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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】シックナー
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/00 20060101AFI20230526BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20230526BHJP
   B01D 21/06 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
B01D21/00 Z
B01D21/00 D
B01D21/24 V
B01D21/06 A
B01D21/06 Z
B01D21/24 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019135466
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021016843
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 敏治
(72)【発明者】
【氏名】澁藤 暢一
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-148311(JP,A)
【文献】登録実用新案第3006148(JP,U)
【文献】実開昭47-015253(JP,U)
【文献】特開2011-101858(JP,A)
【文献】特開2008-049321(JP,A)
【文献】特開2008-119643(JP,A)
【文献】特開平01-236997(JP,A)
【文献】実開平01-110899(JP,U)
【文献】実開昭52-031081(JP,U)
【文献】米国特許第02669357(US,A)
【文献】国際公開第2010/046960(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジおよび上澄み液を含む液体が溜められる槽と、
前記槽の内部に配置され、上澄み液に浸漬される液中ポンプと、
前記液中ポンプに接続され、前記液中ポンプが汲み出す上澄み液が内部を通る配管と、を備え
前記槽は、底壁および周壁を有し、
前記配管は、前記周壁に支持されて上澄み液に浸漬される浸漬管部を有し、
前記周壁は、前記槽内の上澄み液をオーバーフローさせるオーバーフロー部を有し、
前記オーバーフロー部は、前記周壁の内周面から前記槽の内側に突出する樋状であり、
前記浸漬管部は、前記オーバーフロー部に支持されて前記槽内を上下方向に延びる、
シックナー。
【請求項2】
前記液中ポンプと前記周壁とに接続され、長さ調整可能なポンプ吊り部を備え、
前記浸漬管部は、弾性変形可能な弾性部を有する、
請求項に記載のシックナー。
【請求項3】
前記槽の上部に配置され、前記槽の上下方向に延びる中心軸回りに回転させられる上部レイキを備え、
前記周壁は、前記オーバーフロー部よりも前記中心軸に直交する径方向の内側に位置するレイキガイドを有し、
前記レイキガイドは、前記上部レイキの径方向外側の端部を支持し、
前記浸漬管部は、前記オーバーフロー部と前記レイキガイドとの間に挿入される部分を有する、
請求項1または2に記載のシックナー。
【請求項4】
前記槽の上部に配置され、前記槽の上下方向に延びる中心軸回りに回転させられる上部レイキと、
前記槽の上側から前記槽内に吊り下げられて上下方向に延び、前記上部レイキにより跳ね上げ可能とされて、スラッジに抜き差しされる軸部材と、を備える、
請求項1からのいずれか1項に記載のシックナー。
【請求項5】
前記槽の底部に配置され、前記槽の上下方向に延びる中心軸回りに回転させられる下部レイキを備え、
前記液中ポンプは、前記下部レイキよりも上側に配置される、
請求項1からのいずれか1項に記載のシックナー。
【請求項6】
前記配管は、前記液中ポンプが汲み出す上澄み液を前記槽内に戻す槽戻し配管部を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載のシックナー。
【請求項7】
前記槽戻し配管部は、前記槽内に上澄み液をシャワー状に供給するシャワー部を有する、
請求項に記載のシックナー。
【請求項8】
前記配管は、前記液中ポンプが汲み出す上澄み液を当該シックナーの前工程の設備に送る前工程送り配管部を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載のシックナー。
【請求項9】
前記配管は、前記液中ポンプが汲み出す上澄み液を当該シックナーの後工程の設備に送る後工程送り配管部を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載のシックナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シックナーに関する。
【背景技術】
【0002】
シックナーは、例えば工場排液等の液体中に混じる不純物を、高分子凝集剤等でフロック状にして槽内に沈降させ、スラッジ(泥漿、汚泥)として回収する装置である。シックナーは、沈降濃縮装置とも呼ばれる。従来、例えば下記特許文献1に記載されるようなシックナーが知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-145511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シックナーの槽内に溜められる液体は、スラッジおよび上澄み液を含む。スラッジは、定期的に槽から回収される。上澄み液は、槽からオーバーフローされるなどにより、シックナーの後工程に送られて、適宜処理される。
従来のシックナーでは、槽内で上澄み液が白濁するなどして濁ることがあった。上澄み液が濁ると、シックナーの後工程で上澄み液を処理する時間や手間が多くかかる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、上澄み液が濁ることを抑制できるシックナーを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシックナーの一つの態様は、スラッジおよび上澄み液を含む液体が溜められる槽と、前記槽の内部に配置され、上澄み液に浸漬される液中ポンプと、前記液中ポンプに接続され、前記液中ポンプが汲み出す上澄み液が内部を通る配管と、を備え、前記槽は、底壁および周壁を有し、前記配管は、前記周壁に支持されて上澄み液に浸漬される浸漬管部を有し、前記周壁は、前記槽内の上澄み液をオーバーフローさせるオーバーフロー部を有し、前記オーバーフロー部は、前記周壁の内周面から前記槽の内側に突出する樋状であり、前記浸漬管部は、前記オーバーフロー部に支持されて前記槽内を上下方向に延びる
【0007】
本発明によれば、液中ポンプ(水中ポンプ)により、槽から上澄み液を汲み出すことで、槽内の上澄み液に流れが作られ、槽内で上澄み液が循環させられる。これにより、上澄み液が白濁するなどして濁ることを抑制できる。上澄み液が濁ることが抑えられるので、シックナーの後工程の設備等において、上澄み液を処理する時間や手間が削減される。
【0008】
上記シックナーにおいて、前記槽は、底壁および周壁を有し、前記配管は、前記周壁に支持されて上澄み液に浸漬される浸漬管部を有する。
【0009】
この場合、槽の周壁により浸漬管部が支持されるので、浸漬管部を上澄み液中に設けるための支持構造を簡素化できる。また、周壁に支持されることで浸漬管部および液中ポンプが、槽の中心軸回りに回転する上部レイキや下部レイキ等の邪魔になりにくく、浸漬管部および液中ポンプを槽内に配置しやすい。
上記シックナーにおいて、前記周壁は、前記槽内の上澄み液をオーバーフローさせるオーバーフロー部を有し、前記オーバーフロー部は、前記周壁の内周面から前記槽の内側に突出する樋状であり、前記浸漬管部は、前記オーバーフロー部に支持されて前記槽内を上下方向に延びる。
この場合、浸漬管部および液中ポンプを周壁の内周面から槽の内側に離して配置でき、液中ポンプの性能が良好に維持される。液中ポンプにより槽内の上澄み液を循環させる作用効果がより安定する。
【0010】
上記シックナーは、前記液中ポンプと前記周壁とに接続され、長さ調整可能なポンプ吊り部を備え、前記浸漬管部は、弾性変形可能な弾性部を有することが好ましい。
【0011】
この場合、ポンプ吊り部の長さを調整することにより、浸漬管部の弾性部が弾性変形して、液中ポンプの槽内での上下方向の位置(設置深さ)を調整することができる。液中ポンプの位置をスラッジ等の高さに応じて簡単に変更でき、本発明の上述した作用効果が安定して奏功される。
【0014】
上記シックナーは、前記槽の上部に配置され、前記槽の上下方向に延びる中心軸回りに回転させられる上部レイキを備え、前記周壁は、前記オーバーフロー部よりも前記中心軸に直交する径方向の内側に位置するレイキガイドを有し、前記レイキガイドは、前記上部レイキの径方向外側の端部を支持し、前記浸漬管部は、前記オーバーフロー部と前記レイキガイドとの間に挿入される部分を有することが好ましい。
【0015】
この場合、浸漬管部がオーバーフロー部とレイキガイドとの間に挿入されるので、オーバーフロー部とレイキガイドとの間のスペースを有効に利用でき、かつ上部レイキと浸漬管部との接触は抑制される。
【0016】
上記シックナーは、前記槽の上部に配置され、前記槽の上下方向に延びる中心軸回りに回転させられる上部レイキと、前記槽の上側から前記槽内に吊り下げられて上下方向に延び、前記上部レイキにより跳ね上げ可能とされて、スラッジに抜き差しされる軸部材と、を備えることが好ましい。
【0017】
この場合、中心軸回りに回転する上部レイキによって、軸部材が跳ね上げられ、自重でまた元の位置(吊り下げ姿勢)に戻る。これにより、軸部材がスラッジに対して抜き差しされ、スラッジに切り込みが入れられる。切り込みが入れられることにより、スラッジの内部に溜まったガスが抜かれて、スラッジの浮き上がりが抑制される。つまり、スラッジが槽の底部に沈んだ状態が維持されるので、スラッジを槽の底部から回収する効率が高められる。またスラッジが槽の底部に沈むため、上澄み液の液面からの深さが確保されて、上澄み液が安定して循環しやすくなる。このため、上澄み液が濁ることがより抑制される。
【0018】
上記シックナーは、前記槽の底部に配置され、前記槽の上下方向に延びる中心軸回りに回転させられる下部レイキを備え、前記液中ポンプは、前記下部レイキよりも上側に配置されることが好ましい。
【0019】
この場合、中心軸回りに回転する下部レイキと、液中ポンプとの接触が抑えられ、液中ポンプの性能が安定して維持される。また、下部レイキの回転により濁った上澄み液が、液中ポンプに吸い込まれることが抑制される。
【0020】
上記シックナーにおいて、前記配管は、前記液中ポンプが汲み出す上澄み液を前記槽内に戻す槽戻し配管部を有することが好ましい。
【0021】
この場合、液中ポンプが汲み出した上澄み液を、槽戻し配管部によって槽内に戻すことができる。したがって、槽内の上澄み液をより安定して循環させることができる。
【0022】
上記シックナーにおいて、前記槽戻し配管部は、前記槽内に上澄み液をシャワー状に供給するシャワー部を有することが好ましい。
【0023】
この場合、シャワー部から槽内に、上澄み液がシャワー状に供給されるので、槽内の上澄み液の濁りをより安定して抑制する効果が得られる。
【0024】
上記シックナーにおいて、前記配管は、前記液中ポンプが汲み出す上澄み液を当該シックナーの前工程の設備に送る前工程送り配管部を有することが好ましい。
【0025】
上記シックナーにおいて、前記配管は、前記液中ポンプが汲み出す上澄み液を当該シックナーの後工程の設備に送る後工程送り配管部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一つの態様のシックナーによれば、上澄み液が濁ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態のシックナーを示す上面図である。
図2】本発明の一実施形態のシックナーを示す縦断面図である。
図3】シックナーの一部を拡大して示す縦断面図である。
図4図3のIV矢視を示す側面図である。
図5】シックナーの軸部材を示す側面図である。
図6】参考例のシックナーを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態のシックナー10について、図面を参照して説明する。
本実施形態のシックナー10は、例えば製缶工場の加工処理水等の排液(廃液)中に混じる不純物を、高分子凝集剤等でフロック状にして槽1内に沈降させ、スラッジ(泥漿、汚泥)Sとして回収する装置である。シックナー10は、沈降濃縮装置と言い換えてもよい。シックナー10は、排液処理システムの一部を構成する。排液処理システムは、シックナー10以外に、少なくともpH調整槽と、ろ過槽と、を有する。pH調整槽は、シックナー10の前工程に設けられる設備である。pH調整槽は、排液に消石灰を投入し、中和処理を行う設備である。ろ過槽は、シックナー10の後工程に設けられる設備である。ろ過槽は、シックナー10から排出された上澄み液SFの有機物などの汚れを、微生物の働きにより処理(微生物処理)し除去する設備である。
シックナー10に送られる排液は、例えば消石灰等を用いて予めPHが調整されている。なお、シックナー10に送られる不純物を含む液体Lは、工場排液に限定されるものではない。
【0029】
図1図4に示すように、シックナー10は、槽1と、橋部5と、支持軸6と、駆動手段(図示省略)と、上部レイキ2と、下部レイキ3と、液中ポンプ8と、配管9と、ポンプ吊り部11と、軸部材支持部7と、軸部材4と、エア供給手段(図示省略)と、を備える。
【0030】
槽1は、有底筒状である。槽1の中心軸Cは、鉛直方向(上下方向)に延びる。槽1には、液体Lが溜められる。液体Lは、スラッジSおよび上澄み液SFを含む。槽1の容量は、例えば数百トンであり、本実施形態の例では400トンである。槽1に溜められる液体Lの液面LSは、槽1の開口部に位置し、水平方向に広がる。
【0031】
本実施形態では、中心軸Cが延びる方向を上下方向と呼ぶ。上下方向のうち、槽1の底部から開口部へ向かう方向を上側と呼ぶ。上側は、液体Lの液面LSが向く方向である。上下方向のうち、槽1の開口部から底部へ向かう方向を下側と呼ぶ。下側は、液面LSが向く方向とは反対方向である。
中心軸Cに直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに接近する方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。周方向のうち、シックナー10の運転時に上部レイキ2および下部レイキ3が回転させられる方向を、レイキ回転方向Tと呼び、これとは反対の回転方向を、レイキ回転方向Tとは反対方向(反レイキ回転方向)と呼ぶ。本実施形態の例では、図1に示すようにシックナー10を上から下側へ向けて見て(つまりシックナー10の上面視で)、レイキ回転方向Tは、周方向のうち時計回りに進む方向である。シックナー10を上から下側へ向けて見て、反レイキ回転方向は、周方向のうち反時計回りに進む方向である。
【0032】
槽1は、周壁1aと、底壁1bと、底排出口1cと、浮き屑排出口1dと、液体流入口(図示省略)と、を有する。
周壁1aは、中心軸Cを中心とする円筒状である。周壁1aは、オーバーフロー部1eと、レイキガイド1fと、を有する。
【0033】
オーバーフロー部1eは、槽1内の上澄み液SFをオーバーフローさせる。オーバーフロー部1eの上下方向の位置により、槽1内の液面LSの上下方向の位置が決められる。オーバーフロー部1eにオーバーフローされた上澄み液SFは、シックナー10の後工程の設備であるろ過槽に送られる。オーバーフロー部1eは、周壁1aの内周面から槽1の内側に突出する樋状である。オーバーフロー部1eは、周壁1aの内周面の上端部に配置されてこの内周面から径方向内側に突出し、上側に開口する。オーバーフロー部1eは、中心軸Cを中心として周方向に延びる円形リング状の溝である。
【0034】
図3に示すように、オーバーフロー部1eは、周壁1aの内周面から径方向内側に延びる下壁部1gと、下壁部1gの内周部から上側に延びる内壁部1hと、を有する。下壁部1gは、中心軸Cを中心とし、上下方向と直交する方向(水平方向)に拡がる円形リング板状である。内壁部1hは、中心軸Cを中心として上下方向に延びる円筒状である。
【0035】
レイキガイド1fは、オーバーフロー部1eよりも径方向の内側に位置する。レイキガイド1fは、内壁部1hの径方向内側に、内壁部1hとの間に隙間をあけて配置される。レイキガイド1fは、中心軸Cを中心として上下方向に延びる円筒状である。レイキガイド1fの上端部は、内壁部1hの上端部よりも上側に位置する。つまりレイキガイド1fの上端部は、オーバーフロー部1eよりも上側に位置する。レイキガイド1fの上端部は、液面LSの上側に位置する。図1に示すシックナー10の上面視で、レイキガイド1fは、上部レイキ2の径方向外側の端部と重なって配置される。レイキガイド1fは、上部レイキ2の径方向外側の端部の下側に位置する。レイキガイド1fは、上部レイキ2の径方向外側の端部に対して下側から接触する。レイキガイド1fは、上部レイキ2の径方向外側の端部を支持する。
【0036】
図2に示すように、底壁1bは、中心軸Cを中心とする円板状または円錐状である。底壁1bが円錐状の場合、底壁1bの上面は、径方向内側へ向かうにしたがい下側へ向けて傾斜するテーパ状である。
【0037】
底排出口1cは、槽1の底壁1bの中央部(中心軸C上)に配置される。底排出口1cは、底壁1bを上下方向に貫通する貫通孔により構成される。底排出口1cには、不図示の開閉バルブが設けられる。開閉バルブは、通常の運転時は閉じられており、底排出口1cから液体L等を排出させるときに開けられる。
【0038】
底排出口1cは、例えば2年に一度など、定期的に槽1内のスラッジSを回収して槽1を清掃およびメンテナンスする際に開けられる。具体的には、まず底排出口1cを閉じた状態で、不図示のフィルタープレス装置(加圧ろ過装置)を用いて槽1の底部からスラッジSを汲み取る。槽1内から汲み取ったスラッジSは、フィルタープレス装置により処理される。次いで、槽1内に残された液体Lを、底排出口1cを開けることにより槽1の外部に排出させて、槽1の清掃およびメンテナンス等を行う。
【0039】
図1に示すように、浮き屑排出口1dは、槽1の上部に配置され、上側に向けて開口する。浮き屑排出口1dの開口部は、液面LSよりも僅かに上側に位置する。浮き屑排出口1dは、不図示の浮き屑収集部に接続される。浮き屑排出口1dから排出された液面LSの浮き屑は、浮き屑収集部に集められる。
【0040】
特に図示しないが、液体流入口は、槽1の上側に配置される。シックナー10の上面視で、液体流入口は、槽1の略中央部に配置される。不純物を含む液体Lは、シックナー10の前工程の設備であるpH調整槽から液体流入口を通って、槽1内に供給される。
【0041】
図2に示す矢印Fは、液体流入口から槽1内に供給された液体Lの流れの向きを、模式的に表している。槽1内に流入した液体Lは、槽1の略中央部から径方向外側へ向けて流れていく間に、槽1内において不純物が沈降させられる。槽1内に沈降した不純物は、スラッジSとなる。不純物が沈降させられた後の上澄み液SFは、オーバーフロー部1eに流入し、シックナー10の後工程の設備に送られる。
【0042】
図1に示すように、橋部5は、槽1の上側に架け渡される。橋部5は、槽1よりも上側に、作業者が通行可能に設けられる足場である。橋部5は、中心軸C上を通り、径方向に延びる。
図2において支持軸6は、橋部5に支持されて、上下方向に延びる。支持軸6は、中心軸Cと同軸に設けられる。支持軸6は、不図示のモータ等の駆動手段により、中心軸C回りのレイキ回転方向Tに回転させられる。
【0043】
上部レイキ2は、槽1の上部に配置される。上部レイキ2は、支持軸6に支持され、支持軸6とともに中心軸C回りのレイキ回転方向Tに回転させられる。上部レイキ2の下端部の上下方向の位置は、液面LSの上下方向の位置と略同じである。上部レイキ2は、槽1の液面LSに浮かぶ浮き屑を回収して、浮き屑排出口1dに排出する。上部レイキ2の中心軸C回りの回転軌跡は、液面LSの略全体を覆う円板状となる。
【0044】
上部レイキ2は、複数の上部レイキアーム2aを有する。上部レイキアーム2aは、径方向内端部が支持軸6に支持され、支持軸6から径方向外側に向けて延びる。本実施形態の例では、上部レイキ2が、2つの上部レイキアーム2aを有する。2つの上部レイキアーム2a同士は、中心軸Cを中心として互いに180°回転対称に設けられる。
【0045】
図1および図3に示すように、上部レイキアーム2aは、アーム本体2bと、コロ部材2eと、浮き屑ガイド部2cと、浮き屑捕集部2dと、を有する。
アーム本体2bは、径方向に沿って延びる。アーム本体2bの径方向内端部は、支持軸6に支持される。アーム本体2bの径方向外端部は、コロ部材2eを介して周壁1aのレイキガイド1fに支持される。コロ部材2eは、アーム本体2bの径方向外端部に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。コロ部材2eは、レイキガイド1fの上端部上を周方向に転動自在である。アーム本体2bは、浮き屑ガイド部2cおよび浮き屑捕集部2dを支持する。
【0046】
図1に示すように、浮き屑ガイド部2cは、アーム本体2bよりもレイキ回転方向Tに配置される。本実施形態の例では、浮き屑ガイド部2cが板状であり、浮き屑ガイド部2cの一対の板面は、周方向の両側(つまりレイキ回転方向Tおよび反レイキ回転方向)を向く。浮き屑ガイド部2cの下端部は、液面LSよりも下側に位置する。浮き屑ガイド部2cの上端部は、液面LSよりも上側に位置する。
【0047】
浮き屑ガイド部2cは、径方向内側に向かうにしたがいレイキ回転方向Tに向けて延びる。このため、液面LSに浮かぶ浮き屑が浮き屑ガイド部2cに接触すると、浮き屑ガイド部2cのレイキ回転方向Tへの移動(中心軸C回りの回転)にともなって、浮き屑は径方向外側へ向けて案内される。浮き屑ガイド部2cは、液面LSの浮き屑を浮き屑捕集部2dへ案内する機能を有する。
【0048】
浮き屑捕集部2dは、浮き屑ガイド部2cよりも径方向外側に配置される。浮き屑捕集部2dは、浮き屑ガイド部2cの径方向外端部に接続する。シックナー10の上面視で、浮き屑捕集部2dは、反レイキ回転方向に窪む凹状である。本実施形態の例では、浮き屑捕集部2dが板状であり、浮き屑捕集部2dの一対の板面は、周方向の両側(レイキ回転方向Tおよび反レイキ回転方向)を向く部分と、径方向の両側(径方向内側および径方向外側)を向く部分と、を有する。浮き屑捕集部2dの下端部は、液面LSよりも下側に位置する。浮き屑捕集部2dの上端部は、液面LSよりも上側に位置する。
【0049】
浮き屑捕集部2dは、浮き屑ガイド部2cよりも反レイキ回転方向に配置される。本実施形態の例では、浮き屑捕集部2dが、アーム本体2bよりも反レイキ回転方向に配置される。浮き屑捕集部2dには、液面LSに浮かぶ浮き屑が一時的に保持される。シックナー10の上面視で、浮き屑捕集部2dの中心軸C回りの回転軌跡は、浮き屑排出口1dと重なる。浮き屑捕集部2dが浮き屑排出口1d上を通過するときに、浮き屑捕集部2dが保持する浮き屑が浮き屑排出口1dへ入り、液面LSから排出される。
【0050】
図1および図2に示すように、下部レイキ3は、槽1の底部に配置される。下部レイキ3は、槽1の底壁1bの上側に配置され、底壁1bと隙間をあけて対向する。下部レイキ3は、支持軸6に支持され、支持軸6とともに中心軸C回りのレイキ回転方向Tに回転させられる。下部レイキ3は、槽1の底部に溜まるスラッジSを径方向内側へ移動させる機能等を有する。下部レイキ3の中心軸C回りの回転軌跡は、底壁1bの上面の略全体を覆う逆円錐状となる。
【0051】
下部レイキ3は、複数の第1下部レイキアーム3aと、複数の第2下部レイキアーム3bと、を有する。
第1下部レイキアーム3aは、径方向内端部が支持軸6に支持され、支持軸6から径方向外側に向かうにしたがい上側へ向けて傾斜して延びる。第1下部レイキアーム3aの径方向外端部は、周壁1aに径方向内側から隙間をあけて対向する。特に図示しないが、第1下部レイキアーム3aは、径方向内端部以外の部位において、上部レイキアーム2aと連結される部分を有する。つまり第1下部レイキアーム3aは、上部レイキアーム2aにも支持される。
本実施形態の例では、下部レイキ3が、2つの第1下部レイキアーム3aを有する。2つの第1下部レイキアーム3a同士は、中心軸Cを中心として互いに180°回転対称に設けられる。
【0052】
第1下部レイキアーム3aは、複数の第1歯部3cを有する。複数の第1歯部3cは、第1下部レイキアーム3aにおいて、互いに径方向に間隔をあけて配列する。第1歯部3cは、径方向外側へ向かうにしたがいレイキ回転方向Tへ向けて延びる。このため、槽1の底部に溜まるスラッジSが第1歯部3cに接触すると、第1歯部3cのレイキ回転方向Tへの移動(中心軸C回りの回転)にともなって、スラッジSは径方向内側へ向けて案内される。
【0053】
第2下部レイキアーム3bは、径方向内端部が支持軸6に支持され、支持軸6から径方向外側に向かうにしたがい上側へ向けて傾斜して延びる。第2下部レイキアーム3bの径方向外端部は、第1下部レイキアーム3aの径方向外端部よりも、径方向内側に位置する。つまり第2下部レイキアーム3bは、第1下部レイキアーム3aよりも径方向の長さが短い。
【0054】
本実施形態の例では、下部レイキ3が、2つの第2下部レイキアーム3bを有する。2つの第2下部レイキアーム3b同士は、中心軸Cを中心として互いに180°回転対称に設けられる。第2下部レイキアーム3bは、第1下部レイキアーム3aと周方向に間隔をあけて配置される。図示の例では、第2下部レイキアーム3bと第1下部レイキアーム3aとが、中心軸C回りに90°ピッチで交互に配置される。
【0055】
第2下部レイキアーム3bは、複数の第2歯部3dを有する。複数の第2歯部3dは、第2下部レイキアーム3bにおいて、互いに径方向に間隔をあけて配列する。第2歯部3dは、径方向外側へ向かうにしたがいレイキ回転方向Tへ向けて延びる。このため、槽1の底部に溜まるスラッジSが第2歯部3dに接触すると、第2歯部3dのレイキ回転方向Tへの移動(中心軸C回りの回転)にともなって、スラッジSは径方向内側へ向けて案内される。
【0056】
図1図4に示すように、液中ポンプ8は、槽1の内部に配置され、上澄み液SFに浸漬される。液中ポンプ8は、例えば円柱状であり、配管9と接続される。液中ポンプ8は、配管9を通して槽1内の上澄み液SFを槽1外に汲み出す。液中ポンプ8は、水中ポンプ8と言い換えてもよい。また液中ポンプ8には、図示しない配線部材が接続される。
【0057】
液中ポンプ8は、下部レイキ3よりも上側に配置される。図3において、液中ポンプ8の下端部と、底壁1bの上面との間の上下方向の寸法Hは、例えば200mm以上である。液中ポンプ8は、レイキガイド1fおよびオーバーフロー部1eよりも下側に配置される。液中ポンプ8は、レイキガイド1fおよび内壁部1hの直下に配置される。液中ポンプ8は、周壁1aの内周面から径方向内側に離れて配置される。
【0058】
図3および図4に示すように、配管9は、液中ポンプ8に接続される。本実施形態では配管9の一部(後述する浸漬管部9a)が、上澄み液SF中において液中ポンプ8を支持する。配管9の内部には、液中ポンプ8が汲み出す上澄み液SFが通る。配管9は、例えば、槽1および橋部5と固定される。
【0059】
配管9は、配管本体部9bと、浸漬管部9aと、槽戻し配管部9cと、第1弁部9dと、前工程送り配管部9eと、第2弁部9fと、後工程送り配管部9gと、第3弁部9hと、を有する。
【0060】
配管本体部9bは、例えば金属製である。配管本体部9bは、周壁1aと固定される。本実施形態では配管本体部9bが、オーバーフロー部1eと固定される。配管本体部9bは、浸漬管部9aと接続される。配管本体部9bは、第1弁部9dを介して槽戻し配管部9cと接続される。配管本体部9bは、第2弁部9fを介して前工程送り配管部9eと接続される。配管本体部9bは、第3弁部9hを介して後工程送り配管部9gと接続される。
【0061】
浸漬管部9aは、周壁1aに支持されて上澄み液SFに浸漬される。浸漬管部9aは、オーバーフロー部1eに支持されて槽1内を上下方向に延びる。浸漬管部9aは、オーバーフロー部1eとレイキガイド1fとの間に挿入される部分を有する。浸漬管部9aのうち上端部が、径方向において内壁部1hとレイキガイド1fとの間に位置する。浸漬管部9aのうち下端部は、液中ポンプ8に接続される。
浸漬管部9aは、弾性変形可能な弾性部9iを有する。弾性部9iは、浸漬管部9aのうち上端部以外の部分を構成する。弾性部9iは、例えば樹脂製のホース等である。
【0062】
槽戻し配管部9cの両端部のうち、第1弁部9dと接続される端部とは反対側の端部(先端部)は、槽1の上側に位置する。槽戻し配管部9cの先端部は、上面視で槽1の略中央部に位置し、液面LSと対向する。槽戻し配管部9cは、液中ポンプ8が汲み出す上澄み液SFを槽1内に戻す。具体的に、液中ポンプ8が浸漬管部9aおよび配管本体部9bの内部に汲み出した上澄み液SFは、第1弁部9dを開状態とすることにより、槽戻し配管部9cの内部を流通して槽戻し配管部9cの先端部から槽1内へ流出する。第1弁部9dを閉状態とすることにより、槽戻し配管部9cから槽1内への上澄み液SFの流出は停止される。
【0063】
前工程送り配管部9eは、液中ポンプ8が汲み出す上澄み液SFを当該シックナー10の前工程の設備に送る。具体的に、液中ポンプ8が浸漬管部9aおよび配管本体部9bの内部に汲み出した上澄み液SFは、第2弁部9fを開状態とすることにより、前工程送り配管部9eの内部を流通してシックナー10の前工程の設備であるpH調整槽に送液される。第2弁部9fを閉状態とすることにより、前工程送り配管部9eを通したpH調整槽への送液は停止される。
【0064】
後工程送り配管部9gは、液中ポンプ8が汲み出す上澄み液SFを当該シックナー10の後工程の設備に送る。具体的に、液中ポンプ8が浸漬管部9aおよび配管本体部9bの内部に汲み出した上澄み液SFは、第3弁部9hを開状態とすることにより、後工程送り配管部9gの内部を流通してオーバーフロー部1eに流入し、シックナー10の後工程の設備であるろ過槽に送液される。第3弁部9hを閉状態とすることにより、後工程送り配管部9gを通したろ過槽への送液は停止される。
【0065】
図4に示すように、ポンプ吊り部11は、液中ポンプ8と周壁1aとに接続される。ポンプ吊り部11は、例えば金属製のチェーン等である。ポンプ吊り部11は、周壁1aへの取り付け位置等を適宜調整することが可能である。これによりポンプ吊り部11は、長さ調整可能である。ポンプ吊り部11の長さを調整することにより、浸漬管部9aの弾性部9iが弾性変形または復元変形して、液中ポンプ8の槽1内での上下方向の位置(設置深さ)を調整可能である。
【0066】
図1図2および図5に示すように、軸部材支持部7は、橋部5に取り付けられ、槽1の上側に位置する。軸部材支持部7は、橋部5から水平方向に突出して液面LSの上側に配置され、軸部材4を支持する。軸部材支持部7は、支持アーム7aを有する。支持アーム7aは、槽1の上側に配置されて、水平方向に延びる。本実施形態では、支持アーム7aが径方向に延びており、複数の軸部材4を支持する。
【0067】
軸部材4は、槽1の上側から槽1内に吊り下げられて、上下方向に延びる。軸部材4は、水平方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では、複数の軸部材4が、支持アーム7aに吊り下げられており、径方向に互いに間隔をあけて配置される。複数の軸部材4は、互いに等間隔をあけて配列する。隣り合う軸部材4同士の軸間距離(配置ピッチ)は、例えば150~250mmであり、本実施形態では200mmである。
【0068】
複数の軸部材4は、上端部が支持アーム7aに接続され、下端部は自由端とされている。軸部材4は、支持アーム7aに支持される上端部を中心に回動自在である。具体的に、軸部材4は、上下方向に延びる吊り下げ姿勢から、軸部材4の上端部回りに、少なくとも周方向(レイキ回転方向Tおよび反レイキ回転方向)に向けて回動自在である。軸部材4は、上端部が液面LSよりも上側に位置し、下端部が液面LSよりも下側に位置する。軸部材4の下端部は、スラッジSの内部に配置される。
【0069】
軸部材4は、上部レイキ2により跳ね上げ可能とされている。具体的に、軸部材4は、上部レイキ2の中心軸C回りの回転軌跡と重なって配置される。このため、上部レイキ2がレイキ回転方向Tに回転すると、軸部材4は上部レイキ2と接触し、上部レイキ2によってレイキ回転方向Tに押されて、軸部材4の上端部回りに回動させられる(つまり跳ね上げられる)。さらに上部レイキ2がレイキ回転方向Tに回転すると、軸部材4は上部レイキ2から離れて(上部レイキ2との接触が解除されて)、跳ね上げ姿勢が解除され、軸部材4は自重によりまた元の位置(吊り下げ姿勢)に戻る。これにより、軸部材4は、スラッジSに抜き差しされる。具体的には、軸部材4が上端部回りに回動することで、軸部材4の少なくとも下端部が、スラッジSに対して切り込みを入れるように抜き差しされる。軸部材4が、軸部材4の上端部回りに回動可能な角度範囲は、例えば、上下方向(鉛直軸)を基準(0°)として70~90°であり、本実施形態の例では80°である。
【0070】
本実施形態では、軸部材4が筒状である。軸部材4は、例えば金属製のパイプ等である。軸部材4は、軸部材支持部7の内部を通して、不図示のエアコンプレッサ等のエア供給手段と接続される。これにより、軸部材4の内部を通して、槽1内にエアが供給される。
【0071】
図2に示すように、複数の軸部材4は、最内周軸部材4aと、最外周軸部材4bと、中間軸部材4cと、を有する。
最内周軸部材4aは、複数の軸部材4のうち、最も径方向内側に配置される。最内周軸部材4aの径方向位置は、第2下部レイキアーム3bの径方向外端部の径方向位置よりも、径方向内側である。最内周軸部材4aは、第1軸部材4aと言い換えてもよい。
【0072】
最外周軸部材4bは、複数の軸部材4のうち、最も径方向外側に配置される。最外周軸部材4bの径方向位置は、第2下部レイキアーム3bの径方向外端部の径方向位置よりも、径方向外側である。最外周軸部材4bは、第2軸部材4bと言い換えてもよい。
【0073】
中間軸部材4cは、径方向において、最内周軸部材4aと最外周軸部材4bとの間に配置される。中間軸部材4cは、第3軸部材4cと言い換えてもよい。中間軸部材4cは、径方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態の例では、中間軸部材4cが8つ設けられる。
【0074】
複数の中間軸部材4cのうち、少なくとも1つの中間軸部材4cの下端部は、最内周軸部材4aの下端部よりも下側に位置する。本実施形態の例では、すべての中間軸部材4cの下端部が、最内周軸部材4aの下端部よりも下側に位置する。径方向に配列する8つの中間軸部材4cのうち、径方向内側に配置される6つの中間軸部材4cにおいては、一の中間軸部材4cの下端部よりも、一の中間軸部材4cの径方向外側に隣り合う他の中間軸部材4cの下端部が、下側に位置する。
【0075】
複数の中間軸部材4cのうち、少なくとも1つの中間軸部材4cの下端部は、最外周軸部材4bの下端部よりも下側に位置する。本実施形態の例では、すべての中間軸部材4cのうち半数以上の中間軸部材4cの下端部が、最外周軸部材4bの下端部よりも下側に位置する。径方向に配列する8つの中間軸部材4cのうち、径方向外側に配置される3つの中間軸部材4cにおいては、一の中間軸部材4cの下端部よりも、一の中間軸部材4cの径方向内側に隣り合う他の中間軸部材4cの下端部が、下側に位置する。
【0076】
本実施形態では、複数の軸部材4の下端部同士を繋ぐ形状が、下側に向けて凸となる略V字状である。
【0077】
以上説明した本実施形態のシックナー10によれば、液中ポンプ(水中ポンプ)8により、槽1から上澄み液SFを汲み出すことで、槽1内の上澄み液SFに流れが作られ、槽1内で上澄み液SFが循環させられる。これにより、上澄み液SFが白濁するなどして濁ることを抑制できる。上澄み液SFが濁ることが抑えられるので、シックナー10の後工程の設備等において、上澄み液SFを処理する時間や手間が削減される。
【0078】
また本実施形態では、配管9が、周壁1aに支持されて上澄み液SFに浸漬される浸漬管部9aを有する。
この場合、槽1の周壁1aにより浸漬管部9aが支持されるので、浸漬管部9aを上澄み液SF中に設けるための支持構造を簡素化できる。また、周壁1aに支持されることで浸漬管部9aおよび液中ポンプ8が、槽1の中心軸C回りに回転する上部レイキ2や下部レイキ3等の邪魔になりにくく、浸漬管部9aおよび液中ポンプ8を槽1内に配置しやすい。
【0079】
また本実施形態では、ポンプ吊り部11の長さを調整することにより、浸漬管部9aの弾性部9iが弾性変形して、液中ポンプ8の槽1内での上下方向の位置(設置深さ)を調整することができる。液中ポンプ8の位置をスラッジS等の高さに応じて簡単に変更でき、本実施形態の上述した作用効果が安定して奏功される。
【0080】
また本実施形態では、オーバーフロー部1eが、周壁1aの内周面から槽1の内側に突出する樋状であり、浸漬管部9aは、オーバーフロー部1eに支持されて槽1内を上下方向に延びる。
この場合、浸漬管部9aおよび液中ポンプ8を周壁1aの内周面から槽1の内側に離して配置でき、液中ポンプ8の性能が良好に維持される。液中ポンプ8により槽1内の上澄み液SFを循環させる作用効果がより安定する。
【0081】
また本実施形態では、浸漬管部9aがオーバーフロー部1eとレイキガイド1fとの間に挿入されるので、オーバーフロー部1eとレイキガイド1fとの間のスペースを有効に利用でき、かつ上部レイキ2と浸漬管部9aとの接触は抑制される。
【0082】
また本実施形態では、液中ポンプ8が、下部レイキ3よりも上側に配置される。
この場合、中心軸C回りに回転する下部レイキ3と、液中ポンプ8との接触が抑えられ、液中ポンプ8の性能が安定して維持される。また、下部レイキ3の回転により濁った上澄み液SFが、液中ポンプ8に吸い込まれることが抑制される。
【0083】
また本実施形態では、配管9が、液中ポンプ8が汲み出す上澄み液SFを槽1内に戻す槽戻し配管部9cを有する。
この場合、液中ポンプ8が汲み出した上澄み液SFを、槽戻し配管部9cによって槽1内に戻すことができる。したがって、槽1内の上澄み液SFをより安定して循環させることができる。
【0084】
また本実施形態では、中心軸C回りに回転する上部レイキ2によって、軸部材4が跳ね上げられ、自重でまた元の位置(吊り下げ姿勢)に戻る。これにより、軸部材4がスラッジSに対して抜き差しされ、スラッジSに切り込みが入れられる。切り込みが入れられることにより、スラッジSの内部に溜まったガスが抜かれて、スラッジSの浮き上がりが抑制される。つまり、スラッジSが槽1の底部に沈んだ状態が維持されるので、スラッジSを槽1の底部から回収する効率が高められる。またスラッジSが槽1の底部に沈むため、上澄み液SFの液面LSからの深さが確保されて、上澄み液SFが安定して循環しやすくなる。このため、上澄み液SFが濁ることがより抑制される。
【0085】
また、スラッジSの浮き上がりが抑えられるので、スラッジSの上側を流れる排液等の液体L中の不純物が、槽1内に安定して沈降させられやすくなる。このため、液体L中の不純物の回収効率が高められて、シックナー10の後工程の設備等に不純物が送られることを抑制できる。
【0086】
ここで、本実施形態の効果をよりわかりやすくするため、図6に示す参考例を参照する。図6の参考例では、シックナー100に軸部材4が設けられていない。このシックナー100では、スラッジSの内部に例えば硫化水素等のガスGが発生すると、ガスGがスラッジSの内部に溜まったままの状態となり、スラッジSを浮き上がらせてしまう。このため、スラッジSを槽1の底部から効率よく回収することができない。またスラッジSが浮き上がることにより、槽1内で上澄み液SFを効率よく循環させることができず、上澄み液SFが濁りやすくなる。また、浮き上がったスラッジSの上面に矢印Fで示すように液体Lが流れることで、液体L中の不純物が槽1内に沈降しにくくなり、不純物が回収しづらくなる。このような問題点(課題)を、本実施形態のシックナー10によれば解決できる。
【0087】
また本実施形態では、槽1の底部に下部レイキ3が配置されて中心軸C回りに回転するので、下部レイキ3によってスラッジSを集めることができ、槽1の底部からスラッジSをより回収しやすくできる。
【0088】
また本実施形態では、軸部材4が筒状であり、軸部材4の内部を通して、槽1内にエアが供給される。すなわち、軸部材4の内部を通して槽1内に曝気することができる。これにより、スラッジSの内部にガスGが発生することを抑えられ、スラッジSの浮き上がりがより抑制される。
【0089】
また本実施形態では、軸部材4が、水平方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。このため、複数の軸部材4によって、スラッジSに広範囲に切り込みを入れることができ、スラッジS内のガス抜きが効率よく行える。
【0090】
また本実施形態では、複数の軸部材4が、中心軸Cに直交する径方向に互いに間隔をあけて配置されるので、スラッジSに、径方向に沿う広範囲にわたって切り込みを入れることができる。スラッジSは、径方向の広範囲にわたって浮き上がりが抑制される。したがって、槽1の中央部に流入された液体Lが、径方向に移動して、槽1の径方向外端部に位置するオーバーフロー部1eに達するまでの間に、液体L中の不純物が槽1内により沈降させられやすくなる。
【0091】
また本実施形態では、複数の軸部材4のうち、中間軸部材4cの下端部が、最内周軸部材4aの下端部よりも下側に位置する。この場合、スラッジSの上面のうち、最内周軸部材4aに切り込まれる部分の上下方向の位置が、中間軸部材4cに切り込まれる部分の上下方向の位置よりも高くなる。このため、図2に示すようにスラッジSの上面には、径方向外側へ向かうにしたがい低くなる傾斜面I1が形成される。槽1の中央から槽1内に流入した液体Lが、槽1内において径方向外側へ向かうときに、液体L中の不純物は、スラッジSの傾斜面I1に沿って下側へと転がりやすくなる。これにより、液体L中の不純物の沈降が促されて、回収効率がより高められる。
【0092】
また本実施形態では、複数の軸部材4のうち、中間軸部材4cの下端部が、最外周軸部材4bの下端部よりも下側に位置する。この場合、スラッジSの上面のうち、最外周軸部材4bに切り込まれる部分の上下方向の位置が、中間軸部材4cに切り込まれる部分の上下方向の位置よりも高くなる。このため、スラッジSの上面には、径方向外側へ向かうにしたがい高くなる傾斜面I2が形成される。槽1内に沈降させられた不純物は、スラッジSの傾斜面I2によって径方向外側へ流れることが抑制されるので、槽1内にとどまりやすくなる。これにより、不純物がオーバーフロー部1eに流入することが抑えられ、不純物をスラッジSとして回収する効率が高められる。
【0093】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0094】
前述の実施形態では、シックナー10に軸部材支持部7が1つ設けられる例を挙げたが、軸部材支持部7は、周方向に間隔をあけて複数設けられてもよい。この場合、各軸部材支持部7に支持される軸部材4も、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
【0095】
前述の実施形態では、軸部材4が筒状であり、例えば金属製のパイプ等であるが、これに限らない。軸部材4は、例えば中実の棒等であってもよい。また、軸部材4は金属製に限らない。
【0096】
前述の実施形態では、槽戻し配管部9cの先端部(1つの噴出孔)から槽1内に上澄み液SFが流出される例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、槽戻し配管部9cは、槽1内に上澄み液SFをシャワー状に供給するシャワー部を有していてもよい。シャワー部は、例えば、槽戻し配管部9cの延在方向に沿って互いに間隔をあけて配列する複数の噴出孔を有する。この場合、シャワー部(複数の噴出孔)から槽1内に、上澄み液SFがシャワー状に供給されるので、槽1内の上澄み液SFの濁りをより安定して抑制する効果が得られる。
【0097】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のシックナーによれば、上澄み液が濁ることを抑制できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0099】
1…槽、1a…周壁、1b…底壁、1e…オーバーフロー部、1f…レイキガイド、2…上部レイキ、3…下部レイキ、4…軸部材、8…液中ポンプ、9…配管、9a…浸漬管部、9c…槽戻し配管部、9e…前工程送り配管部、9g…後工程送り配管部、9i…弾性部、10…シックナー、11…ポンプ吊り部、C…中心軸、L…液体、S…スラッジ、SF…上澄み液
図1
図2
図3
図4
図5
図6