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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 87/02 20060101AFI20230526BHJP
   D05B 29/02 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
D05B87/02
D05B29/02 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019167931
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021045232
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】石川 宗幸
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-64386(JP,A)
【文献】特開平3-133486(JP,A)
【文献】実開平5-44082(JP,U)
【文献】特開2012-24185(JP,A)
【文献】特開2009-165738(JP,A)
【文献】実開昭55-37013(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操作可能に構成された糸通しレバーを有し、前記糸通しレバーを初期位置から押下げることで糸を針の針孔に挿通させる糸通し装置と、
前記糸通しレバーと一体に昇降する昇降部と、
非操作位置から操作位置へ操作されることで押えを押え位置から上昇させる操作レバーと、
前記操作レバーの操作に連動するレバー連動機構と、
を備え、
前記操作レバーの操作位置において、下降する前記昇降部が前記レバー連動機構に係合し、前記レバー連動機構が、前記糸通しレバーの操作力を前記操作レバーに伝達して、前記操作レバーを操作位置から非操作位置へ移動させるミシン。
【請求項2】
前記操作レバーの操作時には、前記レバー連動機構が、前記糸通しレバーの初期位置における前記昇降部に係合しない請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記糸通し装置は、前記糸を前記針孔に挿通させる挿通動作を行う糸通し機構部を有しており、
前記糸通しレバーは、押下げられることで初期位置から第1押下げ位置を経由して第2押下げ位置に下降し、
前記糸通しレバーの第1押下げ位置への手前において、操作位置の前記操作レバーが前記レバー連動機構によって非操作位置へ移動されると共に、前記レバー連動機構と前記昇降部との係合が解除され、
前記糸通しレバーの第1押下げ位置から第2押下げ位置への下降時に、前記糸通し機構部が挿通動作を行う請求項1又は請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記操作レバーには、ギヤ部が形成されており、
前記レバー連動機構は、前記ギヤ部と連結されたギヤ列によって構成されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載のミシン。
【請求項5】
前記昇降部には、作動軸が設けられ、
前記ギヤ列は、前記作動軸と係合可能に構成された係合部を有する連結ギヤを備えており、
前記糸通しレバーの初期位置及び前記操作レバーの操作位置において、前記係合部が前記作動軸の軌跡上で且つ前記作動軸の下側に離間して配置され、前記操作レバーの非操作位置において、前記係合部が、前記作動軸の軌跡上から外れた位置に配置される請求項4に記載のミシン。
【請求項6】
前記連結ギヤには、係合溝が設けられており、
前記作動軸と前記係合部との係合後に、前記作動軸が前記係合溝内に挿入される請求項5に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸を針の針孔に挿通させる糸通し装置を有するミシンがある。この糸通し装置では、糸通しレバーを押し下げることで、糸通し装置が下降して、糸通し装置において糸通し動作が行われる。また、ミシンでは、操作レバーを操作することで、押えを押え位置から上昇させることができる。ここで、押えが、押え位置から上昇した位置に配置された状態で、糸通し装置を作動させると、糸通し装置と押えとが干渉する場合がある。このため、糸通し装置と押えとの干渉を防止するために、押えを押え位置に配置した状態で、糸通し装置による糸通しを行う。すなわち、押えが上昇した位置に配置されている場合には、操作レバーを操作して、押えを押え位置に配置させた後に、糸通し装置を作動させる必要がある。
【0003】
これに対して、下記特許文献1に記載のミシンでは、糸通し機構を作動させるための糸通し操作手段が操作されると、押えが、糸通し機構の糸通しフックとの干渉を回避する位置に昇降される。これにより、押えを押え位置に配置して、糸通しを行うことができる。このため、作業者の作業効率を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-14835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のミシンでは、モータの駆動によって押えの位置を移動させる構造をしている。このため、ミシンのコストアップを招くという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、コストアップを抑制しつつ、作業効率を向上することができるミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、手動操作可能に構成された糸通しレバーを有し、前記糸通しレバーを初期位置から押下げることで糸を針の針孔に挿通させる糸通し装置と、前記糸通しレバーと一体に昇降する昇降部と、非操作位置から操作位置へ操作されることで押えを押え位置から上昇させる操作レバーと、前記操作レバーの操作に連動するレバー連動機構と、を備え、前記操作レバーの操作位置において、下降する前記昇降部が前記レバー連動機構に係合し、前記レバー連動機構が、前記糸通しレバーの操作力を前記操作レバーに伝達して、前記操作レバーを操作位置から非操作位置へ移動させるミシンである。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記操作レバーの操作時には、前記レバー連動機構が、前記糸通しレバーの初期位置における前記昇降部に係合しないミシンである。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記糸通し装置は、前記糸を前記針孔に挿通させる挿通動作を行う糸通し機構部を有しており、前記糸通しレバーは、押下げられることで初期位置から第1押下げ位置を経由して第2押下げ位置に下降し、前記糸通しレバーの第1押下げ位置への手前において、操作位置の前記操作レバーが前記レバー連動機構によって非操作位置へ移動されると共に、前記レバー連動機構と前記昇降部との係合が解除され、前記糸通しレバーの第1押下げ位置から第2押下げ位置への下降時に、前記糸通し機構部が挿通動作を行うミシンである。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記操作レバーには、ギヤ部が形成されており、前記レバー連動機構は、前記ギヤ部と連結されたギヤ列によって構成されているミシンである。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記昇降部には、作動軸が設けられ、前記ギヤ列は、前記作動軸と係合可能に構成された係合部を有する連結ギヤを備えており、前記糸通しレバーの初期位置及び前記操作レバーの操作位置において、前記係合部が前記作動軸の軌跡上で且つ前記作動軸の下側に離間して配置され、前記操作レバーの非操作位置において、前記係合部が、前記作動軸の軌跡上から外れた位置に配置されるミシンである。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記連結ギヤには、係合溝が設けられており、前記作動軸と前記係合部との係合後に、前記作動軸が前記係合溝内に挿入されるミシンである。
【発明の効果】
【0013】
上記構成のミシンによれば、コストアップを抑制しつつ、作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るミシンの要部を示す右斜め前方から見た斜視図である。
図2図1に示されるミシンの要部を押え棒及び針棒を取り除いた状態で示す右斜め前方から見た斜視図である。
図3】(A)は、図2に示される糸通し装置の糸通しレバーが初期位置に配置され且つ操作レバーが操作位置に配置された状態を示す正面図であり、(B)は、(A)に示される状態から糸通しレバーが押下げられて作動軸が第1ギヤの係合部に当接した状態を示す正面図である。
図4】(A)は、図3(B)に示される状態から糸通しレバーがさらに押し下げられて、作動軸が第1ギヤの係合溝に挿入された状態を示す正面図であり、(B)は、(A)に示される状態から糸通しレバーがさらに押下げられた状態を示す正面図である。
図5図4(B)示される状態から糸通しレバーがさらに押し下げられて第1押下げ位置の手前に配置された状態を示す正面図である。
図6図2に示されるレバー連動機構の変形例を説明するための説明図であり、(A)は、変形例のレバー連動機構における図3(A)に対応する説明図であり、(B)は、変形例のレバー連動機構における図5に対応する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係るミシン10について説明する。なお、図面において、適宜示される矢印UP、矢印FR、矢印RHは、それぞれミシン10の上側、前側、右側を示している。そして、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときは、特に断りのない限り、ミシン10の上下、前後、左右を示すものとする。
【0016】
図1に示されるように、ミシン10は、押え棒12と、針棒24と、操作レバー34と、開放アーム42と、糸通し装置50と、昇降部60(図2参照)と、レバー連動機構70と、を含んで構成されている。以下、ミシン10の各構成について説明する。
【0017】
(押え棒12について)
押え棒12は、上下方向を軸方向とした円柱状に形成されて、フレーム14によって上下方向に移動可能に支持されている。押え棒12の上下方向中間部には、押え棒抱き16が設けられている。押え棒抱き16は、上下方向を板厚方向とし且つ左右方向に延在された略長尺板状に形成されている。押え棒抱き16の左端部(基端部)は、右側へ開放された略U字形状に屈曲されて、押え棒12に固定されている。また、押え棒抱き16の右端部(先端部)が押え棒抱き16の左端部よりも後側に配置されるように、押え棒抱き16の長手方向中間部が、平面視で略クランク状に形成されている。そして、押え棒抱き16の右端部が、後述する、操作レバー34によって下側から支持されている。これにより、押え棒12の上下位置が決定されている。
【0018】
押え棒12の上部には、圧縮コイルスプリングとして構成された押えバネ18が装着されており、押えバネ18は、押え棒抱き16の上側に配置されている。押えバネ18の下端部は、押え棒抱き16に係止され、押えバネ18の上端部は、フレーム14に係止されており、押えバネ18が、押え棒抱き16(押え棒12)を下側へ付勢している。
【0019】
押え棒12の下端部には、押え20が取付けられており、押え20は、ミシン10の針板22の上側に配置されている。そして、後述する操作レバー34の非操作位置では、押え20が針板22の上側の押え位置(図5に示される位置)に配置され、操作レバー34の操作位置では、押え20が押え位置から上昇した上昇位置(図1及び図3(A)に示される位置)に配置される構成になっている。
【0020】
(針棒24について)
針棒24は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。針棒24は、押え棒12の前側に配置されて、針棒支持体26によって上下方向に移動可能に支持されている。なお、針棒支持体26は、上下方向に延在された略矩形柱状に形成されて、連結部材28を介してフレーム14に支持されている。
【0021】
針棒24の下端部には、糸掛け部30が設けられている。この糸掛け部30は、所定の形状を成すプレート状に形成されて、ネジによって針棒24の下端部に固定されている。この糸掛け部30は、糸駒(図示省略)から引出され且つミシン10の天秤(図示省略)を経由した糸としての上糸を掛ける部材として構成されている。
【0022】
また、針棒24の下端部には、針32が固定されている。詳しくは、針32の上端部が、ネジによって針棒24の下端部に固定されて、針32が、針棒24から下側へ延出されている。また、針32の下端部には、針孔32Aが貫通形成されており、針孔32Aが前後方向に貫通するように、針32が針棒24に固定されている。
【0023】
(操作レバー34について)
操作レバー34は、押え棒抱き16の先端側部分の下側に配置されている。操作レバー34は、前後方向を軸方向としてフレーム14に回動可能に支持されて、非操作位置(図5に示される位置)と操作位置(図1及び図3(A)に示される位置)との間を回転操作可能に構成されている。なお、以下の説明では、操作レバー34が操作位置に配置された状態として説明する。
【0024】
図1図3(A)及び(B)に示されるように、操作レバー34は、前後方向を板厚方向とし且つ左右方向に延在された略長尺板状に形成されている。具体的には、操作レバー34は、回転支持部36及びレバー本体38を含んで構成されている。
【0025】
回転支持部36は、前後方向を軸方向とした略円筒状に形成されている。そして、フレーム14に設けられた支持軸40が、回転支持部36の内部に挿入されて、回転支持部36が支持軸40によって回転可能に支持されている。回転支持部36における外周部の下部には、レバー側ギヤ部36Aが形成されており、レバー側ギヤ部36Aは、複数のギヤ歯によって構成されて、回転支持部36の周方向に沿って延在されている。
【0026】
回転支持部36の外周部における後端部には、後述する開放アーム42を作動させるためのアームカム36Bが形成されている。アームカム36Bは、前後方向を板厚方向とする板カムとして構成されて、回転支持部36から右側へ突出されている。
【0027】
レバー本体38は、左右方向に延在されると共に、回転支持部36の上部から右側へ延出されている。レバー本体38の左端部の外周面には、第1カム面38A及び第2カム面38Bが形成されている。第1カム面38Aは、回転支持部36の外周面から上側へ延出されており、第2カム面38Bは、第1カム面38Aの上端から右側へ延出されている。より詳しくは、正面視で、第1カム面38Aは、上側へ向かうに従い右側へ若干傾斜しており、第2カム面38Bは、左右方向に沿って延在されている。
【0028】
そして、操作レバー34の操作位置では、押え棒抱き16の先端部が第2カム面38Bに載置されて、押え20が上昇位置に保持されている。また、操作レバー34を操作位置から非操作位置側へ回転させると、第2カム面38Bと第1カム面38Aとの境界部が、押え棒抱き16の下面を摺動して、押え棒抱き16が下降するようになっている(図4(A)参照)。また、操作レバー34が操作位置から所定角度回転すると、第1カム面38Aが押え棒抱き16の下面を摺動し(図4(B)参照)、操作レバー34の非操作位置では、押え棒抱き16の先端部が回転支持部36の外周部に当接するようになっている(図5参照)。これにより、押え20が上昇位置から押え位置へ下降する構成になっている。
【0029】
(開放アーム42について)
図1及び図2に示されるように、開放アーム42は、前後方向を板厚方向とし且つ上下方向を長手方向とする略長尺板状に形成されている。開放アーム42の長手方向中間部には、支持孔42Aが貫通形成されている。そして、フレーム14に設けられたアーム軸44が支持孔42Aの内部に挿入されて、開放アーム42が、アーム軸44によって前後方向を軸方向として回転可能に支持されている。
【0030】
開放アーム42の下端部は、操作レバー34のレバー本体38の後側に配置されると共に、操作レバー34のアームカム36Bの右側に隣接して配置されている。また、アーム軸44には、トーションスプリングとして構成されたアーム付勢バネ46が装着されている。アーム付勢バネ46の一端部は、フレーム14に係止され、アーム付勢バネ46の他端部は、開放アーム42に係止されており、正面視でアーム付勢バネ46が開放アーム42を時計回り方向に付勢している。これにより、開放アーム42の下端部が、操作レバー34のアームカム36Bに当接している。そして、操作レバー34が操作位置から非操作位置へ回転されるときには、アームカム36Bによって、開放アーム42が、アーム軸44を中心として時計回りに回転する構成になっている。
【0031】
また、開放アーム42の上端部は、上糸を挟持する一対の糸調子皿(図示省略)に連結されている。そして、操作レバー34が操作位置から非操作位置へ回転されるときには、開放アーム42の回転によって、一対の糸調子皿が、開放された状態から閉じる(挟持する)状態に遷移するように構成されている。
【0032】
(糸通し装置50について)
図2及び図3(A)及び(B)に示されるように、糸通し装置50は、糸通し軸52と、ガイド軸54と、糸通しレバー56と、糸通し機構部58と、を含んで構成されている。
【0033】
糸通し軸52は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。糸通し軸52は、針棒支持体26(図2及び図3では、不図示)の後側に配置されて、針棒支持体26によって上下方向に移動可能に支持されている。ガイド軸54は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。ガイド軸54は、糸通し軸52の左側に配置されて、針棒支持体26によって上下方向に移動可能に支持されている。
【0034】
糸通しレバー56は、上下方向に延在された略矩形柱状に形成されて、針棒支持体26の左側に配置されている。糸通しレバー56は、針棒支持体26に固定された支持部材26Aによって、上下方向に移動可能に支持されている。この糸通しレバー56は、糸通し装置50を手動操作するための部材として構成されており、糸通しレバー56が押下げ操作されることで、糸通し装置50が作動する構成になっている。具体的には、糸通し装置50の非作動状態では、糸通しレバー56が初期位置(図3(A)に示される位置)に配置されている。そして、糸通しレバー56が初期位置から押下げられることで、糸通しレバー56が第1押下げ位置(図5において1点鎖線にて示される位置)を経由して、第2押下げ位置(図5において2点鎖線にて示される位置)に下降する構成になっている。なお、糸通しレバー56は、図示しないレバー付勢バネによって上側へ付勢されて、初期位置に保持されている。
【0035】
また、糸通しレバー56の下端部には、前側へ屈曲された把持部56Aが形成されている。一方、糸通しレバー56の上端部には、右側へ突出された支持部56Bが形成されている。そして、糸通し軸52及びガイド軸54の上端部が、支持部56Bに支持されて、糸通し軸52及びガイド軸54が、糸通しレバー56と共に、初期位置と第1押下げ位置との間を昇降する構成になっている。また、糸通しレバー56が第1押下げ位置から第2押下げ位置へ下降するときには、糸通し軸52及びガイド軸54が第1押下げ位置に保持されると共に、糸通し軸52が自身の軸回りに回転する構成になっている。
【0036】
糸通し機構部58は、糸通し軸52及びガイド軸54の下端部に設けられている。この糸通し機構部58は、糸保持部58Aを有しており、糸保持部58Aは、糸掛け部30を経由した上糸を保持する部材として構成されている。そして、糸通しレバー56が第1押下げ位置から第2押下げ位置へ下降するときには、糸通し機構部58が、針32の周囲を旋回して上糸を針32の針孔32Aに挿通させる挿通動作を行う構成になっている。
【0037】
(昇降部60について)
昇降部60は、前後方向を板厚方向とし且つ上下方向に延在された略長尺板状に形成されて、押え棒12の後側に配置されている。また、昇降部60の上端部は、前側へ屈曲されて、糸通しレバー56の上端部に接続されている。これにより、昇降部60が、糸通しレバー56と一体に昇降するようになっている。すなわち、昇降部60が、糸通しレバー56と共に、初期位置から、第1押下げ位置を経由して、第2押下げ位置へ下降する構成になっている。また、昇降部60の下端部には、作動軸62が設けられている。作動軸62は、前後方向を軸方向とする円柱状に形成されて、昇降部60から後側へ突出している。
【0038】
(レバー連動機構70について)
図1図3(A)及び(B)に示されるように、レバー連動機構70は、ギヤ列によって構成されて、操作レバー34に連結されている。具体的には、レバー連動機構70は、「連結ギヤ」としての第1ギヤ72と、第2ギヤ74と、第3ギヤ76と、を含んで構成されている。
【0039】
第1ギヤ72は、前後方向を板厚方向とした円板状に形成されて、昇降部60の後側で且つ作動軸62の右斜め下側に配置されている。第1ギヤ72の中央部には、第1ギヤ孔72Aが貫通形成されている。そして、フレーム14に設けられた第1ギヤ軸80が第1ギヤ孔72Aの内部に挿入されて、第1ギヤ72が、第1ギヤ軸80によって前後方向を軸方向として回転可能に支持されている。また、第1ギヤ72の外周部には、複数のギヤ歯によって構成された第1ギヤ部72Bが形成されており、第1ギヤ部72Bは第1ギヤ72の周方向全周に亘って形成されている。
【0040】
第1ギヤ72の前面には、一対の係合壁72C,72Dが形成されている。一対の係合壁72C,72Dは、正面視で、左側へ向かうに従い上側へ傾斜しており、第1ギヤ72の径方向に対して直交する方向において、平行に配置されている。これにより、一対の係合壁72C,72Dの間には、係合溝72Eが形成されており、係合溝72Eは、第1ギヤ72の径方向外側(詳しくは、左斜め上方側)及び前側へ開放されている。また、一方の係合壁72Cは、係合溝72Eに対して第1ギヤ72の回転方向一方側(図3(B)の矢印A方向側)に配置されており、他方の係合壁72Dが係合溝72Eに対して第1ギヤ72の回転方向他方側に配置されている。さらに、係合溝72Eの溝幅は、作動軸62の直径よりも僅かに大きく設定されており、作動軸62が係合溝72E内に挿入可能に構成されている。
【0041】
係合壁72Cの先端部は、係合部72C1として構成されており、係合部72C1は、係合壁72Dの先端部よりも第1ギヤ72の径方向外側へ突出している。また、係合部72C1は、作動軸62の下側に離間して配置されている。すなわち、係合部72C1が、上下方向に移動する作動軸62の軌跡上で且つ作動軸62の下側に離間して配置されている。これにより、糸通しレバー56が初期位置から下降することで、作動軸62が係合部72C1に係合して、第1ギヤ72が回転方向一方側へ回転する構成になっている。
【0042】
第2ギヤ74は、第1ギヤ72と同様に、前後方向を板厚方向とした円板に形成されて、第1ギヤ72の下側に配置されている。第2ギヤ74の中央部には、第2ギヤ孔74Aが貫通形成されている。そして、フレーム14に設けられた第2ギヤ軸82が、第2ギヤ孔74Aの内部に挿入されて、第2ギヤ74が、第2ギヤ軸82によって前後方向を軸方向として回転可能に支持されている。また、第2ギヤ74の外周部には、複数のギヤ歯によって構成された第2ギヤ部74Bが形成されており、第2ギヤ部74Bは、第2ギヤ74の周方向全周に亘って形成されている。そして、第2ギヤ部74Bが、第1ギヤ72の第1ギヤ部72Bに噛合されている。
【0043】
第3ギヤ76は、第2ギヤ74と同様に、前後方向を板厚方向とした円板状に形成されて、第2ギヤ74の右斜め下側で且つ操作レバー34の回転支持部36の間の左斜め下側に配置されている。第3ギヤ76の中央部には、第3ギヤ孔76Aが貫通形成されている。そして、フレーム14に設けられた第3ギヤ軸84が第3ギヤ孔76Aの内部に挿入されて、第3ギヤ76が、第3ギヤ軸84によって前後方向を軸方向として回転可能に支持されている。また、第3ギヤ76の外周部には、複数のギヤ歯によって構成された第3ギヤ部76Bが形成されており、第3ギヤ部76Bは、第3ギヤ76の周方向全周に亘って形成されている。そして、第3ギヤ部76Bが、第2ギヤ74の第2ギヤ部74B及び操作レバー34のレバー側ギヤ部36Aに噛合されている。これにより、レバー連動機構70(第1ギヤ72~第3ギヤ76)が、操作レバー34に連結され、操作レバー34の回転に連動する構成になっている。
【0044】
すなわち、糸通しレバー56が初期位置から押下げられると、第1ギヤ72が作動軸62によって回転方向一方側へ回転して、レバー連動機構70によって操作レバー34が操作位置から非操作位置へ回転するように構成されている。なお、糸通しレバー56が初期位置に維持された状態(糸通し装置50の非作動状態)において、操作レバー34が操作位置から非操作位置側へ回転操作されて、第1ギヤ72が回転方向一方側へ回転するときには、第1ギヤ72の係合壁72Dが作動軸62に係合しないように、係合壁72Dの先端位置が設定されている。すなわち、操作レバー34が操作位置と非操作位置との間を回転するときには、操作レバー34に連動するレバー連動機構70(第1ギヤ72)が、糸通しレバー56の初期位置における昇降部60(作動軸62)に係合しない構成になっている。
【0045】
また、糸通しレバー56が初期位置から押下げられて操作レバー34が操作位置から非操作位置側へ回転するときには、糸通しレバー56の第1押下げ位置の手前において、第1ギヤ72の係合溝72Eと作動軸62との係合状態が解除されると共に、操作レバー34が、非操作位置に配置される構成になっている。さらに、操作レバー34の非操作位置では、第1ギヤ72の係合部72C1が、上下動する作動軸62の軌跡上から右側へ外れた位置に配置される設定になっている。より詳しくは、操作レバー34の非操作位置では、第1ギヤ72の係合壁72C,72Dが、作動軸62の軌跡上から右側へ外れた位置に配置される設定になっている(図5参照)。
【0046】
(作用効果)
以下、操作レバー34が操作位置に配置された状態で、糸通し装置50を作動させたときの動作を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
図3(A)に示されるように、糸通し装置50の非作動状態では、糸通しレバー56及び昇降部60が初期位置に配置されている。また、操作レバー34の操作位置では、押え20が上昇位置に配置されており、レバー連動機構70における第1ギヤ72の係合部72C1が、昇降部60の作動軸62に対して下側に離間した位置に配置されている。さらに、この状態では、開放アーム42によって、一対の糸調子皿が開放された状態になっている。
【0048】
この状態で、作業者が、糸通しレバー56の把持部56Aを把持して、糸通しレバー56を初期位置から押下げると、糸通し装置50の糸通し機構部58及び昇降部60が、糸通しレバー56と共に下降する。そして、図3(B)に示されるように、昇降部60の作動軸62が、第1ギヤ72の係合部72C1に当接して、作動軸62と第1ギヤ72とが係合する。なお、図3(B)に示される状態では、操作レバー34が操作位置に配置され、押え20が上昇位置に配置されている。
【0049】
この状態から糸通しレバー56をさらに押下げると、昇降部60の作動軸62が、第1ギヤ72の係合部72C1を下側へ押圧して、第1ギヤ72が回転方向一方側(図3(B)の矢印A方向側)へ回転する。そして、図4(A)に示されるように、第1ギヤ72が回転方向一方側すると、作動軸62が第1ギヤ72の係合溝72E内に挿入される。また、このときには、レバー連動機構70の第2ギヤ74及び第3ギヤ76が回転するため、第3ギヤ76に噛合された操作レバー34が、操作位置から非操作位置側へ回転する。すなわち、レバー連動機構70によって、糸通しレバー56の操作力(押下げ力)が操作レバー34に伝達されて、操作レバー34が回転する。
【0050】
操作レバー34が、操作位置から非操作位置側へ回転すると、操作レバー34の第1カム面38Aと第2カム面38Bとの境界部が、押え棒抱き16の下面を摺動して、押え棒抱き16(すなわち、押え棒12)が下降する。これにより、押え20が上昇位置から下降する。また、操作レバー34が操作位置から回転することで、操作レバー34のアームカム36Bによって、開放アーム42が、正面視で、アーム軸44を中心として時計回りに回転する。
【0051】
図4(B)に示されるように、糸通しレバー56を図4(A)の状態からさらに押下げると、作動軸62によって、レバー連動機構70の第1ギヤ72、第2ギヤ74、及び第3ギヤ76が、さらに回転して、操作レバー34が、非操作位置側へさらに回転する。これにより、押え棒12及び押え20が、さらに下降すると共に、開放アーム42が、さらに回転する。また、この状態では、作動軸62が、第1ギヤ72の係合溝72Eの開口部側へ移動して、係合部72C1と係合する。さらに、この状態では、操作レバー34における押え棒抱き16との摺動部が、第1カム面38Aと第2カム面38Bとの境界部から第1カム面38Aに遷移して、押えバネ18の下側への付勢力が、押え棒抱き16から操作レバー34の第1カム面38Aに作用する。
【0052】
図5に示されるように、糸通しレバー56が、第1押下げ位置の手前まで押し下げられると、操作レバー34が非操作位置に配置される。これにより、押え20が、押え位置に下降して、針板22の上側に隣接して配置される。また、この状態では、昇降部60の作動軸62と第1ギヤ72の係合部72C1との係合状態が解除される。具体的には、第1ギヤ72の係合壁72C(係合部72C1を含む)及び係合壁72Dが、作動軸62の軌跡上から右側へ外れた位置に配置される。なお、操作レバー34が非操作位置に配置された状態では、開放アーム42によって、一対の糸調子皿が閉じた状態になる。
【0053】
図5に示される状態から糸通しレバー56をさらに押し下げると、糸通しレバー56が第1押下げ位置に到達する(図5において1点鎖線にて示される糸通しレバー56を参照)。また、図示は省略するが、このときには、糸通し装置50の糸通し機構部58及び昇降部60が、糸通しレバー56と共に、第1押下げ位置に下降する。なお、この状態では、昇降部60の作動軸62と第1ギヤ72の係合部72C1との係合状態が既に解除されているため、操作レバー34の非操作位置に配置された状態が維持されると共に、押え20の押え位置に配置された状態が維持される。
【0054】
そして、糸通しレバー56を第1押下げ位置から第2押下げ位置(図5において2点鎖線にて示される糸通しレバー56を参照)へさらに押下げると、押え20が押え位置に配置された状態で、糸通し装置50の糸通し機構部58が、針32の周囲を旋回して、針32の針孔32Aに上糸を挿通させる挿通動作を行う。これにより、糸通し装置50における針32の針孔32Aに対する上糸の糸通し動作が完了する。
【0055】
なお、糸通し装置50の糸通し動作の完了後では、糸通しレバー56に対する押下げ操作を解除することで、レバー付勢バネの付勢力によって、糸通しレバー56が第2押下げ位置から上昇して初期位置に復帰する。また、糸通しレバー56の上昇時には、昇降部60が糸通しレバー56と共に上昇する。なお、このときには、第1ギヤ72の係合壁72C,72Dが、作動軸62の軌跡上から右側へ外れた位置に配置されているため、作動軸62が、係合壁72C,72Dに干渉することなく、昇降部60が糸通しレバー56と共に上昇する。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態のミシン10では、昇降部60が、糸通し装置50の糸通しレバー56と一体に昇降可能に構成されている。また、操作レバー34には、操作レバー34の回転操作に連動するレバー連動機構70が連結されている。そして、上述のように、操作レバー34が操作位置に配置された状態で、糸通しレバー56が初期位置から押下げられると、昇降部60(の作動軸62)がレバー連動機構70(の第1ギヤ72)に係合し、レバー連動機構70が糸通しレバー56の操作力を操作レバー34に伝達して、操作レバー34が操作位置から非操作位置へ回転される。
【0057】
このため、糸通し装置50を作動させるときに、押え20が上昇位置に配置されていても、糸通しレバー56を押下げ操作することで、操作レバー34を操作位置から非操作位置へ回転させて、押え20を押え位置に戻すことができる。つまり、モータ等の駆動部を用いることなく、糸通し装置50の糸通しレバー56を手動で押下げることで、上昇した押え20を糸通し装置50と干渉しない押え位置に復帰させることができる。これにより、糸通し装置50の作動前に、操作位置に配置された操作レバー34を非操作位置へ回転させる作業を不要にすることができる。したがって、本実施の形態のミシン10によれば、コストアップを抑制しつつ、作業効率を向上することができる。
【0058】
また、操作レバー34には、レバー側ギヤ部36Aが形成されている。さらに、レバー連動機構70は、レバー側ギヤ部36Aと連結されたギヤ列(第1ギヤ72、第2ギヤ74、及び第3ギヤ76)によって構成されている。このため、簡易な構成で、糸通しレバー56の操作力を操作レバー34に伝達することができる。
【0059】
また、糸通し装置50における昇降部60には、作動軸62が設けられており、レバー連動機構70の第1ギヤ72には、作動軸62に係合可能に構成された係合部72C1が設けられている。そして、糸通しレバー56の初期位置及び操作レバー34の操作位置において、第1ギヤ72係合部72C1が、作動軸62の軌跡上で且つ作動軸62の下側に離間して配置されている。このため、糸通しレバー56を初期位置から押下げることで、作動軸62を係合部72C1に係合させて、レバー連動機構70(第1ギヤ72、第2ギヤ74、及び第3ギヤ76)を作動させることができる。これにより、レバー連動機構70によって糸通しレバー56の操作力を操作レバー34に伝達して、操作レバー34を操作位置から非操作位置に回転させることができる。
【0060】
また、糸通し装置50の非作動状態において、操作レバー34が操作位置から非操作位置側へ回転操作されて、第1ギヤ72が回転方向一方側へ回転するときには、第1ギヤ72の係合壁72Dが作動軸62に係合しない構成になっている。すなわち、操作レバー34の非操作位置と操作位置との間の回転操作時には、レバー連動機構70(の第1ギヤ72)が、糸通しレバー56の初期位置における昇降部60(の作動軸62)に係合しない構成になっている。このため、操作レバー34の回転操作時に、糸通し装置50が作動することを抑制できる。すなわち、糸通し装置50の糸通し作業とは独立して、操作レバー34によって押え20を上げ下げすることができる。
【0061】
また、上述のように、操作レバー34が操作位置に配置された状態で、糸通しレバー56を初期位置から押下げると、糸通しレバー56の第1押下げ位置への手前において、操作レバー34がレバー連動機構70によって非操作位置へ移動される。つまり、押え20が押え位置に復帰する。そして、糸通しレバー56の第1押下げ位置から第2押下げ位置への下降時に、糸通し装置50の糸通し機構部58が、上糸を針32の針孔32Aに挿通させる挿通動作を行う。このため、糸通し機構部58の挿通動作前に、押え20を押え位置に復帰させることができる。
【0062】
また、糸通しレバー56の第1押下げ位置への手前の位置において、レバー連動機構70の第1ギヤ72の係合部72C1と昇降部60の作動軸62との係合状態が解除される。つまり、操作レバー34の非作動位置では、昇降部60の作動軸62から第1ギヤ72の係合部72C1への操作力の伝達が遮断される。このため、糸通し機構部58に対して挿通動作をさせるために、糸通しレバー56を第1押下げ位置から第2押下げ位置へさらに押し下げても、糸通しレバー56の操作力が、非操作位置に配置された操作レバー34に伝達されることを抑制できる。これにより、糸通しレバー56の第1押下げ位置から第2押下げ位置への押し下げ時に、操作レバー34が非操作位置からさらに回転されることを抑制できると共に、押え20を押え位置に維持することができる。
【0063】
また、操作レバー34の非操作位置では、第1ギヤ72の係合壁72C(係合部72C1を含む)及び係合壁72Dが、作動軸62の軌跡上から右側へ外れた位置に配置される。これにより、押え20が、既に押え位置に配置された状態で、糸通しレバー56を初期位置から押し下げたときには、作動軸62が第1ギヤ72の係合部72C1に係合しない。このため、操作レバー34の非操作位置では、糸通し装置50を、操作レバー34及びレバー連動機構70とは独立して作動させることができる。
【0064】
また、第1ギヤ72には、係合溝72Eが設けられている。そして、操作レバー34が操作位置に配置された状態で、糸通しレバー56を押し下げると、作動軸62が、第1ギヤ72の係合部72C1に係合した後に、係合部72C1を押し下げながら係合溝72E内に挿入される。これにより、作動軸62の係合溝72E内への挿入後では、第1ギヤ72の回転方向両側において、作動軸62と係合溝72Eとが係合する。このため、糸通しレバー56の下降と、操作レバー34の回転と、を連動させることができる。その結果、糸通しレバー56の押下げ操作によって操作レバー34が操作位置から非操作位置へ回転するときに、押えバネ18によって付勢されている押え棒12(すなわち、押え20)が一気に下降することを抑制できる。また、糸通しレバー56の押下げ操作における後期には、押えバネ18の付勢力が、操作レバー34、レバー連動機構70を介して、作動軸62に伝達される。より詳しくは、操作レバー34における押え棒抱き16との摺動部が、第1カム面38Aと第2カム面38Bとの境界部から第1カム面38Aに遷移した後には、押えバネ18の付勢力が、操作レバー34、レバー連動機構70を介して、作動軸62に伝達される。これにより、押えバネ18による下側への力が作動軸62(すなわち、糸通しレバー56)に作用する。このため、糸通しレバー56の押下げ操作の後期における、糸通しレバー56の操作力(押下げ力)を低くすることができる。したがって、糸通しレバー56の操作性を向上することができる。
【0065】
(レバー連動機構70の変形例について)
次に、図6(A)及び(B)を用いて、レバー連動機構70の変形例について説明する。
【0066】
レバー連動機構70の変形例では、レバー連動機構70において、第2ギヤ74及び第3ギヤ76が省略されており、第2ギヤ74及び第3ギヤ76の代わりに、ラック90が設けられている。ラック90は、上下方向に延在され且つ前後方向を板厚方向とする略長尺板状に形成され、第1ギヤ72と操作レバー34との間に配置されると共に、フレーム14(図6(A)及び(B)では、不図示)によって上下方向にスライド可能に支持されている。
【0067】
ラック90の左側面には、第1ラックギヤ部90Aが形成されている。第1ラックギヤ部90Aは、複数のラック歯によって構成されて、第1ギヤ72の第1ギヤ部72Bに噛合されている。また、ラック90の右側面には、第2ラックギヤ部90Bが形成されている。第2ラックギヤ部90Bは、複数のラック歯によって構成されて、操作レバー34のレバー側ギヤ部36Aに噛合されている。
【0068】
なお、レバー連動機構70の変形例を用いる場合には、操作レバー34の前後方向の厚みが、本実施の形態と比べて厚く設定されると共に、押え棒抱き16が左右方向に直線状に延在されている。また、第1ギヤ72、ラック90、及び操作レバー34のレバー側ギヤ部36Aが、押え棒抱き16の後側に配置されて、押え棒抱き16と干渉しないように設定されている。
【0069】
そして、図6(A)に示されるように、糸通しレバー56(図6(A)では、不図示)が初期位置に配置され且つ操作レバー34が操作位置に配置された状態では、第1ギヤ72の係合部72C1が、昇降部60の作動軸62の下側に離間して配置されている。この状態から糸通しレバー56を押下げると、昇降部60の作動軸62が、第1ギヤ72の係合部72C1に係合して、第1ギヤ72が回転方向一方側へ回転する。また、このときには、第1ギヤ72に噛合されたラック90が、上側へ変位して、ラック90に噛合された操作レバー34が非操作位置へ回転する(図6(B)参照)。これにより、レバー連動機構70の変形例においても、本実施の形態と同様に、糸通しレバー56の操作力を、レバー連動機構70によって操作レバー34に伝達して、操作レバー34を操作位置から非操作位置へ回転させることができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、レバー連動機構70の第1ギヤ72が、係合壁72D及び係合溝72Eを有しているが、第1ギヤ72において、係合壁72D及び係合溝72Eを省略してもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、レバー連動機構70がギヤ列によって構成されているが、レバー連動機構70の構成はこれに限らない。例えば、レバー連動機構70をリンク機構によって構成して、糸通しレバー56の操作力を、レバー連動機構70によって操作レバー34に伝達するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 ミシン
12 押え棒
14 フレーム
16 押え棒抱き
18 押えバネ
20 押え
22 針板
24 針棒
26 針棒支持体
26A 支持部材
28 連結部材
30 糸掛け部
32 針
32A 針孔
34 操作レバー
36 回転支持部
36A レバー側ギヤ部(ギヤ部)
36B アームカム
38 レバー本体
38A 第1カム面
38B 第2カム面
40 支持軸
42 開放アーム
42A 支持孔
44 アーム軸
46 アーム付勢バネ
50 糸通し装置
52 糸通し軸
54 ガイド軸
56 糸通しレバー
56A 把持部
56B 支持部
58 糸通し機構部
58A 糸保持部
60 昇降部
62 作動軸
70 レバー連動機構
72 第1ギヤ(連結ギヤ)
72A 第1ギヤ孔
72B 第1ギヤ部
72C 係合壁
72C1 係合部
72D 係合壁
72E 係合溝
74 第2ギヤ
74A 第2ギヤ孔
74B 第2ギヤ部
76 第3ギヤ
76A 第3ギヤ孔
76B 第3ギヤ部
80 第1ギヤ軸
82 第2ギヤ軸
84 第3ギヤ軸
90 ラック
90A 第1ラックギヤ部
90B 第2ラックギヤ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6