(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】遊星歯車減速装置、ギアドモータ、及び駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/46 20060101AFI20230526BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230526BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20230526BHJP
F16H 55/06 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
F16H1/46
H02K7/116
H02K7/06 A
F16H55/06
(21)【出願番号】P 2019144105
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121738(JP,A)
【文献】特開2000-65165(JP,A)
【文献】特開2004-197836(JP,A)
【文献】特開平5-272596(JP,A)
【文献】特開平10-227339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/46
F16H 55/06
H02K 7/116
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転を減速して出力軸に伝達する遊星歯車減速装置であって、
前記入力軸に連結される第1の太陽歯車と、
樹脂からなる第1の遊星歯車であって、前記第1の太陽歯車と噛合して前記第1の太陽歯車の回転に伴い回転する第1の遊星歯車と、
前記第1の太陽歯車と同軸に回転可能な第1のキャリアであって、前記第1の遊星歯車を回転可能に保持する第1のキャリアと、
前記第1の遊星歯車を前記第1の太陽歯車周りに公転可能に保持する内歯車と
を備え、
前記第1のキャリアは、前記第1の遊星歯車と同軸に延びる第1の中実軸部を有し、
前記第1の遊星歯車の前記出力軸側には、前記第1のキャリアの前記第1の中実軸部を受ける第1の軸受凹部が形成され、
前記第1の遊星歯車の前記入力軸側には、前記入力軸側に突出する第1のゲート部が形成される、
遊星歯車減速装置。
【請求項2】
前記第1の遊星歯車の前記第1のゲート部は、前記第1の遊星歯車の中心軸上に位置する、請求項1に記載の遊星歯車減速装置。
【請求項3】
前記第1の遊星歯車の前記入力軸側の第1の当接面の一部に当接する環状壁を有するフランジをさらに備え、
前記フランジの前記環状壁の半径方向内側には、前記第1の遊星歯車と前記フランジとの間で前記第1の遊星歯車の前記第1のゲート部を移動させるための第1のゲート部移動空間が規定される、
請求項1に記載の遊星歯車減速装置。
【請求項4】
前記第1のキャリアは、前記第1の太陽歯車と同軸に配置される第2の太陽歯車を有し、
前記遊星歯車減速装置は、
樹脂からなる第2の遊星歯車であって、前記第2の太陽歯車と噛合して前記第2の太陽歯車の回転に伴い回転する第2の遊星歯車と、
前記第2の太陽歯車と同軸に回転可能な第2のキャリアであって、前記第2の遊星歯車を回転可能に保持する第2のキャリアと
をさらに備え、
前記内歯車は、前記第2の遊星歯車を前記第2の太陽歯車周りに公転可能に保持し、
前記第2のキャリアは、前記第2の遊星歯車と同軸に延びる第2の中実軸部を有し、
前記第2の遊星歯車の前記出力軸側には、前記第2のキャリアの前記第2の中実軸部を受ける第2の軸受凹部が形成され、
前記第2の遊星歯車の前記入力軸側には、前記入力軸側に突出する第2のゲート部が形成される、
請求項1に記載の遊星歯車減速装置。
【請求項5】
前記第2の遊星歯車の前記第2のゲート部は、前記第2の遊星歯車の中心軸上に位置する、請求項4に記載の遊星歯車減速装置。
【請求項6】
前記第1のキャリアは、前記第2の遊星歯車の前記入力軸側の第2の当接面の一部に当接する当接部を有し、
前記第1のキャリアの前記当接部の半径方向外側には、前記第2の遊星歯車と前記第1のキャリアとの間で前記第2の遊星歯車の前記第2のゲート部を移動させるための第2のゲート部移動空間が規定される、
請求項4に記載の遊星歯車減速装置。
【請求項7】
請求項1に記載の遊星歯車減速装置と、
前記遊星歯車減速装置の前記第1の太陽歯車に連結されるモータ軸を有するモータと
を備える、ギアドモータ。
【請求項8】
駆動対象物を軸方向に沿って移動させる駆動装置であって、
請求項7に記載のギアドモータと、
前記ギアドモータが取り付けられるフレームと、
前記軸方向に延び、前記ギアドモータにより回転するリードスクリューと、
前記リードスクリューに螺合するナット部を有する可動部材と
を備える、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車減速装置、ギアドモータ、及び駆動装置に係り、特に樹脂製の遊星歯車を備えた遊星歯車減速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の駆動装置に組み込まれるギアドモータでは、モータの回転を減速して大きなトルクを得るために遊星歯車減速装置が用いられることがある。このような遊星歯車減速装置では、内部に組み込まれる遊星歯車を小さくする必要があるため、射出成形などにより作製が容易な樹脂製の遊星歯車が用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この射出成形では、加熱溶融した樹脂材料を金型内に注入し、樹脂材料を冷却して固化させた後、金型から成形品が取り出される。このとき、成形品への樹脂の注入口(ゲート)によって成形品にはゲート部が残ってしまう。特許文献1に開示されている遊星歯車減速装置では、遊星歯車に形成されたゲート部をキャリアの軸部に形成された凹部の内部に収容することで、遊星歯車減速装置の軸方向の長さを短くして小型化を図っている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている遊星歯車減速装置は、キャリアの軸部に凹部を形成しているため、キャリアの軸部の半径方向の厚さが薄くなっている。このため、キャリアの軸部の強度を維持するためには、キャリアの軸部の径をある程度大きくせざるを得ず、キャリアを小さくすることに限界がある。この結果、遊星歯車減速装置全体をさらに小型化することが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、装置全体の小型化を実現することができる遊星歯車減速装置を提供することを第1の目的とする。
【0007】
また、本発明は、小型のギアドモータを提供することを第2の目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、小型の駆動装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、装置全体の小型化を実現することができる遊星歯車減速装置が提供される。この遊星歯車減速装置は、入力軸の回転を減速して出力軸に伝達するために用いられる。上記遊星歯車減速装置は、上記入力軸に連結される第1の太陽歯車と、樹脂からなる第1の遊星歯車と、上記第1の太陽歯車と同軸に回転可能な第1のキャリアと、上記第1の遊星歯車を上記第1の太陽歯車周りに公転可能に保持する内歯車とを備える。上記第1の遊星歯車は、上記第1の太陽歯車と噛合して上記第1の太陽歯車の回転に伴い回転する。上記第1のキャリアは、上記第1の遊星歯車を回転可能に保持する。上記第1のキャリアは、上記第1の遊星歯車と同軸に延びる第1の中実軸部を有する。上記第1の遊星歯車の上記出力軸側には、上記第1のキャリアの上記第1の中実軸部を受ける第1の軸受凹部が形成される。上記第1の遊星歯車の上記入力軸側には、上記入力軸側に突出する第1のゲート部が形成される。
【0010】
このような構成によれば、樹脂からなる第1の遊星歯車の第1のゲート部が第1の遊星歯車の入力軸側に形成されているので、第1のキャリアの軸部に凹部を形成する必要がなく、第1の遊星歯車の第1の軸受凹部では第1のキャリアの第1の中実軸部を受けることができる。したがって、第1のキャリアの軸部を細くしても、第1のキャリアの軸部の強度が維持される。この結果、第1のキャリアの大きさを小さくすることが可能となり、ひいては遊星歯車減速装置全体の小型化を図ることができる。
【0011】
上記第1の遊星歯車の上記第1のゲート部は、上記第1の遊星歯車の中心軸上に位置していることが好ましい。この場合には、第1の遊星歯車の成形時の熱収縮を第1の遊星歯車全体で均一にすることができ、第1の遊星歯車の寸法精度を高めることができる。
【0012】
上記遊星歯車減速装置は、上記第1の遊星歯車の上記入力軸側の第1の当接面の一部に当接する環状壁を有するフランジをさらに備えていてもよい。この場合において、上記フランジの上記環状壁の半径方向内側には、上記第1の遊星歯車と上記フランジとの間で上記第1の遊星歯車の上記第1のゲート部を移動させるための第1のゲート部移動空間が規定されていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、第1の遊星歯車が回転する際に、第1の遊星歯車の第1のゲート部が第1のゲート部移動空間内をフランジと干渉せずに移動することが可能となる。また、第1の遊星歯車の第1の当接面の一部のみがフランジの環状壁に摺接しながら第1の遊星歯車が回転することとなるため、第1の遊星歯車とフランジとの接触面積が小さくなる。したがって、第1の遊星歯車が回転する際に生じる摩擦抵抗を低減することができる。
【0014】
上記第1のキャリアは、上記第1の太陽歯車と同軸に配置される第2の太陽歯車を有していてもよい。この場合において、上記遊星歯車減速装置は、樹脂からなる第2の遊星歯車と、上記第2の太陽歯車と同軸に回転可能な第2のキャリアとをさらに備えていてもよい。上記第2の遊星歯車は、上記第2の太陽歯車と噛合して上記第2の太陽歯車の回転に伴い回転してもよい。上記第2のキャリアは、上記第2の遊星歯車を回転可能に保持してもよい。上記内歯車は、上記第2の遊星歯車を上記第2の太陽歯車周りに公転可能に保持してもよい。上記第2のキャリアは、上記第2の遊星歯車と同軸に延びる第2の中実軸部を有していてもよい。上記第2の遊星歯車の上記出力軸側には、上記第2のキャリアの上記第2の中実軸部を受ける第2の軸受凹部が形成されていてもよい。上記第2の遊星歯車の上記入力軸側には、上記入力軸側に突出する第2のゲート部が形成されていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、樹脂からなる第2の遊星歯車の第2のゲート部が第2の遊星歯車の入力軸側に形成されているので、第2のキャリアの軸部に凹部を形成する必要がなく、第2の遊星歯車の第2の軸受凹部では第2のキャリアの第2の中実軸部を受けることができる。したがって、第2のキャリアの軸部を細くしても、第2のキャリアの軸部の強度が維持される。この結果、第2のキャリアの大きさを小さくすることが可能となり、ひいては遊星歯車減速装置全体の小型化を図ることができる。
【0016】
上記第2の遊星歯車の上記第2のゲート部は、上記第2の遊星歯車の中心軸上に位置することが好ましい。この場合には、第2の遊星歯車の成形時の熱収縮を第2の遊星歯車全体で均一にすることができ、第2の遊星歯車の寸法精度を高めることができる。
【0017】
上記第1のキャリアは、上記第2の遊星歯車の上記入力軸側の第2の当接面の一部に当接する当接部を有していてもよい。この場合において、上記第1のキャリアの上記当接部の半径方向外側には、上記第2の遊星歯車と上記第1のキャリアとの間で上記第2の遊星歯車の上記第2のゲート部を移動させるための第2のゲート部移動空間が規定されていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、第2の遊星歯車が回転する際に、第2の遊星歯車の第2のゲート部が第2のゲート部移動空間内を第1のキャリアと干渉せずに移動することが可能となる。また、第2の遊星歯車の第2の当接面の一部のみが第1のキャリアの当接部に摺接しながら第2の遊星歯車が回転することとなるため、第2の遊星歯車と第1のキャリアとの接触面積が小さくなる。したがって、第2の遊星歯車が回転する際に生じる摩擦抵抗を低減することができる。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、小型のギアドモータが提供される。このギアドモータは、上述した遊星歯車減速装置と、上記遊星歯車減速装置の上記第1の太陽歯車に連結されるモータ軸を有するモータとを備えている。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、小型の駆動装置が提供される。この駆動装置は、駆動対象物を軸方向に沿って移動させるために用いられる。上記駆動装置は、上述したギアドモータと、上記ギアドモータが取り付けられるフレームと、上記軸方向に延び、上記ギアドモータにより回転するリードスクリューと、上記リードスクリューに螺合するナット部を有する可動部材とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、樹脂からなる第1の遊星歯車の第1のゲート部が第1の遊星歯車の入力軸側に形成されているので、第1のキャリアの軸部に凹部を形成する必要がなく、第1の遊星歯車の第1の軸受凹部では第1のキャリアの第1の中実軸部を受けることができる。したがって、第1のキャリアの軸部を細くしても、第1のキャリアの軸部の強度が維持される。この結果、第1のキャリアの大きさを小さくすることが可能となり、ひいては遊星歯車減速装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における駆動装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す駆動装置におけるギアドモータを上方から見た分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すギアドモータを下方から見た分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すギアドモータをモータ軸と遊星歯車の1つの中心軸とを含む平面で切断したときの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る遊星歯車減速装置を含む駆動装置の実施形態について
図1から
図4を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図4において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図4においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態における駆動装置1を示す斜視図である。本実施形態における駆動装置1は、レーザ照射型ディスク装置やスマートフォンなどの電子機器内でレンズやカメラなどの駆動対象物を必要に応じて移動させるものであるが、その用途はこれらに限られるものではない。なお、本実施形態では、便宜的に、
図1における+Z方向を「上」又は「上方」といい、-Z方向を「下」又は「下方」ということとする。
【0025】
図1に示すように、駆動装置1は、スマートフォン本体などの電子機器本体(図示せず)に取り付けられるフレーム10と、フレーム10に取り付けられたギアドモータ20と、Z方向(軸方向)に延びるリードスクリュー30と、リードスクリュー30に係合する可動部材40と、可動部材40のZ方向に沿った移動をガイドするガイドシャフト50とを有している。
【0026】
フレーム10は、上側フランジ部11と、下側フランジ部12と、固定用のネジが挿通されるネジ孔13Aが形成された固定部13とを有している。固定部13のネジ孔13Aにネジ(図示せず)を挿通させて、このネジを電子機器本体に螺合させることにより、フレーム10が電子機器本体に固定される。
【0027】
リードスクリュー30は、上側軸受31及び下側軸受32を介してそれぞれフレーム10の上側フランジ部11及び下側フランジ部12に取り付けられており、フレーム10に対して回転可能に支持されている。このリードスクリュー30は、ギアドモータ20の出力軸に連結されており、ギアドモータ20の作動により回転するようになっている。また、ガイドシャフト50は、フレーム10の上側フランジ部11と下側フランジ部12との間でZ方向に延びている。すなわち、ガイドシャフト50とリードスクリュー30とは互いに平行に延びている。
【0028】
可動部材40は、リードスクリュー30に係合するネジ溝が形成されたナット部41と、ガイドシャフト50が挿通されるシャフト孔が形成された摺動部42とを有している。摺動部42は、シャフト孔に挿通されるガイドシャフト50にガイドされつつガイドシャフト50上をZ方向に摺動するようになっている。
【0029】
図2は、ギアドモータ20を上方から見た分解斜視図であり、
図3は、
図2に示すギアドモータ20を下方から見た分解斜視図である。
図2及び
図3に示すように、ギアドモータ20は、例えばステッピングモータにより構成されるモータ21と、モータ21とリードスクリュー30との間に配置される遊星歯車減速装置22とを含んでいる。モータ21は、その上面中央から上方に延びるモータ軸24を有しており、遊星歯車減速装置22は、入力軸としてのモータ軸24の回転を減速して出力軸としてのリードスクリュー30に伝達する。
【0030】
遊星歯車減速装置22は、モータ21の上側に配置されるギアケース23を有している。このギアケース23は、下側軸受32を保持する軸受保持部231と、内周面に内歯車232を有する円筒部233と、軸受保持部231と円筒部233との間に位置する矩形板状部234とを含んでいる。本実施形態では、このギアケース23の内部に、上下に2段の遊星歯車機構が収容されている。
【0031】
図2及び
図3に示すように、遊星歯車減速装置22は、モータ21の端面に取り付けられるフランジ80を有している。このフランジ80の中央部には貫通孔81が形成されており、この貫通孔81の中央をモータ21のモータ軸24が貫通するようになっている。また、遊星歯車減速装置22は、モータ軸24に固定されてモータ軸24とともに回転するピニオン25(第1の太陽歯車)と、ピニオン25の周囲に配置されてピニオン25に噛合する3つの遊星歯車61(第1の遊星歯車)と、遊星歯車61を回転可能に保持するキャリア71(第1のキャリア)と、キャリア71に形成されたピニオン713(第2の太陽歯車)の周囲に配置されてピニオン713に噛合する3つの遊星歯車62(第2の遊星歯車)と、遊星歯車62を回転可能に保持するキャリア72(第2のキャリア)とを含んでいる。
図4は、モータ軸24と遊星歯車61の1つの中心軸とを含む平面でギアドモータ20を切断したときの部分断面図である。
【0032】
キャリア71は、キャリア本体711と、キャリア本体711から下方に延びる3つの中実軸部712(第1の中実軸部)とを有している。上述したピニオン713は、キャリア本体711の上面にモータ軸24と同軸に配置されている。
図2に示すように、遊星歯車61の上側には、キャリア71の中実軸部712を受け入れる軸受凹部612(第1の軸受凹部)が形成されている。この軸受凹部612内にキャリア71の中実軸部712が挿入されることで、3つの遊星歯車61がそれぞれキャリア71に対して回転可能に支持される。
【0033】
キャリア72は、キャリア本体721と、キャリア本体721から下方に延びる3つの中実軸部722(第2の中実軸部)と、出力軸としてのリードスクリュー30の下端部が連結される軸連結部723とを有している。
図2に示すように、遊星歯車62の上側には、キャリア72の中実軸部722を受け入れる軸受凹部622(第2の軸受凹部)が形成されている。この軸受凹部622内にキャリア72の中実軸部722が挿入されることで、3つの遊星歯車62がそれぞれキャリア72に対して回転可能に保持される。
【0034】
このような構成において、1段目(下段)の遊星歯車機構は、モータ軸24に連結されたピニオン25と、ピニオン25の周囲に配置される3つの遊星歯車61と、ギアケース23の円筒部233に形成された内歯車232と、遊星歯車61を回転可能に保持するキャリア71とにより構成される。また、2段目(上段)の遊星歯車機構は、キャリア71に形成されたピニオン713と、ピニオン713の周囲に配置される3つの遊星歯車62と、ギアケース23の円筒部233に形成された内歯車232と、遊星歯車62を回転可能に保持するキャリア72とにより構成される。
【0035】
このような構成によれば、モータ21の駆動によりモータ軸24が回転するとピニオン25が回転するため、このピニオン25に噛合している3つの遊星歯車61がキャリア71の中実軸部712を中心として回転(自転)する。また、遊星歯車61のそれぞれは、ピニオン25の反対側でギアケース23に形成された内歯車232に噛合しているため、内歯車232に沿ってピニオン25の周りを公転する。そして、これらの遊星歯車61の公転に伴い、キャリア71が中心軸周りに回転する。
【0036】
キャリア71が回転するとピニオン713も回転するため、このピニオン713に噛合している3つの遊星歯車62がキャリア72の中実軸部722を中心として回転(自転)する。また、遊星歯車62のそれぞれは、ピニオン713の反対側でギアケース23に形成された内歯車232に噛合しているため、内歯車232に沿ってピニオン713の周りを公転する。そして、これらの遊星歯車62の公転に伴い、キャリア72が中心軸周りに回転する。この結果、キャリア72の軸連結部723に連結されたリードスクリュー30が回転する。このように、本実施形態における遊星歯車減速装置22は、2段の遊星歯車機構を備えているため、モータ21のモータ軸24の回転が大きな減速比で減速され、リードスクリュー30のトルクを大きくすることができる。
【0037】
本実施形態における遊星歯車61及び遊星歯車62は樹脂製であり、例えば射出成形により作製される。
図3に示すように、遊星歯車61の下側には、成形時に生じたゲート部614(第1のゲート部)が遊星歯車61の下面615から下方に突出するように形成されている。このように、本実施形態においては、樹脂からなる遊星歯車61のゲート部614が遊星歯車61の下方に突出するように形成されているので、従来の遊星歯車減速装置のようにキャリア71の軸部に凹部を形成する必要がなく、遊星歯車61の軸受凹部612ではキャリア71の中実軸部712を受けることができる。したがって、キャリア71の軸部を細くしても、キャリア71の軸部の強度が維持される。この結果、キャリア71の大きさを小さくすることが可能となり、ひいては遊星歯車減速装置22全体の小型化を図ることができる。なお、上述した遊星歯車61のゲート部614は、遊星歯車61の中心軸上に位置していることが好ましい。ゲート部614を遊星歯車61の中心軸上に配置すれば、成形時の熱収縮を遊星歯車61全体で均一にすることができ、遊星歯車61の寸法精度を高めることができる。
【0038】
同様に、遊星歯車62の下側には、成形時に生じたゲート部624(第2のゲート部)が遊星歯車62の下面625から下方に突出するように形成されている。このように、本実施形態においては、樹脂からなる遊星歯車62のゲート部624が遊星歯車62の下方に突出するように形成されているので、従来の遊星歯車減速装置のようにキャリア72の軸部に凹部を形成する必要がなく、遊星歯車62の軸受凹部622ではキャリア72の中実軸部722を受けることができる。したがって、キャリア72の軸部を細くしても、キャリア72の軸部の強度が維持される。この結果、キャリア72の大きさを小さくすることが可能となり、ひいては遊星歯車減速装置22全体の小型化を図ることができる。なお、上述した遊星歯車62のゲート部624は、遊星歯車62の中心軸上に位置していることが好ましい。ゲート部624を遊星歯車62の中心軸上に配置すれば、成形時の熱収縮を遊星歯車62全体で均一にすることができ、遊星歯車62の寸法精度を高めることができる。
【0039】
図2及び
図3に示すように、フランジ80の外縁近傍には、上方に突出する環状壁85が形成されている。このフランジ80の環状壁85は、
図4に示すように、それぞれの遊星歯車61の下面615(第1の当接面)の一部に当接するようになっており、遊星歯車61が回転すると遊星歯車61の下面615の一部がフランジ80の環状壁85上を摺動するようになっている。フランジ80の環状壁85の半径方向内側には、遊星歯車61とフランジ80との間に空間S1が形成されており、この空間S1内に遊星歯車61のゲート部614が収容されている。したがって、遊星歯車61が回転すると、遊星歯車61のゲート部614はこの空間S1内をフランジ80と干渉せずに移動することができる。すなわち、フランジ80の環状壁85の半径方向内側の空間S1は、遊星歯車61とフランジ80との間で遊星歯車61のゲート部614を移動させるための第1のゲート部移動空間となっている。
【0040】
このように、本実施形態では、遊星歯車61のゲート部614が遊星歯車61とフランジ80との間の空間S1内を移動するように構成されているため、遊星歯車61が回転する際に、遊星歯車61のゲート部614が空間S1内をフランジ80と干渉せずに移動することが可能となる。また、遊星歯車61が回転する際には、遊星歯車61の下面615の一部のみがフランジ80の環状壁85に摺接するので、遊星歯車61とフランジ80との接触面積が小さくなる。したがって、遊星歯車61が回転する際に生じる摩擦抵抗を低減することができる。
【0041】
また、キャリア71のキャリア本体711には、上方に突出する円板状の当接部715が形成されている。このキャリア71の当接部715は、
図4に示すように、それぞれの遊星歯車62の下面625(第2の当接面)の一部に当接するようになっており、遊星歯車62が回転すると遊星歯車62の下面625の一部がキャリア71の当接部715上を摺動するようになっている。キャリア71の当接部715の半径方向外側には、遊星歯車62とキャリア71との間に空間S2が形成されており、この空間S2内に遊星歯車62のゲート部624が収容されている。したがって、遊星歯車62が回転すると、遊星歯車62のゲート部624はこの空間S2内をキャリア71と干渉せずに移動することができる。すなわち、キャリア71の当接部715の半径方向外側の空間S2は、遊星歯車62とキャリア71との間で遊星歯車62のゲート部624を移動させるための第2のゲート部移動空間となっている。
【0042】
このように、本実施形態では、遊星歯車62のゲート部624が遊星歯車62とキャリア71との間の空間S2内を移動するように構成されているため、遊星歯車62が回転する際に、遊星歯車62のゲート部624が空間S2内をキャリア71と干渉せずに移動することが可能となる。また、遊星歯車62が回転する際には、遊星歯車62の下面625の一部のみがキャリア71の当接部715に摺接するので、遊星歯車62とキャリア71との接触面積が小さくなる。したがって、遊星歯車62が回転する際に生じる摩擦抵抗を低減することができる。
【0043】
上述した実施形態における遊星歯車減速装置22は2段の遊星歯車機構を含んでいるが、遊星歯車減速装置22に含まれる遊星歯車機構の数はこれに限られるものではなく、単段の遊星歯車機構を含んでいてもよく、3段以上の遊星歯車機構を含んでいてもよい。また、それぞれの遊星歯車機構に含まれる遊星歯車の数も図示のものに限られるわけではない。
【0044】
なお、本明細書において使用した用語「上側」、「上方」、「下側」、「下方」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0045】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 駆動装置
10 フレーム
11 上側フランジ部
12 下側フランジ部
13 固定部
20 ギアドモータ
21 モータ
22 遊星歯車減速装置
23 ギアケース
24 モータ軸
25 ピニオン(第1の太陽歯車)
30 リードスクリュー
31 上側軸受
32 下側軸受
40 可動部材
41 ナット部
42 摺動部
50 ガイドシャフト
61 遊星歯車(第1の遊星歯車)
62 遊星歯車(第2の遊星歯車)
71 キャリア(第1のキャリア)
72 キャリア(第2のキャリア)
80 フランジ
85 環状壁
231 軸受保持部
232 内歯車
233 円筒部
234 矩形板状部
612 軸受凹部(第1の軸受凹部)
614 ゲート部(第1のゲート部)
615 下面(第1の当接面)
622 軸受凹部(第2の軸受凹部)
624 ゲート部(第2のゲート部)
625 下面(第2の当接面)
711 キャリア本体
712 中実軸部(第1の中実軸部)
713 ピニオン(第2の太陽歯車)
715 当接部
721 キャリア本体
722 中実軸部(第2の中実軸部)
723 軸連結部
S1 第1のゲート部移動空間
S2 第2のゲート部移動空間