IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーサル製缶株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-缶搬送装置 図1
  • 特許-缶搬送装置 図2
  • 特許-缶搬送装置 図3
  • 特許-缶搬送装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】缶搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/30 20060101AFI20230526BHJP
   B65G 15/58 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
B65G47/30 D
B65G15/58 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019068310
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164320
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】砂永 義幸
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-001432(JP,A)
【文献】実開昭62-168012(JP,U)
【文献】特開昭49-003356(JP,A)
【文献】特開平06-219539(JP,A)
【文献】米国特許第05664662(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/20;
15/58;
47/00-47/51;
47/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状であり缶軸が第1の水平方向に延びる缶を、前記第1の水平方向と異なる第2の水平方向に搬送する缶搬送装置であって、
缶の底部を缶軸回りに回転可能に保持し、前記第2の水平方向に延び、上下方向に互いに隣接して配置される複数の保持部と、
前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向へ向かうに従い下側に向けて延びるガイド部と、を備え、
上下方向に隣接する一対の前記保持部は、前記第2の水平方向において互いに相対的に移動し、
前記ガイド部は、前記保持部に保持されて前記搬送方向に移動する缶と接触する、
缶搬送装置。
【請求項2】
上下方向に隣接する一対の前記保持部は、前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向に移動する、
請求項1に記載の缶搬送装置。
【請求項3】
複数の前記保持部は、
第1の保持部と、
前記第1の保持部よりも上側に位置する第2の保持部と、を有し、
前記第1の保持部が前記搬送方向へ移動する速度は、前記第2の保持部が前記搬送方向へ移動する速度よりも速い、
請求項1または2に記載の缶搬送装置。
【請求項4】
前記保持部に缶を供給する供給部を備え、
前記供給部は、前記第2の水平方向に互いに間隔をあけて複数設けられる、
請求項に記載の缶搬送装置。
【請求項5】
前記保持部に缶を供給する供給部を備え、
前記供給部は、上下方向に隣接する一対の前記保持部間に向けて缶を供給する、
請求項1からのいずれか1項に記載の缶搬送装置。
【請求項6】
前記供給部は、前記第2の水平方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記供給部は、前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向へ向かうに従い下側に向けて延び、
前記供給部は、前記保持部に保持されて前記搬送方向に移動する缶と接触する、
請求項に記載の缶搬送装置。
【請求項7】
缶の底部を前記保持部にエア吸引により保持させるエア吸引手段を備え、
前記保持部は、環状のベルトの一部であり、
前記エア吸引手段は、
前記ベルトに開口するエア孔と、
前記エア孔を通して缶の底部をエア吸引するエア吸引源と、を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の缶搬送装置。
【請求項8】
前記保持部を前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向へ移動させる移動手段を備え、
前記保持部は、環状のベルトの一部であり、
前記移動手段は、
前記ベルトが巻き回される複数のスプロケットと、
複数の前記スプロケットのうち少なくとも1つを回転させる駆動部と、を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の缶搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製缶工場では、有底筒状の缶の内面に塗装を施した後、この缶をオーブンに搬送し塗料を乾燥させている。缶の内面に塗装を行った後、缶を缶軸回りに回転させながら搬送することで、缶の内面に塗料を均等に塗布することができる。
例えば特許文献1の図7に記載される缶胴の搬送装置は、排出シュートと、2本の無端状ベルトを有するコンベアと、ボトムガイドと、トップガイドと、を備える。この缶胴の搬送装置は、無端状ベルトを回転させることにより、その上に載置されている缶胴を軸回りに自転させて、塗料を内面に均一に塗布できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-1432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記缶胴の搬送装置では、缶胴の開口部先端に付着した塗料がトップガイドに付着する。トップガイドに付着した塗料により、その後に搬送される缶胴が汚れてしまうという問題が生じる。このため、トップガイドを定期的に清掃する必要があり、生産性に影響していた。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、搬送する缶が塗料により汚れることを抑制でき、生産性を向上できる缶搬送装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、有底筒状であり缶軸が第1の水平方向に延びる缶を、前記第1の水平方向と異なる第2の水平方向に搬送する缶搬送装置であって、缶の底部を缶軸回りに回転可能に保持し、前記第2の水平方向に延び、上下方向に互いに隣接して配置される複数の保持部と、前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向へ向かうに従い下側に向けて延びるガイド部と、を備え、上下方向に隣接する一対の前記保持部は、前記第2の水平方向において互いに相対的に移動し、前記ガイド部は、前記保持部に保持されて前記搬送方向に移動する缶と接触する
【0007】
本発明の缶搬送装置では、缶の底部が、上下方向に隣接配置される一対の保持部の両方にわたって保持されると、第2の水平方向における一対の保持部同士の速度差に応じて、缶が缶軸回りに回転させられつつ、第2の水平方向に搬送される。このため、缶搬送装置の前工程のインサイドスプレー装置(缶内面塗装装置)で缶の内面に塗布された塗料が、缶搬送装置で搬送される缶の内面に、均等に行き渡る。
【0008】
本発明によれば、従来の缶搬送装置で用いていたトップガイド等の部材が不要である。このため、缶の内面に塗布された塗料が、トップガイド等に付着してその後に搬送される缶を汚すことが抑制される。トップガイド等を定期的に清掃する作業が削減されるため、装置の稼働率が高まり、缶の生産性が向上する。
【0009】
また、搬送される缶が塗料で汚されにくくなるため、缶の品質や歩留りが向上する。また、装置をコンパクトに構成できるため、既存の設備に本発明を適用することが容易であり、設備費用を削減できる。
上記缶搬送装置は、前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向へ向かうに従い下側に向けて延びるガイド部を備え、前記ガイド部は、前記保持部に保持されて前記搬送方向に移動する缶と接触する。
この場合、保持部に保持されて移動する缶がガイド部に接触することで、例えば、上下方向に隣接する一対の保持部間に缶を案内することができ、缶を安定して缶軸回りに自転させることができる。またガイド部によって、上側の保持部から下側の保持部へと缶を移動させることができ、例えば、所定の保持部に缶を単列に整列させることができる。
【0010】
上記缶搬送装置において、上下方向に隣接する一対の前記保持部は、前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向に移動することが好ましい。
【0011】
この場合、上下方向に隣接配置される一対の保持部が、両方とも缶の搬送方向に移動する。すなわち、一対の保持部のうち、一方の保持部の搬送方向への移動速度と、他方の保持部の搬送方向への移動速度とが、互いに異なる。一対の保持部同士の速度差によって缶を缶軸回りに自転させつつ、効率よく缶を搬送することができる。
【0014】
上記缶搬送装置において、複数の前記保持部は、第1の保持部と、前記第1の保持部よりも上側に位置する第2の保持部と、を有し、前記第1の保持部が前記搬送方向へ移動する速度は、前記第2の保持部が前記搬送方向へ移動する速度よりも速いことが好ましい。
【0015】
この場合、下側の第1の保持部の移動速度が速いので、第1の保持部が保持する複数の缶の配置間隔(搬送ピッチ)を大きく確保できる。このため、ガイド部によって缶が上側の第2の保持部から下側の第1の保持部へ案内されるときに、第1の保持部が保持する缶同士の間に、第2の保持部から缶を挿入しやすい。これにより、第1の保持部において缶を安定して整列させることができる。
【0016】
上記缶搬送装置は、前記保持部に缶を供給する供給部を備え、前記供給部は、前記第2の水平方向に互いに間隔をあけて複数設けられることとしてもよい。
【0017】
この場合、第2の水平方向に並ぶ複数の供給部からそれぞれ缶が供給されても、下側の第1の保持部の移動速度が速いため、第1の保持部において缶を安定して整列させることができる。
【0018】
上記缶搬送装置は、前記保持部に缶を供給する供給部を備え、前記供給部は、上下方向に隣接する一対の前記保持部間に向けて缶を供給することが好ましい。
【0019】
この場合、供給部から保持部に缶が供給されると直ちに、缶が缶軸回りに自転させられる。したがって、缶搬送装置の前工程において缶の内面に塗装された塗料が、搬送される缶の内面でより均等に拡がりやすくなる。
【0020】
上記缶搬送装置において、前記供給部は、前記第2の水平方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、前記供給部は、前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向へ向かうに従い下側に向けて延び、前記供給部は、前記保持部に保持されて前記搬送方向に移動する缶と接触することが好ましい。
【0021】
この場合、保持部に保持されて移動する缶が供給部に接触することで、例えば、上下方向に隣接する一対の保持部間に缶を案内することができ、缶を安定して缶軸回りに自転させることができる。また供給部によって、上側の保持部から下側の保持部へと缶を移動させることができ、所定の保持部に缶を整列させることができる。供給部で缶を案内することができるので、ガイド部のみで缶を案内する場合と比べて、部品点数を削減できる。
【0022】
上記缶搬送装置は、缶の底部を前記保持部にエア吸引により保持させるエア吸引手段を備え、前記保持部は、環状のベルトの一部であり、前記エア吸引手段は、前記ベルトに開口するエア孔と、前記エア孔を通して缶の底部をエア吸引するエア吸引源と、を有することが好ましい。
【0023】
この場合、エア吸引手段が、バキューム構造によって缶の底部をベルトの保持部に吸着させる。簡素な構造を用いて、缶を安定して保持しつつ搬送方向へ移動させることができる。また保持部で保持した缶を、缶軸回りに安定して自転させることができる。
【0024】
上記缶搬送装置は、前記保持部を前記第2の水平方向のうち缶の搬送方向へ移動させる移動手段を備え、前記保持部は、環状のベルトの一部であり、前記移動手段は、前記ベルトが巻き回される複数のスプロケットと、複数の前記スプロケットのうち少なくとも1つを回転させる駆動部と、を有することが好ましい。
【0025】
この場合、環状のベルトおよび移動手段により、ベルトの保持部で保持した缶を連続的に効率よく搬送方向へ移動させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一つの態様の缶搬送装置によれば、搬送する缶が塗料により汚れることを抑制でき、トップガイドがなくても生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態の缶搬送装置を示す側面図である。
図2】本発明の第1実施形態の缶搬送装置を示す縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態の缶搬送装置を示す側面図である。
図4】本発明の第3実施形態の缶搬送装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の缶搬送装置10について、図1および図2を参照して説明する。
本実施形態の缶搬送装置10は、例えば製缶工場に設置される。製缶工場は、缶Pの内面に塗装を施すインサイドスプレー装置(缶内面塗装装置)と、缶Pの内面に塗布された塗料を乾燥させるインサイドベークオーブンと、インサイドスプレー装置とインサイドベークオーブンとを繋ぐ缶Pの搬送経路を構成する缶搬送装置10と、を備える。なお本実施形態では、インサイドスプレー装置およびインサイドベークオーブンの図示を省略する。
【0029】
缶搬送装置10が搬送する缶Pは、ネックフランジ加工前の缶胴であり、有底筒状である。具体的に缶Pは、有底円筒状である。缶Pは、例えば、アルミニウム合金製である。缶搬送装置10は、缶軸が第1の水平方向に延びる缶Pを、第1の水平方向と異なる第2の水平方向に搬送する。
【0030】
各図に3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、+Z側を上側とし、-Z側を下側とする上下方向(鉛直方向)である。X軸方向は、Z軸方向と直交する第1の水平方向であり、本実施形態では、缶搬送装置10により搬送される缶Pの缶軸が延びる方向である。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向と直交する第2の水平方向である。すなわち本実施形態では、第2の水平方向が、第1の水平方向と直交する。第2の水平方向(Y軸方向)のうち、+Y側は缶Pの搬送方向であり、-Y側は缶Pの搬送方向とは反対方向である。本実施形態では、缶Pの搬送方向を、単に搬送方向と呼ぶ場合がある。なお、+Y側は缶Pの搬送方向の下流側と言い換えてもよく、-Y側は缶Pの搬送方向の上流側と言い換えてもよい。
【0031】
図1および図2に示すように、本実施形態の缶搬送装置10は、缶Pの底部を缶軸回りに回転可能に保持し、第2の水平方向に延び、上下方向に互いに隣接して配置される複数の保持部1と、第2の水平方向のうち缶Pの搬送方向へ向かうに従い下側に向けて延びるガイド部2と、保持部1に缶Pを供給する供給部3と、缶Pの底部を保持部1にエア吸引により保持させるエア吸引手段4と、保持部1を第2の水平方向のうち缶Pの搬送方向へ移動させる移動手段5と、を備える。
【0032】
保持部1は、環状のベルト6の一部である。ベルト6は、保持部1と、複数のエア孔(図示省略)と、を有する。
複数のエア孔は、ベルト6が延びる方向に互いに間隔をあけて配置される。保持部1に位置する複数のエア孔は、缶Pの搬送方向に沿って配列する。エア孔は、ベルト6をベルト6の厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0033】
ベルト6は、上下方向に互いに隣接して複数設けられる。各保持部1は、各ベルト6の一部をそれぞれ構成する。保持部1は、ベルト6のうち缶Pの搬送路を構成する部分であり、搬送する缶Pの底部と対向する部分である。保持部1は、第2の水平方向に沿って直線状に延びる。
【0034】
複数の保持部1は、上下方向に並んで配置される。複数の保持部1のうち、上下方向に隣接する一対の保持部1は、第2の水平方向において互いに相対的に移動する。つまり上下方向に隣接する一対のベルト6は、第2の水平方向への移動速度が互いに異なる。本実施形態では複数の保持部1が、第2の水平方向のうち缶Pの搬送方向(+Y側)に移動する。つまり上下方向に隣接する一対の保持部1は、缶Pの搬送方向に移動する。上下方向に隣接する一対の保持部1は、缶Pの搬送方向への移動速度が、互いに異なる。
【0035】
本実施形態では、複数の保持部1のうち、所定の保持部1が缶Pの搬送方向へ移動する速度が、所定の保持部1よりも上側に位置する別の保持部1が缶Pの搬送方向へ移動する速度よりも速い。具体的に本実施形態において、複数の保持部1は、第1の保持部1Aと、第1の保持部1Aよりも上側に位置する第2の保持部1Bと、第2の保持部1Bよりも上側に位置する第3の保持部1Cと、を有する。第1の保持部1Aが缶Pの搬送方向へ移動する速度は、第2の保持部1Bが缶Pの搬送方向へ移動する速度よりも速い。第2の保持部1Bが缶Pの搬送方向へ移動する速度は、第3の保持部1Cが缶Pの搬送方向へ移動する速度よりも速い。
複数の保持部1のうち、最も下側に位置する保持部1(第1の保持部1A)は、缶搬送装置10の後工程に設けられるインサイドベークオーブンへ向けて、単列に整列された缶Pを搬送方向に排出する。
【0036】
ガイド部2は、缶Pの缶軸方向(X軸方向)において、保持部1と対向して配置される。ガイド部2は、保持部1に保持されて搬送方向に移動する缶Pと接触する。ガイド部2に接触した缶Pは、ガイド部2の形状に応じて、缶Pの搬送方向へ向かうに従い下側に向けて案内される。図1に示すように、ガイド部2は、第2の水平方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。ガイド部2は、缶Pの缶軸方向から見て、上下方向に並ぶ複数の保持部1と重なって配置される。つまりガイド部2は、複数の保持部1上に跨って延びる。
【0037】
供給部3は、缶搬送装置10の前工程に設けられるインサイドスプレー装置と接続される。供給部3は、例えば缶シューターである。インサイドスプレー装置で内面に塗装が施された缶Pは、供給部3を通って、保持部1に供給される。図1に示す例では、供給部3が上下方向に延びる。本実施形態では供給部3が、複数の保持部1のうち、最も上側に位置する保持部1(第3の保持部1C)に向けて缶Pを供給する。供給部3は、第2の水平方向に互いに間隔をあけて複数配置される。各供給部3は、各インサイドスプレー装置と接続される。各供給部3は、各ガイド部2の搬送方向の上流側に缶Pを供給する。
【0038】
図2に示すように、エア吸引手段4は、ベルト6に開口する上述のエア孔と、エア孔を通して缶Pの底部をエア吸引するエア吸引源7と、ベルト6の保持部1に隣接配置され、保持部1に開口するエア孔、およびエア吸引源7と繋がるバキューム室8と、を有する。
【0039】
エア吸引源7は、例えばブロワファン等である。エア吸引源7は、例えば配管やホース等の配管部材9およびバキューム室8を通して、ベルト6の保持部1に位置するエア孔と連通される。
【0040】
バキューム室8は、ベルト6の保持部1に隣接して配置される室(減圧室)である。バキューム室8は、保持部1を介して缶Pの底部と接近して配置される。缶Pとバキューム室8とは、保持部1を間に挟んで互いに反対側に位置する。缶P、保持部1およびバキューム室8は、缶Pの缶軸方向に互いに並んで配置される。
エア吸引源7が、配管部材9、バキューム室8および保持部1のエア孔を通してエアを吸引することにより、缶Pの底部が、保持部1に吸着されて一時的に保持される。保持部1は、エア孔を通して缶Pの底部に作用するエア吸引源7のエア吸引力により、缶Pの底部を缶軸回りに回転可能に保持する。
【0041】
図1において、移動手段5は、ベルト6が巻き回される複数のスプロケット(図示省略)と、複数のスプロケットのうち少なくとも1つを回転させる駆動部11と、を有する。
スプロケットは、軸受によりスプロケット軸回りに回転自在に支持される。複数のスプロケットのうち少なくとも1つ以上は、スプロケット軸に直交するスプロケット径方向に位置調整可能であり、これにより、ベルト6のテンション(張力)を所定値以上に維持することができる。
駆動部11は、例えばモータ等である。
【0042】
以上説明した本実施形態の缶搬送装置10では、缶Pの底部が、上下方向に隣接配置される一対の保持部1の両方にわたって保持されると、第2の水平方向における一対の保持部1同士の速度差に応じて、缶Pが缶軸回りに回転させられつつ、第2の水平方向に搬送される。このため、缶搬送装置10の前工程のインサイドスプレー装置で缶Pの内面に塗布された塗料が、缶搬送装置10で搬送される缶Pの内面に、均等に行き渡る。
【0043】
本実施形態によれば、従来の缶搬送装置で用いていたトップガイド等の部材が不要である。このため、缶Pの内面に塗布された塗料が、トップガイド等に付着してその後に搬送される缶Pを汚すことが抑制される。トップガイド等を定期的に清掃する作業が削減されるため、装置の稼働率が高まり、缶Pの生産性が向上する。
【0044】
また、搬送される缶Pが塗料で汚されにくくなるため、缶Pの品質や歩留りが向上する。また、装置をコンパクトに構成できるため、既存の設備に本実施形態を適用することが容易であり、設備費用を削減できる。
【0045】
また本実施形態では、上下方向に隣接配置される一対の保持部1が、両方とも缶Pの搬送方向に移動する。すなわち、一対の保持部1のうち、一方の保持部1の搬送方向への移動速度と、他方の保持部1の搬送方向への移動速度とが、互いに異なる。
この場合、一対の保持部1同士の速度差によって缶Pを缶軸回りに自転させつつ、効率よく缶Pを搬送することができる。
【0046】
また本実施形態では、ガイド部2が、缶Pの搬送方向へ向かうに従い下側に向けて延び、搬送方向に移動する缶Pが、ガイド部2に接触する。
この場合、保持部1に保持されて移動する缶Pがガイド部2に接触することで、例えば、上下方向に隣接する一対の保持部1間に缶Pを案内することができ、缶Pを安定して缶軸回りに自転させることができる。またガイド部2によって、上側の保持部1から下側の保持部1へと缶Pを移動させることができ、例えば、所定の保持部1(本実施形態では第1の保持部1A)に缶Pを単列に整列させることができる。
【0047】
また本実施形態では、複数の保持部1のうち、第1の保持部1Aが缶Pの搬送方向へ移動する速度が、第1の保持部1Aよりも上側に位置する第2の保持部1Bが搬送方向へ移動する速度よりも速い。
この場合、下側の第1の保持部1Aの移動速度が速いので、第1の保持部1Aが保持する複数の缶Pの配置間隔(搬送ピッチ)を大きく確保できる。このため、ガイド部2によって缶Pが上側の第2の保持部1Bから下側の第1の保持部1Aへ案内されるときに、第1の保持部1Aが保持する缶P同士の間に、第2の保持部1Bから缶Pを挿入しやすい。これにより、第1の保持部1Aにおいて缶Pを安定して整列させることができる。
【0048】
また本実施形態では、複数の保持部1のうち、第2の保持部1Bが缶Pの搬送方向へ移動する速度が、第2の保持部1Bよりも上側に位置する第3の保持部1Cが搬送方向へ移動する速度よりも速い。このため、ガイド部2によって缶Pが上側の第3の保持部1Cから下側の第2の保持部1Bへ案内されるときに、第2の保持部1Bが保持する缶P同士の間に、第3の保持部1Cから缶Pを挿入しやすい。したがって、上述と同様の作用効果が得られる。
【0049】
また本実施形態では、供給部3が、第2の水平方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
この場合、第2の水平方向に並ぶ複数の供給部3からそれぞれ缶Pが供給されても、下側の第1の保持部1Aの移動速度が速いため、第1の保持部1Aにおいて缶Pを安定して整列させることができる。
【0050】
また本実施形態では、エア吸引手段4が、ベルト6に開口するエア孔と、エア吸引源7と、を有する。またエア吸引手段4は、さらにバキューム室8を有する。
この場合、エア吸引手段4が、バキューム構造によって缶Pの底部をベルト6の保持部1に吸着させる。簡素な構造を用いて、缶Pを安定して保持しつつ搬送方向へ移動させることができる。また保持部1で保持した缶Pを、缶軸回りに安定して自転させることができる。
【0051】
また本実施形態では、ベルト6が環状であり、移動手段5が、複数のスプロケットと、駆動部11と、を有する。
この場合、環状のベルト6および移動手段5により、ベルト6の保持部1で保持した缶Pを連続的に効率よく搬送方向へ移動させることができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の缶搬送装置20について、図3を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
本実施形態の缶搬送装置20は、前述の実施形態で説明した缶搬送装置10とは、供給部3の構成が異なる。
図3に示すように、本実施形態の供給部3は、上下方向に隣接する一対の保持部1間に向けて缶Pを供給する。すなわち、供給部3の下端部に位置する供給口が、上下方向に隣り合う一対の保持部1同士の間(境界)に向けて開口する。
この場合、供給部3から保持部1に缶Pが供給されると直ちに、缶Pが缶軸回りに自転させられる。したがって、缶搬送装置20の前工程において缶Pの内面に塗装された塗料が、搬送される缶Pの内面でより均等に拡がりやすくなる。
【0054】
供給部3は、第2の水平方向のうち缶Pの搬送方向(+Y側)へ向かうに従い下側に向けて延びる。供給部3は、保持部1に保持されて搬送方向に移動する缶Pと接触する。搬送方向の上流側(-Y側)から供給部3に接触した缶Pは、供給部3の形状に応じて、缶Pの搬送方向へ向かうに従い下側に向けて案内される。
この場合、保持部1に保持されて移動する缶Pが供給部3に接触することで、例えば、上下方向に隣接する一対の保持部1間に缶Pを案内することができ、缶Pを安定して缶軸回りに自転させることができる。また供給部3によって、上側の保持部1から下側の保持部1へと缶Pを移動させることができ、所定の保持部1に缶Pを整列させることができる。供給部3で缶Pを案内することができるので、ガイド部2のみで缶Pを案内する場合と比べて、部品点数を削減できる。
【0055】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の缶搬送装置30について、図4を参照して説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態および第2実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、本実施形態の缶搬送装置30は、缶Pの底部を缶軸回りに回転可能に保持し、第2の水平方向に延び、上下方向に互いに隣接して配置される複数の保持部1,12を備える。上下方向に隣接する一対の保持部1,12は、第2の水平方向において互いに相対的に移動する。詳しくは、一対の保持部1,12のうち、一方の保持部1は缶Pの搬送方向(+Y側)に移動し、他方の保持部12は、缶Pの搬送方向(+Y側)および缶Pの搬送方向とは反対方向(-Y側)に移動しない。つまり保持部12は、Y軸方向に移動することのない固定部材である。
【0057】
また保持部12は、保持部12をX軸方向に貫通する複数のエア孔12aを有する。複数のエア孔12aは、保持部12が延びる方向に互いに間隔をあけて配置される。複数のエア孔12aは、缶Pの搬送方向に沿って配列する。複数のエア孔12aは、例えば、バキューム室8を介してエア吸引源7に連通する。保持部12は、エア孔12aを通して缶Pの底部に作用するエア吸引源7のエア吸引力により、缶Pの底部を缶軸回りに回転可能に保持する。
【0058】
本実施形態においても、缶Pの底部が、上下方向に隣接配置される一対の保持部1,12の両方にわたって保持されると、第2の水平方向における一対の保持部1,12同士の速度差に応じて、缶Pが缶軸回りに回転させられつつ、缶Pの搬送方向に搬送される。したがって、上述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0059】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0060】
前述の実施形態では、複数の保持部1のうち、所定の保持部1が缶Pの搬送方向へ移動する速度が、所定の保持部1よりも上側に位置する別の保持部1が缶Pの搬送方向へ移動する速度よりも速い例を挙げたが、これに限らない。複数の保持部1のうち、所定の保持部1が缶Pの搬送方向へ移動する速度が、所定の保持部1よりも下側に位置する別の保持部1が缶Pの搬送方向へ移動する速度よりも速いこととしてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の缶搬送装置によれば、搬送する缶が塗料により汚れることを抑制でき、生産性を向上できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0063】
1,12…保持部、1A…第1の保持部、1B…第2の保持部、2…ガイド部、3…供給部、4…エア吸引手段、5…移動手段、6…ベルト、7…エア吸引源、10,20,30…缶搬送装置、11…駆動部、P…缶
図1
図2
図3
図4