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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ギヤドモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20230526BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20230526BHJP
   F16H 1/46 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H25/20 H
F16H25/20 F
F16H1/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019155705
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021035255
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】陳 ヒョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】殿貝 佳英
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-076926(JP,A)
【文献】特開2019-047589(JP,A)
【文献】特開2016-156422(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106300791(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0084130(US,A1)
【文献】特開2012-125044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
F16H 25/20
F16H 1/46
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸線に沿って延びるモータシャフトを回転させるモータと、
前記モータの動力を伝達する伝達機構と、
前記伝達機構に接続されるスライド機構と、を備え、
前記スライド機構は、
前記伝達機構に接続されスライド軸線周りを回転するリードスクリューと、
前記リードスクリューに挿入されるスライドナットと、
前記スライドナットを保持するナットフレームと、
前記ナットフレームを径方向外側から囲む筒状のガイドフレームと、
移動規制部と、を有し、
前記ナットフレームの外周面には、径方向外側に突出する突起が設けられ、
前記ガイドフレームには、前記突起をガイドするガイド壁が設けられ、
前記ガイド壁は、
前記突起が収容される隙間を介して周方向に対向し軸方向に沿って延びる一対の第1壁面と、
軸方向一方側を向き、交差部において前記第1壁面に連なる第2壁面と、有し、
前記移動規制部は、前記突起が前記交差部に位置する状態で、前記ガイドフレームに対する前記ナットフレームの軸方向一方側への移動を規制する、
ギヤドモータ。
【請求項2】
前記ガイドフレームには、スリットが設けられ、
前記スリットは、
軸方向に沿って延びる第1スリットと、
前記交差部において前記第1スリットに繋がり周方向に沿って延びる第2スリットと、を含み、
前記第1スリットの内壁面が、一対の前記第1壁面を含み、
前記第2スリットの内壁面が、前記第2壁面を含む、
請求項1に記載のギヤドモータ。
【請求項3】
前記第1スリットは、前記交差部に対し軸方向両側に延び一方側で軸方向に開口する、
請求項2に記載のギヤドモータ。
【請求項4】
前記リードスクリューの第1端部は、第1軸受部に支持され、
前記ナットフレームは、軸方向において前記第1軸受部に対向する対向面を有し、
前記第1軸受部および前記対向面は、前記突起が前記交差部に位置する状態で互いに接触して前記移動規制部として機能する、
請求項1~3の何れか一項に記載のギヤドモータ。
【請求項5】
前記リードスクリューの第2端部は、軸方向に沿って並ぶ第2軸受部および第3軸受部によって支持される、
第2軸受部および第3軸受部のうち少なくとも一方がベアリングである、
請求項1~4の何れか一項に記載のギヤドモータ。
【請求項6】
第2軸受部および第3軸受部は、何れもベアリングである、
請求項5に記載のギヤドモータ。
【請求項7】
前記伝達機構は、
前記モータシャフトに接続される遊星歯車機構と、
前記遊星歯車機構から前記スライド機構に動力を伝達するギヤ列と、を有し、
前記ギヤ列は、前記遊星歯車機構のキャリアに接続され前記モータ軸線周りを回転するドライブギヤを有し、
前記キャリアと前記ドライブギヤとは、互いに別体である、
請求項1~6の何れか一項に記載のギヤドモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器には小型化とともに多機能化が求められており、電子機器の内部に組み込まれている部品を駆動して様々な機能を実現することが望まれている。例えば、カメラが組み込まれたスマートフォンにおいては、様々な角度からの撮影を可能とするために、カメラを回転させるギヤドモータをスマートフォンの内部に組み込んだものも開発されている(例えば、特許文献1)。最近では、電子機器の機能がますます高度化しており、電子機器の内部の部品を軸周りに回転させるだけではなく、軸方向に伸縮させる機能も必要とされることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-47589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ますます小型化される電子機器においては、部品を動かすための駆動装置を設置するスペースが非常に限られている。このため、スライド動作させるためのギヤドモータと、回転動作させるためのギヤドモータとをそれぞれ電子機器に組み込むことが困難となっている。
【0005】
本発明の一つの態様は、このような課題に鑑みてなされたもので、スライド動作および回転動作を行うことができるギヤドモータの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のギヤドモータの一つの態様は、モータ軸線に沿って延びるモータシャフトを回転させるモータと、前記モータの動力を伝達する伝達機構と、前記伝達機構に接続されるスライド機構と、を備える。前記スライド機構は、前記伝達機構に接続されスライド軸線周りを回転するリードスクリューと、前記リードスクリューに挿入されるスライドナットと、前記スライドナットを保持するナットフレームと、前記ナットフレームを径方向外側から囲む筒状のガイドフレームと、移動規制部と、を有する。前記ナットフレームの外周面には、径方向外側に突出する突起が設けられる。前記ガイドフレームには、前記突起をガイドするガイド壁が設けられる。前記ガイド壁は、前記突起が収容される隙間を介して周方向に対向し軸方向に沿って延びる一対の第1壁面と、軸方向一方側を向き、交差部において前記第1壁面に連なる第2壁面と、有する。前記移動規制部は、前記突起が前記交差部に位置する状態で、前記ガイドフレームに対する前記ナットフレームの軸方向一方側への移動を規制する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、スライド動作および回転動作を行うことができるギヤドモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のギヤドモータの断面図であり、回転移動規制状態のギヤドモータを示す。
図2図2は、一実施形態のギヤドモータの斜視図であり、回転移動規制状態のギヤドモータを示す。
図3図3は、一実施形態のギヤドモータの断面図であり、変換点状態のギヤドモータを示す。
図4図4は、一実施形態のギヤドモータの斜視図であり、変換点状態のギヤドモータを示す。
図5図5は、一実施形態のギヤドモータの断面図であり、スライド移動規制状態のギヤドモータを示す。
図6図6は、一実施形態のギヤドモータの斜視図であり、スライド移動規制状態のギヤドモータを示す。
図7図7は、変形例のスライド機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るギヤドモータについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明において特に断りのない限り、モータ軸線J1に平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」又は「上下方向」と呼び、+Z側を単に「軸方向一方側」又は「上側」と呼び、-Z側を単に「軸方向他方側」又は「下側」と呼ぶ。なお、本明細書における上下方向は、説明の便宜のために設定する方向であって、ギヤドモータの使用時の姿勢を限定するものではない。
【0011】
図1図3図5は、ギヤドモータ1の断面図であり、図2図4図6は、ギヤドモータ1の斜視図である。また、図1図2は、回転移動規制状態のギヤドモータ1を示し、図3および図4は、変換点状態のギヤドモータ1を示し、図5および図6は、スライド移動規制状態のギヤドモータ1を示す。
【0012】
後述するように、ギヤドモータ1は、回転移動規制状態においてモータ20の駆動によって出力部55cをスライド移動させる。ギヤドモータ1は、スライド移動規制状態においてモータ20の駆動によって出力部55cを回転させる。変換点状態のギヤドモータ1は、回転移動規制状態とスライド移動規制状態との間の移行状態である。ギヤドモータ1は、変換点状態においてモータ20を一方向に回転駆動すると出力部55cをスライド移動させ、他方向に回転駆動すると出力部55cを回転させる。
【0013】
図1に示すように、ギヤドモータ1は、モータ20と、モータ20の動力を伝達する伝達機構2と、伝達機構2に接続されるスライド機構5と、フレーム10と、蓋部19と、ブラケット6と、一対のコイルバネ7と、を有する。本実施形態のギヤドモータ1は、Y軸方向に沿う寸法が抑制された薄型の電子機器に搭載される。
【0014】
伝達機構2は、遊星歯車機構32と、ギヤ列4と、を有する。ギヤ列4は、ドライブギヤ41と中間ギヤ42とカウンタギヤ43とを有する。モータ20、遊星歯車機構32およびドライブギヤ41は、モータ軸線J1に沿って配置される。中間ギヤ42は、中間軸線J2に沿って配置される。スライド機構5およびカウンタギヤ43は、スライド軸線J3に沿って配置される。
【0015】
モータ軸線J1、中間軸線J2およびスライド軸線J3は、Z軸方向に沿って、互いに平行に延びる。すなわち、中間軸線J2およびスライド軸線J3は、モータ軸線J1と平行である。モータ軸線J1、中間軸線J2およびスライド軸線J3、軸方向から見てX軸方向に直線状に並ぶ。
以下、ギヤドモータ1の各部について詳細に説明する。
<フレーム>
図2に示すように、フレーム10は、モータ20、伝達機構2およびスライド機構を支持するフレーム本体11と、フレーム本体11から上側に延びる筒状のガイドフレーム15と、フレーム本体11から側方に突出する一対の支持板部13と、を有する。ガイドフレーム15は、スライド機構5の一部として機能する。ガイドフレーム15については、後段において詳細に説明する。
【0016】
フレーム本体11は、下側に開口する箱形状である。フレーム本体11の内部には、伝達機構2が収容される。フレーム本体11の上面11bには、モータ20が挿入されるモータ挿入孔12が設けられる。フレーム本体11は、下側に開口する。フレーム本体11の下側の開口は、蓋部19によって覆われる。
【0017】
図1に示すように、支持板部13は、スライド軸線J3と直交する平面に沿う板状である。一対の支持板部13は、スライド軸線J3と直交する方向(本実施形態ではX軸方向)において互いに反対側に突出する。支持板部13には、軸方向に貫通する挿通孔13aが設けられる。フレーム10は、支持板部13において、ブラケット6に支持される。
【0018】
<ブラケット>
ブラケット6は、フレーム10を支持する。ブラケット6は、図示略の固定部において、ギヤドモータ1が搭載される電子機器の筐体等に固定される。すなわち、ギヤドモータ1は、ブラケット6において電子機器に固定される。
【0019】
ブラケット6は、ブラケット本体6bと一対の支持シャフト6aとを有する。ブラケット本体6bは、スライド軸線J3と直交する平面に沿う板状である。ブラケット本体6bは、モータ20、伝達機構2、スライド機構5、フレーム10および蓋部19の下側に隙間を空けて配置される。
【0020】
一対の支持シャフト6aは、ブラケット本体6bの上面から上側に延びる。一対の支持シャフト6aは、スライド軸線J3と平行に延びる。支持シャフト6aの上端には、抜け止めフランジ6fが設けられる。一対の支持シャフト6aは、それぞれフレーム10の支持板部13に設けられた挿通孔13aに挿入される。また、抜け止めフランジ6fは、支持板部13の上側に位置する。抜け止めフランジ6fの直径は、挿通孔13aの直径より大きい。このため、抜け止めフランジ6fは、支持シャフト6aの挿通孔13aに対する抜け止めとして機能する。
【0021】
一対のコイルバネ7は、それぞれ支持シャフト6aに挿通される。コイルバネ7は、支持板部13の下面とブラケット本体6bの上面との間に、適度に圧縮した状態で配置される。コイルバネ7は、ブラケット6に対してフレーム10を上側に押し付けて、フレーム10の位置を安定させる。フレーム10またはフレーム10に支持される各部に下方向への力が加わった場合に、コイルバネ7はこの力によって圧縮される。これにより、フレーム10またはフレーム10に支持される各部に下方向への過剰な力が加わることを抑制できる。
【0022】
<モータ>
モータ20は、フレーム10に支持される。モータ20は、例えばステッピングモータである。モータ20は、モータ軸線J1を中心とする略円柱状のモータ本体20aと、モータ本体20aからモータ軸線J1に沿って下側に延び出るモータシャフト20bと、を有する。
【0023】
モータ本体20aの内部には、モータシャフト20bに繋がるロータとロータを囲むステータとが設けられる。モータシャフト20bは、モータ軸線J1を中心として軸方向に延びる。モータシャフト20bは、モータ20によりモータ軸線J1を中心として回転させられる。
【0024】
<遊星歯車機構>
遊星歯車機構32は、モータ20の直下に位置する。遊星歯車機構32は、モータシャフト20bに接続される。遊星歯車機構32は、モータ20から出力された動力を減速して、ギヤ列4に伝達する。
【0025】
遊星歯車機構32は、ハウジング35と、第1太陽ギヤ33aと、3つの第1遊星ギヤ33bと、第1キャリア33cと、第2太陽ギヤ34aと、3つの第2遊星ギヤ34bと、第2キャリア(キャリア)34cと、を有する。
【0026】
ハウジング35は、フレーム10に固定される。すなわち、遊星歯車機構32は、ハウジング35においてフレーム10に支持される。ハウジング35は、モータ軸線J1を中心として軸方向に延びる筒状部35aと、筒状部35aの下端に位置する底部35bと、を有する。筒状部35aの内周面には、内歯ギヤが設けられる。筒状部35aの内歯ギヤは、第1遊星ギヤ33bおよび第2遊星ギヤ34bに噛み合う。また、底部35bの中央には、第5軸受部35dが固定される中央孔35cが設けられる。第5軸受部35dとしては、滑り軸受が採用される。
【0027】
第1太陽ギヤは、モータシャフト20bに固定され、モータシャフト20bとともにモータ軸線J1を中心として回転する。3つの第1遊星ギヤ33bは、モータ軸線J1の周方向に等間隔に配置される。3つの第1遊星ギヤ33bは、第1太陽ギヤ33aに噛み合う。3つの第1遊星ギヤ33bは、第1太陽ギヤ33aの回転に伴い、モータ軸線J1の周方向に公転回転する。
【0028】
第1キャリア33cは、3つの第1遊星ギヤ33bを回転可能に支持する。3つの第1遊星ギヤ33bのモータ軸線J1を中心とする公転回転に伴い、第1キャリア33cは、モータ軸線J1を中心として回転する。
【0029】
第2太陽ギヤ34aは、第1キャリア33cに固定される。第2太陽ギヤ34aは、第1キャリア33cとともにモータ軸線J1を中心として回転する。
【0030】
3つの第2遊星ギヤ34bは、モータ軸線J1の周方向に等間隔に配置される。3つの第2遊星ギヤ34bは、第2太陽ギヤ34aに噛み合う。3つの第2遊星ギヤ34bは、第2太陽ギヤ34aの回転に伴い、モータ軸線J1の周方向に公転回転する。
【0031】
第2キャリア34cは、3つの第2遊星ギヤ34bを回転可能に支持する。3つの第2遊星ギヤ34bのモータ軸線J1を中心とする公転回転に伴い、第2キャリア34cは、モータ軸線J1を中心として回転する。
【0032】
第2キャリア34cは、下側の突出する柱状部34eを有する。柱状部34eは、モータ軸線J1を中心とする円柱状である。柱状部34eは、ハウジング35の中央孔35cを貫通する。また、柱状部34eは、第5軸受部35dによって回転可能に支持される。柱状部34eの下面には、上下方向に延びる保持穴34dが設けられる。
【0033】
<ギヤ列>
ギヤ列4は、遊星歯車機構32からスライド機構5に動力を伝達する。ギヤ列4は、ドライブギヤ41と、中間ギヤ42と、カウンタギヤ43と、を有する。ドライブギヤ41、中間ギヤ42およびカウンタギヤ43は、X軸方向に沿ってこの順で並び動力を伝達する。本実施形態において、ドライブギヤ41の歯数とカウンタギヤ43の歯数とは、同数である。このため、本実施形態のギヤ列4は、減速および増速を行わない。
【0034】
ドライブギヤ41は、ギヤ本体41cと、ギヤ本体41cの上面に設けられる連結凸部41aと、ギヤ本体41cの下面に設けられるドライブシャフト41bと、を有する。ギヤ本体41cは、モータ軸線J1を中心とする歯車である。ギヤ本体41cは、カウンタギヤ43と噛み合う。ドライブシャフト41bは、モータ軸線J1に沿って下側に延びる。ドライブシャフト41bは、蓋部19に固定された第4軸受部18に回転可能に支持される。第4軸受部18としては、潤滑油を含侵させた滑り軸受が採用可能である。
【0035】
連結凸部41aは、モータ軸線J1に沿って上側に延びる。連結凸部41aは、遊星歯車機構32の第2キャリア34cに設けられた保持穴34dに挿入される。連結凸部41aには、回り止めのためのDカット面が設けられている。保持穴34dの穴形状は、連結凸部41aの外径と略同形状とされている。ドライブギヤ41は、第2キャリア34cに接続されることで、第2キャリア34cと一体となってモータ軸線J1周りを回転する。
【0036】
本実施形態によれば、第2キャリア34cとドライブギヤ41とは、互いに別体である。第2キャリア34cとドライブギヤ41とは、モータ軸線J1周りを一体となって回転する部材であるため、単一の部材として構成することも可能である。しかしながら、第2キャリア34cとドライブギヤ41とを単一の部材とすると、ドライブギヤ41が遊星歯車機構32によって上側から支持されることとなる。このため、ドライブギヤ41の位置精度が遊星歯車機構32の内部構造の寸法精度に依存し、ギヤ列4におけるギヤ間距離がばらつきやすくなる。
【0037】
本実施形態によれば、第2キャリア34cとドライブギヤ41とを互いに別体とすることで、第2キャリア34cの柱状部34eを第5軸受部35dによって回転自在に支持できる。すなわち、軸方向においてドライブギヤ41と第2キャリア34cとの間に第5軸受部35dを配置することができる。このため、第5軸受部35dが、ドライブギヤ41の直上でドライブギヤ41の位置精度を保つことができ、ギヤ列4におけるギヤ間距離のばらつきを抑制し伝達効率を高めることができる。さらに、本実施形態では、ドライブギヤ41は、直下に位置する第4軸受部18において回転自在に支持される。すなわち、ドライブギヤ41は、直上直下においてそれぞれ第4軸受部18および第5軸受部35dで回転自在に支持されるため、ギヤ列4におけるギヤ間距離をより確実に高めることができる。
【0038】
また、第2キャリア34cとドライブギヤ41とを単一の部材とすると、遊星歯車機構32の組み立て工程において、ドライブギヤ41をハウジング35の内部を通す必要が生じる。このため、組み立て工程が煩雑化するのみならず、ハウジング35の中央孔35cを通すためにドライブギヤ41の設計に制限が加わる。これに対し、本実施形態によれば、第2キャリア34cとドライブギヤ41とを互いに別体とすることで、組み立て工程を簡素化できる。さらに、ドライブギヤ41を大径とすることが可能となり、ドライブギヤ41の設計の自由度が高まる。
【0039】
中間ギヤ42は、フレーム10から下側に延び出る中間シャフト11aに回転可能に支持される。中間シャフト11aは、中間軸線J2に沿って延びる。したがって、中間ギヤ42は、中間軸線J2周りに回転する。中間ギヤ42は、ドライブギヤ41とカウンタギヤ43との間に配置される。中間ギヤ42は、ドライブギヤ41およびカウンタギヤ43に噛み合い、ドライブギヤ41からカウンタギヤ43に動力を伝達する。
【0040】
カウンタギヤ43は、スライド機構5のリードスクリュー51に固定される。ドライブギヤ41は、リードスクリュー51とともにスライド軸線J3周りに回転する。
【0041】
<スライド機構>
スライド機構5は、図示略の外部装置に接続され外部装置に動力を伝える。スライド機構5は、軸方向に延びるリードスクリュー51と、リードスクリュー51に挿入されるスライドナット53と、スライドナット53を保持するナットフレーム55と、ナットフレーム55を径方向外側から囲む筒状のガイドフレーム15と、を有する。
【0042】
リードスクリュー51は、スライド軸線J3に沿って延びる。リードスクリュー51は、伝達機構2に接続され、伝達機構2を介して伝わるモータ20の動力によってスライド軸線J3周りを回転する。
【0043】
リードスクリュー51は、外周面に雄ねじが設けられたネジ部51cと、ネジ部51cの上側に位置する上端部51aと、ネジ部51cの下側に位置する下端部51bと、を有する。すなわち、下端部(第2端部)51bは、上端部(第1端部)51aの反対側に位置する端部である。上端部51aは、第1軸受部59Aに支持される。下端部51bは、軸方向に沿って並ぶ第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cに支持される。また、下端部51bには、カウンタギヤ43が固定される。
【0044】
スライドナット53は、内周面にネジ溝が設けられたナット孔53aを有する。ナット孔53aには、リードスクリュー51に挿入される。また、ナット孔53aのネジ溝には、リードスクリュー51の雄ねじが噛み合う。スライドナット53は、ナットフレーム55に固定される。
【0045】
スライドナット53は、リードスクリュー51から伝達された動力の方向を変換する。スライドナット53の回転が規制され、スライドナット53の軸方向の移動が許容された状態でリードスクリュー51が回転することで、スライドナット53は軸方向に移動する。
【0046】
また、一方で、スライドナット53は、リードスクリュー51から伝達された動力の方向を変換することなく後段に伝達することもできる。スライドナット53の回転が許容され、スライドナット53の軸方向の移動が規制された状態でリードスクリュー51が回転することで、スライドナット53はリードスクリュー51とともに回転する。
【0047】
ナットフレーム55は、スライドナット53を支持する。ナットフレーム55は、スライドナット53と一体となって軸方向に移動又は回転する。
【0048】
ナットフレーム55は、筒状部55aと、筒状部55aの内周面から径方向内側に突出する内側突出部57と、筒状部55aの上端に位置する固定フランジ55cと、筒状部55aの外周面55fに設けられるピン(突起)56と、を有する。固定フランジ55cには、ギヤドモータ1の駆動対象物が固定される。すなわち、固定フランジ55cは、出力部として機能する。
【0049】
筒状部55aは、スライド軸線J3を中心として軸方向に沿って延びる円筒状である。筒状部55aは、リードスクリュー51を径方向外側から囲む。内側突出部57は、筒状部55aの内周面の下部領域に設けられる。内側突出部57は、上側(軸方向一方側)を向く対向面57aと、下側(軸方向他方側)を向く下面57bと、を有する。対向面57aは、第1軸受部59Aの外輪と軸方向において互いに対向する。下面57bは、スライドナット53の上端面に接触する。
【0050】
図2に示すように、ピン56は、筒状部55aの外周面55fから径方向外側に突出する。ピン56は、突出する方向からみて円形である。本実施形態のピン56は、筒状部55aの外周面55fに一体的に設けられる。しかしながら、ピン56は、筒状部55aと別部材であって、筒状部55aに設けられた貫通孔に挿入して固定されたものであってもよい。
【0051】
ガイドフレーム15は、軸方向からみて円形の内周面15aを有する筒状である。ガイドフレーム15の内周面15aは、ナットフレーム55の外周面55fと径方向において対向する。ガイドフレーム15の内径は、ナットフレーム55の外径より若干大きい。このため、ナットフレーム55は、ガイドフレーム15に対して軸方向又は周方向に摺動可能である。ガイドフレーム15は、ナットフレーム55の軸方向の移動および回転をガイドする。
【0052】
ガイドフレーム15には、スリット70が設けられる。スリット70は、ガイドフレーム15を径方向に貫通する。スリット70は、ピン56をガイドするガイド壁70aを有する。すなわち、ガイドフレーム15には、ガイド壁70aが設けられる。ガイド壁70aは、スリット70の内壁面である。
【0053】
スリット70には、ピン56が挿入される。ガイドフレーム15に対するナットフレーム55の移動において、ピン56がガイド壁70aにガイドされてスリット70の内部を移動する。
【0054】
スリット70は、交差部75において互いに交差する第1スリット71および第2スリット72を有する。
【0055】
第1スリット71は、軸方向に沿って延びる。第1スリット71は、ガイドフレーム15の上端部で上側に開口する。第1スリット71の内壁面は、軸方向に沿って延びる一対の第1壁面71aを含む。一対の第1壁面71aは、ピン56が収容される隙間を介して周方向に対向する。
【0056】
図1および図2に示すように、回転移動規制状態において第1スリット71には、ピン56が収容される。回転移動規制状態において、第1スリット71は、スライド軸線J3周りのピン56の回転を一対の第1壁面71aによって規制する。これにより、第1スリット71は、ナットフレーム55の回転を規制する。また、第1スリット71は、軸方向に延びるためスライドナット53の軸方向の移動を許容する。したがって、回転移動規制状態でリードスクリュー51を回転すると、スライドナット53およびナットフレーム55は、ガイドフレーム15に対して軸方向に移動する。
【0057】
第2スリット72は、周方向に沿って延びる。第2スリット72は、スライド軸線J3の周方向において半周に亘って延びる。第2スリット72の一方の周端部は、交差部75に位置する。すなわち、第2スリット72は、交差部75において第1スリット71に繋がる。第2スリット72の内壁面は、上側(軸方向一方側)を向く第2壁面72aを含む。第2壁面72aは、交差部75において第1壁面71aに連なる。ここで、スライドナット53を上方に移動させるためにリードスクリュー51が回転する方向を第1回転方向T1とする。第2スリット72が、交差部75から延びる方向は、第1回転方向T1は、と一致する。
【0058】
図5および図6に示すように、スライド移動規制状態において第2スリット72には、ピン56が収容される。スライド移動規制状態において、第2スリット72は、ピン56の下方向へのスライド移動を第2壁面72aによって規制する。また、ナットフレーム55の上方向への移動は、後述する移動規制部Sによってなされる。したがって、第2壁面72aおよび移動規制部Sは、ナットフレーム55の軸方向の移動を規制する。さらに、第2スリット72は、軸方向に延びるためスライドナット53の周方向の移動を許容する。したがって、スライド移動規制状態でリードスクリュー51を回転すると、スライドナット53およびナットフレーム55は、リードスクリュー51とともにガイドフレーム15に対して回転する。
なお、本実施形態において、第2スリット72において第2壁面72aに対向し下側を向く面は、ピン56の上方向へのスライド移動を規制しない。
【0059】
第1軸受部59Aは、内輪、外輪およびこれらの間に介在する転動体を有するボールベアリングである。第1軸受部59Aの内輪は、リードスクリュー51の上端部51aに固定される。一方で、第1軸受部59Aの外輪は、ナットフレーム55の筒状部55aの内側面に対して径方向に対向し接触する。しかしながら、第1軸受部59Aの外輪は、筒状部55aの内側面に固定されていない。ナットフレーム55がスライドナット53とともに軸方向に移動する場合、第1軸受部59Aの外輪の外周面は、筒状部55aの内側面に軸方向に摺動する。
【0060】
第1軸受部59Aの外輪は、軸方向において筒状部55aの内側面に設けられた内側突出部57の対向面57aと対向する。図1に示す回転移動規制状態で、リードスクリュー51を第1回転方向T1に回転させると、スライドナット53およびナットフレーム55が上側に移動する。これに伴い、第1軸受部59Aの外輪と対向面57aとが徐々に近接し、やがて接触して図3および図4に示す変換点状態となる。また、変換点状態に達した後にさらにリードスクリュー51を第1回転方向T1に回転させると、第1軸受部59Aの外輪と対向面57aとの接触を維持したままスライドナット53およびナットフレーム55が回転し図5および図6に示すスライド移動規制状態となる。
【0061】
図3および図4に示すように、変換点状態において、第1軸受部59Aおよび対向面57aは、ピン56がスリット70の交差部75に位置する状態で互いに接触する。第1軸受部59Aと対向面57aとが接触することで、ガイドフレーム15に対するナットフレーム55の上側への移動が制限される。このように、第1軸受部59Aおよび対向面57aは、移動規制部Sとして機能する。すなわち、スライド機構5は、ガイドフレーム15に対するナットフレーム55の上側への移動を規制する移動規制部Sを有する。
【0062】
第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cは、ともにリードスクリュー51の下端部51bを回転可能に支持する。第2軸受部59Bと第3軸受部59Cとは、上側から下側に向かってこの順で並ぶ。すなわち、第2軸受部59Bは、第3軸受部59Cの上側に位置する。第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cは、ともに、内輪、外輪およびこれらの間に介在する転動体を有するボールベアリングである。
【0063】
上述したように、リードスクリュー51の上端部51aには、第1軸受部59Aが設けられる。第1軸受部59Aの外輪は、径方向外側に対向する筒状部55aの内側面に対し軸方向に摺動する。したがって、外輪と筒状部55aの内側面とは、摺動抵抗を低減する十分な隙間嵌めにする必要がある。結果的に、リードスクリュー51の倒れに対して第1軸受部59Aによるリードスクリュー51の上端部51aの支持は、不十分となりやすい。
【0064】
このように、リードスクリューの回転によって部材を軸方向の一方側に移動させる場合、移動させる部材の動線上でベアリングの外輪を固定できないため、リードスクリューの両端部の回転支持を確実に行うことが困難となる。本実施形態のギヤドモータ1は、このような課題に鑑みて考案されたものであって、リードスクリュー51の回転支持の確実性を高めることが目的の一つである。
【0065】
本実施形態によれば、リードスクリュー51の下端部51bが、軸方向に並ぶ複数の軸受部(第2軸受部59Bおよび第3軸受部59C)に支持される。このため、リードスクリュー51の倒れを効果的に抑制することができる。また、本実施形態によれば、第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cが、ボールベアリングである。したがって、リードスクリュー51の倒れを抑制するために、第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cの内輪および外輪を保持する嵌合隙間を小さくした場合であっても、第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cの回転効率が低下し難い。
【0066】
第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cの外輪は、フレーム10に設けられたベアリング支持孔16の内周面に保持される。ベアリング支持孔16は、スライド軸線J3に沿って軸方向に貫通する。ベアリング支持孔16には、リードスクリュー51の下端部51bが挿通される。
【0067】
ベアリング支持孔16の内周面には、周方向に沿って延びる環状リブ16cが設けられる。環状リブ16cは、第2軸受部59Bと第3軸受部59Cとの間に位置する。環状リブ16cは、上側を向く上側段差面16aと、下側を向く下側段差面16bと、を有する。上側段差面16aは、第2軸受部59Bの外輪に接触する。一方で、下側段差面16bは、第3軸受部59Cの外輪に接触する。
【0068】
第2軸受部59Bの内輪は、リードスクリュー51のネジ部51cの下端に接触する。第2軸受部59Bの内輪は、ネジ部51cの下面に接触し外輪に対し下側に押し付けられた状態でリードスクリュー51の下端部51bを保持する。第3軸受部59Cの内輪は、外輪に対し上側に押し付けられた状態でリードスクリュー51に接着固定される。したがって、第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cは、内輪同士が近接する方向にガタを寄せた状態でリードスクリュー51を支持する。
【0069】
本実施形態によれば、第2軸受部59Bと第3軸受部59Cとが、互いに逆方向にガタを寄せた状態でリードスクリュー51を保持する。このため、リードスクリュー51のスラスト方向のガタを抑制することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、第2軸受部59Bよび第3軸受部59Cがともにベアリングである場合について例示した。しかしながら、第2軸受部59Bおよび第3軸受部59Cのうち何れか一方がベアリングであれば、リードスクリュー51のスラスト方向のガタを抑制することができる。一例として、第2軸受部が滑り軸受であり、第3軸受部がベアリングである場合について説明する。この場合、第2軸受部の上端面をリードスクリュー51のネジ部51cの下端に接触させる。さらに、第3軸受部の内輪を、外輪に対し上側に押し付けられた状態でリードスクリュー51の下端部51bに接着固定する。
【0071】
<作用効果>
本実施形態によれば、スリット70の第1壁面71aおよび第2壁面72aによって、ピン56の移動方向が規制される。これにより、ピン56が交差部75を通過する際に、ピン56の移動方向を軸方向から周方向又は周方向から軸方向に変換できる。本実施形態によれば、1つのモータ20のみを用いてリードスクリュー51を一方向に回転させることで、スライドナット53およびナットフレーム55を軸方向および回転方向に順次移動させることができる。
【0072】
本実施形態によれば、第1スリット71は、交差部75に対し軸方向両側に延び一方側(上側)で軸方向に開口する。このため、ギヤドモータ1の組み立て工程において、ピン56を第1スリット71の上側の開口から挿入することができ、組み立て工程を簡素化できる。なお、ガイドフレーム15の成型時に、第1スリット71の上端部は開口させず、後加工によって第1スリット71を上側に開口させてもよい。このような工程を経ることで、成型時のガイドフレーム15の反り等を抑制して、寸法精度の高いガイドフレーム15を製造できる。
【0073】
本実施形態によれば、ナットフレーム55は、軸方向において第1軸受部59Aに対向する対向面57aを有する。第1軸受部59Aおよび対向面57aは、ピン56が交差部75に位置する状態で互いに接触して移動規制部Sとして機能する。スライド機構5に移動規制部Sが設けられることで、ガイドフレーム15に対するナットフレーム55の上側への移動が制限されてナットフレーム55をスライド軸線J3周りに回転させることができる。
【0074】
本実施形態によれば、リードスクリュー51の上端部を支持する第1軸受部59Aが、移動規制部Sを構成する。ナットフレーム55がスライド軸線J3周りに回転する場合、移動規制部Sを構成する第1軸受部59Aおよび対向面57aは、共に回転する。このため、移動規制部Sを機能させながらナットフレーム55が回転する場合に、摺動抵抗の発生がなく駆動効率を高めることができる。また、移動規制部Sを構成する第1軸受部59Aと対向面57aとの接触面は、スライド軸線J3を中心とする円形である。このため、移動規制部Sを機能させることで、ナットフレーム55をスライド軸線J3に対して安定して保持することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、リードスクリュー51の上端部51aに位置する第1軸受部59Aを利用して移動規制部Sの一部とした。しかしながら、移動規制部Sの一部は、リードスクリュー51の上端部51aから径方向外側に突出し、対向面57aと軸方向に対向するものであれば、必ずしも軸受部でなくてもよい。
【0076】
本実施形態によれば、ガイドフレーム15に対するナットフレーム55の上側への移動を抑制する移動規制部Sが、スリット70のガイド壁70a以外の箇所に設けられる。このため、上述したように、第1スリット71が交差部75に対し上下方向に延びる構成を採用する場合であっても、ピン56が交差部75に達することでナットフレーム55の移動方向を変換させることができる。
【0077】
<変形例>
図7は、上述の実施形態に採用可能な変形例のスライド機構105の断面図である。図7は、上述の実施形態における図3に対応する変換点状態のギヤドモータ1を示す。本変形例のスライド機構105は、上述の実施形態と比較して、主にスライド機構105の内部にコイルバネ107が内蔵されている点が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
本変形例のスライド機構105は、リードスクリュー51と、リードスクリュー51に挿入されるスライドナット153と、スライドナット153を径方向外側から囲むナットフレーム155と、ナットフレーム155を径方向外側から囲む筒状のガイドフレーム15と、ナットフレーム155の下端部に固定される保持部材158と、ナットフレーム155の内部に収容されるコイルバネ107と、を有する。
【0079】
上述の実施形態と同様に、ナットフレーム155の外周面には、ピン56が設けられる。また、ガイドフレーム15には、ピン56が挿入されるスリット70が設けられる。ガイドフレーム15に対するナットフレーム155の移動において、ピン56がガイド壁70aにガイドされてスリット70の内部を移動する。
【0080】
スライドナット153は、内周にネジ溝が設けられたナット孔153aを有する。ナット孔153aには、リードスクリュー51に挿入される。また、スライドナット153外周面には、径方向外側に突出し軸方向に沿って延びる複数の凸条部153bが設けられる。
【0081】
ナットフレーム155は、筒状部155aと、筒状部155aの内周面から径方向内側に突出する内側突出部157と、上述したピン56と、を有する。内側突出部157は、対向面157aと、下面157bと、を有する。対向面157aは、第1軸受部59Aの外輪と軸方向において互いに対向する。上述の実施形態と同様に、リードスクリュー51の回転に伴うナットフレーム155の上昇に伴い、第1軸受部59Aの外輪と内側突出部157の対向面157aとは接触して、ナットフレーム155の上側への移動を規制する。
【0082】
筒状部155aの内周面であって、内側突出部157の下側の領域には、軸方向に沿って延びる複数の凹溝155pが設けられる。凹溝155pには、スライドナット153の凸条部153bが挿入される。凹溝155pに凸条部153bが挿入されることで、スライドナット153とナットフレーム155との相対的な回転が抑制される一方で、相対的な軸方向の移動は許容される。
【0083】
保持部材158は、筒状部155aの下端部から径方向内側に突出する。保持部材158は、スライドナット153の下端面と接触する。保持部材158は、スライドナット153に対するナットフレーム155の上側への移動を規制する。
【0084】
コイルバネ107は、ナットフレーム155の内部でリードスクリュー51に挿通される。コイルバネ107の上端部は、内側突出部157の下面157bに接触する。また、コイルバネ107の下端部は、スライドナット153の上面に接触する。コイルバネ107は、内側突出部157とスライドナット153との間に、適度に圧縮された状態で配置される。コイルバネ107は、スライドナット153に対してナットフレーム155を上側に押し付ける。
【0085】
本変形例によれば、コイルバネ107は、ナットフレーム155に下方向への力が加わった場合に圧縮される。これにより、ナットフレーム155に下方向への過剰な力が加わることを抑制し、ナットフレーム155、スライドナット153およびリードスクリュー51に損傷が生じることを抑制することができる。
【0086】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0087】
1…ギヤドモータ、2…伝達機構、4…ギヤ列、5,105…スライド機構、10…フレーム、15…ガイドフレーム、20…モータ、20b…モータシャフト、32…遊星歯車機構、34c…第2キャリア(キャリア)、41…ドライブギヤ、51…リードスクリュー、51a…上端部(第1端部)、51b…下端部(第2端部)、53,153…スライドナット、55,155…ナットフレーム、55f…外周面、56…ピン(突起)、57a,157a…対向面、59A…第1軸受部、59B…第2軸受部、59C…第3軸受部、70…スリット、70a…ガイド壁、71…第1スリット、71a…第1壁面、72…第2スリット、72a…第2壁面、75…交差部、J1…モータ軸線、J3…スライド軸線、S…移動規制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7