(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 7/04 20060101AFI20230526BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230526BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
G01C7/04
G09B29/00 Z
G01C15/00 103A
(21)【出願番号】P 2019069081
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 淳眞
(72)【発明者】
【氏名】曽根 敦
(72)【発明者】
【氏名】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】本間 昭信
(72)【発明者】
【氏名】間野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】井関 禎之
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-088188(JP,A)
【文献】特開平02-190712(JP,A)
【文献】特開平07-220118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元測量機器によって取得された測量対象領域内の地形及び地物の三次元観測データに基づいて作成された、複数の地点の平面座標及び標高値を含む三次元点群データによって、前記測量対象領域内の標高を推定する情報処理装置であって、
前記測量対象領域に対応する算出対象領域を設定する領域設定部と、
前記算出対象領域を分割した複数の領域を示す領域データを作成する作成部と、
前記複数の領域のそれぞれについて、
前記三次元点群データに基づいて、各領域に含まれる一又は複数の地点を判定し、
前記一又は複数の地点の各標高値の中から最も低い標高値を、各領域の領域標高値として判定する、第1判定部と、
前記各領域の領域標高値に基づいて、前記複数の領域のうちの互いに隣接する2の領域の組合せごとに、前記2の領域の
標高差又は傾斜角度を算出する算出部と、
前記各2の領域の組合せの各
標高差又は各傾斜角度のうち、所定値を超えている前記
標高差又は前記傾斜角度を有する前記2の領域があるか否かを判定する第2判定部と、
前記所定値を超えている
標高差又は傾斜角度を有する前記2の領域がある場合、前記所定値を超えている
標高差又は傾斜角度を有する前記2の領域の全てを新たな前記算出対象領域として設定して、前記作成部、前記第1判定部、前記算出部及び前記第2判定部の各処理を再度実行させる制御部と、
前記所定値を超えている
標高差又は傾斜角度を有する前記2の領域がない場合、前記各領域の領域標高値を地形の標高値として出力する出力制御部と、
を備え
、
前記作成部は、前記算出対象領域を再分割するときには、前記算出対象領域を、既に分割されている複数の領域よりも小さいサイズの複数の領域に分割する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記各領域の領域標高値に基づいて、前記互いに隣接する2の領域の組合せごとに、前記2の領域の標高差
を算出する処理、又は、
前記各領域の領域標高値に基づいて、前記互いに隣接する2の領域の組合せごとに、前記2の領域の標高差を算出し、前記2の領域のそれぞれの中心地点間の距離を算出し、前記算出された標高差と前記算出された距離とに基づいて前記2の領域の傾斜角度を算
出する処理、を実行する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記複数の領域は、格子状のメッシュ領域であり、
前記作成部によって、前記測量対象領域に対応する前記算出対象領域が分割される場合、ユーザによって設定された最大のサイズのメッシュ領域が用いられ、
前記制御部は、前記作成部によって分割された前記領域がユーザによって設定された最小のサイズのメッシュ領域である場合、前記第1判定部の処理を実行させた後、前記算出部及び前記第2判定部の各処理を実行させずに、前記出力制御部の処理を実行させる、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
ユーザによって入力された、標高値の精度に関する情報及び前記出力制御部によって出力された前記地形の標高値を用いて表示する地図情報の表示縮尺に関する情報の少なくとも一方を取得する取得部と、
前記所定値として、前記標高値の精度に関する情報及び前記表示縮尺に関する情報の少なくとも一方に対応する値を設定する設定部と、を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記測量対象領域に対応する前記地形の標高値を用いて地図情報を表示し、
前記情報処理装置は、
表示部と、
前記判定された各領域の領域標高値を、各領域のサイズを示す情報と関連付けて記憶するとともに、複数の表示縮尺を示す縮尺データと、前記領域のサイズを示すサイズデータとを対応付けて記憶する記憶部と、を備え、
前記出力制御部は、ユーザによって設定された表示縮尺に従って、前記地図情報の表示領域を決定するとともに、前記記憶部を参照して、前記表示縮尺に対応するサイズの各領域の領域標高値に基づいて、前記地図情報を前記表示部に表示する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
三次元測量機器によって取得された測量対象領域内の地形及び地物の三次元観測データに基づいて作成された、複数の地点の平面座標及び標高値を含む三次元点群データによって、前記測量対象領域内の標高を推定するコンピュータを制御する制御プログラムであって、
前記測量対象領域に対応する算出対象領域を設定する領域設定ステップと、
前記算出対象領域を分割した複数の領域を示す領域データを作成する作成ステップと、
前記複数の領域のそれぞれについて、
前記三次元点群データに基づいて、各領域に含まれる一又は複数の地点を判定し、
前記一又は複数の地点の各標高値の中から最も低い標高値を、各領域の領域標高値として判定する、第1判定ステップと、
前記各領域の領域標高値に基づいて、前記複数の領域のうちの互いに隣接する2の領域の組合せごとに、前記2の領域の
標高差又は傾斜角度を算出する算出ステップと、
前記各2の領域の組合せの各
標高差又は各傾斜角度のうち、所定値を超えている
前記標高差又は前記傾斜角度を有する前記2の領域があるか否かを判定する第2判定ステップと、を前記コンピュータに実行させ、
前記所定値を超えている
標高差又は傾斜角度を有する前記2の領域がある場合、前記所定値を超えている
標高差又は傾斜角度を有する前記2の領域の全てを新たな前記算出対象領域として設定して、前記作成ステップ、前記第1判定ステップ、前記算出ステップ及び前記第2判定ステップを再度実行させ、
前記所定値を超えている
標高差又は傾斜角度を有する前記2の領域がない場合、前記各領域の領域標高値を地形の標高値として出力
し、
前記作成ステップにおいて、前記算出対象領域を再分割するときには、前記算出対象領域を、既に分割されている複数の領域よりも小さいサイズの複数の領域に分割する、
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を測量対象物に照射し、反射したレーザ光を観測することにより、測量対象物までの距離を測定するレーザスキャナ等の三次元測量機器が知られている。三次元測量機器は、地形及び地物の標高値等を測量する地形測量に用いられる。例えば、河川管理者等が、河川堤防を管理するために、定期的に三次元測量機器を用いて河川堤防の形状を測定し、河川堤防の変状を調査する。
【0003】
三次元測量機器は、無人又は有人の航空機及び車両等の移動体に搭載され、移動体の進行に応じて実施した距離測定によって地形及び地物までの距離を含む三次元観測データを取得する。そして、取得した三次元観測データに基づいて、地形及び地物の標高を含む三次元点群データが得られる。
【0004】
例えば、特許文献1には、三次元点群データの標高データと、航空写真等によって識別された人工建築物等の地物の輪郭データとに基づいて、地形の標高と地物の上面の標高とを判別し、三次元市街地空間モデルを自動作成する三次元市街地空間モデル作成システムについて記載されている。また、特許文献2には、コンピュータが、三次元点群データと、水平面上に発生させた多数のグリッドとに基づいて、各グリッド内の各点のうちの最低標高の点を、各グリッド内にある地物の影響を除外した地表面の標高であると判定し、判定された標高に基づいて地形モデルを生成する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-74323号公報
【文献】特開2013-88188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、システムの使用者が、専門的な測量知識を有する測量技術者ではない場合、当該技術の使用ができない、又は、当該技術の使用に時間が掛かってしまう等の問題が生じることがあった。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、測量範囲に、急勾配の斜面を有する地形が含まれる場合、グリッドのサイズが大きい程、斜面を正確に表すことができなくなるという問題があった。また、グリッドのサイズが小さく設定されると、グリッドの数が多くなってしまうため、コンピュータによる地形モデルの生成処理に時間が掛かってしまうことがあった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、地形の形状及び地物の配置に応じた地形の標高値の算出処理の処理速度を向上させる情報処理装置、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る情報処理装置は、三次元測量機器によって取得された測量対象領域内の地形及び地物の三次元観測データに基づいて作成された、複数の地点の平面座標及び標高値を含む三次元点群データによって、測量対象領域内の標高を推定する情報処理装置であって、測量対象領域に対応する算出対象領域を設定する領域設定部と、算出対象領域を分割した複数の領域を示す領域データを作成する作成部と、複数の領域のそれぞれについて、三次元点群データに基づいて、各領域に含まれる一又は複数の地点を判定し、一又は複数の地点の各標高値の中から最も低い標高値を、各領域の領域標高値として判定する、第1判定部と、各領域の領域標高値に基づいて、複数の領域のうちの互いに隣接する2の領域の組合せごとに、2の領域の差分値を算出する算出部と、各2の領域の組合せの各差分値のうち、所定値を超えている差分値を有する2の領域があるか否かを判定する第2判定部と、所定値を超えている差分値を有する2の領域がある場合、所定値を超えている差分値を有する2の領域の全てを新たな算出対象領域として設定して、作成部、第1判定部、算出部及び第2判定部の各処理を再度実行させる制御部と、所定値を超えている差分値を有する2の領域がない場合、各領域の領域標高値を地形の標高値として出力する出力制御部と、を備える。
【0010】
また、本発明に係る情報処理装置において、算出部は、各領域の領域標高値に基づいて、互いに隣接する2の領域の組合せごとに、2の領域の標高差を差分値として算出する処理、又は、各領域の領域標高値に基づいて、互いに隣接する2の領域の組合せごとに、2の領域の標高差を算出し、2の領域のそれぞれの中心地点間の距離を算出し、算出された標高差と算出された距離とに基づいて2の領域の傾斜角度を算出し、算出した傾斜角度を差分値とする処理、を実行することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る情報処理装置において、複数の領域は、格子状のメッシュ領域であり、作成部によって、測量対象領域に対応する算出対象領域が分割される場合、ユーザによって設定された最大のサイズのメッシュ領域が用いられ、制御部は、作成部によって分割された領域がユーザによって設定された最小のサイズのメッシュ領域である場合、第1判定部の処理を実行させた後、算出部及び第2判定部の各処理を実行させずに、出力制御部の処理を実行させることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る情報処理装置において、ユーザによって入力された、標高値の精度に関する情報及び出力制御部によって出力された地形の標高値を用いて表示する地図情報の表示縮尺に関する情報の少なくとも一方を取得する取得部と、所定値として、標高値の精度に関する情報及び表示縮尺に関する情報の少なくとも一方に対応する値を設定する設定部と、を更に備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る情報処理装置において、制御部は、所定値を超えている差分値を有する2の領域があり、且つ、2の領域のうちの一の領域に隣接する他の領域と2の領域とが所定方向に並んでいる場合、2の領域の差分値と一の領域及び2の領域の差分値との差が、第2の所定値を超えなければ、2の領域を算出対象領域として設定しないことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る情報処理装置において、出力制御部は、測量対象領域に対応する地形の標高値を用いて地図情報を表示し、情報処理装置は、表示部と、判定された各領域の領域標高値を、各領域のサイズを示す情報と関連付けて記憶するとともに、複数の表示縮尺を示す縮尺データと、領域のサイズを示すサイズデータとを対応付けて記憶する記憶部と、を備え、出力制御部は、ユーザによって設定された表示縮尺に従って、地図情報の表示領域を決定するとともに、記憶部を参照して、表示縮尺に対応するサイズの各領域の領域標高値に基づいて、地図情報を表示部に表示することが好ましい。
【0015】
本発明に係る制御プログラムは、三次元測量機器によって取得された測量対象領域内の地形及び地物の三次元観測データに基づいて作成された、複数の地点の平面座標及び標高値を含む三次元点群データによって、測量対象領域内の標高を推定するコンピュータを制御する制御プログラムであって、測量対象領域に対応する算出対象領域を設定する領域設定ステップと、算出対象領域を分割した複数の領域を示す領域データを作成する作成ステップと、複数の領域のそれぞれについて、三次元点群データに基づいて、各領域に含まれる一又は複数の地点を判定し、一又は複数の地点の各標高値の中から最も低い標高値を、各領域の領域標高値として判定する、第1判定ステップと、各領域の領域標高値に基づいて、複数の領域のうちの互いに隣接する2の領域の組合せごとに、2の領域の差分値を算出する算出ステップと、各2の領域の組合せの各差分値のうち、所定値を超えている差分値を有する2の領域があるか否かを判定する第2判定ステップと、をコンピュータに実行させ、所定値を超えている差分値を有する2の領域がある場合、所定値を超えている差分値を有する2の領域の全てを新たな算出対象領域として設定して、作成ステップ、第1判定ステップ、算出ステップ及び第2判定ステップを再度実行させ、所定値を超えている差分値を有する2の領域がない場合、各領域の領域標高値を地形の標高値として出力する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る情報処理装置、及び制御プログラムによって、地形の形状及び地物の配置に応じた地形の標高値の算出処理の処理速度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】情報処理装置1の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】(a)は、三次元測量機器の使用方法の一例を説明するための模式図であり、(b)は、表示部13に表示された設定画面の一例を示す図である。
【
図3】(a)は、測量対象領域及び三次元点群データの一例を説明するための模式図であり、(b)は、複数の領域の一例を説明するための模式図である。
【
図4】(a)は、三次元点群データに含まれる各地点と複数の領域との位置関係の一例を説明するための模式図であり、(b)は、領域標高値に対応する地点と複数の領域との位置関係の一例を説明するための模式図である。
【
図5】(a)は、差分値が標高差である場合において、複数の領域を再分割する方法の一例を説明するための模式図であり、
図5(b)は、差分値が傾斜角度である場合において、複数の領域を再分割する方法の一例を説明するための模式図である。
【
図6】(a)は、三次元点群データのデータ構造の一例を示す図であり、(b)は、領域データのデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】標高値算出処理の動作フローの一例を示す図である。
【
図8】複数の領域の一例を説明するための模式図である。
【
図9】表示縮尺テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0019】
(情報処理装置1)
図1は、情報処理装置1の概略構成の一例を示す図である。
【0020】
情報処理装置1は、例えば、パーソナル・コンピュータ(PC,Personal Computer)である。情報処理装置1は、サーバ装置でもよい。情報処理装置1は、タブレット端末又はタブレットPC等でもよい。
【0021】
情報処理装置1は、三次元測量機器によって取得された測量対象領域内の地形及び地物の三次元観測データに基づいて作成された、複数の地点の平面座標及び標高値を含む三次元点群データを用いて、測量対象領域内の標高を推定する標高値算出処理を実行する機能を有する。
【0022】
地形とは、地表の凹凸及び起伏の形態であり、地形の標高値は、地表面の標高値である。地物は、地上に存在する、植物、橋、鉄道、建築物等の有体物である。
【0023】
三次元測量機器は、例えば、移動体に搭載されるレーザスキャナである。三次元測量機器は、地形及び地物における複数の地点の平面座標及び標高値を計測できるものであれば、どのような機器でもよい。以下、三次元測量機器がレーザスキャナである場合を例にして説明する。
【0024】
レーザスキャナのレーザ照射部分は、パルス状に発光するレーザを照射して散乱光を測定し、照射から検出までの時間に基づいて反射した位置を測定する。例えば、レーザスキャナは、地形及び地物に対してレーザを照射することで、レーザスキャナと地形及び地物の外面までの距離を測定する。レーザスキャナは、レーザスキャナの所定位置を原点としたセンサ座標系に従った、観測した地点の三次元座標と、特定の位置座標系に従った、レーザスキャナの所定位置の三次元座標とを、三次元観測データとして出力する。特定の位置座標系は、地理座標系並びに測量対象領域に対応する平面直角座標系及びUTM座標系の投影座標系から選択された座標系、又は、世界測地系及び日本測地系から選択された測地系である。レーザスキャナの所定位置の三次元座標は、例えば、レーザスキャナの外部の所定範囲内の箇所に設置された又はレーザスキャナ内部に設置されたGPS装置によって取得された位置座標(緯度、経度、高度)である。
【0025】
所定の作成装置によって、レーザスキャナによって出力された三次元観測データに含まれる三次元座標は、三次元観測データに含まれるレーザスキャナの所定位置の三次元座標に基づいて、特定の位置座標系の平面座標及び標高値に変換される。レーザスキャナによって観測された地点に対応する、特定の位置座標系の平面座標及び標高値が複数集合したデータを、三次元点群データと称する。このように、所定の作成装置は、三次元測量機器によって取得された測量対象領域内の地形及び地物の三次元観測データに基づいて、複数の地点の平面座標及び標高値を含む三次元点群データを作成する。地点の平面座標のX値及びY値のそれぞれは、例えば経度及び緯度である。三次元点群データの作成処理は、情報処理装置1によって実行されてもよい。
【0026】
測量対象領域は、情報処理装置1のユーザによって設定された標高値算出処理の適用範囲である。情報処理装置1は、三次元点群データの全て又は一部を包含する所定範囲を、測量対象領域として自動的に設定してもよい。測量対象領域は、特定の位置座標系の平面座標によって規定される。測量対象領域は、例えば、第1の経度以上且つ第2の経度(第2の経度は、第1の経度より大きい値である。)以下、及び、第1の緯度以上且つ第2の緯度(第2の緯度は、第1の緯度より大きい値である。)以下の範囲である。
【0027】
情報処理装置1は、測量対象領域を複数の領域に分割し、分割された各領域に対応する地形の標高値を推定する。
【0028】
情報処理装置1は、上述のような機能を実現するために、例えば、記憶部11、操作部12、表示部13及び処理部14を備える。
【0029】
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部11は、処理部14での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、制御プログラム及びデータ等を記憶する。記憶部11に記憶されるドライバプログラムは、操作部12を制御する入力デバイスドライバプログラム、及び、表示部13を制御する出力デバイスドライバプログラム等である。記憶部11に記憶される制御プログラムは、標高値算出処理を実行するためのアプリケーションプログラム等である。記憶部11に記憶される各種プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部11にインストールされてもよい。記憶部11に記憶されるデータは、三次元点群データ、領域データ及びユーザによって入力された各種設定情報等である。また、記憶部11は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
【0030】
操作部12は、例えば、キーボード、マウス、又は、タッチパネル等のポインティングデバイスである。ユーザは、操作部12を用いて、文字、数字及び記号、若しくは、表示部13の表示画面上の位置等を入力することができる。操作部12は、ユーザにより操作されると、その操作に対応する信号を発生する。そして、発生した信号は、ユーザの指示として、処理部14に供給される。
【0031】
表示部13は、液晶ディスプレイである。なお、表示部13は、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等でもよい。表示部13は、処理部14から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。
【0032】
処理部14は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部14は、情報処理装置1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。処理部14は、記憶部11に記憶されているプログラム及びユーザによる操作部12の操作に応じて入力された各種指示等に基づいて、各種情報処理を適切な手順で実行し、且つ、表示部13の動作を制御する。処理部14は、記憶部11に記憶されているオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム及び制御プログラムに基づいて各種情報処理を実行する。また、処理部14は、複数のプログラムを並列に実行することができる。
【0033】
処理部14は、少なくとも取得部141、設定部142、作成部143、判定部144、算出部145、制御部146、及び出力制御部147を備える。これらの各部は、処理部14が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして情報処理装置1に実装されてもよい。
【0034】
取得部141は、三次元測量機器によって取得された測量対象領域内の地形及び地物の三次元観測データに基づいて作成された、複数の地点の平面座標及び標高値を含む三次元点群データを作成装置から取得する。情報処理装置1の作成部143が三次元観測データに基づいて三次元点群データを作成してもよく、この場合、取得部141は、作成部143から出力された三次元点群データを取得し記憶部11に記憶する。
【0035】
図2(a)は、三次元測量機器の使用方法の一例を説明するための模式図である。
図2(a)に示す例では、三次元測量機器200は、無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle,UAV(所謂「ドローン」))201に搭載される。UAV201は、ユーザが所定のリモートコントロール装置を操作することで移動し、三次元測量機器200は、UAVの移動とともに複数の地点を測定し三次元観測データを取得する。三次元測量機器200は、移動計測車両(図示しない)に搭載され、移動計測車両の移動とともに複数の地点を測定し三次元観測データを取得してもよい。
【0036】
図1に戻り、取得部141は、ユーザが操作部12を操作することによって入力された各種設定情報を取得し、取得した各種設定情報を記憶部11に記憶する。
【0037】
(設定画面210)
図2(b)は、表示部13に表示された設定画面210の一例を示す図である。設定画面210は、ユーザからの設定画面表示指示に応じて、出力制御部147によって表示部13に表示される。
【0038】
設定画面210は、ユーザが標高値の精度に関する設定値を入力するための画面であり、縮尺選択オブジェクト211、標高値精度入力オブジェクト212及び設定オブジェクト213を含む。
【0039】
縮尺選択オブジェクト211は、標高値算出処理によって算出された標高値を用いる地図情報の表示縮尺を選択するための操作オブジェクトである。
図2(b)に示す縮尺選択オブジェクト211には、複数のボタン型のオブジェクトと、複数のオブジェクトのそれぞれに対応する表示縮尺を示す文字情報(「1/100」、「1/250」、及び「1/500」等)が含まれる。
【0040】
ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された設定画面210上の入力位置が、縮尺選択オブジェクト211に含まれるボタン型のオブジェクトのいずれかの表示領域内である場合、入力位置に対応するボタン型のオブジェクトが、選択されたことを示す表示態様に変更される。また、ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された設定画面210上の入力位置が、縮尺選択オブジェクト211に含まれる、表示縮尺を示す文字情報のいずれかの表示領域内である場合、入力位置に対応する文字情報のボタン型のオブジェクトが、選択されたことを示す表示態様に変更される。
【0041】
標高値精度入力オブジェクト212は、標高値算出処理において要求される標高値の精度を入力するための入力オブジェクトである。入力オブジェクトは、例えば、テキスト入力ボックスである。ユーザによる操作部12の操作によって標高値精度入力オブジェクト212に数値が入力されると、入力された数値が標高値精度入力オブジェクト212内に表示される。
【0042】
例えば、標高値精度入力オブジェクト212に、数値「1.0」mがユーザによって入力されると、「1.0」という数値が、当該標高値精度入力オブジェクト212内に、標高値算出処理で要求される標高値の精度として表示される。
【0043】
設定画面210において、ユーザによって表示縮尺が選択された場合、選択された表示縮尺に応じた標高値の精度を示す数値が標高値精度入力オブジェクト212内に表示されてもよい。例えば、記憶部11は、複数の種類の表示縮尺を示す情報を記憶するとともに、各表示縮尺に対応する標高値の精度を示す数値情報を記憶しており、出力制御部147は、ユーザによって表示縮尺が選択された際に、選択された表示縮尺を示す情報を取得し、取得した情報に基づいて、選択された表示縮尺に対応する標高値の精度を示す数値情報を記憶部11から抽出する。そして、出力制御部147は、抽出した数値を標高値精度入力オブジェクト212内に表示する。この場合、ユーザが、表示された標高値精度入力オブジェクト212内の数値を、操作部12の操作によって任意の数値に変更できるように、標高値精度入力オブジェクト212は出力制御部147によって制御される。ユーザが、表示された標高値精度入力オブジェクト212内の数値を、操作部12の操作によって任意の数値に変更できないように、標高値精度入力オブジェクト212は出力制御部147によって制御されてもよい。
【0044】
設定オブジェクト213は、地図情報の表示縮尺の選択を決定し及び/又は標高値の精度を取得するためのボタンオブジェクトである。設定オブジェクト213は、アイコン画像又はテキスト等でもよい。ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された設定画面210上の入力位置が、設定オブジェクト213の表示領域内である場合、選択された表示縮尺及び/又は入力された標高値の精度を含む設定情報が情報処理装置1に入力され、取得部141によって取得される。
【0045】
図1に戻り、設定部142は、測量対象領域に対応する算出対象領域を設定する。すなわち、設定部142は、測量対象領域と同一の領域を、標高値算出処理の算出対象領域とする。
【0046】
図3(a)は、測量対象領域300及び三次元点群データの一例を説明するための模式図である。
図3(a)に示す例では、三次元点群データに含まれる各地点301の平面座標は、測量対象領域300内に位置する。測量対象領域300は矩形形状である。例えば、測量対象領域300は、後述するメッシュ領域を規定する複数のX値線のうちの2本のX値線、及び、メッシュ領域を規定する複数のY値線のうちの2本のY値線によって、形成されるものでもよい。測量対象領域300は、矩形形状に限らず、円形形状、楕円形形状、又は多角形形状等でもよい。
【0047】
図1に戻り、作成部143は、算出対象領域302を分割した複数の領域を示す領域データを作成する。例えば、設定部142は、測量対象領域300を算出対象領域302として設定し、作成部143は、算出対象領域302を、複数の領域303に分割し、分割した複数の領域303を示す領域データを記憶部11に記憶する。
【0048】
図3(b)は、複数の領域303の一例を説明するための模式図である。領域303は、例えば、格子状のメッシュ領域である。メッシュ領域は、X値線及びY値線に応じて区切られた、地図上の略正方形の区画である。例えば、メッシュは、10m単位の略正方形形状に地図を区切ることにより構成される区画である。メッシュを構成する区画の形状は、10m単位の略正方形形状に限らず、5m単位の略正方形形状、1m単位の略正方形形状、又は10mを超える単位の略正方形形状でもよく、所謂「標準地域メッシュ」でもよい。X値線及びY値線は、それぞれ所定のX値及びY値に基づいて定められる。X値及びY値は、特定の位置座標系によって定められ、例えば、経度及び緯度である。
【0049】
図1に戻り、作成部143は、取得部141によって取得された設定情報に基づいて、メッシュのサイズを設定してもよい。例えば、作成部143は、設定情報に含まれる地図情報の表示縮尺が大きい程、メッシュのサイズを小さく設定する。また、作成部143は、設定情報に含まれる標高値の精度が高い程、メッシュのサイズを小さく設定する。作成部143は、算出対象領域302内の三次元点群データのレコード数(地点の数)が多い程、メッシュのサイズを小さくしてもよい。
【0050】
判定部144は、複数の領域のそれぞれについて、三次元点群データに基づいて、各領域に含まれる一又は複数の地点を判定し、一又は複数の地点の各標高値の中から最も低い標高値を、各領域の領域標高値として判定し、判定した領域標高値を含む領域データを記憶部11に記憶する。
【0051】
図4(a)は、三次元点群データに含まれる各地点301と複数の領域303との位置関係の一例を説明するための模式図である。例えば、判定部144は、複数の領域303のそれぞれに含まれる各地点301の平面座標を判定する。次に、判定部144は、各領域303に含まれると判定された平面座標の地点301の標高値を判定し、判定された一又は複数の標高値のうちの最も低い標高値を判定する。そして、判定部144は、各領域303において判定した最も低い標高値を、各領域303の領域標高値として判定し、判定した領域標高値を含む領域データを記憶部11に記憶する。
【0052】
判定部144は、地点301の平面座標が一つも含まれない領域303があると判定した場合、当該領域303の領域標高値を、当該領域303に隣接する周囲8つの領域303の領域標高値の平均値としてもよい。
【0053】
図4(b)は、領域標高値に対応する地点304と複数の領域303との位置関係の一例を説明するための模式図である。判定部144の判定結果に基づいて、各領域303には、一つの地点304が判定される。
【0054】
図1に戻り、算出部145は、各領域の領域標高値に基づいて、複数の領域のうちの互いに隣接する2の領域の組合せごとに、2の領域の差分値を算出する。差分値は、例えば、2の領域の標高差、又は、2の領域の傾斜角度である。次に、制御部146は、所定値を超えている差分値を有する2の領域がある場合、所定値を超えている差分値を有する2の領域の全てを、新たな算出対象領域として設定する。制御部146は、(1)新たな算出対象領域を分割した複数の領域を示す領域データを作成し、(2)分割された領域の領域標高値を判定して記憶し、(3)複数の領域のうちの互いに隣接する2の領域の組合せごとに、当該2の領域の差分値を算出し、(4)所定値を超えている差分値を有する2の領域があるか否かを判定する、という一連の処理を、作成部143、判定部144及び算出部145に再度実行させる。
【0055】
制御部146は、上述の(1)-(4)の一連の処理を、作成部143、判定部144及び算出部145に実行させた後、所定値を超えている差分値を有する2の領域があると判定すると、今回判定した2の領域の全てを新たな算出対象領域として設定し、上述の(1)-(4)の処理を、作成部143、判定部144及び算出部145に実行させる。このように、上述の(4)において所定値を超えている差分値を有する2の領域がないと判定されるまで、新たな算出対象領域を設定する処理と上述の(1)-(4)の処理とが繰り返し実行される。
【0056】
制御部146は、所定値を超えている差分値を有する2の領域がないと判定した場合、以降、上述の(1)-(4)の処理を、作成部143、判定部144及び算出部145に実行させない。制御部146は、所定値を超えている差分値を有する2の領域があると判定したとしても、今回の(1)の処理によって作成されたメッシュ領域のサイズが、予め記憶部11に記憶された最小領域サイズ以下である場合、以降、上述の(1)-(4)の処理を、作成部143、判定部144及び算出部145に実行させないようにしてもよい。なお、予め記憶部11に記憶された最小領域サイズは、ユーザによって入力されたものでも、予め定められたものでもよい。
【0057】
そして、制御部146が、上述の(1)-(4)の処理を、作成部143、判定部144及び算出部145に実行させない場合、出力制御部147は、各領域の領域標高値を地形の標高値として出力する。
【0058】
図5(a)は、差分値が標高差である場合において、複数の領域を再分割する方法の一例を説明するための模式図である。
【0059】
図5(a)に示す例では、複数の領域303として、9のメッシュ領域が示されている。9の領域303の領域標高値は、それぞれ「9.11」m、「10.51」m、「11.64」m、「9.90」m、「9.99」m、「11.45」m、「9.03」m、「9.27」m、及び「10.54」mである。
【0060】
図5(a)に示す9の領域303のうち、真ん中の領域303(領域標高値が「9.99」mであるもの)は、4辺を介して4の領域303(領域標高値が「10.51」m、「9.90」m、「11.45」m、及び「9.27」mであるもの)と隣接する。また、当該真ん中の領域303は、4つの角を介して、4の領域303(領域標高値が「9.11」m、「11.64」m、「9.03」m、及び「10.54」mであるもの)と隣接する。
【0061】
図5(a)に示す例では、互いに隣接する2の領域のうちの、所定値(例えば「1m」)を超えている差分値を有する2の領域は、領域標高値が「10.51」m及び「11.64」mである2の領域、領域標高値が「9.99」m及び「11.64」mである2の領域、及び領域標高値が「9.27」m、及び「10.54」mである2の領域である。所定値は、設定情報に含まれる標高値の精度でもよく、また、設定情報に含まれる地図情報の表示縮尺に対応した値(例えば、縮尺「1/500」に対応する所定値「1.0」mが記憶部11に記憶される)でもよい。
【0062】
これら2の領域の全てを含む新たな算出対象領域500が、制御部146によって複数の領域501に分割される。
図5(a)に示す例では、各領域501は、メッシュ領域であり、当該メッシュ領域の辺の略1/2の長さの辺を有する4のメッシュ領域に分割される。このように、再分割では、算出対象領域500は、既に分割されている複数の領域303よりも小さいサイズの領域501に分割される。なお、以降、これら領域501について、領域標高値が判定され、所定値を超えている差分値を有する2の領域があるか否かが判定されて再分割が行われることが、繰り返される。
【0063】
図5(b)は、差分値が傾斜角度である場合において、複数の領域を再分割する方法の一例を説明するための模式図である。
【0064】
図5(b)に示す例では、
図5(a)と同様に、複数の領域303として、9のメッシュ領域が示されている。
図5(b)に示す例では、真ん中の領域303aに対して隣接する8の領域303bのそれぞれには、真ん中の領域303aを基準とした傾斜角度が示されている。なお、真ん中の領域303aには、傾斜角度として「0.0」度が示されている。
【0065】
互いに隣接する2の領域の傾斜角度をαとおくと、2の領域の標高差を2の領域間の距離で除した値はtanαとなる。すなわち、算出部145は、(2の領域の標高差)/(2の領域のそれぞれの中心地点間の距離)=(tanα)となるようなαを算出する。領域303がメッシュ領域である場合、2の領域間の距離は、2のメッシュ領域の中心点間の距離であるので、メッシュ領域の一辺に置き換えてもよい。この場合、算出部145は、(2の領域の標高差)/(領域の一辺)=(tanα)となるようなαを算出する。
【0066】
図5(b)に示す例では、真ん中の領域303aと隣接する8の領域303bとの傾斜角度αは、それぞれ、「17.8」度、「0.5」度、「21.3」度、「17.5」度、「21.0」度、「18.7」度、「0.7」度、及び「20.5」度である。
【0067】
図5(b)に示す9の領域303において、真ん中の領域303aを、所定値(例えば「20」度)を超えている差分値を有する2の領域は、真ん中の領域303a及び傾斜角度αが「21.3」度である領域303b、真ん中の領域303a及び傾斜角度αが「21.0」度である領域303b、並びに、真ん中の領域303a及び傾斜角度αが「20.5」度である領域303b、である。
【0068】
所定値は、設定情報に含まれる標高値の精度に対応した値(例えば、精度「1.0」mに対応する所定値「20.0」度が記憶部11に記憶される)でもよく、また、設定情報に含まれる地図情報の表示縮尺に対応した値(例えば、縮尺「1/500」に対応する所定値「20.0」度が記憶部11に記憶される)でもよい。
【0069】
これら2の領域の全てを含む新たな算出対象領域510が、制御部146によって複数の領域511に分割される。
図5(b)に示す例では、
図5(a)と同様の再分割が行われる。再分割では、算出対象領域510は、既に分割されている複数の領域303よりも小さいサイズの領域511に分割される。なお、以降、これら分割された領域511について、領域標高値が判定され、所定値を超えている差分値を有する2の領域があるか否かが判定されて再分割が行われることが、繰り返される。
【0070】
上述のとおり、情報処理装置1は、(1)算出対象領域を分割した複数の領域を示す領域データを作成し、(2)分割された領域の領域標高値を判定し、(3)複数の領域のうちの互いに隣接する2の領域の組合せごとに、当該2の領域の差分値を算出し、(4)所定値を超えている差分値を有する2の領域があるか否かを判定する、ことを実行し、(4)において、所定値を超えている差分値を有する2の領域がないと判定されるまで、又は、分割された領域が最小領域サイズ以下となるまで、新たな算出対象領域の設定処理と(1)~(4)の各処理とを繰り返し実行する。
【0071】
これにより、地形が所定の角度以上の急斜面を有する場合では、当該急斜面に対応する領域だけが、より小さな領域に設定されるので、情報処理装置1の計算負荷を低減させつつ、地形に応じた領域標高値が自動的に算出される。また、領域ごとに最も低い標高値が領域標高値として採用されるため、地物の標高値を含むものではない蓋然性が高い地形の標高値が、簡易な処理によって自動的に算出される。このように、情報処理装置1によって、地形の形状及び地物の影響を排除した地形の標高値の算出処理の処理速度を向上させることが可能となる。
【0072】
図6(a)は、三次元点群データのデータ構造の一例を示す図である。三次元点群データにおいて、各地点の点IDに関連付けて、緯度、経度、標高値等が記憶される。
【0073】
図6(b)は、領域データのデータ構造の一例を示す図である。領域データにおいて、各領域の領域IDに関連付けて、レベル、形状、領域標高値等が記憶される。レベルは、領域のサイズに応じて設定される値であり、例えば、最も大きいサイズの領域をレベル「1」とし、最も大きい領域を分割した2番目のサイズの領域をレベル「2」とし、2番目のサイズの領域を分割した3番目のサイズの領域をレベル「3」とする。レベルの最大値は「3」に限らず、「5」でも「10」でもよい。形状は、各領域の形状を示すベクトルデータである。
図6(b)に示す例では、形状によって、4の角の座標値を有するメッシュ領域が規定されている。領域標高値は、算出部145によって算出された各領域に対応する領域標高値であり、地形の標高値として記憶される。
【0074】
図6(b)に示す例では、領域ID「M53394509」の領域は、レベル「1」のサイズであり、且つ、領域標高値は、「8.23」mである。また、領域ID「M533945090」は、領域ID「M53394509」に「0」を追加したものであり、同様に、領域ID「M533945091」は、領域ID「M53394509」に「1」を追加したものである。したがって、領域ID「M533945090」の領域及び領域ID「M533945091」の領域のそれぞれは、領域ID「M53394509」の領域を分割した領域の一つであり、レベル「2」のサイズである。
【0075】
また、領域ID「M5339450902」は、領域ID「M533945090」に「2」を追加したものであるから、領域ID「M5339450902」の領域は、領域ID「M533945090」を分割した領域の一つである。
【0076】
このように、領域データは、領域のサイズごとに、階層的に領域データを管理することが可能となる。
【0077】
(標高値算出処理)
図7は、情報処理装置1の取得部141、設定部142、作成部143、判定部144、算出部145、制御部146、及び出力制御部147による標高値算出処理の動作フローの一例を示す図である。この標高値算出処理は、予め記憶部11に記憶されている制御プログラムに基づいて、主に処理部14により、情報処理装置1の各要素と協働して実行される。
【0078】
最初に、取得部141は、三次元測量機器によって取得された三次元観測データに基づいて三次元点群データを作成する作成装置から、三次元点群データを取得する(ステップS101)。
【0079】
次に、取得部141は、ユーザによって設定画面210に入力された各種設定情報を取得する(ステップS102)。
【0080】
次に、設定部142は、測量対象領域に対応する算出対象領域を設定する(ステップS103)。
【0081】
次に、作成部143は、設定された算出対象領域を分割した複数の領域を示す領域データを作成する(ステップS104)。作成部143は、取得部141によって取得された設定情報に基づいて分割される複数の領域のサイズを設定してもよい。例えば、設定情報に含まれる地図情報の表示縮尺の情報に対応して、最大のメッシュサイズが記憶部11に記憶されている場合、作成部143は、取得部141によって取得された設定情報に含まれる表示縮尺に対応する最大のメッシュサイズを記憶部11から読み出して、当該最大のメッシュサイズに基づく領域を作成してもよい。
【0082】
次に、判定部144は、作成された複数の領域のそれぞれについて、三次元点群データに基づいて、各領域に含まれる一又は複数の地点を判定し、一又は複数の地点の各標高値の中から最も低い標高値を、各領域の領域標高値として判定し、判定した領域標高値を含む領域データを記憶部11に記憶する(ステップS105)。
【0083】
次に、判定部144は、分割された領域のサイズが最小領域サイズ以下であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0084】
判定部144は、分割された領域のサイズが最小領域サイズ以下であると判定した場合(ステップS106-Yes)、ステップS110に処理を進める。
【0085】
判定部144によって、分割された領域のサイズが最小領域サイズを超えていると判定された場合(ステップS106-No)、算出部145は、各領域の領域標高値に基づいて、複数の領域のうちの互いに隣接する2の領域の組合せごとに、2の領域の差分値を算出する(ステップS107)。
【0086】
次に、制御部146は、所定値を超えている差分値を有する2の領域があるか否かを判定する(ステップS108)。
【0087】
制御部146は、所定値を超えている差分値を有する2の領域がないと判定した場合(ステップS108-No)、ステップS110に処理を進める。
【0088】
制御部146は、所定値を超えている差分値を有する2の領域があると判定した場合(ステップS108-Yes)、所定値を超えている差分値を有する2の領域の全てを、新たな算出対象領域として設定し(ステップS109)、ステップS104に処理を戻す。
【0089】
ステップS110では、出力制御部147は、各領域の領域標高値を地形の標高値として出力し、標高値算出処理を終了する。
【0090】
各領域の領域標高値の算出後、例えば、出力制御部147による標高値の出力結果として、各領域の領域標高値に応じて各領域を階層的に色分けした標高図が、表示部13に表示されてもよい。また、当該標高図は、プリンタ装置(図示しない)によって印刷出力されてもよい。
【0091】
また、情報処理装置1の記憶部11が、過去の各領域の領域標高値を記憶している場合、出力制御部147は、今回主力された各領域の領域標高値と、対応する過去の各領域の領域標高値との差分値を算出し、算出した差分値に応じて各領域を段階的に色分けした差分標高図を、表示部13に表示又はプリンタ装置(図示しない)によって印刷出力してもよい。
【0092】
このように、表示部13は、測量対象領域に対応する地図情報を表示する機能を有し、出力制御部147は、ユーザによって設定された表示縮尺に従って、地図の表示領域を決定するとともに、記憶部11を参照して、表示縮尺に対応するサイズの各領域の領域標高値に基づいて、地図情報を表示部13に表示させる機能を有する。
【0093】
以上、詳述したとおり、本実施形態の情報処理装置1によって、情報処理装置1によって、地形の形状及び地物の影響を排除した地形の標高値の算出処理の処理速度を向上させることが可能となる。
【0094】
(変形例1)
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、制御部146は、所定値を超えている差分値を有する2の領域がある場合であって、当該2の領域のうちの一の領域に隣接する他の領域と2の領域とが所定方向に並んでいる場合、当該2の領域の差分値と一の領域及び2の領域の差分値との差が、第2の所定値を超えなければ、当該2の領域を算出対象領域として設定しない。
【0095】
例えば、
図8(a)に示すように、領域A、B及びCは、所定の方向に並んで配置されている。同様に、領域D、E及びFと、領域G、H及びIと、領域A、D及びGと、領域B、E及びHと,領域C、F及びIと、領域A、E及びIと、領域C、E及びGとのそれぞれは、所定の方向に並んで配置されている。
【0096】
所定の方向に並んで配置された3の領域では、隣接する領域の組合せは2つであるので、各組合せの差分値が2つ算出される。例えば、領域A、B及びCでは、領域A及びBの差分値と領域B及びCの差分値とが算出される。この2種類の差分値の差が第2の所定値を超えなければ、各組合せの差分値の少なくともいずれか一方が所定値を超えていたとしても、所定値を超える組合せに係る2の領域は算出対象領域として設定されない。
【0097】
領域A、B及びCにおける2種類の差分値の差が第2の所定値を超えていない場合、領域A及びBの差分値と領域B及びCの差分値との差が第2の所定値内であるので、領域A、B及びCにおいて、傾斜角度が大幅に変化していないと推測される。この場合、領域A,B及びCの傾斜角度が急であっても(所定値を超える場合であっても)、一様な傾斜であるので、領域を更に分割しなくても地形を表現することが可能である。
【0098】
この変形例1に係る情報処理装置1は、必要のない分割処理を減らすことができ、標高値算出処理の計算負荷を低減させることが可能となる。
【0099】
(変形例2)
また、出力制御部147は、測量対象領域に対応する3次元地図を、ユーザによって指定された表示縮尺に基づいて、表示縮尺テーブル及び領域データを参照して表示部13に表示してもよい。
【0100】
図9は、表示縮尺テーブルのデータ構造の一例を示す図である。表示縮尺テーブルは、記憶部11に記憶される。表示縮尺テーブルには、複数の表示縮尺のそれぞれについて、領域のサイズのレベルが対応付けて記憶される。例えば、表示縮尺「1/100」には、レベル「1」、レベル「2」及びレベル「3」が対応付けて記憶されており、表示縮尺「1/250」には、レベル「2」及びレベル「3」が対応付けて記憶されており、表示縮尺「1/500」には、レベル「3」が対応付けて記憶されている。このように、表示縮尺テーブルによって、複数の表示縮尺を示す縮尺データと、領域のサイズを示すサイズデータとが対応付けて記憶される。
【0101】
出力制御部147は、ユーザが操作部12を操作することによって入力された表示縮尺及び表示地点に関する情報を取得するとともに、記憶部11から表示縮尺テーブルを抽出する。表示地点に関する情報は、例えば、表示中心点の緯度及び経度に関する情報、表示させたい地点の地名等に関する情報等である。次に、出力制御部147は、抽出した表示縮尺テーブルを参照し、取得した表示縮尺に対応するレベルを特定する。
【0102】
次に、出力制御部147は、領域データを参照し、特定したレベルに関連付けられた領域標高値を抽出する。出力制御部147は、各領域の領域標高値に応じて各領域を階層的に色分けした標高図を作成し、作成した標高図を表示部13に表示又はプリンタ装置(図示しない)によって印刷出力する。
【0103】
このように、ユーザによって縮小表示(表示縮尺が小さい)が指定された場合、より大きい領域によって作成された標高図が出力され、ユーザによって拡大表示(表示縮尺が大きい)が指定された場合、より小さい領域によって作成された標高図が出力される。これにより、情報処理装置1は、ユーザにとって、表示縮尺に応じた視認しやすい標高図を提供することが可能になる。
【0104】
(変形例3)
さらに、出力制御部147は、領域の中心点の平面座標及び領域標高値に基づいて、TIN(triangulated irregular network,不規則三角形網)データを作成してもよい。この場合、出力制御部147は、作成したTINデータに基づいて立体地図を表示部13に表示又はプリンタ装置(図示しない)によって印刷出力する。このように、情報処理装置1は、三次元点群データを用いて、地形の標高値の算出処理の負荷を抑制しつつ、三次元地図を出力することが可能になる。
【0105】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換、及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0106】
1 情報処理装置
11 記憶部
12 操作部
13 表示部
14 処理部
141 取得部
142 設定部
143 作成部
144 判定部
145 算出部
146 制御部
147 出力制御部