(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】型締装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/67 20060101AFI20230526BHJP
B29C 45/68 20060101ALI20230526BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20230526BHJP
B29C 33/24 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
B29C45/67
B29C45/68
B22D17/26 B
B22D17/26 H
B22D17/26 J
B29C33/24
(21)【出願番号】P 2019188403
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 政治
(72)【発明者】
【氏名】松浦 祐介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 文崇
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255579(JP,A)
【文献】特開2013-057332(JP,A)
【文献】特開2019-093597(JP,A)
【文献】特開昭51-131060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B29C 33/00 - 33/76
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる固定プラテンと、
可動金型が取り付けられる可動プラテンと、
前記可動プラテンを前記固定プラテンに対して型開閉方向に移動させる型開閉用駆動部と
、
前記可動プラテンの下部に設置されたガイドシューと、
前記ガイドシューに連結された型走行フレームと
を備え、
前記型開閉用駆動部は、
相互に噛み合うことで柱状の剛直化部を形成可能であると共に、相互に噛み外れることで分離可能な一対の噛合チェーンと、
前記一対の噛合チェーンの繰り出し及び引き込みを行うチェーン駆動部と
を備え、
前記剛直化部の先端部は、前記型走行フレームを介して前記ガイドシューに連結されており、
前記一対の噛合チェーンは、
前記型走行フレーム及び前記ガイドシューを介して前記可動プラテンに接続されており、前記チェーン駆動部による繰り出し及び引き込みにより該可動プラテンを型開閉方向に移動させるよう構成されている
ことを特徴とする型締装置。
【請求項2】
前記チェーン駆動部は、
一方の噛合チェーンと噛合するよう配された第1スプロケットと、
他方の噛合チェーンと噛合するよう配された第2スプロケットと、
前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットの少なくとも一方を回転駆動する電動式駆動機構と
を備え、
前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットは、同期して回転するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
前記可動プラテンを前記固定プラテン側に押圧して型締力を発生する油圧シリンダを更に備え、
前記電動式駆動機構は、サーボ機構による位置保持制御を備えた電動機を有し、
前記油圧シリンダにより型締力を発生させる際に、前記電動機の位置保持制御を解除可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の型締装置。
【請求項4】
前記固定プラテンに固定支持されて、前記可動プラテンを貫通するタイバーと、
前記可動プラテンに設けられ、該可動プラテンを前記タイバーに対して相対移動不能となるようロックすることが可能なタイバーロック装置と
を更に備え、
前記油圧シリンダにより型締力を発生させる際に、前記タイバーロック装置により前記可動プラテンを前記タイバーにロックすることで、前記電動機の位置保持制御を解除可能に構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の型締装置。
【請求項5】
前記可動プラテンは、
可動金型が取り付けられる可動ダイプレートと、
前記可動ダイプレートの前記固定プラテンとは反対側において、該可動ダイプレートに相対移動可能に連結されているダイロックプレートと
を更に備え、
前記油圧シリンダは、前記可動ダイプレートと前記ダイロックプレートとの間に配され、該ダイロックプレートに対して前記可動ダイプレートを前記固定プラテン側に押圧するよう構成されている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の型締装置。
【請求項6】
前記型開閉用駆動部は、相互に噛み外れることで分離した前記一対の噛合チェーンを、繰り出しと引き込みを可能にしつつ収容するチェーンボックスを更に備える
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の型締装置。
【請求項7】
前記固定プラテンが固設されると共に前記可動プラテンが型開閉方向に移動可能に配されたマシンベースを更に備え、
前記可動プラテンは、前記マシンベースに摺接するガイドシューライナーを介して、該マシンベース上に配置されている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の型締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機やダイカストマシン等に用いられる型締装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機やダイカストマシンに用いられる型締装置として、ベース上に固定されて固定金型を保持する固定ダイプレート(固定プラテン)と、移動金型を保持してベース上を型開閉方向に移動する移動ダイプレート(可動プラテン)と、型締力を発生する型締用油圧シリンダと、移動ダイプレートを型開閉方向に駆動する電動ボールねじ機構を備えた、2枚プラテン方式の型締装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動ボールねじ機構は、長尺なボールねじ軸を具備するため長尺な構造体である。しかも、型締装置では、移動ダイプレート(可動プラテン)を型開閉方向に駆動するため、電動ボールねじ機構は、その長手方向を型開閉方向に沿わせて設置される。このため、特許文献1に記載されているような型締装置では、電動ボールねじ機構を含めた装置全体の型開閉方向の長さが非常に長くなり、大きな設置スペースが必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化が可能であり、設置スペースを小さくすることができる型締装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る型締装置は、固定金型が取り付けられる固定プラテンと、可動金型が取り付けられる可動プラテンと、前記可動プラテンを前記固定プラテンに対して型開閉方向に移動させる型開閉用駆動部とを備え、前記型開閉用駆動部は、相互に噛み合うことで柱状の剛直化部を形成可能であると共に、相互に噛み外れることで分離可能な一対の噛合チェーンと、前記一対の噛合チェーンの繰り出し及び引き込みを行うチェーン駆動部とを備え、前記一対の噛合チェーンは、前記可動プラテンに接続されており、前記チェーン駆動部による繰り出し及び引き込みにより該可動プラテンを型開閉方向に移動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る型締装置において、前記チェーン駆動部は、一方の噛合チェーンと噛合するよう配された第1スプロケットと、他方の噛合チェーンと噛合するよう配された第2スプロケットと、前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットの少なくとも一方を回転駆動する電動式駆動機構とを備え、前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットは、同期して回転するよう構成されているとしてもよい。
【0008】
本発明に係る型締装置において、前記可動プラテンを前記固定プラテン側に押圧して型締力を発生する油圧シリンダを更に備え、前記電動式駆動機構は、サーボ機構による位置保持制御を備えた電動機を有し、前記油圧シリンダにより型締力を発生させる際に、前記電動機の位置保持制御を解除可能に構成されているとしてもよい。
【0009】
本発明に係る型締装置において、前記固定プラテンに固定支持されて、前記可動プラテンを貫通するタイバーと、前記可動プラテンに設けられ、該可動プラテンを前記タイバーに対して相対移動不能となるようロックすることが可能なタイバーロック装置とを更に備え、前記油圧シリンダにより型締力を発生させる際に、前記タイバーロック装置により前記可動プラテンを前記タイバーにロックすることで、前記電動機の位置保持制御を解除可能に構成されているとしてもよい。
【0010】
本発明に係る型締装置において、前記可動プラテンは、可動金型が取り付けられる可動ダイプレートと、前記可動ダイプレートの前記固定プラテンとは反対側において、該可動ダイプレートに相対移動可能に連結されているダイロックプレートとを更に備え、前記油圧シリンダは、前記可動ダイプレートと前記ダイロックプレートとの間に配され、該ダイロックプレートに対して前記可動ダイプレートを前記固定プラテン側に押圧するよう構成されているとしてもよい。
【0011】
本発明に係る型締装置において、前記型開閉用駆動部は、相互に噛み外れることで分離した前記一対の噛合チェーンを、繰り出しと引き込みを可能にしつつ収容するチェーンボックスを更に備えるとしてもよい。
【0012】
本発明に係る型締装置において、前記固定プラテンが固設されると共に前記可動プラテンが型開閉方向に移動可能に配されたマシンベースを更に備え、前記可動プラテンは、前記マシンベースに摺接するガイドシューを介して、該マシンベース上に配置されているとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型化が可能であり、設置スペースを小さくすることができる型締装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る型締装置を一部破断して示す正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る型締装置を上方から見ると共に一部を破断して示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る型締装置のうち下部に配置された各部材を上方から見ると共に一部を破断して示す平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る型締装置のうち上部に配置された各部材を左方から見た側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る型締装置を一部破断して示す平面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る型締装置を一部破断して示す平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る型締装置を一部破断して示す正面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る型締装置を示す左側面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る型締装置を一部破断して示す正面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る型締装置を示す左側面図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る型締装置を一部破断して示す正面図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係る型締装置を示す左側面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る型締装置を示す平面図である。
【
図14】本発明の第5実施形態に係る型締装置を一部破断して示す正面図である。
【
図15】本発明の第5実施形態に係る型締装置を示す左側面図である。
【
図16】本発明の第5実施形態に係る型締装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る型締装置10を一部破断して示す正面図であり、
図2は、型締装置10を上方から見ると共に一部を破断して示す平面図であり、
図3は、型締装置10のうち下部に配置された各部材を上方から見ると共に一部を破断して示す平面図であり、
図4は、型締装置10のうち上部に配置された各部材を左方から見た側面図である。
【0017】
[構成の説明]
まず、
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係る型締装置10を概説する。この型締装置10は、マシンベース20の上面21に固定設置された固定プラテン30と、マシンベース20の上面21に配設されて型開閉方向に移動可能な可動プラテン40とを備えた、2枚プラテン方式の型締装置である。また、この型締装置10は、可動プラテン40を型開閉方向に移動させる型開閉動作を、型開閉用駆動部100による電動力により行い、型締動作を、油圧シリンダ50による油圧力により行うタイプの型締装置である。なお、「型開閉方向」とは、可動プラテン40が固定プラテン30に対して、接近または離反する方向(
図1及び
図2中、左右方向)をいう。
【0018】
次に、
図1、
図2、
図3及び
図4を参照して、型締装置10の各構成部材の詳細について説明する。矩形状の固定プラテン30は、マシンベース20の上面21に固定設置されている。固定プラテン30の正面(
図1中、左側に向いている面)には、固定金型35が取り付けられている。
【0019】
可動プラテン40は、矩形状の可動ダイプレート40Aと、可動ダイプレート40Aに相対移動可能に連結された矩形状のダイロックプレート40Bを主要部材として構成されている。この可動プラテン40は、固定プラテン30に対して型開閉方向に移動自在に、すなわち、可動プラテン40は、固定プラテン30に対して進退移動自在に、マシンベース20の上面21に配置されている。具体的には、ガイドシュー41が、マシンベース20の上面21に型開閉方向に移動自在に配置されており、このガイドシュー41の上に可動プラテン40の可動ダイプレート40Aが設置されている。ガイドシュー41の底面の左右両側部には、マシンベース20の上面21に摺接するガイドシューライナー42がそれぞれ取り付けられている。ガイドシューライナー42は、上面21に対する摩擦抵抗が小さいので、ガイドシュー41に設置された可動プラテン40(可動ダイプレート40A及びダイロックプレート40B)は、マシンベース20の上面21において、型開閉方向にスムーズに摺動移動することができる。
【0020】
また、ガイドシュー41には型走行フレーム43が連結されている。この型走行フレーム43には、後述する型開閉用駆動部100の噛合チェーン111a,111bが接続され、型開閉用駆動部100から、型走行フレーム43を介して、可動プラテン40が設置されたガイドシュー41に対して、型開閉方向に移動させる駆動力が付与される構造になっている。
【0021】
可動ダイプレート40Aの正面(
図1中、右側に向いている面)、つまり、固定プラテン30に対向している面には、可動金型45が取り付けられている。可動ダイプレート40Aの背面側(
図1中、左側)、すなわち、可動ダイプレート40Aの固定プラテン30側とは反対側には、次に詳細に説明するように、ダイロックプレート40Bが可動ダイプレート40Aに相対移動可能に連結されている。
【0022】
可動ダイプレート40Aとダイロックプレート40Bとの間には、2本の油圧シリンダ50が上下位置に分かれて配置されている(
図2及び
図4参照)。より具体的に説明すると、各油圧シリンダ50のシリンダ51は、ダイロックプレート40B内に形成されており、シリンダ51内にピストン52が配置されている。ピストン52にはピストンロッド53の一端(
図2中、左端)が固定されており、ピストンロッド53の他端(
図2中、右端)は可動ダイプレート40Aに固定されている。シリンダ51内のシリンダ室は、ピストン52により、ヘッド室54aとロッド室54bに区画されている。このように、ダイロックプレート40B内に形成したシリンダ51内にピストン52が配置され、ピストン52に固定されたピストンロッド53が可動ダイプレート40Aに固定された構造となっているため、ダイロックプレート40Bは、油圧シリンダ50を介して、可動ダイプレート40Aに、型開閉方向に沿い相対移動可能に連結された構造になっている。
【0023】
固定プラテン30、並びに、可動プラテン40の可動ダイプレート40A及びダイロックプレート40Bの四隅には、4本のタイバー60が貫通している。これら4本のタイバー60の基端部(右端部)は、固定ナット32によって固定プラテン30に固定支持されている。4本のタイバー60のうち、下側に配置された2本のタイバー60の先端部(左端部)は、マシンベース20の上面21に配置した2個のタイバーサポート22により支持されている。結局、下側に配置された2本のタイバー60の支持構造は、基端部が固定プラテン30により支持され、先端部がタイバーサポート22により支持された、両持支持構造となっている。このような両持支持構造を採用しているため、下側に配置された2本のタイバー60が可動プラテン40に付与する荷重が軽減され、可動プラテン40のスムーズな移動を確保することができる。また、この両持支持構造を採用することにより、後述する型締動作時において、可動プラテン40が上方に浮き上がるのを抑制することができ、これにより最適な型締力を発生することができる。
【0024】
可動プラテン40のダイロックプレート40Bには、4本のタイバー60が貫通する箇所に、タイバーロック装置70がそれぞれ固定設置されている。本実施形態では、各タイバーロック装置70は、分割ナットを内蔵している。この分割ナットが相互に閉まっていって、タイバー60に形成した係合溝等(図示省略)に分割ナットが係合することにより、タイバーロック装置70がタイバー60に結合され、これによりダイロックプレート40Bがタイバー60に固定(ロック)される。この状態になると、可動プラテン40(可動ダイプレート40A及びダイロックプレート40B)はタイバー60に沿って移動できなくなる。一方、分割ナットが相互に開いていって、タイバー60に形成した係合溝等(図示省略)と分割ナットとの係合が解放されることにより、タイバーロック装置70とタイバー60との結合が解放され、これによりダイロックプレート40Bはタイバー60との固定(ロック)が解放される。この状態になると、可動プラテン40(可動ダイプレート40A及びダイロックプレート40B)はタイバー60に沿って移動可能となる。なお、タイバーロック装置70としては、分割ナットを備えたものに限らず、タイバー60に対して結合解放をすることにより、可動プラテン40のタイバー60に沿う移動を可能にしたり不能にしたりする、他の構造のものを採用してもよい。
【0025】
型開閉用駆動部100は、可動プラテン40を固定プラテン30に対して型開閉方向に移動させる駆動部である。この型開閉用駆動部100は、一対の噛合チェーン111a,111bと、チェーン駆動部120と、チェーンボックス130により構成されている。第1実施形態では、型開閉用駆動部100は、型開閉方向に関して、マシンベース20の左側位置に配置されている。
【0026】
噛合チェーン111a,111bは、相互に噛み合うことで、柱状の剛直化部112を形成し、剛直化部112(相互に噛み合った噛合チェーン111a,111b)が相互に噛み外れることで、個々の噛合チェーン111a,111bに分離できる構造になっている。更に詳述すると、噛合チェーン111a,111bは、それぞれ、例えば、リンクユニット及びプレートを一単位とする多数のチェーン単位部品を、ピンにより連結したものである。相互に噛み外れて分離した個々の噛合チェーン111a,111bでは、リンクユニットはプレートに対して、ピンを回転軸として折れ曲がることができ、噛合チェーン111a,111bは、それぞれ、湾曲や巻回することができる。一方、噛合チェーン111a,111bは、噛合チェーン111aのプレートと噛合チェーン111bのプレートとが相互に噛み合うと、噛合チェーン111a,111b双方のリンクユニットは、相互に噛み合ったプレートに対して回転することができなくなり、噛合チェーン111a,111bが相互に噛み合った剛直化部112になる。噛合チェーン111a,111bは相互に噛み合った剛直化部112になると、剛性を有する一本の柱状の構造体となる。この噛合チェーン111a,111bは、マシンベース20の上面21の幅方向(型開閉方向と直交する方向)の中央位置において、剛直化部112が開閉方向に沿う状態になるように配置されている。そして、剛直化部112の先端部(
図1及び
図3中、右端部)には、チェーン固定板113が取り付けられている。
【0027】
前述したように、可動プラテン40(可動ダイプレート40A及びダイロックプレート40B)が設置されたガイドシュー41には、型走行フレーム43が連結されている(
図1及び
図3参照)。噛合チェーン111a,111bが相互に噛み合って形成された剛直化部112の先端部は、チェーン固定板113及び型走行フレーム43を介して、ガイドシュー41に連結されている。
【0028】
チェーン駆動部120は、噛合チェーン111aと噛合するよう配置された第1スプロケット121aと、噛合チェーン111bと噛合するよう配置された第2スプロケット121bと、電動式駆動機構125を有している。第1スプロケット121aと第2スプロケット121bは、噛合チェーン111a,111bを間に挟んだ状態で、相対向して配置されている。電動式駆動機構125は、サーボ機構による位置保持制御を行うことができる電動機(サーボモータ)126を有している。電動機126が回転駆動すると、回転力が歯車等の伝達機構(図示省略)を介して、第1スプロケット121a及び第2スプロケット121bに伝達され、両スプロケット121a,121bは同期しつつ逆方向に回転するように構成されている。
【0029】
第1実施形態では、電動機126による回転力が、双方のスプロケット121a,121bに伝達されるように構成されているが、スプロケット121a,121bの一方にのみ、電動機126の回転力が伝達されるように構成してもよい。スプロケット121a,121bの一方のスプロケットにのみ、電動機126の回転力が伝達されるような構成にした場合には、他方のスプロケットは、一方のスプロケットと同期しつつ逆方向に従動回転する。
【0030】
第1スプロケット121aを反時計回り方向に回転させ、第2スプロケット121bを第1スプロケット121aと同期しつつ時計回り方向に回転させる繰り出し動作を行うと(
図2及び
図3参照)、分離している噛合チェーン111a,111bはスプロケット121a,121bの位置で相互に噛み合い、柱状の剛直化部112が形成される。この剛直化部112は、スプロケット121a,121bから可動プラテン40側に向かって伸展していく。剛直化部112が、スプロケット121a,121bから可動プラテン40側に向かって伸展していくと、チェーン固定板113及び型走行フレーム43を介して、可動プラテン40が設置されたガイドシュー41に対して、型閉方向(固定プラテン30に接近していく方向)の力が付与される。
【0031】
第1スプロケット121aを時計回り方向に回転させ、第2スプロケット121bを第1スプロケット121aと同期しつつ反時計回り方向に回転させる引き込み動作を行うと(
図2及び
図3参照)、剛直化部112は、可動プラテン40側からスプロケット121a,121bに向かって縮退してきて、スプロケット121a,121bの位置で相互に噛み外れ、個々の噛合チェーン111a,111bに分離していく。剛直化部112が、可動プラテン40側から噛合チェーン111a,111bに向かって縮退していくと、チェーン固定板113及び型走行フレーム43を介して、可動プラテン40が設置されたガイドシュー41に対して、型開方向(固定プラテン30から離反していく方向)の力が付与される。
【0032】
スプロケット121a,121bの配置位置において、剛直化部112から相互に噛み外れて分離した個々の噛合チェーン111a,111bは、幅方向(型開閉方向と直交する方向)に分かれて進む。チェーンボックス130は、幅方向の両端位置にチェーンボックス室131a,131bを有している。チェーンボックス室131aは第1スプロケット121aに隣接して配置されており、チェーンボックス室131bは第2スプロケット121bに隣接して配置されている。このため、噛み外れて分離して幅方向に進んだ一方の噛合チェーン111aはチェーンボックス室131a内に巻かれて収納される。噛み外れて分離して幅方向に進んだ他方の噛合チェーン111bはチェーンボックス室131b内に巻かれて収納される。このように、噛み外れて分離した個々の噛合チェーン111a,111bは幅方向に分かれて、チェーンボックス130のチェーンボックス室131a,131bに巻かれて収納されるため、噛合チェーン111a,111bの設置スペース(特に型開閉方向の設置スペース)を小さくすることができる。
【0033】
また、前述した繰り出し動作を行う場合には、剛直化部112が、スプロケット121a,121bから可動プラテン40側に向かって伸展していくのに合わせて、チェーンボックス室131a,131b内に収納された噛合チェーン111a,111bは、チェーンボックス室131a,131bから引き出されていく。
【0034】
なお、油圧シリンダ50への圧油の供給及び排出制御や、電動機126の駆動及び停止制御や、電動機126による位置保持制御や、タイバーロック装置70による可動プラテン40のタイバー60への固定及び固定解除制御は、図示しない制御部により行われる。
【0035】
[動作の説明]
制御部により動作制御される、型締装置10の各種の動作を、型締装置10の一部を破断して示す平面図である
図5及び
図6を参照して説明する。
【0036】
図5は、型締装置10の可動プラテン40が、所定の型開位置に移動して停止した型開き状態を示している。この型開き状態では、可動ダイプレート40Aはダイロックプレート40B側(
図5中、左側)に後退している。また、安全フック(図示省略)により可動プラテン40は、マシンベース20に固定(ロック)され、移動不能な状態になっている。
【0037】
型閉じ動作を行うために、まず、安全フックを解除し、可動プラテン40が移動可能な状態とする。次に、電動機(サーボモータ)126を駆動して、第1スプロケット121aを反時計回り方向に回転させ、第2スプロケット121bを時計回り方向に回転させることにより、剛直化部112を、スプロケット121a,121bから可動プラテン40側に伸展させる、繰り出し動作を行う。この繰り出し動作により、剛直化部112から、チェーン固定板113及び型走行フレーム43を介して、可動プラテン40が設置されたガイドシュー41に、型閉方向の力が付与される。これによりガイドシュー41は、マシンベース20の上面21において型閉方向に移動していき、可動プラテン40が固定プラテン30に向かって移動していく。可動プラテン40が開閉方向の閉まり側停止位置に近づいたら、電動機126のサーボ機構による位置保持制御をして、可動プラテン40を、閉まり側停止位置に正確に位置合わせして停止させる。可動プラテン40が、閉まり側停止位置に正確に位置合わせして停止すると、
図6に示すように、可動金型45が固定金型35に対して僅かに隙間を残した状態で型閉じが行われる。
【0038】
図6に示すように、可動金型45と固定金型35との型閉じが行われたら、タイバーロック装置70により、可動プラテン40をタイバー60に固定(ロック)し、ダイロックプレート40Bがタイバー60に沿って移動不能な状態にする。このようにして、ダイロックプレート40Bがタイバー60に固定(ロック)されたら、電動機126による位置保持制御を解除する。
【0039】
型締動作を行うために、可動金型45と固定金型35とが前記型閉じ状態となり、かつ、ダイロックプレート40Bがタイバー60に固定(ロック)された状態になっているときに、油圧シリンダ50のヘッド室54aに圧油を供給する。そうすると、ピストン52及びピストンロッド53が、ダイロックプレート40B側から可動ダイプレート40A側に移動する。これにより、可動金型45と固定金型35とが密着し、更にダイロックプレート40Bに対して、可動ダイプレート40Aを固定プラテン30側に押圧する型締力が発生して、型締が行われる(
図2参照)。
【0040】
型締状態において、可動金型45及び固定金型35により形成される金型キャビティー内に溶融樹脂又は溶湯を圧入する。その後、保圧及び冷却工程を経て樹脂成形品又はダイカスト品が成形される。
【0041】
樹脂成形品等が成形されたら、油圧シリンダ50のロッド室54bに圧油を供給して、ピストン52及びピストンロッド53を、可動ダイプレート40A側からダイロックプレート40B側に移動させる。これにより、可動ダイプレート40Aが、ダイロックプレート40B側に移動してきてダイロックプレート40Bに接触し、型締の解除が行われる。その後、タイバーロック装置70による、可動プラテン40のタイバー60への固定(ロック)を解除し、可動プラテン40がタイバー60に沿って移動可能な状態に戻す。
【0042】
型開き動作を行うために、電動機126を駆動して、第1スプロケット121aを時計回り方向に回転させ、第2スプロケット121bを反時計回り方向に回転させることにより、剛直化部112を、可動プラテン40側からスプロケット121a,121bに向かって縮退させる引き込み動作を行う。この引き込み動作により、剛直化部112から、チェーン固定板113及び型走行フレーム43を介して、可動プラテン40が設置されたガイドシュー41に、型開方向の力が付与される。これによりガイドシュー41は、マシンベース20の上面21において型開方向に移動していき、可動プラテン40が固定プラテン30から離反する方向に移動していく。可動プラテン40が型開方向に移動してきて所定の型開位置に戻ったら、電動機126の駆動を停止する。
【0043】
このようにして、
図5に示すように、可動プラテン40が所定の型開位置に戻ってきたら、安全フックにより、可動プラテン40をマシンベース20に固定(ロック)し、可動プラテン40が移動不能な状態にする。
【0044】
なお、樹脂成形品等の取り出しは、型開き動作の継続中、または、可動プラテン40が所定の型開位置に戻ったときに行う。
【0045】
[作用及び効果]
ここで第1実施形態に係る型締装置10の作用及び効果を説明する。
【0046】
第1実施形態の型締装置10においては、噛合チェーン111a,111bを備えた型開閉用駆動部100により、型開閉動作をしている。そして、型開動作時には、剛直化部112を、可動プラテン40側からスプロケット121a,121b側に引き込み、スプロケット121a,121bの位置で相互に噛み外れた噛合チェーン111a,111bを、マシンベース20の上面21の幅方向に分け、チェーンボックス130の幅方向の両端位置に配置したチェーンボックス室131a,131bに個々に巻き取って収納している。このように噛み外れた噛合チェーン111a,111bを、スプロケット121a,121bの位置で幅方向に分けて、スプロケット121a,121bに隣接して配置したチェーンボックス室131a,131bに巻き取って収納しているため、噛合チェーン111a,111bを含めた型開閉用駆動部100の型開閉方向の長さが短くなり、型開閉用駆動部100の型開閉方向の設置スペースを小さくすることができる。
【0047】
なお、型開閉動作を電動ボールねじ機構で行い、型締を油圧シリンダで行う、2枚プラテン方式の従来の型締装置では、長尺なボールねじ軸が型開閉方向に沿って設置されている。このため、電動ボールねじ機構を含めた装置全体の型開閉方向の長さが非常に長くなり、大きな設置スペースが必要になっていた。第1実施形態に係る型締装置10では、電動ボールねじ機構ではなく、巻取して収納可能な噛合チェーン111a,111bを採用しているため、従来のこのような問題は発生しない。
【0048】
第1実施形態に係る型締装置10では、
(1)マシンベース20の上面21の幅方向(型開閉方向に対して直交する方向)の中央位置において、1本の剛直化部112を型開閉方向に沿って形成し、この剛直化部112が伸縮して可動プラテン40の開閉動作を行う構成を採用していること、
(2)剛直化部112から相互に噛み外れて分離した個々の噛合チェーン111a,111bが、チェーンボックス室131a,131b内で巻かれて収納される構成を採用していることにより、装置幅を狭くして装置の小型化を図ることができる。
【0049】
なお、型開閉動作を電動ボールねじ機構で行い、型締を油圧シリンダで行う、2枚プラテン方式の従来の型締装置では、電動ボールねじ機構は、ベースの幅方向の両端位置において、型開閉方向に沿って配置されていた。つまり、ベースの幅方向の両端位置に配置した2本の電動ボールねじ機構を用いていた。このように2本の電動ボールねじ機構を幅方向の両端位置に配置しているため、従来の型締装置では、幅方向の長さが長くなり、装置全体の装置幅が大きくなり、大きな設置スペースが必要になっていた。第1実施形態に係る型締装置10では、電動ボールねじ機構ではなく、噛み合うことにより1本の剛直化部112を形成する噛合チェーン111a,111bを採用しているため、従来のこのような問題は発生しない。
【0050】
第1実施形態の型締装置10において、油圧シリンダ50の油圧力により型締力を発生しているときには、可動プラテン40の可動ダイプレート40Aには、大きな型締力が作用する。このとき、固定金型35や可動金型45の平行度等に影響されて、可動ダイプレート40Aには、変形や浮き上がりが発生したり、曲げ力が作用したりする可能性がある。このような、変形等や曲げ力に起因する機械的応力は、ガイドシュー41、型走行フレーム43、チェーン固定板113、噛合チェーン111a,111b及びスプロケット121a,121b等を介して電動機126に伝わるが、電動機126に作用する機械的応力は大幅に軽減される。これは、噛合チェーン111a,111bの各構成部品(リンクユニット、プレート、ピン)間のクリアランスや、噛合チェーン111a,111bとスプロケット121a,121bとの間のバックラッシが、変形等や曲げ力に起因する機械的応力を吸収するからである。また、型締時には電動機126の位置保持制御を停止して、外部からの機械的応力が電動機126に入力しないようにしているからである。このため、電動機126は、型締力の悪影響を受けることはない。このようにして、電動機126を含めた型開閉用駆動部100は、型締力による悪影響から回避される。この結果、型開閉用駆動部100と可動プラテン40との間に、機械的応力を吸収する機能を有するフローティング機構(その一例については後述する)を介在させることなく、型開閉用駆動部100を可動プラテン40に対して直接的に連結することができ、型締装置10の構造が簡素化する。
【0051】
なお、型開閉動作を電動ボールねじ機構で行い、型締を油圧シリンダで行う、2枚プラテン方式の従来の型締装置では、電動ボールねじ機構と可動プラテンとの間に、型締時に発生する機械的応力を吸収するフローティング機構が設置されるため、型締装置の構造が複雑になっていた。第1実施形態に係る型締装置10では、フローティング機構が不要であるため、従来のこのような問題は発生しない。
【0052】
ここでフローティング機構の一例を説明する。型開閉用の電動ボールねじ機構を備えた2枚プラテン方式の従来の型締装置では、例えば、リニアガイドに沿い型開閉方向に移動する可動ベースと、可動プラテンが固定設置された可動プラテン支持部材とを有している。可動プラテン支持部材は可動ベース上に載置されており、可動ベースは電動ボールねじ機構から移動力を受けて型開閉方向に移動可能となっている。更に、ばね部材を有する複数の押圧機構を、可動ベース上に備えている。そして、複数の押圧機構のばね部材が発生するばね力を利用して、可動プラテン支持部材を可動ベース側に向けて鉛直下方向に押圧すると共に、可動プラテンの正面側(固定プラテン側)から背面側(固定プラテンとは反対側)に向けて可動プラテン支持部材を押圧しつつ、可動プラテンの背面側から正面側に向けて可動プラテン支持部材を押圧する構造を採用している。すなわち、可動プラテンが固定設置された可動プラテン支持部材を、可動ベース上に載置し、複数の押圧機構により、可動プラテン支持部材を可動ベース側に押圧すると共に、可動プラテンの正面側と背面側から拮抗するように可動プラテン支持部材を押圧する、フローティング機構を採用している。このようなフローティング機構を採用することにより、型締時に可動プラテンが変形等して発生した機械的応力が、可動プラテン支持部材に作用して可動プラテン支持部材が変形したり浮上したりしても、この変形等は、押圧機構のばね部材により吸収され、これにより電動ボールねじ機構に伝わる機械的応力を可及的に減少させていた。
【0053】
第1実施形態の型締装置10においては、噛合チェーン111a,111bが相互に噛み合って形成した剛直化部112を介して、型開閉方向に移動させる力が、型開閉用駆動部100から可動プラテン40に付与される構成になっている。噛合チェーン111a,111bは多数のチェーン単位部品(リンクユニット及びプレート)をピンにより連結したものであるため、剛性を有する柱状の構造体である剛直化部112になっても、その長手方向(型開閉方向)に対して交差する幅方向に、各チェーン単位部品が少しずつシフトすることが可能な構成になっている。このため、開閉動作時に、可動プラテン40が傾いて固定プラテン30に対しての平行状態が崩れたり、可動プラテン40の傾き等に起因して可動プラテン40の幅方向の中心位置に対して剛直化部112の長手方向軸がずれる芯違いが発生したりしても、このような機械的なずれを、各チェーン単位部品が少しずつシフトして吸収する。このため、可動プラテン40の傾き等が発生しても、可動プラテン40の型開閉方向の移動をスムーズに行うことができる。
【0054】
なお、型開閉動作を電動ボールねじ機構で行い、型締を油圧シリンダで行う、2枚プラテン方式の従来の型締装置では、電動ボールねじ機構は、ねじ軸にナット部が螺合したねじ機構を有している。そして、モータによりねじ軸を回転させると、ナット部がねじ軸に沿い直線移動し、この直線移動により型開閉動作をしている。ねじ軸に螺合したナット部が、ねじ軸に沿い直線移動するためには、ねじ軸が直線状に伸びていることが必要である。例えば、可動プラテンの傾き等により、ねじ軸が撓んでしまっては、ナット部はねじ軸に噛み込んでしまい直線移動することはできない。そこで、従来技術では、リニアガイド等のレール式直動案内機器を設けて、可動プラテンを、レール式直動案内機器に沿わせて直線状にガイドしつつ型開閉方向に移動させることにより、可動プラテンに傾き等が発生しないようにして、ねじ軸が撓むことがないようにしていた。このように従来では、レール式直動案内機器が必要であったため、装置構成が複雑化し、また装置が高価になっていた。第1実施形態に係る型締装置10では、レール式直動案内機器が不要であるため、従来のこのような問題は発生しない。
【0055】
第1実施形態の型締装置10においては、可動プラテン40が設置されたガイドシュー41の底面に、マシンベース20の上面21に対する摩擦抵抗が小さいガイドシューライナー42が取り付けられている。このため、可動プラテン40が設置されたガイドシュー41は、ガイドシューライナー42を介して、マシンベース20の上面21に摺接するため、型開閉方向にスムーズに摺動移動することができる。このため、可動プラテン40の型開閉方向の移動がスムーズになる。
【0056】
第1実施形態の型締装置10においては、可動金型45と固定金型35との型閉じが行われたら、タイバーロック装置70により、可動プラテン40がタイバー60に沿って移動不能な状態にする。このようにすると、可動金型45と固定金型35との型閉じ状態は確保されるので、電動機126による位置保持制御を解除することが可能となる。したがって、型締動作時において、型締に起因する応力が電動機126に伝わることがなくなり、電動機126は型締力の悪影響を受けることはない。
【0057】
第1実施形態の型締装置10では、各構成部品(リンクユニット、プレート、ピン)間のクリアランスを有する噛合チェーン111a,111bや、バックラッシを持ちつつ噛合チェーン111a,111bに噛合するスプロケット121a,121bを用いているため、取り付け誤差等をクリアランス等が吸収する結果、取り付けや調整が容易になり、組み立てに関する工数を削減することができる。なお、電動ボールねじ機構を用いた従来の型締装置では、ねじ軸が撓むことがないように、電動ボールねじ機構を高い取付精度で取り付ける必要があるため、取り付けや調整に手間がかかっていた。
【0058】
第1実施形態の型締装置10では、電動機126のサーボ機構による停止位置制御を行うことにより、多点停止を高精度に行うことができる。なお、型開閉を油圧式移動機構により行う型締装置では、開閉方向の閉まり側停止位置以外の多数の中間位置に可動プラテンを停止させる多点停止を行うことは難しい。
【0059】
[他の実施形態]
次に、第2~第5実施形態を説明する。なお、第2~第5実施形態において、第1実施形態と同じ機能を果たす部分には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0060】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態に係る型締装置10Aを、一部破断して示す正面図であり、
図8は、型締装置10Aを示す左側面図である。第2実施形態に係る型締装置10Aでは、筐体状の構造体であるマシンベース20の内部に、型開閉用駆動部100が配置されている。つまり、型開閉用駆動部100を構成する、噛合チェーン111a,111b、チェーン駆動部120及びチェーンボックス130が、マシンベース20の内部に配置されている。マシンベース20の内部を、固定プラテン30側と可動プラテン40側に分けると、第2実施形態の型締装置10Aでは、型開閉用駆動部100を可動プラテン40側に配置している。なお、型走行フレーム43の取り付けの向きは、型開閉方向に関して、第1実施形態と第2実施形態とでは逆になっているが、その機能、すなわち、噛合チェーン111a,111bが噛合してなる剛直化部112から、可動プラテン40が設置されたガイドシュー41に、型開閉方向の駆動力を伝える点において、型走行フレーム43の機能は、第1実施形態と第2実施形態において同じである。
【0061】
第1実施形態に係る型締装置10では、型開閉用駆動部100のうちチェーン駆動部120及びチェーンボックス130が、型開閉方向に関して、マシンベース20の左側位置に配置されているが、第2実施形態に係る型締装置10Aでは、型開閉用駆動部100の全てを、マシンベース20の内部に配置しているため、型締装置10Aの型開閉方向の長さを更に短縮化することができる。
【0062】
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態に係る型締装置10Bを、一部破断して示す正面図であり、
図10は、型締装置10Bを示す左側面図である。第3実施形態に係る型締装置10Bでは、筐体状の構造体であるマシンベース20の内部に、型開閉用駆動部100が配置されている。第3実施形態の型締装置10Bでは、マシンベース20の内部のうち固定プラテン30側に型開閉用駆動部100を配置している。この型開閉用駆動部100では、型開閉方向に関して、固定プラテン30側にチェーン駆動部120及びチェーンボックス130を配置し、剛直化部112が、チェーンボックス130から見て可動プラテン40側において、繰り出し及び引き込み動作するよう構成されている。剛直化部112が繰り出されることにより、可動プラテン40が型開方向に移動し、剛直化部112が引き込まれることにより、可動プラテン40が型閉じ方向に移動していく。
【0063】
第3実施形態に係る型締装置10Bでは、型開閉用駆動部100の全てを、マシンベース20の内部に配置しているため、型締装置10Bの型開閉方向の長さを短縮化することができる。
【0064】
[第4実施形態]
図11は、本発明の第4実施形態に係る型締装置10Cを、一部破断して示す正面図であり、
図12は、型締装置10Cを示す左側面図であり、
図13は、型締装置10Cを示す平面図である。第4実施形態に係る型締装置10Cでは、型開閉用駆動部100のうちチェーン駆動部120が、型開閉方向に関して、マシンベース20の左隣に配置されている。電動式駆動機構125の電動機126はマシンベース20の外部に配置されている。このとき、電動機126及び減速機127を含めた電動機部分は、型開閉方向に関して、タイバー60の基端から先端までの間の位置に配置されている。電動機126の回転力は、カップリング128を介してチェーン駆動部120のスプロケット121a,121bに伝達されるようになっている。スプロケット121a,121bは、上下方向(鉛直方向)に離間して配置されており、チェーンボックス130のチェーンボックス室131a,131bは、上下方向(鉛直方向)に離間して配置されている。剛直化部112を引き込んできたときに、スプロケット121a,121bの位置において相互に噛み外れた一方の噛合チェーン111aは、上側のチェーンボックス室131a内で巻かれて収納され、他方の噛合チェーン111bは、下側のチェーンボックス室131b内で巻かれて収納される。また、タイバーサポート22は、チェーンボックス130の上面に設置されている。
【0065】
第4実施形態に係る型締装置10Cでは、電動機126及び減速機127を含めた電動機部分は、型開方向に関して、タイバー60の基端から先端までの間の位置に配置されているため、型締装置10Cの、型開閉方向の長さを短くすることができる。また、電動機126が、マシンベース20の外部に配置されているため、電動機126のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0066】
[第5実施形態]
図14は、本発明の第5実施形態に係る型締装置10Dを、一部破断して示す正面図であり、
図15は、型締装置10Dを示す左側面図であり、
図16は、型締装置10Dを示す平面図である。第5実施形態に係る型締装置10Dでは、マシンベース20の上面21の幅方向に関して、一方側位置と他方側位置に、それぞれ、噛合チェーン111a,111b、スプロケット121a,121b及びチェーンボックス130から成る可動プラテン移動機構が配置されている。この型締装置10Dでは、スプロケット121a,121bは、上下方向(鉛直方向)に離間して配置されている。チェーンボックス130のチェーンボックス室131a,131bは、上下方向(鉛直方向)に離間して配置されている。また、2つの可動プラテン移動機構は、上下方向(鉛直方向)に関して、マシンベース20の上面21よりも上方に配置されている。
【0067】
幅方向の一方側位置に配置された噛合チェーン111a,111bが噛み合って形成された剛直化部112の先端(
図14及び
図16中、右端)は、ダイロックプレート40Bの幅方向の一端側に接続されている。幅方向の他端側位置に配置された噛合チェーン111a,111bが噛み合って形成された剛直化部112の先端(
図14及び
図16中、右端)は、ダイロックプレート40Bの幅方向の他端側に接続されている。上下方向(鉛直方向)に関して、両剛直化部112の先端がダイロックプレート40Bに接続されている位置は、ダイロックプレート40Bの高さ方向の中央位置に近い位置である。より具体的には、両剛直化部112の先端がダイロックプレート40Bに接続されている位置は、可動プラテン40(可動ダイプレート40A及びダイロックプレート40B)及び可動金型45から成る移動側部材の重心位置又はその近傍であることが好ましい。
【0068】
電動機126は、型開閉方向に関して、マシンベース20の左側位置に配置されており、上下方向(鉛直方向)に関して、マシンベース20の上面21よりも下方に配置されている。電動機126の回転力は、減速機127、ギアボックス129及びカップリング128a,128b等を介して、幅方向の一方側位置と他方側位置にそれぞれ配置した、スプロケット121a,121bに伝達されるように構成されている。しかも、電動機126の例えば正回転に応じて、幅方向の一方側位置と他方側位置の剛直化部112が同期して伸展し、電動機126の例えば逆回転に応じて、幅方向の一方側位置と他方側位置の剛直化部112が同期して縮退するように構成されている。
【0069】
第5実施形態に係る型締装置10Dでは、剛直化部112の先端がダイロックプレート40Bに接続されている位置を、可動プラテン40(可動ダイプレート40A及びダイロックプレート40B)及び可動金型45から成る移動側部材の重心位置に近い位置にしているため、可動プラテン40の型開閉方向の移動をスムーズに行うことができる。また、噛合チェーン111a,111b、スプロケット121a,121b及びチェーンボックス130から成る可動プラテン移動機構を、上下方向(鉛直方向)に関して、マシンベース20の上面21よりも上方に配置しているため、電動機126の配置の自由度が上がると共に、マシンベース20の高さを低くして装置全体の低床化を図ることができる。
【0070】
上記の各実施形態では、可動ダイプレート40Aとダイロックプレート40Bの間に、油圧シリンダ50を配置しているが、油圧シリンダの配置構成はこれに限るものではない。つまり、油圧シリンダにより型締力を発生できる構成であれば、他の構成を採用することができる。例えば、固定プラテン30のうちタイバー60が貫通する部分にシリンダを形成し、タイバー60のうち固定プラテン30を貫通する部分であって前述したシリンダ内に位置する部分にピストンを形成した、油圧シリンダを採用することも可能である。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10、10A、10B、10C、10D 型締装置
20 マシンベース
30 固定プラテン
35 固定金型
40 可動プラテン
40A 可動ダイプレート
40B ダイロックプレート
41 ガイドシュー
42 ガイドシューライナー
45 可動金型
50 油圧シリンダ
60 タイバー
70 タイバーロック装置
100 型開閉用駆動部
111a、111b 噛合チェーン
112 剛直化部
120 チェーン駆動部
121a、121b スプロケット
125 電動式駆動機構
126 電動機
130 チェーンボックス
131a、131b チェーンボックス室