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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】映像表示システムおよび映像表示方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/62 20140101AFI20230526BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230526BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
G03B21/62
G03B21/00 D
H04N5/74 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019151008
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021032973
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】岩間 進
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 直也
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221528(WO,A1)
【文献】特開2017-111412(JP,A)
【文献】特開2018-087899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0115547(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00 - 21/64
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面から投射された映像光を入光させて、動画および静止画の少なくとも一方を含む映像を表示するスクリーンと、
前記スクリーンの前記一方の面と反対側の面の全体を覆い、前記反対側の面から見る光線角度を制御する光線角度制御フィルムと、
を積層してなる映像表示板と、
前記スクリーンの前記一方の面から離れた位置に配置され、前記スクリーンに対し前記映像光を投射する映像投射装置と、
を備える映像表示システムであって、
前記スクリーンは、透明基板と、前記映像光を拡散させる拡散層と、を積層して成り、
水平面に対する前記映像光の前記スクリーンへの入射角度と、前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度との間に、下記(式1)の関係が成り立ち、
水平面に対する前記映像光の前記スクリーンへの入射角度と、前記光線角度制御フィルムにおける垂直方向の可視角度と、前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度との間に、下記(式2)の関係が成り立ち、
前記光線角度制御フィルムにおける垂直方向の可視角度と、前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度との間に、下記(式3)の関係が成り立つこと、
を特徴とする映像表示システム。
【数1】
(α1:前記スクリーンに表示される前記映像への前記映像光の最小入射角度、α2:前記スクリーンに表示される前記映像への前記映像光の最大入射角度、β:前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度。)
【数2】
(α1:前記スクリーンに表示される前記映像への前記映像光の最小入射角度、θ:前記光線角度制御フィルムにおける垂直方向の可視角度、β:前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度。)
【数3】
(θ:前記光線角度制御フィルムにおける垂直方向の可視角度、β:前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度。)
【請求項2】
前記光線角度制御フィルムは、接着層を介在して前記スクリーンと接合して成る請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項3】
前記光線角度制御フィルムは、前記接着層を介在して前記透明基板と接合して成る請求項に記載の映像表示システム。
【請求項4】
前記スクリーンは、前記映像光の投射面に、ハードコート層を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の映像表示システム。
【請求項5】
前記光線角度制御フィルムは、光透過帯と遮光帯とが交互に配置されたルーバー層を備え、前記遮光帯が前記ルーバー層の厚さ方向に対して平行または所定の角度で傾斜していることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の映像表示システム。
【請求項6】
前記光線角度制御フィルムは、
前記スクリーンに接合する前記ルーバー層と、
前記ルーバー層の前記スクリーンとの接合面と反対側の面に積層された透明保護層と、
を備えることを特徴とする請求項に記載の映像表示システム。
【請求項7】
前記拡散層は、ダイヤモンド粒子を含有していることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の映像表示システム。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の映像表示システムを用いた映像表示方法であって、
前記映像投射装置から投射された前記映像光を、前記映像表示板の前記スクリーン側から入光させ、
前記スクリーンに入光された前記映像光を、前記光線角度制御フィルムに入光させ、光線角度を制御して前記光線角度制御フィルム側の観察者に視認可能に映像を表示する映像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示システムおよび映像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品紹介や店舗の宣伝を行う用途として、映像表示装置を介してデジタルデータを画像表示または動画表示するデジタルサイネージ(電子看板)が普及している。デジタルサイネージは、ポスターや看板等の具現物を必要としないため、リアルタイム且つ低コストで自由自在の演出表現を可能とする。このような形態の一つとして、ショーウィンドウや店舗の窓ガラス等をスクリーンとし、その背面からプロジェクター投映する映像表示方法がある。また、透明なケースの内部に設けた透明なフィルム等をスクリーンとし、その背面からプロジェクター投映することにより、当該ケース内部に画像や動画等の映像を立体的に表示する映像表示方法も知られている。このようなスクリーンには、適度な透光性と光拡散性を兼備する透過型スクリーンを用いることで、プロジェクター光源を隠蔽しながら鮮明な画像や動画の表示を可能とする。
【0003】
特許文献1は、熱可塑性樹脂フィルムに金属薄膜層と光拡散層とが積層された光透過性積層体であって、光拡散層が、熱可塑性樹脂と10~60質量%の光拡散性粒子とを含有する透過投映スクリーン(透過型スクリーン)が開示されている。このような透過型スクリーンは、特に明るい使用環境での透過投影像の発色鮮明性およびホットスポット抑止効果に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-9149
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような透過型スクリーンを用いて、その背面からプロジェクター投映して映像を表示する場合、プロジェクター光源から直線方向にスクリーンを透過する直線透過光が発生する場合がある。特に、このような映像表示方法においては、プロジェクター光源を隠蔽するために、当該光源がスクリーンの上方または下方に設置されることが多い。しかしながら、光源がスクリーンの上方に設置される場合、観察者側の地面に向かってこのような直線透過光が発生するため、観察者側の地面等の意図しない位置に映像が投影される虞がある。また、光源がスクリーンの下方に設置される場合においても、観察者側の天井に向かってこのような直線透過光が発生するため、観察者側の天井等の意図しない位置に映像が投影される虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、直線透過光により意図しない位置に映像が投影される事態を抑制できる映像表示システムおよび映像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る映像表示システムは、一方の面から投射された映像光を入光させて、動画および静止画の少なくとも一方を含む映像を表示するスクリーンと、前記スクリーンの前記一方の面と反対側の面の全体を覆い、前記反対側の面から見る光線角度を制御する光線角度制御フィルムと、を積層してなる映像表示板と、前記スクリーンの前記一方の面から離れた位置に配置され、前記スクリーンに対し前記映像光を投射する映像投射装置と、を備える映像表示システムであって、前記スクリーンは、透明基板と、前記映像光を拡散させる拡散層と、を積層して成ることを特徴とする。
(2)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、水平面に対する前記映像光の前記スクリーンへの入射角度と、前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度との間に、下記(式1)の関係が成り立つことを特徴とする。
【数1】
(α1:前記スクリーンに表示される前記映像への前記映像光の最小入射角度、α2:前記スクリーンに表示される前記映像への前記映像光の最大入射角度、β:前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度。)
(3)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、水平面に対する前記映像光の前記スクリーンへの入射角度と、前記光線角度制御フィルムにおける垂直方向の可視角度と、前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度との間に、下記(式2)の関係が成り立つことを特徴とする。
【数2】
(α1:前記スクリーンに表示される前記映像への前記映像光の最小入射角度、θ:前記光線角度制御フィルムにおける垂直方向の可視角度、β:前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度。)
(4)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、前記光線角度制御フィルムにおける垂直方向の可視角度と、前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度との間に、下記(式3)の関係が成り立つことを特徴とする。
【数3】
(θ:前記光線角度制御フィルムにおける垂直方向の可視角度、β:前記光線角度制御フィルムの最大光線透過率角度。)
(5)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、前記光線角度制御フィルムは、接着層を介在して前記スクリーンと接合して成る。
(6)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、前記光線角度制御フィルムは、前記接着層を介在して前記透明基板と接合して成る。
(7)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、前記スクリーンは、前記映像光の投射面に、ハードコート層を備えることを特徴とする。
(8)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、前記光線角度制御フィルムは、光透過帯と遮光帯とが交互に配置されたルーバー層を備え、前記遮光帯が前記ルーバー層の厚さ方向に対して平行または所定の角度で傾斜していることを特徴とする。
(9)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、前記光線角度制御フィルムは、前記スクリーンに接合する前記ルーバー層と、前記ルーバー層の前記スクリーンとの接合面と反対側の面に積層された透明保護層と、を備えることを特徴とする。
(10)別の実施形態に係る映像表示システムでは、好ましくは、前記拡散層は、ダイヤモンド粒子を含有していることを特徴とする。
(11)一実施形態に係る映像表示方法は、上述のいずれか1つの映像表示システムを用いた映像表示方法であって、前記映像投射装置から投射された前記映像光を、前記映像表示板の前記スクリーン側から入光させ、前記スクリーンに入光された前記映像光を、前記光線角度制御フィルムに入光させ、光線角度を制御して前記光線角度制御フィルム側の観察者に視認可能に映像を表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、直線透過光により意図しない位置に映像が投影される事態を抑制できる映像表示システムおよび映像表示方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る映像表示システムの斜視図を示す。
図2図2は、図1に示す映像表示システムにおけるA-A線断面図を示す。
図3図3は、映像表示板の一部拡大断面図(3A)および当該断面図(3A)中の領域Bの拡大図(3B)をそれぞれ示す。
図4図4は、ルーバー層の一部拡大断面図(4A)およびルーバー層の製造方法を説明するための図(4B)をそれぞれ示す。
図5図5は、光線角度制御フィルムの透過率の角度依存性を表したグラフを示す。
図6図6は、本実施形態に係る映像表示システムの変形例1を説明するための図を示す。
図7図7は、図3(3A)の映像表示板の変形例2の一部拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る映像表示システムの斜視図を示す。図2は、図1に示す映像表示システムにおけるA-A線断面図を示す。図3は、映像表示板の一部拡大断面図(3A)および当該断面図(3A)中の領域Bの拡大図(3B)をそれぞれ示す。
【0012】
映像表示システム1は、図1図3に示すように、一方の面から投射された映像光L1を入光させて、動画および静止画の少なくとも一方を含む映像を表示するスクリーン12と、スクリーン12の一方の面と反対側の面の全体を覆い、当該反対側の面から見る光線角度を制御する光線角度制御フィルム20と、を積層してなる映像表示板10と、スクリーン12の一方の面から離れた位置に配置され、スクリーン12に対し映像光L1を投射する映像投射装置60と、を備える。また、スクリーン12は、図3に示すように、透明基板18と、映像光L1を拡散させる拡散層16と、を積層して構成されている。映像投射装置60は、好ましくは、スクリーン12の背面側且つ上方に設けられる。
【0013】
なお、本実施形態では、映像表示板10に平行な面を、互いに直交するY軸およびZ軸を含むYZ平面とし、YZ平面に垂直な軸をX軸と定義する(図1参照)。また、図1に示すように、YZ平面のうち、映像表示システム1の高さ方向に平行な軸をZ軸とし、当該Z軸に直交する軸をY軸と定義する。また、本実施形態では、映像表示板10(スクリーン12および光線角度制御フィルム20)に対し、観察者P側を正面側とし、映像投射装置60側を背面側と定義する(図2参照)。また、本願では、「断面」あるいは「縦断面」とは、映像表示システム1をXZ平面に沿って切断する断面を意味する。
【0014】
映像表示システム1の概略構成および映像表示システム1の構成部材について、より詳しく説明する。
【0015】
(1)映像表示システムの構成の概略
この実施形態において、映像表示システム1は、例えば、漫画やアニメーションに登場するキャラクターや実在の人物等の映像を立体的に表示するシステムである。なお、本実施形態において、「立体的に表示」とは、キャラクター等が空中に浮遊しているように見える表示を意味する。映像表示システム1は、好ましくは、映像表示板10と、ケース部材40と、映像投射装置60と、を備える。映像表示システム1は、映像投射装置60から投射された映像光L1を、映像表示板10のスクリーン12側から入光させる。そして、映像表示システム1は、スクリーン12に入光した映像光L1を、光線角度制御フィルム20に入光させ、光線角度(以下、「可視角度」とも称する)を制御して光線角度制御フィルム20側の観察者Pに視認可能に映像を表示する。より具体的には、映像表示システム1において、映像投射装置60から出力された映像は、映像表示板10のスクリーン12に投影される。観察者Pは、このようにしてスクリーン12に投影された映像を、光線角度制御フィルム20を介して視認することができる(図2参照)。
【0016】
(2)ケース部材
ケース部材40は、好ましくは、アクリル板等の樹脂で形成され、映像表示板10と、映像投射装置60と、を収容する筐体である。ケース部材40は、台座42と、表示板載置部43と、表示板支持部46と、投射装置支持部48と、を備える(図1および図2参照)。台座42は、表示板載置部43から映像表示板10の背面側へ延出した部材である。表示板載置部43は、映像表示板10を載置する部材である。また、表示板載置部43のうち映像表示板10の背面側の領域は、映像表示板10に投影されるキャラクター等を仮想的に載置する台としても機能する。すなわち、表示板載置部43うち映像表示板10の背面側の領域は、人形や模型を展示可能に収容するディスプレイケースのベース基材のように見せることができる。また、表示板載置部43は、例えば、映像表示板10の背面側の領域等の少なくとも一部の領域に、模様や着色を施していても良い。なお、台座42および表示板載置部43は、一体成形された部材であることが好ましい。
【0017】
表示板支持部46は、映像表示板10を支持する部材である(図1および図2参照)。表示板支持部46は、図1に示すように、表示板載置部43の両端に立設され、映像表示板10を囲むように形成された略U字型の部材である。投射装置支持部48は、映像投射装置60を支持する部材である(図1および図2参照)。投射装置支持部48は、映像投射装置60から投射された映像光L1をスクリーン12へ投射可能な角度および向きで、映像投射装置60が取り付けられる。投射装置支持部48は、好ましくは、映像投射装置60が取り付けられる投射装置支持面480と、当該投射装置支持面480と表示板支持部46とを連結する連結面482と、を有し、側面視にて略V字型に屈曲した部材である(図2参照)。なお、投射装置支持部48は、映像投射装置60を、映像光L1をスクリーン12へ投射可能な角度および向きで取り付け可能であれば、その形状および位置は特に制約されない。
【0018】
(3)映像投射装置
映像投射装置60は、映像表示板10のスクリーン12の一方の面から離れた位置に配置され、スクリーン12に対し映像光L1を投射する装置であり、好ましくは、スクリーン12に映像光L1を背面(前述の一方の面)側から投射する装置である(図2参照)。映像投射装置60は、好ましくは、ブルーレイディスク(BD)、DVD、メモリ等のメディアに保存されたデータまたはLAN回線により配信されたデータに基づくキャラクター等の映像を映像光L1として出力するプロジェクターである。映像投射装置60は、投射装置支持部48に設けられる。映像投射装置60は、映像表示板より上方に設けられることが好ましい。このように映像投射装置60を映像表示板10の背面側且つ上方に配置することにより、観察者Pから映像表示板10を通して映像投射装置60が視認される事態を抑制することができる。
【0019】
(4)映像表示板
映像表示板10は、スクリーン12と、光線角度制御フィルム20と、が積層された部材である(図3参照)。映像表示板10は、図3に示すように、接着層28を介在して、スクリーン12と光線角度制御フィルム20とが接合されている。接着層28は、後述するスクリーン12の透明基板18と、後述する光線角度制御フィルム20のルーバー層22と、を接合する層である。接着層28は、好ましくは、硬化後に透明性を有する接着剤で形成される。より具体的には、接着層28を形成する接着剤は、硬化後の接着層28の単体における光線透過率が65%以上であるものが好ましく、当該光線透過率が80%以上であるものがより好ましい。このような接着剤としては、硬化後に透明性を有する、熱硬化型接着剤、多液反応型接着剤、紫外線硬化型接着剤等が好ましく、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、メラミン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等を好適に挙げることができる。また、接着層28は、後述するルーバー層22と同種の接着剤で形成されることがより好ましい。このように接着層28を形成することにより、ルーバー層22との良好な接着性を得ることができるとともに、ルーバー層22と接着層28との屈折率の差による映像の視認性の低下を抑制することができる。なお、この実施形態においては、接着層28は、好ましくは、シリコーン系接着剤(屈折率1.42)により形成される。
【0020】
(6-1)スクリーン
スクリーン12は、一方の面から投射された映像光L1を入光して、動画および静止画の少なくとも一方を含む映像を表示する部材である。スクリーン12は、映像投射装置60により背面(前述の一方の面)側から投射された映像光L1に基づく映像を、正面側から視認可能な透過型スクリーンである。スクリーン12は、透明基板18と、拡散層16と、を積層して成るスクリーンである(図3参照)。また、スクリーン12は、好ましくは、映像光L1の投射面に、ハードコート層14を備える。なお、スクリーン12は、図3中のX方向に光を透過させたときの光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。また、スクリーン12は、HAZE値が5~30であることが好ましく、HAZE値が10~20であることがより好ましい。
【0021】
透明基板18は、透明性を有する板状部材であり、好ましくは、平面状または曲面状の板、或いは、可塑性を有するシート状部材である。透明基板18は、好ましくは、高分子樹脂またはガラスで構成される。高分子樹脂としては、可視光の透過性に優れた樹脂が好ましく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を好適に挙げることができる。高分子樹脂には、例えば、トリエチレングリコール-ビス-2-エチルブチレート等の可塑剤が添加されていても良い。また、ガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス等の酸化ガラスが好ましく、ケイ酸塩ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラスが好ましい。この実施形態においては、透明基板18は、ポリエチレンテレフタレート(PET)(屈折率1.6)により構成される。なお、透明基板18の厚さは、特に制約されないが、10μm~50mmが好ましく、20μm~30mmがより好ましい。
【0022】
拡散層16は、映像光L1を拡散させる層であり、好ましくは、ダイヤモンド粒子17を含有する層である(図3(3B)参照)。この実施形態においては、拡散層16に含有されるダイヤモンド粒子17の屈折率は2.42とする。ダイヤモンド粒子17としては、好ましくは、天然ダイヤモンド粒子または人工ダイヤモンド粒子である。人口ダイヤモンドとしては、単結晶ダイヤモンドまたは多結晶ダイヤモンドが好ましく、爆射法で得られたグラファイト相を有する単結晶ナノダイヤモンドを酸化処理して得られるものがより好ましい。このような単結晶ナノダイヤモンドは、ダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、黒く着色している。このため、拡散層16に含有されるダイヤモンド粒子17としては、酸化処理を施すことにより、グラファイト相がほとんど除去されたナノダイヤモンド粒子を用いることが好ましい。また、拡散層16は、溶剤等との親和性を高めるために、ダイヤモンド粒子17として、ダイヤモンド粒子の表面をケイ素またはフッ素で修飾したものを用いても良い。特に、フッ素化ダイヤモンド粒子は、高分子樹脂への分散性に優れており、拡散層16に含有されるダイヤモンド粒子17として好適である。ダイヤモンド粒子17のメジアン径は、好ましくは、0.01~1μmであり、より好ましくは、0.01~0.03μmである。なお、上述のナノダイヤモンドを拡散層16に含有させる場合は、上述のメジアン径の範囲に含まれるように、ナノダイヤモンドの粒子を凝集させたものをダイヤモンド粒子17として、拡散層16に含有させることが好ましい。
【0023】
ハードコート層14は、図3(3A)に示すように、スクリーン12における映像光L1の投影面に設けられる層であり、ハードコート剤を拡散層16の上に塗布することにより形成される。なお、スクリーン12は、ハードコート層14と拡散層16との間に、密着性を高めるための中間層を設けても良い。ハードコート剤の塗布方法としては、特に制約されないが、例えば、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラコート法等を好適に挙げることができる。
【0024】
(6-2)光線角度制御フィルム
光線角度制御フィルム20は、スクリーン12の映像光L1が投射される面と反対側の面の全体を覆い、当該反対側の面から出射した光線角度を制御するフィルムである。光線角度制御フィルム20は、好ましくは、ルーバー層22と、透明保護層26と、を備える。また、光線角度制御フィルム20は、図3に示すように、好ましくは、フィルム接着層24を介在して、ルーバー層22と透明保護層26とが接合されている。フィルム接着層24は、ルーバー層22と透明保護層26とを接合する層であり、好ましくは、硬化後に透明性を有する接着剤で形成される。フィルム接着層24を形成する接着剤は、上述の接着層28を形成する接着剤と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、この実施形態においては、フィルム接着層24は、好ましくは、シリコーン系接着剤(屈折率1.42)により形成される。
【0025】
図4は、ルーバー層の一部拡大断面図(4A)およびルーバー層の製造方法を説明するための図(4B)をそれぞれ示す。
【0026】
ルーバー層22は、光透過帯30と遮光帯32とがZ方向において交互に配置された層である(図4(4A)参照)。ルーバー層22における光透過帯30および遮光帯32は、いずれもY方向に帯状に延びている。遮光帯32は、ルーバー層22の厚さ方向(X方向)に対して平行または所定の角度Sで傾斜していることが好ましく、当該厚さ方向に対して所定の角度Sで傾斜していることがより好ましい(図4(4A)参照)。
【0027】
光透過帯30の材料としては、好ましくは、透明性が高い樹脂が用いられる。より具体的には、光透過帯30のみに対して、図4(4A)中のX方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上、好ましくは85%以上であるような、高い透明性を有する樹脂材料が好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、透明性が高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられ、より具体的には、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましく、シリコーンゴムがより好ましい。この実施形態においては、光透過帯30は、シリコーンゴム(屈折率1.42)により構成される。
【0028】
遮光帯32の材料としては、好ましくは、光透過帯30の材料として上述した樹脂を基材とし、この基材に顔料や染料等の着色剤を添加してなる着色樹脂が用いられる。遮光帯32の色調は、遮光帯32における好ましい遮光性が得られれば良く、例えば、黒、赤、黄、緑、青、水色等とすることができる。遮光帯32の色調は、着色剤の種類および添加量によって調整でき、より具体的には、遮光帯32のみに対して、X方向に光を透過させたときの光線透過率が40%以下、好ましくは、10%以下となるような遮光性を有するものである。着色剤の具体例としては、カーボンブラック、ベンカラ、酸化鉄、酸化チタン、黄色酸化鉄、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー等の一般的な有機顔料或いは浮き顔料が挙げられる。着色剤は1種でも良く、2種以上を用いても良い。また、着色剤として黒色顔料を用いない場合は、良好な遮光性を得るために白色顔料を併用することが好ましい。
【0029】
光透過帯30の幅W1および遮光帯32の幅W2は、光透過帯30と遮光帯32との界面に対して垂直な方向における幅とする(図4(4A)参照)。ルーバー層22において、X方向に平行な光線の透過率は、ルーバー層22における光透過帯30の幅W1と遮光帯32の幅W2との比、およびルーバー層22の表面の法線方向(X方向)と遮光帯32とのなす角度S(以下、「ルーバー角度S」とも称する)の影響を受ける。光透過帯30の幅W1は、50μm~300μmが好ましく、150μmがより好ましい。また、遮光帯32の幅W2は、5μm~30μmが好ましく、15μmがより好ましい。ルーバー層22のX方向における厚さTは、100~350μmが好ましく、190~290μmがより好ましい。
【0030】
ルーバー層22の製造方法としては、図4(4B)に示すように、まず、光透過帯30の構成材料からなる厚さがW1の第1シート30aと、遮光帯32の構成材料からなる厚さがW2の第2シート32aと、を交互に複数枚積層し、加熱および加圧してこれら複数枚のシートが一体化してなるブロック体を形成する。次に、当該ブロック体をシート表面に対して所定の角度S1(S1=90°+S)となる斜めの切断面でスライスすることにより、ルーバー層22を得ることができる。なお、スライスする際の厚さ(スライス幅)は、上述の厚さTと同一となることが好ましい。
【0031】
透明保護層26は、ルーバー層22のスクリーン12との接合面と反対側の面に積層された、ルーバー層22を保護する層である(図3参照)。透明保護層26の材料としては、好ましくは、透明性が高い樹脂が用いられる。より具体的には、透明保護層26の単体に対して、X方向に光を透過させたときの光線透過率が、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上であるような、高い透明性を有する樹脂材料が好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に、シクロオレフィンポリマー)、セルロース系樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂がより好ましい。この実施形態においては、透明保護層26は、ポリカーボネート(屈折率1.6)により構成される。なお、透明保護層26のX方向における厚さは、薄すぎると十分な保護機能が得られず、厚いほど光線透過率が低下するため、0.01~0.5mm程度が好ましく、0.1~0.2mm程度がより好ましい。また、透明保護層26を構成する樹脂に紫外線吸収剤を含有させても良い。紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム系紫外線吸収剤、酸化亜鉛系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等、透明性を損なわないものが好ましい。なお、これらの紫外線吸収剤は微粒子化されたものが好ましい。透明保護層26に含有される紫外線吸収剤の粒子径および添加量は、透明保護層26の好適な光線透過率が得られる範囲において適宜設定することができる。
【0032】
このように構成された映像表示板10は、スクリーン12に光線角度制御フィルム20が積層されているため、スクリーン12に表示される映像を見る観察者Pの光線角度を所定範囲に制御することにより、スクリーン12からの直線透過光を遮蔽し、当該直線透過光により意図しない位置へ映像が投影される事態を抑制することができる。また、映像表示板10は、接着層28を介在して、スクリーン12と光線角度制御フィルム20とが接合されているため、スクリーン12と光線角度制御フィルム20との間に空気層が存在する事態を抑制できる。スクリーン12と光線角度制御フィルム20との間に空気層が存在する場合は、スクリーン12および光線角度制御フィルム20と空気との屈折率の差が大きいために、スクリーン12に投影される映像に加えて、スクリーン12および光線角度制御フィルム20と空気との各界面において光の屈折率の差による散乱が発生して映像が生じるため、映像が二重像として観察される事態が発生する虞があった。しかしながら、スクリーン12と光線角度制御フィルム20とが接着層28を介して接合されている場合、スクリーン12および光線角度制御フィルム20と接着層28との屈折率の差が小さいため、スクリーン12および光線角度制御フィルム20と接着層28との各界面における光の屈折率の差による散乱を低減することができ、二重像の発生を抑制することができる。
【0033】
次に、光線角度制御フィルム20の角度特性について、詳細に説明する。
【0034】
図5は、光線角度制御フィルムの透過率の角度依存性を表したグラフを示す。
【0035】
光線角度制御フィルム20は、透過角度域の入射角度から入射する光は透過させるが、非透過角度域の入射角度から入射する光は透過させないという特性を有するものである。光線角度制御フィルム20は、好ましくは、後述の最大光線透過率角度βを中心に、θ1~θ2の範囲の入射角度で入射する光は透過させるが、θ1~θ2の範囲を外れた角度域θα(θα<θ1およびθα>θ2)の入射角度で入射する光は透過させないという特性を有する(図4(4A)参照)。すなわち、光線角度制御フィルム20を透過して観察者Pが視認可能な視野範囲は、θ1~θ2の範囲となり、当該視野範囲の角度である可視角度θは、(θ2-θ1)となる(図3(3A)参照)。このような光線角度制御フィルム20の透過率(全光線透過率)は、例えば、図5に示すように、最大光線透過率角度βで全光線透過率が最も高くなり、最大光線透過率角度βから遠ざかるにしたがって全光線透過率が低下するような角度依存性を有している。なお、理論的には、図5のグラフにおいて、光線角度制御フィルム20の全光線透過率が0%より大きくなる角度範囲が可視角度となるが、全光線透過率が低い領域は、光の回折の影響を受けて全光線透過率の値が計測されている虞があるため、本実施形態においては、全光線透過率が5%以上となるθ1~θ2の範囲の角度(θ2-θ1)を、光線角度制御フィルム20の可視角度θとする。また、最大光線透過率角度βおよび可視角度θは、光線角度制御フィルム20の設計によって適宜設定することが可能であり、どのような角度にするかはスクリーン12の使用目的に応じて適宜決定すればよい。また、最大光線透過率角度βで入射する光が光線角度制御フィルム20を透過する時の透過率は、60%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。なお、本実施形態において、入射角度とは、映像表示板10(スクリーン12および光線角度制御フィルム20)の表面の法線方向(X方向)と入射する光L1、L11,L12とのなす角度を示す。
【0036】
このように設計されたルーバー層22からなる光線角度制御フィルム20は、光透過帯30と遮光帯32との接合面に平行な光L1(角度βで入射する光)を中心として接合面に対して(β-θ1)の傾きを有する光L11から当該接合面に対して(θ2-β)の傾きを有する光L12までの角度域の光を透過させるが、当該接合面に対する傾きがこの範囲を外れた角度域からの光は透過させない特性を有する。このようなルーバー層22からなる光線角度制御フィルム20により、光が透過する角度(可視角度)θが(θ2-θ1)に制限される。すなわち、観察者Pが視認可能な視野範囲は、βを中心にθ1~θ2の範囲に制限される。
【0037】
映像表示システム1においては、水平面(XY平面)に対する映像光L1のスクリーン12への入射角度α1,α2と、光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度βとの間に、下記(式1)の関係が成り立つことが好ましい。ここで、α1はスクリーン12に表示される映像100への映像光L1の最小入射角度(°)を、α2はスクリーン12に表示される映像100への映像光L1の最大入射角度(°)を、βは光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度(°)を、それぞれ意味する(図3(3A)参照)。すなわち、本実施形態では、映像光L1は、スクリーン12の背面側且つ上方からスクリーン12へ投射されるため、最小入射角度α1は、映像100の上端に投射される映像光L1の入射角度であり、最大入射角度α2は、映像100の下端に投射される映像光L1の入射角度である(図3(3A)参照)。
【0038】
【数4】
【0039】
また、映像表示システム1においては、水平面(XY平面)に対する映像光L1のスクリーン12への入射角度α1と、光線角度制御フィルム20における垂直方向(Z方向)の可視角度θと、光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度βとの間に、下記(式2)の関係が成り立つことが好ましい。ここで、α1はスクリーン12に表示される映像100への映像光L1の最小入射角度(°)を、θは光線角度制御フィルム20における垂直方向の可視角度(°)を、βは光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度(°)を、それぞれ意味する(図3(3A)参照)。
【0040】
【数5】
【0041】
また、映像表示システム1においては、光線角度制御フィルム20における垂直方向(Z方向)の可視角度θと、光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度βとの間に、下記(式3)の関係が成り立つことが好ましい。ここで、θは光線角度制御フィルム20における垂直方向の可視角度(°)を、βは光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度(°)を、それぞれ意味する(図3(3A)参照)。
【0042】
【数6】
【0043】
映像表示システム1においては、光線角度制御フィルム20として、上述の(式3)を満たすような可視角度θおよび最大光線透過率角度βが設定されたフィルムを採用することが好ましい。また、映像表示システム1は、上述の(式1)および(式2)を満たすように、各構成要素が配置されていることが好ましい。映像表示システム1をこのように構成することにより、背面風景の視認が容易になるため、スクリーン12に表示されるキャラクター等の映像100(以下、「投影像100」とも称する)が空中に浮遊しているように観察者Pに視認させることができる。なお、背面風景とは、観察者Pにより、スクリーン12を透過して投影像100の背面に視認される風景のことを意味する。また、映像表示システム1をこのように構成することにより、可視角度θの広範囲に渡って良好な投影像100を観察者Pに視認させることができる。一般に、スクリーン12を用いて、その背面から映像光L1を投映して映像100を表示する場合、映像投射装置60から直線方向にスクリーン12を透過する直線透過光が発生する場合がある。このような直線透過光を遮蔽するために、低透過率のフィルムをスクリーン12に積層させることが考えられるが、低透過率のフィルムにより、背面風景の視認が困難になり、投影像100が空中に浮遊しているように観察者Pに視認させることが難しい。しかしながら、映像表示システム1は、上述の(式1)~(式3)を満たすように各構成要素が配置されることにより、直線透過光の発生を低減し、天井や床等の意図しない位置に映像が投影される事態を抑制することができる。
【0044】
(各実施形態の作用・効果)
以上説明したように、映像表示システム1は、一方の面から投射された映像光L1を入光させて、動画および静止画の少なくとも一方を含む映像を表示するスクリーン12と、スクリーン12の一方の面と反対側の面の全体を覆い、反対側の面から見る光線角度を制御する光線角度制御フィルム20と、を積層してなる映像表示板10と、スクリーン20の一方の面から離れた位置に配置され、スクリーン20に対し映像光L1を投射する映像投射装置60と、を備える。また、スクリーン20は、透明基板18と、映像光L1を拡散させる拡散層16と、を積層して成る部材である。
【0045】
映像表示システム1をこのように構成することによって、映像表示板10は、スクリーン12に光線角度制御フィルム20が積層されているため、スクリーン12に表示される映像を見る観察者Pの光線角度を制御することにより、スクリーン12からの直線透過光により意図しない位置に映像100が投影される事態を抑制することができる。
【0046】
また、映像表示システム1は、水平面(XY平面)に対する映像光L1のスクリーン12への入射角度α1,α2と、光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度βとの間に、(式1)の関係が成り立つよう構成されるため、背面風景の視認が容易となり、スクリーン12に表示されるキャラクター等の映像100が空中に浮遊しているように観察者Pに視認させることができる。
【0047】
また、映像表示システム1は、水平面(XY平面)に対する映像光L1のスクリーン12への入射角度α1と、光線角度制御フィルム20における垂直方向の可視角度θと、光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度βとの間に、(式2)の関係が成り立つよう構成されるため、直線透過光の発生を低減し、直線透過光により意図しない位置に映像100が投影される事態を抑制することができる。
【0048】
また、映像表示システム1は、光線角度制御フィルム20における垂直方向の可視角度θと、光線角度制御フィルム20の最大光線透過率角度βとの間に、(式3)の関係が成り立つよう構成されるため、スクリーン12からの直線透過光により意図しない位置に映像100が投影される事態をさらに抑制することができる。
【0049】
また、映像表示システム1を構成する光線角度制御フィルム20は、接着層28を介在してスクリーン12と接合して構成されることにより、スクリーン12および光線角度制御フィルム20と接着層28との屈折率の差が小さくなるため、スクリーン12および光線角度制御フィルム20と接着層28との各界面における光の屈折を低減することができ、二重像の発生を抑制することができる。
【0050】
また、映像表示システム1を構成する光線角度制御フィルム20は、接着層28を介在して透明基板18と接合して構成されることにより、光線角度制御フィルム20との良好な接着性を得ることができるとともに、透明基板18および光線角度制御フィルム20と接着層28との各界面における光の屈折を低減することができ、二重像の発生を抑制することができる。
【0051】
また、映像表示システム1を構成するスクリーン12は、映像光L1の投射面に、ハードコート層14を備えるため、スクリーン12における映像光L1の投射面を保護することができる。
【0052】
また、映像表示システム1を構成する光線角度制御フィルム20は、光透過帯30と遮光帯32とが交互に配置されたルーバー層22を備え、遮光帯32がルーバー層22の厚さ方向(X方向)に対して平行または所定の角度で傾斜している(図4(4A)参照)。映像表示システム1をこのように構成することによって、スクリーン12からの直線透過光を遮蔽し、当該直線透過光により意図しない位置に映像100が投影される事態を抑制することができる。また、映像表示システム1によれば、遮光帯32の傾斜角度を調整することにより、光線角度制御フィルム20の可視角度θを、映像表示システム1の使用目的に応じた所望の角度範囲に設定することができる。
【0053】
また、映像表示システム1を構成する光線角度制御フィルム20は、スクリーン12に接合するルーバー層22と、ルーバー層22のスクリーン12との接合面と反対側の面に積層された透明保護層26と、を備えるため、透明保護層26によりルーバー層22を保護することができる。
【0054】
また、映像表示システム1を構成するスクリーン12の拡散層16は、ダイヤモンド粒子17を含有しているため、スクリーン12に入射した映像光L1を広範囲に拡散させることができる。
【0055】
また、映像表示システム1を用いた映像表示方法は、映像投射装置60から投射された映像光L1を、映像表示板10のスクリーン12側から入光させ、スクリーン12に入光された映像光L1を、光線角度制御フィルム20に入光させ、光線角度を制御して光線角度制御フィルム20側の観察者Pに視認可能に映像100を表示する。このような方法を用いて映像100を表示することにより、映像表示板10は、スクリーン12に光線角度制御フィルム20が積層されているため、スクリーン12に表示される映像を見る観察者Pの光線角度を制御することにより、スクリーン12からの直線透過光により意図しない位置に映像100が投影される事態を抑制することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0057】
先述の実施形態では、映像投射装置60は、スクリーン12の背面側且つ下方に設けられていたが、映像表示装置60の配置はこれに限定されない。
【0058】
図6は、本実施形態に係る映像表示システムの変形例1を説明するための図を示す。
【0059】
変形例1に係る映像表示システム1aは、上述の映像表示システム1と異なり、映像投射装置60を、スクリーン12の背面側且つ下方に備える(図6参照)。このように構成された映像表示システム1aにおいても、上述の映像表示システム1と同様の作用効果を奏する。なお、変形例1に係る映像表示システム1aにおいて、映像表示板10の配置は、上述の実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、変形例1に係る映像表示システム1aにおいて、ケース部材40は、映像投射装置60および映像表示板10を上述のように配置可能な部材であれば、特に制約されない。
【0060】
また、変形例1に係る映像表示システム1aにおいては、図6の垂直方向(Z方向)において、水平面(XY平面)より下側を+方向、水平面より上側を-方向とみなして算出されたα1,α2,β,θ,θ1,θ2等の角度が、上述の(式1)~(式3)を満たすことが好ましい。映像表示システム1aをこのように構成することによって、スクリーン12からの直線透過光により意図しない位置に映像100aが投影される事態を抑制することができる。なお、上述の(式1)~(式3)を満たすように構成された映像表示システム1aにおいては、図6に示すように、視野範囲が水平面より下側を中心に広がるため、観察者Pが少し下方から映像表示板10を見上げる場合に、より好適である。
【0061】
また、先述の実施形態では、映像表示板10をZ軸方向に平行に配置していたが、映像表示板10の配置はこれに限定されない。例えば、映像表示板10をX軸方向に平行に配置しても良い。光線角度制御フィルム20が上側となるように、映像表示板10をX軸方向に平行に配置した場合、映像投射装置60は、映像表示板10の下方に配置すれば良く、映像表示板10の下方、且つ、中央より右側または左側に配置されることが好ましい。この場合、観察者Pは、映像表示板10の上方から映像100を視認すれば良い。また、光線角度制御フィルム20が下側となるように、映像表示板10をX軸方向に平行に配置した場合、映像投射装置60は、映像表示板10の上方に配置すれば良く、映像表示板10の上方、且つ、中央より右側または左側に配置されることが好ましい。この場合、観察者Pは、映像表示板10の下方から映像100を視認するよう構成すれば良い。
【0062】
また、例えば、映像表示板10をY軸方向に平行に配置しても良い。この場合、映像表示板10は、ルーバー層22の光透過帯30および遮光帯32の長さ方向(ルーバー層222の厚さ方向)がZ軸に平行になるように配置されることが好ましい。このように映像表示板10が配置された映像表示システム1,1aにおいて、映像投射装置60は、映像表示板10の中央より右側または左側に配置されることが好ましい。
【0063】
また、映像表示システム1は、映像表示板10のスクリーン12の背面側且つ上方に、反射部材を備えていても良い。この場合、映像投射装置60は、台座42のうち、映像光L1が反射部材に向かって投射可能な位置に載置されることが好ましい。反射部材は、映像投射装置60から投射された映像光L1を反射し、反射した映像光L1をスクリーン12へ投射するミラーであることが好ましい。映像表示システム1をこのように構成することによって、映像投射装置60とスクリーン12とをコンパクトにケース部材40に収容することができるため、映像表示システム1の小型化を実現することができる。
【0064】
また、先述の実施形態では、映像表示板10は、接着層28を介在して、スクリーン12の透明基板18と光線角度制御フィルム20とが接合して構成されていたが、本発明はこれに限定されない。
【0065】
図7は、図3(3A)の映像表示板の変形例2の一部拡大断面図を示す。
【0066】
変形例2に係る映像表示システム1bが備える映像表示板10aは、図7に示すように、接着層28を介在して、スクリーン12aの拡散層16と光線角度制御フィルム20とが接合して構成されていても良い。この場合、スクリーン12aのハードコート層14は、映像光L1の投影面である透明基板18上に設けられる層であり、ハードコート剤を透明基板18の上に塗布することにより形成されれば良い。
【0067】
また、映像表示システム1,1a,1b(以後、総称する場合には、「映像表示システム1等」と称する)において、スクリーン12,12aは、ハードコート層14を備えなくても良い。
【0068】
また、映像表示板10,10aは、光線角度制御フィルム20の透明保護層26のルーバー層22と反対側(観察者P側)の面に、ハードコート層をさらに備えても良い。
【0069】
また、先述の実施形態では、拡散層16は、ダイヤモンド粒子17を含有していたが、本発明はこれに限定されず、例えば、金属系無機粒子を含有していても良い。金属系無機粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム等の金属酸化物、または、チタン酸バリウム、硫酸バリウム等の金属酸化物以外のものを微粒化したものが好ましい。特に、金属系無機粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、チタン酸バリウムおよび硫酸バリウムを微粒化したものがより好ましい。拡散層16は、これらの金属系無機粒子を1種のみを含有していても良いし、2種以上を含有していても良い。また、拡散層16は、ダイヤモンド粒子と金属系無機粒子とを含有していても良い。
【実施例
【0070】
次に、本発明の実施例を比較例と比較して説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定して解釈されるものではない。
【0071】
1.実施例
(実施例1)
スクリーンと、光線角度制御フィルムと、が接着層を介して接合した映像表示板を製造した。スクリーンは、ダイヤモンド粒子(屈折率2.42)を含有する拡散層と、ポリエチレンテレフタレート(PET)により構成される透明基板(屈折率1.6)とが積層してなる部材であり、映像光の投射面である拡散層の表面にハードコート剤を塗布することによりハードコート層が形成された部材である。光線角度制御フィルムは、ルーバー層と、ポリカーボネートにより構成される透明保護層(屈折率1.6)と、がシリコーン系接着剤で構成される接着層(屈折率1.42)を介して接合された部材である。このように形成されたスクリーンの透明基板と光線角度制御フィルムのルーバー層とを、シリコーン系接着剤で構成される接着層(屈折率1.42)を介して接合し、映像表示板を製造した。光線角度制御フィルムは、ルーバー層の遮光帯の幅W2を15μm、ルーバー層の光透過帯の幅W1を150μm、ルーバー層の厚さを230μm、最大光線透過率角度βを25°、可視角度θを100°とするように形成した。なお、光線角度制御フィルムの可視角度θは、当該フィルムを通して反対側が見える角度であり、図3(3A)及び図4(4A)に示す角度(θ2-θ1)に対応する。このように製造した映像表示板に対し、最小入射角度α1を20°、最大入射角度α2を50°として、映像光を入射した。なお、最小入射角度α1は、水平面(XY平面)に対する映像光のスクリーンへの最も小さい入射角度であり、最大入射角度α2は、水平面に対する映像光のスクリーンへの最も大きい入射角度である(図3(3A)参照)。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例2)
実施例1と同一条件で形成した映像表示板を用いて、最小入射角度α1を30°、最大入射角度α2を60°として映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例3)
実施例1と同一条件で形成した映像表示板を用いて、最小入射角度α1を40°、最大入射角度α2を70°として映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例4)
実施例1と同一条件で形成した映像表示板を用いて、最小入射角度α1を50°、最大入射角度α2を80°として映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例5)
光線角度制御フィルムを、ルーバー層の厚さを260μm、最大光線透過率角度βを5°、可視角度θを90°とするように形成した以外、実施例1と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、実施例2と同一条件(最小入射角度α1を30°、最大入射角度α2を60°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例6)
実施例5と同一条件で形成した映像表示板を用いて、実施例3と同一条件(最小入射角度α1を40°、最大入射角度α2を70°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例7)
実施例5と同一条件で形成した映像表示板を用いて、実施例4と同一条件(最小入射角度α1を50°、最大入射角度α2を80°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例8)
光線角度制御フィルムを、ルーバー層の厚さを290μm、最大光線透過率角度βを0°、可視角度θを80°とするように形成した以外、実施例1と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、最小入射角度α1を40°、最大入射角度α2を60°として映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例9)
光線角度制御フィルムを、ルーバー層の厚さを210μm、最大光線透過率角度βを45°、可視角度θを110°とするように形成した以外、実施例1と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、実施例2と同一条件(最小入射角度α1を30°、最大入射角度α2を60°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例10)
光線角度制御フィルムを、ルーバー層の厚さを190μm、最大光線透過率角度βを50°、可視角度θを120°とするように形成した以外、実施例1と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、最小入射角度α1を30°、最大入射角度α2を50°として映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
(実施例11)
光線角度制御フィルムを、可視角度θを50°とするように形成した以外、実施例8と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、実施例2と同一条件(最小入射角度α1を30°、最大入射角度α2を60°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式1)~(式3)の関係は、全て満たされている。
【0072】
2.比較例
(比較例1)
実施例1と同一条件で形成した映像表示板を用いて、最小入射角度α1を10°、最大入射角度α2を40°として映像光を入射した。この場合、上述の(式1)および(式3)の関係は満たされているが、上述の(式2)の関係は満たされない。
(比較例2)
実施例1と同一条件で形成した映像表示板を用いて、最小入射角度α1を60°、最大入射角度α2を80°として映像光を入射した。この場合、上述の(式2)および(式3)の関係は満たされているが、上述の(式1)の関係は満たされない。
(比較例3)
実施例5と同一条件で形成した映像表示板を用いて、最小入射角度α1を20°、最大入射角度α2を50°として映像光を入射した。この場合、上述の(式1)および(式3)の関係は満たされているが、上述の(式2)の関係は満たされない。
(比較例4)
光線角度制御フィルムを、可視角度θを80°とするように形成した以外、実施例8と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、実施例1と同一条件(最小入射角度α1を20°、最大入射角度α2を50°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式3)の関係は満たされているが、上述の(式1)および(式2)の関係は満たされない。
(比較例5)
光線角度制御フィルムを、最大光線透過率角度βを45°とするように形成した以外、実施例5と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、実施例5と同一条件(最小入射角度α1を30°、最大入射角度α2を60°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式1)および(式2)の関係は満たされているが、上述の(式3)の関係は満たされない。
(比較例6)
光線角度制御フィルムを、最大光線透過率角度βを55°とするように形成した以外、実施例9と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、実施例2と同一条件(最小入射角度α1を30°、最大入射角度α2を60°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式2)の関係は満たされているが、上述の(式1)および(式3)の関係は満たされない。
(比較例7)
光線角度制御フィルムを、最大光線透過率角度βを-15°、可視角度θを100°とするように形成した以外、実施例1と同一条件で映像表示板を製造した。この映像表示板を用いて、実施例2と同一条件(最小入射角度α1を30°、最大入射角度α2を60°)で映像光を入射した。この場合、上述の(式3)の関係は満たされているが、上述の(式1)および(式2)の関係は満たされない。
【0073】
3.評価方法
(1)背景透過による投影像の浮遊感範囲
背面風景が視認できるか否か、さらに、スクリーンに表示されるキャラクター等の映像(投影像)が空中に浮遊しているように視認できるか否かを調べた。なお、背面風景とは、観察者により、スクリーンを透過して投影像の背面に視認される風景のことを意味する。背景透過による投影像の浮遊感範囲の評価は、主として視認位置となる水平面に対して0°~30°の位置における観察により行った。また、背景透過による投影像の浮遊感範囲の評価は、上述の(式1)および(式3)の関係を満たすか否かに依存する。良好な透過率が確保され、背面風景の視認が容易、且つ、投影像が空中に浮遊しているように良好に視認できる場合には、「◎」(最良好の意味)と評価し、所定の透過率が確保され、背面風景の視認が可能、且つ、投影像が空中に浮遊しているように視認できる場合には、「〇」(良好の意味)と評価し、ルーバー層の遮光特性により若干低透過率となるため、背面風景の視認が困難、且つ、投影像が空中に浮遊しているように視認し難い場合には、「△」(不良の意味)と評価し、ルーバー層の遮光特性により低透過率となるため、背面風景の視認が非常に困難、且つ、投影像が空中に浮遊しているような視認が困難である場合には、「×」(最不良の意味)と評価した。
【0074】
(2)投影像の広範囲での安定視認
可視角度θの広範囲に渡って良好な投影像が視認できるか否かを調べた。投影像の広範囲での安定視認の評価は、上述の(式1)の関係を満たすか否か、およびβの値が0か否かに依存する。より広範囲に渡って良好な投影像が視認できる場合には、「◎」(最良好の意味)と評価し、広範囲に渡って良好な投影像が視認できる場合には、「〇」(良好の意味)と評価し、良好な投影像を視認できる範囲が狭い場合には、「△」(不良の意味)と評価し、投影像が視認できない場合には、「×」(最不良の意味)と評価した。
【0075】
(3)光漏れ
直線透過光の発生により、地面や天井等の不必要な位置(意図しない位置)に光を透過するか否かを調べた。光漏れの評価は、上述の(式2)の関係を満たすか否かに依存する。不必要な位置へ光が透過しない、または、不必要な位置への光の透過はわずかに存在するが実使用上問題とならない程度である場合には、「〇」(良好の意味)と評価し、不必要な位置へ光が透過してしまう場合には、「×」(不良の意味)と評価した。
【0076】
(4)総合評価
上述の3つの評価項目「背景透過による投影像の浮遊感範囲」、「投影像の広範囲での安定視認」、「光漏れ」を考慮して、三段階で評価した。3つの評価項目のうち不良または最不良の項目が少なくとも1つある場合には、「×」(不良の意味)と評価し、3つの評価項目のうち不良または最不良の項目が無く且つ最良好の項目が2つ以上である場合には、「◎」(最良好の意味)と評価し、3つの評価項目のうち不良または最不良の項目が無く且つ最良好の項目が1つ以下である場合には、「〇」(良好の意味)と評価した。
【0077】
4.評価結果
表1~3は、各実施例および各比較例の製造条件および各評価結果を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
表1~3から明らかなように、各実施例と各比較例を比較すると、上述の(式1)~(式3)を全て満たす実施例1~11は、評価項目(1)~(3)全てにおいて、少なくとも良好の評価が得られた。しかしながら、上述の(式1)~(式3)のうち少なくとも1つが満たされない比較例1~7は、評価項目(1)~(3)のうち少なくとも1の項目に、不良または最不良の評価が得られた。総合評価では、実施例1~7,9,10は最良好の評価が得られ、実施例8,11は良好の評価が得られ、比較例1~7は不良の評価が得られた。この結果から、映像表示システムは、上述の(式1)~(式3)の全てを満たすように形成されることにより、可視角度の広範囲に渡って、投影像が空中に浮遊しているように観察者に視認させることができるとともに、直線透過光の発生を低減することができるため、スクリーン12からの直線透過光により意図しない位置に映像100aが投影される事態を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る映像表示システムは、例えば、商品紹介や店舗の宣伝を行うデジタルサイネージや、映画、アニメーション、ライブ映像、音楽プロモーションビデオ等の各種映像を表示するシステム等に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,1a,1b・・・映像表示システム、10,10a・・・映像表示板、12,12a・・・スクリーン、14・・・ハードコート層、16・・・拡散層、17・・・ダイヤモンド粒子、18・・・透明基板、20・・・光線角度制御フィルム、22・・・ルーバー層、26・・・透明保護層、28・・・接着層、30・・・光透過帯、32・・・遮光帯、60・・・映像投射装置、100,100a・・・映像(投影像)、L1,L2・・・映像光、P・・・観察者。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7