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特許7285708管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20230526BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20230526BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/04 Z
F16L1/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019121036
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006689
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(74)【復代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】建部 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕司
(72)【発明者】
【氏名】平松 邦昭
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020522(JP,A)
【文献】実開平03-081495(JP,U)
【文献】特開2007-154451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00
E03F 3/04
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の管軸方向に延びる一の内層部材が管の内径方向の外向きに、管の管軸方向に延びる他の内層部材が管の内径方向の内向きに、相対的に変位して係止することで管内に形成される管の内層構造であって、
前記一の内層部材と前記他の内層部材は、双方が管の内径方向の内向きに露出する部分を有し、
前記一の内層部材は、管の内径方向の外向きに突出した突条と、該突条の先端に設けられ、該突条から管の周方向に突出する係止片と、を備える係止部を有し、
前記他の内層部材は、管の内径方向の内向きに突出した突条と、該突条の先端に設けられ、該突条から管の周方向に突出し前記係止片と係止する被係止片と、を備える被係止部を有し、
前記係止部の突条と前記被係止部の突条とは、管の周方向に略対向し、
前記係止部の突条、又は/及び、前記被係止部の突条は、それぞれ略対向する被係止部の突条又は係止部の突条に対して管の周方向の逆向きに凸の形状を成す
ことを特徴とする管の内層構造。
【請求項2】
前記一の内層部材と前記他の内層部材は管の略周方向に幅を有する本体部を有し、
前記係止部の突条は、前記一の内層部材の本体部から突設され、
前記被係止部の突条は、前記他の内層部材の本体部から突設され、
前記凸の形状を成す突条を備える前記係止部又は/及び前記被係止部の突条の両側面は、前記本体部との接続部から、凸の形状の凸方向に向けて形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の管の内層構造。
【請求項3】
前記係止片の管の内径方向の外向きの先端側外面、及び、前記被係止片の管の内径方向の内向きの先端側外面は、湾曲面を具備し、
前記係止片の湾曲面と前記被係止片の湾曲面とは摺動しながら、前記係止片と前記被係止片とが管の内径方向に相対的に変位するものである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の管の内層構造。
【請求項4】
前記係止片は係止面を、前記被係止片は該係止面と係止する被係止面を具備し、
前記係止部と前記被係止部とが係止した状態において、
前記係止面は、管の内径方向の内向き、及び、管の周方向の前記係止部の突条の向きに配向する面を有し、
前記被係止面は、管の内径方向の外向き、及び、管の周方向の前記被係止部の突条の向きに配向する面を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の管の内層構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の前記凸の形状を成す突条を備える前記係止部又は/及び前記被係止部の少なくともいずれかを備え、管の内径方向の内向きに露出する部分を有す
ことを特徴とする管の内層部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の内周面に沿って配設される内面材を用いた管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材に関し、特に、下水道管等の比較的大口径の既設管の補修に適した内面材を用いた管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した下水道管等の既設管の補修に適した内面材を用いた管の内層構造が数多く提案されている。
【0003】
その一例として、本件出願人が提案した、経済的な部材を用い、その組み立ての手間を省いて設置作業を簡便化し、かつ、作業完了後においても長期に亘って耐久性のある管の内層構造がある(特許文献1参照。)。
この管の内層構造は、既設管の内周面の周方向に沿って、管軸方向に所定の間隔をあけて配設した剛性リングと、これら剛性リングの内側に跨るように管軸方向に、剛性リングの周方向に所定の間隔をあけて配設した既設管の中心側に所定の間隔をあけて形成した切欠きを有する剛性直材と、該剛性直材の切欠きに対応する突条を有する帯状の合成樹脂製内面材とからなり、前記合成樹脂製内面材の突条を剛性直材の切欠きに嵌着することにより、合成樹脂製内面材を既設管の内周面の周方向に沿って、かつ、管軸方向に隙間なく順次配設し、既設管と合成樹脂製内面材との間に生じる空隙に硬化性充填材を充填するものである。
【0004】
ところで、特許文献1の管の内層構造は、合成樹脂製内面材が既設管の内周面の周方向に沿って配設されるものであるため、内面材を管軸方向に凹凸を生じないように精度高く配設することが難しく、既設管路の補修長が長くなるに従い、内面材の配設の手数がかかるという問題があった。
【0005】
この問題に対処するため、本件出願人は、図1に示すように、管Pの内周面に沿って、管軸方向に間隔をあけて設置したリング状の固定部材30と、この固定部材30に配設した、内層部材20が嵌着される嵌着部を備えた内面材固定部材10と、この内面材固定部材10の嵌着部に嵌着して、管軸方向に隣接するリング状の固定部材30に配設した内面材固定部材10に架設した帯状の内層部材20とからなる管の内層構造を提案した(特許文献2参照。)。
ここで、内層部材20は、例えば、合成樹脂製の帯状のパネルからなる内面材21と、内面材連接材(ファスナー)22とを組み合わせて用いることで、内面材固定部材10に嵌着して取り付けられる隣接する内面材21同士を、内面材連接材(ファスナー)22によって結合するようにされている。
なお、管Pの内周面と内層部材20の隙間には、内層部材20の設置後、硬化材が充填されて硬化層40が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-316539号公報
【文献】特開2014-70421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の管の内層構造は、特許文献1の管の内層構造の有する問題点を解消するものであったが、反面、内面材21の被係止片21bと内面材連接材22の係止片22bは、それぞれ管の内径方向に平板状に延びる突条21a、22aを備え、該突条21a、22a同士が略平行に対向して形成されているため、内面材連接材22の係止片22bを内面材21の被係止片21bに係止するために管Pの周方向に開く際に、内面材連接材22の係止片22bが内面材21の被係止片21bに当接した際の反力が大きく、係止に大きな押圧力を必要とするという課題があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、内層部材の設置作業を容易にすることができる管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の管の内層構造は、管の管軸方向に延びる一の内層部材が管の内径方向の外向きに、管の管軸方向に延びる他の内層部材が管の内径方向の内向きに、相対的に変位して係止することで管内に形成される管の内層構造であって、前記一の内層部材は、管の内径方向の外向きに突出した突条と、該突条の先端に設けられ、該突条から管の周方向に突出する係止片と、を備える係止部を有し、前記他の内層部材は、管の内径方向の内向きに突出した突条と、該突条の先端に設けられ、該突条から管の周方向に突出し前記係止片と係止する被係止片と、を備える被係止部を有し、前記係止部の突条と前記被係止部の突条とは、管の周方向に略対向し、前記係止部の突条、又は/及び、前記被係止部の突条は、それぞれ略対向する被係止部の突条又は係止部の突条に対して管の周方向の逆向きに凸の形状を成すことを特徴とする。
ここで、管の内層部材は、管の内層を形成する部材であり、内面材(パネル)や内面材連接材(ファスナー)を含むものである。
また、管の横断面の形状は、例えば円形や多角形等が含まれ、限定されるものではない。
また、管の内径方向について、管の周面から管軸への向きを内向きとし、その反対の向きを外向きとしている。管の周方向について、一対の係止部(の突条)と被係止部(の突条)との関係から、被係止部(の突条)からみた係止部(の突条)への向きを係止部(の突条)の向きとし、係止部(の突条)からみた被係止部(の突条)への向きを被係止部(の突条)の向きとしている。
【0010】
この場合において、前記一の内層部材と前記他の内層部材は管の略周方向に幅を有する本体部を有し、前記係止部の突条は、前記一の内層部材の本体部から突設され、前記被係止部の突条は、前記他の内層部材の本体部から突設され、前記凸の形状を成す突条を備える前記係止部又は/及び前記被係止部の突条の両側面は、前記本体部との接続部から、凸の形状の凸方向に向けて形成されるようにすることができる。
【0011】
また、前記係止片の管の内径方向の外向きの先端側外面、及び、前記被係止片の管の内径方向の内向きの先端側外面は、湾曲面を具備し、前記係止片の湾曲面と前記被係止片の湾曲面とは摺動しながら、前記係止片と前記被係止片とが管の内径方向に相対的に変位するものとすることができる。
【0012】
また、前記係止片は係止面を、前記被係止片は該係止面と係止する被係止面を備え、前記係止部と前記被係止部とが係止した状態において、前記係止面は、管の内径方向の内向き、及び、管の周方向の前記係止部の突条の向きに配向する面を有し、前記被係止面は、管の内径方向の外向き、及び、管の周方向の前記被係止部の突条の向きに配向する面を有するようにすることができる。
ここで、係止片(又は被係止片)は、係止部の係止面(又は被係止部の被係止面)の延長線によって区画した係止部(又は被係止部)の先端の領域を示す。
【0013】
また、本発明の管の内層部材は、前記凸の形状を成す突条を備える前記係止部又は/及び前記被係止部の少なくともいずれかを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材によれば、内層部材の設置作業を容易にすることができる管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材を提供することができる。
より具体的には、本発明の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材によれば、以下の効果が発揮される。
・支点と力点との距離が長くなり係止部又は被係止部が開きやすくなるとともに、係止部と被係止部との間に広く空間が確保でき係止部と被係止部とが干渉しにくくなるため、小さな押圧力で容易に係止可能となる。
・係止片(又は被係止片)と被係止部(又は係止部)の突条との間に広く空間が確保でき、係止部と被係止部とが干渉しにくくなるとともに、略対向する被係止部(又は係止部)の突条と逆向きに凸の形状を成す突条を備える係止部(又は被係止部)が係止する際に、管の略周方向における被係止部(又は係止部)の突条の向き及び管の略内径方向における内向き(又は外向き)、すなわち係止する方向へ復元するため、係止が容易となる。
【0015】
また、請求項2に係る発明のように、係止部(被係止部)の突条が本体部との接続部から傾斜して形成されていることで、さらに係止部又は被係止部が開きやすく、係止が容易となる。
【0016】
また、請求項3に係る発明のように、係止片の湾曲面と被係止片の湾曲面とが摺動することでスムーズに管の内径方向に変位することができるため、係止がさらに容易になる。
【0017】
また、請求項4に係る発明のように、前記係止部と前記被係止部とが係止した状態において、係止片の係止面は管の周方向の内向き、及び、管の内径方向の前記係止部の突条の向きに配向する面を有し、前記被係止片の被係止面は管の周方向の外向き、及び、管の内径方向の前記被係止部の突条の向きに配向する面を有するようにすることにより、係止面と被係止面とがそれぞれ当接して動きを規制し合うことになり、内径方向の動きに加えて、周方向の動きも規制できるため、より係止状態が安定したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の管の内層構造を示し、(a)は管の横断面図、(b)はその要部の拡大図である。
図2】本発明の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材の一実施例を示す説明図である。
図3】同管の内層部材の突条の実施例を示し、(a)は湾曲した突条を、(b)は屈曲した突条を、それぞれ示す説明図である。
図4】同管の内層部材の係止片及び被係止片の実施例を示し、(a)は係止面及び被係止面が面形状の係止片及び被係止片を、(b)は係止面及び被係止面に凸部を設けた係止片及び被係止片を、それぞれ示す説明図である。
図5】同管の内層部材の係止片を示す説明図である。
図6】本発明の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材の変形実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
図2図4に、本発明の本発明の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材の一実施例を示す。
この管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材は、管Pの管軸方向に延びる一の内層部材と他の内層部材とが管Pの内径方向に相対的に変位して係止することで管P内に形成されるようにしたもので、具体的には、図1に示す従来の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材と同様、管の内層部材20を、合成樹脂製の帯状のパネルからなる内面材21と、内面材連接材(ファスナー)22とを組み合わせて用いることで、内面材固定部材(図示省略)に嵌着して取り付けられる隣接する内面材21同士を、内面材連接材(ファスナー)22によって結合するようにしたものである。
【0021】
この場合において、内層部材のうち、本実施例においては、内面材21は、管軸方向に延びる突条21aと、この突条21aの先端に管軸方向に延びる被係止片21bとを備える被係止部を有し、内層部材のうち、本実施例においては、内面材連接材(ファスナー)22は、管軸方向に延びる突条22aと、この突条22aの先端に管の周方向の被係止部の向きに突出する係止片22bとを備える係止部を有するようにしている。
ここで、「係止」、「被係止」は、相対的な呼び方で、見方によっては逆に捉えることも可能であるが、本実施例においては、可動側となる内面材連接材(ファスナー)22に「係止」の語を、固定側となる内面材21に「被係止」の語を、それぞれ使用することとしている。
そして、内面材連接材(ファスナー)22の係止部の突条22aは、内面材21の被係止部の突条21aと管の周方向の被係止部の向きと逆向きに湾曲し(凸形状を成し)、この係止部の背面に内層部材、本実施例においては、内面材21に形成された溝状の空間部21cが形成されるようにしている。このように係止部の突条22aが湾曲していることで、係止部の突条22aと被係止片21bとの間に広く空間を確保することができる。
また、内面材連接材(ファスナー)22の係止部と内面材21の被係止部とが係止する際には、内面材連接材(ファスナー)22の係止部は、係止片22bが被係止部の被係止片21bの外面の形状に沿って摺動し内面材21側に変位しながら、突条22aの弾性変形を伴って、内面材21の被係止部と係止する。空間部21cが形成されるようにしていることで、係止時の係止部の動きは規制されない。
ここで、内面材連接材(ファスナー)22の係止部の突条22aを、図3(b)に示すように、内面材21の被係止部と管の周方向の逆向きに屈曲するように形成することもできる。
ここで、内面材連接材(ファスナー)22の係止部の突条22aの凸の形状とは、言い換えれば円弧状や「く」の字状のように湾曲又は屈曲している形状を示す。湾曲形状や屈曲形状は、1段階だけでなく、多段階で湾曲させたり、屈曲させるほか、湾曲と屈曲を組み合わせた形状とすることもできる。
【0022】
また、内層部材のうち、本実施例においては、内面材21と、内層部材のうち、本実施例においては、内面材連接材(ファスナー)22は、管Pの略周方向に幅を有する本体部を有し、被係止部の突条21aと係止部の突条22aは、それぞれ本体部21f、22fから突設され、凸の形状を成す突条を備える係止部の突条22aの両側面は、内面材連接材(ファスナー)22の本体部との接続部から、突条22aの凸の形状の凸方向(言い換えると、周方向における係止部の突条への向き)に向けて形成されるようにしている。
【0023】
また、内面材21の被係止片21b及び内面材連接材(ファスナー)22の係止片22bは、先端側に湾曲面を具備し、被係止片21bの湾曲面21dと係止片22bの湾曲面22dとは摺動して、係止片22bと被係止片21bとが管Pの内径方向に相対的に変位するようにしている。係止片と被係止片は、どちらか一方に先端側に湾曲面を具備するようにしても係止を容易にすることができるが、両方に湾曲面を具備することでより容易にすることができるため好ましい。
【0024】
また、図4(a)に示すように、内面材21の被係止片21bは内面材連接材(ファスナー)22の係止片22bと係止する面形状の被係止面21eを、内面材連接材(ファスナー)22の係止片22bは被係止片21bと係止する面形状の係止面22eを具備し、内面材21の被係止部と内面材連接材(ファスナー)22の係止部とが係止した状態において、被係止片21bの被係止面21eは管の内径方向の外向き、及び、管の周方向の前記被係止部の突条の向きに配向する面を有し、係止片22bの係止面22eは管の内径方向の内向き、及び、管の周方向の前記係止部の突条の向きに配向する面を有するようにしている。また、係止片(被係止片)と係止部(被係止部)の突条とは、より詳しくは、係止面(被係止面)を周方向の係止部(被係止部)の突条の向きに延長した面によって区画することで、区分けすることができる。
ここで、図4(b)に示すように、内面材21の被係止片21bの被係止面21e及び内面材連接材(ファスナー)22の係止片22bの係止面22eに凸部を設けることもでき、これにより、係止状態をより強固にすることができる。
【0025】
また、図5に示すように、内面材連接材(ファスナー)22の係止部の突条22aは、突条22aと本体部との接続幅W1が、突条22aの先端側の幅W2よりも大きくなるように形成している。
【0026】
また、内面材21と内面材連接材(ファスナー)22の間、本実施例においては、内面材21の被係止片21bと内面材連接材(ファスナー)22の係止部の突条22aで囲まれた内天面の間には、エラストマー製等の止水材23を介在するようにしている。
【0027】
上記構造によって、以下の効果が発揮される。
・係止部の突条22aは、略対向する内面材21の被係止部の突条と管の周方向の逆向きに凸の形状を成すことで、支点と力点との距離が長くなり係止部が開きやすくなるとともに、係止部と被係止部との間に広く空間が確保でき係止部と被係止部とが干渉しにくくなるため、小さな押圧力で容易に係止可能となる。
・係止部と被係止部との間に広く空間が確保でき、係止部と被係止部とが干渉しにくくなるとともに、係止する際に、(管の略周方向における)被係止部の突条の向き及び(管の略内径方向における)内向き、すなわち係止する方向へ復元するため、係止が容易となる。
・係止部の突条が本体部との接続部から凸の形状の凸方向に形成されていることで、係止部が開きやすく、係止が容易となる。
・被係止片21bの湾曲面21dと係止片22bの湾曲面22dとが摺動することでスムーズに管Pの内径方向に変位することができるため、係止が容易になる。
・突条22aと本体部との接続幅W1が、突条22aの先端側の幅W2よりも大きくなるように形成することにより、係止部の強度を維持しつつ、係止の際に先端側が容易に弾性変形できるため、さらに係止が容易になる。
そして、これらの効果が発揮されることによって、内層部材20の設置作業を容易にすることができる管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材を提供することができる。
【0028】
そして、上記実施例においては、図2図6(a)に示すように、内面材連接材(ファスナー)22の係止部の突条22aを、内面材21の被係止部の突条と逆向きに凸の形状を成すように形成したが、この突条22aに代えて、図6(b)に示すように、内面材21の被係止部の突条21aを、内面材連接材(ファスナー)22の係止部の突条と逆向きに凸の形状を成すように形成するようにしたり(他の構成も適宜組み合わせることができる。)、突条21a及び突条22aの両方を互いに逆向きに凸の形状を成すように形成することもできる。
また、図6(c)及び(d)に示すように、内面材連接材(ファスナー)22を用いずに、内面材21同士を直接連接するようにすることもできる。
【0029】
以上、本発明の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材は、内層部材の設置作業を容易にすることができる内層構造及びそれに用いる管の内層部材を提供することができることから、下水道管等の比較的大口径の既設管の補修に適した内面材を用いた管の内層構造及びそれに用いる管の内層部材の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 内面材固定部材
20 内層部材
21 内面材
21a 突条
21b 被係止片
21c 溝状の空間部
21d 湾曲面
21e 被係止面
21f 本体部
22 内面材連接材(ファスナー)
22a 突条
22b 係止片
22d 湾曲面
22e 係止面
22f 本体部
23 止水材
30 固定部材
40 硬化層
P 管
図1
図2
図3
図4
図5
図6