレーキ部335を制御する。
また、ホストコンピュータ41では、位置検出部45により検出された位置情報がサーボドライバ43、モータコントロールドライバ42のそれぞれを通して入力される。加えて、ブレーキスイッチ44からの操作情報がモータコントロールドライバ42へ出力され、モータコントロールドライバ42は操作情報をブレーキ部335の作動を解除する作動解除指令としてホストコンピュータ41へ出力する。
【0026】
ホストコンピュータ41では、位置情報と基準値とが比較される。
位置情報としては、ホストコンピュータ41に内蔵された図示省略のエンコーダ算出回路において、角度情報からロボットアーム24の高さ位置情報へ変換された位置情報が使用される。
基準値は、ホストコンピュータ41に内蔵された記憶部441に予め格納されている。本実施の形態では、記憶部441に格納された基準値として、前回の高さ調整作業において検出された位置情報(高さ位置情報)が使用されている。表現を代えれば、基準値には、ブレーキスイッチ44の操作により生成される作動解除指令の、モータコントロールドライバ42からホストコンピュータ41への発令前に、記憶部441に記憶された位置情報が使用されている。
なお、記憶部441としては、ホストコンピュータ41に外付けされた記憶装置を使用することができる。
【0027】
ホストコンピュータ41は、位置情報と基準値との比較の結果、位置情報が基準値以下のとき、作動解除指令に対して、ブレーキ部335の作動とこの作動の解除とを交互に行う作動解除情報をブレーキ部335へ出力する。一方、ホストコンピュータ41は、位置情報と基準値との比較の結果、位置情報が基準値を超えるとき、作動解除指令に対して、ブレーキ部335の作動を解除する作動解除情報をブレーキ部335へ出力する。
【0028】
(ロボット1のブレーキ制御方法及びプログラム)
図1~
図3を参照しつつ、
図4を用いて、ロボット1のブレーキ制御方法並びにこのブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムについて説明する。
ロボット1のブレーキ制御方法が開始されると、最初に、ロボット1の電源が投入され、
図1に示されるロボットアーム24の現在の高さ位置情報が初期化される(ステップS1)。
【0029】
ここで、高さ調整作業が開始され、上下方向に移動するロボットアーム24において、ブレーキ部335の作動を解除する要求があるか否かが判定される(ステップS2)。作動の解除の要求があることとは、
図3に示されるブレーキスイッチ44が操作され、作動解除指令が発令されたことである。逆に、作動の解除の要求がないとは、ブレーキスイッチ44が操作されておらず、作動解除指令が発令されていないことである。
作動の解除の要求がないと判定されたとき、ブレーキ部335が作動する(ステップS9)。これにより、ロボットアーム24はブレーキ部335により制動される。そして、高さ調整作業が終了したか否かが判定される(ステップS8)。高さ調整作業が終了したと判定されると、このブレーキ制御方法が終了する。高さ調整作業が終了していないと判定されると、ステップS2の処理へ戻る。
【0030】
一方、ステップS2において、ブレーキ部335の作動を解除する要求があると判定されると、ロボットアーム24の現在の高さ位置情報が、位置検出部45を用いて検出され、モータコントロールドライバ42に取得される(ステップS3。
図3参照)。
引き続き、ロボットアーム24のブレーキ部335が作動しているか否かが判定される(ステップS4)。ブレーキ部335が作動していると判定されると、ブレーキ部335の作動が解除される(ステップS5)。
このとき、ステップS3において取得された位置情報、すなわちロボットアーム24の現在の高さ位置情報が記憶部441に記憶される(ステップS6)。この記憶された位置情報は、次回の高さ調整作業において、「基準値」として使用される。
そして、待機状態となり、ブレーキ部335の作動が解除された状態が一定の時間維持される(ステップS7)。ここで、一定の時間(待機時間)は例えば200 [msec]に設定されている。待機状態の後、処理はステップS8へ移行する。
【0031】
ステップS4において、ブレーキ部335が作動していないと判定されると、ステップS3において取得された現在のロボットアーム24の高さ位置情報と記憶部441(
図3参照)に格納された基準値とが比較される(ステップS10)。ここで比較される「基準値」は前回の高さ調整作業において記憶部441に格納されたロボットアーム24の高さ位置情報である。
ステップS10は、ステップS2におけるブレーキ部335の作動を解除する要求がある状態とされる。つまり、ステップS10では、
図3に示されるブレーキスイッチ44が操作され、モータコントロールドライバ42からホストコンピュータ41へ「作動解除指令」が発令されている状態である。
【0032】
このステップS10において、高さ位置情報が基準値以下のとき、ブレーキ部335が作動される(ステップS11)。この後、処理はステップS6へ移行する。
一方、ステップS10において、高さ位置情報が基準値を超えるとき、処理が、直接、ステップS6へ移行する。
【0033】
すなわち、ブレーキ制御方法では、高さ調整作業がステップ8において終了しない場合には、ステップS2からステップS11までの処理が繰り返し行われる。このため、ステップS10において、高さ位置情報が基準値以下のとき、言い換えれば前回の高さ位置よりも下がっている場合に作動解除指令に対して、ブレーキ部335の作動とこの作動の解除とが交互に行われる。作動と解除との切替時間は待機時間に相当する。つまり、基準値以下のとき、ロボットアーム24は下方向への移動となっているので、ブレーキ部335の作動と作動の解除とを交互に行い、ロボットアーム24の急激な落下を効果的に抑制又は防止することができる。
また、ステップS10において、高さ位置情報が基準値を超えるとき、言い換えれば前回の高さ位置よりも上がっている場合に作動解除指令に対して、ブレーキ部335の作動が解除される。つまり、基準値を超えるとき、ロボットアーム24は上方向への移動となっているので、ブレーキ部335の作動が解除されると、特定の方向としての上方向へのロボットアーム24の移動がスムーズに行える。
【0034】
(作用効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るロボット1は、
図3に示されるように、位置検出部45と、ブレーキ部335と、ブレーキ制御部4とを備える。位置検出部45は、
図1及び
図2に示されるロボットアーム24の高さ位置を検出する。ブレーキ部335は、上下方向へ移動するロボットアーム24を制動する。
ここで、ブレーキ制御部4は、位置検出部45により検出された高さ位置に基づいて、ブレーキ部335の作動とこの作動の解除とを交互に行う。このため、特定の方向として上方向において、ブレーキ部335の作動を解除することができるので、上方向へはロボットアーム24をスムーズに移動させることができる。
【0035】
また、ロボット1において、
図3に示されるブレーキ制御部4は、ロボットアーム24の高さ位置と基準値とを比較する(
図4のステップS10)。そして、ブレーキ制御部4は、ブレーキ部335の作動を解除する指令、すなわち作動解除指令があった場合において、高さ位置が基準値以下のとき、ブレーキ部335の作動とこの作動の解除とを交互に行う。一方、ブレーキ制御部4は、高さ位置が基準値を超えるとき、ブレーキ部335の作動を解除する。
このため、特定の方向として、高さ位置が基準値を超える上方向において、ブレーキ部335の作動が解除されるので、上方向へは
図1及び
図2に示されるロボットアーム24をスムーズに移動させることができる。
【0036】
さらに、ロボット1は、
図3に示されるように、高さ位置を位置情報として記憶する記憶部441を備える。そして、ブレーキ制御部4において、高さ位置と比較される基準値は、作動解除指令の発令前、つまりブレーキ部335の作動を解除する前に記憶部441に記憶された位置情報とされる。
このため、作動解除指令の発令前に記憶された位置情報を基準として、特定の方向(例えば、高さ方向)へロボットアーム24をスムーズに移動させることができる。
【0037】
また、ロボット1は水平多関節ロボットとされ、ロボットアーム24は上下方向に移動する。このため、水平多関節ロボットにおいて、特定の方向として上方向へのロボットアーム24の移動をスムーズに行うことができる。
【0038】
さらに、
図3に示される位置検出部45と、ブレーキ部335と、ブレーキ制御部4とを備えるロボット1のブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムは以下の工程を備える。位置検出部45が、ロボットアーム24の高さ位置を検出する(
図4のステップS3)。ブレーキ部335が、ロボットアーム24を制動する。ブレーキ制御部4が、位置検出部45により検出された高さ位置と基準値とを比較する。ブレーキ制御部4は、ブレーキ部335の作動を解除する作動解除指令があった場合において、高さ位置が基準値以下のとき、ブレーキ部335の作動とこの作動の解除とを交互に行う。また、ブレーキ制御部4は、基準値を超えるとき、ブレーキ部335の作動を解除する。
このため、ブレーキ部335を解除してロボットアーム24を特定の方向としての上方向へ移動させる際に、スムーズにロボットアーム24を移動させることができるプログラムを提供することができる。
【0039】
[第2実施の形態]
図5及び
図6を用いて、本発明の第2実施の形態に係るロボット1及びそのブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムについて説明する。
なお、本実施の形態において、第1実施の形態に係るロボット1の構成要素と同一又は実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
(ロボット1の全体構成)
図5に示されるように、本実施の形態に係るロボット1は、垂直多関節ロボットとして構成されている。すなわち、ロボット1は、複数のロボットアーム51~55及び複数の関節部61~66を含んで構成されるロボット本体11と、ブレーキ制御部4とを備えている。
以下、各構成要素について、詳述する。
【0041】
(1)ロボットアーム51~55及び関節部61~66の構成
図5に示されるように、ロボット本体11において、図示省略のベース部上に回転関節としての関節部61が配設されている。関節部61は、矢印Eに示す水平方向において、ベース部に対して回転する構成とされている。関節部61にはロボットアーム51の下端部が連結されている。ロボットアーム51は関節部61から上方向へ立設され、ここでも円筒形状に形成されている。ロボットアーム51の上端部には回転関節としての関節部62が配設されている。
【0042】
関節部62には、
図5に示される状態において、Y軸方向へ延設され、ロボットアーム51と同様に円筒形状に形成されたロボットアーム52の一端部が連結されている。ロボットアーム52は、矢印Fに示す垂直方向(Y軸-Z軸垂直面方向)において、関節部62により回転し、上下方向へ移動する構成とされている。ロボットアーム52の他端部には、関節部62と同様の回転関節としての関節部63が配設されている。
【0043】
関節部63には、Y軸方向へ延設され、ロボットアーム51と同様に円筒形状に形成されたロボットアーム53の一端部が連結されている。ロボットアーム53は、矢印Fに示す垂直方向と同様の、矢印Gに示す垂直方向において、関節部63により回転し、上下方向へ移動する構成とされている。ロボットアーム53の他端部には、関節部61と同様の回転関節としての関節部64が配設されている。
【0044】
関節部64には、Y軸方向へ延設され、ロボットアーム51と同様に円筒形状に形成されたロボットアーム54の一端部が連結されている。ロボットアーム54は、矢印Hに示す垂直方向(X軸-Z軸垂直面方向)において、関節部64により回転する構成とされている。ロボットアーム54の他端部には、関節部62と同様の回転関節としての関節部65が配設されている。
【0045】
関節部65には、Y軸方向へ延設され、ロボットアーム51と同様に円筒形状に形成されたロボットアーム55の一端部が連結されている。ロボットアーム55は、矢印Fに示す垂直方向と同様の、矢印Iに示す垂直方向において、関節部65により回転し、上下方向へ移動する構成とされている。ロボットアーム55の他端部には、関節部61と同様の回転関節としての関節部66が配設されている。
【0046】
関節部66は、矢印Hに示す垂直方向と同様の、矢印Jに示す垂直方向において、回転する構成とされている。関節部66には、図示省略のツールが装着可能とされている。
【0047】
ここで、ロボット本体11の関節部61、64、66のそれぞれの構成は、第1実施の形態に係るロボット本体11の関節部31、34のそれぞれの構成と同一又は実質的に同一の構成とされている。
一方、関節部62、63、65のそれぞれの構成は、第1実施の形態に係る関節部32と同一又は実質的に同一の構成とされている。
図6に示されるように、関節部62は電動モータ621を備え、電動モータ621の回転軸が直接、又は図示省略の減速機を介してロボットアーム52の一端部に連結されている。関節部63、65のそれぞれの構成は関節部62の構成と同一であるので、その構成の説明は省略する。
【0048】
(2)ブレーキ制御部4の構成
本実施の形態では、上下方向へ移動するロボットアーム52、53、55のそれぞれの制動の制御に、第1実施の形態に係るブレーキ制御部4、ブレーキ制御方法及びプログラムと同様のブレーキ制御部4、ブレーキ制御方法及びプログラムが適用されている。
すなわち、本実施の形態に係るブレーキ制御部4は、前述の
図3に示されるホストコンピュータ41、モータコントロールドライバ42及びサーボドライバ43を含んで構成されている。ロボット本体11においては、
図3に示されるブレーキスイッチ44が配設され、関節部62の電動モータ621には、ブレーキ部335に相当するブレーキ部、位置検出部45に相当する位置検出部が配設されている。関節部63、65のそれぞれの図示省略の電動モータは電動モータ621と同一の構成とされている。
【0049】
(ロボット1のブレーキ制御方法及びプログラム)
また、ブレーキ制御方法並びにブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムは、第1実施の形態に係るブレーキ制御方法並びにプログラムと同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0050】
(作用効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るロボット1によれば、第1実施の形態に係るロボット1により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、本実施の形態に係るロボット1のブレーキ制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムによれば、第1実施の形態に係るプログラムにより得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
また、
図5に示されるように、ロボット1は垂直多関節ロボットとされ、ロボットアーム52は関節部62により、ロボットアーム53は関節部63により、ロボットアーム55は関節部65により、各々、上下方向へ移動する。このため、垂直多関節ロボットにおいて、上下方向を特定方向とするロボットアーム52、53、55の移動をスムーズに行うことができる。
【0052】
[その他の実施の形態]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、本発明は、ロボットアームを矩形筒形状に形成してもよい。また、本発明は、ロボットアームの上下方向の移動に対するブレーキ制御方法に限らず、水平方向、斜め方向、回転方向のそれぞれの方向の移動に対するブレーキ制御方法であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ロボット
11 ロボット本体
21~24、51~55 ロボットアーム
31~34、61~66 関節部
334、621 電動モータ
335 ブレーキ部
4 ブレーキ制御部
41 ホストコンピュータ
42 モータコントロールドライバ
43 サーボドライバ
44 ブレーキスイッチ
45 位置検出部