(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20230526BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
A61B1/00 681
G02B23/24 A
G02B23/24 B
(21)【出願番号】P 2019232325
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅弘
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108932(JP,A)
【文献】特開2015-160098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡装置と、
前記内視鏡装置と接続されることにより制御信号及び映像信号の光通信が可能となるプロセッサと、を備え、
前記内視鏡装置は、前記光通信を制御する内視鏡制御部と、制御信号経路を構成する発光素子及び受光素子と、映像信号経路を構成する発光素子と、を有し、
前記プロセッサは、前記光通信を制御するプロセッサ制御部と、前記制御信号経路を構成する発光素子及び受光素子と、前記映像信号経路を構成する受光素子と、を有し、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部にイニシャル制御データを送信し、前記プロセッサ制御部から返送された前記イニシャル制御データを受信することにより、前記制御信号経路の開通を確認する処理と、
前記映像信号経路を介して、前記プロセッサ制御部にイニシャル映像データを送信するとともに、前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部に前記イニシャル映像データを送信したことを示す通知を送信する処理と、
前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部から、前記イニシャル映像データ及び前記通知が受信されたことを示す受信完了通知を受信することにより、前記映像信号経路の開通を確認する処理と、を実行する、内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路の開通を確認する処理の後に、前記映像信号経路の開通を確認する処理を実行する、内視鏡システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路の開通を確認する処理と並行して、前記映像信号経路の開通を確認する処理を実行する、内視鏡システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路の開通を確認できなかった場合、前記制御信号経路に異常があると判断し、
前記映像信号経路の開通を確認できなかった場合、前記映像信号経路に異常があると判断する、内視鏡システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記プロセッサは、前記内視鏡装置が接続された際に、前記制御信号経路に電源を供給する第1電源と、前記映像信号経路に電源を供給する第2電源と、前記内視鏡装置に電源を供給する送電部と、をさらに備え、
前記内視鏡装置は、前記送電部から電源を受け取る受電部をさらに備える、内視鏡システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路の開通及び前記映像信号経路の開通を確認した後に、前記内視鏡装置が取得した映像データの処理を開始する、内視鏡システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記イニシャル制御データと、前記イニシャル映像データとは、それぞれ異なる帯域で光通信される、内視鏡システム。
【請求項8】
請求項6において、
前記イニシャル制御データと前記映像データとは、それぞれ異なる帯域で光通信され、前記イニシャル映像データと前記映像データとは、それぞれ異なる帯域で光通信される、内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡システムは、内視鏡装置(スコープ)と、内視鏡装置に接続されるプロセッサとによって構成されている。近年では、使用後の内視鏡装置の洗浄・消毒時の防水キャップ着脱の手間を考慮し、プロセッサから内視鏡装置に非接触で電力を供給するコネクタを用いた内視鏡システムが用いられている。
【0003】
このような内視鏡システムでは、内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続することによって、内視鏡装置とプロセッサとの間に、相対向する発信素子と受信素子とからなる伝送路が形成される。内視鏡装置とプロセッサとの間では、この伝送路を介して制御信号や映像信号が伝送(通信)される。
【0004】
例えば、特許文献1は、内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとの接続面に、それぞれ電力伝送用コイル、光通信用の発光素子及び受光素子、並びに接触部を配置した内視鏡装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡装置側コネクタ及びプロセッサ側コネクタは、それぞれ発光素子及び受光素子(光通信デバイス)を1つのみ有しているため、映像信号と制御信号とを多重にして通信していると考えられる。したがって、光通信デバイスが故障するとブラックアウトし、通信もできなくなってしまう。また、映像信号と制御信号とを同期させて通信する必要があるため、制約が大きい。
【0007】
また、内視鏡システムの初期動作時において、光通信デバイスによる通信に異常があった場合、光通信デバイス自体の故障か、映像信号経路の故障か、制御信号経路の故障かを判別することが難しい。
【0008】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、内視鏡システムの初期動作時に全ての光通信デバイスの通信状態を確認する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る内視鏡システムは、
内視鏡装置と、
前記内視鏡装置と接続されることにより制御信号及び映像信号の光通信が可能となるプロセッサと、を備え、
前記内視鏡装置は、前記光通信を制御する内視鏡制御部と、制御信号経路を構成する発光素子及び受光素子と、映像信号経路を構成する発光素子と、を有し、
前記プロセッサは、前記光通信を制御するプロセッサ制御部と、前記制御信号経路を構成する発光素子及び受光素子と、前記映像信号経路を構成する受光素子と、を有し、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部にイニシャル制御データを送信し、前記プロセッサ制御部から返送された前記イニシャル制御データを受信することにより、前記制御信号経路の開通を確認する処理と、
前記映像信号経路を介して、前記プロセッサ制御部にイニシャル映像データを送信するとともに、前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部に前記イニシャル映像データを送信したことを示す通知を送信する処理と、
前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部から、前記イニシャル映像データ及び前記通知が受信されたことを示す受信完了通知を受信することにより、前記映像信号経路の開通を確認する処理と、を実行する。
【0010】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、内視鏡システムの初期動作時に全ての光通信デバイスの通信状態を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】内視鏡システムの全体外観構成例を示す図である。
【
図2】内視鏡システムの概略内部構成例を示す図である。
【
図3A】内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続する前の状態をある方向から見た図である。
【
図3B】内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続した状態を
図3Aと同方向から見た図である。
【
図3C】各コネクタの光非接触送受信部の構成を示す図である。
【
図3D】内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続する前の状態をX
1方向(
図3B参照:
図3Aの方向とは異なる方向)から見た図である。
【
図3E】内視鏡装置側コネクタとプロセッサ側コネクタとを接続した状態をX
1方向(
図3Dと同方向)から見た図である。
【
図4】初期動作に関係する、内視鏡装置とプロセッサの内部構成例を示す図である。
【
図5】内視鏡システムの初期動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本開示の一実施形態として内視鏡システムを例に取り説明する。
【0014】
内視鏡システムにおける観察の対象部位は、例えば、呼吸器等、消化器等である。呼吸器等は、例えば、肺、気管支、耳鼻咽喉である。消化器等は、例えば、大腸、小腸、胃、食道、十二指腸、子宮、膀胱等である。上述のような対象部位を観察する場合、特定の生体構造を強調した画像の活用がより効果的である。
【0015】
<内視鏡システムの構成>
図1は、本実施形態の内視鏡システムの全体外観例を示す図である。内視鏡システム1は、内視鏡装置100と、プロセッサ200と、モニタ300とを備えている。
【0016】
内視鏡装置100は、被検体の内部に挿入される細長い管状の挿入部11と、挿入部11の基端側に配置された操作部15と、一側が操作部15に接続された連結可撓管17と、連結可撓管17の他側が接続された内視鏡装置側コネクタ110と、を備えている。挿入部11の先端部12には撮像素子が設けられており、例えば患者の体内を撮像することができる。撮像された画像は、光信号に変換されてプロセッサ200に伝送され、プロセッサ200と接続されたモニタ300に表示される。
【0017】
操作部15は、挿入部11をはじめとする内視鏡装置100の装置各部の操作を行うものであり、例えば、挿入部11の先端部12の向きを調整する操作ノブなどが設けられている。
【0018】
連結可撓管17は、操作部15と内視鏡装置側コネクタ110との間を接続し、可撓性部材で形成された管壁部を備えた管状部材で構成されている。連結可撓管17の管内には、各種信号線、LCB(Light Carrying Bundle)等が挿通配置されている。各種信号線には、例えば、挿入部11の先端部12内部に配設された撮像素子の駆動信号ラインや画素信号ライン、並びに操作部15に設けられたスイッチからのスイッチ信号ラインなどが含まれる。
【0019】
内視鏡装置側コネクタ110は、プロセッサ200に設けられているプロセッサ側コネクタ210に対して着脱自在に構成されている。内視鏡装置100は、内視鏡装置側コネクタ110がプロセッサ側コネクタ210に接続された状態で、プロセッサ200との間で信号接続及び電源接続される。内視鏡装置100とプロセッサ200との間のデータ通信には、光無線通信方式が用いられる。電力の授受に関しては、無線給電方式であってもよいし、有線給電方式であってもよい。
【0020】
プロセッサ200は、内視鏡装置100からの信号を処理する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を内視鏡装置100を介して照射する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。
【0021】
本実施形態による内視鏡システム1では、内視鏡装置100とプロセッサ200との間は、活線挿抜が可能に構成されている。つまり、プロセッサ200の主電源をONしたままで、内視鏡装置側コネクタ110をプロセッサ側コネクタ210に接続したり、また、内視鏡装置側コネクタ110をプロセッサ側コネクタ210から取り外したりすることができる。
【0022】
図2は、本実施形態の内視鏡システム1の概略内部構成例を示す図である。内視鏡装置100は、プロセッサ200の光源装置201(後述)からの照射光を導くためのLCB101(ライトガイド)と、LCB101の出射端に設けられた配光レンズ102と、対物レンズ103と、対物レンズ103を介して被照射部分(観察部位)からの戻り光を受光する撮像素子104と、撮像素子104を駆動するドライバ信号処理回路105と、第1メモリ106とを備えている。
【0023】
光源装置201からの照射光は、LCB101内に入射し、LCB101内で全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB101内を伝播した照射光は、挿入部11の先端部12内に配置されたLCB101の出射端から出射され、配光レンズ102を介して観察部位を照射する。被照射部分からの戻り光は、対物レンズ103を介して撮像素子104の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。
【0024】
撮像素子104は、挿入部11の先端部12内に配置されており、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。撮像素子104は、受光面上の各画素で結像した光学像(生体組織からの戻り光)を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの画像信号を生成して出力する。なお、撮像素子104は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。撮像素子104は、ドライバ信号処理回路105によって駆動され、1フィールドもしくは1フレーム分の画素信号が撮像素子104から所定の時間間隔(例えば1/60秒もしくは1/30秒間隔)で読み出される。
【0025】
プロセッサ200は、光源装置201と、システムコントローラ202と、光学フィルタ203と、光学フィルタドライバ204と、前段信号処理回路205と、色変換回路206と、後段信号処理回路207と、第2メモリ208とを備えている。
【0026】
プロセッサ200は、図示しない操作パネルを備えてもよい。操作パネルの構成には種々の形態がある。操作パネルの具体的構成としては、例えば、プロセッサ200のフロント面に実装された機能毎のハードウェアキーやタッチパネル式GUI(Graphical User Interface)、ハードウェアキーとGUIとの組み合わせ等が考えられる。施術者は、操作パネルによって、例えばモード切り替え操作などの指示の入力が可能となる。
【0027】
システムコントローラ202は、不図示のメモリに格納された各種プログラムを実行し、内視鏡システム1全体を統合的に制御する。システムコントローラ202は、制御信号を用いて、プロセッサ200に接続されている内視鏡装置100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。また、システムコントローラ202は、上述の操作パネルに接続されてもよい。この場合、システムコントローラ202は、操作パネルより入力される施術者からの指示に応じて、内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。
【0028】
光源装置201としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプやLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。光源装置201からの照射光は、主に可視光領域から不可視である赤外光領域に広がるスペクトルを持つ光(又は少なくとも可視光領域を含む光)である。光源装置201からの照射光は、光学フィルタ203に入射する。
【0029】
色変換回路206は、マトリクス回路211、ゲイン212、WB213及び色補正回路214を有する。
【0030】
<コネクタ部の外観構成>
図3A~
図3Eを参照して、内視鏡装置側コネクタ110と、プロセッサ側コネクタ210との接続関係を説明する。
図3Aは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とを接続する前の状態をある方向(内視鏡装置側コネクタ110の挿入方向と垂直な方向)から見た図である。
【0031】
図3Aの左図に示されるように、内視鏡装置側コネクタ110は、非接触受電基板上に設けられた無線給電用受信側コイル1101と、光非接触送受信部1102(光通信デバイス)と、を備えている。内視鏡装置100のLCB101は、内視鏡装置側コネクタ110から突出している。
【0032】
図3Aの右図に示されるように、プロセッサ側コネクタ210は、内視鏡装置側コネクタ110を挿入するための凹部構成となっており、無線給電用送信側コイル2101と、光非接触送受信部2102と、非接触給電基板部2103と、内視鏡ロックレバー2104と、を備えている。
【0033】
図3Bは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とを接続した状態を
図3Aと同方向から見た図である。内視鏡装置側コネクタ110がプロセッサ側コネクタ210の凹部に挿入されると、
図3Bに示されるように、無線給電用受信側コイル1101とプロセッサ200側の無線給電用送信側コイル2101とが対向するように位置する。また、内視鏡装置側コネクタ110の光非接触送受信部1102とプロセッサ側コネクタ210の光非接触送受信部2102とが対向し、これにより内視鏡装置100とプロセッサ200との間の光データ通信が可能となる。
【0034】
図3Cは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210の対向面(光非接触送受信部)の構成を示す図である。
図3Cの左図に示すように、内視鏡装置側コネクタ110の光非接触送受信部1102は、フォトダイオード123-1及びレーザダイオード125-1~125-3を備えている。レーザダイオード125-1及び125-2は映像信号を送信するためのものであり、これらは映像信号経路を構成する。レーザダイオード125-3は制御信号を送信するためのものであり、フォトダイオード123-1は制御信号を受信するためのものであり、これらは制御信号経路を構成する。
【0035】
図3Cの右図に示すように、プロセッサ側コネクタ210の光非接触送受信部2102は、レーザダイオード223-1及びフォトダイオード225-1~225-3を備えている。フォトダイオード225-1及び225-2は映像信号を受信するためのものであり、これらは映像信号経路を構成する。フォトダイオード225-3は制御信号を受信するためのものであり、レーザダイオード223-1は制御信号を送信するためのものであり、これらは制御信号経路を構成する。また、光非接触送受信部2102は、LCB101を受け取るための挿入部2105を有している。
【0036】
内視鏡装置側コネクタ110をプロセッサ側コネクタ210に接続することによって、レーザダイオード125-1がフォトダイオード225-1に対向し、レーザダイオード125-2がフォトダイオード225-2に対向する。これにより、内視鏡装置側からプロセッサ側への2つの映像信号伝送路が形成される。同様に、レーザダイオード125-3がフォトダイオード225-3に対向し、フォトダイオード123-1がレーザダイオード223-1に対向する。これにより、内視鏡装置側からプロセッサ側への制御信号伝送路と、プロセッサ側から内視鏡装置側への制御信号伝送路が形成される。
【0037】
このように、内視鏡装置100とプロセッサ200との間には、対向する1対のレーザダイオードとフォトダイオードとを有して構成された伝送路が4組(複数組)形成されており、映像信号経路と制御信号経路とが分離されている。なお、伝送路の数は4つ以上であってもよい。
【0038】
図3Dは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とを接続する前の状態をX
1方向(
図3B参照:
図3Aの方向とは異なる方向)から見た図である。
図3Dに示されるように、内視鏡装置側コネクタ110のX
1方向の側面には無線給電用受信側コイル1101(受電部)が設けられ、プロセッサ側コネクタ210の凹部のX
1方向の側面には無線給電用送信側コイル2101(送電部)が設けられている。
【0039】
図3Eは、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とを接続した状態をX
1方向(
図3Dと同方向)から見た図である。
図3Eに示すように、内視鏡装置側コネクタ110をプロセッサ側コネクタ210の凹部に挿入すると、無線給電用受信側コイル1101が無線給電用送信側コイル2101に対向する状態となる。このように無線給電用受信側コイル1101と無線給電用送信側コイル2101とを対向させることによって、プロセッサ200から内視鏡装置100への非接触での電力の授受が可能となる。なお、電力の授受については、以上説明した無線給電方式に限定されず、互いに接触する接触部を各コネクタに設けた有線給電方式を採用してもよい。
【0040】
<初期動作時の光通信デバイスの通信状態を確認するための構成例>
(1)内視鏡装置100とプロセッサ200の内部構成例
図4は、初期動作時(内視鏡装置100の起動時)における光通信デバイスの通信状態の確認に関連する、内視鏡装置100とプロセッサ200の内部構成例を示す図である。
図4では、初期動作に関係する構成部のみが示され、
図1及び
図2に示される他の必要な構成部の図示は省略している。
【0041】
内視鏡装置100は、内視鏡装置100の全体動作を制御する第1コントローラ120(内視鏡制御部)と、画像処理に関する動作を制御する第2コントローラ121(内視鏡制御部)と、プロセッサ200から供給される電源を無線で受電する受電部122(無線給電用受信側コイル)と、プロセッサ200から光通信で送信されてきた制御情報等を受信(受光)する少なくとも1つのフォトダイオード123-1と、フォトダイオード123-1によって受信した制御情報等の信号レベルを増幅する少なくとも1つのトランスインピーダンス増幅器124-1と、増幅された信号の振幅を一定振幅の電圧信号に変換するリミッティングアンプ129-1と、受信した制御情報等をプロセッサ200側に返送する少なくとも1つのレーザダイオード125-3と、レーザダイオード125-3を駆動するレーザドライバ126-3と、撮像素子104で取得した映像信号等をプロセッサ200に対して光通信で送信する2つの(複数の)レーザダイオード125-1及び125-2と、レーザダイオード125-1及び125-2を駆動する2つの(複数の)レーザドライバ126-1及び126-2と、を備えている。なお、第1コントローラ120は、例えば、CPU(Central Processor Unit)で構成することができ、第2コントローラ121は、例えば、FPGAで構成することができる。
【0042】
一方、プロセッサ200は、プロセッサ200の全体動作を制御する第1コントローラ220(プロセッサ制御部)と、電源供給及び停止を制御するための各Enable信号(例えば、Enable-0からEnable-2)を出力すると共に、画像処理に関する動作を制御する第2コントローラ221(プロセッサ制御部)と、後段信号処理回路207と、第2コントローラ221からのEnable信号に応答して、内視鏡装置100に対して無線による電源供給の開始及び停止をする送電部222(無線給電用送信側コイル)と、制御情報を内視鏡装置100に対して光通信で送信する少なくとも1つのレーザダイオード223-1と、レーザダイオード223-1を駆動するレーザドライバ224-1と、内視鏡装置100から返送されてきた制御情報等を受信する少なくとも1つのフォトダイオード225-3と、フォトダイオード225-3によって受信した制御情報等の信号レベルを増幅するトランスインピーダンス増幅器226-3と、増幅された信号の振幅を一定振幅の電圧信号に変換する少なくとも1つのリミッティングアンプ227-3と、内視鏡装置100から光通信で送信されてきた映像信号等を受信(受光)する2つの(複数の)フォトダイオード225-1及び225-2と、フォトダイオード225-1及び225-2によって受信した映像信号等の信号レベルを増幅する2つの(複数の)トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2と、増幅された信号の振幅を一定振幅の電圧信号に変換するリミッティングアンプ227-1及び227-2と、第2コントローラ221からのEnable信号に応答して、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3に対する電源供給の開始及び停止をする第1パワーIC228と、第2コントローラ221からのEnable信号に応答して、フォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2、並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2に対する電源供給の開始及び停止をする第2パワーIC229と、を備えている。なお、第1コントローラ220は、例えば、CPU(Central Processor Unit)で構成することができ、第2コントローラ221は、例えば、FPGAで構成することができる。
【0043】
図4に点線で示すように、内視鏡装置100のレーザダイオード125-1及び125-2、レーザドライバ126-1及び126-2、並びにプロセッサ200のフォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2、リミッティングアンプ227-1及び227-2は、映像信号経路を構成する。
【0044】
また、内視鏡装置100のフォトダイオード123-1、トランスインピーダンス増幅器124-1、レーザダイオード125-3、レーザドライバ126-3及びリミッティングアンプ129-1、並びにプロセッサ200のレーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-3、トランスインピーダンス増幅器226-3、リミッティングアンプ227-3は、制御信号経路を構成する。
【0045】
プロセッサ200において、第1コントローラ220及び第2コントローラ221と後段信号処理回路207とによって、電源ON状態保持側回路が構成される。また、第1コントローラ220及び第2コントローラ221並びに後段信号処理回路207以外の構成要素によって、電源供給ON/OFF切替側回路が構成される。電源ON状態保持側回路の構成要素(第1コントローラ220、第2コントローラ221、後段信号処理回路207)は、内視鏡システム使用時及び内視鏡装置100の挿抜に関係なく、電源ON状態にしておくことができる。一方、電源供給ON/OFF切替側回路の構成要素は、内視鏡装置100の取り外し状態では電源供給がOFF状態となるように第2コントローラ221によって制御される。ただし、送電部222、第1パワーIC228及び第2パワーIC229には、内視鏡装置100の取り外し状態であっても電源には接続されているが、それぞれからの電源供給は無効(disenable)となっている。
【0046】
なお、内視鏡装置100とプロセッサ200との間を非接触化することにより、内視鏡装置100側の回路を患者側回路とし、プロセッサ200側の回路を2次側回路とすることができる。
【0047】
内視鏡装置100の挿抜時の動作を簡単に説明する。例えば、プロセッサ側コネクタ210に設けられた機構スイッチあるいはセンサ(例えば、光センサなど)によって内視鏡装置100のプロセッサ200に対する挿抜が検知されると、トリガー信号が生成され、それが第1コントローラ220に送信される。第1コントローラ220は、トリガー信号を受信すると、内視鏡装置100の挿抜動作が行われたと判断し、第2コントローラ221にトリガー信号を受信したこと(内視鏡装置100の挿抜動作検知)を通知する。第2コントローラ221は、内視鏡装置挿入時に通知を受けると、電源供給を有効にするためのEnable-0信号、Enable-1信号及びEnable-2信号を送電部222、第1パワーIC228及び第2パワーIC229にそれぞれ送信する。また、第2コントローラ221は、内視鏡装置の抜去時に通知を受けると、電源供給を無効にする場合には、Enable-0信号、Enable-1信号及びEnable-2信号を、送電部222、第1パワーIC228及び第2パワーIC229にそれぞれ送信することを停止する。
【0048】
内視鏡装置100がプロセッサ200に挿入され、電源供給を有効にするためのEnable-0信号を受け取ると(受け取っている間は)、送電部222への電源供給が有効となり、送電部222は、内視鏡装置100へ電源供給を開始する。すると、内視鏡装置100の受電部122は、送電部222から電源を受け取り、内視鏡装置100の第1コントローラ120及び第2コントローラ121に電源が供給され、第1コントローラ120及び第2コントローラ121は動作を開始する。また、受電部122は、フォトダイオード123-1、トランスインピーダンス増幅器124-1、レーザダイオード125-1~125-3、レーザドライバ126-1~126-3に電源を供給する。
【0049】
また、第1パワーIC228は、第2コントローラ221から電源供給を有効にするためのEnable-1信号を受け取ると(受け取っている間は)、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-3、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3に電源を供給し、それらを起動する。さらに、第2パワーIC229は、第2コントローラ221から電源供給を有効にするためのEnable-2信号を受け取ると(受け取っている間は)、フォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2に電源を供給し、それらを起動する。
【0050】
一方、内視鏡装置100がプロセッサ200から抜去され、Enable-0信号の送信が停止されると、送電部222への電源供給が無効となり、内視鏡装置100への電源供給も停止される。また、Enable-1信号の送信が停止されると、第1パワーIC228への電源供給が無効となり、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-3、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3に電源が供給されなくなり、それらの動作が停止する。さらに、Enable-2信号の送信が停止されると、第2パワーIC229への電源供給が無効となり、フォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2に電源が供給されなくなり、それらの動作が停止する。
【0051】
(2)内視鏡装置100をプロセッサ200に挿入したときの初期動作の詳細
図5は、本実施形態に係る内視鏡システムの初期動作を詳細に説明するためのフローチャートである。本実施形態の初期動作は、内視鏡装置100の起動時に実行される。以下において、内視鏡装置側の第2コントローラ121、プロセッサ側の第2コントローラ221を動作の主体として説明する場合があるが、内視鏡装置側の第1コントローラ120、プロセッサ側の第1コントローラ220がそれぞれ第2コントローラ121、第2コントローラ221に命令して動作させるようにしてもよい。
【0052】
(i)ステップS1
プロセッサ側の第1コントローラ220は、内視鏡装置100がプロセッサ200に接続されたか否か、すなわち、内視鏡装置側コネクタ110がプロセッサ側コネクタ210に接続されたか否かを判断する。内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210との接続は、例えば、機械的スイッチがONとなることにより検知したり、センサ(図示せず)により検知したりすることができ、検知した際には検知信号が出力されるように構成される。機械的スイッチの場合には、スイッチがONとなったときに検知信号を出力する回路を設けてもよい。そして、第1コントローラ220は、当該検知信号をスイッチ又はセンサから受信することにより、内視鏡装置100が接続(挿入)されたと判断する。
【0053】
内視鏡装置100のプロセッサ200への接続が検知されていない場合(ステップS1でNOの場合)、第1コントローラ220は、非トリガー信号を生成し、第2コントローラ221にそれを送信する(
図5には不図示のステップ)。第2コントローラ221は、非トリガー信号に応答した場合、電源供給を有効にするEnable-0信号、Enable-1信号及びEnable-2信号を、送電部222、第1パワーIC228及び第2パワーIC229に送信開始することはない(Enable信号の送信待機)。これによって、送電部222、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-1~225-3、トランスインピーダンス増幅器226-1~226-3、リミッティングアンプ227-1~227-3には、電源が供給されず、動作しないままに制御されることになる。そして、処理は再度、ステップS1に移行する。
【0054】
内視鏡装置100のプロセッサ200への接続が検知された場合(ステップS1でYESの場合)、処理はステップS2に移行する。
【0055】
(ii)ステップS2
プロセッサ側の第1コントローラ220は、内視鏡装置100への電源投入を開始する。具体的には、第1コントローラ220は、内視鏡装置側コネクタ110とプロセッサ側コネクタ210とが接続されたことを示す検知信号を受信すると、トリガー信号を生成し、第2コントローラ221にそれを送信する。第2コントローラ221は、トリガー信号に応答して、送電部222に、電源供給を有効にするためのEnable-0信号を送信し、電源を供給する状態に制御する。電源供給を有効にするためのEnable-0信号に応答して、送電部222への電源供給が有効となり、送電部222は、内視鏡装置100の受電部122へ送電(電源供給)を開始する。
【0056】
また、第2コントローラ221は、トリガー信号に応答して、第1パワーIC228に、電源供給を有効にするためのEnable-1信号を送信し、電源を供給する状態に制御する。そして、電源供給を有効にするためのEnable-1信号に応答して、第1パワーIC228への電源供給が有効となり、第1パワーIC228が起動し、動作可能になる。
【0057】
第1パワーIC228は、レーザダイオード223-1、レーザドライバ224-1、フォトダイオード225-3、トランスインピーダンス増幅器226-3、リミッティングアンプ227-3への電源供給を開始することにより、これらを起動する。
【0058】
また、第2コントローラ221は、トリガー信号に応答して、第2パワーIC229に、電源供給を有効にするためのEnable-2信号を送信し、電源を供給する状態に制御する。そして、電源供給を有効にするためのEnable-2信号に応答して、第2パワーIC229への電源供給が有効となり、第2パワーIC229が起動し、動作可能になる。
【0059】
第2パワーIC229は、フォトダイオード225-1及び225-2、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2、並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2への電源供給を開始する(電源ON)。
【0060】
(iii)ステップS3
内視鏡装置100の受電部122は、送電部222から電源が供給されると、第1コントローラ120及び第2コントローラ121へ電源を供給することにより、第1コントローラ120及び第2コントローラ121を起動し、動作可能な状態とする。また、受電部122は、フォトダイオード123-1、トランスインピーダンス増幅器124-1、レーザダイオード125-1~125-3、レーザドライバ126-1~126-3に電源を供給することによりこれらを起動し、動作可能な状態とする。これにより、プロセッサ200と内視鏡装置100との間の、光伝送による相互情報通信が可能となる。さらに、第2コントローラ121によって撮像素子104が起動され、観察の対象部位の映像(静止画を含む)の撮像が可能となる。
【0061】
(iv)ステップS4
内視鏡装置側の第2コントローラ121は、内視鏡装置100及び撮像素子104のイニシャル制御データ(例えば、スコープID、機種、内視鏡装置100の使用回数や接続時間、伝送帯域の情報)を、例えば第1メモリ106(
図2参照、
図4には不図示)から取得し、イニシャル制御データ伝送用の帯域を用いて(どのような機種の内視鏡装置100が接続されてもプロセッサ200がイニシャルデータを取得できるように)、制御信号経路に送信する。具体的には、第2コントローラ121は、レーザドライバ126-3を介してレーザダイオード125-3にイニシャル制御データを送信する。
【0062】
その後、レーザダイオード125-3は、当該イニシャル制御データをプロセッサ側の制御信号経路に送信(光伝送)する。このとき、プロセッサ側のフォトダイオード225-3は、レーザダイオード125-3からイニシャル制御データを受信(受光)し、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3を介して、第2コントローラ221に送信する。
【0063】
(v)ステップS5
第2コントローラ221は、制御信号経路により伝送されてきたイニシャル制御データを受信し、受信したイニシャルデータの内容を確認(解析)する。
【0064】
(vi)ステップS6
第2コントローラ221は、イニシャル制御データを制御信号経路に送信(返送)する。具体的には、第2コントローラ221は、レーザドライバ224-1に対して、イニシャル制御データに含まれる伝送帯域の情報を通知する。
【0065】
また、第2コントローラ221は、イニシャルデータに含まれる内視鏡装置の使用回数や接続時間などの情報から、接続された内視鏡装置100の継続使用を許可するか判断してもよい。使用回数や接続時間が所定回数・所定時間以上である場合には、当該接続された内視鏡装置100の使用を停止するようなメッセージをモニタ300に表示するようにしたり、レーザドライバ224-1及びレーザダイオード223-1への電源供給を有効にしないなどの制御をしたりするようにしてもよい。
【0066】
そして、イニシャル制御データは、レーザドライバ224-1を介してレーザダイオード223-1に送信される。レーザダイオード223-1は、当該イニシャル制御データを内視鏡装置側の制御信号経路に送信(光伝送)する。このとき、内視鏡装置側のフォトダイオード123-1は、レーザダイオード223-1からイニシャル制御データを受信(受光)し、トランスインピーダンス増幅器124-1及びリミッティングアンプ129-1を介して、第2コントローラ121に送信する。
【0067】
(vii)ステップS7
第2コントローラ121は、制御信号経路により伝送されてきたイニシャル制御データを受信する。
【0068】
(viii)ステップS8
第2コントローラ121は、プロセッサ200からイニシャル制御データが返送されてきたことを確認することによって、制御信号経路の送受信が開通したことを確認する。
【0069】
ここで、ステップS4~S7のいずれかにおいてイニシャル制御データの送受信に失敗した場合は、制御信号経路の開通を確認することができない。したがって、第2コントローラ121は、制御信号経路に異常があることを使用者に通知する。
【0070】
(ix)ステップS9
以上により、制御信号経路の開通を確認したため、次に、映像信号経路の開通を確認する。第2コントローラ121は、内視鏡装置100及び撮像素子104のイニシャル映像データ(例えば、プロトコルの情報、テストパターン、センサ情報(撮像(映像)レートや撮像方式など)、その他任意に製造者が設定した情報など)を、例えばメモリ106(
図2参照、
図4には不図示)から取得し、イニシャル映像データ伝送用の帯域を用いて映像信号経路に送信する。具体的には、第2コントローラ121は、レーザドライバ126-1及び126-2を介してレーザダイオード125-1及び125-2にイニシャル映像データを送信する。
【0071】
ここで、イニシャル映像データは、上述のイニシャル制御データと同帯域で送信されてもよいし、異なる帯域や異なる伝送レートで送信されてもよい。上述のように、制御信号経路と映像信号経路とが分離されている(別系統で構成されている)ため、制御信号と映像信号とを非同期で通信することができる。
【0072】
なお、内視鏡装置100が撮像素子104を1つのみ有する場合には、2つのレーザダイオード125-1及び125-2に同じテストパターンが送信されるようにすることができる。2つのレーザダイオード125-1及び125-2は、1つの撮像素子104により撮像された色ごとに使い分けるようにしてもよい。また、複数の撮像素子104を用いる場合には、それぞれの撮像素子に応じた異なるテストパターンが送信されてもよい。
【0073】
その後、レーザダイオード125-1及び125-2は、当該イニシャル映像データをプロセッサ側の映像信号経路に送信(光伝送)する。このとき、プロセッサ側のフォトダイオード225-1及び225-2は、それぞれ内視鏡装置側のレーザダイオード125-1及び125-2からイニシャル映像データを受信(受光)し、トランスインピーダンス増幅器226-1及び226-2並びにリミッティングアンプ227-1及び227-2を介して、第2コントローラ221に送信する。
【0074】
また、本ステップS9において、内視鏡装置側の第2コントローラ121は、映像信号経路にイニシャル映像データを送信したことを示す通知を、制御信号経路に送信する。そして、当該通知をレーザドライバ126-3及びレーザダイオード125-3を介してプロセッサ側の制御信号経路に送信(光伝送)する。プロセッサ側のフォトダイオード225-3は当該通知を受信すると、トランスインピーダンス増幅器226-3及びリミッティングアンプ227-3を介して第2コントローラ221に送信する。
【0075】
(x)ステップS10
第2コントローラ221は、映像信号経路からイニシャル映像データを受信し、受信したイニシャル映像データの内容を確認(解析)する。
【0076】
また、本ステップS10において、第2コントローラ221は、制御信号経路から上記通知(内視鏡装置側の第2コントローラ121が映像信号経路にイニシャル映像データを送信したことを示す通知)を受信する。
【0077】
(xi)ステップS11
第2コントローラ221は、ステップS10においてイニシャル映像データを受信できたこと及び上記通知を受信できたことを確認し、受信完了通知として、制御信号経路を介して内視鏡装置側の第2コントローラ121へ送信(光伝送)する。
【0078】
(xii)ステップS12
第2コントローラ121は、制御信号経路から、上記の受信完了通知を受信する。これにより、映像信号経路の送受信が開通したことを確認する。ここで、ステップS9~11のいずれかにおいてイニシャル映像データの送受信に失敗した場合は、映像信号経路の開通を確認することができない。したがって、第2コントローラ121は、映像信号経路に異常があることを使用者に通知する。
【0079】
(xiii)ステップS13
映像信号経路の送受信が開通すると、第2コントローラ121は、撮像素子104で撮像された映像情報(映像データ)を取得して、映像信号経路に送信する。具体的には、映像データは、レーザドライバ126-1及び126-2並びにレーザダイオード125-1及び125-2を介してプロセッサ200に送信され、最終的には後段信号処理回路207で処理され、モニタ300で表示される。なお、映像データは、イニシャル制御データ及びイニシャル映像データとは異なる帯域で通信される。
【0080】
以上のように、制御信号経路の通信状態を確認し、その後、映像信号経路の通信状態を確認することとしたが、内視鏡装置100をプロセッサ200に接続し、内視鏡装置100に通電後、制御信号経路の通信状態の確認と並行して映像信号経路の通信状態を確認するようにしてもよい。
【0081】
<本実施形態の効果>
本実施形態の内視鏡システムによれば、制御信号経路を構成する複数組の光通信デバイス(発光素子及び受光素子)と、映像信号経路を構成する複数組の光通信デバイス(発光素子及び受光素子)を有し、制御信号経路におけるイニシャルデータの送受信の確認後(制御信号経路の確立後)、映像信号経路におけるイニシャルデータの送受信の確認を実行する。これにより、初期動作においてすべての光通信デバイスの通信状態を確認することができる。また、制御信号と映像信号とを非同期で通信することができる。
【0082】
さらに、映像信号経路の素子が故障した場合でも内視鏡装置100とプロセッサ200との通信は可能であり、制御信号経路の素子が故障した場合でも映像信号の送受信は可能であるため、ブラックアウトしない。
【0083】
<本開示の特定事項>
(1)特定事項1
内視鏡装置と、
前記内視鏡装置と接続されることにより制御信号及び映像信号の光通信が可能となるプロセッサと、を備え、
前記内視鏡装置は、前記光通信を制御する内視鏡制御部と、制御信号経路を構成する発光素子及び受光素子と、映像信号経路を構成する発光素子と、を有し、
前記プロセッサは、前記光通信を制御するプロセッサ制御部と、前記制御信号経路を構成する発光素子及び受光素子と、前記映像信号経路を構成する受光素子と、を有し、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部にイニシャル制御データを送信し、前記プロセッサ制御部から返送された前記イニシャル制御データを受信することにより、前記制御信号経路の開通を確認する処理と、
前記映像信号経路を介して、前記プロセッサ制御部にイニシャル映像データを送信するとともに、前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部に前記イニシャル映像データを送信したことを示す通知を送信する処理と、
前記制御信号経路を介して、前記プロセッサ制御部から、前記イニシャル映像データ及び前記通知が受信されたことを示す受信完了通知を受信することにより、前記映像信号経路の開通を確認する処理と、
を実行することを特徴とする、内視鏡システム。
【0084】
(2)特定事項2
特定事項1において、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路の開通を確認する処理の後に、前記映像信号経路の開通を確認する処理を実行する、内視鏡システム。
【0085】
(3)特定事項3
特定事項1において、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路の開通を確認する処理と並行して、前記映像信号経路の開通を確認する処理を実行する、内視鏡システム。
【0086】
(4)特定事項4
特定事項1乃至3のいずれか1項において、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路の開通を確認できなかった場合、前記制御信号経路に異常があると判断し、
前記映像信号経路の開通を確認できなかった場合、前記映像信号経路に異常があると判断する、内視鏡システム。
【0087】
(5)特定事項5
特定事項1乃至4のいずれか1項において、
前記プロセッサは、前記内視鏡装置が接続された際に、前記制御信号経路に電源を供給する第1電源と、前記映像信号経路に電源を供給する第2電源と、前記内視鏡装置に電源を供給する送電部と、をさらに備え、
前記内視鏡装置は、前記送電部から電源を受け取る受電部をさらに備える、内視鏡システム。
【0088】
(6)特定事項6
特定事項1乃至5のいずれか1項において、
前記内視鏡制御部は、
前記制御信号経路の開通及び前記映像信号経路の開通を確認した後に、前記内視鏡装置が取得した映像データの処理を開始する、内視鏡システム。
【0089】
(7)特定事項7
特定事項1乃至6のいずれか1項において、
前記イニシャル制御データと、前記イニシャル映像データとは、それぞれ異なる帯域で光通信される、内視鏡システム。
【0090】
(8)特定事項8
特定事項6において、
前記イニシャル制御データと前記映像データとは、それぞれ異なる帯域で光通信され、前記イニシャル映像データと前記映像データとは、それぞれ異なる帯域で光通信される、内視鏡システム。
【0091】
<その他の形態>
上述した本実施形態の機能は、ソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0092】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0093】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0094】
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できることを理解する必要がある。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した教授に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益であることが判るかもしれない。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点に於いて限定の為ではなく説明の為である。本分野にスキルのある者には、本開示を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0095】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【0096】
加えて、本技術分野の通常の知識を有する者には、本開示のその他の実装がここに開示された本開示の明細書及び実施形態の考察から明らかになる。記述された実施形態の多様な態様及び/又はコンポーネントは、単独又は如何なる組み合わせでも使用することが出来る。明細書と具体例は典型的なものに過ぎず、本開示の範囲と精神は後続する特許請求範囲で示される。
【符号の説明】
【0097】
1 内視鏡システム
100 内視鏡装置
104 撮像素子
120 内視鏡装置側の第1コントローラ
121 内視鏡装置側の第2コントローラ
122 受電部
123-1 内視鏡装置側のフォトダイオード
124-1 内視鏡装置側のトランスインピーダンス増幅器
125-1、125-2 内視鏡装置側のレーザダイオード
126-1、126-2 内視鏡装置側のレーザドライバ
110 内視鏡装置側コネクタ
200 プロセッサ
207 後段信号処理回路
210 プロセッサ側コネクタ
220 プロセッサ側の第1コントローラ
221 プロセッサ側の第2コントローラ
222 送電部
223-1 プロセッサ側のレーザダイオード
224-1、224-2 プロセッサ側のレーザドライバ
225-1、225-2、225-3 プロセッサ側のフォトダイオード
226-1、226-2、226-3 プロセッサ側のトランスインピーダンス増幅器
228 第1パワーIC
229 第2パワーIC
300 モニタ